JP7330003B2 - 組積造構造物の補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、組積造構造物の補強構造および補強方法に関し、例えばレンガ壁などの既設の組積造構造物を耐震補強する組積造構造物の補強構造および補強方法に関するものである。
従来、既存のレンガ造(組積造)建物の壁内部に鋼材を挿入して行う耐震補強として、PC緊張工法(例えば、特許文献1、2を参照)、鉄筋挿入工法が知られている。
PC緊張工法は、レンガ壁に頂部から鉛直に孔を堀り、孔の中にPC鋼棒を挿入し、端部を定着し、プレストレスを導入することによりレンガ壁の構造性能を向上させる工法である。この工法は、レンガへの圧縮力により目地のせん断強度、曲げ強度を向上させることができる。しかし、目地が劣化している部分や開口の多い箇所への適用は、クリープ変形によって開口窓や扉等の周辺への影響が生じたり、クリープ変形による緊張力の低下によってレンガ壁の耐力が低下するおそれがあるため、採用には慎重を要する。また、機械的な定着が必要であるとともに、プレストレスを均一化するために上部に臥梁等の補強が必要である。PC緊張工法は、開口が少なく、地震時にせん断力を大きく負担する壁に有効である。また、凍害や風雨による目地の劣化が少ない内部壁に好適である。
鉄筋挿入工法は、レンガ壁に頂部から鉛直に孔を堀り、孔の中に鉄筋、グラウトモルタルを充填することによりレンガ壁の構造性能を向上させる工法である。この工法は、目地のせん断強度の向上はPC緊張工法に比べて劣るが、圧縮力を与えないため、目地の劣化等に対して長期的な影響は受けない。長期軸力は変わらないので、クリープ変形等の懸念がない。このため、鉄筋挿入工法は、開口が多く、縦横比が大きい壁に適する。軸力の増加によるレンガ壁への影響がないため、外壁にも適用可能である。
PC緊張工法、鉄筋挿入工法のいずれも、レンガ壁の側面に大きな孔をあけないので、建物の外観に与える影響を小さく抑えることができる。
一方、本特許出願人は、特許文献3に示すような方法を提案中である。この特許文献3の方法は、レンガ壁頂部からに鉛直下向きに鉛直孔を穿孔し、鉛直孔の下部の孔壁に凹部を形成し、緊張材または補強材として機能する棒状材の下部に定着部を接合した後、この棒状材を鉛直孔に挿通配置し、固化材を充填して定着部を埋設する方法である。この方法によれば、レンガ壁の側面に大きな孔をあけないので、建物の外観に与える影響を小さく抑えることができる。
特開2010-281034号公報 特開2018-178646号公報 特願2019-075891号(現時点で未公開)
従来の耐震補強工事では、PC緊張工法もしくは鉄筋挿入工法のどちらかを選択し、併用することはなかった。また、PC緊張工法で耐震補強を行う場合、複数のPC鋼棒を漸次的に同時にバランスを見ながら張力導入を行うため、PC鋼棒を挿入するための孔が複数同時に穿孔した状態でPC緊張未了の状態が発生する。特に大規模建物の耐震補強工事では、一度に穿孔する箇所が多く、PC緊張前のレンガ材の欠損部分が大きくなるので、工事中の耐震安全性を確保することが困難になるおそれがある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、工事中の耐震安全性を向上することができる組積造構造物の補強構造および補強方法を提供することを目的とする。
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る組積造構造物の補強構造は、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する構造であって、組積造構造物の異なる平面位置の頂部から組積造構造物の下部またはその基礎の内部にかけてそれぞれ設けられた複数の鉛直孔と、所定の鉛直孔に挿通配置される棒状の補強材と、補強材と鉛直孔との間の隙間に充填される固化材と、他の鉛直孔に挿通配置されるとともに下部を固定端、上部を緊張端として緊張力を付与されて組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させる棒状の緊張材とを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造は、上述した発明において、組積造構造物の側面に設けられた開口部との最短距離が所定距離に満たない鉛直孔には、補強材が挿通配置され、開口部との最短距離が所定距離を超える鉛直孔には、緊張材が挿通配置されることを特徴とする。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造は、上述した発明において、緊張材を挿通配置する鉛直孔の位置が、その近傍箇所において想定される所定時間経過後のクリープ変形が所定の許容範囲内に収まる位置に設定されていることを特徴とする。
また、本発明に係る組積造構造物の補強方法は、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する方法であって、組積造構造物の異なる平面位置の頂部から組積造構造物の下部またはその基礎の内部にかけて複数の鉛直孔をそれぞれ設けるステップと、所定の鉛直孔に棒状の補強材を挿通配置する一方で、この鉛直孔に固化材を充填して補強材を埋設するステップと、他の鉛直孔に棒状の緊張材を挿通配置するステップと、補強材を埋設した後、緊張材の下部を固定端、上部を緊張端として緊張力を付与して組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させるステップとを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法は、上述した発明において、組積造構造物の側面に設けられた開口部との最短距離が所定距離に満たない鉛直孔に、補強材を挿通配置し、開口部との最短距離が所定距離を超える鉛直孔に、緊張材を挿通配置することを特徴とする。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法は、上述した発明において、緊張材を挿通配置する鉛直孔の位置を、その近傍箇所において想定される所定時間経過後のクリープ変形が所定の許容範囲内に収まる位置に設定したことを特徴とする。
本発明に係る組積造構造物の補強構造によれば、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する構造であって、組積造構造物の異なる平面位置の頂部から組積造構造物の下部またはその基礎の内部にかけてそれぞれ設けられた複数の鉛直孔と、所定の鉛直孔に挿通配置される棒状の補強材と、補強材と鉛直孔との間の隙間に充填される固化材と、他の鉛直孔に挿通配置されるとともに下部を固定端、上部を緊張端として緊張力を付与されて組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させる棒状の緊張材とを備えるので、緊張材に緊張力を付与する前に、所定の鉛直孔を補強材と固化材で補強することが可能となる。このため、緊張材を挿通配置する鉛直孔が複数同時にあいた状態で緊張力未導入の状態が発生する事態を未然に防ぐことができる。したがって、工事中の耐震安全性を向上することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造によれば、組積造構造物の側面に設けられた開口部との最短距離が所定距離に満たない鉛直孔には、補強材が挿通配置され、開口部との最短距離が所定距離を超える鉛直孔には、緊張材が挿通配置されるので、開口部の少ない組積造構造物に有利な緊張材による緊張工法と、開口部の多い組積造構造物に有利な補強材による挿入工法の双方の特性に応じた耐震補強が可能になるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造によれば、緊張材を挿通配置する鉛直孔の位置が、その近傍箇所において想定される所定時間経過後のクリープ変形が所定の許容範囲内に収まる位置に設定されているので、クリープ変形による開口部など周辺への影響や緊張力の低下などを小さくすることができるという効果を奏する。
また、本発明に係る組積造構造物の補強方法によれば、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する方法であって、組積造構造物の異なる平面位置の頂部から組積造構造物の下部またはその基礎の内部にかけて複数の鉛直孔をそれぞれ設けるステップと、所定の鉛直孔に棒状の補強材を挿通配置する一方で、この鉛直孔に固化材を充填して補強材を埋設するステップと、他の鉛直孔に棒状の緊張材を挿通配置するステップと、補強材を埋設した後、緊張材の下部を固定端、上部を緊張端として緊張力を付与して組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させるステップとを備えるので、緊張材に緊張力を付与する前に、所定の鉛直孔を補強材と固化材で補強することが可能となる。このため、緊張材を挿通配置する鉛直孔が複数同時にあいた状態で緊張力未導入の状態が発生する事態を未然に防ぐことができる。したがって、工事中の耐震安全性を向上することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法によれば、組積造構造物の側面に設けられた開口部との最短距離が所定距離に満たない鉛直孔に、補強材を挿通配置し、開口部との最短距離が所定距離を超える鉛直孔に、緊張材を挿通配置するので、開口部の少ない組積造構造物に有利な緊張材による緊張工法と、開口部の多い組積造構造物に有利な補強材による挿入工法の双方の特性に応じた耐震補強が可能になるという効果を奏する。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法によれば、緊張材を挿通配置する鉛直孔の位置を、その近傍箇所において想定される所定時間経過後のクリープ変形が所定の許容範囲内に収まる位置に設定したので、クリープ変形による開口部など周辺への影響や緊張力の低下などを小さくすることができるという効果を奏する。
図1は、本発明に係る組積造構造物の補強構造および補強方法の実施の形態を示す平面断面図である。 図2は、本発明の実施の形態を示すレンガ壁の正面断面図であり、(1)は外壁、(2)は内壁である。 図3は、本発明の他の実施の形態を示すレンガ壁の正面断面図である。
以下に、本発明に係る組積造構造物の補強構造および補強方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
本実施の形態では、補強対象の組積造構造物として、図1に示すようなレンガ造建物100のレンガ壁を例にとり説明する。この建物100の外周は、図2(1)に示すような外壁10Aで構成され、建物100の内部は、図2(2)に示すような内壁10Bで仕切られている。外壁10A、内壁10Bはいずれもレンガ壁10であるが、外壁10Aには窓などの開口部30が多くあり、内壁10Bには開口部30は殆どない。
レンガ壁10は、組積材としてのレンガ12を積み上げて形成した壁体であり、図示しない地中に設けたコンクリート基礎上に構築されている。レンガ12は、粘土や頁岩と泥を焼き固めて、または圧縮して作られた直方体状の建築材である。上下および左右に隣り合うレンガ12間には、モルタルやグラウトなどからなる目地14が設けられている。なお、本発明の組積造構造物はレンガ壁に限るものではなく、例えば、コンクリートブロックを組積材として積み上げたコンクリート壁や、石材などを組積材として積み上げた壁であってもよい。
本実施の形態では、鉄筋挿入工法とPC緊張工法を併用する。具体的には、レンガ壁10に穿孔した部分の充填を行うことができる鉄筋挿入を先行して進め、穿孔部分の充填を行えないPC緊張を後に行うことを基本とする。内壁10Bは、一般に構面あたりの剛性が高く、せん断力負担割合が高いため、PC緊張工法を適用し、面内のせん断耐力と面外方向の曲げ耐力の向上を図る。面外方向への曲げ破壊防止のため、内壁10Bの一部に鉄筋挿入工法を採用してもよい。一方、外壁10Aは、建具への影響と凍害等による目地劣化を考慮して、レンガ壁10に圧縮応力を加えずクリープ変形が生じない鉄筋挿入工法を適用し、面外、面内ともに曲げ破壊防止を図る。レンガ造建物100の耐震補強構造として鉄筋挿入工法とPC緊張工法の特長を活かした複合構造を採用することで、建物の持つ意匠性を守り、耐久性にも配慮した最適の耐震補強構造を実現することが可能となる。
本実施の形態の補強方法は、ステップ1~8の施工手順で行われる。以下、各ステップの施工内容について説明する。
(ステップ1)
まず、外壁10Aに対して鉄筋挿入工法を実施する。鉄筋挿入工法をPC緊張工法に先行して実施することで、レンガ壁10に鉛直孔16が複数にあいた状態でPC緊張未了の状態となるのを回避することができる。具体的な手順としては、図2(1)に示すように、外壁10Aをなすレンガ壁10に対して、鉄筋挿入用の鉛直孔16Aを複数形成する。この鉛直孔16Aは、レンガ壁10の上端18(頂部)から下部あるいはコンクリート基礎内の所定位置に向けて鉛直方向に穿孔して形成する。この鉛直孔16Aは、円形断面の非貫通孔であり、図示を省略するが、レンガ壁10の長さ方向に沿って間隔をあけて複数形成する。
(ステップ2)
続いて、鉄筋32をレンガ壁10の上端18から鉛直孔16Aに挿入配置し、その後、同じく上端18から鉛直孔16A内の全長にわたって固化材28を充填し、固化させる。これにより、鉛直孔16Aの孔壁24と鉄筋32の間の隙間には、固化材28が充填され、鉄筋32が埋設される。これによれば、プレストレスを導入することがないため、目地14および開口部30にクリープ変形が生じるリスクを排除できる。固化材28は既設のレンガ壁10よりも圧縮強度の大きい材料を使用することが望ましい。固化材28としては、例えばモルタル、グラウト、コンクリートなどの無機材料、エポキシ樹脂などの有機材料など、鉄筋32を孔壁24に固定できるものなら何でもよい。
(ステップ3)
次に、内壁10Bに対してPC緊張工法を実施する。具体的には、図2(2)に示すように、内壁10Bをなすレンガ壁10に対して、PC鋼棒挿入用の鉛直孔16Bを複数形成する。この鉛直孔16Bは、レンガ壁10の上端18(頂部)から下部に向けて鉛直方向に穿孔して形成する。この鉛直孔16Bは、円形断面の非貫通孔であり、図示を省略するが、レンガ壁10の長さ方向に沿って間隔をあけて複数形成する。この鉛直孔16Bは、レンガ壁10あるいは図外のコンクリート基礎の下まで貫通させず、レンガ壁10下部あるいはコンクリート基礎内のPC鋼棒20の下部を定着させる位置まで穿孔する。鉛直孔16Bの孔径は、後述するように、PC鋼棒20に接合する定着板22(定着部)の直径あるいは最大寸法よりも若干大径に設定する。
(ステップ4)
続いて、図2(2)に示すように、鉛直孔16Bの下部の孔壁24を切削し、孔壁24にリング状(環状)の凹部26を形成する。凹部26の形成方法としては、例えばレンガ壁10に横孔をあけることなく、レンガ壁10の上端18から切削治具を挿入して孔壁24に溝切り加工を施すスプリングビット工法などを用いることができる。この凹部26は、定着板22の上面より上に少なくとも1か所以上設ける。凹部26は、凹溝状の部分が全体としてリング状を呈するものでよく、周方向に非連続な部分があってもよい。また、リング状に限らず、孔壁24に対して螺旋状に形成してもよい。凹部26は、鉛直方向に間隔をあけて複数設けてもよい。凹部26の鉛直断面はどのような形状でもよく、例えば鉛直断面視で四角形状、三角形状、任意の多角形状、丸形状、任意の曲線形状であってもよい。
(ステップ5)
次に、PC鋼棒20の下端部に定着板22を取り付けた後、このPC鋼棒20をレンガ壁10の上端18から鉛直孔16Bに挿入する。定着板22の大きさ・形状は、上述したように、鉛直孔16Bの径よりも小さく、鉛直孔16Bの上端18から挿入できる大きさ・形状に設定する。なお、定着部はこれに限るものではなく、PC鋼棒等の緊張材に定着用の頭部を付加するものであればいかなるものでもよい。例えばPC鋼棒に螺合するタイプの定着ナットでもよいし、定着ナットの上に鋼板などを設けてもよい。また、緊張材に定着板を溶接、摩擦圧接、ネジ接合などにより取り付けてもよいし、緊張材自体を成形して頭部を作ってもよい。また、定着板22は、鉛直方向に間隔をあけてPC鋼棒20の下端部に複数設けてもよい。この場合は、最上部に配置した定着板22よりも上側に凹部26が少なくとも1か所あるように設定する必要がある。
(ステップ6)
続いて、定着板22が鉛直孔16Bの凹部26よりも下側に納まる位置までPC鋼棒20を挿入する。凹部26と定着板22との間には一定の鉛直距離を確保することが好ましい。定着板22と凹部26の間に圧縮ストラット(束)を形成して定着力を伝達させるためである。
(ステップ7)
次に、図2(2)に示すように、鉛直孔16B内に固化材28を充填する。固化材28は、鉛直孔16Bの全長に充填する必要はないが、少なくともPC鋼棒20の定着部となる定着板22の周囲から凹部26までの範囲には必ず充填する。固化材28の充填は、定着部となる位置のレンガ壁10の側面に削孔した小径の孔から注入して行うことができる。固化材28は既設のレンガ壁10よりも圧縮強度の大きい材料を使用することが望ましい。固化材28としては、例えばモルタル、グラウト、コンクリートなどの無機材料、エポキシ樹脂などの有機材料など、PC鋼棒20の定着部から作用する力を孔壁24のリング状の凹部26に伝達できるものなら何でもよい。
(ステップ8)
次に、固化材28が固化した後、PC鋼棒20の下端を固定端、上端を緊張端としてPC鋼棒20に緊張力(プレストレス)を付与して、PC鋼棒20の上端をレンガ壁10の上端18に設けた図外の定着板等に定着する。プレストレスを導入することにより、レンガ壁10の上端18と下部の定着板22との間に上下方向の圧縮力を作用させて目地14のせん断耐力を高め、レンガ壁10を補強することができる。このプレストレス導入作業は、全ての鉛直孔16Bに対して建物100全体の構造耐力バランスを考慮して行う。こうすることで、レンガ壁10全体としての保有水平耐力を確保して耐震性能を高めることが可能となる。
本実施の形態によれば、PC鋼棒20に緊張力を付与する前に、鉛直孔16Aを鉄筋32と固化材28で補強することが可能となり、鉛直孔16BにおけるPC緊張時に過度な欠損部分を発生させることがない。このため、PC鋼棒20用の鉛直孔16Bが複数同時にあいた状態でPC緊張未了の状態が発生する事態を未然に防ぐことができる。したがって、工事中の耐震安全性を向上することができる。また、耐震安全性を確保しつつ改修工事を行うことができる。また、開口部30が多い外壁10Aと開口部30が少ない内壁10Bの特性に応じた耐震補強が可能となる。
また、レンガ壁10の側面に横孔をあけないため、レンガ壁10の外観に与える影響は少ないか、または影響は殆どない。したがって、本実施の形態によれば、比較的手間をかけずに、外観に与える影響を小さく抑えながらレンガ壁10を補強することができる。このため、レンガ壁10の文化財としての価値低下を抑止することができる。また、鉛直孔16の下部の径を大きく拡大する必要がないため、リング状の凹部26を形成する切削作業が軽微で済み、コスト低減、工期短縮、騒音低減を図ることができる。
上記の実施の形態においては、緊張材がPC鋼棒20、補強材が鉄筋32である場合を例にとり説明したが、本発明の緊張材、補強材はこれに限るものではない。例えば緊張材はPC鋼線、FRP製のより線、ロッドなどでもよいし、補強材は棒鋼や形鋼等の鋼材などであってもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
また、上記の実施の形態においては、外壁10Aに対して鉄筋挿入工法を、内壁10Bに対してPC緊張工法を適用する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図3の内壁10Bの例に示すように、内壁10Bの中に、PC緊張工法による施工箇所と、鉄筋挿入工法による施工箇所とを混在させてもよい。この場合、開口部30の近傍に鉄筋挿入工法を適用し、開口部30への影響が少ないとみなせる箇所にPC緊張工法を適用することが望ましい。開口部30への影響が少ないとみなせる箇所は、事前解析や実験などによって把握すればよい。
また、レンガ壁10の長さに応じて、PC緊張工法と鉄筋挿入工法を使い分けてもよい。例えば、レンガ壁10の長さが所定の閾値Lよりも長い場合には、PC緊張工法を適用し、閾値Lよりも短い場合には、鉄筋挿入工法を適用してもよい。閾値Lとしては例えば2.5~3m程度に設定することができる。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
また、開口部30との最短距離が所定の距離Aに満たない鉛直孔に対して鉄筋挿入工法を適用し、所定の距離Aを超える鉛直孔に対してPC緊張工法を適用してもよい。距離Aは、事前解析や実験などによって適宜設定すればよい。このようにすれば、開口部の少ないレンガ壁に有利なPC緊張工法と、開口部の多いレンガ壁に有利な鉄筋挿入工法の双方の特性に応じた耐震補強が可能になる。
また、PC鋼棒20用の鉛直孔16Bの位置を、その近傍箇所において想定される所定時間経過後のクリープ変形が所定の許容範囲B内に収まる位置に設定してもよい。許容範囲Bは、事前解析や実験などによって適宜設定すればよい。緊張力は、現状の長期軸力やレンガ壁の圧縮耐力を考慮して、例えば長期軸力の1/20~1/2程度、緊張力と長期軸力の和が圧縮耐力の1/5程度を超えないことを目安に設定してもよい。このようにすれば、クリープ変形による開口部など周辺への影響や緊張力の低下などを小さくすることができる。
以上説明したように、本発明に係る組積造構造物の補強構造によれば、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する構造であって、組積造構造物の異なる平面位置の頂部から組積造構造物の下部またはその基礎の内部にかけてそれぞれ設けられた複数の鉛直孔と、所定の鉛直孔に挿通配置される棒状の補強材と、補強材と鉛直孔との間の隙間に充填される固化材と、他の鉛直孔に挿通配置されるとともに下部を固定端、上部を緊張端として緊張力を付与されて組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させる棒状の緊張材とを備えるので、緊張材に緊張力を付与する前に、所定の鉛直孔を補強材と固化材で補強することが可能となる。このため、緊張材を挿通配置する鉛直孔が複数同時にあいた状態で緊張力未導入の状態が発生する事態を未然に防ぐことができる。したがって、工事中の耐震安全性を向上することができる。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造によれば、組積造構造物の側面に設けられた開口部との最短距離が所定距離に満たない鉛直孔には、補強材が挿通配置され、開口部との最短距離が所定距離を超える鉛直孔には、緊張材が挿通配置されるので、開口部の少ない組積造構造物に有利な緊張材による緊張工法と、開口部の多い組積造構造物に有利な補強材による挿入工法の双方の特性に応じた耐震補強が可能になる。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強構造によれば、緊張材を挿通配置する鉛直孔の位置が、その近傍箇所において想定される所定時間経過後のクリープ変形が所定の許容範囲内に収まる位置に設定されているので、クリープ変形による開口部など周辺への影響や緊張力の低下などを小さくすることができる。
また、本発明に係る組積造構造物の補強方法によれば、組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する方法であって、組積造構造物の異なる平面位置の頂部から組積造構造物の下部またはその基礎の内部にかけて複数の鉛直孔をそれぞれ設けるステップと、所定の鉛直孔に棒状の補強材を挿通配置する一方で、この鉛直孔に固化材を充填して補強材を埋設するステップと、他の鉛直孔に棒状の緊張材を挿通配置するステップと、補強材を埋設した後、緊張材の下部を固定端、上部を緊張端として緊張力を付与して組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させるステップとを備えるので、緊張材に緊張力を付与する前に、所定の鉛直孔を補強材と固化材で補強することが可能となる。このため、緊張材を挿通配置する鉛直孔が複数同時にあいた状態で緊張力未導入の状態が発生する事態を未然に防ぐことができる。したがって、工事中の耐震安全性を向上することができる。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法によれば、組積造構造物の側面に設けられた開口部との最短距離が所定距離に満たない鉛直孔に、補強材を挿通配置し、開口部との最短距離が所定距離を超える鉛直孔に、緊張材を挿通配置するので、開口部の少ない組積造構造物に有利な緊張材による緊張工法と、開口部の多い組積造構造物に有利な補強材による挿入工法の双方の特性に応じた耐震補強が可能になる。
また、本発明に係る他の組積造構造物の補強方法によれば、緊張材を挿通配置する鉛直孔の位置を、その近傍箇所において想定される所定時間経過後のクリープ変形が所定の許容範囲内に収まる位置に設定したので、クリープ変形による開口部など周辺への影響や緊張力の低下などを小さくすることができる。
以上のように、本発明に係る組積造構造物の補強構造および補強方法は、例えばレンガ壁などの既設の組積造構造物に対する耐震補強工事に有用であり、特に、既設の組積造構造物の外観に与える影響を小さく抑えるとともに、耐震安全性を確保しつつ耐震補強工事を行うのに適している。
10 レンガ壁(組積造構造物)
10A 外壁
10B 内壁
12 レンガ(組積材)
14 目地
16A,16B 鉛直孔
18 上端(頂部)
20 PC鋼棒(緊張材)
22 定着板(定着部)
24 孔壁
26 凹部
28 固化材
30 開口部
32 鉄筋(補強材)
100 建物

Claims (3)

  1. 組積材を積み上げてなる既設の組積造構造物を補強する方法であって、
    前記組積造構造物の異なる平面位置の頂部から前記組積造構造物の下部またはその基礎の内部にかけて複数の鉛直孔をそれぞれ設けるステップと、所定の前記鉛直孔に棒状の補強材を挿通配置する一方で、前記鉛直孔に固化材を充填して前記補強材を埋設するステップと、他の前記鉛直孔に棒状の緊張材を挿通配置するステップと、前記補強材を埋設した後、前記緊張材の下部を固定端、上部を緊張端として緊張力を付与して前記組積造構造物に上下方向の圧縮力を作用させるステップとを備えることを特徴とする組積造構造物の補強方法。
  2. 前記組積造構造物の側面に設けられた開口部との最短距離が所定距離に満たない前記鉛直孔に、前記補強材を挿通配置し、前記開口部との最短距離が前記所定距離を超える前記鉛直孔に、前記緊張材を挿通配置することを特徴とする請求項に記載の組積造構造物の補強方法。
  3. 前記緊張材を挿通配置する前記鉛直孔の位置を、その近傍箇所において想定される所定時間経過後のクリープ変形が所定の許容範囲内に収まる位置に設定したことを特徴とする請求項に記載の組積造構造物の補強方法。
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