JP2021050187A - 高分子ゲル層を備える貼付剤、及びその製造方法 - Google Patents

高分子ゲル層を備える貼付剤、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】濡れている皮膚でも貼付可能で皮膚を傷つけにくい貼付剤、及びその製造方法を提供する。【課題を解決するための手段】支持体と高分子ゲル層を備え、高分子ゲル層はイソシアネート系架橋剤でアクリル系共重合体が架橋された樹脂組成物とノニオン界面活性剤および水溶性または親水性の保湿剤を含む液状組成物を含有して成り、高分子ゲル層において樹脂組成物の含有量が25〜75質量%であり液状組成物の含有量が25〜75質量%であり、アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、及び飽和脂肪酸ビニルエステルから選ばれたモノマー由来の第1構成単位と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドから選ばれたモノマー由来の第2構成単位と、を複数含んで構成された貼付剤、及びその製造方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、支持体と高分子ゲル層を備える貼付剤、及びその製造方法に関する。
高分子ゲルは、高分子化合物が架橋され、形成される三次元的な網目構造の微細な隙間に液状組成物が溜められたゲル状物である。例えば特許文献1では、ポリアクリル酸塩が水酸化アルミナマグネシウムにより架橋され形成された網目構造を有する樹脂組成物と、その網目構造の隙間に溜められた水溶液と、を含有し形成された高分子ゲルのみから成る貼付剤が記載されている。この貼付剤(高分子ゲル)は、保形性や皮膚への粘着性に優れ、化粧用パック剤として用い得る旨、特許文献1で説明されている。
特開2005−23040号公報 特開2012−62266号公報 特開2014−193967号公報 特開2017−176203号公報
しかし、支持体を備えず高分子ゲルのみからなる貼付剤は、貼付されると皮膚上に高分子ゲルが露出し、衣服や手指に付着して皮膚から剥がれるおそれがある。それにも関わらず、特許文献1では、支持体を備える形態の貼付剤が開示されてない。その理由は、次のように考えられる。高分子ゲルを大別すると、高分子化合物が物理架橋(水素結合、イオン結合、又は配位結合などによる架橋)され形成された網目構造を有する物理ゲルと、高分子化合物が化学架橋(化学反応により共有結合された架橋)され形成された網目構造を有する化学ゲルが挙げられる。特許文献1に記載された貼付剤での高分子ゲルは、水酸化アルミナマグネシウム由来の金属イオンと、ポリアクリル酸塩でアクリル酸(acrylic acid:以下「AA」という。)由来の構成単位が有するカルボキシ基と、のイオン結合により物理架橋された網目構造を有する物理ゲルである。物理ゲルには、支持体への投錨効果に劣り支持体から剥がれやすい問題がある。このため、支持体と高分子ゲル(物理ゲル)を備える形態の貼付剤は、特許文献1に記載も示唆もされていないものと推察される。
一方、化学ゲルは、支持体への投錨効果を発揮しやすく、支持体から剥がれにくい。化学ゲルを構成し得る樹脂組成物として例えば、AAとアクリル酸アルキルエステルの共重合体を、分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物(以下「イソシアネート系架橋剤」という。)により化学架橋させた樹脂組成物が挙げられる。この樹脂組成物は、共重合体でのAA由来の構成単位が有するカルボキシ基と、イソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基と、の架橋反応により共有結合された網目構造を有する。ただし、この樹脂組成物そのものは、濡れていない皮膚に対し強く粘着し過ぎて、剥がすときに皮膚が強く引っ張られ角質が剥がれる等して、皮膚を傷つけるおそれがある。この樹脂組成物そのものと比べ、この樹脂組成物と液状組成物を含有して成る高分子ゲル(化学ゲル)は、皮膚への粘着力がある程度弱く抑えられ皮膚を傷つけにくくなっているであろうと、当初、本願に係る発明者(以下「本発明者」という。)らは考えた。
そこで、本発明者らは、支持体と高分子ゲル(化学ゲル)層を備える貼付剤を開発し、この貼付剤を肌の美容用マスクなどに成形することを想起した。このための貼付剤は、皮膚を傷つけにくいものが望ましい。また、日常生活でヒトの肌は、水で濡れたり、化粧水などの基礎化粧品を塗布されて濡れたりする。従来、肌の美容用マスクは、化粧水などを顔面に塗布し皮膚内部に浸透させてから、皮膚表面を閉塞し保湿するように顔面に貼付されていた。従来の美容用マスクは、化粧水などが皮膚内部に十分に浸透しておらず皮膚表面が濡れている時点では、皮膚に付着せず貼付不可能であった。これは、マスクを構成する従来の貼付剤が、濡れていない皮膚または乾燥した被着体に対し粘着させる前提で設計されており、直に水に触れると粘着力を大幅に損ないやすいことに因る。従来、顔面に化粧水などをたっぷり塗布した場合、皮膚表面が濡れていない状態になるまで待ってからマスクを貼付していたため、待っている間に化粧水などの大半は皮膚内部に浸透することなく大気中へ蒸散しており、肌の潤いに寄与せず無駄になっていた。
上記した問題を鑑み本発明の課題は、支持体と高分子ゲル層を備え、濡れている皮膚でも貼付可能で、皮膚を傷つけにくい貼付剤、及びその製造方法を提供することにある。
上記した課題を解決するために、本発明に係る貼付剤は、支持体と高分子ゲル層を備える貼付剤であって、前記高分子ゲル層は、イソシアネート系架橋剤によりアクリル系共重合体が架橋されて成る樹脂組成物と、ノニオン界面活性剤および保湿剤を含んで成る液状組成物と、を含有して形成されており、前記高分子ゲル層における前記樹脂組成物の含有量が25質量%以上かつ75質量%以下であり、当該高分子ゲル層における前記液状組成物の含有量が25質量%以上かつ75質量%以下であり、前記保湿剤は、水溶性または親水性である1種以上の吸湿性を有する化合物であり、前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分子内にヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、及び飽和脂肪酸ビニルエステルからなる群より選ばれた1種以上のモノマー又はその付加重合物に由来する第1構成単位と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれた1種以上のモノマー又はその付加重合物に由来する第2構成単位と、をそれぞれ複数含んで構成された貼付剤である。
本発明に係る貼付剤での前記液状組成物において、前記ノニオン界面活性剤の前記保湿剤に対する質量比(当該ノニオン界面活性剤の質量/当該保湿剤の質量)が5.0以上かつ100以下であり得る。
本発明に係る貼付剤での前記液状組成物は、さらに、1種以上の生物活性物質を含んで成り得る。
本発明に係る貼付剤での前記液状組成物は、さらに、30℃で液状である油を含んで成り得る。
本発明に係る貼付剤では、JIS Z 0237:2009に準拠した剥離速度300mm/分でのSUS304板に対する180°引き剥がし粘着力が0.010N/20mm以上かつ2.0N/20mm以下であり得る。
本発明に係る貼付剤は、肌の美容またはスキンケアに用いられ得る。
本発明に係る貼付剤は、順に、前記支持体と、前記高分子ゲル層と、使用時に前記高分子ゲル層から剥離される剥離性シートと、を備え得る。
本発明に係る貼付剤の製造方法は、支持体と高分子ゲル層を備える貼付剤の製造方法であって、前記高分子ゲル層に含有される樹脂組成物の原料としてイソシアネート系架橋剤およびアクリル系共重合体を含む樹脂原料群、並びに、当該高分子ゲル層に含有される液状組成物の原料としてノニオン界面活性剤および保湿剤を含む液原料群を準備する工程と、
前記樹脂原料群を溶解または分散させるための液状媒質の存在下において、当該樹脂原料群と前記液原料群の合計質量に対して当該樹脂原料群の質量が占める質量比(当該樹脂原料群の質量/当該樹脂原料群と当該液原料群の合計質量)が0.25以上かつ0.75以下となるように、前記原料を混合させて混合組成物を得る工程と、前記混合組成物を加熱乾燥させて前記高分子ゲル層を形成させる工程と、を含み、前記保湿剤は、水溶性または親水性である1種以上の吸湿性を有する化合物であり、前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分子内にヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、及び飽和脂肪酸ビニルエステルからなる群より選ばれた1種以上のモノマー又はその付加重合物に由来する第1構成単位と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれた1種以上のモノマー又はその付加重合物に由来する第2構成単位と、をそれぞれ複数含んで構成された貼付剤の製造方法である。
本発明に係る貼付剤によれば、その製造時に、ノニオン界面活性剤の存在下において、アクリル系共重合体での第2構成単位が有するアルコール性ヒドロキシ基と、イソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基と、を化学架橋させて網目構造を有する樹脂組成物を形成させたため、この樹脂組成物と、ノニオン界面活性剤や水溶性または親水性の保湿剤を含む液状組成物と、を含有して成る高分子ゲル層を備える。本発明に係る貼付剤によれば、樹脂組成物が高分子ゲル層において25質量%以上を占め、かつ、高分子ゲル層に含有される液状組成物に前記保湿剤が含まれるため、ヒトの濡れている皮膚でも貼付可能である。また、樹脂組成物が25質量%以上を占める高分子ゲル層は、皮膚から剥がされるときに糊残りしにくいため、皮膚を傷つけにくい。本発明に係る貼付剤によれば、高分子ゲル層においてノニオン界面活性剤を含む液状組成物が25質量%以上を占めるから、高分子ゲル層は柔らかな感触を有し、粘着力が強すぎないように抑えられており剥がされるときに皮膚刺激を生じさせにくいため、この理由からも皮膚を傷つけにくい。
同様の理由により本発明に係る貼付剤の製造方法によれば、支持体と高分子ゲル層を備え、ヒトの濡れている皮膚でも貼付可能で、皮膚を傷つけにくい貼付剤を製造することができる。
本発明に係る貼付剤の第1実施形態での断面を示す模式図。 本発明に係る貼付剤の第2実施形態での断面を示す模式図。 本発明に係る貼付剤の第3実施形態での断面を示す模式図。 本発明に係る貼付剤のその他の実施形態を示し、(a)はその他の実施形態の第1例での断面を示す模式図、(b)はその他の実施形態での第2例の断面を示す模式図、(c)はその他の実施形態での第2例を高分子ゲル層側から見たときの外観を示す模式図。 本発明に係る貼付剤の製造方法において、その実施態様の一例を説明するフローチャート。
<貼付剤の第1実施形態>
本発明者らは、本発明を完成させる過程で当初、AAとアクリル酸アルキルエステルの共重合体をイソシアネート系架橋剤により化学架橋させた樹脂組成物と、液状組成物と、を含有する高分子ゲル(化学ゲル)を試作した。この化学ゲルは、濡れていない皮膚に貼付可能で柔らかいが、剥がすと糊残りし皮膚を傷つけやすく、濡れている皮膚に付着しにくく剥脱しやすい問題があった。この化学ゲルと比べ、皮膚の水分や皮脂になじみやすい水溶性保湿剤(ヒューメクタント)を更に含む化学ゲルも、同様の問題があった。ここで本発明者らは、イソシアネート基に対し、カルボキシ基(例えばAA)よりもアルコール性ヒドロキシ基(例えばアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル)の方が、優先的に架橋反応されやすいと考えた。また、ノニオン界面活性剤の存在下で、水溶性保湿剤は水相に分布しやすく、イソシアネート系架橋剤や共重合体が分布する油相から引き離されるから、水溶性保湿剤が架橋反応に巻き込まれにくくなり、油相で効率良く架橋反応が進みやすいと考えた。これらの考えに基づき、ノニオン界面活性剤の存在下で、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルの共重合体を、イソシアネート系架橋剤により化学架橋させ、水溶性保湿剤を含有する高分子ゲル(化学ゲル)を形成させた。この高分子ゲルは、凝集破壊されにくく糊残りしにくいため皮膚を傷つけにくくなっており、また濡れている皮膚でも付着しやすくなっていた。このように鋭意検討し、本発明に係る貼付剤の第1実施形態(以下「貼付剤1a」という。)を開発するに至った。
図1に示すように貼付剤1aは、支持体3と高分子ゲル層2aを備える。高分子ゲル層2aは、粘着性で三次元的な網目構造を有する樹脂組成物と、網目構造の微細な隙間に溜まった液状組成物と、を含有して成る高分子ゲル(化学ゲル)であり、例えば常温(5℃以上かつ35℃以下)で皮膚に軽く触れると皮膚に付着する。高分子ゲル層2aは、シート形状であり、貼付されるときに皮膚に当接する皮膚当接面6を有し、シート形状において皮膚当接面6の反対側にある面で投錨効果により支持体3に接着し支えられている。投錨効果とは、支持体3表面の微細なくぼみや空隙に樹脂組成物の一部が浸透し、高分子ゲル層2aが支持体3から剥がれにくくなる効果である。
樹脂組成物に関し上記した網目構造は、アクリル系共重合体がイソシアネート系架橋剤により化学架橋され形成された網目構造である。ここで樹脂組成物の原料として用いられるアクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルから選ばれた2種以上のモノマーが付加重合され形成された構造を主に有する共重合体である。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれた1種以上の化合物を意味する。化学架橋を可能とし比較的に柔らかな樹脂組成物を形成させるために、アクリル系共重合体は、化学架橋に実質的に関与せずソフトセグメントのように機能し得る構成単位(以下「第1構成単位」という。)と、化学架橋に関与しハードセグメントのように機能し得る構成単位(以下「第2構成単位」という。)を、それぞれ複数含んで構成される。「実質的に」とは、例外が存在しても、内容や本質において本発明の目的や奏する作用効果の妨げにならない程度の例外に過ぎなければ許容されることを意味する。
アクリル系共重合体の第1構成単位は、化学架橋に実質的に関与せずソフトセグメントのように機能させるために、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分子内にヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、及び飽和脂肪酸ビニルエステルからなる群(以下「第1モノマー群」という。)より選ばれた1種以上のモノマーに由来するか、又はこの1種以上のモノマーの付加重合物に由来する。第1モノマー群に該当するモノマーは、分子内に(メタ)アクリロイル基またはビニル基を有するため付加重合し得るが、分子内にアミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、及びその他にイソシアネート基と反応しやすい基やイソシアネート基を有しないため、実質的に化学架橋に関与しない化合物である。なお、アミノ基は「‐NH」で表わされる。(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基、及びメタクリロイル基からなる群より選ばれた1種以上の置換基である。ヒドロキシ基は、芳香族炭化水素に共有結合されたフェノール性ヒドロキシ基と、芳香族炭化水素に該当しない炭化水素に共有結合されたアルコール性ヒドロキシ基に大別される。アルコール性ヒドロキシ基は、結合した炭素原子に結合された炭化水素基の数に応じ、第1級ヒドロキシ基から第3級ヒドロキシ基のいずれかに分類される。
第1モノマー群に該当する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、その分子内に有するアルキル基が直鎖状でも分岐鎖状でも良い。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、又は(メタ)アクリル酸エチル等の化合物が例示される。分子内にヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メトキシアルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸エトキシアルキルエステル等の化合物が例示される。第1モノマー群に該当する飽和脂肪酸ビニルエステルは、分子内に有するアルキル基が直鎖状でも分岐鎖状でも良い。飽和脂肪酸ビニルエステルとして例えば、ラウリル酸ビニル、又はプロピオン酸ビニル等の化合物が挙げられる。第1モノマー群として飽和脂肪酸ビニルエステルを用いる場合に、付加重合の程度を制御しやすい観点から、更に第1モノマー群として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は分子内にヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルコキシエステルを併用するのが好ましい。同様の観点から、飽和脂肪酸ビニルエステルとして、酢酸ビニル(Vinyl Acetate:以下「VAc」という。)を用いるのが更に好ましい。
上記した飽和脂肪酸ビニルエステルよりも重合反応を制御しやすく、アクリル系共重合体において第1構成単位が結晶化するのを避けソフトセグメントのように機能させやすい観点から、第1モノマー群のモノマーとして好ましくは、構造中にエーテル結合があってもよいアルキル基を分子内に有し、前記アルキル基の炭素数が3以上かつ12以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれた1種以上のモノマーである。例えば(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル等の化合物が挙げられる。同様の観点から、第1モノマー群として用いるモノマーは、更に好ましくは分子内に直鎖状または分岐鎖状で炭素数が4以上かつ10以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選ばれた1種以上の化合物であり、前記アルキル基が分岐鎖状であるのが更により好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の化合物が挙げられる。
第1構成単位が第1モノマー群から選ばれた1種以上のモノマーの付加重合物に由来する場合、この付加重合物は、第1モノマー群から選ばれた1種のモノマーが付加重合されたホモ重合体でも良いが、更に結晶化しにくい観点から、第1モノマー群から選ばれた2種以上のモノマーが付加重合された共重合体であるのが好ましい。例えば好ましくは、VAcと(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルの共重合体、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルと(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルの共重合体が挙げられる。
高分子ゲル層2aを柔らかくしやすい観点から、アクリル系共重合体は、ソフトセグメントのように機能し得る第1構成単位を主な構成単位とするものが良い。このためには、「アクリル系共重合体の質量」に対し「その原料として用いた第1モノマー群の質量」が占める質量比(第1モノマー群の質量/アクリル系共重合体の質量)が、好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.70以上、更により好ましくは0.90以上である。質量比の計算において第1モノマー群に該当するモノマーを2種以上使用した場合に、「第1モノマー群の質量」は該当する2種以上のモノマーの合計質量を意味し、このことは後述する他の質量比の計算でも同様である。液状組成物を多く溜め得る網目構造を形成させる観点では、前記質量比(第1モノマー群の質量/アクリル系共重合体の質量)は、好ましくは0.99以下、更に好ましくは0.97以下、更により好ましくは0.95以下である。高分子ゲル層2aにおいて、水蒸気透過性を高め皮膚を蒸れにくくし、含有される液状組成物に後述する保湿剤などを溶解または分散させやすくする観点では、第1モノマー群として用いる複数種のモノマーにVAc又はアクリル酸アルコキシエステル等の比較的に高い極性を有するモノマーを含め、「アクリル系共重合体の質量」に対し「その原料として用いた比較的に高い極性を有するモノマーの質量」が占める質量比(比較的に高い極性を有するモノマーの質量/アクリル系共重合体の質量)が、0.050以上かつ0.30以下となるようにするのが好ましい。
アクリル系共重合体の第2構成単位は、化学架橋に関与させハードセグメントのように機能させ得るために、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群(以下「第2モノマー群」という。)より選ばれた1種以上のモノマーに由来するか、又はこの1種以上のモノマーの付加重合物に由来する。第2モノマー群に該当するモノマーは、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するから付加重合し得るだけでなく、分子内にアルコール性ヒドロキシ基を有するため、アクリル系共重合体においてイソシアネート系架橋剤との架橋点としてハードセグメントのように機能し得る化合物である。第2モノマー群に該当するモノマーは、アルコール性ヒドロキシ基を除けば、アミノ基、カルボキシ基、及びその他にイソシアネート系架橋剤と実質的に架橋反応し得る基やイソシアネート基を分子内に有しない化合物である。例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸5−ヒドロキシヘキシル等の化合物が挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとして例えば、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等の化合物が挙げられる。
第2構成単位をハードセグメントのように機能させやすく、安定した品質の樹脂組成物を得やすい観点から、アクリル系共重合体での第2構成単位は、炭素数が2以上かつ4以下で直鎖状でも分岐鎖状でもよく構造中に第1級ヒドロキシ基を含むアルキル基を有する、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれた1種以上のモノマーに由来するか、又はこの1種以上のモノマーの付加重合物に由来するのが好ましい。このような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のエステル化合物が例示される。このようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとして、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の化合物が例示される。ヒドロキシエチルアクリルアミドは、皮膚刺激を生じさせにくい観点からも好ましいモノマーである。
第2構成単位が第2モノマー群から選ばれた1種以上のモノマーの付加重合物に由来する場合、この付加重合物は、2種以上の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルのランダム共重合体でも良く、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドのランダム共重合体でも良いが、樹脂組成物の品質が安定しやすい観点から、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルから選ばれた1種以上のモノマーのホモ重合体またはブロック共重合体が好ましい。(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのホモ重合体、又は(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルのブロック共重合体などが好ましく例示される。
「アクリル系共重合体の質量」に対し「その原料として用いた第2モノマー群に該当するモノマーの質量」が占める質量比(第2モノマー群の質量/アクリル系共重合体の質量)は、液状組成物を多く溜め得る網目構造を形成させる観点では好ましくは0.010以上、更に好ましくは0.030以上、更により好ましくは0.050以上であり、高分子ゲル層2aを柔らかい感触にしやすい観点では好ましくは0.20以下、更に好ましくは0.15以下、更により好ましくは0.10以下である。
アクリル系共重合体として例えば、第1モノマー群と第2モノマー群との、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体からなる群より選ばれた1種の共重合体、又は2種以上の共重合体の混合物が挙げられる。アクリル系共重合体は、製造容易な観点ではランダム共重合体が好ましく、柔らかで安定した品質の高分子ゲル層2aを得やすい観点ではブロック共重合体が好ましい。
アクリル系共重合体は、第1構成単位と第2構成単位と共に、本発明の目的に反しない程度の少量であれば、第1モノマー群や第2モノマー群に属さないその他のモノマー1種以上に由来する構成単位を含んで構成されても良い。高分子ゲル層2aにおいて後述する保湿剤などが樹脂組成物に共有結合されるのを避ける観点から、その他のモノマーは、分子内にエチレン性付加重合性基を有するが、分子内にアミノ基やカルボキシ基やイソシアネート基を有しないモノマーが好ましい。エチレン性付加重合性基は、その構造中に含む炭素原子間の二重結合により付加重合し得る基である。この二重結合は、他の飽和結合と共役しても良い。ただし、芳香環のように安定し付加重合しない基はエチレン性付加重合性基に該当しない。エチレン性付加重合基として例えば、アリル基、ビニル基、又は(メタ)アクリロイル基などの基が挙げられる。
上記したその他のモノマーとして例えば、脂肪族不飽和炭化水素、脂肪族不飽和アルコール、又はジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドは、その分子内に第3級アミン構造を有する。第3級アミン構造は、アンモニア分子が有する3つの水素原子の各々が炭化水素または芳香族原子団で置換された構造である。ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとして例えば、ジメチルアミノメチルアクリルアミド、又はジメチルアミノペンチルアクリルアミド等の化合物が挙げられる。この様に分子内に第3級アミン構造を有するモノマーを用いる場合、イソシアネート系架橋剤としてブロック化イソシアネートを用いれば、このモノマー由来の構成単位を架橋点として機能させ得る。後述する生物活性物質として分子内に第3級アミン構造を有する化合物を用いる場合、高分子ゲル層2aから皮膚へ生物活性物質の放出性を高める観点から、「アクリル系共重合体」に対し「その原料として用いたその他のモノマー」の質量比(その他のモノマーの質量/アクリル系共重合体の質量)は、好ましくは0.050以上かつ0.10以下である。高分子ゲル層2aが更に柔らかく糊残りしにくい観点から、アクリル系共重合体は、複数の第1構成単位と複数の第2構成単位から実質的に成る共重合体であるか、又は分子内にアミノ基とカルボキシ基とイソシアネート基を実質的に有しない共重合体であるのが更に好ましい。
樹脂組成物の原料であるアクリル系共重合体を化学架橋させるイソシアネート系架橋剤として例えば、分子内にイソシアネート基を2つ以上有する、脂肪族化合物、及び芳香族化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物が挙げられる。ここでの脂肪族化合物として例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下「HDI」という。)、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、ブチリデンジイソシアネート、又は1,3−シクロペンタンジイソシアネート等の化合物が挙げられる。ここでの芳香族化合物として例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(以下「TDI」という。)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」という。)、4,4'−トルイジンジイソシアネート、又は1,4−キシレンジイソシアネート等の化合物が挙げられる。2種以上のイソシアネート系架橋剤を併用する場合の好例として、TDIとMDIの組み合わせが挙げられる。
イソシアネート系架橋剤は、架橋反応の効率が良い観点から好ましくは、上記した脂肪族化合物または芳香族化合物が多価アルコール(例えばトリメチロールプロパン等)に付加されて成るアダクト体であり、入手容易な観点から更に好ましくは、HDI、TDI、及びMDIからなる群より選ばれたジイソシアネートが多価アルコールに付加されて成るアダクト体である。市販されているイソシアネート系架橋剤の好例として例えば、HDIに由来するアダクト体であるコロネートHLや、TDI又はMDIに由来するアダクト体であるコロネートLが挙げられる(共に、東ソー株式会社製)。
「樹脂組成物の質量」に対し「その原料として用いたイソシアネート系架橋剤の質量」が占める質量比(イソシアネート系架橋剤の質量/樹脂組成物の質量)は、凝集破壊されにくく液状組成物を溜めやすい網目構造を形成させる観点では好ましくは1.0×10−4以上、更に好ましくは1.0×10−3以上であり、高分子ゲル層2aを柔らかく保つ観点では好ましくは0.030以下、更に好ましくは0.020以下である。
高分子ゲル層2aは、樹脂組成物そのものと比べ更に液状組成物を含有するため、強すぎる粘着力が弱められている。仮に、高分子ゲル層での樹脂組成物の含有量が25質量%未満であると、樹脂組成物が足りないから、粘着力が不足し皮膚から剥脱しやすく、凝集力が不足し凝集破壊されやすいため、実用性に欠ける。高分子ゲル層2aにおける樹脂組成物の含有量は、皮膚から剥脱しにくい粘着力を有しつつ剥がすときに糊残りしにくく保形性を高める観点では25質量%以上、好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、より柔らかな感触にする観点では75質量%以下、好ましくは60質量%以下である。含有量とは、例えば高分子ゲル層2aに2種以上の樹脂組成物が含有される場合など、該当する化合物が2種以上ある場合には合計の含有量を意味する。
高分子ゲル層2aに含有される液状組成物は、皮膚に触れることが薬理学的に許容され、皮膚刺激を生じさせにくく、皮膚の表面付近の温度(例えば30℃)で液状の組成物である。このために液状組成物は、ノニオン界面活性剤を含んで成る。ノニオン界面活性剤は、非イオン界面活性剤ともいい、他種の界面活性剤(アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤)と比べ、分子内にアミノ基やカルボキシ基やヒドロキシ基を有しないか、又は有していても分子全体に対し占める割合が比較的に小さい。この理由により化学的に安定しているからノニオン界面活性剤は、皮膚刺激を生じさせにくいだけでなく、イソシアネート系架橋剤やアクリル系共重合体に共有結合されにくく架橋反応に巻き込まれにくい。このため、ノニオン界面活性剤の存在下で、イソシアネート系架橋剤とアクリル系共重合体の間の架橋反応は妨げられず、効率良く進みやすい。
ノニオン界面活性剤として例えば、脂肪酸アルキルエステル、ポリオキシエチレン(以下「POE」という。)アルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシド、及びポリオール脂肪酸エステルからなる群より選ばれた1種以上の化合物でも良いし、商品名に、Tween、Triton、Brij、又はPluronic等の登録商標を含む市販のノニオン界面活性剤から選ばれた1種以上の組成物でも良い。脂肪酸アルキルエステルは、高級脂肪酸とアルコールがエステル結合された構造を有するノニオン界面活性剤であり例えば、イソオクチルパルミテート、ミリスチン酸テトラデシル、又はミリスチン酸イソプロピル(Isopropyl Myristate:以下「IPM」という。)等の化合物が挙げられる。POEアルキルエーテルは、高級アルコールに酸化エチレンが付加され合成されたノニオン界面活性剤である。POEアルキルフェニルエーテルは、アルキルフェノールに酸化エチレンが付加され合成されたノニオン界面活性剤である。アルキルグリコシドは、糖と高級アルコールがグリコシド結合した構造を有するノニオン界面活性剤であり例えば、デシルグルコシド、又はラウリルグリコシド等の化合物が挙げられる。その他にノニオン界面活性剤として例えば、セバシン酸ジエチル等の化合物が挙げられる。
ノニオン界面活性剤は、樹脂組成物に共有結合されにくく、皮膚刺激を生じさせにくく、入手容易で安全性が高い観点から、好ましくはポリオール脂肪酸エステル、更に好ましくは脂肪酸ソルビタンエステル、更により好ましくはトリ脂肪酸ソルビタンエステルである。ポリオール脂肪酸エステルは例えば、グリセリン、ソルビトール、又はショ糖などの多価アルコール(ポリオール)と、脂肪酸と、がエステル結合された構造を有するノニオン界面活性剤であり、一般的に化粧品用界面活性剤や食品用乳化剤として用いられ安全性が高い。ポリオール脂肪酸エステルとして例えば、脂肪酸ソルビタンエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、又はショ糖脂肪酸エステル等の化合物が挙げられる。脂肪酸ソルビタンエステルとして例えば、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、又はモノラウリン酸ソルビタン等のエステルが挙げられる。トリ脂肪酸ソルビタンエステルとして例えば、トリオレイン酸ソルビタン、又はトリステアリン酸ソルビタン等のエステルが挙げられる。
高分子ゲル層2a内で液状組成物が油中水滴(W/O)エマルションか又はO/W/Oエマルションを形成している場合、エマルションの連続相である油相に樹脂組成物が分布しやすいのに対し、分散相である水相に後述する保湿剤などが分布しやすい。水相に分布する成分(保湿剤など)は、油相から引き離され、油相に分布する樹脂組成物に結合されにくい。このため、液状組成物が高分子ゲル層2aから皮膚へ放出される際、水相に分布する成分は、樹脂組成物に妨げられることなく皮膚へ放出されやすいと考えられる。液状組成物がW/Oエマルションか又はO/W/Oエマルションを形成しやすい観点から、液状組成物に含まれる1種以上のノニオン界面活性剤のHLB値の平均値は、好ましくは2.0以上かつ8.0以下、更に好ましくは3.0以上かつ6.0以下である。例えば、モノオレイン酸ソルビタンエステルのHLB値は4.3で、トリオレイン酸ソルビタンエステルのHLB値は2.0であり、このようにHLB値が異なる2種以上のノニオン界面活性剤の配合比を調整してHLB値の平均値を3.0以上かつ6.0以下に調整した状態で高分子ゲル層2aを形成させるのが、更に好ましい。
高分子ゲル層2aを柔らかい感触にし、後述する保湿剤などを溶解または分散させやすく、高分子ゲル層2aから液状組成物と共に保湿剤などが放出されやすい観点から、高分子ゲル層2aにおけるノニオン界面活性剤の含有量は、好ましくは20質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、更により好ましくは50質量%以上である。同様の観点から、高分子ゲル層2aにおいて「ノニオン界面活性剤の含有量」が「液状組成物の含有量」に対し占める質量比(ノニオン界面活性剤の含有量/液状組成物の含有量)は、好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.80以上である。高分子ゲル層2aに樹脂組成物や後述する保湿剤などを十分に含有させる余地を残す観点から、高分子ゲル層2aにおけるノニオン界面活性剤の含有量は、75質量%以下であり、好ましくは70質量%以下である。同様の観点から、前記質量比(ノニオン界面活性剤の含有量/液状組成物の含有量)は、好ましくは0.90以下、更に好ましくは0.85以下である。
濡れていない皮膚に限らず濡れている皮膚でも貼付剤1aを安定して貼付可能で、肌に潤いを与える観点から、高分子ゲル層2aに含有される液状組成物は、ノニオン界面活性剤と共に、水溶性または親水性である1種以上の吸湿性を有する化合物(以下「本保湿剤」という。)を含んで成る。吸湿性とは、物質が水分を吸収または吸着する性質である。本保湿剤は、皮膚内から不感蒸泄により蒸散または浸出した水分を吸収または吸着して皮膚表面や角質層で保持し、肌に潤いを与える保湿作用を有する。本保湿剤は、化粧品分野でヒューメクタントともいい、皮膚表面において水分の蒸散を抑える油性成分(オクルーシブ)や乳化作用を有する脂肪酸など(エモリエント)と区別されている。
本保湿剤は、膨潤しすぎて皮膚を圧迫するのを避ける観点から、25℃の水に1時間浸漬されたときの吸水率(吸水後の質量/吸水前の質量)が、好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.0以下である。このような本保湿剤として例えば、デキストラン、ゼラチン、水溶性カルボキシメチルセルロース、プルラン、グルコマンナン、水溶性グルコサミノグルカン、又は、ポリビニルピロリドンとVAcの共重合体(以下「PVP−VA」という。)等の高分子化合物が挙げられる。液状組成物に溶解させやすい観点から、水溶性グルコサミノグルカンではヒアルロン酸が好ましい。ポリアクリル酸ナトリウムでは、この吸水率が3.0よりも大きいから、肌から水分を奪って潤いを損なったり、過度に膨潤し皮膚を圧迫したりする問題がある。このため、この吸水率が3.0よりも大きい化合物を高分子ゲル層2aが実質的に含有しないのが好ましい。
吸湿性を有する高分子化合物は、親水性保湿剤であるとはいえるが、部分的に水に溶解または分散しきれない箇所が生じ得るため、水溶性とまではいえない場合がある。吸湿性を有する比較的に分子量が小さい化合物は、水溶性保湿剤ということができ、液状組成物に溶解または分散されやすく皮膚へ放出されやすい観点から好ましい。水溶性保湿剤として例えば、水溶性ポリエーテル、多価アルコール、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、グリコシルセラミド、シクリトール、及びこれらの塩からなる群より選ばれた1種以上の低分子化合物が挙げられる。水溶性ポリエーテルとして例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の重合体が挙げられる。多価アルコールとして例えば、ジグリセリン、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、カテキン、糖アルコール、又はシクリトール等の低分子化合物が挙げられる。単糖として例えば、グルコース、マンノース、又はガラクトース等が挙げられる。二糖として例えば、スクロース、ラクトース、又はマルトース等が挙げられる。オリゴ糖として例えば、ラフィノース、又はマルトトリオ−ス等が挙げられる。塩は、薬理学的に許容される塩であり例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などが挙げられ、高分子ゲル層2a内で析出しにくく液状組成物と共に皮膚に放出されやすい観点から好ましくは、カリウム塩、及びナトリウム塩からなる群より選ばれた1種以上の塩である。後述する生物活性物質などでも、塩について同様である。
水相に分布し高分子ゲル層2aから放出されやすく、貼付剤1aが貼付され保湿された皮膚で常在菌の増殖を抑える観点から、水溶性保湿剤としては、糖アルコール、シクリトール、及びこれらの塩からなる群より選ばれた1種以上の低分子化合物がより好ましく、この1種以上の化合物は分子内にアルコール性ヒドロキシ基を4つ以上有するものが更により好ましい。糖アルコールとして例えば、グリセリン、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、又はキシリトール等が挙げられる。シクリトールとして例えば、イノシトール、ボルネシトール、オノニトール、ピニトール、ピンポリトール、キナ酸、シキミ酸、又はビスクミトール等が挙げられる。2種以上の本保湿剤の組合せの好例として、エリスリトールとイノシトールの組合せや、更にヒアルロン酸などの高分子化合物またはグリコシルセラミドを加えた組合せが挙げられる。
本保湿剤は、分子内で全体的にアルコール性ヒドロキシ基などの親水基を複数有するため、水分子を引き付けて吸湿性を有する反面、本来はアルコール性ヒドロキシ基によりイソシアネート基と架橋反応したりカルボキシ基とエステル結合したりしやすい。しかし、前述したように本発明では、樹脂組成物やその原料としてカルボキシ基を有する化合物(例えばAA)の多用は避けられている。また、本発明でノニオン界面活性剤により水相に分布し溶解または分散する本保湿剤(好ましくは水溶性保湿剤)は、油相に分布する樹脂組成物やその原料から引き離され樹脂組成物に共有結合されにくいため、高分子ゲル層2aから皮膚へ放出されやすく、皮膚表面や角質層で水分や皮脂になじむと考えられる。
肌の保湿に用いられる、化粧水、乳液、又はクリーム等の基礎化粧品には、水が多く配合されている。例えば水の含有量は、クリームで約50質量%以上、乳液で約80質量%以上、化粧水では約90質量%以上である。このような保湿用の基礎化粧品、及び水からなる群より選ばれた1種以上の組成物(以下「高含水液状物」)が皮膚にたっぷり塗布されると、皮膚表面はしばらく濡れている状態になる。このように濡れている皮膚に貼付剤1aを貼付すると、高分子ゲル層2aから液状組成物と共に本保湿剤(ヒューメクタント)が皮膚上に放出されたり、高含水液状物の少なくとも一部が高分子ゲル層2aに吸収されたりする。一般的に化粧水やクリームにヒューメクタントが配合されていることもあり、高分子ゲル層2aは高含水液状物になじみやすく、濡れている皮膚に対する付着性を次第に強める。このため、貼付剤1aは、濡れていない皮膚のみならず、濡れている皮膚でも安定して付着させることが可能である。なお、角質膜厚・水分計(有限会社アサヒバイオメッド製、型番:ASA−M2)を用いて濡れていない皮膚を測定した場合に例えば、角層水分量は20%以下程度、皮膚コンダクタンスは3.0μS(マイクロジーメンス)以下程度である。高含水液状物をたっぷり塗布され濡れている皮膚で同様に測定すると、例えば角質水分量は90%以上程度である。濡れている皮膚に貼付剤1aを貼付し数時間経過後に剥がした場合、剥がした跡の皮膚で同様に測定すると、例えば、角層水分量は60%以上程度、皮膚コンダクタンスは20μS以上かつ50μS以下程度である。ここでの角層水分量や皮膚コンダクタンスは、角質膜厚・水分計(ASA−M2)の説明書に従った測定方法により、電極を当てた皮膚表面での電位変化に基づく測定値である。
本保湿剤を液状組成物に溶解または分散させ高分子ゲル層2aから液状組成物と共に皮膚へ放出しやすい観点から、高分子ゲル層2aにおける本保湿剤の含有量は、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。同様の観点から本明細書での「本保湿剤の含有量」は、好ましくは「水溶性保湿剤の含有量」である。同様の観点から、液状組成物において「本保湿剤の含有量」に対し「ノニオン界面活性剤の含有量」の質量比(ノニオン界面活性剤の含有量/本保湿剤の含有量)は、好ましくは5.0以上、更に好ましくは10以上である。濡れている皮膚に貼付剤1aを安定して貼付する観点から高分子ゲル層2aにおける本保湿剤の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上である。同様の観点から前記質量比(ノニオン界面活性剤の含有量/本保湿剤の含有量)は、例えば100以下、好ましくは75以下、更に好ましくは50以下である。
貼付剤1aを肌の美容またはスキンケアに活用しやすい観点から、高分子ゲル層2aに含有される液状組成物は、ノニオン界面活性剤や本保湿剤に加え、さらに1種以上の生物活性物質を含んで成るのが好ましい。生物活性物質とは、生体外から生体内へ投与される外因性物質のうちで生物活性を有するものの総称である。生物活性とは、生体内において外因性物質により例えば、酵素活性が調節されたり、又は受容体を介し細胞内シグナル伝達が調節されたりして、特定の生理作用に変化がもたらされる性質である。生物活性として例えば、抗酸化作用、抗菌作用、抗炎症作用、又は漂白作用(美白作用)などが挙げられる。界面活性作用や保湿作用は、生物活性に該当しない。
生物活性物質は、液状組成物に溶解または分散されやすく、高分子ゲル層2aから放出され皮膚内部に浸透しやすい観点から、生物活性を有し分子内にイソシアネート基を有しない低分子有機化合物、及びその塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物でも良い。低分子とは、分子量が500以下であることを意味する。低分子量である生物活性物質は、高分子ゲル層2a内で析出しにくいため、液状組成物と共に放出され皮膚内へ浸透しやすく、皮膚内で生物活性により肌の美容またはスキンケアに貢献するものと期待される。生物活性物質の分子量は、生物活性物質の種類が豊富である観点では好ましくは90以上、更に好ましくは110以上であり、液状組成物に溶解または分散されやすい観点では好ましくは350以下、更に好ましくは250以下である。
水に溶けにくいがノニオン界面活性剤により溶解または分散され得る生物活性物質として例えば、脂溶性ビタミン、その誘導体、グリチルリチン酸、ビタミンCエステル、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、インドメタシン、ジブチルヒドロキシトルエン(別名butylated hydroxytoluene:以下「BHT」という。)、又はこれらの塩が挙げられる。皮膚への浸透性に優れ抗酸化作用などを有する観点から、ビタミンCエステルとして例えば、パルミチン酸アスコビル、又はテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコビル(以下「VC−IP」という。)が好ましい。脂溶性ビタミンとして例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、又はビタミンK等の化合物が挙げられる。ビタミンA誘導体の一種であるトレチノインは、シミやシワの改善効果や光老化の改善効果を奏する観点から好ましい。BHTは抗酸化作用を有する観点から好ましい。
水に可溶な生物活性物質は、ノニオン界面活性剤の存在下では水相に分布するため樹脂組成物に結合されにくく、高分子ゲル層2aから皮膚へ放出されやすい。この観点から生物活性物質として好ましくは、水に可溶で生物活性を有し、分子内にアミノ基または第3級アミン構造またはカルボキシ基またはヒドロキシ基を有するが、分子内にイソシアネート基を有しない低分子有機化合物、及びその塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物である。例えば、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、アルブチン、これらの誘導体、又はこれらの塩が挙げられる。アルブチンは、メラニン合成阻害による美白効果を奏するため好ましい。ビタミンCは、コラーゲン産生を促し抗酸化作用を奏し、皮膚の健康維持や健康増進に役立つため好ましい。
分子内に第1級ヒドロキシ基を有しない生物活性物質は、樹脂組成物やその原料に共有結合されにくいため、高分子ゲル層2aから皮膚へ放出されやすい。この観点から生物活性物質として更に好ましくは、水に可溶で、分子内にアミノ基または第3級アミン構造またはカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基または第2級ヒドロキシ基または第3級ヒドロキシ基を有し、生物活性を有するが、分子内にイソシアネート基および第1級ヒドロキシ基を有しない低分子有機化合物、及びその塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物である。例えば、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、カテキン、乳酸、クエン酸、サリチル酸、グルコン酸クロルヘキシジン、クエン酸銀、メチオニン銀錯体、ヒスチジン銀錯体、又はこれらの塩などの化合物が挙げられる。銀錯体は、配位子として機能し得る有機化合物(例えば、L−メチオニン、又はL−ヒスチジン)に銀イオンが配位されて成る銀化合物である。有機酸銀(クエン酸銀など)や銀錯体などの銀化合物は、抗菌性を有するため好ましい。また、次の一般式(1)で示すように、水に可溶で分子内にアミノ基およびカルボキシ基を有するホスホン酸ジエステル誘導体、並びにその塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物であるホスホン酸ジエステル誘導体類(特許文献2を参照)も、生物活性物質として好ましく挙げられる。
Figure 2021050187
一般式(1)でRとRの各々は構造中にアミノ基またはカルボキシ基を含んでよい炭化水素基である。ホスホン酸ジエステル誘導体の一種である2−アミノ−4−{[3−(カルボキシメチル)フェニル](メチル)ホスホノ}ブタン酸は、コラーゲン産生促進作用を有する(特許文献3を参照)ため好ましく、この化合物を含有する化粧品原料が株式会社ナールスコーポレーションから登録商標ナールスゲンを付され市販されている。
アミノ基やカルボキシ基や第1級ヒドロキシ基と比べ、フェノール性ヒドロキシ基や第3級アミン構造は、イソシアネート基と架橋反応しにくい。高分子ゲル層2aの形成時に、イソシアネート系架橋剤と架橋反応しにくい生物活性物質ほど、第2構成単位とイソシアネート系架橋剤の架橋反応を妨げにくいため、イソシアネート系架橋剤の使用量が少なく抑えられるにも関わらず糊残りしにくい高分子ゲル層2aが形成されやすい。イソシアネート基は反応性に富むため、架橋反応が効率良く進み高分子ゲル層2aで未反応のイソシアネート系架橋剤の残存量が少なく抑えられる程、皮膚刺激を生じにくい。これらの観点から生物活性物質は更により好ましくは、水に可溶で、分子内に第3級アミン構造またはフェノール性ヒドロキシ基を有し、生物活性を有するが、分子内にアミノ基とイソシアネート基とカルボキシ基と第1級ヒドロキシ基を有しない低分子有機化合物、及びその塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物である。例えば、シコニン、シコニン誘導体、アントシアニジン、又はエピガロカテキンガレート等の化合物が挙げられる。アントシアニジンとして、シアニジン、デルフィニジン、又はぺオニジン等の化合物が例示される。シコニン誘導体として例えば、紫根から抽出可能な、アセチルシコニン、デオキシシコニン、又はイソブチルシコニン等の化合物が挙げられる(特許文献3を参照)。
分子内にアミノ基とカルボキシ基とアルコール性ヒドロキシ基を有さず、エチレン性付加重合性基も有しない生物活性物質は、更に樹脂組成物に共有結合されにくいため、高分子ゲル層2aから皮膚へ放出されやすい。この観点から生物活性物質は更により一段と好ましくは、水に可溶で、分子内に第3級アミン構造またはフェノール性ヒドロキシ基を有し、生物活性を有するが、分子内にアミノ基とイソシアネート基とカルボキシ基とエチレン性付加重合性基とアルコール性ヒドロキシ基を有しない低分子有機化合物、及びその塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物である。例えば、塩化ベンザルコニウム、ヒドロキノン(以下「HQ」という。)、3−メチル−4−イソプロピルフェノール(別名:isopropyl methylphenol、以下「IPMP」という。)、又は2−イソプロピル−5−メチルフェノール(チモールとも称される。)等の化合物が挙げられる。HQは、美白作用を奏する観点からも好ましい。IPMPやチモールは、抗菌作用を有する観点からも好ましい。
先願との関係で、シコニン、シコニン誘導体、及びこれらの塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物であるシコニン類が高分子ゲル層2aまたは液状組成物に含有される貼付剤やその製造方法は、本発明から除外されても良い。同様の理由で、前記シコニン類がβ−1,3−1,6−グルカンに包摂された複合体が高分子ゲル層2aまたは液状組成物に含有される貼付剤やその製造方法は、本発明から除外されても良い。同様の理由で、水に可溶であり分子内にアミノ基およびカルボキシ基を有するホスホン酸ジエステル誘導体、並びにその塩からなる群より選ばれた1種以上の化合物であるホスホン酸ジエステル誘導体類が高分子ゲル層2aまたは液状組成物に含有される貼付剤やその製造法方法は、本発明から除外されても良い。つまり、本発明での生物活性物質は、ここで例示した1種以上の化合物が除外された範囲から選択されたものでも良い。
生物活性物質が高分子ゲル層2a内で析出しにくい観点から、高分子ゲル層2aにおける生物活性物質の含有量は、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下である。同様の観点から、高分子ゲル層2aにおいて「生物活性物質の含有量」に対し「ノニオン界面活性剤の含有量」の質量比(ノニオン界面活性剤の含有量/生物活性物質の含有量)は、好ましくは5.0以上、更に好ましくは10以上である。皮膚で生物活性を発揮させやすい観点から、高分子ゲル層2aにおける生物活性物質の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上である。同様の観点から、前記質量比(ノニオン界面活性剤の含有量/生物活性物質の含有量)は、好ましくは75以下、更に好ましくは50以下である。
油は、動物、植物、又は鉱物から得られる、水と相分離する疎水性物質のうちで、常温(5℃以上かつ35℃以下)で液状になり得るものである。30℃で液状である油(以下「液油」という。)は、ノニオン界面活性剤と比べ安価で大量に入手可能である。液油が多く配合された液状組成物を用いれば、柔らかな高分子ゲル層2aを備える貼付剤1aを低コストで量産可能である。この観点から、高分子ゲル層2aに含有される液状組成物は、ノニオン界面活性剤や本保湿剤に加え、さらに液油を含んで成るのが好ましい。液油として例えば、植物油、魚油、及び鉱油からなる群より選ばれた1種以上の油が挙げられる。30℃で液状である鉱油として例えば、ナフテン、又は流動パラフィンが挙げられる。水相に分布しにくい生物活性物質でも液状組成物に溶解または分散させやすい観点から、高分子ゲル層2aに含有される液状組成物は、ノニオン界面活性剤と本保湿剤に加え、さらに生物活性物質と液油を含んで成るのがより好ましい。高分子ゲル層2aを安価で形成可能で、樹脂組成物に結合されにくく、臭いにくく、天然素材が用いられていると一般消費者に訴求可能な観点から、液油は、更に好ましくは精製された植物油である。精製された植物油として例えば、オリーブ油、ナッツ油、又はサラダ油が挙げられる。サラダ油として例えば、菜種油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、ゴマ油、サフラワー油、綿実油、米油、又はこれらの2種以上が混合された調合サラダ油などが挙げられる。
液油よりも高価なノニオン界面活性剤の使用量を少なく抑えて貼付剤1aを安価で量産可能としつつ、前述したW/Oエマルション等を形成しやすい観点から、高分子ゲル層2aにおける液油の含有量は、好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。同様の観点から、高分子ゲル層2aにおいて「液油の含有量」に対し「ノニオン界面活性剤の含有量」の質量比(ノニオン界面活性剤の含有量/液油の含有量)は、好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.0以下である。高分子ゲル層2aに十分量の樹脂組成物やノニオン界面活性剤を含有させる余地を残す観点から、高分子ゲル層2aにおける液油の含有量は、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。同様の観点から、前記質量比(ノニオン界面活性剤の含有量/液油の含有量)は、好ましくは0.50以上、更に好ましくは1.0以上である。
高分子ゲル層2aに含有される液状組成物は、ノニオン界面活性剤や本保湿剤に加え、更に水を含んで成るものでも良い。このために詳しくは後述するが、貼付剤1aの製造時に高分子ゲル層2aを形成させるのに用いる塗工液に、水を含有させても良い。ただし、塗工液を加熱乾燥させ高分子ゲル層2aを形成させるときに水は気化しやすいため、形成される高分子ゲル層2aでは実質的に水が残存していない場合が多い。
高分子ゲル層2aは、本発明の目的に反しない限りの少量であれば、更にその他の化合物または組成物を含有しても良い。その他の化合物または組成物は、液状組成物に溶解もしくは分散されるか又は30℃で液状である場合には、液状組成物の構成成分として扱う。または、その他の化合物またはその他の組成物は、液状組成物に溶解も分散もされず30℃で液状でない場合には、樹脂組成物にも液状組成物にも属しない成分として扱う。その他の化合物または組成物として例えば、エモリエント、銀系無機抗菌剤、粘着付与剤、及び溶解補助剤からなる群より選ばれた1種以上の化合物または組成物が挙げられる。エモリエントとして例えば、脂肪酸、又はコレステロール等の両親媒性の化合物が挙げられ、皮膚内部に浸透後にグリコシル化され水溶性保湿剤(ヒューメクタント)同様に機能し得る観点から好ましくはセラミドである。エモリエントは、高分子ゲル層2aやその形成過程で両親媒性であり、水相と油相の界面において分子内の親水性基を水相側に向けて分布するため、液油の含有量が多い場合には油相で起こる架橋反応に巻き込まれにくいと考えられる。銀系無機抗菌剤として例えば、炭酸銀、又は銀ゼオライト等の無機銀化合物の粉状物が挙げられる。粘着付与剤は、分子量が数百から数千程度の熱可塑性樹脂であり例えば、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、及びキシレン系樹脂からなる群より選ばれた1種以上の組成物が挙げられる。溶解補助剤として例えば、N−メチルピロリドン、又は一価の高級アルコールが挙げられる。
貼付剤1aでは、その製造時に樹脂組成物の原料と液状組成物の原料との配合比を調節し、高分子ゲル層2aにおける樹脂組成物の含有量と液状組成物の含有量を調節することにより、高分子ゲル層2aの柔らかさや粘着力や保湿性を調整可能である。貼付剤1aの用途に応じ、適した性状を有する高分子ゲル層2aを調製するのが好ましい。柔らかな感触の高分子ゲル層2aを形成させる観点から、高分子ゲル層2aにおける液状組成物の含有量は、25質量%以上であり、好ましくは40質量%以上である。仮に、高分子ゲル層での液状組成物の含有量が75質量%よりも多ければ、相対的に樹脂組成物での含有量が少な過ぎるため、高分子ゲル層2aが濡れている皮膚に付着しにくく、断裂したり皮膚から剥脱したりしやすい。これらの問題を避ける観点から、高分子ゲル層2aで液状組成物の含有量は、75質量%以下であり、好ましくは60質量%以下である。
手指、手首、肘、膝、及び足首は日常生活で頻繁に伸展され屈曲される。これに伴い、これら関節部にある皮膚は、たるんで深いシワを生じさせたり、張りつめてシワを解消させたりを繰り返している。貼付剤1aが、手指、手首、肘、膝、及び足首からなる群より選ばれた1種以上の関節部で伸展運動または屈曲運動に伴いシワを生じる部分(以下「関節シワ部」という。)の皮膚に貼付される場合に、高分子ゲル層2aの厚みTは、使用者が皮膚に違和感を覚えにくい観点では好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下であり、皮膚から剥脱しにくい粘着力を付与する観点では好ましくは20μm以上、更に好ましくは25μm以上である。一方、関節シワ部の皮膚と比べ、それ以外の外皮は、日常生活で伸縮されてシワを生じたり解消したりする程度が小さい。貼付剤1aが関節シワ部以外の外皮(例えば、目元等の顔面の皮膚、又は体幹部の皮膚など)に貼付される場合に、高分子ゲル層2aの厚みTは、分厚くても違和感を覚えにくい観点では好ましくは130μm以下、更に好ましくは100μm以下であり、皮膚を保湿して湿潤療法を行う観点では好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上である。
貼付剤1aでの粘着力の強さは、JIS Z 0237:2009に準拠したSUS板に対する180°引き剥がし粘着力の測定値で評価可能である。このためには、表面仕上げBA(冷間圧延後、光輝熱処理)のSUS304板(JIS Z 0237:2009用)に2kgゴムローラーで1往復して貼付剤1aを貼り付け、剥離速度300mm/分で貼付剤1aを引っ張り、SUS板に対する180°引き剥がし粘着力を測定する。複数の貼付剤の平均値を採用するのが好ましい。貼付剤1aでのSUS板に対する180°引き剥がし粘着力は、不意に皮膚から剥脱するのを避ける観点では好ましくは0.010N/20mm以上、更に好ましくは0.050N/20mm以上、更により好ましくは0.20N/20mm以上であり、顔面のような感覚が鋭い皮膚から剥がすときに皮膚刺激が生じるのを避ける観点では好ましくは2.0N/20mm以下、更に好ましくは1.0N/20mm以下、更により好ましくは0.50N/20mm以下である。
濡れていない皮膚に対し貼付剤1aが有する皮膚接着力の強さは、ヒト前腕の屈側または伸側の濡れていない皮膚に試料片を貼り付け、剥離速度300mm/分の条件で貼付剤1aを引っ張り、濡れていない皮膚に対する180°引き剥がし粘着力の測定値で評価可能である。複数の貼付剤での平均値を採用するのが好ましい。濡れていない皮膚に対する貼付剤1aの皮膚接着力は、不意に剥脱するのを避ける観点では好ましくは0.050N/20mm以上、更に好ましくは0.10N/20mm以上であり、剥がすときの皮膚刺激を抑える観点では好ましくは1.0N/20mm以下、更に好ましくは0.50N/20mm以下である。この皮膚接着力の測定方法において、高含水液状物をたっぷり塗布し濡れている皮膚に貼付剤1aを貼付し30分経過時に引っ張るよう測定条件を変更すれば、濡れている皮膚に対する180°引き剥がし粘着力を評価可能である。濡れている皮膚に対する粘着力は時間経過と共に変化するため、貼付から30分経過時に測定する。高含水液状物(例えば化粧水)で濡れている皮膚に対する貼付剤1aの皮膚接着力の強さは、同様の観点から、好ましくは0.0050N/20mm以上かつ1.0N/20mm以下、更に好ましくは0.010N/20mm以上かつ0.50N/20mm以下である。
支持体3は、高分子ゲル層2aを支えるシート状物であり、貼付剤1aが皮膚に貼付されたときに高分子ゲル層2aを保護し皮膚表面の形状に沿って変形しやすい部材である。支持体3は、高分子ゲル層2aに接着された第一面5と、第一面5に対し支持体3の反対側にある第二面4を有する。支持体3として例えば、布帛、不織布、樹脂製フィルム、及び発泡プラスチック製シートからなる群より選ばれた1種から成るシート状物、又は2種以上の前記シート状物が積層されて成る積層シートが挙げられる。布帛または不織布の構成繊維として例えば、植物繊維、再生繊維、及び合成繊維からなる群より選ばれた1種以上の繊維が挙げられる。植物繊維として、綿繊維、又は麻繊維などが例示される。再生繊維としてビスコース繊維などが例示される。合成繊維として、ポリエチレン(以下「PE」という。)系合成繊維、ポリプロピレン系合成繊維、ポリウレタン(以下「PU」という。)系合成繊維、ポリエステル(以下「PET」という。)系合成繊維、又はナイロン繊維などが例示される。高温に晒されても変形しにくい観点から、支持体3は、植物繊維、及び再生繊維からなる群より選ばれた1種以上の繊維製である布帛または不織布が好ましい。
または、支持体3は、薄く柔らかくても高分子ゲル層2aを支持可能な観点から、樹脂製フィルム又はその積層物から成るのが好ましい。フィルムの構成樹脂として、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、PET系樹脂、ゴム系樹脂、又は(メタ)アクリル系樹脂などが例示される他、軟質ポリ塩化ビニル、又はPET等の高分子化合物も挙げられる。樹脂製フィルムは、2種以上の樹脂の混合物がフィルム状に成形されたものでも良く、それぞれ別種の樹脂から成るフィルムが積層された積層物でも良い。樹脂製フィルムとして(メタ)アクリル系樹脂を用いる場合、製造時にシート状に成形しやすい観点から、ガラス転移点が40℃以上かつ80℃以下である樹脂が好ましい。支持体3は、薄く柔らかくても高分子ゲル層2aを十分に支持可能であり、皮膚が蒸れるのを避けやすい観点から、PU、及びVAc−エチレン共重合体からなる群より選ばれた1種以上の樹脂製であるのが更に好ましい。
皮膚に貼付した貼付剤1aの第二面4に化粧料(ファンデーション、又はコンシーラー等)を塗布し、外観上で貼付剤1aが貼られていると分かりにくく隠蔽可能な観点から、支持体3の第二面4に、化粧料に含有される粒子がはまり込む微小サイズの凹部が多数形成されているのが好ましい。ただし、化粧料ごとに含有される粒子の平均粒子径は、例えば0.10μm以上かつ60μm以下の範囲内で異なる。また、支持体3の厚みWよりも深い凹部は第二面4上に形成不可能である。これらの前提で化粧ののりを良くする観点から、化粧料に含有される粒子の平均粒子径をdとするときに、第二面4の十点平均粗さRzはd≦Rz≦Wであるのが好ましい。粒子径が異なる複数種類の化粧料を重ね塗りしやすい観点から、支持体3の厚みWが15μm以上である場合に第二面4の十点平均粗さRzは、d≦Rzかつ15μm≦Rz≦Wであるのが更に好ましい。化粧を誤った場合に第二面4から化粧料を落とし塗り直しやすい観点から、第二面4での十点平均粗さRzは、好ましくは平均粒子径dの60倍以下(Rz≦60dかつRz≦W)、更に好ましくはRz≦60dかつRz≦40μmかつRz≦Wである。Rzは、JIS B 0601−1994に準拠し表面粗さ測定器により、基準長さ500μm、カットオフ値200μmの条件で、支持体3又はその素材の第二面4の表面形状の測定値である。平均粒子径dは、JIS Z 8825−1:2001に準拠した粒子径解析・レーザー回析法にて測定される、体積基準粒子分布で累積値50%の粒子径(メジアン径)である。
顔面など外見上で露出する皮膚に貼付される場合の貼付剤1aを目立ちにくくする観点から、使用者の肌に似せた色合いや模様が支持体3の第二面4に印刷されているのが好ましい。貼付剤1aを柔らかいパック材として用いやすい観点から、支持体3として発泡プラスチック製シートが好ましい。樹脂製フィルムに関し前述した各種の樹脂は、発泡プラスチック製シートの原料として使用可能である。関節シワ部以外の外皮(例えば顔面の皮膚)に貼付される場合、皮膚に小規模な伸縮(例えば表情変化)があっても支持体3にシワが生じにくい観点から、支持体3は、ある程度の剛性を有する、PET製、エチレン−VAc共重合体製、又はPE製などのフィルムであるのが好ましい。
支持体3の弾性率Eは、貼付剤1aを貼付された皮膚が伸縮しても支持体3にシワが生じにくい観点では好ましくは15MPa以下、更に好ましくは5.0MPa以下であり、支持体3に適度なコシやハリがあると不意に折れ曲がりにくく貼付剤1aを製造しやすい観点では好ましくは0.20MPa以上、更に好ましくは1.0MPa以上である。弾性率Eは、35℃の窒素雰囲気下で、支持体3から成る試料片を初期荷重1.0mNで10分間引っ張りつつ試料片の温度が雰囲気温度と平衡になるように保ち、その後に荷重を1分間あたり100mNの割合で強めながら荷重が0.030MPaに達するまで試料片を引っ張り伸長させ、初期荷重1.0mNを10分間かけたときの試料片の長さ(チャック間距離)をLとし、荷重が0.030MPaに達したときの試料片の長さをL30として、次の数式1により算出される。数式1での測定荷重Wは0.030MPaである。
Figure 2021050187
支持体3の弾性率Eがある程度あれば伸縮し過ぎないため、貼付剤1aを皮膚から剥がしやすい。この観点から、支持体3の20%引張強度は、好ましくは0.10N/cm以上、更に好ましくは0.30N/cm以上である。また、支持体3の弾性率Eが大きすぎなければ、貼付剤1aが貼付されたときに、支持体3が皮膚表面の形状に沿って変形しやすく皮膚の伸縮に追従し伸縮しやすいから、皮膚に違和感を覚えたり痛みを感じたりしにくく、貼付剤1aが皮膚から剥脱しにくい。この観点から支持体3の20%引張強度は、好ましくは15N/cm以下、更に好ましくは5.0N/cm以下である。20%引張強度は、支持体3から成る試料片を1.0cm幅に切断し、チャック間距離を5.0cmに設定し、約25℃に保たれた恒温室内で1.0cm幅になった試料片を30cm/分の速度で引っ張り変形させ、試料片が20%伸びたときの応力の測定値である。
支持体3から成る厚みWが30μmである試料片を作製した場合に、この試料片の透湿度は、皮膚が蒸れにくい観点では好ましくは600g/(m・day)以上、更に好ましくは1,000g/(m・day)以上であり、皮膚を保湿し湿潤療法を行なう観点では好ましくは5,000g/(m・day)以下、更に好ましくは3,000g/(m・day)以下である。貼付剤1aを顔面等に貼付するパック材として用いる場合、皮膚に水分を貯留させ張りや潤いを付与する観点から、厚みWが30μmである試料片の透湿度は、1,500g/(m・day)以下であるのが更により好ましい。透湿度は、JIS Z 0208に準拠したカップ法で、塩化カルシウムを吸湿剤とし、融点が52℃以上かつ54℃以下である市販のパラフィンを封止剤とし、吸湿剤を入れたカップを40℃かつ90%RHに保たれた恒温恒湿槽内に置き、測定開始から1.5時間おきにカップ全体の増加する質量を3回測定し、2回目と3回目の測定値の平均値として算出される。
樹脂製フィルムから成る場合の支持体3の厚みWは、貼付前に貼付剤1aが不意に折れ曲がり皮膚当接面6同士で粘着するのを避ける観点では好ましくは5.0μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、皮膚表面の形状に沿うよう貼付剤1aを変形させやすい観点では好ましくは100μm以下、更に好ましくは60μm以下、更により好ましくは50μm以下である。同様の観点から、発泡プラスチック製シートから成る場合の支持体3の厚みWは、好ましくは100μm以上かつ2.0mm以下、更に好ましくは200μm以上かつ1.0mm以下である。
以上に説明した貼付剤1aによれば、その製造時に、ノニオン界面活性剤の存在下において、アクリル系共重合体での第2構成単位が有するアルコール性ヒドロキシ基と、イソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基と、を化学架橋させて網目構造を有する樹脂組成物を形成させたため、この樹脂組成物と、ノニオン界面活性剤や本保湿剤を含む液状組成物と、を含有して成る高分子ゲル層2aを備える。貼付剤1aの高分子ゲル層2aでは、樹脂組成物が25質量%以上を占めつつ液状組成物に本保湿剤が含まれるため、ヒトの濡れている皮膚でも貼付可能である。また、樹脂組成物が25質量%以上を占める高分子ゲル層2aは、皮膚から剥がされるときに引き伸ばされても凝集破壊されにくく糊残りしにくいため、皮膚を傷つけにくい。貼付剤1aによれば、高分子ゲル層2aにおいてノニオン界面活性剤を含む液状組成物が25質量%以上を占めるから、高分子ゲル層2aは柔らかな感触を有し、粘着力が強すぎないように抑えられていて剥がされるときに皮膚刺激を生じさせにくいため、この理由からも皮膚を傷つけにくい。
貼付剤1aの用途は、特に限定されないが、高分子ゲル層2aが柔らかであり皮膚を傷つけにくいように適度に弱く抑えられた粘着力を有する観点から、例えば点滴装置のチューブ等の異物を皮膚上に固定する用途よりも、肌の美容またはスキンケアに用いられるのが好ましい。スキンケアを大別すると、予防的スキンケアと、治療的スキンケアが挙げられる。治療的スキンケアは、外傷、感染症、又は皮膚炎を生じた皮膚に対し回復または治癒促進を促す目的で行われる。例えば、グリチルリチン酸とIPMPを含有する場合の貼付剤1aは、グリチルリチン酸が抗炎症作用を有しIPMPが抗菌作用を有するから、ニキビ又は吹き出物などの皮膚炎を生じている皮膚で治療的スキンケアに用いることができる。市販される際の貼付剤1aは、高分子ゲル層2aでの液状組成物に含まれる生物活性物質に応じ、化粧品に分類される場合もあれば、医薬部外品に分類される場合もあり得る。医薬部外品として扱われる場合、前述した生物活性物質を有効成分と換言しても良い。
予防的スキンケアは、皮膚の健康を維持または増進させる目的で行われる。糊残りしにくく柔らかで粘着力を適度に抑えられた高分子ゲル層2aは皮膚に貼付したり剥がしたりするのが容易である観点から、貼付剤1aは、肌の美容または予防的スキンケアに用いられるのが更に好ましい。例えば、アルブチン又はHQを含有する場合の貼付剤1aは美白作用により肌の美容に、ビタミンC又はビタミンCエステルを含有する場合の貼付剤1aは抗酸化作用や美白作用により肌の美容と予防的スキンケアの両方に、トレチノインを含有する場合の貼付剤1aはシミやシワの改善作用により予防的スキンケアに、それぞれ用いることができる。貼付剤1aは、手軽に貼付したり剥がしたりすることができ、高含水液状物をたっぷり塗布されて触れると化粧水などが付着する程ベタベタに濡れている皮膚表面でも貼付可能な観点から、肌の美容に用いられるのが更により好ましい。
<貼付剤の第2実施形態>
本発明に係る貼付剤の第2実施形態(以下「貼付剤1b」という。)は、前述した貼付剤1aと同様の構成と作用効果を有するが、次に説明する事項が異なる。図2に示す貼付剤1bは、順に、支持体3と、高分子ゲル層2aと、剥離性シート70を備える。つまり貼付剤1bは、図1に示す貼付剤1aでの高分子ゲル層2aの皮膚当接面6に、図2に示す剥離性シート70を仮付けした構成である。剥離性シート70として例えば、シリコーン処理が施されたPET製フィルム、片面にシリコーン処理が施された紙、または、紙とポリオレフィン薄膜が貼り合わされたシート状物などが挙げられる。剥離性シート70は、皮膚当接面6に仮付けされ、貼付剤1bが使用される直前まで高分子ゲル層2aを保護する。高分子ゲル層2aから剥離性シート70を剥がすと、皮膚当接面6が露出し皮膚に貼付可能になる。高分子ゲル層2aから剥がしやすいため剥離性シート70には、皮膚当接面6を被覆する部分と、皮膚当接面6から突出した摘み部と、が設けられるのが好ましい。同様の理由で、剥離性シート70に、第一片部71aと第二片部71bに分断されるよう切込み73を設けられるのが好ましく、この場合に更に好ましくは、第一片部71aに第一摘み部72aが設けられ第二片部71bに第二摘み部72bが設けられる。
<貼付剤の第3実施形態>
本発明に係る貼付剤の第3実施形態(以下「貼付剤1c」という。)は、前述した貼付剤(1a又は1b)と同様の構成や作用効果を有するが、以下に説明する事項が異なる。図3に示すように、貼付剤1cは、順に、キャリアシート80と、支持体3と、高分子ゲル層2aと、剥離性シート70を備える。つまり、貼付剤1cは、図2に示す貼付剤1bでの支持体3に、図3に示すキャリアシート80を仮付けさせた構成である。
キャリアシート80は、支持体3の第二面4を覆うよう仮付けされた保護シート(81a,81b)と、更に保護シート(81a,81b)上の一部に積層され接着された剥離補助シート(84a,84b)と、を有する。保護シート(81a,81b)と剥離補助シート(84a,84b)の各々は、剛性を有する樹脂製フィルムである。厚み方向に貫通する切込み83により、保護シートは81aと81bの二片に分断され、剥離補助シートも84aと84bの二片に分断されている。支持体3の第二面4上に仮付けさせるために、保護シート(81a,81b)での支持体3側の片面には、公知の粘着剤が薄く塗布されて成る弱粘着剤層82が設けられても良い。支持体3の材質によっては、弱粘着剤層82が無くても、保護シート(81a,81b)を支持体3の第二面4上に仮付け可能である。剥離補助シート(84a,84b)での保護シート(81a,81b)側の片面には、剥離補助シート(84a,84b)を保護シート(81a,81b)に接着し固定させるために、公知の接着剤が塗布されて成る接着剤層85が設けられる。
貼付剤1cでの支持体3は、製造時にキャリアシート80が仮付けされてから、使用時にキャリアシート80が剥がされるまで、キャリアシート80により保護される。このため、不意に支持体3が折れ曲がったり第二面4が汚損したりするのは、避けられる。不意に支持体3が折れ曲がるのを更に避ける観点から、貼付剤1cをその平面上(キャリアシート80側)から見て、剥離性シート70での切込み73と重複しない位置に、キャリアシート80の切込み83が設けられるのが好ましい。
貼付剤1cを貼付する際、高分子ゲル層2aから剥離性シート70を剥がし、露出した皮膚当接面6を皮膚に粘着させてから、皮膚上においてキャリアシート80を切込み83で折り曲げ支持体3から容易に剥がすことができる。使用者は、自身で目視しにくい部位の皮膚(例えば後頚部の皮膚)に貼付剤1cを貼り付ける場合でも、指先の感覚だけで皮膚上から剥離補助シート(84a、84b)を探し出し、キャリアシート80を折り曲げて支持体3から容易に剥がすことができる。例えば、支持体3として柔らかい樹脂製のフィルム又は発泡プラスチック製シートを用いた場合や、支持体3の第二面4(皮膚に貼付されたときに外観上で視認される面)に微小サイズの凹部が多数形成された場合に、キャリアシート80を備える貼付剤1cは、支持体3にシワが生じたり第二面4が汚損したりするのを避けつつ皮膚に綺麗に貼付しやすい観点から好ましい。
<貼付剤のその他の実施形態>
本発明に係る貼付剤での高分子ゲル層は、本発明の目的に反しない限り、支持体の少なくとも一部に接着された形状でも良い。例えば、図4(a)に示す本発明に係る貼付剤1dでの高分子ゲル層2dは、支持体3の第一面5の周縁部に沿って接着されており、貼付剤1dをその平面上(又はその皮膚当接面6側)から見たときに枠状である。あるいは、図4(b)と図4(c)に示すように、本発明に係る貼付剤1eでの高分子ゲル層2eは、貼付剤1eをその平面上(又はその皮膚当接面6側)から見たときに枠付きの格子状である。図4(a)から図4(c)に示す貼付剤(1d又は1e)が皮膚に貼付されたときに、皮膚と高分子ゲル層(2d又は2e)と支持体3に囲まれた空間(99d又は99e)が形成されても良く、この空間(99d又は99e)に何らかの薬効成分を含有する膏体が充填されても良い。本発明に係る貼付剤は、以下に説明する方法で製造可能である。
<貼付剤の製造方法>
本発明に係る貼付剤の製造方法(以下「本製法」という。)を説明するに際し、本発明に係る貼付剤との共通事項の説明を概ね省略し、異なる事項を主に説明する。本製法は、図5に示すように、原料準備工程S11、重合工程S12、塗工液調製工程S20、加熱乾燥工程S30、及び成形工程S40を含む。
原料準備工程S11では、液状組成物の原料と、樹脂組成物の原料と、樹脂組成物の原料を溶解または分散させるための液状媒質と、支持体を準備する。液状組成物の原料として、少なくとも、ノニオン界面活性剤と本保湿剤を含んで成る液原料群を準備する。樹脂組成物の原料として、第1モノマー群から選ばれた1種以上のモノマーと、第2モノマー群から選ばれた1種以上のモノマーと、イソシアネート系架橋剤を準備する。
効率良く重合反応させる観点から、準備する液状媒質として、常温(5℃から35℃)で液状であり、モノマー等を溶解または分散させることが可能な、有機溶媒、及び親水性分散媒からなる群より選ばれた1種以上の化合物が挙げられる。親水性分散媒は、モノマー等やノニオン界面活性剤と混合されると、モノマー等を分散させる分散媒として機能し得る親水性化合物であり、例えば、水、エタノール、又は1,3−ブタンジオール等の化合物が挙げられる。液状媒質として親水性分散媒のみを用いる場合でも、次の重合工程S12で乳化重合によりモノマーを重合させることが可能である。本保湿剤(好ましくは水溶性保湿剤)などを分布させる水相と、樹脂組成物やその原料などを分布させる油相と、を形成しやすく、本保湿剤などが樹脂組成物やその原料などに更に結合されにくい観点から、準備する液状媒質は、有機溶媒と親水性分散媒の混合物であるのが好ましい。
準備する液状媒質は、加熱乾燥により気化しやすい観点から、標準気圧での沸点が常温よりも高温かつ120℃未満である有機溶媒または親水性分散媒であるのが好ましい。同様の観点から準備する有機溶媒は、標準気圧で沸点が常温よりも高温かつ95℃以下である有機溶媒か、又は常温で揮発性を有する有機溶媒であるのが更に好ましい。例えば、ヘキサン(沸点69℃)、酢酸エチル(沸点77℃)、テトラヒドロフラン(沸点66℃)、アセトン(沸点56℃)、及びメチルエチルケトン(沸点79℃)からなる群より選ばれた1種以上の有機溶媒が挙げられる。常温で揮発性を有する有機溶媒として、トルエン(沸点110℃)等が挙げられる。樹脂原料を溶解または分散させやすい観点から、準備する液状媒質は、更により好ましくは酢酸エチル又はトルエンである。
準備する液原料群には、肌の美容またはスキンケアに用いられる貼付剤を製造する観点では更に1種以上の生物活性物質を含ませるのが好ましく、柔らかな高分子ゲル層を低コストで量産可能な観点では更に液油を含ませるのが好ましい。図2に示す貼付剤1bを製造する場合には、図5に示す原料準備工程S11で、更に剥離性シートを準備する。本発明の目的に反しない限り必要に応じ、さらに、ラジカル開始剤、エモリエント、銀系無機抗菌剤、粘着付与剤、及び溶解補助剤からなる群より選ばれた1種以上の化合物または組成物を準備しても良い。ラジカル開始剤は、穏和な加熱条件で化学反応(重合反応、又は架橋反応等)を開始させる化合物であり例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、又は過酸化ベンゾイル等の化合物が挙げられる。安全性が高い観点からラジカル開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」という。)が好ましい。
重合工程S12では、液状媒質の存在下で、少なくとも、第1モノマー群から選ばれた1種以上のモノマーと、第2モノマー群から選ばれた1種以上のモノマーと、を混合させた混合液を加熱し、モノマー同士で付加重合による重合反応を起こさせて、アクリル系共重合体を形成させる。液状媒質として主に親水性分散媒を用いる場合には、モノマー等を分散させるために、更にノニオン界面活性剤を混合する。重合工程S12では、重合反応を効率よく起こさせる観点から、更にラジカル開始剤を混合して得られる混合液を加熱するのが好ましい。安定した品質の樹脂組成物を得る観点から、窒素ガス雰囲気下で重合反応を進ませつつ、冷却還流管を用いて混合液の温度が高くなり過ぎないよう60℃以上かつ65℃以下の範囲内に調節するのが好ましく、混合液の温度が60℃以上かつ63℃以下程度に保たれるように管理するのが更に好ましい。
原料準備工程S11と重合工程S12の組み合わせは、樹脂組成物の原料としてアクリル系共重合体とイソシアネート系架橋剤を含んで成る樹脂原料群を準備し、かつ、液状組成物の原料としてノニオン界面活性剤と本保湿剤を含んで成る液原料群を準備する工程S10として機能する。原料準備工程S11で準備した液状媒質は、樹脂原料群を溶解または分散させるための液状媒質として機能する。工程を簡略化させる観点から、市販のアクリル系共重合体か又はこれと液状媒質の混合物を入手可能な場合には、重合工程S12を省略するのが好ましい。適度な粘性を有するため次の工程S20で塗工液を調製しやすい観点と、塗工液で良好な粘着性を得やすい観点から、アクリル系共重合体の重量平均分子量は80万以上かつ150万以下であるのが好ましい。
塗工液調製工程S20では、液状媒質の存在下において、アクリル系共重合体およびイソシアネート系架橋剤を含んで成る樹脂原料群と、少なくともノニオン界面活性剤および本保湿剤を含んで成る液原料群と、を混合させることにより、乳濁液となった混合組成物(以下「塗工液」という。)を得る。後に形成される高分子ゲル層において樹脂組成物の含有量が25質量%以上かつ75質量%以下になるように、塗工液調製工程S20では、「液原料群と樹脂原料群の合計質量」に対し「樹脂原料群の質量」が占める質量比(樹脂原料群の質量/液原料群および樹脂原料群の合計質量)が0.25以上かつ0.75以下となるように、これら原料を混合し塗工液を得る。後で形成される高分子ゲル層において液状組成物の含有量が25質量%以上かつ75質量%以下となるよう、「液原料群と樹脂原料群の合計質量」に対し「液原料群の質量」が占める質量比(液原料群の質量/液原料群および樹脂原料群の合計質量)が0.25以上かつ0.75以下となるように、これら原料を混合して塗工液を得るのが好ましい。
標準気圧で沸点が120℃未満であるか又は常温で揮発性を有する液状媒質は、次の工程S30で加熱乾燥により気化して除去されやすいから、高分子ゲル層での液状組成物に残存しにくいため、塗工液調製工程S20での質量比の計算において液原料群の構成成分として扱わない。一方、1,3−ブタンジオール(沸点207℃)のように加熱乾燥しても実質的に気化しない親水性分散媒は、液状組成物中に残存するため、質量比の計算で液原料群の構成成分として扱う。本発明の目的に反しない限り必要に応じ、さらに、エモリエント、銀系無機抗菌剤、粘着付与剤、及び溶解補助剤からなる群より選ばれた1種以上の化合物または組成物を混合して塗工液を調製しても良い。塗工液調製工程S20では、樹脂原料群が液状媒質に溶解または分散されやすいように、例えば塗工液を50℃以上に加熱したり、塗工液を撹拌したりするのが好ましい。
加熱乾燥工程S30では、先の工程S20で得られた塗工液を加熱乾燥し高分子ゲル層を形成させ、少なくとも支持体と高分子ゲル層を備える積層物を得る。例えばコーターを用い支持体に塗工液を塗布し、乾燥機により支持体ごと塗工液を加熱乾燥させ、支持体と高分子ゲル層を備える積層物を得ても良い。加熱中に支持体が膨潤し変形するのを避ける観点から、支持体は、植物繊維、及び再生繊維からなる群より選ばれた1種以上の繊維製である布帛または不織布であるのが好ましい。ここで得られた積層物をそのまま貼付剤1aとして扱っても良いが、使いやすく実用的な貼付剤を得る観点から、この積層物での高分子ゲル層側に剥離性シートを仮付けするのが好ましく、仮付けされた積層物を後述する成形工程S40に供するのが好ましい。支持体として不織布、樹脂製フィルム、又は発泡プラスチック製シートを用いる場合、支持体が膨潤するのを避け得る観点から、加熱乾燥工程S30では、塗工液を剥離性シート上に塗工し、加熱乾燥により剥離性シート上に高分子ゲル層を形成させ、この高分子ゲル層に支持体を貼り合わせて積層物を形成させるのが好ましい。この積層物をそのまま貼付剤1bとして扱っても良いが、使いやすく実用的な貼付剤を得る観点から、この積層物を成形工程S40に供するのが更に好ましい。
加熱乾燥工程S30では、高分子ゲル層の厚みを調整するために、塗工液が支持体上または剥離性シート上で所定の膜厚になるよう調節しながら塗布するのが好ましい。塗工液の加熱温度や加熱時間の長さは、塗工液での液状媒質の含有量や、液状媒質の気化しやすさに応じ、適宜調節する。加熱乾燥工程S30では、架橋反応が進みやすく液状媒質が気化しやすいため加熱時間を短縮できる観点では塗工液を95℃よりも高温の雰囲気下で加熱するのが好ましく、塗工液を98℃以上の雰囲気下で加熱するのが更に好ましく、望ましくない熱変性を避ける観点では塗工液を120℃以下の雰囲気下で加熱するのが好ましい。加熱温度が高すぎると、塗工液が沸騰し生じる気泡により高分子ゲル層の表面に凹凸が生じる場合がある。沸騰を避ける観点から、加熱温度は65℃以上かつ95℃以下でも好ましい。例えば、剥離性シートごとその上に塗布された塗工液を乾燥機内に通し、順に、65℃、75℃、85℃、及び95℃の熱風を当て加熱乾燥させ、形成された積層物(高分子ゲル層と剥離性シート)を支持体と貼り合わせて貼付剤を製造するのが好ましい。
加熱乾燥工程S30で塗工液を加熱乾燥すると、塗工液中でイソシアネート系架橋剤によりアクリル系共重合体が化学架橋されて網目構造を有する樹脂組成物が形成されるだけでなく、塗工液から液状媒質が気化し実質的に除去される。このため、三次元的な網目構造を有する樹脂組成物と、その網目構造の微細な隙間に溜められた液状組成物と、を含んで成る高分子ゲル層が、支持体上または剥離性シート上に形成される。したがって、支持体と高分子ゲル層を備える積層物が得られる。支持体上で塗工液を加熱乾燥させ高分子ゲル層を形成させた場合の積層物では、高分子ゲル層に含有される樹脂組成物の一部が支持体に十分に投錨している。一方、加熱乾燥により既に形成された高分子ゲル層を支持体と貼り合わせて積層物を得る場合には、樹脂組成物を支持体に投錨させるために、積層物を50℃以上かつ120℃以下の雰囲気に晒すのが好ましい。
成形工程S40では、先の加熱乾燥工程S30で得られた積層物を切り出すか又は型抜きするかして成形し、使いやすいサイズや形状に整えられた貼付剤1aを得る。先の加熱乾燥工程S30で、順に支持体と高分子ゲル層と剥離性シートを備える積層物を得た場合、剥離性シートにより高分子ゲル層が保護されるから、成形が容易になる。
以上に説明した本製法によれば、貼付剤1aに関して前述したのと同様の理由により、支持体と高分子ゲル層を備え、ヒトの濡れている皮膚でも貼付可能であり、皮膚を傷つけにくい貼付剤を製造することができる。
本製法では、アクリル系共重合体を効率良く形成させやすい観点から、ラジカル開始剤と有機溶媒と親水性分散媒(例えば水)を準備し、有機溶媒と親水性分散媒の存在下においてラジカル開始剤によりモノマーを乳化重合させた乳濁液を得るのが好ましい。乳化重合により、重量平均分子量が比較的に大きなアクリル系共重合体を得やすい。この場合に得られる乳濁液では、エマルションが形成され油相にアクリル系共重合体が分布し、粘度が高くなりにくい。この場合の乳濁液は例えば、その固形分(アクリル系共重合体)含有量が約50質量%でも、粘度が低く扱いやすいため好ましい。
塗工液の油相で起こるイソシアネート系架橋剤とアクリル系共重合体の架橋反応を妨げないよう水相に分布しやすい観点から、塗工液調製工程S20で混合させる本保湿剤や生物活性物質は、水に溶けやすい化合物ほど好ましい。同様の観点から本製法では、あらかじめ水と本保湿剤とノニオン界面活性剤と有機溶媒を混合した乳濁液を調製し、更にアクリル系共重合体やイソシアネート系架橋剤を混合して塗工液を調製するのも好ましい。親水性分散媒(例えば水)を含有する場合の塗工液では、加熱乾燥工程S30で加熱乾燥されると親水性分散媒が気化し実質的に除去されやすい。高分子ゲル層に液状媒質(例えば水)が残存しても、本発明の目的に反しない程度の量であれば許容される。
図1から図4に示す支持体3の第二面4に微小サイズの凹部が多数形成された場合の貼付剤(1a,1b,1c,又は1d)を製造するには、そのような支持体3を図5に示す原料準備工程S11で準備する。例えば、十点平均粗さRzが5μm以上かつ60μm以下である凹凸表面を有するキャスト用剥離性基板を準備し、凹凸表面上に樹脂溶液を流延し乾燥させ、形成される乾燥物を基板から剥離すれば、基板の表面性状が転写され第二面(凹凸の転写面)のRzが5μm≦Rz≦60μmかつ厚みW≦Rzとなった樹脂製フィルム(図1から図4に示す支持体3の素材)を製造可能である。本製法で図4に示す貼付剤1dを製造する場合、図5に示す加熱乾燥工程S30で支持体にキャリアシートを積層しても良いが、更に支持体や第二面を保護する観点から、原料準備工程S11であらかじめ第二面にキャリアシートが仮付けされた支持体を準備するのが好ましい。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施することができる。また、同一の作用または効果が生じる範囲内で、いずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
<原料など>
第1モノマー群から選ばれた1種以上のモノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル(2-Ethylhexyl acrylate:以下「2−EHA」という。東亜合成化学株式会社製)、アクリル酸2−メトキシエチル(2-Methoxyethyl Acrylate:以下「2−MEA」という。東亜合成化学株式会社製、製品名:アクリックス(登録商標)C−1)、及びVAc(富士フイルム和光純薬株式会社製の酢酸ビニル)を準備した。第2モノマー群から選ばれた1種以上のモノマーとして、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(2-Hydroxyethyl Acrylate:以下「2−HEA」という。東亜合成化学株式会社製)を準備した。その他にモノマーとしてAA(東亜合成化学株式会社製のアクリル酸)を準備した。イソシアネート系架橋剤としてコロネートL(東ソー株式会社製)を準備した。コロネートLは、酢酸エチルとアダクト型のTDIやMDIを含有し、固形分の含有量が約75質量%である。
コロネートLに含有される酢酸エチルと別に有機溶媒として、酢酸エチルとトルエンを準備した(富士フイルム和光純薬株式会社製)。ラジカル開始剤としてAIBN(富士フイルム和光純薬株式会社製)を準備した。ノニオン界面活性剤として、トリオレイン酸ソルビタンエステル(花王株式会社製、レオドール(登録商標)SP−O30V)、モノオレイン酸ソルビタンエステル(日光ケミカルズ株式会社製、NIKKOL(登録商標)SO−10V)、及びIPM(日光ケミカルズ株式会社製のミリスチン酸イソプロピル、NIKKOL(登録商標)IPM−100)を準備した。親水性分散媒かつ水溶性保湿剤として、1,3−ブタンジオール(株式会社ダイセル製)を準備した。本保湿剤として、PVP−VA(DSP五協フード&ケミカル株式会社製、S−630)を準備し、水溶性保湿剤であるエリスリトール(三菱ケミカルフーズ株式会社製)とイノシトール(築野ライスファインケミカル株式会社製)を準備した。支持体として、厚み25μmのPUフィルム(シーダム株式会社製、DSU438)に易接着処理を施したもの、厚み50μmのPUフィルム(大倉産業株式会社製、シルクロン(登録商標)NES85)、厚み60μmのPEフィルム(共和工業株式会社製のポリオレフィンフィルム)、及び支持体の調製用にウレタン樹脂溶液(東レコーテックス株式会社製、レオコートU−6285M)を準備した。
次の8種類の生物活性物質を準備した。抗酸化作用を有する、BHT(本州化学工業株式会社製のジブチルヒドロキシトルエン、製品名:H−BHT)と、ビタミンCエステルであるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコビル(日光ケミカルズ株式会社製、製品名:NIKKOL(登録商標)VC−IP、以下「VC−IP」という。)を準備した。美白作用を有する、アルブチン(三菱ケミカル社製、製品名:β−アルブチン)と、HQ(三井化学株式会社製、製品名:ハイドロキノン)を準備した。抗シワ作用を有するビタミンB(カネダ株式会社製、製品名:ナイアシンアミド)を準備した。日焼け止め作用を有するパルミチン酸レチノール(DSM社製)を準備した。抗炎症作用を有するグリチルリチン酸ジカリウム(以下「グリチルリチン酸K」という。)を準備した。抗菌作用を有するIPMP(大阪化成株式会社製の3−メチル−4−イソプロピルフェノール)を準備した。
<実施例1>
93質量部の2−EHA、7.0質量部の2−HEA、0.20質量部のAIBN、及び150質量部の酢酸エチルを混合し、混合液の温度が60℃以上かつ65℃以下となるよう加熱することにより、酢酸エチル中で付加重合によりアクリル系共重合体が形成された粘着剤液を調製した。この粘着剤液は、固形分の含有量が約40質量%で、この固形分を構成するアクリル系共重合体の重量平均分子量が約95万であり、粘着性を有していた。粘着剤液の配合を次の表1に示す。
Figure 2021050187
20gのトリオレイン酸ソルビタンエステル、2.0gのIPM、2.0gのエリスリトール、0.02gのVC−IP、0.1gのBHT、及び2.0gのHQを混合して撹拌することにより、ノニオン界面活性剤と本保湿剤と生物活性物質を含有する混合液(以下「液原料含有液」という。)を調製した。液原料含有液の配合を次の表2に示す。
Figure 2021050187
実施例1で調製した粘着剤液を185gと、実施例1で調製した液原料含有液の全量(26.12g)と、を混合し均一になるよう撹拌し、混合液が所定の粘度を有するまで更にコロネートLを少量ずつ添加しながら撹拌し続けた。コロネートLを合計0.25g添加し撹拌した時点で所定の粘度を有したため、それ以上にコロネートLを添加するのを止め、乳濁液となった塗工液が得られた。塗工液の配合と、配合から算出した質量比(イソシアネート系架橋剤の質量/樹脂組成物の質量)を、次の表3に示す。
Figure 2021050187
シリコーン処理を施されたPETフィルム(剥離性シート)に所定の膜厚になるよう塗工液を塗布し、95℃の乾燥機内で5分送風し加熱乾燥させることにより、塗工液で架橋反応させ酢酸エチルを気化させ、剥離性シート上に厚み80μmの柔らかなゲル状シート(高分子ゲル層)を形成させた。塗工液から酢酸エチルが全て気化し高分子ゲル層が形成された前提で、高分子ゲル層での各種成分の含有量などを算出して次の表4に示す。
Figure 2021050187
高分子ゲル層にPUフィルム(DSU438)を積層し、得られた積層物を2日間40℃に保たれた恒温器内に置いて、架橋反応を完結させ高分子ゲル層をPUフィルムに十分に接着させ固定させた。得られた、順に、PUフィルム(支持体)と、高分子ゲル層と、PETフィルム(剥離性シート)を備える積層物を、貼付剤の原反とした。この原反から後述する評価試験ごとに所定の形状に切り出し、実施例1に係る貼付剤を複数得た。
<実施例2から実施例4>
表1から表3で前述した配合に従い、表4に示す支持体を用いた他は、実施例1と同様にして実施例2から実施例4の各々に係る貼付剤を複数得た。表3に示すように、実施例1と比べ実施例2から実施例4では粘着剤液の混合量が少なく、塗工液が所定の粘度を有するまでコロネートLを多く添加した。表4に示すように、実施例1と比べ実施例2から実施例4では液状組成物の含有量が多く、更に柔らかな高分子ゲル層が形成された。
<実施例5、及び実施例6>
十点平均粗さRzが約30μmである基板上に、ウレタン樹脂溶液(レオコートU−6285M)を塗布し、乾燥機内の110℃の雰囲気下で5分間かけ送風し加熱乾燥させた。ウレタン樹脂溶液から有機溶媒が気化し形成されたPU樹脂層を基板上から剥がして、PUフィルムを試作した。このPUフィルムは、厚み40μmで、十点平均粗さRzが約10μmである転写面(凹凸面)を有していた。また、表1から表3で前述した配合に従った他は実施例1と同様にして高分子ゲル層を得た。表3に示すように、実施例5では試験的にコロネートLを0.70gと多く添加して高分子ゲル層を形成させた。試作したPUフィルム(支持体)の転写面(凹凸面)を高分子ゲル層に貼り合わせ、その他は実施例1と同様にし、実施例5に係る貼付剤と実施例6に係る貼付剤をそれぞれ複数得た。
<比較例1から比較例8>
比較例1から比較例8の各々では、次の表5に示す配合に従い粘着剤液を調製し、後述する表6に示す配合に従い液原料含有液を調製し、後述する表7に示す配合に従い粘着剤液の一部と液原料含有液の全量とコロネートLを混合して塗工液を調製し、後述する表8に示す支持体を用いた他は、前述した実施例1と同様に試作し貼付剤を複数得た。
Figure 2021050187
Figure 2021050187
Figure 2021050187
表3と表7を比べると明らかなように、架橋点として2−HEAを用いた実施例1と比べ、架橋点としてAAを用いた比較例1、比較例4、比較例7、及び比較例8では、塗工液が所定の粘度を有するのにコロネートLを18倍量以上も添加する必要があった。実施例1では本保湿剤(水溶性保湿剤の一種であるエリスリトール)を含有する液原料含有液を調製したが、表6に示すように比較例2、比較例3、比較例5、及び比較例6では本保湿剤を含有していない液原料含有液を調製した。比較例1、比較例7、及び比較例8では、20質量%アルブチン水溶液を他の原料と混合し液原料含有液を調製したため、表6に示すように液原料含有液にアルブチンの4倍量の蒸留水が含有された。その他、比較例1から比較例3、及び比較例5から比較例8では、実施例1と同様にして貼付剤を複数得た。比較例4では架橋反応を促進するために98℃の雰囲気下で加熱乾燥を行い、PUフィルム(支持体)と高分子ゲル層とPETフィルムを備える積層物を50℃に保たれた恒温器内に置いた他は、実施例1と同様にして貼付剤を複数得た。酢酸エチルと蒸留水が全て気化した前提で、高分子ゲル層で各種成分の含有量などを算出し次の表8に示す。
Figure 2021050187
比較例4に係る貼付剤は、高分子ゲル層が崩れないよう剥離性シートを剥がすのに苦労し、皮膚から剥がすと糊残りしたため、明らかに実用性を欠いていた。比較例4では、架橋点としてAAを用い(表5)、高分子ゲル層において樹脂組成物の含有量が24.9質量%と少なく2.2質量%の本保湿剤を含有する(表8)ため、コロネートLを7.0gも添加し(表7)加熱乾燥温度を高めたにも関わらず、凝集破壊されやすい樹脂組成物が形成された。比較例4では、イソシアネート基とAA由来のカルボキシ基の間で架橋反応が進みにくいため本保湿剤などが架橋反応に巻き込まれ、しかも樹脂組成物の含有量が足りないから、軟弱な高分子ゲル層が形成されてしまったものと考えられる。
<評価試験1>
実施例1から実施例3、比較例1、比較例7、及び比較例8の各々について、原反を半円形に切り出し、6種類の貼付剤をそれぞれ複数得た。成人女性4名と成人男性1名の合計5名を被験者とし、6種類の貼付剤を1枚ずつと次の表9に示す質問Aから質問Eが記載されたアンケート用紙を各被験者に手渡した。各被験者には、それぞれ夕方頃に入浴し、入浴後に乾いたタオルで顔面を拭いてから、いずれか1枚の貼付剤を目元(下まぶた)に貼付し、そのまま就寝し翌朝に起床して貼付剤を剥がし、貼付剤の評価結果をアンケート用紙に記入するよう指示した。この評価を、6種類の貼付剤ごとに別の日に行ってもらった。アンケート結果の平均値を、後述する表10に示す。
Figure 2021050187
Figure 2021050187
表10に示すように、タオルで拭かれて濡れていない皮膚に貼付する場合には、比較例1、比較例7、及び比較例8よりも、実施例1から実施例3の方が、質問C(剥がすときの皮膚刺激の弱さ)、質問D(肌に潤いの付与しやすさ)、及び質問E(紅斑の生じにくさ)で良い評価結果を得られた。つまり、架橋点としてAAよりも2−HEAを用いる方が、皮膚を傷めにくいことが示された。比較例1と比べて本保湿剤の含有量が多い他の比較例や実施例での評価結果が良いため、高分子ゲル層にある程度の量の本保湿剤が含有されていると皮膚を傷めにくいことも示された。また、皮膚から貼付剤を剥がした際、実施例1、比較例1、比較例7、及び比較例8では皮膚にしばらくシワが生じていた旨、本発明者らは各被験者から報告を受けた。これらの例では支持体の厚みが薄いから、目元の皮膚の動きに応じて支持体が伸縮すると支持体にシワが生じ、このシワが目元の皮膚に転写され、剥がした後もしばらくシワが皮膚に残っていたものと考えられる。一方、実施例2や実施例3でシワは生じなかった旨の報告を受けたため、パック材としてシワが生じるのを避ける観点から、支持体の厚みは40μm以上あるのが好ましいと考えられる。
<評価試験2>
JIS Z 0237:2009に準拠し、実施例1から実施例4、比較例1、比較例3、及び比較例7の各々に係る貼付剤を、表面仕上げBAのSUS304板に2kgゴムローラーで1往復して貼付し、剥離速度300mm/分で貼付剤を引っ張り、SUS板に対する180°引き剥がし粘着力を3回測定し平均値を得た。また、本発明者らの前腕の屈側で濡れていない皮膚に、実施例1から実施例4、比較例1、比較例3、及び比較例7の各々に係る貼付剤を1日にわたり貼付し、使用感を評価した。その後、剥離速度300mm/分の条件で皮膚に対し180°の方向に貼付剤を引っ張り、皮膚から貼付剤が剥離する様子を観察し評価した。この測定条件で、実施例4に係る貼付剤については、濡れていない皮膚に対する皮膚接着力を3回測定して平均値を得た。
後日に本発明者らは、角層膜厚・水分計(ASA−M2)を用い、自身の前腕の屈側の濡れていない皮膚で角層水分量と皮膚コンダクタンスを測定した。この皮膚の5cm×12cmの範囲に、市販の化粧水(株式会社ノエビア製、商品名:なめらか本舗(登録商標)乳液NA)約0.5gを指先で略均一に塗布し、化粧水でベタベタに濡れている皮膚で同様に角層水分量を測定した。この濡れている皮膚に高分子ゲル層が触れるよう、実施例1から実施例4、比較例1、比較例3、及び比較例7の各々に係る貼付剤を載せた。載せて30分経過時に貼付剤を引っ張り、濡れている皮膚でも貼付剤を安定して貼付可能か観察した。実施例4に係る貼付剤では、載せて30分経過時に剥離速度300mm/分の条件で濡れている皮膚に対し180°の方向に貼付剤を引っ張り、皮膚接着力を測定した。実施例1から実施例4の各々に係る貼付剤を剥がした跡の濡れている皮膚で、同様に角層水分量と皮膚コンダクタンスを測定した。評価結果の一部を次の表11に示す。
Figure 2021050187
表11に示すように、樹脂組成物の含有量が多いほどSUS板や濡れていない皮膚に強く粘着し、液状組成物の含有量が多いほど柔らかくなった。実施例4に係る貼付剤では、濡れていない皮膚に対する皮膚接着力が約0.06N/20mmであり、貼付後30分経過時での濡れている皮膚に対する皮膚接着力が約0.01N/20mmであり、更に長時間経過すると皮膚接着力が増す傾向を示した。なお、SUS板に対する180°引き剥がし粘着力は、従来の一般的な貼付剤では7.0N/20mm以上かつ15N/20mm以下程度であり、以前に本発明者らが開発したゲル状貼付剤では3.0N/20mm以上かつ15N/20mm以下程度であった(特許文献4を参照)。これら従来例を考慮すると、実施例1から実施例4は、液状組成物により粘着力が幾らか弱く抑えられているにも関わらず、濡れている皮膚でも安定して貼付可能で、皮膚を傷つけにくく調整されている。
表11に示すように、比較例1や比較例7で高分子ゲル層が硬いのは、AA由来カルボキシ基とコロネートL由来イソシアネート基の架橋反応が進みにくかったから、コロネートLの使用量を実施例1の18倍以上にした(表7)ことに因ると考えられる。つまり、前述した比較例4と比べ比較例1や比較例9では、イソシアネート系架橋剤の使用量が多いから、凝集破壊されにくい網目構造を形成できた反面、本保湿剤や生物活性物質が架橋反応に巻き込まれ樹脂組成物に共有結合されたため、高分子ゲル層の柔らかさが損なわれたものと推察される。これに対し実施例1から実施例4では、2−HEA由来第1級ヒドロキシ基とコロネートL由来イソシアネート基の架橋反応が効率良く進み、凝集破壊されにくく柔らかい網目構造が形成されたと考えられる。
表11に示すように、比較例1、比較例3、及び比較例7で貼付剤を濡れている皮膚に上手く貼付できなかったのは、高分子ゲル層に本保湿剤が含有されないか又は含有されてもその大半が樹脂組成物に結合され高分子ゲル層から放出されにくいため、高分子ゲル層が化粧水となじみにくく、濡れている皮膚から剥脱しやすかったものと考えられる。一方、実施例1から実施例4で貼付剤を濡れている皮膚に安定して貼付可能であったのは、架橋点としてAAよりもコロネートLと架橋反応しやすい2−HEAを用いたことにより、コロネートLの使用量が少なく済んだから本保湿剤(特に水溶性保湿剤)が樹脂組成物に共有結合されず高分子ゲル層から放出されやすいため、高分子ゲル層が化粧水になじんで濡れている皮膚に付着しやすかったものと考えられる。
角層膜厚・水分計角(ASA−M2)での測定結果によれば、貼付前の濡れていない皮膚で、角層水分量は3.5%から9.5%であり、皮膚コンダクタンスは0.5μSから2.0μSであった。その後、化粧水をたっぷり塗布され濡れている皮膚での角層水分量は、60%よりも大きかった。実施例1から実施例4の各々に係る貼付剤を剥がした跡の皮膚では、角層水分量が37.3%から51.1%、皮膚コンダクタンスが24.9μSから38.5μSであった。このため、実施例1から実施例4の各々では、皮膚に潤いが付与されたことを確認できた。
<評価試験3>
実施例2と比較例3の各々で原反を半円形に切り出し、実施例2又は比較例3に係る貼付剤を得た。比較例9として、市販の部分パック材(コーセーコスメポート株式会社製、商品名:クリアターン 肌ふっくら アイゾーンマスクa)を準備した。この部分パック材の説明文には、化粧水やクリームで肌を整えてから使用する旨が記載されていた。評価試験1と同じ5名を被験者とし、各被験者に、実施例2、比較例3、及び比較例9の各々に係る貼付剤を1枚ずつと、評価試験2で用いたのと同じ化粧水を手渡した。各被験者には、就寝前に目元(下まぶた)の皮膚に化粧水をたっぷり塗布し、化粧水でベトベトに濡れている目元にいずれか1種類の貼付剤を貼付し、そのまま就寝し、翌朝の起床時に貼付剤が目元に貼付されたままか否かを評価するよう指示した。この評価を、3種類の貼付剤ごとに別の日に行ってもらった。後日に本発明者らは、被験者5名全員から共通して、次の表12に示す評価結果の報告を受けた。
Figure 2021050187
表12に示すように、比較例3や比較例9は、濡れている皮膚に全く付着しなかった。比較例3では高分子ゲル層にアルブチンが含有されているが、貼付不可能であるためアルブチンによる美白作用を全く期待できなかった。比較例9に係る市販の部分パック材は、化粧水で濡れている皮膚に貼付するのではなく、化粧水が皮膚内部に浸透し皮膚表面が濡れていない状態になったときに貼付する製品であると考えられる。一方、実施例2では、評価試験2で前述したのと同じ理由で濡れている目元の皮膚に安定して貼付され、かつ、高分子ゲル層から化粧水や皮膚表面へ本保湿剤(水溶性保湿剤)が放出され、不感蒸泄により皮膚内部から皮膚表面へにじみ出た水分が本保湿剤に吸収され皮膚表面に保たれた(保湿作用)ため、皮膚に潤いと張りが与えられたものと考えられる。つまり、化粧水などを肌に多量に塗布して皮膚表面がしばらくベトベトに濡れたままになった場合でも、実施例2に係る貼付剤を用いれば、化粧水の大半が皮膚表面から大気中へ蒸散し無駄になるのを避けて、肌に潤いを付与することが可能になるため、肌の美容に有用である。
1a,1b,1c,1d,1e 貼付剤
2a,2d,2e 高分子ゲル層
3 支持体

Claims (8)

  1. 支持体と高分子ゲル層を備える貼付剤であって、
    前記高分子ゲル層は、イソシアネート系架橋剤によりアクリル系共重合体が架橋されて成る樹脂組成物と、ノニオン界面活性剤および保湿剤を含んで成る液状組成物と、を含有して形成されており、前記高分子ゲル層における前記樹脂組成物の含有量が25質量%以上かつ75質量%以下であり、当該高分子ゲル層における前記液状組成物の含有量が25質量%以上かつ75質量%以下であり、
    前記保湿剤は、水溶性または親水性である1種以上の吸湿性を有する化合物であり、
    前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分子内にヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、及び飽和脂肪酸ビニルエステルからなる群より選ばれた1種以上のモノマー又はその付加重合物に由来する第1構成単位と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれた1種以上のモノマー又はその付加重合物に由来する第2構成単位と、をそれぞれ複数含んで構成されたことを特徴とする貼付剤。
  2. 前記液状組成物において、前記ノニオン界面活性剤の前記保湿剤に対する質量比(当該ノニオン界面活性剤の質量/当該保湿剤の質量)が5.0以上かつ100以下である請求項1に記載された貼付剤。
  3. 前記液状組成物は、さらに、1種以上の生物活性物質を含んで成る請求項1又は請求項2に記載された貼付剤。
  4. 前記液状組成物は、さらに、30℃で液状である油を含んで成る請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された貼付剤。
  5. JIS Z 0237:2009に準拠した剥離速度300mm/分でのSUS304板に対する180°引き剥がし粘着力が0.010N/20mm以上かつ2.0N/20mm以下である請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載された貼付剤。
  6. 肌の美容またはスキンケアに用いられる請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載された貼付剤。
  7. 順に、前記支持体と、前記高分子ゲル層と、使用時に前記高分子ゲル層から剥離される剥離性シートと、を備える請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載された貼付剤。
  8. 支持体と高分子ゲル層を備える貼付剤の製造方法であって、
    前記高分子ゲル層に含有される樹脂組成物の原料としてイソシアネート系架橋剤およびアクリル系共重合体を含む樹脂原料群、並びに、当該高分子ゲル層に含有される液状組成物の原料としてノニオン界面活性剤および保湿剤を含む液原料群を準備する工程と、
    前記樹脂原料群を溶解または分散させるための液状媒質の存在下において、当該樹脂原料群と前記液原料群の合計質量に対して当該樹脂原料群の質量が占める質量比(当該樹脂原料群の質量/当該樹脂原料群と当該液原料群の合計質量)が0.25以上かつ0.75以下となるように、前記原料を混合させて混合組成物を得る工程と、
    前記混合組成物を加熱乾燥させて前記高分子ゲル層を形成させる工程と、
    を含み、
    前記保湿剤は、水溶性または親水性である1種以上の吸湿性を有する化合物であり、
    前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分子内にヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、及び飽和脂肪酸ビニルエステルからなる群より選ばれた1種以上のモノマー又はその付加重合物に由来する第1構成単位と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれた1種以上のモノマー又はその付加重合物に由来する第2構成単位と、をそれぞれ複数含んで構成されたことを特徴とする貼付剤の製造方法。
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