JP2667969B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエステル樹脂
とエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物との相溶性が著
しく改善された組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物
(以下、EVOHと省略することがある)とポリエステ
ル樹脂のブレンド組成物は特徴のある物性を備えてい
る。殊に、各種熱可塑性樹脂とEVOHの多層共押出成
形時に、熱可塑性樹脂層あるいはEVOH層に代えて、
ブレンド組成物を使用したり、あるいは熱可塑性樹脂と
EVOH層の中間にブレンド組成物の層を設けることに
よって層間接着力を向上させることができる。また、ブ
レンド組成物単独を溶融押出成形し、さらに必要に応じ
て延伸および/あるいは熱処理して得られるフィルム、
シートあるいはボトルなどの成形物は気体遮断性と力学
的物性に優れている。このようなポリエステル樹脂とE
VOHのブレンド組成物の特徴は従来も知られていた
が、この組成物は一般に相溶性が悪く、押出成形により
フィルム、シート、ボトルなどを成形すると、不均一な
相分離異物を生じやすく、特に長時間の運転によりこの
異物が増加して外観を著しく損ねることが知られてい
る。こうして、ポリエステル樹脂とEVOHのブレンド
組成物は、その優れた特徴にもかかわらず押出成形が実
用的に全く実施できないか、できても短時間しか運転で
きないのが実情であった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
相溶性不良を解消するためになされたものであり、外観
美麗な成形物を得ることを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記目的は、ポリエステ
ル樹脂(A)およびEVOH(B)に周期律表I族、II
族およびIII族から選ばれる少なくとも1種の金属の脂
肪酸塩(C)を適当量含有させることによって達成され
る。この組成物を用いて成形した場合にはポリエステル
樹脂とEVOHの相溶性が顕著に改善され、外観が美し
く、かつ層間接着力の高い共押し出し成形品、あるいは
気体遮断性と力学的物性に優れた成形物が得られる。 【0005】 【発明の実施の形態】本発明にいうポリエステル樹脂と
しては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチ
レンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート
/イソフタレート)、ポリ(エチレングリコール/シク
ロヘキサンジメタノール/テレフタレート)などがその
代表としてあげられ、さらにこれらの重合体に共重合成
分としてエチレングリコール、ブチレングリコール、シ
クロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、
ペンタンジオールなどの低分子量ジオール類、あるいは
イソフタル酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ジフェニ
ルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン
酸、プロピレンビス(フェニルカルボン酸)、ジフェニ
ルオキサイドジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハ
ク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン
酸、アゼライン酸、セバチン酸、ジエチルコハク酸など
の低分子量ジカルボン酸をランダム共重合せしめたもの
も含まれる。 【0006】また、本発明にいうエチレン−酢酸ビニル
共重合体鹸化物(EVOH)(B)とはエチレンと酢酸
ビニルの共重合体中の酢酸ビニル単位を加水分解したも
のであれば任意のものを含むものであるが、熱可塑性樹
脂との相溶性が不良であるものは比較的エチレン単位が
少なく酢酸ビニル単位の鹸化度(加水分解度)が高いも
のである。特に、エチレン単位の含量が20〜50モル
%で、酢酸ビニル単位の鹸化度が96%以上、とりわけ
99%以上のものは酸素などの気体に対する気体遮断性
が熱可塑性樹脂中で最高の水準にあり、かつ、ポリオレ
フィンと複合して用いることにより優れた容器類が得ら
れることから、本発明の適用対象として特に重要であ
る。 【0007】更に、本発明の組成物を構成する、周期律
表I族、II族およびIII族から選ばれる少なくとも1種
の金属の脂肪酸塩(C)としては多くの化合物が挙げら
れるが、とりわけマグネシウム、カルシウム、亜鉛など
周期律表II族の金属の脂肪酸塩が特に有効に作用する傾
向が見出されている。脂肪酸の金属(I族、II族あるい
はIII族)塩を構成する脂肪酸としては酢酸、プロピオ
ン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、などの低級脂肪
酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸などの高
級脂肪酸が挙げられる。このうち、炭素数が8〜22の
範囲の高級脂肪酸の金属塩、とりわけ、カルシウム塩、
マグネシウム塩、亜鉛塩が本発明の目的に特に好適であ
る。これらの(C)成分は、単独または2種以上混合し
て使用される。 【0008】本発明の組成物を構成する(A)および
(B)の組成としては、ポリエステル樹脂(A):EV
OH(B)の重量比として60:40〜99.9:0.
1、とりわけ70:30〜99.7:0.3の範囲のも
のが挙げられ、この範囲内の組成を選択することによっ
て、力学的特性に優れるのみならず、気体遮断性に優れ
る樹脂組成物とすることができる。また、相溶性を改善
する、脂肪酸塩(C)の添加量は(A)、(B)および
(C)成分の種類に応じて相溶性改良効果が得られ、な
おかつ組成物の力学的物性、透明性、気体遮断性などの
諸物性を損なわない範囲で調整されるが、多くの場合、
その量はポリエステル樹脂(A)とEVOH(B)の重
量の和(A+B)100部に対して0.00001〜1
0部、とりわけ0.0001〜1部の範囲で用いられ
る。10部を越えると相溶性以外の諸物性が損なわれや
すく好ましくない場合が多い。また、(C)成分をあら
かじめポリエステル樹脂および/あるいはEVOHに配
合しておく場合には使用効果が高い傾向にある。EVO
Hに配合しておく例としてはEVOH100部に(C)
成分を0.002〜0.5部配合したものが挙げられ
る。この配合物0.5部とポリエステル樹脂99.5部
を添加した組成物の溶融成形における相溶性改良効果は
顕著である。この場合、ポリエステル樹脂とEVOHの
重量の和100部に対する(C)成分の量は0.000
01〜0.0025部となる。(C)成分の量が0.0
0001部より少ない場合には一般にその効果は小さ
い。こうして、(C)成分をEVOHにブレンドした場
合にはその添加量は見かけ上少なくなる場合でも効果は
大きいといえる。 【0009】本発明の組成物を得るためのブレンド方法
は特別に制限はなく、3者をドライブレンドする方法、
あるいは(C)成分をポリエステル樹脂またはEVOH
の全部または一部にあらかじめ配合しておき、それをポ
リエステル樹脂および/またはEVOHに配合して、前
記(A)、(B)および(C)からなる組成物を得る方
法などが目的に応じて任意に選ばれる。一般には、前述
のようなEVOHに配合しておく方法に加えて、ドライ
ブレンドする方法あるいはあらかじめポリエステル樹脂
に配合しておく方法を組合せることによりとりわけ顕著
に相溶性改良効果を得ることができる。 【0010】本発明において、周期律表I族、II族ある
いはIII族の金属の脂肪酸塩(C)が、ポリエステル樹
脂とEVOHの溶融成形における相溶性をかくも顕著に
向上させる機構は十分明らかではないが、ポリエステル
樹脂とEVOHの溶融系におけるレオロジー的効果、不
純物の化学的作用などが複雑に組合わさった状態におい
て(C)成分が有効に作用しているものと推定される。 【0011】本発明の組成物に対しては熱可塑性樹脂に
慣用の他の添加剤を配合することができる。このような
添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑
剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、あるいは他の
高分子化合物を挙げることができ、これらを本発明の作
用効果が阻害されない範囲内でブレンドすることができ
る。添加剤の具体的な例としては次の様なものが挙げら
れる。 【0012】酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイ
ドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾー
ル、4,4´−チオビス−(6−t−ブチルフェノー
ル)、2,2´−メチレン−ビス(4−メチル−6−t
−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3´,5
´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロ
ピオネート、4,4´−チオビス−(6−t−ブチルフ
ェノール)等。紫外線吸収剤:エチル−2−シアノ−
3,3−ジフェニルアクリレート、2−(2´−ヒドロ
キシ−5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2
−(2´ヒドロキシ−3´−t−ブチル−5´−メチル
フェニル)−5−クロロベンゾトリアール、2−ヒドロ
キシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2´ージヒド
ロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ
−4−オクトキシベンゾフェノン等。可塑剤:フタル酸
ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、ワ
ックス、流動パラフィン、リン酸エステル等。帯電防止
剤:ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタン
モノパルミテート、硫酸化オレイン酸、ポリエチレンオ
キシド、カーボワックス等。滑剤:エチレンビスステア
ロアミド、ブチルステアレート等。着色剤:カーボンブ
ラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、
アゾ系顔料、酸化チタン、ベンガラ等。充填剤:グラス
ファイバー、アスベスト、マイカ、バラストナイト、ケ
イ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム
等。 【0013】本発明の組成物を得るための各成分の配合
手段としては、リボンブレンダー、高速ミキサー、コニ
ーダー、ミキシングロール、押出機、インテイシブミキ
サー等が例示される。 【0014】本発明の樹脂組成物は、周知の溶融押出成
形機、圧縮成形機、トランスファ成形機、射出成形機、
吹込成形機、熱成形機、回転成形機、ディップ成形機な
どを使用して、フィルム、シート、チューブ、ボトルな
どの任意の成形品に成型することができる。成形に際し
ての押出温度は樹脂の種類、分子量、組成物の配合割合
あるいは押出機の性質などのより適宜選択されるが、多
くの場合170〜350℃の範囲である。 【0015】また、本発明の樹脂組成物は多層材の一層
として使用するとき接着性の点で特異な特長が発揮され
ることは前述したとおりであるが、熱可塑性樹脂層を
P、EVOH層をE、接着性樹脂層をD、本発明の組成
物の層をFとするときE/F/E、F/E/F、F/F
/F(中間層のFはEVOHの含量が多い)、F/D/
E、F/D/E/D/F、P/E/P/F、P/F/D
/E/D/F/P、P/F/D/E/D/Pなどの層構
成をとるとき、層間接着性が高く、相溶性に優れた美麗
な成形物を得ることができる。このような多層成形材に
おいては、本発明のブレンド組成物は多層成形物のスク
ラップで代用することもできる。 【0016】多層成形方法としては、一般的にいって樹
脂層の種類に対応する数の押出機を使用し、この押出機
内で溶融された樹脂の流れを重ねあわせた層状態で同時
押出成形するいわゆる共押出成形により実施される。別
の方法として、エキストルージョンコーティング、ドラ
イラミネーションなどの多層成形方法も採用されうる。
また、本発明の組成物の単独成形品、あるいは本発明の
組成物を含む多層成形品を一軸延伸、二軸延伸あるいは
ブロー延伸などの延伸を実施することにより、力学的物
性、気体遮断性などにさらに特長のある物性を有する成
形物を得ることができる。こうして、本発明の組成物で
得られた成形物は、ブレンド組成物が均一で外観が美麗
であるばかりでなく、相溶性が良好で均一であることか
ら強度物性、気体遮断性など多くの優れた特長を有して
おりその工業的意義は大きい。以下、実施例により更に
具体的に説明する。なお、部は重量部を意味している。 【0017】 【実施例】 実施例1 ポリエチレンテレフタレート(PET)80部、EVO
H[エチレン単位の含有量33モル%、鹸化度99.9
%、メルトインデックス(190℃、2160g)1.
5g/10分]20部およびラウリン酸カルシウム0.
02部をドライブレンドした後、直径が40mm、L/
D=24、圧縮比3.8のフルフライト型スクリューを
有する押出機に仕込み、巾550mmのフラットダイを
使用して成膜を実施した。成膜温度は押出機を200〜
275℃、ダイを265℃とし、厚さが100μのフィ
ルムを引取機にて巻き取り、6時間の連続運転を実施し
た。得られたフィルムは均一、かつ良好な相溶性を示
し、相溶不良の相分離異物は僅かに見られた。得られた
フィルムの90mm角の試験片を二軸延伸試験装置
((株)東洋精機製作所製)を使用して85℃で1分間
加温後、5m/minの延伸速度で縦横ともに3倍に延
伸した。延伸は均一に実施され、この延伸フィルムを木
枠に固定して熱風乾燥機中で160℃で熱処理したとこ
ろ強度と気体遮断性に優れた良好なフィルムが得られ
た。 【0018】比較例1 実施例1において、ラウリン酸カルシウムを混合しない
他は実施例1と同様にしてPETとEVOHの混合品の
成膜を実施した。運転開始直後から実施例1では見られ
ない不均一な相分離異物が多数観察され、その数は時間
経過と共に増大し、得られたフィルムの外観は極めて不
良であった。 【0019】実施例2 実施例1に示したPET、EVOHと各種(C)成分と
を表1に示す割合でドライブレンドした後、実施例1と
同様にして押出成膜を実施した。得られたフィルムの膜
面状態の評価を表1に合わせて示した。 【0020】 【表1】 【0021】注1)膜面状態の評価は次の基準により判
定した。 秀:均一かつ良好な相溶性を示し相分離異物が見られな
い。 優:均一かつ良好な相溶性を示しているが、長時間の成
形において、小さい相分離異物が僅かに見られる。 良:相溶性は良好であるが、一部僅かに相分離異物が見
られる。 可:相溶性に改善効果は見られるが、相分離異物含有量
僅かに見られる。 【0022】 【発明の効果】ポリエステル樹脂とEVOHとの相溶性
が顕著に改善され、さらに得られた成形物は外観が美し
く、気体遮断性も優れている。
とエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物との相溶性が著
しく改善された組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物
(以下、EVOHと省略することがある)とポリエステ
ル樹脂のブレンド組成物は特徴のある物性を備えてい
る。殊に、各種熱可塑性樹脂とEVOHの多層共押出成
形時に、熱可塑性樹脂層あるいはEVOH層に代えて、
ブレンド組成物を使用したり、あるいは熱可塑性樹脂と
EVOH層の中間にブレンド組成物の層を設けることに
よって層間接着力を向上させることができる。また、ブ
レンド組成物単独を溶融押出成形し、さらに必要に応じ
て延伸および/あるいは熱処理して得られるフィルム、
シートあるいはボトルなどの成形物は気体遮断性と力学
的物性に優れている。このようなポリエステル樹脂とE
VOHのブレンド組成物の特徴は従来も知られていた
が、この組成物は一般に相溶性が悪く、押出成形により
フィルム、シート、ボトルなどを成形すると、不均一な
相分離異物を生じやすく、特に長時間の運転によりこの
異物が増加して外観を著しく損ねることが知られてい
る。こうして、ポリエステル樹脂とEVOHのブレンド
組成物は、その優れた特徴にもかかわらず押出成形が実
用的に全く実施できないか、できても短時間しか運転で
きないのが実情であった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
相溶性不良を解消するためになされたものであり、外観
美麗な成形物を得ることを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記目的は、ポリエステ
ル樹脂(A)およびEVOH(B)に周期律表I族、II
族およびIII族から選ばれる少なくとも1種の金属の脂
肪酸塩(C)を適当量含有させることによって達成され
る。この組成物を用いて成形した場合にはポリエステル
樹脂とEVOHの相溶性が顕著に改善され、外観が美し
く、かつ層間接着力の高い共押し出し成形品、あるいは
気体遮断性と力学的物性に優れた成形物が得られる。 【0005】 【発明の実施の形態】本発明にいうポリエステル樹脂と
しては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチ
レンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート
/イソフタレート)、ポリ(エチレングリコール/シク
ロヘキサンジメタノール/テレフタレート)などがその
代表としてあげられ、さらにこれらの重合体に共重合成
分としてエチレングリコール、ブチレングリコール、シ
クロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、
ペンタンジオールなどの低分子量ジオール類、あるいは
イソフタル酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ジフェニ
ルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン
酸、プロピレンビス(フェニルカルボン酸)、ジフェニ
ルオキサイドジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハ
ク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン
酸、アゼライン酸、セバチン酸、ジエチルコハク酸など
の低分子量ジカルボン酸をランダム共重合せしめたもの
も含まれる。 【0006】また、本発明にいうエチレン−酢酸ビニル
共重合体鹸化物(EVOH)(B)とはエチレンと酢酸
ビニルの共重合体中の酢酸ビニル単位を加水分解したも
のであれば任意のものを含むものであるが、熱可塑性樹
脂との相溶性が不良であるものは比較的エチレン単位が
少なく酢酸ビニル単位の鹸化度(加水分解度)が高いも
のである。特に、エチレン単位の含量が20〜50モル
%で、酢酸ビニル単位の鹸化度が96%以上、とりわけ
99%以上のものは酸素などの気体に対する気体遮断性
が熱可塑性樹脂中で最高の水準にあり、かつ、ポリオレ
フィンと複合して用いることにより優れた容器類が得ら
れることから、本発明の適用対象として特に重要であ
る。 【0007】更に、本発明の組成物を構成する、周期律
表I族、II族およびIII族から選ばれる少なくとも1種
の金属の脂肪酸塩(C)としては多くの化合物が挙げら
れるが、とりわけマグネシウム、カルシウム、亜鉛など
周期律表II族の金属の脂肪酸塩が特に有効に作用する傾
向が見出されている。脂肪酸の金属(I族、II族あるい
はIII族)塩を構成する脂肪酸としては酢酸、プロピオ
ン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、などの低級脂肪
酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸などの高
級脂肪酸が挙げられる。このうち、炭素数が8〜22の
範囲の高級脂肪酸の金属塩、とりわけ、カルシウム塩、
マグネシウム塩、亜鉛塩が本発明の目的に特に好適であ
る。これらの(C)成分は、単独または2種以上混合し
て使用される。 【0008】本発明の組成物を構成する(A)および
(B)の組成としては、ポリエステル樹脂(A):EV
OH(B)の重量比として60:40〜99.9:0.
1、とりわけ70:30〜99.7:0.3の範囲のも
のが挙げられ、この範囲内の組成を選択することによっ
て、力学的特性に優れるのみならず、気体遮断性に優れ
る樹脂組成物とすることができる。また、相溶性を改善
する、脂肪酸塩(C)の添加量は(A)、(B)および
(C)成分の種類に応じて相溶性改良効果が得られ、な
おかつ組成物の力学的物性、透明性、気体遮断性などの
諸物性を損なわない範囲で調整されるが、多くの場合、
その量はポリエステル樹脂(A)とEVOH(B)の重
量の和(A+B)100部に対して0.00001〜1
0部、とりわけ0.0001〜1部の範囲で用いられ
る。10部を越えると相溶性以外の諸物性が損なわれや
すく好ましくない場合が多い。また、(C)成分をあら
かじめポリエステル樹脂および/あるいはEVOHに配
合しておく場合には使用効果が高い傾向にある。EVO
Hに配合しておく例としてはEVOH100部に(C)
成分を0.002〜0.5部配合したものが挙げられ
る。この配合物0.5部とポリエステル樹脂99.5部
を添加した組成物の溶融成形における相溶性改良効果は
顕著である。この場合、ポリエステル樹脂とEVOHの
重量の和100部に対する(C)成分の量は0.000
01〜0.0025部となる。(C)成分の量が0.0
0001部より少ない場合には一般にその効果は小さ
い。こうして、(C)成分をEVOHにブレンドした場
合にはその添加量は見かけ上少なくなる場合でも効果は
大きいといえる。 【0009】本発明の組成物を得るためのブレンド方法
は特別に制限はなく、3者をドライブレンドする方法、
あるいは(C)成分をポリエステル樹脂またはEVOH
の全部または一部にあらかじめ配合しておき、それをポ
リエステル樹脂および/またはEVOHに配合して、前
記(A)、(B)および(C)からなる組成物を得る方
法などが目的に応じて任意に選ばれる。一般には、前述
のようなEVOHに配合しておく方法に加えて、ドライ
ブレンドする方法あるいはあらかじめポリエステル樹脂
に配合しておく方法を組合せることによりとりわけ顕著
に相溶性改良効果を得ることができる。 【0010】本発明において、周期律表I族、II族ある
いはIII族の金属の脂肪酸塩(C)が、ポリエステル樹
脂とEVOHの溶融成形における相溶性をかくも顕著に
向上させる機構は十分明らかではないが、ポリエステル
樹脂とEVOHの溶融系におけるレオロジー的効果、不
純物の化学的作用などが複雑に組合わさった状態におい
て(C)成分が有効に作用しているものと推定される。 【0011】本発明の組成物に対しては熱可塑性樹脂に
慣用の他の添加剤を配合することができる。このような
添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑
剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、あるいは他の
高分子化合物を挙げることができ、これらを本発明の作
用効果が阻害されない範囲内でブレンドすることができ
る。添加剤の具体的な例としては次の様なものが挙げら
れる。 【0012】酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイ
ドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾー
ル、4,4´−チオビス−(6−t−ブチルフェノー
ル)、2,2´−メチレン−ビス(4−メチル−6−t
−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3´,5
´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロ
ピオネート、4,4´−チオビス−(6−t−ブチルフ
ェノール)等。紫外線吸収剤:エチル−2−シアノ−
3,3−ジフェニルアクリレート、2−(2´−ヒドロ
キシ−5´−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2
−(2´ヒドロキシ−3´−t−ブチル−5´−メチル
フェニル)−5−クロロベンゾトリアール、2−ヒドロ
キシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2´ージヒド
ロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ
−4−オクトキシベンゾフェノン等。可塑剤:フタル酸
ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、ワ
ックス、流動パラフィン、リン酸エステル等。帯電防止
剤:ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタン
モノパルミテート、硫酸化オレイン酸、ポリエチレンオ
キシド、カーボワックス等。滑剤:エチレンビスステア
ロアミド、ブチルステアレート等。着色剤:カーボンブ
ラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、
アゾ系顔料、酸化チタン、ベンガラ等。充填剤:グラス
ファイバー、アスベスト、マイカ、バラストナイト、ケ
イ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム
等。 【0013】本発明の組成物を得るための各成分の配合
手段としては、リボンブレンダー、高速ミキサー、コニ
ーダー、ミキシングロール、押出機、インテイシブミキ
サー等が例示される。 【0014】本発明の樹脂組成物は、周知の溶融押出成
形機、圧縮成形機、トランスファ成形機、射出成形機、
吹込成形機、熱成形機、回転成形機、ディップ成形機な
どを使用して、フィルム、シート、チューブ、ボトルな
どの任意の成形品に成型することができる。成形に際し
ての押出温度は樹脂の種類、分子量、組成物の配合割合
あるいは押出機の性質などのより適宜選択されるが、多
くの場合170〜350℃の範囲である。 【0015】また、本発明の樹脂組成物は多層材の一層
として使用するとき接着性の点で特異な特長が発揮され
ることは前述したとおりであるが、熱可塑性樹脂層を
P、EVOH層をE、接着性樹脂層をD、本発明の組成
物の層をFとするときE/F/E、F/E/F、F/F
/F(中間層のFはEVOHの含量が多い)、F/D/
E、F/D/E/D/F、P/E/P/F、P/F/D
/E/D/F/P、P/F/D/E/D/Pなどの層構
成をとるとき、層間接着性が高く、相溶性に優れた美麗
な成形物を得ることができる。このような多層成形材に
おいては、本発明のブレンド組成物は多層成形物のスク
ラップで代用することもできる。 【0016】多層成形方法としては、一般的にいって樹
脂層の種類に対応する数の押出機を使用し、この押出機
内で溶融された樹脂の流れを重ねあわせた層状態で同時
押出成形するいわゆる共押出成形により実施される。別
の方法として、エキストルージョンコーティング、ドラ
イラミネーションなどの多層成形方法も採用されうる。
また、本発明の組成物の単独成形品、あるいは本発明の
組成物を含む多層成形品を一軸延伸、二軸延伸あるいは
ブロー延伸などの延伸を実施することにより、力学的物
性、気体遮断性などにさらに特長のある物性を有する成
形物を得ることができる。こうして、本発明の組成物で
得られた成形物は、ブレンド組成物が均一で外観が美麗
であるばかりでなく、相溶性が良好で均一であることか
ら強度物性、気体遮断性など多くの優れた特長を有して
おりその工業的意義は大きい。以下、実施例により更に
具体的に説明する。なお、部は重量部を意味している。 【0017】 【実施例】 実施例1 ポリエチレンテレフタレート(PET)80部、EVO
H[エチレン単位の含有量33モル%、鹸化度99.9
%、メルトインデックス(190℃、2160g)1.
5g/10分]20部およびラウリン酸カルシウム0.
02部をドライブレンドした後、直径が40mm、L/
D=24、圧縮比3.8のフルフライト型スクリューを
有する押出機に仕込み、巾550mmのフラットダイを
使用して成膜を実施した。成膜温度は押出機を200〜
275℃、ダイを265℃とし、厚さが100μのフィ
ルムを引取機にて巻き取り、6時間の連続運転を実施し
た。得られたフィルムは均一、かつ良好な相溶性を示
し、相溶不良の相分離異物は僅かに見られた。得られた
フィルムの90mm角の試験片を二軸延伸試験装置
((株)東洋精機製作所製)を使用して85℃で1分間
加温後、5m/minの延伸速度で縦横ともに3倍に延
伸した。延伸は均一に実施され、この延伸フィルムを木
枠に固定して熱風乾燥機中で160℃で熱処理したとこ
ろ強度と気体遮断性に優れた良好なフィルムが得られ
た。 【0018】比較例1 実施例1において、ラウリン酸カルシウムを混合しない
他は実施例1と同様にしてPETとEVOHの混合品の
成膜を実施した。運転開始直後から実施例1では見られ
ない不均一な相分離異物が多数観察され、その数は時間
経過と共に増大し、得られたフィルムの外観は極めて不
良であった。 【0019】実施例2 実施例1に示したPET、EVOHと各種(C)成分と
を表1に示す割合でドライブレンドした後、実施例1と
同様にして押出成膜を実施した。得られたフィルムの膜
面状態の評価を表1に合わせて示した。 【0020】 【表1】 【0021】注1)膜面状態の評価は次の基準により判
定した。 秀:均一かつ良好な相溶性を示し相分離異物が見られな
い。 優:均一かつ良好な相溶性を示しているが、長時間の成
形において、小さい相分離異物が僅かに見られる。 良:相溶性は良好であるが、一部僅かに相分離異物が見
られる。 可:相溶性に改善効果は見られるが、相分離異物含有量
僅かに見られる。 【0022】 【発明の効果】ポリエステル樹脂とEVOHとの相溶性
が顕著に改善され、さらに得られた成形物は外観が美し
く、気体遮断性も優れている。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所
B32B 27/36 B32B 27/36
(C08L 67/00
29:04)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.(A)ポリエステル樹脂、(B)エチレン単位20
〜50モル%、酢酸ビニル単位の鹸化度96%以上のエ
チレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物および(C)周期律
表I族、II族およびIII族から選ばれる少なくとも1種
の金属の脂肪酸塩からなり、かつ上記樹脂(A)と上記
樹脂(B)との配合割合が60:40〜99.9:0.
1(重量比)であり、上記成分(C)を上記樹脂(A)
と(B)の重量の和100部に対し0.00001〜1
0部含有する樹脂組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8009205A JP2667969B2 (ja) | 1996-01-23 | 1996-01-23 | 樹脂組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8009205A JP2667969B2 (ja) | 1996-01-23 | 1996-01-23 | 樹脂組成物 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP6293066A Division JP2588688B2 (ja) | 1994-11-28 | 1994-11-28 | 樹脂組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08253660A JPH08253660A (ja) | 1996-10-01 |
JP2667969B2 true JP2667969B2 (ja) | 1997-10-27 |
Family
ID=11713983
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8009205A Expired - Lifetime JP2667969B2 (ja) | 1996-01-23 | 1996-01-23 | 樹脂組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2667969B2 (ja) |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5418693B2 (ja) * | 1974-01-08 | 1979-07-10 |
-
1996
- 1996-01-23 JP JP8009205A patent/JP2667969B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08253660A (ja) | 1996-10-01 |
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