JP2511862Y2 - 内燃機関のシリンダヘッドカバ― - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 この考案は内燃機関のブローバイガス処理装置の一部
を構成するシリンダヘッドカバーに関し、特に新気取入
口とブローバイガス出口の双方を備えたシリンダヘッド
カバーの改良に関する。

従来の技術 自動車用内燃機関等のブローバイガス処理装置は、一
般に吸気通路の絞弁上流側からクランクケース内やシリ
ンダヘッドカバー内に新気を導いて内部を掃気し、かつ
この新気によって押し出されたブローバイガスをシリン
ダヘッドカバーのブローバイガス出口から吸気通路の絞
弁下流に導入して燃焼させる構成となっている。

例えば、実開昭58-178404号公報には、第４図に示す
ように、シリンダヘード31の上面を覆うシリンダヘッド
カバー32に、絞弁33上流側に通じる新気取入口34と、絞
弁33下流側に通じるブローバイガス出口35の双方を設け
た構成が示されている。このものでは、シリンダヘッド
カバー32の内側の左右に、それぞれアンダーカバー36,3
7によって新気通路部38とブローバイガス通路部39とが
形成されており、新気取入口34から流入した新気が一旦
新気通路部38を通って機関内部へ入るとともに、クラン
クケース40側から押し出されてきたブローバイガスがブ
ローバイガス通路部39を経て外部へ導出されるようにな
っている。

考案が解決しようとする課題 上記従来の構成においては、新気通路部38とブローバ
イガス通路部39とが別個にアンダーカバー36,37によっ
て画成されているため、部品点数が多くなり、かつ構成
も複雑となる。また、高速高負荷時における新気通路側
でのブローバイガスの逆流を考慮すると、新気通路部38
とブローバイガス通路部39の双方に油分離機能を持たせ
る必要があるが、上記構成では、各通路部38,39が細長
い通路状に形成されているに過ぎず、十分な油分離機能
を得ることができない。しかも、両通路部38,39が独立
しているため、新気によるブローバイガスの冷却が図れ
ない。

課題を解決するための手段 そこで、この考案はシリンダブロックおよびシリンダ
ヘッドの前端部に動弁機構用のチェーン室が設けられた
内燃機関のシリンダヘッドカバーにおいて、長手方向の
略中央部に、長手方向に沿って第１隔壁を一方の側壁に
近接して形成するとともに、この第１隔壁の前端部およ
び後端部と他方の側壁とをそれぞれ接続するように幅方
向に沿って第２隔壁および第３隔壁を形成し、かつチェ
ーン室上方を除く略全面を覆うように隔壁上に板状にア
ンダーカバーを取り付けて、第１〜第３隔壁に囲まれた
略矩形のブローバイガス通路部と隔壁外側の新気通路部
とを画成し、かつ上記新気通路部を、上記第１隔壁と上
記側壁とで挟まれた細い通路部分と後端側の容積室とか
ら略Ｌ字形に構成し、更に、上記ブローバイガス通路部
の略対角線上の位置にブローバイガス入口とブローバイ
ガス出口とを配設するとともに、上記新気通路部の上記
容積部の後端部に新気取入口を配設し、かつ該新気通路
部の前端をチェーン室へ向けて開口させたことを特徴と
している。

作用 上記構成では、機関の吸気通路からシリンダヘッドカ
バー後端部の新気取入口へ導かれた新気は、隔壁外側に
画成された新気通路部を通って前方へ流れ、かつチェー
ン室からクランクケース側へ流れる。

またクランクケース側からシリンダヘッドカバーへ導
かれたブローバイガスは、ブローバイガス入口からブロ
ーバイガス通路部に流入し、かつシリンダヘッドカバー
を横切るように流れてブローバイガス出口から機関吸気
通路へ排出される。ここで、ブローバイガス入口からブ
ローバイガス通路部へ流入する際に、通路断面積が急激
に拡大するため、流速低下に伴ってブローバイガス中の
潤滑油成分が油分離される。

そして、新気通路部とブローバイガス通路部は隔壁を
介して隣接しているので、新気の流れによってブローバ
イガスが冷却される。

一方、ブローバイガス発生量が増大する高速高負荷時
には、新気取入口から機関吸気通路へ向けてブローバイ
ガスが排出される。つまり新気通路部を逆流してブロー
バイガスが流れるが、この場合には、第１隔壁と一方の
側壁との間の細い通路部分から後端部の大きな容積室部
分へ出る際の通路面積の急激な拡大により油分離がなさ
れる。

実施例 以下、この考案の一実施例を図面に基づいて詳細に説
明する。

第１図および第２図は、この考案を直列４気筒内燃機
関のシリンダヘッドカバー１に適用した一実施例を示
し、また第３図はこのシリンダヘッドカバー１を具備し
た内燃機関２のブローバイガス処理装置全体の概略を示
している。

このシリンダヘッドカバー１は、略長方形の深皿状を
なし、かつ前端部にシリンダヘッド３（第３図参照）の
チェーン室４上方を覆うチェーンケース部５を備えてい
るとともに、幅方向の略中央部に、４個の点火プラグ挿
入孔６が列設されている。尚、この点火プラグ挿入孔６
の周囲の円筒壁6aは、シリンダヘッド３上面に達するよ
うにシリンダヘッドカバー１外周縁の同一高さに形成さ
れている。

上記シリンダヘッドカバー１の内部には、略矩形の容
積を有するブローバイガス通路部７と、略Ｌ字形に屈曲
した新気通路部８とが画成されている。具体的には、長
手方向の略中央部に、第１隔壁９が一方の側壁1aと平行
に、かつ該側壁1aに近接して形成されているとともに、
この第１隔壁９の前端部および後端部と他方の側壁1bと
をそれぞれ接続するようにシリンダヘッドカバー１幅方
向に沿って第２隔壁10および第３隔壁11が形成されてい
る。尚、これらの隔壁９〜11は、シリンダヘッドカバー
１と一体に鋳造形成されている。そして、これらの隔壁
９〜11の上に、平坦な一枚の金属板からなるアンダーカ
バー12が取り付けられていて、これによって隔壁９〜11
内側にブローバイガス通路部７が、隔壁９〜11外側に新
気通路部８が、そぞれ通路状に画成されている。

従って、ブローバイガス通路部７は、一辺が側壁1b
で、三辺がそれぞれ隔壁９〜11で仕切られた略矩形をな
している。また残部に形成される新気通路部８は、上記
ブローバイガス通路部７の三方を囲むような形状をなし
ており、第１隔壁９と側壁1aとで挟まれた細い通路部分
8aと、後端側に生じる広い容積室8bとから大略構成され
ている。

尚、第２隔壁10は＃１気筒の点火プラグ挿入孔６の円
筒壁6aを部分的に利用した形でブローバイガス通路部７
前端を仕切っており、同様に、第３隔壁11は＃３気筒の
円筒壁6aを部分的に利用した形でブローバイガス通路部
７後端を仕切っている。

上記アンダーカバー12は、前端のチェーンケース部５
部分を除いたシリンダヘッドカバー１内側の略全面を覆
っている。尚、後端部の一部、詳しくは側壁1a側部分が
開口しているが、この部分は第４隔壁13,第５隔壁14に
よって仕切られているため、新気通路部８とは連通して
いない。

上記のように形成された新気通路部８の後端部には、
新気取入口15が設けられている。この新気取入口15は、
金属管からなり、シリンダヘッドカバー１後端壁に植設
されている。新気通路部８の前端は、チェーンケース部
５へ向かってそのまま開口している。尚、上記新気取入
口15は、第３図に示すように、機関吸気通路16の絞弁17
上流側に新気用チューブ18を介して接続されるようにな
っている。

また、略矩形をなすブローバイガス通路部７には、略
対角線上の位置に、ブローバイガス入口19とブローバイ
ガス出口20とが配設されている。ブローバイガス入口19
は、アンダーカバー12に開口を設けるとともに、その周
囲に矩形の筒状部材を接合したもので、第２図に示すよ
うに、斜め外側に突出し、かつ先端にシール部材21を備
えている。このブローバイガス入口19は、第３図に示す
ように、シリンダヘッド３およびシリンダブロック29の
側部を通ってクランクケース22に至るブローバイガス通
路23の上端に接続されるようになっている。ブローバイ
ガス出口20は、シリンダヘッドカバー１の側壁1bに植設
された金属管からなり、第３図に示すように、吸気通路
16の絞弁17下流側にブローバイガス用チューブ24を介し
て接続されるようになっている。尚、このブローバイガ
ス出口20もしくは吸気通路16との接続部に、流量制御用
のいわゆるPCVバルブ25が介装される（第３図参照）。

また上記アンダーカバー12の後端側でかつ側壁1a寄り
位置には、新気通路部８内で分離した油を排出する油排
出筒26が設けられている。

尚、第３図において、27はカムシャフト前端のカムス
プロケット、28はカムチェーンを示しており、上記カム
チェーン28を収容するチェーン室４はクランクケース22
からシリンダヘッドカバー１側まで連通している。

さて上記の構成においては、機関高速高負荷時を除き
新気取入口15から新気が導入される。この新気は新気通
路部８を前方へ流れ、かつ前端のチェーンケース部５部
分からチェーン室４へ流入する。そしてチェーン室４内
を下方へ流れてクランクケース22内に流入し、該クラン
クケース22を掃気する。

この新気によって押し出されたブローバイガスは、ブ
ローバイガス通路23を上方へ流れ、かつブローバイガス
入口19からシリンダヘッドカバー１内部のブローバイガ
ス通路部７に流入する。このとき、通路断面積の急激な
拡大により流速が低下し、ブローバイガス中に含まれて
いた油成分が分離される。尚、ここで分離された油は、
内燃機関２全体の傾斜によりブローバイガス入口19側へ
流れ、該ブローバイガス入口19から下方へ流下する。ま
たブローバイガス通路部７は、隔壁９〜11を介して新気
通路部８に隣接しているため、新気の流れによってブロ
ーバイガスが冷却され、一層効果的に油成分の分離を行
うことができる。

ブローバイガス通路部７で油分離がなされたブローバ
イガスは、ブローバイガス出口20から機関吸気通路16に
吸入される。このブローバイガス出口20は、ブローバイ
ガス入口19に対し対角線上に位置しているので、両者間
の距離を比較的大きく確保でき、吸気系への油の持ち出
しを抑制する上で有利となる。

一方、ブローバイガス発生量が大となる高速高負荷時
には、新気通路部８を逆流してブローバイガスが流れ
る。すなわち、チェーン室４側から新気通路部８にブロ
ーバイガスが流入し、かつ新気取入口15を経て機関吸気
系へ排出される。この場合、ブローバイガスの流れは、
第１隔壁９と側壁1aとの間の細い通路部分8aで一旦絞ら
れた後に、後端部の容積室8bに出て急激に拡張するた
め、やはり十分な油分離を行うことができる。

また上記構成では、ブローバイガス通路部７と新気通
路部８の双方が、単純形状をなす第１〜第３隔壁９〜11
と一枚のアンダーカバー12とによって形成されるので、
非常に簡単な構造となり、かつ部品点数も少ない。そし
て、チェーンケース部５部分を除く略全体がブローバイ
ガス通路部７もしくは新気通路部８として有効利用され
るので、シリンダヘッドカバー１自体の外形寸法に比し
て各通路部7,8の容積を十分に大きく確保できる。

考案の効果 以上の説明で明らかなように、この考案に係る内燃機
関のシリンダヘッドカバーによれば、ブローバイガス通
路部および新気通路部の容積を十分大きく確保でき、双
方で良好な油分離を行うことが可能となる。また構造が
非常に単純になるとともに、部品点数を少なくできる。
しかも、新気によるブローバイガスの冷却が図れ、油分
離の上で一層有利になる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係るシリンダヘッドカバーの底面
図、第２図はそのII-II線に沿った断面図、第３図はブ
ローバイガス処理装置全体の構成を示す説明図、第４図
は従来例を示す断面図である。 １……シリンダヘッドカバー、７……ブローバイガス通
路部、８……新気通路部、９……第１隔壁、10……第２
隔壁、11……第３隔壁、12……アンダーカバー、15……
新気取入口、19……ブローバイガス入口、20……ブロー
バイガス出口。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダブロックおよびシリンダヘッドの
   前端部に動弁機構用のチェーン室が設けられた内燃機関
   のシリンダヘッドカバーにおいて、長手方向の略中央部
   に、長手方向に沿った第１隔壁を一方の側壁に近接して
   形成するとともに、この第１隔壁の前端部および後端部
   と他方の側壁とをそれぞれ接続するように幅方向に沿っ
   た第２隔壁および第３隔壁を形成し、かつチェーン室上
   方を除く略全面を覆うように隔壁上に板状のアンダーカ
   バーを取り付けて、第１〜第３隔壁に囲まれた略矩形の
   ブローバイガス通路部と隔壁外側の新気通路部とを画成
   し、かつ上記新気通路部を、上記第１隔壁と上記側壁と
   で挟まれた細い通路部分と後端側の容積室とから略Ｌ字
   形に構成し、更に、上記ブローバイガス通路部の略対角
   線上の位置にブローバイガス入口とブローバイガス出口
   とを配設するとともに、上記新気通路部の上記容積室の
   後端部に新気取入口を配設し、かつ該新気通路部の前端
   をチェーン室へ向けて開口させたことを特徴とする内燃
   機関のシリンダヘッドカバー。