JP2668586B2 - 低融点合金鋳物の金型鋳造法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、保持炉内の低融点合金をシリンダ・ピスト
ンおよびノズルを介し金型に加圧注入して低融点合金鋳
物を製造する方法の改良に関する。

（従来技術とその課題） 近年、実公昭60−5968号公告公報や実開昭61−63354
号公開公報に記載されている金型鋳造機を用いてビスマ
スあるいはアンチモンを含有する低融点合金鋳物を鋳造
する方法、すなわち、保持炉内の溶融低融点合金をシリ
ンダ・ピストンおよびノズルを介し金型に加圧注入して
低融点合金鋳物を製造する方法が提案されている。

ところで、上記の金型鋳造機を用いて鋳物を鋳造する
方法においては、ピストンを下降させて保持炉内の溶融
金属を金型に加圧注入し、注入された溶融金属が凝固し
若干収縮して金型のキャビティ面と、溶融金属が凝固し
て成る鋳物との間に隙間が形成され、ノズルの先端開口
部がその隙間を介して外気に連通された後、ピストンを
上昇端まで上昇させてノズルに吸引作用を働かせ、ノズ
ル内の溶融金属を吸い出して保持炉内に回収し、その
後、金型を開いて鋳物を取り出すのが一般的である。

一方、溶融低融点合金は凝固時に若干膨張する性質が
あるため、金型に注入された溶融低融点合金が凝固して
鋳物になっても、該鋳物とキャビティ面との間に隙間が
形成されることはない。したがって、上記の金型鋳造機
を用いて低融点合金鋳物を鋳造する際に、従来方法のよ
うに、溶融低融点合金をピストンをもって金型に加圧注
入し、注入された溶融低融点合金の凝固後、ピストンを
上昇端まで上昇させてノズル内の溶融低融点合金を保持
炉内に吸引回収しようとしても、ノズルの先端開口部が
外気と連通されていないため、シリンダ内におけるピス
トンの下部空間が負圧状態になった後、この下部空間内
に保持炉内の溶融低融点合金が吸い込まれて満され、そ
れに伴ないノズル内の溶融低融点合金の全部を吸引回収
することができず、その結果、金型を開いた時、ノズル
内に残留していた溶融低融点合金の一部が、金型の注入
口あるいは外部に流出して次回の鋳造作業に悪影響を及
ぼすなどの問題があった。

本発明は、上記の問題を解消するためになされたもの
である。

（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するために本発明の金型鋳造法におい
ては、保持炉内の溶融低融点合金をピストンの下降によ
り金型に加圧注入し、注入された溶融低融点合金が凝固
した後、ピストンを若干上昇させ、その後引き続きピス
トンを上昇させながら前記金型を開いてノズルに吸引作
用を働かせるようにしたものである。

（作 用） 金型に注入された溶融低融点合金が凝固した後、ピス
トンを若干上昇させてシリンダ内を若干負圧状態にし、
その後、引き続きピストンを上昇させながら前記金型を
開き、これにより、ノズル先端を外気に解放しノズルに
十分に吸引作用を働らかせてノズル内の溶融低融点合金
を吸い出すことができる。

（実施例） 実施例について図面を参照して説明すると、機台
（１）上の左側には金型開閉機（２）が設置されてお
り、該金型開閉機（２）は、固定金型（３）を取り付け
た固定ダイベース（４）と、該固定ダイベース（４）と
対向して固設された固定ベース（５）と、固定ダイベー
ス（４）と固定ベース（５）との間に架設されたタイバ
ー（６）（６）と、該タイバー（６）（６）に左右摺動
自在に装架された可動金型（７）取付用可動ダイベース
（８）と、固定ベース（５）に装着されて可動ダイベー
ス（８）を左右に往復動させる横向きシリンダ（９）と
で構成されている。また、前記機台（１）上の右側に
は、溶融低融点合金（Ｍ）を貯留した保持炉（10）が設
置され、該保持炉（10）内には、有底円筒状を成しかつ
上部に供給孔（11）を、また下部に吐出口（12）をそれ
ぞれ穿設した上下方向に指向するシリンダ（13）が、溶
融低融点合金（Ｍ）内に埋没された状態で設けられてい
る。また、該シリンダ（13）内には、下向きのシリンダ
（14）を介して昇降するピストン（15）が、上下摺動可
能に嵌合されており、前記シリンダ（13）の吐出口（1
2）はノズル（16）を介して前記固定金型（３）の注入
口（3a）に連通接続されている。また、シリンダ
（９）、（14）は、電磁式方向切換弁（17）、（18）を
それぞれ介して油圧ユニット（図示せず）に連通接続さ
れており、該電磁式方向切換弁（17）、（18）は制御盤
（19）に電気的に接続されている。

次にこのように構成された装置を用いて、低融点合金
鋳物の鋳造の手順について述べると、図示する状態から
電磁式方向切換弁（18）を切り換えてシリンダ（14）を
伸長作動させ、ピストン（15）を下降させて保持炉（1
0）内の溶融低融点合金（Ｍ）を、ノズル（16）から押
し出し固定金型（３）と可動金型（11）とで画成された
キャビティ（Ｃ）内に加圧注入する。キャビティ（Ｃ）
内に注入された溶融低融点合金（Ｍ）が凝固した後、電
磁式方向切換弁（18）の切換えによりシリンダ（14）を
収縮作動させてピストン（15）の上昇を開始し、該ピス
トン（15）が若干上昇した時に、引き続きピストン（1
5）を上昇させながら、電磁式方向切換弁（17）を切り
換えてシリンダ（９）を収縮作動し、可動金型（７）を
可動ダイベース（８）を介して左方へ移動させ、いわゆ
る金型を開く。すると、ピストン（15）の若干の上昇に
より、ノズル（16）には小さい吸引作用が働き、その
後、ピストン（15）の上昇の下に可動金型（７）が左方
へ移動されて固定金型（３）の注入口（3a）が空にさ
れ、ノズル（16）の先端開口部が開放される。この結
果、ノズル（16）に大きな吸引作用が働き、ノズル（1
6）内に残留している溶融低融点合金（Ｍ）は、ピスト
ン（15）の上昇に伴ってノズル（16）内から吸い出され
てシリンダ（13）内に回収される。そして、ピストン
（15）はシリンダ（13）の供給孔（11）の上方位置まで
上昇されて停止され、これにより、溶融低融点合金
（Ｍ）が供給孔（11）からシリンダ（13）内に流入す
る。こうして、可動金型（７）を左方端まで移動させた
後、溶融低融点合金（Ｍ）が凝固して成る鋳物製品を可
動金型（７）から取り出し、続いて、電磁式方向切換弁
（17）の切換えによりシリンダ（９）を伸長作動させ、
可動金型（７）を右方へ移動させていわゆる金型を閉
じ、一サイクルを終了する。

（発明の効果） 以上の説明からも明らかなように本発明は、金型に注
入した溶融低融点合金の凝固後、ピストンを若干上昇さ
せ、その後引き続きピストンを上昇させながら金型を開
くようにしたから、ノズルの先端開口部が開放されてノ
ズルに大きな吸引作用が働き、ノズル内に残留している
溶融低融点合金の全部を適確にノズルから吸い出して保
持炉内に回収することができる効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施に用いる金型鋳造設備の一部断面
正面図である。 （３）：固定金型、（７）：可動金型 （10）：保持炉、（13）：シリンダ （15）：ピストン、（16）：ノズル （19）：制御盤

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−47566（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】保持炉内の溶融低融点合金を、シリンダ・
   ピストンおよびノズルを介し金型に加圧注入して低融点
   合金鋳物を製造するようにした低融点合金鋳物の金型鋳
   造法において、 前記保持炉内の溶融低融点合金を前記ピストンの下降に
   より前記金型に加圧注入し、注入された溶融低融点合金
   が凝固した後、前記ピストンを若干上昇させて前記シリ
   ンダ内を若干負圧状態にし、その後引き続きピストンを
   上昇させながら前記金型を開きもって前記ノズルに吸引
   作用が及ぶようにしたことを特徴とする低融点合金鋳物
   の金型鋳造法。