JP2023113156A - ハット形鋼矢板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フランジ波の発生を抑制し、良好な製品形状を得ることができるハット形鋼矢板の製造方法を提供すること。【解決手段】圧延対象材に複数の孔型を用いて、粗圧延、中間圧延及び仕上げ圧延を施し、ウェブとフランジと腕部と継手部とを有するハット形鋼矢板を製造するハット形鋼矢板の製造方法であって、1つのロール組に刻設された1以上の孔型を用いて、製品の厚み圧下を行う仕上げ圧延パスにおいて、仕上げ圧延パスの前におけるフランジについて、フランジの断面内で厚みの最も薄い部分の厚みをTf1とし、フランジの断面内で厚みの最も厚い部分の厚みをTf2としたとき、仕上げ圧延パスのフランジを圧下するロール隙Sfについて、Tf1<Sf<Tf2を満足する条件で圧延を行う。【選択図】図5
Description
本発明は、ハット形鋼矢板の製造方法に関する。
従来、ハット形等の両端に継手を有する鋼矢板の製造は、孔型圧延法によって行われている。この孔型圧延法の一般的な工程としては、先ず加熱炉において所定の温度に加熱した鋼素材(矩形材)を、孔型をそれぞれ備えた、粗圧延機、中間圧延機及び仕上げ圧延機によって順に圧延することが知られている。また、粗圧延機、中間圧延機及び仕上げ圧延機による圧延をそれぞれ、粗圧延、中間圧延及び仕上げ圧延ともいい、これらの圧延を総称して造形圧延ともいう。
孔型圧延法として、例えば、特許文献1には、粗圧延、中間圧延及び仕上げ圧延において、ロールに複数の孔型を刻設し、各孔型にて1~2パスずつ圧延を行い、ハット形鋼矢板を製造する技術が開示されている。また、特許文献2には、フランジを有する鋼矢板の製造であって、粗圧延工程及び中間圧延工程における圧延対象材の圧延は、連続する複数の孔型における複数パス圧延によって行われ、複数の孔型での圧延において、連続する2つの孔型では、後段の孔型におけるフランジ総圧下率に比べて、圧延中立線近傍でのフランジ圧下率が小さくなるような所定の条件にてフランジ対応部のロール隙を構成し、圧延を行う技術が開示されている。
しかしながら、上記従来の技術には、未だ解決すべき以下のような問題があった。すなわち、特許文献1に開示された技術では、粗圧延、中間圧延工程、仕上げ圧延工程にて、フランジを製品とほぼ同じ角度の直線状態として1孔型で1~2パスの圧延を行うが、特にフランジ幅が大きく板厚が薄い場合には、リバース圧延を行うと断面内各部の延伸バランスが取れず、フランジ波が発生してしまう場合がある。また、特許文献2に開示された技術では、中間圧延までにフランジ波が発生してしまった場合に、いかなる条件で仕上げ圧延を行い、発生したフランジ波を解消するのかという技術は開示されていない。また、中間圧延でフランジ波が発生していなくても仕上げ圧延でフランジ波が発生してしまう場合があり、適正な仕上げ圧延条件を定める必要があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、フランジ波の発生を抑制し、良好な製品形状を得ることができるハット形鋼矢板の製造方法を提供することである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るハット形鋼矢板の製造方法は、圧延対象材に複数の孔型を用いて、粗圧延、中間圧延及び仕上げ圧延を施し、ウェブとフランジと腕部と継手部とを有するハット形鋼矢板を製造するハット形鋼矢板の製造方法であって、1つのロール組に刻設された1以上の孔型を用いて、製品の厚み圧下を行う仕上げ圧延パスにおいて、前記仕上げ圧延パスの前における前記フランジについて、前記フランジの断面内で厚みの最も薄い部分の厚みをTf1とし、前記フランジの断面内で厚みの最も厚い部分の厚みをTf2としたとき、前記仕上げ圧延パスの前記フランジを圧下するロール隙Sfについて、Tf1<Sf<Tf2を満足する条件で圧延を行うことを特徴とするものである。
また、本発明に係るハット形鋼矢板の製造方法は、上記の発明において、前記仕上げ圧延パスにおいて、Tf1+(Tf2-Tf1)/4≦Sf≦Tf2-(Tf2-Tf1)/4を満足する条件で圧延を行うことを特徴とするものである。
また、本発明に係るハット形鋼矢板の製造方法は、上記の発明において、前記仕上げ圧延パスは、前記仕上げ圧延における全圧延パスであることを特徴とするものである。
また、本発明に係るハット形鋼矢板の製造方法は、上記の発明において、前記仕上げ圧延パスにおける前記ウェブ及び前記腕部の圧下率を2[%]以上とすることを特徴とするものである。
本発明に係るハット形鋼矢板の製造方法は、フランジ波の発生を抑制し、良好な製品形状を得ることができるという効果を奏する。
以下に、本発明に係るハット形鋼矢板の製造方法の実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。また、本実施形態においては、ハット形鋼矢板形状の圧延対象材を、ウェブがフランジよりも上方に位置する姿勢(いわゆる逆U姿勢、あるいは、ハット姿勢)で圧延されるものとして説明するが、当然、本発明の適用範囲はその他の姿勢(例えばU姿勢)での圧延にも及ぶ。
図1は、ハット形鋼矢板1の断面形状を示した図である。
本実施形態において製造されるハット形鋼矢板1は、図1に示すように、長手方向に直交する一様な断面形状がハット形である。ハット形鋼矢板1は、断面形状として、ウェブ11と、一対のフランジ12と、一対の腕部13と、一対の継手部14とを有する。ウェブ11は、一方向(図1の左右方向であり、以下では、「左右方向」とも称する。)に延在する部位である。一対のフランジ12は、ウェブ11の左右方向の両端に接続され、左右方向に対して傾いて延在する部位である。図1に示す例では、一対のフランジ12は、ウェブ11の反対側の端部が上下方向(図1の上下方向であり、左右方向に直交する方向)の下側となるように傾いて延在する。一対の腕部13は、一対のフランジ12のウェブ11が接続されていない側に接続され、左右方向に延在する部位である。一対の継手部14は、一対の腕部13のフランジ12が接続されていない側に接続される部位であり、上下方向の上側または下側に開いた鉤状の形状を有する。一対の継手部14は、鋼矢板として用いられる際に、他の鋼矢板の継手部に嵌合することで、他の鋼矢板との接続に用いられる部位である。なお、本実施形態では、腕部13と継手部14とをまとめて平坦部ともいう。平坦部は、ハット形鋼矢板1において、フランジ12のウェブ11が接続されていない側の端に接続して形成され、左右方向に延在する平坦箇所を有する部位である。本実施形態では、腕部13が、平坦部における平坦箇所となる。また、図1のWで示す一対の継手部14間の距離を有効幅といい、図1のHで示すウェブ11の上面から腕部13の下面までの上下方向の距離を有効高さという。
次に、ハット形鋼矢板1に製造に用いる圧延ラインについて説明する。図2は、圧延ライン2の設備構成を示す説明図である。
図2において、圧延ライン2での圧延進行方向、つまり、圧延対象材の搬送方向は、図2中に矢印で示す方向である。加熱炉3で加熱された圧延対象材であるスラブは、複数の孔型を用いて、粗圧延機4、中間圧延機5、仕上げ圧延機6の順に熱間で孔型圧延され、図1に示すハット形鋼矢板1の製品形状に仕上げられる。これらの圧延機には、カリバと呼ばれる孔型が、上ロールと下ロールとに刻設されている。なお、本実施形態では、粗圧延機4、中間圧延機5及び仕上げ圧延機6による圧延をそれぞれ、粗圧延、中間圧延、仕上げ圧延ともいい、これらの圧延を総称して造形圧延ともいう。本実施形態において、粗圧延及び中間圧延は、それぞれ前記複数の孔型のうちの2以上の孔型を用いた複数パス圧延により行われ、仕上げ圧延は、1以上の孔型を用いた1パス以上の圧延により行われ、図2に示すように、粗圧延3段(Box、K8、K7)、中間圧延4段(K6、K5、K4、K3)及び、仕上げ圧延2段(K2、K1)が例示される。また、粗圧延機4の出側には、不図示のタングカットソーが設置されており、粗圧延を終了した圧延素材の先端クロップ部と後端クロップ部との少なくとも一方を切断して切り落とすことができる。
図3は、粗圧延のロール孔型を示した図である。具体的には、図3にハット形鋼矢板1の粗圧延に用いられる粗圧延機4の孔型の例を示しており、上ロール41と下ロール42とに対し、Box孔型、K8孔型及びK7孔型という3つの孔型が刻設されている。
本実施形態の粗圧延では、まず、Box孔型で圧延対象材(素材)であるスラブの幅圧下が行われる。次いで、K8孔型で、スラブのハット形への曲げ変形及び厚み圧下が行われる。さらに、K7孔型で、さらに厚み圧下が行われ、製品断面形状に近い形に造形される。粗圧延のK8孔型及びK7孔型では、それぞれ複数パスの圧延が行われている。
中間圧延機5についても同様に、2~4つ程度の孔型が上下で一つのロール組に刻設されており、これらの孔型での圧延が順次行われる。図4は、中間圧延のロール孔型を示した図である。具体的には、図4にハット形鋼矢板1用の中間圧延機5における圧延機5Aの孔型の例を示しており、上下で一つのロール組である上ロール51Aと下ロール52Aとに対し、K6孔型及びK3孔型の2つの孔型が刻設されている。
また、ハット形鋼矢板1用の中間圧延機5における図示しないもう一方の圧延機5Bにも2つの孔型、K5孔型とK4孔型とが刻設されている。
本実施形態の中間圧延では、中間圧延の1パス目にK6孔型で圧延を行い(K5圧延はダミーで圧下なし)、1パス目とは逆方向の圧延となる2パス目には、K6孔型とK5孔型とでのタンデム圧延を行う。さらに3パス目には、K4孔型とK3孔型とでタンデム圧延を行う。
仕上げ圧延機6についても同様に、1~3つ程度の孔型が上下で一つのロール組に刻設されており、これらの孔型での圧延が順次行われる。図5は、仕上げ圧延のロール孔型を示した図である。具体的には、図5にハット形鋼矢板1用の仕上げ圧延機6の孔型の例を示しており、上下で一つのロール組である上ロール61と下ロール62とに対し、K2孔型及びK1孔型の2つの孔型が刻設されている。
本実施形態の仕上げ圧延では、中間圧延された素材に対して、仕上げ圧延の1パス目にK2孔型で最終的な厚みを仕上げる圧延を行い、逆方向の圧延となる2パス目にK1孔型で継手部14の爪曲げ成型が行われ、製品断面形状となる。3パス目はK1孔型を通す正方向の圧延であるが、圧下や爪曲げを行わないダミー圧延としている。なお、この仕上げ圧延では、2パス目をダミー圧延として、3パス目にK1孔型で爪曲げを行っても構わない。また、K2孔型で2パスの圧延を行ってもよい。
このようなハット形鋼矢板1の圧延では、「フランジ波」と呼ばれる形状不良が発生することがある。図6は、フランジ波20を模式的に示した図である。図6に示すように、フランジ波20は、フランジ12(の外面側)が平坦とはならずに長手方向で高さが変化し波打ち形状となる形状不良である。
ここで、フランジ波20は、厚みが薄くなる中間圧延の後半パスや仕上げ圧延で発生することが多い。発生したフランジ波20が最終圧延後に残っていると、その材は製品とすることはできず(不合格品)、製品歩留まりを大きく低下させるため、フランジ波20の発生を抑制する必要がある。なお、フランジ波20のない合格品とは、例えば、本実施形態において、フランジ12の外面側について、長手方向での波の最高点と波の最低点との高さの差が予め定めた許容値を超えていない材をいい、前記許容値は適宜設定されるが本実施形態では0.5[mm]とする。また、さらには、フランジ波20が中間圧延までに発生しても、それを仕上げ圧延で解消できれば、製品形状としては問題がないので、仕上げ圧延でフランジ波20を消せる圧延条件を確立する必要もある。
ところで、特許文献2においては、段落[0042]に『仕上げ圧延(仕上げ圧延機30において実施される圧延)によって消去可能となるような許容範囲が存在し、その許容範囲は、図9に記載しているように、急峻度が1.0E-02以下であるようなフランジ波である。』と記載されているが、フランジ波が消去できる具体的な仕上げ圧延条件、及び、仕上げ圧延でフランジ波を発生させない圧延条件については、一切の記載がされていない。
そこで、本願発明者らは、仕上げ圧延の最終厚み圧下パスでフランジ波が消去できる具体的な圧延条件、及び、仕上げ圧延でフランジ波を発生させない圧延条件について調査及び検討を行った。なお、本実施形態において仕上げ圧延で厚み圧下を行うパスは、図2及び図5の例の場合はK2孔型である。最終孔型であるK1孔型は爪曲げを行う孔型であるため積極的なフランジ12の厚み圧下は行わない。ただし、仕上げ圧延においてK1孔型でも厚み圧下を行う場合、仕上げ圧延の厚み圧下パス(仕上げ圧延パス)は、仕上げ圧延の全圧延パスであってもよい。
まず初めに、仕上げ圧延前のフランジ12の厚み分布の調査を行った。図7は、仕上げ圧延前のフランジ厚み分布の例を示した図である。具体的には、ウェブ厚が13.2[mm]、フランジ厚が8.9[mm]、製品高さが300[mm]となる25H(シリーズ呼称)のハット形鋼矢板1に対する結果の一例を図7に示している。
多くのケースにおいて、中間圧延完了時点で、フランジ12の高さ方向中央部の厚みが最も厚くなっている場合が多く、フランジ12の高さ方向中央部の増厚量は、ハット形鋼矢板1のシリーズやその材の中間圧延までの圧延条件にもよるが、0.3[mm]~1.2[mm]程度の場合が多いことが判明した。
次に、中間圧延で発生したフランジ波を仕上げ圧延で解消する圧延条件を検討した。フランジ波は本来平面であるべきフランジ12に凹凸が生じている形状であり、この凹凸を仕上げ圧延のフランジ12を圧下する上ロール及び下ロールのフランジ圧下部位で、平面に近づけるように押圧し、凹凸量を許容範囲内に収める必要がある。この必要量について検討したところ、仕上げ圧延の最終厚み圧下パスにおけるフランジ12の厚み圧下隙であるロール隙Sf(図5参照)としては、仕上げ圧延前におけるフランジ12の断面内で厚みの最も厚い部分の厚みTf2未満にする必要があることが判明した。
次に、仕上げ圧延の際に、解消させたフランジ波が再発しない条件について、調査及び検討を行った。その結果、フランジ12の厚み圧下条件の影響が大きく、フランジ12の全断面を仕上げ圧延前におけるフランジ12の断面内で厚みの最も薄い部分(この部分の厚みをTf1とする)までを厚み圧下する条件で圧延すると、多くの場合にフランジ波が発生することが判明した。この結果から、ロール隙Sfの最小値はTf1よりも大きくする必要がある。
以上の条件をまとめると、最終的な厚み圧下を行う仕上げ圧延パスで、中間圧延までに発生しているフランジ波を消すとともに、この仕上げ圧延パスでフランジ波を再発させない条件としては、当該仕上げ圧延パスのフランジ12を圧下するロール隙Sfについて、仕上げ圧延前におけるフランジ12の断面内で厚みの最も薄い部分の厚みTf1と、仕上げ圧延前におけるフランジ12の断面内で厚みの最も厚い部分の厚みTf2とから、下記数式(1)が導きだされる。なお、本願でいう、仕上げ圧延前におけるフランジ12の断面内で厚みの最も薄い部分の厚みTf1と、仕上げ圧延前におけるフランジ12の断面内で厚みの最も厚い部分の厚みTf2とは、個別材の実測値ではなく、事前調査(実験データ)から製品ごとに導きだした理論上の厚みである。
なお、ロール隙Sfは、さらに、下記数式(2)を満足することが望ましい。
その理由は、ロール隙Sfがフランジ12の断面内で厚みの最も厚い部分の厚みTf2に近い厚めの隙では、その圧延前に発生していたフランジ波20の凹凸が特に大きい場合に、当該圧延パスの圧延で凹凸を十分に平坦化できない可能性がある。逆に、ロール隙Sfがフランジ12の断面内で厚みの最も薄い部分の厚みTf1に近い狭めの隙では、製品のフランジ厚やフランジ12の長さにもよるが、当該圧延パスでのフランジ12の厚み圧下による延伸が大きくなり、ウェブ11や腕部13の厚み圧下のバランスが悪いと、フランジ波20を再度発生させるおそれがあるためである。
なお、仕上げ圧延において、K1孔型とK2孔型との双方でフランジ12の厚み圧下を行う場合には、K1孔型とK2孔型との双方が上記数式(1)及び上記数式(2)の関係を満たす圧延とすることが望ましい。
仕上げ圧延でのウェブ11及び腕部13の厚み圧下条件としては、フランジ12に長手方向に引張の張力を付与してフランジ波の発生の抑制効果を固める観点から、ウェブ11及び腕部13の双方の圧下率を2[%]以上とすることが望ましい。さらに望ましくは、継手部14の厚み成形や爪曲げ成型に対応する延伸力を与え、良好な継手成型を行うために、4[%]以上の圧下率とすることが好ましい。逆に、フランジ12の圧下に対して、ウェブ11及び13腕部の圧下を相対的に大きくとり過ぎると、当該圧延で材料がロールの回転に追随して進行しない「スリップ」といわれる現象が起こり、製品表面にスリップ模様と呼ばれる外観不良が発生しやすくなる。そのため、ウェブ11及び腕部13の双方の圧下率の好適な上限は8[%]である。
(実施例)
本発明の実施例として、製品ウェブ厚が13.2[mm]となる25Hのハット形鋼矢板1について、図2に示した圧延ライン2で図3~図5に示したロール孔型を用いて圧延を行った。この25Hのハット形鋼矢板1については、事前の調査で、通常の条件で中間圧延までを行った場合、中間圧延後のフランジ厚み分布として、図7に示したとおり、厚みが最も薄い部分の厚みTf1が8.9[mm]、厚みが最も厚い部分の厚みTf2が9.5[mm]程度になり、中間圧延終了時にフランジ波が非常に発生し易いことがわかっている。
本発明の実施例として、製品ウェブ厚が13.2[mm]となる25Hのハット形鋼矢板1について、図2に示した圧延ライン2で図3~図5に示したロール孔型を用いて圧延を行った。この25Hのハット形鋼矢板1については、事前の調査で、通常の条件で中間圧延までを行った場合、中間圧延後のフランジ厚み分布として、図7に示したとおり、厚みが最も薄い部分の厚みTf1が8.9[mm]、厚みが最も厚い部分の厚みTf2が9.5[mm]程度になり、中間圧延終了時にフランジ波が非常に発生し易いことがわかっている。
ここでは、仕上げ圧延の最終厚み圧下パス(K2孔型)でのロール隙(フランジ圧下隙)Sfを8.8~9.6[mm]の範囲で変化させて圧延を行い、製品としてのフランジ波の発生の有無を調査した。また、本実施例においては、K2孔型におけるウェブ11の厚み圧下と腕部13の厚み圧下とが所定の範囲になるように、K3孔型でのウェブ11及び腕部13の厚みを条件ごとに変更している。この結果を表1に示す。
表1からわかるように、Sf=8.8[mm]とした比較例1(条件No.1)と、Sf=8.9[mm]とした比較例2(条件No.2)とでは、仕上げ圧延でも再度、フランジ波の高低差が0.5[mm]を超えてしまう結果となった。また、Sf=9.5[mm]とした比較例3(条件No.8)と、Sf=9.6[mm]とした比較例4(条件No.9)とでは、中間圧延で発生したフランジ波を高低差0.5[mm]以下に消すことができない結果となった。
これに対し、本発明の適用範囲となるSf=9.0~9.4とした適合例1~5(条件No.3~7)では、製品段階では問題となるフランジ波はなく、良好な形状の製品を得ることができた。このうち、適合例2(条件No.4)と適合例3(条件No.5)と適合例4(条件No.6)の3者は、K2孔型におけるフランジ12のロール隙(フランジ圧下隙)Sfは9.2[mm]と両者で等しいが、K2孔型でのウェブ11及び腕部13の圧下条件を変更した条件である。適合例3(条件No.5)はウェブ11及び腕部13の圧下率を2[%]以上としており、フランジ波の高低差が0.1[mm]と小さく良好であり、ウェブ11と腕部13との圧下率を4[%]以上と大きくした適合例4(条件No.6)はフランジ波が全くない(高低差が0[mm])の特に良好な形状の製品を得ることができた。
1 ハット形鋼矢板
2 圧延ライン
3 加熱炉
4 粗圧延機
5 中間圧延機
5A,5B 圧延機
6 仕上げ圧延機
11 ウェブ
12 フランジ
13 腕部
14 継手部
20 フランジ波
41,51A,61 上ロール
42,52A,62 下ロール
2 圧延ライン
3 加熱炉
4 粗圧延機
5 中間圧延機
5A,5B 圧延機
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11 ウェブ
12 フランジ
13 腕部
14 継手部
20 フランジ波
41,51A,61 上ロール
42,52A,62 下ロール
Claims (4)
- 圧延対象材に複数の孔型を用いて、粗圧延、中間圧延及び仕上げ圧延を施し、ウェブとフランジと腕部と継手部とを有するハット形鋼矢板を製造するハット形鋼矢板の製造方法であって、
1つのロール組に刻設された1以上の孔型を用いて、製品の厚み圧下を行う仕上げ圧延パスにおいて、
前記仕上げ圧延パスの前における前記フランジについて、前記フランジの断面内で厚みの最も薄い部分の厚みをTf1とし、前記フランジの断面内で厚みの最も厚い部分の厚みをTf2としたとき、前記仕上げ圧延パスの前記フランジを圧下するロール隙Sfについて、Tf1<Sf<Tf2を満足する条件で圧延を行うことを特徴とするハット形鋼矢板の製造方法。 - 前記仕上げ圧延パスにおいて、Tf1+(Tf2-Tf1)/4≦Sf≦Tf2-(Tf2-Tf1)/4を満足する条件で圧延を行うことを特徴とする請求項1に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
- 前記仕上げ圧延パスは、前記仕上げ圧延における全圧延パスであることを特徴とする請求項1または2に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
- 前記仕上げ圧延パスにおける前記ウェブ及び前記腕部の圧下率を2[%]以上とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハット形鋼矢板の製造方法。
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