JP2021070634A - エンテロウイルスワクチン - Google Patents

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朋史 中村
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智 小池
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Abstract

【課題】エンテロウイルスに対するワクチンを提供する。【解決手段】エンテロウイルスの構造、特にVP0がVP2とVP4に開裂することに着目し、当該開裂が免疫原性に影響を与えることを見出した。すなわち、免疫原性を示すポリペプチドとしてVP2とVP4を多く含むワクチンを設計することが、高い免疫原性を示すワクチンの提供につながると考えた。エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3およびVP4を含むポリペプチドを製造し、このポリペプチドがエンテロウイルスに対する免疫原として高い効果を有することを確認した。【選択図】図5

Description

本発明は、エンテロウイルスに対するワクチンに関するものである。
エンテロウイルスは、ピコルナウイルス科に属する一本鎖RNAウイルスであり、人に感染するものとしてエンテロウイルスA〜Dの群が挙げられる。エンテロウイルスにはポリオウイルス、コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルス及びその他のエンテロウイルスが含まれる。
エンテロウイルスA群にはコクサッキーウイルスA2〜8、10、12、14、16及びエンテロウイルス71(以下、EV71)が含まれる。エンテロウイルスB群にはコクサッキーウイルスA9、コクサッキーウイルスB1〜6、エコーウイルス1〜33及びエンテロウイルス69が含まれる。エンテロウイルスC群にはポリオウイルス、コクサッキーウイルスA1、11、13、15、17〜22及び24が含まれる。エンテロウイルスD群にはエンテロウイルス68及び70が含まれる。
エンテロウイルスが様々な疾患を引き起こすことはよく知られており、かかる疾患の代表的なものとしては手足口病、ヘルパンギーナ、無菌性髄膜炎などが挙げられる。エンテロウイルスの中でもとりわけEV71及びコクサッキーウイルスA群は、手足口病の主要な原因ウイルスとして知られている。また、エンテロウイルスの中でもとりわけコクサッキーウイルスA群、EV71、コクサッキーウイルスB群及びエコーウイルスは、ヘルパンギーナの主要な原因ウイルスとして知られている。無菌性髄膜炎は、エコーウイルス、コクサッキーウイルスA群、B群及びEV71などのエンテロウイルスのほか、寄生虫など幅広い病原体によって引き起こされる。
コクサッキーウイルスA群には例えばA1〜22型及び24型が含まれており、それぞれ異なる疾患及び症状を引き起こしうる。コクサッキーウイルスB群には例えば1〜6型が含まれる。エコーウイルスにはエコー1〜7型、9型、11〜27型、29〜31型が含まれる。その他のエンテロウイルスにはエンテロウイルス68〜71型が含まれる。それぞれの遺伝子型にはさらにサブ遺伝子型が含まれ、例えばEV71にはプロトタイプ株であるBrCrのみからなるA型、C1〜C5型及びB1〜B5型が知られている。
手足口病は、一般的には、手、足、口などに水疱性の発疹があらわれる軽症疾患として知られており、小児が夏頃に発症することが多い。手足口病の主な感染経路は、飛沫感染及び糞口感染である。手足口病は東アジアを中心に報告されており、例えば、中国では2016年に約200万人、日本では2015年に約50万人の患者が報告されている。ほとんどの手足口病患者の予後は良好であるが、まれに中枢神経合併症、例えば無菌性髄膜炎、急性脳炎又は肺水腫などが生じて、重症化又は死亡する例もみられる。このような合併症が生じるのは、EV71によって引き起こされた手足口病である場合が多い。また、小児だけでなく成人の手足口病も報告されており、成人の場合には重症化することが多い。しかしながら、手足口病に対する治療方法はいまだ確立されておらず、ワクチンによる予防が東アジア各国を中心に検討又は実施されている。日本でも、手足口病の予防に有効なワクチンは、公衆衛生上の問題として厚生科学審議会で開発優先度の高いワクチンの一つとして指定されている。
ヘルパンギーナは、一般的には、発熱と口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎として知られており、乳幼児を中心に夏季に流行することが多い。ヘルパンギーナの主な感染経路は、飛沫感染及び糞口感染である。ヘルパンギーナに対する治療方法もいまだ確立されておらず、ワクチンなどによる予防が期待されている。
無菌性髄膜炎は、発熱、頭痛、嘔吐のいわゆる3主徴をみとめ、後部硬直、Kernig徴候などの髄膜刺激徴候が存在すること、髄液一般検査で定型的な所見を得ること、髄液の塗抹、細菌培養で細菌を検出しないことにより診断がなされる症候群である。エンテロウイルス以外の様々なウイルスなどによっても無菌性髄膜炎が引き起こされることが知られているものの、主たる原因は、エンテロウイルス、特にエコーウイルス及びコクサッキーウイルスである。感染経路や疫学的性質は病原体に依存するが、エンテロウイルスに起因する無菌性髄膜炎の場合には、手足口病などと同様に、夏頃に小児を中心に、飛沫感染及び糞口感染により流行する。無菌性髄膜炎に対する有効な治療方法はいまだ確立されておらず、ワクチンなどによる予防が期待されている。
ウイルス性疾患に対する予防法としてのワクチンの有効性は、ポリオウイルスに対するワクチンなどの前例から、広く認められている。ワクチンの候補としては、一般的には、弱毒化株、全粒子を初めとする不活化ウイルス、ウイルス様粒子(Virus Like Particle、以下「VLP」)、組換えタンパク質、組換えベクター及びペプチドなどが知られている。エンテロウイルスに対するワクチンについても、すでに様々な研究及び報告がなされている。例えば、非特許文献1及び非特許文献2にはエンテロウイルスをホルマリンで不活化したワクチンが報告されている。特許文献1にはエンテロウイルスのVP0〜4を含むVLPが報告されている。特許文献2にはエンテロウイルス粒子及びその製造法が報告されている。特許文献3にはエンテロウイルスを含む多様なウイルスのVLPの製造法が報告されている。非特許文献3にはEV71のF粒子の免疫原性が報告されている。非特許文献4にはEV71不活化ワクチン投与後の、EV71遺伝子型間の交差性が報告されている。非特許文献5にはEV71のVP1〜3を含むVLPがエンテロウイルスに対するワクチンとして報告されている。
EV71は、直径20〜30nmの非エンベロープウイルスカプシドの内部に約7.4kbの一本鎖RNAが封入された構造を有しており、該カプシドは4つの異なる構造タンパク質(VP1〜4)のコピー60個からなる。4つの構造タンパク質がアセンブルしてプロトマーを形成し、5つのプロトマーがアセンブルしてペンタマーを形成し、12個のペンタマーとウイルスゲノムがビリオンを構成する。EV71のサブ遺伝子型は、主にVP1における変異などによって定められている(非特許文献6)。
特表2014−532691号公報 特表2017−517571号公報 特表2015−528285号公報
Lee MS, et al., Expert Rev Vaccines 9: 149−156, 2010 Xu J, et al., Vaccine 28: 3516−3521, 2010 Chia−Chyi Liu, et al., PLOS one, Vol6, Issue 5, May 2011 Longding Liu, et al., BMC Medicine, 2015, 13:226 Xiaoli Wang, et al., J. Virol. doi:10.1128/JVI.01330−17, 2017 Eun−Je Yi, et al., Clin Exp Vaccine Res 2017;6:4−14
本発明は、エンテロウイルスに対するワクチンに関する。具体的には、本発明は、エンテロウイルスに対して免疫原性を示すポリペプチド、当該ポリペプチドの製造方法、当該ポリペプチドを含むエンテロウイルスに対するワクチン及び当該ポリペプチドを用いたエンテロウイルス関連疾患の予防方法を提供する。より具体的には、本発明のポリペプチドは、エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドである。
ワクチンの有効性は、一般に、免疫原性によって評価される。すでに実用化されているEV71に対するワクチンとして、例えばSinovac社のInliveが挙げられる。しかしながら手足口病を初めとするエンテロウイルスによって引き起こされる疾患の流行状況を鑑みると、エンテロウイルスに対して高い免疫原性を示すことが求められている。加えて、実用的なワクチンとしては、マウスモデルなどを用いた動物実験で高い感染予防効果が示されることがより望ましい。
本発明者らは、上記の課題に鑑みて、高い免疫原性を有するワクチンを製造した。具体的には、エンテロウイルスの構造、特にVP0がVP2とVP4に開裂することに着目し、当該開裂が免疫原性に影響を与えることを見出した。すなわち、免疫原性を示すポリペプチドとしてVP2とVP4を多く含むワクチンを設計することが、高い免疫原性を示すワクチンの提供につながると考えた。エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドを製造し、このポリペプチドがエンテロウイルスに対する免疫原として高い効果を有することを確認して、本発明をなした。
以下に本発明の詳細な説明をするが、本明細書において用いられる用語は、微生物学、生化学、分子生物学、医学及び薬学分野における一般的な定義に従って理解される。ただし、本明細書において特に説明又は定義されている用語については、本明細書における説明又は定義が優先する。また、本明細書中に引用されている文献については、参照により本明細書の一部とする。
第一の態様において、本発明は、エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドであって、当該VP2とVP4の結合部位にプロテアーゼが認識するアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチドを提供する。
エンテロウイルスには、ポリオウイルス、コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルス及びその他のエンテロウイルスが含まれるが、とりわけ本発明においては、エンテロウイルスであるA〜D群エンテロウイルス、特にA群エンテロウイルスを主題とする。本発明は、特に手足口病、ヘルパンギーナ及び無菌性髄膜炎などのエンテロウイルス関連疾患の原因であるウイルス、例えば、コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルス及びEV71を主題としている。より具体的には、本発明は、手足口病の原因であるエンテロウイルス、例えばコクサッキーウイルスA群及びEV71、とりわけコクサッキーウイルスA6、10及び16及びEV71に関する。さらに本発明は、ヘルパンギーナの原因であるエンテロウイルス、例えばコクサッキーウイルスA群、EV71、コクサッキーウイルスB群及びエコーウイルス、特にコクサッキーウイルスA群、例えばコクサッキーウイルスA2、3、4、5、6及び10に関する。特に本発明は、近年日本において手足口病の主たる原因となっているEV71B型、例えばEV71B5型に関する。
エンテロウイルスには、図1に示すようにP1と呼ばれる構造たん白質をコードする領域とP2及びP3と呼ばれる非構造たん白質をコードする領域が存在する。例えばEV71は、約7.4kbのRNAゲノム長を有する。P1はウイルスカプシドに該当し、当該領域はウイルスプロテアーゼによるプロセシングを受けることで、VP0〜4のウイルスたん白質に開裂する。エンテロウイルスのカプシドは、プロカプシドと呼ばれるVP0、1及び3の構造タンパク質から形成される場合やVP0がVP2と4に開裂し、VP1〜4の構造タンパク質から形成される場合がある。本明細書において、前者を不完全粒子形状のウイルス、後者を完全粒子形状のウイルスと呼ぶ。
エンテロウイルスのVP0、VP1、VP2、VP3及びVP4のアミノ酸配列及びそれらをコードする塩基配列は既知であり、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)、EMBL−Bank/EBI、GenBank/National Center for Biotechnology Information(以下、NCBI)などのデータベースから容易に入手可能である。例えばEV71のBrCrの配列情報は、NCBI登録番号U22521から入手可能である。
本発明において、用語「由来の」とは、対象物が元のウイルスと免疫学的な相同性を有すること、又は元のウイルスのアミノ酸配列と一定の相同性を示すことを意味し、製造方法に縛られるものではないと理解すべきである。免疫学的な相同性とは、元のウイルスに対する免疫反応が対象物に対しても同様に惹起されることを示す。免疫学的な相同性を確認する方法は、当業者に利用可能なあらゆる手段であってよく、これらに限定されない。一般的には、対象物が発現を誘導する抗体が元のウイルスを中和しうるかどうか、すなわち対象物が発現を誘導する中和抗体を測定することで確認することができる。例えばエンテロウイルス「由来の」との記載は、エンテロウイルスに対する免疫反応が対象物に対しても同様に惹起されること、又はエンテロウイルスのアミノ酸配列と一定の相同性、例えばエンテロウイルスとして微生物学上理解される程度の相同性を有することを意味する。アミノ酸配列と一定の相同性とは、典型的には80%以上、好ましくは90%以上、例えば95%以上、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最適には99%以上の相同性を有することを意味する。相同性の検定には当業者が通常利用可能なあらゆる検定方法を利用可能であるが、例えばBLASTを初期設定のパラメーターで用いることができる。
一例をあげると、エンテロウイルス由来のVP1であるといえるためには、まず、問題となっているポリペプチドのアミノ酸配列が、NCBIから取得したいずれかのエンテロウイルスのVP1のアミノ酸配列と初期設定パラメーターを用いたBLASTで一定の相同性、例えばエンテロウイルスとして微生物学上理解される程度の相同性を有することを意味し、典型的には80%以上、好ましくは90%以上、例えば95%以上、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最適には99%以上の相同性を有することを意味する。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質。以下、「生物学的等価体」)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。親水性指標もまた、生物学的等価体の作製において考慮される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、±0.5以内であることがさらにより好ましい。
したがって、本発明において、ポリペプチドは保存的置換されていてもよい。保存的置換とは、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数及び/又は疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;バリン、ロイシン、及びイソロイシン、などが挙げられるが、これらに限定されない。かかる保存的置換もまた、本発明において、「由来の」なる用語の範囲に含まれる。
本発明において、プロテアーゼは、アミノ酸間のペプチド結合を分解するあらゆる酵素を意味し、その対象がタンパク質、高分子ペプチド又は低分子ペプチドのいずれであるかを問わない。本発明において好ましいプロテアーゼとしては、VP2とVP4の結合部位を特異的に認識可能であって他のペプチド結合に影響しないことが望ましいことから、基質特異性の高いもの、例えばシステインプロテアーゼ、3Cプロテアーゼ、3CDプロテアーゼなどが挙げられる。
本発明において、プロテアーゼは、無作為にペプチド結合を分解するものではなく、それぞれ特定のアミノ酸配列を認識して特異的にペプチド結合を切断する。したがって、1種のプロテアーゼを選択すれば、そのプロテアーゼが認識可能なアミノ酸配列は一意に決定できる。あるプロテアーゼがどのようなアミノ酸配列を認識するかは、各種文献、例えばプロテアーゼを販売する事業者の説明書などに記載されている。3Cプロテアーゼ又は3CDプロテアーゼの場合、認識するアミノ酸配列はX−X−Gln−Gly−Xであり、Gln−Gly間で切断が生じる。例えばHRV3Cプロテアーゼの場合、フナコシ社の提供する説明書から、認識するアミノ酸配列がLeu−Glu−Val−Leu−Phe−Gln−Gly−Proであり、Gln−Gly間で切断が生じることが理解可能である。なお、Xは任意のアミノ酸を示す。
本発明において、プロテアーゼが認識するアミノ酸配列は、プロテアーゼに依存して決定されるものである。エンテロウイルスのRNAには3Cプロテアーゼ又は3CDプロテアーゼをコードする塩基配列が含まれていることから、本発明のポリペプチドにおいて、当該プロテアーゼが認識するアミノ酸配列としてX−X−Gln−Gly−Xというグルタミン及びグリシンが連続した配列が好ましい。例えば、本発明のポリペプチドにおいて、3Cプロテアーゼ又は3CDプロテアーゼでVP2とVP4の結合部位が基質特異的に切断された結果、VP2のN末端はグリシンが、VP4のC末端はグルタミンとなる。かかるプロテアーゼが認識するアミノ酸配列は、野生型のアミノ酸配列と比較したときに置換、挿入、欠失、又は付加のいずれの変異があってもよい。
したがって、好ましい態様において、本発明は、エンテロウイルス、例えばA〜D群エンテロウイルス、好ましくはA群エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドであって、当該VP2とVP4の結合部位にプロテアーゼが認識するアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチドを提供する。
より好ましい態様において、本発明は、エンテロウイルス、例えばA〜D群エンテロウイルス、好ましくはA群エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドであって、当該VP2とVP4の結合部位に3Cプロテアーゼ又は3CDプロテアーゼが認識するアミノ酸配列を含むことを特徴とするポリペプチドを提供する。
より好ましい態様において、本発明は、エンテロウイルス、例えばA〜D群エンテロウイルス、好ましくはA群エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドであって、当該VP2とVP4とがグルタミン及びグリシンが連続した配列を介して連結していることを特徴とするポリペプチドを提供する。
別の好ましい態様において、本発明は、エンテロウイルス、例えばA〜D群エンテロウイルス、好ましくはA群エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドであって、当該VP2のN末端にグリシンを、当該VP4のC末端にグルタミンを含むことを特徴とするポリペプチドを提供する。
さらに本発明者らは、天然のエンテロウイルスには完全粒子形状と不完全粒子形状のウイルスが混在していることを鑑み、エンテロウイルスから完全粒子形状のウイルスを抽出することで、不完全粒子形状のウイルスよりも高い免疫原性を有する抗原を設計しうることを見出した。したがって、さらなる態様において、本発明は、エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドであって、エンテロウイルスVP0を実質的に含まないことを特徴とするポリペプチドを提供する。VP0は、約36kDaのポリペプチドであり、約28kDaのVP2と約8kDaのVP4を含む。
本発明において、用語「実質的に含まない」とは、定量的に測定した場合にその含有量が主成分と比較して30%以下、20%以下、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、最も好ましくは1%以下であることを意味する。ここでの「主成分」は単に量的に主たる成分を意味し、性質的に主であることを意図するものではない。定量的測定に利用可能な手段は当業者が通常選択可能ないずれかの方法であってよく、含有量はその測定方法が提供する通常の定量単位を用いて把握される。例えば、SDS−PAGE法を用いて検出したVP0のバンドの強度が、VP2のバンドの強度と比較して、30%以下、20%以下、10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、最も好ましくは1%以下である場合に、VP0を「実質的に含まない」ものと理解される。SDS−PAGE法はゲルに添加したタンパク質混合物を電気泳動によって分子量に従って分離し、染色及び脱色後にバンド強度を分析するものであり、使用するゲル、試薬、メンブレン、スタンダード及び装置などは当業者であれば適宜選択できる。
好ましい態様において、本発明は、エンテロウイルス、例えばA〜D群エンテロウイルス、好ましくはA群エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドであって、エンテロウイルスVP0を実質的に含まないことを特徴とするポリペプチドを提供する。
本発明のポリペプチドは、当業者が通常利用可能なペプチド、ポリペプチド及びタンパク質製造方法のいずれかを用いて製造することができる。かかる方法は、これらに限定されるものではないが、化学合成、ウイルス不活化及び細胞発現系を含む。具体的な製造方法やそこで使用される試薬、条件及び装置等は、当業者であれば、容易に選択することができる。例えば市販のタンパク質発現キットを、当該キットに添付の説明書に従って、利用することができる。
好ましい本発明のポリペプチドの製造方法は、ウイルス不活化又は細胞発現系を用いた方法である。エンテロウイルスを増殖しうる細胞として、Vero細胞、RD細胞(Rhabdomysarcoma細胞)、RD−A細胞、RD−18S細胞などが挙げられる。ウイルス不活化はワクチンにおいて通常使用されるホルマリン処理等のあらゆる方法によって行うことができる。一方でA群エンテロウイルスは、細胞を用いたウイルス培養時の増殖において課題があるため、量及びコストの観点より、細胞発現系によるVLPの作製がより好ましい。
細胞発現系を用いた方法としては、利用可能な発現ベクター及び細胞には特に制限はないが、例えば、市販のベクター及び細胞を、当該製品に添付の説明書に従って、利用することができる。かかるベクターには、これらに限定されないが、例えば、HaloTagベクター、pHEK293ベクター、BacPAKベクター、pRI101DNAベクター、バキュロウイルスベクター、pcDNAベクター、pCHO1.0ベクター等が含まれ、使用する細胞に応じて適宜選択される。利用可能な細胞としては、これらに限定されないが、CHO細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、Vero細胞、MDCK細胞、大腸菌細胞、カイコ細胞、タバコ葉細胞等が含まれる。当該細胞発現系によって作製されるポリペプチドとして、例えばVLPが挙げられる。
本発明のポリペプチドは、ヒトに投与することが意図されていることから、哺乳類細胞を用いた発現系が好ましい。他の細胞、例えば大腸菌、植物及び昆虫細胞を用いた発現系でも本発明のポリペプチドを製造することは可能であるが、翻訳後修飾の観点から、哺乳類細胞を用いることが好ましい。本発明のポリペプチドを製造するのに好適な哺乳類細胞としては、例えば、CHO細胞が挙げられる。当該細胞を用いた発現系としては、当業者に利用可能なあらゆる手段であってよく、これらに限定されないが、例えば、プラスミドのトランスフェクションによる一過性発現系でもよく、安定的に目的のポリペプチドを発現する宿主細胞(以下、安定発現細胞)を構築してもよい。
一例として、本発明のポリペプチドを製造するためにウイルス不活化方法を用いる場合、次の工程に従って製造できる:
・細胞培養にてエンテロウイルスを増殖させる工程
・ウイルス液をろ過処理する工程
・処理後ウイルス液をショ糖密度勾配遠心法にて完全粒子に該当するウイルス画分を取得する工程
・当該ウイルス画分を不活化することで、目的のポリペプチドを取得する工程
を含む方法を提供する。
一例として、本発明のポリペプチドを製造するために細胞発現系を用いる場合、次の工程に従って製造できる:
・エンテロウイルスからRNAを抽出するか、又は人工合成によりRNAをデザインする工程
・RT−PCRにてRNAよりDNA断片を合成及び増幅し、当該DNA断片を発現用プラスミドにライゲーションする工程
・得られたプラスミドを細胞にトランスフェクションする工程
・トランスフェクションした細胞を増殖させる工程、又は安定発現細胞を選抜及び増殖する工程
・増殖した細胞から本発明のポリペプチドを回収する工程。
上記製造方法のいずれの工程においても、当業者であれば、試薬、条件、装置等について、容易に選択可能である。また、各工程において、意図した結果が得られているかを確認するための工程を適宜挿入することができる。かかる確認工程としては、例えば、抽出したRNAの配列を適当なシークエンス法、例えばサイクルシークエンス法やパイロシークエンス法等で確認することや、得られたポリペプチドをウェスタンブロット法(WB)等によって確認することが含まれる。
VP0をプロテアーゼによって開裂させてVP2とVP4とするために、プロテアーゼが認識するアミノ酸配列をコードする塩基配列となるように変異を導入することができる。変異を導入するために元の塩基配列を置換、挿入、欠失、又は付加してもよいが、これらに限定されない。エンテロウイルスからRNAを抽出した後、RT−PCRにてRNAよりDNA断片を合成及び増幅させ、当該DNA断片を発現用プラスミドにライゲーションする工程において、変異導入は、ライゲーション時に行ってもよいし、ライゲーションの前又は後に行ってもよい。挿入又は置換されるプロテアーゼが認識するアミノ酸配列をコードする塩基配列は、コドン表を用いて容易に決定することができる。例えば、3Cプロテアーゼ又は3CDプロテアーゼを用いる場合には、当該プロテアーゼが認識するGln−Glyをコードする塩基配列、例えばCAAGGUが用いられる。変異導入の具体的方法は、当業者に利用可能なあらゆる手段であってよく、これらに限定されないが、例えば、インバースPCR法、相補的プライマー法等を含む。例えば、市販の変異導入キットを当該キットに添付の説明書に従って使用することができる。
したがって、ある態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを製造する方法であって、
・エンテロウイルスからRNAを抽出する工程
・RT−PCRにてRNAよりDNA断片を合成及び増幅し、当該DNA断片を発現用プラスミドにライゲーションする工程
・ライゲーションした発現用プラスミドに、プロテアーゼが認識するアミノ酸配列をコードする塩基配列を変異導入する工程
・得られたプラスミドを細胞にトランスフェクションする工程
・トランスフェクションされた細胞を増殖させる工程、又は安定発現細胞を選抜及び増殖する工程
・増殖した細胞から本発明のポリペプチドを回収する工程
を含む方法を提供する。
また、別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを製造する方法であって、
・エンテロウイルスからRNAを抽出する工程
・抽出したRNAに、プロテアーゼが認識するアミノ酸配列をコードする塩基配列を変異導入する工程
・RT−PCRにてRNAよりDNA断片を合成及び増幅し、当該DNA断片を発現用プラスミドにライゲーションする工程
・得られたプラスミドを細胞にトランスフェクションする工程
・トランスフェクションされた細胞を増殖させる工程、又は安定発現細胞を選抜及び増殖する工程
・増殖した細胞から本発明のポリペプチドを回収する工程
を含む方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを製造する方法であって、
・エンテロウイルス由来のVP1〜4をコードする塩基配列を含むRNAであって、VP4をコードする塩基配列とVP2をコードする塩基配列との間に、プロテアーゼが認識するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むRNAを合成する工程
・RT−PCRにてRNAよりDNA断片を合成及び増幅し、当該DNA断片を発現用プラスミドにライゲーションする工程
・得られたプラスミドを細胞にトランスフェクションする工程
・トランスフェクションされた細胞を増殖させる工程、又は安定発現細胞を選抜及び増殖する工程
・増殖した発現細胞から本発明のポリペプチドを回収する工程
を含む方法を提供する。
このようにして製造された本発明のポリペプチドは、リン酸化やグリコシル化等の修飾を受けうる。かかる修飾を受けたポリペプチドもなお、本発明のポリペプチドに含まれる。修飾には、例えば、発現細胞の翻訳後修飾が含まれる。
また、本発明のポリペプチドは、様々な相互作用によって、いずれかの三次又は四次構造をとりうる。例えば、本発明のポリペプチド内のイオン結合、水素結合、ジスルフィド結合等によってVP1〜4の各サブユニットの折り畳みが生じて三次構造を形成し、次いでVP1〜4の各サブユニットがアセンブルして、四次構造を形成しうる。かかる高次構造は、一般的に、天然のウイルス粒子に構造上近似しているほど、高い免疫原性を示す。本発明においては、更に完全粒子形状に構造上近似しているほど、高い免疫原性を示す。したがって、好ましい態様において本発明のポリペプチドは、完全粒子形状のVLP又は不活化ウイルスである。
さらに、本発明は、本発明のポリペプチドを製造するための発現カセットを提供する。発現カセットは、目的遺伝子と当該目的遺伝子の転写を開始するために操作可能に結合したプロモーターの組み合わせであり、ベクターに導入して使用する。本発明において、エンテロウイルス、例えばA〜D群エンテロウイルス、好ましくはA群エンテロウイルス由来のVP1〜4、プロテアーゼ及び当該プロテアーゼが認識するアミノ酸配列をコードする核酸及び当該核酸の転写を開始するプロモーターを含む発現カセットもまた、意図される。
本発明者らは、本発明のポリペプチドがエンテロウイルスに対する高い免疫原性を有することを見出した。したがって、本発明は、エンテロウイルス、例えばA〜D群エンテロウイルス、好ましくはA群エンテロウイルス、より好ましくはEV71、コクサッキーウイルスA6、コクサッキーウイルスA10又はコクサッキーウイルスA16、さらに好ましくはEV71B型、例えばEV71B5型に対するワクチンであって、本発明のポリペプチドを抗原として含むことを特徴とする、ワクチンを提供する。
本発明において、用語「ワクチン」は、特定の病原体、例えばウイルス、細菌等に対する免疫力を高めることができる抗原を含む医薬製剤を意味する。予防ワクチンと治療ワクチンのいずれであるかを問わないが、本発明においては、とりわけ予防ワクチンが意図される。予防ワクチンは、いまだ罹患していない対象にワクチンを投与して、特定の病原体に対する免疫応答を体内で誘発させて、病原体に対する免疫力を高めることによって、その病原体への感染や重症化を予防するための医薬製剤である。ワクチンの投与経路は、これらに限定されないが、例えば、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、経鼻投与、経皮投与、経口投与などがありうる。
本発明において、疾患は、エンテロウイルス関連疾患、例えばエンテロウイルスA〜D群関連疾患、典型的にはA群エンテロウイルス関連疾患を指し、具体的には、例えば手足口病、ヘルパンギーナ及び無菌性髄膜炎、とりわけ手足口病及びヘルパンギーナである。
本発明のワクチンは、抗原の他に、ワクチンで通常使用される添加物を含んでいてよい。かかる添加物には、担体、防腐剤及びアジュバント等が含まれる。例えば、担体には、水又は生理食塩水が含まれる。例えば、防腐剤には、フェノール、塩化ベンゼトニウム、2−フェノキシエタノール、チメロサール等が含まれる。例えば、アジュバントには、アルミニウム塩、リン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸カルシウム、Toll様レセプター(TLR)リガンド分子、dsRNA、IL−12等が含まれる。これらの添加物は、当業者であれば、投与経路等の様々な要因を考慮して、適宜選択可能である。
本発明のワクチンの対象は、エンテロウイルスに感染しうる動物、例えば哺乳類、例えばヒト、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ等が含まれる。典型的な対象は、ヒトであり、とりわけエンテロウイルスに感染しやすい5歳未満のヒトであるが、これに限定されない。
本発明のポリペプチドは、エンテロウイルスに対する高い免疫原性を有するのみならず、動物試験において高い感染予防効果が示される。本発明のポリペプチドの免疫原性を確認するために、本発明者らは、抗原たん白質としてVP1〜4を含むポリペプチドを製造し、動物への免疫を行い、中和抗体価を測定した。また、比較対象として抗原たん白質としてVP0、1及び3を含むポリペプチドを製造し、同様に中和抗体価を測定した。さらに、マウスチャレンジ試験を行い、エンテロウイルスに対する感染予防効果を確認した。
詳細な手法及び結果は実施例に譲るが、本発明のポリペプチド、すなわちVP1〜4を含むポリペプチドは、VP0、1及び3を含むポリペプチドと比較して、高い中和抗体誘導能を有する。したがって、本発明のポリペプチドは、エンテロウイルスに対する高い免疫原性を有し、エンテロウイルスに対するワクチンの抗原として有用である。
エンテロウイルスの遺伝子構造を示す。 不活化ワクチンのショ糖密度勾配遠心(10〜40%)画分のSDS−PAGE及びWBの結果を示す。 不活化ワクチンの中和抗体価を示す。 不活化ワクチンのチャレンジ試験マウス生存率を示す。 EV71のVP1〜4、2A自己開裂配列、3CDプロテアーゼ及びCMVプロモーターを含む、EV71のVLP発現カセットを示す。 精製済みVLPのSDS−PAGE及びWBの結果を示す。 CHO細胞発現系を用いて製造したEV71のVP1〜4を含むVLPのTEMイメージを示す。 EV71のVP1〜4を含むVLP及びEV71のVP0、1及び3を含む不完全粒子の中和抗体価を示す。
(実施例1)EV71の不活化ウイルスの作製及び評価
1.EV71の完全粒子形状及び不完全粒子形状の不活化ウイルスの作製
RD−A細胞を用いてEV71を培養した(セルスタック、10チャンバー、Corning社)。培養液中の細胞を破砕して、ウイルス液を取得した。ウイルス液を遠心分離し、濾過(0.45μm→0.22μm)して細胞残渣を除去した。濾液をGE Healthcare社のAKTA flux s(分子量カットオフ値500kDa)を用いて、限外濾過濃縮した。Hitachi社の超遠心分離機CP80wxを用いてウイルス粒子のペレットを作製した。ペレットをPBS中に一晩懸濁させて再浮遊させた。次いで、懸濁液を超遠心分離機CP80wxによるショ糖密度勾配遠心法(10〜40%)を用いて画分を得た。SDS−PAGE及びWBによって、完全粒子及び不完全粒子画分を確認した。結果を図2に示す。完全粒子画分は35%前後(約1.15g/mL)の、不完全粒子画分は25%前後(約1.11g/mL)のショ糖密度勾配に収束した。完全粒子及び不完全粒子画分をMerck Millipore社のAmicon Ultraを用いて濃縮した。ホルマリンを用いてウイルスの不活化を行い、不活化したウイルス液をRD−A細胞に感染させ、CPEの有無を測定することで不活化の確認を行った。
2.EV71の完全粒子及び不完全粒子画分の不活化ウイルスの評価
2−1. 免疫原性の評価
EV71の完全粒子又は不完全粒子画分を含む不活化ウイルスでBALB/cマウスを免疫し、血清を採取して中和抗体価を測定した。具体的には、4週齢のBALB/cマウスに完全粒子画分を含む不活化ウイルス又は不完全粒子画分を含む不活化ウイルスを0.1μg注射してそれぞれ免疫し、6週齢及び8週齢でそれぞれ同量追加免疫した。10週齢で全採血を行い、約0.8mLの血清を得た。マウス血清を2倍段階希釈して1/2〜1/4096の希釈系列を作製し、各希釈系列に5×10PFU/mLに調製したEV71ウイルス液を添加した後、37℃、5%COで4時間反応させてウイルスを中和した。マウス血清を含まないものをネガティブコントロールとした。前日に播種しておいたRD−A細胞(6ウェルプレート)に中和反応液を添加し、37℃で、1時間、15分おきにプレートを振盪して、ウイルスを細胞に感染させた。ウイルス液を吸引除去した後、メチルセルロースを添加して重層した。37℃、5%COで5日間培養し、メチルセルロースを吸引除去した後、10倍希釈したホルムアルデヒド液で細胞を固定した。クリスタルバイオレットで細胞を染色して、プラーク数をカウントした。ネガティブコントロールのプラーク数を100%として、中和反応液を添加したウェルのプラーク数が20%以下となった最大希釈率を抗体価として算出した。結果を図3に示す。図3において、完全粒子画分の不活化ウイルスをD−antigen、不完全粒子画分の不活化ウイルスをC−antigenと示す。図3より、完全粒子画分の不活化ウイルスを抗原として用いることで、不完全粒子画分の不活化ウイルスよりも高い中和抗体誘導能を有することがわかった。
2−2. チャレンジ試験マウス生存率の評価
EV71の完全粒子形状を含む不活化ウイルス及び不完全粒子形状を含む不活化ウイルスでhSCARB2発現Tg−マウスを免疫した後、EV71を接種し、マウスの生存率を測定した。上記hSCARB2発現Tg−マウスは、Ken Fujii, et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2013 Sep 3;110(36):14753−8に記載の手法で取得した。4週齢のhSCARB2発現Tg−マウスに完全粒子形状を含む不活化ウイルス及び不完全粒子形状を含む不活化ウイルスを0.1μg注射してそれぞれ免疫し、6週齢及び8週齢でそれぞれ同量追加免疫した。10週齢で10 CCID50 のウイルスをマウス腹腔内に接種した。腹腔内接種から2週間後のマウスの生存率を図4に示す。図4において、完全粒子画分の不活化ウイルスをD−antigen、不完全粒子画分の不活化ウイルスをC−antigenとした。図4より、完全粒子画分の不活化ウイルスを抗原として用いることで、不完全粒子画分の不活化ウイルスよりも高い生存率を示すことがわかった。
(比較例1)EV71のVLPの作製及び評価(変異なし)
1.細胞発現系によるEV71のVLPの作製と確認
Roche社のHigh Pure Viral RNA Kitを添付の説明書に従って、EV71からRNAを抽出した。得られたRNAのP1領域及びプロテアーゼ領域を、TaKaRa社のPrimeScript II High Fidelity RT−PCR Kitを添付の説明書に従って、RT−PCRによって増幅した。得られた増幅DNA断片を発現用プラスミドpcDNA3.4にライゲーションした。TaKaRa社のE. coli JM109 Competent Cellsに、添付の説明書に従って、作製したプラスミドをトランスフォーメーションした後、細胞を培地に播種して増殖させた。得られた大腸菌細胞から、Invitrogen社のPlasmid DNA Midiprep kitを添付の説明書に従って、VLP発現用プラスミドを抽出した。得られたプラスミド中のEV71のVLP発現カセットを図5に示す。VLP発現カセットには、EV71のP1、2A自己開裂配列、3CDプロテアーゼ及びCMVプロモーターが含まれる。
Thermo社のExpiCHO Expression Systemを使用して、VLPを作製した。具体的には、ExpiCHO−S細胞をExpiCHO Expression Mediumで所定の細胞密度に達するまで培養した。培養したExpiCHO−S細胞にOptiPRO SFM Complexation Mediumで希釈したExpiFectamine CHO Reagent及びVLP発現用プラスミドを加えて、トランスフェクションした。トランスフェクションした細胞をExpiCHO Expression Mediumで培養し、ExpiCHO Feed及びExpiFectamine CHO Enhancerを添加し、さらに培養を続けた。培養期間中、細胞生存率を確認し、トランスフェクションから8日後に、培養を停止し、回収した。得られた培養液を遠心分離して細胞と上清を分離し、上清を回収して、フィルター濾過した(0.22μm)。得られた上清を、GE Healthcare社のAKTA flux sを分子量カットオフ値500kDaで用いて、限外濾過濃縮した。Hitachi社の超遠心分離機CP80wxを用いてVLPのペレットを作製した。
VLPのペレットをPBS中に一晩懸濁させて再浮遊させた。さらに、懸濁液を超遠心分離機CP80wxによるショ糖密度勾配遠心(10〜40%)にかけて分画を行い、各画分を、SDS−PAGE及びWBにかけて、VLP画分を確認した。結果を図6のLane2と4に示す。これより、当該VLP画分には、開裂前のVP0を多く含むことがわかった。
2.細胞発現系によるEV71のVLPの免疫原性の評価
作製したVLPを用いて、実施例1の2−1.と同様の手法にて中和抗体価を測定した。結果を図8のEV71 VLP(wild type)に示す。図3と比較すると、作製したVLPは不完全粒子画分と同等程度の中和抗体価を示し、完全形状粒子画分よりも低い中和抗体価を示すことがわかった。
(実施例2)EV71のVLPの作製及び評価(変異あり)
1.細胞発現系によるEV71のVLPの作製と確認
インバースPCR法によって、プラスミドにおいて、P1(viral capsid)region内のVP4−VP2間にGln−Gly変異を挿入した。具体的には、EV71の遺伝子配列情報を元に、当該箇所に変異を挿入するためのプライマーを設計した。TaKaRa BIO社のPrimeScript II High Fidelity RT−PCR Kitを使用して、添付の説明書に従って逆転写反応及びPCR反応を行った。PCR反応は98℃(10sec)→60℃(15sec)→68℃(7.5min)を30サイクル繰り返した。変異未導入のプラスミドをDpnIを用いて分解した後、TaKaRa BIO Clontech社のIn−Fusion HD Cloning Kitを使用して、添付の説明書に従ってPCR産物を処理した(50℃、15min)。その後、大腸菌へのトランスフォーメーションを行った。上記以外は比較例1の1.と同様の手法にて、VLPを作製した。
作製したVLP画分をMerck Millipore社のAmicon Ultraを用いて濃縮した。透過電子顕微鏡でVLPの粒子構造を確認した(図7)。また、比較例1の1.と同様の手法で、SDS−PAGE及びWBによる確認を行った。結果を図6のLane1と3に示す。図6より、Gln−Gly変異を挿入することでVP0からVP2とVP4への開裂が促進されることを見出した。
2.細胞発現系によるEV71のVLPの免疫原性の評価
作製したVLPを用いて、実施例1の2−1.と同様の手法にて中和抗体価を測定した。結果を図8のEV71 VLP(VP0 切断型)に示す。これより、変異を導入することで高い中和抗体価が誘導されることを見出した。



Claims (17)

  1. エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドであって、当該VP2とVP4の結合部位にプロテアーゼが認識するアミノ酸配列を含むポリペプチド。
  2. 前記プロテアーゼが3C又は3CDプロテアーゼである、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 前記プロテアーゼが認識するアミノ酸配列が、グルタミン及びグリシンが連続した配列である、請求項2に記載のポリペプチド。
  4. エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含むポリペプチドであって、VP2のN末端にグリシン及びVP4のC末端にグルタミンを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のポリペプチド。
  5. ウイルス様粒子である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプチド。
  6. エンテロウイルス由来のVP1、VP2、VP3及びVP4を含み、エンテロウイルスVP0を実質的に含まない、ポリペプチド。
  7. 不活化全粒子である、請求項6に記載のポリペプチド。
  8. エンテロウイルスがA〜D群のいずれかのエンテロウイルスである、請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチド。
  9. エンテロウイルスがA群エンテロウイルスである、請求項8に記載のポリペプチド。
  10. A群エンテロウイルスが、エンテロウイルス71(EV71)又はコクサッキーウイルスA6又はコクサッキーウイルスA10又はコクサッキーウイルスA16である、請求項9に記載のポリペプチド。
  11. EV71が、エンテロウイルスB型である、請求項10に記載のポリペプチド。
  12. EV71B型が、EV71B5型である、請求項11に記載のポリペプチド。
  13. エンテロウイルスに対するワクチンであって、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチドを抗原として含むワクチン。
  14. A群エンテロウイルスに対するワクチンである、請求項13に記載のワクチン。
  15. EV71に対するワクチンである、請求項13に記載のワクチン。
  16. EV71B型に対するワクチンである、請求項13に記載のワクチン。
  17. EV71B5型に対するワクチンである、請求項13に記載のワクチン。

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