JP2021121689A - ベル・アーマー方式の高炉における鉱石層崩れ量の推定方法 - Google Patents

ベル・アーマー方式の高炉における鉱石層崩れ量の推定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ベル・アーマー方式の高炉において鉱石最終バッチの装入末期に鉱石層崩れが生じた際に鉱石堆積傾斜角の低下角度の鉱石層崩れ量を推定することで高炉の操業安定性に寄与することができるベル・アーマー方式の高炉における鉱石層崩れ量の推定方法を提供する。【解決手段】本発明は、ベル・アーマー方式の原料装入装置4を用いて高炉1内に鉱石2とコークス3をバッチ単位で交互層状に装入する高炉1の原料装入方法において、下ベル7から鉱石最終バッチの装入時に、鉱石最終バッチの装入末期における鉱石の最終質量流速Ffinとし、装入末期の鉱石層の堆積傾斜角が低下する現象の鉱石層崩れが発生する境界におけるFfinの値をFcとし、鉱石層崩れが生じないときの鉱石層の最終堆積傾斜角をθcとし、鉱石層崩れが生じたときにおける鉱石層の堆積傾斜角の低下量である鉱石層崩れ量をΔθとし、鉱石層崩れ量の値ΔθをFfin、Fc、θcを用いて推定する。【選択図】図1

Description

本発明は、ベル・アーマー方式の原料装入装置を備えた高炉において、鉱石最終バッチの装入末期に、炉内の鉱石層が崩れて堆積傾斜角が低下するときに崩れた角度(鉱石層崩れ量)を推定する方法に関する。
従来より、図1に示すように、高炉では、炉頂より炉内に原料である鉱石とコークスを交互に層状に装入し、炉下部に備えられている羽口より熱風(高温の空気+酸素)を炉内へ送風して、鉱石を昇温還元することで、溶銑を製造している。この高炉は、固気向流型の巨大な反応容器(シャフト炉)である。
このような向流移動層である高炉を安定させて操業するには、炉内の通気性を確保する、言い換えれば、充填層の圧力損失(圧損)を低位に保ち、荷下がりを安定させることが重要である。
高炉に装入する原料に関しては、還元材としてコークスなどが用いられ、鉱石原料としては焼結鉱、鉄鉱石ペレット(以下、ペレットと呼ぶ。) 、塊鉱石、メタルなどが代表的に用いられている。
また、補助燃料(還元材)としては、微粉炭(PC)や重油などが挙げられ、それらを羽口から炉内に吹き込んでいる。なお、微粉炭(pulverized coal(PC))とは、石炭を50μm程度に微粉砕したものである。
コークスの役割としては、レースウェイでの燃焼に用いられる「熱源(C+O2→CO2)」、鉱石還元に必要なCOガスを生成する「還元材(C+CO2→2CO、FeOn+nCO→Fe+nCO2)」、溶鉄へ浸炭し融点を低下させる「加炭材」、高炉内の通気性を確保するための「スペーサー」などが挙げられる。
なお、羽口から吹き込む補助燃料(代表的には、微粉炭(PC))でも、上記した「熱源」、「還元材」、「加炭材」の役割を代替することは可能である。しかしながら、「スペーサー」の役割については、コークスでしか担うことができない。
特に、近年における高炉の操業においては、溶銑コストの低減を行う目的として低コークス比操業、高PC比操業が志向されている。しかし、低コークス比操業の課題としては、スペーサーとして機能するコークス量の低下と炉内ガス量の増加により、高炉内の通気性が悪化してしまう。その結果として、高炉の操業が不安定化することとなる。したがって、低コークス比操業の実現に向けては、高炉内の通気性を改善する、すなわち圧損を低減させることが必要となる。
高炉の操業では、高炉内の通気性を確保するため、炉内における装入物分布の制御、すなわち高炉の半径方向での鉱石とコークスの層厚比を制御することで、高炉の半径方向におけるガスの流れ(ガスの分配)を制御している。鉱石とコークスを比較すると、コークスの方が鉱石よりも粒径が大きい。また、コークス層の方が鉱石層よりも充填層の空隙率が大きい。そのため、高炉内の鉱石とコークスの層厚比(鉱石層厚/コークス層厚)が大きいほど、ガスが流れにくくなる。
このような高炉内には、鉱石層が溶融して相互に融着した領域(以下、融着帯と呼ぶ。)が存在する。この融着層は、通気抵抗が大きく、ガスが流れにくいものとなっている。そのため、炉内で上昇するガスは、充填層の空隙率が鉱石層よりも大きいコークススリット側を水平方向に通過する。このことより、融着帯においては圧損が高くなる。その融着帯の形状を逆V型(上に尖った形状)に形成して維持することで、中心ガス流を維持して、炉内圧損が低下させることができる。これにより、高炉の操業を安定させることが可能となる。
さて、図2に示すように、ベル・アーマー方式の原料装入装置を備えた高炉は、炉上部のベルカップから原料を排出し、落下してきた原料を炉壁側のアーマー(反発板)で反発させて、炉内へ装入する方式の設備である。このアーマーを押し出す距離を調整することによって、炉内の周辺部における装入物分布の制御、すなわち高炉の半径方向における鉱
石とコークスの層厚比を制御することが可能となる。
また、塊コークスの一部を専用のシュートから高炉内の中心部に装入する、コークス中心装入では、中心コークスの装入質量により、高炉内の中心部の装入物分布が制御されている。この制御を行うことにより、融着帯の形状を逆V型に維持している(参考文献:「ふぇらむ」,Vol.9(2004), No.10, p721〜728)。
さらに、高炉内の中間部における装入物分布については、装入したコークスと鉱石の堆積傾斜角度の差に依存している。コークスの堆積傾斜角は、鉱石の堆積傾斜角より大きい。その鉱石の堆積傾斜角を増大させることで、中心ガス流が強化されることとなり、高炉内の通気性が良好になる。
高炉の操業に関する技術としては、例えば、特許文献1〜3などに開示されているものがある。
特許文献1は、高炉の操業方法に関し、特にベル型原料装入装置を備えた高炉の操業方法において、原料装入速度を一定に保って操業安定性を高めることを目的としている。
具体的には、ベル型原料装入装置を備えた高炉の操業方法であって、該装置を用いて装入される原料の1バッチ毎の装入時間を測定して該装入時間から装入中の微小単位時間当たりの装入速度を推定し、その推定結果をベル開速度および/またはベル・ストロークの調整にフィードバックして原料装入速度をコントロールし高炉操業の安定化を図ることとされている。その作用効果としては、高炉装入原料の装入時間を基にしてほぼ正確に推定することができる装入速度を一定に保つことによって、高炉内における原料の堆積状態を適正且つ安定に維持することができ、それに伴って高炉の操業安定性を著しく改善し得るとされている。
特許文献2は、鉱石傾斜角を増大させ、炉内の通気性改善(圧損低減)を行うことを目的としている。
具体的には、鉱石中のペレット比率が20%〜40%とされた鉱石を、コークスと交互に層状になるように、ベル・アーマー方式の原料装入装置を用いて高炉の炉内に装入する原料装入操作を、複数のチャージに亘って繰り返し行う高炉の原料装入方法において、前記1チャージ分の原料装入操作では、前記コークスを装入するコークス装入操作を2バッチに亘って行った後、前記鉱石を装入する鉱石装入操作を複数バッチ回に亘って行い、前記1バッチ目のコークス装入操作時のベルの開度、2バッチ目のコークス装入操作のベルの開度、及び1バッチ目の鉱石装入操作のベルの開度を等しくしたまま前記コークス及び鉱石を装入するものとし、且つ前記1バッチ目のコークス装入操作時のベルの開速度、2バッチ目のコークス装入操作のベルの開速度、及び1バッチ目の鉱石装入操作のベルの開速度を等しくしたまま前記コークス及び鉱石を装入するものとし、前記複数バッチ回のうちの最終バッチの鉱石装入操作においては、前記コークス装入操作の1バッチ目と2バッチ目の開速度の平均値UCと、前記鉱石装入操作の最終バッチの開速度UOlastとの比である開速度比(UOlast/UC)が0.2〜0.7となる条件と、前記コークス装入操作の1バッチ目と2バッチ目の開度の平均値hCと、前記鉱石装入操作の最終バッチの開度hOlastとの比である開度比(hOlast/hC)が0.3〜0.7となる条件との少なくとも一方を満足するように、前記最終バッチの鉱石を装入することとされている。その作用効果としては、最終バッチの鉱石装入時における下ベル開速度、最終開度を低下させることにより、鉱石傾斜角を増大させ、高炉内の通気性改善(圧損低減)が可能であると共に、通気余裕を活用したコークス比の低減が可能であるとされている。
特許文献3は、ベル・アーマー方式の高炉において、炉内に原料を装入する際に、その炉内に堆積し、時間と共に変化する鉱石堆積傾斜角の動的挙動を精度よく推定することができる高炉における鉱石堆積傾斜角の推定方法を提供することを目的としている。
具体的には、ベル・アーマー方式の原料装入装置を用いて、高炉内に原料となる鉱石とコークスを交互に層状に装入する際に、前記高炉内に堆積する鉱石の鉱石堆積傾斜角を推定する方法において、前記原料装入装置の下部側に配備されている下ベルから、鉱石最終バッチとなる前記鉱石を装入する際に、前記鉱石最終バッチの鉱石を装入するときの下ベルを開放する条件を用いて、前記鉱石の質量流速F[kg/s]を求め、求めた前記鉱石の質量
流速F[kg/s]を時間積分することで、所定時間までの前記鉱石の積算質量Σmi[kg]を求め、求めた前記鉱石の積算質量Σmi[kg]を鉱石嵩密度ρ[kg/m3]で除することで、所定時間までの前記鉱石の積算体積ΣVi[m3]を求め、前記高炉の炉壁部に落下した前記鉱石の堆積層高さh[m]を測定し、求めた所定時間までの前記鉱石の積算体積ΣVi[m3]と、測定した前記鉱石の堆積層高さh[m]を用いて、前記鉱石の堆積層における水平方向距離d[m]を求め、求めた所定時間までの前記鉱石の堆積層における水平方向距離d[m]と、測定した前記鉱石の堆積層高さh[m]を用いて、時間と共に変化する前記鉱石堆積傾斜角θOII[°]を推定することとされている。その作用効果としては、ベル・アーマー方式の高炉において、炉内に原料を装入する際に、その炉内に堆積し、時間と共に変化する鉱石堆積傾斜角の動的挙動を精度よく推定することができるとされている。
特開昭63−186813号公報 特開2019−127615号公報 特願2018−188274号
上記したベル・アーマー方式の原料装入装置を備えた高炉においては、炉内に装入される鉱石の堆積傾斜角を増大させる方法として、例えば、特願2018−008901に開示されているように、原料装入装置である下ベルの開速度、あるいは最終開度を低下させる方法がある。また例えば、特願2018−188274に開示されているように、原料である鉱石を高炉内へ装入する時の質量流速Fと堆積層高さhから、鉱石層の動的堆積挙動を精度よく推定する方法がある。
図2に示すように、高炉に原料を装入する方法については、一般的に、コークス2バッチ(CI,CII)、鉱石複数バッチ(OI,OII,…,On)を1サイクルとし、このサイクルを繰り返しながら、原料である鉱石とコークスを交互に層状に装入している。
例えば、鉱石最終バッチ(On)が、鉱石2バッチ目(OII)の場合、高炉内の鉱石堆積傾斜角θOIIは、装入される鉱石の最終バッチ(OII)で決定される。そのため、鉱石最終バッチ(OII)を装入する際の下ベルの開条件を変更すれば良い。
また、鉱石最終バッチ(OII)を装入する時のアーマーポジション(アーマーの押し出し距離)については、下ベルから落下した鉱石と当たらない位置に設定する。
ところで、図3Aに示すように、高炉内に鉱石を装入する際に、炉内における鉱石層の堆積傾斜角の経時変化を確認すると、鉱石最終バッチ(OII)の装入末期に鉱石層の堆積傾斜角が低下してしまう現象を知見した。この鉱石最終バッチ(OII)の装入末期における鉱石層の堆積傾斜角が低下する現象を「鉱石層崩れ」と呼ぶ。
図3Bに示すように、鉱石最終バッチ(OII)を装入する際に、「鉱石層崩れ(装入末期の鉱石堆積傾斜角の低下)」が生じなければ、鉱石堆積傾斜角を最大にすることができるので、高炉の中心近傍における鉱石層厚が低下することなり、中心ガス流が強化される。これにより、高炉内の通気性が改善されることとなる。
さて、特許文献1は、原料を高炉内へ装入する速度を制御することによって、高炉内における装入物の堆積状態を維持することが目的であり、本発明とは目的が異なる。また、特許文献1では、下ベルの開条件を用いて鉱石の質量流速を計算する方法で示されているだけであり、本発明が目的としている鉱石層崩れ量を求める技術とはなっていない。
特許文献2は、堆積完了後における鉱石堆積傾斜角を増大させることが目的であり、本発明とは目的が異なる。また、特許文献2では、下ベルの開条件を変更することにより、堆積完了後の鉱石堆積傾斜角を求めているのみであり、「鉱石層崩れ量(鉱石堆積傾斜角が低下した角度)」を求める技術とはなっていない。また、特許文献2では、下ベルの開条件を変更することにより、鉱石堆積傾斜角の増大量が開示されているが、「鉱石層崩れ量」を求める際に必要となる、装入時における鉱石の質量流速を計算式から推定する技術とはなっていない。
特許文献3は、鉱石を装入した時における鉱石堆積傾斜角の経時変化を把握することが目的であり、本発明とは目的が異なる。すなわち、特許文献3を用いて「鉱石層崩れ量」を推定する場合、鉱石の質量流速Fの推定の他に、堆積層高さhを測定しなければならないので、本発明と異なる技術である。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、ベル・アーマー方式の原料装入装置を備えた高炉において、鉱石最終バッチの装入末期に鉱石層が崩れ落ちる「鉱石層崩れ」が生じた際に、鉱石堆積傾斜角が低下する角度を表す「鉱石層崩れ量」を推定することで、高炉の操業安定性に寄与することができるベル・アーマー方式の高炉における鉱石層崩れ量の推定方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかるベル・アーマー方式の高炉における鉱石層崩れ量の推定方法は、ベル・アーマー方式の原料装入装置を用いて、高炉内に原料となる鉱石とコークスをバッチ単位で交互に層状に装入する高炉の原料装入方法において、前記原料装入装置の下部側に配備されている下ベルから、鉱石最終バッチを装入する際に、前記鉱石最終バッチの装入末期における前記鉱石の質量流速を、最終質量流速Ffin[kg/s]とし、前記装入末期に堆積した鉱石層の堆積傾斜角が低下する現象である「鉱石層崩れ」が発生する境界における前記Ffin[kg/s]の値を、Fc[kg/s]とし、前記「鉱石層崩れ」が非発生のときにおける鉱石層の最終堆積傾斜角を、θc[°]とし、前記「鉱石層崩れ」が発生したときにおける鉱石層の堆積傾斜角の低下量である「鉱石層崩れ量」を、Δθ[°]とすると、前記「鉱石層崩れ量」の値Δθ[°]を、Ffin[kg/s]、Fc[kg/s]、θc[°]の3つの変数のみを用いて推定することを特徴とする。
本発明によれば、ベル・アーマー方式の原料装入装置を備えた高炉において、鉱石最終バッチの装入末期に鉱石層が崩れ落ちる「鉱石層崩れ」が生じた際に、鉱石堆積傾斜角が低下する角度を表す「鉱石層崩れ量」を推定することで、高炉の操業安定性に寄与することができる。
高炉操業の概略を模式的に示した図である。 ベル・アーマー方式の高炉における原料装入の概略を模式的に示した図である。 「鉱石層崩れ」が発生したときの概略を模式的に示した図である。 「鉱石層崩れ」が発生していないときの概略を模式的に示した図である。 下ベルの開条件(下ベルの開度[mm]の時間変化)と、鉱石堆積傾斜角θ[degree]の経時変化を示した図である。 下ベルの開条件(下ベルの開度[mm]の時間変化)と、下ベルから排出される鉱石の質量流速F[g/s]を測定した結果を示した図である。 鉱石試料として焼結鉱を用いた場合における、鉱石の最終質量流速Ffin[kg/s]と、鉱石層崩れ量Δθ[degree]の関係を示した図である。 鉱石試料としてアルミナボールを用いた場合における、鉱石の最終質量流速Ffin[kg/s]と、鉱石層崩れ量Δθ[degree]の関係を示した図である。 Δθ、Ffin、Fc、θcを無次元化してまとめた図である。 本発明で用いるパラメータの定義を示した図である。 本実施例で用いる実験装置(2次元スライス冷間模型)の概略を模式的に示した図である。
以下、本発明にかかるベル・アーマー方式の高炉における鉱石層崩れ量の推定方法の実施形態を、図を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。また、「鉱石層崩れ」を、単に「層崩れ」、「鉱石層崩れ量」を、単に「層崩れ量」と表す場合もある。以降、本実施形態の説明において、本発明の名称を「鉱石層崩れ量の推定方法」と表す場合もある。
本発明にかかるベル・アーマー方式の高炉1における鉱石層崩れ量の推定方法は、鉱石最終バッチの装入末期に鉱石層が崩れ落ちる「鉱石層崩れ」が生じた際に、鉱石層の鉱石堆積傾斜角が低下する角度「鉱石層崩れ量」を、鉱石2の最終質量流速と、「鉱石層崩れ」が発生するときの質量流速の境界値と、「鉱石層崩れ」が生じないときの鉱石層の最終堆積傾斜角とを用いて推定する方法である。
まず、本発明が適用される高炉1について説明する。
図1に示すように、高炉1は、固気向流型の巨大な反応容器(シャフト炉)である。この高炉1では、炉頂より炉内に、塊鉱石、鉄鉱石ペレット、焼結鉱等の鉱石原料(鉱石2)とコークス3を交互に層状に装入し、炉下部に備えられている羽口から熱風(高温の空気+酸素)を吹き込んで、鉱石原料の還元、溶融等の一連の反応を行わせることで、銑鉄を製造している。
本発明は、ベル・アーマー方式の原料装入装置4を備えた高炉1を対象としている。なお、本発明はベルレス方式の高炉を対象としていない。
図2に示すように、ベル・アーマー方式の原料装入装置4は、炉頂部に備えられていて、鉱石2やコークス3などの原料を貯留するベルカップ6と、ベルカップ6内に配備され、下方に向かうにつれて広がる円錐形状の下ベル7と、下ベル7の下方であって、鉛直方向に配備された板状のアーマー8と、を有している。なお、下ベル7の上方には、図示はしないが、上ベルが備えられている。下ベル7と上ベルはいずれも上下方向に移動可能となっている。
下ベル7は、下方につれて広がる円錐形状であり、ベルカップ6の下部に備えられている。アーマー8は、下ベル7の下方の炉壁部に備えられていて、落下してきた原料(鉱石2やコークス3など)を反発させるものである。
つまり、ベル・アーマー方式の原料装入装置4を備えた高炉1では、下ベル7を下方に移動させて、ベルカップ6の下部に隙間を設け、ベルカップ6内に貯留された原料(鉱石2やコークス3など)を炉内に所定量落下させる。
ベルカップ6から排出された原料は、ベルカップ6の下方に備えられたアーマー8(反発板)で反発されて高炉1内へ装入される。高炉1内に装入された原料は、落下した位置から炉内の中心側に向かって流れ込みながら堆積する。
なお、鉱石2やコークス3などの原料の落下位置については、アーマー8の押し出し量(距離)により調整を行うことができる。アーマー8の押し出し量とは、板状のアーマー8を高炉1の半径方向内側(高炉1の内部)に向かって出退させる量のことである。
また、図2に示すように、塊コークスの一部については、コークス装入用の専用のシュート(中心装入シュート9)を用いて、高炉1内の中心部へ装入している。いわゆる「コークス中心装入技術」である(参考文献:「ふぇらむ」,Vol.9(2004) No.10, p721〜728)。
ところで、高炉1では、炉内の中心部にガスを安定して流通させることにより、逆V字型(上に尖った形状)の融着帯を形成させることで、炉内の通気性を確保している。
高炉1内を流通するガスについては、鉱石2よりも粒径および充填層の空隙率が大きいコークス3側を優先的に流通する。また、高炉1内のガス流れについては、鉱石層厚(Lo)とコークス層厚(Lc)との層厚比(Lo/Lc)で制御している。この層厚比(Lo/Lc)が小さいほど、ガスが流れ易くなる。
すなわち、高炉1内の中心部に塊コークスを装入する(コークス中心装入を行う)ことにより、ガスが高炉1内の中心部を流れ易くなる。
本実施形態においては、一般的な高炉原燃料の装入方法で実施している。
図2に示すように、高炉1に原料を装入する方法については、一般的に、コークス2バッチ(CI,CII)、鉱石複数バッチ(OI,OII,…,On)を1サイクルとし、このサイクルを繰り返しながら鉱石2とコークス3をバッチ単位で交互に層状に装入している。なお、本実施形態においては、鉱石2バッチ目(OII)を鉱石最終バッチとしている。
すなわち、高炉1の原料装入方法の一例としては、コークス1バッチ目(CI)−コークス2バッチ目(CII)−鉱石1バッチ目(OI)−鉱石2バッチ目(OII)を1チャージとして、このサイクルを繰り返しながら装入する。また、コークス中心装入については、(CII)と(OI)の間、及び、(OI)と(OII)の間に装入する。
つまり、原料の装入サイクルについては、以下の工程(1)〜(6)に示す通りである。
(1) コークス1バッチ目(CI)
(2) コークス2バッチ目(CII)
(3) コークス中心装入(I)
(4) 鉱石1バッチ目(OI)
(5) コークス中心装入(II)
(6) 鉱石2バッチ目(OII):鉱石最終バッチ
上記の原料装入工程(1)〜(6)が、1サイクルである。
コークス3の役割としては、レースウェイでの燃焼に用いられる「熱源(C+O2→CO2)」、鉱石還元に必要なCOガスを生成する「還元材(C+CO2→2CO、FeOn+nCO→Fe+nCO2) 」、溶鉄へ浸炭し融点を低下させる「加炭材」、高炉1内の通気性を確保するための「スペーサー」などの4つが挙げられる。
また、高炉1に備えられた羽口5からは、微粉炭(石炭を粉砕した補助燃料、pulverized coal(PC))を炉内へ吹き込んでいるため、「熱源」・「還元材」・「加炭材」の役割への代替は可能である。しかしながら、「スペーサー」としての役割については、コークス3でしか担うことができない。
すなわち、高炉1内の通気性を改善することができれば、その通気余裕を活用してコークス比を低減させることが可能となる。
原料装入装置4の下部側に配備されている下ベル7(ベル)から、鉱石最終バッチ(On)を装入するに際しては、以下に述べることを行っている。
ベル式の高炉1の原料装入装置4では、下方につれて広がる円錐形状の下ベル7を、下方に移動させてできる隙間を通して、原料(鉱石2やコークス3など)を炉内に装入している。また、コークス2バッチ(CI,CII)、鉱石複数バッチ(OI,OII,…,On)を装入の1チャージとする。なお。本実施形態においては、鉱石2バッチ目(OII)を鉱石最終バッチとしている。
鉱石最終バッチ(OII)を装入する時に、下ベル7を開放する条件(下ベル7の開条件)が異なれば、高炉1内の鉱石堆積傾斜角θOIIも異なってくる。また、高炉1内の中間部における装入物分布については、装入したコークス3と鉱石2との堆積傾斜角度の差に依存している。
なお、鉱石堆積傾斜角θOIIとは、図2に示すように、鉱石最終バッチ(OII)において、高炉1内に装入された鉱石2の傾斜面と水平方向の面とのなす角度のことである。この鉱石堆積傾斜角θOIIを増大させると、中心ガス流が強化されることとなるので、高炉1内の通気性は良好になる。
また、鉱石最終バッチ(OII)を装入する時のアーマーポジション(アーマー8の押し出し距離)については、下ベル7から落下してきた鉱石原料(鉱石2やコークス3など)と当たらない位置に設定する。
さて、本発明の鉱石層崩れ量を推定する方法については、下ベル7から高炉1内に鉱石2が落下する速度が必要となる。
下ベル7から高炉1内に排出される鉱石2の質量流速Fは、以下に示す式より求めることができる(参考文献:西尾浩明ら:「鉄と鋼」, 68(1982), p.2330 「高炉の装入物分布形成過程に関する解析」)。
F=2π・RH・ρ・g1/2・tan1/2θ・(uB・τ/tanθ-k・Dp)3/2
ただし、F:鉱石2の質量流速[kg/s]、RH:下ベル7の半径[m]、ρ:鉱石嵩密度[kg/m3]、g:重力加速度[m/s2]、θ:下ベル7の角度[°]、uB:下ベル7の開速度[m/s]、τ:下ベル7の開時間[s]、k:補正係数[-]、Dp:原料粒径[m]
鉱石2の最終質量流速Ffinについては、装入末期(鉱石2の質量流速Fが装入末期に大
きく低下するところから、鉱石排出時間の3%分遡った時間)における鉱石2の質量流速を示している(図5中において破線で丸く囲った箇所を参照)。
このことより、本実施形態の鉱石層崩れ量の推定方法においては、鉱石最終バッチ(OII)の装入末期における鉱石2の質量流速Fを、最終質量流速Ffin[kg/s]としている。
ところで、図3A、図4に示すように、高炉1内に鉱石2を装入する際に、炉内における鉱石層の堆積傾斜角の経時変化を確認すると、鉱石最終バッチ(OII)の最終段階である装入末期に、鉱石層が雪崩のように崩れ落ちる現象、すなわち鉱石層の堆積傾斜角θOIIが低下してしまう現象を知見した。この装入末期における鉱石層の堆積傾斜角θOIIが低下する現象を「鉱石層崩れ」と呼ぶ。また、「鉱石層崩れ」について、装入末期に鉱石層の堆積傾斜角θOIIが低下する角度を「鉱石層崩れ量」とし、その値をΔθ[°]とする。
一方で、図3B、図4に示すように、鉱石最終バッチ(OII)を装入する際に、「鉱石層崩れ(装入末期の鉱石堆積傾斜角θOIIの低下)」が生じなければ、鉱石堆積傾斜角θOIIを最大にすることができるので、高炉1の中心近傍における鉱石層厚が低下することなり、中心ガス流が強化される。これにより、高炉1内の通気性が改善されることとなる。
図6A、図6Bに示すように、「鉱石層崩れ量」の値Δθ[°]は、鉱石2の最終質量流速Ffin[kg/s]の大きさで決まるものである。また、Fc[kg/s]は、「鉱石層崩れ」の発生可否を判断する境界のFfin[kg/s]の値である。このFc[kg/s]の値は、原料条件(鉱石2の種類やサイズ、混合割合、装入量など)や装入装置(高炉1)のサイズによって異なってくる。θc[°]は、「鉱石層崩れ」が生じない場合における鉱石層の最終堆積傾斜角である。このθc[°]は、最大の堆積傾斜角を示している。
このことより、本実施形態の鉱石層崩れ量の推定方法においては、鉱石最終バッチ(OII)の装入末期に堆積した鉱石層の堆積傾斜角が低下する現象である「鉱石層崩れ」が発生する境界におけるFfin[kg/s]の値を、Fc[kg/s]とし、「鉱石層崩れ」が非発生のときにおける鉱石層の最終堆積傾斜角を、θc[°]とし、「鉱石層崩れ」が発生したときにおける鉱石層の堆積傾斜角の低下量(低下角度)である「鉱石層崩れ量」の値を、Δθ[°]としている。
図5、図6A、図6B、図7に示すように、「鉱石層崩れ」の現象は、装入末期における鉱石2の質量流速Ffin(最終質量流速)に依存している。この最終質量流速Ffinを「鉱石層崩れ」が発生しうる質量流速の境界値Fc以下(Ffin/Fc<1.0)にすれば、「鉱石層崩れ」は生じることはない。
すなわち、「鉱石層崩れ量」の値Δθ[°]については、「鉱石層崩れ」が生じないときの最終傾斜角をθc[°]とするとき、以下に示す式から求めることができる。
Δθ=θc×0.12(Ffin/Fc-1)0.3
ただし、Ffin/Fc≧1.0
なお、上式は、「鉱石層崩れ量」の値Δθを無次元化して整理したものであり、原料種類(鉱石2の種類やサイズ、混合割合、装入量など)や装置(高炉1)のサイズによらず、この関係式が成立する(図7参照)。また、θc[°]とFc[kg/s]については、物性値であるため、Ffin[kg/s]を推定することができれば、「鉱石層崩れ量」の値Δθも推定することが可能となる。
このことより、本実施形態の鉱石層崩れ量の推定方法においては、「鉱石層崩れ量」の値Δθ[°]を、Ffin[kg/s]、Fc[kg/s]、θc[°]の3つの変数のみを用いて推定する。
なお、原料装入時における鉱石2の質量流速Fについては、鉱石最終バッチ(OII)を装入する時の下ベル7の開条件から計算することができる。これにより、鉱石2の最終質量流速Ffinも推定することが可能である(参考文献1:西尾浩明ら:「鉄と鋼」, 68(1982), p.2330「高炉の装入物分布形成過程に関する解析」) 。
なお、本実施形態で用いるパラメータの定義については、表1、表2、図8に示す通りである。表1は、本実施形態で用いる記号の定義について示したものである。表2は、本実施形態で用いる用語の定義について示したものである。図8は、本実施形態で用いるパラメータの定義を図示したものである。
Figure 2021121689
Figure 2021121689
まとめると、本発明にかかるベル・アーマー方式の高炉1における鉱石層崩れ量の推定方法は、ベル・アーマー方式の原料装入装置4を用いて、高炉1内に原料となる鉱石2とコークス3をバッチ単位で交互に層状に装入する高炉1の原料装入方法において、原料装入装置4の下部側に配備されている下ベル7から、鉱石最終バッチ(OII)を装入する際に、鉱石最終バッチ(OII)の装入末期における鉱石2の質量流速を、最終質量流速Ffin[kg/s]とし、装入末期に堆積した鉱石層の堆積傾斜角が低下する現象である「鉱石層崩れ」が発生する境界におけるFfin[kg/s]の値を、Fc[kg/s]とし、「鉱石層崩れ」が非発生のときにおける鉱石層の最終堆積傾斜角を、θc[°]とし、「鉱石層崩れ」が発生したときにおける鉱石層の堆積傾斜角の低下量である「鉱石層崩れ量」を、Δθ[°]とすると、「鉱石層崩れ量」の値Δθ[°]を、Ffin[kg/s]、Fc[kg/s]、θc[°]の3つの変数のみを用いて推定する。
[実施例]
以下に、本発明のベル・アーマー方式の高炉1における鉱石層崩れ量の推定方法に従って実施した実施例について、説明する。
本実施例における実施条件については、以下の通りである。
実験装置10については、ベル・アーマー方式の高炉1の炉上部を模した2次元冷間模
型を使用した。つまり、2次元冷間模型実験の条件については、下ベル7とアーマー8とを有している。この2次元スライス冷間模型の実験装置10を用いて、鉱石原料(鉱石2)の装入・堆積実験を行った。
図9に示すように、本実施例で用いる実験装置10のサイズについては、縦(高さH)=1450mm、横(幅W)=580mm、奥行きl=100mm、下ベル7(底面側)の半径RH=374mmとし、透明のアクリル板で製作した。
なお、実験装置10(2次元スライス冷間模型)と実機の高炉1との相似則に関しては、以下の通りである。
下ベル7の開度等の実験装置10のサイズについては、幾何学的相似則を適用した。本実施例においては、実機の高炉1に対して、1/11.2倍とした。
また、下ベル7の開速度uB等の速度については、フルード数Frを一定とした。本実施例においては、実機の高炉1に対して、1/√11.2倍とした。
また、装入する鉱石試料(鉱石2)については、粒径が2.8mm〜4.0mmの焼結鉱、および、φ2mmのアルミナボールを用いた。鉱石試料の混合割合については、焼結鉱:100%、アルミナボール:100%、焼結鉱:アルミナボール=4:6とした。1バッチ当たりの鉱石装入量(鉱石バッチ装入量)については、1.75kg、3.50kg、5.25kgとした(図7参照)。
高炉1を模した実験装置10内に、下地である鉱石1バッチ目(OI)および中心コークスを装入した状態で下ベル7を開放してベルカップ6から内部へ鉱石最終バッチ(OII) を装入する実験を行った。すなわち、上記の(1)〜(5)に示す原料の装入工程(CI)〜(CII)〜(I)〜(OI)〜(II)を終えた状態にしておき、工程(6)の鉱石最終バッチ(OII)を装入した。
鉱石最終バッチ(OII)での鉱石2の装入・堆積時に、その堆積状況を側方よりビデオ撮影を行い、鉱石堆積傾斜角θOII[°]の変化を連続的に測定した。
鉱石最終バッチ(OII)を装入した時の下ベル7の開条件に関しては、以下の3パターンとした(図4中の上段の(a)参照)。
・条件(1):通常の下ベル7の開条件(下ベル7の最終開度:58mm、下ベル7の開時間:3.6s) 、ベース条件
・条件(2):下ベル7の開速度を低下させた条件(下ベル7の最終開度:36mm、下ベル7の開時間:11s)
・条件(3):下ベル7の最終開度を低下させた条件(下ベル7の最終開度:58mm、下ベル7の開時間:1.1s)
図4は、下ベル7の開条件(条件(1)〜条件(3))と、それぞれの条件に伴う鉱石堆積傾斜角θOII[°]の変化(実測値)を示している。図4中の(a)は、下ベル7の開度[mm]の時間変化を示し、傾きは開速度を示している。図4中の(b)は、鉱石堆積傾斜角θOII[°]の時間変化を示している。
なお、下ベル7の開速度は、下ベル7が開くのにかかる時間ともいえる。また、下ベル7の開時間は、下ベル7が開いている時間である。ただし、本実施例では、下ベル7の開時間について、下ベル7が開くのにかかる時間を除いている。
図4中の下段の(b)は、焼結鉱:100%を鉱石試料として用いた場合での下ベル7の開条件(条件(1)〜(3))と、それに伴う鉱石堆積傾斜角θOII[°]の変化(実測値)を示している。図4に示すように、下ベル7の開条件(条件(1)〜条件(3))を変更すると、鉱石2の動的堆積挙動である鉱石堆積傾斜角θOII[°]が異なることがわかる。
図3A、図3B、図4中の下段の(b)などに示すように、条件(1)、条件(2)では、時間経過と共に鉱石堆積傾斜角θOII[°]は増大することとなるが、鉱石最終バッチ(OII)の装入末期に「層崩れ」が生じてしまい、鉱石堆積傾斜角θOII[°]が低下して堆積が完了することになってしまう。このような鉱石最終バッチ(OII)の装入末期における鉱石堆積傾斜角θOII[°]の低下量については、下ベル7の開条件によって異なってくる。
一方、条件(3)では、鉱石最終バッチ(OII)の装入末期において、鉱石堆積傾斜角θOII[°]の低下が生じることなく、堆積が完了することとなる。
ここで、条件(1)、条件(2)のように、「層崩れ」が生じるときの「層崩れ量」をΔθ[°]のとし、条件(3)のように、「層崩れ」が生じないときの最終堆積傾斜角をθ
c[°]のとする。
図5は、下ベル7の開条件を変更した際における鉱石2の質量流速F[g/s]の測定結果を示すものである。この鉱石2の質量流速F[g/s]を測定する方法については、原料の堆積位置に天秤を設置し、堆積質量を連続して測定することで、鉱石2の質量流速Fを求めた。
図5中において破線で丸く囲った箇所、図4中の(b)に示すように、「鉱石層崩れ」が生じる条件(1)、条件(2)では、排出末期の鉱石2の質量流速Ffinが最大になるタイミングで発生した。
一方、条件(3)では、下ベル7を全開した後も、鉱石2は排出され続けており、鉱石最終バッチ(OII)の排出末期においても「鉱石層崩れ」は生じることはなかった。
図6Aに、焼結鉱:100%を鉱石試料(鉱石2)として用いた場合における、鉱石最終バッチ(OII)の排出末期の最終質量流速Ffinと、「鉱石層崩れ量」の値Δθとの関係を示す。
図6Bに、アルミナボール:100%を鉱石試料(鉱石2)として用いた場合における、鉱石最終バッチ(OII)の排出末期の最終質量流速Ffinと、「鉱石層崩れ量」の値Δθとの関係を示す。
図6Aに示すように、「鉱石層崩れ」の発生可否については、鉱石試料が焼結鉱:100%の場合、Ffin≧0.4kg/sである。このFfinが大きいほど、「鉱石層崩れ量」の値Δθも大きくなる。
図6Bに示すように、「鉱石層崩れ」の発生可否については、鉱石試料がアルミナボール:100%の場合、Ffin≧0.6kg/sである。このFfinが大きいほど、「鉱石層崩れ量」の値Δθも大きくなる。
なおここでは、「鉱石層崩れ」の発生可否の境界のFfinの値(境界値)を、Fc[kg/s]としている。
図7は、(Ffin/Fc)と(Δθ/θc)との関係を示したグラフである。なお、図7においては、装入原料(鉱石試料)に加え、1バッチ当たりの鉱石装入量(鉱石バッチ装入量)を変更した条件もプロットしている。また、図7のグラフは、「鉱石層崩れ量」の値Δθを無次元化して整理したものであり、原料条件(鉱石2の種類やサイズ、混合割合、装入量など)や実験装置10のサイズなどに関わらず、グラフに示す関係が成立する。
Ffin/Fc≧1.0で「鉱石層崩れ」が生じ、「鉱石層崩れ量」の値Δθは、以下に示す関係式で求めることができる。
Δθ=θc×0.12(Ffin/Fc-1)0.3
ただし、Ffin/Fc≧1.0
ここで、θc[°]、Fc[kg/s]は物性値であるため、鉱石2の最終質量流速Ffin[kg/s]が分かれば、上記の関係式から「鉱石層崩れ量」の値Δθ[°]を推定することが可能である。
なお、鉱石2の質量流速F[kg/s]については、下式で推定することが可能である(参考文献1:西尾浩明ら:「鉄と鋼」, 68(1982), p.2330「高炉の装入物分布形成過程に関する解析」)。
F=2π・RH・ρ・g1/2・tan1/2θ・(uB・τ/tanθ-k・Dp)3/2
ただし、F:鉱石2の質量流速[kg/s]、RH:下ベル7の半径[m]、ρ:鉱石嵩密度[kg/m3]、g:重力加速度[m/s2]、θ:下ベル7の角度[°]、uB:下ベル7の開速度[m/s]、τ:下ベル7の開時間[s]、k:補正係数[-]、Dp:原料粒径[m]
上記の関係式を用いれば、鉱石2の質量流速Fを直接測定することができない、実機の高炉1においても、鉱石2の最終質量流速Ffinを推定することが可能となり、本発明を用いて「鉱石層崩れ量」の値Δθも推定することが可能となる。
ところで、参考文献2(西尾浩明、有山達郎:「鉄と鋼」, 第66年(1980), 13号 p.98 「高炉の装入物分布に及ぼすガス流の影響」)については、高炉1のガス流速と装入物の堆積傾斜角の関係を整理したものである。この参考文献2によれば、2次元スライス冷間模型を用いた実験結果を、実機の高炉1に適用することができることが明らかとされている。
したがって、参考文献2に基づけば、本実験条件で実施した本実施例の2次元スライス冷間模型(実験装置10)での結果が、実機の高炉1と相似するものといえるので、本発明の鉱石層崩れ量の推定方法を、実機の高炉1に適用することは可能である。
以上、本発明によれば、ベル・アーマー方式の原料装入装置4を備えた高炉1において、鉱石最終バッチ(On)、(本実施形態では、OII)の装入末期に鉱石層が崩れ落ちる「鉱石層崩れ」が生じた際に、鉱石堆積傾斜角θOn(本実施形態では、θOII)が低下する角度を表す「鉱石層崩れ量」の値Δθを推定することで、高炉1の操業安定性に寄与することができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
1 高炉
2 鉱石
3 コークス
4 原料装入装置
5 羽口
6 ベルカップ
7 下ベル
8 アーマー
9 中心装入シュート
10 実験装置

Claims (1)

  1. ベル・アーマー方式の原料装入装置を用いて、高炉内に原料となる鉱石とコークスをバッチ単位で交互に層状に装入する高炉の原料装入方法において、
    前記原料装入装置の下部側に配備されている下ベルから、鉱石最終バッチを装入する際に、
    前記鉱石最終バッチの装入末期における前記鉱石の質量流速を、最終質量流速Ffin[kg/s]とし、
    前記装入末期に堆積した鉱石層の堆積傾斜角が低下する現象である「鉱石層崩れ」が発生する境界における前記Ffin[kg/s]の値を、Fc[kg/s]とし、
    前記「鉱石層崩れ」が非発生のときにおける鉱石層の最終堆積傾斜角を、θc[°]とし、
    前記「鉱石層崩れ」が発生したときにおける鉱石層の堆積傾斜角の低下量である「鉱石層崩れ量」を、Δθ[°]とすると、
    前記「鉱石層崩れ量」の値Δθ[°]を、Ffin[kg/s]、Fc[kg/s]、θc[°]の3つの変数のみを用いて推定する
    ことを特徴とするベル・アーマー方式の高炉における鉱石層崩れ量の推定方法。
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