JP7175725B2 - 組積造建物の補強構造 - Google Patents

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Description

本発明は、構造物の補強に係り、特にレンガやブロック等を主体として構成される組積造建物の補強に好適な構造に関する。
明治以降に建造されたレンガ造建物に代表される歴史的な組積造の構造物を、文化財として保存したり、新たな用途に供するために改修する場合がある。しかし、現在の耐震基準に従うと多くの組積造建物が既存不適格との診断になるため、再利用するためにはレンガ壁を耐震補強して耐力を高める必要がある。
特許文献1には、既存の組積造建物の耐力とじん性を高めるために、上方から壁体断面を貫通して下端部が地盤中にグラウト固定された鋼棒に、緊張力を付与することによって圧縮力を付与し、組積造壁体のせん断抵抗と面外曲げに対する抵抗を高める方法が提案されている。
また、特許文献2、3には、レンガ壁の上端と下端との間に貫通孔を形成し、その中に挿通した複数のPC鋼棒を壁体の上部から緊張することによって、レンガ壁の上端と下端との間に圧縮力を付与する補強法が提案されている。ここでは、既設のレンガ壁の基礎部分に形成した横穴からPC鋼棒の下端部に定着板を取り付けた後に、横穴に早強コンクリートを充填し、これが硬化した後にPC鋼棒を緊張して固定している。
特開昭54-010514号公報 特開2010-281033号公報 特開2010-281034号公報
上記特許文献に開示されているような技術を用いれば、確かにレンガ壁の耐力を高めることができると考えられる。しかし、特許文献1の補強方法では、基礎を貫通した鋼棒の下端は、組積造壁に形成した貫通孔の上部や別途地盤に挿入したパイプの開口部から注入したグラウトで地盤中に固定することになる。このため、緊張材の下端部に固定端として機能する下部固定部を取り付けることが非常に困難であり、緊張材の下端部を固定する固定強度にも限界がある。したがって、緊張材に大きな緊張力を付与することができず、組積造壁体の耐震性能の飛躍的な向上を望めない。
また、特許文献2や特許文献3の補強方法では、組積造壁の基礎コンクリートを切削して形成した横穴に充填剤を充填するため、使う材料や充填状況によっては、この部分が構造上の弱点になる恐れがある。さらに、緊張材の下端の固定部が埋設されてしまうため、緊張力の変動をモニタリングすることができず、壁体目地部のクリープが進行して緊張力が低下した場合でも、再緊張することができない。
そこで本発明では、補強のための切削部が構造上の欠点になり難く、緊張力の経年的な変化にも対応することのできる組積造建物の補強構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る組積造建物の補強構造は、壁体を切削して設けた縦孔に挿通された緊張材でプレストレスが付与される組積造建物の補強構造であって、前記壁体の下部に位置する基礎、または前記壁体の下部壁面を切削して設けられた空洞部と、当該空洞部に設置された増強体を有し、前記増強体の内側には、空間が存置されると共に、当該増強体の内壁に当接させて位置決めされたフランジ板が設けられ、前記フランジ板を介して前記増強体に前記緊張材の下側定着部が固定され、前記壁体の上面には、前記緊張材の上側定着部が固定されていることを特徴とする。
また、上記目的を達成するための本発明に係る組積造建物の補強構造は、壁体を切削して設けた縦孔に挿通された緊張材でプレストレスが付与される組積造建物の補強構造であって、前記壁体の上部壁面、および前記壁体の下部に位置する基礎、または前記壁体の下部壁面を切削して設けられた空洞部と、当該空洞部に設置された増強体を有し、前記増強体の内側には、空間が存置されると共に、当該増強体の内壁に当接させて位置決めされたフランジ板が設けられ、前記フランジ板を介して前記増強体に前記緊張材の定着部が固定されていることを特徴とするものとすることもできる。
また、上記のような特徴を有する組積造建物の補強構造において前記増強体は、円筒状の鋼管、または、コ字形状のコンクリート部材とする。このような特徴を有することによれば、増強体を汎用品とすることができ、施工コストを抑えることが可能となる。
また、上記のような特徴を有する組積造建物の補強構造において前記増強体は、前記基礎および/または前記壁体とモルタルを介して接する構造とする。このような特徴を有することによれば、増強体を基礎や壁体に対して強固に定着させることができる。このため、基礎や壁体の切削箇所の強度低下を抑制することができる。
さらに、上記のような特徴を有する組積造建物の補強構造において前記増強体の内側に存置された空間には、緊張力を計測するための計測手段、および/または再緊張手段を備えている。このような特徴を有することによれば、緊張状態の経年的な変化を数値として知る事が可能となる。
上記のような特徴を有する組積造建物の補強構造によれば、壁体の基礎コンクリートを切削して設けた空洞部に増強体を設置し、この増強体に緊張材の定着部を固定するので、緊張力を確実に基礎と壁体に伝達することができる。また、削孔部に鋼製または鉄筋コンクリート造の増強体を配する際には、モルタルや接着剤を介在させて固定されるので、確実な一体化が可能になるため、この部分が構造上の欠点になり難い。さらに、緊張材の固定部が充填材で埋設されないため、実際に導入された緊張力をゲージや計測器でモニタリングしたり、緊張力が低下した際には再緊張することもできるので、緊張力の経年的な変化にも対応して、組積造建物の耐震性能を確実に向上させることが可能となる。
レンガ壁の構造と補強構造を説明するための断面を示した斜視図である。 第1実施形態に係るレンガ壁の壁面側断面の構造を示す図である。 増強体を構成する筒状体の形態を説明するための斜視図である。 第2実施形態に係るレンガ壁の壁面側断面の構造を示す図である。 緊張材として採用可能なアンボンドPCより線の断面構造を示す拡大図である。 第3実施形態に係るレンガ壁における横穴形成部の断面構造を示す図である。 第4実施形態に係るレンガ壁の断面構造を示す図である。 増強体を円筒状の鋼管以外の構成とする場合の例を示す図である。 基礎に対するコア抜き部分に、プレキャスト材を適合させる場合の例を示す図である。 ジャッキを用いて緊張材に再緊張力を付与する場合の増強体の構成例を示す図である。
以下、本発明の組積造建物の補強構造に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、図1から図3を参照して、第1実施形態に係る組積造建物の補強構造について説明する。なお、図面において、図1は、レンガ壁の構造と補強構造を説明するための断面を示した斜視図であり、図2は、レンガ壁の壁面側断面の構造を示す図である。さらに、図3は、増強体を構成する筒状体の形態を説明するための斜視図である。
本実施形態に係る補強構造による補強対象となる組積造建物は、例えば図1に示すようなレンガ壁50を有する建物である。こうしたレンガ壁50を有する建物としては、明治以降に建造された洋館等を挙げることができる。レンガ壁50を構成するレンガ52の積み方としては、長手積や、小口積、イギリス積、およびフランス積などが知られているが、どのような積み方のレンガ壁にも対応することができる。図1に示す例は、組積造建物として現存数の多いイギリス積によるレンガ壁50を示している。
このようなレンガ壁50は一般的に、基礎54の上に積み上げられると共に、図示しない支柱が壁面に沿うように対を成して配置される。そして、支柱間に掛け渡された臥梁(以下、既設臥梁56と称す)により上端部を抑えられることで、水平力に対する耐力の向上が図られている。
[補強構造の概要]
本実施形態に係る補強構造は、このような構成の壁体(一例としてレンガ壁50)の上端部から基礎54にかけて貫通孔12を形成した上で、この貫通孔12に緊張材14を挿通し、緊張材14を介してレンガ壁50に圧縮方向の力(プレストレス)を付与するものである。具体的には、次のような構成としている。
[貫通孔・横穴]
まず、貫通孔12は、レンガ壁50と、このレンガ壁50を立設している基礎54の内部に、レンガ壁50の立設方向に沿って設けられる。貫通孔12の形成位置は、レンガ壁50の規模や厚みにもよるが、例えば図1に示すように、レンガ壁50の厚み方向中央部に既設臥梁56が配置されている場合、厚み方向には、既設臥梁56を基点として線対称に貫通孔12を設けるようにすると良い。貫通孔12をこのように配置することで、緊張材14に張力を付与した際に、レンガ壁50の厚み方向にかかる圧縮力のバランスをとることができる。なお、壁面に沿った方向における貫通孔の配置は、適宜間隔をもって配置するようにすれば良い。
貫通孔12の形成は、地盤に埋設されている、あるいは一部露出している基礎54を露出させ、この基礎54の側面に横穴20を形成した上で行われる。すなわち貫通孔12は、レンガ壁50の上端から横穴20までの間に形成される。ここで、貫通孔12や、横穴20の形成には、無水工法を採用することが望ましい。無水工法とは、切削、穿孔時に冷却水を用いず、切削、穿孔部に冷却ガスを吹き付けながら加工を行う工法である。無水工法を用いることで、レンガ壁50の内部や、目地内部を水で濡らすことが無く、浸潤による悪影響を防ぐことができる。また、無水工法時に切削、穿孔部を養生して集塵を行うことで、粉塵の飛散を防ぐこともできる。なお、横穴20は有底で良く、好ましくは建物の内側に開口部を有するように形成すると良い。建物の外観に変化を生じさせないようにするためである。
[緊張材]
緊張材14は、PC鋼棒等の棒状部材とすれば良い。緊張材14は、レンガ壁50の上端部から横穴20にまで挿通させる。緊張材14としてPC鋼棒を採用する場合には、図2に示すようなカプラ16を介して複数のPC鋼棒を接続し、所望する長さを確保するようにすれば良い。貫通孔12に配置される緊張材14の上端部と下端部には、それぞれ上側定着部18aと、下側定着部18bが設けられる。
緊張材14の下端部側の定着部である下側定着部18bは、横穴20の内部に設けられる。ここで、横穴20には、緊張材14の抜け止めを図ると共に、横穴20の強度を向上させる増強体22を配置する。増強体22としては、例えば図3に示すような、円筒状の鋼管24aの一端に円盤状の鋼板24bを備えた筒状体24と、フランジ板26、および支持板28により構成することができる。具体的には、鋼管24aは、横穴20の径に収まる直径の管であれば良く、横穴20への挿入側端部にエンドプレートとなる鋼板24bを備えるようにしいる。フランジ板26は、貫通孔12を介して横穴20に挿入された緊張材14の抜け止めを図るための板材であり、緊張材14に引っ張りの力を付与した際、撓みや破損の虞が無い厚みを有するものであれば良く、具体的な厚みは、設計上の引っ張り強度に基づいて定めるようにすれば良い。フランジ板26に緊張材14を挿通させてナット等により固定する下側定着部18bを設けることで、緊張材14の抜け止めを図ることができる。また、支持板28は、鋼管24aの内部に配置したフランジ板26の位置決めを担う板材である。その具体的な構成、配置は問わないが、図1、図2に示す例では、貫通孔12を介した緊張材14の挿入部近傍を起点として、フランジ板26と支持板28とによって構成される形態が、三角形となるようにしている。
このような構成の増強体22を横穴20に装填した後、モルタル等のグラウト材34により固定することで、横穴20を形成する基礎54の強度確保を図ることができる。ここで、増強体22を配置した横穴20の内部に露出することとなる緊張材14には、緊張力を計測することのできる歪ゲージなどの計測手段30を備えるようにすると良い。経年的に緊張力が低下した場合に、それを把握することが可能となるからである。
上端部側の定着部である上側定着部18aは、レンガ壁50の上端に、既設臥梁56に沿って新たな臥梁(以下、新設臥梁32と称す)を配置した上で、この新設臥梁32を基点として緊張材14の定着を行えば良い。このような構成とすることで、緊張材14に引っ張りの力を付与することによりレンガ壁50にかかる圧縮の力が、壁面方向にも作用することとなる。これにより、レンガ壁50全体に対して補強効果を奏することができる。
ここで、新設臥梁32の構成は、特に限定するものではないが、例えば図1、図2に示すような溝形鋼とすることができる。緊張材14が溝形鋼を構成する上下のフランジ(上部フランジ32a、下部フランジ32b)を貫通するように配置し、上部フランジ32aから突出した緊張材14の上端を固定することで上側定着部18aとすれば良い。なお上側定着部18aは、緊張材14をPC鋼棒としている場合、下側定着部18bと同様に上部フランジ32aから突出した上端部にナット等を螺合させて構成すれば良い。
[作用・効果]
このような状態で配置した緊張材14の上端、あるいは下端に緊張力付与装置(不図示)を設置し、緊張材14に緊張力を付与することで、レンガ壁50には、新設臥梁32を介して圧縮力(プレストレス)が付与される。レンガ壁50に圧縮力が付与されると、組積されているレンガ相互間、すなわち目地材との界面に作用する摩擦力が向上し、レンガ壁50の面内変形が抑制される。これにより、面内方向の荷重伝達(せん断力伝達)性能が向上し、いわゆる横揺れに対する耐震性の向上を図ることができる。
また、本実施形態に係る組積造建物の補強構造では、基礎に設けた横穴20を閉塞せずに空間を存置させた状態で緊張材14に対する緊張力の付与が成されている。このため、目地部のクリープが進行するなどして、緊張力が低下した場合には、緊張材14の下端部が露出している横穴20(実際には、横穴20内に配置した増強体)を介してナット等を有する下側定着部18bを締め付けることで、緊張材14に対して再度緊張力を付与することができる。これにより、レンガ壁50には新たに、耐震性の向上に必要とされる圧縮力を作用させることが可能となる。
なお、本実施形態では、既設臥梁56に沿って新設臥梁32を配置する旨記載した。しかしながら、既設臥梁56がレンガ壁50の上端部を覆っているような場合には、貫通孔12は、既設臥梁56を含めて貫通する構成とすれば良い。このような構造とする場合、新設臥梁32の配置を省略することもできる。
[第2実施形態]
次に、図4、図5を参照して、第2実施形態に係る組積造建物の補強構造について説明する。なお、図4は、レンガ壁の壁面側断面の構造を示す図であり、図5は、緊張材として採用可能なアンボンドPCより線の断面構造を示す拡大図である。
本実施形態に係る組積造建物の補強構造では、緊張材14として、アンボンドPC鋼、あるいはアンボンドPC鋼より線を採用し、緊張材14を挿通している貫通孔12と緊張材14との間にモルタル等のグラウド材36を充填したことを特徴とする。
ここで、緊張材14の一例としてのアンボンドPC鋼より線は、図5に示すように、ポリエチレンにより構成された被覆部14aの内側にPC鋼により構成されたより線14bが配置されており、被覆部14aとより線14bとの間には、グリース14cが充填されている。このため、被覆部14aを固定した状態で、内部に配置されたより線14bのみを移動させることが可能となる。
よって、貫通孔12にグラウト材36を充填して緊張材14の被覆部14aを固定した状態としたとしても、より線14bを引くことで再度緊張力を付与することが可能となる。また、貫通孔12にグラウド材36を充填することにより、レンガ壁50自体の強度の向上を図ることもできる。
[第3実施形態]
次に、図6を参照して、第3実施形態に係る組積造建物の補強構造について説明する。なお、図6は、レンガ壁における横穴形成部の断面構造を示す図である。上述した第1、第2実施形態に係る組積造建物の補強構造では、緊張材14の上端部は、レンガ壁50の上部へ露出させ、下端部は、基礎54に横穴20を形成し、当該横穴20に露出させる旨記載した。
しかしながら、構造上、基礎54の露出が困難であったり、レンガ壁50上端部の開放が困難である場合、図6に示すようにレンガ壁50の内側側面をコア抜きして横穴22を形成し、当該横穴20を緊張材14の端部露出部としても良い。横穴20の深さは、レンガ壁50の厚みにも依存するが、例えば外側側面を基点とした厚みDが、100mm程度となるように、掘削を行うようにすれば良い。残存する厚みDが100mm程度あれば、レンガ壁50を有する建物の外観に影響を与えることが無く、かつ雨などによる水の浸潤当の虞も無いからである。
レンガ壁50に形成した横穴20には、基礎54に形成した横穴20と同様に、増強体22としての筒状態24を挿入する。筒状態24と横穴20との間には、グラウト材34を充填し、両者の一体化を図るようにする。なお、このような工法を採用する場合、横穴20を基点として、次のような構造を採ることが望ましい。すなわち、緊張材14の上端側の壁面に横穴20を形成した場合には、レンガ壁50の上端に配置されている既設臥梁56に対して図示しないアンカーを設けるようにすると良い。一方、壁面の下端側に横穴20を形成した場合には、基礎54に対してアンカーを設けるようにする。各アンカーは、横穴20に配置する鋼管24aに固定する。
このような構成とすることで、緊張材14に付与された緊張力がアンカーを介して臥梁や基礎に伝達されることとなる。これにより、壁面全体に圧縮力を付与することが可能となるからである。なお、本実施形態では、レンガ壁50の下端側に横穴20を形成する例を示したが、レンガ壁50の上端側に横穴20を設けるようにしても良い。
[第4実施形態]
次に、図7を参照して、第4実施形態に係る組積造建物の補強構造について説明する。図7に示す例は、レンガ壁50の上部側、すなわち上部壁面に切削部40を設け、基礎54に設けた横穴20に緊張材14を挿通させる構成である。
本実施形態は、屋根を崩せないなど、レンガ壁50の上部を解放できない等の理由がある場合に有効である。具体的には、レンガ壁50における内側の上部壁面に、切削部40を形成し、この切削部40を介して緊張材14を挿通するための貫通孔12を形成する。切削部40の具体的な形態は問わないが、少なくとも貫通孔12を形成し、当該貫通孔12に対して緊張材14を挿通させることが可能であれば良く、望ましくは緊張材14に緊張力を付与するための緊張ジャッキ58を配置可能なスペースを確保できるものであると良い。
レンガ壁50の上部壁面に切削部40を設けた後は、切削部40の底面から、基礎54に形成した横穴20に向けて貫通孔12を形成する。なお、横穴20には、上記実施形態と同様に、増強体22を配置しておく。貫通孔12を形成後、切削部40を介して貫通孔12に緊張材14を挿通させる。ここで、緊張材14としては、第2実施形態で説明した、アンボンドPCより線を用いることが望ましい。アンボンドPCより線は、ケーブル特有のしなりを出すことができるため、PC鋼棒を配置することのできない狭隘なスペースにも適用することができるからである。
緊張材14を挿通させた後、増強体22には、下側定着部18bを介した緊張材14における下端部の固定が図られる。また、切削部40に設けた緊張材14の上端側には、上側定着部18aが配置されると共に、緊張ジャッキ58等の緊張手段により、緊張材14に引っ張りの力が付加される。このような作用により、上記実施形態と同様に、レンガ壁50に対してプレストレスを付与することができる。
このように、本実施形態に係る組積造建物の補強構造によれば、屋根などの、レンガ壁50の上部に位置する構造物を解体、撤去することなく、レンガ壁50の補強を行うことが可能となる。なお、レンガ壁50の強度確保のためにハツリ範囲(切削範囲)を低減したい場合には、図7(A)、(B)にそれぞれ二点鎖線で示すように、切削部40の開口側から奥側に向けて、天井面を低くするような傾斜を設けるようにしても良い。切削部40の断面形態をこのような台形状とした場合であっても、緊張材14をアンボンドPCより線のようなケーブル型とした場合、その挿通に影響を与えることが無いからである。また、切削部40の断面形態を図7(A)、(B)に示すような台形状とする場合、図7(B)に示すようなカーブチェア60を介して緊張ジャッキ58を設置すると良い。緊張ジャッキ58を傾斜させた状態で設置することができるため、緊張ジャッキ58が天井面に接触することを避けることができるからである。
[変形例]
上記実施形態では、いずれも増強体22について、円筒状の鋼管であるように記載した。しかしながら増強体は、緊張力に対する支承効果を奏することができる形態であれば良い。このため、例えば図8に示すように増強体22は、緊張材14に緊張力を付与した際に横穴20に押し付けられることとなる面のみに鋼管24aの円弧部を備える形態とし、円弧部に弦を張るようにフランジ板26を備える構成としても良い。
また、上記実施形態では、横穴20のコア抜きは、必ず円形であるように示している。しかしながら、横穴20のコア抜きは、図9に示すように、角型としても良い。この場合、コア抜きした部分にコ字状のプレキャスト材38を配置する構成としても良い。コア抜き部を角型とした場合、緊張材14を突出させる面を平坦面とすることができる。このため、緊張材14の突出面に直接フランジ板26を配置することができる。
また、上記実施形態では、貫通孔はレンガ壁に対して鉛直方向に形成するように説明している。しかしながら、補強構造の目的は、緊張材14を介してレンガ壁50に圧縮方向の力を作用させることができれば良い。このため、貫通孔は、鉛直方向に対して角度を持った状態、すなわち斜めに形成する構成としても良い。このような構造とした場合であっても、緊張材14を介してレンガ壁50に圧縮方向の力を作用させることができるからである。
上記実施形態では、緊張材14に対する再度の緊張力の付与(以下、再緊張力付与と称す)は、増強体22の内部に設けられた下側定着部18bとしてのナット等を手動により締め付けることで得られる旨記載した。しかしながら、緊張材14に対する再緊張力付与は、図10に示すように、再緊張手段としてのジャッキ42を備え、これを用いて行うようにしても良い。具体的には図10に示すようにすれば良い。すなわち、増強体22に対し、固定フランジ26aと可動フランジ26bを配置し、各フランジに緊張材14に対する定着部(第1下側定着部18b1、第2下側定着部18b2)を備えるようにする。なお、固定フランジ26a側に設けられる第2下側定着部18b2は、例えばダブルナット等の手段により、緩み止めが図れるようにすると良い。
ジャッキ42(例えば油圧ジャッキ)は、固定フランジ26aと可動フランジ26bとの間に配置する。ここで、ジャッキ42の配置は、緊張材14を介して線対称、あるいは点対称な配置形態となるようにする。緊張力付与時のバランスを保つためである。なお、図10に示す例では、設置の安定化のために、ジャッキ本体(シリンダ)を可動フランジ26b側に配置し、ピストンを固定フランジ26aに押し当てるようにして、ジャッキ42を設置している。
上記のようにジャッキ42を配置した後、ジャッキ42を稼働させて固定フランジ26aと可動フランジ26bの間を押し広げる。これにより、第2下側定着部18b2が固定フランジ26aから離間した状態となり、緊張材14に再緊張力が付与されることとなる。緊張材14に再緊張力が付与されている状態で、第2下側定着部18b2を固定フランジ26a側に移動させて固定すると、ジャッキ42の稼働を停止した後においても、緊張材14を緊張させた状態(レンガ壁50にプレストレスをかけた状態)に保つことができる。このように、再緊張力付与にジャッキ42を用いることで、手動よりも簡易かつ確実に、緊張材14に再緊張力を付与することが可能となる。
ここで、緊張材14に付与されている定常的な緊張力については、上述したように、歪ゲージなどの計測手段30を介して検出することができる。また、再緊張力の付与を定期的に行う場合や、負荷荷重を直接検知したい場合などには、例えばロードセル30aや油圧計(不図示)などのような計測手段を、可動フランジ26bにおける第1下側定着部18b1に備えるようにすれば良い。ロードセル30aまたは油圧計を設置した場合、再緊張時に付加している荷重を直接知ることができるようになる。なお、計測手段30aの配置形態の一例として、図10に示すように、可動フランジ26bからの押圧力を受けるワッシャと、このワッシャを介して可動フランジ26bの動きを抑制するナットとの間を挙げることができる。
12………貫通孔、14………緊張材、14a………被覆部、14b………より線、14c………グリース、16………カプラ、18a………上側定着部、18b………下側定着部、18b1………第1下側定着部、18b2………第2下側定着部、20………横穴、22………増強体、24………筒状体、24a………鋼管、24b………鋼板、26………フランジ板、26a………固定フランジ、26b………可動フランジ、28………支持板、30………計測手段、、30a………ロードセル、32………新設臥梁、32a………上部フランジ、32b………下部フランジ、34………グラウト材、36………グラウト材、38………プレキャスト材、40………切削部、42………ジャッキ、50………レンガ壁、52………レンガ、54………基礎、56………既設臥梁、58………緊張ジャッキ。

Claims (4)

  1. 壁体を切削して設けた縦孔に挿通された緊張材でプレストレスが付与される組積造建物の補強構造であって、
    前記壁体の下部に位置する基礎、または前記壁体の下部壁面を切削して設けられた空洞部と、
    当該空洞部に設置された増強体を有し、
    前記増強体の内側には、空間が存置されると共に、当該増強体の内壁に当接させて位置決めされたフランジ板が設けられ、前記フランジ板を介して前記増強体に前記緊張材の下側定着部が固定され、前記壁体の上面には、前記緊張材の上側定着部が固定されていることを特徴とする、組積造建物の補強構造。
  2. 壁体を切削して設けた縦孔に挿通された緊張材でプレストレスが付与される組積造建物の補強構造であって、
    前記壁体の上部壁面、および前記壁体の下部に位置する基礎、または前記壁体の下部壁面を切削して設けられた空洞部と、
    当該空洞部に設置された増強体を有し、
    前記増強体の内側には、空間が存置されると共に、当該増強体の内壁に当接させて位置決めされたフランジ板が設けられ、前記フランジ板を介して前記増強体に前記緊張材の定着部が固定されていることを特徴とする、組積造建物の補強構造。
  3. 前記増強体は、円筒状の鋼管、または、コ字形状のコンクリート部材であり、前記増強体は、前記基礎および/または前記壁体とモルタルを介して接することを特徴とする、請求項1または2に記載の組積造建物の補強構造。
  4. 前記増強体の内側に存置された空間には、緊張力を計測するための計測手段、および/または再緊張手段を備えていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の組積造建物の補強構造。
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