JP2022141031A - 接着剤組成物及び積層体 - Google Patents

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貴久 奥野
Takahisa Okuno
友輝 臼井
Yuki Usui
拓也 福田
Takuya Fukuda
昌樹 柳井
Masaki Yanai
雅文 柳生
Masafumi YAGYU
徹也 新城
Tetsuya Shinjo
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Abstract

【課題】半導体基板と支持基板とを好適に仮接着可能である接着層を与え、且つ、保存安定性に優れる接着剤組成物の提供。【解決手段】半導体基板を加工するために仮接着するための接着層を形成するために使用される接着剤組成物であって、熱硬化性接着剤成分と、熱膨張性粒子とを含み、前記熱硬化性接着剤成分が、ポリオルガノシロキサンを含有し、前記熱膨張性粒子が、前記熱硬化性接着剤成分に対して3.5質量%以下含有されている、接着剤組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、接着剤組成物及び積層体に関する。
従来2次元的な平面方向に集積してきた半導体ウエハーは、より一層の集積化を目的に平面を更に3次元方向にも集積(積層)する半導体集積技術が求められている。この3次元積層はシリコン貫通電極(TSV:through silicon via)によって結線しながら多層に集積していく技術である。多層に集積する際に、集積されるそれぞれのウエハーは形成された回路面とは反対側(即ち、裏面)を研磨によって薄化し、薄化された半導体ウエハーを積層する。
薄化前の半導体ウエハー(ここでは単にウエハーとも呼ぶ)を、研磨装置で研磨するために支持体に接着される。
その際の接着は研磨後に容易に剥離されなければならないため、仮接着と呼ばれる。この仮接着は支持体から容易に取り外されなければならず、取り外しに大きな力を加えると薄化された半導体ウエハーは、切断されたり変形することがあり、その様なことが生じない様に、容易に取り外される。しかし、半導体ウエハーの裏面研磨時に研磨応力によって外れたりずれたりすることは好ましくない。従って、仮接着に求められる性能は研磨時の応力に耐え、研磨後に容易に取り外されることである。
例えば研磨時の平面方向に対して高い応力(強い接着力)を持ち、取り外し時の縦方向に対して低い応力(弱い接着力)を有する性能が求められる。
上記事情の下、このような仮接着を実現できる接着剤組成物として、発明者らは、ヒドロシリル化反応により硬化する成分とともに、ポリジメチルシロキサン等の成分を含む接着剤組成物を報告してきている(例えば、特許文献1、2参照)。
一方、特許文献3には、仮接着用のシリコーン組成物において、比較的簡単な方法で及び/又はいかなる残渣もなく分離可能な接着剤を提供するため、熱膨張性粉末を含有するシリコーン組成物が提案されているが、本発明者らが確認したところ、熱膨張性粒子を特許文献3の実施例に記載されている量で接着剤組成物に含有させた場合、保存安定性の良好な接着剤組成物は得られないことが判明した。
国際公開第2017/221772号 国際公開第2018/216732号 特表2020-529488公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、半導体基板と支持基板とを好適に仮接着可能である接着層を与え、且つ、保存安定性に優れる接着剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前述の課題を解決する為、鋭意検討を行った結果、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]半導体基板を加工するために仮接着するための接着層を形成するために使用される接着剤組成物であって、
熱硬化性接着剤成分と、熱膨張性粒子とを含み、
前記熱硬化性接着剤成分が、ポリオルガノシロキサンを含有し、
前記熱膨張性粒子が、前記熱硬化性接着剤成分に対して3.5質量%以下含有されている、接着剤組成物。
[2]前記熱硬化性接着剤成分が、ヒドロシリル化反応によって硬化する成分である、[1]に記載の接着剤組成物。
[3]半導体基板と支持基板との間に介在し、かつ前記半導体基板に接する接着層を備える積層体であって、
前記接着層が、[1]又は[2]に記載の接着剤組成物から形成される層である、積層体。
[4]ポリオルガノシロキサンを含有する熱硬化性接着剤成分と、熱膨張性粒子とを含む、半導体基板を加工するために仮接着するための接着層を形成するために使用される接着剤組成物の保存安定性の向上方法であって、
前記熱膨張性粒子の含有量を、前記熱硬化性接着剤成分に対して3.5質量%以下とすることを特徴とする、接着剤組成物の保存安定性の向上方法。
本発明によれば、半導体基板と支持基板とを好適に仮接着可能である接着層を与え、且つ、保存安定性に優れる接着剤組成物を提供することができる。
積層体の一例の概略断面図である。 積層体の他の一例の概略断面図である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その1)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その2)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その3)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その4)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その5)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その6)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その7)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その8)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その9)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その10)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その11)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その12)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その13)である。 積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図(その14)である。
(接着剤組成物)
本発明の接着剤組成物は、半導体基板を加工するために仮接着するための接着層を形成するために使用される組成物である。
本発明の接着剤組成物は、熱硬化性接着剤成分と、熱膨張性粒子とを含む。
熱硬化性接着剤成分は、ポリオルガノシロキサンを含有する。
本発明の接着剤組成物には、熱膨張性粒子が、熱硬化性接着剤成分に対して3.5質量%以下含有されている。
本発明の接着剤組成物には、熱硬化性接着剤成分や熱膨張性粒子の他、例えば、接着剤組成物の粘度等を調整するために、溶媒等のその他の成分を含んでもよい。
本発明の接着剤組成物は、下記実施例でも示すように、容易に剥離できる接着層を形成することができ、かつ長期保管しても沈殿を生じさせない良好な保存安定性を示す。
<熱硬化性接着剤成分>
熱硬化性接着剤成分は、ポリオルガノシロキサンを含有する。ポリオルガノシロキサンが含まれることによって、得られる接着層の優れた耐熱性を実現できる。
また、得られる接着層の優れた耐熱性を再現性よく実現する観点等から、好ましい態様として、熱硬化性接着剤成分は、ヒドロシリル化反応によって硬化する成分を含む。
本発明で用いる熱硬化性接着剤成分の好ましい実施態様として、例えば、接着剤成分となる硬化する成分(A)を含有する。本発明で用いる熱硬化性接着剤成分は、接着剤成分となる硬化する成分(A)と、硬化反応を起こさない成分(B)とを含有してもよい。ここで、硬化反応を起こさない成分(B)としては、例えば、ポリオルガノシロキサンが挙げられる。なお、本発明において「硬化反応を起こさない」とは、あらゆる硬化反応を起こさないことを意味するのではなく、硬化する成分(A)に生じる硬化反応を起こさないことを意味する。
他の好ましい態様においては、成分(A)は、ヒドロシリル化反応によって硬化する成分であってもよいし、ヒドロシリル化反応によって硬化するポリオルガノシロキサン成分(A’)であってもよい。
他の好ましい態様においては、成分(A)は、例えば、成分(A’)の一例としての、ケイ素原子に結合した炭素原子数2~40のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(a1)と、Si-H基を有するポリオルガノシロキサン(a2)と、白金族金属系触媒(A2)と、を含有する。ここで、炭素原子数2~40のアルケニル基は置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
他の好ましい態様においては、ヒドロシリル化反応によって硬化するポリオルガノシロキサン成分(A’)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q単位)、RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)及びRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むポリシロキサン(A1)と、白金族金属系触媒(A2)とを含み、ポリシロキサン(A1)は、SiOで表されるシロキサン単位(Q’単位)、R’R’R’SiO1/2で表されるシロキサン単位(M’単位)、R’R’SiO2/2で表されるシロキサン単位(D’単位)及びR’SiO3/2で表されるシロキサン単位(T’単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a1’)と、SiOで表されるシロキサン単位(Q”単位)、R”R”R”SiO1/2で表されるシロキサン単位(M”単位)、R”R”SiO2/2で表されるシロキサン単位(D”単位)及びR”SiO3/2で表されるシロキサン単位(T”単位)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むポリオルガノシロキサン(a2’)とを含む。
なお、(a1’)は、(a1)の一例であり、(a2’)は、(a2)の一例である。
~Rは、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基又は水素原子を表す。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
’~R’は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアルケニル基を表すが、R’~R’の少なくとも1つは、置換されていてもよいアルケニル基である。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
”~R”は、ケイ素原子に結合する基又は原子であり、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基又は水素原子を表すが、R”~R”の少なくとも1つは、水素原子である。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常1~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、ターシャリーブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常1~14であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~6である。中でもメチル基が特に好ましい。
置換されていてもよい環状アルキル基の具体例としては、シシクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等のシクロアルキル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等のビシクロアルキル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常3~14であり、好ましくは4~10、より好ましくは5~6である。
アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その炭素数は、特に限定されるものではないが、通常2~40であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、より一層好ましくは10以下である。
置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常2~14であり、好ましくは2~10、より好ましくは1~6である。中でも、エテニル基、2-プロペニル基が特に好ましい。
置換されていてもよい環状アルケニル基の具体例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等が挙げられるが、これらに限定されず、その炭素数は、通常4~14であり、好ましくは5~10、より好ましくは5~6である。
上述の通り、ポリシロキサン(A1)は、ポリオルガノシロキサン(a1’)とポリオルガノシロキサン(a2’)を含むが、ポリオルガノシロキサン(a1’)に含まれるアルケニル基と、ポリオルガノシロキサン(a2’)に含まれる水素原子(Si-H基)とが白金族金属系触媒(A2)によるヒドロシリル化反応によって架橋構造を形成し硬化する。その結果、硬化膜が形成される。
ポリオルガノシロキサン(a1’)は、Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a1’)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
Q’単位、M’単位、D’単位及びT’単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(Q’単位とM’単位)、(D’単位とM’単位)、(T’単位とM’単位)、(Q’単位とT’単位とM’単位)、が挙げられるが、これらに限定されない。
また、ポリオルガノシロキサン(a1’)に包含されるポリオルガノシロキサンが2種以上含まれる場合、(Q’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(T’単位とM’単位)と(D’単位とM’単位)との組み合わせ、(Q’単位とT’単位とM’単位)と(T’単位とM’単位)との組み合わせが好ましいが、これらに限定されない。
ポリオルガノシロキサン(a2’)は、Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる1種又は2種以上の単位を含むとともに、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。ポリオルガノシロキサン(a2’)としては、このような条件を満たすポリオルガノシロキサンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
Q”単位、M”単位、D”単位及びT”単位からなる群から選ばれる2種以上の好ましい組み合わせとしては、(M”単位とD”単位)、(Q”単位とM”単位)、(Q”単位とT”単位とM”単位)が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリオルガノシロキサン(a1’)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又はアルケニル基が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R’~R’で表される全置換基中におけるアルケニル基の割合は、好ましくは0.1~50.0モル%、より好ましくは0.5~30.0モル%であり、残りのR’~R’はアルキル基とすることができる。
ポリオルガノシロキサン(a2’)は、そのケイ素原子にアルキル基及び/又は水素原子が結合したシロキサン単位で構成されるものであるが、R”~R”で表される全ての置換基及び置換原子中における水素原子の割合は、好ましくは0.1~50.0モル%、より好ましくは10.0~40.0モル%であり、残りのR”~R”はアルキル基とすることができる。
成分(A)が(a1)と(a2)とを含む場合、本発明の好ましい態様においては、ポリオルガノシロキサン(a1)に含まれるアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)に含まれるSi-H結合を構成する水素原子とのモル比は、1.0:0.5~1.0:0.66の範囲である。
ポリオルガノシロキサン(a1)、ポリオルガノシロキサン(a2)等のポリシロキサンの重量平均分子量は、特に限定されないが、それぞれ、通常500~1,000,000であり、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは5,000~50,000である。
なお、本発明において、ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量及び数平均分子量並びに分散度は、例えば、GPC装置(東ソー(株)製EcoSEC,HLC-8320GPC)及びGPCカラム(東ソー(株)TSKgel SuperMultiporeHZ-N, TSKgel SuperMultiporeHZ-H)を用い、カラム温度を40℃とし、溶離液(溶出溶媒)としてテトラヒドロフランを用い、流量(流速)を0.35mL/分とし、標準試料としてポリスチレン(シグマアルドリッチ社製)を用いて、測定することができる。
ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の粘度は、特に限定されないが、それぞれ、通常10~1000000(mPa・s)であり、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは50~10000(mPa・s)である。なお、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の粘度は、25℃においてE型回転粘度計で測定した値である。
ポリオルガノシロキサン(a1)とポリオルガノシロキサン(a2)は、ヒドロシリル化反応によって、互いに反応して膜となる。従って、その硬化のメカニズムは、例えばシラノール基を介したそれとは異なり、それ故、いずれのシロキサンも、シラノール基や、アルキルオキシ基のような加水分解によってシラノール基を形成する官能基を含む必要は無い。
本発明の好ましい態様においては、熱硬化性接着剤成分は、ポリオルガノシロキサン成分(A’)とともに、白金族金属系触媒(A2)を含む。
このような白金系の金属触媒は、ポリオルガノシロキサン(a1)のアルケニル基とポリオルガノシロキサン(a2)のSi-H基とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。
白金系の金属触媒の具体例としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
白金とオレフィン類との錯体としては、例えばジビニルテトラメチルジシロキサンと白金との錯体が挙げられるが、これに限定されない。
白金族金属系触媒(A2)の量は、特に限定されないが、通常、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、1.0~50.0ppmの範囲である。
ポリオルガノシロキサン成分(A’)は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制する目的で、重合抑制剤(A3)を含んでもよい。
重合抑制剤は、ヒドロシリル化反応の進行を抑制できる限り特に限定されるものではなく、その具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,1-ジフェニル-2-プロピオン-1-オール等のアルキニルアルコール等が挙げられる。
重合抑制剤の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシロキサン(a1)及びポリオルガノシロキサン(a2)の合計量に対して、通常、その効果を得る観点から1000.0ppm以上であり、ヒドロシリル化反応の過度な抑制を防止する観点から10000.0ppm以下である。
本発明で用いる熱硬化性接着剤成分の一例は、硬化する成分(A)とともに剥離剤成分となる硬化反応を起こさない成分(B)を含んでもよい。このような成分(B)を熱硬化性接着剤成分に含めることで、得られる接着層を再現性よく好適に剥離することができるようになる。
このような成分(B)として、典型的には、ポリオルガノシロキサンが挙げられ、その具体例としては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、メチル基含有ポリオルガノシロキサン、フェニル基含有ポリオルガノシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、成分(B)としては、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。当該ポリジメチルシロキサンは変性されていてもよい。変性されていてもよいポリジメチルシロキサンとしては、例えば、エポキシ基含有ポリジメチルシロキサン、無変性のポリジメチルシロキサン、フェニル基含有ポリジメチルシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
成分(B)であるポリオルガノシロキサンの好ましい例としては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサン、メチル基含有ポリオルガノシロキサン、フェニル基含有ポリオルガノシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
成分(B)であるポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、特に限定されないものの、通常100,000~2,000,000であり、本発明の効果を再現性よく実現する観点から、好ましくは200,000~1,200,000、より好ましくは300,000~900,000である。また、その分散度は、特に限定されないものの、通常1.0~10.0であり、好適な剥離を再現性よく実現する観点等から、好ましくは1.5~5.0、より好ましくは2.0~3.0である。なお、重量平均分子量及び分散度は、ポリシロキサンに関する上述の方法で測定することができる。
成分(B)であるポリオルガノシロキサンの粘度は、特に限定されないが、通常1,000~2,000,000mm/sである。なお、成分(B)であるポリオルガノシロキサンの粘度の値は、動粘度で示され、センチストークス(cSt)=mm/sである。粘度(mPa・s)を密度(g/cm)で割って求めることもできる。すなわち、その値は、25℃で測定したE型回転粘度計で測定した粘度と密度から求めることができ、動粘度(mm/s)=粘度(mPa・s)/密度(g/cm)という式から算出することができる。
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R1112SiO2/2で表されるシロキサン単位(D10単位)を含むものが挙げられる。
11は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、R12は、ケイ素原子に結合する基であり、エポキシ基又はエポキシ基を含む有機基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
エポキシ基を含む有機基におけるエポキシ基は、その他の環と縮合せずに、独立したエポキシ基であってもよく、1,2-エポキシシクロヘキシル基のように、その他の環と縮合環を形成しているエポキシ基であってもよい。
エポキシ基を含む有機基の具体例としては、3-グリシドキシプロピル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、エポキシ基含有ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D10単位)を含むものであるが、D10単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
本発明の好ましい態様においては、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D10単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D10単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンは、エポキシ価が0.1~5であるエポキシ基含有ポリジメチルシロキサンが好ましい。また、その重量平均分子量は、特に限定されないものの、通常1,500~500,000であり、接着剤中での析出抑制の観点から、好ましくは100,000以下である。
エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(E1)~(E3)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 2022141031000001
(m及びnは、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
Figure 2022141031000002
(m及びnは、各繰り返し単位の数を示し、正の整数であり、Rは、炭素数1~10のアルキレン基である。)
Figure 2022141031000003
(m、n及びoは、各繰り返し単位の数を示し、正の整数であり、Rは、炭素数1~10のアルキレン基である。)
メチル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R210220SiO2/2で表されるシロキサン単位(D200単位)を含むもの、好ましくはR2121SiO2/2で表されるシロキサン単位(D20単位)を含むものが挙げられる。
210及びR220は、ケイ素原子に結合する基であり、それぞれ独立して、アルキル基を表すが、少なくとも一方はメチル基であり、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。
21は、ケイ素原子に結合する基であり、アルキル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができる。中でも、R21としては、メチル基が好ましい。
本発明において、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの好ましい一例としては、ポリジメチルシロキサンを挙げることができるが、これに限定されない。
メチル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D200単位又はD20単位)を含むものであるが、D200単位及びD20単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
本発明のある態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D200単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D200単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
本発明の好ましい態様においては、メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D20単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D20単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
メチル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(M1)で表されるものが挙げられるが、これに限定されない。
Figure 2022141031000004
(nは、繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、R3132SiO2/2で表されるシロキサン単位(D30単位)を含むものが挙げられる。
31は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基又はアルキル基を表し、R32は、ケイ素原子に結合する基であり、フェニル基を表し、アルキル基の具体例としては、上述の例示を挙げることができるが、メチル基が好ましい。
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、上述のシロキサン単位(D30単位)を含むものであるが、D30単位以外に、Q単位、M単位及び/又はT単位を含んでもよい。
本発明の好ましい態様においては、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、D30単位のみからなるポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサン、D30単位とQ単位とM単位とT単位とを含むポリオルガノシロキサンが挙げられる。
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの具体例としては、式(P1)又は(P2)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 2022141031000005
(m5及びn5は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
Figure 2022141031000006
(m6及びn6は、各繰り返し単位の数を示し、正の整数である。)
ある態様においては、本発明で用いる熱硬化性接着剤成分は、硬化する成分(A)とともに、硬化反応を起こさない成分(B)を含み、より好ましい態様においては、成分(B)として、ポリオルガノシロキサンが含まれる。
本発明で用いる熱硬化性接着剤成分の一例は、成分(A)と成分(B)とを、任意の比率で含むことができるが、接着性と剥離性のバランスを考慮すると、成分(A)と成分(B)との比率は、質量比〔(A):(B)〕で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
すなわち、ヒドロシリル化反応によって硬化するポリオルガノシロキサン成分(A’)が含まれる場合、成分(A’)と成分(B)との比率は、質量比〔(A’):(B)〕で、好ましくは99.995:0.005~30:70、より好ましくは99.9:0.1~75:25である。
本発明で用いる熱硬化性接着剤成分の粘度は、特に限定されないが、25℃で、通常500~20,000mPa・sであり、好ましくは1,000~1,0000mPa・sである。
本発明において、熱硬化性接着剤成分の硬化開始温度Tc(℃)は、次の方法で測定することができる。
熱硬化性接着剤成分をアルミパンに5mg測り取り、DSC(例えば、ティーエーインスツルメンツ(株) 示差走査熱量計 Q-2000)を用いて発熱量を測定し、縦軸に発熱量を、横軸に温度を取り、発熱量のピークが確認された温度を熱硬化性接着剤成分の硬化開始温度Tc(℃)として得ることができる。なお、この際の昇温条件は、例えば、室温(23℃)から300℃まで10℃/分とすることができる。
<熱膨張性粒子>
本発明の接着剤組成物には、熱膨張性粒子が、熱硬化性接着剤成分に対して3.5質量%以下含有されている。
例えば、熱膨張性粒子は、熱可塑性樹脂から構成されるシェル内に封入された揮発性物質を含み、加熱されると膨張する、マイクロカプセルである。
具体的には、例えば、膜厚2~15μmのマイクロカプセル(シェル)が、膨張剤(揮発性物質)である有機溶媒を内包する。
この成分のシェルを形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリブタジエン、ポリクロロプレンなどのビニルポリマー、及びこれらのコポリマー;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;並びにポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、及びこれらのブレンドなどが挙げられる。
中でも、有機溶媒や熱硬化性接着剤成分と良好に混合するため、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等のビニルポリマー、及びこれらのコポリマーが好ましく、ポリアクリロニトリル系コポリマーがより好ましい。
熱膨張性粒子に封入された揮発性物質としては、例えば、ブタン、イソブテン、プロパンなどの炭化水素;メタノール、エタノールなどのアルコール;ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素;及びジエチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテルなどの有機溶媒が挙げられるが、カプセル内での良好な安定性と優れた熱膨張性に寄与するため、炭化水素が好ましい。
カプセル内の揮発性物質は、通常、1.01×10Pa、25℃で液体である。
熱膨張性粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、針状、無定形などが挙げられるが、通常、球状である。
熱膨張性粒子の最大膨張倍率は、剥離に必要な接着能の低下を実現できる多孔質化が得られるように熱膨張性粒子のその他の物性を考慮して適宜設定されるものではあるが、1より大きく、ある態様においては、良好な剥離性を再現性よく実現する観点から、3~15である。
熱膨張性粒子の膨張前の平均粒子径は、形成される接着層の厚さよりも小さく、且つ、接着剤成分と良好に混合する限り特に限定される訳ではないが、通常3~100μmであり、ある態様において5~50μmである。
本発明において、熱膨張性粒子の平均粒子径は、粒度分布計(例えば、(株)島津製作所レーザ回折式粒度分布測定装置 SALD-3100)を使用し、D50値の平均粒子径として得ることができる。
熱膨張性粒子の膨張開始温度Ts(℃)は、例えば、次の方法で測定することができる。動的粘弾性測定(DMA)(例えば、DMA Q800型 TA instruments社製)を用い、粒子0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、粒子層の上部にアルミ蓋(直径5.6mm、厚み0.1mm)をのせて測定用試料とし、その測定用試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態で試料の高さを測定し、加圧子により0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定することによって、正方向への変位開始温度として、膨張開始温度(Ts)を得ることができ、また、この際の最大変位量を示した温度として、最大膨張温度(Tm)を得ることができる。
熱膨張性粒子の膨張開始温度(℃)としては、良好な剥離を再現性よく実現する観点から、50~120℃が好ましい。
本発明においては、熱膨張性粒子の最大膨張倍率Msは、熱膨張性粒子の「最大膨張時」を真比重に基づくものであって、加熱膨張前の粒子群の平均真比重をDbとし、当該粒子群を加熱して膨張させてその平均真比重が最小となった時の平均真比重をDaとした場合において、熱膨張性粒子の最大膨張倍率は、Db/Da(倍)で表される。
すなわち、熱膨張性粒子の真比重Db及び加熱後の(膨張した)熱膨張性粒子の真比重Daを用いて最大膨張倍率を算出できる。なお、真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定できる。
加熱条件は、熱膨張性粒子1gを、膨張開始温度(Ts)から最大膨張温度(Tm)より100℃高い温度までの範囲で、オーブンを用いて各温度2分間加熱し、最も真比重の低い値がDfを与える最大膨張であると定義し、熱膨張性粒子の最大膨張倍率Msを、Ms=(Db÷Df)との式より算出する。
熱膨張性粒子は、公知の方法(例えば、WO2020/017361、WO2019/150951、WO2019/124233、WO2018/092554、WO2017/141653、WO2017/002659、WO2016/190178、WO2016/140080、WO2016/084612、WO2015/178329、特開2016-169274、特開2015-129290、WO2015/098586、WO2015/060086、WO2015/029916、特開2015-3951、WO2013/111688、特開2013-173945、特開2012-136695、特開2012-17453、特開2011-195813、特開2012-144820、特開2012-122025、特開2011-32626、特開2011-256224、WO2010/143512、特開2011-68890、WO2009/050863、WO2008/142849、特開2008-291067、WO2007/058379、WO2007/046273、特開2006-213930、WO2005/049698、特開2004-323854、WO2004/074396、WO2004/058910、特開2015-108153、特開2014-169443、特開2013-28818、特開2013-32542、特開2009-299071、特開2009-113037、WO2003/099955、WO2001/072410、WO2001/023081、WO1999/046320、WO1999/043758、特開2000-24488、特開平11-2615、特開平5-329360、特開平5-309262、特開平5-285376、特開平9-19635、特開昭62-286534、特開昭59-173132、特開昭56-113338等の公開公報記載の方法)で合成してもよく、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、松本油脂製薬(株)製 松本マイクロスフェアー(登録商標)F-30、HF-30D、F-35、F-35D、HF-36、HF-36D、F-36LV、F-36LVD、HF-48、HF-48D、FN-80GS、FN-80GSD、HF-50、F-50D、F-65、F-65D、FN-100SS、FN-100SSD、FN-100S、FN-100SD、F-100M、F-100MD、FN-78、FN-78D、FN-100M、FN-100MD、FN-105、FN-105D、FN-180SS、FN-180SSD、FN-180S、FN-180SD、FN-180、FN-180D、FN-190SSD、F-190D、F-260D、F-2800D、F-2830D、F-2860D等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明では、熱膨張性粒子の含有量は、接着層の剥離性と接着剤組成物の保存安定性とを両立させる観点から、熱硬化性接着剤成分に対して3.5質量%以下であり、好ましくは3.4質量%以下、より好ましくは3.3質量%以下、より一層好ましくは3.2質量%以下、更に好ましくは3.1質量以下である。熱膨張性粒子の含有量の下限値は、剥離に必要な接着能の低下を実現できる多孔質化に寄与できる量のガスが発生させる限り特に限定されるものではないが、熱硬化性接着剤成分に対して、通常0.05質量%好ましくは0.1質量%である。
本発明の接着剤組成物は、所定量の熱膨張性粒子を含むため、接着剤塗布層を加熱し、熱硬化性接着剤成分を硬化させて接着層を製造する過程で、熱膨張性粒子からのガスの発生が起こり、これによって層中に空隙(多孔質化)が生じた状態で硬化することとなり、この空隙が、空隙がない場合と比較して接着層の接着能の低下が引き起こされ、その結果、良好な剥離性が実現される一方、熱膨張性粒子の量が好適に調整されているため、当該接着剤組成物は、保存安定性に優れる。
接着層の多孔質化は、光学顕微鏡で観察することができ、多孔質化が全く確認できない場合、剥離をすることができないため、接着層の一部は多孔質化されている必要がある。
<その他の成分>
本発明で用いる接着剤組成物は、粘度の調整等を目的に、溶媒を含んでいてもよく、溶媒の具体例としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン等が挙げられるが、これらに限定されない。
より具体的には、溶媒としては、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソドデカン、メンタン、リモネン、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、酢酸ブチル、ジイソブチルケトン、2-オクタノン、2-ノナノン、5-ノナノン等が挙げられるが、これらに限定されない。このような溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる接着剤組成物が溶媒を含む場合、その含有量は、所望の組成物の粘度、採用する塗布方法、作製する膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、組成物全体に対して、10~90質量%程度の範囲である。
本発明で用いる接着剤組成物の粘度は、特に限定されないが、25℃で、通常500~20,000mPa・sであり、好ましくは1,000~10,000mPa・sである。本発明で用いる接着剤組成物の粘度は、用いる塗布方法、所望の膜厚等の各種要素を考慮して、用いる溶媒の種類やそれらの比率、膜構成成分濃度等を変更することで調整可能である。
本発明の接着剤組成物は、当該組成物に含まれる成分が均一に混合しており、且つ、塗布可能な程度の流動性が担保されていることが好ましく、これらを実現する目的や組成物の粘度や表面張力等を調整する目的で、接着剤組成物に溶媒を含有させてもよいが、熱硬化性接着剤成分と熱膨張性粒子のみから接着剤組成物が構成される場合に、少なくとも塗布可能な程度の流動性が担保されていれば、好ましくは更に成分が均一に混合されていれば、本発明の接着剤組成物は必ずしも溶媒を含む必要はない。
<接着剤組成物の製造方法>
接着剤組成物の製造方法の好ましい態様として、例えば、本発明の接着剤組成物は、熱硬化性接着剤成分と、熱膨張性粒子とを混合することで製造できる。その混合順序は特に限定されるものではない。
本発明においては、異物を除去する目的で、接着剤組成物を製造する途中で又は全ての成分を混合した後に、用いる溶媒や溶液等をフィルター等を用いてろ過してもよい。
(積層体)
本発明の積層体は、半導体基板と支持基板と接着層とを備える。
接着層は、半導体基板と支持基板との間に介在し、かつ半導体基板に接する。
接着層は、前述した本発明の接着剤組成物から形成される層である。
積層体は、半導体基板を加工するため仮接着するために使用され、積層体における半導体基板の加工後に支持基板と半導体基板とが離される用途に使用される。
本発明の積層体において、接着層の層数には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。例えば、積層体において、接着層は1層であっても、2層以上の複数層であってもよい。
本発明の積層体の好ましい実施態様として、本発明の接着剤組成物からなる接着層とは別に、熱膨張性粒子を含有しない第二接着剤組成物を用いて形成された第二接着層を有する積層体が挙げられる。この場合、積層体は、半導体基板、本発明の接着剤組成物からなる接着層、熱膨張性粒子を含有しない第二接着剤組成物からなる第二接着層、支持基板を有する。この第二接着層を含む積層体は、半導体基板、接着層、第二接着層、支持基板の順で積層されていることが好ましい。
本発明の積層体は、下記実施例でも示す通り、半導体基板と支持基板とを離す際に、接着層が剥がれ、接着層から半導体基板を容易に剥離できる剥離性を満足している。さらに、本発明の積層体は、下記実施例でも示す通り、保存安定性の良い接着剤組成物を用いて形成された接着層を有している。保存安定性の良い接着剤組成物を用いて形成することにより、良好な性能の接着層を安定して作製することができ、接着層の品質安定性が担保された積層体を得ることができる。
したがって、本発明の積層体は、剥離性と品質安定性のいずれをも満足できる積層体となる。
以下に図を用いて積層体の一例を説明する。
図1Aは積層体の一例の概略断面図である。
尚、図1A(図1Bも同様)では、半導体基板としてバンプ付き半導体基板を用いた場合を例に説明する。
図1Aの積層体は、バンプ1aを有する半導体基板1と、接着層2と、支持基板4とをこの順で有する。
半導体基板1が有するバンプ1aは、支持基板4側に配されている。
接着層2は、半導体基板1と支持基板4との間に介在する。接着層2は、半導体基板1に接する。そして、接着層2は、バンプ1aを覆っている。
図1Bは積層体の他の一例の概略断面図である。
図1Bの積層体は、バンプ1aを有する半導体基板1と、接着層2と、第二接着層3と、支持基板4とをこの順で有する。
半導体基板1が有するバンプ1aは、支持基板4側に配されている。
接着層2は、半導体基板1と支持基板4との間に介在する。接着層2は、半導体基板1に接する。そして、接着層2は、バンプ1aを覆っている。
第二接着層3は、接着層2と支持基板4との間に介在する。第二接着層3は、接着層2及び支持基板4に接している。
本発明の積層体の各構成について、以下詳しく説明する。
<半導体基板>
半導体基板は、バンプを有していてもよい。バンプとは、突起状の端子である。
用いる半導体基板がバンプを有する場合、積層体において、半導体基板は、支持基板側にバンプを有する。
半導体基板において、バンプは、通常、回路が形成された面上に形成されている。回路は、単層であってもよし、多層であってもよい。回路の形状としては特に制限されない。
半導体基板において、バンプを有する面と反対側の面(裏面)は、加工に供される面である。
半導体基板全体を構成する主な材質としては、この種の用途に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、化合物半導体などが挙げられる。
半導体基板の形状は、特に限定されないが、例えば、円盤状である。なお、円盤状の半導体基板は、その面の形状が完全な円形である必要はなく、例えば、半導体基板の外周は、オリエンテーション・フラットと呼ばれる直線部を有していてもよいし、ノッチと呼ばれる切込みを有していてもよい。
円盤状の半導体基板の厚さは、半導体基板の使用目的などに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、500~1,000μmである。
円盤状の半導体基板の直径としては、半導体基板の使用目的などに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、100~1,000mmが挙げられる。
半導体基板の一例は、直径300mm、厚さ770μm程度のシリコンウエハーである。
半導体基板が有するバンプの材質、大きさ、形状、構造、密度としては、特に限定されない。
バンプとしては、例えば、ボールバンプ、印刷バンプ、スタッドバンプ、めっきバンプなどが挙げられる。
通常、バンプ高さ1~200μm程度、バンプ径1~200μm、バンプピッチ1~500μmという条件からバンプの高さ、径及びピッチは適宜決定される。
バンプの材質としては、例えば、低融点はんだ、高融点はんだ、スズ、インジウム、金、銀、銅などが挙げられる。バンプは、単一の成分のみで構成されていてもよいし、複数の成分から構成されていてもよい。より具体的には、SnAgバンプ、SnBiバンプ、Snバンプ、AuSnバンプ等のSnを主体とした合金めっき等が挙げられる。
また、バンプは、これらの成分の少なくともいずれかからなる金属層を含む積層構造を有してもよい。
<支持基板>
支持基板としては、半導体基板が加工される際に、半導体基板を支持できる部材であれば、特に限定されないが、例えば、ガラス製支持基板、シリコン製支持基板などが挙げられる。
支持基板の形状としては、特に限定されないが、例えば、円盤状が挙げられる。なお、円盤状の支持基板は、その面の形状が完全な円形である必要はなく、例えば、支持基板の外周は、オリエンテーション・フラットと呼ばれる直線部を有していてもよいし、ノッチと呼ばれる切込みを有していてもよい。
円盤状の支持基板の厚さは、半導体基板の大きさなどに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、500~1,000μmである。
円盤状の支持基板の直径は、半導体基板の大きさなどに応じて適宜定めればよく、特に限定されないが、例えば、100~1,000mmである。
支持基板の一例は、直径300mm、厚さ700μmm程度のガラスウエハーやシリコンウエハーである。
<接着層>
接着層は、支持基板と半導体基板との間に介在する。
接着層は、半導体基板と接する。
接着層は、上述した本発明の接着剤組成物を用いて形成され、より具体的には、接着剤組成物を硬化させることにより形成される。
接着層の厚さは、特に限定されるものではないが、良好な剥離性を得るための観点から、好ましくは0.1~30μmであり、より好ましくは1~10μmである。
特に、積層体における接着層が、本発明の接着剤組成物を用いて形成される接着層のみからなる場合には、該接着層の厚みは、好ましくは10~70μmであり、より好ましくは30~60μmである。一方、積層体における接着層が、本発明の接着剤組成物を用いて形成される接着層の他に、第二接着層も含む場合には、該接着層の厚みは、好ましくは0.1~30μmであり、より好ましくは1~10μmである。
接着剤組成物から接着層を形成する方法については、以下で記載する<積層体の製造方法>の説明箇所で詳しく述べる。
<第二接着層>
本発明の積層体は、第二接着層を備えていてもよい。
積層体が第二接着層を有する場合、第二接着層は、支持基板と接着層との間に介在する。第二接着層は、支持基板及び接着層に接することが好ましい。
第二接着層は、第二接着剤組成物を用いて形成され、より具体的には、第二接着剤組成物を硬化させることにより形成される。
第二接着剤組成物は、熱硬化性接着剤成分を含む。ただし、第二接着剤組成物には、熱膨張性粒子は含有されていない。
第二接着剤組成物に含有される熱硬化性接着剤成分としては、特に限定されるものではないが、本発明の接着剤組成物に含有される熱硬化性接着剤成分として前述で説明したものと同様の熱硬化性接着剤成分を用いることができ、前述の(接着剤組成物)の<熱硬化性接着剤成分>の欄で記載したとおりであり、また、下記の他の熱硬化性接着剤成分を用いることもできる。第二接着剤組成物に含有される熱硬化性接着剤成分の量や好適な条件等も、接着剤組成物に関して説明した上記内容と同じである。
接着剤組成物に含有される熱硬化性接着剤成分と第二接着剤組成物に含有される熱硬化性接着剤成分とは、同じ種類の熱硬化性接着剤成分を用いても、異なる種類の熱硬化性接着剤成分を用いても、いずれでも構わない。
第二接着剤組成物には、熱硬化性接着剤成分の他、前記本発明の接着剤組成物と同様、溶媒等のその他の成分を含んでいてもよく、これらに関する量や好適な条件等も上記と同じである。
本発明に係る積層体が備える第二接着層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常5~500μmであり、膜強度を保つ観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、より一層好ましくは30μm以上であり、厚膜に起因する不均一性を回避する観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、より一層好ましくは120μm以下、更に好ましくは70μm以下である。
本発明に係る積層体が備える接着層と第二接着層との膜厚比は、特に限定されるものではないが、良好な剥離性と電極(バンプ)保護性を有する積層体を再現性よく得る観点から、接着層の厚さ1に対して、第二接着層の厚さが、通常0.5~30、好ましくは1~20、より好ましくは2~15、より一層好ましくは3~10、更に好ましくは4~8である。
<<他の熱硬化性接着剤成分>>
第二接着剤組成物は、熱硬化性接着剤成分として、例えば、以下に記載の硬化性接着剤材料、又は該硬化性接着剤材料と剥離添加剤とを含有してもよい。
硬化性接着剤材料としては、例えば、ポリアリーレンオリゴマー、環状オレフィンオリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー、及びこれらの混合物から選択される。
剥離添加剤としては、例えば、ポリエーテル化合物が挙げられる。
ポリエーテル化合物が、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ及びこれらの混合物からなる群から選択される末端基を含むことが好ましい。
ポリエーテル化合物が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(1,3-プロパンジオール)、ポリブチレングリコール、ポリ(テトラヒドロフラン)、エチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
剥離添加剤が、ポリアルキレンオキシドホモポリマー及びポリアルキレンオキシドコポリマーからなる群から選択されることが好ましい。
当該熱硬化性接着剤成分としては、例えば、特開2014-150239号公報に記載の一時的結合組成物を用いることができる。
当該熱硬化性接着剤成分について、以下さらに詳しく説明する。
当該熱硬化性接着剤成分は、硬化性接着剤材料及び剥離添加剤を含む。通常、硬化性接着剤材料は、硬化される場合に>1GPaのモジュラスを有する。例示的な硬化性接着剤材料としては、これらに限定されないが、ポリアリーレンオリゴマー、環状オレフィンオリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー、及びこれらの混合物が挙げられる。硬化性接着剤材料は、追加の疎水性を提供するために何らかの好適な部分、例えばフッ素含有基で置換されてもよいが、これはこうした部分が硬化した接着剤材料の機械的特性に悪影響を与えない場合に限られる。好ましくは、硬化性接着剤材料は、ポリアリーレンオリゴマー、環状オレフィンオリゴマー、アリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー、及びこれらの混合物から選択され、より好ましくはアリールシクロブテンオリゴマー、ビニル芳香族オリゴマー又はこれらの混合物の1つ以上から選択される。異なる硬化性接着剤材料の混合物が本発明に使用される場合、こうした材料は、硬化工程中、互いに硬化するように選択される。異なる硬化性材料の混合物が使用される場合、こうした硬化性材料は、99:1~1:99、好ましくは95:5~5:95、より好ましくは90:10~10:90、さらにより好ましくは75:25~25:75の質量比で使用される。
種々広範なポリアリーレンオリゴマーが本発明に使用されうる。本明細書に使用される場合、「ポリアリーレン」という用語は、ポリアリーレンエーテルを含む。好適なポリアリーレンオリゴマーは、前駆体、例えば以下の式のエチニル芳香族化合物から合成されてもよい:
Figure 2022141031000007
式中、各Arは、芳香族基又は不活性置換された芳香族基であり;各Rは、独立に、水素、アルキル、アリール又は不活性置換されたアルキルもしくはアリール基であり;Lは、共有結合、又は1つのArを少なくとも1つの他のArに連結する基であり;n及びmは、少なくとも2の整数であり;並びに、qは、少なくとも1の整数である。そういうものとして、エチニル芳香族化合物は、通常、4つ以上のエチニル基を有する(例えば、テトラエチニル芳香族化合物)。
当該熱硬化性接着剤成分としての一時的結合組成物に使用される好適なポリアリーレンオリゴマーは、重合単位として以下を含むポリマーを含んでいてもよい:
Figure 2022141031000008
式中、Ar’は、反応生成物の(C≡C)n-Ar又はAr-(C≡C)m部分の残基であり、R、L、n及びmは前記で定義された通りである。本発明に有用なポリアリーレンコポリマーとしては、重合単位として以下の式を有するモノマーを含む:
Figure 2022141031000009
式中、Ar’及びRは前記で定義される通りである。
例示的なポリアリーレンとしては、Ar-L-Arが:ビフェニル;2,2-ジフェニルプロパン;9,9’-ジフェニルフルオレン;2,2-ジフェニルヘキサフルオロプロパン;ジフェニルスルフィド;オキシジフェニレン;ジフェニルエーテル;ビス(フェニレン)ジフェニルシラン;ビス(フェニレン)ホスフィンオキシド;ビス(フェニレン)ベンゼン;ビス(フェニレン)ナフタレン;ビス(フェニレン)アントラセン;チオジフェニレン;1,1,1-トリフェニレンエタン;1,3,5-トリフェニレンベンゼン;1,3,5-(2-フェニレン-2-プロピル)ベンゼン;1,1,1-トリフェニレンメタン;1,1,2,2-テトラフェニレン-1,2-ジフェニルエタン;ビス(1,1-ジフェニレンエチル)ベンゼン;2,2’-ジフェニレン-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン;1,1-ジフェニレン-1-フェニルエタン;ナフタレン;アントラセン;又はビス(フェニレン)ナフタセン;より好ましくはビフェニレン;ナフチレン;p,p’-(2,2-ジフェニレンプロパン)(又はC-C(CH-C-);p,p’-(2,2-ジフェニレン-1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロプロペン)及び(-C-C(CF-C-)であるものが挙げられるが、これらに限定されない。有用なビスフェニル誘導体としては、2,2-ジフェニルプロパン;9,9’-ジフェニルフルオレン;2,2-ジフェニルヘキサフルオロプロパン;ジフェニルスルフィド;ジフェニルエーテル;ビス(フェニレン)ジフェニルシラン;ビス(フェニレン)ホスフィンオキシド;ビス(フェニレン)ベンゼン;ビス(フェニレン)ナフタレン;ビス(フェニレン)アントラセン;又はビス(フェニレン)ナフタセンが挙げられる。
ポリアリーレン前駆体モノマーは、当分野において公知の種々の方法、例えば(a)溶媒中、ポリフェノール(好ましくはビスフェノール)を選択的にハロゲン化、好ましくは臭素化する工程(ここでは各フェノール性環が、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルトの2つの位置のうち1つにおいて1つのハロゲンでハロゲン化されている)、(b)得られたポリ(オルト-ハロフェノール)上のフェノール性ヒドロキシルを、好ましくは溶媒中で、末端エチニル化合物と反応性であり、それらによって置き換えられるスルホネートエステルのような脱離基(例えば、トリフルオメタンスルホニルハライド又はトリフルオロメタンスルホン酸無水物から調製されたトリフルオロメタンスルホネートエステル)に変換する工程、及び(c)アリールエチニル化触媒、好ましくはパラジウム触媒及び酸受容体の存在下で、エチニル含有化合物又はエチニルシントンと工程(b)の反応生成物を反応させて、ハロゲン及びトリフルオロメチルスルホネートを同時にエチニル含有基(例えば、アセチレン、フェニルアセチレン、置換されたフェニルアセチレン又は置換されたアセチレン)で置き換える工程によって調製されてもよい。この合成のさらなる説明は、国際公開第WO97/10193号(Babb)に提供される。
式(I)のエチニル芳香族モノマーは、式(II)又は(III)のいずれかのポリマーを調製するのに有用である。エチニル芳香族モノマーの重合は、十分当業者の能力の範囲内である。重合の具体的な条件は、重合される具体的なエチニル芳香族モノマー(1種又は複数種)及び得られるポリマーの所望の特性を含む種々の因子に依存するが、重合の一般的な条件は、国際公開第WO97/10193号(Babb)に詳述される。
本発明に使用するのに特に好適なポリアリーリレンとしては、SiLK(商標)半導体誘電体(マサチューセッツ州マルボロのダウエレクトロニックマテリアルズから入手可能)として販売されるものが挙げられる。他の特に好適なポリアリーレンとしては、国際公開第00/31183号、同第98/11149号、同第97/10193号、同第91/09081号、欧州特許出願公開第755957号、及び米国特許第5,115,082号;同第5,155,175号;同第5,179,188号;同第5,874,516号;及び同第6,093,636号に開示されるものが挙げられる。
好適な環状オレフィン材料は、ポリ(環状オレフィン)であり、これは熱可塑性であってもよく、好ましくは2000~200,000ダルトン、より好ましくは5000~100,000ダルトン、さらにより好ましくは2000~50,000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有していてもよい。好ましいポリ(環状オレフィン)は、少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも140℃の軟化温度(3,000PaSでの溶融粘度)を有する。好適なポリ(環状オレフィン)はまた、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは60~200℃、最も好ましくは75~160℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
好ましいポリ(環状オレフィン)は、環状オレフィン及び非環状オレフィンの反復モノマー、又は環状オレフィンに基づく開環ポリマーを含んでなる。本発明に使用するのに好適な環状オレフィンは、ノルボルネン系オレフィン、テトラシクロドデセン系オレフィン、ジシクロペンタジエン系オレフィン、Diels-Alderポリマー、例えばフラン及びマレイミドから誘導されるもの、及びこれらの誘導体から選択される。誘導体としては、アルキル(好ましくはC-C20アルキル、より好ましくはC-C10アルキル)、アルキリデン(好ましくはC-C20アルキリデン、より好ましくはC-C10アルキリデン)、アラルキル(好ましくはC-C30アラルキル、より好ましくはC-C18アラルキル)、シクロアルキル(好ましくはC-C30シクロアルキル、より好ましくはC-C18シクロアルキル)、エーテル、アセチル、芳香族、エステル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、アミド、イミド、及びシリル-置換された誘導体が挙げられる。本発明に使用するための特に好ましい環状オレフィンとしては、以下のもの及びこれらの組み合わせから選択されるものが挙げられ、
Figure 2022141031000010
Figure 2022141031000011
式中、各R及びRは、独立に、H及びアルキル基(好ましくはC-C20アルキル、より好ましくはC-C10アルキル)から選択され、並びに各Rは、独立に、H、置換された及び置換されていないアリール基(好ましくはC-C18アリール)、アルキル基(好ましくはC-C20アルキル、より好ましくはC-C10アルキル)、シクロアルキル基(好ましくはC-C30シクロアルキル基、より好ましくはC-C18シクロアルキル基)、アラルキル基(好ましくはC-C30アラルキル、より好ましくはC-C18アラルキル基、例えばベンジル、フェネチル、フェニルプロピルなど)、エステル基、エーテル基、アセチル基、アルコール(好ましくはC-C10アルコール)、アルデヒド基、ケトン、ニトリル、及びこれらの組み合わせから選択される。
好ましい非環状オレフィンは、分岐及び非分岐C-C20アルケン(好ましくはC-C10アルケン)から選択される。より好ましくは、非環状オレフィンは、構造(RC=C(Rを有し、ここで各Rは、独立に、H及びアルキル基(好ましくはC-C20アルキル、より好ましくはC-C10アルキル)から選択される。本発明に使用するのに特に好ましい非環状オレフィンとしては、エテン、プロペン及びブテンから選択されるものが挙げられ、エテンが最も好ましい。
環状オレフィンコポリマーを製造する方法は当分野において公知である。例えば、環状オレフィンコポリマーは、環状モノマーと非環状モノマーとの連鎖重合によって製造できる。ノルボルネンがこうした条件下でエテンと反応する場合、交互ノルボルナンジイル及びエチレン単位を含有するエテン-ノルボルネンコポリマーが得られる。この方法によって製造されるコポリマーの例としては、TOPAS(商標)(Topas Advanced Polymersによって製造)及びAPEL(商標)(三井化学株式会社によって製造)ブランドの下で入手可能なものが挙げられる。これらのコポリマーを製造するための好適な方法は、米国特許第6,008,298号に開示されている。シクロオレフィンコポリマーはまた、種々の環状モノマーの開環メタセシス重合と、その後の水素化によって製造できる。このタイプの重合から得られるポリマーは、エテン及び環状オレフィンモノマーのコポリマー(例えばエチレン及びシクロペンタン-1,3-ジイルの交互単位)として概念的に考えられることができる。この開環方法によって製造されるコポリマーの例としては、ZEONOR(商標)(Zeon Chemicalsより)及びARTON(商標)(JSR株式会社製)ブランドの下で提供されるものが挙げられる。この開環方法によってこれらのコポリマーを製造する好適な方法は、米国特許第5,191,026号に開示されている。
当該硬化性接着剤材料として有用なアリールシクロブテンオリゴマーは当分野において周知である。好適なアリールシクロブテンオリゴマーとしては、以下の式を有するものが挙げられるが、これらに限定されない:
Figure 2022141031000012
式中、Bはn価の連結基であり;Arは多価アリール基であり、シクロブテン環の炭素原子は、Arの同じ芳香族環上の隣の炭素原子に結合し;mは1以上の整数であり;nは1以上の整数であり;並びに、Rは、一価の基である。好ましくは多価アリール基Arは、1~3個の芳香族炭素環式又はヘテロ芳香族環で構成されてもよい。アリール基は単一芳香族環、より好ましくはフェニル環を含むのが好ましい。アリール基は、場合により、(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル、(C-C)アルコキシ及びハロから選択される1~3個の基、好ましくは(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル、(C-C)アルコキシ及びクロロの1つ以上、より好ましくは(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル及び(C-C)アルコキシの1つ以上で置換される。アリール基は置換されていないのが好ましい。n=1又は2が好ましく、より好ましくはn=1である。m=1~4が好ましく、より好ましくはm=2~4、さらにより好ましくはm=2である。好ましくはRは、H及び(C-C)アルキル、より好ましくはH及び(C-C)アルキルから選択される。好ましくはBは、1つ以上の炭素-炭素二重結合(エチレン性不飽和)を含む。好適な一価B基は、好ましくは式-[C(R10)=CR11]xZを有し、ここでR10及びR11は、独立に、水素、(C-C)アルキル、及びアリールから選択され;Zは、水素、(C-C)アルキル、アリール、シロキサニル、-CO12から選択され;各R12は、独立に、H、(C-C)アルキル、アリール、アラルキル、及びアルカリールから選択され;並びに、x=1又は2である。好ましくは、R10及びR11は、独立に、H、(C-C)アルキル、及びアリールから選択され、より好ましくはH及び(C-C)アルキルから選択される。R12は、(C-C)アルキル、アリール及びアラルキルであるのが好ましい。Zは、好ましくはシロキシルである。好ましいシロキシル基は、式-[Si(R13-O]p-Si(R13-を有し、ここで各R13は、独立に、H、(C-C)アルキル、アリール、アラルキル、及びアルカリールから選択され;pは1以上の整数である。R13は、(C-C)アルキル、アリール及びアラルキルから選択される。好適なアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル及びフェニルプロピルが挙げられる。
好ましくは、アリールシクロブテンオリゴマーは、以下の式の1種以上のオリゴマーを含む:
Figure 2022141031000013
式中、各Rは、独立に、H及び(C-C)アルキルから選択され、好ましくはH及び(C-C)アルキルから選択され;各Rは、独立に、(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル、(C-C)アルコキシ及びハロから選択され;各Rは、独立に、二価のエチレン性不飽和有機基であり;各Rは、独立に、H、(C-C)アルキル、アラルキル及びフェニルから選択され;pは1以上の整数であり;並びにqは0~3の整数である。各Rは、好ましくは独立に、H及び(C-C)アルキルから選択され、より好ましくは各RはHである。各R7は、独立に、(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル、(C-C)アルコキシ及びクロロから選択されるのが好ましく、より好ましくは(C-C)アルキル、トリ(C-C)アルキルシリル及び(C-C)アルコキシから選択される。好ましくは各Rは、独立に、(C-C)アルケニルから選択され、より好ましくは各Rは-CH=CH-である。各Rは、好ましくは(C-C)アルキルから選択され、より好ましくは各Rはメチルである。好ましくはp=1~5、より好ましくはp=1~3であり、さらにより好ましくはp=1である。q=0であるのが好ましい。特に好ましいアリールシクロブテンオリゴマー、1,3-ビス(2-ビシクロ[4.2.0]オクタ-1,3,5-トリエン-3-イルエテニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(「DVS-bisBCB」)は、以下の式を有する。
Figure 2022141031000014
アリールシクロブテンオリゴマーは、いずれかの好適な手段、例えば米国特許第4,812,588号;同第5,136,069号;同第5,138,081号及び国際公開WO94/25903号に記載されるものによって調製されてもよい。好適なアリールシクロブテンオリゴマーはまた、ダウエレクトロニックマテリアルズから入手可能なCYCLOTENE(商標)ブランドの下で市販されている。アリールシクロブテンオリゴマーは、そのままで使用されてもよく、又は何らかの好適な手段によってさらに精製されてもよい。
硬化されうるビニル芳香族オリゴマーが本発明で硬化性接着剤材料として使用されうる。こうしたビニル芳香族オリゴマーは、通常、1種以上の反応性エチレン性不飽和コモノマーとビニル芳香族モノマーとのオリゴマーである。好ましくはビニル芳香族モノマーは、1つのビニル基を含有する。好適なビニル芳香族モノマーは、非置換ビニル芳香族モノマー、及び置換されたビニル芳香族モノマーであって、ここでは1つ以上の水素は、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、ハロ及びアミノからなる群から選択される置換基で置き換えられている。例示的なビニル芳香族モノマーとしては、これらに限定されないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルアニソール、ビニルジメトキシベンゼン、ビニルアニリン、ハロスチレン、例えばフルオロスチレン、α-メチルスチレン、β-メトキシスチレン、エチルビニルベンゼン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロール、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルアニソール、エチルビニルベンゼン及びこれらの混合物である。好ましい反応性コモノマーは、ビニル芳香族オリゴマーを形成するために使用されるオレフィン(又はエチレン性不飽和)部分に加えて、反応性部分、すなわち、ビニル芳香族オリゴマーの形成の後でのさらなる重合(又は架橋)の可能な部分、例えばアリル部分又はビニル基を含むものである。こうした反応性コモノマーは、好適には、ビニル芳香族モノマーとのオリゴマー化の後で、Diels-Alder反応によってさらに重合できる何らかの非対称ジエン又はトリエンであってもよい。より好ましくは、反応性コモノマーは、ビニル芳香族オリゴマーを形成するために使用されるエチレン性不飽和に加えてアリル部分を含み、さらにより好ましくはこのエチレン性不飽和に加えてアリルエステル部分を含む。ビニル芳香族オリゴマーを形成するのに有用な例示的な反応性コモノマーとしては、ビニルシクロヘキセン、ビニルエーテル、非対称ジエン又はトリエン、例えばテルペンモノマー、ジシクロペンタジエン、ジアリルマレエート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルシンナメート、ジアリルフマレート、アリルチグレート、ジビニルベンゼン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい反応性コモノマーは、ジアリルマレエート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルシンナメート、ジアリルフマレート及びこれらの混合物であり、より好ましくはジアリルマレエート、アリルメタクリレート、及びこれらの混合物である。例示的なテルペンモノマーとしては、これらに限定されないが、リモネン、ジペンテン、ミルセンなどが挙げられる。1種以上の第二のコモノマーはまた、ビニル芳香族オリゴマーを形成するために使用されてもよいことは当業者に理解されるであろう。こうした第二のコモノマーは、エチレン性不飽和であるが、反応性部分を含有しない。例示的な第二のコモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(C1-C10)アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、置換されたエチレンモノマー、及びポリ(アルキレンオキシド)モノマーが挙げられるが、これらに限定されない。
こうしたビニル芳香族オリゴマーにおけるビニル芳香族モノマー:コモノマーのモル比は、好ましくは99:1~1:99であり、より好ましくは95:5~5:95であり、さらにより好ましくは90:10~10:90である。こうしたビニル芳香族オリゴマーは、いずれかの好適な方法によって調製されてもよく、例えば当分野において公知の方法のいずれかによって調製されてもよい。通常、ビニル芳香族オリゴマーは、ビニル芳香族モノマー及びコモノマーのフリーラジカル重合によって調製される。好ましいビニル芳香族オリゴマーは、こうしたオリゴマーをさらに硬化できる未反応アリル部分を含む。
一時的結合組成物において剥離添加剤として種々広範な材料が使用されてもよいが、ただしこうした材料は貯蔵及び使用の条件下で、接着剤材料と反応せず、及び接着剤材料を硬化させるために使用される条件下で非硬化性である。加えて、剥離添加剤は、一時的結合組成物と適合性であるべきであり、すなわち剥離添加剤は、接着剤材料、及び一時的結合組成物に使用される何らかの他の構成成分、例えば有機溶媒に対して、分散性、混和性又はそうでなければ実質的に適合性でなければならない。有機溶媒(又は混合溶媒系)が一時的結合組成物に使用される場合、剥離添加剤及び硬化性接着剤材料はこうした溶媒に可溶性でなければならない。本発明において剥離添加剤は、それらが使用条件下で実質的に蒸発しないように十分不揮発性であり、すなわちそれらは実質的に、堆積工程、例えばスピンコーティング、又は有機溶媒を除去するためにもしくは接着剤材料を硬化させるために使用されるいずれかの後続の加熱工程の際に蒸発しない。一時的結合組成物のフィルム又は層が、例えばスピンコーティングによってキャストされる場合、多くの(又はすべての)溶媒が蒸発する。剥離添加剤は、使用されるどの有機溶媒にも可溶性であるが、硬化性接着剤材料中に完全には可溶性でないのが好ましい。剥離添加剤は、硬化した接着剤材料より優位に親水性である。理論に拘束されないが、接着剤材料の硬化時に、剥離添加剤相が分離し、優先的にウエハのアクティブ表面(キャリア表面に比べて親水性の高い表面)の方に移動すると考えられる。剥離添加剤における適切な親水性部分の使用は、一時的結合組成物における剥離添加剤の完全な分散、又は好ましくは溶解を可能にし、及び親水性の高い表面に向かう剥離添加剤の移動を伴って接着剤材料の硬化中に剥離添加剤の相分離を可能にする。硬化中に接着剤材料から相分離しないどの材料も、本発明に従う剥離添加剤としては機能しない。
一般に、剥離添加剤は、1つ以上の相対的に親水性の部分、例えば1つ以上の酸素、窒素、リン、及び硫黄を含有する部分を含有するであろう。好適な剥離添加剤としては、これらに限定されないが:エーテル、エステル、カルボキシレート、アルコール、チオエーテル、チオール、アミン、イミン、アミド、ホスフェートエステル、スルホネートエステル、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、剥離添加剤は、1つ以上の極性末端基を含有し、これは酸素、窒素及び硫黄の1つ以上、好ましくは酸素を含有する。例示的な極性末端基としては、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、アルコキシカルボニル、メルカプト、アルキルチオ、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンが挙げられ、好ましい末端基は、(C-C)アルコキシ、(C-C10)アリールオキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、(C-C)アルコキシカルボニル、メルカプト、(C-C)アルキルチオ、アミノ、(C-C)アルキルアミノ、及びジ(C-C)アルキルアミノから選択され、より好ましくは(C-C)アルコキシ、(C-C10)アリールオキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、及び(C1-C6)アルコキシカルボニルから選択され、さらにより好ましくは(C-C)アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシレート、及び(C-C)アルコキシカルボニルから選択される。特に好ましい極性末端基は、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、カルボキシル、及びアセトキシから選択される。好ましくは剥離添加剤は、シリコンを含まない。
好適な剥離添加剤は、≦10,000ダルトン、好ましくは≦7500ダルトン、より好ましくは≦7000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する。剥離添加剤は、使用条件の間、剥離添加剤が実質的に不揮発性になる(すなわち<5%、好ましくは<3%、より好ましくは≦1%の剥離添加剤が使用中に揮発する)のに十分な最小分子量(Mn)を有する。好ましくは剥離添加剤は、≧500ダルトンのMnを有する。好ましい範囲のMnは、500~10,000ダルトン、より好ましくは500~7500ダルトン、さらにより好ましくは500~7000ダルトンである。剥離添加剤は、線状ポリマー;分岐状ポリマー、例えば樹状ポリマー、星状ポリマーなど;ポリマー粒子などであってもよいが、剥離添加剤は、線状ポリマー又はポリマー粒子であるのが好ましく、より好ましくは線状ポリマーである。理論に拘束されないが、線状ポリマーは、分岐ポリマーに比較して、親水性のウエハ表面に向かって硬化接着剤材料相を通って良好に移動できると考えられる。
ポリエーテルは、好ましい剥離添加剤である。ポリエーテル化合物としては、アルキレンオキシドホモポリマー及びアルキレンオキシドコポリマーが挙げられ、こうしたコポリマーはランダム又はブロックであってもよい。ポリアルキレンオキシド剥離添加剤は、種々の極性末端基を有していてもよく、好ましくはこうした極性末端基は、ヒドロキシ、(C-C)アルコキシ、及び(C-C)アルコキシカルボニル、より好ましくはヒドロキシ、(C-C)アルコキシ、及びアセトキシである。好ましいポリエーテル化合物は、ポリグリコール(又はポリアルキレンオキシド)、例えばポリ(C-C)アルキレンオキシド化合物であり、これは単一種のアルキレンオキシド繰り返し単位、又は2種以上の異なるアルキレンオキシド繰り返し単位を含んでいてもよい。好ましいポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(1,3-プロパンジオール)、ポリ(テトラヒドロフラン)、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマー、エチレンオキシド-ブチレンオキシドコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、剥離添加剤がブチレンオキシドを繰り返し単位として含む場合、それは、1種以上の異なるアルキレンオキシド繰り返し単位とのコポリマーである。剥離添加剤の混合物が本発明の一時的結合組成物に使用されてもよいことを当業者は理解するであろう。好適な剥離添加剤としては、製品名PLURONIC(登録商標)、TETRONIC及びPOLYTHF(BASF、Ludwigshafen、ドイツから入手可能)、製品名FORTEGRA(ザダウケミカルカンパニー、ミシガン州、ミッドランド)、及び製品名TERATHANE(Invista,Wichita、カンザス州から入手可能)の下で販売されるポリエーテルが挙げられ、これらはすべてさらなる精製なしに使用されうる。
第二接着剤組成物は、熱硬化性接着剤成分として、例えば、以下に記載の熱硬化性重合体を含有してもよい。
当該熱硬化性接着剤成分としては、例えば、特許6528747号公報に記載の熱硬化性重合体を用いることができる。
熱硬化性重合体としては、特に限定されないが、好ましい例として、下記式(3)で表される繰り返し単位及び必要に応じて下記式(4)で表される繰り返し単位からなる、重量平均分子量が3,000~500,000のシロキサン結合含有重合体(以下、シリコーンAともいう。)が挙げられる。
Figure 2022141031000015
[式中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素数1~8の1価炭化水素基を表す。また、mは1~100の整数を表す。A及びBは、0<A<1、0<B<1、かつA+B=1を満たす正数である。T及びTは、下記式(5)で表される2価の有機基である。
Figure 2022141031000016
(式中、Aは、単結合、又は下記式
Figure 2022141031000017
で表される基から選ばれる2価の有機基である。R10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基である。hは、それぞれ独立に、0、1又は2である。)]
~Rで表される1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。mは、好ましくは3~60、より好ましくは8~40の整数である。また、Aは、0.3~0.8が好ましく、Bは、0.2~0.7が好ましく、A/Bが0.1~20を満たすことが好ましく、0.5~5を満たすことがより好ましい。
また、熱硬化性重合体の好ましい例として、下記式(6)で表される繰り返し単位及び必要に応じて下記式(7)で表される繰り返し単位からなる、重量平均分子量が3,000~500,000のシロキサン結合含有重合体(以下、シリコーンBともいう。)も挙げられる。
Figure 2022141031000018
[式中、R12~R15は、それぞれ独立に、炭素数1~8の1価炭化水素基を表す。pは、1~100の整数を表す。C及びDは、0<C≦1、0≦D<1、かつC+D=1を満たす正数である。T及びTは、下記式(8)で表される2価の有機基である。
Figure 2022141031000019
(式中、Aは、単結合、又は下記式
Figure 2022141031000020
で表される基から選ばれる2価の有機基である。R16及びR17は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基である。kは、それぞれ独立に、0、1又は2である。)]
この場合、R11~R14で表される1価炭化水素基としては、R~Rで表されるものとして例示したものと同じものが挙げられる。pは、好ましくは3~60、より好ましくは8~40の整数である。また、Cは、好ましくは0.3~1であり、Dは、好ましくは0~0.7であり、C+D=1である。
当該熱硬化性接着剤成分としての熱硬化性重合体を用いて形成される接着層は、シリコーンA又はシリコーンBを主成分とする熱硬化性樹脂組成物の硬化物の層であることが好ましい。シリコーンAとシリコーンBとは併用することができる。その場合の割合(重合比)は、好ましくはシリコーンA:シリコーンB=0.1:99.9~99.9:0.1、より好ましくはシリコーンA:シリコーンB=20:80~80:20である。
シリコーンAを主成分とする熱硬化性樹脂組成物は、その熱硬化のために、ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種以上の架橋剤を含む。
一方、シリコーンBを主成分とする熱硬化性樹脂組成物は、その熱硬化のために、1分子中に平均して2個以上のフェノール基を有するフェノール化合物及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種以上の架橋剤を含む。
また、シリコーンAとシリコーンBとを含む熱硬化性樹脂組成物は、その熱硬化のために、1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種以上の架橋剤を含む。
前記アミノ縮合物としては、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性されたメラミン樹脂としては、変性メラミンモノマー(例えば、トリメトキシメチルモノメチロールメラミン)、又はこの多量体(例えば、二量体、三量体等のオリゴマー)を公知の方法に従ってホルムアルデヒドと所望の分子量になるまで付加縮合重合させて得られたものが挙げられる。なお、これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性された尿素樹脂としては、メトキシメチル化尿素縮合物、エトキシメチル化尿素縮合物、プロポキシメチル化尿素縮合物等が挙げられる。なお、これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性された尿素樹脂は、例えば公知の方法に従って所望の分子量の尿素縮合物をホルマリンでメチロール化して変性し、又はこれを更にアルコールでアルコキシ化して変性することで調製することができる。
また、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物としては、例えば、(2-ヒドロキシ-5-メチル)-1,3-ベンゼンジメタノール、2,2',6,6'-テトラメトキシメチルビスフェノールA等が挙げられる。なお、これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、特に限定されないが、2官能、3官能又は4官能以上の多官能エポキシ樹脂、例えば、日本化薬(株)製のEOCN-1020(下記式参照)、EOCN-102S、XD-1000、NC-2000-L、EPPN-201、GAN、NC6000や、下記式で表されるもの等が挙げられる。
Figure 2022141031000021
1分子中に平均して2個以上のフェノール基を有するフェノール化合物としては、m-又はp-系クレゾールノボラック樹脂(例えば、旭有機材工業(株)製EP-6030G)、3官能フェノール化合物(例えば、本州化学工業(株)製Tris-P-PA)、4官能性フェノール化合物(例えば、旭有機材工業(株)製TEP-TPA)等が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物中の架橋剤の配合量は、熱硬化性重合体100質量部に対し、好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは0.2~30質量部、更に好ましくは1~20質量部である。架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、熱硬化性樹脂組成物には、酸無水物等の硬化触媒を、熱硬化性重合体100質量部に対し、10質量部以下配合してもよい。
<積層体の製造方法>
積層体における接着層が、本発明の接着剤組成物を用いて形成される接着層のみかつ単層からなる場合には、本発明の積層体の製造方法は、接着層を形成する工程(接着剤塗布層形成工程及び接着層形成工程)を含み、更に必要に応じて、貼り合せ工程などのその他の工程を含む。この場合における積層体の製造方法については、下記<<第一の実施態様>>の欄で詳しく説明する。
また、積層体における接着層が、本発明の接着剤組成物を用いて形成される接着層を2層以上(複数層)有する場合には、本発明の積層体の製造方法は、接着層を形成する工程(接着剤塗布層形成工程及び接着層形成工程)を含み、更に必要に応じて、貼り合せ工程などのその他の工程を含む。この場合における積層体の製造方法については、下記<<第二の実施態様>>の欄で詳しく説明する。但し、第二の実施態様では、接着層が2層の場合を例に説明する。
さらにまた、積層体における接着層が、本発明の接着剤組成物を用いて形成される接着層の他に、第二接着層も含む場合には、本発明の積層体の製造方法は、接着層を形成する工程(接着剤塗布層形成工程及び接着層形成工程)の他、第二接着層を形成する工程(第二接着剤塗布層形成工程及び第二接着層形成工程)を含み、更に必要に応じて、貼り合せ工程などのその他の工程を含む。この場合における積層体の製造方法については、下記<<第三の実施態様>>の欄で詳しく説明する。
<<第一の実施態様>>
接着剤塗布層形成工程及び接着層形成工程を経ることにより接着層を形成する。
<<<接着剤塗布層形成工程>>>
接着剤塗布層形成工程は、接着剤組成物をバンプ付き半導体基板に塗布して、接着剤塗布層を形成する。
塗布方法は、特に限定されるものではないが、通常、スピンコート法である。なお、別途スピンコート法等で塗布膜を形成し、シート状の塗布膜を、接着剤塗布層として貼付する方法を採用し得る。
接着剤塗布層の厚さは、積層体中の所望の接着層の厚さ等を考慮して、適宜決定される。
接着剤組成物が溶媒を含む場合、溶媒を除去する目的で、接着剤塗布層を形成する際に、組成物を塗布した後に前加熱してもよい。前加熱の温度は、溶媒の沸点、膜厚、熱硬化性接着剤成分の硬化開始温度、熱膨張性粒子の熱膨張温度を考慮して、通常90~130℃、1~5分の範囲で適宜決定される。
<<<接着層形成工程>>>
接着層形成工程では、接着剤塗布層を加熱し、熱硬化性接着剤成分を硬化させて接着層を形成する。
加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
本発明では、熱硬化性接着剤成分の硬化開始温度Tc(℃)は、この種の用途に用いられる熱硬化性接着剤成分が示す硬化開始温度であって、ともに用いる部材や材料に悪影響を与え得るほど高すぎる温度でなければ特に制限させるものではないが、通常90~160℃であり、好ましくは100~150℃である。
また、熱膨張性粒子の膨張開始温度Ts(℃)は、熱硬化性接着剤成分の硬化開始温度との関係を考慮して適宜決定されるものではあるが、通常70~160℃であり、好ましくは80~150℃である。
接着層形成工程における加熱の温度としては、熱硬化性接着剤成分の硬化開始温度を考慮して硬化が実現されるように適宜決定されるものではあるが、熱硬化性接着剤成分の十分な硬化速度を実現する観点等から、通常170℃以上であり、好ましくは200℃以上であり、その上限値は、通常250℃である。
また、加熱の時間としては、本発明の接着剤組成物を用いた、半導体基板の製造のスループットを向上させる観点等から、1~20分が好ましい。
接着層形成工程としては、支持基板と接着剤塗布層が接しかつ接着剤塗布層と半導体基板が接した状態で、接着剤塗布層が加熱され、接着層が形成される工程であれば、特に限定されない。
例えば、接着剤塗布層が形成された半導体基板と支持基板とを用いて、接着剤塗布層を挟み込むように2つの基板(半導体基板及び支持基板)を配することによって、支持基板と接着剤塗布層が接するようにし、かつ接着剤塗布層と半導体基板が接するようにした後、加熱処理を施せばよい。
加熱の温度及び時間としては、熱硬化性接着剤成分が硬化する温度及び時間であれば、特に限定されない。
加熱の温度としては、熱硬化性接着剤成分の硬化開始温度や用いる基板の耐熱性等を考慮して適宜決定されるものではあるが、十分な硬化速度を実現する観点等から、好ましくは120℃以上、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは200℃以上であり、積層体を構成する各層(支持基板及び半導体基板を含む)の変質を防ぐ観点等から、好ましくは250℃以下である。
加熱の時間としては、加熱温度に応じて適宜定められるものではあるが、熱硬化性接着剤成分の硬化を十分に促進する観点等から、好ましくは1分以上であり、より好ましくは5分以上であり、過度の加熱による各層への悪影響等を抑制又は回避する観点から、好ましくは180分以下であり、より好ましくは120分以下、より一層好ましくは60分以下、更に好ましは20分以下である。
加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
(貼り合せ工程)
接着剤塗布層形成工程と接着層形成工程との間には、半導体基板と支持基板との貼り合せを十分なものとするために、貼り合せ工程を行うことが好ましい。硬化した膜である接着層となる前のある程度の柔軟性のある膜である接着剤塗布層を用いて貼り合わせをすることで、より良好な接合を再現性よく実現できる。
貼り合せ工程としては、基板と層の貼り合わせができ、かつ基板や層に損傷を与えない限り特に限定されるものではないが、典型的には、支持基板及び半導体基板の厚さ方向に荷重が掛け得られる工程であり、より好ましくは、減圧下で支持基板及び半導体基板の厚さ方向に荷重が掛け得られる工程である。
荷重は、基板と層の貼り合わせができ、かつ基板や層に損傷を与えない限り特に限定されるものではないが、例えば、10~1,000Nである。
減圧度は、基板と層の貼り合わせができ、かつ基板や層に損傷を与えない限り特に限定されるものではないが、例えば、10~10,000Paである。
<<第二の実施態様>>
接着剤塗布層形成工程及び接着層形成工程を経ることにより1層目の接着層を形成した後、該接着剤塗布層形成工程及び該接着層形成工程と同様の工程を経て2層目の接着層を形成する。
1層目の接着層は、前述の<<第一の実施態様>>で記載した接着剤塗布層形成工程と同様の方法を用いて、接着剤組成物をバンプ付き半導体基板に塗布して、接着剤塗布層を形成することができる。
次に、接着剤塗布層を加熱し、熱硬化性接着剤成分を硬化させて1層目の接着層を形成する。接着剤塗布層から接着層を形成する際の諸条件は、前述の<<第一の実施態様>>の<<<接着層形成工程>>>の欄で記載したとおりである。
次に、2層目の接着層は、接着剤塗布層形成工程及び接着層形成工程を経て形成される。
2層目の接着剤塗布層形成工程で用いる塗布方法は、2層目の接着剤組成物が、支持基板又は1層目の接着層のいずれかに接するように塗布されれば、特に制限はなく、前述の<<第一の実施態様>>の接着剤塗布層形成工程で記載した塗布方法と同様の方法を用いることができる。
2層目の接着層形成工程は、2層目の接着剤塗布層形成工程で得られた接着剤塗布層を加熱し熱硬化性接着剤成分を硬化させることにより2層目の接着層を形成する。
2層目の接着層形成工程としては、支持基板と2層目の接着剤塗布層が接しかつ2層目の接着剤塗布層と1層目の接着層が接した状態で、2層目の接着剤塗布層が加熱され、2層目の接着層が形成される工程であれば、特に限定されない。
例えば、1層目の接着層及び2層目の接着剤塗布層が形成された半導体基板と支持基板とを用いて、又は1層目の接着層が形成された半導体基板と、2層目の接着剤塗布層が形成された支持基板とを用いて、2つの層(1層目の接着層及び2層目の接着剤塗布層)を挟み込むように2つの基板(半導体基板及び支持基板)を配することによって、支持基板と2層目の接着剤塗布層が接するようにし、かつ2層目の接着剤塗布層と1層目の接着層が接するようにした後、加熱処理を施せばよい。
加熱の温度及び時間としては、熱硬化性接着剤成分が硬化する温度及び時間であれば、特に限定されない。
加熱条件としては、前述の<<第一の実施態様>>の接着層形成工程で記載したと同様の条件を用いることができ、その好適な条件等も上記と同じである。
(貼り合せ工程)
2層目の接着剤塗布層形成工程と2層目の接着層形成工程との間には、半導体基板と支持基板との貼り合せを十分なものとするために、貼り合せ工程を行うことが好ましい。硬化した膜である接着層となる前のある程度の柔軟性のある膜である接着剤塗布層を用いて貼り合わせをすることで、より良好な接合を再現性よく実現できる。
貼り合わせ工程としては、前述の<<第一の実施態様>>で記載したと同様の条件を用いることができ、その好適な条件等も上記と同じである。
<<第三の実施態様>>
接着剤塗布層形成工程及び接着層形成工程を経ることにより接着層を形成した後、第二接着層を形成する。
第二接着層は、第二接着剤塗布層形成工程及び第二接着層形成工程を経て形成される。
第二接着剤塗布層形成工程で用いる塗布方法は、熱硬化性接着剤成分を含む第二接着剤組成物が、支持基板又は接着層のいずれかに接するように塗布されれば、特に制限はなく、前述の<<第一の実施態様>>の接着剤塗布層形成工程の欄で記載した塗布方法と同様の方法を用いることができ、その好適な条件等も上記と同じである。
第二接着層形成工程は、第二接着剤塗布層形成工程で得られた第二接着剤塗布層を加熱し熱硬化性接着剤成分を硬化させることにより第二接着層を形成する。
第二接着層形成工程としては、支持基板と第二接着剤塗布層が接しかつ第二接着剤塗布層と接着層が接した状態で、第二接着剤塗布層が加熱され、第二接着層が形成される工程であれば、特に限定されない。
例えば、接着層及び第二接着剤塗布層が形成された半導体基板と支持基板とを用いて、又は接着層が形成された半導体基板と、第二接着剤塗布層が形成された支持基板とを用いて、2つの層(接着層及び第二接着剤塗布層)を挟み込むように2つの基板(半導体基板及び支持基板)を配することによって、支持基板と第二接着剤塗布層が接するようにし、かつ第二接着剤塗布層と接着層が接するようにした後、加熱処理を施せばよい。
加熱の温度及び時間としては、熱硬化性接着剤成分が硬化する温度及び時間であれば、特に限定されない。
加熱条件としては、前述の<<第一の実施態様>>の接着層形成工程で記載したと同様の条件を用いることができ、その好適な条件等も上記と同じである。
(貼り合せ工程)
第二接着剤塗布層形成工程と第二接着層形成工程との間には、半導体基板と支持基板との貼り合せを十分なものとするために、貼り合せ工程を行うことが好ましい。硬化した膜である接着層となる前のある程度の柔軟性のある膜である接着剤塗布層を用いて貼り合わせをすることで、より良好な接合を再現性よく実現できる。
貼り合わせ工程としては、前述の<<第一の実施態様>>で記載したと同様の条件を用いることができ、その好適な条件等も上記と同じである。
(半導体基板の製造方法)
本発明の積層体は、半導体基板を加工するための仮接着をするために使用され、積層体における半導体基板の加工後に支持基板と半導体基板とが離される用途に使用される。
本発明の半導体基板の製造方法は、半導体基板が加工される加工工程と、支持基板と加工された半導体基板とが離される剥離工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、除去工程等のその他の工程を含む。
<加工工程>
加工工程としては、本発明に係る積層体における半導体基板が加工される工程であれば、特に限定されないが、例えば、研磨処理、貫通電極形成処理などを含む。
<<研磨処理>>
研磨処理としては、例えば、半導体基板のバンプが存在する面と反対側の面を研磨し、半導体基板を薄くする処理であれば、特に限定されないが、例えば、研磨剤や砥石を用いた物理的研磨などが挙げられる。
研磨処理は、半導体基板の研磨に使用されている一般的な研磨装置を用いて行うことができる。
研磨処理によって、半導体基板の厚さが減り、所望の厚さに薄化した半導体基板が得られる。薄化した半導体基板の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、10~300μmであってもよいし、30~100μmであってもよい。
<<貫通電極形成工程>>
研磨された半導体基板には、複数の薄化された半導体基板を積層した際に薄化された半導体基板間の導通を実現するための貫通電極が形成される場合がある。
そのため、半導体基板の製造方法は、研磨処理の後であって剥離工程の前に、研磨された半導体基板に貫通電極が形成される貫通電極形成処理を含んでいてもよい。
半導体基板に貫通電極を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、貫通孔を形成し、形成された貫通孔に導電性材料を充填することなどが挙げられる。
貫通孔の形成は、例えば、フォトリソグラフィーによって行われる。
貫通孔への導電性材料の充填は、例えば、めっき技術によって行われる。
<剥離工程>
剥離工程は、加工工程の後に、支持基板と加工された半導体基板とが離される工程である限り特に限定されない。
例えば、鋭部を有する機(いわゆるディボンダー)材で機械的に剥離する方法が挙げられる。具体的には、例えば、半導体基板と支持基板との間に鋭部を挿入した後、半導体基板と支持基板とを分離する。本発明の積層体の備える第一接着層は空隙を有するために、通常、第一接着層が好適に破断して、加工された半導体基板を、指示基板から好適に離すことができる。
<その他の工程>
<<除去工程>>
除去工程では、剥離工程の後に、加工された半導体基板に付着した接着層残渣を除去する。除去する方法は、特に限定されないが、例えば、塩を含むクリーナーによる溶解除去が挙げられる。また、除去テープ等を用いて除去を実施してもよい。この際、バンプがダメージを受けないように注意する必要がある。
積層体の製造と薄化ウエハーの製造とを一連で行う態様の一例を、図2A~図2Fを用いて説明する。
積層体の製造と薄化ウエハーの製造とを一連で行う態様の他の一例を、図3A~図3Hを用いて説明する。
図2A~図2Fは、積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う一態様を説明するための図である。
まず、バンプ1aを有するウエハー1を用意する(図2A)。
次に、ウエハー1のバンプ1aが存在する面上に、塗布装置10を用いたスピンコーティングによって接着剤組成物を塗布し、接着剤塗布層2aを形成する(図2B)。
次に、接着剤塗布層2a上に、支持基板4を配する(図2C)。
次に、接着剤塗布層を挟み込むようにして、減圧下でウエハー1と支持基板4とを貼り合わせた後、ウエハー1のバンプ1aが存在する面と反対側の面に、加熱装置(ホットプレート)11を配し、加熱装置11によって接着剤塗布層2aを加熱して熱硬化性接着剤成分を硬化させ接着層2に転化する(図2D)。
図2A~図2Dで示した工程によって、積層体が得られる。
次に、薄化ウエハーの製造の一例を説明する。
次に、研磨装置(不図示)を用いてウエハー1のバンプ1aが存在する面と反対側の面を研磨し、ウエハー1を薄化する(図2E)。なお、薄化されたウエハー1に対して貫通電極の形成などが施されてもよい。
次に、剥離装置(不図示)を用いて、薄化したウエハー1と支持基板4とを剥離する(図2F)。接着層2の剥離により、薄化したウエハー1と支持基板4とが剥離する。尚、接着層が剥がされる際、バンプ1aが存在するウエハー1上に接着層の残部が存在していても構わない。この場合、接着層の残部は、例えば、前述の<除去工程>で記載したような方法により除去することができる。
以上によって薄化したウエハー1が得られる。
図3A~図3Hは、積層体の製造及び薄化ウエハーの製造を行う他の一態様を説明するための図である。
まず、バンプ1aを有するウエハー1を用意する(図3A)。
次に、ウエハー1のバンプ1aが存在する面上に、塗布装置12を用いたスピンコーティングによって接着剤組成物を塗布し、接着剤塗布層2aを形成する(図3B)。
次に、ウエハー1のバンプ1aが存在する面と反対側の面に、加熱装置(ホットプレート)13を配し、加熱装置13によって接着剤塗布層2aを加熱して、熱硬化性接着剤成分を硬化させ接着層2に転化する(図3C)。
次に、接着層2上に、塗布装置14を用いたスピンコーティングによって第二接着剤組成物を塗布し、第二接着剤塗布層3aを形成する(図3D)。
次に、第二接着剤塗布層3a上に、支持基板4を配する(図3E)。
次に、接着層及び第二接着剤塗布層を挟み込むようにして、減圧下でウエハー1と支持基板4とを貼り合わせた後、ウエハー1のバンプ1aが存在する面と反対側の面に、加熱装置(ホットプレート)15を配し、加熱装置15によって接着剤塗布層3aを加熱して熱硬化性接着剤成分を硬化させ接着層3に転化する(図3F)。
図3A~図3Fで示した工程によって、積層体が得られる。
次に、薄化ウエハーの製造の一例を説明する。
次に、研磨装置(不図示)を用いてウエハー1のバンプ1aが存在する面と反対側の面を研磨し、ウエハー1を薄化する(図3G)。なお、薄化されたウエハー1に対して貫通電極の形成などが施されてもよい。
次に、剥離装置(不図示)を用いて、薄化したウエハー1と支持基板4とを剥離する(図3H)。接着層2の剥離により、薄化したウエハー1と支持基板4とが剥離する。尚、接着層が剥がされる際、バンプ1aが存在するウエハー1上に接着層の残部が存在していても構わない。この場合、接着層の残部は、例えば、前述の<除去工程>で記載したような方法により除去することができる。
以上によって薄化したウエハー1が得られる。
本発明の接着剤組成物の保存安定性の向上方法は、ポリオルガノシロキサンを含有する熱硬化性接着剤成分と、熱膨張性粒子とを含む、半導体基板を加工するために仮接着するための接着層を形成するために使用される接着剤組成物の保存安定性の向上方法であって、前記熱膨張性粒子の含有量を、前記熱硬化性接着剤成分に対して3.5質量%以下とするものである。熱硬化性接着剤成分、熱膨張性粒子やその含有量等に関する好適な条件は、上記と同じである。
本発明の接着剤組成物の保存安定性の向上方法によれば、接着剤組成物を23℃で保管した場合において、通常、少なくとも保管後5日間、好ましい態様においては、少なくとも保管後10日間、より好ましい態様においては、少なくとも保管後20日間、より一層好ましい態様においては、少なくとも保管後30日間、更に好ましい態様においては、少なくとも保管後60日間との保管期間を経た後であっても、目視で観察したときに、組成物中に沈殿は観察されないという優れた保存安定性を実現できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
[装置]
(1)撹拌機:(株)シンキー製 自転公転ミキサー ARE-500
(2)真空貼り合わせ装置:ズースマイクロテック(株)製、マニュアルボンダー
(3)DSC:ティーエーインスツルメンツ(株) 示差走査熱量計 Q-2000
(4)剥離装置:ズースマイクロテック(株)製、マニュアルデボンダー
使用した熱膨張性粒子(全て、松本油脂製薬(株)製)の物性値を下記表1に示す。なお、使用熱膨張性粒子は、全て、シェルを形成する熱可塑性樹脂がアクリロニトリル系コポリマーシェルであり、その中の揮発性物質が炭化水素である熱膨張性粒子であった。
Figure 2022141031000022
[1]熱硬化性接着剤成分(以下、接着剤成分ともいう)の調製
[調製例1]
自転公転ミキサー専用600mL撹拌容器に、前記成分(a1)としてポリシロキサン骨格とビニル基とを含有するMQ樹脂(ワッカーケミ社製)80g、前記成分(a2)として粘度100mPa・sのSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)2.52g、前記成分(a2)として粘度70mPa・sのSiH基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.89g、前記成分(A3)として1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ワッカーケミ社製)0.22gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。
得られた混合物に、前記成分(A2)として白金触媒(ワッカーケミ社製)0.147gと前記成分(a1)として粘度1,000mPa・sのビニル基含有直鎖状ポリジメチルシロキサン(ワッカーケミ社製)5.81gを撹拌機で5分間撹拌して別途得られた混合物のうち3.96gを加え、撹拌機で5分間撹拌した。
最後に、得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤成分を得た。
[2]接着剤組成物の調製
[実施例1-1]
自転公転ミキサー専用600mL撹拌容器に、調製例1で得られた接着剤成分30gと熱膨張性粒子FN-80GSD 0.15gとプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート(東京化成工業(株)製、以下同様)0.6gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤組成物を得た。
[実施例1-2]
自転公転ミキサー専用600mL撹拌容器に、調製例1で得られた接着剤成分30gと熱膨張性粒子FN-80GSD 0.30gとプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート0.6gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤組成物を得た。
[実施例1-3]
自転公転ミキサー専用600mL撹拌容器に、調製例1で得られた接着剤成分30gと熱膨張性粒子FN-80GSD 0.60gとプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート0.6gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤組成物を得た。
[実施例1-4]
自転公転ミキサー専用600mL撹拌容器に、調製例1で得られた接着剤成分30gと熱膨張性粒子FN-80GSD 0.90gとプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート0.6gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤組成物を得た。
[比較例1-1]
自転公転ミキサー専用600mL撹拌容器に、調製例1で得られた接着剤成分30gと熱膨張性粒子FN-80GSD 1.2gとプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート0.6gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤組成物を得た。
[比較例1-2]
自転公転ミキサー専用600mL撹拌容器に、調製例1で得られた接着剤成分30gと熱膨張性粒子FN-80GSD 1.5gとプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート0.6gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤組成物を得た。
[比較調製例1]
自転公転ミキサー専用600mL撹拌容器に、合成ゴム系接着剤であるスリーボンド1521B(スリーボンドファインケミカル(株))30gと熱膨張性粒子FN-80GSD 0.15gとプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート0.6gを入れ、撹拌機で5分間撹拌した。最後に、得られた混合物をナイロンフィルター300メッシュでろ過し、接着剤組成物を得た。
[3]サンプル基板の作製
[製造例1]
デバイス側のウエハー(半導体基板)としてバンプ付き基板(ウエハー)をカットし、4cm×4cmのサンプル基板を準備した。なお、1つのサンプル基板当たりのバンプの数は、5044個であり、バンプの構造はピラー部が銅で、キャップ部がスズ銀(銀1.8wt%)およびピラーとキャップの間がニッケルからなっている。
[製造例2]
デバイス側のウエハー(半導体基板)としてシリコンウエハーをカットし、4cm×4cmのサンプル基板を準備した。
[4]評価用積層体の作製
[比較例2-1]
調製例1で得られた接着剤成分を、製造例1で得られたサンプル基板のバンプが存在する面に、最終的に得られる積層体中の膜厚が60μm程度となるようにスピンコートし、接着剤塗布層を形成した。
そして、貼り合せ装置を用いて、サンプル基板(シリコンウエハー)と支持基板としての100mmガラスウエハーを、接着剤塗布層を挟み込むように貼り合わせた後、サンプル基板を下にして、ホットプレート上で200℃10分間の加熱処理をすることにより積層体を作製した。なお、貼り合せは、温度23℃、減圧度1,500Paで行った。
[比較例2-2]
調製例1で得られた接着剤成分を、製造例1で得られたサンプル基板のバンプが存在する面に、最終的に得られる積層体中の膜厚が10μm程度となるようにスピンコートした後に、ホットプレート上で200℃5分間の加熱処理をすることにより、接着層を形成した。
さらにサンプル基板の接着層上に、調製例1で得られた接着剤成分を、最終的に得られる積層体中の膜厚が50μm程度となるようにスピンコートし、接着層上に第二接着剤塗布層を形成した。
そして、貼り合せ装置を用いて、サンプル基板(シリコンウエハー)とガラスウエハーを、接着層と第二接着剤塗布層を挟み込むように貼り合わせた後、サンプル基板を下にして、ホットプレート上で200℃10分間の加熱処理をすることにより積層体を作製した。なお、貼り合せは、温度23℃、減圧度1,500Paで行った。
[実施例2-1]
実施例1-1で得られた接着剤組成物を、製造例1で得られたサンプル基板のバンプが存在する面に、最終的に得られる積層体中の膜厚が60μm程度となるようにスピンコートし、サンプル基板上に接着剤剤塗布層を形成した。
そして、貼り合せ装置を用いて、サンプル基板(シリコンウエハー)と支持基板としての100mmガラスウエハーを、接着剤塗布層を挟み込むように貼り合わせた後、サンプル基板を下にして、ホットプレート上で200℃10分間の加熱処理をすることにより積層体を作製した。なお、貼り合せは、温度23℃、減圧度1,500Paで行った。
[実施例2-2]
実施例1-1で得られた接着剤組成物を、製造例1で得られたサンプル基板のバンプが存在する面に、最終的に得られる積層体中の膜厚が30μm程度となるようにスピンコートした後に、ホットプレート上で200℃5分間の加熱処理をすることにより、サンプル基板上に接着層を形成した。
さらにサンプル基板の接着層上に、調製例1で得られた接着剤成分を、最終的に得られる積層体中の膜厚が30μm程度となるようにスピンコートし、接着層上に第二接着剤塗布層を形成した。
そして、貼り合せ装置を用いて、サンプル基板(シリコンウエハー)と支持基板としての100mmガラスウエハーを、接着層及び第二接着剤塗布層を挟み込むように貼り合わせた後、サンプル基板を下にして、ホットプレート上で200℃10分間の加熱処理をすることにより積層体を作製した。なお、貼り合せは、温度23℃、減圧度1,500Paで行った。
[実施例2-3]
実施例1-1で得られた接着剤組成物を、製造例1で得られたサンプル基板のバンプが存在する面に、最終的に得られる積層体中の膜厚が10μm程度となるようにスピンコートした後に、ホットプレート上で200℃5分間の加熱処理をすることにより、サンプル基板上に接着層を形成した。
さらにサンプル基板の接着層上に、調製例1で得られた接着剤成分を、最終的に得られる積層体中の膜厚が50μm程度となるようにスピンコートし、接着層上に第二接着剤塗布層を形成した。
そして、貼り合せ装置を用いて、サンプル基板(シリコンウエハー)と支持基板としての100mmガラスウエハーを、接着層及び第二接着剤塗布層を挟み込むように貼り合わせた後、サンプル基板を下にして、ホットプレート上で200℃10分間の加熱処理をすることにより積層体を作製した。なお、貼り合せは、温度23℃、減圧度1,500Paで行った。
[実施例2-4]
実施例1-2で得られた接着剤組成物を、製造例1で得られたサンプル基板のバンプが存在する面に、最終的に得られる積層体中の膜厚が60μm程度となるようにスピンコートし、サンプル基板上に接着剤塗布層を形成した。
そして、貼り合せ装置を用いて、サンプル基板(シリコンウエハー)と支持基板としての100mmガラスウエハーを、接着剤塗布層を挟み込むように貼り合わせた後、サンプル基板を下にして、ホットプレート上で200℃10分間の加熱処理をすることにより積層体を作製した。なお、貼り合せは、温度23℃、減圧度1,500Paで行った。
[実施例2-5]
実施例1-2で得られた接着剤組成物を、製造例1で得られたサンプル基板のバンプが存在する面に、最終的に得られる積層体中の膜厚が30μm程度となるようにスピンコートした後に、ホットプレート上で200℃5分間の加熱処理をすることにより、サンプル基板上に接着層を形成した。
さらにサンプル基板の接着層上に、調製例1で得られた接着剤成分を、最終的に得られる積層体中の膜厚が30μm程度となるようにスピンコートし、接着層上に第二接着剤塗布層を形成した。
そして、貼り合せ装置を用いて、サンプル基板(シリコンウエハー)と支持基板としての100mmガラスウエハーを、接着層及び第二接着剤塗布層を挟み込むように貼り合わせた後、サンプル基板を下にして、ホットプレート上で200℃10分間の加熱処理をすることにより積層体を作製した。なお、貼り合せは、温度23℃、減圧度1,500Paで行った。
[実施例2-6]
実施例1-2で得られた接着剤組成物を、製造例1で得られたサンプル基板のバンプが存在する面に、最終的に得られる積層体中の膜厚が10μm程度となるようにスピンコートした後に、ホットプレート上で200℃5分間の加熱処理をすることにより、サンプル基板上に接着層を形成した。
さらにサンプル基板の接着層上に、調製例1で得られた接着剤成分を、最終的に得られる積層体中の膜厚が50μm程度となるようにスピンコートし、接着層上に第二接着剤塗布層を形成した。
そして、貼り合せ装置を用いて、サンプル基板(シリコンウエハー)と支持基板としての100mmガラスウエハーを、接着層及び第二接着剤塗布層を挟み込むように貼り合わせた後、サンプル基板を下にして、ホットプレート上で200℃10分間の加熱処理をすることにより積層体を作製した。なお、貼り合せは、温度23℃、減圧度1,500Paで行った。
[5]積層体の剥離試験
ホットプレートを用いて、比較例2-1~2-2及び実施例2-1~2-6で得られた積層体に高温処理を施した。処理は次の手順で行った。300℃に設定したホットプレート上に積層体の支持基板を下にして置き、5分間加熱した。放冷した後、剥離装置を用いて半導体基板と支持基板との間にくさび状の機材を入れ、積層体から半導体基板(バンプ付き基板)を剥離できるか否かを確認した。結果を表2に示す。
Figure 2022141031000023
表2に示される通り、熱膨張性粒子を含まない接着剤成分のみから得られた接着層を有する積層体(比較例2-1及び2-2)からは基板を剥離できなかったのに対し、熱膨張性粒子を含む接着剤組成物から得られた接着層を有する積層体(実施例2-1~2-6)からは基板を剥離できた。
[6]接着剤組成物の保管試験
実施例1-1~1-4及び比較例1-1~1-2で得られた接着剤組成物を、それぞれ、ガラススクリュー管中に23℃で5日間静置して保管し、保管後の沈殿の有無を目視で確認した。結果を表3に示す。なお、全ての接着剤組成物において、調製直後は沈殿は確認されなかった。
Figure 2022141031000024
表3に示される通り、接着剤成分に対する熱膨張性粒子の量が3.5質量%を超える接着剤組成物では沈殿が確認されたのに対し、接着剤成分に対する熱膨張性粒子の量が3.5質量%以下の接着剤組成物では沈殿が確認されなかった。
[7]接着層(加熱後の膜)の観察
[参考例1~2及び比較参考例1~2]
実施例1-1~1-2で得られた接着剤組成物、調製例1で得られた接着剤成分及び比較調製例1で得られた接着剤組成物を、それぞれ、製造例2で得られたサンプル基板上に、最終的な膜厚が10μm程度となるようにスピンコートした後に、サンプル基板を下にしてホットプレート上で200℃5分間の加熱処理をすることにより、サンプル基板上に接着層を形成した。そして、サンプル基板上の接着層を光学顕微鏡で観察した。この際、光学顕微鏡で観察した視野内の概ね30%以上の面積で多孔質状態か確認できた場合を「good」と、概ね30%未満の面積で多孔質状態が確認できた場合を「not good」と、多孔質状態を全く確認できなかった場合を「bad」と評価した。結果を表4に示す。
表4中、実施例1-1~1-2で得られた接着剤組成物を用いた結果が参考例1~2に、調製例1で得られた接着剤成分を用いた結果が比較参考例1に、比較調製例1で得られた接着剤組成物を用いた結果が比較参考例2に、それぞれ対応している。
Figure 2022141031000025
表4に示される通り、良好に剥離ができた積層体が備える、熱膨張性粒子を含む接着剤組成物から得られた接着層(参考例1~2)については、概ね30%以上の面積で多孔質状態が確認できたのに対し、剥離ができなかった積層体が備える、熱膨張性粒子を含まない接着剤成分から得られた接着層(比較参考例1)については、概ね30%未満の面積でしか多孔質状態が確認できなかった。また、硬化性接着剤成分の代わりに、合成ゴム系接着剤成分を用いた場合(比較参考例2)、多孔質状態は全く確認できなかった。
本発明の接着剤組成物は熱硬化性接着剤成分とともに熱膨張性粒子を含むため、接着剤組成物を加熱し、熱硬化性接着剤成分を硬化させて接着層を製造する過程で、熱膨張性粒子からのガスの発生が起こり、これによって接着層中に空隙(多孔質化)が生じた状態で硬化することとなり、この空隙が、空隙がない場合と比較して接着層の接着能の低下を引き起こし、その結果、良好な剥離性を実現できるものと推測される。
[8]熱硬化性接着剤成分の硬化開始温度Tc(℃)の確認
[参考例3]
調製例1で得られた接着剤成分をアルミパンに5mg測り取り、DSCを用いて発熱量を測定した。昇温条件は、室温(23℃)から300℃まで10℃/分で昇温した。縦軸に発熱量を、横軸に温度を取り、発熱量のピークが確認された温度を調製例1で得られた接着剤成分の硬化開始温度とした。測定の結果、調製例1で得られた接着剤成分の硬化開始温度Tc(℃)は125℃であった。
本発明によれば、半導体基板と支持基板との間に介在する層数を抑えつつ、半導体基板の加工後に半導体基板と支持基板とを離す際に、接着層から半導体基板を容易に剥離でき、かつ接着層の品質安定性が担保された積層体を得ることができるため、加工された半導体基板の製造に有用である。
1 ウエハー
1a バンプ
2 接着層
2a 接着剤塗布層
3 第二接着層
3a 第二接着剤塗布層
4 支持基板
10 塗布装置
11 加熱装置
12 塗布装置
13 加熱装置
14 塗布装置
15 加熱装置

Claims (4)

  1. 半導体基板を加工するために仮接着するための接着層を形成するために使用される接着剤組成物であって、
    熱硬化性接着剤成分と、熱膨張性粒子とを含み、
    前記熱硬化性接着剤成分が、ポリオルガノシロキサンを含有し、
    前記熱膨張性粒子が、前記熱硬化性接着剤成分に対して3.5質量%以下含有されている、接着剤組成物。
  2. 前記熱硬化性接着剤成分が、ヒドロシリル化反応によって硬化する成分である、請求項1に記載の接着剤組成物。
  3. 半導体基板と支持基板との間に介在し、かつ前記半導体基板に接する接着層を備える積層体であって、
    前記接着層が、請求項1又は2に記載の接着剤組成物から形成される層である、積層体。
  4. ポリオルガノシロキサンを含有する熱硬化性接着剤成分と、熱膨張性粒子とを含む、半導体基板を加工するために仮接着するための接着層を形成するために使用される接着剤組成物の保存安定性の向上方法であって、
    前記熱膨張性粒子の含有量を、前記熱硬化性接着剤成分に対して3.5質量%以下とすることを特徴とする、接着剤組成物の保存安定性の向上方法。

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