JP2915329B2 - ２サイクルエンジンの潤滑装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、オイルタンクに
貯留した潤滑油をオイルポンプを介して吸気管に導入
し、吸気（混合気）と混合してエンジン各部への潤滑油
の供給を行う分離給油方式の２サイクルエンジンの潤滑
装置に関するもので、とくに自動二輪車に搭載される２
サイクルエンジンに好適な潤滑装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年の２サイクルエンジンでは、エンジ
ンの負荷に応じて潤滑油の供給量を調整できることか
ら、液体燃料に潤滑油を直接混合して使用する方式に代
わり、上記した分離給油方式の潤滑装置が一般に広く採
用されている。

【０００３】この種の潤滑装置は、従来、クランクシャ
フトにウォームギヤなどのオイルポンプ駆動用ギヤを取
り付け、同ギヤと噛合するギヤを介してオイルポンプの
回転軸を回転させてオイルポンプを駆動している。また
オイルポンプは、通常、クランクケースの外面の一部を
機械加工して設けた取付面上に取り付けられている。な
お、こうした構造の潤滑装置は、例えば特公平４−６７
００６号公報に記載されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報に記載されているような構造の潤滑装置には、次のよ
うな点で改良の余地がある。

【０００５】 クランクシャフトはエンジンを構成す
る部材のうち、その幅方向の寸法が最も長く、エンジン
の最大幅がクランクシャフトの寸法で決まることが多い
が、そのクランクシャフトに、オイルポンプの駆動ギヤ
が設けられるため、軸方向寸法がさらに増え、エンジン
の幅が広がる。このことは、エンジンの小型化を妨げ
る。

【０００６】 エンジン運転中のクランクシャフトの
回転速度は速く、アイドリング時でも高速で回転してい
るため、クランクシャフトに取り付けられたオイルポン
プ用の駆動ギヤ（ウォームギヤなど）が摩耗しやすく、
比較的短期間で交換をしなければならない。

【０００７】 クランクシャフトに対してオイルポン
プは通常、かなり離れた位置に取り付けられるため、ク
ランクケースに深い取付穴を精度よく穿設する必要があ
り、機械加工の精度を保つには、作業に時間がかかる。
しかも、オイルポンプがクランクケースの一部から突出
した状態で取り付けられることが多いため、の場合と
同様に、エンジンの小型化が阻害される。

【０００８】この発明は上述の点に鑑みなされたもの
で、クランクシャフトの軸方向の長さを増大させること
がなく、またオイルポンプの取付が簡単でクランクケー
スに対する取付のための機械加工が容易になるうえに、
オイルポンプが邪魔にならず、しかも耐久性に優れ、長
期間使用できる、２サイクルエンジンの潤滑装置を提供
することを目的としている。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明の２サイクルエンジンの潤滑装置は、a)オイ
ルタンクに貯留した潤滑油をオイルポンプを介して吸気
管に導入し、吸気と混合してエンジン各部への潤滑油の
供給を行う分離給油方式の２サイクルエンジンの潤滑装
置において、b)オイルポンプ駆動専用の駆動軸を、クラ
ッチが装着されるインプットシャフトより上方で該イン
プットシャフトおよびクランクシャフトに対し平行に、
且つインプットシャフトの軸心およびクランクシャフト
の軸心に直角な平面上で三角形をなす位置に配置すると
ともに、c)前記オイルポンプを、前記クラッチと反対側
の前記駆動軸端部であって、前記クランクシャフト一端
側のジェネレータ室の一部と、アウトプットシャフトの
一端側のスプロケット室の一部とを２辺とするＶ字状の
スペース内に配置し、d)前記インプットシャフトに一体
回転可能に取り付られたキックスタータドリブンギヤに
対し、前記駆動軸の一端に取り付けた駆動ギヤを噛合さ
せ、駆動軸を回転するようにしている。

【００１０】

【００１１】

【００１２】上記の構成を有する本発明の２サイクルエ
ンジンの潤滑装置によれば、オイルポンプを駆動するた
めに駆動軸はクランクシャフトおよびインプットシャフ
トと平行に設けていることから、クランクケースにはそ
の駆動軸の両端部を挿通あるいは支持するための軸穴を
クランクシャフトおよびインプットシャフトの軸穴と平
行に設けることができるので、機械加工が容易になる。
また、クランクシャフトとは別の駆動軸でオイルポンプ
を駆動するから、その駆動軸の回転速度をクランクシャ
フトに比べて低い、つまり、オイルポンプの駆動に好適
な回転速度に設定することができ、オイルポンプの寿命
も延長される。さらに前記駆動軸を、クラッチが装着さ
れるインプットシャフトより上方で該インプットシャフ
トおよびクランクシャフトに対し平行に、且つインプッ
トシャフトの軸心およびクランクシャフトの軸心に直角
な平面上で三角形をなす位置に配置するから、駆動軸の
設置位置をクランクケース内の空き空間（デッドスペー
ス）に設定でき、邪魔にならず、しかもクランクケース
の形状を変更する必要がほとんどなく、変更を要すると
きでも大きな変更は不要である。しかも、オイルポンプ
が、ジェネレータ室とスプロケット室との通常デッドス
ペースになるＶ字状空間に配置されるから、とくにエン
ジン全体の側面視形状において、オイルポンプを装着す
ることによる設置スペースの増大などの影響がなく、エ
ンジンの小型化を阻害しない。また、オイルポンプは、
クランクケースの一側面に外向きの状態で装着されるか
ら、ポンプ内のエア抜き作業やコントロールレバーの調
整作業などが容易に行える。 その上、インプットシャフ
トは、クランクシャフトに比べ回転速度が一次減速され
ており、その回転速度はクランクシャフトの１／３前後
と遅く、したがってオイルポンプの駆動に適した駆動軸
の回転速度が得られる。このため、ウォームギヤのよう
な減速比の大きいギヤを使用する必要がなく、いいかえ
れば平歯車を用いてクランクシャフトの回転力を駆動軸
に伝達できるから、耐久性に優れている。またキックス
タータドリブンギヤを介して駆動軸を回転させるから、
クランクシャフトに駆動軸へ回転力を伝達するためのギ
ヤを別個に設ける必要がなく、クランクシャフトの軸方
向寸法を増大させることがない。

【００１３】

【００１４】

【００１５】

【発明の実施の形態】以下、この発明にかかる２サイク
ルエンジンの潤滑装置の実施例を図面に基づいて説明す
る。

【００１６】図１は本例の２サイクルエンジンのクラン
クケース部分を示す左側面図、図２はクランクケース部
分の右側方視断面図、図３は図２のＡ−Ａ線断面図、図
４は図２のＢ−Ｂ線断面図である。

【００１７】図１・図２に示す２サイクルエンジン１は
自動二輪車搭載用のエンジンでシリンダーを取り外した
状態を表しており、クランクケース２の上端開口２ａか
らコネクチングロッド３の一部が上方に突出している。

【００１８】図１において、クランクケース２の右側の
円形カバー６ａはジェネレータ６のカバーで、このカバ
ー６ａの右側方にスプロケット室５が設けられている。
そしてカバー６ａとスプロケット室５の円弧状上部間の
Ｖ字状空間部Ｃに、オイルポンプ２０が配置されてい
る。オイルポンプ２０の潤滑油吐出口２０ａにはジョイ
ント２１を介して小口径のチューブ２２の一端が接続さ
れており、このチューブ２２の他端は吸気管（図示せ
ず）に導かれている。またオイルポンプ２０の吸込口に
は、大口径のチューブ２３の一端が接続され、この他端
はオイルタンク（図示せず）に接続されている。なお、
図中の符号２４はジェネレータのリード線、符号８ｄは
インプットシャフト用軸受（穴）、符号９ｄはアウトプ
ットシャフト用軸穴である。

【００１９】図４に示すように、クランクケース２内
に、クランクシャフト４がベアリング４ｂを介して回動
自在に支持され、コネクチングロッド３の下端部が横設
のクランクピン４ａを介して接続されている。クランク
シャフト４の左端部にはジェネレータ６が装着され、右
端部にはクランクギヤ７が装着されている。上端開口２
ａと反対側にクランクシャフト４と平行にインプットシ
ャフト８がベアリング８ａ、８ｄを介して回動自在に支
持され、さらにインプットシャフト８と平行にアウトプ
ットシャフト９がベアリング９ａを介して回動自在に支
持されている。

【００２０】インプットシャフト８の右端部にクラッチ
ギヤ１０が装着され、このクラッチギヤ１０はクランク
ギヤ７に噛合している。なお、インプットシャフト８の
右端に、クラッチ１１が装備されている。また、クラッ
チギヤ１０には、キックスタータドリブンギヤ１２（キ
ック始動用ギヤともいう）が一体回転可能に配設されて
いる。アウトプットシャフト９の左端部にはスプロケッ
ト１３が装着され、また右端部にはキックスタータアイ
ドルギヤ１４が装着されている。そして、このアイドル
ギヤ１４は、キックスタータドリブンギヤ１２に噛合し
ている。

【００２１】なお、インプットシャフト８とアウトプッ
トシャフト９の軸間部には、周知のように、相互に噛合
可能な複数の変速ギヤ１５が取り付けられている。さら
に、キックスタータシャフト１６が回動自在に支持さ
れ、このキックスタータシャフト１６にはキックスター
タドライブギヤ１７が装着され、右端にキックスタータ
レバー１８が取り付けられ、キックスタータシャフト１
６はスプリング１６ａにより一回転方向に付勢されてい
る。キックスタータドライブギヤ１７は、アイドルギヤ
１４に噛合している。

【００２２】図２・図３に示すように、オイルポンプ２
０の駆動専用の駆動軸２５を、インプットシャフト８よ
りも上方で、インプットシャフト８およびクランクシャ
フト４に対し平行に、クランクケース２にベアリング２
５ａを介して回動自在に支承している。この駆動軸２５
は図３のように、クランク室２’を構成する両側壁２ｂ
に軸受穴２ｃを穿設し、この軸受穴２ｃにベアリング２
５ａを内接したうえで駆動軸２５の両端部をそれぞれ支
持している。そして図２のように、この駆動軸２５の軸
心位置はインプットシャフト８の軸心およびクランクシ
ャフト４の軸心と結ぶと、各軸心と直交する平面上で三
角形をなす。このオイルポンプ２０の位置は、上記した
とおり、ジェネレータカバー６ａとスプロケット室５の
円弧状上部間のＶ字状空間部Ｃ（図１）になる。

【００２３】駆動軸２５の一端（左側端）にオイルポン
プ２０が連結され、クランクケース２の側面に取り付け
られて、オイルポンプ２０内の駆動部（図示せず）が駆
動軸２５の回転で回転してポンプ作用を生じさせる。駆
動軸２５の他端部（右側端部）は、軸受穴２ｃより右側
方に突出し、この突出端部に駆動ギヤ２６が装着され、
この駆動ギヤ２６はキックスタータドリブンギヤ１２に
噛合している。なお、図３中の符号２７はオイルポンプ
２０のコントロールレバーで、このレバー２７は、クラ
ンクケース２の一部に回転自在に支持されている調整ボ
ルト２８に支承されたケーブル２９を介して旋回する。

【００２４】本実施例にかかる潤滑装置は上記した構成
からなるが、この潤滑装置は以下のようにして潤滑油を
エンジン１内に供給する。すなわち、図３または図４に
おいて、 ２サイクルエンジン１の運転中、クランクシャフト
４が一方向に回転し、その一端部のクランクギヤ７と噛
合するクラッチギヤ１０を介して減速され、インプット
シャフト８が低速度で回転する。

【００２５】 インプットシャフト８のキックスター
タドリブンギヤ１２と噛合する駆動ギヤ２６を介して減
速され、駆動軸２５はさらに低い回転速度で回転し、オ
イルポンプ２０が駆動される。

【００２６】 オイルポンプ２０の駆動でオイルタン
ク（図示せず）内の潤滑油がチューブ２３（図１）を通
って吸い込まれ、吐出口２０ａから吐出された潤滑油が
チューブ２２を通って吸気管（図示せず）へ導かれる。
そして、吸気管内で吸気中に混合されてクランク室２’
内に導かれ、クランク室２’内で撹拌され、各摺動箇所
に潤滑油が供給される。したがって、燃料にあらかじめ
潤滑油が混合される潤滑方法と違って、エンジン１の負
荷変動に対応して潤滑油の供給量がコントロールされ
る。

【００２７】上記に本発明の２サイクルエンジンの潤滑
装置の一実施例を示したが、本発明の潤滑装置は、以下
のように実施することもできる。

【００２８】a) ２サイクルエンジンであれば、自動二
輪車以外の、例えば不整地走行用四輪自動車や作業機械
を駆動するためのエンジンなどに適用できる。

【００２９】b) クランクシャフト４とは別個の駆動軸
２５を用いて駆動できるものであれば、オイルポンプ２
０の駆動方式はとくに限定しない。また、オイルポンプ
２０の支持は、クランクケース２に取付面を機械加工
し、取付穴を穿ってオイルポンプ２０をネジ止により支
持することができる。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、
本発明の２サイクルエンジンの潤滑装置は、次のような
優れた効果がある。

【００３１】(1) オイルポンプの駆動軸をクランクシャ
フトとインプットシャフトと平行に設けるので、クラン
クケースの機械加工が容易であり、またクランクシャフ
トとは別の駆動軸でオイルポンプを駆動するから、駆動
軸の回転速度をクランクシャフトに比べて低く、オイル
ポンプの駆動に好適な回転速度にすることができ、耐久
性が向上し、長期間使用できるとともに、オイルポンプ
の寿命を延長できる。さらに駆動軸をインプットシャフ
トより上方でインプットシャフトおよびクランクシャフ
トとともに三角形をなす位置に配置することにより、ク
ランクケース内のデッドスペースに設置でき、クランク
ケースを大型化する必要がない。(2) しかも、オイルポンプがクランクケースのデッドス
ペースになるＶ字状空間に配置されるので、オイルポン
プが邪魔にならず、設置スペースの増大などの影響がな
く、エンジンの小型化を阻害しない。またオイルポンプ
がクランクケースの一側面に外向きの状態で装着される
ので、ポンプ内のエア抜き作業やコントロールレバーの
調整作業などを容易に行える。 (3) クランクシャフトに比べ回転速度が減速され、オイ
ルポンプの駆動に適した駆動軸の回転速度が得られるの
で、平歯車を用いてクランクシャフトの回転力を駆動軸
に伝達できるから、耐久性に優れて、またキックスター
タドリブンギヤを介して駆動軸を回転させるから、クラ
ンクシャフトに駆動軸へ回転力を伝達するためのギヤを
別個に設ける必要がなく、クランクシャフトの軸方向寸
法を増大させることがないため、エンジン全体の小型化
を阻害しない。

【００３２】

【００３３】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例の２サイクルエンジンのクラン
クケース部分を示す左側面図である。

【図２】図１のクランクケース部分の一部を切り欠いて
表した右側方視断面図である。

【図３】図２のＡ−Ａ線断面図である。

【図４】図２のＢ−Ｂ線断面図である。

【符号の説明】

１ ２サイクルエンジン ２ クランクケース ４ クランクシャフト ５ スプロケット室 ６ ジェネレータ ７ クランクギヤ ８ インプットシャフト ９ アウトプットシャフト １０ クラッチギヤ １１ クラッチ １２ キックスタータドリブンギヤ（キック始動用ギ
ヤ） １３ スプロケット １４ キックスタータアイドルギヤ １６ キックスタータシャフト １７ キックスタータドライブギヤ ２０ オイルポンプ ２５ 駆動軸 ２６ 駆動ギヤ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 オイルタンクに貯留した潤滑油をオイル
   ポンプを介して吸気管に導入し、吸気と混合してエンジ
   ン各部への潤滑油の供給を行う分離給油方式の２サイク
   ルエンジンの潤滑装置において、 オイルポンプ駆動専用の駆動軸を、クラッチが装着され
   るインプットシャフトより上方で該インプットシャフト
   およびクランクシャフトに対し平行に、且つインプット
   シャフトの軸心およびクランクシャフトの軸心に直角な
   平面上で三角形をなす位置に配置するとともに、 前記オイルポンプを、前記クラッチと反対側の前記駆動
   軸端部であって、前記クランクシャフト一端側のジェネ
   レータ室の一部と、アウトプットシャフトの一端側のス
   プロケット室の一部とを２辺とするＶ字状のスペース内
   に配置し 、前記インプットシャフトに一体回転可能に取り付られた
   キックスタータドリブンギヤに対し、前記駆動軸の一端
   に取り付けた駆動ギヤを噛合させ、駆動軸を回転するよ
   うにした ことを特徴とする２サイクルエンジンの潤滑装
   置。