JP2024042874A - 露光方法および露光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】露光部と基板保持部との相対移動における加速および減速の期間についても露光を可能とし、これにより露光処理のタクトタイムを向上させる。【解決手段】本発明に係る露光方法および露光装置は、光ビームを出力する露光部と基板を保持する基板保持部とを相対移動させることで基板に対する出力光ビームの入射位置を走査し、相対移動に伴って発生する信号に基づき、露光部と基板保持部との相対移動速度を求め、光ビームの光量を所定の制御周期で多段階に変化させながら光ビームを基板に入射させて露光を行う。求められた相対移動速度に応じて、制御周期および光ビームの最大光量が変更される。【選択図】図11
Description
この発明は、例えば半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板、ガラス基板等の基板に変調光ビームを入射させて基板を露光する技術に関する。
半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板に配線パターン等のパターンを形成する技術として、基板表面に形成された感光層に、露光データに応じて変調された光ビームを入射し、感光層を露光させるものがある。例えば特許文献1に記載の描画装置は、感光層が形成された基板の表面を変調光ビームにより露光することでパターンを描画する装置である。
この技術では、基板を保持する基板保持部(ステージ)が露光部に対し相対的に主走査方向への移動(主走査移動)を行う際に、変調光ビームが基板に入射することで露光が行われる。そして、ステージを主走査方向に直交する副走査方向に所定ピッチだけ移動(副走査移動)させた後、さらに主走査移動と露光とが行われる。このように、露光を伴う主走査移動と副走査移動とを交互に繰り返すことにより、基板全面が露光される。
この種の露光装置では、基板表面を所望のパターンで精度よく露光するために、主走査移動における移動速度が一定となっている期間に露光が行われる。言い換えれば、移動が停止した状態から一定速度に達するまでの期間および一定速度から移動停止するまでの期間については露光が行われない。このことが露光処理のタクトタイムの向上を図る上での制約条件となっている。特に、上記のように主走査移動と副走査移動とを繰り返して露光を行う場合には、1回の主走査移動ごとに加速期間と減速期間とが必要になるため、これらの期間がタクトタイムに及ぼす影響が大きい。
そこで、これらの加速期間および減速期間にも露光を行うことが可能になればタクトタイムの大幅な向上が見込めるが、それを可能にするための技術はこれまで提案されるに至っていない。
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、露光部と基板保持部との相対移動における加速および減速の期間についても露光を可能とし、これにより露光処理のタクトタイムを向上させることを目的とする。
本発明の一の態様は、変調した光ビームを露光対象となる基板に入射させて前記基板を露光する露光方法であって、前記光ビームを出力する露光部と前記基板を保持する基板保持部とを相対移動させることで前記基板に対する前記出力光ビームの入射位置を走査し、前記相対移動に伴って発生する信号に基づき、前記露光部と前記基板保持部との相対移動速度を求め、前記光ビームの光量を所定の制御周期で多段階に変化させながら前記光ビームを前記基板に入射させ、前記相対移動速度に応じて前記制御周期および前記光ビームの最大光量を変更する。
また、本発明の他の一の態様は、光源から出射される光を多階調に変調可能な光変調器を有し、変調された光ビームを露光対象となる基板に入射させる露光部と、前記基板を保持する基板保持部と、前記露光部と前記基板保持部とを相対移動させて前記基板に対する前記光ビームの入射位置を走査する走査移動部と、前記露光部と前記基板保持部との相対移動速度に関する信号を出力する信号出力部と、前記光変調器を所定の制御周期で変化させて前記光ビームの光量を多段階に変化させる変調制御部とを備え、前記変調制御部は、前記信号に基づき求められる前記相対移動速度に応じて前記制御周期および前記光ビームの最大光量を変化させる、露光装置である。
このように構成された発明では、光ビームを変調する際の制御周期と光ビームの最大光量とを、露光部と基板保持部との間の相対移動速度に応じて変更する。これにより、相対移動速度が変動している期間であっても適切に露光を行うことができるようになる。その基本的な考え方は以下の通りである。
露光部と基板との相対移動速度(以下、単に「移動速度」という)が変化すると、単位時間当たりの相対移動量が変化する。一方で、一定の制御周期で光ビームを変調する、つまり露光時間の最小単位を速度によらず一定とした場合、同じ露光時間の間に基板が移動する距離が変わる。このため、実現し得る露光スポットの最小長さが変動する。具体的には、移動速度が低いほど露光スポットは小さく、高速ではより大きくなる。例えば移動速度が1/2になると、露光スポットの最小長さも半分となる。
この最小長さは、走査移動方向における原理上の分解能と考えることもできる。分解能の変動は、露光により描画される描画パターンに歪みを生じさせるなど、描画品質の低下を招く。
例えば光ビーム変調の制御周期を移動速度に比例させて変化させることで、このような分解能の変動を回避することが可能である。その一方で、基板上の同一箇所に光が入射する時間が変動することから、当該箇所における露光量が所期のものとは異なってくる。このことも描画品質の低下の原因となる。
そこで、この発明では、露光部と基板保持部との相対移動に伴って発生する信号からそれらの間の相対移動速度を求め、その結果に応じて制御周期と光ビームの最大光量とを変更する。こうすることで、移動速度の変化がある場合でも露光スポットの大きさが変動するのを防止することができる。また、移動速度の変化に応じて光ビームの最大光量を変化させるスケーリングを行うことで、露光量の変動についても抑制することができる。
このようにして移動速度の変動に起因する描画品質の低下が抑制されることで、相対移動速度が一定である定速期間の前後の加速および減速期間においても、定速期間と同等の描画品質で露光を行うことが可能となる。したがって、加速期間および減速期間の少なくとも一部を利用して露光を行うことができ、これにより定速期間を短縮することができる。その結果として、露光処理のタクトタイムを短縮することが可能となる。
上記のように、本発明によれば、露光部と基板との相対移動速度が求められ、その結果に応じて光ビーム変調における制御周期と光ビームの最大光量とが変更される。これにより、相対移動速度が一定でない加速および減速期間においても、描画品質を低下させることなく露光を行うことができる。こうして加速および減速期間の少なくとも一部においても露光を行うことで、露光処理のタクトタイムを短縮することができる。
図1は本発明にかかる露光装置の概略構成を模式的に示す正面図であり、図2は図1の露光装置が備える電気的構成の一例を示すブロック図である。図1および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向、鉛直方向であるZ方向およびZ方向に平行な回転軸を中心とする回転方向θを適宜示す。
露光装置1は、レジストなどの感光材料の層が形成された基板S(露光対象基板)に所定のパターンのレーザー光を照射することで、感光材料にパターンを描画する。基板Sとしては、例えばプリント配線基板、各種表示装置用のガラス基板、半導体基板などの各種基板を適用可能である。
露光装置1は本体11を備え、本体11は、本体フレーム111と、本体フレーム111に取り付けられたカバーパネル(図示省略)とで構成される。そして、本体11の内部と外部とのそれぞれに、露光装置1の各種の構成要素が配置されている。
露光装置1の本体11の内部は、処理領域112と受け渡し領域113とに区分されている。処理領域112には、主として、ステージ2、ステージ駆動機構3、露光ユニット4およびアライメントユニット5が配置される。また、本体11の外部には、アライメントユニット5に照明光を供給する照明ユニット6が配置されている。受け渡し領域113には、処理領域112に対して基板Sの搬出入を行う搬送ロボット等の搬送装置7が配置される。さらに、本体11の内部には制御部9が配置されており、制御部9は、露光装置1の各部と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する。
本体11の内部の受け渡し領域113に配置された搬送装置7は、図示しない外部の搬送装置または基板保管装置から未処理の基板Sを受け取って処理領域112に搬入(ローディング)するとともに、処理領域112から処理済みの基板Sを搬出(アンローディング)し外部へ払い出す。未処理基板Sのローディングおよび処理済基板Sのアンローディングは制御部9からの指示に応じて搬送装置7により実行される。
ステージ2は、平板状の外形を有し、その上面に載置された基板Sを水平姿勢に保持する。ステージ2の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を付与することによって、ステージ2上に載置された基板Sをステージ2の上面に固定する。このステージ2はステージ駆動機構3により駆動される。
ステージ駆動機構3は、ステージ2をY方向(主走査方向)、X方向(副走査方向)、Z方向および回転方向θ(ヨー方向)に移動させるX-Y-Z-θ駆動機構である。ステージ駆動機構3は、Y方向に延設された単軸ロボットであるY軸ロボット31と、Y軸ロボット31によってY方向に駆動されるテーブル32と、テーブル32の上面においてX方向に延設された単軸ロボットであるX軸ロボット33と、X軸ロボット33によってX方向に駆動されるテーブル34と、テーブル34の上面に支持されたステージ2をテーブル34に対して回転方向θに駆動するθ軸ロボット35とを有する。
したがって、ステージ駆動機構3は、Y軸ロボット31が有するY軸サーボモーターによってステージ2をY方向に駆動し、X軸ロボット33が有するX軸サーボモーターによってステージ2をX方向に駆動し、θ軸ロボット35が有するθ軸サーボモーターによってステージ2を回転方向θに駆動することができる。これらのサーボモーターについては図示を省略する。また、ステージ駆動機構3は、図1では図示を省略するZ軸ロボット37によってステージ2をZ方向に駆動することができる。かかるステージ駆動機構3は、制御部9からの指令に応じて、Y軸ロボット31、X軸ロボット33、θ軸ロボット35およびZ軸ロボット37を動作させることで、ステージ2に載置された基板Sを移動させる。
Y軸ロボット31には、ステージ2がY方向に所定距離(例えば0.1μm)だけ進むごとに信号を出力するリニアスケール311が取り付けられている。リニアスケールとしては分解能がサブミクロンオーダーのものが製品化されており、そのような製品を、本実施形態のリニアスケール311として好適に利用可能である。リニアスケール311の出力信号が制御部9に与えられる。制御部9は、その信号に基づいて、ステージ2のY方向の位置および移動速度を把握することができる。つまり、リニアスケール311の出力信号は、ステージ2のY方向の位置および移動速度に関する情報を含む信号である。
露光ユニット4は、ステージ2上の基板Sより上方に配置された露光ヘッド41と、光源駆動部42、レーザー出射部43および照明光学系44を含み露光ヘッド41に対してレーザー光を照射する光照射部40とを有する。露光ユニット4は、X方向に位置を異ならせて複数設けられてもよい。
光源駆動部42の作動によりレーザー出射部43から射出されたレーザー光が、照明光学系44を介して露光ヘッド41へと照射される。露光ヘッド41は、光照射部から照射されたレーザー光を空間光変調器によって変調して、その直下を移動する基板Sに対して落射する。こうして基板Sをレーザー光ビームによって露光することで、パターンが基板Sに描画される(露光動作)。
アライメントユニット5は、ステージ2上の基板Sより上方に配置されたアライメントカメラ51を有する。このアライメントカメラ51は、鏡筒、対物レンズおよびCCDイメージセンサを有し、その直下を移動する基板Sの上面に設けられたアライメントマークを撮像する。アライメントカメラ51が備えるCCDイメージセンサは、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成される。
照明ユニット6は、アライメントカメラ51の鏡筒と光ファイバー61を介して接続され、アライメントカメラ51に対して照明光を供給する。照明ユニット6から延びる光ファイバー61によって導かれる照明光は、アライメントカメラ51の鏡筒を介して基板Sの上面に導かれ、基板Sでの反射光が、対物レンズを介してCCDイメージセンサに入射する。これによって、基板Sの上面が撮像されて撮像画像が取得されることになる。アライメントカメラ51は制御部9と電気的に接続されており、制御部9からの指示に応じて撮像画像を取得して、この撮像画像を制御部9に送信する。
制御部9は、アライメントカメラ51により撮像された撮像画像が示すアライメントマークの位置を取得する。また制御部9は、アライメントマークの位置に基づき露光ユニット4を制御することで、露光動作において露光ヘッド41から基板Sに照射するレーザー光のパターンを調整する。そして、制御部9は、描画すべきパターンに応じて変調されたレーザー光を露光ヘッド41から基板Sに照射させることで、基板Sにパターンを描画する。
制御部9は、上記した各ユニットの動作を制御することで各種の処理を実現する。この目的のために、制御部9は、CPU(Central Processing Unit)91、メモリー(RAM)92、ストレージ93、入力部94、表示部95およびインターフェース部96などを備えている。CPU91は、予めストレージ93に記憶されている制御プログラム931を読み出して実行し、後述する各種の動作を実行する。メモリー92はCPU91による演算処理に用いられ、あるいは演算処理の結果として生成されるデータを短期的に記憶する。ストレージ93は各種のデータや制御プログラムを長期的に記憶する。具体的には、ストレージ93は、フラッシュメモリー記憶装置、ハードディスクドライブ装置などの不揮発性記憶装置であり、CPU91が実行する制御プログラム931の他に例えば、描画すべきパターンの内容を表す設計データであるCAD(Computer Aided Design)データ932を記憶している。
入力部94は、ユーザーからの操作入力を受け付け、この目的のために、キーボード、マウス、タッチパネル等の適宜の入力デバイス(図示省略)を有している。表示部95は、各種の情報を表示出力することでユーザーに報知し、この目的のために適宜の表示デバイス、例えば液晶表示パネルを有している。インターフェース部96は外部装置との間の通信を司る。例えば、この露光装置1が制御プログラム931およびCADデータ932を外部から受け取る際に、インターフェース部96が機能する。この目的のために、インターフェース部96は、外部記録媒体からデータを読み出すための機能を備えていてもよい。
CPU91は、制御プログラム931を実行することにより、露光データ生成部911、露光制御部912、フォーカス制御部913、ステージ制御部914などの機能ブロックをソフトウェア的に実現する。なお、これらの機能ブロックのそれぞれは、少なくとも一部が専用ハードウェアにより実現されてもよい。
露光データ生成部911は、ストレージ93から読み出されたCADデータ932に基づき、光ビームをパターンに応じて変調するための露光データを生成する。より具体的には、露光データ生成部911は、例えばベクターデータとして表現されているCADデータ932を適宜のグリッドサイズ単位の画素データ(ラスターデータ)に変換し、さらにラスターデータを露光ヘッド41に設けられた光変調素子を個別に制御するための露光データに変換する。
基板Sに歪み等の変形がある場合には、露光データ生成部911は、基板Sの歪み量に応じて露光データを修正することで、基板Sの形状に合わせた描画が可能となる。露光データは露光ヘッド41に送られ、該露光データに応じて露光ヘッド41が、光照射部から出射されるレーザー光を変調する。こうしてパターンに応じて変調された変調光ビームが基板Sに照射され、基板S表面が部分的に露光されてパターンが描画される。
露光制御部912は、光照射部40を制御して、所定のパワーおよびスポットサイズを有するレーザー光ビームを出射させる。フォーカス制御部913は、露光ヘッド41に設けられた投影光学系(後述)を制御してレーザー光ビームを基板Sの表面に収束させる。
ステージ制御部914はステージ駆動機構3を制御して、アライメント調整のためのステージ2の移動および露光時の走査移動のためのステージ2の移動を実現する。アライメント調整においては、ステージ2に載置された基板Sと露光ヘッド41との間における露光開始時の相対的な位置関係が予め定められた関係となるように、ステージ2の位置がX方向、Y方向、Z方向およびθ方向に調整される。一方、走査移動においては、ステージ2を一定速度でY方向に移動させることで基板Sを露光ヘッド41の下方を通過させる主走査移動と、一定ピッチでのX方向へのステップ送り(副走査移動)とが組み合わせられる。
図3は露光ヘッドが備える詳細構成の一例を模式的に示す図である。図3に示すように、露光ヘッド41では、回折光学素子411を有する空間光変調器410が設けられている。具体的には、露光ヘッド41に上下方向(Z方向)に延設された支柱400の上部に取り付けられた空間光変調器410は、回折光学素子411の反射面を下方に向けた状態で、可動ステージ412を介して支柱400に支持されている。
露光ヘッド41において、回折光学素子411は、その反射面の法線が入射光ビームLの光軸OAに対して傾斜して配置されている。照明光学系44から射出される光ビームLは、支柱400の開口を通してミラー413に入射し、ミラー413によって反射された後に回折光学素子411に照射される。そして、回折光学素子411の各チャンネルの状態が露光データに応じて制御部9によって切り換えられて、回折光学素子411に入射したレーザー光ビームLが変調される。
そして、回折光学素子411から0次回折光として反射されたレーザー光が投影光学系414のレンズへ入射する一方、回折光学素子411から1次以上の回折光として反射されたレーザー光は投影光学系414のレンズへ入射しない。つまり、基本的には回折光学素子411で反射された0次回折光のみが投影光学系414へ入射するように構成されている。
投影光学系414のレンズを通過した光は、フォーカシングレンズ415により収束され露光ビームとして所定の倍率にて基板S上へ導かれる。投影光学系414は縮小光学系を構成している。このフォーカシングレンズ415はフォーカス駆動機構416に取り付けられている。そして、制御部9のフォーカス制御部913からの制御指令に応じてフォーカス駆動機構416がフォーカシングレンズ415を鉛直方向(Z軸方向)に沿って昇降させることで、フォーカシングレンズ415から射出された露光ビームの収束位置が基板Sの上面に調整される。
図3に一点鎖線で示されるレーザー光ビームLの光路に沿って示すように、光照射部40から露光ヘッド41へ案内されるレーザー光ビームLは、X方向を長軸方向、Z方向を短軸方向としてX方向に均一に細長く延びるビームスポット形状を有している。一方、光変調器410により変調された後の変調レーザー光ビームLmは、X方向を長軸方向、Y方向を短軸方向としており、しかも、X方向における強度が露光データに応じて変調されている。さらに、投影光学系414から基板Sに向けて出射される露光ビームLeは、変調されたレーザー光ビームLmをX方向およびY方向に縮小したものとなっている。このようにスポットサイズが絞り込まれた露光ビームLeを基板Sの被露光面に入射させることで、基板Sの表面に微細なパターンを描画することができる。
露光データに応じて変調された露光ビームLeを基板Sに入射させながら、露光ヘッド41と基板SとをY方向に相対移動させることで、基板Sのうち、露光ビームLeのX方向におけるスポットサイズと同等の幅を有しY方向に延びる帯状の領域を露光することができる。X方向における露光ヘッド41と基板Sとの相対位置を順次変更しながら露光を繰り返し行うことで、最終的には基板Sの全体を露光することができる。
このように、露光ヘッド41と基板Sとの間で、Y方向への走査移動とX方向への走査移動とを組み合わせることで、基板Sの全体に描画を行うことができる。本明細書では、Y方向への走査移動を「主走査移動」と称し、Y方向を「主走査方向」と称する。一方、X方向への走査移動を「副走査移動」と称し、Y方向を「副走査方向」と称する。この実施形態では、固定された露光ヘッド41に対し基板Sを支持するステージ2が移動することで、これらの走査移動が実現される。
上記のような構成を有する露光ユニット4については、X方向に位置を異ならせて複数設けることが可能である。この実施形態では、互いに同一の構成を有する露光ユニット4が5組設けられており、これらが並列的に露光ビームLeを出射し描画を行うことで、描画処理のスループット向上が図られている。なお、これらの露光ユニット4は互いに独立して動作し得るが、構造上、基板Sに対する走査移動については画一的である。
図4はステージの主走査移動における速度プロファイルの例を示す図である。上記した露光ヘッド41に対する走査移動のうち(+Y)方向への主走査移動を考える。ステージ2は、図4(a)に示すように、上面に保持する基板Sの(+Y)側端部が露光ヘッド41の出力光Leの光路よりも(-Y)側となるような位置P1と、基板Sの(-Y)側端部が露光ヘッド41の出力光Leの光路よりも(+Y)側となるような位置P2との間を往復する。符号Dtは、このときのステージ2の片道の移動距離を表している。
例えば、位置P1に停止しているステージ2が、時刻T0において(+Y)方向への走査移動(主走査移動)を開始し、一定速度に達した後、時刻T3において位置P2に到達し停止するときの動作について考える。このとき、図4(b)に示すように、ステージ2の移動速度は、時刻T0においてゼロであり、その後順次加速して時刻T1において予め設定された一定速度Vcに到達すると、当該一定速度が時刻T2まで維持される。その後ステージ2は減速され、時刻T3において速度がゼロとなりステージ2は停止する。
当該移動に伴うステージ2の移動距離は、時刻T0から時刻T1までの加速期間には緩やかに増加し、時刻T1から時刻T2までの定速期間ではより大きな傾きで直線的に増加する。時刻T2以降の減速期間では再び緩やかな増加となり、時刻T3において移動距離は最終値Dtに達する。
この間のリニアスケール311の出力信号は次の通りである。一定の移動距離ごとに出力されるリニアスケール311の出力信号の繰り返しピッチを符号Pにより表す。なお、ここでは図を見やすくするために、出力信号を粗いピッチで模式的に図示しているが、サブミクロンオーダーの位置分解能を有するリニアスケール311の出力信号は、実際にはこれより十分に細かいピッチで繰り返し出力される。
ステージ2が移動を開始する時刻T0以降、リニアスケール311から信号が出力され始める。時刻T1までの間においては、ステージ2の加速に伴って信号ピッチPは経時的に短くなってゆき、時刻T1以降は一定のピッチで信号が出力される。このときの信号ピッチPcは、一定速度Vcに対応したものとなっている。ステージ2が減速し始める時刻T2以降は信号ピッチPも次第に低下し、時刻T3以降は出力されなくなる。このように、リニアスケール311の出力信号はステージ2の移動速度に関連しており、リニアスケール311の位置分解能と信号ピッチPとから、ステージ2の移動速度を算出可能である。
図5は本実施形態の露光装置における動作を説明するための図である。このうち図5(a)は比較例としての従来技術の露光動作を、図5(b)は本実施形態の露光動作を表している。これらの図において「露光距離」は、1回の主走査移動において露光される基板S上の領域の長さを表す尺度である。ここでは、1回分の主走査移動で露光すべき領域全体の長さに対する露光済みの領域の長さの比により露光距離が表されている。したがって、1回分の主走査移動で露光すべき領域全体の露光が完了した時点で、露光距離は100%となる。
従来技術では、図5(a)に示すように、ステージ移動速度が一定速度Vcである時刻T1から時刻T2までの定速期間に露光が行われる。この間、露光距離は直線的に増加する。この方法では、露光の期間中、ステージ移動速度が一定であるため、安定した描画品質が得られる。その一方、時刻T0から時刻T1までの加速期間、および、時刻T2から時刻T3までの減速期間には露光は行われず、このことがタクトタイムの短縮を図る上で支障となっている。
主走査移動を複数回繰り返して1枚の基板S全体を露光する場合、主走査移動ごとにこのような無効な期間が発生し、それらが累積されることで時間的ロスが非常に大きくなることがある。これらの無効な期間を短縮するため、加速期間および減速期間における加速度を大きくすることも考えられるが、急激な加減速は、安定的なステージ移動という観点からは必ずしも好ましくない。
本実施形態では、後述する手法を採用することにより、ステージ移動速度が変動していても描画品質を低下させることなく露光を行うことが可能となっている。このため、加速および減速期間の少なくとも一部においても露光を行うことで、1回の主走査移動に要する時間を短縮し、結果としてタクトタイムを向上させることができる。
すなわち、図5(b)に示すように、本実施形態では、ステージ2の移動が開始される時刻T0以降であって、移動速度が一定速度Vcよりも低い閾値Vthに達する時刻Tsにおいて露光が開始される。当然に、露光開始時刻Tsは、従来技術において露光が可能となる時刻T1よりも早い。露光は、ステージ移動速度が低下し閾値Vthに達する時刻Teまで継続される。
このように、加速および減速期間にも露光が行われることで、定速期間内に露光すべき領域の長さ(露光距離)が従来技術よりも短くなっている。このため、定速期間を従来技術より短縮することが可能であり、これによりタクトタイムの短縮が可能となる。速度閾値Vthが小さいほど、タクトタイムの短縮効果は大きくなる。
なお、本実施形態においては、露光が開始されるときの速度閾値と露光が終了されるときの速度閾値とが等しいが、これらは異なっていてもよい。また、この例では加速期間および減速期間の両方において露光が行われるが、加速期間と減速期間との一方のみで露光を行う態様であってもよい。
次に、上記のように、ステージ移動速度が変動する期間においても描画品質を低下させることなく露光を行うことを可能とする、本実施形態の露光方法について説明する。従来技術において、露光ヘッド41に対する基板Sの相対移動速度が変動したときに現れる影響は、主に次の2点である。
(1)単位時間当たりの基板Sの移動距離が変化するため、光ビームの照射時間が同じであっても露光される範囲が変化する。つまり、主走査方向における露光スポットのサイズが変動する。
(2)基板S上の1点について見れば、光が入射する時間が移動速度により変化する。つまり、当該位置における露光量が変動する。
(1)単位時間当たりの基板Sの移動距離が変化するため、光ビームの照射時間が同じであっても露光される範囲が変化する。つまり、主走査方向における露光スポットのサイズが変動する。
(2)基板S上の1点について見れば、光が入射する時間が移動速度により変化する。つまり、当該位置における露光量が変動する。
なお、ここでの「相対移動速度の変動」については、加速および減速期間にも露光を行うという目的から、予め規定された一定速度Vcよりも低くなる場合のみを考えればよい。この場合、上記(1)については、ステージ2が規定速度より低速で移動することで、露光スポットのサイズが本来より小さくなる方向の影響が現れることとなる。また(2)については、各点への露光量が本来より増大する方向の影響が現れる。
これらのことから、上記(1)への対応策としては、ステージ移動速度が小さいほど1スポット当たりの照射時間が長くなるようにすればよい。例えば所定の制御周期で回折光の強度を切り替える回折光学素子を用いた変調方法においては、ステージ移動速度に応じて制御周期を変化させればよい。具体的には、ステージ移動速度が低くなれば制御周期が長くなるようにすればよい。例えば、制御周期をステージ移動速度に反比例するように設定することが考えられる。ステージ移動速度と制御周期との積が一定となるように維持することで、それぞれを原因とするスポットサイズの変動分が互いに相殺されると期待されるからである。
ステージ2の移動に伴ってリニアスケール311から繰り返し出力される信号の周波数はステージ移動速度に比例する。言い換えれば、当該信号の周期はステージ移動速度に反比例している。このことから、例えばリニアスケール311の出力信号を基準クロックとして、これを適宜の分周比で分周して得られるクロックを制御クロックとして光変調器410を制御することが考えられる。また、別途用意されるマスタークロックから生成された基準クロックを、リニアスケール311の出力信号から求められるステージ移動速度に応じた周波数の制御クロックの生成に利用することができる。
一方、上記(2)への対応策としては、ステージ移動速度が小さいほど光ビームの強度を小さくすることが考えられる。例えば光源からの出力を制御するなど、変調前の光ビームの強度を変更することは、光源の動作安定性や応答速度の観点から必ずしも容易ではない。光変調器410が単なるON/OFFの2値での変調ではなく多階調の変調が可能である場合には、ステージ移動速度に応じて出力光の光量レベルをスケーリングすることで目的を達成することができる。例えばステージ移動速度が規定速度の半分である場合、出力光の最大光量を規定速度の場合の最大光量の半分とし、それ以下の光量レベルについても適宜スケーリングすることで、低速時の過剰な露光を回避することができる。
このように、実際のステージ移動速度に応じて光変調器410の制御周期および出力階調レベルを操作することで、定速期間のみならず、加速期間および減速期間においても、一定の描画品質で露光が可能となる。その結果、加減速時の速度プロファイルや一定速度Vcが同じであっても、定速期間を短縮して、タクトタイムを向上させることができる。
このような定速期間の短縮は、ステージ2の移動距離Dtを短くする、つまり、図4(a)におけるステージ2の移動開始位置P1および移動終了位置P2を、従来技術より内側に設定することにより実現可能である。その結果、主走査移動におけるステージ2の往復移動のストローク(図4(a)に示す移動距離Dt)を短くすることができる。このことは、タクトタイムの短縮効果のみならず、装置の新規設計の際にはステージ駆動機構3の小型化を図るための材料ともなり得る。
上記のように、本実施形態の露光動作では、ステージ移動速度に応じて光変調器410の制御周期を変更することを1つの特徴としている。原理的には、制御周期を規定するクロックが、ステージ移動速度に比例する周波数を有するように生成され、これが光変調器410の制御回路に与えられればよい。
ただし現実的には、光変調器、特に回折光学素子411を用いた光変調器410では、その構造上あるいは製品仕様上の制約から制御周期の好ましい範囲が規定されていることがある。つまり、制御クロックの周波数については、完全に自由に決められるものではなく適正範囲がある。例えば回折光学素子411としてシリコン・ライト・マシーンズ社のGLV(Grating Light Valve;「GLV」は同社の登録商標)素子を用いる場合、その適正な動作周波数は50kHzないし250kHzとされている。したがって、クロック周波数の設定は、この適正範囲内で行われる必要がある。
図6はステージ速度とクロック周波数との関係を示す図である。上記したように、この実施形態では、ステージ移動速度に応じて光変調器410を作動させる際の制御周期を変化させる。より具体的には、光変調器410を作動させる制御クロックの周波数fcが、リニアスケール311の出力から見積もられるステージ移動速度の実測値に比例するように定められる。なお、図6の横軸については、ステージ移動速度、リニアスケール出力のいずれを採用しても定性的には等価である。
図6はその設定の一例を示している。実線で示すように、ステージ2の主走査移動における最大速度、例えば定速期間における一定速度Vcに対応するクロック周波数fcが適正範囲の最大値fcmaxに近い値となるように、制御クロックの周波数fcが定められる。ステージ移動速度がより低い場合には、それに比例してクロック周波数も変化する。
ステージ移動速度が低い領域では、制御クロックの周波数fcが下限値fcminを下回る場合が生じ得る。このような周波数の制御クロックでは光変調器410を正しく作動させることができないため、クロック周波数fcを変更する必要がある。例えば基準クロックから制御クロックを生成する際の分周比を変更して、クロック周波数fcを変更する方法がある。
例えば、図6に示すように、クロック周波数fcが下限値fcminに近づくと、分周比を半分にしてクロック周波数を2倍に増大させる。これによりクロック周波数fcが下限値fcminを下回ることは回避される。さらにステージ移動速度が低くなりクロック周波数fcが下限値fcminに近づくと、分周比をさらに半分にすることでクロック周波数を2倍に逓倍する。これを順次繰り返すことで、極めて低い速度域でも適正範囲内の周波数を有する制御クロックを生成することが可能となる。
なお、ステージ移動速度がゼロに近い場合には、リニアスケール311からの出力信号に基づく速度算出の精度が大きく低下する。このため、極端に低い速度域では露光を行わないようにするのが好ましい。図5(a)に示した閾値Vthは、このような極端な低速度域での露光を禁止し描画品質を安定にする目的に用いることができる。
前記したように、光変調器410の制御周期は主走査方向の分解能に関係しており、制御クロックの周波数fcを生成する際の分周比を変更すると主走査方向の分解能も大きく変化する。このため、変更の前後で描画品質に差異が生じないような措置を講じる必要がある。
図7は分周比の変更に対応するための露光データ処理を説明するための図である。図7(a)に示すように、描画すべきパターンを表すラスターデータは、CADデータで表されていたパターンを所定サイズの単位グリッドを有するビットマップに展開したものである。単位グリッドサイズについては、例えば1μmを標準値とすることができる。このうちY方向のグリッドサイズは制御クロックの周波数fcにより規定されている。
ここで、例えばクロック生成時の分周比の変更により制御クロックの周波数fcが2倍になると、Y方向の分解能も2倍になる。そこで、グリッドサイズを半分の0.5μmとする。元のラスターデータは1μm単位でしか作成されていないから、このままのラスターデータから露光データを作成すると、図7(b)に示すように、1グリッドごとにデータが欠落した状態となってしまう。
そこで、ラスターデータから露光データを作成する際、データの欠落部分については例えば前値ホールドによって補間する。このようにすると、図7(c)に示すように、欠落がなく、また図7(a)に示す元データと差異のない露光データを生成することができる。図7(d)に示すようにクロック周波数fcを4倍としグリッドサイズを(1/4)とした場合についても同様である。
こうして補間された露光データと逓倍された制御クロックとに基づき光変調器410を制御し光ビームの変調を行うことで、元のCADデータおよびラスターデータで表されるパターンを、描画品質を損なうことなく露光することができる。
上記のように、基本的には、光変調器410の制御周期をステージ移動速度に追随させて、より具体的には反比例するように変化させることで、ステージ移動速度が変動する加速期間および減速期間でも定速期間と同等の描画品質で露光を行うことが可能である。また、速度変化に伴う露光量の変化については、ステージ移動速度に応じて出力光ビームの光量レベルをスケーリングすることにより、その影響を抑制することができる。
ただし、ステージ移動速度から求められた制御クロックの周波数が適正範囲に収まらない場合には、当該クロックを適宜逓倍(または分周)して適正範囲内の制御クロックを生成するとともに、それに伴って、描画の元となるCADデータまたはラスターデータから露光データを生成する際の主走査方向のグリッドサイズ(分解能)を変更する。こうすることにより、広い速度域にわたって所期の描画品質を維持しつつ露光を行うことが可能となる。
以上の考え方に基づき、この実施形態の露光動作は以下のように構成されている。
図8は本実施形態の露光動作におけるデータ処理の概念を示すブロック図であり、図2の露光データ生成部911および露光制御部912をより実際的な処理ブロックの組み合わせとして書き直したものに相当する。
ステージ2の主走査移動に伴いリニアスケール311から出力される信号は、露光制御部912の速度算出部912aに入力される。速度算出部912aは、与えられる信号の周期からステージ移動速度を算出する。求められたステージ移動速度はパラメーター決定部912bに与えられる。パラメーター決定部912bは、与えられたステージ移動速度から、制御クロック周波数fcを決定するための分周比または逓倍率、露光データ作成時のグリッドサイズ、および、出力光ビームの光量レベルをスケーリングするための光量係数を決定する。この目的のために、パラメーター決定部912bは参照テーブル912cを有するが、これについては後述する。
クロック生成部912dは、基準クロックを分周または逓倍して制御クロックを生成し、露光ヘッド41に与える。基準クロックとしては、リニアスケール311からの出力信号、または、各部の動作のために別途生成されるマスタークロック(MCLK)、もしくはこれらを適宜の分周比で分周したものを用いることができる。制御クロックの生成に際しては、パラメーター決定部912bで決定された分周比または逓倍率に関する情報が利用される。これにより、露光データ作成時のグリッドサイズに応じた制御クロックを生成することができる。
一方、露光データ生成部91では、RIP(Raster Image Processor)部911aが、設計データとして予め与えられているCADデータを所定のグリッドサイズで画素単位に展開しラスターデータを作成する。ただしここでのラスターデータには、ステージ移動速度の影響が加味されておらず、グリッドサイズは描画に求められる分解能に応じて一義的に定められている。
データ加工部911bは、ラスターデータから露光データを作成するが、その際、パラメーター決定部912bから与えられるグリッドサイズに関する情報に基づき、必要に応じてグリッドサイズの変更およびデータ補間を行う。また、パラメーター決定部912bから与えられる光量係数に関する情報に基づき、出力光の光量レベルをスケーリングする。具体的には、速度変動がないことを前提とする従来技術で作成される露光データにおける階調値に、パラメーター決定部912bにより決定された光量係数Ciを乗じることにより、スケーリングが実現される。
例えば露光データにおける階調値が実現可能な最大階調に対して100%(オン)と0%(オフ)との2値で表されており、光量係数Ciが0.9であった場合、オン時の階調値を90%とすることにより、スケーリングが実現できる。これらの間に中間調が設定される場合でも同様に、そのときの階調値に光量係数Ciを乗じることで、スケーリング後の階調値を決定することができる。
図9は光変調器の入力階調と出力階調との関係の一例を示す図である。例えばGLVのような回折光学素子を用いた光変調器では、図9に示すように入力階調に対する応答感度が非線形であるのが一般的である。このうちほぼ線形とみなせる領域(階調値G0~G1)だけを用いて階調レベル0%から100%までに再割り当てすることで、出力光における階調レベルを入力階調値に対して線形な関係として、多階調での変調を精度よく行うことが可能となる。この場合の光量係数Ci(0≦Ci≦1)によるスケーリングは、図9に示す関係から、スケーリング前の任意の階調値Gxに対してスケーリング後の階調値Gyを例えば次式:
Gy=(Gx-G0)×Ci+G0
で求めることにより、実行可能である。なお、線形とみなせる領域以外を用いて階調を表現することも可能である。
Gy=(Gx-G0)×Ci+G0
で求めることにより、実行可能である。なお、線形とみなせる領域以外を用いて階調を表現することも可能である。
このような調整に加えて、データ加工部911bは歪み補正等の各種の加工を施して露光データを作成し、露光ヘッド41に与える。このようなデータ加工方法については公知であるため説明を省略する。
露光ヘッド41では、上記のようにステージ移動速度に応じて最適化された制御クロックおよび露光データに基づき光変調器410が駆動され、基板Sへの描画が行われる。このため、ステージ2が一定速度Vcで移動する定速期間のみならずその前後、すなわち加速期間および減速期間においても露光が可能になる。その場合でも、速度変化による描画品質の低下は生じない。
図10はパラメーター加工部が有する参照テーブルの一例を示す図である。参照テーブル912cでは、速度算出部912aにより算出されるステージ移動速度と、それに対応する制御クロックを生成するための情報(分周比または逓倍率)、データ加工時のグリッドサイズに関する情報、および光量係数に関する情報が保持されている。パラメーター決定部912bは、速度算出部912aから与えられるステージ移動速度に関する情報に基づき参照テーブル912cを参照することで、直ちにこれらのパラメーターを決定することができる。
具体的な数値の一例について説明する。基本的には、ステージ移動速度が高いほどクロックの分周比は大きく(逓倍率の場合は小さく)、ステージ移動速度が高いほど同一分周比または同一逓倍率において生成されるクロック周波数も高くなる(原則としては速度に比例する)ように定められる。また、グリッドサイズはステージ移動速度が高くなるにつれて段階的に大きくなるように定められる。また、光量係数Ciは、ステージ移動速度に概ね比例するように設定される。ここでは、光量係数Ciは、ステージ移動速度が240mm/secであるときの値を100%とする相対値で示されている。
図11は上記のように構成された露光装置により実行される処理を示すフローチャートである。この動作は、制御部9のCPU91がストレージ93に予め記録された制御プログラム931を実行し、上記した装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
まず、露光対象となる基板Sがステージ2にセットされ(ステップS101)、露光動作における最大走査速度が設定される(ステップS102)。ここでの最大走査速度は、装置が実現可能な主走査移動速度の範囲内で、必要な露光量や光源の光量から算出し設定することができる。また、ユーザーが任意に設定することができる構成としてもよい。例えば通常より高分解能での描画を行うことを目的として、主走査移動速度を落として露光が行われることがある。このような目的のために、ユーザーの希望で最大走査速度を設定する機能が設けられる。
また、基板Sがセットされた後、ステージ2上における基板Sの姿勢と描画パターンとの位置を合わせるためのアライメント調整が行われる(ステップS103)。アライメント調整の方法については多くの公知技術があるため、ここでは説明を省略する。
アライメント調整後、設定された最大走査速度に対応して予め用意された速度プロファイルに基づき、ステージ2が所定の移動開始位置(図4(a)に示す位置P1)から主走査移動を開始する(ステップS104)。ステージ移動速度が速度閾値Vthを超え露光開始が可能となる位置(図5(b)に示す露光開始位置Ts)まで基板Sが進んでくると(ステップS105)、露光が開始される。
具体的には、リニアスケール311の出力からそのときのステージ移動速度が求められ(ステップS106)、その結果から、制御クロック生成用の分周比または逓倍率、グリッドサイズおよび光量係数が決定される(ステップS107)。そして、それらに基づき、制御クロックが生成されるとともに、ラスターデータから露光データが作成される(ステップS108)。
これらが露光ヘッド41に送られて、露光データに基づき変調された光ビームが基板Sに照射されて露光が行われる(ステップS109)。基板Sが1回の主走査移動における露光終了位置まで到達するまで(ステップS110においてNO)、ステップS106からステップS109までの処理が繰り返し実行される。これにより、そのときのステージ移動速度に対応した露光が行われる。
基板Sが露光終了位置(図5(b)の符号Te)に到達すると(ステップS110においてYES)、主走査移動が終了され(ステップS111)、ステージ2が移動停止位置P2(図4(a))に停止する。当該基板Sに対する全露光が終了している場合には(ステップS112においてYES)、処理済みの基板Sが搬出されて処理は終了する(ステップS114)。
そうでない場合には(ステップS112においてNO)、ステージ2を副走査方向(X方向)に所定のピッチだけ移動させる副走査移動が実行され(ステップS113)、ステップS104に戻って再び主走査移動が開始される。
このようにして、基板Sに対する全露光が実行される。この間、随時検出されるステージ移動速度に応じて、光変調器410を制御するための制御クロックおよび露光データがリアルタイムで調整される。このため、ステージ移動速度が設定された最大走査速度で一定となる定速期間だけでなく、その前後の加速期間および減速期間についても、定速期間と同等の描画品質で露光を行うことができる。したがって、定速期間を短縮することができるとともに、主走査移動における移動開始位置および移動終了位置を従来技術よりも内側に設定することができる。その結果、従来技術よりも短いタクトタイムで露光を行うことができ、また往復移動におけるストロークを短縮することができる。
本願発明者の実験によれば、加速および減速期間における速度プロファイルを同じにした場合でも、定速期間を短縮することで、全体として20%程度のタクトタイム短縮効果が得られた。
また、このように往復移動におけるストロークを小さくすることでタクトタイムを短縮するため、そのために追加的な材料やエネルギーの消費を必要とせず、タクトタイム短縮による消費エネルギー節減効果を享受することができる。また、移動ストロークが小さくなることで装置の小型化を図ることができ、これによっても資源および消費エネルギーの節減を図り、環境負荷を低減させることができる。
以上説明したように、本実施形態の露光装置1においては、ステージ2およびステージ駆動機構3が、本発明の「基板保持部」および「走査移動部」としてそれぞれ機能している。また、制御部9、特に露光制御部912が本発明の「変調制御部」として機能し、参照テーブル912cは本発明の「テーブル」に相当している。また、露光データ生成部911は本発明の「露光データ生成部」として機能している。また、光照射部40が本発明の「光源」として機能する一方、露光ヘッド41が本発明の「露光部」として機能している。また、上記実施形態では、リニアスケール311が本発明の「信号出力部」として機能し、光変調器410が本発明の「光変調器」として機能している。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、光変調器410の変調素子として回折光学素子、例えばGLV素子を用いているが、本発明に適した光変調素子はこれに限定されるものではなく、一定強度の光ビームを多階調に変調することのできる各種のものを適用可能である。例えば、シリコン・ライト・マシーンズ社から実用化されている二次元回折光学素子であるPLV(Planar Light Valve)素子も、本発明に好適な光変調素子である。
また例えば、上記実施形態では、ステージ移動速度を算出するために、ステージ移動に伴って発生する信号を出力する手段としてのリニアスケール311が設けられている。しかしながら、このような信号出力手段はこれに限定されない。例えば、ステージ駆動用のステッピングモータに与えられるパルス数を計数してステージの位置および速度を検出する方法を適用可能である。また、位置センサーやロータリーエンコーダなど、適宜の検出手段を用いてステージ移動速度を求めることが可能である。
また、上記実施形態では、リニアスケール311の出力から求めたステージ移動速度から参照テーブル912cを参照することで各パラメーターが決定されているが、同趣旨でパラメーターを決定する方法であれば、参照テーブルを用いない方法であってもよい。例えば適宜の計算式に求められたステージ移動速度を代入してパラメーターを算出する方法であってもよい。
また、上記実施形態では、固定された露光ヘッド41に対して、基板Sを支持するステージ2が移動することによって走査移動が実現されている。これに代えて、例えば基板が静止状態に支持され露光ヘッドが移動するように構成されてもよい。
また例えば、上記実施形態の主走査移動では、走査移動速度が一定となる定速期間を設け、その前後の加速期間および減速期間も含めて露光を行うようにしている。これに代えて、加速期間および減速期間のいずれか一方については露光を行わないようにしてもよい。また、本発明を適用することで速度変動の影響を抑制することができるから、定速期間を設けずに露光を行うことも可能である。また、1回の主走査移動において、加速または減速期間を挟んで複数の定速期間が設けられてもよい。
また、本実施形態の露光制御部912の機能は、専用ハードウェアを用いる方法、ソフトウェアにより実現する方法のいずれによっても実現可能である。処理速度の観点からは専用ハードウェアを用いるのが現実的であるが、ソフトウェアにより実現する方法は、既存の露光装置のソフトウェアを、本発明の方法を実現するためのプログラムを組み込んだものに更新することによっても実施可能である。
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る露光方法において、最大光量は、相対移動速度に比例して設定されるようにすることができる。照射時間および光量が同じある場合、基板上の1箇所における露光量は、相対移動速度が遅いほど相対移動速度に反比例して大きくなるから、最大光量が相対移動速度に比例するようにスケーリングされることで、その影響を相殺することが可能である。
また、相対移動は、相対移動速度が増大する加速移動と、一定の相対移動速度での定速移動と、相対移動速度が低下する減速移動とを含んでもよく、この場合、基板への光ビームの入射が、加速移動の期間および減速移動の期間のうち少なくとも一部を含んで行われてもよい。本発明によれば、相対移動速度の変動が描画品質に及ぼす影響が低減されているから、このように加速または減速移動の期間にも露光を行うことで定速移動の期間を短縮し、タクトタイムを向上させることが可能である。
また例えば、定速移動における相対移動速度を変更設定可能としてもよい。このような構成によれば、例えば要求される分解能の大きさにより、描画品質が優先されるケースやスループットが優先されるケース等があり得る。定速移動における速度を変更可能とすることで、このような要求に応えることが可能となる。
また例えば、制御周期は予め定められた可変範囲内で変更されるように構成されてもよい。光変調を実現可能な素子では、応答速度等の制約から最適な動作周波数が指定されていることがある。制御周期の可変範囲を定めておくことで、このような制約を有する素子であっても適切に動作させることが可能である。
また例えば、露光により形成すべきパターンを所定のグリッドサイズを有する画素単位で表した露光データに基づいて光ビームを変調するように構成された露光方法および露光装置では、グリッドサイズを相対移動速度に応じて段階的に変更するように構成されてもよい。相対移動速度の変動は走査移動方向における分解能を変化させるから、それに応じてグリッドサイズの最適化を行うことで、描画品質を良好に維持することが可能となる。
この場合、制御周期を規定する制御クロックが、所定の基準クロックを分周することによって生成されてもよく、その分周比が相対移動速度に応じて設定されてもよい。このときの基準クロックとしては、相対移動速度に応じて周期が変化する信号、特に相対移動速度に比例する速さで周期的に変化する信号を好適に利用可能である。
また、本発明に係る露光装置は、相対移動速度とそれに応じた制御周期および最大光量とを関連付けたテーブルを備えてもよく、その場合、変調制御部は、求められた相対移動速度からテーブルを参照して制御周期および最大光量を決定するようにすることができる。このような構成によれば、相対移動速度が求まれば直ちに制御周期および最大光量を決定することが可能であり、相対移動速度が刻々と変化するような状況であっても、それに対応して最適な条件で露光を行うことが可能である。
また例えば、本発明においては、露光部と基板保持部とを主走査方向に移動させる主走査移動と、露光部と基板保持部とを主走査方向と交わる副走査方向に移動させる副走査移動とを繰り返して実行し、主走査移動中に基板に対して光ビームを入射させる構成を採ることができる。このように主走査移動と副走査移動とを組み合わせることで、基板の広い面積範囲を効率よく露光することができる。この場合、1回の主走査移動の度に加速・減速のための期間が発生するから、主走査移動におけるタクトタイムの短縮効果は、基板全体の処理を行う上で特に顕著なものとなる。
この発明は、例えば半導体基板、半導体パッケージ基板、プリント配線基板あるいはガラス基板等の基板にパターンを形成するために基板を露光する技術分野に好適である。
1 露光装置
2 ステージ(基板保持部)
3 ステージ駆動機構(走査移動部)
9 制御部(変調制御部)
40 光照射部(光源)
41 露光ヘッド(露光部)
311 リニアスケール(信号出力部)
410 光変調器
911 露光データ生成部
912 露光制御部(変調制御部)
912c 参照テーブル(テーブル)
L レーザー光ビーム
Le 露光ビーム(光ビーム)
S 基板
2 ステージ(基板保持部)
3 ステージ駆動機構(走査移動部)
9 制御部(変調制御部)
40 光照射部(光源)
41 露光ヘッド(露光部)
311 リニアスケール(信号出力部)
410 光変調器
911 露光データ生成部
912 露光制御部(変調制御部)
912c 参照テーブル(テーブル)
L レーザー光ビーム
Le 露光ビーム(光ビーム)
S 基板
Claims (15)
- 変調した光ビームを露光対象となる基板に入射させて前記基板を露光する露光方法において、
前記光ビームを出力する露光部と前記基板を保持する基板保持部とを相対移動させることで前記基板に対する前記出力光ビームの入射位置を走査し、
前記相対移動に伴って発生する信号に基づき、前記露光部と前記基板保持部との相対移動速度を求め、
前記光ビームの光量を所定の制御周期で多段階に変化させながら前記光ビームを前記基板に入射させ、
前記相対移動速度に応じて前記制御周期および前記光ビームの最大光量を変更する、露光方法。 - 前記最大光量は前記相対移動速度に比例して設定される、請求項1に記載の露光方法。
- 前記相対移動は、前記相対移動速度が増大する加速移動と、一定の前記相対移動速度での定速移動と、前記相対移動速度が低下する減速移動とを含み、
前記基板への前記光ビームの入射が、前記加速移動の期間および前記減速移動の期間のうち少なくとも一部を含んで行われる、請求項1に記載の露光方法。 - 前記定速移動における前記相対移動速度を変更設定可能である、請求項3に記載の露光方法。
- 前記制御周期は、予め定められた可変範囲内で変更される、請求項1に記載の露光方法。
- 露光により形成すべきパターンを所定のグリッドサイズを有する画素単位で表した露光データに基づいて前記光ビームを変調し、前記グリッドサイズを前記相対移動速度に応じて段階的に変更する、請求項1ないし5のいずれかに記載の露光方法。
- 前記制御周期を規定する制御クロックを、所定の基準クロックを分周することによって生成し、前記相対移動速度に応じて分周比を設定する、請求項5に記載の露光方法。
- 前記相対移動速度に応じて周期が変化する信号を前記基準クロックとする、請求項7に記載の露光方法。
- 前記信号は前記相対移動速度に比例する速さで周期的に変化するものである、請求項7に記載の露光方法。
- 光源から出射される光を多階調に変調可能な光変調器を有し、変調された光ビームを露光対象となる基板に入射させる露光部と、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記露光部と前記基板保持部とを相対移動させて前記基板に対する前記光ビームの入射位置を走査する走査移動部と、
前記露光部と前記基板保持部との相対移動速度に関する信号を出力する信号出力部と、
前記光変調器を所定の制御周期で変化させて前記光ビームの光量を多段階に変化させる変調制御部と
を備え、
前記変調制御部は、前記信号に基づき求められる前記相対移動速度に応じて前記制御周期および前記光ビームの最大光量を変化させる、露光装置。 - 露光により形成すべきパターンを所定のグリッドサイズを有する画素単位で表した露光データを生成して前記露光部に与え、前記グリッドサイズを前記相対移動速度に応じて段階的に変更する露光データ生成部を備える、請求項10に記載の露光装置。
- 前記信号出力部は、前記相対移動速度に比例する速さで周期的に変化する前記信号を出力し、
前記変調制御部は、前記制御周期を規定する制御クロックを、前記信号の周期に比例する周期で生成して前記露光部に与える、請求項10に記載の露光装置。 - 前記変調制御部は、所定の基準クロックを、前記相対移動速度に応じて設定された分周比で前記信号を分周して前記制御クロックを生成する、請求項12に記載の露光装置。
- 前記相対移動速度とそれに応じた前記制御周期および前記最大光量とを関連付けたテーブルを備え、前記変調制御部は前記テーブルを参照して前記制御周期および前記最大光量を決定する、請求項10に記載の露光装置。
- 前記走査移動部は、前記露光部と前記基板保持部とを主走査方向に移動させる主走査移動と、前記露光部と前記基板保持部とを前記主走査方向と交わる副走査方向に移動させる副走査移動とを繰り返して実行し、
前記露光部は、前記主走査移動中に前記基板に対して前記光ビームを入射させる、請求項10に記載の露光装置。
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