JP2577493Y2 - リクライニング機構 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案はシートを構成するシ−ト
バックの前後方向の傾斜角を調整可能とするリクライニ
ング機構に関する。

【０００２】

【従来の技術】当該リクライニング機構の一形式として
刊行物「自動車工学便覧、第６編、１−２６頁（昭和５
８年９月３０日自動車技術会発行）」に示されているよ
うに、シートを構成するシ−トクッションの後端部と同
後端部に回動可能に組付けられたシ−トバックの下端部
との間に配設され、前記シ−トバック側に固定された扇
形状歯部を有するラチエットと、同ラチエットの歯部に
噛合可能な歯部を有し前記シ−トクッション側に揺動可
能に組付けられて前記ラチエットの歯部に離間可能に噛
合するポールを備えたリクライニング機構がある。

【０００３】当該リクライニング機構においては、ポー
ルの歯部がラチエットの歯部の任意の部位に噛合してシ
−トバックをシ−トクッションに対してロックし、かつ
ラチエットの歯部に対するポールの歯部の噛合を解除す
ることによりシ−トバックのシ−トクッションに対する
前後方向の回動を許容して傾斜角を調整し得る構成とな
っている。従って、ポールの歯部はラチエットの歯部の
任意の部位に対して確実に噛合しかつ噛合解除すること
が必要であり、このためポールの歯部はラチエットの歯
部に対応する円弧状の歯部に形成されている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】このことから、ラチエ
ットおよびポールは寸法精度よく作成する必要がある
が、たとえこれら両者が寸法精度よく作成されたとして
もラチエットのシ−トバック側への組付け精度、および
ポールのシ−トクッション側への組付け精度がよくない
と、ラチエットの歯部に対するポールの歯部の噛合は的
確にはなされず、ある場合にはポールの歯部における歯
部形成方向の先端側のみがラチエットの歯部の一部に噛
合し、またある場合にはポールの歯部における歯部形成
方向の後端側のみがラチエットの歯部の一部に噛合する
という現象が発生する。

【０００５】これらの場合には、ポールの歯部はラチエ
ットの歯部に対して偏って噛合することになり、ポール
の歯部の耐久性に悪影響を及ぼすことになる。図４およ
び図５の（ａ），（ｂ）にはポールのラチエットに対す
る噛合状態の３つの態様が示されており、図４はラチエ
ット１とポール２との組付け精度が高い場合（ラチエッ
ト１の回動支点とポール２の揺動支点間の距離Ｌ0が正
しい寸法の場合）の噛合状態を示し、図５（ａ）は距離
Ｌ1（＜Ｌ0）の場合の噛合状態を示し、同図（ｂ）は距
離Ｌ2（＞Ｌ0）の場合の噛合状態を示している。これら
のうち、図５（ａ）および（ｂ）の噛合状態において
は、ポール２のラチエット１に対する噛合が偏っている
ことが明らかである。従って、本考案の目的は、このよ
うな問題に対処することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案は、上記した形式
のリクライニング機構において、前記ポールを前記シ−
トクッション側に基端部を揺動可能に組付けられるポー
ル本体と、前記ラチエットの歯部に噛合可能な歯部を有
し前記ポール本体の揺動端部に設けた嵌合凹部に嵌合し
て組付けられて前記ラチエットの歯部に対向する歯部体
とにより構成し、前記ポール本体の嵌合凹部の底部には
断面円弧状の突部を設けて同突部にて前記歯部体の底部
における歯部形成方向の中間部を受承し、同歯部体を当
該受承部を中心として前記ラチエットの歯部に対して揺
動可能に組付けたことを特徴とするものである。

【０００７】

【考案の作用・効果】このように構成したリクライニン
グ機構においてはポールを構成する歯部体の両端側がラ
チエットの歯部に対して揺動するため、ラチエットのシ
−トバック側への組付け寸法精度および／またはポール
のシ−トクッション側への組付け寸法精度が低くても、
ポールの歯部体の揺動により同歯部体の歯部はラチエッ
トの歯部の任意の部位に的確に噛合し、噛合状態が偏る
ことはない。このため、噛合状態が偏ることに起因する
ポールの歯部の耐久性の低下が防止される。

【０００８】

【実施例】以下本考案の一実施例を図面に基づいて説明
するに、図１には本考案に係るリクライニング機構が示
されている。当該リクライニング機構１０はラチエット
１１、ポール１２、レリーズレバー１３、カム１４およ
びテンションスプリング１５を備えた構成となってお
り、シ−トクッション側に固定されるロアアーム２１と
シ−トバック側に固定されるアッパアーム２２間に配設
されている。

【０００９】アッパアーム２２はその下端部にてロアア
ーム２１の後端部に前後方向へ回動可能に組付けられて
いて、図示しないヘルパスプリングにより前方へ付勢さ
れている。ロアアーム２１にはサイドプレート２３が固
定されている。ラチエット１１は図１および図２に示す
ように扇形状を呈しており、アッパアーム２２に固定さ
れて同アーム２２と一体回転可能となっている。ラチエ
ット１１は先端縁部に円弧状歯部１１ａを備えており、
同歯部１１ａはアッパアーム２２の回動支点を中心とす
る円弧状となっている。

【００１０】ポール１２はポール本体１２ａと、その揺
動端部に設けた嵌合凹部１２ｂに嵌合して組付けた歯部
体１２ｃとからなり、ポール本体１２ａの基端部をロア
アーム２１に揺動可能に組付けられた状態で歯部体１２
ｃの歯部１２ｄがラチエット１１の歯部１１ａに対向し
ている。レリーズレバー１３はカム１４と一体的のもの
で、ロアアーム２１にカム１４の固定部にて上下方向に
回動可能に組付けられている。ポール１２、レリーズレ
バー１３およびカム１４はロアアーム２１とサイドプレ
ート２３間にて挟持された状態にあり、レリーズレバー
１３とサイドプレート２３間にはテンションスプリング
１５が掛止されている。

【００１１】この状態でレリーズレバー１３は図示反時
計方向へ付勢されていて、カム１４をポール１２の背部
に当接させてポール１２を押圧し、ポール１２の歯部１
２ｄをラチエット１１の歯部１１ａの一部に噛合させて
いる。レリーズレバー１３の先端部には円弧状カム溝１
３ａが形成されているとともに、ポール１２にはカムピ
ン１２ｅが植設されており、カムピン１２ｅはカム溝１
３ａ内に挿入されて位置している。

【００１２】当該リクライニング機構１０においては、
レリーズレバー１３の非操作状態にあっては図１に示す
ようにポール１２の歯部１２ｄがラチエット１１の歯部
１１ａの一部に噛合していて、アッパアーム２２をロア
アーム２１にロックしている。このため、図示しないシ
−トバックはシ−トクッションに対してロック状態にあ
る。この状態でレリーズレバー１３をテンションスプリ
ング１５に抗して図示時計方向へ回動操作すると、カム
１４が一体的に同方向へ回動してポール１２の背部から
離間し、かつカム溝１３ａとカムピン１２ｅの作用によ
りポール１２がラチエット１１から離間する。これによ
り、ポール１２のラチエット１１に対する噛合が解除さ
れてアッパアーム２２のロアアーム２１に対するロック
が解除され、シ−トバックは前後方向へ回動可能とな
り、シ−トバックの前後方向の傾斜角を調整することが
できる。

【００１３】しかして、ポール１２を構成するポール本
体１２ａに設けた嵌合凹部１２ｂは図２および図３に示
すように歯部体１２ｃよりわずかに大きくこれに相似す
る形状を呈していて、その底部の中央部には幅方向に延
びる円弧状突部１２ｆが形成されている。歯部体１２ｃ
は嵌合凹部１２ｂに側部開口側から挿入されて嵌合し、
その底部における歯部形成方向の中央部にて突部１２ｆ
により受承されていて、歯部体１２ｃの歯部１２ｄがラ
チエット１１の歯部１１ａに対向し、ポール本体１２ａ
の揺動により同歯部１１ａに対して噛合、および噛合解
除するようになっている。また、歯部体１２ｃは嵌合凹
部１２ｂの突部１２ｆを中心として先端および後端側が
ラチエット１１の歯部１１ａに対して揺動可能である。

【００１４】このように構成されたリクライニング機構
１０においは、上記したごとく従来のこの種形式のリク
ライニング機構と同様に機能して同様の作用効果を奏す
るが、当該リクライニング機構においては特にポール１
２を特殊な構成としていることから、下記のごとき作用
効果を奏するものである。すなわち、当該リクライニン
グ機構１０のポール１２を構成する歯部体１２ｃはその
中央部を中心に両端側がラチエット１１の歯部１１ａに
対して揺動して進退するため、ラチエット１１のアッパ
アーム２２への組付け寸法精度および／またはポール１
２のロアアーム２１への組付け寸法精度が低くても、ポ
ール１２の歯部体１２ｃの揺動により是正されてポール
１２の歯部体１２ｃの歯部１２ｄは同歯部体１２ｃの揺
動による是正により、図２に示すようにラチエット１１
の歯部１１ａの任意の部位に的確に噛合し、噛合状態が
偏ることはない。このため、噛合状態が偏ることに起因
するポール１２の歯部１２ｄの耐久性の低下が防止され
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係るリクライニング機構の側面図であ
る。

【図２】同リクライニング機構を構成するラチエット、
ポールおよびカムの関連を示す側面図である。

【図３】同リクライニング機構を構成するポールの斜視
図である。

【図４】従来のリクライニング機構の側面図である。

【図５】同リクライニング機構におけるポールのラチェ
ットに対する異なる噛合状態を示す側面図である。

【符号の説明】

１０…リクライニング機構、１１…ラチエット、１１ａ
…円弧状歯部、１２…ポール、１２ａ…ポール本体、１
２ｂ…嵌合凹部、１２ｃ…歯部体、１２ｄ…歯部、１２
ｆ…突部、１３…レリーズレバー、１４…カム、１５…
テンションスプリング、２１…ロアアーム（シ−トクッ
ション側部材）、２２…アッパアーム（シ−トバック側
部材）。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シートを構成するシ−トクッションの後端
   部と同後端部に回動可能に組付けられたシ−トバックの
   下端部との間に配設され、前記シ−トバック側に固定さ
   れた扇形状歯部を有するラチエットと、同ラチエットの
   歯部に噛合可能な歯部を有し前記シ−トクッション側に
   揺動可能に組付けられて前記ラチエットの歯部に解除可
   能に噛合するポールを備えたリクライニング機構におい
   て、前記ポールを前記シ−トクッション側に基端部を揺
   動可能に組付けられるポール本体と、前記ラチエットの
   歯部に噛合可能な歯部を有し前記ポール本体の揺動端部
   に設けた嵌合凹部に嵌合して組付けられて前記ラチエッ
   トの歯部に対向する歯部体とにより構成し、前記ポール
   本体の嵌合凹部の底部には断面円弧状の突部を設けて同
   突部にて前記歯部体の底部における歯部形成方向の中間
   部を受承し、同歯部体を当該受承部を中心として前記ラ
   チエットの歯部に対して揺動可能に組付けたことを特徴
   とするリクライニング機構。