JP2023098879A - ファン消音システム - Google Patents

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Abstract

【課題】ファンの風量を確保しつつ、ファンが発生する離散的な複数の周波数の、狭帯域の音を消音することができるファン消音システムを提供する。【解決手段】ファン、および、音響共鳴構造を有し、音響共鳴構造がファンが発生する音の近接場領域内に配置されている。【選択図】図1

Description

本発明は、ファン消音システムに関する。
ファンはその羽根枚数と回転数に応じた周波数に、非常に狭帯域で、かつ、強い音を発生することが知られており、騒音として問題になっている。このような騒音を低減するために、ファンが発生する空気流(風)の通路に消音器を配置することが提案されている。
例えば、特許文献1には、光源ランプユニット等の熱源と、熱源の排熱用の排気ファンとを備えた機器における消音装置であって、排気ファンの排気空気の導風部材を、排気ファンの空気流出側から機器外部にわたり密閉配置し、導風部材の通風路に面する周壁部には排気ファンより発生する音波により振動自在な弾性膜体を、排気空気の流れに少なくとも衝突しかつ排気方向の空気の流れを封鎖させない位置に配置し、弾性膜体の背後側には空気室を形成した消音装置が記載されている。この特許文献1に記載される消音装置は、ファンが発生する空気流(風)を弾性膜体に当てて弾性膜体を振動させることで音エネルギーを振動エネルギーに変えて消音するものである。
また、狭帯域な騒音を低減するために、共鳴型の消音器を用いることが提案されている。
例えば、特許文献2には、複数のブレードを有するインペラと、インペラの周囲に配置された複数の静翼を有するエアガイドと、インペラが固定された回転軸を駆動する電動機と、インペラに気流を流入させる吸気口を中央に有し側面に排気口を備えインペラとエアガイドを内包する状態で電動機に固定された略円筒形のファンケースと、排気口を有し電動機全体を内包する状態でファンケースと気密に固定された防音筒と、所定の幅と深さを有する凹部を円周上に有し電動機表面の所定場所に設けた略円筒形の消音手段と、消音手段の凹部の開口端面に設けた柔軟性を有する薄膜部とを備えた電動送風機が記載されている。この特許文献2には、凹部の深さに応じて決まる特定周波数の音が共鳴することで消音することが記載されている。
特開2001-142148号 特開2008-036065号
特許文献1のように、ファンが発生する空気流(風)を弾性膜体に当てて弾性膜体を振動させることで消音する構成の場合には、弾性膜体を強く振動させるために弾性膜体に直接、風がぶつかるように配置する必要があるため、ファンが発生する空気流の風路を一部塞ぐように配置する。そのため、ファンの大きな圧力損失をもたらし、風量が小さくなってしまうという問題があった。
また、特許文献1では弾性膜体に風圧を大きくかけるため、ファンの風量および風圧が変わると弾性膜体の特性が変化する。よって、弾性膜体の特性と背面空気層によって形成される共鳴効果を用いることはできない。よって、ファンが回転することで発生する特定周波数の音を狙って大きく消音する効果は得られないため、ファンに対する大きな消音効果を得ることは難しい。
ファンの騒音は、羽根枚数と回転数に応じた複数の周波数で離散的に生じることが知られている。特許文献2のような共鳴型消音器は、共鳴型消音器の共鳴周波数と一致する単一の周波数の音を消音するものであり、他の周波数帯域の音に対しては消音の効果は低い。そのため、離散的に生じる複数の周波数の音を消音することは難しいという問題があった。
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、ファンの風量を確保しつつ、ファンが発生する離散的な複数の周波数の、狭帯域の音を消音することができるファン消音システムを提供することを課題とする。
本発明は、以下の構成によって課題を解決する。
[1] ファン、および、音響共鳴構造を有し、
音響共鳴構造はファンが発生する音の近接場領域内に配置されているファン消音システム。
[2] 音響共鳴構造の共鳴周波数が、ファンの羽根の回転に起因する離散周波数音の少なくとも1つの周波数に一致する[1]に記載のファン消音システム。
[3] ファンの送風口に垂直な方向から見た際に、音響共鳴構造が送風口と重複する面積が、送風口の面積に対して50%以下である[1]または[2]に記載のファン消音システム。
[4] 音響共鳴構造は、ファンに接続される通風路の壁面の一部を構成している[1]~[3]のいずれかに記載のファン消音システム。
[5] 音響共鳴構造の振動体を備える面は、ファンの送風口に垂直な軸に平行に配置されている[1]~[4]のいずれかに記載のファン消音システム。
[6] 音響共鳴構造の、振動体を備える面側に音を透過する防風部材を有する[1]~[5]のいずれかに記載のファン消音システム。
[7] 音響共鳴構造は、ファンに接している[1]~[6]のいずれかに記載のファン消音システム。
[8] 音響共鳴構造は、防振部材を介してファンに接している[7]に記載のファン消音システム。
[9] 異なる共鳴周波数を有する複数の音響共鳴構造を有し、
共鳴周波数の高い音響共鳴構造が、共鳴周波数の低い音響共鳴構造よりもファンに近い位置に配置されている[1]~[8]のいずれかに記載のファン消音システム。
[10] ファンによる送風方向において、音響共鳴構造がファンの下流側のみに配置されている[1]~[9]のいずれかに記載のファン消音システム。
[11] ファンによる送風方向において、音響共鳴構造がファンの上流側および下流側に配置されている[1]~[9]のいずれかに記載のファン消音システム。
[12] 音響共鳴構造は、周縁部が固定され膜振動可能に支持されている膜と、膜の一方の面側に形成される背面空間とを有している、膜型共鳴構造である[1]~[11]のいずれかに記載のファン消音システム。
[13] 膜型共鳴構造は、背面空間と外部とを連通する貫通孔を有する[12]に記載のファン消音システム。
[14] ファンが軸流ファンである[1]~[13]のいずれかに記載のファン消音システム。
本発明によれば、ファンの風量を確保しつつ、ファンが発生する離散的な複数の周波数の、狭帯域の音を消音することができるファン消音システムを提供することができる。
本発明のファン消音システムの一例を模式的に示す斜視図である。 図1のファン消音システムをA方向から見た図である。 図2の断面図である。 本発明のファン消音システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のファン消音システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のファン消音システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のファン消音システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のファン消音システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のファン消音システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のファン消音システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のファン消音システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明のファン消音システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 比較例1の構成を模式的に示す図である。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 比較例2の構成を模式的に示す図である。 周波数と消音量との関係を表すグラフである。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 周波数と消音量との関係を表すグラフである。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 電流と風速との関係を表すグラフである。 実施例5の構成を模式的に示す図である。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。 比較例7の構成を模式的に示す図である。 実施例9の構成を模式的に示す図である。 周波数と測定音量との関係を表すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「直交」、「平行」および「垂直」とは、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、「平行」とは、厳密な直交に対して±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な直交に対しての誤差は、3°以下であることが好ましい。また、角度についても厳密な角度に対して±10°未満の範囲内であることを意味する。
本明細書において、「同じ」、「一致」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
[ファン消音システム]
本発明のファン消音システムは、
ファン、および、音響共鳴構造を有し、
音響共鳴構造は前記ファンが発生する音の近接場領域内に配置されているファン消音システムである。
ファンが発生する音の近接場領域とは、音波が近接場の状態である領域である。音波が近接場の状態とは、以下のようなものである。
音源から発生した音波はいずれ、波の波数ごとの減衰の違いや、空間の制約(ダクト壁、流路の曲がりなど)によって伝搬する方向と強度が決まる。しかしながら、音源から発生した音波は、音波発生直後では上記の減衰や制約の影響に支配されず、遠方まで伝搬できない高波数成分も含めて、広い波数範囲にわたって振幅を有する。この音波がある距離以上、伝播してから平面波的になり方向性が決定される。この音源から音波が発生する直後の状態を「近接場」の状態という。したがって、上記条件を満たす音源近傍の領域を近接場領域とする。
この領域は、波動理論としてはλ/4程度伝搬するうちに、遠方に伝搬できない波数成分は伝搬できなくなることが知られている。
よって、本発明において音源であるファンは、ファンの羽根部分から音が発生するため、ファンの羽根部分からλ/4未満の距離の領域が近接場領域である。なお、ファンが流路中に配置されている場合は、流路に沿ったファンからの距離がλ/4未満の領域が近接場領域である。
近接場の状態の音(以下、近接場音ともいう)は、音源から発せられる音の中で、伝搬音波の波数よりも高い波数であり遠くには伝搬できない音(音速c、周波数fとしたとき、波数k>2π×f/cとなる波数。)まで含めて、音源に空間的にまとわりつくように存在する。具体的には、音響伝搬が従う波動方程式では、k>2π×f/cとなる高い波数の音成分は波の振幅が距離に対して指数関数的に減衰するため、音源より遠くに伝搬することができないが、近接場領域においては、減衰の影響が小さいために、音源と混然一体となってこのような高い波数の音が音源周辺にのみ近接場音として局在している。
本発明のファン消音システムでは、音響共鳴構造を近接場領域内に配置することで、近接場領域内で近接場音に対して以下の二つの相互作用を発生させて消音効果が得られていると考えられる。
一つ目の相互作用のメカニズムは、以下のようなものである。
近接場音の高い波数の音波は、空間的な波のサイズ(波数の逆数)が小さいことを特徴とする。そのため、音源の近くに配置された音響共鳴構造に対して、空間的に局所的な相互作用をすることができる。具体的には、音響共鳴構造のごく一部だけに音圧が局所的にかかるなどである。このような、通常の遠方まで伝搬する波数の音波では困難である局所的な相互作用を音響共鳴構造に生じさせることによって、音響共鳴構造に非線形効果を生じさせやすい。一つ目の相互作用のメカニズムは、この非線形効果によって音響共鳴構造の狙いの消音周波数(共鳴周波数)以外の周波数の音に対しても消音効果が作用していると推測される。
二つ目の相互作用のメカニズムは、音響共鳴構造によって反射されて音源位置まで戻る音によって、音源からの音波の生成が抑制される効果であると推測できる。
ファンが回転する際に羽根が空気を切ることで、羽根周囲の空気に微小な流体渦が生成される。この渦が羽根のエッジ部等で変形することによって音が発生することが、ファンによる音(空力音)の発生メカニズムである。音響共鳴構造を音源の近傍に配置することで、音源から発生した音が音響共鳴構造によって反射され、その反射音が音源に伝播して音源から発生する音と干渉する。この干渉の結果、音源位置での音圧を小さくする。
この時の効果として、まず音源位置での音圧が下がることによって、音源からの音の放射量が低減する。これによって、放射音量が大きく下がる。
さらに、音源から音が出るプロセスだけではなく、音源自体の生成、今回のファンにおいては微小渦自体の生成が抑制できている可能性が高い。近接場領域に配置された音響共鳴構造では、音源から発せられる遠方まで伝搬する音波だけでなく、高い波数を有して音源近傍に留まる近接場音とも相互作用する。この近接場音について音響共鳴構造と強く相互作することで、音響渦から発する音の波数モードが、遠方に伝搬しない音である近接場音に偏り、また、その相互作用による反射で音源位置の音圧が近接場においても小さくなり、音源となる微小渦の生成量が極めて強く抑えられる。
一方で遠方場に配置された音響共鳴構造では、近接場波数では音源位置音圧が下がっていないため、音源となる微小渦の生成自体はあまり抑えることができない。よって、音波の波数を低波数から近接場音の波数までカバーできる近接場領域に音響共鳴構造が配置された場合に、音源となる微小渦の生成量が極めて小さくなる。
音源となる微小渦の生成量が下がることで、音響共鳴構造の周波数だけではなく、他の周波数の空力音にわたって低減させることができる。特に、ファンのピーク音は各羽根からの微小渦から出る音の位相が揃っていることで強め合いの干渉効果を生じて強い音を発している。このとき、音源の個数の二乗に比例したエネルギーとなるため、音源である微小渦の数が少なくなった場合に、その二乗にしたがって発する音のエネルギーが小さくなる。よって、微小渦の生成量が少なくなった場合の音の低減効果の影響を大きく受けやすい。よって、複数のピーク音に対して選択的な消音効果が現れる。本発明での複数の離散周波数音抑制効果は、この二つ目のメカニズムによる音源数の低減とそれに伴うピーク音抑制効果を主要な寄与として生じていると考えられる。
なお、ファンピーク音以外の広帯域騒音(乱流騒音)と呼ばれる騒音は、羽根のそれぞれの音源の位相がばらばらで強め合いと打ち消しあいが複雑に起こった後に生じているため、音源数が低減しても騒音量があまり低減しないと考えられ、ピーク音のみが選択的に抑制される結果となる。
このような効果は、光学分野では例えばJR Lakowicz et. al., "Radiative Decay Engineering: 2. Effects of Silver Island Films on Fluorescence Intensity, Lifetimes, and Resonance Energy Transfer" Analytical Biochemistry, 301, 261-277 (2002).に、金属粒子と蛍光粒子の距離と、発光強度やその光源の寿命、生成率について示されている。同様のことが音波や音源についても生じていると考えられる。
音響共鳴構造が近接場領域にあるときには、音源との距離が最大でもλ/4未満であるため、伝搬による音波の位相変化は小さい。一方、音響共鳴構造によって反射されることにより音波の位相は反転(πの位相変化)する。そのため、音源から発生している音と、音響共鳴構造によって反射されて音源に戻った音は、その位相ずれがほぼ位相反転状態となっているため逆位相で干渉する。よって、二つの音同士が音源位置で打ち消し合って、音源位置での消音効果を発生する。
以上のとおり、本発明のファン消音システムは、音響共鳴構造を近接場領域に配置することで、近接場音特有の空間的に局在した音響によって、局所的な相互作用による非線形効果が現れるメカニズムと、音源位置における音圧を小さくすることで、音源である流体渦の生成を抑制するメカニズムとによって、音響共鳴構造の共鳴周波数によらず、広い周波数帯域で消音効果を得ることができる。そのため、ファンが発生する離散的な複数の周波数の音(以下、離散周波数音ともいう)に対して消音効果が得られる。
また、上記2つの相互作用のメカニズムは、近接場領域に音響共鳴構造を配置したことによる音源(音波)と音響共鳴構造との相互作用による効果である。よって、風の流れは無関係であるため、音響共鳴構造を、音響共鳴構造に直接、風がぶつかるように配置する必要がない。すなわち、音響共鳴構造を、ファンが発生する空気流の風路を一部塞ぐように配置する必要がない。そのため、ファンの風量を確保しつつ、ファンが発生する音を消音することができる。
ここで、前述のとおり、音源からの距離がλ/4未満の領域が近接場領域である。したがって、音波の波長(周波数)によって近接場領域の大きさは異なる。
本発明においては音響共鳴構造の共鳴周波数fr(複数の共鳴がある場合は、その最低次数)とした場合に、その波長をλとして、ファン音源部からλ/4未満の領域を近接場領域とする。
なお、消音効果をより高くできる点で、音響共鳴構造は少なくとも一部が、ファン(音源)からλ/6の距離の領域に配置されるのが好ましく、λ/8の距離の領域に配置されるのがより好ましい。音源と音響共鳴構造との距離が近いほど、上述した二つ目のメカニズムにおいて、音響共鳴構造で反射されて音源に戻る過程での位相変化が小さくなるため、反射音と音源からの音の干渉による消音効果がより高くなる。
本発明において、音響共鳴構造は、その共鳴周波数において音波と共鳴して消音効果を生じるものである。共鳴現象が生じる構造であれば様々に選択することができるが、例えば、音響共鳴構造は、膜型共鳴構造、ヘルムホルツ共鳴構造、および、気柱共鳴構造を代表的な構造として挙げることができる。各音響共鳴構造については後に詳述する。
本発明のファン消音システムの構成について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明のファン消音システムの好適な実施態様の一例を示す模式的な斜視図である。図2は、図1をA方向から見た正面図である。図3は、図2の断面図である。なお、図2において、音響共鳴構造は断面で示している。なお、図2および図3において、ファンの回転子等の図示は省略し、外形および送風口のみを示している。
図1~図3に示すファン消音システム10は、軸流ファン12a、および、膜型共鳴構造30aを有する。
軸流ファン12aは、基本的に公知の軸流ファンであり、複数の羽根を有する回転子を回転させて気体に運動エネルギーを与えて気体を軸方向に送風する。
具体的には、軸流ファン12aは、ケーシング16、ケーシング16に取り付けられたモーター(図示せず)、ならびに、モーターに取り付けられ回転される軸部20および軸部20の径方向外側に突出して形成された羽根22を備える回転子18を有する。
なお、以下の説明では、軸部20(回転子18)の回転軸を単に「回転軸」といい、軸部20(回転子18)の径方向を単に「径方向」という。
モーターは一般的な電動モーターであり、回転子18を回転させるものである。
回転子18の軸部20は、略円柱状で一方の底面側をモーターの回転軸に取り付けられており、モーターによって回転される。
羽根22は、軸部20の周面に、周面から径方向の外側に突出するように形成されている。また、回転子18は、複数の羽根22を有しており、複数の羽根22は、軸部20の周面の周方向に配列されている。図1に示す例では、回転子18は、4枚の羽根22を有する構成としたがこれに限定はされず、複数枚の羽根22を有していればよい。また、ケーシング16のフレームも図面では4本になっているが、これにも限定されない。
また、羽根22の形状は、従来公知の軸流ファンで用いられている各種の形状とすることができる。
軸流ファン12aは、羽根22を有する回転子18がモーターによって回転することで、回転軸方向に気流(風)を発生させる。気流の流れ方向には限定はなく、回転軸方向においてモーター側からモーターとは反対方向に流れるものであってもよく、モーターとは反対側からモーター側に流れるものであってもよい。
ケーシング16は、モーターが固定され、また、回転可能な回転子18(羽根22)の径方向の周囲を囲むものである。
回転軸方向におけるケーシング16の厚みは、回転子18を外部から保護できように、羽根22および軸部20の厚みよりも厚い。
ケーシング16は、回転軸方向に開口する送風口16aを有しており、送風口16a内に回転子18が配置されている。羽根22を有する回転子18が回転すると、送風口16aの一方の開口面側から吸気し、他方の開口面側から送気する。すなわち、回転子18が回転することで発生する気流(風)を回転軸方向に送気する。
ケーシング16の厚みは、回転子18を外部から保護し、回転子18の回転によって発生する空気の流れのうち、径方向への空気の流れを抑制して回転軸方向への風量を増やすことができればよく、羽根22および/または軸部20の厚みに対して、1.01倍~3.00倍程度の厚みであればよい。
軸流ファン12aは、さらに、公知の軸流ファンが有する各種の構成を有していてもよい。
例えば、図1に示す例では、軸流ファン12aは、軸流ファン12aを各種機器に固定する際にねじなどの締結部材を挿入する孔を有する。
膜型共鳴構造30aは、軸流ファン12aが発生する離散周波数音を消音するものである。
膜型共鳴構造30aは、枠体32と、膜34とを有し、枠体32および膜34に囲まれる背面空間35を形成した構成を有しており、枠体32に振動可能に支持された膜34が膜振動することで共鳴する。
図1~図3に示す例では、枠体32は、直方体形状で一面に底面を有する開口部が形成された形状である。すなわち、枠体32は一面が開放された有底の四角筒形状である。
膜34は膜状の部材であり、枠体32の、開口部が形成された開口面を覆って周縁部を枠体32に固定されて振動可能に支持されている。
また、膜34の背面側(枠体32側)には、枠体32と膜34とに囲まれた背面空間35が形成されている。図1~図3に示す例では、背面空間は、閉じられた閉空間である。
図1~図3に示す例では、膜型共鳴構造30aは、軸流ファン12aの送風方向の下流側に配置されている。また、膜型共鳴構造30aは、軸流ファン12aによる送風(送風口16a)を塞がない位置に、具体的には、軸流ファン12aによる送風される風の風路となる領域の周囲に配置されている。また、膜型共鳴構造30aは、膜34が軸流ファン12aの回転軸方向(図3中X方向)と平行となり、かつ、膜34が回転軸側を向いて配置されている。
ここで、従来、膜型共鳴構造等の音響共鳴構造を消音に用いる場合には、音響共鳴構造の共鳴周波数を消音対象の音の周波数に合わせて共鳴現象を利用することで、この周波数の音を消音する。そのため、他の周波数帯域の音に対しては消音の効果は低く、複数の離散周波数音を消音することは難しいという問題があった。
これに対して、本発明のファン消音システムでは、膜型共鳴構造30aをファンが発生する音の近接場領域内に配置することで、上述した2つの相互作用のメカニズムを発生させて、軸流ファン12aが発生した複数の離散周波数音を消音することができる。
このとき、膜34の振動可能部の少なくとも一部が近接場領域内に存在することが必要であり、より望ましくは膜34の振動可能部の重心位置が近接場領域内に存在することが必要となる。
ここで、本発明のファン消音システムにおいて、膜型共鳴構造30a(音響共鳴構造)の共鳴周波数には特に制限はない。
また、音響共鳴構造の元々の共鳴による消音効果を効果的に活用するため、音響共鳴構造の共鳴周波数は可聴域内(20-20000Hz)の中にあることが望ましく、100-16000Hzの範囲にあることがより望ましい。
膜型共鳴構造30a(音響共鳴構造)の共鳴周波数はファンの羽根の回転に起因する離散周波数音の少なくとも1つの周波数に一致するのが好ましい。これにより、離散周波数音のうち、音響共鳴構造の共鳴周波数に一致する周波数における消音効果をより高くすることができる。
例えば、音響共鳴構造の共鳴周波数は、離散周波数音のうち、音圧の大きさ、より具体的にはA特性音圧レベルが最も大きい離散周波数音に一致するのが好ましい。これによって、ファンの騒音に対する寄与度の大きな離散周波数音を効果的に消音することができる。
また、音響共鳴構造の共鳴周波数は、複数の離散周波数音の中で最も低周波側の音に一致することも好ましい。一般の消音材では低周波ほど消音が難しいため、共鳴効果で低周波音を選択的に消音したうえで、他の消音材料と組み合わせることができる。
なお、本発明において、音響共鳴構造の共鳴周波数とファンの離散周波数音のうちの1つの周波数とが一致するとは、音響共鳴構造の共鳴周波数が、ファンの離散周波数音のうちの1つの周波数の±10%以内の範囲であるものとする。
なお、軸流ファンの場合には、回転数をz(rps)とし、羽枚数をNとすると、m×N×z(Hz)(mは1以上の整数)の周波数に強く音(離散周波数音)が発生する。
また、膜型共鳴構造の共鳴周波数は、膜34の大きさ(振動面の大きさ、すなわち、枠体32の開口部の大きさ)、厚み、硬さ等によって決まる。従って、膜34の大きさ、厚み、硬さ等を調整することで、膜型共鳴構造の共鳴周波数を適宜設定することができる。
また、上述のとおり、膜型共鳴構造30aは、膜34の背面側に背面空間35を有する。背面空間35は閉じられているため、膜振動と背面空間との相互作用によって吸音が生じる。
具体的には、膜振動には、膜の条件(厚み、硬さ、大きさ、固定方法等)によって決定される基本振動モードと高次振動モードの周波数帯があり、どのモードによる周波数が強く励起されて吸音に寄与するかが背面空間の厚み等によって決定される。背面空間の厚みが薄いと、定性的には背面空間が固くなる効果などが生じるため、膜振動の高次振動モードを励起しやすくなる。
また、図1~図3に示す例では、膜型共鳴構造30aの背面空間35は、枠体32と膜34とに完全に囲まれた閉空間としたが、これに限定はされず、空気の流れが阻害されるように空間がほぼ仕切られていればよく、完全な閉空間の他に、膜34、あるいは、枠体32に一部開口を有していても良い。このような一部に開口を有する形態は、温度変化により背面空間内の気体が膨張あるいは収縮して膜34に張力が付加されて膜34の硬さが変化することで吸音特性が変化することを防ぐことができる点で好ましい。
膜34に貫通孔を形成することで、空気伝搬音による伝搬が生じる。これによって膜34の音響インピーダンスが変化する。また、貫通孔によって膜34の質量が減少する。これらによって、膜型共鳴構造30aの共鳴周波数をコントロールすることができる。
貫通孔が形成される位置については特に限定はない。
膜34の厚みは、100μm未満が好ましく、70μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。なお、膜34の厚みが一様でない場合には、平均値が上記範囲であればよい。
一方で、膜の厚みが薄すぎると取り扱いが難しくなる。膜厚は1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。
膜34のヤング率は、1000Pa~1000GPaであることが好ましく、10000Pa~500GPaであることがより好ましく、1MPa~300GPaであることが最も好ましい。
膜34の密度は、10kg/m3~30000kg/m3であることが好ましく、100kg/m3~20000kg/m3であることがより好ましく、500kg/m3~10000kg/m3であることが最も好ましい。
また、背面空間35の厚み(膜34の表面に垂直な方向の厚み)は、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましい。
なお、背面空間35の厚みが一様でない場合には、平均値が上記範囲であればよい。
また、図1~図3に示す例では、膜34の表面に垂直な方向から見た膜型共鳴構造30aの形状、すなわち、膜34の振動領域の形状は四角形状としたが、これに限定はされず、円形状であってもよく、あるいは、三角形状等の多角形状、楕円形状等であってもよい。
本発明のファン消音システムでは、上述のとおり、近接場領域に音響共鳴構造を配置したことによる音源(音波)と音響共鳴構造との相互作用による効果であるため、音響共鳴構造を、音響共鳴構造に直接、風がぶつかるように配置しなくても消音の効果が得られる。ファンの風量を確保する観点から、音響共鳴構造は、ファンが発生する空気流の風路を塞がないように配置されることが好ましい。
具体的には、ファンの送風口に垂直な方向から見た際に、音響共鳴構造と送風口とが重複する面積が、送風口の面積に対して50%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、図2に示すように、0%、すなわち、重複しないことがさらに好ましい。
また、音響共鳴構造と送風口が重複する場合には、スロープ状の構造を取り付けるなど、風をスムーズに流しつつ風切り音の発生を抑制する構造があることが望ましい。
また、音響共鳴構造の振動体を備える面は、ファンの送風口に垂直な軸に平行に配置されていることが好ましい。
図2に示す例では、膜34が膜型共鳴構造30aの振動体であり、膜型共鳴構造30aの膜34が配置された面が軸流ファン12aの送風口16aに垂直な軸に平行に配置されている。
なお、音響共鳴構造がヘルムホルツ共鳴構造あるいは気柱共鳴構造の場合には、共鳴構造の貫通孔内の空気が振動体であり、貫通孔が形成された面が振動体を備える面である。
ファンの風は非定常流体現象であって、非定常の風が膜型共鳴構造の膜にぶつかり膜を揺らすと、膜には風による振動が生じる。膜に生じた振動は広い周波数スペクトルを含むが、その中で膜型共鳴構造の共鳴として設計した周波数においては、膜面に共鳴振動現象が生じる。この共鳴振動において、膜に生じた振動は長く残りやすく、ファンの風が流れ続ける中ではその共鳴振動が増幅しやすい。これによって、その共鳴振動をしている膜からスピーカーのように音が発信されてしまう場合がある。特にファンから強い風量が生じている条件において、ファンからの風が膜型共鳴構造の膜面にぶつかるように共鳴構造を配置した場合には、膜型共鳴構造の共鳴周波数付近では音が増幅してしまうために、消音効果が得られない場合がある。
したがって、音響共鳴構造の振動体を備える面が、ファンの送風口に垂直な軸に平行に配置された構成とすることで、ファンが発生する空気流が音響共鳴構造の振動体を備える面にぶつかって膜を揺らすことを抑制して、風によって消音効果が低減することを抑制できる。
ここで、図1に示す例では、ファン消音システムは、1つの膜型共鳴構造30a(音響共鳴構造)を有する構成としたが、これに限定はされず、2以上の音響共鳴構造を有する構成としてもよい。
例えば、図4に示す例のように、2つの膜型共鳴構造30aを、軸流ファン12aの送風方向の下流側の、送風(送風口16a)を塞がない位置に配置する構成としてもよい。
図4において2つの膜型共鳴構造30aは、膜34が軸流ファン12aの回転軸方向と平行となり、かつ、膜34が回転軸側を向き、かつ、2つの膜型共鳴構造30aの膜34側の面が対面するように配置されている。
また、図4に示す例では、2つの膜型共鳴構造30aは対面するように配置される構成としたが、これに限定はされず、図5に示す例の、図5中右側の2つの膜型共鳴構造30a、上側の2つの膜型共鳴構造30a、および、左側の2つの膜型共鳴構造30aのそれぞれのように、膜型共鳴構造30aが膜面を面一にして同じ向きに配置されるようにしてもよい。なお、図5は、ファン消音システムを軸流ファン12aの回転軸方向から見た図であり、軸流ファン12aの図示は省略している。
また、ファンが通風路に接続されている場合には、図4および図5に示す例のように、膜型共鳴構造30a(音響共鳴構造)は、ファンに接続される通風路の壁面(管路26)の一部を構成するものとしてもよい。これにより、膜型共鳴構造30aは、送風(送風口16a)を塞がない位置に配置された構成とすることができる。
また、図1等に示す例では、膜型共鳴構造30a(音響共鳴構造)は、軸流ファン12a(ファン)に直接接する位置に配置される構成としたが、ファンが発生する音の近接場領域内に配置されていればファンとは離間した位置に配置されていてもよい。
例えば、図6に示す例では、膜型共鳴構造30bは軸流ファン12aから離間した位置に配置されており、膜型共鳴構造30bと軸流ファン12aとの間には、管路26が配置されている。すなわち、図6に示す例では、軸流ファン12aの下流側に、軸流ファン12aが発生する風の通路を形成する管路26が接続されており、管路26の出口側の端部に膜型共鳴構造30bが配置されている。
音響共鳴構造をファンが発生する音の近接場領域内に配置する観点から、音響共鳴構造はファンに接して、またはファンケーシングの外周に沿って配置されるのが好ましい。音響共鳴構造が膜型共鳴構造の場合には膜型共鳴構造の枠体がファンのケーシングに接しているのが好ましい。音響共鳴構造とファンとは直接ネジ等で固定される構成でもよいし、ワッシャーを介して固定される構成でもよいし、接着剤または粘着剤を介して固定される構成でもよい。
あるいは、音響共鳴構造は防振部材を介してファンに接して配置されるのが好ましい。
図7に示す例では、膜型共鳴構造30aの枠体32の側面が、軸流ファン12aに防振部材36を介して接している。膜型共鳴構造30aが、防振部材36を介して軸流ファン12aに接している構成とすることで、軸流ファン12aの振動が膜型共鳴構造30aに伝達するのを抑制して、軸流ファン12aの振動によって膜型共鳴構造30aの膜が振動して音を発生すること、および、軸流ファン12aと膜型共鳴構造30aが一体となった共振をすることを防止できる。
防振部材36としては、ゴム、スポンジ、発泡体等からなる、一般的に防振部材として用いられている部材を用いることができる。また、防振部材が吸音材、例えば多孔質吸音材を兼ねることで、高周波における広帯域吸音効果と、共鳴構造への振動の伝達抑制を共に持たせることができる。具体的には、イノアック社製のカームフレックスF2などの発泡系吸音体を用いることができる。
また、ファン消音システムが、複数の音響共鳴構造を有する場合には、異なる共鳴周波数を有する音響共鳴構造を有するのが好ましい。ファン消音システムが、共鳴周波数が異なる音響共鳴構造を有することで、複数の離散周波数音に対してより高い消音効果を得られる。
例えば、図8に示す例では、ファン消音システムは、膜型共鳴構造30aと膜型共鳴構造30bとを有する。膜型共鳴構造30aの共鳴周波数と膜型共鳴構造30bの共鳴周波数とは異なっている。
ここで、ファン消音システムが、共鳴周波数が異なる音響共鳴構造を有する場合には、共鳴周波数の高い音響共鳴構造が、共鳴周波数の低い音響共鳴構造よりもファンに近い位置に配置されていることが好ましい。
図8に示す例では、軸流ファン12aに近い側に配置される膜型共鳴構造30aの共鳴周波数は、軸流ファン12aから遠い側に配置される膜型共鳴構造30bの共鳴周波数よりも高い。これにより、複数の離散周波数音を大きく消音することができる。
また、図1等に示す例では、ファンによる送風方向において、音響共鳴構造はファンの下流側のみに配置されている構成としたがこれに限定はされず、音響共鳴構造がファンの上流側に配置される構成としてもよいし、図9に示す例のように、音響共鳴構造がファンの上流側および下流側に配置される構成としてもよい。サーバーファンを含む大半の機器では、人が聴く騒音を小さくするために、ファンと機器ケースの間のスペースに音響共鳴構造が配置できることが望ましい。
より高い消音効果を得られる観点から音響共鳴構造は少なくともファンの下流側に配置されるのが好ましく、ファンの上流側および下流側に配置されるのがより好ましい。
音響共鳴構造をファンの上流側および下流側に配置する構成とする場合には、上流側の音響共鳴構造の共鳴周波数と下流側の音響共鳴構造の共鳴周波数とは同じでも異なっていてもよい。
また、音響共鳴構造の、振動体を備える面側に音を透過する防風部材を有する構成としてもよい。
具体的には、図10に示す例では、ファン消音システムは、音響共鳴構造として膜型共鳴構造30aを有し、膜型共鳴構造30aの振動体である膜34の表面上に膜34を覆って配置される防風部材48を有する。
防風部材48は、音は通し、風の侵入を抑制する部材である。膜34の表面に防風部材48を配置することにより、ファンが発生する空気流が膜型共鳴構造の振動体である膜に風圧をかけて膜を揺らすことを抑制して、風によって消音効果が低減することを抑制できる。
防風部材48としては、スポンジ等の発泡体、特に連続気泡発泡体、布、不織布等の繊維体などの多孔質構造を用いることができる。また、ヤング率が極端に小さいシリコーンゴム膜などのゴム材料膜、ラップフィルムのような厚み10μm程度の薄いプラスチック膜等で、これらの膜材料はピンと張らずに弛めて固定されることを特徴とする膜を用いることができる。これらは、膜型共鳴構造の膜34とは厚み、硬さおよび固定のされ方が極端に異なるために、可聴域に強い共鳴を持たずに音が通過する。
また、図1~図3に示す例では、ファン消音システムは、膜型共鳴構造30aのみを有する構成としたが、これに限定はされず、ファン消音システムはさらに多孔質吸音材を有する構成としてもよい。
例えば、膜型共鳴構造30aの枠体32と膜34とに囲まれた空間内、すなわち、背面空間35内に多孔質吸音材を有する構成としてもよい。あるいは、膜型共鳴構造30aの膜34の表面上に多孔質吸音材を有する構成としてもよい。
ファン消音システムが多孔質吸音材を有する構成とすることで、共鳴器が選択的に消音する卓越音以外の周波数の音を広帯域に消音することができる。また、多孔質吸音材を防風部材として用いてもよい。
多孔質吸音材としては特に限定はなく、公知の多孔質吸音材を適宜利用することが可能である。例えば、発泡ウレタン、軟質ウレタンフォーム、木材、セラミックス粒子焼結材、フェノールフォーム等の発泡材料及び微小な空気を含む材料;グラスウール、ロックウール、マイクロファイバー(3M社製シンサレートなど)、フロアマット、絨毯、メルトブローン不織布、金属不織布、ポリエステル不織布、金属ウール、フェルト、インシュレーションボード並びにガラス不織布等のファイバー及び不織布類材料、木毛セメント板、シリカナノファイバーなどのナノファイバー系材料、石膏ボードなど、種々の公知の多孔質吸音材が利用可能である。
また、多孔質吸音材の流れ抵抗には特に限定はないが、1000~100000(Pa・s/m2)が好ましく、3000~80000(Pa・s/m2)がより好ましく、5000~50000(Pa・s/m2)がさらに好ましい。
多孔質吸音材の流れ抵抗は、1cm厚の多孔質吸音材の垂直入射吸音率を測定し、Mikiモデル(J. Acoust. Soc. Jpn., 11(1) pp.19-24 (1990))でフィッティングすることで評価することができる。または「ISO 9053」に従って評価してもよい。
また、異なる流れ抵抗の多孔質吸音材が複数積層されていてもよい。
ここで、図1~図3に示す例では、ファン消音システムは、音響共鳴構造として膜型共鳴構造30aを有する構成としたが、これに限定はされない。ファン消音システムは、音響共鳴構造としてヘルムホルツ共鳴構造および/または気柱共鳴構造を有していてもよい。
図11に、ヘルムホルツ共鳴構造40を有する構成のファン消音システムの一例の模式的断面図を示す。図11に示すファン消音システムは、音響共鳴構造として膜型共鳴構造30aに代えてヘルムホルツ共鳴構造40を有する以外は図4に示すファン消音システムと同様の構成を有する。
図11に示す例では、音響共鳴構造は、ヘルムホルツ共鳴構造40である。ヘルムホルツ共鳴構造40は、角柱形状で一面に底面を有する開口部が形成された形状の枠体42と、枠体32の開口部が形成された開口面を覆って周縁部を枠体32に固定される、貫通孔46を有する板状の蓋部44とを有する。ヘルムホルツ共鳴構造40は、枠体42と蓋部44とに囲まれた内部空間43にある空気がバネとしての役割を果たし、蓋部44に形成された貫通孔46内の空気が質量(マス)としての役割を果たし、マスバネの共鳴をし、貫通孔46の壁近傍部での熱粘性摩擦により吸音する構造である。
図11に示す例では、貫通孔46を有する蓋部44が軸流ファン12aの回転軸方向と平行となり、かつ、蓋部44が回転軸側を向いて配置されている。
従来、ヘルムホルツ共鳴構造を消音に用いる場合には、ヘルムホルツ共鳴構造の共鳴周波数を消音したい音の周波数に合わせることで、その周波数の音を消音するものであった。そのため、共鳴周波数以外の周波数帯域の音に対しては消音の効果は低く、ファンが発生する複数の離散周波数音を消音することは難しいという問題があった。
これに対して、本発明のファン消音システムでは、ヘルムホルツ共鳴構造40をファンが発生する音の近接場領域内に配置することで、上述した2つの相互作用のメカニズムを発生させて、ファンが発生した複数の離散周波数音を消音することができる。
音響共鳴構造としてヘルムホルツ共鳴構造40を用いる場合にも、ヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数が、軸流ファン12aが発生する離散周波数音のいずれか1つの周波数と一致することが好ましい。
ヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数は、枠体42および蓋部44に囲まれる内部空間の容積および貫通孔46の面積、長さ等によって決まる。従って、ヘルムホルツ共鳴構造40の枠体42および蓋部44に囲まれる内部空間の容積および貫通孔46の面積、長さ等を調整することで、共鳴周波数を適宜設定することができる。
ここで、図11に示す例では、蓋部44に貫通孔46が形成された構成としたが、これに限定はされず、枠体42に貫通孔46が形成されていてもよい。ただし、この時貫通穴の出入り口は軸流ファン12aが発生する離散周波数音が伝搬する方向、図11ではファンの流路方向を向いている必要がある。
また、図11に示す例では、ヘルムホルツ共鳴構造40は枠体42および蓋部44が別体となる構成としたが枠体42および蓋部44が一体的に形成されていてもよい。
ヘルムホルツ共鳴構造40においては、貫通孔46内の空気が振動体であり、貫通孔46を有する蓋部44の表面が振動体を備える面である。したがって、貫通孔46を有する蓋部44の表面が送風口に垂直な軸に平行に配置されていることが好ましい。また、蓋部44の表面に防風部材を配置してもよい。
また、蓋部44の表面に垂直な方向から見たヘルムホルツ共鳴構造40の形状は四角形状であってもよく、あるいは、三角形状等の多角形状、円形状、楕円形状等であってもよい。
図11に示す例では、ファン消音システムがヘルムホルツ共鳴構造40を2つ有する構成としたが、これに限定はされず、1つのヘルムホルツ共鳴構造を有する構成としてもよく、3以上のヘルムホルツ共鳴構造を有する構成としてもよい。複数のヘルムホルツ共鳴構造を有する構成の場合には、各ヘルムホルツ共鳴構造の枠体が一体的に形成されていてもよいし、さらに、内部空間を共通にしてもよい。
また、複数のヘルムホルツ共鳴構造を有する構成の場合には、共鳴周波数の異なるヘルムホルツ共鳴構造を有する構成としてもよい。
また、本発明において、消音器が有する共鳴器は気柱共鳴構造であってもよい。
気柱共鳴構造は、開口を有する共鳴管内に定在波が生じることで共鳴が起こる。
従来、気柱共鳴構造を消音に用いる場合には、気柱共鳴構造の共鳴周波数を消音したい音の周波数に合わせることで、その周波数の音を消音するものであった。そのため、共鳴周波数以外の周波数帯域の音に対しては消音の効果は低く、ファンが発生する複数の離散周波数音を消音することは難しいという問題があった。
これに対して、本発明のファン消音システムでは、気柱共鳴構造をファンが発生する音の近接場領域内に配置することで、上述した2つの相互作用のメカニズムを発生させて、ファンが発生した複数の離散周波数音を消音することができる。
音響共鳴構造として気柱共鳴構造を用いる場合にも、気柱共鳴の共鳴周波数が、ファンが発生する離散周波数音のいずれか1つの周波数と一致することが好ましい。
気柱共鳴の共鳴周波数は、共鳴管の長さ等によって決まる。従って、共鳴管の深さ、開口の大きさ等を調整することで、共鳴する音の周波数を適宜設定することができる。
なお、音響共鳴構造を、内部空間と、内部空間と外部とを連通する貫通孔(開口部)を有する構成とした場合に、気柱共鳴が生じる共鳴構造となるか、ヘルムホルツ共鳴が生じる共鳴構造となるかは、貫通孔の大きさ、位置、内部空間の大きさ等によって決まる。従って、これらを適宜調整することで、気柱共鳴とヘルムホルツ共鳴のいずれの共鳴構造とするかを選択できる。
気柱共鳴構造の場合は、開口部が狭いと音波が開口部で反射して内部空間内に音波が侵入し難くなるため、開口部がある程度広いことが好ましい。具体的には、開口部が長方形状の場合には、短辺の長さが1mm以上であるのが好ましく、3mm以上であるのがより好ましく、5mm以上であるのがさらに好ましい。開口部が円形状の場合には、直径が上記範囲であるのが好ましい。
一方、ヘルムホルツ共鳴の場合は、貫通孔において熱粘性摩擦を生じる必要があるため、ある程度狭いことが好ましい。具体的には、貫通孔が長方形状の場合には、短辺の長さが0.5mm以上20mmが好ましく、1mm以上15mm以下がより好ましく、2mm以上10mm以下がさらに好ましい。貫通孔が円形状の場合には、直径が上記範囲であるのが好ましい。
なお、本発明のファン消音システムは、異なる種類の音響共鳴構造を有する構成としてもよい。例えば、ヘルムホルツ共鳴構造と膜型共鳴構造とを有する構成であってもよい。
ここで、小型化薄型化等の観点から音響共鳴構造として膜型共鳴構造を用いるのが好ましい。
膜型共鳴構造、ヘルムホルツ共鳴構造および気柱共鳴構造の枠体および蓋部の材料(以下、まとめて「枠材料」という)としては、金属材料、樹脂材料、強化プラスチック材料、および、カーボンファイバ等を挙げることができる。金属材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、タングステン、鉄、スチール、クロム、クロムモリブデン、ニクロムモリブデン、銅および、これらの合金等の金属材料を挙げることができる。また、樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ABS樹脂(アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)共重合合成樹脂)、ポリプロピレン、および、トリアセチルセルロース等の樹脂材料を挙げることができる。また、強化プラスチック材料としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、および、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)を挙げることができる。また、天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、シリコーンゴム等ならびにこれらの架橋構造体を含むゴム類を挙げることができる。
また、枠材料として各種ハニカムコア材料を用いることもできる。ハニカムコア材料は軽量で高剛性材料として用いられているため、既製品の入手が容易である。アルミハニカムコア、FRPハニカムコア、ペーパーハニカムコア(新日本フエザーコア株式会社製、昭和飛行機工業株式会社製など)、熱可塑性樹脂(PP,PET,PE,PCなど)ハニカムコア(岐阜プラスチック工業株式会社製TECCELLなど)など様々な素材で形成されたハニカムコア材料を枠体として使用することが可能である。
また、枠材料として、空気を含む構造体、すなわち、発泡材料、中空材料、多孔質材料等を用いることもできる。多数の共鳴器を用いる場合に各セル間で通気しないためにはたとえば独立気泡の発泡材料などを用いて枠体を形成することができる。例えば、独立気泡ポリウレタン、独立気泡ポリスチレン、独立気泡ポリプロピレン、独立気泡ポリエチレン、独立気泡ゴムスポンジなど様々な素材を選ぶことができる。独立気泡体を用いることで、連続気泡体と比較すると音、水、気体等を通さず、また構造強度が大きいため、枠材料として用いるには適している。また、上述した多孔質吸音体が十分な支持性を有する場合は、枠体を多孔質吸音体のみで形成しても良く、多孔質吸音体と枠体の材料として挙げたものを、例えば混合、混錬等により組み合わせて用いても良い。このように、内部に空気を含む材料系を用いることでデバイスを軽量化することができる。また、断熱性を付与することができる。
ここで、枠材料は、高温となる位置に配置可能な点から、難燃材料より耐熱性の高い材料からなることが好ましい。耐熱性は、例えば、建築基準法施行令の第百八条の二各号を満たす時間で定義することができる。建築基準法施行令の第百八条の二各号を満たす時間が5分間以上10分間未満の場合が難燃材料であり、10分間以上20分間未満の場合が準不燃材料であり、20分間以上の場合が不燃材料である。ただし耐熱性は各分野ごとで定義されることが多い。そのため、ファン消音システムを利用する分野に合わせて、枠材料を、その分野で定義される難燃性相当以上の耐熱性を有する材料からなるものとすればよい。
枠体および蓋部の肉厚(フレーム厚み)も、特に制限的ではなく、例えば、枠体の開口断面の大きさ等に応じて設定することができる。
膜34の材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、パーマロイ、42アロイ、コバール、ニクロム、銅、ベリリウム、リン青銅、黄銅、洋白、錫、亜鉛、鉄、タンタル、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、金、銀、白金、パラジウム、鋼鉄、タングステン、鉛、および、イリジウム等の各種金属;PET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PMP(ポリメチルペンテン)、COP(シクロオレフィンポリマー)、ゼオノア、ポリカーボネート、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PAR(ポリアリレート)、アラミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PES(ポリエーテルサルフォン)、ナイロン、PEs(ポリエステル)、COC(環状オレフィン・コポリマー)、ジアセチルセルロース、ニトロセルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリアミドイミド、POM(ポリオキシメチレン)、PEI(ポリエーテルイミド)、ポリロタキサン(スライドリングマテリアルなど)および、ポリイミド等の樹脂材料等が利用可能である。さらに、薄膜ガラスなどのガラス材料、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)およびGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のような繊維強化プラスチック材料を用いることもできる。また、天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、EPDM、シリコーンゴム等ならびにこれらの架橋構造体を含むゴム類を用いることができる。または、それらを組合せたものでもよい。
また、金属材料を用いる場合には、錆びの抑制等の観点から、表面に金属めっきを施してもよい。
熱、紫外線、外部振動等に対する耐久性が優れている観点から、耐久性を要求される用途においては膜34の材料として金属材料を用いることが好ましい。
また、枠体への膜または蓋部の固定方法は特に制限的ではなく、両面テープまたは接着剤を用いる方法、ネジ止め等の機械的固定方法、圧着等が適宜利用可能である。固定方法についても、枠材料および膜と同様に耐熱、耐久性、耐水性の観点から選択することができる。例えば、接着剤としては、セメダイン社「スーパーX」シリーズ、スリーボンド社「3700シリーズ(耐熱)」、太陽金網株式会社製耐熱エポキシ系接着剤「Duralcoシリーズ」などを選択することができる。また、両面テープとしては、スリーエム製高耐熱両面粘着テープ9077などを選択することができる。このように、要求する特性に対して様々な固定方法を選択することができる。
ここで、図1等に示す例では、ファン消音システムは、ファンとして軸流ファン12aを有し、軸流ファン(プロペラファン)の騒音を抑制する構成としたがこれに限定はされず、シロッコファン、ターボファン、遠心ファン、ラインフローファン等の従来公知のファンに適用することができる。
シロッコファンは羽根を有する回転子の回転軸方向から吸気し、回転軸に垂直な方向に送気するものであり、側面に送風口を有する。そのため、例えば、図12に示すように、ファンがシロッコファン12bである場合には、膜型共鳴構造30a(音響共鳴構造)は、送風口38に接するように配置されている。膜型共鳴構造30aの構成は図1等に示す例と同様である。
図12に示す例では、膜型共鳴構造30aは、シロッコファン12bの送風口を塞がない位置に配置されている。また、膜型共鳴構造30aは、膜34がシロッコファン12bの送風口に垂直な方向と平行となり、かつ、膜34が送風口側を向いて配置されている。
このようにシロッコファンの場合でもファンの羽根部分から音が発生するため、ファンの羽根部分からλ/4未満の距離の領域が近接場領域である。したがって、音響共鳴構造を近接場領域内に配置することで、近接場領域内で上述した2つの相互作用を発生させて消音効果を得ることができる。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[比較例1]
ファンとして軸流ファン(山洋電気株式会社製 Model:109P0612K701)を用いた。この軸流ファンは外径60mm×60mm、厚み15mmである。ファンの排気方向側にはケーシングがついているため、送風口前面端部から回転子の羽根まで距離は5mm程度ある。
ファンからの固体振動の影響を抑えるため、ファンの下部に厚み5mmの防振ゴムを配置した。また、ファンの側方から固体振動として出る音を抑制するために、ファンのケーシングの側面を厚み5mmのアクリルで囲った。
アクリル板厚み5mmを用いて、短辺30mm長さの長方形板を切り出して組み合わせることで、ファンの外径に等しい60mm角の内径を有し、ダクト方向長さが30mmである正方形ダクトを作製した。アクリル板の加工はレーザーカッターを用いて行った。
このダクトを、ファンの送風口側の表面に、ファンの風路とダクトの断面と一致させて配置した。ファンのケーシングを囲む枠と、ダクトの外側をテープでつなげて閉じ切ることで、図13に示すようにダクトがファンに密着した構造を作製した。
<測定>
作製した構造を用いて、ファンを駆動して音量を測定した。
音の測定は、ファン中心位置から軸方向に距離200mm離した位置で、風の影響を避けるために水平方向垂直方向ともに中心軸から50mmずらした点にマイクロフォン(アコー製1/2inchマイク 4152)を配置した。マイクロフォンは排気側および給気側の両方に配置した。
ファンの駆動は直流安定化電源を用いて行った。ファンの駆動条件は12V、0.25Aとした。
排気側マイクロフォンで測定した結果を図14に示す。図14に示すグラフの横軸は対数表示としている。図14から羽根が回転するファンの特徴である、大きなピーク音(狭帯域音)が複数の周波数で現れているのがわかる。すなわち、離散周波数音が発生していることがわかる。その中で大きなピークは整数倍の関係になっている。特に、1.1kHzと2.2kHzの音量が大きい。
また、ダクトの出口側端部での風速を、風速計を用いて測定したところ、3.1m/sの風速であった。以下、実施例3まで風速に変化は見られなかった。
[実施例1]
ダクトの内壁を以下のようにして作製した膜型共鳴構造とした以外は比較例1と同様にして、ファン消音システムを作製した。膜型共鳴構造の共鳴周波数は2.2kHzとした。
<膜型共鳴構造の設計>
有限要素法による音響構造連成計算をCOMSOL MULTIPHYSICS(COMSOL Inc.製)を用いて行い、膜型共鳴構造を設計した。膜の材料をPETとし、厚みを75μmとして、サイズと背面距離を変えて設計を行った。膜の振動部である内径が24mmの円形の枠体で、背面距離が6mmである膜型共鳴構造で2.2kHzに共鳴を有して高い吸収を持つことが分かった。
背面距離の6mmとは、2.2kHzの波長λに対して、0.038×λの距離に相当し、非常に薄い構造で共鳴を実現できることがわかる。通常の片側閉管の気柱共鳴構造の場合には必要な長さは0.25×λであるので、気柱共鳴構造に対して厚みを約15%のサイズまで小さくすることができることがわかる。
<膜型共鳴構造の作製>
アクリル板をレーザーカッターで加工することで、上記で設計した構造を作製した。具体的には、厚み3mmのアクリル板を加工して、外形が30mmの正方形で、その中に24mm直径の開口部を有する有孔板部材を2枚と、外形が30mmの正方形の板部材を作製した。2枚の有孔板部材、および、板部材をこの順に重ね合わせて、両面テープ(アスクル製現場のチカラ)で貼り合わせて枠体を作製した。
枠体の開口面に厚み75μmのPET膜(東レ製ルミラー)を両面テープで貼り合わせた。枠体の外形に合わせてPET膜を切り取ることで、外形状が30mm角正方形で、枠体の内形24mm、PET膜の厚み75μm、背面距離6mmの膜型共鳴構造を作製した。
この膜型共鳴構造を6つ作製し、ダクトの4面中3面がそれぞれ2つの膜型共鳴構造となっているダクト(長さ30mm)を作製した(図5参照)。
<測定>
作製したファン消音システムのファンを駆動して比較例1と同様に排気側および吸気側で音量を測定した。
排気側の測定結果を図15に示し、吸気側の測定結果を図16に示す。図15および図16には比較例1の結果も示す。
図15から、膜型共鳴構造の共鳴周波数2.2kHzにおいて約20dBの大きな消音効果を得られることがわかる。さらに、図15に矢印で示した、ファン回転によって発生する、周波数の異なる複数の離散周波数音に対しても消音効果が得られることがわかる。すなわち、膜型共鳴構造の共鳴周波数以外の周波数においても消音効果が得られることがわかる。このように、本発明のファン消音システムは、ファンが発生する音の近接場領域内に音響共鳴構造を配置することで、音響共鳴構造の共鳴周波数以外の周波数の音を消音できるため、ファン回転によって発生する周波数の異なる複数の離散周波数音を消音できることがわかる。
また、膜型共鳴構造の共鳴周波数を、ファン回転によって発生する周波数の異なる複数本の離散周波数音のうちの1つの周波数に合わせることで、その周波数での消音効果をより高くすることができることがわかる。
また、図16から、吸気側でも、膜型共鳴構造の共鳴周波数、および、他の周波数において音量が低減していることがわかる。すなわち、排気側での消音効果は、音を反射して吸気側に出しているのではなく、排気側および吸気側ともに消音していることがわかる。この効果は、膜型共鳴構造による膜振動による音の吸収と、膜型共鳴構造によって反射された音と、音源と干渉することによって音源から音が発する現象を抑え込んだことによると考えられる。
実施例1のファン消音システムにおいて、ファンの音源部分(羽根)と膜型共鳴構造の膜振動部の中央までの距離は「ファンの羽根前面から送風口前面までの距離5mm」+「膜型共鳴構造の膜の中心位置からファンの送風口前面までの距離15mm」=20mmである。周波数2.2kHzの波長/4は39mmであるので、膜型共鳴構造は近接場領域内に配置されていることがわかる。
[比較例2]
比較例2は図17に示すように、膜型共鳴構造30aを軸流ファン12aから離間して配置し、膜型共鳴構造30aと軸流ファン12aとの間にダクト100を配置した構成とした。膜型共鳴構造30aは実施例1の膜型共鳴構造と同じものを使用した。ダクト100は、長さは60mmである以外は比較例1のダクトと同様とした。
この構成において、ファンの音源部分(羽根)と膜型共鳴構造との距離は、80mmである。したがって、膜型共鳴構造30aは近接場領域の外側に配置されている構成である。
<測定>
比較例2のファン消音システムのファンを駆動して比較例1と同様に排気側および吸気側で音量を測定した。なお、比較例2において、それぞれ膜型共鳴構造30aの部分をダクトに置き換えた場合の音量の測定結果と比較し、差分から消音量を求めた。
結果を図18に示す。
また、図19に比較例3と比較例3の膜型共鳴構造30aの部分をダクトに置き換えた場合(単純ダクト)の音量の測定結果を示す。
図18から、比較例2では、膜型共鳴構造30aの共鳴周波数で消音できることがわかる。
しかしながら、より周波数範囲を広げた図19から、比較例3の構造では、膜型共鳴構造30aの共鳴周波数以外の周波数で消音効果が得られないことがわかる。
比較例2では膜型共鳴構造と音源がλ/2離れているため、通常の音の波動としての干渉効果(遠方場干渉)で消音効果が現れている。一方で、上述の近接場領域におけるメカニズムは生じていないと考えられるため、膜型共鳴構造の共鳴周波数以外の消音に寄与していないことは自然なことである。
これに対して、実施例1のように膜型共鳴構造を近接場領域に配置している場合には、膜型共鳴構造と音源の相互作用を一体化して取り扱い、さらに遠方まで伝搬しない高い波数の近接場音の相互作用も考える必要がある。この場合、上述のメカニズムによって、膜型共鳴構造の共鳴周波数以外の周波数の音の放出量にも寄与したと考えられる。よって、近接場領域では広い周波数帯域の音に消音効果をもたらすことができる。
以上の結果より、本発明の実施例1のように、近接場領域に膜型共鳴構造を配置することで、ファンが発生する複数の離散周波数音を消音することができることがわかる。また、膜型共鳴構造の共鳴周波数を離散周波数音の1つの周波数と一致させることでこの周波数でより高い消音効果が得られることがわかる。また、風路を塞ぐことなく、ファン騒音を消音することができることがわかる。
[実施例2]
実施例2と同じ膜型共鳴構造を用いて、ファンの種類を変えてピーク音周波数を変えた検討を行った。山洋電気製DC軸流ファン「9GA0612G9001」(フレームサイズ60mm、厚み10mm)を用いた。このファンを実施例1と同様に固定し、その排気側に実施例1と同じ膜型共鳴構造を取り付けた場合(実施例2)と、同じ位置に共鳴構造ではなく、同じダクト長さとなる長さ30mmのダクトを取り付けた場合(比較例3)をそれぞれ測定した。
図20に測定結果を示した。本ファンの場合、ピーク音の周波数は膜型共鳴構造の共鳴周波数とずれた周波数に現れる。膜型共鳴構造の共鳴周波数である2.2kHz付近では8dB程度の消音が比較的広く現れている。一方で、ファンのピーク音周波数(1.2kHz、2.4kHz、3.6kHz)において、それぞれ膜型共鳴構造が近接場領域にある場合に、元のピーク音量より消音できていることがわかる。
このように、膜型共鳴構造の共鳴周波数とずれたファンのピーク音周波数に対しても、近接場領域内の共鳴構造によってピーク音を消音することができることがわかる。
なお、ピーク音の消音量については、共鳴周波数をファンピーク音周波数に合わせた実施例1の場合の方が、共鳴周波数がファンピーク音周波数とずれている本実施例のような場合よりも、消音量が大きく好ましいことがわかる。
[実施例3]
膜型共鳴構造の共鳴周波数を1.1kHzとした以外は実施例1と同様にして膜型共鳴構造を作製した。
<膜型共鳴構造の作製>
COMSOL MULTIPHYSICSを用いて有限要素法による設計を行ったところ、実施例1の膜型共鳴構造の背面距離を6mmから15mmとすることで、共鳴周波数が1.1kHzとなることがわかった。アクリル板をレーザーカッターで加工して、実施例1と同様の手法でこの膜型共鳴構造を作製した。
作製した膜型共鳴構造をファンの送風口の表面から30mm離間した位置に配置した。膜型共鳴構造とファンとの間にはダクト(管路)を接続した(図6参照)。膜型共鳴構造中心から、ファン音源部分(羽根)の距離は50mmである。一方、周波数1.1kHzの波長/4は78mmであるので、膜型共鳴構造は近接場領域内に配置されていることがわかる。
<測定>
作製したファン消音システムのファンを駆動して実施例1と同様に排気側および吸気側で音量を測定した。
結果を図21に示す。また、図21には、実施例3の膜型共鳴構造をダクトに置き換えた場合(単純ダクト)の音量の測定結果も示す。
図21から、膜型共鳴構造の共鳴周波数1.1kHzにおいて10dB程度の大きな消音効果を得られることがわかる。さらに、ファンが発生する複数の離散周波数音に対し居ても消音効果が得られることがわかる。
[実施例4]
実施例1のファン消音システムの膜型共鳴構造の下流側に、実施例3で作製した膜型共鳴構造を配置した構成(図8参照)とした以外は実施例1と同様にしてファン消音システムを作製した。
結果を図22に示す。また、図22には、実施例4の膜型共鳴構造をダクトに置き換えた場合(単純ダクト)の音量の測定結果も示す。
膜型共鳴構造それぞれの共鳴周波数1.1kHzおよび2.2kHzで15dB程度の大きな消音効果を得られることがわかる。すなわち、膜型共鳴構造を直列に配置してもそれぞれの消音効果は機能することがわかる。
また、図22に矢印で示した、ファンが発生する複数の離散周波数音に対しても消音効果が得られることがわかる。すなわち、膜型共鳴構造の共鳴周波数以外の周波数においても消音効果が得られることがわかる。
図22の二つのデータの差分をとって、消音量として図23に示した。1.1kHz付近、および、2.2kHz付近では、ファンの騒音ピークを15dB以上消音するとともに、それ以外の周波数帯域でも消音効果が得られていることがわかる。
実施例4のファン消音システムに関して耳で聞いた騒音の大きさを評価するために、オクターブバンド評価と全体の騒音量評価を示した。図24に1/3オクターブバンドごとに評価し、また音量を人の耳の感度を考慮した補正であるA特性評価(単位dBA)とした結果を示した。1.1kHz、2.2kHz、また他の周波数の騒音ピークを消音することで、周波数を広く平均化して評価する1/3オクターブバンド評価であっても全体に音が低減していることがわかる。また、周波数可聴域全帯域に対してA特性補正を行って積分し、騒音レベルの計算をした。単純ダクトの場合81.9(dBA)であった騒音が、実施例4のファン消音システムでは74.9(dBA)まで騒音レベルを下げることができた。騒音レベルが3dBAの差を持つと、一般人が十分に検知できるとされるので、この7dBAの消音効果は体感でも十分に静かになったとわかるレベルである。
このように、ファンから発生する離散周波数音を抑制するための検討を行い、音響共鳴構造を近接場領域内に配置することで、共鳴周波数だけではなくファンが発生する離散周波数音全体を消音して、大きな消音効果を得ることができることを示した。
[実施例5]
実施例1~実施例4よりも強風の条件での測定を行うため、ファンの種類を変更した。山洋電気製の9GA0612P1J03(厚み38mm)ファンを用いた。図25に、このファンに供給する電流量を変化させた場合の風速を示した。電流量を大きくすることで、高風速高風量を得ることができる。
このファンの排気側に、実施例2と同じ構成の膜型共鳴構造を配置した。ただし、膜型共鳴構造の膜面を、実施例2より外周側に5mm下げた形とした(図26参照)。これは、後の実施例6で防風部材を配置するためである。
<測定>
作製したファン消音システムのファンを駆動して比較例1と同様に排気側および吸気側で音量を測定した。
排気側の測定結果を図27に示す。また、比較例4として実施例5の膜型共鳴構造をダクトに代えた場合の測定結果も同時に示す。実施例5と比較例4は流路方向の構造長さはともに30mmであり等しい。
また、実施例4および比較例4の出口側端部での風速を、風速計を用いて測定した。その結果、ともに14.5m/sであり、膜型共鳴構造を取り付けた場合と、筒構造とで風速が変化していないことを確認した。
図27から、膜型共鳴構造の共鳴周波数以外の周波数のピークは図27に矢印で示した通り、消音効果を得られることがわかる。しかし、共鳴周波数である1.1kHz付近のピークに関しては、その周辺の周波数で音が増幅している効果があり、ピーク消音効果をほとんど得られていないことがわかる。
実施例5では、ファンの風量が大きく、かつ回転するファンであるために風が非定常となっている。この風が膜面に風圧をかけることで、膜面には風による振動が生じる。膜に生じた振動は広い周波数スペクトルを含むが、その中で膜型共鳴構造の設計で共鳴として設計した周波数、すなわち消音を狙った周波数とその周辺において共鳴現象が生じる。この共鳴周波数において、膜面に生じた振動が長く残りやすく、ファンが稼働し続けている状態ではその振幅も増幅しやすい。そのため、そこからまるでスピーカーのように音が発信される。このようにして、ファンの極近傍でかつ強い風量が生じている場合に、共鳴周波数付近では音が増幅してしまい、狙いの消音効果がほとんど得られなかったと考えられる。
[実施例6]
実施例5のファン消音システムにおいて、膜型共鳴構造の膜の表面に防風部材を配置した以外は実施例5と同様にしてファン消音システムを作製した(図10参照)。
防風部材としてウレタンスポンジ(厚み5mm)を用いた。膜の振動に対する影響をできるだけ防ぐために、スポンジの膜側の面には両面テープ等は用いず、スポンジの空気側面の一部(スポンジ下部の膜型共鳴構造の枠部分に当たる位置)にスコッチテープを用いて、膜型共鳴構造の側壁部に取り付け、スポンジが膜型共鳴構造からずれないようにした。
<測定>
作製したファン消音システムのファンを駆動して比較例1と同様に排気側および吸気側で音量を測定した。
排気側の測定結果を図28に示す。また、比較例4の測定結果も同時に示す。
また、実施例6の出口側端部での風速を、風速計を用いて測定した。その結果、14.5m/sであり、風速が変化していないことを確認した。
図28から、実施例5で生じていた共鳴周波数(1.1kHz)付近での音の増幅が大幅に抑制できることがわかる。また、図28に矢印で示すとおり、共鳴周波数以外の周波数のピーク音を低減する効果も得られることがわかる。また、図28では5.4kHz以上の高周波領域で広帯域に消音できていることがわかる。これは膜面に配置したスポンジによる吸音効果である。
以上の結果から、膜の表面に防風部材を配置することで、ファンの極近傍に膜型共鳴構造を配置した際に、共鳴周波数付近で音が鳴ってしまう現象を大幅に抑制することができることがわかる。また、防風部材として多孔質吸音材を用いることで、多孔質吸音材の消音効果と膜型共鳴構造による消音効果を両立できることがわかる。
[実施例7]
音響共鳴構造としてヘルムホルツ共鳴構造を用いた以外は実施例5と同様にしてファン消音システムを作製した。
共鳴周波数が1.1kHzとなるヘルムホルツ共鳴構造を設計したところ、貫通穴長さ3mm、貫通穴直径4mm、内部空間厚み12mm、内部空間直径24mmであった。
このような構成となるようにアクリル板をレーザーカッターで加工してヘルムホルツ共鳴構造を作製した。ヘルムホルツ共鳴構造6セルがダクト壁面を構成するように実施例5と同様にしてファン消音システムを作製した。
ファンに供給する電流量が0.3Aの場合の測定結果を図29に示す。また、ヘルムホルツ共鳴構造の代わりに同じ長さのダクトを取り付けた場合の測定結果も示した(比較例5)。このとき風速は5.5m/sであった。
図29から、音響共鳴構造としてヘルムホルツ共鳴構造を用いた場合も、共鳴周波数以外の周波数のピーク音に対する消音効果を得ることができることがわかる。一方で、共鳴周波数である1.1kHzのピークに関しての消音量は若干であり、その周辺に音の増幅が生じている。これは、ヘルムホルツ共鳴構造の貫通孔部で生じた風切り音の中で、共鳴構造の共鳴周波数において共鳴が生じて音が増幅し、音が鳴った効果である。
[実施例8]
ファンに供給する電流量を1.3Aとした以外は実施例7と同様にして音量を測定した。測定結果を図30に示す。また、ヘルムホルツ共鳴構造の代わりに同じ長さのダクトを取り付けた場合の測定結果も示した(比較例6)。また、風速は15.1m/sであった。
図30から、共鳴周波数以外の周波数の複数のピーク音を消音する効果は高風量下でのヘルムホルツ共鳴構造でも得ることができることがわかる。一方で、共鳴で増幅された風切り音は、高風速となることでより大きくなり、共鳴周波数付近のピーク音については増幅が生じていることがわかる。
以上から、共鳴構造によって複数の離散周波数音を消音することができる効果は膜型共鳴器に限らず一般的であることがわかる。また、このヘルムホルツ共鳴の風切り音による増幅効果は、膜型共鳴構造が鳴る現象と比べても増幅量が大きいため、特に強風下で用いる場合には膜型共鳴構造の方が望ましいと考えられる。
[比較例7]
軸流ファン以外のファンへの適用を検討するため、ブロワ用シロッコファンへの適用を検討した。山洋電気製のブロア9BMC12P2G001を用いた。このブロアファンを厚み10mmの防振ゴムの上に配置し、上部から取り入れた空気を水平方向に排出する構成とした。 送風口から30mm離れた位置に、送風口と同じ大きさの開口(約30mm×52mmの開口部)を有する厚み5mmのアクリル板をついたて102として配置し、その先に風が直接当たらない配置で計測用マイクロフォンMPを配置して実験を行った。この時のついたて102の開口部で測定した風速は、7.7m/sであった。
送風口とついたて102の開口部の間を、厚み5mmのアクリル板で作製したダクト100でつなげた状態での測定を行った。模式図を図31に示す。
[実施例9]
送風口とついたて102の開口部の間に、実施例4の膜型共鳴構造30aを4つ、ダクト状に配置した以外は比較例7と同様にしてファン消音システムを作製した(図32参照)。
膜型共鳴構造30aとシロッコファンの羽根の距離は、最小で24mmであり、膜型共鳴構造30aは近接場領域内に配置されている。
<測定>
実施例9および比較例7において、ファンを駆動して計測用マイクロフォンMPで音量を測定した。
測定結果を図33に示す。
図33に示す結果から、実施例9の構成は、共鳴周波数付近でピーク音を低減することができるとともに、他の周波数に現れるピーク音についても消音効果が現れることがわかる。この結果から、シロッコファンであっても軸流ファンの場合と同様に、音響共鳴構造を近接場領域内に配置することで、複数の離散周波数音の消音効果が得られることを示している。
以上の結果より本発明の効果は明らかである。
10 ファン消音システム
12a 軸流ファン
12b シロッコファン
16 ケーシング
16a 送風口
18 回転子
20 軸部
22 羽根
26 管路
30a、30b 膜型共鳴構造
32、42 枠体
34 膜
35 背面空間
36 防振部材
38 送風口
40 ヘルムホルツ共鳴構造
43 内部空間
44 蓋部
46 貫通孔
48 防風部材
100 ダクト
102 ついたて
MP マイクロフォン

Claims (13)

  1. ファン、および、音響共鳴構造を有し、
    前記音響共鳴構造は前記ファンが発生する音の近接場領域内に配置されており、
    前記音響共鳴構造の振動体を備える面は、前記ファンの送風口に垂直な軸と平行であり、かつ、前記ファンの回転軸方向と平行に配置されているファン消音システム。
  2. 前記音響共鳴構造の共鳴周波数が、前記ファンの羽根の回転に起因する離散周波数音の少なくとも1つの周波数に一致する請求項1に記載のファン消音システム。
  3. 前記ファンの前記送風口に垂直な方向から見た際に、前記音響共鳴構造が前記送風口と重複する面積が、前記送風口の面積に対して50%以下である請求項1または2に記載のファン消音システム。
  4. 前記音響共鳴構造は、前記ファンに接続される通風路の壁面の一部を構成している請求項1~3のいずれか一項に記載のファン消音システム。
  5. 前記音響共鳴構造の前記振動体を備える面側に音を透過する防風部材を有する請求項1~4のいずれか一項に記載のファン消音システム。
  6. 前記音響共鳴構造は、前記ファンに接している請求項1~5のいずれか一項に記載のファン消音システム。
  7. 前記音響共鳴構造は、防振部材を介して前記ファンに接している請求項6に記載のファン消音システム。
  8. 異なる共鳴周波数を有する複数の前記音響共鳴構造を有し、
    共鳴周波数の高い前記音響共鳴構造が、共鳴周波数の低い前記音響共鳴構造よりも前記ファンに近い位置に配置されている請求項1~7のいずれか一項に記載のファン消音システム。
  9. 前記ファンによる送風方向において、前記音響共鳴構造が前記ファンの下流側のみに配置されている請求項1~8のいずれか一項に記載のファン消音システム。
  10. 前記ファンによる送風方向において、前記音響共鳴構造が前記ファンの上流側および下流側に配置されている請求項1~8のいずれか一項に記載のファン消音システム。
  11. 前記音響共鳴構造は、周縁部が固定され膜振動可能に支持されている膜と、前記膜の一方の面側に形成される背面空間とを有している、膜型共鳴構造である請求項1~10のいずれか一項に記載のファン消音システム。
  12. 前記膜型共鳴構造は、前記背面空間と外部とを連通する貫通孔を有する請求項11に記載のファン消音システム。
  13. 前記ファンが軸流ファンである請求項1~12のいずれか一項に記載のファン消音システム。
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