JP2992119B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はトロイダル型無段変速
機、更に詳しくは、同一軸上に対向配置された一対の入
出力ディスクと、該入出力ディスク間に配置されて両デ
ィスクに接して回転し、且つ傾動可能とされたローラと
を有し、該ローラを傾動させて上記入力ディスクの回転
を無段階に変速して出力ディスクに伝達するように構成
されたトロイダル型無段変速機に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車に搭載される変速機として、エン
ジンの回転を無段階に変速して出力軸に伝達可能なトロ
イダル型無段変速機が知られており、このトロイダル型
無段変速機は、概ね、エンジン出力が入力されて回転す
る入力ディスクと、該入力ディスクと同軸上に対向配置
された出力ディスクと、該出力ディスクと上記入力ディ
スクとの間に配置されこれらの両ディスクに接して回転
し、且つ傾動可能とさた複数のローラとを有し、該ロー
ラを傾動させてその傾動角度に応じて入力ディスクの回
転を無段階に変速して出力ディスクに伝達するように構
成さたものである。

【０００３】そして、上記各ローラを、それぞれ同期し
て傾動させるための手段としての油圧装置が設けられて
おり、例えば実開昭６２−２０２５６４号公報において
は、入出力ディスク間に配置されたローラを回転自在に
支承し、且つ変速ケーシングに支持されたローラ支持部
材と一体にピストンを設け、このピストンに油圧を作用
させて該ピストンと一体のローラ支持部材を軸方向に移
動させることにより、該ローラ支持部材に支承されたロ
ーラを傾動させるようになっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
なトロイダル型無段変速機において、運転状態に応じて
エンジン出力を適切に変速して出力ディスクに伝達する
ためには、入出力ディスク間に配置されたローラを支持
するローラ支持部材の軸方向への移動量を精度良く制御
することが要求され、このため、上記ローラ支持部とこ
れを軸方向に移動させるピストンとの間に軸方向のガタ
ツキがあると、エンジン出力を運転状態に応じて適切に
変速することが困難となる。これに対しては、上記従来
技術のように、ローラ支持部材とピストンとを一体化す
ることにより、これら両部材間の軸方向のガタツキを解
消することができるのであるが、これらの両部材はそれ
ぞれ別部材とされ所定の固定手段により一体的に取り付
けられており、このため、両部材の加工精度によっては
両者の取付状態が正規の状態に比べて変化する場合があ
り、この場合には、これら両部材を変速機ケーシングに
組み付ける際に、該ケーシングとの干渉が問題となり、
両部材の動きが阻害され、あるいはまた両部材の変速機
ケーシングへの組み付けが困難となる虞がある。

【０００５】本発明は、トロイダル型無段変速機におけ
る上記の実情に対処するもので、入出力ディスク間に配
置されるローラを支持するローラ支持部材と、該支持部
材を軸方向に移動させることによりローラを傾動させる
ピストンとの間の軸方向のガタツキを解消し、しかも上
記ローラ支持部材とピストンの変速機ケーシングに対す
る組み付け誤差を吸収してこれら両部材を確実且つ円滑
に移動させることのできるトロイダル型無段変速機を提
供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明は次のように構成したことを特徴とする。

【０００７】まず、本願の請求項１に係る発明（以下、
第１発明という）は、同一軸上に対向配置された一対の
入出力ディスクと、該入出力ディスク間に配置されて両
ディスクに接して回転し、且つ傾動可能とされて傾動角
度に応じて入力ディスクの回転を無段階に変速して出力
ディスクに伝達するローラと、該ローラを回転自在に支
持し、且つ軸方向に移動可能とされてその移動により上
記ローラを傾動させるローラ支持部材とを有するトロイ
ダル型無段変速機において、上記ローラ支持部材に設け
られた軸部に間隔を隔てて固設された一対の可動フラン
ジと、これらの可動フランジ間に位置するように変速機
ケーシング側に固設された固定フランジとを有し、該固
定フランジと上記一対の可動フランジとの間に位置する
ように上記ローラ支持部材の軸部の回りに一対のシリン
ダを設けると共に、これらのシリンダにおけるピストン
と固定フランジとの間の各油圧室に油圧を導入すること
により、各ピストンを上記一対の可動フランジにそれぞ
れ押し付けながらローラ支持部材を軸方向に移動させる
油圧供給手段を設け、且つ上記ローラ支持部材の軸部と
一対のシリンダとの間に所定の間隙を形成したことを特
徴とする。

【０００８】また、本願の請求項２に係る発明（以下、
第２発明という）は、上記第１発明と同様のトロイダル
型無段変速機において、ローラ支持部材に設けられた軸
部に間隔を隔てて固設された一対の可動フランジと、こ
れらの可動フランジ間に位置するように変速機ケーシン
グ側に固設された固定フランジと、該固定フランジにお
ける上記ローラ支持部材の軸部外周に位置する内周部に
一体的に設けられて該ローラ支持部材の軸部と所定の間
隙を隔ててその軸方向に延長された延長部とを有し、上
記固定フランジと一対の可動フランジとの間に位置する
ように上記ローラ支持部材の軸部の回りに一対のシリン
ダを設けると共に、これらのシリンダ内に、外周部が上
記変速機ケーシング側に支持され、且つ内周部が上記延
長部に支持されたピストンをそれぞれ設け、且つ各ピス
トンと上記固定フランジとの間の油圧室に油圧を導入す
ることにより各ピストンを一対の可動フランジにそれぞ
れ押し付けながらローラ支持部材を軸方向に移動させる
油圧供給手段を設けたことを特徴とする。

【０００９】更に、本願の請求項３に係る発明（以下、
第３発明という）は、上記第１、第２発明と同様のトロ
イダル型無段変速機において、ローラ支持部材に設けら
れた軸部に間隔を隔てて固設された一対の可動フランジ
と、これらの可動フランジ間に位置するように変速機ケ
ーシング側に固設された固定フランジとを有し、該固定
フランジと上記一対の可動フランジとの間に位置するよ
うに上記ローラ支持部材の軸部の回りに一対のシリンダ
を設けると共に、一方のシリンダ内に設けられて外周部
が変速機ケーシング側に支持され、且つ上記ローラ支持
部材の軸部に所定の間隙を隔てて外嵌された内周部が上
記固定フランジを越えて他方のシリンダ内に延長された
第１ピストンと、他方のシリンダ内に設けられて外周部
が上記変速機ケーシング側に支持され、且つ内周部が上
記第１ピストンにおける延長部に外嵌された第２ピスト
ンと、上記第１、第２ピストンと固定フランジとの間の
各油圧室に油圧を導入することにより各ピストンを一対
の可動フランジにそれぞれ押し付けながらローラ支持部
材を軸方向に移動させる油圧供給手段とを設けたことを
特徴とする。

【００１０】

【作用】第１ないし第３発明のいずれにおいても、変速
機ケーシング側に固設された固定フランジとローラ支持
部材の軸部に固設された一対の可動フランジとの間に設
けられた一対のシリンダにおける各ピストンが、上記一
対の可動フランジにそれぞれ押し付けられ、この状態
で、油圧室内に油圧が供給されることによりローラ支持
部材が軸方向に移動されることになって、各ピストンと
ローラ支持部材の軸部との間に軸方向のガタツキを発生
させることなくこれら両部材が一体的に移動され、これ
により、運転状態に応じてエンジン出力を適切に変速し
て出力ディスクに伝達することが可能となる。特に、第
１発明によれば、上記ローラ支持部材の軸部と一対のシ
リンダとの間に所定の間隙が形成されているので、該シ
リンダにおける各ピストンおよびローラ支持部材の変速
機ケーシングに対する組み付け誤差が吸収されることに
なって、これらの部材が干渉することなく円滑に移動さ
れることになる。

【００１１】また、第２発明によれば、各ピストンの内
周部が、固定フランジの内周部に形成されてローラ支持
部材の軸部に沿ってその軸方向に延長された延長部に支
持され、この延長部とローラ支持部材の軸部との間に所
定の間隙が形成されていることにより、例えば、ローラ
支持部材の軸部が変速にケーシングに対して傾斜して組
み付けられた場合においても、この傾斜が各ピストンに
影響することがなく、これにより、各ピストンの移動が
円滑に行われることになる。

【００１２】更に、第３発明によれば、一方のシリンダ
における第１ピストンの内周部が、ローラ支持部材の軸
部に所定の間隙を隔てて外嵌され、且つ固定フランジを
越えて他方のシリンダ内に延長され、この延長部に他方
のシリンダにおける第２ピストンの内周部が支持されて
いるので、上記第２発明と同様に、ローラ支持部材の軸
部が変速にケーシングに対して傾斜して組み付けられた
場合においても、この傾斜が各ピストンに影響すること
がなく、これにより、各ピストンの移動が円滑に行われ
ることになると共に、第２発明のように変速機ケーシン
グ側に固設された固定フランジローラ支持部材の軸方向
に延長部を設けて該延長部に両ピストンの内周部をそれ
ぞれ支持する場合に比べて変速ケーシングの加工を容易
に行えることになる。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。

【００１４】図１は、本発明に係るトロイダル型無段変
速機を備えた車両の動力伝達系を示す全体概略構成図で
あって、この車両１は、エンジン２の出力軸２ａに連結
されてトルク増大作用を行うトルクコンバータ３と、こ
のトルクコンバータ３の出力が伝達される減速装置とし
ての遊星歯車機構１０と、上記エンジン２の回転が入力
されてその回転を無段階に変速可能なトロイダル型無段
変速機３０とを有し、上記遊星歯車機構１０もしくはト
ロイダル型無段変速機３０の出力、あるいはその両者の
出力が出力軸４に伝達され、これにより、左右の後輪
（図示せず）が回転駆動されるようになっている。

【００１５】上記トルクコンバータ３は、エンジン２の
出力軸２ａに連結されたケーシング３ａと一体のポンプ
３ｂと、このポンプ３ｂに対向配置されて該ポンプ３ｂ
により作動油を介して駆動されるタービン３ｃと、該タ
ービン３ｃと上記ポンプ３ｂとの間に介設されてトルク
増大作用を行うステータ３ｄとを有し、上記タービン３
ｃと一体回転するタービンシャフト３ｅと、該タービン
シャフト３ｅに外嵌され、且つ一端に上記ステータ３ｄ
がワンウェイクラッチ３ｆを介して連結されて変速機ケ
ーシング５に一体とされた第１中空シャフト３ｇとが上
記遊星歯車機構１０に連結されている。更に、上記第１
中空シャフト３ｇに外嵌され、且つ一端がケーシング３
ａに連結された第２中空シャフト３ｈの軸端部には、オ
イルポンプ６が設けられており、このオイルポンプ６が
ケーシング３ａを介して上記エンジン２により駆動され
るようになっている。

【００１６】そして、上記遊星歯車機構１０は、上記タ
ービンシャフト３ｅと同軸上に直列配置された第１遊星
歯車機構１１および第２遊星歯車機構１２を有し、エン
ジン２側に配置された第１遊星歯車機構１１が後退用と
され、また、第２遊星歯車機構１２が前進用とされてお
り、上記第１遊星歯車機構１１は、シングルピニオン式
とされて、上記タービンシャフト３ｅに結合されたサン
ギヤ１３を有し、該サンギヤ１３に噛合するピニオン１
４を回転自在に支持するキャリア１５が上記第１中空シ
ャフト３ｇに結合され（変速機ケーシング５に固定）、
更に、上記ピニオン１４に噛合するリングギヤ１６がリ
バースクラッチ１７を介してタービンシャフト３ｅと同
一軸線上に配置された上記出力軸４に連結されている。

【００１７】一方、上記第２遊星歯車機構１２は、ダブ
ルピニオン式とされ、インナピニオン１８が上記第１遊
星歯車機構のピニオン１４と一体化されていると共に、
該第１遊星歯車機構１１のサンギヤ１３が第２遊星歯車
機構１２のサンギヤに共用されている。また、上記イン
ナピニオン１８とアウタピニオン１９とを固定支持する
キャリア２０は、上記第１遊星歯車機構１１のキャリア
１５と一体化されて第１中空シャフト３ｇを介して変速
機ケーシング５に固定されている。更に、この第２遊星
歯車機構１２を構成するリングギヤ２１は、フォワード
クラッチ２２およびワンウェイクラッチ２３を介して上
記出力軸４に連結されており、上記リバースクラッチ１
７とフォワードクラッチ２２とは、前後進切換装置を構
成するものであり、リバースクラッチ１７が締結された
ときには、タービンシャフト３ｅの出力が第１遊星歯車
機構１１を介して上記出力軸４に伝達され、これによ
り、左右の後輪が後退方向に回転駆動されるようになっ
ており、また、フォワードクラッチ２２が締結されたと
きには、上記タービンシャフト３ｅの出力が第２遊星歯
車機構１２を介して上記出力軸４に伝達され、これによ
り、左右の後輪が前進方向に回転駆動されるようになっ
ている。

【００１８】次に、上記トロイダル型無段変速機３０の
構成について、更に詳しく説明すると、このトロイダル
型無段変速機３０は、上記出力軸４上にそれぞれ配置さ
れた第１変速ユニット３１と第２変速ユニット３２とを
有し、これらの各変速ユニット３１，３２は同様の構成
とされており、上記出力軸４上に該軸に対して回転自在
に設けられた入力ディスク３３，３３と、これらの入力
ディスク３３，３３に対向配置されて出力軸４と一体回
転する出力ディスク３４，３４と、各入出力ディスク３
３，３４間にそれぞれ配置されて両ディスクに接して回
転し、且つ傾動可能とされた各一対のローラ３５，３５
とを有する。

【００１９】また、上記第１、第２変速ユニット３１，
３２における各入力ディスク３３，３３間には、これら
の入力ディスク３３，３３に対して相対回転可能とされ
た中間ディスク３６が配置され、この中間ディスク３６
と各入力ディスク３３，３３との間に複数のローディン
グカム３７…３７がそれぞれ介装されており、上記エン
ジン２より各入力ディスク３３，３３に入力される入力
トルクが大きくなる程、各カム３７による各入力ディス
ク３３に対する押付力が増大するようになっている。

【００２０】そして、上記中間ディスク３６を介して各
入力ディスク３３にエンジン２の出力を入力するための
入力軸３８が出力軸４に平行に配置されており、この入
力軸３８の一端には第１ギヤ３９が一体的に取り付けら
れており、該第１ギヤ３９がアイドルギヤ４０に噛合さ
れ、更に、このアイドルギヤ４０が、動力伝達経路切換
クラッチ４１を介して上記第２中空シャフト３ｈに接続
される出力ギヤ４２に噛合されていると共に、上記入力
軸３８の他端には、上記中間ディスク３６と一体的に設
けられた入力ギヤ４３に噛合する第２ギヤ４４が一体的
に設けられている。これにより、上記動力伝達経路切換
クラッチ４１が締結された場合には、エンジン２の出力
が入力軸３８を介してトロイダル型無段変速機３０にお
ける第１、第２変速ユニット３１，３２を構成する各入
力ディスク３３，３３に入力され、図１に示すように、
各ローラ３５，３５の傾動角度に応じた所定の変速比
（減速比）で各入力ディスク３３，３３の回転が変速さ
れて各出力ディスク３４，３４に伝達されるようになっ
ている。

【００２１】なお、本実施例においては、上記遊星歯車
機構１０におけるフォワードクラッチ２２を締結し、且
つリバースクラッチ１７を解放すると共に、上記動力伝
達経路切換クラッチ４１を締結した場合には、エンジン
２の出力が遊星歯車機構１０およびトロイダル型無段変
速機３０を介して出力軸４に出力されることになる。こ
の場合、ワンウェイクラッチ２３は、エンジン２の回転
が後輪側より大きいときにロック状態とされ、これによ
り、発進時等のように大きなトルクが要求される場合に
は、エンジン２の出力がトルクコンバータ３により増大
されて出力軸４に出力されることになる。

【００２２】また、定常走行時には、上記ワンウェイク
ラッチ２３がフリー状態とされて、エンジン２の出力が
上記トロイダル型無段変速機３０により走行状態に応じ
て変速されて出力軸４に出力されることになる。

【００２３】更に、後退時には、上記リバースクラッチ
１７が締結され、且つフォワードクラッチ２２が解放さ
れると共に、動力伝達経路切換クラッチ４１が解放され
ることになって、エンジン２の出力が遊星歯車機構１０
により減速されて出力軸４に出力されるようになってい
る。

【００２４】ここで、上記トロイダル型無段変速機３０
を構成する第１、第２変速ユニット３１，３２における
各一対のローラ３５，３５をそれぞれ傾動させるための
油圧機構について説明する。なお、第１変速ユニット３
１側と第２変速ユニット３２側とは同様の構成とされて
おり、従って、第２変速ユニット３２側の油圧機構につ
いて説明し、第１変速ユニット側については説明を省略
する。即ち、図２，３に示すように、上記第２変速ユニ
ット３２には、各ローラ３５をそれぞれ回転自在に支持
する各ローラ３５毎のローラ支持部材としての一対の第
１、第２トラニオン４５ａ，４５ｂが設けられており、
これらのトラニオン４５ａ，４５ｂに偏心軸４６ａ，４
６ｂを介して各ローラ３５がそれぞれ回転自在に支持さ
れていると共に、各トラニオン４５ａ，４５ｂには、上
記後輪駆動軸４と直交する方向に延長された軸部材４７
ａ，４７ｂがそれぞれ一体的に取り付けられている。

【００２５】更に、変速機ケーシング５および該ケーシ
ング５と一体の仕切壁部５ａには、一対の支持部材４
８，４９がそれぞれ取り付けられており、これらの支持
部材４８，４９に上記第１、第２トラニオン４５ａ，４
５ｂの上下両端部がそれぞれ球面軸受５０…５０により
回動自在に支持されていると共に、上記各軸部材４７
ａ，４７ｂの下端が変速機ケーシング５側にベアリング
５１，５１を介して回転自在に支持されている。

【００２６】そして、上記仕切壁部５ａには、各トラニ
オン４５ａ，４５ｂ毎の油圧シリンダ５２，５２がそれ
ぞれ設けられており、各油圧シリンダ５２は、仕切壁部
５ａと一体の固定フランジ５ｂにより一対の油圧室５３
ａ、５３ｂにそれぞれ分割されていると共に、上記固定
フランジ５ｂの内周部には、第１、第２トラニオン４５
ａ，４５ｂと一体の各軸部材４７ａ，４７ｂと所定の間
隙を隔てて該軸部材４７ａ，４７ｂの軸方向に延長され
た延長部５ｃが形成されている。また、上記各油圧室５
３ａ内には、ベアリング５４（図３参照）を介して各ト
ラニオン４５ａ，４５ｂの軸端部に一体的に形成された
可動フランジ５５，５５を押圧するピストン５６ａが内
装されており、他方の油圧室５３ｂ内には、ベアリング
５４（図３参照）を介して各軸部材４７ａ，４７ｂの軸
端部に一体的に取り付けられた可動フランジ５７，５７
を押圧するピストン５６ｂが内装されている。従って、
上記油圧室５３ａ，５３ｂのいずれか一方に油圧が導入
された場合には、ピストン５６ａもしくはピストン５６
ｂにより各トラニオン４５ａ，４５ｂもしくは各軸部材
４７ａ，４７ｂが軸方向、即ち、図２の上下方向に移動
され、これにより、各トラニオン４５ａ，４５ｂに回転
自在に支持された各ローラ３５の各入出力ディスク３
３，３４に対する接触点が変化し、各ローラ３５が傾動
され、これに伴って、各トラニオン４５ａ，４５ｂが回
動するようになっている。

【００２７】上記の構成によれば、変速機ケーシング５
と一体の仕切壁部５ａに設けられた固定フランジ５ｂと
上記各可動フランジ５５，５７との間に設けられた一対
のシリンダ５２，５２における各ピストン５６ａ，５６
ｂが、上記各可動フランジ５５，５７にそれぞれ押し付
けられ、この状態で、油圧室５３ａ，５３ｂのいずれか
一方に油圧が供給されることにより第１、第２トラニオ
ン４５ａ，４５ｂが軸方向に移動されることになって、
各ピストン５６ａ，５６ｂと各トラニオン４５ａ，４５
ｂおよび各軸部材４７ａ，４７ｂとの間に軸方向のガタ
ツキを発生させることなくピストン５６ａ，５６ｂとト
ラニオン４５ａ，４５ｂとが一体的に移動され、これに
より、運転状態に応じてエンジン２の出力を適切に変速
して出力ディスク３４に伝達することが可能となる。

【００２８】更に、上記固定フランジ５ｂにおける延長
部５ｃと各トラニオン４５ａ，４５ｂと一体の軸部材４
７ａ，４７ｂとの間に所定の間隙が形成されていること
により、各トラニオン４５ａ，４５ｂないし各軸部材４
７ａ，４７ｂの変速ケーシング５に対する組み付け誤差
が吸収されることになって、該トラニオン４５ａ，４５
ｂないし軸部材４７ａ，４７ｂの移動を円滑に行い得る
ことになる。

【００２９】特に、各ピストン５６ａ，５６ｂの内周部
が、各軸部材４７ａ，４７ｂと所定の間隙を隔てて設け
られた上記延長部５ｃ支持されているので、これらの軸
部材４７ａ，４７ｂが変速にケーシング５に対して傾斜
して組み付けられた場合においても、この傾斜が各ピス
トン５６ａ，５６ｂに影響することがなく、これによ
り、各ピストン５６ａ，５６ｂの移動が円滑に行われる
ことになる。

【００３０】また、図４は、第３発明に係る実施例を示
すもので、この実施例においては、上記第１実施例と同
様に、ローラ８５が偏心軸９６を介してトラニオン９５
に回転自在に支持されていると共に、該トラニオン９５
には軸部材９７が一体的に取り付けられている。また、
変速機ケーシング５５と一体の仕切壁部５５ａに、上記
トラニオン９５ないし軸部材９７を移動させるための油
圧シリンダ１０２設けられており、この油圧シリンダ１
０２は、仕切壁部５５ａと一体の隔壁部５５ｂにより一
対の油圧室１０３ａ，１０３ｂに分割され、各油圧室１
０３ａ，１０３ｂ内にそれぞれピストン１０６ａ，１０
６ｂが内装されており、一方のピストン１０６ｂの内周
部が、上記軸部材９７と所定の間隙を隔てた状態で固定
フランジ５５ｂを越えて他方の油圧室１０３ａ側に延長
されており、この延長部１０６ｂ′に他方のピストン１
０６ａの内周部が支持されている。そして、上記トラニ
オン９５の軸端部に一体的に形成された可動フランジ１
０５がベアリング１０４を介して一方のピストン１０３
ａにより押圧され、また、上記軸部材９７の軸端部に一
体的に取り付けられた可動フランジ１０７がベアリング
１０４を介して他方のピストン１０３ｂにより押圧され
るようになっている。

【００３１】従って、上記油圧室１０３ａ，１０３ｂの
いずれか一方に油圧が導入された場合には、トラニオン
９５ないし軸部材９７が軸方向、即ち、図４の上下方向
に移動され、これにより、トラニオン９５に回転自在に
支持されたローラ８５が傾動され、これに伴って、トラ
ニオン９５が回動するようになっている。

【００３２】上記の構成によれば、変速機ケーシング５
５と一体の仕切壁部５５ａに設けられた固定フランジ５
５ｂと上記各可動フランジ１０５，１０７との間に設け
られた一対の油圧室１０３ａ，１０３ｂ内における各ピ
ストン１０６ａ，１０６ｂが、上記各可動フランジ１０
５，１０７にそれぞれ押し付けられ、この状態で、上記
油圧室１０３ａ，１０３ｂのいずれか一方に油圧が供給
されることによりトラニオン９５が軸方向に移動される
ことになって、各ピストン１０６ａ，１０６ｂとトラニ
オン９５および軸部材９７との間に軸方向のガタツキを
発生させることなくピストン１０６ａ，１０６ｂとトラ
ニオン９５とが一体的に移動され、これにより、運転状
態に応じてエンジン出力を適切に変速することが可能と
なる。

【００３３】更に、上記ピストン１０６ｂの延長部１０
６ｂ′と軸部材９７との間に所定の間隙が形成されてい
ることにより、該軸部材９７ないしトラニオン９５と各
ピストン１０６ａ，１０６ｂとの軸心のずれが吸収され
ると共に、これらの各部材の変速ケーシング５５に対す
る組み付け誤差が吸収されることになって、その移動を
円滑に行い得ることになる。

【００３４】また、上記軸部材９７が変速にケーシング
５５に対して傾斜して組み付けられた場合においても、
この傾斜が各ピストン１０６ａ，１０６ｂに影響するこ
とがなく、これにより、各ピストン１０６ａ，１０６ｂ
の移動が円滑に行われることになる。

【００３５】

【発明の効果】以上のように、第１ないし第３発明のい
ずれにおいても、変速機ケーシング側に固設された固定
フランジとローラ支持部材の軸部に固設された一対の可
動フランジとの間に設けられた一対のシリンダにおける
各ピストンが、上記一対の可動フランジにそれぞれ押し
付けられ、この状態で、油圧室内に油圧が供給されるこ
とによりローラ支持部材が軸方向に移動されることにな
って、各ピストンとローラ支持部材の軸部との間に軸方
向のガタツキを発生させることなくこれら両部材が一体
的に移動され、これにより、運転状態に応じてエンジン
出力を適切に変速して出力ディスクに伝達することがで
きる。特に、第１発明によれば、上記ローラ支持部材の
軸部と一対のシリンダとの間に所定の間隙が形成されて
いるので、該シリンダにおける各ピストンおよびローラ
支持部材の変速機ケーシングに対する組み付け誤差が吸
収されることになって、これらの部材が干渉することな
く円滑に移動されることになる。

【００３６】また、第２発明によれば、各ピストンの内
周部が、固定フランジの内周部に形成されてローラ支持
部材の軸部に沿ってその軸方向に延長された延長部に支
持され、この延長部とローラ支持部材の軸部との間に所
定の間隙が形成されていることにより、例えば、ローラ
支持部材の軸部が変速にケーシングに対して傾斜して組
み付けられた場合においても、この傾斜が各ピストンに
影響することがなく、これにより、各ピストンの移動が
円滑に行われることになる。

【００３７】更に、第３発明によれば、一方のシリンダ
における第１ピストンの内周部が、ローラ支持部材の軸
部に所定の間隙を隔てて外嵌され、且つ固定フランジを
越えて他方のシリンダ内に延長され、この延長部に他方
のシリンダにおける第２ピストンの内周部が支持されて
いるので、上記第２発明と同様に、ローラ支持部材の軸
部が変速にケーシングに対して傾斜して組み付けられた
場合においても、この傾斜が各ピストンに影響すること
がなく、これにより、各ピストンの移動が円滑に行われ
ることになると共に、第２発明のように変速機ケーシン
グに固設された固定フランジにローラ支持部材の軸方向
に延長部を設けて該延長部に両ピストンの内周部をそれ
ぞれ支持する場合に比べて変速ケーシングの加工を容易
に行えることになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に係るトロイダル型無段変速機を備え
た車両の動力伝達系を示す全体概略構成図。

【図２】 図１におけるＡーＡ線よりみたトロイダル型
無段変速機の要部拡大断面図。

【図３】 トロイダル型無段変速機における油圧機構の
要部拡大断面図。

【図４】 トロイダル型無段変速機における油圧機構の
他の実施例を示す要部拡大断面図。

【符号の説明】 ５ｂ，５５ｂ 固定フランジ ３０ トロイダル型無
段変速機 ３３ 入力ディスク ３４ 出力ディスク ３５，８５ ローラ ４５ａ，４５ｂ，９５ トラニオン ４７ａ，４７ｂ，９７ 軸部材 ５２，１０２ 油圧シリンダ ５３ａ，５３ｂ，１０３ａ，１０３ｂ 油圧室 ５６ａ，５６ｂ，１０６ａ，１０６ｂ ピストン ５５，５７，１０５，１０７ 可動フランジ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 延本 秀寿 広島県安芸郡府中町新地３番１号 マツ ダ株式会社内 (56)参考文献 特開 平２−283949（ＪＰ，Ａ) 実開 昭63−25865（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) F16H 15/38

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 同一軸上に対向配置された一対の入出力
   ディスクと、該入出力ディスク間に配置されて両ディス
   クに接して回転し、且つ傾動可能とされて傾動角度に応
   じて入力ディスクの回転を無段階に変速して出力ディス
   クに伝達するローラと、該ローラを回転自在に支持し、
   且つ軸方向に移動可能とされてその移動により上記ロー
   ラを傾動させるローラ支持部材とを有するトロイダル型
   無段変速機であって、上記ローラ支持部材に設けられた
   軸部に間隔を隔てて固設された一対の可動フランジと、
   これらの可動フランジ間に位置するように変速機ケーシ
   ング側に固設された固定フランジとを有し、該固定フラ
   ンジと上記一対の可動フランジとの間に位置するように
   上記ローラ支持部材の軸部の回りに一対のシリンダが設
   けられていると共に、これらのシリンダにおけるピスト
   ンと固定フランジとの間の各油圧室に油圧を導入するこ
   とにより、各ピストンを上記一対の可動フランジにそれ
   ぞれ押し付けながらローラ支持部材を軸方向に移動させ
   る油圧供給手段が設けられ、且つ上記ローラ支持部材の
   軸部と一対のシリンダとの間に所定の間隙が形成されて
   いることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
2. 【請求項２】 同一軸上に対向配置された一対の入出力
   ディスクと、該入出力ディスク間に配置されて両ディス
   クに接して回転し、且つ傾動可能とされて傾動角度に応
   じて入力ディスクの回転を無段階に変速して出力ディス
   クに伝達するローラと、該ローラを回転自在に支持し、
   且つ軸方向に移動可能とされてその移動により上記ロー
   ラを傾動させるローラ支持部材とを有するトロイダル型
   無段変速機であって、上記ローラ支持部材に設けられた
   軸部に間隔を隔てて固設された一対の可動フランジと、
   これらの可動フランジ間に位置するように変速機ケーシ
   ング側に固設された固定フランジと、該固定フランジに
   おける上記ローラ支持部材の軸部外周に位置する内周部
   に一体的に設けられて該ローラ支持部材の軸部と所定の
   間隙を隔ててその軸方向に延長された延長部とを有し、
   上記固定フランジと一対の可動フランジとの間に位置す
   るように上記ローラ支持部材の軸部の回りに一対のシリ
   ンダが設けられていると共に、これらのシリンダ内に、
   外周部が上記変速機ケーシング側に支持され、且つ内周
   部が上記延長部に支持されたピストンがそれぞれ設けら
   れ、且つ各ピストンと上記固定フランジとの間の油圧室
   に油圧を導入することにより各ピストンを一対の可動フ
   ランジにそれぞれ押し付けながらローラ支持部材を軸方
   向に移動させる油圧供給手段が設けられていることを特
   徴とするトロイダル型無段変速機。
3. 【請求項３】 同一軸上に対向配置された一対の入出力
   ディスクと、該入出力ディスク間に配置されて両ディス
   クに接して回転し、且つ傾動可能とされて傾動角度に応
   じて入力ディスクの回転を無段階に変速して出力ディス
   クに伝達するローラと、該ローラを回転自在に支持し、
   且つ軸方向に移動可能とされてその移動により上記ロー
   ラを傾動させるローラ支持部材とを有するトロイダル型
   無段変速機であって、上記ローラ支持部材に設けられた
   軸部に間隔を隔てて固設された一対の可動フランジと、
   これらの可動フランジ間に位置するように変速機ケーシ
   ング側に固設された固定フランジとを有し、該固定フラ
   ンジと上記一対の可動フランジとの間に位置するように
   上記ローラ支持部材の軸部の回りに一対のシリンダが設
   けられていると共に、一方のシリンダ内に設けられて外
   周部が変速機ケーシング側に支持され、且つ上記ローラ
   支持部材の軸部に所定の間隙を隔てて外嵌された内周部
   が上記固定フランジを越えて他方のシリンダ内に延長さ
   れた第１ピストンと、他方のシリンダ内に設けられて外
   周部が上記変速機ケーシング側に支持され、且つ内周部
   が上記第１ピストンにおける延長部に外嵌された第２ピ
   ストンと、上記第１、第２ピストンと固定フランジとの
   間の各油圧室に油圧を導入することにより各ピストンを
   一対の可動フランジにそれぞれ押し付けながらローラ支
   持部材を軸方向に移動させる油圧供給手段とが設けられ
   ていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。