JP2686488B2 - シールド掘削機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この発明はシールド掘削機に係わり、特に、大断面か
つ任意断面のトンネルを掘削するのに好適なシールド掘
削機に関するものである。

「従来の技術」 近年、都市部の地盤等に鉄道用トンネルなどの大断面
トンネル構造物を築造する目的で、繭型に形成したスキ
ンプレートの前面に２台のカッターを設けたシールド掘
削機を用いてトンネルを構築する、マルチフェースシー
ルド工法またはダブルオーチューブ工法と呼ばれる新規
なシールド工法が提案、実施されている。

従来、前記マルチフェースシールド工法に使用する掘
削機としては、たとえば特開昭62−1998号公報に開示さ
れているように、繭型断面のスキンプレートの前面に２
台の面板型のカッターを、掘進方向に対して若干ずらし
て配置し、カッター同士の相互干渉を防ぐ構造のものが
知られており、また、ダブルオーチューブ工法に使用す
るシールド掘削機としては、カッターをスポーク型とし
てそれらを繭型断面のスキンプレート前面に配置し、ス
ポーク同士がぶつからないようにそれらの位相をずらし
た状態で互いに逆方向に回転させる構造のものが知られ
ている（たとえば特公昭61−47958号公報参照）。

「発明が解決しようとする課題」 前記従来の大断面シールド工法によれば、それぞれの
工法に適用されるシールド掘削機の特徴を生かすことに
よって、都市部の地盤等に大口径でかつ異形断面のトン
ネルを築造することができる。しかしながら、このよう
なシールド掘削機においても、たとえば次のような点で
解決すべき課題が残されている。

第１に、前記従来の大断面シールド工法に適用される
２種類のシールド掘削機は、いずれも繭型断面のスキン
プレートの前面に２台のカッターを設けた基本構造とな
っているため、これらのシールド掘削機では、馬蹄形、
矩形といった断面構造のトンネル構造物を築造すること
ができない点である。

第２に、前述した従来のシールド掘削機は、繭型断面
のスキンプレートの前面に２台のカッターを平面配置し
た構成としているので、その方向制御や修正等のマシン
の制御が難しいといった点である。

この発明は前記の事情に鑑みてなされたもので、その
目的とするところは、制御が容易であり、また大断面か
つ任意断面のトンネル掘進し得るより有効なシールド掘
削機を提供することにある。

「課題を解決するための手段」 本発明は、非円形の外殻を形成する筒状のスキンプレ
ートの前部内側に隔壁を設け、該隔壁の前方に泥水が圧
送される円形の泥水室を設けるとともに、該泥水室の外
周側には該泥水室の外形輪郭と前記スキンプレートの外
形輪郭との間に異形の泥土室を設け、前記泥水室の前面
側には当該泥水室前方の地山を円形に掘削する単一の大
口径カッターを配設する一方、前記泥土室の前面側には
当該泥土室の前方の地山を掘削するための複数の小口径
カッターをほぼ隙間なく並べて配設し、前記泥土室と前
記泥水室とを前記隔壁の前方において連通せしめるとと
もに、その連通部には泥土室内の土砂を泥水室に導くス
クリューコンベアを設け、かつ、前記泥水室には、前記
大口径カッターにより掘削されて当該泥水室に取込まれ
た掘削土砂と、前記複数の小口径カッターにより掘削さ
れて前記泥土室から前記スクリューコンベアにより前記
泥水室に導かれた掘削土砂とを外部に排出するための排
泥管を接続してなることを特徴とするものである。

「作用」 この発明では、大口径カッターが掘削する円形の切羽
を泥水室に圧送した泥水圧により安定させ、また、小口
径カッターが掘削する異形の切羽を泥水圧および泥土圧
により安定させながら、各カッターで切羽を掘削する一
方、泥土室内の土砂をスクリューコンベアにより泥水室
内に移送して泥水室内の土砂とともに排泥管により外部
に排出していくことにより、単一の大口径カッターによ
る円形部の掘削と、複数の小口径カッターによる異形部
の掘削とが可能であり、したがって円形部の外周側に異
形部が膨出した形態の異形断面のトンネルの掘削を行い
得るものである。

「実施例」 以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。

第１図ないし第３図はこの発明の第１実施例を示すも
ので、これらの図において全体として符号１で示すもの
がこの実施例にかかるシールド掘削機である。このシー
ルド掘削機１は、外殻を形成する筒状のスキンプレート
２の前部に設けられた大口径カッター３および小口径カ
ッター４により地山を掘削しつつ、内部で一次覆工用の
セグメント（コンクリートセグメント等）Ｓを組み立て
ながら地中を推進する基本構成となっている。

前記スキンプレート２は、図示例では、先端部2aを除
く他の部分が上面円弧状の断面馬蹄形状に形成されてお
り、またその前面には隔壁５が設けられている。この隔
壁５は、円形状の先端開口部を覆うようにして設けられ
た第１の隔壁部5aと、小口径カッター４を収納する如く
スキンプレート内部に形成された第２の隔壁部5bとから
構成されており、また、前記第１の隔壁部5aの前面に泥
水が圧送される円形の泥水室６が設けられ、前記第２の
隔壁部5bの前面に異形の泥土室７が設けられている。

前記泥水室６には、地山を円形に掘削する大口径カッ
ター３が配設されるとともに、その上部には送水管８の
端部が開口しており、さらにその下部には排泥管９の端
部が接続されている。一方、前記泥土室７はその奥側に
おいて泥水室６の内部に連通しており、またその内部に
は複数の小口径カッター４が泥土室７の開口部に沿って
ほぼ隙間なく並べられて設けられ、かつ、泥水室６との
連通部には、小口径カッター４で掘削した泥土を泥水室
６に向け送る左右一対のスクリューコンベア10が設けら
れている。また、前記泥土室７の一部には作泥材を送る
パイプ11の一端が開口しており、泥土室７に取り込まれ
た削土に作泥材を添加することによって削土に適度な粘
性を付与することができるように配慮されている。

なお、前記スキンプレート２の後部（テール部）には
シールド掘削機を推進させるためのシールド推進ジャッ
キ12がスキンプレート２の周方向に沿って所定数配設さ
れるとともに、セグメントＳを組み立てるためのエレク
ター13が設けられている。前記シールド推進ジャッキ12
は、エレクター13の旋回枠13aを支持する支持枠13bに貫
通配置されるとともに、スキンプレート内面の支持板部
2bに後端が支持されていて、スキンプレート後部で組み
立てらてたセグメントＳに反力を取ることにより、シー
ルド掘削機１を前方へ推進させることができるような構
成となっている。

次ぎに、スキンプレート２の前面に備えられた大口径
カッター３および小口径カッター４について説明する
と、まず、前記大口径カッター３は、切羽に対面する円
形状の面板プレート3aと、この面板プレート3aの裏面に
突設された支持枠3bと、この支持枠3bを支持しかつスキ
ンプレート２の隔壁５に軸支されたカッター回転軸3c
と、この回転軸3cを回転させる駆動モータ3dとを主体と
して構成されている。

そして、前記面板プレート3aには、第２図などに示す
如く、土砂を取り込む２条のスリット3eが面板プレート
3aの半径方向に沿う形態で面板プレート3aの四方に延在
しており、また、このスリット3eの内側にカッタービッ
ト3fが設けられている。なお、カッター回転軸3cは、ス
キンプレート２の隔壁５の位置に設けられた２種類の軸
受（スラスト軸受15aおよびラジアル軸受15b）により軸
支されるとともに、その後端外周に設けられた歯車3gに
駆動モータ3dの駆動歯車3hを噛合させることにより周方
向に回転できるような構成となっている。

一方、前記小口径カッター４は、第１図に示すよう
に、地山に貫入してこの地山を掘削する切羽部4aと、こ
の切羽部4aにより削土した土砂を後方へ送るオーガ部4b
と、このオーガ部4bを回転駆動させる駆動機構4cとを主
体として構成されており、図示例では、このような構成
の小口径カッター４が異形の開口部に沿って９台配置さ
れている。

また、前記切羽部4aはオーガ部4bの先端に一体に取り
付けられており、さらに泥土室７の奥側に設けられた仕
切板4dを隔てて前記小口径カッター４の駆動機構4cが設
けられた構成となっている。なお、図示例では、前記駆
動機構4cにスクリューコンベア10の駆動機構が組み込ま
れており、小口径カッター４の回転とともにスクリュー
コンベア10が回転するような構成となっている。

なお、図中符号20は、シールド掘削機１のスキンプレ
ート２の後端部内面に設けられ、スキンプレート２の内
面で組み立てられたセグメントＳとスキンプレート２と
の間の間隙を閉塞するテールパッキンである。

次に、この実施例のシールド掘削機１の作用について
説明する。

このような構成のシールド掘削機１を用いて地盤を掘
削する場合には、まず、第１図に示すように、送水管８
を介して泥水室６内を泥水加圧し、大口径カッター３に
より掘削される円形部の切羽を安定させるとともに、ス
クリューコンベア10の排土量を調整することによって、
小口径カッター４により掘削される異形部に泥水圧と泥
土圧とを発生させて、切羽の崩壊を防止する。

次いで、泥水室６に配設された大口径カッター３を駆
動させることによって先端の地山を円形に泥水掘削する
とともに、泥土室７に配設された複数の小口径カッター
４を駆動させて異形部の切羽を掘削する一方、セグメン
トＳに反力をとってシールド推進ジャッキ12を駆動し、
シールド掘削機１を推進させることにより泥水室６およ
び泥土室７内に土砂を取り込んでいく。そして、その
際、小口径カッター４によって掘削された土砂を、カッ
ター４のオーガ部4bにより取り込みながら、スクリュー
コンベア10によって泥水室６に案内した後、大口径カッ
ター３の掘削により泥水室６内に取り込んだ土砂ととも
に、排泥管９を介して外部に排出していく。そして、こ
のようにして地山を一定量掘削した後、シールド掘削機
１の後方でセグメントＳを組み立てて覆工を行い、さら
にこれら一連の作業を繰り返すことによってトンネルを
築造していく。

なお、前記において、パイプ11を介して泥土室７に向
け作泥材を注入し、泥土室７に取り込まれる土砂に適度
な粘性を与えて流動性を向上させた方が、切羽の安定性
をより高めることができるので好ましい。

このように、この実施例のシールド掘削機１によれ
ば、大口径カッター３で掘削する円形の切羽を泥水圧に
より安定させ、また複数の小口径カッター４で掘削する
異形の切羽を泥水圧および泥土圧により安定させて大口
径カッター３および小口径カッター４で掘削した土砂を
流体輸送していく構成としているので、図示例のような
馬蹄形状でかつ大断面を容易に掘削形成することが可能
になり、また、異形部のみを小口径カッター４を利用し
て掘削するようにしているから、方向制御等マシンの制
御も簡単であるといった利点がある。

しかも、実施例では、小口径カッター４で掘削した土
砂を、泥土室７に取り込んだあと、泥水室６に導いて泥
水室６内に直接取り込んだ土砂とともに排泥管９を介し
て外部に排出するようにしているので、排土設備として
は、泥水式シールド工法において従来より広く採用され
ている汎用のシールド掘削機における設備をそのまま転
用することが可能になり、イニシャルコストの低減を図
ることが可能になるといった利点がある。

第４図および第５図はこの発明の第２実施例を示すも
ので、この実施例では、円形の泥水室６の左右両側に泥
土室７を形成したスキンプレート2Aによってシールド掘
削機の外殻を構成し、さらに大口径カッター３の外周面
に出没自在のコピーカッター30を設けたことを最大の特
徴とするもので、他の構成については、先の実施例と同
様に、泥水室６に大口径カッター３を配設し、泥土室７
に複数の小口径カッター４を配設したものである。

しかして、このような構成のシールド掘削機によれ
ば、第５図などに示すような、内部に１組のコンクリー
ト道床35を有する馬蹄形断面のトンネル構造物を築造し
ていくことが可能になる。ちなみに、このトンネル構造
物を構成するセグメントＳとしては、床版部を構成する
平面状のセグメントS₁、このセグメントS₁の両側に連結
される一部が屈曲したセグメントS₂、一定の曲率で湾曲
した円弧版状のセグメントS₃、およびキイセグメントS₄
などが使用される。

なお、前記各実施例では、馬蹄形状のシールドトンネ
ルを築造する場合に用いられるシールド掘削機を例にと
って説明したが、この発明はこれら実施例に限定される
ものではなく、円形部と異形部の組み合わせにより箱形
シールド、繭型シールド等様々な断面の掘削も可能であ
ることは言うまでもない。

「発明の効果」 以上説明したようにこの発明は、泥水室の前方に設け
た単一の大口径カッターによって円形部を掘削するとと
もに、円形部の外周側の異形部には泥土室を設けてその
前部にほぼ隙間なく並べて設けた複数の小口径カッター
によって異形部を掘削する構成であるから、円形部およ
び異形部の切羽を泥水圧および泥土圧により安定させつ
つ、任意の異形断面（たとえば馬蹄形状）でかつ大断面
のトンネル構造物を容易に築造することが可能になり、
また、異形部のみを小口径のカッターを利用して掘削す
るようにしているから、方向制御等マシンの制御も簡単
であるといった優れた効果を奏する。

また、本発明では、小口径カッターで掘削した土砂
を、泥土室に取り込んだあと、泥水室に導いて泥水室内
に直接取り込んだ土砂とともに外部に排出するようにし
ているので、排土設備は泥水式シールド工法に用いるシ
ールド掘削機の設備のみで対応することが可能になり、
イニシャルコストの低減を図ることが可能になるといっ
た利点がある。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図はこの発明の第１実施例を示すもの
で、第１図はシールド掘削機の断面図、第２図は第１図
II−II線に沿う矢視図、第３図は第１図III−III線に沿
う矢視断面図、第４図および第５図はこの発明の第２実
施例を示すもので、第４図はシールド掘削機の半断面
図、第５図はこのシールド掘削機を使用して築造したト
ンネル構造物の断面図である。 １……シールド掘削機、２……スキンプレート、３……
大口径カッター、４……小口径カッター、５……隔壁、
６……泥水室、７……泥土室、８……送水管、９……排
泥管、10……スクリューコンベア、12……シールド推進
ジャッキ。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】非円形の外殻を形成する筒状のスキンプレ
   ートの前部内側に隔壁を設け、該隔壁の前方に泥水が圧
   送される円形の泥水室を設けるとともに、該泥水室の外
   周側には該泥水室の外形輪郭と前記スキンプレートの外
   形輪郭との間に異形の泥土室を設け、 前記泥水室の前面側には当該泥水室前方の地山を円形に
   掘削する単一の大口径カッターを配設する一方、 前記泥土室の前面側には当該泥土室の前方の地山を掘削
   するための複数の小口径カッターをほぼ隙間なく並べて
   配設し、 前記泥土室と前記泥水室とを前記隔壁の前方において連
   通せしめるとともに、その連通部には泥土室内の土砂を
   泥水室に導くスクリューコンベアを設け、 かつ、前記泥水室には、前記大口径カッターにより掘削
   されて当該泥水室に取込まれた掘削土砂と、前記複数の
   小口径カッターにより掘削されて前記泥土室から前記ス
   クリューコンベアにより前記泥水室に導かれた掘削土砂
   とを外部に排出するための排泥管を接続してなることを
   特徴とするシールド掘削機。