JP2022077583A - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟性に優れ、さらに良好な製膜性を有するポリエステルフィルムを提供する。【解決手段】示差走査熱量測定(DSC)の1st run昇温過程において、2以上の吸熱ピークを有しており、かつその吸熱ピークの融解熱量の比(△Hm2/△Hm1)が5.0以下であるポリエステルフィルム。△Hm1:ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピークの融解熱量△Hm2:ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピーク以外の吸熱ピークの融解熱量【選択図】なし

Description

柔軟性に優れ、さらに良好な製膜性を有するポリエステルフィルムに関するものである。
ポリエステルはその加工性の良さから、様々分野に利用されている。また、これらポリエステルをフィルム状に加工した製品は工業用途、光学製品用途、包装用途、民生用途など今日の生活において重要な役割を果たしている。
昨今の感染症流行の影響を受けて、ポリエステルフィルムを用いたカバーやパーテーションが接触感染・飛沫感染予防のため用いられている。
例えば、表面に抗菌剤を塗布し粘着剤によって共用の機器やドアノブ・壁に添付し、細菌やウイルスの繁殖を防ぐフィルムが提案されている(特許文献1および特許文献2)。また、共用の機器やパーテーション、フェイスシールドとして用いられるフィルムが提案されている(特許文献3)。
特開2020-128555号公報 特開2020-40358号公報 特許第6695734号公報
上記特許文献1~3に記載されているようなシートやフィルムは、柔軟性に乏しく日常生活で接触感染対策として用いることができる範囲が限定的であるといった課題があった。
本発明は、上記課題を解決しようとし、柔軟性と製膜性を両立するポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有するものである。
(1)示差走査熱量測定(DSC)の1st run昇温過程において、2以上の吸熱ピークを有しており、かつその吸熱ピークの融解熱量の比(△Hm2/△Hm1)が5.0以下であるポリエステルフィルム。
△Hm1:ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピークの融解熱量
△Hm2:ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピーク以外の吸熱ピークの融解熱量
(2)リン元素含有量が40ppm以上300ppm以下である(1)に記載のポリエステルフィルム。
(3)ポリエステルフィルムに含有する1価金属の含有量M1(mol/t)、2価金属元素含有量M2(mol/t)、リン元素含有量M3(mol/t)が下記式に満たす(1)または(2)に記載のポリエステルフィルム。
0.5≦(M1/2+M2)/M3≦1.9
(4)温度変調示差操作熱量測定(mDSC)にて測定される可動非晶量が50%以上である(1)~(3)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(5)ジオール構成成分として、少なくとも2種類の成分を含む(1)のポリエステルフィルム。
(6)ジオール構成成分として、少なくともエチレングリコールと1,4-ブタンジオールを含む(5)に記載のポリエステルフィルム。
(7)ジカルボン酸成分として、少なくとも2種類の成分を含む(1)~(6)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(8)ジカルボン酸構成成分として、少なくともテレフタル酸とイソフタル酸を含む(7)に記載のポリエステルフィルム。
(9)ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)を含む(1)~(8)のいずれかのポリエステルフィルム。
(10)260℃30分滞留後のメルトフローレイト(MFR)の値(M260)と、250℃30分滞留後のメルトフローレイト(MFR)の値(M250)の値の比(M260/M250)が1.50以下である(1)~(9)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(11)フィルム厚みが5μm以下である(1)~(10)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(12)二軸配向してなる(1)~(11)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(13)感染予防フィルムまたは防汚フィルム用途に用いられる(1)~(12)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
本発明によれば、柔軟性に優れ、さらに良好な製膜性を有するポリエステルフィルムを提供できる。
ポリエステルフィルムについて示差走査熱量測定を行った際に得られるチャートの融解熱量を模式的に示した一例である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、示差走査熱量測定(DSC)の1st run昇温過程において、2以上の吸熱ピークを有しており、かつその吸熱ピークの融解熱量の比(△Hm2/△Hm1)が5.0以下であるポリエステルフィルムに関する。
△Hm1:ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピークの融解熱量
△Hm2:ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピーク以外の吸熱ピークの融解熱量
上記融解熱量はJIS K7122(1987)に準じて計算する。複数の吸熱ピークがある場合、△Hm2はピークトップの温度が最も高温の吸熱ピーク以外の吸熱ピークの融解熱量の和とする。
本発明では、複数の吸熱ピークに重なる部分が生じている場合、ピークトップの温度の数から吸熱ピークの数を計算する。なお、ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピークと他の吸熱ピークに重ねる部分がある場合、融解熱量は下記通り計算する。
まず、重なる部分がある融解ピークの総融解熱量を計算する。次に、ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピークと、高温側から2番目の吸熱ピーク間の変曲点から、DSCグラフの横軸(温度軸)と垂直するように直線を引く(図1点線部分相当)。変曲点とは、吸熱ピーク間の最も熱エネルギーが高い点である。この直線により総融解熱量が分割され、最も高温の吸熱ピークを含む高温側部分の融解熱量を△Hm1とする。直線より分割された最も高温の吸熱ピークを含まない部分の融解熱量、および上記重なる部分以外の低温側にある吸熱ピークの融解熱量の和を△Hm2とする。
本発明の良好な柔軟性および製膜性を実現するため、示差走査熱量測定(DSC)の1st run昇温過程において、2以上の吸熱ピークを有する必要がある。さらに、上記吸熱ピークの融解熱量の比(△Hm2/△Hm1)が5.0以下を満たす必要がある。△Hm2/△Hm1の値は、低融点成分の融解熱量の和/最も高い融点成分の融解熱量の比率となり、△Hm2/△Hm1の値が大きいほど、低融点構造成分が増加し、各融点構成成分は互いに反応して、エステル交換が進みやすくなる。エステル交換反応が進行すると、分子鎖間に結合が形成し、分子量増加もしくは局所的に共重合分子構造の形成により、ポリエステルの分子鎖運動を拘束して、柔軟性が低下する。本発明では、優れた柔軟性を実現するため、各吸熱ピーク構成成分間のエステル交換反応を抑制することが必要であることを見出し、吸熱ピークの融解熱量の比(△Hm2/△Hm1)が5.0以下の場合、優れた柔軟性を発現しやすい。△Hm2/△Hm1の値は3.0以下であることがより好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。なお、△Hm2/△Hm1の値の下限は柔軟性と製膜性の両立の観点から、0.01以上であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムとは、ポリエステル組成物からなる薄膜状成形体のことである。ポリエステル組成物とは、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合して得られる重合体のことを指す。
本発明におけるジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分とは、ポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。本発明のポリエステルフィルムに用いるポリエステルは、ジカルボン酸および/またはジカルボン酸のエステル形成性誘導体(以降、ジカルボン酸成分という場合がある)とジオールおよび/またはジオールのエステル形成性誘導体(以降、ジオール成分という場合がある)とを重縮合して得られる。
本発明のポリエステルフィルムに用いられるジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、鎖状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸など種々のジカルボン酸成分および/またはこれらのエステル形成性誘導体成分を用いることができる。その中でも、得られるポリエステルの機械的特性、熱特性が優れるという観点から、芳香族ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体成分であることが好ましい。特には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸および/またはこれらのエステル形成性形成誘導体成分が重合性、機械的特性から好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、ジカルボン酸成分として、2種類以上の成分を含むことが好ましい。特に、テレフタル酸とイソフタル酸を含むことが好ましい。ジカルボン酸構成成分として、ジカルボン酸成分として2種類以上の成分を含むこと、特にテレフタル酸とイソフタル酸を含むポリエステルフィルムとすることで、フィルムの柔軟性をさらに向上させることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、ジカルボン酸構成成分としてイソフタル酸を含む場合、ジカルボン酸構成成分全体に対してイソフタル酸が5mol%~50mol%含むことが好ましい。下限として好ましくは15mol%以上であり、より好ましくは20mol%以上である。上限として好ましくは25mol%以下である。上記範囲とすることで、柔軟性が良好となる。イソフタル酸の量が50mol%を超えると、フィルムを構成するポリエステルの非晶性が高すぎで、製膜性が落ちる懸念がある。
本発明のポリエステルフィルムに用いられるジオール成分としては、各種ジオールを用いることができる。例えば、ブタンジオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、脂環式ジオールとしてはシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、デカヒドロナフタレンジエタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、トリシクロデカンエタノール、テトラシクロドデカンジメタノール、テトラシクロドデカンジエタノール、デカリンジメタノール、デカリンジエタノールなどの飽和脂環式1級ジオール、2,6-ジヒドロキシ-9-オキサビシクロ[3,3,1]ノナン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(スピログリコール)、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン、イソソルビドなどの環状エーテルを含む飽和ヘテロ環1級ジオール、その他シクロヘキサンジオール、ビシクロヘキシル-4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシルプロパン)、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル)プロパン、シクロペンタンジオール、3-メチル-1,2-シクロペンタジオール、4-シクロペンテン-1,3-ジオール、アダマンジオールなどの各種脂環式ジオールや、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香環式ジオールが例示できる。またジオール以外にもトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコールも用いることができる。
この中で、反応系外に留出させやすいことから、沸点240℃以下のジオールであることが好ましく、低コストであり反応性が高いことから、脂肪族ジオールがより好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、ジオール構成成分として、2種類以上の成分を含むことが好ましい。特に、エチレングリコールと1,4-ブタンジオールを含むことが好ましく、良好な柔軟性および製膜性を付与することが可能となる。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)を含むことが好ましく、PETの共重合体とPBTを含むことがより好ましい。本発明のポリエステルフィルム中のPETおよびPBTの確認には、特定の手法に限定されないが、ラマン分光法を用いることができる。カルボニル基のピークの位置の違いによりピーク分割を行い、PETおよびPBTの確認が可能である。複数の手法を合わせて確認することもできる。上記ポリエステル組成物を含有することにより、良好な柔軟性および製膜性を付与することが可能となる。なお、固有粘度0.63~0.75dl/gのPETと固有粘度1.0~1.4dl/gのPBTを含むことが好ましく、さらに上述の固有粘度を有するPETとPBTの他に、本発明の製膜性を損なわない範囲で、低固有粘度0.53~0.63dl/gのPETおよび/または低固有粘度0.60~1.00dl/gのPBTを含むことが特に好ましい。
なお、本発明の効果の範囲を損なわない程度に、他のジカルボン酸成分やヒドロキシカルボン酸誘導体、ジオール成分が共重合されていてもよい。
本発明のポリエステルフィルムは、二軸配向していることが好ましい。二軸配向していると、フィルムの機械強度が向上し易滑性を向上させることができる。二軸配向ポリエステルフィルムは、一般に未延伸状態のポリエステルシートをシート長手方向および長手方向の垂直方向に延伸し、その後熱処理を施し結晶配向を完了させることにより、得ることができる。詳しくは後述する。
本発明のポリエステルフィルムは、リン元素を含有することが好ましい。リン元素を含有することにより、熱履歴を受ける際、ポリエステルの熱分解を抑制することが可能であり、エステル交換反応の起因となるCOOH末端の発生を抑制できる。さらに、リン元素はエステル交換反応を促進する金属触媒の活性を抑制して、エステル交換反応の速度を低下させる効果が期待される。そのため、リン元素を含有することで、柔軟性低下の原因となるエステル交換反応を抑制でき、良好な柔軟性を付与することが可能となる。
ポリエステルフィルム中のリン元素の含有量の下限として好ましくは30ppm以上であり、より好ましくは40ppm以上である。上限として好ましくは300ppm以下であり、より好ましくは150ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下である。リン元素の含有量が多いほど、エステル交換反応を抑制できるが、上記上限を超えると、ポリエステル原料重合時間の遅延もしくはリン化合物の飛散によるフィルム異物の発生の可能性があり、製膜時に異物起因の破れが発生する可能性はある。そのため、良好な柔軟性と製膜性の両立を実現するため、リン元素含有量は本発明記載範囲にすることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルム中にリン元素を含有させる方法は特に規定しないが、リン元素を有する化合物を含有させることが好ましい。リン化合物は、ポリエステル組成物の製造、ポリエステル組成物の混錬、もしくはフィルムの製造のいずれの段階に添加してもよい。エステル交換反応を抑制するため、特に、ポリエステル原料の重縮合反応が終了するまでの段階、もしくはポリエステル組成物の混錬の段階で添加することが好ましい。
なお、フィルムは複数種類の原料から構成される場合、各構成原料にリン元素を含有することが特に好ましい。
リン化合物の種類は特に規定しないが、リン元素を含む無機化合物/有機化合物を使用することできる。また、複数のリン化合物を併用することも可能である。リン化合物としては、ホスファイト化合物、ホスフェート化合物、ホスホナイト化合物、ホスホネート化合物、ホスフィナイト化合物、ホスフィネート化合物を挙げることができる。中でも、ホスファイト化合物、ホスフェート化合物が好ましく挙げられる。ホスファイト化合物としては、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ナトリウム、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト(例えば、PEP-36(ADEKA製))など、ホスフェート化合物としては、リン酸、リン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル、リン酸トリアルキルエステル、モノステアリルリン酸/ジステアリルリン酸混合物(例えば、AX-71(ADEKA製))などを挙げることができる。
本発明のポリエステルフィルム中に金属元素を含有する場合、下記式を満たすことが好ましい。
0.5≦(M1/2+M2)/M3≦1.9
M1:1価金属の含有量(単位:mol/t)、
M2:2価金属元素含有量(単位:mol/t)
M3:リン元素含有量(単位:mol/t)
上式の上限としては、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることがさらに好ましい。下限としては、0.8以上であることがより好ましい。フィルム中に含有する1価や2価の金属元素は、活性を有しているため、熱履歴を受ける際にポリマーの分解反応が促進される。熱分解で生成するCOOH末端はエステル交換反応を促進し、柔軟性は落ちる。リン元素は金属元素の活性を抑制することができ、各1価/2価の金属元素およびリン元素の含有量を上式の数値範囲内にすることで、得られるポリエステルフィルムの柔軟性は良好である。
本発明のポリエステルフィルムは、可動非晶量が50%以上であることが好ましい。可動非晶量はフィルム中の非晶部分の運動性の指標となり、その値は50%以上になると、柔軟性は良好である。60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、260℃30分滞留後のメルトフローレイト(MFR)の値(M260)と、250℃30分滞留後のメルトフローレイト(MFR)の値(M250)の値の比(M260/M250)が1.50以下であるが好ましい。1.40以下であるがさらに好ましい。滞留温度が高いほど、ポリエステルの熱分解が促進され、MFRの値が高くなる。M260/M250の値は小さいほど、フィルム構成ポリエステル組成物の熱分解の温度依存性は小さく、原料の製造、混錬および製膜各工程の温度が高くでもエステル交換反応が抑制され、良好な柔軟性を実現できる。なお、本発明におけるMFRの値とは、後述する方法で測定されるものである。
本発明のポリエステルフィルムは、融点が250℃以下であることが好ましい。本発明における融点とは、示差走査熱量測定(DSC)の1st run昇温過程における最も高温の吸熱ピーク温度(Tm)のことである。融点は240℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましい。なお、融点の下限として、160℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましい。本発明らが鋭意検討したところ、融点が低くても、柔軟性が低い場合が確認され、融点のみの制御では本発明の課題は解決することは困難であることが明らかになった。また、融点が低くなると、製膜できない場合等、製膜性および加工性が落ちる懸念がある。そのため、融点は上記範囲内であることが好ましい。
融点以外の吸熱ピーク温度については特に規定しないが、高温側から数える2番目の吸熱ピーク温度をTm2とする場合、Tmとの差(Tm-Tm2)は30℃以上であることが好ましく、35℃以上であることがさらに好ましい。エステル交換反応により、Tmが低下し、Tm-Tm2の値は小さくなる。TmとTm2差は上記範囲の場合、エステル交換反応による柔軟性の低下を抑制できる。
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の特性を損なわない範囲で、有機粒子または無機粒子、あるいはその両方を含有しても構わない。
本発明のポリエステルフィルムは、5.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。厚みの下限として1.0μm以上であることが好ましく、フィルムの厚みが薄すぎる場合は、製膜時フィルムが破れる場合がある。フィルムの厚みが厚すぎると、柔軟性が低下する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムは、単層で構成されてもよいし2層以上の積層構成を有することもできる。2層以上の層構成を有する場合、異なる組成(例えば組成(I)および組成(II))からなるとすると、積層構成としては(I)/(II)の2層、(I)/(II)/(I)、(II)/(I)/(II)、(II)/(I)/(II)/(I)、(II)/(I)/(II)/(I)/(II)などの多層構成が挙げられるが、これに限定されない。また、(I)~(II)とは異なる組成からなる層をさらに追加した層構成にすることもできる。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエステルフィルムを構成する樹脂としてPET/I(テレフタル酸、イソフタル酸とエチレングリコールからなる共重合体)とPBTを用いる処方例を挙げて説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
本発明のポリエステルフィルム中の各構成成分の確認には、特定の手法に限定されないが、プロトン核磁気共鳴分光法(H-NMR)やフーリエ変換型赤外分光法(FT-IR)を用いることができる。また、必要に応じてガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)や高速液体クロマトグラフィー(LC)を用いてもよく、複数の手法を合わせて確認することもできる。
本発明に用いられるポリエステルを得る方法としては、常法による重合方法が採用できる。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸構成成分またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール等のジオール構成成分またはそのエステル形成性誘導体、およびそれらを複数種類混合したものを、公知の方法でエステル交換反応あるいはエステル化反応させた後、溶融重合反応を行うことによって得ることができる。また、必要に応じ、溶融重合反応で得られたポリエステルを、ポリエステルの融点温度以下にて、固相重合反応を行っても良い。
前述の手法で得られたポリエステルを必要に応じて110~180℃で2.5時間減圧下で乾燥した後に加熱されたフルフライトの単軸押出機に供給しフィルターに通過させた後、その溶融ポリマーをTダイの口金を用いてシート状に吐出する。この時シリンダー・フィルター温度およびスクリューアレンジを調整し、Tダイから押し出した樹脂の樹脂温の実測値を示差走査熱量測定(DSC)の1st run昇温過程において観察される最も高い融点より5~30℃高い温度にすることが好ましい。本発明の場合、樹脂温は240~260℃にすることが好ましく、240~250℃にすることがより好ましい。樹脂温を前述の範囲に調整することで樹脂の溶融押出前後でのポリエステル物性の変化を抑制でき、柔軟性の低下原因となるエステル交換反応を抑制することができる。また、押出機に供給してから口金から吐出するまでの時間を押出時間とし、その時間を短くすることにより、エステル交換反応が抑制され、柔軟性は高くなるため好ましい。押出時間は60min以下であることが好ましい。30min以下であることがより好ましく、20min以下であることが特に好ましい。
上記シート状物を表面温度20~70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸フィルムを得る。次に上記で得られた未延伸フィルムを二軸延伸した後、1段もしくは多段熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。二軸に延伸する方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を例示する。未延伸フィルムを{(ポリエステルのTg}-10℃)}~Tgの範囲で予熱した後、Tg~(Tg+30)℃、好ましくは(Tg)~(Tg+15)℃の範囲で加熱ロールで加熱しながらフィルムの長手方向(MD方向)に3.0~6.0倍、より好ましくは3.5~5.0倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。その後20~50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。一軸に延伸したフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸時に十分に配向させ、平面性を向上させる観点から延伸温度はTg~(Tg+30)℃が好ましく、より好ましくは(Tg)~(Tg+15)℃の範囲で3.0~6.0倍、好ましくは3.5~5.0倍に延伸することが好ましい。
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定する操作(熱固定処理)を行う。熱固定処理の温度は熱処理ゾーンの始終で同一温度にて加熱処理を行う1段熱固定または熱処理ゾーンの前半と後半で異なる温度で加熱処理を行う多段熱固定の何れかで処理を行う。熱固定温度はポリエステルのTg+10~ポリエステルの最も高い融点-10℃であり、好ましくはポリエステルのTg+20℃~ポリエステルの最も高い融点-20℃である。上記の温度とすることで効率的に熱収縮率を低下するとともに良好な平面性を保つことができる。熱固定温度がポリエステルの最も高い融点-10℃を超えるとポリエステルフィルムを構成するポリエステルが融解し、製膜の際にフィルムの両端を固定するクリップに融着し、延伸装置からフィルムを採取することが困難となる場合がある。また熱固定温度がポリエステルのTgを下回ると、熱固定処理時にフィルムの結晶化が進まずフィルムの平面性が悪化する場合がある。熱固定処理後は、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に好ましくは0~15%の弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、二軸配向フィルムを得る。
本発明のポリエステルフィルムの柔軟性は、フィルム長手方向の25℃65%RH条件下で一定伸度時における破断状況で評価する。フィルムの破断率(破断本数/評価サンプル本数)が低いほど、柔軟性を有するフィルムとなる。フィルムの柔軟性は後述する手法で評価することができる。本発明のポリエステルフィルムは、柔軟性に優れ、防菌/防汚等の加工に使用でき、日常生活で接触感染対策として用いることができる。特に、感染予防フィルムまたは防汚フィルムに好適に用いることができる。
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下の方法で測定した。
(1)ポリエステルフィルムの融点(Tm)および吸熱ピークの融解熱量
JIS K7121(1987)、JIS K7122(1987)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置“ロボットDSC-RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
サンプルパンに試料を5mg秤量し、試料を25℃から300℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、昇温過程(1st run)の示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。
当該1st runの示差走査熱量測定チャートにおいて、発熱ピークである結晶融解ピークにおけるピークトップの温度を求め、最も温度が高いピークトップの温度をTm(℃)とする。高温側から数える2番目の吸熱ピーク温度をTm2(℃)とする。
融解熱量はJIS K7122(1987)に準じて計算する。ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピークと他の吸熱ピークに重ねる部分がある場合、融解熱量は下記通り計算する。
まず、重なる部分がある融解ピークの総融解熱量を計算する。次に、ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピークと、高温側から2番目の吸熱ピーク間の変曲点から、DSCグラフの横軸(温度軸)と垂直するように直線を引く。変曲点とは、吸熱ピーク間の最も熱エネルギーが高い点である。この直線より重なる部分がある融解ピークの総融解熱量は分割され、最も高温の吸熱ピークを含む高温側部分の融解熱量を△Hm1とする。直線より分割された最も高温の吸熱ピークを含まない部分の融解熱量、および上記重なる部分以外の低温側にある吸熱ピークの融解熱量の和を△Hm2とする。
(2)ポリエステルフィルム中のMg元素(マグネシウム元素)、P元素(リン)元素の定量(単位:ポリエステルフィルムに対する質量比 ppm)
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて定量を行った。
(3)ポリエステルフィルム中のK元素(カリウム元素)の定量(単位:ポリエステルフィルムに対する質量比 ppm)
原子吸光法((株)日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度型180-80、フレーム:アセチレン-空気)にて定量を行った。
(4)可動非晶量(単位:%)
TA Instruments社製(型番:Q1000)温度変調DSCを用い、試料5mgを窒素雰囲気下、-10℃から280℃まで2℃/minの昇温速度で測定した。測定によって得られたガラス転移温度での比熱差を求め、以下の式より算出した。
可動非晶量(%)=(比熱差)/(ポリエステル完全非晶物の比熱差理論値)×100
ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体完全非晶物の比熱差理論値=0.4052J/(g℃)
ポリブチレンテレフタレート完全非晶物の比熱差理論値=0.3497J/(g℃)
また、本発明ではポリエチレンテレフタレートおよびその共重合体とポリブチレンテレフタレートのブレンド体については、両者のブレンド比率により完全非晶物の比熱差理論値を計算した。
(5)メルトフローレイト(MFR、単位:g/10min)
フィルムのフレーク(フィルムを凍結粉砕してφ1mm以下の粒状樹脂)を真空下にて140℃/3h時間乾燥する。次に メルトインデクサー(東洋精機製作所(株)製、F-F01)にてJIS K7210-1:2014に準拠し、処理温度下(250℃または260℃)で、30minで滞留させた後、荷重1kgで測定した。処理温度が250℃の場合の値はM250、260℃の場合の値はM260とする。
(6)フィルム厚み(単位:μm)
ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992年)A-2法に準じて、任意の5ヶ所について厚さを測定して平均値を取った。
(7)ポリエステルフィルムのジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分分析
ポリエステルフィルムを重ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒に溶解し、日本電子(株)製NMR測定器(GSX-400)にてH-NMRを測定した。各ピークを帰属し、フィルムのジカルボン酸構成成分、ジオール構成成分を分析した。
(8)固有粘度(単位:dl/g)
ポリエステル組成物0.1gを0.001g以内の精度で秤量し、10mlのo-クロロフェノールを用いて100℃×30分間加熱して溶解した。溶液を室温まで冷却し、25℃の水槽中に設置したオストワルド粘度計に該溶液を8ml仕込み、標線を通過する秒数を計測した(A秒)。
また、o-クロロフェノールのみ8ml用いて前記と同様に25℃の水槽中に設置したオストワルド粘度計で標線を通過する秒数を計測した(B秒)。
固有粘度は次の計算式で計算した。
IV=-1+[1+4×K×{(A/B)-1}]^0.5/(2×K×C)
ここでKは0.343,Cは試料溶液の濃度(g/100ml)である。
(9)フィルムの柔軟性
フィルムの長手方向に沿って、試長100mm(長手方向)×幅10mm(幅方向、長手方向の垂直方向)のサンプルを切り出した。切り出したサンプルをオリエンテック株製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA-100” にて引張り速度300mm/分で25℃・65%RHの環境下で引張試験を行った。伸度が70%時に試験を終了し、サンプル破断状況を確認する(測定前サンプルの伸度は0%とする)。計10本のサンプルの評価を行い、下記基準で評価する。フィルム破断が発生する場合、そのタイミングを問わない。
破断なし:◎
破断本数1~2本:〇
破断本数3~4本:△
破断本数5本以上:×
なお、上記の測定において、測定するフィルムの長手方向や幅方向が分からない場合は、フィルムにおいて最大の屈折率を有する方向を長手方向、長手方向に直行する方向を幅方向とみなす。また、フィルムにおける最大の屈折率の方向は、フィルムの全ての方向の屈折率を屈折率計で測定して求めてもよく、位相差測定装置(複屈折測定装置)などにより遅相軸方向を決定することで求めてもよい。
(10)フィルムの製膜性
実施例および比較例に記載の製膜を5時間連続して行い、フィルム破れ(押出後、縦延伸時の破断および横延伸、熱固定処理時のいずれも含む)の発生回数を以下の基準で判定し生産性を確認した。
破れなし:◎
破れ回数1~3回:〇
破れ回数4~5回:△
破れ回数6回以上:×
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
(参考例1)PET/I-1
エチレングリコール100重量部、テレフタル酸ジメチル117重量部(得られるPET/Iにおいて、ジカルボン酸構成成分全体に対して75mol%)、イソフタル酸ジメチル39重量部を出発原料とし(得られるPET/Iにおいて、ジカルボン酸構成成分全体に対して25mol%)、触媒として酢酸マグネシウム・四水化物0.08重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去と共に徐々に反応温度を上昇させ3時間後に230℃とした。4時間後実質的にエステル交換反応の終了したこの反応混合物にリン酸0.03重量部を添加した後、水酸化カリウム0.001重量部、三酸化アンチモン0.06重量部を加えて、温度を240℃から徐々に285℃まで昇温し一方で圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には250Pa以下となるように調整し重縮合反応を行った。ポリエステルの固有粘度は0.60dl/gになる時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させてジカルボン酸構成成分全体に対するイソフタル酸成分の含有量が25mol%のPET/I-1のチップを得た。ポリエステルの固有粘度は0.60dl/gであった。
(参考例2)PET/I-2
リン酸の添加量を0.009重量部に変更した以外は、参考例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
(参考例3)PET/I-3
リン酸の添加量を0.05重量部に変更した以外は、参考例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
(参考例4)PET/I-4
リン酸の添加量を0.07重量部に変更した以外は、参考例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
(参考例5)PET/I-5
リン酸の添加量を0.11重量部に変更した以外は、参考例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
(参考例6)PET/I-6
酢酸マグネシウム・四水化物の添加量を0.07重量部に変更した以外は、参考例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
(参考例7)PET/I-7
テレフタル酸ジメチル106重量部(得られるPET/Iにおいて、ジカルボン酸構成成分全体に対して68mol%)、イソフタル酸ジメチル50重量部を出発原料とし(得られるPET/Iにおいて、ジカルボン酸構成成分全体に対して32mol%)に変更した以外は、参考例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
(参考例8)PET/I-8
リン酸を添加しない以外は、参考例1と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
(参考例9)PBT-1
テレフタル酸ジメチル100重量部、1,4-ブタンジオール93重量部、テトラブチルチタネート0.04重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留出と共に反応温度を徐々に上昇させ、3時間後に230℃とした。エステル交換反応が終了したこの反応混合物にテトラブチルチタネート0.04重量部を加えて、重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し260℃とし、一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には250Pa以下となるように調整した。ポリエステルの固有粘度は0.78dl/gになる時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させてチップ状のPBT-1を得た。固有粘度は0.78dl/gであった。
(参考例10)PBT-2
エステル交換反応が終了するまでは参考例9と同様の方法で実施した。エステル交換反応が終了した反応混合物にテトラブチルチタネート0.04重量部を加えて、重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し260℃とし、一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には250Pa以下となるように調整した。ポリエステルの固有粘度は0.78dl/gになる時点で、窒素を使用して重合系内を常圧に戻し、リン酸0.02重量部を添加してから再び系内の圧力を250Pa以下となるように調整した。ポリエステルの固有粘度は0.78dl/gになる時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させてチップ状のPBT-2を得た。固有粘度は0.78dl/gであった。
(参考例11)PBT-3
リン酸の添加量を0.04重量部に変更した以外は、参考例10と同様の方法でポリエステル組成物を得た。
(実施例1)
PET/I-1 80重量%、PBT-1 20重量%を計量した後ドライブレンドし、ベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に供給し、ダイスから吐出された樹脂の溶融状態での樹脂温が245℃~250℃になるように押出条件を調整しストランド状に吐出し、25℃の水でペレタイズして温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてペレットを得る。得られたペレットを130℃で2.5時間減圧乾燥した後、フルフライトの単軸押出機に供給した。次いで押出機で溶融したポリマーを30μmカットフィルターで濾過した後、Tダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸シートを作製した。この時、口金から吐出される樹脂の溶融状態での樹脂温が250℃となるように押出機・フィルターの温度を調整し、押出時間は15minであった。次いで、得られた未延伸シートを、表面温度60℃に加熱された複数の加熱ロールで予熱した後、表面温度73℃に加熱された加熱ロールと、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に4.0倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に80℃の温度で3.7倍に延伸し、続いて100℃の熱処理を行い、二軸に延伸した厚み1.5μmのポリエステルフィルムを作製した。
(実施例2~7)
PET/Iの種類を表1の通りに変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
(実施例8、9)
PBTの種類を表1の通りに変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
(実施例10)
PET/I-1 80重量%、PBT-1 20重量%を計量した後、上記原料の総重量に対してリン化合物AX-71(ADEKA製)0.1重量%を入れて、ドライブレンドしてからベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に供給した後、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
(実施例11、12)
AX-71の添加量を変えた以外、実施例10と同様にしてフィルムを得た。
(実施例13)
リン化合物AX-71をPEP-36(ADEKA製)に変更した以外は、実施例10と同様にしてフィルムを得た。
(実施例14)
PET/I-1 70重量%、PBT-1 30重量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
(実施例15)
口金から吐出される樹脂の溶融状態での樹脂温が260℃となるように押出機・フィルターの温度を調整した。上記樹脂温以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
(実施例16、17)
PET/IとPBT種類を表2の通りに変更した以外は、実施例15と同様にしてフィルムを得た。
(実施例18)
延伸後フィルムの厚みは3.0μmになるように、未延伸シートの厚みを調整した以外は実施1と同様にしてフィルムを作製した。
(比較例1)
口金から吐出される樹脂の溶融状態での樹脂温が270℃となるように押出機・フィルターの温度を調整した。上記樹脂温以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの△Hm2/△Hm1は23となり、フィルムの柔軟性は不合格であった。また、製膜時に破れは多発し、製膜性は不合格であった。
(比較例2)
PET/Iの種類をPET/I-8に変えた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。柔軟性は不合格であった。
(比較例3)
PET/I-1を130℃、4時間で結晶化させた後、得られたペレットを130℃で2.5時間減圧乾燥した、フルフライトの単軸押出機に供給した。その後、実施例1と同条件で製膜を実施した。
得られたフィルムの吸熱ピークは1つであり、△Hm2は0になるため、△Hm2/△Hm1は0である。また、Tmは191℃で低いが、柔軟性は不合格であった。
Figure 2022077583000001
Figure 2022077583000002

Claims (13)

  1. 示差走査熱量測定(DSC)の1st run昇温過程において、2以上の吸熱ピークを有しており、かつその吸熱ピークの融解熱量の比(△Hm2/△Hm1)が5.0以下であるポリエステルフィルム。
    △Hm1:ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピークの融解熱量
    △Hm2:ピークトップの温度が最も高温の吸熱ピーク以外の吸熱ピークの融解熱量
  2. リン元素含有量が40ppm以上300ppm以下である請求項1に記載のポリエステルフィルム。
  3. ポリエステルフィルムに含有する1価金属の含有量M1(mol/t)、2価金属元素含有量M2(mol/t)、リン元素含有量M3(mol/t)が下記式に満たす請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
    0.5≦(M1/2+M2)/M3≦1.9
  4. 温度変調示差操作熱量測定(mDSC)にて測定される可動非晶量が50%以上である請求項1~3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  5. ジオール構成成分として、少なくとも2種類の成分を含む請求項1のポリエステルフィルム。
  6. ジオール構成成分として、少なくともエチレングリコールと1,4-ブタンジオールを含む請求項5に記載のポリエステルフィルム。
  7. ジカルボン酸成分として、少なくとも2種類の成分を含む請求項1~6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  8. ジカルボン酸構成成分として、少なくともテレフタル酸とイソフタル酸を含む請求項7に記載のポリエステルフィルム。
  9. ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリブチレンテレフタレート(PBT)を含む請求項1~8のいずれかのポリエステルフィルム。
  10. 260℃30分滞留後のメルトフローレイト(MFR)の値(M260)と、250℃30分滞留後のメルトフローレイト(MFR)の値(M250)の値の比(M260/M250)が1.50以下である請求項1~9のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  11. フィルム厚みが5μm以下である請求項1~10のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  12. 二軸配向してなる請求項1~11のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
  13. 感染予防フィルムまたは防汚フィルムに用いられる請求項1~12のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
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