JP3114223B2 - 液晶性ポリエステルおよびその製造方法 - Google Patents

液晶性ポリエステルおよびその製造方法

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JP3114223B2 JP03073366A JP7336691A JP3114223B2 JP 3114223 B2 JP3114223 B2 JP 3114223B2 JP 03073366 A JP03073366 A JP 03073366A JP 7336691 A JP7336691 A JP 7336691A JP 3114223 B2 JP3114223 B2 JP 3114223B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シークェンスがより交
互的に制御された新規な液晶性ポリエステルおよびその
製造方法に関するものである。本発明の液晶性ポリエス
テルは、高弾性率であり、引張強度、曲げ強度、衝撃強
度等が高く、さらに高伸度であるため靱性があり、かつ
同一組成、同一組成比においては、従来のものに比べ力
学特性だけでなく、耐熱性にも優れているものである。
【0002】本発明の液晶性ポリエステルが、これらの
特徴を示しうるのは、成形時にサーモトロピックな液晶
を形成するとともに、シークェンスがより交互的に制御
されているからである。また、同一組成、同一組成比に
おいては従来のものに比べてより低温側でも高流動性を
示すという特徴をも有する。そのため、成形材料、フィ
ルム、繊維等の製品として非常に有用である。
【0003】特に成形材料としては、自動車部品、電
気、電子部品、薄物成形品、精密成形品として好適であ
る。又、固体耐熱温度と充分に溶融しうる温度との差が
小さいために、高耐熱性の割に低温で重合できるという
重合上の利点もある。
【0004】
【従来の技術】近年、繊維、フィルムまたは成形品の何
れかを問わず、剛性、強度、伸度、耐熱性の優れた素材
に対する要望が高まっている。ポリエステルは、一般成
形品の用途を広く認められるに至っているが、多くのポ
リエステルは曲げ弾性率、曲げ強度が劣るため、高弾性
率、高強度を要求される用途には適していなかった。高
弾性率、高強度が要求される用途に適しているポリエス
テルとして近年では液晶性ポリエステルが注目されるよ
うになった。特に注目を集めるようになったのは、ジャ
ーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・ケミ
ストリー・エディション14巻(1976年)2043
頁、USP3,778,410、USP3,804,8
05及び特公昭56−18016号公報にW.J.ジャ
クソンらがポリエチレンテレフタレートとアセトキシ安
息香酸とからなる熱液晶高分子を発表してからである。
この中でジャクソンらは、この液晶高分子がポリエチレ
ンテレフタレートの5倍以上の剛性、4倍以上の強度、
25倍以上の衝撃強度を発揮することを報告し、高性能
樹脂への新しい可能性を示した。
【0005】しかしながら、このジャクソンらによるポ
リマーは非常にもろく、強度、伸度が低いという欠点が
あった。これは下記式(13)で示されるp−オキシ安
息香酸残基の連鎖の割合が非常に多いことが主原因にな
っていると考えられる。
【化8】
【0006】又、(13)の割合等によって融点、軟化
点等が変動するものと考えられる。一方、このジャクソ
ンらのポリマーを用いて成形加工条件を検討した報文が
数多くある。(例えばJ.A.Cuculoら、Jou
rnal of Polymer Science.P
hysical Edition 26 179(19
88))この報文によると、成形温度を高める程、弾性
率が高くなり、その理由として溶融していないものが低
温側で存在し成形品の高次構造等に欠陥を与えるためだ
としている。(このことは、部分的にしか液晶状態をと
っていないことを示している。)
【0007】これはシークェンス及びその分布、並びに
組成分布が広範にわたって分布しているすなわち不均一
性が大きいためだと考えられる。このことは固体の耐熱
性の割に成形温度を高くしなければ、高性能の物性が発
現できなくなることを意味するとともに、高温側でない
と本来の液晶性が充分に発現しないため、低温側、つま
り溶融開始点およびそれより少し高い温度付近では流動
性も悪化し、液晶性ポリマーの特徴である薄物成形等も
不可能になることを示してしる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本出願人らは、以前
に、ジャクソンらの開発したポリエステルの破断伸度を
改良する共重合ポリエステルを見出していた(特開昭6
0−186527号)。そこでの発想はp−オキシ安息
香酸単位の連鎖である上記(13)を少なくするという
点にあり、(13)を減少させようとする原点はここに
ある。しかしながら、特開昭60−186527号中の
製法や特開昭60−186525号の製法によれば、で
きるだけ最初にp−オキシ安息香酸が連鎖しないように
工夫したにもかかわらずランダム重合体しかできず、今
一歩破断伸度が低く、かつ固体時の耐熱性を維持しうる
温度と充分流動しうる温度との差が大きかった。
【0009】特開昭64−26632号によると、前述
のジャクソンらによる方法で得られた液晶性ポリエステ
ルは、p−オキシ安息香酸がブロック的に重合すること
によって生じたブロック性の高いポリマー((13)の
分率の高いもの)ができることが物性その他を悪化させ
るので、二段階重合法により、ランダム化させ、それに
よって物性向上を図ったとある。
【0010】しかしこの方法によるポリエステルも追試
によると耐熱性は高いものの溶融粘度が高く、流動性が
かなり悪化しており、強度や伸びといった力学特性もあ
まり芳しいものではない。これは上述したように、p−
オキシ安息香酸がランダム的にしか重合されていないこ
とによると思われる。
【0011】さらに特開平2−45524号は、p−ヒ
ドロキシ安息香酸と無水酢酸又はp−アセトキシ安息香
酸とを連続又は分割添加する方法により、改良を図って
いるものの、
【化9】 の比率が80:20(モル比)のとき、HDTは150
℃しかなく、318℃での溶融粘度が770ポイズと特
開昭64−26632号による方法より芳しくないもの
しか得られていない。(特開平2−45524号の実施
例1の記載参照)
【0012】さらに我々は不溶・不融粒子の生成を抑え
た共重合ポリエステルを見出した。(特開昭62−41
221号)しかしながら、このポリエステルは耐熱性に
おいて劣る場合があり、エンジニアリングプラスチック
には不適当である場合があった。又、USP3,89
0,256には耐摩耗性を改良するポリエステルが開示
されているが、このポリエステルも特公昭56−180
16号と同様の方法のため、
【化10】 の連鎖が生成しやすいものであった。そのため不溶・不
融粒子ができやすく、従って得られるポリマーの破断伸
度が低下し、もろくなる傾向にあった。
【0013】又、共重合成分が多すぎるために耐熱性に
劣る場合が多かった。又、特開昭63−317524号
においては、伸びの改良や物性の異方性の改良をエチレ
ングリコール以外の脂肪族ジオール等を用いた系で行う
方法が考えられているが、脂肪族グリコールとしてエチ
レングリコールのみを用いて上記効果(特に伸びの改
良)を更に向上させる方法については、何ら提案されて
いない。
【0014】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
【化11】 の構成単位からなる液晶性ポリエステルで、さらに引張
強度、曲げ強度、衝撃強度等が高く、高破断伸度でかつ
耐熱性に優れ、固体での耐熱性には優れるが、流動を開
始すると少し高温にするだけで非常に優れた流動性(こ
のようにするためにはある温度T1 までは固体状態であ
って耐熱を示し、T2 での温度で非常に優れた流動性を
示すとすると、T1 はできるだけ高く、T2 −T1 はで
きるだけ小さくすればよい。)を示し、そのため成形性
にすぐれ、かつ共重合体であっても固体状態でできるだ
け高い結晶性を示すことにより力学特性の向上を図った
り、耐加水分解性の向上を図ったり、又フィラー等を混
合した際に力学特性や熱的特性の大幅向上を図ったりす
ることが可能になりうる系があると考え、それはシーク
ェンスや組成分布を制御すること、具体的には後述する
ようにより交互的なシークェンスにすることであると考
え、鋭意検討した。その結果、上記特性を持つ液晶性ポ
リエステルを製造する方法を見出し、本発明に到達し
た。
【0015】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
液晶性ポリエステルの特徴は、高強度かつ破断伸度が高
いので、靱性のあるポリマーであり、更に同一組成、同
一組成比の中では非常に優れた固体での耐熱性を有し、
さらに前述のT2 −T1 が非常に小さいために、低い温
度で成形できるという特徴を有し、そのうえ一般的に低
い温度で、すなわち融点より少し高い温度で成形した方
が力学特性に優れるという特徴を有する。
【0016】さらにこれらの液晶性ポリエステルは固体
状態で高い液晶性を示すので耐加水分解性が向上した
り、フィラー等を混合した際に力学特性、熱特性が向上
しうるという特徴を有する。このような液晶性ポリエス
テルを開発できたのは、以下に示す考えに基づき、本発
明に到達したからである。
【0017】すなわち、主に下記構成単位(1),
(2),(3)
【化12】 をできるだけ少なくすることにより達成できると考え
た。
【0018】従来のジャクソンらの結晶性ポリエステル
の改良である特開昭60−186527号、特開昭64
−26632号及び特開平2−45524号では耐熱性
や力学特性の改良はされるもののそれらはあくまでも
【化13】 成分がブロック的に重合体中に存在していたのをランダ
ム的にしたにすぎず、又そのランダム性については定性
的で、そのランダム性の尺度を定量化してはいなかっ
た。
【0019】本発明者らは上記成分が重合体中にランダ
ム的に存在するのでは前述の物性をすべて満足すること
はできず、交互的に存在させることによってそれが達成
されることを見出した。即ち、本発明の液晶性ポリエス
テルは、下記式(II)及び(III)
【数4】 により定められるパラメーターr1 及びr2 (シークェ
ンス生成性比)を使用したとき、 0≦r1 ≦0.88 あるいは 0≦r2 ≦0.88 の少なくとも1つを満たすことが必要である。
【0020】好ましくは、
【数5】
【0021】さらに好ましくは、
【数6】 としておくのが好ましい。さらに好ましくはr1 とr2
が同時に上記範囲内であることである。
【0022】これらの意味について以下に述べる。尚、
式(II)および式(III)の導出については、B.Vol
lmert編、Polymer Chemistry;
Springer−Verlag:NY 1973
P.117〜P.123の記載に基づいて行なった。 要がある。即ち(3)のエーテル側の隣には、下記式
(3−1)及び(3−2)において……………線で示さ
れる通り、異なる2種類の単位が連結しうると考えられ
る。
【化14】
【0023】また、同様にカルボニル側の隣には、下記
式(3−3)及び(3−4)において……………線で示
される通り、異なる2種類の単位が連結しうると考えら
れる。
【化15】 ここで、式(3−1),(3−2),(3−3),(3
−4)において下線部に相当する単位のモル数を各々
〔3−1〕,〔3−2〕,〔3−3〕,〔3−4〕とす
ると
【数7】 である。
【0024】ただし、末端基等があったり、主鎖中に
【化16】 の酸無水物結合がある等の場合が考えられるので、上の
2式、即ち
【数8】 の左辺と右辺は必ずしも等しくはならない。すなわち、
必ずしも〔3−2〕と〔3−4〕は等しくはならない。
【0025】その他のとなり合う連鎖としては、
【化17】 が考えられる。実際上意味ある式は
【数9】
【0026】(1),(2),(3)の比率としては後
で述べるが(II)式においてはポリマーのNMR法によ
り求め、(III)式においてはアミン分解物のNMR法に
より求めた値を採用した。(1),(2),(3)の比
率はメタノール分解後のガスクロマトグラフィー法でも
求めることも可能であり、NMR法とよい一致を示し
た。
【0027】次に、r1 ,r2 の意味について述べる。
一般に高分子の共重合体製造時にモノマー反応性比とい
う概念がある。その場合2種のモノマーM1 ,M2 があ
り活性種〜M1 * のとなりにモノマーM1 が入る確率を
11とし、M1 ,M2 の濃度を〔M1 〕,〔M2 〕で示
すと、下記一般式
【数10】 で表わされる。(ここにR1 =k11/k12;k11は〜M
1 * のとなりにM1 が入る反応速度定数。k12は〜M1
* のとなりにM2が入る反応速度定数。)
【0028】そのためR1 は結局〜M1 * のとなりにM
1 あるいはM2 が入る反応速度定数比ということにな
る。一般にはW11はポリマーを分析することによって求
められる場合もあり、また、ビニル化合物系の連鎖重合
の場合は、モノマー消費量(あるいはポリマー中の組成
比)よりR1 を求める場合がある。一方、本発明系のよ
うな場合は、逐次反応であり、かつエステル交換のよう
な副反応も考える必要があるので、モノマー反応性比R
1 が即ポリマーの組成やシークェンスを決定するもので
はない。
【0029】しかしながら同様な考え方をすることは可
能である。すなわちモノマーの反応性比はわからない
が、同様な考えによりW11をポリマーから決定できれ
ば、それはシークェンスの生成比率を決定することがで
きると考えられる。
【数11】 で置き換えることができる。(〔M1 −M1 〕はM1
となりにM1 のある濃度)
【0030】そこで本発明者らは、新たにr1 としてシ
ークェンス生成性比と名づけ、上の式と同様な
【数12】 を使用し、r1 を定義した。
【数13】
【化18】 になっている比率すなわち確率を表わしている。
【0031】r>1で(3)は(1)に対してブロ
ック的なシークェンスになっており、r1 値が大きくな
る程、よりブロック性が高い。すなわち〔13〕の割合
が大になることを意味する。
【数14】 で(3)は(1)に対して、ランダムなシークェンスに
なっており、これはポリマー中の〔13〕の〔3〕に対
する比率は〔3〕と〔1〕を全体の組成としたときの
〔3〕の組成比と同一であることを意味する。
【0032】さらにr1 <1になると〔13〕の比率が
小さくなってくる。すなわち(3)は(1)に対して交
互的になることを意味し、r1 が小さくなる程交互的で
あることを意味する。r1 =0のとき〔13〕は生成し
ないことを意味する。ただし〔3〕の比率がふえてきた
とき、すなわち〔3〕>2×〔1〕になったとき、r1
は実質上
【数15】 のとき、理想的交互共重合体といえる。
【0033】逆な面からみるとr1 >1のときは−C−
1 −C−O−CH2 CH2 −O− (14)‖
‖O Oのシークェンスの分率が多いことであ
り、
【数16】 のときは(14)のシークェンスが統計的にランダムな
分率だけでありr1<1のときは(14)のシークェン
スが減少していることを意味する。すなわち従来の同様
の組成、組成比の液晶性ポリエステルは本発明のポリエ
ステルに比べて(14)のシークェンスが多くなってい
る。従来の製法では(14)のシークェンスを減少させ
ることが困難であったためと思われる。
【0034】次にr2 について考える。r2 についても
同様に(3)のカルボニル側のとなりの構成単位に着目
して、(III)式を定義した。r2
【数17】 で定義される。
【0035】
【化19】
【0036】r2 >1で(3)は(2)に対してブロッ
ク的なシークェンスになっており、
【数18】 で(3)は(2)に対してランダム的なシークェンスに
なっている。さらにr2 <1になると(3)は(2)に
対して交互的になることを意味する。ジャクソンらの液
晶性ポリエステルの場合(3)は(1)に対してブロッ
ク的になっていることは同じイーストマンのグループの
V.A.Nicelyらによって証明されている。(M
acromolecules 20 573(198
7))Nicelyらは本明細書の記述でかくと
【数19】 という式を用いmが1より大きいかどうかでブロック的
かどうかを判断している。これの意味は〔3−1〕の割
合が〔3〕と〔1〕を全体としたとき〔3〕の組成比率
より大きいか小さいかで判断しようとするものである
が、本発明者らの方法の方が判断基準としてはより好ま
しいと思われる。それはともかく、ジャクソンらのポリ
マーはm=1.3ということでブロック的になっている
ことは証明されている。(ただし、
【数20】 の範囲しか彼らは測定していない。今回本発明者らは
【数21】 の範囲も測定したがやはりブロック的になっていた。)
【0037】特開昭60−186527号や特開昭64
−26632号や特開平2−45524号等もランダム
的にしかなっていない。本発明と類似の組成のポリエス
テルにおいて従来交互的になった系は全くないわけでは
ない。例えば、R.W.Lenzらによると界面法(溶
液法)により(6−1)の化合物と
【化20】 を用いて交互系のポリエステルを作っている(Poly
mer Journal14(1)9(1982))が
ηinh は0.178と低く、ポリエステルとしての力学
特性は期待できない。(British Polyme
r Journal 12(4)132(1980)に
も同一著者のものがあり、ηinh の記載はないが、他の
データよりPolymer Journalと同一物と
考えられる。)
【0038】又、本発明の系以外において完全交互系と
交互でない系でメルトにどのような差があるかについて
検討している例がある。(S.I.Stuppら、Ma
cromolecules 21 1228(198
8))確かに交互系では固体から液晶への転移の幅は狭
い。しかしながらこの論文の交互系は逐次的にモノマー
を合成するため、モノマー合成が非常に大変であるし、
合成されたものの力学的物性は調べられてもいない。
【0039】前述のr1 ,r2 の少なくとも1つが0.
88未満である本発明の液晶性ポリエステルの特徴は、 1.高い引張り強度、曲げ強度を有する。 2.高い衝撃強度を有する。 3.高い破断伸度を有する。 4.同一組成、組成比での耐熱性は高い。 5.T2 −T1 が小さいので成形温度を低くできる。 6.より低温での成形品の方が力学特性優れる。 7.溶融粘度のみかけの活性化エネルギーが小さい。 8.結晶性が高い。 9.耐加水分解性が良好である。 10.フィラー等の混合の効果が顕著に現れる。 等である。なお本発明のポリマーの物性は力学特性と熱
特性のバランスが従来のものに比べてはるかに優れてい
るものであって、個々の物性においては劣る場合もあり
うる。
【0040】又、耐熱性が高い割に成形温度を低くでき
るということは、製造時の重合温度を低くできるという
ことにもつながり、従来の製造装置で耐熱性の良好なポ
リマーを製造しうるということを意味する。式(1)で
示されるジカルボン酸単位のR1 としては炭素数6〜1
8の2価の芳香族炭化水素基を示し、具体的には
【化21】 等を挙げることができる)等が挙げられる。これらは単
独に用いられてもよいし、混合して共重合体となってい
てもよい。これらのうち
【化22】 の1つから選ばれることが好ましく、又これらの合計が
1 のモル比で50%以上、より好ましくは66%以上
しめるのがよい。
【0041】好ましい混合系としては
【化23】 等挙げることができる。これらは勿論3種以上を用いて
もよいが、二種までが好ましい。
【0042】本発明においては、上記一般式(1)と
(3)の単位のモル数〔1〕と〔3〕の比率について
は、製造上の問題から、
【数22】 を満足する必要がある。すなわち、本発明の製造方法で
は、
【化24】 を加えない場合は必然的に
【数23】
【0043】ただし、本発明の液晶性ポリエステルは、
本発明の製法以外でも勿論製造される。しかし、その場
合も
【数24】 これ以上になるとp−オキシ安息香酸単位の連鎖の絶対
値が多くなり好ましくない。このうち、
【数25】
【0044】本発明におけるポリエステルは特開昭60
−186527号で述べている式(15)の単位
【化25】 をほとんど含まない。このような単位を有すると、耐熱
性が大幅に低下するので好ましくない。また結晶性をも
低下させるので好ましくない。しかし、もし式(15)
の単位が存在する場合には(15)のモル数は〔3〕の
モル数に含めないものとする。
【0045】次に(1),(2),(3)、(3−
1),(3−2),(3−4)の単位についての測定
法、およびr1 ,r2 の計算について述べる。まずr1
であるが、これについては本質的には前述のNicel
yらの方法と同一である。すなわち、 1H−NMRを用
いてr1 を求めた。NMRはBRUKER製のAM−5
00を使用し、溶媒としてはトリフルオロ酢酸又はトリ
フルオロ酢酸とペンタフルオロフェノールの混合溶媒を
用いた。測定温度はトリフルオロ酢酸のみの系では室温
で、トリフルオロ酢酸とペンタフルオロフェノールの混
合溶媒では60℃で行った。各 1H−NMRスペクトル
から(3−1)
【化26】 に由来するシグナル(Ha :約7.55ppm)とジカルボ
ン酸単位(1)とp−オキシ安息香酸単位(3)の連鎖
(3−2)
【化27】 に由来するシグナル(Hb :約7.45ppm)の両シグナ
ル強度を求め、さらに約8.3ppm 、約8.5ppm のシ
グナルから(1)と(3)の比率を求めそれを基にr1
を算出した。この方法によると(3)の化合物の−O−
側のシークェンスの情報が得られることになる。
【0046】次にr2 の求め方であるが、これはポリマ
ーのNMRから求めることはできなかった。そこで本発
明者等は鋭意検討してr2 を求める方法を見出した。す
なわち本発明の系の液晶性ポリエステルを一級アミンと
反応させると、驚くべきことに、
【化28】 のエステル結合は選択的に切断されず結合が残ったまま
であり、他のエステル結合(例えば(3−3)(3−
2),(14)のエステル結合等)は切断されることを
見出した。これを利用することにより本発明系の液晶性
ポリエステルのシークェンスを解析できる。本法をさら
に詳しく述べると例えば、本発明系の液晶性ポリエステ
ルを粉砕し、その粉砕試料に大過剰のn−プロピルアミ
ンで40℃で90分間処理し、次に得られた分解物を前
述と同一の500MHZ 1H−NMRで分析定量する。
1H−NMR測定は溶媒として重水素化メタノール又は
重水素化DMSOと重水素化メタノールの混合溶媒又は
重水素化トリフルオロ酢酸を用いて行ない、(3−4)
の成分量を定量する。(2),(3)の比率は各同定さ
れたピーク強度を用いて算出した。この方法によると
(3)の単位の−C−側の‖Oシークェンスの情報が得
られることになる。それらに基づいてr2 を算出した。
【0047】(1),(2),(3)の組成比率は図
1、図2をさらに拡大して測定した。誤差としては、
【数26】
【0048】今までの議論からr1 とr2 は同一のよう
にみえるかもしれない。しかしながら今述べた分析法か
ら考えるとかなりの違いがある。すなわち、(3−1)
と(3−2)は 1H−NMRから区別がつくのでr1
〔3−1〕を用いて表現できる。しかしながらアミン分
解法では(3−3)と(3−4)がわかるわけでなく、
(3)と(3−4)のみがわかるので正確にはr2
〔3〕−〔3−4〕を用いて表現する。末端基等のため
に〔3−1〕と{〔3〕−〔3−4〕}は、必ずしも等
しくはない。又、測定上の精度からも等しくなるとは限
らない。
【0049】このようにより交互的になるポリエステル
はシークェンスのみならず組成分布的にも均一になって
いるものと思われる。例えば図5、図6に示したバイブ
ロンのデータによると、耐熱性の尺度としてE′=3×
1010dyne/cm2を示す温度をとりこれをT1 とする。
(E′は貯蔵弾性率を示す)次に充分に流動しうる最低
の温度としてE′=5×109dyne/cm2 を示す温度とし
てT2 とし、T2 −T1 =aとすると本発明のポリエス
テルのみが図から明らかなように0≦a≦80℃であ
る。好ましくは0≦a≦75℃、さらに好ましくは、0
≦a≦70℃、さらに好ましくは、0≦a≦65℃、最
も好ましくは、0≦a≦60℃を満たすことである。a
が小さいということは、固体状態での耐熱性が高い割に
流動温度が低いことを意味する。
【0050】
【化29】 を満たすようになっている。そのためT1 を組成比によ
って制御することができる。
【0051】また本発明のポリエステルは、力学特性的
に、(1)のR1
【化30】 としたとき、本発明の液晶性ポリエステルは従来の液晶
性ポリエステルに比べて破断伸度は約20%以上向上
し、強度も約10〜20%程度向上している。aが小さ
いということは、耐熱性があって低い温度で成形でき、
そのとき、全体がメルトしているために、そのものの溶
融粘度が非常に低くなっていることを意味する。これは
シークェンスが交互的すなわちr1 ,r2 の値が小さい
ことと対応している。
【0052】構造(特に高次構造)が溶融後に残ってい
ないことは、温度変化による構造の変化の様子を小角X
線散乱法により追跡することで明確にしうる。(また、
結晶構造の変化等は、次に述べる広角X線散乱法により
明確にしうる。)次にシークェンス等がより交互的にな
ってくることにより、すなわちより均一的になることに
より、同一組成比の場合に結晶性が向上することが期待
できる。これは、DSCやX線散乱からその度合を把握
することが可能である。
【0053】DSCではTcでのΔHより、また、X線
ではピーク強度や2θの値より、結晶の存在の有無や結
晶の大きさや種類を相互比較することは可能である。特
に同一組成比の場合、同一成形条件で成形すると、一次
構造、特にシークェンスに差があれば、2種の分析法で
明確に差を示すことができると思われる。例えば、ロッ
ド(rod)を作成し、その広角X線を測定し赤道方
向、小午線方向等の散乱パターンを検討すると、本発明
のポリマーは同一組成及び組成比を有する従来のポリマ
ーよりも結晶格子の大きさが小さく、結晶分子間の間隔
が小さいと考えられる。
【0054】本発明で得られた液晶ポリエステルの溶液
粘度ηinh は以下のようにして求めることができる。溶
媒としてp−クロロフェノール/o−ジクロロベンゼン
=1/1(wt比)を室温で溶解し、濃度0.5g/dl
とし、30℃で測定する。(次式によって求められ
る。)
【数27】
【0055】本発明のポリエステルは重合度(この尺度
として上述の溶液粘度を考える)の割に同一組成及び組
成比においては溶融粘度が小さくなり流動性が向上する
という特徴を有する。このηinh が0.4dl/g未満の
ときは力学特性が芳しくないので好ましくない。より好
ましくはηinh≧0.5、さらに好ましくはηinh
0.6、最も好ましくはηinh ≧0.7である。又、本
発明の液晶性ポリエステルはこの方法で溶液粘度が測定
できる、すなわち実質上完全に溶解しうるということか
らも(3)の連鎖の長いポリマーは存在しないと思われ
る。また、組成分布もより均一になっていると思われ
る。本発明で得られた液晶性ポリエステルはフェノール
/1,1,2,2,テトラクロロエタン=1/1wt比
やヘキサフルオロイソプロパノール中にも溶解すること
よりかなり均一かつ(3)の連鎖の長いものはほとんど
存在しないと思われる。
【0056】次に製造法について述べる。0≦r1
0.88、0≦r2 ≦0.88の少なくとも1つを満た
すようなポリエステルを製造するには、従来の方法すな
わち、特公昭56−18016号、特開昭58−871
25号、特開昭60−186525号、特開昭64−2
6632号、特開平2−45524号等による方法では
達成されえない。
【0057】本発明者は、r1 ,r2 が上記の範囲を満
たすポリエステルを製造する方法として、(3)の連鎖
を生成しにくくするため、はじめからすなわち原料の時
点で
【化31】 等を用いればよいと考えた。
【0058】すなわち、本発明のようにジオール成分が −OCH2 CH2 O− (2) のとき、一般に高温下ではエステル交換やアシドリシス
反応が活発に起こり、その結果(3)の単位がブロック
的になったり、ランダム的になると思われていた。しか
しながら、予想外に(2)の成分はエステル交換しにく
いのであった。すなわちジャクソンらの方法によるポリ
マーは、上記(14)の成分が残るために(3)の連鎖
の割合が増大するのであった。前述の他の方法は少しで
もエステル交換やアシドリシスを起こさせようとするも
のであった。
【0059】本発明では−OCH2 CH2 O−成分のエ
ステル交換が高温下で予想外に起こりにくいことを逆に
利用しようという発想で始まっている。製造方法をより
具体的に説明する。
【化32】 必要に応じて無水酢酸を加えて100〜170℃でアセ
チル化等を行う。これは5分〜3時間、好ましくは20
分〜1.5時間である。無水酢酸の量は原料のヒドロキ
シル基量と同量〜1.5倍量程度使用するのが好まし
い。すなわち無水酢酸を(16)とし、(6−1),
(9−1),(16)のモル数をそれぞれ〔6−1〕,
〔9−1〕,〔16〕とすると
【数28】 またヒドロキシル基を含有しない原料のみを用いる場合
も少量の無水酢酸を用いてもよい。この場合重合速度が
高くなるというメリットがある。また反応は無触媒でも
可能であるし、必要に応じて、触媒を添加してもよい。
【0060】その後昇温して重合に入る。重合は265
〜300℃で重合させるが、特に265〜280℃で
うのが好ましい。固体の耐熱性のわりに低温で重合でき
るというメリットもある。又、760mmHgから1m
mHgまで徐々に減圧にする場合に要する時間は30分
以上、好ましくは60分以上の時間で実施され、特に3
0mmHgから1mmHgまでの減圧を徐々に行うこと
が重要である。
【0061】重合時無触媒でも可能であるが必要に応じ
触媒の存在下で実施される。使用される触媒としてはエ
ステル交換触媒、重縮合触媒、アシル化触媒、脱カルボ
ン酸触媒が使用され、これらは混合して使用してもかま
わない。好ましい触媒としては、Ti(OBu)4 ,B
uSnOOH,Sn(OAc)2 ,Sb2 3 ,Fe
(acac)3 ,Zn(OAc)2 ,Co(OA
c)2 ,NaOAc,KOAc等が挙げられる。その使
用量はポリマーに対して5〜50,000ppm 好ましく
は50〜5,000ppm である。重合時間は10時間以
内ならよいが、その中でも7時間以内で行うのが好まし
い。1〜4時間以内で行うのが最も好ましい。この重合
は低温で行うことができるメリットを挙げたが低温で行
っても簡単に抜出せ、抜出時にトラブルをおこすことが
ないというメリットもある。これもシークェンスが制御
されていることに基づいていると思われる。
【0062】
【化33】
【0063】
【数29】
【0064】本発明の製造方法と特開昭63−3175
24号に記載の方法との違いについて言えば、特開昭6
3−317524号の発明者等は前述のように脂肪族グ
リコールがエチレングリコールのみで物性が改良できる
とは考えておらず、C3 以上がエステル交換やアシドリ
シス反応がいきにくいのでそれを改良したといってい
る。又、かれらは本発明者らの先願(特開昭60−18
6525号)を引用してこの方法でエチレングリコール
を用いればアシドリシスが充分行われると考えており、
エチレングリコールのみで物性改良ははじめから考えて
いない。
【0065】本発明者らは前述のようにエチレングリコ
ールの場合でもエステル交換やアシドリシスは充分では
なく、そのため、製造上
【化34】 の連鎖をはじめから少なくするようにしておけばよいと
考えたわけであり、特開昭63−317524の発明者
らがエチレングリコールの場合はエステル交換やアシド
リシスが充分に行なわれると考えているのと大いに異な
るのである。
【0066】また、本発明の液晶性ポリエステルは溶融
相において光学的異方性を示す。特に溶融を始めると溶
融開始温度から少し温度を高めるだけで固体部分がほと
んどなくなり、ほとんどすべてが液晶状態をとりうるの
で、流動性がηinh みあいで従来のポリエステルよりも
はるかによいという特徴を有する。そのため成形性が良
好で押出成形、射出成形、圧縮成形等の一般的な溶融成
形を行なうことが可能であり、成形品、フィルム、繊維
等に加工することができる。溶融温度についていうと、
本願のポリエステルは液晶性を示すことより、溶融粘度
は一般に低い。例えば275℃、103 sec -1での溶融
粘度は5000ポイズ以下、好ましくは30〜3000
ポイズさらに好ましくは100〜2500ポイズであ
る。又同一ηinh では275℃での溶融粘度は本願のも
のが最も低い値をとる。また275℃の溶融粘度と29
0℃の溶融粘度の比の値が小さいのも本願の特徴であ
る。
【0067】特に高流動であることより精密成形品等に
適している。例えば自動車用部品、コンパクトディスク
やフロッピーディスク等情報材料の部品、コネクター、
ICソケット等の電子材料の部品等に使用されうる。
又、成形時に本発明の共重合ポリエステルに対し、ガラ
ス繊維、炭素繊維等の繊維類、タルク、マイカ、炭酸カ
ルシウム等のフィラー類、核剤、顔料、酸化防止剤、滑
剤、その他安定剤、難燃剤等の充てん剤や添加剤、熱可
塑性樹脂等を添加して成形品に所望の特性を付与するこ
とも可能である。又、他のポリマーとのブレンドやアロ
イ化によって他のポリマーの特徴と本発明の共重合ポリ
エステルの両方の長所を合わせもつ組成物を創出するこ
とも可能である。
【0068】
【実施例】次に本発明について更に詳細に説明するが、
本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定さ
れるものではない。なお、実施例中の溶融粘度の測定に
は、島津製フローテスターを用い、剪断速度1000se
c -1、シリンダーノズルの長さ/直径=20を使用し
た。光学異方性(液晶性)は、ホットステージ付偏光顕
微鏡を用いて観察した。
【0069】成形は日本製鋼社製0.1oz射出成形機を
用い、金型AとBを用いて、成形片を作成した。また、
住友重機製0.3oz射出成形機を用い、金型Cを用いて
成形片を作成した。HDTは0.1oz射出成形機で得た
成形片によりバイブロンデータをとり、一方従来製造さ
れた液晶ポリエステルや市販品の液晶ポリエステルなど
で2.5oz東芝機械の射出成形機を用いて成形した成形
片からHDTを求め、両者の間に良好な相関関係がある
ことを利用して、それを基に求めた値である。
【0070】バイブロンは東洋ボールドウィン社製のレ
オバイブロンを用い、上記0.1ozの金型Aの成形片を
110Hz下で使用した。引張特性(引張弾性率、引張
強度、破断伸度)は上記0.1oz金型A、およびBの成
形品と0.3oz金型Cの成形品について、東洋ボールド
ウィン社製TENSILON/UTM−III Lを用いて
測定した。
【0071】DSCはデュポン社製TA2000を用い
て測定を行った。サンプルは粉末を用い、20℃/min
の速度で350℃まで昇温し、5分放置した後20℃/
min で20℃まで降温した。さらに5分放置した後、2
0℃/min で350℃まで昇温した。降温過程と2回目
の昇温過程のチャートを図示した。X線散乱測定は理学
電気(株)製X線発生装置RAD−Bシステム(最大出
力12kw)を用いて測定を行った。試料架台には、同社
製繊維試料台を使用した。サンプルは、1φのノズルよ
り275℃または290℃にて押し出し、0.37φの
ロッド状に成形後、さらに130℃で12時間熱処理を
行ったものを使用した。この成形により、サンプルは押
し出し方向に高配向している。
【0072】尚、引張特性の破断伸度については、一般
に0.1oz(金型A,B)、および0.3oz(金型C)
の成形片(ダンベル片)はASTM成形片に比べて伸び
が低く、0.1oz金型A成形片はASTM成形片に比べ
て強度も一般にかなり低い値を示す。従って、この成形
片で伸びが3.5%以上であるとかなりねばり強いポリ
マーと言うことができる。また、3.0%未満では、か
なり脆いポリマーと言うことができる。
【0073】耐熱性の測定としては(1)ビカット軟化
温度と(2)HDTの測定を行ったビカット軟化温度
は、東洋精器の自動HDT測定装置を用い、サンプル
は、上記0.1oz成形片を用いて、50℃/hrの昇温速
度で、針が1mm侵入したところの温度である。Izod
衝撃強度はASTM D−256規格に準拠してノッチ
付きで測定した。
【0074】参考例1
【化35】 キシレン中にパラヒドロキシ安息香酸とエチレングリコ
ールをパラヒドロキシ安息香酸/エチレングリコール=
2/1(モル比)になるように仕込み、触媒としてp−
トルエンスルホン酸を仕込んだ。
【0075】これをキシレンのリフラックス温度まで昇
温し、反応させた。反応終了後、未反応部を水洗してと
り除き、純度の高い
【化36】 を得た。構造は、 1H−NMRで確認した。
【0076】実施例1 攪拌翼、窒素導入口、減圧口を備えたガラス重合管に
【化37】 を仕込みN2 −減圧置換後、さらに無水酢酸を82.1
g(0.81モル)添加し、系を攪拌しながら140℃
に昇温して1時間140℃に保った。その後、1.5時
間かけて275℃に昇温し、275℃になったところで
減圧をはじめた。
【0077】減圧は最初の1時間で10mmHgにし、以後
1.5時間かけて10mmHgから1mmHgにする予定であっ
たが減圧開始後1時間55分で6mmHgの時点で充分トル
クが上がったので重合を終了した。その後静置し復圧し
て重合管の底からポリマーを抜き出した。抜出し性は非
常に良好であった。
【0078】チップ化した後、120℃で一晩真空乾燥
させた。このポリマーのηinh は0.98であり溶融粘
度は表3に示すとおりであった。このポリマーはr1
0.75,r2 =0.78であった。尚、図1にr1
0.75を求めるのに用いたNMRチャートを、図2に
2 =0.78を求めるのに用いたアミン分解後NMR
チャートを示す。又、各種力学特性は表3,表4に示す
とおりであった。
【0079】また、図5には、本実施例1を含む各種の
バイブロンチャートを示す。図中で示したものが実施例
1のものである。バイブロンT1 は224℃と非常に高
く、同一組成の従来のポリマー(比較例2,4,5,
6)に比べても約20℃以上も高く、T2 は270℃と
比較例4を除けば従来の同一組成のポリマーより低かっ
た。
【0080】このT2 −T1 は46℃と従来ポリマーに
比べてはるかに小さい幅であった。また、力学特性の中
で特に破断伸度については従来ポリマー(後述の比較例
2,4,5,6)が3%以下であるのに対し、本発明の
ポリマーでは3.7%の値を示している。即ち、前述の
ように3%以下では脆く感じるのに対し、本発明のポリ
マーは、かなりねばり強さを有することを示している。
また、比較例に比べてηinh の割に溶融粘度が低い。
【0081】又、従来ポリマー(比較例2,4)は成形
温度が高い程力学特性は良くなっているのに対し、本発
明品は成形温度が低い程良好な力学特性を示している。
さらに図7に実施例1で得られたポリマーのDSCチャ
ートを示す。結晶性が非常に大きく(ΔH値が大きい)
Tm =265.7℃であり、T2 が270℃とよく対応
している。
【0082】また、図8にX線散乱測定の結果を示す。
即ち: この結果からも、散乱強度が強く、結晶性が高いことが
わかる。
【0083】子午線方向の散乱パターンに認められるピ
ーク例えば15.2°のピークを見ると同一組成比の従
来のポリマーのピークより広角側にあり、同様に赤道方
向の散乱パターンに認められるピークの位置も20.4
°と従来のポリマーより散乱角度が大きい。すなわち繊
維軸方向の結晶格子(繊維周期)の大きさは従来のポリ
マーより小さく、分子間パッキングにおいても従来のポ
リマーより分子間距離が短くなっており、分子のパッキ
ングがより密になっていることがわかる。
【0084】このサンプルを用い、Izod衝撃強度を
測定したところ、58kg・cm/cmと非常に高い値を示し
た。さらに0.1oz射出成形機、金型Bで成形したとこ
ろ、引張強度2,220kg/cm2 と高い値を示した。
【0085】実施例2〜8 原料の種類、仕込み比及び重合条件を表1,表4に示す
ようにかえた以外は実施例1と同様に行なった。実施例
1〜8の重合条件等及び諸物性の測定結果を表1,表
2,表3,表4にまとめた。
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】比較例1,2 特公昭56−18016号に記載の方法に基づき製造し
た。比較例1ではポリエチレンテレフタレート/p−ア
セトキシ安息香酸=30/70(モル比)で比較例2で
はポリエチレンテレフタレート/p−アセトキシ安息香
酸=20/80(モル比)で行った。
【0091】生成ポリマーの組成比
【化38】 は表5に示した。
【0092】比較例3,4 特開昭60−186527号に記載の方法に基づき製造
した。比較例3,4の生成ポリマーの組成比
【化39】 は表5になるようにした。
【0093】比較例5 特開昭64−26632号に基づき二段階重合を行い、
組成比は表5に示した。 比較例6 特開平2−45524の実施例1に基づき製造した。比
較例1〜6の諸物性については表6に示した。比較例1
〜6はいずれも(1)のR1
【化40】 である。
【0094】HDTについては実施例と同様に行った。
比較例1,2,5,6の生成ポリマーはヘキサフルオロ
イソプロパノールに溶解しなかった。比較例2,4は高
温で成形した方が力学特性は向上した。比較例1〜6の
すべてのaは80℃をこえるものであった。いずれも引
張り強度、破断伸びは低く特に破断伸びは3%以下であ
った。
【0095】比較例2,5,6の溶融粘度(275℃)
は非常に高く、特に比較例5,6ではηinh の割に溶融
粘度が高かった。比較例2はηinh は不溶分があるため
測定できていないが、溶融粘度からみても物性値が劣っ
ているのはあきらかである。比較例5のX線データのピ
ークの散乱角度を表2に示した。
【0096】実施例1と比較し、繊維方向の結晶格子が
やや大きく、分子間のパッキング距離がやや大きくなっ
ている。比較例2のr1 ,r2 を求めるために用いたデ
ータをそれぞれ図9、図10に示した。図9から(1
3)の分率が高いことがわかる。図10から独立したH
OCH2 CH2 OHの多いこと、すなわち
【化41】 の構造が少ないことがわかる。
【0097】
【表6】
【0098】
【表7】
【0099】実施例9 実施例1と同様に重合を行ない(スケール3倍で実施)
重合時間(減圧を開始してから)2時間40分で重合を
停止した。抜出性は良好であった。ηinh1.32であ
った。このポリマー0.1oz射出成形機金型A,Bおよ
び0.3oz射出成形機金型Cで成形した。それぞれの値
を表7に示す。
【0100】さらに比較例1〜6のポリマーについても
同様に0.1oz射出成形機金型Bおよび0.3oz射出成
形機金型Cで成形した。
【0101】実施例10 20lオートクレーブを用い実施例1の50倍スケール
で重合を行ない、その結果を表7に示す。 実施例11 実施例6と同一組成で重合時間を2時間30分行った。
ηinh は1.25,r1 =0.78,r2 =0.80で
あった。このポリマーを0.1oz射出成形機(金型A)
で成形したところ、引張強度1,610kg/cm 2 、破断
伸度5.0%であった。
【0102】
【表8】 成形機の種類をかえたり、金型の種類をかえると力学特
性の絶対値が大きく変化(特に強度)するが、各種ポリ
マー間の相対比較は充分可能であり、本願発明のもの
は、比較例のものに比べて良好な物性を示すことにかわ
りはない。
【0103】
【発明の効果】本発明の液晶性ポリエステルはシークェ
ンスがより交互的に制御されているので同一組成、組成
比の従来のポリエステルに比べ、力学特性、熱特性に優
れている。すなわち、高強度、高伸度であり、成形温度
が低いほど、良好な物性を示す。また結晶性が高いので
融点が明確で、ガラスファイバー等の強化効果も発現す
る。またHDTが高く、しかも耐熱性の割りに低温で流
動するので重合温度を低くできるという利点を有する。
また、重合温度を低くしても重合槽の底から抜き出せる
という利点がある。
【0104】また、本発明の液晶性ポリエステルは溶融
相において光学的異方性を示す。特に溶融を始めると溶
融開始温度から少し温度を高めるだけで固体部分がほと
んどなくなり、ほとんどすべてが1液晶状態をとりうる
ので、流動性が従来のポリエステルよりもはるかによい
という特徴を有する。本発明の液晶性ポリエステルは、
特に高流動であることにより精密成形品等に適してい
る。例えば自動車用部品、コンパクトディスクやフロッ
ピーディスク等情報材料の部品、コネクター、ICソケ
ット等の電子材料の部品等に使用されうる。また、フィ
ルムや繊維としても使用され、特にフィルムには最適で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のr1 を求めるための 1H−NMRチ
ャート図である。
【図2】実施例1のr2 を求めるためのアミン分解後の
1H−NMRチャート図である。
【図3】実施例2のr1 を求めるための 1H−NMRチ
ャート図である。
【図4】実施例2のr2 を求めるためのアミン分解後の
1H−NMRチャート図である。
【図5】実施例1、並びに比較例2,4及び5で得られ
たポリマーのバイブロンデータを示す図である。図中1
は、実施例1、2は比較例2、3は比較例4、4は比較
例5を示す。
【図6】実施例1,2,3及び4で得られたポリマーの
バイブロンデータを示す図である。図中1は実施例1、
2は実施例2、3は実施例3、4は実施例4を示す。
【図7】実施例1で得られたポリマーのDSCチャート
図である。図中(A)は降温時、(B)は昇温時のもの
である。
【図8】実施例1のX線散乱パターンを示す図である。
図中(A)は子午線方向、(B)は赤道方向である。
【図9】比較例2のr1 を求めるための 1H−NMRの
チャート図である。
【図10】比較例2のr2 を求めるための 1H−NMR
チャート図である。
フロントページの続き (72)発明者 田中 秀明 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地 三菱化成株式会社総合研究所内 (56)参考文献 特開 平3−59024(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/60

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(1)で表わされるジカルボン酸
    単位、 【化1】 (式中、R1は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素
    基を示す。)下記式(2)で表わされるジオール単位、 −OCH2CH2O− (2) および下記式(3)で表わされるp−オキシ安息香酸単
    位 【化2】 から成るポリエステルであって、(i)上記(1)、
    (2)、(3)の各々のモル数〔1〕、〔2〕、〔3〕
    が下記式(I) 【数1】 を満足し、(ii)p−オキシ安息香酸単位のうち、
    (a)その−O−側の隣に更にp−オキシ安息香酸単位
    が存在するp−オキシ安息香酸単位を(3−1)、 【化3】 【化4】 とすると、(3−1)、(3−4)のモル数を、それぞ
    れ〔3−1〕、〔3−4〕としたとき、下記式(II)、
    (III)、 【数2】 により定められるr1、r2の少なくとも1つが 0≦r1≦0.88 あるいは 0≦r2≦0.88 を満足し、かつ (iii)p−クロロフェノール/o−ジクロロベンゼン中
    (30℃、濃度:0.5g/dl)で測定した溶液粘度
    が0.4dl/g以上であることを特徴とする液晶性ポ
    リエステル。
  2. 【請求項2】 r1およびr2が同時に 0≦r1≦0.88 0≦r2≦0.88 の範囲であることを特徴とする請求項第1項記載の液晶
    性ポリエステル。
  3. 【請求項3】 (1)式の単位および(3)式の単位の
    モル比が 【数3】 の範囲であることを特徴とする請求項第1項記載の液晶
    性ポリエステル。
  4. 【請求項4】 出発原料として下記式(6−1)および
    /または(7−1)で表わされる化合物、 【化5】 および下記式(8)で表わされるジカルボン酸、 【化6】 (式中、R1 は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素
    基を示す)および必要により無水酢酸を反応させ溶融状
    態で重縮合することを特徴とする液晶性ポリエステルの
    製造方法。
  5. 【請求項5】 出発原料として更に下記式(9−1)お
    よび/または(10−1)で表わされる化合物、 【化7】 を加えることを特徴とする請求項第4項記載の液晶性ポ
    リエステル製造方法。
  6. 【請求項6】 重縮合温度が265〜280℃である請
    求項4又は5に記載の液晶性ポリエステルの製造方法。
JP03073366A 1990-04-06 1991-04-05 液晶性ポリエステルおよびその製造方法 Expired - Lifetime JP3114223B2 (ja)

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