JP2023162847A - 防曇性部材の製造方法、防曇性部材、および防曇性部材の反りの発生を抑制するための方法 - Google Patents

防曇性部材の製造方法、防曇性部材、および防曇性部材の反りの発生を抑制するための方法 Download PDF

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祐貴 立花
Yuki Tachibana
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Abstract

【課題】 耐水性と吸水性との両方に優れた防曇性部材の製造方法、防曇性部材、および防曇性部材の反りの発生を抑制するための方法を提供すること【解決手段】 本発明の防曇性部材の製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂と水性媒体と重合性成分とを含むコーティング組成物を基材上に配置して未架橋を形成する工程、および未架橋層を架橋してコーティング層を得る工程を含む。ここで、未架橋層の含水率は未架橋層の全体質量に対して10質量%以上95質量%以下であり、重合性成分は架橋剤および重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、コーティング層は10質量%未満の含水率に調整した場合において3μm以上20μm未満の厚みを有する。【選択図】なし

Description

本発明は、防曇性部材の製造方法、防曇性部材、および防曇性部材の反りの発生を抑制するための方法に関する。
ポリビニルアルコール樹脂は吸水性および親水性を有する。これにより、ガラス、金属、プラスチックフィルム等の基材表面にポリビニルアルコール樹脂のコーティング層を形成すると、露点温度以下になった場合に生じる基材表面の微小な水滴をポリビニルアルコール樹脂のコーティング層が吸水し、基材の曇り形成を防ぐことができる。当該性質を利用して、ポリビニルアルコール樹脂は、視認性を確保するための防曇剤として用いられる。
こうしたコーティング層については、優れた防曇性能を有するだけでなく、水と接触することからコーティング層自体に優れた耐水性が求められる。しかし、ポリビニルアルコール樹脂を用いたコーティング層は本来耐水性に乏しい。
ポリビニルアルコール樹脂を耐水化させるため、側鎖にアセト酢酸エステル基(特許文献1)や、メタクリロイル基(特許文献2)を導入し、含水状態で架橋して耐水化させる方法や、ポリビニルアルコール塗膜が膨潤状態のうちに電子線を照射して耐熱水性を付与する方法(特許文献3)が開示されている。
特公平6-53817号公報 国際公開第2020/218459号 特開平6-143507号公報
しかし、特許文献1に記載の耐水化方法では、耐水性の向上に伴って、塗膜(コーティング層)の吸水性(すなわち防曇性)が低下する課題を抱えている。また、特許文献2に記載の防曇性部材は、コーティング層が飽和吸水状態に達したときに曇りを生じる。その結果、防曇効果を長期にわたり持続させるためにはコーティング層を厚くし、飽和吸水量を高める必要がある。しかし、コーティング層を厚くして硬質基材に塗工した場合、防曇性部材の硬度が低下するため、防曇効果を奏するコーティング用途で想定される最外層への適用が困難となる。また、硬度低下を抑制するためにコーティング層を薄くして軟質基材に塗工した場合、残留応力が増加して防曇性部材が反り、同様に最外層への適用が困難となる。さらに、特許文献3に記載のポリビニルアルコール塗膜の耐水化方法は塗膜を架橋する際に含水率を調整しているが、塗膜(コーティング層)の吸水性の向上については何ら言及されていない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、耐水性と吸水性との両方に優れた防曇性部材の製造方法、防曇性部材、および防曇性部材の反りの発生を抑制するための方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の発明を包含する。
[1]防曇性部材の製造方法であって、
ポリビニルアルコール系樹脂と水性媒体と重合性成分とを含むコーティング組成物を基材上に配置して未架橋層を形成する工程、および
該未架橋層を架橋してコーティング層を得る工程、
を含み、
該未架橋層の含水率が、該未架橋層の全体質量に対して10質量%以上95質量%以下であり、
該重合性成分が、架橋剤および重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
該コーティング層が10質量%未満の含水率に調整した場合において、3μm以上20μm未満の厚みを有する、製造方法。
[2]前記ポリビニルアルコール系樹脂が、変性ポリビニルアルコール系樹脂である、[1]に記載の製造方法。
[3]前記ポリビニルアルコール系樹脂が、側鎖にエチレン性不飽和基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記エチレン性不飽和基が以下の式(I)で表される部分構造を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
Figure 2023162847000001
[式(I)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、*は該エチレン性不飽和基の結合手である]
[5]前記変性ポリビニルアルコール系樹脂が、以下の式(II)または(III)で表される構造単位を含むポリビニルアルコール系樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
Figure 2023162847000002
[式(II)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1~10の2価の炭化水素基を表し、*は該変性ポリビニルアルコール系樹脂における構造単位の結合手である]、
Figure 2023162847000003
[式(III)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、*は該変性ポリビニルアルコール系樹脂における構造単位の結合手である]
[6]前記基材が、樹脂、ガラスおよび金属からなる群から選択される少なくとも1種の材料で構成されている、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記架橋工程が前記未架橋層にエネルギーを付与することによって行われ、
該エネルギーが、活性エネルギー線および熱からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]防曇性部材であって、
基材とコーティング層とを含み、
該コーティング層がポリビニルアルコール系樹脂と水性媒体と重合性成分とを含むコーティング組成物から得られるものであり、
該コーティング層が10質量%未満の含水率に調整した場合において3μm以上20μm未満の厚みを有し、かつ0.1MPa~10MPaの残留応力を有する、防曇性部材。
[9]防曇性部材の反りの発生を抑制するための方法であって、
ポリビニルアルコール系樹脂と水性媒体と重合性成分とを含むコーティング組成物を基材上に配置して未架橋層を形成する工程、および
該未架橋層を架橋して、該基材上にコーティング層が配置された該防曇性部材を得る工程、
を含み、
該未架橋層の含水率が、該未架橋層の全体質量に対して10質量%以上90質量%以下であり、
該重合性成分が、架橋剤および重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
該コーティング層が10質量%未満の含水率に調整した場合において3μm以上20μm未満の厚みを有する、方法。
本発明によれば、優れた防曇性能を有し、かつ適切な硬度および残留応力の低い防曇性部材を提供できる。防曇性部材を構成するコーティング層は、例えば硬質基材に設けられた場合には硬度の低下を抑制し、軟質基材に設けられた場合には基材の反りを抑制し得る。これにより、基材が硬質であるか軟質であるかに関わらず、優れた防曇性部材を製造することができる。
本発明の作用効果については、詳細は不明であるが、前記塗布層に含まれる水性媒体によってポリビニルアルコール系樹脂の運動性増加に起因する反応性の向上により、架橋が高度に進行して高耐水化するとともに、該樹脂を膨潤状態で架橋することにより、高分子鎖の間隙が広がった状態で構造固定されるため、前記コーティング層の吸水性が向上したと推定される。その結果、防曇性を発現するためのコーティング層の厚膜化を抑制でき、前記硬質基材に塗工した際の硬度低下に繋がり、欠点の少ない防曇性部材を得ることができると推察される。
実施例および比較例で作製したサンプル(コーティング層付のソーダガラス基材)を用いて防曇性の評価を行った際のサンプル表面の曇りの状態の例を説明するための写真であって、(a)は、サンプル上に曇りが生じておらず、背後のラベルの文字を視認できる状態の例を説明するための写真であり、(b)はサンプル上に曇りが発生し、背後の文字の視認が困難となった状態の例を説明するための写真である。
(防曇性部材の製造方法)
本発明の防曇性部材の製造方法では、まず、ポリビニルアルコール系樹脂と水性媒体と重合性成分とを含むコーティング組成物を基材上に配置して未架橋層が形成される。
(ポリビニルアルコール系樹脂)
本発明に使用されるポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール(CH=CHOH)またはその誘導体をモノマー構成単位の少なくとも1つとして含有するポリマーであり、例えはポリビニルアルコール樹脂および変性ポリビニルアルコール系樹脂、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
変性ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、側鎖に様々な官能基を有する、および/または不飽和結合を含む(例えば不飽和基の形態で含む)ポリマーが挙げられる。官能基としては、例えば、カルボキシ基、カルボニル基、ホルミル基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、エーテル基、およびハロゲン原子、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。不飽和結合の例としては、炭素炭素二重結合(エチレン性不飽和結合またはエチレン性不飽和基ともいう)および炭素炭素三重結合、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
本発明に使用されるポリビニルアルコール系樹脂は、耐水性と吸水性に優れた防曇性部材を提供できるという理由から、側鎖にエチレン性不飽和基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂であることが好ましい。
変性ポリビニルアルコール系樹脂が側鎖に有するエチレン性不飽和基の構造は特に限定されず、例えばラジカル重合性を有する不飽和基が挙げられる。変性ポリビニルアルコール系樹脂のエチレン性不飽和基に基づく優れた架橋反応性を利用して、架橋性組成物から硬化物を得ることができる。特に、エチレン性不飽和基は、以下の式(I)で表される部分構造を含むことが好ましい。
Figure 2023162847000004
(式(I)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、*は該エチレン性不飽和基の結合手である)
上記式(I)において、架橋反応性が良好であるとの理由から、Rおよび Rは水素原子であることが好ましく、コーティング組成物の溶液安定性が良好であるとの理由から、Rはメチル基であることが好ましい。また、上記式(I)において、Xが-N(R)-である場合、Rを構成し得る炭素数1~3の炭化水素基としては、例えば炭素数1~3の飽和炭化水素基が挙げられる。具体的には、Rは炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基が挙げられる。なお、反応性に優れるとの理由から、上記式(I)において、Xは酸素原子であることが好ましい。
本発明に使用される変性ポリビニルアルコール系樹脂は、以下の式(II)または(III)で表される構造単位を含むことが好ましい。
Figure 2023162847000005
(式(II)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1~10の2価の炭化水素基を表し、*は該変性ポリビニルアルコール系樹脂における構造単位の結合手である)
Figure 2023162847000006
(式(III)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、*は該変性ポリビニルアルコール系樹脂における構造単位の結合手である)
上記式(II)または(III)において、架橋反応性が良好であるとの理由から、RおよびRは水素原子であることが好ましく、コーティング組成物の溶液安定性が良好であるとの理由からRはメチル基であることが好ましい。
また、上記式(II)において、Xが-N(R)-である場合、Rを構成し得る炭素数1~3の炭化水素基としては、例えば炭素数1~3の飽和炭化水素基が挙げられる。具体的には、Rは炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基が挙げられる。なお、反応性に優れるとの理由から、上記式(II)において、Xは酸素原子であることが好ましい。
さらに、上記式(II)において、Yを構成し得る炭素数1~10の2価の炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキレン基および炭素数1~10のシクロアルキレン基が挙げられる。炭素数1~10のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。炭素数1~10のシクロアルキレン基としては、例えばシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。これらのアルキレン基およびシクロアルキレン基は、メチル基、エチル基等のアルキル基を分岐構造として有していてもよい。またYを構成し得る炭素数1~10の2価の炭化水素基は、所定の置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、例えは水酸基;アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基等のアシル基等が挙げられ、さらに当該置換基の構造中に、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等を含んでいてもよい。Yはまた、変性ポリビニルアルコール系樹脂の主鎖の一部と一緒になってアセタール構造を形成していてもよい。
本発明に使用されるポリビニルアルコール系樹脂は、上記式(II)または(III)で表される構造単位を含む変性ポリビニルアルコール系樹脂のうち、特に式(III)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂であることが好ましい。
なお、上記式(I)で表される部分構造を含む構造単位、ならびに上記式(II)および(III)で表される構造単位のより具体的な例としては、以下に示される構造単位が挙げられる。
Figure 2023162847000007
(式中、*は結合手である)。
上記式(IV-1)~式(IV-6)中、式(IV-1)~式(IV-3)は上記式(III)の具体例であり、上記式(IV-5)および(IV-6)は上記式(II)の具体例である。上記式(IV-4)は、上記式(II)および(III)に属さないが、式(I)で表される部分構造を含む具体例である。
本発明に使用されるビニルアルコール系樹脂の全構造単位に対する、エチレン性不飽和基を有する構造単位(例えば式(I)で表される部分構造を含む構造単位)の含有量の下限は特に限定されないが、ビニルアルコール系樹脂の全構造単位を100モル%として、好ましくは0.2モル%以上であり、より好ましくは0.3モル%以上であり、さらに好ましくは0.4モル%以上である。また、エチレン性不飽和基を有する構造単位(例えば式(I)で表される部分構造を含む構造単位)の含有量の上限は特に限定されないが、ビニルアルコール系樹脂の全構造単位を100モル%として、好ましくは5モル%以下であり、より好ましくは3モル%以下であり、さらに好ましくは2モル%以下である。上記エチレン性不飽和基を有する構造単位の含有量がこのような下限および上限から構成される範囲内にあることにより、当該製造方法により得られるコーティング層は、優れた耐水性と吸水性を持続的に提供でき、かつ防曇性部材の耐水性も向上させることができる。さらに、ビニルアルコール系樹脂は、その全構造単位内に2種以上のエチレン性不飽和基を有する構造単位を有していてもよい。例えば、2種以上のエチレン性不飽和基を有する場合、これら2種以上のエチレン性不飽和基を有する構造単位の含有量の合計量が上記下限および上限から構成される範囲内にあることが好ましい。なお、本明細書における用語「構造単位」は、重合体を構成する繰り返し単位を指していう。例えば、後述の「ビニルアルコール単位」および「ビニルエステル単位」もまた「構造単位」の例として包含される。
本発明に使用されるビニルアルコール系樹脂の全構造単位に対する、ビニルアルコール単位の下限は特に限定されないが、ビニルアルコール系樹脂の全構造単位を100モル%として、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは85モル%以上である。また、上記ビニルアルコール単位の含有量の上限は特に限定されないが、ビニルアルコール系樹脂の全構造単位を100モル%として、好ましくは99.95モル%以下であり、より好ましくは99.9モル%以下であり、さらに好ましくは99.5モル%以下であり、特に好ましくは99.0モル%である。ビニルアルコール単位の含有量がこのような下限および上限から構成される範囲内にあることにより、当該製造方法により得られるコーティング層は、優れた耐水性と吸水性を持続的に提供でき、防曇性部材の耐水性も向上させることができる。
上記ビニルアルコール単位は、加水分解や加アルコール分解などによってビニルエステル単位から誘導できる。そのため、ビニルエステル単位からビニルアルコール単位に変換する際の条件等によっては、ビニルアルコール系樹脂中にビニルエステル単位が残存することがある。よって、ビニルアルコール系樹脂は、上記エチレン性不飽和基を有する構造単位以外のビニルエステル単位を含んでいてもよい。
上記ビニルエステル単位のビニルエステルの例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどを挙げられ、これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
本発明で使用されるビニルアルコール系樹脂は、本発明の効果が得られる限り、エチレン性不飽和基を有する構造単位、ビニルアルコール単位およびビニルエステル単位以外の他の構造単位をさらに含んでいてもよい。当該他の構造単位は、例えば、ビニルエステルと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位である。他の単量体としては、エチレン性不飽和単量体が挙げられる。他の単量体に由来する構造単位は、エチレン性不飽和基を有する構造単位に変換可能な構造単位であってもよい。エチレン性不飽和単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセンなどのα-オレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3-ジアセトキシ-1-ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
ビニルアルコール系樹脂におけるエチレン性不飽和基を有する構造単位、ビニルアルコール単位、およびその他の任意の構造単位の配列順序には特に制限はなく、ビニルアルコール系樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体などのいずれであってもよい。
本発明に使用されるビニルアルコール系樹脂の分子量は特に限定されないが、数平均分子量(Mn)は好ましくは5,000~200,000であり、より好ましくは7,000~180,000であり、さらに好ましくは8,000~150,000である。Mnが5,000未満であると、当該製造方法により得られるコーティング層に対して十分な耐久性を付与できない場合がある。Mnが200,000を越えると、当該製造方法により得られるコーティング層に対して、耐水性および/または吸水性の持続性が低下する場合がある。Mnは、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質にポリメチルメタクリレートを用い、HFIP系カラムで測定した値として算出できる。
本発明に使用されるビニルアルコール系樹脂のJIS K6726(1994年)に準拠して測定した粘度平均重合度は特に限定されないが、好ましくは100~5,000であり、より好ましくは200~4,000である。粘度平均重合度が100を下回ると、当該製造方法により得られるコーティング層に対して十分な耐久性を付与できない場合がある。粘度平均重合度が5,000を上回ると、そのようなビニルアルコール系樹脂の製造にあたりより高度な技術が必要となるおそれがあり、工業的生産性を保持することが困難となる場合がある。
本発明に使用されるビニルアルコール系樹脂のけん化度は特に限定されないが、好ましくは60~99.95モル%、より好ましくは70~99.9モル%、さらに好ましくは80~99.5モル%、特に好ましくは85~99.0モル%、最も好ましくは88~98.5モル%である。ビニルアルコール系樹脂のけん化度が60モル%を下回ると、当該ビニルアルコール系樹脂を用いて得られるコーティング層に対して十分な耐久性を付与できない場合がある。ビニルアルコール系樹脂のけん化度が99.95モル%を上回ると、当該ビニルアルコール系樹脂を用いて得られるコーティング層に対して耐水性および/または吸水性についての持続性が低下する場合がある。
本発明に使用されるビニルアルコール系樹脂の製造方法は特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコールに対して、構造内にエチレン性不飽和基を有する化合物(例えばカルボン酸を有する化合物)を反応させることにより、上記式(I)で表される部分構造を側鎖に導入した変性ポリビニルアルコール系樹脂を製造することができる。当該反応の具体的な例としては、ポリビニルアルコールとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとのエステル交換反応;ポリビニルアルコールとアクリル酸またはメタクリル酸、4-ペンテン酸、10-ウンデセン酸との反応;ポリビニルアルコールと無水アクリル酸または無水メタクリル酸との反応;ポリビニルアルコールと塩化アクリロイルまたは塩化メタクリロイルとの反応;が挙げられる。
(水性媒体)
本発明に使用される水性媒体は、例えば水またはアルコール水溶液である。また、水の例としては、純水、イオン交換水、蒸留水、RO水および水道水、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。アルコール水溶液に含まれるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの炭素数1~3の低級アルコールである。アルコール水溶液に含まれるアルコールの濃度は低く設定されていることが好ましく、例えば、40質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
コーティング組成物に含まれる水性媒体の含有量は特に限定されないが、ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部~100000質量部、より好ましくは200質量部~50000質量部、さらにより好ましくは400質量部~10000質量部である。水性媒体の含有量が100質量部を下回ると、例えばコーティング組成物中のポリビニルアルコール系樹脂が十分に溶解できず、塗工性が悪化するおそれがある。水性媒体の含有量が100000質量部を上回ると、コーティング組成物から当該水性媒体を揮発させる際に多大なエネルギーを要することがある。
なお、コーティング組成物には上記水性媒体以外に、アセトンなどのケトン、ジエチルエーテル等のエーテル、ならびにそれらの組み合わせの媒体が希釈剤として含有されていてもよい。これらの希釈剤の含有量は、当業者によって適宜選択され得る。
(重合性成分)
重合性成分としては、架橋剤および重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が包含される。
(架橋剤)
上記架橋剤としては、公知のポリビニルアルコール系樹脂用の架橋剤を使用することができる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ポリシアネート化合物;エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端アクリル酸付加体、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエステルジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(2-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)エチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等のポリアクリレート;チタントリエタノールアミネート、乳酸チタン等のチタン化合物;ジルコニウム系化合物;マレイン酸、クエン酸等のポリカルボン酸化合物;ビス(β-ヒドロキシエチル)スルホンなどが挙げられる。
コーティング組成物を構成するポリビニルアルコール系樹脂が重合反応性基を有するものである場合、当該分野において重合反応性基を架橋する公知の架橋剤を使用できる。架橋剤としては、好ましくは1分子内に2つまたはそれ以上のチオール基を有する化合物、1分子内に2つまたはそれ以上のアミノ基を有する化合物等が挙げられる。1分子内に2つまたはそれ以上のチオール基を有する化合物としては、例えば1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,10-デカンジチオール、2,3-ジヒドロキシ-1,4-ブタンジチオール、エチレンビス(チオグリコラート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオナート)、1,4-ブタンジオールビス(チオグリコラート)、2,2’-チオジエタンチオール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(DODT)、3,7-ジチア-1,9-ノナンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコラート)、ペンタエリトリトールテトラキス(メルカプトアセタート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオナート)、チオコール(東レ・ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。1分子内に2つまたはそれ以上のアミノ基を有する化合物としては、例えばエチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、2-メチル-1,3-プロパンジアミン、1,2-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1-メチル-1,8-ジアミノオクタン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,2-ビス(3-アミノプロポキシ)エタン、1,3-ビス(3-アミノプロポキシ)-2,2-ジメチルプロパン、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリエチレングリコールエーテル、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4-(2-アミノエチル)シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、1,4-フェニレンジアミン等が挙げられる。
コーティング組成物を構成し得る架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、ビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~20質量部、より好ましくは0.5質量部~10質量部である。架橋剤の含有量が0.1質量部未満であると、ビニルアルコール系樹脂による架橋構造が十分に形成されず、得られるコーティング層について満足すべき耐水化が達成されないことがある。架橋剤の含有量が20質量部を上回ると、得られるコーティング層の架橋がそれ以上進まず、むしろ生産性を欠くことがある。
(重合開始剤)
コーティング組成物を構成するポリビニルアルコール系樹脂が重合反応性基を有するものである場合、重合性成分としては、上記架橋剤の代わりに当該分野において公知の重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤が挙げられる。
熱重合開始剤としては、ラジカル重合で一般的なアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤が使用できるが、透明性や物性に優れたコーティング層を得るためには気体を発生しない過酸化物系重合開始剤が好ましい。また、還元剤と組み合わせたレドックス系重合開始剤を使用してもよい。前記のとおり、レドックス系重合開始剤であれば過酸化物系重合開始剤と還元剤の混合という刺激により架橋させることが可能である。
過酸化物系重合開始剤を用いる場合は、水溶性の高い過酸化物系重合開始剤が好ましい。具体的には、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物が挙げられる。レドックス系重合開始剤として組み合わせる還元剤としては既知の還元剤が使用できるが、これらの中でも水溶性の高いN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウムなどが好ましい例として挙げられる。
既に述べたように、気体を発生しない過酸化物系重合開始剤が好ましく使用され得るが、特にコーティング層の透明性や物性が問われない場合は水溶性のアゾ系重合開始剤を用いてもよい。具体的には、例えば2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(商品名「VA-044」、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物(商品名「VA-044B」、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2’-アゾビス[2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩(商品名「V-50」、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物(商品名「VA-057」、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](商品名「VA-061」、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](商品名「VA-086」、富士フイルム和光純薬株式会社製)、2,2’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(商品名「V-501」、富士フイルム和光純薬株式会社製)などが挙げられる。
光重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンなどのプロピオフェノン系化合物;4’-フェノキシ-2,2-ジクロロアセトフェノン、4’-t-ブチル-2,2,2-トリクロロアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4’-ドデシルフェニル)-1-プロパノン、1-[4’-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-4’-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノンなどのアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、2,2’-ジクロロベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン[4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物;9,10-フェナントレンキノン、カンファーキノン(2,3-ボルナンジオン)、2-エチルアントラキノンなどのキノン系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ベンジルなどが挙げられる。
コーティング組成物を構成し得る重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、ビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~10質量部、より好ましくは0.2質量部~5質量部である。重合開始剤の含有量が0.1質量部未満であると、例えばビニルアルコール系樹脂に活性エネルギー線が適切に照射されたとしても、架橋構造が十分に形成されず、得られるコーティング層について満足すべき耐水化が達成されないおそれがある。重合開始剤の含有量が10質量部を上回ると、得られるコーティング層内の架橋がそれ以上進まず、むしろ生産性を欠くおそれがある。
(コーティング組成物)
本発明において、上記ポリビニルアルコール系樹脂、水性媒体および重合性成分は、当該分野において公知の手段を用いて予め混合され、コーティング組成物の形態に調製されていてもよい。
なお、コーティング組成物は、上記ポリビニルアルコール系樹脂、水性媒体および重合性成分以外に他の成分を含有していてもよい。他の成分の例としては、炭酸カルシウム、クレー、酸化チタン、タルク、シリカなどの充填材、加工安定剤、耐候性安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、他の熱可塑性樹脂、潤滑剤、香料、消泡剤、消臭剤、増量剤、剥離剤、離型剤、補強剤、防かび剤、防腐剤、ラジカル発生剤および結晶化速度遅延剤、触媒、カップリング剤ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。コーティング組成物における当該他の成分の含有量は特に限定されず、上記ポリビニルアルコール系樹脂、水性媒体および重合性成分が奏する本発明の効果を阻害しない範囲において適切な量が当業者によって適宜選択され得る。
(基材)
本発明に使用される基材は、それ自体が無色または有色のいずれであってもよく、例えば一方の面から他方の面への視認性が保持されている程度の透明な成形体であってもよい。基材はまた、例えば平滑な平面を有するような板状の部材(例えば窓材)であってもよく、あるいは所定形状を有するように成形されたもの(例えば車両用ヘッドライトカバー、ならびに車両用フロントガラスおよびリアガラス)であってもよい。基材はまた、例えば、強度、耐火性または防火性、防音性、および/または防犯性の向上;熱線の吸収または反射;光の無反射性または低反射性の付与;温度伝導の防止または低減;等の観点から、金属線や充填材、基材用添加剤等を任意の割合で含有していてもよい。
上記基材の例としては、特に限定されないが、ガラス製成形体および樹脂製成形体が挙げられる。
ガラス製成形体としては、例えば、フロートガラス、強化ガラス、耐熱ガラス、防火ガラス、デザインガラス、色ガラス、合わせガラス、すりガラス、複層ガラス、無反射ガラス、低反射ガラス、網入りガラス、線入りガラス、高透過ガラス、熱線反射ガラス、電磁波シールドガラス、サファイアガラス等のガラスでなる成形体が挙げられる。
樹脂製成形体としては、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、脂環式アクリル樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリ-4-メチルテルペン-1樹脂、塩化ビニリデン樹脂、透明エポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂から作製された成形体が挙げられる。
基材の厚みは特に限定されず、当業者によって適切な厚みが選択され得る。基材はまた、例えばコーティング組成物と密着して配置される場合、当該密着性を高めるために、コーティング組成物が設けられる側に当業者に周知の方法を用いて研磨等の表面状態の加工が行われていてもよい。なお、基材とコーティング組成物との間には、当該分野において公知の接着剤などで構成される中間層が配置されていてもよい。
コーティング組成物の基材上の配置について、得られるコーティング層が防曇性を効果的に発揮するために、コーティング組成物は基材の最外層に配置されることが好ましい。さらに、例えば基材が窓材のような部材で構成されている場合、コーティング組成物は当該基材の外表面のみ、内表面のみ、または外表面と内表面との両方のいずれに配置されていてもよい。
基材上へのコーティング組成物の配置は、当該基材を構成する面または部分のうち、防曇性の付与を所望する面または部分に対して行われ、例えばスプレー塗布、ロール塗布、スピンコーティング、エアーナイフコーティング、ブレードコーティング、ハケ塗り、浸漬等の当該分野において公知の方法を用いることができる。
これにより、基材上にコーティング組成物が配置された未架橋層が形成される。
上記で得られた未架橋層は、基材全体に対して均一な厚みで設けられていることが好ましい。未架橋層の厚みは、6μm~400μmが好ましく、6μm~200μmがより好ましく、6μm~100μmがさらに好ましい。未架橋層の厚みが6μmを下回ると、基材への均一な配置が難しく、また架橋後に得られるコーティング層が均一な防曇性を付与できないことがある。未架橋層の厚みが400μmを上回ると、当該コーティング層を形成するためにより多くのコーティング組成物が必要となるとともに、コーティング組成物から当該水性媒体を揮発させる際に多大なエネルギーを要することがある。
本発明において、未架橋層は含水率が調整されたものであることが好ましい。ここで、本明細書中に用いられる用語「含水率」とは、未架橋層全体に含まれる水性媒体全体の割合(質量%)であって、水性媒体が水と上記水以外のものを含有する場合は、未架橋層全体に含まれる当該水と水以外のものの合計量の割合(質量%)を指して言う。
本発明において、未架橋層の含水率は10質量%以上95質量%以下の範囲である。未架橋層の含水率の下限は、17質量%以上が好ましく、24質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が最も好ましい。また未架橋層の含水率の上限は90質量%以下が好ましく、87.5質量%以下がより好ましく、86質量%以下がさらに好ましい。未架橋層の含水率が10質量%未満であると、例えば未架橋層に含まれるビニルアルコール系樹脂に活性エネルギー線が適切に照射されたとしても、架橋構造が十分に形成されず、得られるコーティング層について満足すべき耐水化が達成されないおそれがある。未架橋層の含水率が95質量%を上回ると、例えば未架橋層に含まれるビニルアルコール系樹脂に活性エネルギー線が適切に照射されたとしても、得られるコーティング層内の架橋がそれ以上進まず、むしろ生産性を欠くおそれがある。
本発明においては、未架橋層の含水率を上記範囲内に設定するために、様々な手法が採用され得る。例えば、コーティング組成物を調製する際の水性媒体の含有量を厳格に管理して、未架橋層を形成した直後に後述の架橋を行ってもよい。あるいは、未架橋層を形成した後、特定湿度に調節された環境下に一旦保管して未架橋層の含水率を上記範囲内に調整してもよい。あるいは、未架橋層を形成した後、当該未架橋層に、熱風、赤外線、加熱シリンダーまたはこれらの組み合わせを曝露して未架橋層の含水率を上記範囲内に調整してもよい。湿度調節や加熱には相応のエネルギーを要することから、これを回避するたえに未架橋層の形成直後の含水率が上記範囲内となるように調製し、かつ未架橋層の形成直後に直ちに後述の架橋を行うことが好ましい。
本発明では、次いで、未架橋層が架橋されコーティング層が形成される。
未架橋層の架橋は、例えば当該層にエネルギーを付与することによって行われる。
付与され得るエネルギーの例としては、活性エネルギー線および熱、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。ここで、活性エネルギー線の具体的な例としては、光線、電磁波、および粒子線、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。光線の例としては、遠紫外線、紫外線(UV)、近紫外線、可視光線、赤外線などが挙げられ、電磁波の例としては、X線、γ線などが挙げられ、粒子線の例としては電子線(EB)、プロトン線(α線)、中性子線などが挙げられる。付与された未架橋層の硬化速度が適切である、照射装置の入手が容易である等の観点から、これらの活性エネルギー線の中でも、紫外線および電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
付与され得るエネルギーの量および時間は特に限定されない。採用するエネルギーの種類、付与される未架橋層の大きさ等によって適切な量および時間が当業者によって適宜選択され得る。
これにより未架橋層の架橋が行われる。
なお、本発明においては、上記架橋の間および後に、必要に応じて基材上の層に対して乾燥が行われてもよい。このような乾燥のために使用され得る手段は特に限定されず、例えば、熱風、赤外線、および加熱シリンダー、ならびにそれらの組み合わせを曝露するためのものが挙げられる。
このようにして未架橋層からコーティング層が形成される。
(コーティング層)
コーティング層は、基材全体に対して略均一な厚みで設けられていることが好ましい。コーティング層の厚みは、10質量%未満(例えば、0.1質量%以上10質量%未満)の含水率に調整した場合において、3μm以上20μm未満である。防曇性、硬度、および残留応力のそれぞれを適切な範囲内に保つことができるという理由から、上記含水率に調整した場合において4μm以上18μm以下が好ましく、5μm以上16μm以下がさらに好ましい。コーティング層の厚みが3μmを下回ると、当該コーティング層が基材上に均一な防曇性を付与できないおそれがあるとともに、防曇性が低下し、さらにプラスチック等の軟質基材に形成した際に残留応力が増加して反りが生じるおそれがある。コーティング層の厚みが20μmを上回ると、当該コーティング層を形成するためにより多くのコーティング液が必要となるとともに、厚みの増加によってガラス等の硬質基材に塗工した際に硬度が低下するおそれがある。
(防曇性部材)
例えば上記のようにして製造された防曇性部材は基材とコーティング層とを含む。
基材とコーティング層とは互いに直接密着したものであってもよく、1つまたは複数の中間層を介在させたものであってもよい。なお、中間層が介在する場合、中間層は基材およびコーティング層のいずれに対しても密着性が良好であり、かつ透明性を適度に保持していることが好ましい。こうした中間層の例としては、公知の接着剤で構成される接着剤層が挙げられる。
本発明の防曇性部材を構成するコーティング層は、上記の通り、ポリビニルアルコール系樹脂と水性媒体と重合性成分とを含むコーティング組成物から得られたものであり、3μm以上20μm未満、好ましくは4μm以上18μm以下、より好ましくは5μm以上16μm以下の厚みを有する。
さらに、本発明の防曇性部材を構成するコーティング層は、所定の残留応力を有する。ここで、本明細書中に用いられる用語「コーティング層の残留応力」は、基材上にコーティング層が配置された状態(すなわち、防曇性部材の形態を有する状態)で、5cm×7cmの短冊状のサンプル片を切り出し、これを23℃かつ40%RHの環境下で1週間調湿し、得られたサンプル片の短辺の一端から3mm幅までの部分にアルミ板を置いて机上に接地させた状態で、もう一方の端部までの長さ(L/2)、および高さ(ξ)を測定し、これらの値と、予め測定しておいた調湿前のサンプル片における基材の厚み(h)、コーティング層の厚み(h)、および基材の弾性率Eから、以下の式に従って曲率半径(ρ)を算出し、その後残留応力(σ)として算出できる。
曲率半径ρ=L/(8×ξ)
残留応力σ=(E×h )/(12×h)×2/(ρ(h+h))×[1+1/3(h/(h+h))
本発明にいて、コーティング層は、好ましくは0.1MPa~10MPa、より好ましくは0.2MPa~5MPaの残留応力を有する。コーティング層の残留応力を0.1MPaを下回るように制御することは技術的には必ずしも容易ではなく、より高度かつ複雑な製造設備を必要とする場合がある。コーティング層の残留応力が10MPaを上回ると、例えば硬質基材に設けられた場合には硬度の低下を抑制することが困難となりかつ軟質基材に設けられた場合には基材の反りを抑制することが困難となる場合がある。
(用途)
本発明の防曇性部材は、例えば、部材表面の曇りの発生を回避することが所望される種々の用途に適用され得る。特に限定されないが、用途の例としては、車両(例えば、自動車、列車)、航空機、船舶用の外装材、内装材、ウインドウ、ミラーおよびヘッドライトカバー;建築用(例えば、ビル、住宅)又は構造物用外壁材(例えば外壁パネル、窓ガラス)や建築用内装材(例えば壁紙、鏡)、窓材(例えば窓ガラス)、浴室または洗面所用の鏡;ショーケース、水槽、インキュベーター;情報機器、家具、家電、ディスプレイ、各種コンシューマー製品;キッチン、水回り製品(例えば、シンク、換気扇フード、浴室製品);風力発電機用羽根(例えばプロペラ、多翼、セイル);道路交通用カーブミラー;防犯カメラのレンズおよび筐体;デジタルカメラレンズおよび筐体;放送用カメラのレンズおよび筐体;眼鏡のレンズおよびフレーム;サングラスのレンズおよびフレーム;スポーツまたはレジャー(例えば、スキー、スノーボード、シュノーケリング、スキューバダイビング)用ゴーグル;保護メガネ、フェイスシールド;医療用レンズ;工業用、スポーツ用、二輪車用のヘルメット;各種センサーカバー;農業ハウス構成材料(例えばプラスチックシート、プラスチックフィルム、窓ガラス);などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を表す。
(使用した基材)
基材として以下の材料を使用した。
・PETフィルム(三菱ケミカル社製、品名;ダイアホイルS100、厚み100μm)
・酸化セリウム研磨したソーダガラス板(クライミング社製、品名;ソーダガラス板 100×150、厚み2mm)
(未架橋層の含水率の評価)
コーティング組成物を基材上へ配置した後の質量(W1)を測定した後、これを80℃で6時間真空乾燥した後の質量(W2)を測定した。これらの値を用いて、以下の式に従って未架橋層の含水率を算出した。
未架橋層の含水率(%)=(W1-W2)/W2×100
(コーティング層の厚み評価)
コーティング組成物を配置する前の基材の厚み、およびコーティング層と基材との厚みの合計をマイクロメーター(株式会社ミツトヨ製クーラントプルーフマイクロメータMDC-MX)を用いて測定し、差分からコーティング層の厚みを算出した。
(コーティング層の水溶出率および吸水倍率の評価)
実施例または比較例で得られたサンプル(コーティング層付PETフィルム)から剥離したコーティング層を温度100℃の煮沸水中に1時間浸漬した。その後、これを取り出して表面水を拭き取った後の質量(W3)を測定し、それを80℃で6時間真空乾燥した後の質量(W4)を測定した。これらの値W3およびW4と、予め測定しておいた前記フィルムの水浸漬前の乾燥質量(W5)とを用いて、以下の式に従って硬化フィルムの水溶出率および吸水倍率を算出し、以下の基準で耐水性および吸水性を判定した。
水溶出率(%)=(W5-W4)/W5×100
A:水溶出率が10%未満であった
B:水溶出率が10%以上30%未満であった
C:水溶出率が30%以上50%未満であった
D:水溶出率が50%以上80%未満であった
E:水溶出率が80%以上であった
吸水倍率(倍)=W3/W4
A:吸水倍率が15倍以上であった
B:吸水倍率が10倍以上15倍未満であった
C:吸水倍率が10倍未満であった
D:一部溶出し、フィルムの形状が保たれていなかった
E:フィルムが完全に溶解した
(防曇性の評価)
40℃の温水100mLを入れた100mLビーカーの口を、実施例または比較例で得られたサンプル(コーティング層付のソーダガラス基材)でコーティング層を下方に指向させて覆い、ビーカーの底部および側面を40℃の湯浴に浸漬して40℃の雰囲気下で放置した。その後、図1に示すように上部からラベルを覗き込み、視認性を確認し、サンプルでビーカーの口を覆った時間を0分として、以下の基準で防曇性を判定した。
A:9分以内には曇り始めなかった
B:6分までの間に曇り始めなかった
C:3分までの間に曇り始めなかった
D:1分までの間に曇り始めなかった
E:塗膜の溶出が見られた
(鉛筆硬度評価)
実施例または比較例で得られたサンプル(コーティング層付ガラス基材)についてJIS K5600-5-4に準拠し、三菱鉛筆株式会社製uniシリーズ9H~6Bを用いて角度45°、荷重750gの条件で測定した。
(残留応力の評価)
実施例または比較例で得られたサンプル(コーティング層付PET基材)を5cm×7cmの短冊状に切り出し、23℃かつ40%RHの環境下で1週間調湿した。得られた短冊の短辺の一端から3mm幅までの部分にアルミ板を置いて机上に接地させた状態で、もう一方の端部までの長さ(L/2)、および高さ(ξ)を測定した。これらの値と、予め測定しておいた前記防曇コートPETの基材の厚み(h)、コーティング層の厚み(h)、およびPETの基材弾性率E(3920MPa)を用いて、以下の式に従って曲率半径(ρ)を算出し、その後残留応力(σ)を算出した。
曲率半径ρ=L/(8×ξ)
残留応力σ=(E×h )/(12×h)×2/(ρ(h+h))×[1+1/3(h/(h+h))
(実施例1)
(コーティング組成物の作製)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、メタクリル酸493.0質量部、酢酸17.0質量部、イオン交換水56.7質量部、p-メトキシフェノール1.3質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物4.2質量部を順次仕込み、室温で撹拌しながら市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度1700、けん化度98.5モル%)100質量部を添加して、撹拌しながら80℃まで昇温し、スラリー状態で7時間反応させた。その後、室温まで冷却し、内容物をろ過して変性ポリビニルアルコール系樹脂を回収し、大量のメタノールで洗浄した後、40℃にて1.3Paで20時間乾燥することにより、変性率1モル%の変性ポリビニルアルコール系樹脂であるメタクリル酸変性ポリビニルアルコールを得た。得られた変性ポリビニルアルコール系樹脂を水に溶解させて、10%水溶液を調製した後、重合開始剤として光開始剤である2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(HEMP)を、変性ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して1質量部になるように添加して溶解させ、コーティング組成物を調製した。
上記得られたコーティング組成物を、各基材(ソーダガラス板またはPETフィルム)上に、乾燥後の厚みが10μmになるようにフィルムアプリケーターで配置し、未架橋層を形成した。
次いで、未架橋層を23℃かつ63%RHの条件下で1週間保管して、未架橋層の含水率が10質量%となるように調整した後、この未架橋層に紫外線を3000mJ/cmの強度で照射し、未架橋層中の変性ポリビニルアルコール系樹脂を架橋処理し、その後大気圧下で60℃にて1時間乾燥させることにより、各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得た。
(評価)
得られたサンプルを用いて、上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
23℃かつ80%RHの条件下で1週間保管して含水率を14質量%に調整した未架橋層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
23℃かつ95%RHの条件下で1週間保管して含水率を26質量%に調整した未架橋層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
未架橋層を形成した後、熱風乾燥により含水率を58質量%に調整した未架橋層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
未架橋層を形成した後、熱風乾燥により含水率を78質量%に調整した未架橋層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
コーティング組成物の調製時に水溶液濃度が15%となるように調製し、23℃かつ63%RHの条件下で1週間保管せず、含水率が85質量%である未架橋層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
23℃かつ63%RHの条件下で1週間保管せず、含水率が90質量%である未架橋層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
乾燥後(含水率10質量%未満)の厚みが6μmとなるようにコーティング組成物を配置し、23℃かつ63%RHの条件下で1週間保管せず、含水率が90質量%である未架橋層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例9)
乾燥後(含水率10質量%未満)の厚みが4μmとなるようにコーティング組成物を配置し、23℃かつ63%RHの条件下で1週間保管せず、含水率が90質量%である未架橋層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例10)
変性ポリビニルアルコール系樹脂を、水およびメタノールを質量比で95対5となる混合溶媒に溶解させてコーティング組成物を調製し、23℃かつ63%RHの条件下で1週間保管せず、含水率が90質量%である未架橋層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例11)
重合開始剤としてHEMPの代わりに熱開始剤であるペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)を使用したこと以外は、実施例7と同様に未架橋層を作製した。次いで、密閉系にて未架橋層を80℃で30分間熱処理することで変性ポリビニルアルコール系樹脂を架橋し、大気圧下で60℃にて1時間乾燥させて、各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得た。このサンプルについて上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例12)
変性されていないポリビニルアルコール樹脂として市販のポリビニルアルコール樹脂(粘度平均重合度1700、けん化度98.5モル%)を、架橋剤としてチタン(IV)ビス(水素ラクタト)ジヒドロキシド(マツモトファインケミカル株式会社製オルガチックスTC-310(以下、TC-310という))を用いたこと以外は実施例11と同様にして、各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得た。このサンプルについて上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
23℃かつ40%RHの条件下で1週間保管して含水率を6重量%に調整し未架橋層を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、このサンプルについて上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
乾燥後(含水率10質量%未満)のコーティング層の厚みが20μmとなるように各基材上に配置したこと以外は実施例7と同様にして、各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、このサンプルについて上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
乾燥後(含水率10質量%未満)のコーティング層の厚みが2μmとなるように各基材上に配置したこと以外は実施例7と同様にして、各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、このサンプルについて上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
撹拌機、還流管および添加口を備えた反応器に、メタクリル酸476.3質量部、酢酸62.4質量部、イオン交換水28.4質量部、p-メトキシフェノール1.3質量部、パラトルエンスルホン酸一水和物9.1質量部を順次仕込み、室温で撹拌しながら市販のポリビニルアルコール樹脂(数平均重合度300、けん化度82モル%)100質量部を添加したこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製した。得られたコーティング層を、乾燥後(含水率10質量%未満)の厚みが20μmになるように各基材上に配置し、形成した未架橋層を25℃かつ50%RHの条件下で1週間保管したこと以外は実施例1と同様にして、各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、このサンプルについて上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
重合開始剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、各基材上にコーティング層が形成されたサンプルを得、このサンプルについて上記の各種評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2023162847000008
表1に示すように、実施例1~12で作製されたサンプル中のコーティング層はいずれも優れた耐水性および吸水性を有し、さらに優れた防曇性能および硬度と、低い残留応力とを有していた。一方、比較例1に示す通り、未架橋層の含水率を10質量%未満に調整した場合は、鉛筆硬度および残留応力は良好であるが、溶出率が低く耐水性に劣るものであった。また、比較例2~4のように、コーティング層の厚みが3μm未満である場合は鉛筆硬度が良好である一方で残留応力は高いものであった。コーティング層の厚みが20μmを超える場合は、防曇性が良好であったが、鉛筆硬度が劣っていた。さらに、比較例5のように、架橋処理を施さなかったものは、耐水性が低く、煮沸水にてコーティング層がすべて溶出した。
本発明によれば、優れた防曇性を有するコーティング膜を備えた積層部材を提供することができる。当該積層材料は、例えば車両用ガラスとして利用できる。本発明は、例えば樹脂成形分野、自動車・鉄道・航空機・船舶関連分野、メディカル製品分野、農業・園芸分野、電気分野、建築分野等において有用である。

Claims (9)

  1. 防曇性部材の製造方法であって、
    ポリビニルアルコール系樹脂と水性媒体と重合性成分とを含むコーティング組成物を基材上に配置して未架橋層を形成する工程、および
    該未架橋層を架橋してコーティング層を得る工程、
    を含み、
    該未架橋層の含水率が、該未架橋層の全体質量に対して10質量%以上95質量%以下であり、
    該重合性成分が、架橋剤および重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
    該コーティング層が10質量%未満の含水率に調整した場合において3μm以上20μm未満の厚みを有する、製造方法。
  2. 前記ポリビニルアルコール系樹脂が、変性ポリビニルアルコール系樹脂である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ポリビニルアルコール系樹脂が、側鎖にエチレン性不飽和基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記エチレン性不飽和基が以下の式(I)で表される部分構造を含む、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
    Figure 2023162847000009
    [式(I)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、*は該エチレン性不飽和基の結合手である]
  5. 前記変性ポリビニルアルコール系樹脂が、以下の式(II)または(III)で表される構造単位を含むポリビニルアルコール系樹脂である、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
    Figure 2023162847000010
    [式(II)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、Xは酸素原子または-N(R)-であり、Rは水素原子または炭素数1~3の炭化水素基であり、Yは置換基を有していてもよい炭素数1~10の2価の炭化水素基を表し、*は該変性ポリビニルアルコール系樹脂における構造単位の結合手である]、
    Figure 2023162847000011
    [式(III)中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、カルボキシル基、またはカルボキシメチル基であり、*は該変性ポリビニルアルコール系樹脂における構造単位の結合手である]
  6. 前記基材が、樹脂、ガラスおよび金属からなる群から選択される少なくとも1種の材料で構成されている、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記架橋工程が前記未架橋層にエネルギーを付与することによって行われ、
    該エネルギーが、活性エネルギー線および熱からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 防曇性部材であって、
    基材とコーティング層とを含み、
    該コーティング層がポリビニルアルコール系樹脂と水性媒体と重合性成分とを含むコーティング組成物から得られるものであり、
    該コーティング層が、10質量%未満の含水率に調整した場合において3μm以上20μm未満の厚みを有し、かつ0.1MPa~10MPaの残留応力を有する、防曇性部材。
  9. 防曇性部材の反りの発生を抑制するための方法であって、
    ポリビニルアルコール系樹脂と水性媒体と重合性成分とを含むコーティング組成物を基材上に配置して未架橋層を形成する工程、および
    該未架橋層を架橋して、該基材上にコーティング層が配置された該防曇性部材を得る工程、
    を含み、
    該未架橋層の含水率が、該未架橋層の全体質量に対して10質量%以上90質量%以下であり、
    該重合性成分が、架橋剤および重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
    該コーティング層が10質量%未満の含水率に調整した場合において3μm以上20μm未満の厚みを有する、方法。
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