JP2802718B2 - 低アルコール濃度清酒 - Google Patents

低アルコール濃度清酒

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JP2802718B2
JP2802718B2 JP5258894A JP5258894A JP2802718B2 JP 2802718 B2 JP2802718 B2 JP 2802718B2 JP 5258894 A JP5258894 A JP 5258894A JP 5258894 A JP5258894 A JP 5258894A JP 2802718 B2 JP2802718 B2 JP 2802718B2
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裕子 坂本
一由 猿渡
信也 小林
雄一 秋本
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国税庁長官
日本酒造組合中央会
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低アルコール濃度清酒
類の製造方法に関し、優れた香味を有する酒類の製造法
に関するものである。
【0002】さらに詳細には、本発明は、温度感受性醸
造用酵母を用いアルコール発酵を比較的低温(37℃前
後)で制御し、酵母からの漏出物等による香味の増強を
特色とした、低アルコール濃度清酒の製造方法に関する
ものである。
【0003】また、本発明は、従来製造することができ
なかった製成酒、特にアルコール濃度は低いにもかかわ
らず香味にすぐれ、コクのある新しいタイプの清酒、自
体にも関するものである。
【0004】
【従来の技術】低アルコール濃度清酒については市場の
求めるところであったが、従来清酒の醸造法及び使用酵
母が15〜20%のアルコール濃度時に最も調和が保た
れるように選択されてきたため、現在の醸造法の改良で
は香味の調和のとれた低アルコール濃度清酒の醸造は困
難であった。
【0005】現在までに、半数体や細胞融合等による低
発酵性酵母(醸協78,390(1983)、醸協8
7,745(1992))や仕込配合条件を従来仕込と
かえる(特願平3−235072)ことにより、低アル
コール濃度清酒の製造が試みられてきた。
【0006】しかしながら、低発酵性酵母を使用する従
来法では、従来の清酒酵母に比べて発酵速度が遅く、発
酵終了までの期間を長くとる必要があった。そのために
製造期間が長くなり、経済性が低下するだけでなく、コ
ンタミンの危険性も高くなり、工程管理や労務管理上種
々の問題が生じる。
【0007】また、仕込法を変えた場合には、最終的な
低アルコール濃度清酒を製造する段階で、水、酸及び糖
の添加により目的の酒質に調整する必要があった。した
がって、この方法では、酒質の調整というデリケートな
操作を更に必要とするし、本醸造ないし純米醸造タイプ
の低アルコール清酒を製造することはできない。
【0008】一方、にごり酒等の開栓時の吹き出し防御
のために、酵母の発酵制御を行うための火当て操作が有
用であることが示されている(醸協79,695(19
84))。しかし、従来の清酒醸造用酵母を使用した場
合、40℃までの高温操作では香味の変化は認められな
いが発酵の停止には不十分であり、完全に発酵を抑制す
るためには45〜50℃の加温が必要であった。この操
作を行った場合、強い加熱による香味の悪化が避けられ
ない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アルコール
濃度をコントロールしたすぐれた製成酒、例えばアルコ
ール濃度を低下せしめたにもかかわらず香味のすぐれた
コクのある清酒類を、きわめて効率よく製造する目的で
なされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記した目的
を達成するためになされたものであって、各方面から検
討した結果、一定の温度で処理することによって自己消
化、死滅する温度感受性酵母を用い、上記温度をかける
ことにより清酒醪(もろみ)中のアルコール発酵がコン
トロールできること、及び/又は、酵母の自己消化、死
滅により酵母から溶出物が溶出する一方で酵素類は残存
するために、製成酒の香味の増強が図られるという、新
規にして有用な知見を得た。
【0011】本発明者らは、この新知見に基き研究した
結果、温度感受性酵母を用いることにより、風味のすぐ
れた低アルコール濃度の清酒のほか各種の製成酒が得ら
れることをつきとめ、更に、本発明者らは、醸造用酵母
の温度感受性を使用した通常仕込、糖化後仕込、液化後
仕込等の種々の清酒仕込試験を行い、低アルコール濃度
清酒の製造を各種行った結果、安定した成分の優れた品
質の製品を得ることに成功し、本発明を完成した。
【0012】本発明においては温度感受性酵母を使用す
る点を重要な骨子のひとつとするものであるが、温度感
受性とは、ある一定の温度で急激に自己消化及び/又は
死滅し、それにともない酵母由来の香味成分が培地(発
酵醪)へ放出する性質をいい、該「ある一定の温度」を
非許容温度ということもある。
【0013】この性質を有する酵母を、すなわち温度感
受性酵母を用いれば、通常の発酵温度(10〜20℃)
において通常の酵母と同様にアルコール発酵を行い、醪
のアルコール発酵を例えば37℃程度の高温条件(非許
容温度条件)にさらすことにより、発酵醪の香味の変化
を最小限に抑え発酵を停止させることができ、更に酵母
の死滅により酵母からの溶出物による清酒特有の香味の
付加が可能となる。
【0014】従って、高温感受性を有する醸造用酵母を
利用し、通常の発酵を行なわさせた後、目的成分に達し
た醪を高温処理(非許容温度処理)することにより、低
アルコール濃度清酒を製造することができるのである。
【0015】温度感受性酵母としては、上記したように
通常の発酵温度では通常の酵母と同様にアルコール発酵
を行うが、これを高温(非許容温度)にさらすことによ
り自己消化、死滅する性質を有する酵母をすべて指し、
天然から分離した株、突然変異処理によって得た株等す
べての酵母が使用される。その例としては、サッカロミ
セス・セレビシエ J504 K−ts8(Sacch
aromyces cerevisiae J504
K−ts8、,サッカロミセス・セレビシエgal−3
1(S. cerevisiae gal−31)等が
ある。
【0016】K−ts8株は、Saccharomyc
es cerevisiae J504の一倍体株をエ
チルメタンスルホン酸等の突然変異剤で処理し、YPD
培地等で25℃では生育できるが37℃では生育できな
いコロニーを選択し、次いでこのコロニーをYPD培地
で37℃にて培養し、p−ニトロフェニルリン酸含有寒
天培地上で黄色のハローを形成するコロニーをスクリー
ニングして得られたものである(FERM P−117
36)。
【0017】gal−31株は、清酒醸造において最も
広範に使用されている協会7号清酒酵母由来の温度感受
性株であって、その菌学的性質は後記する第4表のとお
りであり、通常仕込に関しては発酵経過及び製成酒の成
分とともに差異は少ない株である(FERM P−14
078)。
【0018】これらの温度感受性酵母の内、K−ts8
株は、半数体であり発酵性がやや低く、製成アルコール
量も少ないので、アルコール濃度が相当低くしかも甘味
の強い製成酒の製造に適している。一方、gal−31
株は、本来清酒酵母由来であって、これを非許容温度処
理することにより、清酒本来の香味は低下することなく
維持ないし増強するがアルコール濃度は低下せしめた、
低アルコール清酒と称することのできる製成酒が製造で
きる。
【0019】本発明によれば、各種の温度感受性酵母を
用い、非許容温度処理条件(温度、処理時間、培地組成
その他)を各種選択することにより、目的とするアルコ
ール濃度、目的とする風味を有する各種製成酒を自由に
製造することができる。しかも本発明においては、温度
感受性酵母を用い、温度処理(非許容温度処理)を行う
点を除けば、従来の清酒醸造システムをそのまま利用す
ることができる。
【0020】以下、本発明をgal−31株について説
明するが、本発明は本菌株のみに限定されるものではな
い。
【0021】本発明者らは、gal−31株が後記する
第4表に示す性質を有し、低温(17℃以下)での生育
性はやや劣るものの、十分に菌体密度が存在する場合の
発酵性は低温下でも親株である協会7号清酒酵母と大差
がないことを見出し、gal−31株を培養する場合に
は最適生育温度は28℃とした条件で、また清酒醸造用
の酵母の生育(酒母の製造)時には20℃程度の高温条
件で行うことにより発酵に必要な菌体密度を確保するこ
とを見出した。
【0022】そして、gal−31株が従来法による清
酒仕込法により通常の清酒と同様のすぐれた清酒を醸造
することも、実施例1に示すとおり、確認された。
【0023】また、実施例2に示すように、酵母及び醪
に存在する酵素に対する温度処理(以下、非許容温度処
理を単に温度処理ということもある)の影響をみるため
に、37℃処理及びその後の経過試験を行った。
【0024】さらに、実施例2に示すとおり、gal−
31株は37℃処理により急激に生菌率が低下し、30
分程度の処理で24時間後にはほぼ死滅し、炭酸ガスの
発生から見た発酵は停止し、さらに、1時間、37℃条
件下でもアルコール発酵の糖供給源になるα−アミラー
ゼやグルコアミラーゼの活性は処理直後ではほぼ残存す
ることを見出した。アルコール発酵停止後、これらの酵
素活性を利用した醪中へのぶどう糖の生成が可能である
ことを発見した。
【0025】従来法による清酒に対する温度処理による
効果の確認を実施例3のとおり行った。アルコール発酵
の制御は、温度処理条件、実施例2で示した37℃、1
時間で十分な効果を示し、停止させることが可能であっ
た。さらに、清酒醪中の酵母死滅にともない、溶出する
S−アデノシルメチオニンの濃度、アミノ酸度等も増加
した。しかし、酵母の生菌率は60%近く存在し、醪の
流動性による温度の不均一に基づく、問題が存在した。
さらに、実際上の清酒醪について醪温度を37℃まで急
激に上昇、通常発酵温度までの低下を行うことは困難な
ことであり、発酵法についてさらに検討を加えることと
した。
【0026】本発明者らは、糖化仕込みや液化仕込醪の
流動性が高く、熱伝搬性も高いことに注目し、実施例
4,5の仕込み試験を行った。なお、両仕込みについて
は醪状態での容器移動中でも可能であり、容器移動中に
温度処理を行うことが可能である。なお、糖化法につい
ては、常法の高温糖化法(清酒製造技術((財)日本醸
造協会編)P158等)、液化法については姫野らの方
法(醸協,88,p759等)があり、必要に応じてこ
れらの方法を利用することができる。
【0027】実施例4に示した糖化仕込時に、糖化物に
麹臭等の香りが発生し、製成酒にも特有の香りが残った
ため、活性炭処理による糖化物中の香りを除去し、発酵
を行わせることにより、糖化時の異臭は製成酒に移行し
ないことを見出した。
【0028】初発糖濃度及び酸度を調整した糖化後醪に
温度感受性株を用いた試験では、温度処理により、アル
コール生成の停止及び未発酵糖類の残存による甘口・濃
厚タイプの低アルコール濃度清酒の製成が可能であるこ
とが確認された。さらには、糖化液の初発糖濃度の設定
により、アルコール濃度と残糖分を調整できことも確認
された。
【0029】しかし、実施例4における発酵法では、初
発糖濃度により、製成酒のアルコール濃度と残糖が決定
し、さらに初発糖濃度を上げすぎた場合、高糖濃度に酵
母の増殖阻害等が起こり、醪発酵期間の延長及び醪中の
酸度の上昇等が認められる。そこで、醪中のでんぷん質
を糖まで分解せずに、発酵させる液化仕込による実施例
5の発酵試験を行った。液化後発酵法については、最近
大型の仕込法も開発され、実用規模の発酵も可能であ
る。
【0030】液化仕込においては、37℃、1時間での
温度処理では、温度感受性株についても20%台の生菌
が存在するが、アルコール発酵制御には十分な効果があ
った。実施例4に示した結果に比べ、10%台のアルコ
ール濃度を出させる場合でも平行複発酵であるため、初
期糖濃度による発酵阻害も認められない。さらに、温度
処理時の麹米由来の酵素群の活性化による糖化の促進
(日本酒度の増加)も認められるが、ほぼ温度処理時間
の設定によりこの糖化促進も制御が可能であり、したが
って本発明によれば、温度処理時期及び処理時間の設定
により、甘口から辛口まで多様な低アルコール濃度清酒
を造ることが可能である。
【0031】糖化及び液化後仕込により製成した低アル
コール濃度清酒について実施例6に示す官能試験を行っ
た。gal−31を使用した試験区分では両仕込ともに
温度処理を行うことにより、協会7号使用区分にはみら
れない評点の改善が認められ、酵母の自己消化による香
味の幅の増強が指摘された。また、この効果は温度処理
後速やかに上槽するより、酵母からの内容物の漏出が促
進される後発酵期間を置いたものの方がよりよい効果を
もたらすことを発見した。本発明は、これらの有用な新
知見に基づいて完成されたものである。以下、本発明の
実施例について述べる。
【0032】
【実施例1】下記表1に示す総米150gの従来法によ
る清酒小仕込仕込配合表(第1表)にしたがい、清酒仕
込を行い、下記表2に示す発酵経過(第2表)を得た。
製造された清酒の成分は、下記表3に製成酒の成分(第
3表)として示した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】これらの表において、K−ts8株及びg
al−31株は、温度感受性酵母FERM P−117
36及びFERM P−14078であり、K−7株は
清酒酵母協会7号である。そしてgal−31株の菌学
的性質の詳細は、下記表4に協会7号とgal−31の
性質の比較(第4表)として示した。
【0037】
【表4】
【0038】上記した結果から明らかなように、K−t
s8株を使用した醪では、発酵初期から発酵速度が低
く、清酒酵母協会7号(K−7株)の2/3程度で発酵
を終了し、製成清酒中のアルコール濃度も12%と低く
なり、官能的にも甘味の強い、通常の清酒とは異なる新
しいタイプの製成清酒であった。一方、gal−31株
は最も広範に清酒醸造では使用されている協会7号清酒
酵母由来の温度感受性株であり、通常仕込に関しては発
酵経過、製成酒の成分及び官能的にも通常の清酒として
差異はなかった。
【0039】
【実施例2】菌数1×106/mlの菌体をYNBD培
地(0.67% Yeast Nitrogen Ba
se(DIFCO),2% glucose)に懸濁
し、高温条件(37℃)下での生菌数の経時的変化を、
下記表5に第5表として示した。その結果、gal−3
1株は24時間で1/1000程度に減少し、高温処理
による発酵制御等に使用できることが認められた。
【0040】
【表5】
【0041】そこで温度処理条件を決めるため、アルコ
ール濃度10%の清酒発酵醪を用い、1%ぶどう糖を含
む0.2M酢酸緩衝液(pH4.2)に両菌株をそれぞ
れ混合し、アルコール濃度を5%に調整した試料を採
り、7.5分から60分間、37℃で温度処理後、15
℃に戻し、24時間後の酵母生菌率を測定し、得られた
結果を下記表6に第6表として示した。30分以上の処
理時間において24時間後にはgal−31株はほぼ死
滅した。
【0042】
【表6】
【0043】さらに、620units/mlα−アミ
ラーゼ及び100units/mlグルコアミラーゼ活
性を有するアルコール濃度0又は10%及び1%ぶどう
糖を含む0.2M酢酸緩衝液(pH4.2)を37℃、
1時間処理前後の活性を測定し、得られた結果も下記表
7に第7表として示した。酵素活性については80%以
上の残存が認められた。
【0044】
【表7】
【0045】
【実施例3】第1表の総米150gの清酒小仕込を行
い、発酵開始後6日目(醪アルコール濃度約11%前
後)の醪について、温度処理(37℃・1時間)を行っ
た。温度処理後直ちに上槽、2日間醪温度15℃に戻し
上槽した試験区分を設けた。発酵経過は下記表8に第8
表として示したとおりで、温度処理により、gal−3
1株醪では温度処理後急速に発酵を停止したのに対し、
協会7号酵母では非温度処理醪と同様な発酵経過をとる
ことを見出した。
【0046】
【表8】
【0047】このようにして得た製成醪の成分は、下記
表9に第9表として示した。これから明らかなように、
これらの製成醪の成分は、第9表に示すように、温度処
理を行なわない場合、アルコール濃度等の協会7号とほ
ぼ同等の値を示した。温度処理による生存率も2日静置
後では、gal−31醪において、酵母の生存率は40
%以上低下し、アルコール濃度の温度処理後の上昇は認
められず、醪のアルコール発酵の制御が可能であること
が確認された。
【0048】
【表9】
【0049】温度処理を行うことにより、処理直後に上
槽した清酒にはイオウ臭のようなものが存在したが、に
ごり酒の火当て操作(醸協,79,695(198
4))時に示されている粕汁臭に近いものは認められな
かった。しかし、醪状態で処理後2日間の静置により、
この異臭は無くなることが解った。
【0050】さらに、酵母の死滅にともない、温度処理
後の静置期間に醪末期に酵母から漏出し、製成酒へ移行
する成分であるS−アデノシルメチオニンが、gal−
31株使用醪の温度処理後静置製成酒には、通常発酵終
了時の55%以上の移行が行われ、その他の成分につい
ても温度処理後、醪状態で静置することにより増加し
た。したがって、この処理後発酵期間に酵母からの味の
巾に関与するアミノ酸等の溶出が起こることが醪及び製
成酒中のアミノ酸度等の増加が起こり、低アルコール濃
度酒製造時に問題になる、味の欠乏に対し有効な効果が
あるものと考えられた。
【0051】さらに、低アルコール濃度醪から製成した
清酒での異臭の前駆物質であるピルビン酸量も、温度処
理前後に16〜18%前後存在するものが、gal−3
1醪では温度処理により急激に消失し、温度感受性酵母
と温度処理によるアルコール発酵制御の組み合わせが、
低アルコール濃度清酒の醸造に適した性質を有すること
を確認した。
【0052】
【実施例4】下記表10に示す仕込配合(第10表)に
より、麹米100%の低アルコール濃度清酒醸造を行っ
た。糖化仕込については糖化後、布ろ過により固液分離
を行った。糖化液には麹米由来の特有の香りが存在し、
この除去のため、種々の濃度による活性炭処理(白鷺ニ
ューゴールド(武田薬品工業(株)を使用)を行った。
ボーメ12の糖化ろ液を使用し、ろ液そのものもしくは
酵母106/mlを添加し、15℃で10日間発酵させ
た発酵液について、酵母の増殖及び発酵液等の香の官能
試験を行った。
【0053】
【表10】
【0054】これらの結果を下記表11に第11表とし
て示した。これらの結果から明らかなように、糖化ろ液
もしくは発酵液Kl当たり100g以上の活性炭処理に
ついては、酵母増殖の阻害が認められ、正常な発酵をお
こさなかった。10gにおいて異臭の除去が可能であ
り、酵母の増殖及び発酵に関しても影響はなく、発酵後
には全く異臭は認められないことが確認された。
【0055】
【表11】
【0056】更に、ろ液に水を加えボーメ12に調整し
た後、乳酸を1ml/l加え、110℃、10分の加熱
殺菌を行い、糖化液を20℃まで冷却した後、106
mlとなるように酵母を添加し発酵を開始した。品温は
酵母添加後、3日間20℃、以後12℃一定で発酵を行
った。
【0057】発酵経過は、下記表12に第12表として
示した。第12表に示したとおり、発酵開始後10日目
に、温度処理(37℃・1時間)を行った。製成酒の成
分等を下記表13に第13表として示した。その結果、
実施例1と同様に、gal−31醪においては、温度処
理によりアルコール発酵を停止、日本酒度の低下の防止
による甘口・濃厚タイプの低アルコール濃度清酒の製造
が可能であった。さらに、アミノ酸度を指標とした場合
も温度処理後の低温処理により酵母からの溶出の促進が
起こっていることが確認された。
【0058】
【表12】
【0059】
【表13】
【0060】
【実施例5】第10表に示す仕込配合により、麹米40
0%、汲水歩合300%の小仕込を行った。液化には酵
素剤(α−アミラーゼ((株)天野製薬))を使用し、
蒸米を液化した後、20℃になるまで冷却し、乳酸(1
ml/lkg−米)及び酵母(106/ml)を添加
し、発酵を開始した。
【0061】発酵経過は、下記表14に第14表として
示した。第14表に示したとおり、発酵開始後15日目
に、温度処理(37℃、1時間)を行った。製成酒の成
分等を下記表15に第15表として示した。その結果、
実施例1、4と同様に、gal−31醪においては、温
度処理によりアルコール発酵を停止と日本酒度の増加が
認められた。この結果、甘口・濃度タイプの低アルコー
ル濃度清酒の製造が可能であった。さらに、アミノ酸度
を指標とした場合も、温度処理後の低温処理により酵母
からの溶出の促進が起こっていることが確認された。
【0062】
【表14】
【0063】
【表15】
【0064】
【実施例6】製成した低アルコール濃度清酒について、
5人による味及び香りについては3点法(1:優,2:
良,3:可)、総合品質については5点法(1:優←→
5:可)の官能試験を行った。得られた結果を下記表1
6に第16表として示した。製成酒としては実施例4,
5で製成した清酒について使用し試験を行った。
【0065】
【表16】
【0066】上記結果から明らかなように、実施例4で
製成した清酒については協会7号及びgal−31とも
に、区分、については甘味が強調され、味の幅がな
い等の指摘が多く、また温度処理後速やかに上槽した
(区分)ものについてもやや温度処理による香の変化
の指摘が総合評価に悪い影響を与えた。区分について
は菌株の差なく区分に比べ評点は良くなったものの、
協会7号を使用したものについては香味に幅が足りない
との指摘が見られるものの、gal−31を使用したも
のでは酵母の自己消化による香と味の幅に対する好影響
を与えていることを見出した。
【0067】実施例5で製成した清酒については温度処
理を行わない区分、について味及びアルコールとも
に少なく、水っぽいとの指摘がみられ、協会7号使用清
酒については温度処理後のものについても非処理(区分
、)のものと差異が少ないとの指摘がみられた。し
かし、gal−31使用の温度処理区分については区分
についてやや硫黄臭等の指摘が有ったが、区分につ
いては温度処理による香の変化も除去され、味的にも幅
が広がり総合評価についても良い結果となることを見出
した。
【0068】
【発明の効果】本発明にしたがって温度感受性酵母を用
い、非許容温度処理を行うことにより、該酵母を自己消
化/死滅させ、その結果、清酒醪のアルコール発酵をコ
ントロールし、また酵母菌体からの漏出物等を溶出促進
せしめ、酵素類は残存せしめ、もって、香味のすぐれた
製成酒を効率的に製造することができる。
【0069】また本発明によれば、温度感受性酵母を選
択したり、温度処理条件を各種変化させることにより、
自己消化/死滅の程度を変化させ、もってアルコール濃
度、香味成分の種類や濃度を自由に選択することがで
き、香味がすぐれしかもコクのある低アルコール濃度清
酒等各種の新しいタイプの製成清酒を効率的に製造する
ことができる。
フロントページの続き (72)発明者 坂本 裕子 東京都千代田区大手町1丁目3番2号 東京国税局課税第2部鑑定官室内 (72)発明者 猿渡 一由 東京都千代田区大手町1丁目3番2号 東京国税局課税第2部鑑定官室内 (72)発明者 小林 信也 東京都北区滝野川2丁目6番30号 国税 庁醸造試験所内 (72)発明者 秋本 雄一 東京都港区西新橋1丁目1番21号 日本 酒造組合中央会内 (56)参考文献 特開 平6−7152(JP,A) 特開 平4−365467(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12G 3/02

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 温度感受性酵母を用いる低アルコール濃
    度清酒製造の発酵中(発酵末期を除く)に温度感受性酵
    母の非許容温度処理することにより、アルコール発酵を
    制御するとともに、清酒醪中に酵母からの漏出物の溶出
    を促進し、酵素類は残在せしめ、酵素類により香味を付
    与せしめることを特徴とする香味が増強された製成酒の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 非許容温度が、温度感受性酵母のみに影
    響を与え、麹由来の醪中の酵素類の活性には影響を最小
    限にする、35℃以上、好ましくは37℃以上であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 温度感受性酵母が、サッカロミセス・セ
    レビシエ J504(Saccharomyces c
    erevisiae J504)又は協会7号清酒酵母
    を突然変異処理することにより造成したものであるこ
    と、を特徴とする請求項1〜請求項2のいずれか1項に
    記載の方法。
  4. 【請求項4】 温度感受性酵母が、サッカロミセス・セ
    レビシエ J504K−ts8(Saccharomy
    ces cerevisiae J504K−ts8,
    FERM P−11736)又はサッカロミセス・セレ
    ビシエgal−31(Saccharomyces c
    erevisiae gal−31,FERM P−1
    4078)であること、を特徴とする請求項3に記載の
    方法。
  5. 【請求項5】 製成酒が香味のすぐれた低アルコール濃
    度清酒類であることを特徴とする請求項1〜請求項4の
    いずれか1項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記
    載した方法によって製造してなる製成酒。
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