JP2022070205A - 光検知素子及び受信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光検知能力が高い光検知素子を提供する。【解決手段】この光検知素子は、光が照射される第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を備え、前記第1強磁性層は、前記スペーサ層に接する第1領域と、前記第1領域より前記スペーサ層から離れた位置にある第2領域とを有し、前記第1領域はCoFeB合金であり、前記第2領域は構成元素としてFeとGdとを主に含む磁性体である。【選択図】図1
Description
本発明は、光検知素子及び受信装置に関する。
インターネットの普及に伴い通信量は飛躍的に増大しており、光通信の重要性が非常に高まっている。光通信は、電気信号を光信号に変換し、光信号を用いて送受信を行う通信手段である。
例えば、特許文献1には、フォトダイオードを用いて、光信号を受信する受信装置が記載されている。フォトダイオードは、例えば、半導体のpn接合を用いたpn接合ダイオード等である。また例えば、特許文献2には、半導体のpn接合を用いた光センサー及びこの光センサーを用いたイメージセンサーが記載されている。
半導体のpn接合を用いた光検知素子は広く利用されているが、更なる発展のために新たな光検知素子が求められている。また光検知素子は、光を電気信号に変換するものであり、光を電気信号に変換する効率の高い光検知能力の高いものが求められている。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、光検知能力の高い光検知素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)第1の態様にかかる光検知素子は、光が照射される第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を備え、前記第1強磁性層は、前記スペーサ層に接する第1領域と、前記第1領域より前記スペーサ層から離れた位置にある第2領域とを有し、前記第1領域はCoFeB合金であり、前記第2領域は構成元素としてFeとGdとを主に含む磁性体である。
(2)上記態様にかかる光検知素子は、前記第1領域と前記第2領域との間に中間層をさらに有し、前記中間層は、Mo、Ru、Ta、W、Ptからなる群から選択されるいずれか1種以上の元素を含んでもよい。
(3)上記態様にかかる光検知素子は、前記第2強磁性層は、前記スペーサ層に接する第3領域と、前記第3領域より前記スペーサ層から離れた位置にありボロンを含む第4領域とを有し、前記第3領域は、前記第4領域よりボロンの濃度が低い、又は、ボロンを含まなくてもよい。
(4)上記態様にかかる光検知素子において、前記第1領域は、前記第2領域よりボロンの濃度が高くてもよい。
(5)上記態様にかかる光検知素子において、前記第3領域は、Fe又はCoFe合金を含み、結晶構造がbcc構造であってもよい。
(6)第2の態様にかかる受信装置は、上記態様にかかる光検知素子を有する。
上記態様にかかる光検知素子は、光検知能力が高い。
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
方向について定義する。光検知素子10の積層方向をz方向とし、z方向と直交する面内の一方向をx方向、x方向及びz方向と直交する方向をy方向とする。z方向は、積層方向の一例である。以下、+z方向を「上」、-z方向を「下」と表現する場合がある。+z方向は、基板Sbから光検知素子10へ向かう方向である。上下は、必ずしも重力が加わる方向とは一致しない。
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態に係る通信システム1000の概念図である。図1に示す通信システム1000は、複数の送受信装置300と、送受信装置300間を繋ぐファイバーFBと、を備える。通信システム1000は、例えば、データセンター内及びデータセンター間のような短、中距離の通信、都市間のような長距離の通信に用いることができる。送受信装置300は、例えば、データセンター内に設置される。ファイバーFBは、例えば、データセンター間を繋ぐ。通信システム1000は、例えば、ファイバーFBを介して送受信装置300の間の通信を行う。通信システム1000は、ファイバーFBを介さずに、送受信装置300の間の通信を無線で行ってもよい。
図1は、第1実施形態に係る通信システム1000の概念図である。図1に示す通信システム1000は、複数の送受信装置300と、送受信装置300間を繋ぐファイバーFBと、を備える。通信システム1000は、例えば、データセンター内及びデータセンター間のような短、中距離の通信、都市間のような長距離の通信に用いることができる。送受信装置300は、例えば、データセンター内に設置される。ファイバーFBは、例えば、データセンター間を繋ぐ。通信システム1000は、例えば、ファイバーFBを介して送受信装置300の間の通信を行う。通信システム1000は、ファイバーFBを介さずに、送受信装置300の間の通信を無線で行ってもよい。
図2は、第1実施形態に係る送受信装置300のブロック図である。送受信装置300は、受信装置100と送信装置200とを備える。受信装置100は光信号L1を受信し、送信装置200は光信号L2を送信する。本明細書における光とは、可視光線に限らず、可視光線よりも波長の長い赤外線や、可視光線よりも波長の短い紫外線も含む。
受信装置100は、例えば、光検知素子10と信号処理部11とを備える。光検知素子10は、光信号L1を電気信号に変換する。光検知素子10の詳細は後述する。信号処理部11は、光検知素子10で変換した電気信号を処理する。信号処理部11は、光検知素子10から生じる電気信号を処理することにより、光信号L1に含まれる信号を受信する。
送信装置200は、例えば、光源201と電気信号生成素子202と光変調素子203とを備える。光源201は、例えば、レーザー素子である。光源201は、送信装置200の外部にあってもよい。電気信号生成素子202は、送信情報に基づき電気信号を生成する。電気信号生成素子202は、信号処理部11の信号変換素子と一体となっていてもよい。光変調素子203は、電気信号生成素子202で生成された電気信号に基づき、光源201から出力された光を変調し、光信号L2を出力する。
図3は、第1実施形態に係る送受信装置300の回路図である。図3では、信号処理部11を省略している。
受信装置100は、例えば、光検知素子10と第1電極15と第2電極16と入力端子Pinと出力端子Poutと基準電位端子PGとを備える。第1電極15と第2電極16とは、光検知素子10を積層方向に挟む。第1電極15は、例えば、光信号L1を含む光が照射される側の電極である。光信号L1に用いる光の波長は例えば、300nm以上2μm以下であり、光信号L1に用いる光は、可視光でも、近赤外光でもよい。
第1電極15は、例えば、入力端子Pin及び出力端子Poutに接続されている。第2電極16は、例えば、基準電位端子PGに接続されている。入力端子Pinは、電源PSに接続されている。電源PSは、受信装置100の外部にあってもよい。電源PSは、光検知素子10にセンス電流等を印加する。光検知素子に10に外部から電流を流す必要が無い場合は、入力端子Pinおよび電源PSは無くてもよい。出力端子Poutは、光検知素子10を積層方向に挟む第1電極15と第2電極16との間の電圧を出力する。光検知素子10の積層方向の抵抗値は、光検知素子10の積層方向にセンス電流を流すことでオームの法則から求められる。出力端子Poutは、信号処理部11に接続されている。基準電位端子PGは基準電位に接続され、受信装置100の基準電位を決める。図3における基準電位は、グラウンドGである。グラウンドGは受信装置100の外部に設けられてもよい。基準電位は、グラウンドG以外でもよい。
受信装置100と送信装置200とは、例えば、共通の基準電位(グラウンドG)に接続されている。受信装置100と送信装置200とは、基準電位が異なってもよい。受信装置100と送信装置200との基準電位が同じであると、ノイズの発生を低減できる。
図4は、第1実施形態に係る受信装置100の断面図である。受信装置100は、例えば、光検知素子10と集積回路20と層間絶縁膜30と備える。光検知素子10と集積回路20と層間絶縁膜30とは、例えば、同一の基板Sb上に形成されている。
集積回路20は、光検知素子10から出力された信号を処理する信号処理部11を含む。集積回路20は、例えば、光検知素子10からの出力電圧(光検知素子10のz方向の抵抗値)が閾値以上の場合を第1信号(例えば、“1”)とし、閾値未満の場合を第2信号(例えば、“0”)として処理する。送信装置200が同一の基板Sb上に形成される場合、集積回路20は、光源201、電気信号生成素子202、光変調素子203を含んでもよい。集積回路20と光検知素子10とは、例えば、層間絶縁膜30を貫通する貫通配線wを介して接続されている。貫通配線wに変えてワイヤボンディングで、これらの間を接続してもよい。
層間絶縁膜30は、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁体である。層間絶縁膜30は、例えば、Si、Al、Mgの酸化物、窒化物、酸窒化物である。層間絶縁膜30は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、炭化シリコン(SiC)、窒化クロム、炭窒化シリコン(SiCN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrOx)等である。
図5は、第1実施形態に係る光検知素子10の断面図である。図5では、第1電極15及び第2電極16を同時に図示し、強磁性体の初期状態における磁化の向きを矢印で表している。本明細書において、強磁性は、フェリ磁性を含む。
光検知素子10は、少なくとも第1強磁性層1と第2強磁性層2とスペーサ層3とを有する。スペーサ層3は、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に位置する。光検知素子10は、これらの他に、第3強磁性層4、磁気結合層5、下地層6、垂直磁化誘起層7、キャップ層8、側壁絶縁層9を有してもよい。
光検知素子10は、例えば、スペーサ層3が絶縁材料で構成されたMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子である。である。この場合、光検知素子10は、第1強磁性層1の磁化の向きと第2強磁性層2の磁化の向きとの相対角の変化に応じて、z方向の抵抗値(z方向に電流を流した場合の抵抗値)が変化する素子である。このような素子は磁気抵抗効果素子とも呼ばれる。
第1強磁性層1は、外部から光が照射されると磁化方向が変化する光検知層である。第1強磁性層1は、磁化自由層とも呼ばれる。磁化自由層は、所定の外力が印加された際に磁化の向きが変化する磁性体を含む層である。所定の外力は、例えば、外部から照射される光、光検知素子10のz方向に流れる電流、外部磁場である。強磁性体の磁化は、強磁性体に照射される光の強度の高速な変化(高周波の光信号)に追随して方向を変えることができるため、第1強磁性層1を光検知層として利用することで、受信装置100は高周波の光信号を受信することができ、高速の光通信が可能となる。
第1強磁性層1は、例えば、第1領域1A、第2領域1B、中間層1Cを含む。第1領域1Aは、スペーサ層3に接する。第2領域1Bは、第1領域1Aよりスペーサ層3から離れた位置にある。中間層1Cは、第1領域1Aと第2領域1Bとの間にある。第1領域1A及び第2領域1Bのそれぞれは、例えば、x方向及びy方向に層状に広がる。
第1領域1Aは、強磁性体を含む。第1領域1Aは、例えば、第2領域1Bよりボロンの濃度が高くてもよい。第1領域1Aは、CoFeB合金である。スペーサ層3に接する第1領域1AがCoFeB合金であると、光検知素子10の磁気抵抗変化率(MR変化率)が大きくなる。そのため、スペーサ層3に接する第1領域1AがCoFeB合金であると、第1領域1Aの磁化の状態の変化に対する光検知素子10の出力変化が大きくなる。CoFeB合金の組成比は適宜変更可能である。CoFeB合金の元素比は、例えば、CoとFeとBの総和が100となる条件の下で、Co:Fe:B=15~55:25~65:15~25である。
第1領域1Aの膜厚は、例えば、5Å以上20Å以下であり、好ましくは8Å以上15Å以下であり、より好ましくは10Åである。以下、各層の膜厚及び各領域の膜厚は、xy面内の異なる10点におけるz方向の厚みの平均値とする。
第1領域1Aを構成するCoFeB合金の結晶構造は、例えば、bcc構造である。
第2領域1Bは、構成元素としてFeとGdとを主に含む磁性体である。第2領域1Bは、例えば、GdFe合金、GdFeCo合金、FeとGdとが積層された積層膜、 又は、FeCo合金とGdとが積層された積層膜である。例えば、GdFe合金又はGdFeCo合金の一例として、Gdx(Fe1-yCoy)1-xがある。ここでxは、例えば0.2以上0.3以下であり、yは、例えば0以上0.2以下である。また例えば、積層膜の一例として、[Fe1-yCoy/Gd]zがある。ここでyは、例えば0以上0.2以下で、zは積層数であり、例えば4以上10以下である。それぞれのFe1-yCoy層の厚さは、例えば3.0Å以上8.0Å以下である。それぞれのGd層の厚さは、例えば、0.5Å以上3.0Å以下である。第2領域1Bは、単一の合金でもよく、単一の元素からなる層が複数積層されたものでもよい。第2領域1Bは、その構成元素のうちFeとGdとの合計のモル分率が例えば70%以上である。
第2領域1Bは、例えば、膜面直方向(z方向)に磁化容易軸を有する垂直磁化膜である。第2領域1Bの膜厚は、例えば、10Å以上200Å以下である。第2領域1Bの厚さは、第1領域1Aより厚くてもよい。
第2領域1Bを構成するFeとGdとを含む磁性体の結晶構造は、例えば、bcc構造である。
中間層1Cは、Mo、Ru、Ta、W、Ptからなる群から選択されるいずれか1種以上の元素を含む。中間層1Cは、非磁性層である。中間層1Cは、例えば、Mo、Ru、Ta、W、Ptのいずれかからなる。第1領域1Aと第2領域1Bとは、中間層1Cを挟んで、磁気結合している。中間層1Cの膜厚は、例えば、10Å以下である。中間層1Cの膜厚は、例えば、1Å以上10Å以下である。
第1強磁性層1の全体の膜厚は、例えば、1nm以上10nm以下である。第1強磁性層1の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下であることが好ましい。第1強磁性層1の膜厚が薄いと、第1強磁性層1の垂直磁気異方性が高まる。第1強磁性層1に第1領域1Aを設けることで、第1強磁性層1が薄い場合でも、光検知素子10のMR比が向上し、第1強磁性層1の磁化の状態の変化に対する光検知素子10の出力変化の割合が向上する。
第1強磁性層1が中間層1Cを有すると、第1領域1Aと第2領域1Bの結晶構造の違いによる影響を緩和できる。中間層1Cが第1領域1Aと第2領域1Bの結晶構造の違いを緩和することで、中間層1C上に成膜される第2領域1Bの結晶性が向上する。
第2領域1Bは、Fe原子の磁気モーメントとGd原子の磁気モーメントとがフェリ磁性的に結合していると考えられる。Gd原子の磁気モーメントは、光の照射に対して状態が変化しやすい。したがって、第2領域1Bの磁化は、第1強磁性層1において第2領域1Bが存在しない単独の場合の第1領域1Aの磁化と比較して、光の照射に対して状態が変化しやすい。第2領域1Bの磁化の状態が変化すると、中間層1Cを挟んで第2領域1Bと磁気結合する第1領域1Aの磁化の状態も変化する。
第2強磁性層2は、磁化固定層である。磁化固定層は、所定の外力が印加された際に磁化の向きが磁化自由層よりも変化しにくい磁性体からなる層である。第2強磁性層2の保磁力は、例えば、第1強磁性層1の保磁力よりも大きい。第2強磁性層2は、第1強磁性層1と同じ方向に磁化容易軸を有する。第2強磁性層2は、面内磁化膜でも、垂直磁化膜でもよい。
第2強磁性層2は、第3領域2Aと第4領域2Bとを有する。第3領域2Aは、スペーサ層3に接する。第4領域2Bは、第3領域2Aよりスペーサ層3から離れた位置にある。第3領域2A及び第4領域2Bのそれぞれは、例えば、x方向及びy方向に層状に広がる。
第3領域2Aは、強磁性体を含む。第3領域2Aは、例えば、ボロンを含まない又は第4領域2Bよりボロン濃度が低くてもよい。第3領域2Aは、例えば、Fe又はCoFe合金を含む。第3領域2Aは、Fe又はCoFe合金からなってもよい。第3領域2Aの結晶構造は、例えば、bcc構造でもよい。第3領域2Aの膜厚は、例えば、5Å以上10Å以下である。第2強磁性層2が第3領域2Aを有すると、光検知素子10のMR比が向上する。
第4領域2Bは、強磁性体を含む。第4領域2Bは、単一の合金でもよく、単一の元素からなる層が複数積層されたものでもよい。第4領域2Bは、例えば、第3領域2Aよりボロン濃度が高くてもよい。第4領域2Bは、例えば、CoFeB合金を含む。第4領域2Bは、内部に、例えばW,Taからなる非磁性の挿入層を有してもよい。第4領域2Bは、例えば、スペーサ層3から遠い側から順に、Co又はCoFe合金、CoとPtとの積層膜、Mo,Taからなる挿入層、CoFeB合金を有してもよい。第4領域2Bの膜厚は、例えば、30Å以上100Å以下であり、好ましくは50Å以上70Å以下である。
第2強磁性層2の磁化は、例えば、磁気結合層5を介した第3強磁性層4との磁気結合によって固定してもよい。この場合、第2強磁性層2、磁気結合層5及び第3強磁性層4を合わせたものを磁化固定層と称する場合もある。
第3強磁性層4は、例えば、第2強磁性層2と磁気結合する。磁気結合は、例えば、反強磁性的な結合であり、RKKY相互作用により生じる。第3強磁性層4を構成する材料は、例えば、第1強磁性層1と同様である。第3強磁性層4は、例えば、CoとPtとが交互に積層された積層膜、CoとNiとが交互に積層された積層膜である。磁気結合層5は、例えば、Ru、Ir等である。磁気結合層5の膜厚は、例えば、RKKY相互作用によって第2強磁性層2と第3強磁性層4とが反強磁性的に結合する膜厚である。
スペーサ層3は、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に配置される非磁性層である。スペーサ層3は、導電体、絶縁体もしくは半導体によって構成される層、又は、絶縁体中に導体によって構成される通電点を含む層で構成される。スペーサ層3の膜厚は、後述する初期状態における第1強磁性層1の磁化M1と第2強磁性層2の磁化M2の配向方向に応じて調整できる。
例えば、スペーサ層3が絶縁体からなる場合は、光検知素子10は、第1強磁性層1とスペーサ層3と第2強磁性層とからなる磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)を有する。このような素子はMTJ素子と呼ばれる。この場合、光検知素子10はトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magnetoresistance)効果を発現することができる。例えば、スペーサ層3が金属からなる場合は、光検知素子10は、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)効果を発現することができる。このような素子はGMR素子と呼ばれる。光検知素子10は、スペーサ層3の構成材料によって、MTJ素子、GMR素子などと呼び名が異なることがあるが、総称して磁気抵抗効果素子とも呼ばれる。
スペーサ層3が絶縁材料で構成される場合、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン又は酸化シリコン等の材料を用いることができる。第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に高いTMR効果が発現するようにスペーサ層3の膜厚を調整することで、高い磁気抵抗変化率が得られる。TMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層3の膜厚は、0.5~10.0nm程度としてもよい。
スペーサ層3を非磁性導電材料で構成する場合、Cu、Ag、Au又はRu等の導電材料を用いることができる。GMR効果を効率よく利用するためには、スペーサ層3の膜厚は、0.5~3.0nm程度としてもよい。
スペーサ層3を非磁性半導体材料で構成する場合、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ゲルマニウム、酸化ガリウム又はITO等の材料を用いることができる。この場合、スペーサ層3の膜厚は1.0~4.0nm程度としてもよい。
スペーサ層3として非磁性絶縁体中の導体によって構成される通電点を含む層を適用する場合、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムによって構成される非磁性絶縁体中に、CoFe、CoFeB、CoFeSi、CoMnGe、CoMnSi、CoMnAl、Fe、Co、Au、Cu、AlまたはMgなどの導体によって構成される通電点を含む構造とすることが好ましい。この場合、スペーサ層3の膜厚は、0.5~2.0nm程度としてもよい。通電点は、例えば、直径が1nm以上5nm以下の柱状体である。
図5に示す下地層6は、例えば、第2電極16上にある。下地層6は、シード層又はバッファ層である。シード層は、シード層上に積層される層の結晶性を高める。シード層は、例えば、Pt、Ru、Hf、Zr、NiFeCrである。シード層の膜厚は、例えば1nm以上5nm以下である。バッファ層は、異なる結晶間の格子不整合を緩和する層である。バッファ層は、例えば、Ta、Ti、W、Zr、Hf又はこれらの元素の窒化物である。バッファ層の膜厚は、例えば、1nm以上5nm以下である。
キャップ層8は、第1強磁性層1と第1電極15との間(第2領域1Bと第1電極15との間)にある。キャップ層8は、第1強磁性層1上に積層されて第1強磁性層1と接する垂直磁化誘起層7を含んでいてもよい。垂直磁化誘起層7は、第1強磁性層1の垂直磁気異方性を誘起する。垂直磁化誘起層7は、例えば酸化マグネシウム、W、Ta、Mo等である。垂直磁化誘起層7が酸化マグネシウムの場合は、導電性を高めるために、酸化マグネシウムが酸素欠損していることが好ましい。垂直磁化誘起層7の膜厚は、例えば、0.5nm以上5.0nm以下である。一例として、第1強磁性層1の第2領域1Bは、Mo層と中間層1Cとの間にある。Mo層は、キャップ層8の一部であり第2領域1Bに接する。この場合、中間層1Cの厚みは、キャップ層8の一部であり第2領域1Bに接するMo層の厚みよりも薄いことが好ましい。
キャップ層8は、プロセス過程で下層へのダメージを防ぐと共に、アニール時に下層の結晶性を高める。キャップ層8の膜厚は、第1強磁性層1に十分な光が照射されるように、例えば10nm以下である。
側壁絶縁層9は、第1強磁性層1及び第2強磁性層2を含む積層体の周囲を覆う。側壁絶縁層9は、例えば、層間絶縁膜30と同様の材料からなる。
第1電極15は、例えば、光信号L1の使用波長域の光に対して透過性を有する。光信号L1に使用される光の使用波長域は、例えば、300nm以上2μm以下であり、可視光域、近赤外光域を含む。第1電極15は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)等の透明電極である。第1電極15は、透明電極材料の中に複数の柱状金属を有する構成としてもよい。また第1電極15は、光が照射される照射面に反射防止膜を有してもよい。
第2電極16は、導電性を有する材料からなる。第2電極16は、例えば、TaとRuとTaの積層膜、TaとCuとTaの積層膜、TaとCuとTiの積層膜、TaとCuとTaNの積層膜である。
光検知素子10は、各層の積層工程、アニール工程、加工工程によって作製される。まず、第2電極16上に、下地層6、第3強磁性層4、磁気結合層5、第2強磁性層2、スペーサ層3、第1強磁性層1、垂直磁化誘起層7、キャップ層8の順に積層する。各層は、例えば、スパッタリングにより成膜される。
次いで、積層膜をアニールする。アニール温度は、例えば、250℃以上400℃以下である。その後、積層膜をフォトリソグラフィ及びエッチングにより所定の柱状体に加工する。柱状体は、円柱でも角柱でもよい。例えば、柱状体をz方向から見た際の最短幅は、10nm以上1000nm以下である。
次いで、柱状体の側面を被覆するように、絶縁層を形成する。絶縁層は、側壁絶縁層9となる。側壁絶縁層9は、複数回に亘って積層してもよい。次いで、化学機械研磨により側壁絶縁層9からキャップ層8の上面を露出し、キャップ層8上に、第1電極15を作製する。上記工程により、光検知素子10が得られる。
次いで、第1実施形態に係る光検知素子10の動作の一例について説明する。第1強磁性層1には、光強度変化を有する光信号L1を含む光が照射される。光検知素子10のz方向からの出力電圧は、光信号L1を含む光の第1強磁性層1への照射により変化する。第1強磁性層1に照射される光の強度が、第1強度と第2強度の2段階である場合を例に説明する。第2強度の光の強度は、第1強度の光の強度より大きいものとする。第1強度は、第1強磁性層1に照射される光の強度がゼロの場合でもよい。
図6及び図7は、第1実施形態に係る光検知素子10の動作の一例を説明するための図である。光検知素子10の動作のメカニズムとして2つのメカニズムが考えられ、図6は、第1メカニズムを説明するための図であり、図7は、第2メカニズムを説明するための図である。図6及び図7の上のグラフは、縦軸が第1強磁性層1に照射される光の強度であり、横軸が時間である。図6及び図7の下のグラフは、縦軸が光検知素子10のz方向の抵抗値であり、横軸が時間である。
まず第1強磁性層1に第1強度の光が照射された状態(以下、初期状態と称する)において、第1強磁性層1の磁化M1と第2強磁性層2の磁化M2とは平行の関係にあり、光検知素子10のz方向の抵抗値は第1抵抗値R1を示し、光検知素子10からの出力電圧の大きさは第1の値を示す。光検知素子10のz方向の抵抗値は、光検知素子10のz方向にセンス電流Isを流すことで、光検知素子10のz方向の両端に電圧が発生し、その電圧値からオームの法則を用いて求められる。光検知素子10からの出力電圧は、第1電極15と第2電極16との間に発生する。図6に示す例の場合、センス電流Isを第1強磁性層1から第2強磁性層2に向かって流す。この方向にセンス電流Isを流すことで、第1強磁性層1の磁化M1に対して、第2強磁性層2の磁化M2と同じ方向のスピントランスファートルクが作用し、初期状態において磁化M1と磁化M2とが平行になる。また、この方向にセンス電流Isを流すことで、第1強磁性層1の磁化M1が動作時に反転することを防止することができる。
次いで、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化する。第2強度は、第1強度より大きく、第1強磁性層1の磁化M1は初期状態から変化する。磁化M1の状態とは、例えば、z方向に対する傾き角、大きさ等である。例えば、図6に示すように、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化すると、磁化M1はz方向に対して傾く。第1強磁性層1に光信号L1を含む光が照射されていない状態における第1強磁性層1の磁化M1の方向と、第2強度における第1強磁性層1の磁化方向と、の角度は、0°より大きく90°より小さい。また例えば、図7に示すように、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度から第2強度に変化すると、磁化M1の大きさが小さくなる。第1強磁性層1の磁化M1が初期状態から変化すると、光検知素子10のz方向の抵抗値は第2抵抗値R2を示し、光検知素子10からの出力電圧の大きさは第2の値を示す。第2抵抗値R2は、第1抵抗値R1より大きい。第2抵抗値R2は、磁化M1と磁化M2とが平行である場合の抵抗値(第1抵抗値R1)と、磁化M1と磁化M2とが反平行である場合の抵抗値との間である。
第1強磁性層1の磁化M1は、第2強磁性層2の磁化M2と同じ方向のスピントランスファートルクが作用している。したがって、図6に示す場合、初期状態から傾いた磁化M1は磁化M2と平行状態に戻ろうとし、第1強磁性層1に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化すると、光検知素子10は初期状態に戻る。図7に示す場合は、第1強磁性層1に照射される光の強度が第1強度に戻ると、第1強磁性層1の磁化M1の大きさは元に戻り、光検知素子10は初期状態に戻る。いずれの場合も磁化M1が初期状態に戻ると、光検知素子10のz方向の抵抗値は、第1抵抗値R1に戻る。つまり、第1強磁性層1に照射される光の強度が第2強度から第1強度に変化した際に、光検知素子10のz方向の抵抗値は、第2抵抗値R2から第1抵抗値R1へ変化する。
いずれのメカニズムにおいても、光検知素子10の積層方向の抵抗値は、第1強磁性層1に照射される光の強度の変化に対応して変化し、光信号L1の強度の変化を光検知素子10のz方向の抵抗値の変化に変換することができる。また第1強磁性層1に照射される光の強度の変化に対応して、光検知素子10からの出力電圧は変化し、光信号L1の強度の変化を光検知素子10からの出力電圧の変化に変換することができる。光検知素子10からの出力は、信号処理部11へ送られ、出力が閾値以上の場合は第1信号(例えば、“1”)、閾値未満の場合は第2信号(例えば、“0”)として処理される。
ここまで、第1強磁性層1に照射される光が、第1強度と第2強度の2段階である場合を例に説明したが、第1実施形態に係る光検知素子10は、第1強磁性層1に照射される光の強度を2段階より多くすることで、光信号L1から多値の情報を読み出すこともできる。
図8及び図9は、第1実施形態に係る光検知素子10を用いて多値を出力する場合の光検知素子10の挙動を示す。図8は、第1メカニズムを説明するための図であり、図9は、第2メカニズムを説明するための図である。図8及び図9は、左から順に第1強度、第2強度、第3強度、第4強度のそれぞれにおける光検知素子10の磁化状態及びz方向の抵抗値を表す。第1強磁性層1に照射される光の強度は、第4強度、第3強度、第2強度、第1強度の順に強い。
図8に示すように、照射される光の強度に応じて磁化M1が傾く場合、磁化M1の初期状態からの角度変化は、第1強磁性層1に照射される光の強度が大きいほど大きくなる。第1強磁性層1に光信号L1を含む光が照射されていない状態における第1強磁性層1の磁化M1の方向に対する、第2強度、第3強度、第4強度のそれぞれの角度変化は、いずれも0°より大きく90°より小さい。初期状態に対する光検知素子10のz方向の抵抗値の変化は、磁化M1の初期状態からの角度変化が大きくなるほど大きくなる。したがって、光検知素子10のz方向の抵抗値は、第1強度、第2強度、第3強度、第4強度のそれぞれで異なる。第1実施形態に係る光検知素子10は、出力電圧の閾値(抵抗値の閾値)を複数段階に分けて規定しておくことで、例えば“0”、“1”、“2”、“3”の4値の情報を読み出すことができる。ここでは一例として4値を読み出す場合を示したが、出力電圧の閾値(抵抗値の閾値)の設定により読み出す値の数は自由に設計できる。
また図9の場合も同様に、第1強磁性層1に照射される光の強度が大きくなると、光の照射による外部からのエネルギーによって第1強磁性層1の磁化M1の大きさは初期状態から小さくなる。第1強磁性層1の磁化M1が初期状態から小さくなると、光検知素子10のz方向の抵抗値は変化する。例えば、第1強磁性層1の磁化M1の大きさに応じて、光検知素子10のz方向の抵抗値は、第2抵抗値R2、第3抵抗値R3、第4抵抗値R4と変化する。したがって、図8の場合と同様に、光検知素子10からの出力電圧の違いを、多値又はアナログデータとして出力できる。
上述のように、第1実施形態に係る光検知素子10は、光信号を電気信号に変換する。
光検知素子10は、スペーサ層3に接する第1領域1AがCoFeB合金であるため、磁気抵抗変化率(MR変化率)が大きい。そのため、光検知素子10は、第1領域1Aの磁化の状態の変化に対する光検知素子10の出力変化が大きい。
また光検知素子10は、FeとGdとを含む磁性体である第2領域1Bを有するため、小さい光量の照射でも第2領域1Bの磁化の状態が変化し、第2領域1Bと磁気結合する第1領域1Aの磁化の状態も変化する。
したがって、光検知素子10は、照射される光の光量の変化に対してその出力変化が大きいものになる。このように、第1実施形態に係る光検知素子10は、光信号の電気信号への変換効率が大きく、光検知能力が高い。
また第1実施形態において、第1強磁性層1が第1領域1Aを有することで、光検知素子10のMR比は向上する。さらに、第2強磁性層2が第3領域2Aを有すると、光検知素子10のMR比が向上する。光検知素子10の光に対する応答特性を高めるために、第1強磁性層1の膜厚を薄くしたい等の要望があるが、光検知素子10が第1領域1Aや第3領域2Aを有するとこれらの制約の中でも光検知素子10のMR比を高めることができる。その結果、光信号L1の光の強度の変化に対する光検知素子10の抵抗値の変化量(光検知素子10から出力される電圧の変化量)を大きくすることができる。これにより、光検知素子10の感度を大きくすることができ、光検知素子10は高速通信を可能とする受信装置100に用いることができる。
またここまで、送受信装置を図1に示す通信システム1000に適用する例を示したが、通信システムはこの場合に限られない。
例えば、図10は、通信システムの別の例の概念図である。図10に示す通信システム1001は、2つの携帯端末装置500間の通信である。携帯端末装置500は、例えば、スマートフォン、タブレット等である。
携帯端末装置500のそれぞれは、受信装置100と送信装置200とを備える。一方の携帯端末装置500の送信装置200から送信された光信号を、他方の携帯端末装置500の受信装置100で受信する。携帯端末装置500間の送受信に使用される光は、例えば可視光である。それぞれの受信装置100の光検知素子10として、上述の光検知素子が適用される。
また例えば、図11は、通信システムの別の例の概念図である。図11に示す通信システム1002は、携帯端末装置500と情報処理装置600との間の通信である。情報処理装置600は、例えば、パーソナルコンピュータである。
携帯端末装置500は送信装置200を備え、情報処理装置600は受信装置100を備える。携帯端末装置500の送信装置200から送信された光信号は、情報処理装置600の受信装置100で受信される。携帯端末装置500と情報処理装置600と間の送受信に使用される光は、例えば可視光である。それぞれの受信装置100の光検知素子10として、上述の光検知素子が適用される。
以上、本発明は上記の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
ここでは光検知素子を受信装置に用いる場合を例示したが、この場合に限られない。例えば、本発明に係る光検知素子は、イメージセンサー等の様々な半導体光検知素子に対して置き換えをすることができる。
(実施例1)
基板上に第2電極、下地層、第2強磁性層を、この順に各材料のターゲットを用いて成膜した。第2電極は、基板側から順に、厚さ50ÅのTa、厚さ600ÅのRu、厚さ100ÅのTaとした。下地層は、基板側から順に、厚さ20ÅのTa、厚さ20ÅのPtとした。第2強磁性層は、基板側から順に、厚さ5ÅのCoと厚さ4ÅのPtとを交互に4回積層した積層膜、厚さ6ÅのCo、厚さ8ÅのRu、厚さ6ÅのCo、厚さ4ÅのPtと厚さ5ÅのCoとを交互に3回積層した積層膜、厚さ4ÅのMo、厚さ6ÅのCoFeB、5ÅのFeとした。
基板上に第2電極、下地層、第2強磁性層を、この順に各材料のターゲットを用いて成膜した。第2電極は、基板側から順に、厚さ50ÅのTa、厚さ600ÅのRu、厚さ100ÅのTaとした。下地層は、基板側から順に、厚さ20ÅのTa、厚さ20ÅのPtとした。第2強磁性層は、基板側から順に、厚さ5ÅのCoと厚さ4ÅのPtとを交互に4回積層した積層膜、厚さ6ÅのCo、厚さ8ÅのRu、厚さ6ÅのCo、厚さ4ÅのPtと厚さ5ÅのCoとを交互に3回積層した積層膜、厚さ4ÅのMo、厚さ6ÅのCoFeB、5ÅのFeとした。
次いで、Mgを成膜した後に、酸化チャンバーにて酸化処理を行って、厚さ12ÅのMgOのスペーサ層を作製した。次いで、スペーサ層上に、Co0.65B0.35のターゲットとFe0.65B0.35のターゲットとを用いたコスパッタリング(2元同時スパッタリング)を行い、第1強磁性層の第1領域を10Åの厚みで成膜した。次いで、中間層として厚さ5ÅのMoを成膜した。ついで、中間層上に、GdのターゲットとFeのターゲットとを用いたコスパッタリング(2元同時スパッタリング)を行い、第1強磁性層の第2領域を25Åの厚みで成膜した。
そして、第1強磁性層上に、キャップ層を成膜した。キャップ層は、基板側から順に、厚さ20ÅのMo、厚さ20ÅのTa、厚さ20ÅのRuとした。その後、真空中で、30分間、400℃でアニール処理を行った。そしてアニール処理後の積層体に、第1電極を成膜し、直径300nmの円柱状に加工して光検知素子を作製した。第1電極は、厚さ500Åの酸化インジウムスズ(ITO)とした。各層の成膜は、DCマグネトロンスパッタ装置で行った。
実施例1で作製した光検知素子の素子構成を以下にまとめる。
第2電極:Ta(50Å)/Ru(600Å)/Ta(100Å)
下地層:Ta(20Å)/Pt(20Å)
第2強磁性層:[Co(5Å)/Pt(4Å)]4/Co(6Å)/Ru(8Å)/Co(6Å)/[Pt(4Å)/Co(5Å)]3/Mo(4Å)/CoFeB(6Å)/Fe(5Å)
スペーサ層:MgO(12Å)
第1強磁性層:Co0.24Fe0.56B0.20(10Å)/Mo(5Å)/Gd0.26Fe0.74(25Å)
キャップ層:Mo(20Å)/Ta(20Å)/Ru(20Å)
第1電極:ITO(500Å)
第2電極:Ta(50Å)/Ru(600Å)/Ta(100Å)
下地層:Ta(20Å)/Pt(20Å)
第2強磁性層:[Co(5Å)/Pt(4Å)]4/Co(6Å)/Ru(8Å)/Co(6Å)/[Pt(4Å)/Co(5Å)]3/Mo(4Å)/CoFeB(6Å)/Fe(5Å)
スペーサ層:MgO(12Å)
第1強磁性層:Co0.24Fe0.56B0.20(10Å)/Mo(5Å)/Gd0.26Fe0.74(25Å)
キャップ層:Mo(20Å)/Ta(20Å)/Ru(20Å)
第1電極:ITO(500Å)
作製した光検知素子に第1電極側からパルス光を照射した。光源は、50mWの短パルスレーザー(波長800nm)を用いた。光パルス幅は50fsec、光スポット径は2mmとし、50mWのパルス光の強度を1/1000に減光した後、光検知素子に照射した。光検知素子には0.25mAの直流電流を印加した。そして、パルス光を光検知素子に照射することで生じる光検知素子からの出力電圧の変化を高速オシロスコープで測定した。実施例1に係る光検知素子は、パルス光照射前後における出力電圧の変化は、5.0mVであった。
(実施例2)
実施例2は、第1強磁性層の第2領域の構成を変えた点が実施例1と異なる。実施例2では、中間層上に、GdのターゲットとFeのターゲットとCoターゲットとを用いたコスパッタリング(3元同時スパッタリング)を行い、第1強磁性層の第2領域を25Åの厚みで成膜した。
実施例2は、第1強磁性層の第2領域の構成を変えた点が実施例1と異なる。実施例2では、中間層上に、GdのターゲットとFeのターゲットとCoターゲットとを用いたコスパッタリング(3元同時スパッタリング)を行い、第1強磁性層の第2領域を25Åの厚みで成膜した。
実施例2における第1強磁性層の層構成は下記であり、その他の層の構成は実施例1と同じとした。
第1強磁性層:Co0.24Fe0.56B0.20(10Å)/Mo(5Å)/Gd0.26(Fe0.90Co0.10)0.74(25Å)
第1強磁性層:Co0.24Fe0.56B0.20(10Å)/Mo(5Å)/Gd0.26(Fe0.90Co0.10)0.74(25Å)
実施例2においても、実施例1と同様にパルス光を照射し、照射前後における出力電圧の変化を測定した。実施例2に係る光検知素子は、パルス光照射前後における出力電圧の変化は、4.8mVであった。
(実施例3)
実施例3は、第1強磁性層の第2領域の構成を変えた点が実施例1と異なる。実施例3では、中間層上に、厚さ3.7ÅのFeと厚さ1.3ÅのGdとを交互に5回ずつ積層し、第1強磁性層の第2領域を成膜した。
実施例3は、第1強磁性層の第2領域の構成を変えた点が実施例1と異なる。実施例3では、中間層上に、厚さ3.7ÅのFeと厚さ1.3ÅのGdとを交互に5回ずつ積層し、第1強磁性層の第2領域を成膜した。
実施例3における第1強磁性層の層構成は下記であり、その他の層の構成は実施例1と同じとした。
第1強磁性層:Co0.24Fe0.56B0.20(10Å)/Mo(5Å)/[Fe(3.7Å)/Gd(1.3Å)]5
第1強磁性層:Co0.24Fe0.56B0.20(10Å)/Mo(5Å)/[Fe(3.7Å)/Gd(1.3Å)]5
実施例3においても、実施例1と同様にパルス光を照射し、照射前後における出力電圧の変化を測定した。実施例3に係る光検知素子は、パルス光照射前後における出力電圧の変化は、9.8mVであった。
(実施例4)
実施例4は、第1強磁性層の第2領域の構成を変えた点が実施例1と異なる。実施例4では、中間層上に、厚さ3.7ÅのFeCoの合金膜と厚さ1.3ÅのGdとを交互に5回ずつ積層し、第1強磁性層の第2領域を成膜した。FeCo合金膜は、FeのターゲットとCoのターゲットとを用いたコスパッタリング(2元同時スパッタリング)で成膜した。
実施例4は、第1強磁性層の第2領域の構成を変えた点が実施例1と異なる。実施例4では、中間層上に、厚さ3.7ÅのFeCoの合金膜と厚さ1.3ÅのGdとを交互に5回ずつ積層し、第1強磁性層の第2領域を成膜した。FeCo合金膜は、FeのターゲットとCoのターゲットとを用いたコスパッタリング(2元同時スパッタリング)で成膜した。
実施例4における第1強磁性層の層構成は下記であり、その他の層の構成は実施例1と同じとした。
第1強磁性層:Co0.24Fe0.56B0.20(10Å)/Mo(5Å)/[Fe0.90Co0.10(3.7Å)/Gd(1.3Å)]5
第1強磁性層:Co0.24Fe0.56B0.20(10Å)/Mo(5Å)/[Fe0.90Co0.10(3.7Å)/Gd(1.3Å)]5
実施例4においても、実施例1と同様にパルス光を照射し、照射前後における出力電圧の変化を測定した。実施例4に係る光検知素子は、パルス光照射前後における出力電圧の変化は、10.0mVであった。
(比較例1)
比較例1は、第1強磁性層の構成を変えた点が実施例1と異なる。比較例1では、実施例1に対し、第1強磁性層1の中間層及び第2領域を形成しなかった。
比較例1は、第1強磁性層の構成を変えた点が実施例1と異なる。比較例1では、実施例1に対し、第1強磁性層1の中間層及び第2領域を形成しなかった。
比較例1における第1強磁性層の層構成は下記であり、その他の層の構成は実施例1と同じとした。
第1強磁性層:Co0.24Fe0.56B0.20(10Å)
第1強磁性層:Co0.24Fe0.56B0.20(10Å)
比較例1においても、実施例1と同様にパルス光を照射し、照射前後における出力電圧の変化を測定した。比較例1に係る光検知素子は、パルス光照射前後における出力電圧の変化は、2.5mVであった。
実施例1~4及び比較例1の結果を、以下の表にまとめた。表1に示されるように、実施例1~4の光検知素子は、比較例1の光検知素子と比較して、光信号の電気信号への変換効率が高かった。
1…第1強磁性層、1A…第1領域、1B…第2領域、1C…中間層、2…第2強磁性層、2A…第3領域、2B…第4領域、3…スペーサ層、4…第3強磁性層、5…磁気結合層、6…下地層、7…垂直磁化誘起層、8…キャップ層、9…側壁絶縁層、10…光検知素子、11…信号処理部、15…第1電極、16…第2電極、20…集積回路、30…層間絶縁膜、100…受信装置、200…送信装置、201…光源、202…電気信号生成素子、203…光変調素子、300…送受信装置、500…携帯端末装置、600…情報処理装置、1000,1001,1002…通信システム、FB…ファイバー、G…グラウンド、Is…センス電流、M1,M2…磁化、PG…基準電位端子、Pin…入力端子、Pout…出力端子、PS…電源、w…貫通配線
Claims (6)
- 光が照射される第1強磁性層と、第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とに挟まれたスペーサ層と、を備え、
前記第1強磁性層は、前記スペーサ層に接する第1領域と、前記第1領域より前記スペーサ層から離れた位置にある第2領域とを有し、
前記第1領域はCoFeB合金であり、前記第2領域は構成元素としてFeとGdとを主に含む磁性体である、光検知素子。 - 前記第1領域と前記第2領域との間に中間層をさらに有し、
前記中間層は、Mo、Ru、Ta、W、Ptからなる群から選択されるいずれか1種以上の元素を含む、請求項1に記載の光検知素子。 - 前記第2強磁性層は、前記スペーサ層に接する第3領域と、前記第3領域より前記スペーサ層から離れた位置にありボロンを含む第4領域とを有し、
前記第3領域は、前記第4領域よりボロンの濃度が低い、又は、ボロンを含まない、請求項1又は2に記載の光検知素子。 - 前記第1領域は、前記第2領域よりボロンの濃度が高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の光検知素子。
- 前記第3領域は、Fe又はCoFe合金を含み、結晶構造がbcc構造である、請求項3に記載の光検知素子。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の光検知素子を有する受信装置。
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