JP2969700B2 - 表面処理した摺動又は転がり部材及び転がり軸受 - Google Patents

表面処理した摺動又は転がり部材及び転がり軸受

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  • Sliding-Contact Bearings (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、互いに接触して摺動又は転がり運動する二
つの部材相互の表面間における摩擦,摩耗の低減を図
り、ひいては耐荷重,耐焼付き性の向上を図るための表
面処理した摺動又は転がり部材と、その転がり部材を使
用した転がり軸受に関する。
〔従来の技術〕
普通の軸受潤滑の場合、接触する金属二面間の摩擦係
数は、用いた潤滑油の絶対粘度,軸受荷重,回転数に関
係して変動する。すなわち、摩擦面間に厚い油膜層が形
成される完全潤滑状態では金属面間の接触はほとんど起
こらず摩擦係数は極めて小さい。しかし、一部金属−金
属接触を起こしている混合潤滑、或いは潤滑油膜が破れ
て金属−金属接触を起こす環境潤滑の状態になると、潤
滑面の焼付き等の損傷が生じる虞がある。そこで、これ
を防止するため、極圧添加剤,摩耗防止剤等の添加剤を
潤滑油中に加えることが行われている。
ところで、金属−金属二面の接触部は高温・高面圧と
なり、反応性の高い状態にある。すると、そこに供給さ
れた潤滑剤中に含まれた添加剤成分(例えば塩素,イオ
ウ,リンを含む化合物で、塩素化パラフィン,ジベンジ
ルサルファイド,トリクレジルホスフェート等の有機化
合物)が軸受金属と容易に反応する。その反応の結果、
金属−金属二面の接触部に、金属塩化物、金属イオウ化
合物、金属リン化合物等が生成する。この金属化合物が
二つの金属部材の接触面での焼付きや摩耗を防止する。
しかしながら、二つの金属部材の接触面と前記添加剤
との反応開始までにはかなりの時間を必要とするため、
添加剤を加えても即効性に欠ける。
そこで従来、摺動部材又は転がり部材の表面に、上記
添加剤として用いられる化合物で予め部材の表面処理を
施しておくことが、例えばトリクレジルホスフェート
(TCP)を代表として、数例試みられている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、このような添加剤化合物で予め摺動又
は転がり部材に表面処理を施しておくことの効果につい
ては、未だに定説はなく、評価はまちまちである。
特に、例えば運転中に潤滑油の供給がしばしば中断さ
れるというような過酷な条件下における効果については
又く検討されていなかった。
すなわち、前記従来の方法で接触二面間に作られた化
合物の表面処理層の厚みは、X線光電子分光分析(XPS
分析、後述)で0.05μm未満である。本発明者は、この
ような薄い表面処理層による軸受の潤滑特性の改善効果
について、超高速四球試験を実施して検討した。この試
験は、ASTM D−2783に準じた極圧性試験であり、試験
機の立軸回転数は前記ASTMの場合1770rpmであるのに対
して、20000rpmまで可能なものである。
上記試験の結果、その程度の厚みでは、軸受潤滑特性
の改善、特に潤滑油供給の中断というような過酷な条件
下での改善にはつながらないことが明らかになった。
又、前記有機系の添加剤を利用した表面処理に代え
て、リン酸亜鉛やリン酸マンガン等の無機化合物による
接触二面間の表面処理についても検討したが、その場合
は軸受金属表面に腐蝕を引き起こすという問題がある。
更には、表面処理層の厚みが0.5μmを越える厚さとな
り、これに超高速四球試験を実施して検討したところ、
やはり軸受潤滑特性の改善にはつながらないことが判明
した。
このように、従来は接触二面の表面に形成された表面
処理層の効果的な厚みが十分に明確になってはおらず、
結果的に上記表面処理による摺動又は転がり部材の潤滑
特性の十分な向上が果たされていないという問題点があ
った。
そこで本発明は、上記従来の問題点に着目してなされ
たものであり、その目的とするところは、効果的な厚さ
の表面処理層を形成することにより、低摩擦,低摩耗,
耐荷重性,耐焼付き性を十分に向上させた摺動又は転が
り部材及び転がり軸受を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、本発明の摺動又は転がり部
材は、少なくも摺動面または転がり面をなす金属表面
を、有機リン化合物、有機イオウ化合物、有機塩素化合
物、および有機金属化合物のうち少なくとも一種と化学
結合反応させて、0.05〜0.5μmの厚さの化合物反応膜
層を、前記摺動面の表面下または前記転がり面の表面下
に形成した ここで化合物反応膜層とは、化学的に活性な有機化合
物(例えば、有機イオウ化合物,有機リン化合物,有機
塩素化合物,有機金属化合物)と摺動又は転がり部材と
の間の化学係合反応によってそれら部材の表面下に形成
され、バルクとは異なった性質を持つ金属化合物からな
る層を意味する。摺動又は転がり部材をこの有機化合物
の少なくとも一種と反応させることにより、部材表面下
に例えば、金属リン化合物,金属イオウ化合物,金属塩
素化合物の少なくとも一種が形成される。この金属化合
物が化合物反応膜層に相当する。
即ち、摺動又は転がり部材と有機リン化合物との反応
によって、この反応に対応する有機リン化合物−反応膜
層が形成される。有機イオウ化合物との反応によって対
応する有機イオウ化合物−反応膜層、有機塩素化合物と
の反応によって対応する有機塩素化合物−反応膜層、及
び有機金属化合物との反応によって有機金属化合物−反
応膜層が摺動又は転がり部材表面に形成される。この化
合物反応膜層は、摺動又は転がり部材が有機リン化合
物,有機イオウ化合物,有機塩素化合物,有機金属化合
物の少なくとも一種以上と反応することにより形成され
た有機リン化合物−反応膜層,有機イオウ化合物−反応
膜層、有機塩素化合物−反応膜層,有機金属化合物−反
応膜層の少なくとも一種からなる。特に、有機リン化合
物と有機イオウ化合物と混合物と反応することにより形
成された反応膜層であることがより望ましい。
有機リン化合物−反応膜層としては、亜リン酸エステ
ル類,正リン酸エステル類,酸性リン酸エステル類の少
なくとも一種と反応することにより形成された反応膜層
がある。
また、有機イオウ化合物−反応膜層としては、硫化油
脂類,硫化オレフィン類,メルカプタン類,サルファイ
ド類,スルホキシド類,スルホン類の少なくとも一種と
反応することにより形成されたの反応膜層がある。
さらに、有機塩素化合物−反応膜層としては、塩素化
パラフィン類及び/又は塩素化油脂類と反応することに
より形成された反応膜層がある。
またさらに、有機金属化合物−反応膜層としては、金
属ジヒドロカルビルジチオフォスフェート類,金属ジヒ
ドロカルビルジチカーバメート類,ナフテン酸金属塩酸
の少なくとも一種と反応することにより形成された反応
膜層がある。
そして、本発明の転がり軸受は、前記各種の化合物反
応膜層を有する転がり部材を保持器,転動輪及び転動体
の少なくとも一つに適用したことを内容とするものであ
る。
〔作用〕
接触する二部材の表面の少なくとも一方を、有機リン
化合物、有機イオウ化合物、有機塩素化合物、および有
機金属化合物のうち少なくとも一種で化学処理して、当
該部材の表面から内部に向かって(本明細書では、「表
面下」と記述する)0.05〜0.0μmの厚さに化合物反応
膜層を形成することにより、摺動又は転がり部材の摺動
面又は転がり面を低摩擦,低摩耗として耐荷重性,耐焼
付き性を十分に向上させることができた。しかも、表面
下に形成した当該化合物反応膜層は剥離するおそれがな
く、且つ、部材の外形寸報を殆ど変化させないから、転
がり軸受に適用した場合に軸受スキマの変化や軸又はハ
ウジングとの嵌合代の変化に与える影響を極めて小さ
い。
以下に、詳説する。
この化合物反応膜層の厚さは、X線光電子分光分析機
(XPS)を用いた測定されるた。これは試料表面にX線
を照射し、試料の最外表面(約数Å)より放出される光
電子のエネルギー解析によって試料表面の元素の情報
(定性,定量)及び結合状態を得るが、更にアルゴン
(Ar)イオン銃を用いて試料表面をスパッタしながら測
定を行うことにより、元素の深さ方向(即ち試料表面
下)の分布状態の解析を可能としたものである。
第1図は、例えば有機リン化合物(トリデシルアッシ
ドフォスフェート)によって試料表面下に得られた化合
物反応膜層の厚み測定の一例を示すものである。PXSを
用いて、試料のデプスプロファイルをとり、化合物反応
膜層中のリン光電子強度が変化しなくなる直前を(図で
はAr +エッチング時間27分)、層の厚みと定義する。こ
の場合は、エッチング速度3nm/minで、厚みは27×3≒
0.08μmとなる。
上記のように定義した化合物反応膜層の厚みの制御
は、後述する化合物の種類に応じて溶液中のその化合物
の濃度と、試料である摺動又は転がり部材との反応温
度、反応時間とを調整することにより行うことができ
る。
前記化合物反応膜層は、摺動又は転がり受材と有機リ
ン化合物,有機イオウ化合物,有機塩素化合物,有機金
属化合物の少なくとも一種とを反応させることにより形
成することができる。有機リン化合物と反応することに
よって形成された化合物反応膜層を有機リン化合物−反
応膜層と称し、有機イオウ化合物と反応することによっ
て形成された反応膜層を有機イオウ化合物−反応膜層と
称し、有機塩素化合物と反応することによって形成され
た反応膜層を有機塩素化合物−反応膜層と称し、有機金
属化合物と反応することによって形成された反応膜層を
有機金属化合物−反応膜層と称する。
有機リン化合物−反応膜層を形成するのに用い得る有
機リン化合物としては、亜リン酸エステル類,正リン酸
エステル類,酸性リン酸エステル類等がある。
上記亜リン酸エステル類は、C1〜C18の炭化水素類
(例えば、アルキル,フェニル,ベンジル,クレジル,
シンナミル,アリル)の亜リン酸エステルで、例えばト
リオクチルフォスファイト,トリフェニルフォスファイ
ト,トリクレンジフォスファイト,ビス−2−エチルヘ
キシルフォスファイト,トリデシルフォイスファイト,
ジブチルハイドロジェンフォスファイト,トリス(ノニ
ルフェニル)フォスファイト,ジラウリルハイドロジェ
ンフォスファイト,ジフェニルモノデシルフォスファイ
ト,トリラウリルトリチオフォスファイト,ジフェニル
ハイドロジェンフォスファイトなどが好ましい。
又、正リン酸エステル類は、C1〜C18を炭化水素類
(例えば、アルキル,フェニル,ベンジル,クレジル,
シンナミル,アリル)の正リン酸エステルで、例えばト
リフェニルフォスフェート,トリエチルフォスフェー
ト,トリブチルフォスフェート,トリス(2−エチルヘ
キシル)フォスフェート,トリデシルフォスフェート,
ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)フォスフェー
ト,トリクレジルフォスフェート,トリオクチルフォス
フェート,トリステアリルフォスフェートなどが好まし
い。
又、酸性リン酸エステル類は、C1〜C20のモノ又はジ
ヒドロカルビルアッシドフォスフェートであり、例えば
メチルアッシドフォスフェート,イソプロピルアッシド
フォスフェート,ブチルアッシドフォスフェート,2−エ
チルヘキシルアッシドフォスフェート,イソデシルアッ
シドフォスフェート,トリデシルアッシドフォスフェー
ト,ラウリルアッシドフォスフェートなどが好ましい。
有機イオウ化合物−反応膜層を形成するのに用い得る
有機イオウ化合物としては、例えば硫化鯨油などの硫化
油脂類、硫化オレフィン類,メルカプタン類,サルファ
イド類,スルホキシド類、スルホン類等がある。
上記の硫化オレフィン類は、C2〜C8のオレフィン又は
それから誘導される低分子量ポリオレフィンの硫化物
で、例えば硫化ペンテン,硫化ブチレン,硫化オクテン
などが好ましい。
メルカプタン類は、C4〜C20のアルキルメルカプタン
及びメルカプト脂肪酸エステルで、例えばn−ブチルメ
ルカプタン,イソブチルメルカプタン,第三ブチルメル
カプタン,n−オクチルメルカプタン,第三ノニルメルカ
プタン,第三ドデシルメルカプタン,チオグリコール酸
ブチル,チオロピオン酸エチル,3−メルカプトプロピオ
ン酸オクチルなどが好ましい。
サルファイド類は、C4〜C18の炭化水素類(例えば、
アルキル,フェニル,ベンジル,シンナミル,アリル)
のモノサルファイド( −S− ),ジサルファイド
( −S−S− ),ポリサルファイド( −S−S−
S− )で、例えばジブチルモノサルファイド,ジブチ
ルジサルファイド,ジフェニルサルファイド,ジベンジ
ルサルファイドなどが好ましい。
スルホキシド類は、C4〜C20の炭化水素類(例えば、
アルキル,フェニル,ベンジル,シンナミル,アリル)
のスルホキシドで、例えばジブチルスルホキシド,ジベ
ンジルスルホキシドなどが好ましい。
スルホン類は、C4〜C20のアルキル,フェニル,ベン
ジル,シンナミル,アリルのスルホンで、例えばジブチ
ルスルホン,ジドデシルスルホン,フェニルスルホンな
どが好ましい。
有機塩素化合物−反応膜層を形成するのに用い得る有
機塩素化合物としては、塩素化パラフィン類,塩素化油
脂類等がある。
塩素化パラフィン類としては、例えば、n−オクチル
クロライド,塩化パラフィン,塩化オクタデシルが存在
し、塩素化油脂類としては、例えば、塩化鯨油が存在す
る。
更に又、有機金属化合物−反応膜層を形成するのに用
い得る有機金属化合物としては、金属ジヒドロカルビル
ジチオフォスフェート類,金属ジヒドロカルビルジチオ
カーバメート類,ナフテン酸塩類等がある。
上記金属ジヒドロカルビルジチオフォスフェート類
は、各ヒドロカルビル基がC4〜C20である金属ジヒドロ
カルビルジチオフォスフェートで、例えばZnジメチルジ
チオフォスフェート,Znブチルイソオクチルジチオフォ
スフェート,Znジ(4−メチル−2−ペンチル)ジチオ
フォスフェート,Znジ(テトラプロペニルフェニル)ジ
チオフォスフェート,Zn(2−エチル−1−ヘキシル)
ジチオフォスフェート,Zn(イソオクチル)ジチオフォ
スフェート,Zn(エチルフェニル)ジチオフォスフェー
ト,Zn(アミル)ジチオフォスフェート,Znジ(ヘキシ
ル)ジオチフォスフェート、或いは金属として上記亜鉛
(Zn)の他、鉛(Pb),カドミウム(Cd),アンチモン
(Sb),モリブデン(Mo)などのものが好ましい。
金属ジヒドロカルビルジチオカーバメート類は、各ヒ
ドロカルビル基がC4〜C20である金属ジヒドロカルビル
ジチオカーバメートで、例えばZnジメチルジチオカーバ
メート,Znブチルイソオクチルジチオカーバメート,Znジ
(4−メチル−2−ペンチル)ジチオカーバメート,Zn
ジ(テトラプロペニルフェニル)ジチオカーバメート,Z
n(2−エチル−1−ヘキシル)ジチオカーバメート,Zn
(イソオクチル)ジチオカーバメート,Zn(エチルフェ
ニル)ジチオカーバメート,Zn(アミル)ジチオカーバ
メート,Znジ(ヘキシル)ジチオカーバメート、或いは
金属として上記亜鉛(Zn)の他、鉛(Pb),カドミウム
(Cd),アンチモン(Sb),モリブデン(Mo)などのも
のが好ましい。
又、ナフテン酸塩類はナフテン酸の金属塩で、例えば
ナフテン酸鉛などが好ましい。
前記のような化合物反応膜層を形成する種々の化合物
は、そのまま、或いは油や溶剤に溶解し希釈された状態
で、濃度0.1〜100wt%の範囲で使用することができる。
ここで油としては、例えば、精製パラフィン,ジフェニ
ル等の非極性のものを使用でき、溶剤としては、例え
ば、トルエン等の非極性溶剤を使用できる。その他の
油,溶媒を使用することができるが、非極性のものであ
ることが好ましい。
化合物反応膜を形成する際、所定濃度の前記有機リン
化合物,有機イオウ化合物,有機塩素化合物,有機金属
化合物の各々が単独で、或いは複数種類の混合物として
用いられる。特に、有機リン化合物と有機イオウ化合物
とを混合すると、両者の相互作用により化合物反応膜の
形成速度が大きくなることが検討の結果明らかとなっ
た。尚、同一種類の化合物内では、各具体的化合物が単
独或いは混合されて用いられる。
単独で或いは混合して用いられた前記各化合物の種類
とその含有量に応じて、摺動又は転がり部材の表面に、
有機リン化合物−反応膜層,有機イオウ化合物−反応膜
層,有機塩素化合物−反応膜層,有機金属化合物−反応
膜層、又はこれらが二種以上混在した化合物反応膜を形
成することができる。
被処理物である摺動部材又は転がり部材を、予め前記
した所定濃度に調整した化合物液中に浸漬し、温度を室
温から120℃の範囲内の所定温度に制御しつつ、0.5ない
し8時間の範囲内の所定時間維持して、当該液中の化合
物の被処理部材とを化合結合させることにより、被処理
物の表面下に厚さ0.05ないし0.5μmの範囲の化合物反
応膜層を形成することができる。要するに、摺動又は軸
受部材表面の化合物反応膜層厚が0.05ないし0.5μmの
範囲の範囲内になるように化合物液濃度,反応温度,反
応時間を制御することである。
その、化合物反応膜層の形成過程において、例えば、
超音波などを所定温度にした条件下で利用すると、反応
形成膜の均一性を改善したり、反応速度を増加させるこ
とができる。
このようにして表面処理し、種々の膜厚の化合物反応
膜層を形成した転がり部材について高速四球試験を行
い、膜厚が0.05μm未満の場合および0.5μmを越える
場合には、焼付きが発生したり、振動が発生するのに対
して、0.05〜0.5μmの範囲内、好ましくは0.05〜0.3μ
mであれば極めて良好な結果が得られることが実験的に
確かめられた。
本発明の表面処理は、摺動間は転がり部材の少なくと
も摺動又は転がり接触面になされていれば足りる。もっ
とも、これ以外の部分には表面処理がなされていても良
い。また、摺動又は転がり接触する部材間において、少
なくとも一方の部材の接触表面にこの表面処理がなされ
ていれば低摩擦,低摩耗,耐荷重,耐焼付き性を十分に
向上させた摺動又は転がり部材を提供することができ
る。
以下に、本発明の実施例を述べる。
〔実施例1〕 被処理試料として、転がり部材である1/2インチ軸受
鋼球の表面下に、リン酸エステルを用いて、6種類の厚
みの化合物反応膜層を形成したものを作製して高速四球
試験を行った。リン酸エステルとしては、反応性の高い
酸性リン酸エステルであるトリデシルアッシドフォスフ
ェート(トリデシルモノアッシドフォスフェートとトリ
デシルジアッシドフォスフェートとの混合物)を用い
た。
形成された反応膜の組成や物性(機械的強度,付着
性,均一性,潤滑性等)の夫々は、酸性リン酸エステル
中のヒドロカルビル基の化学構造(R=C1〜C20、これ
は脂肪族であっても芳香族であっても、あるいはそれら
の混合物であってもよい。)と油や溶剤への希釈濃度に
依存し、膜厚は処理温度と時間に依存する。それ故、こ
れらを考慮して反応条件を定める。
この実施例では、上記リン酸エステルを精製油に5wt
%濃度に希釈したものに軸受鋼球を浸漬して、温度40℃
で4時間反応させ、膜厚約0.3μmの化合物反応膜層が
形成された。
このようにその反応温度と反応時間を制御することに
より、化合物反応膜厚がそれぞれ0.01、0.05、0.1、0.
3、0.5、0,8μmに形成された鋼球をそれぞれ作製し
た。
このようにして得た軸受鋼球に高速四球試験を適用し
て試験を行った。試験結果を次の第1表に示す。
この試験において、回転速度は、第1表に示す温度,
荷重の条件のもとで、焼付きが発生するまで一分間に10
00回転の割合で回転数を上げて行った。
耐焼付き性は、化合物反応膜厚の厚さが0.01μm程度
では無処理のものと変わらない結果を示した。また0.8
μmでは振動が大きくなり、測定ができなかった。
これに対して、0.05μm〜0.5μmの範囲では明らか
に耐焼付き性の向上がみられ、0,1μmでは最も良好な
結果を得た。
〔実施例2〕 被処理試料として、転がり部材である1/2インチ軸受
鋼球の表面下に、実施例1の場合と同様のリン酸エステ
ルを用いて、6種類の厚みの化合物反応膜層を形成した
ものを作成し、高速四球試験を行った。
但し、この実施例では、運転中に潤滑油の供給を遮断
して行った。その方法は、次のようにして行った。
(1) 油浴(120℃)にて、pv値600kgf/mm2・m/sで1
分間ならし運転する。
(2) 1分経過後、瞬時に油浴の潤滑油を抜き取り、
焼付き発生迄の時間を測定する。
その結果を第2表に示す。
但し、化合物反応膜厚が0.8μmのものは運転中振動
が大きいと共に、摩擦も大きかった。
一方、化合物反応膜厚が0.05μmのものは摩擦係数が
比較的小さいものであった。
潤滑油抜き取りという過酷な条件下においても、化合
物反応膜層厚が0.05〜0.5μmにある本発明の摺動又は
転がり部材の効果は大きいことは明らかで、化合物反応
膜厚が0.1μmで最も良好な結果を得た。
〔実施例3〕 被処理試料として、転がり部材である円錐ころ軸受
(外形52mm、内径25mm)のころの表面に、実施例1の場
合と同様にリン酸エステルを用いて、種々の厚みの化合
物反応膜層を形成したものを作製し、ラジアル荷重100
N、アキシアル荷重1500N、回転数3000rpmで、非常に少
ないオイル量例えば、オイルプレーティングの条件で回
転させたときの外輪の温度上昇を測定した。
その結果を第3表に示す。
温度上昇についても、無処理、0.01μm、0.8μmに
比して0.1〜0.5μmは30〜40deg程度小さな値を示し、
特に0.1μmは良好であり、反応膜の低摩擦を示してい
る。このような結果は、この軸受だけでなく、玉軸受で
も同様である。
〔実施例4〕 分子中にイオウを20.7%含む亜鉛ジヒドロカルビルジ
チオフォスフェートが、精製油中に1wt%となる様に希
釈し、これに被処理試料として、転がり部材である1/2
インチ軸受鋼球を浸漬して120℃×24時間反応させた。
これにより、膜厚0.1μmの化合物反応膜を形成した。
このようにして得た試料について、前記実施例2と同
様の条件で焼付き発生迄の時間を測定した。
この結果、焼付き発生時間1′10″を得た。
〔実施例5〕 分子中に2個のイオウを持つジサルファイドとして、
tert−オクチルジサルファイドを精製油中に50wt%とな
る様に希釈した。これに被処理試料として、転がり部材
である1/2インチ軸受鋼球を浸漬して60℃×4時間反応
させ、膜厚0.1μmの化合物反応膜層を形成した。
このようにして得た試料について、前記実施例2と同
様の条件で焼付き発生迄の時間を測定した。
この結果、焼付き発生時間1′30″を得た。
〔実施例6〕 n−オクチルクロライドを精製油中で50wt%となる様
に希釈し、これに被処理試料として、転がり部材である
1/2インチ軸受鋼球を浸漬して60℃×4時間反応させ、
膜厚0.1μmの化合物反応膜層を形成した。
このようにして得た試料について、前記実施例2と同
様の条件で焼付き発生迄の時間を測定した。
この結果、焼付き発生時間1′35″を得た。
〔実施例7〕 有機イオウ化合物からなる添加剤と有機リン化合物か
らなる添加剤とは、相互作用を持ち化合物反応膜層を形
成するための反応が進み易いと云う検討結果を得たた
め、リン酸エステルであるトリオクチルフォスフェート
に酸性リン酸エステルのトリデシルアッシドフォスフェ
ート及び有機イオウ化合物のジ−tert−オクチルジサル
ファイドを各5wt%混合したものに被処理試料として、
転がり部材である1/2インチ軸受鋼球を浸漬して60℃×
2時間反応させ、膜厚0.1μmの化合物反応膜層を形成
した。
このようにして得た試料について、前記実施例2と同
様の条件で焼付き発生迄の時間を測定した。
この結果、焼付き発生時間3′20″を得た。この数値
は前記実施例2と比較しても良好な値となっている。
本実施例7は、異なる種類の化合物を混合して化合物
反応膜を摺動又は転がり部材表面に形成しても良好な耐
焼付き性を発揮することを明らかにしている。
なお、本発明の表面処理は、軸受の玉やころのみでは
なく、その他例えば軸受の外輪又は内輪の軌道面や保持
器面等にも適用することが可能であり、それらの要素部
材を少なくとも一つ以上使用して組立てた転がり軸受
は、耐荷重性,耐焼付き性が極めて良好で、運転中に潤
滑油の供給が中断されることがあるような過酷条件下で
も十分使用に耐え得るものになる。
尚、前記実施例では本発明部材を転がり軸受について
適用した場合について説明したが、この他、本発明部材
を歯車に適用することも可能である。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明の表面処理した摺動又は
転がり部材及び転がり軸受は、それらの被処理部材の表
面下に0.05〜0.5μmの厚さに化合物反応膜層を形成し
た。そのため、低摩擦,低摩耗で耐荷重性,耐焼付き性
を十分に向上させた摺動又は転がり部材及び転がり軸受
を提供できるという効果が得られる。しかも、表面下に
形成した化合物反応膜層の剥離のおそれがなく長寿命で
ある。又、本発明部材は外形寸法変化が殆どないので、
軸受性能の安定性が確保し易く、ハウジング等への取付
性も良好である。
【図面の簡単な説明】 第1図はリン化合物反応膜層の厚み測定の一例を示すグ
ラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16C 33/12 F16C 33/62 F16C 33/32 F16C 33/34

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】摺動面または転がり面をなす金属表面を、
    有機リン化合物、有機イオウ化合物、有機塩素化合物、
    および有機金属化合物のうち少なくとも一種と化学結合
    反応させて、0.05〜0.5μmの厚さの化合物反応膜層
    を、前記摺動面の表面下または前記転がり面の表面下に
    形成したことを特徴とする摺動又は転がり部材。
  2. 【請求項2】前記有機リン化合物は、正リン酸エステ
    ル、亜リン酸エステル、および酸性リン酸エステルの少
    なくとも一種であることを特徴とする請求項(1)記載
    の摺動又は転がり部材。
  3. 【請求項3】前記酸性リン酸エステルはトリデシルアッ
    シドフォスフェートであることを特徴とする請求項
    (2)記載の摺動又は転がり部材。
  4. 【請求項4】前記有機イオウ化合物は、硫化油脂類、硫
    化オレフィン類、メルカプタン類、サルファイド類、ス
    ルホキシド類、およびスルホン類のいずれか一つである
    ことを特徴とする請求項(1)記載の摺動又は転がり部
    材。
  5. 【請求項5】前記有機イオウ化合物は、tert−オクチル
    ジサルファイドであることを特徴とする請求項(4)記
    載の摺動又は転がり部材。
  6. 【請求項6】前記有機塩素化合物は、塩素化パラフィン
    および塩素化油脂の少なくともいずれか一方であること
    を特徴とする請求項(1)記載の摺動又は転がり部材。
  7. 【請求項7】前記有機塩素化合物はn−オクチルクルラ
    イドであることを特徴とする請求項(6)記載の摺動又
    は転がり部材。
  8. 【請求項8】前記化合物反応膜層は、有機リン化合物と
    有機イオウ化合物との混合物を金属表面に反応させて形
    成したものであることを特徴とする請求項(1)記載の
    摺動又は転がり部材。
  9. 【請求項9】前記有機リン化合物はトリデシルアッシド
    フォスフェートであり、前記有機イオウ化合物はtert−
    オクチルジサルフォイドであることを特徴とする請求項
    (8)記載と摺動又は転がり部材。
  10. 【請求項10】保持器、軌道輪、および転動体の少なく
    とも一つが請求項(1)ないし(9)のいずれかに記載
    の摺動又は転がり部材からなることを特徴とする転がり
    軸受。
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