JP2717220B2 - シールド掘削機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この発明は、トンネルを構築するシールド工法に用い
るシールド掘削機に係り、特に、大断面かつ任意断面の
トンネルを形成する際に用いて好適なシールド掘削機に
関する。

「従来の技術」 近年、都市部の地盤等に鉄道用トンネル等の大断面ト
ンネルを構築する目的で、繭型に形成したスキンプレー
トの前面に２台のカッタを設けたシールド掘削機を用い
てトンネルを形成する、マルチフェイスシールド工法、
あるいはダブルオーチューブ工法と呼ばれる新規なシー
ルド工法が提案、実施されている。

前者の工法に使用する掘削機としては、繭型断面のス
キンプレートの前面に２台の面板型のカッタを、掘進方
向に対して若干ずらして配置し、カッタどうしの相互干
渉を防ぐ構造のものが知られている（特開昭62−1998号
公報参照）。また、後者の工法に使用する掘削機として
は、カッタをスポーク型として、それらを繭型断面のス
キンプレート前面に配置し、スポークどうしがぶつから
ないように、それらの位相をずらした状態で、互いに逆
方向に回転させる構造のものが知られている（特公昭61
−47958号公報参照）。

しかしながら、上記各大断面シールド工法に適用され
る２種類のシールド掘削機は、いずれも繭型断面のスキ
ンプレートの前面に２台のカッタを並列配置した基本構
造とされているため、これらのシールド掘削機では、馬
蹄形、矩形といった断面構造のトンネル構造物を構築で
きない点や、方向制御や修正等のマシン制御が難しいと
いった欠点があった。

「発明が解決しようとする課題」 そこで、本出願人は、上記課題を解決すべく、制御が
容易であり、大断面かつ任意断面のトンネルを掘進し得
る、より有効なシールド掘削機を先に出願した（特願平
１−34448号）。

この出願にかかるシールド掘削機１は、第４図および
第５図に示すように、大口径カッタ３が掘削する円形の
切羽を、泥水圧室７内に圧送した泥水圧により安定さ
せ、また、小口径カッタ４が掘削する異形の切羽を、泥
水圧および泥土圧により安定させながら、各カッタ３、
４により切羽を掘削する一方、泥土圧室８内の土砂を内
側スキンプレート６のスリット6aにより泥水圧室７内に
移送させて泥水圧室８内の土砂とともに外部に排出して
いくものである。したがって、従来泥土圧シールド工法
に要したスクリューコンベアは不要となり、円形部と異
形部との組み合わせによって、非円形かつ大断面のトン
ネルを容易に構築することができる。さらには、大口径
カッタ３に内側スキンプレート６を一体に形成すること
で、泥土圧室８内および泥水圧室７内の土砂に流動性が
与えられて土砂の排出効率が向上する利点を備えてい
る。

しかしながら、このシールド掘削機においては、第５
図に示すように、泥土圧室８から泥水圧室７への土砂の
取込口として、内側スキンプレート６の一部に単にスリ
ット6aを形成しただけの構成であるから、土砂をスリッ
ト6a内に確実に取り込む上で不安があり、したがって土
砂の取込効率を改善する余地が残されていた。

この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、泥土
圧室から泥水圧室への土砂の取込効率を向上できるシー
ルド掘削機を提供することを目的としている。

「課題を解決するための手段」 この発明は、非円形の外殻を形成する筒状の外側スキ
ンプレートの前部に隔壁を設け、かつこの隔壁前方であ
って前記外側スキンプレートの内部に円形の内殻を形成
する円筒状の内側スキンプレートを設けることにより、
この内側スキンプレート内を泥水が圧送する円筒形の泥
水圧室として、また、前記内側スキンプレートと前記外
側スキンプレートとの間に形成される異形のスペースを
泥土圧室として構成し、さらに、前記泥水圧室の開口部
に地山を円形に掘削する大口径カッタを前記内側スキン
プレートと略同軸的に配設し、前記泥土圧室の開口部に
複数の小口径カッタをその開口部に沿って配設してなる
シールド掘削機であって、前記内側スキンプレートを前
記大口径カッタと一体に形成し、この内側スキンプレー
トに、一部に前記泥土圧室内と前記泥水圧室内に連通す
る開口部を有する凹部を周方向に沿って一又は二以上設
けたものである。

「作用」 本発明のシールド掘削機によれば、トンネル掘進中に
泥土圧室の開口部に沿って配設した小口径カッタにより
掘削されかつ泥土圧室内に送り込まれた土砂は、大口径
カッタとともに一体に回転する内側スキンプレートの外
周面に形成された凹所内に確実に取り込まれ、凹部の開
口部を介して内側スキンプレート内部の泥水圧室内に移
送される。これにより土砂の取込効率が向上し、土砂の
移送、排出が効率的に行なわれる。

「実施例」 以下、この発明の実施例について図面を参照して説明
する。

第１図ないし第３図は、この発明の一実施例であるシ
ールド掘削機を示している。これら図において、符号１
全体で表されるものはシールド掘削機である。

このシールド掘削機１は、外殻を形成する非円形の筒
状の外側スキンプレート２の前部に大口径カッタ３（カ
ッタ装置）および小口径カッタ４が設けられ、各カッタ
３、４により地山を掘削しつつ、外側スキンプレート２
の内部で、一次覆工用のセグメントＳを組み立てながら
地中を掘進する基本構成とされている。

外側スキンプレート２は、略断面矩形状に形成された
もので、その前部には、先端開口部を覆って隔壁５が設
けられている。この隔壁５の前面であって外側スキンプ
レート２内の略中央には、内殻を形成する円筒形状の内
側スキンプレート６が一体に固着されている。そして、
この内側スキンプレート６内が、泥水が圧送される円形
の泥水圧室７として、また、内側スキンプレート６と外
側スキンプレート２との間に形成される異形のスペース
が、泥土圧室８とされている。

前記内側スキンプレート６の外周面には、泥水圧室８
内の土砂を泥土圧室６内に取り込むための凹部９…が周
方向に沿って間隔をおいて複数設けられている。これら
凹部９は、本実施例では周方向に３等分する位置に設け
られている。そして、各凹部９…の周方向内側面には、
泥水圧室７と泥土圧室８とを連通する開口部9a,9aがそ
れぞれ設けられている。

また、外側スキンプレート２の内周面には、第１図に
示すように、天地左右に泥土圧室８内の土砂を撹拌する
断面台形状の撹拌翼10がトンネル軸方向に延びて設けら
れている。これらの撹拌翼10によって撹拌された泥土圧
室８内の土砂は、流動性が与えられ、泥土圧室８から内
側スキンプレート６の上記凹部９…に取り込まれ、各開
口部9aを介して泥水圧室７に移送されるようになってい
る。

泥水圧室７の開口部には、地山を円形に掘削する前記
大口径カッタ３が配設されている。この大口径カッタ３
は、内側スキンプレート６よりも若干縮径され、切羽に
対面する円形状のカッタヘッド11と、カッタヘッド11内
に、その径方向に伸縮自在に装着された伸縮カッタ12
と、カッタヘッド11の軸心から後方に延びて図示しない
軸受に回転自在に支持された回転軸13と、この回転軸13
をギア14aを介して軸回りに回転させる駆動モータ14と
を主体として構成されている。前記回転軸13は、内側ス
キンプレート６の軸心と一致して延びており、すなわち
カッタヘッド11は内側スキンプレート６と同軸的に配設
されている。

カッタヘッド11には、第１図に示すように、土砂を取
り込むスリット11aが、放射状に複数組（この実施例で
は４組）形成されており、各スリット11aには、多数の
カッタビット15が固定されている。

また、伸縮カット12は、カッタヘッド11の周部の三等
分位置に設けられている。この伸縮カッタ12の突出量
は、その先端が外側スキンプレート２の外周面と一致す
る位置を最大として、図示しない制御部により無段階に
制御されるようになっている。

上記大口径カッタ３によれば、駆動モータ14の動力
が、ギア14a、回転軸13を介してカッタヘッド11に伝達
してカッタヘッド11を回転し、カッタビット15によって
地山を円形に掘削する。さらに、このようにカッタヘッ
ド11を回転させている最中に、伸縮カッタ12を、その先
端が外側スキンプレート２の外周面に沿うようその突出
量を制御すれば、泥土圧室８前方の地山を掘削する。

また、泥土圧室８の開口部には、四隅に大口径カッタ
３との間の切羽を掘削する小口径カッタ４がそれぞれ設
けられている。この小口径カッタ４は、切羽に対面し、
その面にカッタビット16aを有する面板プレート16と、
この面板プレート16の軸心から後方に延びる軸受けに回
転自在に支持された回転軸17と、この回転軸17を軸回り
に回転させる駆動モータ18とを備えた構成とされてい
る。

これら小口径カッタ４によれば、駆動モータ18の動力
が、回転軸17を介して面板プレート16に伝達して面板プ
レート16が回転し、カッタビット16aによって地山を掘
削する。その掘削範囲は、外側スキンプレート２内にお
ける大口径カッタ３の掘削範囲を除く、泥土圧室８の前
面である異形部である。

一方、前記泥水圧室７の上部には、送水管19の端部が
開口しており、さらにその下部には、排泥管20の端部が
接続されている。

また、外側スキンプレート２内には、シールド掘削機
１自身を前方に推進させるためのシールドジャッキ21
が、外側スキンプレート２の周方向に沿って複数配設さ
れているとともに、セグメントＳを組み立てるためのエ
レクタ装置22が設けられている。

シールドジャッキ21は、外側スキンプレート２内面に
固定された支持板23に後端が支持され、エレクタ装置22
によって組み立てられたセグメントＳの最前端に反力を
取ることにより、シールド掘削機１自身を前方に推進さ
せるよう構成されている。

上記構成からなるシールド掘削機１を用いて地山を掘
削するには、まず、送水管19から泥水圧室７内に泥水を
供給して泥水圧室７内を泥水加圧し、大口径カッタ３の
カッタヘッド11前面の切羽を安定させる。

次いで大口径カッタ３および小口径カッタ４を作動さ
せて外側スキンプレート２前面の切羽を掘削する。

一方、エレクタ装置22によりトンネル周壁に組み付け
たセグメントＳ…の最前端に反力を取ることにより、シ
ールドジャッキ21を伸長してシールド掘削機１自身を前
方に推進させ、泥水圧室７内および泥土圧室８内に土砂
を取り込んでいく。

この際、小口径カッタ４および伸縮カッタ12によって
掘削され泥土圧室８に送り込まれた土砂は、カッタヘッ
ド11の回転に伴って内側スキンプレート６の各凹部９に
より十分に撹拌されつつ取り込まれ、その開口部6aを通
って泥水圧室８内に移送される。開口部6aは内側スキン
プレート６の回転方向に略直角に開口するため、凹部９
内に入り込んだ土砂が確実に泥水圧室７内に取り込まれ
ることになり、その取込効率は非常に高いものである。

１セグメント分掘進したら、シールド掘削機１を停止
すると同時に、シールド掘削機１内部でセグメントＳの
最前端に新たなセグメントＳを組み付ける。一方、泥水
圧室７内に取り込んだ泥水を含む土砂は、排泥管20によ
ってトンネル後方に排出する。この土砂は、最終的に地
山に運搬されて、土砂と泥水とに分離され、泥水は再び
送水管19から泥土圧室８内に供給される。

このように、本実施例のシールド掘削機１によれば、
泥土圧室８内の土砂は、回転する内側スキンプレート６
周部の凹凸および外側スキンプレート２内周面の撹拌翼
10により十分に撹拌することができる。さらには、凹部
９に入り込んだ土砂は、その内側面の開口部9aから確実
かつ容易に泥水圧室７内に落とし込むことができ、土砂
の取込み効率および排出効率を向上させることができ
る。したがって、土砂の流体輸送を速やかに行うととも
に、作業時間の短縮化を図れる。

「発明の効果」 以上詳細に説明したように、この発明のシールド掘削
機によれば、外殻を形成する外側スキンプレートの内部
に配した内側スキンプレートの周方向に一又は二以上の
凹部を設け、この凹部に、内側スキンプレートの内外に
それぞれ形成される泥土圧室および泥水圧室を連通する
開口部を設けることによって、泥土圧室内の土砂を、凹
部に容易に取り込むとともに、その開口部を介して泥水
圧室内に確実に移送することができる。これにより、泥
水圧室内への土砂の取込み効率を向上させることがで
き、土砂の排出を速やかに行うことができる効果を奏す
る。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図はこの発明の一実施例を示す図であ
って、第１図はシールド掘削機の背面図、第２図はシー
ルド掘削機の概略構成図、第３図は大口径カッタおよび
内側スキンプレートの斜視図、第４図および第５図はシ
ールド掘削機の従来例を示すもので、第４図はシールド
掘削機の概略構成図、第５図は大口径カッタおよび内側
スキンプレートの斜視図である。 １……シールド掘削機、 ２……外側スキンプレート、 ３……大口径カッタ（カッタ装置）、 ６……内側スキンプレート、 ７……泥水圧室、８……泥土圧室、 ９……凹部、9a……開口部。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】非円形の外殻を形成する筒状の外側スキン
   プレートの前部に隔壁が設けられ、且つこの隔壁前方で
   あって前記外側スキンプレートの内部に円形の内殻を形
   成する円筒状の内側スキンプレートが設けられることに
   より、この内側スキンプレート内を泥水が圧送される円
   筒形の泥水圧室として、また、前記内側スキンプレート
   と前記外側スキンプレートとの間に形成される異形のス
   ペースを泥土圧室として構成され、さらに、前記泥水圧
   室の開口部に地山を円形に掘削するカッタ装置が前記内
   側スキンプレートと略同軸的に配設されてなるシールド
   掘削機であって、前記内側スキンプレートは前記カッタ
   装置と一体に形成され、この内側スキンプレートには、
   周方向に沿って一又は二以上の凹部が設けられ、この凹
   部には前記泥土圧室内と前記泥水圧室内とを連通する開
   口部が設けられていることを特徴とするシールド掘削
   機。