JP2023506284A - ファインケミカルを生成する際の空時収率、炭素変換効率、及び炭素基質適応性の増加 - Google Patents

ファインケミカルを生成する際の空時収率、炭素変換効率、及び炭素基質適応性の増加 Download PDF

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Abstract

ファインケミカルを生成する際の空時収率、炭素変換効率、及び炭素基質適応性の増加。本発明の発明者らは、cAMPレベルを高めること及び/又はPTS系を操作することで、宿主生物のファインケミカル生成の空時収率、炭素変換効率、及び炭素基質適応性(carbon substrate flexibility)に対して驚くべきプラスの効果が得られることを見出した。これは、cAMPレベルの増加に至るC末端調節領域の欠失によるアデニル酸シクラーゼcyaaの脱調節により、又は炭水化物利用系を調節するCrrタンパク質活性(炭水化物抑制抵抗性)の欠失により、達成された。いずれも、2-フコシルラクトース及び6-シアリルラクトース産生(ヒト乳オリゴ糖)の増大を生じ、炭水化物利用が高まった。【選択図】なし

Description

本発明の発明者らは、cAMPレベルを高めることで、宿主生物のファインケミカル生成の空時収率、炭素変換効率、及び炭素基質適応性(carbon substrate flexibility)に対して驚くべきプラスの効果が得られることを見出した。それに加えて、本発明者らは、内因的調節を受けず、従ってcAMP生成において常に活性であるアデニル酸シクラーゼ活性は、宿主生物によるファインケミカル生成における空時収率及び炭素基質適応性にとって有益であることを見出した。
更に、本発明の発明者らは、crr遺伝子若しくはそのバリアントの発現を低下させ、及び/又はCrrタンパク質若しくはそのバリアントを不活性化若しくは低下させることで、原核生物によるオリゴ糖生成の炭素変換効率、炭素基質適応性、及び空間/時間に対して驚くべき効果が得られることも見出した。
Crrタンパク質は、病原菌のPTS炭水化物利用系の一部分であり、また微生物細胞内のcAMPレベルとも関係している。
PTS炭水化物利用系(PTS系)タンパク質の発現減少は、オリゴ糖以外のある特定の化合物の生成に対して効果を有することが技術の現状から公知である。
Floresら(Nature Biotechnology (1996), Volume 14, pages 620-623)は、大腸菌(Escherichia coli)内で芳香族化合物を生成させるための経路工学(pathway engineering)について記載する。大腸菌内での芳香族化合物の生成に関与する経路の理論的分析から、この化合物の収率はホスホエノールピルビン酸(PEP)利用能により制限されることが示唆される。この化合物は、いくつかの生合成経路内の主要な構成ブロックの1つであり、またグルコースの内部移行においてPTS系内で利用されるドナーである。1モルのグルコースからPEP2分子が解糖経路から生成する。しかしながら、1モルのPEPがその後グルコース輸送期間中にPTS系により使用される場合、他の代謝反応に利用可能であるPEPは、消費されるグルコース1モル当たり1モル残るに過ぎない。Floresらは、大腸菌株がptsHを欠損しており、ptsI及びcrr遺伝子が、発酵装置においてグルコースを唯一の炭素源として利用する最少培地内で培養されるとき、PTS-グルコース+復帰変異体の不均質な集団が2日間後に検出され得ることを見出した。このような復帰変異体は、GalPを通じてグルコースを輸送することができる一方、細胞質では、グルコースはATPを使用するグルコキナーゼによりリン酸化される。
本発明の更なる態様は、内因性調節を受けないアデニル酸シクラーゼ活性、及びcrr遺伝子若しくはそのバリアントの発現低下、及び/又はCrrタンパク質若しくはそのバリアントの不活性化若しくは低下の組み合わせ、並びに1つの宿主細胞においてこれを組み合わせたときの、原核宿主生物によるオリゴ糖生成における炭素変換効率、炭素基質適応性、及び空間/時間に及ぼす効果に関する。
空時収率は、単位時間当たりの生成物形成速度として定義される。それは、容積又は重量により定義される反応混合物又は発酵物の空間又は量と関連し得る。代表的な定義には、1時間単位(時間等)当たり、発酵ブロスの単位容積(リットル等)又は単位重量(kg等)毎に生成される生成物の重量、例えばグラムが含まれる。
所与のファインケミカルについて、生成物としてのその空時収率を増加させることは、所与の反応空間において、経時的に、その容積又は重量によって定義される生成物形成速度を増加させることによって、特定の生成物の生産性を向上させることである。所定の期間に空時収率が増加すると、より多量のファインケミカル生成物が、同一設備を用いて生成される。また、空時収率が増加すれば、所与の設備において、同一量のファインケミカルをより短時間で生成することも可能である。
炭素変換効率は、消費される炭素源一定量当たりの量として表される、特定の生成物形成の比として公知である。炭素変換効率は、モル比、例えば消費される炭素源一定モル数当たりの生成される生成物のモル数と関連し得る。また、炭素変換効率は、生成物1分子当たりの最終分子内の機能的部分の比としても記載され得る。好ましい定義において、本発明による炭素変換効率は、プロセスで使用された炭素源一定重量当たりの生成した特定の生成物の重量として定義される。異なる分子量を有する異なる炭素源(例えば、マルトース、グルコース、マンノース、グリセロール、スクロース、グルコネート)を使用する炭素変換効率は直接比較可能であるので、この計算法は有利であり得る。
それに加えて、ファインケミカルの生成における炭素変換効率は、本発明の方法により、及び本発明の宿主細胞において増加する。宿主細胞のcAMPが増加することで、細胞にフィードされる炭素原子のパーセントが増加し、それが所望のファインケミカル生成物に流入することとなり、従って望ましくない副反応又は細胞呼吸による二酸化炭素に起因して失われる炭素がより少なくなる。より気候に優しい経済に向かう途上において、炭素から二酸化炭素へのロスを減らすことが望ましい。
好ましくは、炭素変換効率及び/又は空時収率は、対照、すなわち通常の調節を受けるアデニル酸シクラーゼのみを保持する非改変細胞と比較して、1、2、3パーセント、より好ましくは4、5、6、7、8、9、又は10パーセント増加する。
より好ましくは、炭素変換効率及び/又は空間/時間収率は、1.1、1.2、1.25、1.3、1.4、1.5、1.75、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍改善する。
宿主生物による1種以上のファインケミカルの生成の炭素変換効率を増加させる方法であって、宿主生物内のcAMPレベルが非改変宿主生物と比較して増加している方法も本発明の一部分である。
炭素基質適応性は、宿主細胞が2以上の特定の炭素源を使用する能力により定義される。ファインケミカル産生株に適した代表的な炭素源は、大腸菌(E. coli)及びサルモネラ属(Salmonella)に見出され得る: Cellular and Molecular Biology ASM press 1996。本明細書全体を通じて使用される場合、炭素基質適応性の増加は、改変された宿主細胞が、非改変宿主細胞が増殖することができない炭素源で増殖する、又は野生型細胞若しくは非改変宿主細胞であり得る対照よりも実質的に良好に炭素源で増殖する特徴である。
炭素源は、培地中に一括投入され、及び/又はフィード段階においてフィードされる。代表的なファインケミカル生成期間は、24時間~100時間である。
宿主生物のcAMPレベルは、宿主生物の好ましくは細胞内cAMPレベル、より好ましくは細胞質cAMPレベルである。cAMPレベルは、いくつかの当技術分野において公知の方法により、例えばルシフェラーゼに基づくアッセイ法を含む一連の検出方法と共に使用可能であるcAMP特異抗体を使用して決定可能である。細胞、組織、及び生体サンプル中のcAMPレベルを測定するための市販キット(例えば、Sigma Aldrich社のCA200 cAMP酵素免疫測定法キット)が利用可能である。cAMPを決定するためのその他の方法は、Crasnier 1990, Journal of General Microbiology 136: 1825-1831、Guidi-Rontani et al. 1981 J. Bacteriology 148:753-761、又はJ. Chromatogr. B. Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. 2012 909:14-21に見出され得る。
1つの実施形態では、cAMPレベルは、cAMPを外部から添加することにより、及び/又はcAMPを宿主細胞に移入若しくは再移入することにより増加する。別の実施形態では、宿主生物のcAMPレベルは、野生型アデニル酸シクラーゼに見出される調節活性を不活性化するステップ、及び/又は野生型アデニル酸シクラーゼに見出される調節活性を欠いている変異型アデニル酸シクラーゼを導入するステップにより増加する。別の実施形態では、cAMPのレベルは、3',5' cAMPホスホジエステラーゼ(EC 3.1.4.53)の活性を有する酵素、及び場合により3, 5 cAMPに作用する場合、酵素クラスEC3.1.4.17又はEC3.1.4.16の酵素のようなその他のジエステラーゼの活性低下により増加し得る。活性低下は、例えば遺伝子のノックアウト、アンチセンス若しくはRNAi技術、活性低下若しくは活性阻害性の変異の導入により、又は阻害剤により実現可能である。3',5' cAMPホスホジエステラーゼの例は、大腸菌の遺伝子cpdAによりコードされるものである。細胞内のcAMPレベルを増加させる別の方法は、百日咳菌(Bordetella pertussis)のアデニル酸シクラーゼ毒素、又は完全なアデニル酸シクラーゼ毒素タンパク質のアデニル酸シクラーゼドメインの使用による。
本発明の方法は、非改変宿主生物と比較して、宿主生物により生成される1種以上のファインケミカルの空時収率を増加させ、並びに宿主生物による1種以上のファインケミカルの生成の炭素基質適応性及び炭素変換効率を増加させるための方法であって、1種以上のファインケミカルを生成する能力を有する宿主生物を提供するステップ、宿主生物のアデノシン3',5'-環状一リン酸(cAMP、CAS番号: 60-92-4)レベルを増加させるステップ、宿主生物をその増殖を可能にする状態で維持するステップ、基質及び栄養分の存在下、1種以上のファインケミカルの生成に適した条件下で宿主生物を増殖させるステップ、及び場合により1種以上のファインケミカルを宿主生物又はその残部から分離するステップを含み、該宿主生物が非改変形態及び改変形態の前記1種以上のファインケミカルを生成するのに適している、方法である。
1つの実施形態における宿主生物のcAMPレベルは、誘導可能な方式で増加し、その増加は、そのように誘導されなかった宿主生物と比較したものである。例えば、誘導物質イソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)による誘導物質依存的遺伝子発現方法が、当技術分野において公知である。
好ましい実施形態では、cAMPレベルの増加は、宿主細胞内に、調節ドメインが不活性化し、阻害され、又は欠損している(本明細書では不活性化調節ドメイン又は不活性化調節部分と呼ぶ)アデニル酸シクラーゼタンパク質、及びcAMPを生成するための機能的触媒ドメインを提供することにより達成され得る。不活性化調節ドメインは、阻害剤の存在に起因して、又は不活性化変異に起因して、又はアデニル酸シクラーゼタンパク質の調節ドメインの全部又は一部における欠失に起因して不活性であり得る。アデニル酸シクラーゼタンパク質の調節ドメインを一部又は全部なくすことは、任意数の手段により、例えば、本発明において非常に多くの方式で示されるように、トランケートされたアデニル酸シクラーゼ遺伝子のコピーを導入することにより、又はアデニル酸シクラーゼのmRNAを変化させることにより、又は転写物のタンパク質翻訳を早期に終了させることにより、又は翻訳後の調節ドメインの一部又は全部を除去することにより達成され得る。
酵素アデニル酸シクラーゼは、3',5'-環状AMPシンテターゼ、アデニルシクラーゼ、アデニリルシクラーゼ、又はATPピロホスフェートリアーゼとも呼ばれる。
国際公開第98/29538号として公開された国際特許出願では、アッシビヤ・ゴシッピー(Ashbya gossypii)のアデニル酸シクラーゼ遺伝子、及び前記アデニル酸シクラーゼ遺伝子は、ファインケミカル、例えばリボフラビン等を生成するために微生物で使用され得ることを開示した。更に、グルコース含有培地上で増殖した真菌アッシビヤ・ゴシッピーによるリボフラビンの産生量が、内因性アデニル酸シクラーゼ遺伝子がアデノシン3',5'-環状一リン酸(3',5'-環状AMP又はcAMP、CAS番号: 60-92-4)生成部分において破壊された場合、増加することが前記出願において開示された。cAMPの添加によりcAMPレベルを増加させると、破壊された株内でのリボフラビン生成に対してマイナス効果を有することも開示されている。
アデニル酸シクラーゼの活性を変化させると、いわゆるホスホトランスフェラーゼ系(PTS)を利用する、又はアデニル酸シクラーゼをコードするcyaA遺伝子内の変異により影響を受けるその他の機構を使用する、炭素源の取り込みに影響を及ぼすことが明らかにされている。cyaA内の変異は、炭素源、例えばラクトース、マルトース、アラビノース、マンニトール、又はグリセロール等の利用不能、並びにグルコース、フルクトース、及びガラクトース上での脆弱発酵及び低速増殖を惹起することが明らかにされている(Perlman R, et al. 1969 Biochemical and Biophysical Research Communications 37(1), pp. 151-157)。
ファインケミカル、特にオリゴ糖の生成が、cAMPの合成を増加させるcyaA遺伝子の変化によりプラスの影響を受けることは、これまで明らかにされていない。
上記したように、野生型アデニル酸シクラーゼに見出される調節活性の不活性化は、いくつかの方法で、例えば阻害剤の使用によって、或いは不活性化変異によって、又はアデニル酸シクラーゼ野生型タンパク質の調節ドメインの全部若しくは一部における欠失によって、或いは例えば、宿主生物内でのアデニル酸シクラーゼをコードするmRNA、アデニル酸シクラーゼのmRNA翻訳の部分的変更若しくは欠失によって、又はアデニル酸シクラーゼの調節部分をコードする遺伝子配列の変異若しくは欠失によって、実現可能である。例えば、CRISPR/CAS技術(Wang, HH. (2013), Mol. Syst. Biol. 9 (1): 641)が、アデニル酸シクラーゼタンパク質の調節部分に関与するアデニル酸シクラーゼの遺伝子配列の一部分を、非機能的方式で特異的に除去又は置換するのに使用され得る。国際公開第2011102305号として公開された国際特許出願では、大腸菌のcyaA遺伝子の432位にあるロイシンに対する特異的変異がアミノ酸の生成において有用であることについて開示する。Reddyら(Analytical Biochemistry 231, 282-286 (1995))、及びCrasnierら(J. Gen. Microbiol. 1990;136:1825-31, Mol. Gen. Genet. 1994 ;243:409-16)は、大腸菌アデニル酸シクラーゼの触媒ドメインはタンパク質のN末端部分にあること、及びC末端部分の欠失は、アデニル酸シクラーゼ活性を増加させる可能性があり、又はエフェクターによる負の調節を妨害し得ることを開示する。Lindner(Biochem. J. (2008), 415, 449-454)は、アミノ酸位置1~412を含む、大腸菌アデニル酸シクラーゼの触媒部分に位置する残基の詳細な試験に関する結果について開示する。
好ましくは、調節部分又はドメインは、cAMPの生成には直接関与しないが、しかし活性部位を含有するcAMP生成部分の活性をコントロールする、アデニル酸シクラーゼ活性を有するタンパク質の部分として定義される。
本発明の方法及び宿主細胞において有用なアデニル酸シクラーゼ生成部分は、EC 4.6.1.1の酵素活性を有するタンパク質又はその一部分であり、アデノシン3',5'-環状一リン酸(cAMP)を生成する能力を有する。
大腸菌細胞では、2つのアデニル酸シクラーゼタンパク質のバリアント(変異体)、及びそれをコードする遺伝子が見出された。1つは、アミノ酸848個の長さを有する幅広く見出されるタンパク質(配列番号19、配列番号9として示されるヌクレオチド配列によりコードされる)、及び6個のアミノ酸からなる重複部を有する、従って854個のアミノ酸を有する、この完全長タンパク質のバリアント(配列番号20、配列番号10として示されるヌクレオチド配列によりコードされる)である。より長いバリアントにおいて、アミノ酸モチーフGEQSMIが重複として存在する(図2、パート2、アミノ酸の下線付きストレッチを参照)一方、848個のアミノ酸を有するバリアントはこのモチーフを1回のみ含有する。このモチーフは、アデニル酸シクラーゼに見出されるPFAMドメインPF01295の一部分である。本発明では、大腸菌のアデニル酸シクラーゼのこれら2つバリアントのいずれかの脱調節バージョンが、空間/時間収率、炭素変換効率、及び炭素源適応性の増加を引き起こすことが開示される。
本発明の文脈において、大腸菌のcyaA遺伝子は、配列番号9若しくは10に示す遺伝子のいずれか、或いは配列番号19若しくは20のタンパク質配列、又は配列番号19若しくは20のいずれか1つの完全長に対して70%、好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するタンパク質をコードするDNA、最も好ましくはアデニル酸シクラーゼ活性、すなわちEC 4.6.1.1の活性を有するタンパク質をコードするDNAであると理解される。
調節部分が低下又は不活性化しているが、しかしcAMP形成活性を有するトランケートされたアデニル酸シクラーゼタンパク質が、本発明の方法及び宿主細胞において有益である。
本発明の方法及び宿主細胞において特に有用なものは、大腸菌のcyaA遺伝子によりコードされるタンパク質に対応するアデニル酸シクラーゼタンパク質であるが、調節活性を欠いており、好ましくは配列番号19若しくは20において示されるCyaAタンパク質のC末端部分に対応する部分を欠いており、又は配列番号19若しくは20として示されるタンパク質配列の1~412位と、より好ましくは配列番号19若しくは208として示されるタンパク質の1~420位と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは98%の配列同一性を有するアデニル酸シクラーゼタンパク質であり、好ましくは、配列番号19若しくは20において提供されるタンパク質配列の420、450、558、585、653、709、736、若しくは776位、より好ましくは450、558、585、653、709、若しくは736位に後続する、なおいっそうより好ましくは配列番号19若しくは20において提供されるタンパク質配列の558、582、585、653、709、736、若しくは776位に後続する大腸菌アデニル酸シクラーゼの部分を欠いていることである。所与の位置に後続するとは、配列番号19又は20内の所与の位置に対応するアミノ酸に後続する、目的とするタンパク質に見出されるすべてのアミノ酸として理解される。
代表的な短縮したアデニル酸シクラーゼタンパク質及び遺伝子の表を、表1に示す。
Figure 2023506284000001
短縮したタンパク質cyaA653、cyaA709、cyaA736及びcyaA776(配列番号15~18)は、アミノ酸854個の完全長バージョン(配列番号20)において見出されるような重複したGEQSMIモチーフを含有する。その他の短縮バージョンはモチーフをまったく有さない。本発明の方法及び宿主細胞における有利な効果は、下記の実施例セクションにおいて詳細に示すように、単一又は重複GEQSMIモチーフの存在とは無関係であることが見出された。
好ましい実施形態では、本発明の方法は、宿主生物により生成される1種以上のファインケミカルの空時収率を増加させ、並びに宿主生物による1種以上のファインケミカルの生成の炭素基質適応性及び炭素変換効率を増加させるための方法であって、1種以上のファインケミカルを生成する能力を有する宿主生物を用意するステップ、宿主生物においてcAMPを生成する能力を有する脱調節されたアデニル酸シクラーゼを用意するステップ、宿主生物をその増殖を可能にする状態で維持するステップ、基質及び栄養分の存在下、1種以上のファインケミカルの生成に適した条件下で宿主生物を増殖させるステップ、及び場合により1種以上のファインケミカルを宿主生物又はその残部から分離するステップを含む方法である。
一実施形態では、本発明の方法及び宿主細胞において有用な脱調節されたアデニル酸シクラーゼタンパク質は、宿主細胞の野生型アデニル酸シクラーゼタンパク質に見出される調節部分を含まないアデニル酸シクラーゼ活性を有する酵素である。好ましくは、該タンパク質は、宿主細胞のアデニル酸シクラーゼタンパク質、又はそのバリアント若しくは一部であり、活性なアデニル酸シクラーゼ酵素であるが、しかし調節機構の少なくとも一部において、前記宿主細胞の非改変型アデニル酸シクラーゼがそうであるようにその対象となることはなく、配列番号19又は20に示されるような大腸菌アデニル酸シクラーゼに対応する。好ましくは、本発明の方法及び宿主細胞において有用な脱調節されたアデニル酸シクラーゼは、配列番号19若しくは20に示されるCyaAタンパク質のC末端部分に対応する部分を欠いている、又は配列番号19若しくは20に示されるタンパク質配列の1~412位と少なくとも80%の配列同一性を有するアデニル酸シクラーゼタンパク質、より好ましくは1~420位と少なくとも80%の配列同一性を有するアデニル酸シクラーゼタンパク質である。より好ましくは、脱調節されたアデニル酸シクラーゼタンパク質は、配列番号19又は20において提供されるタンパク質配列の420、450、558、585、653、709、736、又は776位に後続する、より好ましくは450、558、585、653、709、又は736位に後続する、なおいっそうより好ましくは、配列番号19又は20において提供されるタンパク質配列の558、582、585、653、709、736、又は776位に後続する大腸菌アデニル酸シクラーゼ部分に対応するアデニル酸シクラーゼの部分を欠いており、最も好ましくは、配列番号19又は20の777位以降のアミノ酸に対応するアミノ酸を欠いている。別の好ましい実施形態では、脱調節されたアデニル酸シクラーゼタンパク質は、配列番号11~18の配列のいずれかに対応する宿主生物の内因性アデニル酸シクラーゼの一部分であり、より好ましくは、配列番号11~18として示される配列のいずれかであり、又は配列番号1~8の配列若しくはそのバリアントのいずれかによりコードされ、タグを有するタンパク質及び脱調節されたアデニル酸シクラーゼを含む融合タンパク質が含まれる。1つの実施形態では、配列番号19又は20のタンパク質に対応する宿主細胞の非改変型CyaAタンパク質に見出されるような前記活性の調節を受けないアデニル酸シクラーゼ活性を有する限り、配列番号11~18の配列と比較して1個~数個のアミノ酸変化を有するアミノ酸配列も含まれる。好ましくは、脱調節されたアデニル酸シクラーゼは、増加している宿主細胞のcAMPレベルの増加を引き起こす。好ましくは、アミノ酸配列のそのようなバリアントは、アデニル酸シクラーゼ部分内のL-リジン残基からL-グルタミンへの置換(国際公開第2011102305号として公開された国際出願において配列番号2として開示された配列の432位に対応する位置)を含まない。
脱調節されたアデニル酸シクラーゼタンパク質を保持する改変された宿主細胞は、いくつかの手段、例えば変異及び選択等、組換え法、例えば短縮したcyaA遺伝子の導入、及びCRISPR/CASのような遺伝子編集法により達成され得る。
本発明の宿主細胞又は本発明の方法において有用な宿主細胞は、好ましくは細菌又は真菌宿主細胞、より好ましくはグラム陽性及びグラム陰性菌からなる群において選択される細菌細胞、又は酵母菌細胞であり、いっそうより好ましくは、宿主細胞は、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エルウイニア属(Erwinia)、エッシェリヒア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、パスツレラ属(Pasteurella)、ロドバクター属(Rhodobacter)、ロドシュードモナス属(Rhodoseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、ビブリオ属(Vibrio)、及びザントモナス属(Xanthomonas)、又はピキア属(Pichia)、クリベロミセス属(Kluveromyces)若しくはサッカロミセス属(Saccharomyces)の酵母菌、なおいっそうより好ましくは大腸菌細胞、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)種細胞、又はサッカロミセス属種細胞から選択される。
1つの実施形態では、本発明の宿主細胞は、細菌又は真菌宿主細胞、好ましくは細菌細胞、好ましくは細胞経路を調節するためにcAMPを利用する細胞、より好ましくは機能的アデニル酸シクラーゼを内包する細胞、より好ましくはプロテオバクテリア、ガンマプロテオバクテリア、腸内細菌科の細菌、いっそうより好ましくはエッシェリヒア属の細菌、及びなおいっそうより好ましくは大腸菌種の細菌である。
本発明によるファインケミカルは、2つ以上の糖単位を含む生化学物質である。好ましくは、ファインケミカルは、遺伝的に改変された生物により生成される生化学物質である。より好ましくは、本発明のファインケミカルは、1種以上のオリゴ糖を含む又はそれから構成される。いっそうより好ましくは、本発明の宿主細胞及び方法により生成されるファインケミカルは、ヒト母乳オリゴ糖(HMO)、いっそうより好ましくは中性又はシアル酸付加HMO、いっそうより好ましくはフコシル化又はシアル酸付加HMOを含む又はそれから構成され、及びなおいっそうより好ましくは、ファインケミカルは、3'-シアリルラクトース(3'-SL)、6'-シアリルラクトース(6'-SL)、2'-フコシルラクトース(2'-FL)、ジフコシルラクトース(2, 3-DFL)、3'-フコシルラクトース(3'-FL)、ラクト-N-トリオース、ラクト-N-テトラオース(LNT)、又はラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)である。ヒト母乳オリゴ糖の例は、Ninonuevo MR et al. (2006). J. Agric. Food Chem. 54:7471-7480, Bode L (2009) Nutr. Rev. 67:183-191, Bode L (2012) Glycobiology 22:1147-1162, Bode L (2015) Early Hum. Dev. 91:619-622に見出され得る。最も好ましい実施形態では、本発明のファインケミカルは、2'-FL、又は6'-SLである。
用語及び意味
特に明記しない限り、本明細書中で用いられる用語は、関連する技術分野の当業者による慣用的な使用方法に従うと理解されるべきである。本明細書中に提供される用語の定義に加えて、分子生物学での一般的な用語の定義は、Rieger et al., 1991 Glossary of genetics: classical and molecular, 5th Ed., Berlin: Springer-Verlag;及びCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., Eds., Current Protocols(Greene Publishing Associates, Inc.及びJohn Wiley & Sons, Inc.の合弁事業)(1998年補遺)にも見出すことができる。
本明細書中及び特許請求の範囲中で用いる場合、「a」又は「an」は、それが用いられる文脈に応じて、1つ又はそれ以上を意味し得ることが理解されるべきである。つまり、例えば、「a cell」に対する言及は、少なくとも1つの細胞が利用できることを意味し得る。本明細書中で用いられる用語は、具体的な実施形態を説明する目的のみのためのものであり、限定を意図しないことが理解されるべきである。
本発明の説明において、遺伝子及びタンパク質は、大腸菌における対応する遺伝子の名称を用いて特定される。しかし、特に明記しない限り、これらの名称の使用は本発明によるより一般的な意味を有し、他の生物、特に微生物における全ての対応する遺伝子及びタンパク質を包含する。
クローニング、DNA単離、増幅及び精製に関する、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼ等を含む酵素反応に関する、標準的技術、並びに様々な分離技術は、公知であり、かつ当業者により一般的に利用されるものである。多数の標準的技術が、M. Green & J. Sambrook (2012) Molecular Cloning: a laboratory manual, 4th Edition Cold Spring Harbor Laboratory Press, CSH, New York;Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Online Library;Maniatis et al., 1982 Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory, Plainview, N.Y.;Wu (編) 1993 Meth. Enzymol. 218, Part I;Wu (編) 1979 Meth Enzymol. 68;Wu et al., (編) 1983 Meth. Enzymol. 100及び101;Grossman and Moldave (編) 1980 Meth. Enzymol. 65;Miller (編) 1972 Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.;Old and Primrose, 1981 Principles of Gene Manipulation, University of California Press, Berkeley;Schleif and Wensink, 1982 Practical Methods in Molecular Biology;Glover (編) 1985 DNA Cloning Vol. I and II, IRL Press, Oxford, UK;Hames and Higgins (編) 1985 Nucleic Acid Hybridization, IRL Press, Oxford, UK;及びSetlow and Hollaender 1979 Genetic Engineering: Principles and Methods, Vols. 1-4, Plenum Press, New Yorkに記載されている。
本明細書中で別途明記されなければ、用いられる場合、略語及び命名法は、当該分野で標準的であると見なされ、かつ本明細書中に引用されるものなどの専門雑誌で一般的に用いられる。
属性又は値と関連する用語「本質的に」、「約」、「おおよそ」、「実質的に」などはまた、特に、それぞれ、属性を正確にも、又は値を正確にも、規定する。同じ機能的活性又は実質的に同じ機能の文脈での用語「実質的に」とは、参照機能と比較して、好ましくは20%の範囲内、より好ましくは10%の範囲内、最も好ましくは5%以下の範囲内の、機能の差異を意味する。製剤又は組成物の文脈では、用語「実質的に」(例えば、「実質的に化合物Xからなる組成物」)は、製剤又は組成物内で所与の作用を有する言及された化合物を実質的に含有し、そのような作用を有するさらなる化合物を含有しないか、又は測定可能若しくは関連する作用を示さないそのような化合物の最大量で含有することとして、本明細書中で用いることができる。所与の数値又は範囲の文脈での用語「約」は、特に、所与の値若しくは範囲の、20%以内、10%以内、又は5%以内である値若しくは範囲に関する。本明細書中で用いる場合、用語「含む」はまた、用語「からなる」も包含する。
用語「単離された」とは、物質が、その元来の環境内で天然に伴う少なくとも1種の他の構成要素を実質的に含まないことを意味する。例えば、生存動物中に存在する、天然に存在するポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は酵素は単離されていないが、天然の系で共存する物質のうちの一部若しくは全部から分離された同じポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は酵素は単離されている。さらなる例として、単離された核酸(例えば、DNA又はRNA分子)は、それが由来する生物の天然に存在するゲノム中に存在する場合には通常はすぐ連続する、5'又は3'隣接配列とすぐに連続していないものである。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であるか、無関係の遺伝的バックグラウンドの細胞のゲノムに(又は本質的に類似する遺伝的バックグラウンドを有する細胞のゲノムへと、しかしそれが天然に存在する箇所とは異なる箇所に)組み込まれるか、又はPCR増幅若しくは制限酵素消化により生成されることができるであろうが、あるいはin vitro転写により生成されるRNA分子、及び/又はそのようなポリヌクレオチド、ポリペプチド、又は酵素が、組成物の一部分であり得、かつさらに単離されて、そのようなベクター又は組成物がその天然の環境の一部分ではないことができる。
「精製された」とは、物質が比較的純粋な状態にあること、例えば、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、又は少なくとも約98%若しくは99%純粋であることを意味する。好ましくは、「精製された」とは、物質が100%純粋な状態にあることを意味する。
「合成」又は「人工的」化合物は、in vitro化学合成又は酵素合成により生成される。この用語は、限定するものではないが、酵母細胞宿主若しくは選択された他の発現宿主などの宿主生物に対する最適なコドン使用頻度を有して作製されたバリアント(変異体)核酸、又は、例えば、ポリペプチドの特性を最適化するために、野生型タンパク質配列と比較して、アミノ酸改変(例えば、置換など)を有するバリアント(変異体)タンパク質配列を含む。
用語「天然に存在しない」とは、その元来の環境又は供給源中に存在しない、(ポリ)ヌクレオチド、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、酵素、タンパク質、細胞、生物、又は他の物質を意味するが、それが当初はその元来の環境又は供給源に由来し、その後に他の手段により再生したものであり得る。そのような天然に存在しない(ポリ)ヌクレオチド、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、酵素、タンパク質、細胞、生物、又は他の物質が、構造的及び/若しくは機能的に、その天然の対応物に類似するか又はそれと同じであることができる。
用語「生来型」(又は「野生型」若しくは「内因性」)細胞又は生物及び「生来型」(又は野生型若しくは内因性)ポリヌクレオチド若しくはポリペプチドとは、それぞれ、天然に見出される細胞又は生物、並びに、その天然の形態及び遺伝的環境中の細胞中で見出される(すなわち、いかなるヒト介入も有さずに)、対象となるポリヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。一態様において、野生型アデニル酸シクラーゼは、アデニル酸シクラーゼ活性(EC 46.1.1)を有し、その正常な調節部分又はドメインを含み、天然で見られるように調節に供されるするタンパク質として理解すべきである。
「相同」とは、例えば、位置、構造、機能又は特徴において高度の類似性を有するが、必ずしも高度の配列同一性を有する必要はない、遺伝子、ポリペプチド、ポリヌクレオチドを指す。「相同」は「内因性」と互換的に又は「異種」の反対語として使用されるべきではない(下記参照)。
用語「異種」(又は外因性若しくは外来性若しくは組み換え)ポリペプチドは、以下の通りに本明細書中で定義される:
(a) 宿主細胞に対して生来型でないポリペプチド。そのような異種ポリペプチドのタンパク質配列は、合成、天然に存在しない、「人造の」タンパク質配列である;
(b) 宿主細胞に対して生来型のポリペプチドであるが、構造的改変(例えば、欠失、置換、及び/又は挿入)が、該生来型ポリペプチドを変化させるためになされている;又は
(c) その発現が量的に変更されるか、又はその発現が、組み換えDNA技術による宿主細胞のDNAの操作の結果として(例えば、より強力なプロモーター)、生来型の宿主細胞とは異なるゲノム位置から行なわれる、宿主細胞に対して生来型であるポリペプチド。
上記の説明(b)及び(c)は、その天然の形態にあるが、産生に用いられる細胞により天然に発現されない配列を意味する。産生されたポリペプチドは、したがって、「組み換え的に発現される内因性ポリペプチド」としてより正確に定義され、これは上記の定義とは矛盾しないが、タンパク質の配列は合成又は操作されていないが、ポリペプチド分子が産生される様式である特別な状況を反映する。
同様に、用語「異種」(又は外因性若しくは外来性若しくは組み換え)ポリヌクレオチドは、以下のことを意味する:
(a) 宿主細胞に対して生来型でないポリヌクレオチド;
(b) 宿主細胞に対して生来型のポリヌクレオチドであるが、構造的改変(例えば、欠失、置換、及び/又は挿入)が、該生来型ポリヌクレオチドを変化させるためになされている;又は
(c) 組み換えDNA技術によるポリヌクレオチドの調節エレメントの操作の結果として(例えば、より強力なプロモーター)、その発現が量的に変更されている、宿主細胞に対して生来型であるポリヌクレオチド;又は
(d) 宿主細胞に対して生来型であるが、組み換えDNA技術による遺伝子操作の結果として、その天然の遺伝的環境内にインテグレーションされていないポリヌクレオチド。
2種類以上のポリヌクレオチド配列又は2種類以上のアミノ酸配列に関して、用語「異種」は、2種類以上のポリヌクレオチド配列又は2種類以上のアミノ酸配列が、互いに特異的組み合わせで天然に存在しないことを特徴付けるために用いられる。
用語「遺伝子」とは、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAのセグメントを意味し;コード領域に先立つ領域及びその後に続く領域(リーダー及びテイラー)並びに個別のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)を含む。
用語「遺伝子」とは、親から子孫へと伝えられ、かつ生物の表現型に寄与する遺伝情報を含むDNAのセグメントを意味する。生物の形態及び機能に対する遺伝子の影響は、RNA(tRNA、rRNA、mRNA、非コードRNA)への転写を介して、かつmRNAの場合にはペプチド及びタンパク質への翻訳を介して、媒介される。
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸分子」は、本明細書中で相互に交換可能に用いられ、かついずれかの長さのポリマー性非分岐形態のヌクレオチド(リボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチド又は両者の組み合わせのいずれか)を意味する。
ヌクレオチド配列(例えば、コンセンサス配列)に関して、IUPACヌクレオチド命名法(Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry (NC-IUB) (1984). “Nomenclature for Incompletely Specified Bases in Nucleic Acid Sequences”)を、本発明に対して重要な以下のヌクレオチド及びヌクレオチド多義性定義を含めて用いた:A、アデニン;C、シトシン;G、グアニン;T、チミン;K、グアニン又はチミン;R、アデニン又はグアニン;W、アデニン又はチミン;M、アデニン又はシトシン;Y、シトシン又はチミン;D、シトシンでない;N、いずれかのヌクレオチド。
加えて、表記「N(3~5)」は、示されたコンセンサス位置が、3~5個のいずれかの(N)ヌクレオチドを有し得ることを意味する。例えば、コンセンサス配列「AWN(4~6)」は、4個、5個、又は6個のいずれかのヌクレオチドを末端に含む、3種類の考えられる変異体AWNNNN、AWNNNNN、AWNNNNNNを表わす。
用語「ハイブリダイゼーション」は、本明細書中で定義される場合、実質的に相補的なヌクレオチド配列が互いにアニーリングするプロセスである。ハイブリダイゼーションプロセスは、完全に溶液中で起こることができ、すなわち、両方の相補的核酸が溶液中にある。ハイブリダイゼーションプロセスはまた、一方の相補的核酸が磁性ビーズ、セファロースビーズまたはいずれかの他の樹脂などのマトリックスに固相化された状態で起こることもできる。ハイブリダイゼーションプロセスはさらに、一方の相補的核酸がニトロセルロース膜もしくはナイロン膜などの固体支持体に固相化されているか、または、例えばフォトリソグラフィーにより、ケイ質ガラス(siliceous glass)支持体に固相化されている(後者は、核酸アレイもしくはマイクロアレイまたは核酸チップとして知られる)状態で起こることができる。ハイブリダイゼーションを起こすために、核酸分子は一般的に、2本の一本鎖へと二本鎖を融解させるために、かつ/または一本鎖核酸からヘアピンもしくは他の二次構造を除去するために、熱的または化学的に変性される。
用語「ストリンジェンシー」とは、ハイブリダイゼーションが起こる条件を意味する。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、温度、塩濃度、イオン強度およびハイブリダイゼーションバッファー組成などの条件により影響を受ける。一般的に、低ストリンジェンシー条件は、規定されたイオン強度およびpHでの特異的配列に対する熱的融点(Tm)よりも約30℃低く選択される。中等度ストリンジェンシー条件は、温度がTmよりも20℃低い場合であり、高ストリンジェンシー条件は、温度がTmよりも10℃低い場合である。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、典型的に、標的核酸配列に対して高い配列類似性を有するハイブリダイズ性配列を単離するために用いられる。しかしながら、核酸は、遺伝的コードの縮重に起因して、配列が逸脱しながらも実質的に同一のポリペプチドをコードする場合がある。したがって、中等度ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が、一部の場合に、そのような核酸分子を同定するために必要であり得る。
「Tm」は、規定されたイオン強度およびpHで、完璧にマッチするプローブに対して標的配列のうちの50%がハイブリダイズする温度である。Tmは、溶液条件ならびにプローブの塩基組成および長さに依存する。例えば、より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。最大のハイブリダイゼーション速度は、Tmよりも約16℃から最大で32℃低い温度で得られる。ハイブリダイゼーション溶液中の一価カチオンの存在は、2つの核酸鎖の間の静電反発力を減少させ、それによりハイブリッド形成を促進し;この作用は、最大で0.4Mのナトリウム濃度で観察される(より高濃度ではこの作用は無視できる)。ホルムアミドは、ホルムアミド1%につき0.6~0.7℃、DNA-DNAおよびDNA-RNA二重鎖の融解温度を低下させ、50%ホルムアミドの添加は、30~45℃でハイブリダイゼーションが起こるのを可能にするが、ハイブリダイゼーション速度は低下するであろう。塩基対ミスマッチは、ハイブリダイゼーション速度および二重鎖の熱安定性を低下させる。平均して、大きなプローブに関して、Tmは塩基ミスマッチ1%当たり約1℃低下する。Tmは、ハイブリッドの種類に応じて、以下の方程式を用いて算出することができる:
・DNA-DNAハイブリッド(Meinkoth and Wahl, Anal. Biochem., 138: 267-284, 1984):
Tm=81.5℃+16.6×log[Na+]a+0.41×%[G/Cb]-500×[Lc]-1-0.61×%ホルムアミド
・DNA-RNA又はRNA-RNAハイブリッド:
Tm=79.8+18.5(log10[Na+]a)+0.58(%G/Cb)+11.8(%G/Cb)2-820/Lc
・オリゴDNA又はオリゴRNAdハイブリッド:
20ヌクレオチド未満に関して:Tm=2(ln)
20~35ヌクレオチドに関して:Tm=22+1.46(ln)
a又は他の一価カチオンに関して、0.01~0.4Mの範囲でのみ正確である。
b 30%~75%の範囲でのみ%GCに関して正確である。
c L=二重鎖の塩基対の長さ。
d オリゴ:オリゴヌクレオチド;ln:プライマーの有効長=2×(G/Cの数)+(A/Tの数)。
非特異的結合は、例えば、タンパク質含有溶液を用いるメンブレンのブロッキング、ハイブリダイゼーションバッファーへの異種RNA、DNA、及びSDSの添加、及びRNアーゼを用いる処理などの多数の公知の技術のうちのいずれか1種を用いて制御することができる。無関係なプローブに関して、一連のハイブリダイゼーションを、以下のうちの一方を変化させることにより行なうことができる:(i) アニーリング温度を徐々に低下させること(例えば、68℃から42℃まで)又は(ii) ホルムアミド濃度を徐々に低下させること(例えば、50%から0%まで)。当業者は、ハイブリダイゼーション中に変更することができ、かつストリンジェンシー条件を維持又は変化させるであろう様々なパラメータを知っている。
ハイブリダイゼーション条件に加えて、ハイブリダイゼーションの特異性は、典型的には、ハイブリダイゼーション後の洗浄の関数にも依存する。非特異的ハイブリダイゼーションから生じるバックグラウンドを除去するために、サンプルは希釈塩溶液を用いて洗浄される。そのような洗浄の重要な因子は、最終洗浄溶液のイオン強度及び温度を含み:塩濃度が低いほど、及び洗浄温度が高いほど、洗浄のストリンジェンシーが高くなる。洗浄条件は、典型的に、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーで、又はそれ以下のストリンジェンシーで行なわれる。陽性のハイブリダイゼーションは、バックグラウンドのシグナルの少なくとも2倍のシグナルを生じる。一般的に、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ又は遺伝子増幅検出手順に関する好適なストリンジェント条件は、上記で説明される通りである。より高いか又はより低いストリンジェント条件もまた、選択することができる。当業者は、洗浄中に変更することができ、かつストリンジェンシー条件を維持又は変化させるであろう様々なパラメータを知っている。
例えば、50ヌクレオチドよりも長いDNAハイブリッドに対する典型的な高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、65℃で1×SSC中又は42℃で1×SSC及び50%ホルムアミド中でのハイブリダイゼーション、及びそれに続く65℃で0.3×SSC中での洗浄を包含する。50ヌクレオチドよりも長いDNAハイブリッドに対する中等度ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の例は、50℃で4×SSC中又は40℃で6×SSC及び50%ホルムアミド中でのハイブリダイゼーション、及びそれに続く50℃で2×SSC中での洗浄を包含する。ハイブリッドの長さは、ハイブリダイズする核酸に対して予測される長さである。既知の配列の核酸をハイブリダイズさせる場合、ハイブリッドの長さは、配列をアライメントし、かつ本明細書中に記載される保存された領域を特定することにより決定することができる。1×SSCは、0.15M NaCl及び15mMクエン酸ナトリウムであり;ハイブリダイゼーション溶液及び洗浄溶液は、5×デンハルト試薬、0.5~1.0%SDS、100μg/mL変性断片化サケ***DNA、0.5%ピロリン酸ナトリウムをさらに含む場合がある。高ストリンジェンシー条件の別の例は、65℃で0.1%SDS及び任意により5×デンハルト試薬、100μg/mL変性断片化サケ***DNA、0.5%ピロリン酸ナトリウムを含む0.1×SSC中でのハイブリダイゼーション、及びそれに続く65℃で0.3×SSC中での洗浄である。
ストリンジェンシーのレベルを規定する目的のために、Sambrook et al. (2001) Molecular Cloning: a laboratory manual, 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, CSH, New YorkまたはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y.(1989及び年1回の改訂)を参照することができる。
「組み換え」(又はトランスジェニック)とは、細胞又は生物に関しては、細胞又は生物が、遺伝子技術により導入される外因性ポリヌクレオチドを含むことを意味し、ポリヌクレオチドに関しては、以下のいずれか:
(a) ポリヌクレオチド若しくはその一部分の配列、又は
(b) ポリヌクレオチドに機能的に連結されている1種以上の遺伝子制御配列(例えば、プロモーター)、又は
(c) (a)及び(b)の両方
が、それらの野生型遺伝的環境中に位置しないか又は改変されている、遺伝子技術/組み換えDNA技術によりもたらされるすべてのそれらの構築物を意味する。
用語「単離された核酸」又は「単離されたポリペプチド」は、一部の例では、それぞれ「組み換え核酸」又は「組み換えポリペプチド」に対する同義語であると考えることができ、かつそれぞれ、その天然の遺伝的環境又は細胞環境に位置しないか、かつ/又は組み換え法により改変されている、核酸又はポリペプチドを意味することが、さらに注記されるであろう。単離された核酸配列又は単離された核酸分子は、その生来の周囲環境又はその生来の核酸近傍にはないが、物理的及び機能的に他の核酸配列又は核酸分子に連結し、かつ核酸構築物、ベクター配列又は染色体の一部分として見出されるものである。典型的には、単離された核酸は、実験室条件で細胞からRNAを単離し、かつそれをコピーDNA(cDNA)へと変換することにより取得される。
用語「制御配列」は、限定するものではないが、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現をはじめとする、ポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼすすべての配列を含むものとして本明細書で定義される。各制御配列は、そのポリヌクレオチドに対して生来であっても外来であってもよく、又は互いに生来であっても外来であってもよい。かかる制御配列としては、限定するものではないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、5'-UTR、リボソーム結合性部位(RBS、シャイン・ダルガノ配列)、3'-UTR、シグナルペプチド配列、又は転写ターミネーターが挙げられる。最小限で、制御配列は、プロモーターと転写開始及び終止シグナルを含む。
用語「機能的に連結された」とは、記載された構成要素が、それらの意図される様式で機能することを許容する関係にあることを意味する。例えば、コード配列に機能的に連結された調節配列は、コード配列の発現が制御配列と適合性の条件下で達成される様式で、ライゲーションされる。
核酸、タンパク質、酵素、又は生物の「親」(又は「参照」若しくは「鋳型」)(「親核酸」、「参照核酸」、「鋳型核酸」、「親タンパク質」、「参照タンパク質」、「鋳型タンパク質」、「親酵素」、「参照酵素」、「鋳型酵素」、「親生物」、「参照生物」、又は「鋳型生物」とも称される)は、親の「バリアント(変異体)」をもたらす変化の導入(例えば、1箇所以上の核酸又はアミノ酸置換を導入することによる)に対する出発点である。つまり、「酵素バリアント(変異体)」又は「配列バリアント(変異体)」又は「バリアント(変異体)タンパク質」などの用語は、それぞれのバリアント(変異体)配列、タンパク質、酵素、又は生物に対する起源である親配列、タンパク質、酵素、又は生物から、改変型若しくはバリアント(変異体)配列、タンパク質、酵素、又は生物を区別するために用いられる。したがって、親配列、タンパク質、酵素、又は生物は、野生型配列、タンパク質、酵素、又は生物、及びさらなるバリアント(変異体)の開発のために用いられる野生型配列、タンパク質、酵素、又は生物のバリアント(変異体)を含む。バリアント(変異体)タンパク質又は酵素は、一定の程度までそれらのアミノ酸配列が親タンパク質又は酵素とは異なるが;しかしながら、バリアント(変異体)は、それぞれの親の機能的特性(例えば、酵素特性)を少なくとも維持する。一実施形態では、酵素特性は、それぞれの親酵素と比較した場合、バリアント(変異体)酵素では改善される。一実施形態では、バリアント(変異体)酵素は、それぞれの親酵素と比較した場合に、少なくとも同じ酵素活性を有するか、又はバリアント(変異体)酵素は、それぞれの親酵素と比較した場合に、増大した酵素活性を有する。
バリアント(変異体)を説明する際に、以下の通りに説明される命名法が用いられる:本発明の中で用いられる単一アミノ酸に対する略称は、一般に認められるIUPAC 1文字又は3文字アミノ酸略称に従う。以下の定義がアミノ酸変化の文脈での変異体を説明するが、核酸を同様に改変することができる(例えば、ヌクレオチドの置換、欠失、及び/又は挿入により)。
「置換」は、元のアミノ酸と、それに続くアミノ酸配列内での位置の番号、及びそれに続く置換されたアミノ酸を与えることにより記載される。例えば、120位のヒスチジンのアラニンによる置換は、「His120Ala」又は「H120A」と指定される。
「欠失」は、元のアミノ酸と、それに続くアミノ酸配列内での位置の番号、及びそれに続く*を与えることにより記載される。したがって、150位のグリシンの欠失は、「Gly150*」又は「G150*」と指定される。あるいは、欠失は、例えば、「D183及びG184の欠失」により示される。
「挿入」は、元のアミノ酸と、それに続くアミノ酸配列内での位置の番号、及びそれに続く元のアミノ酸及び追加のアミノ酸を与えることにより記載される。例えば、グリシンの隣りでのリジンの180位での挿入は、「Gly180GlyLys」又は「G180GK」と指定される。2個以上のアミノ酸残基が挿入される場合(例えば、Gly180の後ろのLys及びAlaなど)、これは、Gly180GlyLysAla又はG180GKAとして示すことができる。
置換及び挿入が同じ位置で起こる場合、これは、S99SD+S99A又は短くS99ADとして示すことができる。
既存のアミノ酸残基と同一のアミノ酸残基が挿入される場合、命名法の縮重が生じることが明らかである。例えば、上記の例でグリシンの後ろにグリシンが挿入される場合、これはG180GGにより示されるであろう。
複数の変化を含む変異体は、「+」により分離され、例えば、「Arg170Tyr+Gly195Glu」又は「R170Y+G195E」は、それぞれチロシン及びグルタミン酸による、170位及び195位でのアルギニン及びグリシンの置換を表わす。あるいは、複数の変化は、スペース又はカンマにより分離することができる(例えば、それぞれR170Y G195E又はR170Y, G195E)。
異なる変化を1つの位置に導入できる場合、異なる変化はカンマにより分離され、例えば、「Arg170Tyr, Glu」は、チロシン又はグルタミン酸による、170位でのアルギニンの置換を表わす。あるいは、異なる変化又は任意的な置換は、括弧内に示すことができる(例えば、Arg170[Tyr, Gly]若しくはArg170{Tyr, Gly}又は短くR170 [Y,G]若しくはR170 {Y, G})。
バリアント(変異体)は、1箇所以上の変化、同じ種類のうちのいずれか、例えば、すべての置換、又は置換、欠失、及び/若しくは挿入の組み合わせを含むことができる。変化は、核酸配列又はアミノ酸配列に導入することができる。
一実施形態では、脱調節アデニル酸シクラーゼのバリアント(変異体)は、1箇所、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所、6箇所、7箇所、8箇所、9箇所、10箇所、11箇所、12箇所、13箇所、14箇所、15箇所、16箇所、17箇所、18箇所、19箇所、20箇所、21箇所、22箇所、23箇所、24箇所、25箇所、26箇所、27箇所、28箇所、29箇所、30箇所、35箇所、40箇所又はそれ以上の変化を含み、かつアデニル酸シクラーゼ活性を有する。
脱調節アデニル酸シクラーゼのバリアント(変異体)は、それぞれ、配列番号1~10又は10~20のうちのいずれかに対して、約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の配列同一性を有し、かつアデニル酸シクラーゼ活性を有する、好ましくは野生型アデニル酸シクラーゼの調節部分を有しない又は不活性である若しくはダウンレギュレートされている若しくは不在である核酸及びポリペプチドを含む。
配列番号1~10又は26の配列のうちのいずれかから選択される基礎配列のアミノ酸を、これらの配列の他のものの中でのアミノ酸の存在にかかわらず、置換するために、以下の条件が適用され、このとき、文字は一般的な略称を用いてL-アミノ酸を示し、括弧付きの数字は置き換えの優先度を示す(より大きい数がより高い優先度を示す):Aは、S (1)、C (0)、G (0)、T (0)又はV (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Cは、A (0)により置き換えることができる。Dは、E (2)、N (1)、Q (0)又はS (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Eは、D (2)、Q (2)、K (1)、H (0)、N (0)、R (0)又はS (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Fは、Y (3)、W (1)、I (0)、L (0)又はM (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Gは、A (0)、N (0)又はS (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Hは、Y (2)、N (1)、E (0)、Q (0)又はR (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Iは、V (3)、L (2)、M (1)又はF (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Kは、R (2)、E (1)、Q (1)、N (0)又はS (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Lは、I (2)、M (2)、V (1)又はF (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Mは、L (2)、I (1)、V (1)、F (0)又はQ (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Nは、D (1)、H (1)、S (1)、E (0)、G (0)、K (0)、Q (0)、R (0)又はT (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Qは、E (2)、K (1)、R (1)、D (0)、H (0)、M (0)、N (0)又はS (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Rは、K (2)、Q (1)、E (0)、H (0)又はN (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Sは、A (1)、N (1)、T (1)、D (0)、E (0)、G (0)、K (0)又はQ (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Tは、S (1)、A (0)、N (0)又はV (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Vは、I (3)、L (1)、M (1)、A (0)又はT (0)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Wは、Y (2)又はF (1)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。Yは、F (3)、H (2)又はW (2)から選択されるいずれかのアミノ酸により置き換えることができる。
核酸及びポリペプチドは、タグ又はドメインを含めるために改変することができる。タグは、検出、精製、可溶化、又は固相化のためをはじめとする様々な目的のために利用することができ、かつ例えば、ビオチン、蛍光団、エピトープ、接合因子、又は調節配列を含むことができる。ドメインは、いずれかのサイズであり得、所望の機能を提供する(例えば、増大した安定性、溶解度、活性を賦与する、精製を簡潔化する)ものであり得、かつ例えば、結合性ドメイン、シグナル配列、プロモーター配列、調節配列、N末端伸長部、又はC30末端伸長部を含むことができる。タグ及び/又はドメインの組み合わせもまた利用することができる。
用語「融合タンパク質」とは、当技術分野で公知のいずれかの手段により、一緒に連結された2つ以上のポリペプチドを意味する。これらの手段としては、化学合成または組み換え遺伝子操作によるコード核酸のスプライシングが挙げられる。
・遺伝子編集
遺伝子編集またはゲノム編集は、DNAが挿入されるか、置き換えられるかまたはゲノムから除去され、かつ改変された生物学的活性を有するタンパク質をコードする核酸もしくはその一部の変異体を作製するために(Castle et al., (2004) Science 304(5674): 1151-4;米国特許第5,811,238号および同第6,395,547号)、DNAシャッフリングの反復およびそれに続く適切なスクリーニングおよび/もしくは選択からなる「遺伝子シャッフリング」または「指向性進化」などの様々な技術を用いることにより、または生じるトランスジェニック生物が導入されたプロモーターに近接する遺伝子の改変された発現に起因して優性表現型を示す「T-DNA活性化」タグ付け(Hayashi et al. Science (1992) 1350-1353)、または「TILLING」(ゲノム中の標的化誘発性局所的損傷(Targeted Induced Local Lesions In Genomes))により、取得できる、遺伝子操作の種類であり、改変された発現および/または活性を有するタンパク質をコードする核酸を作製および/または特定するために有用な突然変異誘発技術を意味する。TILLINGはまた、そのような突然変異体を保持する生物の選択も可能にする。TILLINGのための方法は、当技術分野で周知である(McCallum et al., (2000) Nat Biotechnol 18: 455-457;Stemple (2004) Nat Rev Genet 5(2): 145-50により総説される)。別の技術は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casシステム、および遺伝子操作型メガヌクレアーゼ(再遺伝子操作型ホーミングエンドヌクレアーゼなど)などの人工的に操作されたヌクレアーゼを用いる(Esvelt, KM.; Wang, HH. (2013), Mol Syst Biol 9 (1): 641; Tan, WS.et al. (2012), Adv Genet 80: 37-97; Puchta, H.; Fauser, F. (2013), Int. J. Dev. Biol 57: 629-637)。
「酵素活性」とは、酵素により発揮される少なくとも1種の触媒作用を意味する。一実施形態では、酵素活性は、酵素1ミリグラム当たりの単位(比活性)又は酵素の分子1個当たりの1分間当たりに変換される基質の分子(分子活性)の単位として表現される。アデニル酸シクラーゼ活性の場合、分子酵素活性は、アデニル酸シクラーゼ又はタンパク質のアデニル酸シクラーゼ含有部分の1分子あたり1分間に生成されるcAMP分子数として理解することができる。
配列のアライメントは、好ましくは、Needleman and Wunschのアルゴリズムを用いて行なわれる。Needleman and Wunschアルゴリズム:Needleman, Saul B. & Wunsch, Christian D. (1970). "A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins". Journal of Molecular Biology. 48 (3): 443-453。このアルゴリズムは、例えば、2つの配列の全域アライメントを実行する「NEEDLE」プログラムへと実装されている。NEEDLEプログラムは、例えば、様々なプログラムの集合体である欧州分子生物学オープンソフトウェアスイート(EMBOSS)内に含められる:The European Molecular Biology Open Software Suite (EMBOSS), Trends in Genetics 16 (6), 276 (2000)。
酵素バリアント(変異体)は、親酵素と比較した場合に、それらの配列同一性により定義することができる。配列同一性は、通常、「%配列同一性」又は「%同一性」として提供される。第1のステップで2種類のアミノ酸配列間の同一性パーセントを決定するために、それら2種類の配列間でペアワイズ配列アライメントを作成し、このとき、2種類の配列は、それらの完全長でアライメントされる(すなわち、ペアワイズ全域アライメント)。アライメントは、プログラムのデフォルトパラメータ(gapopen=10.0、gapextend=0.5及びmatrix=EBLOSUM62)を用いて、好ましくはプログラム「NEEDLE」(欧州分子生物学オープンソフトウェアスイート(EMBOSS))を用いることにより、Needleman and Wunschアルゴリズム(J. Mol. Biol. (1979) 48, p. 443-453)を実装するプログラムを用いて、生成される。本発明の目的のために好ましいアライメントは、最高配列同一性を決定できるアライメントである。
以下の例は、2種類のヌクレオチド配列を説明することを意図するが、同じ計算が、タンパク質配列に適用される:
Seq A:AAGATACTG 長さ:9塩基
Seq B:GATCTGA 長さ:7塩基。
それ故、比較的短い配列は、配列Bである。
それらの完全長にわたって両方の配列を示すペアワイズ全域アライメントの生成は、以下のものを生じる。
Figure 2023506284000002
アライメント中の「|」記号は、同一の残基(DNAに関しては塩基又はタンパク質に関してはアミノ酸を意味する)を示す。同一残基の数は6である。
アライメント中の「-」記号はギャップを示す。Seq B内でアライメントにより導入されるギャップの数は、1である。Seq Bの縁でアライメントにより導入されるギャップの数は2であり、Seq Aの縁では1である。
それらの完全長にわたってアライメントされた配列を示すアライメント長は、10である。
本発明に従ってその完全長にわたって比較的短い配列を示すペアワイズアライメントの生成は、結果として、以下のものを生じる:
Figure 2023506284000003
本発明に従ってその完全長にわたって配列Aを示すペアワイズアライメントの生成は、結果として、以下のものを生じる:
Figure 2023506284000004
本発明に従ってその完全長にわたって配列Bを示すペアワイズアライメントの生成は、結果として、以下のものを生じる:
Figure 2023506284000005
その完全長にわたって比較的短い配列を示すアライメント長は、8である(1つのギャップが存在し、これは、比較的短い配列のアライメント長に含まれる)。
したがって、その完全長にわたってSeq Aを示すアライメント長は、9であろう(Seq Aが本発明の配列であることを意味する)。
したがって、その完全長にわたってSeq Bを示すアライメント長は、8であろう(Seq Bが本発明の配列であることを意味する)。
第2のステップで、2つの配列をアライメントした後、同一性値が、アライメントから決定される。そのため、この説明に従って、同一性パーセントの以下の計算を適用する:
%同一性=(同一残基/その完全長にわたって比較的短い配列を示すアライメント領域の長さ)*100。つまり、本実施形態に従う2つのアミノ酸配列の比較に関連する配列同一性は、その完全長にわたって比較的短い配列を示すアライメント領域の長さによって、同一残基の数を除算することにより、算出される。この値が、100を用いて乗算されて、「%同一性」を与える。上記で提供された例に従えば、%同一性は:(6/8)*100=75%である。
・遺伝子編集
生物のゲノム中での標的化された改変のための多数の技術が公知である。CRIPR又はCRISPR/CASとして公知の技術が、最も広く知られている:
CRISPR(クラスター化され規則的に間隙を設けられた短い回文反復(clustered regularly interspaced short palindromic repeats))技術は、標的生物のゲノムを改変するために、例えば、ゲノムのほとんどいずれの部位にでもいずれかの所与のDNA断片を導入するために、所望の配列を用いてゲノムの一部分を置き換えるために、又は標的生物のゲノム中の所与の領域を正確に欠失させるために用いることができる。これは、ゲノム操作の先例のない精密さを可能にする。
CRISPRシステムは、当初、ストレプトコッカス属(Streptococcus)に属する細菌の順応的防御メカニズムとして特定された(国際公開第2007/025097号)。それらの細菌CRISPRシステムは、侵入しているウイルスDNA内に存在する相補的配列の分解に向かわせるための、切断性タンパク質を含む複合体中のガイドRNA(gRNA)に依存する。様々な真核生物での遺伝子操作に対するCRISPRシステムの応用が示されている(国際公開第2013/141680号;同第2013/176772号;同第2014/093595号)。CRISPR/Casシステムの最初に特定されたタンパク質であるCas9は、2種類の非コードRNA:CRSIPR RNA(crRNA)及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)の複合体により、PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列モチーフに隣接するDNA標的配列へとガイドされる、大型の単量体DNAヌクレアーゼである。crRNAをtracrRNAと融合させることにより作製される合成RNAキメラ(単一ガイドRNA又はsgRNA)もまた、等しく機能的であることが示された(国際公開第2013/176772号)。Cas9と異なるDNAヌクレアーゼ(Cpf1、C2c1p又はC2c3pなど)を含む他の供給源由来のCRISPRシステムが、同じ機能性を有すると記載されている(国際公開第2016/0205711号、同第2016/205749号)。他の著者らは、ヌクレアーゼがRNA分子でなくDNA分子によりガイドされるシステムを記載する。そのようなシステムは、例えば、米国特許出願公開第2016/0046963号に開示される通りのAGOシステムである。
数組の研究グループが、CRISPR切断特性を、先例のない容易さを伴って、ほぼいずれの生物のゲノムでも、標的領域を破壊するために用いることができたことを見出している。現在では、修復のための鋳型を提供することにより、ほとんどいずれの部位でも、ほとんどいずれの所望の配列を有するゲノムでも編集することが可能になり、このことが、CRISPRを強力な遺伝子編集ツールにすることが明らかになった(国際公開第2014/150624号、同第2014/204728号)。修復のための鋳型は、ドナー核酸と呼ばれ、それぞれのヌクレアーゼによる標的核酸での二本鎖破壊の導入後に、それぞれの鋳型中での相同組み換えを可能にする、標的領域に対して相補的な配列を3'及び5'末端に含む。
所与のゲノム中で標的領域を選ぶ際の主な制限は、CRISPR関連ヌクレアーゼが二本鎖破壊を導入する領域の近傍でのPAM配列モチーフの存在の必要性である。しかしながら、様々なCRISPRシステムが、異なるPAM配列モチーフを認識する。このことは、それぞれの標的領域に対する最も好適なCRISPRシステムを選択することを可能にする。さらに、AGOシステムは、PAM配列モチーフをまったく必要としない。
本技術は、例えば、異なる強度又は特異性のプロモーターを有する標的遺伝子の上流のプロモーターを交換することにより、例えば、いずれかの生物での遺伝子発現の変化に適用することができる。先行技術で開示されている他の方法は、ヌクレアーゼであるマイナスCRISPRヌクレアーゼタンパク質に対する活性化又は抑制性転写因子の融合を記載する。そのような融合タンパク質は、標的生物中でいずれかの所望のプロモーターに対する融合タンパク質の転写因子部分をガイドする1種以上のガイド核酸と一緒に、標的生物中で発現させることができる(国際公開第2014/099744号;同第2014/099750号)。遺伝子のノックアウトは、それぞれの標的遺伝子へと点突然変異又は欠失を導入することにより、例えば、通常は遺伝子破壊につながる非相同性末端結合(non-homologous-end-joining;NHEJ)を導入することにより、容易に達成することができる(国際公開第2013/176772号)。
組み換え生物
用語「組み換え生物」とは、遺伝的に変化、改変又は遺伝子操作されており、それにより、それから誘導された野生型生物と比較した場合に、変化したか、改変されたか又は異なる遺伝子型を示す、真核生物(酵母、真菌、藻類、植物、動物)又は原核微生物(例えば、細菌)を意味する。好ましくは、「組み換え生物」は、外因性核酸を含む。「組み換え生物」、「遺伝的に改変された生物(遺伝子改変生物)」及び「トランスジェニック生物」は、相互に交換可能に本明細書中で用いられる。外因性核酸は、DNAの染色体外小片(プラスミドなど)上に位置することができ、又は生物の染色体DNAにインテグレートされることができる。組み換えとは、用いる核酸が、当該生物のゲノム中に存在しないか、若しくはそれに由来せず、又は当該生物のゲノム中に存在するが、当該生物のゲノム中のその天然の遺伝子座には存在せず、1種以上の内因性及び/又は外因性制御エレメントの制御下で核酸が発現されることが可能であることを意味するものと理解される。
「宿主細胞」
宿主生物とも称される宿主細胞は、細菌細胞、酵母細胞、真菌、藻類、若しくはシアノバクテリア細胞、非ヒト動物若しくは哺乳動物細胞、又は植物細胞から選択されるいずれかの細胞であり得る。当業者は、対象となる配列を含む宿主細胞を成功裏に形質転換、選択及び繁殖するために遺伝子構築物上に存在しなければならない遺伝的エレメントをよく知っている。
一実施形態では、宿主細胞又は宿主生物は、相互に交換可能に用いられる。
典型的な宿主細胞は、グラム陽性:バシラス属(Bacillus)、ストレプトミセス属(Streptomyces)などの細菌である。有用なグラム陽性細菌としては、限定するものではないが、バシラス(Bacillus)細胞、例えば、バシラス・アルカロフィウス(Bacillus alkalophius)、バシラス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・サークランス(Bacillus circulans)、バシラス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バシラス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バシラス・フィルムス(Bacillus firmus)、バシラス・イアウタス(Bacillus iautus)、バシラス・レンタス(Bacillus lentus)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシラス・プミラス(Bacillus pumilus)、バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌(Bacillus subtilis)及びバシラス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)が挙げられる。最も好ましくは、原核生物は、バシラス(Bacillus)細胞、好ましくは、枯草菌(Bacillus subtilis)、バシラス・プミラス(Bacillus pumilus)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、又はバシラス・レンタス(Bacillus lentus)のバシラス細胞である。一部の他の好ましい細菌としては、放線菌目(Actinomycetales)の菌株、好ましくは、ストレプトミセス属(Streptomyces)、好ましくはストレプトミセス・スフェロイデス(Streptomyces spheroides)(ATTC 23965)、ストレプトミセス・テルモビオラセウス(Streptomyces thermoviolaceus)(IFO 12382)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトミセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)又はストレプトベルチシルム・ベルチシリウムssp.ベルチシリウム(Streptoverticillum verticillium ssp. verticillium)が挙げられる。他の好ましい細菌としては、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドモナス・パルストリ(Rhodomonas palustri)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)が挙げられる。さらに好ましい細菌としては、ミクソコッカス属(Myxococcus)に属する菌株、例えば、M.ビレセンス(M. virescens)が挙げられる。
さらなる典型的な宿主細胞は、グラム陰性であり:大腸菌、シュードモナス属(Pseudomonas)、好ましいグラム陰性細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス属種(Pseudomonas sp.)、好ましくは、シュードモナス・プルロシニア(Pseudomonas purrocinia)(ATCC 15958)又はシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)(NRRL B-11)である。
さらなる典型的な宿主細胞は、アスペルギルス属(Aspergillus)、フザリウム属(Fusarium)、トリコデルマ属(Tricoderma)などの真菌である。微生物は、真菌細胞であり得る。本明細書中で用いる場合、「真菌」としては、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)、及び接合菌門(Zygomycota)並びに卵菌門(Oomycota)及び不完全菌亜門(Deuteromycotina)及びすべての栄養胞子形成性(mitosporic)真菌が挙げられる。子嚢菌門の代表的な群としては、例えば、ニューロスポラ属(Neurospora)、ユーペニシリウム属(Eupenicillium)(=ペニシリウム属(Penicillium))、エメリセラ属(Emericella)(=アスペルギルス属(Aspergillus))、ユーロチウム属(Eurotium)(=アスペルギルス属(Aspergillus))、及び以下に列記される正酵母(true yeast)が挙げられる。担子菌門の例としては、キノコ、さび菌、及び黒穂菌が挙げられる。ツボカビ門の代表的な群としては、例えば、アロミセス属(Allomyces)、ブラストクラジエラ属(Blastocladiella)、コエロモミセス属(Coelomomyces)、及び水生真菌が挙げられる。卵菌門の代表的な群としては、例えば、ワタカビ属(Achlya)などのサプロレグニオミセトス(Saprolegniomycetous)水生真菌(ミズカビ)が挙げられる。栄養胞子形成性真菌の例としては、アスペルギルス属(Aspergillus)、ペニシリウム属(Penicillium)、カンジダ属(Candida)、及びアルタナリア属(Alternaria)が挙げられる。接合菌門の代表的な群としては、例えば、クモノスカビ属(Rhizopus)及びケカビ属(Mucor)が挙げられる。
一部の好ましい真菌としては、不完全菌亜門(subdivision Deuteromycotina)、不完全糸状菌綱(class Hyphomycetes)に属する菌株、例えば、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、トリコデルマ属(Tricoderma)、ミロテシウム属(Myrothecium)、バーティシリウム属(Verticillum)、アルトロミセス属(Arthromyces)、カルダリオミセス属(Caldariomyces)、ウロクラジウム属(Ulocladium)、エンベリシア属(Embellisia)、クラドスポリウム属(Cladosporium)又はドレスクレラ属(Dreschlera)、特に、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)(DSM 2672)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、トリコデルマ・レシイ(Trichoderma resii)、ミロテシウム・ベルルカナ(Myrothecium verrucana)(IFO 6113)、バーティシリウム・アルボアトラム(Verticillum alboatrum)、バーティシリウム・ダーリエ(Verticillum dahlie)、アルトロミセス・ラモサス(Arthromyces ramosus)(FERM P-7754)、カルダリオミセス・フマゴ(Caldariomyces fumago)、ウロクラジウム・チャルタラム(Ulocladium chartarum)、エンベリシア・アリイ(Embellisia alli)又はドレスクレラ・ハロデス(Dreschlera halodes)が挙げられる。
他の好ましい真菌としては、担子菌門(subdivision Basidiomycotina)、担子菌綱(class Basidiomycetes)に属する菌株、例えば、ササクレヒトヨタケ属(Coprinus)、マクカワタケ属(Phanerochaete)、カワラタケ属(Coriolus)又はシロアミタケ属(Trametes)、特に、コプリナス・シネレウスf.ミクロスポラス(Coprinus cinereus f. microsporus)(IFO 8371)、コプリナス・マクロリズス(Coprinus macrorhizus)、ファネロケテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)(例えば、NA-12)又はシロアミタケ属(Trametes)(以前にはタマチョレイタケ属(Polyporus)と称された)、例えば、カワラタケ(T. versicolor)(例えば、PR4 28-A)が挙げられる。
さらなる好ましい真菌としては、接合菌門(subdivision Zygomycotina)、ミコラセアエ綱(class Mycoraceae)に属する菌株、例えば、クモノスカビ属(Rhizopus)又はケカビ属(Mucor)、特に、ムコール・ヒエマリス(Mucor hiemalis)が挙げられる。
さらなる典型的な宿主細胞は、酵母である。ピチア属(Pichia)の種又はサッカロミセス属(Saccharomyces)の種など。真菌宿主細胞は、酵母細胞であり得る。本明細書中で用いる場合、「酵母」としては、子嚢胞子形成性(ascosporogenous)酵母(エンドミセタレス(Endomycetales))、担子胞子形成性(basidiosporogenous)酵母、及び不完全真菌(Fungi lmperfecti)(ブラストミセス属(Blastomycetes))に属する酵母が挙げられる。子嚢胞子形成性酵母は、スペルモフトラ科(Spermophthoraceae)及びサッカロミセス科(Saccharomycetaceae)に分けられる。後者は、4つの亜科:Schizosaccharomycoideae亜科(例えば、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces))、Nadsonioideae亜科、Lipomycoideae亜科、及びSaccharomycoideae亜科(例えば、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ピチア属(Pichia)、及びサッカロミセス属(Saccharomyces))から構成される。担子胞子形成性酵母としては、ロイコスポリジウム属(Leucosporidim)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、スポリジオボラス属(Sporidiobolus)、フィロバシジウム属(Filobasidium)、及びフィロバシジエラ属(Filobasidiella)が挙げられる。不完全真菌に属する酵母は、2つの科:Sporobolomycetaceae科(例えば、スポロボロミセス属(Sporobolomyces)及びブレラ属(Bullera))及びCryptococcaceae科(例えば、カンジダ属(Candida))に分けられる。
典型的な宿主細胞はまた、非ヒト動物、非ヒト哺乳動物、鳥類、爬虫類、昆虫、植物、酵母、真菌又は植物などの真核生物である。
好ましくは、本発明に従う宿主生物は、グラム陽性又はグラム陰性原核細胞微生物であり得る。
有用なグラム陽性原核細胞微生物としては、限定するものではないが、バシラス(Bacillus)細胞、例えば、バシラス・アルカロフィウス(Bacillus alkalophius)、バシラス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・サークランス(Bacillus circulans)、バシラス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バシラス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バシラス・フィルムス(Bacillus firmus)、バシラス・イアウタス(Bacillus iautus)、バシラス・レンタス(Bacillus lentus)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシラス・プミラス(Bacillus pumilus)、バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、及びバシラス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)が挙げられる。最も好ましくは、原核生物は、バシラス(Bacillus)細胞、好ましくは、枯草菌(Bacillus subtilis)、バシラス・プミラス(Bacillus pumilus)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、又はバシラス・レンタス(Bacillus lentus)のバシラス細胞である。一部の他の好ましい細菌としては、放線菌目(Actinomycetales)の菌株、好ましくは、ストレプトミセス属(Streptomyces)、好ましくはストレプトミセス・スフェロイデス(Streptomyces spheroides)(ATTC 23965)、ストレプトミセス・テルモビオラセウス(Streptomyces thermoviolaceus)(IFO 12382)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトミセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)又はストレプトベルチシルム・ベルチシリウムssp.ベルチシリウム(Streptoverticillum verticillium ssp. verticillium)が挙げられる。他の好ましい細菌としては、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドモナス・パルストリ(Rhodomonas palustri)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)が挙げられる。さらに好ましい細菌としては、ミクソコッカス属(Myxococcus)に属する菌株、例えば、M.ビレセンス(M. virescens)が挙げられる。
さらなる典型的な原核生物は、グラム陰性であり:大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス属(Pseudomonas)、好ましいグラム陰性原核細胞微生物は、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス属種(Pseudomonas sp.)、好ましくは、シュードモナス・プルロシニア(Pseudomonas purrocinia)(ATCC 15958)又はシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)(NRRL B-11)である。
最も好ましくは、原核細胞微生物は、大腸菌(Escherichia coli)である。
用語「単糖」は、好ましくは、アルドース(例えば、D-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-リボース、D-アラビノース、L-アラビノース、D-キシロースなど)、ケトース(例えば、D-フルクトース、D-ソルボース、D-タガトースなど)、デオキシ糖(例えば、L-ラムノース、L-フコースなど)、デオキシアミノ糖(例えば、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルマンノサミン、N-アセチルガラクトサミンなど)、ウロン酸、ケトアルドン酸(例えば、シアル酸)又は同等物である5~9個の炭素原子の糖を意味する。
用語「オリゴ糖」は、好ましくは、少なくとも3つの単糖単位(上記参照)を含有する糖ポリマーを意味する。オリゴ糖は、グリコシド間結合によって互いに連結された直鎖又は分枝鎖の構造を有する単糖単位を有することができる。例としてはマルトデキストリン、セロデキストリン、ヒト乳オリゴ糖、フルクトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖であるが、これらに限定されない。
好ましくは、オリゴ糖はヒト乳オリゴ糖(HMO)である。
用語「ヒト乳オリゴ糖」又は「HMO」は、好ましくは、ヒト母乳中に見出される複合炭水化物を意味する(Urashima et al.: Milk Oligosaccharides. Nova Science Publishers, 2011)。HMOは還元末端にラクトース単位であるコア構造を有し、これは1つ以上のβ-N-アセチル-ラクトサミニル及び/又は1つ以上のβ-ラクト-N-ビオシル単位によって伸長することができ、このコア構造はα L-フコピラノシル及び/又はα-N-アセチル-ノイラミニル(シアリル)部分によって置換することができる。これに関して、非酸性(又は中性)HMOはシアリル残基を欠き、酸性HMOはその構造中に少なくとも1つのシアリル残基を有する。
非酸性(又は中性)HMOは、フコシル化又は非フコシル化され得る。そのような中性非フコシル化HMOの例としては、ラクト-N-トリオース(LNTri、GlcNAc(β1-3)Gal(β1-4)Glc)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ラクト-N-ネオヘキサオース(LNnH)、パラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(pLNnH)、パラ-ラクト-N-ヘキサオース(pLNH)及びラクト-N-ヘキサオース(LNH)が挙げられる。中性フコシル化HMOの例としては、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、ラクト-N-フコペンタオースI(LNFP-I)、ラクト-N-ジフコヘキサオースI(LNDFH-I)、3-フコシルラクトース(3’-FL)、ジフコシルラクトース(2,3-DFL)、ラクト-N-フコペンタオースII(LNFP-II)、ラクト-N-フコペンタオースIII(LNFP-III)、ラクト-N-ジフコヘキサオースIII(LNDFH-III)、フコシル-ラクト-N-ヘキサオースII(FLNH-II)、ラクト-N-フコペンタオースV(LNFP-V)、ラクト-N-ジフコヘキサオースII(LNDFH-II)、フコシル-ラクト-N-ヘキサオースI(FLNH-I)、フコシル-パラ-ラクト-N-ヘキサオースI(FpLNnH I)、フコシル-パラ-ラクト-N-ヘキサオースII(F-pLNnH II)及びフコシル-ラクト-N-ネオヘキサオース(FLNnH)が挙げられる。
酸性HMOの例としては、3’-シアリルラクトース(3’-SL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)、3-フコシル-3’-シアリルラクトース(FSL)、LST a、フコシル-LST a(FLST a)、LST b、フコシル-LST b(FLST b)、LST c、フコシル-LST c(FLST c)、シアリル-LNH(SLNH)、シアリル-ラクト-N-ヘキサオース(SLNH)、シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースI(SLNH-I)、シアリル-ラクト-N-ネオヘキサオースII(SLNH-II)及びジシアリル-ラクト-N-テトラオース(DSLNT)が挙げられる。
ヒト乳オリゴ糖の例は、Ninonuevo MR et al. (2006). J. Agric. Food Chem. 54:7471-7480, Bode L (2009) Nutr. Rev. 67:183-191, Bode L (2012) Glyco-biology 22:1147-1162, Bode L (2015) Early Hum. Dev. 91:619-622にも見出すことができる。
より好ましくは、HMOは中性又は酸性HMOである。
さらにより好ましくは、オリゴ糖は、2’-フコシルラクトース(2’-FL)、6’-シアリルラクトース(6’-SL)及び/又はラクト-N-テトラオース(LNT)である。
酵素活性、cAMP量若しくはファインケミカル生産、炭素変換効率、空時収率若しくは増殖、又は炭素源の適応性(carbon source flexibility)の文脈での、用語「増大する」、「改善する」又は「増強する」は、相互に交換可能であり、かつ、応用の意味で、非改変宿主生物に限定されないような対照との比較での、少なくとも3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%、好ましくは少なくとも15%又は20%、より好ましくは25%、30%、35%又は40%又はそれ以上の増大を意味するであろう。
遺伝子発現又はタンパク質存在又はタンパク質存在量又は不活性化の文脈における用語「減少」、「低減」又は「低下」は互換的であり、本出願の意味において、本明細書に定義される対照と比較して、少なくとも3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%、好ましくは少なくとも15%又は20%、より好ましくは25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、95%又は98%又はそれ以上の低減を意味する。
「オリゴ糖の増強された生産」という用語は、その親株と比較して、オリゴ糖の増強された生産性、及び/又はオリゴ糖の増強された力価、及び/又は増強された炭素変換効率を指す。培養培地中の微生物によるオリゴ糖の生成は、当業者に公知の標準的な分析手段によって明確に記録することができる。オリゴ糖(例えば、HMO)の生産が増強されたいくつかの遺伝子改変微生物は、大腸菌株について、WO 2016/008602、WO2013/182206、EP2379708、US9944965、WO2012/112777、WO2001/04341及びUS2005019874として公開された特許出願に開示されている。これらの開示の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
さらに、本発明者らは驚くべきことに、原核生物によるオリゴ糖の生成の炭素変換効率、炭素基質の適応性、及び空間/時間は、Crrタンパク質、又はCrrタンパク質に対応する前記原核生物のタンパク質を防止するようにPTS系を操作することによって、crr遺伝子(配列番号25)又はその変異体の発現を減少又は防止することによって又はCrrタンパク質(配列番号26)又はその変異体の不活性化又は減少によっていずれかでPTSに関与することによって、増加させることができることを見出した。Crrファミリーのそのような不活性化若しくは低減したタンパク質を保持するか、又はcrr遺伝子ファミリーの遺伝子の発現が減少若しくは防止された宿主生物は、一実施形態では原核微生物である。
本発明の一態様では、炭素基質適応性の増加が炭素上で増殖する改変微生物の特徴であり、未改変微生物は対照よりも炭素源で増殖することができないか、又は実質的により良好に増殖することができず、対照はそれぞれ、アデニル酸シクラーゼ活性に関する改変及び/又はcrr遺伝子(配列番号25)若しくはCrrタンパク質(配列番号26)に対応する遺伝子若しくはタンパク質に関する改変を伴わない野生型細胞又は遺伝子改変微生物であり得る。
一実施形態では、本発明の方法は、crr遺伝子(配列番号25)又はCrrタンパク質(配列番号26)に対応する遺伝子又はタンパク質に関連する改変のない微生物と比較して、遺伝子改変微生物によって産生される1つ以上のファインケミカル、好ましくは1つ以上のオリゴ糖の空時収率を増大させるため、並びに/あるいは遺伝子改変微生物による、炭素基質適応性及び/又は1つ以上のファインケミカル、好ましくは1つ以上のオリゴ糖の産生の炭素変換効率を増大させるための方法であり、この方法は、1つ以上のファインケミカルを産生することができる微生物を提供するステップ、Crrタンパク質又は大腸菌におけるCrrタンパク質(配列番号26)に対応する内因性タンパク質の不活性化又は非存在によって微生物の環状アデノシン3′,5′-一リン酸(cAMP、CAS番号60-92-4)レベルを増加させるステップ、この改変された微生物を増殖させることを可能にする環境において改変された微生物を維持するステップ、基質及び栄養素の存在下で、1つ以上のファインケミカルの製造に適した条件下で改変された微生物を増殖させるステップ、任意により、1つ以上のファインケミカルを改変された微生物又はその残部から分離するステップを含む。一実施形態では、改変された微生物は、改変されていない形態及び改変された形態の前記1つ以上のファインケミカルを生成するのに適している。
一実施形態では、変異型(バリアント)CRRタンパク質は、非改変Crrタンパク質又はCrrタンパク質に対応するタンパク質と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40又はそれ以上の改変を含み、変異体の存在量、活性及び/又は寿命はその微生物の未改変CRRタンパク質ファミリーメンバーと比較して低減している。
変異体(バリアント)は、それぞれ配列番号25又は26に対して約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の配列同一性を有する核酸及びポリペプチドを含む。
「遺伝的に改変された微生物(遺伝子改変微生物)」という用語は、それが由来した野生型生物と比較して、変更された、改変された、又は異なる遺伝子型を示すように、遺伝的に変更、改変又は操作された原核微生物(例えば、細菌)を指す。「遺伝的に改変された微生物」、「組換え微生物」及び「トランスジェニック微生物」は本明細書において互換的に使用される。前記遺伝的に改変された微生物における外因性核酸は、DNAの染色体外片(プラスミドなど)に位置し得るか、又は生物の染色体DNA中に組み込まれ得る。
本発明に係る遺伝子改変微生物は、グラム陽性又はグラム陰性原核微生物であり得る。
本発明の遺伝子改変微生物を生成するために有用なグラム陽性原核細胞微生物及び本発明の方法において有用なものとしては、限定するものではないが、バシラス(Bacillus)細胞、例えば、バシラス・アルカロフィウス(Bacillus alkalophius)、バシラス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バシラス・ブレビス(Bacillus brevis)、バシラス・サークランス(Bacillus circulans)、バシラス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バシラス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バシラス・フィルムス(Bacillus firmus)、バシラス・イアウタス(Bacillus iautus)、バシラス・レンタス(Bacillus lentus)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシラス・プミラス(Bacillus pumilus)、バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、及びバシラス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)が挙げられる。最も好ましくは、原核生物は、バシラス(Bacillus)細胞、好ましくは、枯草菌(Bacillus subtilis)、バシラス・プミラス(Bacillus pumilus)、バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、又はバシラス・レンタス(Bacillus lentus)のバシラス細胞である。一部の他の好ましい細菌としては、放線菌目(Actinomycetales)の菌株、好ましくは、ストレプトミセス属(Streptomyces)、好ましくはストレプトミセス・スフェロイデス(Streptomyces spheroides)(ATTC 23965)、ストレプトミセス・テルモビオラセウス(Streptomyces thermoviolaceus)(IFO 12382)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトミセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)又はストレプトベルチシルム・ベルチシリウムssp.ベルチシリウム(Streptoverticillum verticillium ssp. verticillium)が挙げられる。他の好ましい細菌としては、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドモナス・パルストリ(Rhodomonas palustri)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)が挙げられる。さらに好ましい細菌としては、ミクソコッカス属(Myxococcus)に属する菌株、例えば、M.ビレセンス(M. virescens)が挙げられる。
本発明の遺伝的に改変された微生物を作製するのに有用なさらなる典型的な原核生物及び本発明の方法において有用なものは、グラム陰性:大腸菌、シュードモナスであり、好ましいグラム陰性原核微生物は、大腸菌及びシュードモナス属、好ましくはシュードモナス・プロシニア(Pseudomonas purrocinia)(ATCC 15958)又はシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)(NRRL B-11)である。
最も好ましくは、本発明の遺伝的に改変された微生物を作製するのに有用な原核微生物及び本発明の方法において有用なものは大腸菌である。
PTS炭水化物利用システム(PTS)は、細菌などの微生物によって利用されるよく特徴付けられた炭水化物輸送システムである。Postma et al. 1993(Postma P W, Lengeler J W, Jacobson G R. Phosphoenolpyruvate: carbohydrate phosphotransferase systems ofbacteria. Microbiol Rev. 1993 September; 57(3): 543-94.)及びTchieu et al. 2001(Tchieu J H, Norris V, Edwards J S, Saier M H Jr. The complete phosphotransferase system in Escherichia coli. J Mol Microbiol Biotechno. 2001 July; 3(3):329-46)を参照されたい(これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。PTSを含む例示的な細菌としては、バチルス属、クロストリジウム属、エンテロバクテリア科、エンテロコッカス属、エルウィニア属、エシェリヒア属、クレブシエラ属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、マイコプラズマ属、パスツレラ属、ロドバクター属、ロドシュードモナス属、サルモネラ属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、ビブリオ属、及びキサントモナス属由来のものが挙げられる。代表的な種としては、大腸菌、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、スタフィロコッカス・カモサス(Staphylococcus camosus)、枯草菌、マイコプラズマ・カプリコラム(Mycoplasma capricolum)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)、ストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)、ロドバクター・カプスラタス(Rhodobacter capsulatus)、ビブリオ・アルギノリティカス(Vibrio alginolyticus)、アーウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)、キサントモナス・カムペストリス(Xanthomonas campestris)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ロドシュードモナス・スファエロイデス(Rhodoseudomonas sphaeroides)、アーウィニア・カロトボラ(Erwinia carotovora)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、及びクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)が挙げられる。
驚くべきことに、本発明者らは、Crrタンパク質の存在量の低減が、改変された微生物、好ましくは遺伝子改変微生物によって産生されるオリゴ糖の空時収率、炭素基質適応性又は炭素変換効率の増加をもたらすことを初めて見出した。
Crrタンパク質の存在量が低減しているか又は存在しない微生物を有する改変微生物、好ましくは遺伝子改変微生物は、遺伝子のノックアウト、又は部分的若しくは完全な欠失、アンチセンス若しくはRNAiアプローチを含むcrr遺伝子発現の低減、あるいはCRISPR/CASのような遺伝子編集方法などの他の組換え方法、又は異常な結合パートナー、例えば抗体によるCrrタンパク質の分離などの多くの手段によって達成することができる。
一実施形態では、操作、好ましくはCrrタンパク質のレベルの低下又は完全な除去が誘導可能な様式で行われ、空時収率、炭素基質適応性及び/又は炭素変換効率の増加はそのような誘導を伴わない遺伝子改変微生物と比較される。例えば誘導因子イソプロピルβ-d-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)による誘導因子依存的遺伝子発現のための方法は、当技術分野で公知である。
好ましい実施形態では、本発明の方法は、微生物によって生産される1つ以上のファインケミカルの空時収率の増加、並びに微生物による1つ以上のファインケミカルの生産の炭素基質適応性及び炭素変換効率の増加のための方法であり、この方法は、1つ以上のファインケミカルを生産することができる微生物を提供するステップ、配列番号25又はその変異体(バリアント)に対応する遺伝子の遺伝子座を微生物において不活性化若しくは下方制御するステップ、又は配列番号25又はその変異体(バリアント)によってコードされるCrrタンパク質に対応するタンパク質を不活性化若しくは除去するステップ、この遺伝子改変微生物を増殖させることを可能にする環境においてこの遺伝子改変微生物を維持するステップ、基質及び栄養素の存在下、及び1つ以上のファインケミカルの生産に適した条件下でこの遺伝子改変微生物を増殖させるステップ、並びに場合により1つ以上のファインケミカルを遺伝子改変微生物又はその残部から分離するステップを含む。
微生物におけるCrrタンパク質、その変異体(バリアント)又はCrrタンパク質に対応するタンパク質の活性は、Crrタンパク質若しくはその変異体(バリアント)又はCrrタンパク質に対応するタンパク質の正常な生物学的機能として理解されるべきである。これは、例えば、Crrタンパク質がキナーゼドメインを含むことが知られているので、キナーゼ活性を含むことができる。不活性化は前記活性が同じ正常レベルには存在しないが、実質的に低いか又は完全に存在しないという点で理解されるべきである。正常な生物学的機能のために、正常なレベルでのこれらの目的のタンパク質の存在量が必要とされる。目的の前記タンパク質の存在量が実質的に低減する場合、生物学的機能、したがって全体的活性は低減する。目的のタンパク質が存在しない場合、例えば、それをコードする遺伝子が非機能的にされているか、部分的に欠失されているか、又は完全に欠失されているか、ノックアウトされているか、又はその発現が防止されているので、生物学的機能は、遅かれ早かれ消失する。
本発明の好ましい態様では、本発明の方法及び使用において有用な宿主細胞は、原核生物によるオリゴ糖の生成の炭素変換効率、炭素基質の適応性及び空間/時間に対する、crr遺伝子若しくはその変異体(バリアント)の発現の低減、及び/又はCrrタンパク質若しくはその変異体(バリアント)の不活性化若しくは低減と組み合わせて、本発明の脱調節されたアデニル酸シクラーゼを有する。
一実施形態では、本発明の方法は、遺伝的に改変された微生物の増殖の前に、Crrタンパク質又は本明細書で定義される大腸菌中のCrrタンパク質(配列番号26)に対応する内因性タンパク質を、遺伝的に改変された微生物中で不活性化又は除去するステップを含む。CRRタンパク質ファミリーメンバーの不活性化又は除去は、脱調節されたアデニル酸シクラーゼが微生物中に初めて存在する前、同時に、又は後に、すなわち以下の作用のいずれかが行われる前、同時に、又は後に行うことができる:
(a)宿主生物において、野生型アデニル酸シクラーゼに見られる調節活性を不活性化すること、及び/又は
(b)宿主生物において、野生型アデニル酸シクラーゼに見られる調節活性を欠く変異型アデニル酸シクラーゼを生成すること、及び/又は
(c)野生型アデニル酸シクラーゼに見られる調節活性を欠く変異型アデニル酸シクラーゼの宿主生物への導入。
本発明の別の好ましい実施形態は、脱調節されたアデニル酸シクラーゼ及び/又はCrrタンパク質(配列番号26)の存在量及び/又は活性、その変異体(バリアント)又は1つ以上の微生物中のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質の存在量及び/又は活性を含む1種以上の宿主細胞を含む組成物であり、対照宿主細胞、すなわち野生型アデニル酸シクラーゼ及び/又はCrrタンパク質(配列番号26)、その変異体(バリアント)又は前記微生物中のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質の野生型レベル及び活性を有する宿主細胞と比較して減少している。より好ましい実施形態では、本発明の組成物は1つ以上のファインケミカル、好ましくは1つ以上のヒト乳オリゴ糖をさらに含む。
好ましくは、本発明の2′-フコシルラクトース(2′-FL)を産生し、本発明の方法において有用な宿主細胞又は遺伝子改変微生物は大腸菌株であり、少なくとも以下を含む:
-1,2-フコシルトランスフェラーゼ酵素、及び
-2′-FLの産生に適したフコシルトランスフェラーゼ酵素にフコース部分とラクトースを提供する手段。
好ましくは、本発明の6′-シアリルラクトース(6′-SL)を産生し、本発明の方法において有用な宿主細胞又は遺伝子改変微生物は大腸菌株であり、少なくとも以下を含む:
-シアリルトランスフェラーゼ酵素、及び
-6′-SLの産生に適したシアリルトランスフェラーゼ酵素にシアル酸部分及びラクトースを提供する手段。
好ましくは、本発明のラクト-N-テトラオース(LNT)を産生し、本発明の方法において有用な宿主細胞又は遺伝子改変微生物は大腸菌株であり、少なくとも以下を含む:
-β1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素、及び
-LNTの産生に適したβ1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素にヌクレオチド活性化ガラクトース及びLNT2を提供する手段。
宿主細胞又は微生物の培養は、しばしば、細胞が、炭素源、窒素源、及びそれらの細胞の増殖に必要とされる、限定するものではないが、アミノ酸、ビタミン、鉱物をはじめとする他の栄養素などの、様々な栄養素の供給源を含む培地中で培養されることを必要とする。発酵培地は、国際公開第98/37179号に記載される通りの最小培地であり得、又は発酵培地は、複合窒素及び炭素源を含む複合培地であり得、このとき、複合窒素源は、国際公開第2004/003216号に記載される通り、部分的に加水分解されていることができる。
つまり、発酵培地は、培養される微生物又は宿主細胞の増殖に必要な成分を含む。一実施形態では、発酵培地は、窒素源、リン供給源、硫黄供給源及び塩からなる群より選択される1種以上の成分、並びに任意によりビタミン、アミノ酸、鉱物、及び微量元素などの微量栄養素からなる群より選択される1種以上のさらなる成分を含む。一実施形態では、発酵培地はまた、炭素源も含む。そのような成分は、一般的に、当技術分野で周知である(例えば、Ausubel, et al, Short Protocols in Molecular Biology, 3rd ed., Wiley & Sons, 1995;Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, 1989 Cold Spring Harbor, N.Y.;Talbot, Molecular and Cellular Biology of Filamentous Fungi: A Practical Ap-proach, Oxford University Press, 2001;Kinghom and Turner, Applied Molecular Genetics of Filamentous Fungi, Cambridge University Press, 1992;及びBacillus (Biotechnology Handbooks) by Colin R. Harwood, Plenum Press, 1989を参照されたい)。所与の細胞タイプに対する培養条件はまた、科学文献中にも見出すことができ、かつ/又はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)及び真菌遺伝学ストックセンター(Fungal Genetics Stock Center)などの細胞の供給源から見出すこともできる。
窒素の供給源として、無機及び有機窒素化合物を、個別及び組み合わせでの両方で用いることができる。好適な有機窒素源としては、限定するものではないが、微生物、動物又は植物細胞由来の抽出物などのタンパク質含有物質が挙げられ、限定するものではないが、植物タンパク質調製物、ダイズ粉、トウモロコシ粉、エンドウ粉、トウモロコシグルテン、ワタ粉、ラッカセイ粉、ジャガイモ粉、肉及びカゼイン、ゼラチン、ホエイ、魚粉、酵母タンパク質、酵母抽出物、トリプトン、ペプトン、バクトトリプトン、バクトペプトン、微生物細胞、植物、肉又は動物身体の加工に由来する廃棄物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。無機窒素源としては、限定するものではないが、アンモニウム、硝酸塩、及び亜硝酸塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、発酵培地は窒素源を含み、このとき、窒素源は、複合窒素源若しくは組成既知窒素源又はそれらの組み合わせである。一実施形態では、複合窒素源は、限定するものではないが、ジャガイモタンパク質、ダイズタンパク質、トウモロコシタンパク質、ラッカセイ、ワタタンパク質、及び/又はエンドウタンパク質をはじめとする植物タンパク質、カゼイン、トリプトン、ペプトン及び酵母抽出物並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される。一実施形態では、組成既知窒素源は、アンモニア、アンモニウム、アンモニウム塩(例えば、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム)、尿素、硝酸、硝酸塩、亜硝酸、及びアミノ酸(限定するものではないが、グルタミン酸を含む)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
一実施形態では、発酵培地は、少なくとも1種の炭素源をさらに含む。炭素源は、複合炭素源若しくは組成既知炭素源又はそれらの組み合わせであり得る。様々な糖及び糖含有物質が、好適な炭素の供給源であり、糖は、多量体化の様々なステージで存在し得る。複合炭素源としては、限定するものではないが、糖蜜、コーンスティープリカー、サトウキビ糖、デキストリン、デンプン、デンプン加水分解物、及びセルロース加水分解物、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。組成既知炭素源としては、限定するものではないが、炭水化物、有機酸、及びアルコールが挙げられる。一実施形態では、組成既知炭素源としては、限定するものではないが、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、スクロース、マルトース、ラクトース、グルコン酸塩、酢酸、プロピオン酸、乳酸、ギ酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、グリセロール、イノシトール、マンニトール及びソルビトール、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、組成既知炭素源は、最大20%、最大10%、又は最大5%の不純物を含み得るシロップの形態で提供される。一実施形態では、炭素源は、サトウダイコンシロップ、サトウキビシロップ、コーンシロップ(限定するものではないが、高フルクトースコーンシロップを含む)である。複合炭素源としては、限定するものではないが、糖蜜、コーンスティープリカー、デキストリン、及びデンプン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態では、組成既知炭素源としては、限定するものではないが、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、スクロース、マルトース、デキストリン、ラクトース、グルコン酸塩又はそれらの組み合わせが挙げられる。
別の好ましい実施形態では、1つの炭素源又は炭素源はスクロースであり、この炭素源を用いると、本発明の方法及び本発明の宿主細胞又は遺伝子改変微生物は当該技術分野で公知の生物及び方法と比較してさらに大きな利点を提供する。
一実施形態では、発酵培地はまた、限定するものではないがリン酸塩をはじめとするリン供給源、及び/又は限定するものではないが硫酸塩をはじめとする硫黄供給源も含む。一実施形態では、発酵培地はまた、塩も含む。一実施形態では、発酵培地は、限定するものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸塩及び硫酸塩をはじめとする、1種以上の無機塩を含む。一実施形態では、1種以上の塩としては、限定するものではないが、NaCl、KH2PO4、MgSO4、CaCl2、FeCl3、MgCl2、MnCl2、ZnSO4、Na2MoO4及びCuSO4が挙げられる。一実施形態では、発酵培地はまた、限定するものではないが、塩化チアミン、ビオチン、ビタミンB12をはじめとする、1種以上のビタミンも含む。一実施形態では、発酵培地はまた、限定するものではないが、Fe、Mg、Mn、Co、及びNiをはじめとする微量元素も含む。一実施形態では、発酵培地は、Na、K、Ca、Mg、Mn、Fe、Co、Cu、及びNiからなる群より選択される1種以上の塩カチオンを含む。一実施形態では、発酵培地は、限定するものではないが、Ca及びMgをはじめとする、1種以上の二価又は三価カチオンを含む。
一実施形態では、発酵培地はまた、消泡剤も含む。
一実施形態では、発酵培地はまた、限定するものではないが、細胞の選択マーカーがそれらに対する抵抗性を提供する、抗生物質(限定するものではないが、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン又はフレオマイシンを含む)又は除草剤をはじめとする、選択剤も含む。
発酵は、バッチ、反復バッチ、流加、反復流加または連続的発酵プロセスとして行なうことができる。流加プロセスでは、発酵の開始前に、炭素源または窒素源などの、構造的および/または触媒的元素のうちの1種以上を含む化合物を添加しないかまたは一部を培地へと添加し、かつそれぞれ、構造的および/または触媒的元素のうちの1種以上を含む化合物の全部または残余の部分が、発酵プロセス中に供給される。供給のために選択される化合物は、一緒に、または互いに別個に、発酵プロセスへと供給することができる。反復流加または連続的発酵プロセスでは、完全な開始培地が、発酵中に追加的に供給される。開始培地は、フィードと一緒に、またはフィードとは別個に、供給することができる。反復流加プロセスでは、バイオマスを含む発酵ブロスの一部を、規則的な時間間隔で取り出すが、連続的プロセスでは、発酵ブロスの一部の除去が、連続的に行なわれる。それにより、発酵プロセスは、取り出された発酵ブロスの量に対応する新鮮培地の一部が補充される。
多数の細胞培養が、発酵中の細胞培養中での基質フィードとして、グルコースなどの炭素源を組み込む。つまり、一実施形態では、微生物を培養する方法は、炭素源を含むフィードを含む。炭素源含有フィードは、本明細書中に詳細に記載される通りの組成既知炭素源若しくは複合炭素源、又はそれらの混合物を含むことができる。
発酵時間、pH、導電率、温度、又は他の具体的な発酵条件は、当技術分野で公知の標準的条件に従って当てはめることができる。一実施形態では、発酵条件は、対象となるタンパク質の最大収量を得られるように調整される。
一実施形態では、発酵中の発酵ブロスの温度は、30℃~45℃である。
一実施形態では、発酵培地のpHは、pH6.5~9に調整される。
一実施形態では、発酵培地の導電率は、pH調整後に、0.1~100mS/cmである。
一実施形態では、発酵時間は、1~200時間である。
一実施形態では、発酵は、発酵培地を撹拌及び/又は振盪しながら行われる。一実施形態では、発酵は、50~2000rpmで発酵培地を撹拌しながら行われる。
一実施形態では、限定するものではないが、撹拌(stirring及び/又はagitation)によるか又は通気(限定するものではないが、0~3bar空気又は酸素を用いる通気を含む)によることをはじめとして、培養中に、発酵培地に酸素が添加される。一実施形態では、発酵は、酸素飽和下で行なわれる。
一実施形態では、発酵培地及び発酵培地を用いる方法は、工業規模での発酵のためのものである。一実施形態では、本説明の発酵培地は、少なくとも20リットル、少なくとも50リットル、少なくとも300リットル、又は少なくとも1000リットルの培養培地を有するいずれかの発酵のために有用であり得る。
一実施形態では、発酵方法は、限定するものではないが、少なくとも2gタンパク質(乾物)/kg未処理発酵培地、少なくとも3gタンパク質(乾物)/kg未処理発酵培地、少なくとも5gタンパク質(乾物)/kg未処理発酵培地、少なくとも10gタンパク質(乾物)/kg未処理発酵培地、又は少なくとも20gタンパク質(乾物)/kg未処理発酵培地の量で発現される、対象となるタンパク質をはじめとする、相対的高収量での対象となるタンパク質の生成のためのものである。
好ましい実施形態では、1種以上のファインケミカル、好ましくは1種以上のオリゴ糖を生成させる際の空時収率、炭素基質適応性、及び/又は炭素変換効率は、対照、すなわちcAMPレベルが有意に変化しておらず、並びに調節活性の作用を受けるアデニル酸シクラーゼを有し、並びに/或いはCrrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、又はCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質(複数可)について改変されていない存在量及び/又は活性を有する宿主細胞の空時収率、炭素基質適応性、及び/又は炭素変換効率と比較して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、65%、又は70%増加する。
好ましくは、非改変宿主細胞、例えば通常の調節下にあるアデニル酸シクラーゼのみを有し、脱調節されたアデニル酸シクラーゼを一切有さず、並びに/或いは野生型の存在量又は活性のレベルで、大腸菌の通常のcrr遺伝子の遺伝子座又はcrr遺伝子に対応する内因性遺伝子の通常の遺伝子座及び対応するタンパク質を有する宿主細胞におけるレベルと比較して、cAMPレベルの増加は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%超増加するものと理解される。例えば、改変微生物(CRRタンパク質レベルが低下するように改変されている)は、そのcAMPレベルについて非改変微生物のcAMPレベルと比較される。別の好ましい実施形態では、1種以上のファインケミカル、好ましくは1種以上のオリゴ糖を生成する能力を有する宿主生物のcAMPレベルは、宿主生物の通常レベルと比較して、1.1、1.2、1.25、1.3、1.4、1.5、1.75、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10倍増加する。宿主生物のcAMPレベルは、宿主生物の好ましくは細胞内cAMPレベル、及びより好ましくは細胞質cAMPレベルとして理解される。cAMPレベルは、本明細書において上記で開示したように決定可能である。
更に好ましい実施形態は、本発明に基づく宿主生物により、1種以上のファインケミカルを生成させる際の空時収率、炭素基質適応性、及び/又は炭素変換効率を増加させるために、脱調節されたアデニル酸シクラーゼを使用すること、並びに/或いはCrrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、又は配列番号26のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質(複数可)を不活性化させること及び/又はそれらの存在量を低下させることである。
更なる実施形態は、本発明の方法又は本発明の宿主細胞と関し、ここで、Crrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、又は配列番号26のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質(複数可)の活性及び/又は存在量は、対照、すなわちCrrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、又は配列番号26のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質(複数可)の活性及び/又は存在量を野生型レベルで有する細胞との比較において、15%又は20%、より好ましくは25%、30%、35% 40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、又は98%超低下する。
本発明の方法及び宿主細胞において有用な様々な、異なる長さのDNAタンパク質配列の図形表示を示す図である。 パート1)は、配列番号1~8及び10のDNA配列のアライメントを示す図である。完全長遺伝子の最長バリアントと比較して、短縮した異なるcyaA DNA配列の長さを示す。パート2)は、配列番号11~18及び20のタンパク質配列のアライメントを示す図である。完全長タンパク質の最長バリアントと比較して、短縮した異なるCyaAタンパク質配列の長さを示す。比較において、配列番号19のわずかにより短い完全長野生型タンパク質は、完全長アデニル酸シクラーゼの854バリアントの重複したGEQSMIGEQSMI(図2、パート2において下線が付されている)の代わりに、1つのGEQSMIモチーフのみを有する。 (図2の続き) (図2の続き) (図2の続き) (図2の続き) (図2の続き) (図2の続き) (図2の続き) (図2の続き) (図2の続き) 2'FL産生大腸菌株を創出するための代表的なコンストラクトを表す図である。 Aは、6'-SL産生大腸菌株を創出するために導入された第1のコンストラクトを示す図である。上段の図は、改変されたyaAを有しない株内のコンストラクトであり、下段の図は脱調節されたCyaAを有する株内のコンストラクトである。 Bは、6'-SL産生大腸菌株を創出するのに使用される第2のコンストラクトを表す図である。上段の図は、改変されたCyaAを有しない株内のコンストラクトであり、下段の図は脱調節されたCyaAを有する株内のコンストラクトである。 下記の実施例で詳細に説明される、大部分のcrr遺伝子の欠失後のcrr遺伝子座を表す図である。
I. 宿主生物において、脱調節されたアデニル酸シクラーゼタンパク質を用意すること、並びに/又はCrrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、若しくは配列番号26のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質(複数可)を不活性化させ、及び/若しくはそれらの存在量を低下させることにより、宿主生物における1種以上のファインケミカルの空時収率、宿主生物による1種以上のファインケミカルの生成の炭素変換効率、及び/又は宿主生物による1種以上のファインケミカルの生成における炭素基質適応性を増加させるための方法であって、空時収率、炭素変換効率、及び/又は炭素基質適応性が、非改変宿主生物と比較して改変宿主生物において増加している方法。
II. 宿主生物による1種以上のファインケミカルの生成の炭素基質適応性を増加させる方法であって、宿主生物内のcAMPレベルが非改変宿主生物と比較して増加している方法。
III. 宿主生物による1種以上のファインケミカルの生成の炭素変換効率を増加させる方法であって、宿主生物内のcAMPレベルが非改変宿主生物と比較して増加している方法。
1. 1種以上のファインケミカルの生成に適した宿主生物により生成される1種以上のファインケミカルの空時収率を増加させるための方法であって、宿主生物のアデノシン3',5'-環状一リン酸(cAMP、CAS番号: 60-92-4)レベルを、非改変宿主生物と比較して増加させるステップ、宿主生物をその増殖を可能にする状態で維持するステップ、基質の存在下、1種以上のファインケミカルの生成に適した条件下で宿主生物を増殖させるステップ、及び場合により1種以上のファインケミカルを宿主生物又はその残部から分離するステップを含む方法。
2. 1種以上のファインケミカルの生成に適した宿主生物により1種以上のファインケミカルが生成される際の炭素基質適応性を増加させる方法であって、宿主生物内のcAMPレベルを、非改変宿主生物と比較して増加させるステップ、宿主生物をその増殖を可能にする状態で維持するステップ、基質の存在下、1種以上のファインケミカルの生成に適した条件下で宿主生物を増殖させるステップ、及び場合により1種以上のファインケミカルを宿主生物又はその残部から分離するステップを含む方法。
3. 1種以上のファインケミカルの生成に適した宿主生物により1種以上のファインケミカルが生成される際の炭素変換効率を増加させる方法であって、宿主生物内のcAMPレベルを、非改変宿主生物と比較して増加させるステップ、宿主生物をその増殖を可能にする状態に維持するステップ、基質の存在下、1種以上のファインケミカルの生成に適した条件下で宿主生物を増殖させるステップ、及び場合により1種以上のファインケミカルを宿主生物又はその残部から分離するステップを含む方法。
4. 宿主生物のcAMPレベルが、
a. 野生型アデニル酸シクラーゼに見出される調節活性を不活性化させること、並びに/又は
b. 野生型アデニル酸シクラーゼに見出される調節活性を欠いている変異型アデニル酸シクラーゼを生成させること、並びに/又は
c. 野生型アデニル酸シクラーゼに見出される調節活性を欠いている変異型アデニル酸シクラーゼを宿主生物中に導入すること、並びに/又は
d. 3',5' cAMPホスホジエステラーゼ(EC 3.1.4.53)の活性を有する酵素の活性を低下させること、並びに/又は
e. 百日咳菌のアデニル酸シクラーゼ毒素、若しくはそのアデニル酸シクラーゼドメイン、若しくはそのバリアントを使用すること、並びに/又は
f. Crrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、若しくは配列番号26のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質(複数可)を不活性化させること、及び/若しくはそれらの存在量を低下させること
により増加する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
5. 宿主生物のcAMPレベルが、誘導可能な方式で増加し、その増加が、誘導されない宿主生物と比較したものである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
6. 変異型アデニル酸シクラーゼが、導入遺伝子の導入により導入される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
7. 変異型アデニル酸シクラーゼ又は調節活性が不活性化されたアデニル酸シクラーゼが、宿主生物のアデニル酸シクラーゼの野生型形態と比較して欠失を有する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
8. 欠失が、cAMPを生成する部分を破壊せずにアデニル酸シクラーゼの調節部分を除去することである、実施形態7に記載の方法。
9. 欠失が、大腸菌cyaA遺伝子によりコードされるアデニル酸シクラーゼのC末端部分に対応する、好ましくは配列番号19若しくは20に示されるcyaAタンパク質のC末端部分に対応するタンパク質の調節部分の欠失であり、又は配列番号19として示されるタンパク質配列の1~412位と、好ましくは1~420位と少なくとも80%の配列同一性を有するアデニル酸シクラーゼタンパク質であり、好ましくは、欠失は、配列番号19又は20において提供されるタンパク質配列の420、450、558、582、585、653、709、736、又は776位に後続する、より好ましくは配列番号19又は20において提供されるタンパク質配列の558、582、585、653、709、736、又は776位に後続する大腸菌アデニル酸シクラーゼの部分に対応するタンパク質の調節部分の欠失であり、最も好ましくは配列番号19又は20の777位以降のアミノ酸に対応するアミノ酸の欠失である、実施形態7又は8に記載の方法。
10. 宿主生物に炭素源を供給するステップを含み、炭素源が、複合体、又は定義された炭素源、又はその組み合わせである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
11. ファインケミカルの生成に適した改変された宿主細胞であって、宿主細胞が、グリセロール及び/又はグルコース及び/又はマルトース及び/又はフルクトース及び/又はスクロース、好ましくはスクロース、グリセロール、グルコース、及び/又はフルクトース上で増殖することができ、改変された宿主細胞が、アデニル酸シクラーゼ活性を有する、調節活性が不活性化され若しくは存在しないアデニル酸シクラーゼ、及び/又はCrrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、若しくは配列番号26のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質(複数可)の不活性化及び/又はそれらの存在量の低下を有し、並びに宿主生物が、非改変宿主細胞と比較して増加したcAMPレベルを有し、非改変宿主細胞がグリセロール及び/又はグルコース及び/又はマルトース及び/又はフルクトース及び/又はスクロース上で実質的に増殖できない、改変された宿主細胞。
12. 大腸菌のcyaA遺伝子によりコードされるタンパク質に対応する少なくとも1つのアデニル酸シクラーゼタンパク質が調節活性を欠いており、好ましくは配列番号19若しくは20に示されるcyaAタンパク質のC末端部分に対応する部分を欠いており、又は配列番号19若しくは20として示されるタンパク質の1~412位と少なくとも80%の配列同一性を有するアデニル酸シクラーゼタンパク質、より好ましくは1~420位と少なくとも80%の配列同一性を有するアデニル酸シクラーゼタンパク質であり、好ましくは、配列番号19若しくは20において提供されるタンパク質配列の420、450、558、585、653、709、736、若しくは776位、より好ましくは450、558、585、653、709、若しくは736位に後続する、なおいっそうより好ましくは配列番号19若しくは20において提供されるタンパク質配列の558、582、585、653、709、736、若しくは776位に後続する大腸菌アデニル酸シクラーゼ部分に対応するアデニル酸シクラーゼの部分を欠いており、最も好ましくは配列番号19若しくは20の777位以降のアミノ酸に対応するアミノ酸が欠失している、実施形態11に記載の改変された宿主細胞。
13. 宿主細胞が、細菌又は真菌宿主細胞、好ましくは細菌細胞、より好ましくは細菌細胞、なおいっそうより好ましくはグラム陰性細胞、最も好ましくは大腸菌細胞である、先行する実施形態のいずれか。
14. 宿主生物による1種以上のファインケミカルの生成の空時収率、炭素基質適応性、及び/若しくは炭素変換効率を増加させるための、脱調節されたアデニル酸シクラーゼ、並びに/又はCrrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、若しくは配列番号26のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質(複数可)の不活性化及び/若しくはそれらの存在量の低下の使用。
15. 少なくとも1種のファインケミカルが、ヒト母乳オリゴ糖、好ましくは中性又はシアル酸付加HMO、より好ましくは2'-フコシルラクトース(2'-FL)、3'-フコシルラクトース(3'-FL)、ラクト-N-テトラオース(LNT)、ラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)、ジフコシルラクトース(2、3-DFL)、又は3'-シアリルラクトース(3'-SL)、6'-シアリルラクトース(6'-SL)である、先行する実施形態のいずれか、或いは宿主生物に炭素源を供給するステップを含み、炭素源が、下記、すなわち複合体又は定義された炭素源、好ましくはグルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、スクロース、マルトース、デキストリン、ラクトース、グルコネート、より好ましくはグリセロール、グルコース、又はマンノース、及びいっそうより好ましくはグルコース又はグリセロールのうちの1種以上である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
16. 発酵プロセスにおいて炭素供給源の変換によりオリゴ糖を生成させるための方法であって、
少なくとも1種の炭素供給源を含む適した培養培地内でオリゴ糖を生成させるために、遺伝的に改変された微生物を培養するステップ、
ヒト母乳オリゴ糖を培養培地から回収するステップを含み、
前記遺伝的に改変された微生物が、PTS炭水化物利用系をコードする機能的遺伝子を含み、及び
前記遺伝的に改変された微生物において、Crrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、若しくは配列番号26のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質の存在量が減少しており、及び/又はこれまでの実施形態のいずれかで定義されたような脱調節されたアデニル酸シクラーゼが微生物中に存在する、方法。
17. 炭素供給源が、グリセロール、単糖、及び二糖からなる群において選択される、先行する実施形態のいずれか。
18. アデノシン3',5'-環状一リン酸(cAMP、CAS番号: 60-92-4)のレベルが、Crrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、又は配列番号26のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質に変化を認めない微生物と比較して増加している、先行する実施形態のいずれか。
19. ヒト母乳オリゴ糖を生成する能力を有し、PTS炭水化物利用系をコードする機能的遺伝子を含む、ファインケミカルの生成を強化するための遺伝的に改変された微生物であって、前記遺伝的に改変された微生物においてCrrタンパク質の発現が減少し、好ましくは少なくとも実質的に減少している、遺伝的に改変された微生物。
20. Crrタンパク質をコードする遺伝子が、前記遺伝的に改変された微生物において減弱している又は欠失している、実施形態19に記載の微生物。
21. 腸内細菌科からなる群において選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の微生物。
[実施例]
下記の実施例において、当技術分野において周知の方法を使用して、大腸菌についてDatsenko及びWanner(2000)により十分に記載されている相同的組換えを使用して、複製ベクター及び/又は様々な染色体欠失及び置換を含有する大腸菌株を構築した。同様に、組換え微生物において1つ又はいくつかの遺伝子を発現又は過剰発現するプラスミド又はベクターの使用も、当業者に周知である。
方法
DNAコンストラクト又はベクターの宿主細胞中への導入は、技術、例えば形質転換、エレクトロポレーション、核のマイクロインジェクション、形質導入、トランスフェクション(例えば、リポフェクション媒介式若しくはDEAE-デキストリン媒介式のトランスフェクション、又は組換えファージウイルスを使用するトランスフェクション)、リン酸カルシウムDNA沈殿物を伴うインキュベーション、DNAコーティングされたマイクロプロジェクタイルによる高速ボンバードメント、及び原形質融合等を用いて実施可能である。一般的な形質転換技術は、当技術分野において公知である(例えば、特に形質転換法に関して、それぞれ本明細書により参考としてそのまま組み込まれているCurrent Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al. (eds) Chapter 9, 1987); Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor, 1989;及びCampbell et al, Curr. Genet. 16:53-56, 1989を参照)。トリコデルマ属における異種ポリペプチドの発現は、特に形質転換法及び発現法に関して、それぞれ本明細書により参考としてそのまま組み込まれている米国特許第6,022,725号;同第6,268,328号;同第7,262,041号;国際公開第2005/001036号; Harkki et al., Enzyme Microb. Technol. 13:227-233, 1991; Harkki et al, Bio Technol 7:596-603, 1989;欧州特許第244,234号;同第215,594号;及びNevalainen et al,“The Molecular Biology of Trichoderma and its Application to the Expression of Both Homologous and Heterologous Genes," in Molecular Industrial Mycology, Eds. Leong and Berka, Marcel Dekker Inc., NY pp. 129 - 148, 1992に記載されている。アスペルギルス属株の形質転換について、Caoら(Sd. 9:991-1001、2000;欧州特許第238023号;及びYeltonらのProceedings. Natl. Acad. Sci. USA 81:1470-1474, 1984も参照される(特に形質転換法に関して、それぞれ本明細書により参考としてそのまま組み込まれている)。導入された核酸は、染色体DNAに組み込まれ得る、又は染色体外複製配列として維持することができる。
cAMPの増加及びアデニル酸シクラーゼ活性の脱調節に関する実施例
1. 短縮したcyaA DNAコンストラクトの創出
短縮したDNA cyaAコンストラクトを、組込み用の相同性を有する合成DNAコンストラクトを生成することにより、及び遺伝子合成によってcyaA遺伝子のコード配列中にTAA終止コドンを導入することにより調製した。これらの遺伝子コンストラクトを、次にWang J, et al. 2006, Mol. Biotechnol., 32, 43に記載されるように、相同的組換えにより大腸菌株のゲノムに導入した。
2. 株の構築
オリゴ糖(例えば、HMO)の生成が強化された遺伝的に改変された微生物は、国際公開第2016/008602号、同第2013/182206号、欧州特許第2379708号、米国特許第9,944,965号、国際公開第2012/112777号、同第2001/04341号、及びUS2005019874として公開されている特許出願に開示されている。これらの開示は、いずれも本明細書において参照により組み込まれている。
2'-FL産生微生物
大腸菌株の2'-FL過剰産生株を以下のように構築した。すなわち、十分に特徴づけられた大腸菌株JM109において、下記の遺伝エレメント: PTACプロモーター、人工リボソーム結合部位(RBS)、fucT2遺伝子(ピロリ菌株26695に由来、Wang et al, Mol. microbiol. 1999, 31 1265-1274)、人工リボソーム結合部位、gmd遺伝子(大腸菌K12に由来)、その真正なリボソーム結合部位を有するwcaG遺伝子(大腸菌K12に由来)、人工リボソーム結合部位(RBS)、コドン利用が適正化されたmanC遺伝子(大腸菌K12に由来)、人工リボソーム結合部位(RBS)、コドン利用が適正化されたmanB遺伝子(大腸菌K12に由来)、及び大腸菌の16s rRNA遺伝子座に由来する転写終結因子rrnBT1を含有する人工オペロンを、周知のラムダレッド技術(lambda red technology)(例えば、Datsenko l and Wanner B. PNAS, 2000 97 (12) 6640-6645, Wang J, et al. 2006, Mol. Biotechnol., 32, 43により記載される)を使用して構築した。人工オペロンを、fuc I及びKを含む遺伝子が欠失している大腸菌のfuc遺伝子座に組み込んだ。
2'FL産生株を創出するための代表的なコンストラクトを配列番号21として表わす。配列番号1~8のトランケートされたアデニル酸シクラーゼ遺伝子配列を、ラムダレッド技術を使用して、相同的組換えにより大腸菌宿主細胞に導入した。2'FL産生株を創出するための代表的なコンストラクトを配列番号21として表わす。
6'-SL産生微生物
6'-SLを過剰生成する大腸菌株を以下のように構築した。すなわち、十分に特徴づけられた大腸菌株W3110において、β-ガラクトシダーゼLacZをコードするlacZ遺伝子及びアセチルトランスフェラーゼLacAをコードするlacA遺伝子、nan遺伝子をコードする遺伝子nanAETKの各遺伝子を、すべてのコード配列を周知のラムダレッド技術(例えば、Datsenko l and Wanner B. PNAS, 2000 97 (12) 6640-6645, Wang J, et al. 2006, Mol. Biotechnol., 32, 43により記載されている)を使用して欠失させるという観点で欠失させ、一方でlacI対立遺伝子を既知のlacIq対立遺伝子により置換した。人工オペロン(配列番号22を参照)を、W3110株のatoB遺伝子のすぐ隣に組み込んだ。人工オペロンは、下記の遺伝エレメント、すなわちPTACプロモーター、人工リボソーム結合部位(RBS)、St6遺伝子(フォトバクテリウムspp. ISH224に由来)、人工リボソーム結合部位、neuA遺伝子(カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni) ATCC43438に由来)、人工リボソーム結合部位(RBS)、ゼオシン(zeocin)耐性遺伝子、及び大腸菌の16s rRNA遺伝子座に由来する転写終結因子rrnBT1を含有した。それに加えて、人工オペロンをfabI遺伝子のすぐ隣に組み込んだ。人工オペロンは、PTACプロモーター、人工リボソーム結合部位(RBS)、neuB遺伝子(カンピロバクター・ジェジュニATCC43438に由来、配列番号23を参照)、人工リボソーム結合部位、neuC遺伝子(カンピロバクター・ジェジュニATCC43438に由来、配列番号24を参照)、人工リボソーム結合部位(RBS)、クロラムフェニコール耐性カセット(CAT)、及び大腸菌の16s rRNA遺伝子座に由来する転写終結因子rrnBを含有した。この6'-SL産生株はGN488と呼ばれる。
GN782の名称を有する別の大腸菌株をGN488株に基づき構築した。耐性遺伝子ゼオシン及びCATを、ラムダレッド技術を再度使用してGN488株ゲノムの人工オペロンから欠失させた。それに加えて、終止コドンをコドン582に導入してアミノ酸581個の長さを有する翻訳後タンパク質が得られるように、cyaAを変更した。
3. 脱調節されたアデニル酸シクラーゼ: HMOの生成における空時収率
発酵系及び手順
発酵条件:
発酵培地は、大腸菌発酵の記載された例に基づき選択され、また(Riesenberg et al. (1991), Journal of Biotechnology 20, 17-27, D.J. Korz, et al. 1995), J. Biotechnol., 39 pp. 59-65, Biener, R.et al. 2010, Journal of Biotechnology 146(1-2), pp. 45-53に見出され得る。特に、実験に応じて20~100g/lの範囲の異なる濃度でラクトースが添加されることから、ラクトースに基づき、オリゴ糖を生成するための培地を変更した。
炭素変換効率並びに空時収率に関して株の性能を分析する場合、下記のシステム: AMBR(登録商標)250システム及び4 l Biostat(登録商標)発酵槽(いずれもSartorius AG社製、Otto-Brenner-Str. 20、D-37079 Gottingen、ドイツ)を使用した。一般論として、発酵は下記の要領で一般的に実施した:種培養物を凍結ストックから増殖させた。種培養物を各発酵システム(AMBR又はBiostat)に接種した後、その炭素分を完全に利用し尽くした。或いは、主要培養を凍結ストックから直接開始した。発酵システム内の発酵をバッチ供給方式で、すなわち発酵を2段階方式(バッチ量の炭素源が利用される最初の段階、及び炭素源が発酵ブロス内に全く又はわずかな量しか蓄積しない発酵条件下で、炭素源が発酵全体を通じて供給される後続段階)で実施した。
種培養物(10ml/Lの微量元素溶液及び65g/Lのグリセロールを含む最少培地)を、1mlのWCB培養物(凍結状態で保管される)と共に接種する。
1~10%の接種容積比が適用されるように、種培養物を主要培養物に移す。
主要発酵培地は、下記の培地組成物:最少培地: 1.1g/Lのクエン酸、10.8g/Lのグリセロール、15.5g/LのKH2PO4、4.6g/Lの(NH4)2SO4、3g/LのNa2SO4、1.5g/LのMgSO4*7H2O、0.02g/Lのチアミン、0.0001g/LのビタミンB12、0.5mMのIPTGから構成される。微量元素溶液は、4g/LのNa2-EDTA*2H2O、1g/LのCaSO4*2H2O、0.3g/LのZnSO4*7H2O、3.7g/LのFeSO4*7H2O、0.2g/LのMnSO4*H2O、0.15g/LのCuSO4*5H2O、0.04g/LのNa2MoO4*2H2O、0.04g/LのNa2SeO4から構成される。微量金属溶液は、発酵培地において30ml/lの量で適用される。
接種後、発酵を開始し、そしてCTR測定値が40mmol/Lhを上回る場合、炭素源、例えばグリセロール(86%w/wの濃度)、又はグルコース(60%w/wの濃度)等の供給を開始する。炭素源供給速度は、1時間当たり、初期発酵ブロス容積1リットル当たり、炭素源2~8g/lの間で変化し得る。炭素源が発酵プロセス全体を通じて蓄積しないことに留意する。主要な発酵段階において、溶存酸素濃度(pO2)は、撹拌並びにガス添加をコントロールすることにより、>20%にコントロールされる。pHは、15% NH4OH水溶液中の塩基NH4OHを使用して、pH6.1~6.9の範囲の数値、より具体的にはpH6.7に維持する。両発酵システムにおける結果は、記載されるパラメーター(炭素変換効率及び空時収率)について完全に重ね合わせることが可能であることが判明し、完全に交換可能であると理解することができる。
驚くべきことに、機能的で脱調節されたCyaAタンパク質をもたらす、トランケートされたcyaA遺伝子を有するcAMP過剰生成細胞は、グリセロール上で確かに増殖し、そして2'-フコシルラクトース(2'-FL)を十分に産生した。これとは対照的に、機能的アデニル酸シクラーゼを有さないcyaA欠失変異体(Keio collectionより、Baba T, Ara T, Hasegawa M, Takai Y, Okumura Y, Baba M, Datsenko KA, Tomita M, Wanner BL, Mori H (2006) Construction of Escherichia coli K-12 in-frame, single-gene knockout mutants: the Keio collection. Mol. Syst. Biol. 2: 2006 0008)は、グリセロール上で増殖できないことが判明した。調節部分を含むアデニル酸シクラーゼを有する非改変大腸菌細胞は、アデニル酸シクラーゼが脱調節され、従ってcAMP産生量が増加している宿主細胞よりもゆっくりと増殖し、また非改変細胞では2'-FL産生量は低下し、炭素変換効率及び空間/時間収率も、アデニル酸シクラーゼが脱調節され、従ってcAMP産生量が増加している宿主細胞との比較において減少する。
2'-FL
Figure 2023506284000006
一般的に、BioStat(登録商標)及びAMB(登録商標)容器を使用した場合、炭素源は連続添加又は反復添加された。原則として、代表的な量のグルコース又はグリセロールが、主要培養の開始時に1回添加可能であるが、これは、例えば振盪フラスコが発酵に使用される場合に有利である。脱調節されたcyaA遺伝子を有し、従ってcAMPレベルも増加した株に対してグルコース又はグリセロールを炭素源として使用した場合、空時収率は増加した。
Figure 2023506284000007
類似した結果が、2'-FLの代わりに6'-シアリルラクトースを生成する大腸菌株により達成されたが、この株については上記実施例1及び2を参照。
4. 2'-FL産生株の炭素源適応性の増加
炭素源を培地中にバッチ投入し、並びにフィード段階において2時間~100時間の範囲で供給した。炭素源は、純粋形態(例えば、グリセロール)、又は水に希釈した状態(グリセロール並びにその他の炭素源)で適用する。炭素源のフィード速度は、発酵槽の撹拌及び通気条件に合わせて調整する。
発酵の過程でサンプルを採取し、そしてアイソクラチックHPLC溶出法により分析した。
2'-FL産生に対する炭素源適応性分析を、下記の培地組成物を使用して実施した:
100mLバッフル付き振盪フラスコ内の20mLの培地(10g/Lの各炭素源、5g/Lラクトース、1g/L (NH4)2H-クエン酸、2g/L Na2SO4、2.68g/L (NH4)2SO4、0.5g/L NH4Cl、14.6g/L K2HPO4、4g/L NaH2PO4*H2O、0.5g/L MgSO4*7H2O、10g/mL MnSO4、3mLの微量金属溶液(8.0g/L Na2-EDTA*2H2O、1g/L CaSO4*2H2O、0.3g/L ZnSO4*7H2O、7.4g/L (NH4)2Fe(SO4)2、0.2g/L MnSO4*H2O、0.15g/L CuSO4*5H2O、0.04g/L Na2MoO4*2H2O、0.04g/L Na2SeO4からなる)、10mg/Lチアミン*HCl、0.1mg/L ビタミンB12、1mM IPTG、pH7.0)を、実施例2と同様に2'-FL産生株の一晩培養物(ラクトース及びIPTGを含まない上記培地中)で、開始OD0.5にて接種し、そして上記のようなラクトース及びIPTGを含む上記培地中、200rpm、37℃で24時間インキュベートした。サンプルを採取し、そして炭素利用及び生成物の形成について分析した。
炭素源を下記のリストから選択した:
グルコース、グリセロール、マンノース、フルクトース、
Figure 2023506284000008
5. 6'-シアリルラクトース(6'-SL)産生株
実施例2のGN488株及びGN782株を、実施例3に記載したような培地を含有するBiostat(登録商標)容器内で増殖させた。
Figure 2023506284000009
結果より、炭素変換効率及び空時収率に対する驚くべき効果は、その他のHMO産生株にも当てはまること、及び848個のアミノ酸を有する完全長CyaAタンパク質(配列番号19)のアミノ酸1~581に対応する脱調節されたCyaAタンパク質のなおも別のバージョンを使用したところ奏功したことから、cAMPレベルを増加させるために脱調節されたアデニル酸シクラーゼが幅広く適用可能であることが明らかとなった。更に、タンパク質のcyaA585バージョン(配列番号14)を保持する株をテストしたところ、6'-SLの空時収率が、非改変CyaAタンパク質を有する株に対して同様に増加した。
6. cAMPフィード実験
cyaA遺伝子が欠失しているKeio collection (Baba T, Ara T, Hasegawa M, Takai Y, Okumura Y, Baba M, Datsenko KA, Tomita M, Wanner BL, Mori H (2006) Construction of Escherichia coli K-12 in-frame, single-gene knockout mutants: the Keio collection. Mol. Syst. Biol. 2: 2006 0008)の大腸菌株は、炭素源としてのグリセロール上で通常の成長不良を示す。この株はグリセロール及びcAMPの存在下で増殖し、欠失株の増殖は改善する。上記実施例1及び2の短縮したアデニル酸シクラーゼを有する2'-FL産生宿主細胞は、非改変cyaA遺伝子のみを有する細胞と比較して、グリセロールを含有する培地上で2'-FL産生量の増加を示す。非改変cyaA遺伝子のみを有する細胞にcAMPが供給されたならば、2'-FLの産生量は増加する。
cAMPシグナル伝達及びPTSが変化した実施例
[実施例7]
2'-FLを過剰産生する株の構築
野生型アデニル酸シクラーゼ及び野生型crr遺伝子を有する2'-FL過剰産生大腸菌株を、上記実施例2に記載されるように構築した。
crr遺伝子の欠失を有する過剰産生株の構築
crr遺伝子の欠失を有する大腸菌株の2'-FL過剰産生株を以下の通り構築した: Datsenko l及びWanner B. PNAS, 2000 97 (12) 6640-6645, Wang J, et al. 2006, Mol. Biotechnol., 32, 43Aにより記載される周知の方法を使用して、2'FL産生株内の生来の完全長crr遺伝子を、転写開始部位から始まるcrrの5'コード領域(50bp)、FLP組換えイベントから得られたFRT部位、及び翻訳終止コドンのTAA配列で終わるcrr遺伝子(50bp)からなる遺伝子コンストラクトで置き換えた。得られた遺伝子(配列番号29)は、従ってそのコード領域の410bpを欠いているので、活性なCrrタンパク質をコードしない。crr遺伝子の欠失は、配列番号3及び4に示すプライマーを使用して確認した。
[実施例8]
crr遺伝子の欠失を有する6'SL産生株の構築
6'-SLを過剰産生するGN488株を、上記実施例2に記載されるように創出し、そして更なる改変に使用した。この株では、大腸菌株内のcrr遺伝子(配列番号1)の欠失は、P1ウイルス形質導入と、後続するカナマイシン含有アガープレート上での選択により行った。
P1ライセートは、Keio collection (Baba et al. 2006, Mol Syst Biol.2:2006.0008)由来のデルタcrr株(JW2410/b2417) crr::kan)から作製された。crr:Kan P1ライセートを、実施例1及び2に記載されている株に形質導入するのに使用し、そして形質導入体を、カナマイシンを含有するアガープレート上で選択した。コロニーを、crrの上流及び下流領域に対して選択的であるプライマーを使用するPCRによりスクリーニングして、crrの欠失を確認した。期待されるバンドサイズを有するコロニーがcrr遺伝子の正しい欠失を示唆する。
大腸菌株内のcrr遺伝子(配列番号1)の欠失は、P1ウイルス形質導入(Miller, J.H. 1992. A Short Course in Bacterial Genetics: A Laboratory Manual and Handbook for Escherichia coli and Related Bacteria. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)と、後続するカナマイシン-クエン酸含有アガープレート上での選択により行った。
P1ライセートは、Keio collection (Baba et al. 2006,Mol. Syst. Biol.2:2006.0008)由来の株(JW2410/b2417) (デルタcrr::kan(FRT))から作製された。デルタcrr:Kan P1ライセートを、実施例1及び2に記載されている株(それぞれ、2'-FL及び6'-SL株)に形質導入するのに使用し、そして形質導入体をカナマイシン-クエン酸を含有するアガープレート上で選択した。コロニーを、プライマーCrr ver.F (配列番号27)及びCrr ver.R (配列番号28)を使用するPCRによりスクリーニングして、crrの欠失を確認した。1つの適正なコロニーをEc 6'-SLデルタcrrとして選択及び命名した。
[実施例9]
HMO生成における空時収率の増加
発酵条件、システム、及び手順は、上記実施例3に基づき、上記した通りであった。
Figure 2023506284000010
一般的に、BioStat(登録商標)及びAMB(登録商標)容器を使用した場合、炭素源は連続添加又は反復添加された。原則として、代表的な量のグルコース又はグリセロールが、主要培養の開始時に1回添加可能であるが、これは、例えば振盪フラスコが発酵に使用される場合に有利である。
[実施例10]
2'FLを産生する改変された株の炭素源適応性の増加
炭素源を培地中にバッチ投入し、並びにフィード段階において2時間~100時間の範囲で供給した。炭素源は、純粋形態(例えば、グリセロール)、又は水に希釈した状態(グリセロール並びにその他の炭素源)で適用する。炭素源のフィード速度は、発酵槽の撹拌及び通気条件に合わせて調整する。
発酵の過程で、サンプルを採取し、そしてアイソクラチックHPLC溶出法により分析した。
炭素源適応性分析を下記の培地組成を使用して実施した:
炭素源を下記のリストから選択した:
グルコース、グリセロール、マンノース、フルクトース
100mLバッフル付き振盪フラスコ内の20mLの培地(10g/Lの各炭素源、5g/Lラクトース、1g/L (NH4)2H-クエン酸、2g/L Na2SO4、2.68g/L (NH4)2SO4、0.5g/L NH4Cl、14.6g/L K2HPO4、4g/L NaH2PO4*H2O、0.5g/L MgSO4*7H2O、10g/mL MnSO4、3mLの微量金属溶液(8.0g/L Na2-EDTA*2H2O、1g/L CaSO4*2H2O、0.3g/L ZnSO4*7H2O、7.4g/L (NH4)2Fe(SO4)2、0.2g/L MnSO4*H2O、0.15g/L CuSO4*5H2O、0.04g/L Na2MoO4*2H2O、0.04g/L Na2SeO4からなる)、10mg/Lチアミン*HCl、0.1mg/LビタミンB12、1mM IPTG、pH7.0)を、実施例1と同様に、2'-FL産生株の一晩培養物(ラクトース及びIPTGを含まない上記培地中)で、開始OD0.5にて接種し、そして上記のようなラクトース及びIPTGを含む上記培地内、200rpm、37℃で24時間インキュベートした。サンプルを取得し、そして炭素利用及び生成物形成について分析した。同様に、crr欠失を有する2'-FL産生株を培養、サンプリング、及び分析した。
Figure 2023506284000011

Claims (15)

1種以上のファインケミカルの生成に適した宿主生物により生成される1種以上のファインケミカルの、生成の炭素基質適応性を増加させ、及び/又は炭素変換効率を増加させ、及び/又は空時収率を増加させる方法であって、宿主生物のアデノシン3',5'-環状一リン酸(cAMP、CAS番号: 60-92-4)レベルを、非改変宿主生物と比較して増加させるステップ、宿主生物をその増殖を可能にする状態で維持するステップ、基質の存在下、1種以上のファインケミカルの生成に適した条件下で宿主生物を増殖させるステップ、及び場合により1種以上のファインケミカルを宿主生物又はその残部から分離するステップ
を含む方法。
宿主生物のcAMPレベルが、
a.野生型アデニル酸シクラーゼに見出される調節活性を不活性化させること、及び/又は
b.野生型アデニル酸シクラーゼに見出される調節活性を欠いている変異型アデニル酸シクラーゼを生成すること、及び/又は
c.野生型アデニル酸シクラーゼに見出される調節活性を欠いている変異型アデニル酸シクラーゼを宿主生物中に導入すること
により増加される、請求項1に記載の方法。
宿主生物のcAMPレベルが、誘導可能な方式で増加され、その増加が、誘導されない宿主生物と比較したものである、請求項1又は2に記載の方法。
変異型アデニル酸シクラーゼが、導入遺伝子の導入により導入される、請求項2に記載の方法。
変異型アデニル酸シクラーゼ、又は調節活性が不活性化されたアデニル酸シクラーゼが、宿主生物のアデニル酸シクラーゼの野生型形態と比較して欠失を有する、請求項2、3又は4のいずれか一項に記載の方法。
欠失が、cAMPを生成する部分を破壊せずにアデニル酸シクラーゼの調節部分を除去することである、請求項5に記載の方法。
欠失が、大腸菌cyaA遺伝子によりコードされるアデニル酸シクラーゼのC末端部分に対応するタンパク質の調節部分、好ましくは配列番号19若しくは20に示されるCyaAタンパク質のC末端部分に対応するその部分の欠失であり、又は1~412位と少なくとも80%の配列同一性を有するアデニル酸シクラーゼタンパク質である、請求項5又は6に記載の方法。
宿主生物に炭素源を供給するステップ含み、炭素源が、複合体、又は定義された炭素源、又はその組み合わせである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
宿主生物が、遺伝的に改変された微生物細胞であり、好ましくは1種以上のファインケミカルが、1種以上のオリゴ糖であり、前記方法が、遺伝的に改変された微生物の増殖前に、遺伝的に改変された微生物において、Crrタンパク質又は大腸菌(E.coli)内のCrrタンパク質(配列番号26)に対応する内因性タンパク質(複数可)を不活性化又は除去するステップを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
ファインケミカルの生成に適した改変された宿主細胞であって、
宿主細胞が、グリセロール及び/又はグルコース及び/又はマルトース及び/又はフルクトース及び/又はスクロース、好ましくはスクロース、グリセロール、グルコース、及び/又はフルクトース上で増殖することができ、
改変された宿主細胞が、アデニル酸シクラーゼ活性を有する、調節活性が不活性化された又は存在しないアデニル酸シクラーゼを含み、並びに
宿主生物が、非改変宿主細胞と比較して増加したcAMPレベルを有し、非改変宿主細胞が、グリセロール及び/又はグルコース及び/又はマルトース及び/又はフルクトース及び/又はスクロース上で実質的に増殖できない、
改変された宿主細胞。
大腸菌のcyaA遺伝子によりコードされるタンパク質に対応する少なくとも1つのアデニル酸シクラーゼタンパク質が、調節活性を欠いている、好ましくは配列番号19若しくは20に示されるCyaAタンパク質のC末端部分に対応する部分を欠いている、又は1~412位と少なくとも80%の配列同一性を有するアデニル酸シクラーゼタンパク質である、請求項10に記載の改変された宿主細胞。
宿主細胞が、オリゴ糖の生成を強化するために遺伝的に改変された微生物であり、前記遺伝的に改変された微生物が、オリゴ糖を生成する能力を有し、前記遺伝的に改変された微生物が、PTS炭水化物利用系をコードする機能的遺伝子を含み、前記遺伝的に改変された微生物において、Crrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、又は前記微生物内のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質の存在量及び/又は活性が減少しており、遺伝的に改変された微生物によるオリゴ糖生成の空時収率、炭素基質適応性、又は炭素変換効率が、Crrタンパク質(配列番号26)、そのバリアント、又はCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質(複数可)の存在量及び/又は活性が改変されていない対照と比較して増加している、請求項10又は11のいずれか一項に記載の改変された宿主細胞。
宿主細胞が、遺伝的に改変された微生物であり、Crrタンパク質、そのバリアント、又は前記微生物内のCrrタンパク質に対応する内因性タンパク質(複数可)をコードする遺伝子が、前記遺伝的に改変された微生物において減弱されている又は欠失している、請求項10から12のいずれか一項に記載の改変された宿主細胞。
少なくとも1種のファインケミカルが、ヒト母乳オリゴ糖である、請求項1~13のいずれか一項。
1種以上のファインケミカル、好ましくは1種以上のオリゴ糖の生成の空時収率、炭素基質適応性、及び/又は炭素変換効率が、対照と比較して少なくとも20%増加している、請求項1~14のいずれか一項。
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