JP2022064034A - 緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法 - Google Patents

緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2022064034A
JP2022064034A JP2020172522A JP2020172522A JP2022064034A JP 2022064034 A JP2022064034 A JP 2022064034A JP 2020172522 A JP2020172522 A JP 2020172522A JP 2020172522 A JP2020172522 A JP 2020172522A JP 2022064034 A JP2022064034 A JP 2022064034A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tension
sleeve
grout
concrete structure
tension material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020172522A
Other languages
English (en)
Inventor
良弘 田中
Yoshihiro Tanaka
雅樹 小野
Masaki Ono
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tokyo Seiko Co Ltd
Original Assignee
Tokyo Seiko Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tokyo Seiko Co Ltd filed Critical Tokyo Seiko Co Ltd
Priority to JP2020172522A priority Critical patent/JP2022064034A/ja
Priority to US17/498,538 priority patent/US20220112718A1/en
Publication of JP2022064034A publication Critical patent/JP2022064034A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • EFIXED CONSTRUCTIONS
    • E04BUILDING
    • E04CSTRUCTURAL ELEMENTS; BUILDING MATERIALS
    • E04C5/00Reinforcing elements, e.g. for concrete; Auxiliary elements therefor
    • E04C5/08Members specially adapted to be used in prestressed constructions
    • E04C5/12Anchoring devices
    • E04C5/127The tensile members being made of fiber reinforced plastics

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Architecture (AREA)
  • Civil Engineering (AREA)
  • Structural Engineering (AREA)
  • Reinforcement Elements For Buildings (AREA)
  • Bridges Or Land Bridges (AREA)

Abstract

【課題】緊張材をコンクリート構造物にしっかりと定着させ、コンクリート構造物に効率よくプレストレスを導入する。【解決手段】定着構造は、挿通孔4が形成されたコンクリート構造物2の端部に配置され、挿通孔につながる貫通孔が形成された支圧板3と、構造物2の挿通孔および支圧板3の貫通孔に通され、その一端部が構造物2の外に出されるスリーブ7と、スリーブ7内に挿入され、一端部が構造物2の外に出される緊張材1と、構造物2の外に位置するスリーブ7の一端部に係合され、支圧板3の外面に接するロックナット8と、挿通孔内およびスリーブ内に充填されるPCグラウト15を備える。緊張材1はPCグラウト15の充填前に緊張され、かつPCグラウト15の強度発現後に緊張が解かれたものである。緊張材1がポアソン効果によって径方向外向きに膨張し、PCグラウト15に圧縮応力が発生している。【選択図】図2

Description

本発明は、緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法に関する。本発明の緊張材の定着構造は、ポストテンション方式によって製作されるプレストレストコンクリート構造物およびプレテンション方式によって製作されるプレストレストコンクリート構造物の両方に適用できる。
従来、連続繊維補強材をプレストレストコンクリート構造物の緊張材として適用するメリットは、従来のPC鋼ストランドを緊張材として適応するよりも、多くのメリットがあるとされていた。最大のメリットは、連続繊維補強材は錆びることがなく、また厳しい環境下においても劣化リスクが少ないことである。また、連続繊維補強材の中で、素線の材質が炭素繊維を用いた素線をロープ状に加工した炭素繊維補強材の破断応力の70%は、約3600N/mm2であるのに対して、PC鋼ストランドの場合は約1300N/mm2となり、約2.8倍の高い引張強度を有する。また、単位破断荷重および単位長さ当たりの炭素繊維補強材の自重は0.76g/m/kNに対して、PC鋼ストランドの場合は4.23g/m/kNとなり、約1/5.6と軽量であることがわかる。そのために、コンクリートにプレストレスを導入するにあたり、PC鋼ストランドに比較して少ない断面積の緊張材を配置することができ、また緊張材の施工にあたり施工手間が低減できる。
最近、プレストレストコンクリート構造物の耐久性保持の観点から、初期の建設投資費用の他に、維持管理費用まで含めたライフサイクルコストで施設の利用計画を行うようになり、このような観点からは、緊張材として連続繊維補強材を適用することも検討の視野に入れるような傾向がある。
しかしながら、連続繊維補強材を主要な緊張材料として適用するためには、解決しなければならない課題がある。その一つが連続繊維補強材の緊張時における定着構造に関する課題である。従来のPC鋼ストランドでは、鋼製クサビとアンカーヘッドにより、直接、PC鋼ストランドの任意の位置を把持して緊張ジャッキを使用して緊張力の導入や、アンカーヘッドを介して支圧板に定着する工法を採用してきた。この工法の最大のメリットは、鋼製クサビはPC鋼ストランドの任意の位置で把持と開放ができること、また、鋼製クサビとアンカーヘッドは、コンパクトな装置で大きな緊張力をプレストレストコンクリート構造物に導入することができるなど、優れた技術であり、PC鋼ストランドを適用したプレストレストコンクリート構造物の施工にあたり、多大な貢献をしてきた。
つまり、PC鋼ストランドと鋼製クサビの組合せでは、鋼製クサビのPC鋼ストランドに接する部分には、鋼製クサビ表面にクサビ効果によりPC鋼ストランドの表面に食い込むような凹凸が加工されていて、これにより、PC鋼ストランドと鋼製クサビはグリップした状態を保持することができ、緊張力をアンカーヘッドに伝達することが可能となる。
一方、緊張材として優れた特徴を有する連続繊維補強材の定着構造として、PC鋼ストランドに適用する鋼製クサビとアンカーヘッドをそのまま適用することは不可能である。仮に、PC鋼ストランドに適用する同等の鋼製クサビを連続繊維補強材に適用した場合には、鋼製クサビ表面はクサビ効果により連続繊維補強材の表面に食い込むことは可能であるが、連続繊維補強材の食い込み部におけるせん断抵抗は期待することができない。それは、連続繊維補強材の表面は、非常に柔らかく、食い込み部の連続繊維補強材表面は、すぐに削り取られてしまうか、あるいは、クサビの食い込みを大きく取ると連続繊維補強材が切断されるなど、グリップ効果は期待できず、定着構造として適用不可能である。
現在、連続繊維補強材の定着構造として、実務的に実施されている技術は、以下の2種類の定着構造に限定されている。その1つは、緩衝材を連続繊維補強材に巻き付けて、その外側にクサビを適用する方式の定着構造である。鋼製クサビを適用するが、クサビテーパ角度を調整するために、PC鋼ストランド用の鋼製クサビよりは長くなり、また、鋼製クサビは専用のジャッキを使用してアンカーヘッドに押込む必要があるなど、施工上に制約条件がある。そのために、ポストテンション用緊張材として適用することはできなく、プレテンションのPC鋼ストランドと連続繊維補強材の接続治具として使用されている。
連続繊維補強材をポストテンション用緊張材として用いるときに実績のある定着構造は、鋼管スリーブ内に膨張剤を充填して製造した、膨張剤充填方式の定着構造である。この定着構造の基本的原理は、連続繊維補強材と鋼管スリーブ内に充填した膨張剤の膨張圧縮応力を利用して、連続繊維補強材と鋼管スリーブのせん断抵抗力の向上を図ったものである。この定着方式は、ポストテンションのために緊張材を緊張する時の、固定定着と緊張定着の両方に適用することが可能である。しかし、膨張剤の充填後の強度発現と膨張量制御のための温度および湿度管理が必要であり、このため工場生産が必要とされる。工場出荷時には連続繊維補強材の長さや膨張剤方式の定着構造の定着位置が固定されている。
本発明に関連する既往の特許文献を以下に示す。
特開平9-53325号公報 特開2005-76388号公報 特願2011-526788号公報
特許文献1は、従来の大型接続部材で接続して牽引することにより、モルタル注入量が増大する課題を解決することを開示する。つまり、繊維複合線状材の中間部にソケット内に硬化する合成樹脂材又は定着用膨張材を注入して、硬化した合成樹脂材又は定着用膨張材で繊維複合線条材に一体化した定着体を設けて、緊張後に中間定着体により構造物に定着するものである。
定着体の構造としてソケットと繊維複合線状材の隙間に合成樹脂材又は定着用膨張材を注入する方法は、公知の事実である。特許文献1の方法では、緊張前に中間定着体の位置を特定して装着しておく必要があるが、実際の緊張作業においては、構造物の長さが設計図と異なることや、緊張時の種々の摩擦抵抗により、繊維複合線状材の緊張による伸び量が変化する。従って、予め中間定着体を設置する必要がある特許文献1の発明は、現実的ではない。
特許文献2は、高強度繊維複合材ケーブルの端末定着体として、工場ではなく現場で加工できるようにするために、スリーブの中間部に膨張性充填材通過用孔とケーブル挿通孔を貫設した可縮性の緩衝間仕切り材を設けて、膨張性充填材の膨張圧を長さ方向に均一にしたものを開示する。しかしながら、特許文献2の理論展開に疑問視される諸点が散見される。その一つは、[0017]に記述されている、「そのためには膨張圧を50MPa以上にさせる必要があるが、・・・設備と温度管理が必要である。」の記述である。膨張性材料による膨張圧縮応力は、膨張材料に膨張歪が内在し、その膨張歪を拘束するスリーブの内径、スリーブの厚み、スリーブの弾性係数が決まって、初めて発生するものである。極論すると、スリーブのような拘束するものがなければ、膨張性材料には膨張圧が発生しない。
同様な記述が、[0019]においても、「・・・実験によれば、自然条件の条件においては、ケーブルの断面積の1~3倍の空隙があれば、30MPaの膨張圧を得ることができることが確認された。・・・・」とある。この記述の場合でも、自然条件(現場での養生)では、膨張材料の膨張歪がどのようになっているかの記述ではなく、膨張圧が30MPaであることを示している。ケーブル断面積の1~3倍の記述は、膨張歪を拘束するスリーブの内径情報を示しているのみであり、スリーブの厚み、スリーブの弾性係数、膨張材料の膨張歪の情報がないので、理論的な整合性が欠ける。
特許文献3は、繊維強化プラスチック製ケーブルに、研磨粒子が付着した摩擦シートとその上にスチール製ブレードネットチューブを被せて、クサビ定着を可能としたものを開示する。従来、連続繊維補強材に対する定着体として実用化されている、スリーブと膨張性材料の膨張圧縮応力との組み合わせにおる定着体は、工場生産が前提であるために、定着体の位置が固定されていた。この方式では緊張の固定端部の定着体としては、問題ない。しかし、緊張端部については、あらかじめ工場内で製作された定着体の位置が変動するために、適用することが難しいことがある。特許文献3の発明では、任意の位置で摩擦シートとブレードネットを巻き付けることにより、クサビを装着できるので、緊張ジャッキにより緊張する位置は任意で設定できる。しかし、現実的には、PC鋼ストランドで適用している鋼製クサビは、クサビによりPC鋼ストランドを把持する位置を任意にすることができる。一方、特許文献3の方法では、摩擦シートとスチール製ブレードネットチューブで補強されている位置でしか把持することはできない。また、クサビを摩擦シートとブレードネットを巻き付けられた連続繊維補強材に把持させるためには、別途、クサビ押し込みジャッキによる補助が必要であり、実質的に緊張ジャッキによる緊張作業を行うには課題がある。そのために、特許文献3による方法では、緊張側の端部定着体として使用することは困難である。本技術は、プレテンションによる緊張において、連続繊維補強材と緊張端部に設置する従来のPC鋼ストランドとの接続治具として利用されている。
コンクリート構造物にPC鋼ストランドの緊張力を利用してプレストレスを導入する方式には、ポストテンション方式とプレテンション方式がある。連続繊維補強材を適用した緊張導入方式についても、同様に、ポストテンション方式とプレテンション方式ある。以下に、それぞれの方式に対する連続繊維補強材を利用した従来方式に対する課題を示す。
ポストテンション方式の場合
(1)支圧板と膨張材スリーブのロックナットによる定着
現在、連続繊維補強材の定着方法として、最も適用されている方法としては、連続繊維補強材とスリーブとの隙間に膨張材(セメント系膨張材を使用する)を充填して、その膨張材の水和反応過程で、膨張する膨張圧縮応力を利用する方法である。定着のメカニズムは、連続繊維補強材とスリーブとの間に働く膨張圧縮応力を利用し、連続繊維補強材外側表面とスリーブ内側表面の間に働く、ずれせん断力の接触圧縮応力を向上させることにより、連続繊維補強材とスリーブ内に確実に定着させるものである。
上記の膨張材スリーブを適用した、緊張側において緊張後に構造物端部に設けられた支圧板に緊張力を定着する方法が、一般的に多く適用されている。この方法では、膨張材スリーブの外側にロックナットを装着して最終的に緊張力を支圧板に伝達する。そのため、スリーブの外側にはねじ切りをして、ロックナットが機能できるようにする。また、膨張材スリーブを緊張ジャッキにより緊張するために、緊張側端部にはテンションバーをねじ込むことができる、ネジ穴を設けておく。センターホールジャッキによりテンションバーを介して、膨張材スリーブに緊張力を与え、所定の緊張力に達したら、予め膨張材スリーブに装着したロックナットを支圧板に締め付けて、緊張力は支圧板に伝達され、コンクリート構造物に緊張応力が発生する。その後、シース内にPCグラウトを充填し、強度発現したら一連の緊張作業は終了する。
問題点1:現状の膨張材スリーブのロックナットを介して、支圧板に緊張力を定着する方法では、緊張するコンクリート構造物の長さに制限が生ずる。一般的に連続繊維補強材の緊張時の緊張力は、保証破断荷重の70%以下とすることが設計で定められている。つまり、使用する連続繊維補強材の直径に関係なく、緊張時の連続繊維補強材の引張歪は、11,000μ~12,000μとなり、緊張部材の長さがL=10mの場合には、緊張による伸び量ΔL=110mm~120mmとなる。一方、膨張材スリーブの長さは、長くても300~400mmが一般的であるので、定着時のハンドリングを考慮すると、緊張部材の長さは、せいぜい15m~20m程度となる。
問題点2:一般的にロックナットを装着する膨張材スリーブの外径は、シース管径よりも大きい。そのために、緊張開始時には膨張材スリーブの支圧板側の端部は、支圧板よりも外側にある。そのために、緊張後にロックナットを支圧板に固定した際には、緊張端部から膨張材スリーブが300~400mm突出することとなる。従来のPC鋼ストランドの端部定着においても、アンカーヘッドが端部よりも突出することがある。一般的には、緊張端部から緊張管理に重要な役割を果たす部材が、大きく突出することは望ましいことではない。当然ながら、管理用のカバー装置の装備が必要である。
問題点3:膨張材スリーブは、膨張性のセメント系材料を充填して水和反応中の膨張を制御して商品化される。そのために、工場における温度および湿度管理などの品質管理が要求されるために、工場生産に限定される。緊張材の緊張力を利用してプレストレスが導入される構造物は、コンクリート構造物であり、例えば橋梁では30m~50mの規模が多くあり、仮に長さに0.5%の誤差が発生した場合、150mm~250mmの長さの誤差が発生する。また、プレキャスト製品をジョイントする場合では、プレキャスト製品の製品精度は非常に高いが、ジョイント部では現場作業であるために、誤差が蓄積される可能性もある。このような、プレストレスが導入される対象構造物の長さに誤差が発生した場合に、工場において膨張材スリーブの事前生産は困難となる。なお、従来のPC鋼ストランドでは、基本的にくさび定着であるために、緊張材の切断は現地で行い、また、定着位置は任意の位置で可能であるために、上記のような課題は発生しない。
(2)緊張端部定着を行わない方法
通常のPC鋼ストランドによるポストテンション方式の定着では、実施しない方法であるが、連続繊維補強材を使用した緊張材方式では、緊張後に緊張力を保持した状態で、シース管内にPCグラウトを充填し、強度発現後に、連続繊維補強材の緊張材の端部を切断する方法がある。この考え方の基本は、プレテンション方式の緊張力の導入方法に基づいている。プレテンション方式では、緊張材の緊張力を保持した状態で、構造体のコンクリートを打設して、コンクリートの強度発現後に、緊張材をリリースして、コンクリート構造物にプレストレスを導入する方法である。この場合、PC鋼ストランドの緊張力をリリースすることにより、PC鋼ストランドに作用していた軸方向(縦方向)の引張歪がPC鋼ストランドのリリースによりポアソン効果が働き、緊張材の直径方向(横方向)に緊張前の状態に戻ろうとする膨張歪が発生する。これに対して、PC鋼ストランドの周囲に打設されたコンクリートは拘束材料として働くために、PC鋼ストランド表面とコンクリートとの間に拘束効果の反力として圧縮応力が発生して、結果として、コンクリートとPC鋼ストランドとのすべりに対するせん断抵力が増大する。
連続繊維補強材によるポストテンション方式においても、シース管内に充填したPCグラウトが拘束材として作用するために、緊張力をリリース(連続繊維補強材の緊張先端を切断)することにより、連続繊維補強材の表面には拘束圧縮応力が発生して、せん断抵抗力が増大する。従来のPC鋼ストランドにおけるポストテンション方式において、支圧板やアンカーヘッドによる緊張定着を行わないで、PC鋼ストランドの先端を切断する方法を採用しない一つの理由は、PC鋼ストランドの表面は平滑であるためにPCグラウトとの付着特性が良くないことがある。一方、連続繊維補強材とPCグラウトの付着は、異形鉄筋よりは良くないがPC鋼ストランドよりは良いことがあげられる。
問題点1:緊張導入後、ロックナットを介して支圧板に緊張力が伝達されないので、緊張端部付近のコンクリートにプレストレスが発生しない。上記で記述したポアソン効果により連続繊維補強材とPCグラウトとのせん断抵抗力が働いても、緊張端部から50φ~60φ(φは連続繊維補強材の直径)の範囲では、プレストレスを期待できない。そのために、コンクリート構造物の端部付近までプレストレスを必要とする場合では適用が困難である。
問題点2:上記の問題点1は、具体的には小型寸法のコンクリート構造物に対して、緊張応力を導入することは困難であることと意味している。具体的には、例えばφ=15.2mmの連続繊維補強材を使用した場合、緊張応力が十分に期待できない範囲は、60φ=912mmとなり、例えば、長さ3m~4mの構造物では、上記の定着方法は適用できない。
プレテンション方式の場合
プレテンション方式による、緊張応力が導入されるメカニズムは、前述の説明の通りである。従って連続繊維補強材を緊張材として使用した場合でも、緊張後に打設したコンクリートが所定の強度に達して緊張応力を導入した場合、緊張端部付近(50φ~60φの距離)においては緊張応力が導入されない課題がある。そのために、従来のPC鋼ストランドを使用したプレテンション方式の場合も含めて、短い部材にプレテン方式でプレストレスを導入するのは、困難であった。
従来、緊張材としてPC鋼ストランドが多く適用されてきた。PC鋼ストランドの利点は、鋼製クサビとアンカーヘッドにより、直接、PC鋼ストランドの任意の位置を把持して緊張ジャッキを使用して緊張力の導入や、アンカーヘッドを介して支圧板に定着することによる緊張端部付近までプレストレス導入が可能であることである。
一方、本発明の対象となる連続繊維補強材とは、たとえば、素線の材質が炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などを用いた素線をロープ状に加工した補強材である。そのために、連続繊維補強材の横方向の剛性や強度が低く、従来のような鋼製クサビ定着は不可能である。
そのために、現状では、連続繊維補強材の定着は、スリーブと連続繊維補強材の隙間に膨張材を充填しかつ養生することにより膨張材の膨張圧縮応力を利用した定着方法が最も適用例が多く、実用的な方法として普及している。
その他に、連続繊維補強材の周囲に摩擦増強シートとスチール製ブレードネットチューブにより補強をおこない、その外側に従来の鋼製クサビよりもクサビ角度の緩い鋼製クサビを適用した定着方法も適用されているが、操作方法に制限があり緊張端部に適用するには課題があった。
このような現状に対して、本発明は、現場施工上の制約や、施工コストの増大はなく、また、その定着機構は単純であり、スリーブ、ロックナット、支圧板の設計も通常の構造計算で可能となる構造を備える定着構造を提供することを課題とする。
この発明はまた、緊張材をコンクリート構造物にしっかりと定着させ、コンクリート構造物に効率よくプレストレスを導入することを課題とする。
この発明は、ポストテンション方式によってプレストレスが導入されるコンクリート構造物における緊張材の定着構造を提供する。第1の発明による緊張材の定着構造は、挿通孔が形成されたコンクリート構造物の外端部に配置され、上記コンクリート構造物の挿通孔につながる貫通孔が形成された支圧板と、上記コンクリート構造物の上記挿通孔および上記支圧板の貫通孔に通され、その一端部が上記コンクリート構造物の外に出される中空のスリーブと、上記スリーブ内に挿入され、一端部が上記コンクリート構造物に定着されかつ他端部が上記コンクリート構造物の外に出される緊張材と、上記コンクリート構造物の外に出された上記スリーブの他端部に係合され、上記支圧板の外面に接するロックナットと、上記挿通孔内およびスリーブ内に充填されるPCグラウトと、を備え、上記緊張材は、上記PCグラウトが充填される前にその一端部が固定された状態でその他端部が緊張装置を用いて外向きに引っ張られることによって緊張され、かつ上記PCグラウトに所定の強度が発現した後に上記緊張装置を用いた緊張が解かれたものであり、上記緊張材がポアソン効果によって径方向外向きに膨張しており、膨張した上記緊張材と上記スリーブとの間に充填されているPCグラウトに圧縮応力が発生していることを特徴とする。
緊張材の一端部(固定端)がコンクリート構造物に固定され、かつ緊張材の他端部(緊張端)が緊張装置を用いて外向きに引っ張られる。緊張材の一端部はコンクリート構造物の外において固定装置を用いて定着してもよいし、上記挿通孔内においてたとえばPCグラウト等によりコンクリート構造物に定着してもよい。
この発明は、プレテンション方式によってプレストレスが導入されるコンクリート構造物における緊張材の定着構造も提供する。第2の発明による緊張材の定着構造は、コンクリート構造物内の両端部のそれぞれに配置された、貫通孔が形成された一対のロックナット兼支圧板と、上記一対のロックナット兼支圧板のそれぞれに係合され、上記貫通孔につながる中空を備えるスリーブと、コンクリート構造物内の両端部の上記ロックナット兼支圧板の貫通孔および中空のスリーブに通されて、両端部がコンクリート構造物の外に出される緊張材と、上記スリーブ内に充填されるPCグラウトと、を備え、上記緊張材は、上記PCグラウトが上記スリーブに充填されかつ上記コンクリート構造物を形成するコンクリートが打設される前に、その一端部が固定装置を用いて固定された状態においてその他端部が緊張装置を用いて外向きに引っ張られることによって緊張され、かつ上記PCグラウトおよび上記コンクリートに所定の強度が発現した後に上記緊張装置を用いた緊張が解かれたものであり、上記緊張材がポアソン効果によって径方向外向きに膨張しており、膨張した上記緊張材と上記スリーブとの間に充填されているPCグラウトに圧縮応力が発生していることを特徴とする。
緊張材には、好ましくは連続繊維補強材が用いられる。連続繊維補強材とは、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などの連続繊維を数万本束ね、これにエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂、あるいは、ポリカーボネートやポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を含浸して硬化させたものである。複数本の連続繊維を束にし、複数本の連続繊維束を撚り合わせることによって連続繊維補強材を構成してもよい。
好ましくは上記コンクリート構造物に中空のシース管が埋設されており、上記シース管の中空が上記挿通孔として用いられる。
この発明によると、ポアソン効果によって緊張材が径方向外向きに膨張することによって、緊張材とその周囲のスリーブとの間に充填されたPCグラウトに圧縮応力が発生しているので、緊張材は、上記スリーブによって囲まれている範囲においてその全周囲にわたってしっかりとスリーブ内に拘束されかつ定着される。
緊張材はまた、緊張が解かれることで長手方向に収縮する(元の長さに戻ろうとする)。緊張材としっかりと定着しているスリーブの一端部にはロックナットまたはロックナット兼支圧板が係合されているので、緊張材の緊張が解かれることで緊張材が長手方向に収縮すると、緊張材にしっかりと定着したスリーブの一端部のロックナットが支圧板に強く押しつけられる(ポストテンション方式)、またはコンクリート構造物内の両端部のロックナット兼支圧板に互いに近づく方向の力が加わる(プレテンション方式)ことになり、コンクリート構造物にプレストレスを効率よく導入することができる。
本発明による定着原理
本発明による緊張材の定着メカニズムを簡単に言及する。緊張材に緊張力を与えることにより緊張材には緊張方向(緊張材の長手方向)に引張歪が発生すると同時に、緊張方向に直交する緊張材の周方向にはポアソン効果により圧縮歪が発生する。この状態を維持して、スリーブと緊張材との隙間に、PCグラウトを充填する。その後にPCグラウトを養生することで、PCグラウトは所定の強度が発現する。PCグラウトに強度が発現した後、緊張材の緊張を解放する(緊張力を解除する)と、緊張材に存在している周方向の圧縮歪が解放される。緊張材の圧縮歪が解放されることで緊張材は径方向外向きに膨張する(ポアソン効果、ポアソン現象)。膨張した緊張材とスリーブとの間に挟まれているPCグラウトに圧縮応力が発生し、これによって緊張材とスリーブとが強く定着される。
定着スリーブに係合したロックナットは、緊張反力を分担し、その力は、コンクリート構造物端部に設けられた支圧板を介して、コンクリート構造物端部も含む全長に渡り有効なプレストレスとしてコンクリート構造物に導入される。
緊張材とスリーブの隙間にあるPCグラウトに圧縮応力が発生することにより、緊張材とスリーブとの間の定着機構が発生することは、膨張材充填スリーブの実績において、実務的に実証されている。では、定量的に上記の理論展開が正しいかどうかを、緊張材が炭素繊維複合ケーブル(CFCC)を使用した場合にPCグラウトに発生する圧縮応力を計算することで以下に考察する。
本発明によるPCグラウトの発生圧縮応力
連続繊維補強材として炭素繊維を適用した、連続炭素繊維補強材を対象として具体的にPCグラウトに発生する圧縮応力を計算することにより、定着のメカニズムを説明する。例題の連続炭素繊維補強材(以下、CFCC(Carbon Fiber Composite Cable)と称する)およびスリーブの形状や特性は以下の通りである。
1)連続炭素繊維補強材(CFCC)データ:
CFCCの直径φ=17.2mm、CFCCの有効断面積Acf=151.1mm2、CFCCの弾性係数Ecf=150kN/mm2、CFCCの保証破断荷重Pu=385kN、CFCCのポアソン比ν=0.06(島津製作所による、炭素繊維強化プラスチックの試験データより)である。
2)スリーブのデータ:
スリーブの材質STKM13A、スリーブの内半径R=11.4mm、肉厚t=4.5mm、スリーブの弾性係数E=210kN/mm2
CFCCを緊張する場合にCFCCに加えることができる最大の緊張力は、CFCCの保証破断荷重の70%以下と規定されている。従って、緊張時の引張ひずみεu=0.7×Pu/(Acf×Ecf)=11,890μとなる。
CFCCの緊張を解除すると、ポアソン効果によりCFCCにはポアソン比に比例して横方向(周方向)の膨張ひずみが発生し、CFCCの直径は大きくなる。横方向の膨張ひずみをεluとすると、膨張ひずみεlu=ν×εu=713μとなる。従って、緊張が解除されたCFCCにおいてポアソン効果が発生し、その結果、CFCCが膨張することによりスリーブ内の内半径Rが膨張する量を、ΔRとすると、ΔR=φ/2×εlu=6,132×10-6mmとなる。
スリーブ内の内半径がΔRの長さで膨張すると、「薄肉リングに作用する内圧の理論解析」の理論解を適用すると、PCグラウトに発生する圧縮応力pは、
p=ΔR×t×E / R2=44.6 MPa の解を得ることができる。
PCグラウトの圧縮応力が上昇することと、PCグラウトを介してCFCCがスリーブに定着されることの関係を以下に説明する。定着の性能は、CFCCとスリーブとの間にあるPCグラウト自身のせん断破壊応力、あるいは、PCグラウトとCFCCの境界面に作用する摩擦力と付着力、あるいは、PCグラウトとスリーブ内側の境界面に作用する摩擦力と付着力の組合せの中で、最小の組合せの抵抗能力で決定される。
まず、PCグラウト自身の抵抗せん断応力については、圧縮応力が作用した状態で、しかも非常に薄いために、せん断破壊することは考えられない。一方、PCグラウトとCFCCの境界面とPCグラウトとスリーブの内側の境界面との比較では、前者は後者に比べて抵抗面積が小さいので摩擦力が小さくなる傾向にあるが、PCグラウトとCFCCの境界面の付着応力は大きくなる傾向にある。一方、後者については、上述とは逆の関係にある。いずれにしても、PCグラウトとの境界面に作用するせん断力については、主に、摩擦力による抵抗が支配的であり、その主要因がPCグラウトの圧縮応力となる。摩擦抵抗応力は、摩擦係数と境界面に作用する圧縮応力の積で表現できるために、PCグラウトの圧縮応力pが大きい方が有利となる。
従来の膨張材充填スリーブの膨張材の発生圧縮応力
従来の膨張材充填スリーブの場合は、本発明のようなポアソン効果を適用するものではない。しかし、最終的な定着メカニズムは、PCグラウトの代わりに、膨張する材料を配合して得られる膨張性充填材(膨張セメントグラウト)を使用して、グラウト材が水和反応する過程で膨張する膨張圧縮応力を利用するものであり、結果として、定着装置として使用する際には、同じメカニズムを適用している。
本発明の妥当性を評価する上でも、既に実用化されている、膨張材充填スリーブの発生圧縮応力pを、本発明の場合と同じCFCC緊張材とスリーブの形状材質で、発生する膨張材圧縮応力pを試算する。
1)連続炭素繊維補強材(CFCC)データ:
CFCCの直径φ=17.2mm、CFCCの有効断面積Acf=151.1mm2、CFCCの弾性係数Ecf=150kN/mm2、CFCCの保証破断荷重Pu=385kN、CFCCのポアソン比ν=0.06である。
2)膨張性充填材料:膨張ひずみεe=600μ(管理された養生温度条件下の無拘束状態でのひずみ)
3)スリーブのデータ:
スリーブの材質STKM13A、スリーブの内半径R=11.4mm、肉厚t=4.5mm、スリーブの弾性係数E=210kN/mm2
膨張性グラウトは、スリーブの内の半径内に充填される。スリーブの中心部には直径φ17.2mmのCFCCがある。膨張性グラウトは、CFCC素線の間にも充填されるために、膨張材の膨張範囲は、スリーブの内半径内であると考える。その結果、スリーブ内の内半径Rが膨張する量を、ΔRとすると、ΔR=εe×R=6,840×10-6mmとなる。
スリーブ内の内半径がΔRの長さで膨張すると、「薄肉リングに作用する内圧の理論解析」の理論解を適用すると、膨張性グラウトに発生する圧縮応力:pは、p=ΔR×t×E / R2=49.7 MPa の解を得ることができる。
以上、本発明によるPCグラウトに発生する圧縮応力と、従来の膨張性スリーブ内の膨張性グラウトに発生する圧縮応力は、ほぼ同等であり、本発明による定着効果が理論的にも検証された。
この発明による定着構造が成立するために必要な要素は、コンクリート構造物端部に配置した支圧板、緊張材、スリーブ、スリーブ端部に係合されるロックナット、及び、PCグラウトである。これらの要素は、特別に高度な加工を必要とするものではない。唯一、機械加工が必要なのは、スリーブ端部にロックナットをねじ固定するためのねじ加工と、支圧板の穴加工である。PCグラウトは、通常のプレテンション方式で、緊張後にシース管内に充填されるものと同じ材料を適用できる。また、PCグラウトの充填作業についても、従来のグラウト充填の施工方法で、十分に連続繊維補強材とスリーブの隙間にPCグラウトを充填することが可能である。
本発明の定着のメカニズムによれば、同じスリーブ形状と連続繊維補強材を対象とした試算結果から、本発明のPCグラウトに発生する圧縮応力は、膨張材スリーブと同じレベルであることは証明された。
定着装置としての完成品は、施工の過程や、施工の容易さ、品質管理の手間、定着効果、施工コスト、施工製品としての性能などの点で優位性は多大である。
一実施態様では、上記緊張材の直径をφ、ポアソン比をν、保証破断荷重時の引張歪をεuとし、上記スリーブの内半径をR、肉厚をt、弾性係数をEとした場合に、以下の式1によって算出される上記PCグラウトに発生する圧縮応力pが、20から60MPaである。
p=φ/2×ν×(0.7×εu)×(t×E)/(R×R)・・・式1
定着性能に寄与すると考えらえる要因の中から、定着メカニズムに直接関係する要因を選定して、これらのデータを使用しての簡単な計算から得られる、PCグラウト材に作用する圧縮応力の範囲を示すことにより、定着性能の定量的な判定基準を示すものである。つまり、本発明において、適用される構成要素の組合せにおいて、定着性能が発揮できる定量的な範囲は20~60MPaである。
好ましくは、上記スリーブの内面に凹凸が形成されている。たとえば、スリーブの内面にねじ切り加工をすることによってスリーブの内面に凹凸を形成することができる。前述の説明に示すように、PCグラウトに発生する圧縮応力は、スリーブ内側とPCグラウト間のせん断応力として相互に伝達される。せん断応力はスリーブ内側に働く圧縮応力に摩擦係数を乗じたものであり、この摩擦係数の向上にスリーブの内面の凹凸が寄与する。
好ましくは、上記スリーブの外面にも凹凸が形成されている。スリーブ外側とスリーブ外側に接しているPCグラウト間には付着応力による抵抗力が発生する。その抵抗力はスリーブに係合しているロックナットに伝達されるために、この付着応力の向上にスリーブ外面の凹凸が寄与する。
他の実施態様では、上記コンクリート構造物の端部に配置される支圧板が複数枚ではなく連続した一枚からなる。コンクリート構造物の端部に配置される支圧板を複数枚ではなく連続した一枚の支圧板とすることにより、送電線鉄塔基礎における支圧板としての役割と、鉄塔基礎トラス材を固定して、鉄塔基礎トラス材に作用する断面力をコンクリート基礎に伝達する役割を持たせることができる。
好ましくは、上記支圧板のコンクリート構造物に対向する面に複数の凸部形状のせん断キーが設けられており、上記コンクリート構造物の上記支圧板に対向する面の、上記せん断キーに対応する位置に、上記せん断キーが入る凹部が形成されている。基礎のベースプレートに作用する水平力に対して、効率的かつ経済的に抵抗するせん断キーを設けることで、わずかな追加で多大なせん断抵抗効果が期待できる。
一実施態様では、上記ロックナットと支圧板が一体成形されている。短い寸法部材のプレテンション部材製作も可能となる。
他の実施態様では、上記スリーブに、上記PCグラウトを上記スリーブ内に充填するための充填孔および空気を排出する空気排出孔が形成されている。スリーブ内に確実にPCグラウトを充填することができる。
この発明は、ポストテンション方式によるプレストレストコンクリート構造物の製作方法も提供する。この方法は、挿通孔が形成されたコンクリート構造物の端部に、上記コンクリート構造物の挿通孔につながる貫通孔を備える支圧板を配置し、中空のスリーブの一端部にロックナットを係合し、上記スリーブを、上記支圧板の貫通孔を通じて上記コンクリート構造物の挿通孔に挿入し、上記スリーブの一端部のロックナットを上記支圧板上に載せ、上記スリーブの中空に緊張材を挿入し、上記緊張材の一端部をコンクリート構造物に固定し、上記緊張材の他端部に緊張装置を装着し、上記緊張材を緊張させた状態で、上記スリーブと上記スリーブの中空に通された緊張材の隙間にも充填されるように、上記コンクリート構造物の挿通孔内にPCグラウトを充填し、上記PCグラウトが所定の強度に達した後に、上記緊張材の緊張を解除するものである。
この発明はさらに、プレテンション方式によるプレストレストコンクリート構造物の製作方法も提供する。この方法は、型枠を用意し、型枠内の両側端部に、中空のスリーブおよび上記スリーブに係合されたロックナット兼支圧板を、上記ロックナット兼支圧板が上記型枠内の側端部に接するように設置し、上記型枠の両側端部に形成された取付穴を通じて緊張材を型枠内に挿入し、上記緊張材の両端部を型枠の両側端部からそれぞれ外に出し、型枠内においては上記緊張材を上記型枠内の両側端部に設置されたスリーブ内に挿入し、型枠の一方側端部から型枠の外に出ている上記緊張材の一端部に固定装置を装着し、型枠の他方側端部から型枠の外に出ている上記緊張材の他端部に緊張装置を装着し、上記緊張材の他端部を緊張装置により緊張し、上記緊張材を緊張させた状態で、上記型枠内の両側端部のスリーブ内にPCグラウトを充填し、上記型枠内にコンクリートを打設し、上記PCグラウトおよび上記コンクリートが所定の強度に達した後に、上記緊張材の緊張を解くものである。
ポストテンション方式によってコンクリート構造物にプレストレスを導入する様子を示す断面図である。 ポストテンション方式によってコンクリート構造物にプレストレスを導入する様子を示す断面図である。 (A)は緊張状態の緊張材をその周囲のスリーブおよびスリーブ内に充填されたPCグラウトとともに示す拡大断面図を、(B)は緊張が解かれた状態の緊張材をその周囲のスリーブおよびスリーブ内に充填されたPCグラウトとともに示す拡大断面図を、それぞれ示す。 ポストテンション方式によりコンクリート構造物にプレストレスを導入する様子を示す第1実施例の断面図である。 ポストテンション方式によりコンクリート基礎構造物にプレストレスを導入する様子を示す第2実施例の断面図である。 ポストテンション方式によりPCコンポジット橋梁にプレストレスを導入する様子を示す第3実施例の断面図である。 プレテンション方式によりプレストレストコンクリート構造部材を製造する工程を示す。 プレテンション方式によりプレストレストコンクリート構造部材を製造する工程を示す。 プレテンション方式によりプレストレストコンクリート構造部材を製造する工程を示す。 図8に示すコンクリート構造部材の一端部を拡大して示す一部拡大平面図である。
図1および図2はポストテンション方式によってコンクリート構造物にプレストレスを導入する様子を示す断面図である。プレストレスが導入されたコンクリート構造物は、プレストレストコンクリート構造物と呼ばれる。図3(A)は後述する緊張状態の緊張材を模式的に示すもので、緊張状態の緊張材を、その周囲のスリーブおよびスリーブ内に充填されたPCグラウトとともに示す拡大断面図である。図3(B)は緊張が解かれた状態の緊張材を模式的に示すもので、緊張が解かれた緊張材を、その周囲のスリーブおよびスリーブ内に充填されたPCグラウトならびにPCグラウトに生じる圧縮応力(両端矢印)とともに示す拡大断面図である。
以下に詳述するように、コンクリート構造物にプレストレスを導入するために、コンクリート構造物内に緊張材が設けられる。緊張材の一端(固定端)を固定し、かつ他端(緊張端)を外向きに引っ張ることによって緊張材は長手方向に緊張される。緊張材の一端を固定しておくための固定装置は図1および図2において概略的に示されている。緊張材の他端を引っ張るための緊張装置は図1および図2においては図示が省略されている。固定装置および緊張装置の具体例は後述する。
図1を参照して、コンクリート構造物2に円筒状の金属製またはポリエチレン製のシース管5が埋設されている。シース管5の中空が、後述するスリーブ7が通される挿通孔4として用いられる。シース管5にはたとえばその内外周面に凹凸を有するスパイラル・シースを用いることができる。
コンクリート構造物2の上面に金属製の支圧板3が設けられている。支圧板3にはコンクリート構造物2に設けられるシース管5の外径と同等の直径を有する円筒形の貫通孔3aが形成されており、シース管5は支圧板3の貫通孔3aにも通されている。挿通孔4(シース管5の中空)は支圧板3の上端面において外に開口する。支圧板3の貫通孔3aの直径はシース管5の外径よりもやや大きく形成してもよい。
挿通孔4に、金属製の剛性の高い円筒状のスリーブ7が通されている。スリーブ7の外径は挿通孔4(シース管5の内径)よりも小さい。シース管5とスリーブ7との間には横断面において環状の隙間が形成される。スリーブ7の内外周面にも凹凸(たとえばネジ切り)が形成されていてもよい。スリーブ7の内周面または外周面のいずれか一方でもよいが,好ましくはスリーブ7の内外周面の両方に凹凸は形成される。
スリーブ7の上端部は支圧板3の上方にまでのびており、支圧板3の上方にのびるスリーブ7の上端部の外周面にねじ山11が形成されている。外周面にねじ山11が形成されたスリーブ7の上端部には内周面にねじ溝が形成されたロックナット8がねじ止めされ、ロックナット8は支圧板3の上面に接するようにしてスリーブ7の外周面に固く係合されている。
ロックナット8から支圧板3を通りコンクリート構造物2内にまでのびるスリーブ7の中空6内に、スリーブ7の内径よりも小さい直径を持つ緊張材1が通されている。緊張材1とスリーブ7の内周面との間にも横断面において環状の隙間が形成される。
緊張材1には、1本の心線と、その周囲に撚り合わされた複数本、たとえば6本の側線とから構成される連続繊維補強材を用いることができる。断面で見ると(図示略)、緊張材1、緊張材1を構成する心線および側線は、いずれもほぼ円形の形状を持つ。また、断面で見て、緊張材1はその中心に心線が配置され、心線を取り囲むように複数本の側線が位置する。緊張材1はたとえば5mm~40mm程度の直径を持つ。
緊張材1を構成する心線および側線は、いずれも熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含浸させかつ硬化させた多数本たとえば数万本の長尺の連続する炭素繊維を断面円形に束ねた樹脂含有繊維束であり、緊張材1の全体には数十万本の炭素繊維が含まれる。炭素繊維のそれぞれは非常に細く、たとえば5μm~7μmの直径を持つ。緊張材1は、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics)製のものと言うこともできる。炭素繊維に代えてアラミド繊維またはガラス繊維を用いてもよい。熱硬化性樹脂には、たとえばエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂には、たとえばポリカーボネートやポリ塩化ビニルが用いられる。
コンクリート構造物2の下面から下にのびる緊張材1の一端(図1における下端、固定端)は固定装置12によって固定される。ロックナット8から上方にのびる緊張材1の他端(図1における上端、緊張端)は緊張装置(図示略)を用いて上方に引っ張られる(これを「緊張する」、とも言う)。緊張材1の一端(固定端)が固定されているので、緊張材1の他端(緊張端)を引っ張ると、緊張材1にはその長手方向に引張力(緊張力とも言う)が加わり、これに対応する応力が緊張材1の内部に発生する。緊張材1は応力に比例した伸びを生じるとともに、断面の収縮(緊張材1の直径の縮小)が発生する。図3(A)には緊張材1を長手方向に引っ張る前の緊張材1(その太さ)が破線によって示されている。
図2および図3(A)に示すように、緊張材1の緊張状態を保った状態でスリーブ7内にPCグラウト15が充填される。図2を参照して、PCグラウト15はスリーブ7内のみならず、シース管5内にも充填される。
図2および図3(B)を参照して、PCグラウト15を養生し、所定の強度が発現した後、緊張装置を用いた緊張材1の緊張が解かれる。緊張装置を用いて緊張材1を緊張しているときの緊張材1には長手方向(軸方向)に伸びが生じ、長手方向に引張歪が生じる。緊張材1の緊張が解かれると、緊張材1にはポアソン効果が作用して、緊張材1の周面外向き(軸直角方向)にポアソン比分の膨張歪みが発生し、緊張材1は周方向外向きに膨張する。すなわち図3(A)および図3(B)を対比して、緊張材1の緊張を解くことによって、緊張材1は長手方向に縮み(L1>L2)、かつ径方向に膨張する(D1<D2)。なお、図3(A)および(B)には緊張材1の縮みおよび膨張の様子がかなり強調して描かれている。その結果、図3(B)に模式的に示すように、緊張材1とスリーブ7との隙間に充填されているPCグラウト15内に所定の圧縮応力18が発生する。この圧縮応力18によって緊張材1はスリーブ7にしっかりと定着される。また、緊張材1の緊張が解かれることで緊張材1に長手方向の縮みが生じることから、スリーブ7の上端部にねじ結合されているロックナット8が支圧板3に押し付けられる(緊張反力)ので、コンクリート構造物2にプレストレスが生じる。このようにして、コンクリート構造物2の内部に緊張材1がしっかりと定着されるとともに、導入されるプレストレスによってコンクリート構造物2の構造性能が向上する。
以下、図4から図10を参照して、プレストレスが導入されるコンクリート構造物の具体例を説明する。
図4は実施例1を示すもので、緊張材を緊張するための固定装置および緊張装置の一例を詳細に示している。図4では、コンクリート構造物内に挿通孔を確保するために設けられるシース管の図示は省略されている。
図4の左側を参照して、固定装置は、コンクリート構造物22の一端(図4の左端)に設けられた支圧板23A、ロックナット28A、ラムチェアー38、アンカーヘッド39、摩擦シートおよびブレードネット41、ならびにクサビ40を含む。コンクリート構造物22に埋設されたシース管内(挿通孔)にスリーブ27Aが通され、このスリーブ27A内に緊張材21が通されている。スリーブ27Aは支圧板23Aの貫通孔に通されその先端部分が支圧板23Aから外に出ている。支圧板23Aの外に出ているスリーブ27Aの先端部分にロックナット28Aがねじ止めされている。
支圧板23Aにはさらに、ロックナット28Aを取り囲むようにしてラムチェアー38が設置されている。ラムチェアー38はその中心に緊張材21が通る挿通孔を備え、ラムチェアー38の挿通孔に緊張材21の先端部分が通され、緊張材21の先端部分(固定端)はラムチェアー38の外に出ている。
ラムチェアー38にアンカーヘッド39が設置される。アンカーヘッド39は緊張材21の先端部分が通される挿通孔と、クサビ40が押し入れられるクサビ用テーパー形状の中空を持つ。ラムチェアー38から外に出ている緊張材21の先端部分は、アンカーヘッド39の挿通孔および中空を通り、アンカーヘッド39の外にまでのびている。アンカーヘッド39の外に出ている緊張材21の先端部分に摩擦シートおよびブレードネット41を巻き付けて、その外側にクサビ40が被せられ、クサビ40によって覆われた緊張材21の先端部分がアンカーヘッド39の中空に押し入れられる。緊張材21の先端部分がアンカーヘッド39のクサビ用テーパー形状の中空内にしっかりと定着される。
クサビ40による緊張材21に対する締め付け力を緩衝するために、クサビ40が被せられる緊張材21の先端部分の外周面に摩擦シートおよびブレードネット41が被せられる。
図4の右側を参照して、緊張装置は、コンクリート構造物22の他端(図4の右端)に設けられた支圧板23B、ロックナット28B、ラムチェアー31、32、リングナット33、膨張材充填スリーブ34、テンションバー35、センターホール緊張ジャッキ36、クサビ42およびアンカーヘッド43を備えている。
コンクリート構造物22の挿通孔にスリーブ27Bが通され、このスリーブ27B内に緊張材21が通されている。スリーブ27Bは支圧板23Bの貫通孔を通されて支圧板23Bから外に出ている。支圧板23Bの外に出ているスリーブ27Bの先端部分にロックナット28Bがねじ止めされている。
支圧板23Bにはさらにロックナット28Bを取り囲むようにして第1のラムチェアー31が設置されている。第1のラムチェアー31はその中心に緊張材21が通る挿通孔を備えるもので、この第1のラムチェアー31の挿通孔に緊張材21が通され、緊張材21の先端部分(緊張端)が第1のラムチェアー31の外に出ている。
第1のラムチェアー31から外に出ている緊張材21の先端部分には膨張材充填スリーブ34が工場製作により設けられている。膨張材充填スリーブ34内には膨張材が充填されており、この膨張材の膨張圧によって膨張材充填スリーブ34が緊張材21の先端部分にしっかりと定着されている。膨張材充填スリーブ34の外周面にはネジが形成されており、このネジを用いて膨張材充填スリーブ34にはリングナット33が固定されている。
リングナット33および膨張材充填スリーブ34を囲むように、第2のラムチェアー32が第1のラムチェアー31に重ねられている。第2のラムチェアー32もその中心に緊張材21が通る挿通孔を備えるもので、この第2のラムチェアー32の挿通孔に緊張材21が通され、緊張材21の先端部分(緊張端)が第2のラムチェアー32の外に出ている。
第2のラムチェアー32にセンターホール緊張ジャッキ36が設置される。センターホール緊張ジャッキ36が設置された後、テンションバー35が膨張材充填スリーブ34の内ネジに係合される。緊張材21の先端部分はセンターホール緊張ジャッキ36を通過し、クサビ42およびアンカーヘッド43によりセンターホール緊張ジャッキ36のラムの先端に定着される。センターホール緊張ジャッキ36を作動させて緊張材21を緊張すると、センターホール緊張ジャッキ36は第2のラムチェアー32から離れる向きに移動する。センターホール緊張ジャッキ36は上述した膨張材充填スリーブ34とテンションバー35によって接続されており、テンションバー35を介して膨張材充填スリーブ34も第1のラムチェアー31から離れる向きに移動する。所定の緊張力が緊張材21に作用したところで、膨張材充填スリーブ34の外周面に装備されているリングナット33を締め付けて第1のラムチェアー31に固定しかつ定着する。リングナット33を閉め付けることによって、緊張端においては、第1のラムチェアー31、膨張材充填スリーブ34およびリングナット33が用いられて、その緊張力が保持される。その後は、センターホール緊張ジャッキ36の作動を停止させ、センターホール緊張ジャッキ36、テンションバー35および第2のラムチェアー32は撤去可能である。撤去されたセンターホール緊張ジャッキ36、テンションバー35および第2のラムチェアー32は、別の位置の緊張材21の緊張に用いることができる。
緊張材21の緊張状態を保持した状態で、コンクリート構造物22の挿通孔(シース管内)にPCグラウトが充填される。PCグラウトはスリーブ27A、27B内にも充填される。PCグラウトの充填の前に、支圧板23A、23Bの周辺からPCグラウトの漏れが生じないように、支圧板23A、23Bの周囲をシールしておくとよい。PCグラウトを養生し、所定の強度が発生した後、ロックナット28A、28B近傍の緊張材21が切断され、これによって緊張が開放される。上記したように、緊張力開放により、緊張材21とスリーブ27A、27Bとの隙間に充填されているPCグラウトに所定の圧縮応力が発生し、この圧縮応力によって緊張材21はスリーブ27A、27Bにしっかりと定着される。また、支圧板23A、23Bを介して、緊張応力がコンクリート構造物22に導入される。
図5は、ポストテンション方式によりコンクリート基礎構造物にプレストレスを導入する様子を示す断面図である。図5においてもシース管の図示は省略されている。従来の方法では実現が困難であった定着工法を提示するものであり、具体的には、例えば送電線鉄塔基礎における、鋼製の鉄塔部分をコンクリート基礎に効率的、かつ合理的に定着する工法として活用できるものである。
図5は、円柱形状、あるいは矩形形状のコンクリート基礎構造物52の一部分の縦断面図である。図5に示すコンクリート基礎構造物52は、土中に埋められ、深さ方向(縦)に長い形状を持つ。
図5に示すコンクリート基礎構造物52は、上下方向にプレストレスが導入されるプレストレストコンクリート基礎構造物である。従来、送電線鉄塔基礎は鉄筋コンクリート構造が多く適用されている。しかしながら、性能向上や機能拡大の目的で、プレストレストコンクリート構造とすることがある。
図5に示すコンクリート基礎構造物52の基礎ベースプレート55は、上述した支圧板に相当するもので、緊張材のそれぞれに対応して設けられる個々に分割された支圧板ではなく、厚みのある一枚板であり、複数本の緊張材に共通に用いられる。基礎ベースプレート55は、更なる役割を有する。それは、基礎ベースプレート55上に送電線鉄塔基礎トラス材(円柱パイプや山形アングル材などが使用される)がせん断プレートなどの補強プレートを介して、溶接されることである(図示していない)。送電線鉄塔には、電線や鉄塔に作用する自重や風荷重、地震荷重などの荷重群が作用するために、それらの外力を地中に構築するコンクリート基礎構造物に伝達して、地盤などの反力により基礎の安定性を保持する必要がある。つまり、コンクリート基礎上に設置した基礎ベースプレートには、鉄塔基礎トラス材を介して水平せん断力や引抜力、また曲げモーメントなどの大きな断面力が作用する。
従来、鉄塔基礎トラス材を基礎へ定着する方法としては、鉄塔基礎トラス材先端のいかり基礎と称する、いかりのような形状をした、せん断プレートにより補強された鉄骨トラス材を、直接、場所打ちコンクリート基礎の中に埋め込んで、その周囲を鉄筋により補強することにより、鉄塔基礎トラス材とコンクリート基礎を一体化する構造形式が採用されてきた。
従来のいかり基礎形式では、いかり部分がコンクリート基礎躯体の内部に傾斜角を有して設置するために、設置精度を保持して設置することが非常に困難であった。特に、基礎トラス材は、鉛直ではなく傾斜角度を有して設置する必要があり、さらに、設置精度も3~5mmと高精度に設置する必要がある。そのために、特殊な設置技術が要求されて、施工できる業者が限定されることや、設置費用が高くなるなどの問題がある。
図5に示す基礎ベースプレート55は、コンクリート基礎構造物52の上面に水平に直接設置され、緊張材51による緊張力を直接利用して、送電鉄塔上部からの様々な活荷重に対して抵抗する構造を持つ。基礎トラス材は基礎ベースプレート55に傾斜角を有して工作される。そして、基礎ベースプレート55に作用する主な断面力は、引張力、せん断力、曲げモーメントである。
図5に示すコンクリート基礎構造物52にプレストレスを導入する施工手順を追って説明し、本発明の相乗効果についても言及する。
まず、緊張材51の固定端部について説明する。図5に示すコンクリート基礎構造物52では、緊張材51の固定端は、固定装置を用いて固定されるのではない。つまり、緊張材51が通されるコンクリート基礎構造物52に形成される挿通孔(シース管)がコンクリート基礎構造物52の一端(上面)から他端(底面)にかけてその全体にわたって形成されていず、コンクリート基礎構造物52の途中まで形成されている。図5に示すコンクリート基礎構造物52は、その底面が支持地盤に接しているために、シース管をコンクリート基礎構造物52の底面まで挿通させても、固定装置を用いて緊張材51をコンクリート基礎構造物52に定着するスペースや作業スペースがないからである。
コンクリート基礎構造物52に設けられるシース管内(挿通孔)に緊張材51の一端(固定端)を定着させる定着構造として、解撚型定着具(特許第6442104号)があり、実用化されている。解撚型定着具53は、緊張材51を構成する撚り合わされた側線を所定長にわたって解撚し(側線の撚り合わせを解き)、解撚によって形成される隙間(空間)に樹脂モルタルまたはセメントモルタルを充填したものである。緊張材51は、その一端に形成された解撚型定着具53からコンクリート基礎構造物52に設けられたシース管内に挿入される。緊張材51を緊張する前に、解撚型定着具53の周囲にPCグラウト56が充填され、その後に養生される。PCグラウト56に強度が発現することによって、緊張材51の一端部(固定端)がコンクリート基礎構造物52にしっかりと定着(固定)される。
緊張材51をシース管に挿入する前に、基礎ベースプレート55が設置される。基礎ベースプレート55は、支圧板としての役割と、鉄塔基礎トラス材を固定して、鉄塔基礎トラス材に作用する断面力をコンクリート基礎に伝達する役割がある。つまり、基礎ベースプレート55には、せん断力や引抜力が作用する。
図4を用いて説明した緊張装置が用いられることによって緊張材51が上方向に緊張される。全ての緊張材51の緊張作業を終えた後、シース管内およびスリーブ57内にPCグラウト(図示略)が充填され、その後に養生される。PCグラウトに強度が発現した後に緊張力が解除される。前述したように、スリーブ57は緊張材51にしっかりと定着されているので、スリーブ57に係合されているロックナット58を介して、緊張力が基礎ベースプレート55に伝達され、基礎ベースプレート55はコンクリート基礎構造物52の上面に強く押しつけられ、コンクリート基礎構造物52の全域にプレストレスが導入される。また、緊張材51とスリーブ57との隙間に充填されているPCグラウトに所定の圧縮応力が発生し、この圧縮応力によって緊張材51はスリーブ57にしっかりと定着される。
図5に示すコンクリート基礎構造物52は、本発明の適用により、さらに重要な相乗効果を見出すことができる。前述のように、基礎ベースプレート55には、せん断力や引抜力が作用する。まず、引抜力であるが、全緊張力よりも小さな引抜力が作用した場合には、プレストレスの原理により、基礎ベースプレート55が上方に変形することはない。従って、設計緊張力の設計では、最大引抜力よりも大きな設計緊張力を設定すればよい。
次に、せん断力による基礎ベースプレート55の抵抗メカニズムである。緊張力により基礎ベースプレート55とコンクリート基礎構造物52の上面との間には、圧縮応力が働いているので、圧縮応力と両者間の摩擦係数の積が、せん断抵抗力として働く。さらに、せん断抵抗力の増大させる方法として、基礎ベースプレート55の下面にせん断キー59となる例えば丸鋼などの凸部を突出させて、受け側のコンクリート基礎構造物52の上面には凹部を設けて、凸部と凹部が係合するようにする。これにより、凸部の断面積×凸部のせん断抵抗応力の和をせん断抵抗力(設計抵抗力)として考慮することができる。
なお、凸部と凹部が常に接触するように、基礎ベースプレート55の設置前に、凹部にエポキシ樹脂やグラウトモルタルなどの充填硬化剤を入れておくとよい。
図6は、本発明技術をPCコンポジット橋梁に適用した場合の事例を示す。PCコンポジット橋梁とは、プレストレストコンクリート橋梁を構成する主桁部と床版部を別々に現場あるいはPC工場で製作し、施工地点において主桁部を先に架設して、その上に床版部を架設し、主桁部と床版部を接合して完成する、プレストレストコンクリート橋梁である。
図6を参照して、図6に示すPCコンポジット橋梁は、I形状の主桁部63と主桁部63の上面に固定される床版部66とを備えている。なお、主桁部63はI形状の他に、U形状のものがあるが、いずれの形状に対しても本発明の技術は適用可能である。(1)主桁部63と床版部66の接合、(2)主桁部63の縦緊張によるせん断補強、および(3)主桁部63のせん断補強筋に緊張材を用いることができる。
主桁部63は、上下方向に一直線上にのびるウェブ63Aと、ウェブ63Aの上面に一体に形成される頭部63Bと、ウェブ63Aの下面に一体に形成される脚部63Cとを備えている。ウェブ63Aおよび頭部63Bの内部にシース管(図示略)が設けられおり、シース管によって上下方向にのびる挿通孔が確保されている。他方、脚部63Cにはその途中までシース管(挿通孔)が設けられている。
床版部66の上面に箱抜き部(凹部)60が形成されており、箱抜き部60の底面に貫通孔があけられた支圧板69が設置されている。支圧板69から床版部66の下面にかけてもシース管が通されており挿通孔が確保されている。
複数の主桁部63が互いに間隔をあけて設けられた後、隣り合う主桁部63の間にベント(仮橋脚)(図示略)が設けられる。複数の主桁部63と複数のベントとが橋軸方向に接合されかつ緊張された後に、床版部66が架設される。床版部66の架設に際しては、主桁部63の上面において、その両側にシール材64Aが設けられ、両側のシール材64Aの間に無収縮モルタル64Bが打設され、その上から床版部66が設置される(ウェットジョイント工法)。一端部にあらかじめスリーブ67とロックナット68とが設けられ、他端に工場加工による解撚型定着具62が設けられた緊張材61が、床版部66の箱抜き部60から主桁部63のシース管内に通される。緊張材61の他端の解撚型定着具62は主桁部63の脚部63Cに至る。緊張材61を緊張する前に、解撚型定着具62の周囲にPCグラウト65が充填される。PCグラウト65に強度が発現することによって、図5で説明したように、緊張材61の他端部(固定端)が主桁部63にしっかりと固定される。その後、図5を参照して説明した工法と同様に、緊張装置を用いて緊張材61が上方に緊張される。緊張材61を緊張した状態で、シース管内部およびスリーブ67内部にPCグラウトが充填され、その後に養生される。PCグラウトに強度が発現した後に、緊張材61の緊張が解かれる。緊張材61とスリーブ67との隙間に充填されているPCグラウトに所定の圧縮応力が発生し、この圧縮応力によって緊張材61はスリーブ67にしっかりと定着される。また、緊張荷重がロックナット68と支圧板69に伝達され、床版部66および主桁部63にプレストレスが導入される。
実施例3において、本発明による相乗効果が以下のようにあげられる。
(1)相乗効果1
実施例3では、床版部66と主桁部63の上端部との間のウェットジョイント部64A、64Bにおいて、プレストレスが分布している必要がある。本発明では、支圧板69を介して緊張力を広げる効果があるために、ウェットジョイント部64A、64Bにおいて必要プレストレスが期待できる。また、支圧板69の構造が、従来の緊張端部と比較して、大幅なコンパクト化が実現できるために、床版部66内に定着治具を収めることができる。
(2)相乗効果2
主桁部63内の緊張材61は主桁部63と床版部66の接合に貢献する。さらに、緊張材61はウェブ63Aの上下方向に配置され、しかもその両端部がコンクリート(床版部66および主桁部63)に定着されるので、せん断補強筋としても有効に働く。一般的には、せん断補強筋は、曲げフックなどによりコンクリート定着をする必要があり、加工費用や定着のための余分な長さが必要など、材料費が必要とされる欠点があった。実施例3の場合では、緊張材61の直線部のみでせん断補強が可能となり、コスト軽減につながる。
(3)相乗効果3
主桁部63のせん断補強方法には、(i)せん断補強筋を配置する、(ii)主桁部63を橋軸方向に緊張する、(iii)主桁部63を鉛直方向に緊張する、の3つの方法がある。これらの方法の内、(i)のせん断補強筋を配置する方法が施工的にも容易であり、一番多く採用されている。次に採用されているのは(ii)の橋軸方向に緊張するもので、プレストレストコンクリート橋梁では、当然、橋軸方向に緊張するので、必然的にせん断補強効果が期待できる。(iii)のウェブ63Aを上下方向に緊張するせん断補強方法は、施工が困難であるなどの理由で、ほとんど採用されていない。しかし、実施例3においては、主桁部63と床版部66の接合に適用した上下緊張の効果が、主桁部63のせん断補強効果として設計的の考慮することが可能となる。この鉛直緊張の効果は、せん断による斜めひび割れの発生荷重やせん断耐力荷重を大幅に向上させ、また斜めひび割れ幅を減少させる効果がある。
図7から図10は、プレテンション方式によりプレストレストコンクリート構造部材を製造する工程を示している。図7から図9は、プレストレストコンクリート構造部材を製造するための、PC工場におけるPC製造ラインを横から見たレイアウトである。図10は図8に示すコンクリート構造部材の一端部を拡大して示す一部破断平面図である。
一般的にプレテンション方式のPC製造ラインでは、緊張力の反力を取るためのアバットが設けられて、固定側と緊張側において、それぞれ緊張力の固定定着と緊張定着を行いプレテンション方式によるPCコンクリート部材を製造する。ここでは、その固定定着や緊張定着の説明は従来方式で実施することで、説明を割愛する。
一般的には、プレテンション方式では、部材端部に図7~図9に示すようなロックナット兼支圧板75やスリーブ73を設けることはない。そのために、部材端部においては緊張力開放時において、緊張材71とコンクリートとの付着切れが発生して、(i)緊張材71がPC鋼ストランド(PC鋼ストランドの直径:φ)の場合は、端部より65φまではプレストレスの導入が期待できない。また、(ii)緊張材71が連続繊維補強材(連続繊維補強材の直径:φ)の場合は、端部より50φまでは、プレストレスの導入が期待困難となる。
図7~図9に示したプレテンション方式によるプレストレストコンクリート構造部材を製造する例は、比較的部材長が短いケースを対象としている。その理由は、上記で示したように、本発明によるロックナット兼支圧板75とスリーブ73を事前にセットすることにより、部材端部よりプレストレスが発生できるために、比較的短い部材においても、部材全長にわたり有効プレストレスが期待できるためである。
実施例4の施工方法を説明する。基本的には、複数(図7~図9では3つ)の型枠70が台座上に互いに間隔をあけて一列に配置され、型枠70内のそれぞれの両側端部に密着するようにロックナット兼支圧板75およびこれに係合されたスリーブ73のセットが配置される。緊張材71が、3つの型枠70のすべてを通るように挿入される。緊張材71は、型枠70内のそれぞれの両側端部に配置されているすべてのスリーブ73の中空およびすべてのロックナット兼支圧板75の貫通孔に通される。型枠70の両側端部にも緊張材を通すための穴があけられているのは言うまでもない。なお、スリーブ73は、後述するようにPCグラウト充填口と空気排出口が形成されたものとする。
図7を参照して、3つの型枠70のうち一方端(図7において右端)に位置する型枠70から外に出ている緊張材71の一端(緊張端)(図7の右側)に緊張アバット76および緊張ジャッキ78が設けられる。また、3つの型枠70のうち他方端(図7において左端)に位置する型枠70から外に出ている緊張材71の他端(固定端)(図7の左側)には固定アバット77および固定装置79が設けられる。固定装置79において他端が固定されている状態で、緊張ジャッキ78によって緊張材71の一端が引っ張られることによって、緊張材71に所定の緊張力が導入される。
図10を参照して、スリーブ73にはPCグラウト充填口73aおよび空気排出口73bがあけられている。PCグラウト充填口73aからスリーブ73内にPCグラウト(図示略)が充填され、空気排出口73bからスリーブ73内の空気が排出される。これによりスリーブ73とスリーブ73内に通されている緊張材71の隙間にPCグラウトが充填される。
図8を参照して、スリーブ73内にPCグラウトを充填した後、型枠70内にコンクリート72が打設される。PCグラウトおよびコンクリート72は予定の強度が発現するまで養生される。
図9を参照して、PCグラウトおよびコンクリート72が予定の強度に達した後、型枠70のそれぞれの両外側において緊張材71が切断される。緊張材71の緊張力が緩和(解放)され、型枠70内のコンクリート72にプレストレスが導入される。また、緊張材71とスリーブ73との隙間に充填されているPCグラウトに所定の圧縮応力が発生し、この圧縮応力によって緊張材71はスリーブ73にしっかりと定着される。その後、型枠70を取り外すことによって、プレテンション方式によってプレストレスが導入されたコンクリート構造物(プレテンション部材)が完成する。
以上の一連の作業により、短い部材に対しても両端部から均等に緊張応力を効率的に導入することができる。また、一般的なプレテンション部材の製作では、部材端部に割烈ひび割れが発生するリスクがあり、部材端部の緊張材を20~30φの長さ分をアンボンドにする。しかし、本発明の場合は、端部にロックナット兼支圧板75があるので、そのようなリスクが発生しない。
既存技術との比較
(1)ポストテンション方式で支圧板と膨張材スリーブの場合
既存技術において、上記の条件における課題としては、上述したように3つの課題がある。
(i)長い構造を緊張するには限界がある:この課題に対して、本発明では、膨張材スリーブが最終的に構造物の緊張端部から撤去されるために、緊張に使用する膨張材スリーブ長を長くすることや、複数の膨張材スリーブを設けるなどすること、および緊張ジャッキの緊張荷重を盛替えることにより、緊張材の長さ制限は完結できる。つまり、本発明では、最終的に連続繊維補強材の緊張材の定着は、スリーブとスリーブに係合されたロックナットにより完了するので、完成時において緊張端部から定着部の突出は、図1に示すようにロックナットのみが突出するか、あるいは、図6に示すように、まったく突出物がない状態で完成することが可能である。
(ii)緊張端部が突出する:本発明で緊張端部や緊張固定端部の定着構造は、図1に示すように、基本的にコンクリート構造物内に機能を果たすことが可能である。しかもロックナットは設計の工夫により薄くすることも可能である。端部に突出物をなくする場合は、図6に示すように、箱抜きをすることによりコンクリート中に収めることも可能である。
(iii)緊張材の長さ調整:緊張対象物の長さが、施工現場においては、種々の要因から変更を要求されることがある。本発明による対処方法としては、2つの方法がある。
(方法A)膨張材スリーブの長さを長めに製作し、図4に示すラムチェアーは複数個に分割できるので、必要に応じてラムチェアーの長さを調節して、工場で製作した膨張材スリーブが適切に利用できるようにする。
(方法B)工場製作の膨張材スリーブを使用しない。連続繊維補強材の緊張材を現場搬入する際は、必要長の切断を現場で実施する。基本的に、固定端部と緊張端部の定着方法は、図4に示すような摩擦シート+ブレードネット+クサビの方式を採用する。この方法を採用することにより、定着位置を現場の施工状況に応じて決められるために、緊張材の長さ変化に対応が可能となる。そのような場合でも、本発明を適用すれば、緊張定着位置は施工端部面で任意に設定できるために、施工上の制約がない。
(2)プレテンション方式の場合
プレテンション方式の場合の課題は、上述の通りである。これに対して、本発明の場合は、上述の通り、短い部材でも端部から端部まで所定のプレストレスを導入することが可能となる。また、従来のプレテンション方式による施工リスクである部材端部における割烈クラックの発生リスクをなくすることができる。
1、21、51、61、71 緊張材
2、22、52 コンクリート構造物
3、23A、23B 支圧板
4 挿通孔
5 シース管
7、17、27A、27B、57、67、73 スリーブ
8、28、58、68 ロックナット
15、65 PCグラウト
36、78 緊張ジャッキ
69 せん断キー
70 型枠
73a PCグラウト充填口
73b 空気排出口
75 ロックナット兼支圧板
79 固定装置

Claims (11)

  1. 挿通孔が形成されたコンクリート構造物の外端部に配置され、上記コンクリート構造物の挿通孔につながる貫通孔が形成された支圧板と、
    上記コンクリート構造物の上記挿通孔および上記支圧板の貫通孔に通され、その一端部が上記コンクリート構造物の外に出される中空のスリーブと、
    上記スリーブ内に挿入され、一端部が上記コンクリート構造物に固定されかつ他端部が上記コンクリート構造物の外に出される緊張材と、
    上記コンクリート構造物の外に出された上記スリーブの他端部に係合され、上記支圧板の外面に接するロックナットと、
    上記挿通孔内およびスリーブ内に充填されたPCグラウトと、を備え、
    上記緊張材は、上記PCグラウトが充填される前に、その一端部が固定された状態においてその他端部が緊張装置を用いて外向きに引っ張られることによって緊張され、かつ上記PCグラウトに所定の強度が発現した後に上記緊張装置を用いた緊張が解かれたものであり、
    上記緊張材がポアソン効果によって径方向外向きに膨張しており、膨張した上記緊張材と上記スリーブとの間に充填されているPCグラウトに圧縮応力が発生していることを特徴とする、
    緊張材の定着構造。
  2. コンクリート構造物内の両端部のそれぞれに配置された、貫通孔が形成された一対のロックナット兼支圧板と、
    上記一対のロックナット兼支圧板のそれぞれに係合され、上記貫通孔につながる中空を備えるスリーブと、
    コンクリート構造物内の両端部の上記ロックナット兼支圧板の貫通孔および中空のスリーブに通されて、両端部がコンクリート構造物の外に出される緊張材と、
    上記スリーブ内に充填されるPCグラウトと、を備え、
    上記緊張材は、上記PCグラウトが上記スリーブに充填されかつ上記コンクリート構造物を形成するコンクリートが打設される前に、その一端部が固定装置を用いて固定された状態においてその他端部が緊張装置を用いて外向きに引っ張られることによって緊張され、かつ上記PCグラウトおよび上記コンクリートに所定の強度が発現した後に上記緊張装置を用いた緊張が解かれたものであり、
    上記緊張材がポアソン効果によって径方向外向きに膨張しており、膨張した上記緊張材と上記スリーブとの間に充填されているPCグラウトに圧縮応力が発生していることを特徴とする、
    緊張材の定着構造。
  3. 上記緊張材が連続繊維補強材である、
    請求項1または2に記載の緊張材の定着構造。
  4. 上記コンクリート構造物に中空のシース管が埋設されており、
    上記シース管の中空が上記挿通孔として用いられる、
    請求項1に記載の緊張材の定着構造。
  5. 上記緊張材の直径をφ、ポアソン比をν、保証破断荷重時の引張歪をεuとし、上記スリーブの内半径をR、肉厚をt、弾性係数をEとした場合に、以下の式1によって算出される上記PCグラウトに発生する圧縮応力pが20から60MPaである、
    請求項1から4のいずれか一項に記載の緊張材の定着構造。
    p=φ/2×ν×(0.7×εu)×(t×E)/(R×R)・・・式1
  6. 上記スリーブの内面および外面の少なくともいずれか一方に凹凸が形成されていることを特徴とする、
    請求項1から5のいずれか一項に記載の緊張材の定着構造。
  7. 上記コンクリート構造物の外端部に配置される支圧板が複数枚ではなく連続した一枚からなることを特徴とする、
    請求項1に記載の緊張材の定着構造。
  8. 上記支圧板のコンクリート構造物に対向する面に複数の凸部形状のせん断キーが設けられており、上記コンクリート構造物の上記支圧板に対向する面の、上記せん断キーに対応する位置に、上記せん断キーが入る凹部が形成されていることを特徴とする、
    請求項1または7に記載の緊張材の定着構造。
  9. 上記スリーブに、上記PCグラウトを上記スリーブ内に充填するための充填孔および空気を排出する空気排出孔が形成されている、
    請求項2に記載の緊張材の定着構造。
  10. ポストテンション方式によるプレストレストコンクリート構造物の製作方法であって、
    挿通孔が形成されたコンクリート構造物の端部に、上記コンクリート構造物の挿通孔につながる貫通孔を備える支圧板を配置し、
    中空のスリーブの一端部にロックナットを係合し、
    上記スリーブを、上記支圧板の貫通孔を通じて上記コンクリート構造物の挿通孔に挿入し、上記スリーブの一端部のロックナットを上記支圧板上に載せ、
    上記スリーブの中空に緊張材を挿入し、
    上記緊張材の一端部を固定し、
    上記緊張材の他端部に緊張装置を装着し、
    上記緊張材を緊張させた状態で、上記スリーブと上記スリーブの中空に挿入された緊張材の隙間にも充填されるように、上記コンクリート構造物の挿通孔内にPCグラウトを充填し、
    上記PCグラウトが所定の強度に達した後に、上記緊張材の緊張を解除する、
    プレストレストコンクリート構造物の製作方法。
  11. プレテンション方式によるプレストレストコンクリート構造物の製作方法であって、
    型枠を用意し、
    型枠内の両側端部に、中空のスリーブおよび上記スリーブに係合されたロックナット兼支圧板を、上記ロックナット兼支圧板が上記型枠内の側端部に接するように設置し、
    上記型枠の両側端部に形成された取付穴を通じて緊張材を型枠内に挿入し、上記緊張材の両端部を型枠の両側端部からそれぞれ外に出し、型枠内においては上記緊張材を上記型枠内の両側端部に設置されたスリーブ内に挿入し、
    型枠の一方側端部から型枠の外に出ている上記緊張材の一端部に固定装置を装着し、
    型枠の他方側端部から型枠の外に出ている上記緊張材の他端部に緊張装置を装着し、
    上記緊張材の他端部を緊張装置を用いて緊張し、
    上記緊張材を緊張させた状態で、上記型枠内の両側端部のスリーブ内にPCグラウトを充填し、
    上記型枠内にコンクリートを打設し、
    上記PCグラウトおよび上記コンクリートが所定の強度に達した後に、上記緊張材の緊張を解く、
    プレストレストコンクリート構造物の製作方法。
JP2020172522A 2020-10-13 2020-10-13 緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法 Pending JP2022064034A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020172522A JP2022064034A (ja) 2020-10-13 2020-10-13 緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法
US17/498,538 US20220112718A1 (en) 2020-10-13 2021-10-11 Tendon anchorage and construction method of a pre-stressed concrete structure

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020172522A JP2022064034A (ja) 2020-10-13 2020-10-13 緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022064034A true JP2022064034A (ja) 2022-04-25

Family

ID=81078998

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020172522A Pending JP2022064034A (ja) 2020-10-13 2020-10-13 緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法

Country Status (2)

Country Link
US (1) US20220112718A1 (ja)
JP (1) JP2022064034A (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115492097B (zh) * 2022-09-29 2024-05-03 中国建筑第五工程局有限公司 一种无粘接预应力锚索及其施工方法
CN116905813B (zh) * 2023-07-17 2024-06-14 中冶检测认证有限公司 一种用于核电站安全壳倒u型预应力钢束灌注***及方法
CN117026996A (zh) * 2023-08-04 2023-11-10 中铁一局集团市政环保工程有限公司 一种装配式张弦梁钢支撑施工工艺

Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5554234A (en) * 1978-10-13 1980-04-21 Shinko Kosen Kogyo Kk Spiral corrugating method of pc steel material
JPH0518109A (ja) * 1991-01-22 1993-01-26 Kumagai Gumi Co Ltd Frp緊張材の定着構造
JPH08151632A (ja) * 1994-09-28 1996-06-11 Oriental Constr Co Ltd Pc鋼棒ユニット、及び該pc鋼棒ユニットを用いたセメント硬化物の緊締方法
JP2649258B2 (ja) * 1988-07-12 1997-09-03 財団法人鉄道総合技術研究所 繊維強化合成樹脂製緊張材の定着部構造並びにその製造方法
JP3032716B2 (ja) * 1996-07-02 2000-04-17 日本道路公団 コンクリート橋脚の補強方法及び緊張材の定着方法
JP2003326513A (ja) * 2002-05-15 2003-11-19 Sato Kogyosho:Kk ポストテンションコンクリート製品
JP2006274736A (ja) * 2005-03-30 2006-10-12 Hitachi Zosen Corp Pc床版の架設工法およびpc床版
JP2011184871A (ja) * 2010-03-05 2011-09-22 Taisei Corp プレストレストコンクリート部材の製造方法
JP2013238027A (ja) * 2012-05-15 2013-11-28 Sumitomo Denko Steel Wire Kk 複合ストランドの定着具

Family Cites Families (24)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3107983A (en) * 1958-07-05 1963-10-22 Brandestini Antonio Method of anchoring wire bundles for prestressed concrete constructions
US3307310A (en) * 1965-01-27 1967-03-07 Jacques P Kourkene Apparatus and method for anchoring post-tensioning tendons in prestressed structures
US3843288A (en) * 1969-04-16 1974-10-22 Conenco Int Ltd Tendon anchorage with threaded support element
US3936256A (en) * 1969-04-16 1976-02-03 Conenco International Limited Tendon anchorage and mounting means
US3685934A (en) * 1969-10-06 1972-08-22 Conenco Intern Ltd Anchorage system for stressing concrete
US4053974A (en) * 1971-03-01 1977-10-18 Conenco International Limited Method of forming a concrete structure with a recess to receive an anchorage
US3864776A (en) * 1973-11-15 1975-02-11 Parson Brinckerhoff Quade & Do Prestressed post tension suspension bridge cable anchorage
US4365914A (en) * 1980-10-20 1982-12-28 Builders Concrete, Inc. Transverse post-tensioned tendon interconnecting system for marine floats
GB2095302B (en) * 1981-03-25 1984-09-12 Stronghold International Ag Cable anchorage
FR2588596B1 (fr) * 1985-10-10 1987-12-24 Freyssinet Int Stup Perfectionnements aux dispositifs de precontrainte du beton comportant des cables tendus sinueux et a leurs procedes de mise en oeuvre
US4821474A (en) * 1987-08-24 1989-04-18 Alan Rodriguez Post-tensioning anchor
US5079879A (en) * 1987-08-24 1992-01-14 Alan Rodriguez Anti-corrosive post-tensioning anchorage system
DE3838069C2 (de) * 1988-11-10 1995-12-14 Hochtief Ag Hoch Tiefbauten Transport- und einbetonierfähiges Spannbewehrungsaggregat für das Vorspannen von Stahlbetonbauwerken
US5271199A (en) * 1992-08-24 1993-12-21 Incast Anchorage Systems, Inc. Post tensioning anchor system
US5540030A (en) * 1994-07-01 1996-07-30 Morrow; Jack A. Process for the grouting of unbonded post-tensioned cables
US5525013A (en) * 1994-10-31 1996-06-11 Seegmiller; Ben L. Cable bolt structure and related components
US5939003A (en) * 1997-01-31 1999-08-17 Vsl International Post-tensioning apparatus and method
JPWO2002094525A1 (ja) * 2001-05-24 2004-09-02 独立行政法人 科学技術振興機構 プレストレストコンクリートの製造方法
US7533505B2 (en) * 2003-01-06 2009-05-19 Henderson Allan P Pile anchor foundation
FR2878271B1 (fr) * 2004-11-22 2008-12-05 Ct D Etudes Et De Rech S De L Element en beton precontraint, procede de realisation d'un element en beton precontraint et tube de frettage pour la realisation d'un element en beton precontraint
US7896581B2 (en) * 2005-12-02 2011-03-01 Rhino Technologies Llc Re-tensionable cable bolt apparatus and related method
WO2011075779A1 (en) * 2009-12-23 2011-06-30 Geotech Pty Ltd An anchorage system
WO2012024725A1 (en) * 2010-08-24 2012-03-01 Mark Ronald Sinclair System for anchoring a load
US8720139B2 (en) * 2012-03-30 2014-05-13 Allan P. Henderson Cementitious foundation cap with post-tensioned helical anchors

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5554234A (en) * 1978-10-13 1980-04-21 Shinko Kosen Kogyo Kk Spiral corrugating method of pc steel material
JP2649258B2 (ja) * 1988-07-12 1997-09-03 財団法人鉄道総合技術研究所 繊維強化合成樹脂製緊張材の定着部構造並びにその製造方法
JPH0518109A (ja) * 1991-01-22 1993-01-26 Kumagai Gumi Co Ltd Frp緊張材の定着構造
JPH08151632A (ja) * 1994-09-28 1996-06-11 Oriental Constr Co Ltd Pc鋼棒ユニット、及び該pc鋼棒ユニットを用いたセメント硬化物の緊締方法
JP3032716B2 (ja) * 1996-07-02 2000-04-17 日本道路公団 コンクリート橋脚の補強方法及び緊張材の定着方法
JP2003326513A (ja) * 2002-05-15 2003-11-19 Sato Kogyosho:Kk ポストテンションコンクリート製品
JP2006274736A (ja) * 2005-03-30 2006-10-12 Hitachi Zosen Corp Pc床版の架設工法およびpc床版
JP2011184871A (ja) * 2010-03-05 2011-09-22 Taisei Corp プレストレストコンクリート部材の製造方法
JP2013238027A (ja) * 2012-05-15 2013-11-28 Sumitomo Denko Steel Wire Kk 複合ストランドの定着具

Also Published As

Publication number Publication date
US20220112718A1 (en) 2022-04-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2022064034A (ja) 緊張材の定着構造およびプレストレストコンクリート構造物の製作方法
US7866009B1 (en) Wedges for sheathing lock system
US6843031B1 (en) Bonded monostrand post-tension system
CN111395336A (zh) 一种预应力无粘结锚杆钢筋、锚杆及施工工法
CN111395337A (zh) 一种预制组合装配式抗浮抗拉预应力锚杆件及其施工工法
US20150143765A1 (en) Connection between a wind turbine tower and its foundation
JP7175725B2 (ja) 組積造建物の補強構造
JP4194894B2 (ja) コンクリート構造物の補強方法
CN111395335A (zh) 一种预应力锚杆用管柱、锚杆及施工工法
AU2010336022A1 (en) An anchorage system
US11268280B2 (en) Anchorage of continuous fiber-reinforced polymer strands
KR101328045B1 (ko) 프리캐스트 고성능 섬유시멘트 복합체를 이용한 철근 콘크리트 복합기둥공법
JP7330003B2 (ja) 組積造構造物の補強方法
JP4834890B2 (ja) プレキャストコンクリート部材間の間詰め部に対するプレストレス導入方法
KR101346344B1 (ko) 콘크리트 내부에 긴장재 고정 정착부를 구비한 비부착식 psc i 빔 및 그 제조 방법
JP6811678B2 (ja) 連続繊維補強材を適用したコンクリート構造物およびコンクリート部材の接合方法
JP7028728B2 (ja) 基礎杭と基礎スラブの接合構造
JP3877995B2 (ja) 張弦桁橋の構築方法
US11982086B2 (en) Ultra high-performance concrete bond anchor
JP7241050B2 (ja) プレキャスト・プレストレストコンクリート基礎構造物及びその施工方法
CN213173707U (zh) 一种用管柱的预应力抗浮抗拉锚杆
JP7026601B2 (ja) プレストレスト・コンクリート桁およびプレストレス導入方法
JP4909445B1 (ja) 地上タンクの施工方法および地上タンク
KR100516769B1 (ko) 강연선 케미칼앵카링 및 텐셔닝에 의한 슬래브 또는 보보강 공법
JP6532512B2 (ja) 岸壁または護岸構造及びその構築方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221227

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20221227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230124

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230711