JP2022121368A - 光検知素子、受信装置及び光センサー装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光に対する応答性の良い光検知素子、受信装置及び光センサー装置を提供する。【解決手段】光検知素子100は、第1強磁性層1と、第2強磁性層2と、第1強磁性層1と第2強磁性層2とに挟まれたスペーサ層3と、を備える磁性素子10を有する。第1強磁性層1には、磁性素子10の積層方向と交差する方向から光Lが照射される。【選択図】図1
Description
本発明は、光検知素子、受信装置及び光センサー装置に関する。
光電変換素子は、様々な用途で用いられている。
例えば、特許文献1には、フォトダイオードを用いて、光信号を受信する受信装置が記載されている。フォトダイオードは、例えば、半導体のpn接合を用いたpn接合ダイオード等であり、光を電気信号に変換する。
また例えば、特許文献2には、半導体のpn接合を用いた光センサー及びこの光センサーを用いたイメージセンサーが記載されている。
半導体のpn接合を用いた光検知素子は広く利用されているが、更なる発展のために新たな光検知素子が求められている。また光検知素子は、光を電気信号に変換するものであり、変換精度の向上が求められている。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、光に対する応答性の良い光検知素子、受信装置及び光センサー装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)第1の態様にかかる光検知素子は、第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を備える磁性素子を有し、前記第1強磁性層には、前記磁性素子の積層方向と交差する方向から光が照射される。
(2)上記態様にかかる光検知素子は、前記磁性素子を前記積層方向に挟む第1電極と第2電極とをさらに有し、前記第1電極と前記第2電極とのうち少なくとも一方の側面と、前記磁性素子の側面とは、少なくとも一部で同一の仮想平面に接しており、前記第1強磁性層には、前記仮想平面側から前記光が照射される構成でもよい。
(3)上記態様にかかる光検知素子は、前記磁性素子の側面の一部が平坦面であり、前記平坦面に前記光が照射される構成でもよい。
(4)上記態様にかかる光検知素子は、前記磁性素子の側面の一部が平坦面であり、前記平坦面が前記仮想平面と接していてもよい。
(5)上記態様にかかる光検知素子は、前記平坦面を覆い、前記光を透過できる酸化物膜をさらに有してもよい。
(6)上記態様にかかる光検知素子は、発熱部をさらに有し、前記発熱部は、前記磁性素子に対して前記光が主として照射される光照射方向において、前記磁性素子の後方にあってもよい。
(7)上記態様にかかる光検知素子は、膨張部をさらに有し、前記発熱部は、前記膨張部を加熱できる位置にあり、前記膨張部は、前記磁性素子に対して前記光が主として照射される光照射方向において、前記磁性素子の後方にあり、前記膨張部は、前記第1強磁性層より線熱膨張係数が大きくてもよい。
(8)上記態様にかかる光検知素子は、前記光が、高周波の光信号を含み強度変化する光であってもよい。
(9)上記態様にかかる光検知素子は、前記光が、波長フィルターを透過した光であってもよい。
(10)第2の態様にかかる受信装置は、上記態様にかかる光検知素子を有する。
(11)第3の態様にかかる光センサー装置は、上記態様にかかる光検知素子を有する。
上記態様にかかる光検知素子、受信装置及び光センサー装置は、光に対する応答性が良い。
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
方向について定義する。磁性素子10の積層方向をz方向とし、z方向と直交する面内の一方向をx方向、x方向及びz方向と直交する方向をy方向とする。z方向は、積層方向の一例である。以下、+z方向を「上」、-z方向を「下」と表現する場合がある。+z方向は、第2強磁性層2から第1強磁性層1へ向かう方向である。上下は、必ずしも重力が加わる方向とは一致しない。
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態に係る光検知素子100の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る光検知素子100のyz断面図である。図3は、第1実施形態に係る光検知素子100をz方向から見た平面図である。
図1は、第1実施形態に係る光検知素子100の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る光検知素子100のyz断面図である。図3は、第1実施形態に係る光検知素子100をz方向から見た平面図である。
光検知素子100は、照射される光Lの状態または状態の変化を電気信号に置き換える。本明細書における光Lとは、可視光線に限らず、可視光線よりも波長の長い赤外線や、可視光線よりも波長の短い紫外線も含む。可視光線の波長は例えば、380nm以上800nm未満である。赤外線の波長は例えば、800nm以上1mm以下である。紫外線の波長は例えば、200nm以上380nm未満である。
光検知素子100は、例えば、磁性素子10と第1電極20と第2電極30と光照射部40と絶縁層50とを有する。
光照射部40は、例えば、光源から伝搬した光Lが出射する部分である。光照射部40から出射された光Lは、磁性素子10の側面10sに照射される。光照射部40は、例えば、磁性素子10の側面10sと対向する。
光Lは、磁性素子10に対してz方向と交差する方向から照射される。光Lは、例えば、y方向から磁性素子10の側面10sに照射される。以下、磁性素子10に対して光が主として照射される方向を光照射方向と称する。主として照射されるとは、他の方向からの照射される光の強度よりも当該方向から照射される光の強度が大きいことを意味する。図1及び図2においてy方向が磁性素子10に対する光照射方向である。光Lは、例えば、高周波の光信号を含み強度変化する光、又は、波長フィルターを通過し波長域が制御された光である。高周波の光信号は、例えば、100MHz以上の周波数を有する信号である。
第1電極20は、磁性素子10の第1面に接する。第1面は、z方向において、磁性素子10の第1強磁性層1側の面である。第2電極30は、磁性素子10の第2面に接する。第2面は、z方向において、磁性素子10の第2強磁性層2側の面である。第1電極20と第2電極30とは、例えば、磁性素子10をz方向に挟む。
第1電極20及び第2電極30は、導電性を有する材料からなる。第1電極20及び第2電極30は、例えば、Cu、Al、AuまたはRuなどの金属により構成される。これらの金属の上下にTaやTiを積層してもよい。また第1電極20及び第2電極30として、CuとTaの積層膜、TaとCuとTiの積層膜、TaとCuとTaNの積層膜を用いてもよい。また第1電極20及び第2電極30として、TiNやTaNを用いてもよい。
第1電極20及び第2電極30は、磁性素子10に照射される光の波長域に対して透過性を有してもよい。例えば、第1電極20及び第2電極30は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の酸化物の透明電極材料を含む透明電極でもよい。また第1電極20及び第2電極30は、こられの透明電極材料の中に複数の柱状金属を有する構成としてもよい。
絶縁層50は、第1電極20と第2電極30との間にある。絶縁層50は、例えば、磁性素子10の光Lが照射される側面10sを除く部分を被覆する。絶縁層50は、層間絶縁膜である。絶縁層50は、例えば、Si、Al、Mgの酸化物、窒化物、酸窒化物である。絶縁層50は、例えば、酸化ケイ素(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx)、炭化ケイ素(SiC)、窒化クロム、炭窒化ケイ素(SiCN)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrOx)等である。
磁性素子10は、照射される光Lの状態が変化すると、光Lの状態の変化に応じてz方向の抵抗値が変化する。磁性素子10に照射される光Lの状態が変化すると、光Lの状態の変化に応じて磁性素子10からの出力電圧が変化する。磁性素子10は、例えば、第1強磁性層1と第2強磁性層2とスペーサ層3とを有する。スペーサ層3は、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に位置する。磁性素子10は、これらの他に他の層を有してもよい。
磁性素子10の側面の一部は、光が照射される。例えば、側面10sは、光が照射される。側面10sは、磁性素子10の側面のうち光Lが主として照射される側の側面である。側面10sに照射される光の強度は、他の側面に照射される光の強度よりも大きい。側面10sは、例えば、光Lの受光面である。
磁性素子10の側面の一部は平坦面である。例えば、側面10sは、平坦面である。例えば、平坦面である側面10sに光Lが照射される。
磁性素子10の側面と、第1電極20と第2電極30とのうち少なくとも一方の側面とは、少なくとも一部で同一の仮想平面VSに接している。仮想平面VSは、磁性素子10の側面に対する接平面の一つである。光Lは、第1強磁性層1に対して仮想平面VS側から照射される。
例えば、側面10sと第1電極20の側面20s及び第2電極30の側面30sとは同一の仮想平面VSに接する。側面10sと側面20s及び側面30sとは連続する。側面20sは、第1電極20の側面のうち光Lが主として照射される側の側面である。側面30sは、第2電極30の側面のうち光Lが主として照射される側の側面である。
磁性素子10は、例えば、スペーサ層3が絶縁材料で構成されたMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子である。この場合、磁性素子10は、第1強磁性層1の磁化の状態と第2強磁性層2の磁化の状態との相対的な変化に応じて、z方向の抵抗値(z方向に電流を流した場合の抵抗値)が変化する。このような素子は磁気抵抗効果素子とも呼ばれる。
第1強磁性層1は、外部から光が照射されると磁化の状態が変化する光検知層である。第1強磁性層1は、磁化自由層とも呼ばれる。磁化自由層は、所定の外力が印加された際に磁化の状態が変化する磁性体を含む層である。所定の外力は、例えば、外部から照射される光L、磁性素子10のz方向に流れる電流、外部磁場である。第1強磁性層1の磁化は、第1強磁性層1に照射される光Lの強度に応じて、状態が変化する。
第1強磁性層1は、強磁性体を含む。第1強磁性層1は、例えば、Co、FeまたはNi等の磁性元素のいずれかを少なくとも含む。第1強磁性層1は、上述のような磁性元素と共に、B、Mg、Hf、Gd等の非磁性元素を含んでもよい。第1強磁性層1は、例えば、磁性元素と非磁性元素とを含む合金でもよい。第1強磁性層1は、複数の層から構成されていてもよい。第1強磁性層1は、例えば、CoFeB合金、CoFeB合金層をFe層で挟んだ積層体、CoFeB合金層をCoFe層で挟んだ積層体である。
第1強磁性層1は、膜面内方向(xy面内のいずれかの方向)に磁化容易軸を有する面内磁化膜でも、膜面直方向(z方向)に磁化容易軸を有する垂直磁化膜でもよい。
第1強磁性層1の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。第1強磁性層1の膜厚は、例えば、1nm以上2nm以下であることが好ましい。第1強磁性層1が垂直磁化膜の場合、第1強磁性層1の膜厚が薄いと、第1強磁性層1の上下にある層からの垂直磁気異方性印加効果が強まり、第1強磁性層1の垂直磁気異方性が高まる。つまり、第1強磁性層1の垂直磁気異方性が高いと、磁化M1がz方向に戻ろうとする力が強まる。一方、第1強磁性層1の膜厚が厚いと、第1強磁性層1の上下にある層からの垂直磁気異方性印加効果が相対的に弱まり、第1強磁性層1の垂直磁気異方性が弱まる。
第1強磁性層1の膜厚が薄くなると強磁性体としての体積は小さくなり、厚くなると強磁性体としての体積は大きくなる。外部からのエネルギーが加わったときの第1強磁性層1の磁化の反応しやすさは、第1強磁性層1の磁気異方性(Ku)と体積(V)との積(KuV)に反比例する。つまり、第1強磁性層1の磁気異方性と体積との積が小さくなると、光に対する反応性が高まる。このような観点から、光に対する反応を高めるためには、第1強磁性層1の磁気異方性を適切に設計したうえで第1強磁性層1の体積を小さくすることが好ましい。
第1強磁性層1の膜厚が2nmより厚い場合は、例えばMo,Wからなる挿入層を第1強磁性層1内に設けてもよい。すなわち、z方向に強磁性層、挿入層、強磁性層が順に積層された積層体を第1強磁性層1としてもよい。挿入層と強磁性層との界面における界面磁気異方性により第1強磁性層1全体の垂直磁気異方性が高まる。挿入層の膜厚は、例えば、0.1nm~0.6nmである。
第2強磁性層2は、磁化固定層である。磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の状態が磁化自由層よりも変化しにくい磁性体からなる層である。例えば、磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の向きが磁化自由層よりも変化しにくい。また、例えば、磁化固定層は、所定の外部からのエネルギーが印加された際に磁化の大きさが磁化自由層よりも変化しにくい。第2強磁性層2の保磁力は、例えば、第1強磁性層1の保磁力よりも大きい。第2強磁性層2は、例えば第1強磁性層1と同じ方向に磁化容易軸を有する。第2強磁性層2は、面内磁化膜でも、垂直磁化膜でもよい。
第2強磁性層2を構成する材料は、例えば、第1強磁性層1と同様である。第2強磁性層2は、例えば、0.4nm~1.0nmの厚みのCo、0.1nm~0.5nmの厚みのMo、0.3nm~1.0nmの厚みのCoFeB合金、0.3nm~1.0nmの厚みのFeが順に積層された積層体でもよい。
第2強磁性層2の磁化は、例えば、磁気結合層を介した第3強磁性層との磁気結合によ って固定してもよい。この場合、第2強磁性層2、磁気結合層及び第3強磁性層を合わせたものを磁化固定層と称する場合もある。
第3強磁性層は、例えば、第2強磁性層2と磁気結合する。磁気結合は、例えば、反強磁性的な結合であり、RKKY相互作用により生じる。第3強磁性層を構成する材料は、例えば、第1強磁性層1と同様である。磁気結合層は、例えば、Ru、Ir等である。
スペーサ層3は、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に配置される非磁性層である。スペーサ層3は、導電体、絶縁体もしくは半導体によって構成される層、又は、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層で構成される。スペーサ層3の膜厚は、後述する初期状態における第1強磁性層1の磁化と第2強磁性層2の磁化の配向方向に応じて調整できる。
例えば、スペーサ層3が絶縁体からなる場合は、磁性素子10は、第1強磁性層1とスペーサ層3と第2強磁性層2とからなる磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)を有する。このような素子はMTJ素子と呼ばれる。この場合、磁性素子10はトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magnetoresistance)効果を発現することができる。スペーサ層3が金属からなる場合は、磁性素子10は、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)効果を発現することができる。このような素子はGMR素子と呼ばれる。磁性素子10は、スペーサ層3の構成材料によって、MTJ素子、GMR素子などと呼び名が異なることがあるが、総称して磁気抵抗効果素子とも呼ばれる。
スペーサ層3が絶縁材料で構成される場合、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン又は酸化ケイ素等を含む材料を用いることができる。また、これら絶縁材料に、Al、B、Si、Mgなどの元素や、Co、Fe、Niなどの磁性元素を含んでもよい。第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に高いTMR効果が発現するようにスペーサ層3の膜厚を調整することで、高い磁気抵抗変化率が得られる。TMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層3の膜厚は、0.5~5.0nm程度としてもよく、1.0~2.5nm程度としてもよい。
スペーサ層3を非磁性導電材料で構成する場合、Cu、Ag、Au又はRu等の導電材料を用いることができる。GMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層3の膜厚は、0.5~5.0nm程度としてもよく、2.0~3.0nm程度としてもよい。
スペーサ層3を非磁性半導体材料で構成する場合、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ゲルマニウム、酸化ガリウム又はITO等の材料を用いることができる。この場合、スペーサ層3の膜厚は1.0~4.0nm程度としてもよい。
スペーサ層3として非磁性絶縁体中の導体によって構成される通電点を含む層を適用する場合、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムによって構成される非磁性絶縁体中に、Cu、Au、Alなどの非磁性の導体によって構成される通電点を含む構造としてもよい。また、Co、Fe、Niなどの磁性元素によって導体を構成してもよい。この場合、スペーサ層3の膜厚は、1.0~2.5nm程度としてもよい。通電点は、例えば、膜面に垂直な方向からみたときの直径が1nm以上5nm以下の柱状体である。
磁性素子10は、この他、下地層、キャップ層、垂直磁化誘起層等を有してもよい。下地層は、第2強磁性層2と第2電極30との間にある。下地層は、シード層又はバッファ層である。シード層は、シード層上に積層される層の結晶性を高める。シード層は、例えば、Pt、Ru、Hf、Zr、NiFeCrである。シード層の膜厚は、例えば1nm以上5nm以下である。バッファ層は、異なる結晶間の格子不整合を緩和する層である。バッファ層は、例えば、Ta、Ti、W、Zr、Hf又はこれらの元素の窒化物である。バッファ層の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。
キャップ層は、第1強磁性層1と第1電極20との間にある。キャップ層は、プロセス過程で下層へのダメージを防ぐと共に、アニール時に下層の結晶性を高める。キャップ層の膜厚は、第1強磁性層1に十分な光が照射されるように、例えば3nm以下である。キャップ層は、例えば、MgO、W、Mo、Ru、Ta、Cu、Crまたはこれらの積層膜などである。
垂直磁化誘起層は、第1強磁性層1が垂直磁化膜の場合に形成される。垂直磁化誘起層は、第1強磁性層1上に積層される。垂直磁化誘起層は、第1強磁性層1の垂直磁気異方性を誘起する。垂直磁化誘起層は、例えば酸化マグネシウム、W、Ta、Mo等である。垂直磁化誘起層が酸化マグネシウムの場合は、導電性を高めるために、酸化マグネシウムが酸素欠損していることが好ましい。垂直磁化誘起層の膜厚は、例えば、0.5nm以上2.0nm以下である。
光検知素子100は、各層の積層工程、アニール工程、加工工程によって作製される。まず、基板上に、第2電極30、第2強磁性層2、スペーサ層3、第1強磁性層1を順に積層する。各層は、例えば、スパッタリングにより成膜される。
次いで、積層膜をアニールする。アニール温度は、例えば、250℃から450℃である。基板が回路基板の場合は、400℃以上でアニールしておくことが好ましい。その後、積層膜をフォトリソグラフィ及びエッチングにより所定の柱状体に加工する。柱状体は、円柱でも角柱でもよい。例えば、柱状体をz方向から見た際の最短幅は、10nm以上2000nm以下としてもよく、30nm以上500nm以下としてもよい。
次いで、柱状体の側面を被覆するように、絶縁層50を形成する。絶縁層50は、複数回に亘って積層してもよい。次いで、化学機械研磨(CMP)により絶縁層50から第1強磁性層1の上面を露出させ、第1強磁性層1上に、第1電極20を作製する。
次いで、基板および絶縁層50を切断する。そして、切断面に、例えば、化学機械研磨(CMP)及びイオンビームエッチングを行って絶縁層50を除去することで、絶縁層50から第2電極30、第2強磁性層2、スペーサ層3及び第1強磁性層1を露出させる。これにより、側面10sが平坦面となり、また、側面30s、側面10s及び側面20sが連続する。最後に、側面10sと対向する位置に、光照射部40を配置することにより、光検知素子100が得られる。
次いで、光検知素子100の動作のいくつかの例について説明する。第1強磁性層1には、光強度が変化する光が照射される。光検知素子100からの出力電圧は、光が第1強磁性層1に照射されることにより変化する。第1動作例では、第1強磁性層1に照射される光の強度が、第1強度と第2強度の2段階である場合を例に説明する。第2強度の光の強度は、第1強度の光の強度より大きいものとする。第1強度は、第1強磁性層1に照射される光の強度がゼロの場合でもよい。
図4及び図5は、第1実施形態に係る光検知素子100の第1動作例を説明するための図である。図4は、第1動作例の第1メカニズムを説明するための図であり、図5は、第1動作例の第2メカニズムを説明するための図である。図4及び図5の上のグラフは、縦軸が第1強磁性層1に照射される光の強度であり、横軸が時間である。図4及び図5の下のグラフは、縦軸が磁性素子10のz方向の抵抗値であり、横軸が時間である。
まず第1強磁性層1に第1強度の光が照射された状態(以下、初期状態と称する)において、第1強磁性層1の磁化M1と第2強磁性層2の磁化M2とは平行の関係にあり、磁性素子10のz方向の抵抗値は第1抵抗値R1を示し、磁性素子10からの出力電圧の大きさは第1の値を示す。磁性素子10のz方向の抵抗値は、磁性素子10のz方向にセンス電流Isを流すことで、磁性素子10のz方向の両端に電圧が発生し、その電圧値からオームの法則を用いて求められる。磁性素子10からの出力電圧は、第1電極20と第2電極30との間に発生する。図4に示す例の場合、センス電流Isを第1強磁性層1から第2強磁性層2に向かって流す。この方向にセンス電流Isを流すことで、第1強磁性層1の磁化M1に対して、第2強磁性層2の磁化M2と同じ方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態において磁化M1と磁化M2とが平行になる。また、この方向にセンス電流Isを流すことで、第1強磁性層1の磁化M1が動作時に反転することを防止することができる。
次いで、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化する。第2強度は、第1強度より大きく、第1強磁性層1の磁化M1は初期状態から変化する。第1強磁性層1に光が照射されていない状態における第1強磁性層1の磁化M1の状態と、第2強度における第1強磁性層1の磁化M1の状態とは異なる。磁化M1の状態とは、例えば、z方向に対する傾き角、大きさ等である。
例えば、図4に示すように、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化すると、磁化M1はz方向に対して傾く。また例えば、図5に示すように、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化すると、磁化M1の大きさが小さくなる。例えば、第1強磁性層1の磁化M1が光の照射強度によってz方向に対して傾く場合、その傾き角度は、0°より大きく90°より小さい。
第1強磁性層1の磁化M1が初期状態から変化すると、磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値は第2抵抗値R2を示し、磁性素子10からの出力電圧の大きさは第2の値を示す。第2抵抗値R2は、第1抵抗値R1より大きく、出力電圧の第2の値は第1の値よりも大きい。第2抵抗値R2は、磁化M1と磁化M2とが平行である場合の抵抗値(第1抵抗値R1)と、磁化M1と磁化M2とが反平行である場合の抵抗値との間である。
図4に示す場合は、第1強磁性層1の磁化M1には第2強磁性層2の磁化M2と同じ方向のスピントランスファートルクが作用している。したがって、磁化M1は磁化M2と平行状態に戻ろうとし、第1強磁性層1に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化すると、磁性素子10は初期状態に戻る。図5に示す場合は、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度に戻ると、第1強磁性層1の磁化M1の大きさは元に戻り、磁性素子10は初期状態に戻る。いずれの場合も磁性素子10のz方向の抵抗値は、第1抵抗値R1に戻る。つまり、第1強磁性層1に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化した際に、光検知素子100のz方向の抵抗値は、第2抵抗値R2から第1抵抗値R1へ変化し、磁性素子10からの出力電圧の大きさは、第2の値から第1の値へ変化する。
光検知素子100からの出力電圧は、第1強磁性層1に照射される光の強度の変化に対応して変化し、照射される光の強度の変化を光検知素子100からの出力電圧の変化に変換することができる。すなわち、光検知素子100は、光を電気信号に置き換えることができる。例えば、光検知素子100からの出力電圧が閾値以上の場合を第1信号(例えば、“1”)、閾値未満の場合を第2信号(例えば、“0”)として処理する。
ここでは初期状態において磁化M1と磁化M2とが平行な場合を例に説明したが、初期状態において磁化M1と磁化M2とが反平行でもよい。この場合、磁性素子10のz方向の抵抗値は、磁化M1の状態が変化するほど(例えば、磁化M1の初期状態からの角度変化が大きくなるほど)小さくなる。磁化M1と磁化M2とが反平行な場合を初期状態とする場合は、センス電流Isは第2強磁性層2から第1強磁性層1に向かって流すことが好ましい。この方向にセンス電流Isを流すことで、第1強磁性層1の磁化M1に対して、第2強磁性層2の磁化M2と反対方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態において磁化M1と磁化M2とが反平行になる。
第1動作例では、第1強磁性層1に照射される光が、第1強度と第2強度の2段階であ る場合を例に説明したが、第2動作例では第1強磁性層1に照射される光の強度が多段又はアナログ的に変化する場合について説明する。
図6及び図7は、第1実施形態に係る光検知素子100の第2動作例を説明するための図である。図6は、第1動作例の第1メカニズムを説明するための図であり、図7は、第1動作例の第2メカニズムを説明するための図である。図6及び図7の上のグラフは、縦軸が第1強磁性層1に照射される光の強度であり、横軸が時間である。図6及び図7の下のグラフは、縦軸が磁性素子10のz方向の抵抗値であり、横軸が時間である。
図6の場合、第1強磁性層1に照射される光の強度が大きくなると、光の照射による外部からのエネルギーによって第1強磁性層1の磁化M1は初期状態から傾く。第1強磁性層1に光が照射されていない状態における第1強磁性層1の磁化M1の方向と、光が照射された状態における磁化M1の方向との角度は、いずれも0°より大きく90°より小さい。
第1強磁性層1の磁化M1が初期状態から傾くと、磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値は変化する。そして、磁性素子10からの出力電圧は変化する。例えば、第1強磁性層1の磁化M1の傾きに応じて、磁性素子10のz方向の抵抗値は、第2抵抗値R2、第3抵抗値R3、第4抵抗値R4と変化し、磁性素子10からの出力電圧は第2の値、第3の値、第4の値と変化する。第1抵抗値R1、第2抵抗値R2、第3抵抗値R3、第4抵抗値R4の順に抵抗値は大きくなる。第1の値、第2の値、第3の値、第4の値の順に磁性素子10からの出力電圧は大きくなる。
磁性素子10は、第1強磁性層1に照射される光の強度が変化した際に、磁性素子10からの出力電圧(磁性素子10のz方向の抵抗値)が変化する。例えば、第1の値(第1抵抗値R1)を“0”、第2の値(第2抵抗値R2)を“1”、第3の値(第3抵抗値R3)を“2”、第4の値(第4抵抗値R4)を“3”として規定すると、光検知素子100は4値の情報を出力できる。ここでは一例として4値を読み出す場合を示したが、磁性素子10からの出力電圧(磁性素子10の抵抗値)の閾値の設定により読み出す値の数は自由に設計できる。また光検知素子100は、アナログ値をそのまま出力してもよい。
また図7の場合も同様に、第1強磁性層1に照射される光の強度が大きくなると、光の照射による外部からのエネルギーによって第1強磁性層1の磁化M1の大きさは初期状態から小さくなる。第1強磁性層1の磁化M1が初期状態から小さくなると、磁気抵抗効果素子10のz方向の抵抗値は変化する。そして、磁性素子10からの出力電圧は変化する。例えば、第1強磁性層1の磁化M1の大きさに応じて、磁性素子10のz方向の抵抗値は、第2抵抗値R2、第3抵抗値R3、第4抵抗値R4と変化し、磁性素子10からの出力電圧は第2の値、第3の値、第4の値と変化する。したがって、図6の場合と同様に、光検知素子100は、これらの出力電圧(抵抗値)の違いを、多値又はアナログデータとして出力できる。
また第2動作例の場合も、第1動作例の場合と同様に、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度に戻ると、第1強磁性層1の磁化M1の状態は元に戻り、磁性素子10は初期状態に戻る。
ここでは初期状態において磁化M1と磁化M2とが平行な場合を例に説明したが、第2動作例においても、初期状態において磁化M1と磁化M2とが反平行でもよい。
また第1動作例及び第2動作例では、初期状態において磁化M1と磁化M2とが平行又は反平行な場合を例示したが、初期状態において磁化M1と磁化M2とが直交していてもよい。例えば、第1強磁性層1がxy平面のいずれかの方向に磁化M1が配向した面内磁化膜で、第2強磁性層2がz方向に磁化M2が配向した垂直磁化膜の場合が、この場合に該当する。磁気異方性により磁化M1がxy面内のいずれかの方向に配向し、磁化M2がz方向に配向することで、初期状態において磁化M1と磁化M2とが直交する。
図8及び図9は、第1実施形態に係る光検知素子100の第2動作例の別の例を説明するための図である。図8と図9とは、磁性素子10に印加するセンス電流Isの流れ方向が異なる。図8は、センス電流Isを第1強磁性層1から第2強磁性層2に向かって流している。図9は、センス電流Isを第2強磁性層2から第1強磁性層1に向かって流している。
図8及び図9のいずれの場合でも、磁性素子10にセンス電流Isが流れることで、初期状態において磁化M1に対してスピントランスファートルクが作用している。図8の場合は、磁化M1が第2強磁性層2の磁化M2と平行になるように、スピントランスファートルクが作用している。図9の場合は、磁化M1が第2強磁性層2の磁化M2と反平行になるように、スピントランスファートルクが作用している。図8及び図9のいずれの場合でも、初期状態では、磁化M1に対する磁気異方性による作用がスピントランスファートルクの作用よりも大きいため、磁化M1はxy面内のいずれかの方向を向いている。
第1強磁性層1に照射される光の強度が大きくなると、光の照射による外部からのエネルギーによって第1強磁性層1の磁化M1は初期状態から傾く。磁化M1に加わる光の照射による作用とスピントランスファートルクによる作用との和が、磁化M1に係る磁気異方性による作用より大きくなるためである。第1強磁性層1に照射される光の強度が大きくなると、図8の場合の磁化M1は第2強磁性層2の磁化M2と平行になるように傾き、図9の場合の磁化M1は第2強磁性層2の磁化M2と反平行になるように傾く。磁化M1に作用するスピントランスファートルクの方向が違うため、図8と図9における磁化M1の傾き方向は異なる。
第1強磁性層1に照射される光の強度が大きくなると、図8の場合は磁性素子10の抵抗値は小さくなり、磁性素子10からの出力電圧は小さくなる。図9の場合は磁性素子10の抵抗値は大きくなり、磁性素子10からの出力電圧は大きくなる。
第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度に戻ると、磁化M1に対する磁気異方性による作用により第1強磁性層1の磁化M1の状態は元に戻る。その結果、磁性素子10は初期状態に戻る。
ここでは第1強磁性層1が面内磁化膜であり、第2強磁性層2が垂直磁化膜の例を挙げて説明したが、この関係は逆でもよい。すなわち、初期状態において、磁化M1がz方向に配向し、磁化M2がxy面内のいずれかの方向に配向していてもよい。
上述のように、第1実施形態に係る光検知素子100は、磁性素子10に照射された光を磁性素子10からの出力電圧に置き換えることで、光を電気信号に置き換えることができる。
また磁性素子10には、光Lが側面10s側から照射される。すなわち、光Lは、第1強磁性層1のスペーサ層3側の部分にも照射され易い。第1強磁性層1のスペーサ層3側の部分の磁化の状態の変化は、磁性素子10からの出力電圧変化(磁性素子10のz方向の抵抗値変化)に大きく寄与する。その結果、光Lの状態の変化に対する磁性素子10からの出力電圧変化(磁性素子10の抵抗値変化)の応答性が高い。
以上、第1実施形態について図面を参照して詳述したが、第1実施形態はこの例に限られるものではない。
例えば、図10に示す光検知素子101のように、磁性素子11の側面11sはz方向に対して傾斜していてもよい。側面11sは、第1電極21の側面21s及び第2電極31の側面31sと連続する。側面11sは、平坦面である。第1変形例にかかる光検知素子101は、第1強磁性層1のスペーサ層側の部分にも光が照射され易いため、光検知素子100と同様の効果を奏する。
また図11に示す光検知素子102及び図12に示す光検知素子103のように、磁性素子12、13をz方向から見た形状が矩形以外でもよい。
図11に示す磁性素子12は、z方向から見た形状が円形である。磁性素子12の側面12sの一部と、第1電極20の側面20s及び第2電極30の側面30sとは、同一の仮想平面VSに接している。側面12sは、そのz方向に延びる線状の部分において仮想平面VSに接する。側面12sの仮想平面VSに接する部分と、側面20s及び側面30sとは連続する。
図12に示す磁性素子13は、z方向から見た形状が円の一部が欠けた欠円である。磁性素子13の側面は、平坦面である側面13sと、z方向から見て円弧状の側面とからなる。側面13sと側面20s及び側面30sとは、同一の仮想平面VSに接している。側面13sと側面20s及び側面30sとは連続する。
また図13に示す光検知素子104のように、z方向から見た第1電極22及び第2電極32の形状は矩形以外でもよい。
図13に示す磁性素子12は、z方向から見た形状が円形である。また図13に示す第1電極22及び第2電極32は、z方向から見た形状が楕円形である。磁性素子12の側面12sの一部と、第1電極22の側面22sの一部及び第2電極32の側面32sの一部とは、同一の仮想平面VSに接している。側面12sは、そのz方向に延びる線状の部分において仮想平面VSに接する。側面22sは、そのz方向に延びる線状の部分において仮想平面VSに接する。側面32sは、そのz方向に延びる線状の部分において仮想平面VSに接する。側面12sの仮想平面VSに接する部分と、側面22s及び側面32sの仮想平面VSに接する部分とは連続する。
またここまで、第1電極と第2電極の両方の側面の一部と磁性素子の側面の一部とが同一の仮想平面VSに接している例を図示して説明したが、この場合に限られない。例えば、第1電極と第2電極とのうちの一方の側面の一部と磁性素子の側面の一部とのみが同一の仮想平面VSに接していてもよい。
「第2実施形態」
図14は、第2実施形態に係る光検知素子105のyz断面図である。光検知素子105は、酸化物膜60を有する点が第1実施形態に係る光検知素子100と異なる。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
図14は、第2実施形態に係る光検知素子105のyz断面図である。光検知素子105は、酸化物膜60を有する点が第1実施形態に係る光検知素子100と異なる。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
酸化物膜60は、側面10s、側面20s及び側面30sからなる平坦面を被覆する。図14では、側面10s、側面20s及び側面30sからなる平坦面の全面を酸化物膜60が被覆する例を示したが、一部のみを被覆する構成でもよい。例えば、酸化物膜60は、磁性素子10の側面10sのみを覆う構成でもよい。
酸化物膜60は、磁性素子10に照射される光の波長域に対して透過性を有する。酸化物膜60は、例えば、絶縁性を有する酸化物である。酸化物膜60は、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等である。酸化物膜60は、磁性素子10の側面10sを腐食、摩耗等から保護する。
第2実施形態にかかる光検知素子105は、光検知素子100と同様の効果を奏する。また酸化物膜60を有することで、光検知素子105は、対候性に優れる。
「第3実施形態」
図15は、第3実施形態に係る光検知素子106のyz断面図である。光検知素子106は、発熱部70を有する点が第1実施形態に係る光検知素子100と異なる。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
図15は、第3実施形態に係る光検知素子106のyz断面図である。光検知素子106は、発熱部70を有する点が第1実施形態に係る光検知素子100と異なる。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
発熱部70は、第1強磁性層1を加熱できる位置にある。発熱部70は、例えば、磁性素子10に対する光照射方向において、磁性素子10の後方にある。発熱部70は、光照射方向から見て磁性素子10と重なっていなくてもよい。発熱部70は、磁性素子10の光Lが主として照射される面と磁性素子10を挟んで反対側にある。
発熱部70は、例えば、コイルである。発熱部70は、例えば、Cu、ニッケル・クロム合金、鉄・クロム・アルミニウム合金等からなる抵抗体である。抵抗体に電流が流れることで、発熱部70が発熱する。
発熱部70が発熱すると、第1強磁性層1が加熱される。加熱された第1強磁性層1は膨張する。第1強磁性層1が膨張すると、第1強磁性層1の側面が側面20sと側面30sとを繋ぐ仮想面から突出する。
第3実施形態にかかる光検知素子106は、光検知素子100と同様の効果を奏する。また発熱部70の発熱により第1強磁性層1の側面を側面20sと側面30sとを繋ぐ仮想面から突出させることができ、第1強磁性層1の側面と光照射部40との距離を変えることができる。その結果、光照射部40からの照射強度を変えることなく、第1強磁性層1に照射される光の強さを調整できる。
「第4実施形態」
図16は、第4実施形態に係る光検知素子107のyz断面図である。光検知素子107は、発熱部70及び膨張部80を有する点が第1実施形態に係る光検知素子100と異なる。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
図16は、第4実施形態に係る光検知素子107のyz断面図である。光検知素子107は、発熱部70及び膨張部80を有する点が第1実施形態に係る光検知素子100と異なる。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省く。
発熱部70は、膨張部80を加熱できる位置にある。発熱部70は、例えば、磁性素子10に対する光照射方向において、磁性素子10の後方にある。発熱部70は、光照射方向から見て磁性素子10と重なっていなくてもよい。発熱部70は、磁性素子10の光Lが主として照射される面と磁性素子10を挟んで反対側にある。
膨張部80は、例えば、磁性素子10に対する光照射方向において、磁性素子10の後方にある。膨張部80は、光照射方向から見て磁性素子10と重なっていなくてもよい。膨張部80は、磁性素子10の光Lが主として照射される面と磁性素子10を挟んで反対側にある。膨張部80は、発熱部70が発熱すると加熱され、膨張する。膨張部80は、第1強磁性層1を押し出すことができる位置にある。
膨張部80は、第1強磁性層1より線熱膨張係数の大きな材料からなる。膨張部80は、例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズまたはこれらを含む合金である。
発熱部70が発熱すると、膨張部80が加熱される。加熱された膨張部80が膨張すると、第1強磁性層1が外側に向かって押し出される。その結果、第1強磁性層1の側面が側面20sと側面30sとを繋ぐ仮想面から突出する。
第4実施形態にかかる光検知素子107は、光検知素子100と同様の効果を奏する。また発熱部70の発熱、及び、膨張部80の膨張により、第1強磁性層1の側面と光照射部40との距離を変えることができる。その結果、光照射部40からの照射強度を変えることなく、第1強磁性層1に照射される光の強さを調整できる。
以上、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記の実施形態及び変形例の特徴的な構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
上記の実施形態及び変形例にかかる光検知素子は、イメージセンサー等の光センサー装置、通信システムの送受信装置等に適用できる。
図17は、第1適用例にかかる送受信装置1000のブロック図である。送受信装置1000は、受信装置300と送信装置400とを備える。受信装置300は光信号L1を受信し、送信装置400は光信号L2を送信する。
受信装置300は、例えば、光検知素子301と信号処理部302とを備える。光検知素子301は、上述の実施形態又は変形例のいずれかの光検知素子100~107である。受信装置300において、第1強磁性層1には、高周波の光信号L1を含み強度変化する光が照射される。光検知素子301の積層方向の第1強磁性層1側にレンズを配置して、レンズを通過して集光した光が第1強磁性層1に照射されるようにしてもよい。レンズは、光検知素子301を形成するウエハ工程の中で形成するようにしてもよい。また、導波路を通過した光が光検知素子301の第1強磁性層1に照射されるようにしてもよい。光検知素子301の第1強磁性層1に照射される光は、例えば、レーザー光である。光検知素子301は、光信号L1を電気信号に変換する。光検知素子301の動作は、第1動作例、第2動作例のいずれでもよい。信号処理部302は、光検知素子301で変換した電気信号を処理する。信号処理部302は、光検知素子301から生じる電気信号を処理することにより、光信号L1に含まれる信号を受信する。受信装置300は、光信号L1に含まれる信号を磁性素子10~13からの出力電圧に基づいて受信する。
送信装置400は、例えば、光源401と電気信号生成素子402と光変調素子403とを備える。光源401は、例えば、レーザー素子である。光源401は、送信装置400の外部にあってもよい。電気信号生成素子402は、送信情報に基づき電気信号を生成する。電気信号生成素子402は、信号処理部302の信号変換素子と一体となっていてもよい。光変調素子403は、電気信号生成素子402で生成された電気信号に基づき、光源401から出力された光を変調し、光信号L2を出力する。
図18は、通信システムの一例の概念図である。図18に示す通信システムは、2つの端末装置500を有する。端末装置500は、例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等である。
端末装置500のそれぞれは、受信装置300と送信装置400とを備える。一方の端末装置500の送信装置400から送信された光信号を、他方の端末装置500の受信装置300で受信する。端末装置500間の送受信に使用される光は、例えば可視光である。受信装置300は、光検知素子301として上述の光検知素子100~107を有する。上述の光検知素子100~107は光に対する応答性が良いため図18に示す通信システムは信頼性が高い。
図19は、第2適用例に係る光センサー装置2000の断面の概念図である。光センサー装置2000は、例えば、回路基板110と配線層120と複数の光センサーSとを有する。配線層120及び複数の光センサーSのそれぞれは、回路基板110上に形成されている。
複数の光センサーSのそれぞれは、例えば、光検知素子100と波長フィルターFとレンズRとを有する。図19では光検知素子100を用いる例を示したが、光検知素子100に変えて光検知素子101~107を用いてもよい。光検知素子100には、波長フィルターFを透過した光が照射される。光検知素子100は、上述のように、磁性素子10に照射された光を電気信号に置換する。光検知素子100は、第2動作例で動作することが好ましい。
波長フィルターFは、特定の波長の光を選別して特定の波長域の光を透過させる。それぞれの波長フィルターFが透過させる光の波長域は、同じでも異なってもよい。例えば、光センサー装置2000は、青色(380nm以上490nm未満の波長域)を透過させる波長フィルターFを有する光センサーS(以下、青色センサーと称する。)と、緑色(490nm以上590nm未満の波長域)を透過させる波長フィルターFを有する光センサーS(以下、緑色センサーと称する。)と、赤色(590nm以上800nm未満の波長域)を透過させる波長フィルターFを有する光センサーS(以下、赤色センサーと称する。)と、を有してもよい。青色センサー、緑色センサー、赤色センサーを1画素とし、この画素を配列することで、光センサー装置2000をイメージセンサーとして用いることができる。
レンズRは、光を磁性素子10に向かって集光する。図19に示す光センサーSは、一つの波長フィルターFの下方に一つの光検知素子100が配置されているが、一つの波長フィルターFの下方に複数の光検知素子100を配置してもよい。
回路基板110は、例えば、アナログデジタル変換器111と出力端子112とを有する。光センサーSから送られた電気信号は、アナログデジタル変換器111でデジタルデータに置換され、出力端子112から出力される。
配線層120は、複数の配線121を有する。複数の配線121の間には、層間絶縁膜122がある。配線121は、光センサーSのそれぞれと回路基板110との間、回路基板110に形成された各演算回路の間を電気的に繋ぐ。光センサーSのそれぞれと回路基板110とは、例えば、層間絶縁膜122をz方向に貫通する貫通配線を介して接続される。光センサーSのそれぞれと回路基板110との間の配線間距離を短くすることで、ノイズを低減できる。
配線121は、導電性を有する。配線121は、例えば、Al、Cu等である。層間絶縁膜122は、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁体である。層間絶縁膜122は、例えば、Si、Al、Mgの酸化物、窒化物、酸窒化物である。層間絶縁膜122は、例えば、酸化ケイ素(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx)、炭化ケイ素(SiC)、窒化クロム、炭窒化ケイ素(SiCN)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrOx)等である。
上述の光センサー装置2000は、例えば、端末装置に用いることができる。図20は、端末装置600の一例の模式図である。図20の左は端末装置600の表面であり、図20の右は端末装置600の裏面である。端末装置600は、カメラCAを有する。上述の光センサー装置2000は、このカメラCAの撮像素子に用いることができる。図20では、端末装置600の一例として、スマートフォンを例示したが、この場合に限られない。端末装置600は、スマートフォン以外に、例えば、タブレット、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等である。
1…第1強磁性層、2…第2強磁性層、3…スペーサ層、10,11,12,13…磁性素子、20,21,22…第1電極、30,31,32…第2電極、10s,11s,12s,13s,20s,21s,22s,30s,31s,32s…側面、40…光照射部、50…絶縁層、60…酸化膜、70…発熱部、80…膨張部、100,101,102,103,104,105,106,107…光検知素子、110…回路基板、111…アナログデジタル変換器、112…出力端子、120…配線層、121…配線、122…層間絶縁膜、300…受信装置、301…光検知素子、302…信号処理部、400…送信装置、401…光源、402…電気信号生成素子、403…光変調素子、500,600…端末装置、1000…送受信装置、2000…光センサー装置、CA…カメラ、F…波長フィルター、R…レンズ、S…光センサー
Claims (11)
- 第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を備える磁性素子を有し、
前記第1強磁性層には、前記磁性素子の積層方向と交差する方向から光が照射される、光検知素子。 - 前記磁性素子を前記積層方向に挟む第1電極と第2電極とをさらに有し、
前記第1電極と前記第2電極とのうちの少なくとも一方の側面と、前記磁性素子の側面とは、少なくとも一部で同一の仮想平面に接しており、
前記第1強磁性層には、前記仮想平面側から前記光が照射される、請求項1に記載の光検知素子。 - 前記磁性素子の側面の一部が平坦面であり、
前記平坦面に前記光が照射される、請求項1又は2に記載の光検知素子。 - 前記磁性素子の側面の一部が平坦面であり、
前記平坦面が前記仮想平面と接している、請求項2に記載の光検知素子。 - 前記平坦面を覆い、前記光を透過できる酸化物膜をさらに有する、請求項3又は4に記載の光検知素子。
- 発熱部をさらに有し、
前記発熱部は、前記磁性素子に対して前記光が主として照射される光照射方向において、前記磁性素子の後方にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の光検知素子。 - 膨張部をさらに有し、
前記発熱部は、前記膨張部を加熱できる位置にあり、
前記膨張部は、前記磁性素子に対して前記光が主として照射される光照射方向において、前記磁性素子の後方にあり、
前記膨張部は、前記第1強磁性層より線熱膨張係数が大きい、請求項6に記載の光検知素子。 - 前記光は、高周波の光信号を含み強度変化する光であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の光検知素子。
- 前記光は、波長フィルターを透過した光であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の光検知素子。
- 請求項1~8のいずれか一項に記載の光検知素子を有する受信装置。
- 請求項1~7及び請求項9のいずれか一項に記載の光検知素子を有する光センサー装置。
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