JP2021008579A - バインダー樹脂用溶剤およびそれを含むバインダー樹脂組成物 - Google Patents

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敏敬 松本
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Abstract

【課題】バインダー樹脂を均一に溶解し、乾燥時に長時間を要さず、さらに乾燥ムラや乾燥残渣を生じず、塗工時に薄膜化に適する粘度を有する電子情報材料用ペースト溶液や導電性インク溶液などを容易に製造できる石化系のバインダー樹脂用溶剤およびそれを含むバインダー樹脂組成物を提供することを課題とする。【解決手段】一般式(1):[式中、Rは、水素原子又はC1〜C4アシル基である]で表わされる2−シクロヘキシルプロパン誘導体を含むバインダー樹脂用溶剤により、上記課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、バインダー樹脂用溶剤およびそれを含むバインダー樹脂組成物に関する。本発明で提供されるバインダー樹脂用溶剤およびそれを含むバインダー樹脂組成物は、プリンタブルエレクトロニクスの分野において、電極ペースト、誘電体ペースト、導電性ペースト等の各種電子情報材料用ペーストや導電性インクなどの各種インクジェット用インクに用いられ、最終製品形態としては、例えば多層セラミックコンデンサー(MLCC)や太陽電池、全固体電池などの各種電池類、圧電アクチュエーター等の積層型高性能電子部品、回路基板の製造などに主に使用される。
プリンタブルエレクトロニクスによる電子部品の製造分野では、機能性を発現する金属粉末やガラス粉末をバインダー樹脂用溶剤およびバインダー樹脂と混合してペーストまたはインク状とし、これを基板や基材などに塗布して乾燥・焼結することにより、電極や素子又は回路パターンを製造している。近年の電子機器の小型化に伴い、より微細な電極や素子又は回路パターンなどの形成に優れたバインダー樹脂用溶剤およびそのバインダー樹脂組成物が求められ、積層型電子部品や基板においては、集積度の向上を目的に、多層化や一層当たりの薄膜化も求められている。
例として、セラミック電子部品の製造工程を示す。まず、ポリビニルブチラールやアクリル樹脂などのバインダー樹脂を有機溶剤に溶解し、チタン酸バリウム等のセラミック無機粉末を加え混合する。この混合物をシート状に形成して乾燥し、グリーンシートを形成する(グリーンシート法)。
次にバインダー樹脂としてエチルセルロース樹脂などをバインダー樹脂用溶剤に溶解し、さらにニッケル、パラジウムなどの導電性金属粉末を加えた各種ペースト、インクをスクリーン印刷法やマイクログラビア印刷などによりグリーンシート上に塗布し、配線パターンなどを形成して乾燥する。この操作を複数回繰り返して積層体とし、高温焼成して、積層セラミックコンデンサーなどを製造している。またグリーンシート法ではなく、各種プラスチックフィルムに直接回路を形成するフレキシブルな回路基板や多層基板は、インクジェット法により塗布し、乾燥焼結して製造されている。
このような製造工程において、各種塗布用ペーストやインクに用いられるバインダー樹脂用溶剤には、
(1)バインダー樹脂などを均一に溶解し、その溶液の分散状態の経時変化が少ないこと
(2)その溶液が、精密印刷に好適な低粘度を維持し、その粘度の経時変化が少なく、吸水率が小さいこと
(3)乾燥、焼成工程において、バインダー樹脂用溶剤の乾燥に長時間を要さず、さらに該溶剤が均一に揮発・発散し、乾燥ムラや残渣が生じないこと
(4)高品質で、低価格であること
などの特徴を有するバインダー樹脂用溶剤が求められており、そのいずれかが欠けても満足する物性を持つ多層セラミックコンデンサー(MLCC)や太陽電池、全固体電池などの各種電池類、圧電アクチュエーター等の積層型高性能電子部品、回路基板を得ることができない。
さらに、グリーンシート法を用いる製造工程では、グリーンシートに含まれている樹脂を溶解(シートアタック)しないことも求められ、このようにバインダー樹脂用溶剤には、その揮発性に加え、用いる樹脂の溶解性および粘度などの諸物性において、様々な特性が要求される。
従来このような課題を解決するために様々な方法が提案されている。例えば、プリンタブルエレクトロニクス分野の電子部品製造に広く用いられているエチルセルロース樹脂などを溶解するバインダー樹脂用溶剤として、水素添加テルピネオールを用いる方法(特許文献1)、イソボニルアセテートおよび/またはノイルアセテートを用いる方法(特許文献2)、ターピニルアセテートを用いる方法(特許文献3)などが挙げられる。
これらの特許文献に用いられるバインダー樹脂用溶剤は、主に環状テルペン系化合物である。これら環状テルペン系化合物は松脂などの天然物を原料源として製造されるが、天然物は天候などの自然環境や需要逼迫などにより入手性が左右され、近年特に環境問題意識の向上から市場供給量も制限される懸念があり、顕著な価格高騰の原因となっている。さらに産地ごとで原料に成分差異があり、バインダー樹脂用溶剤の品質のばらつき原因となる場合があり、高品質の電子部品を安定して製造できないなどの問題が生じている。
一方で、その対策として、天然物を原料源としない石化系の代替溶剤が提案され、例えば、トリアセチンを用いる方法(特許文献4)、トリプロピレングリコールやトリエチレングリコールのようなポリグリコール系溶剤やそれらのエーテル系溶剤、あるいはドデカノール等の高級アルコール類を用いる方法(特許文献5)などが挙げられる。しかしながら、トリアセチンは沸点が260℃もあり、乾燥工程に長時間かつ高温での処理が必要となり、基材への負担が大きくなるため製造プロセスに適さず、ポリグリコール類やポリグリコールエーテル類はバインダー樹脂の溶解性が低い等の課題があり、目的とする電子部品を容易に製造できる石化系の有効なバインダー樹脂用溶剤は見出されていない。
また、2−シクロヘキシルプロピルアセテートおよび2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートは香料用途としては使用されている(特許文献6、特許文献7)が、電子情報材料用途としての性能は見出されていない。
特開平07−21832公報 特開2002−270456公報 特開2006−12690公報 特開2009−147202公報 特開2009−245844公報 特開平3−59097公報 特開平3−66637公報
そこで、本発明は、バインダー樹脂を均一に溶解し、乾燥時に長時間を要さず、さらに乾燥ムラや乾燥残渣を生じず、塗工時に薄膜化に適する粘度を有する電子情報材料用ペースト溶液や導電性インク溶液などを容易に製造できる石化系のバインダー樹脂用溶剤およびそれを含むバインダー樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明の発明者らは、鋭意研究努力を重ねた結果、バインダー樹脂用溶剤として2−シクロヘキシルプロパン誘導体を使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、一般式(1):
[式中、Rは、水素原子又はC1〜C4アシル基である]
で表わされる2−シクロヘキシルプロパン誘導体であることを特徴とするバインダー樹脂用溶剤が提供される。
また、本発明によれば、一般式(1)のRが、水素又はホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリルおよびイソブチリル基からなる群から選択されるC1〜C4アシル基である前記のバインダー樹脂用溶剤が提供される。
また、本発明によれば、前記2−シクロヘキシルプロパン誘導体が、2−シクロヘキシルプロパノール、2−シクロヘキシルプロピルアセテートおよび2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートからなる群から選択される1種または2種以上の混合物である前記のバインダー樹脂用溶剤が提供される。
また、本発明によれば、前記2−シクロヘキシルプロパン誘導体が、単独または2種類以上の混合物である前記のバインダー樹脂用溶剤が提供される。
また、本発明によれば、前記バインダー樹脂溶剤が、アルコール系溶剤、エステル系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種の溶剤をさらに含む前記のバインダー樹脂用溶剤が提供される。
また、本発明によれば、前記のバインダー樹脂用溶剤とポリエーテル樹脂、セルロース樹脂、ヒドロキシアルキルセルロース樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、ロジン、アルキッド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂を含むバインダー樹脂組成物が提供される。
本発明によれば、バインダー樹脂を均一に溶解し、乾燥時に長時間を要さず、さらに乾燥ムラや乾燥残渣を生じず、塗工時に薄膜化に適する粘度を有する電子情報材料用ペースト溶液や導電性インク溶液などを容易に製造でき、それらの溶液の粘度の経時変化が無く、吸水性の小さい石化系のバインダー樹脂用溶剤およびそれを含むバインダー樹脂組成物を提供することができる。
具体的には、本発明によるバインダー樹脂用溶剤は、バインダー樹脂の溶解性に優れ、また揮発特性が良好で、さらに塗工時の薄膜化に適する低粘度に調整することができるので、電子情報材料用ペースト溶液や導電性インク溶液などを容易に製造することができる。また本発明で提供されるバインダー樹脂組成物は、多層セラミックコンデンサー(MLCC)や太陽電池、全固体電池などの各種電池類、圧電アクチュエーター等の積層型高性能電子部品、回路基板などに好適に使用される。
2-シクロヘキシルプロパノール、2−シクロヘキシルプロピルアセテート、および2-シクロヘキシルプロピルプロピオネートの30〜400℃におけるTG(ThermoGravimetry)測定結果を示す図である。
本発明で用いられる用語「バインダー樹脂」とは、化学業界および電子情報材料業界で一般的に用いられている用語であり、その定義からはずれるものではない。バインダーは物と物を結合、接合、結着、固着、接着することを意味するもので、バインダー樹脂はそのために効力を発揮する樹脂のことをいう。
本発明で用いられる用語「バインダー樹脂用溶剤」とは、塗布乾燥後に塗膜を形成する「バインダー樹脂」成分を溶解する溶剤のことである。
本発明で用いられる用語「バインダー樹脂組成物」とは、バインダー樹脂用溶剤にバインダー樹脂を溶解した溶液のことである。バインダー樹脂組成物は、金属粉末などの無機物やガラス粉末を均一分散し、多層セラミックコンデンサー(MLCC)や太陽電池、全固体電池、有機EL、圧電アクチュエーター等の積層型高性能電子部品、回路基板の製造に用いられる膜形成用塗布液の製造に好適に用いられる。
本発明で用いられるバインダー樹脂としては、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール樹脂などのポリエーテル樹脂類、メチルセルロース、エチルセルロースおよびニトロセルロース樹脂などのセルロース樹脂類、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース樹脂などヒドロキシアルキルセルロース樹脂類、ポリビニルホルマールおよびポリビニルブチラール樹脂などのポリアセタール樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステルおよびアクリル−スチレン樹脂などのアクリル樹脂類、ロジン、アルキッド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の様々な樹脂が挙げられる。これらの中でも、バインダー樹脂用溶剤への溶解性および金属粉末の分散性に優れ、焼成時の残留物が少ないことから、どのようなインクにも相性が良く汎用性のある樹脂として電子部品に多用されている点でセルロース樹脂、アクリル樹脂およびポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。なお、セルロース樹脂、アクリル樹脂およびポリビニルブチラール樹脂はその汎用性から分子量の異なる品番が多岐にわたっているが、そのいずれの品番においても用いることができる。
またこれらのバインダー樹脂の使用量は、バインダー樹脂用溶剤に対して0.1〜50%、より好ましくは1.0〜20%であり、バインダー樹脂組成物として、製造するペーストやインクの種類や物性に応じて調整される。
本発明によるバインダー樹脂組成物は、バインダー樹脂を含むバインダー樹脂用溶剤が、一般式(1):
[式中、Rは、水素原子又はC1〜C4アシル基である]
で表わされる2−シクロヘキシルプロパン誘導体が単独で用いられるかまたは2種以上の混合物として用いられることを特徴とする。
前記C〜Cアシル基は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリルまたはイソブチリル基を意味する。
本発明による前記一般式(1)におけるRが、水素原子、アセチル基またはプロピオニル基である場合、前記2−シクロヘキシルプロパン誘導体は、2−シクロヘキシルプロパノール、2−シクロヘキシルプロピルアセテートおよび2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートである。
本発明によるバインダー樹脂用溶剤は、天然物を原料源としていないため、環状テルペン系化合物などと異なり、天候や環境問題から原料の市場供給量が制限されたりすることがなく、天然原料に特有の成分差異による影響もなく、安価で高品質の電子部品を安定して製造できる特徴を有する。
前記の一般式(1)で表わされるバインダー樹脂用溶剤は、2−シクロヘキシルプロパン骨格を共通の炭素骨格として有しているため、以下の図1に示すように、ほぼ同じ揮発性を示すという特徴がある。
さらに、本発明によるバインダー樹脂組成物は、一般式(1)で表わされる化合物の分子内の官能基の違い、すなわちヒドロキシ基が未反応であるか、またはエステル結合を形成しているか、またはアシル基の違いを選択することにより極性を変えることができるため、バインダー樹脂用溶剤の使用量、バインダー樹脂の選択、バインダー樹脂組成物の粘度、シートアタック性および吸水率をコントロールできることを特徴とする。
したがって、上記の溶剤を単独で、または任意に混合して使い分けることにより、目的とする物性を持つバインダー樹脂組成物を製造することができる。
本発明の2−シクロヘキシルプロパン誘導体である2−シクロヘキシルプロパノール、2−シクロヘキシルプロピルアセテートおよび2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートは、いずれも好ましくは100℃〜250℃、より好ましくは150℃〜200℃の条件において優れた乾燥特性を有し、乾燥時に乾燥ムラ(乾燥斑)を生じず、かつ乾燥残渣を生じないことを特徴とする。上述した乾燥条件が100℃未満であると乾燥に長時間を要すため、製造プロセスに適合できず、250℃を超えると基材へのダメージが大きくなるため、満足する乾燥特性が得られないことがある。
「乾燥斑」とは、バインダー樹脂用溶剤を用いた塗布用ペーストや塗布用インクを塗布した後、乾燥工程において溶剤が均一に揮発・乾燥しないと溶剤による特有の形状の乾燥ムラが目視により確認されることをいう。一方、「乾燥残渣」とは、バインダー樹脂用溶剤に起因する残渣が乾燥後に残ることをいい、天然物由来の原料を用いた溶剤などに含まれる不純物が揮発せずに残ったものである。前記の一般式(1)で表わされるバインダー樹脂用溶剤は、いずれも乾燥ムラ(乾燥斑)がなく、かつ乾燥残渣がないため、単独または2種類以上の混合物として各種塗布用ペーストや塗布用インクに求められる性能に合わせて調整することができる。
さらには、本発明の2−シクロヘキシルプロパン誘導体をバインダー樹脂用溶剤として用いることで、塗布用ペーストや塗布用インクは、塗布後の膜厚の薄膜化に適する低粘度に調整することができる。積層型電子部品や基板において、集積度の向上を目的する多層化や一層当たりの薄膜化に対応するため、塗布後の膜厚は好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下とすることができる。一方、低粘度とは、薄膜化を実現する高速印刷に適した範囲の粘度であり、25℃におけるバインダー樹脂用溶剤の粘度としては60mPa・s以下、バインダー樹脂組成物としては500mPa・s以下、好ましくは70mPa・s以下の塗布溶液を製造することができる。
本発明の2−シクロヘキシルプロパン誘導体である、2−シクロヘキシルプロパノール、2−シクロヘキシルプロピルアセテートおよび2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートはバインダー樹脂を均一に溶解し、粘度変化が少なく、揮発性に優れた低価格の溶剤であり、従来のテルペン系溶剤に比較して、特にバインダー樹脂組成物の低粘度化に優れ、グラビア印刷、マイクログラビア印刷などの高速薄膜印刷やインクジェット法に好適に使用することができる。さらには、電子部品の製造工程で一定の粘度の塗布用ペーストや塗布用インクを調整する場合において、従来のテルペン系溶剤に比べて使用する溶剤量を少なくすることができるため、製造における乾燥工程の効率化を図ることができる。数%の溶剤削減が可能になれば、多層セラミックコンデンサー(MLCC)や太陽電池、全固体電池、積層型高性能電子部品、回路基板などの生産性が大きく改善され、量産時の効果は非常に大きいものがある。
また、2−シクロヘキシルプロピルアセテートおよび2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートは従来のテルペン系溶剤と比較してより優れたシートアタック抑制効果を有し、特に近年、グリーンシートの薄膜化が進行し、より厳しいシートアタック抑制効果が求められるプリンタブルエレクトロニクス分野において好適に使用することができる。さらに、2−シクロヘキシルプロピルアセテートおよび2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートは優れた低吸水率特性を持つため、電子部品の長時間の製造工程において、経時変化の少ない安定した塗布用ペーストや塗布用インク特性を維持することができる。電子部品用途で求められるバインダー樹脂溶剤の吸水率は、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.1%の各種塗布用ペーストや塗布用インクを製造することができる。また、2−シクロヘキシルプロパノール、2−シクロヘキシルプロピルアセテートおよび2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートを使用したバインダー樹脂組成物は、従来のテルペン系溶剤を使用したバインダー樹脂組成物よりも低粘度であるため、同じ粘度のバインダー樹脂組成物を作製する場合に溶剤を削減することができる。
本発明において、2−シクロヘキシルプロパン誘導体と共に用いられる溶剤としては、バインダー樹脂の良好な溶解性、導電性金属粉末、ガラス粉末または誘電性セラミックス粉末などの分散性、塗布用ペーストや塗布用インクの良好な塗布性などを付与し得るものであればよく、特に制限なく、アルコール系溶剤、エステル系溶剤およびエーテル系溶剤を使用することができる。例えば、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール、テルピネオール、ターピネアセテート、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メチル―1,3-ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル―1,5-ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン等があげられ、(炭素数/水酸基数)が5未満の多価アルコール系溶剤等と混合して使用してもよい。
本発明の2-シクロヘキシルプロパン誘導体は、前記アルコール系溶剤、エステル系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤をさらに含むことができ、これらの溶剤の配合割合は、2−シクロヘキシルプロパン誘導体に対して5〜95%が好ましく、30〜70%がより好ましい。5%以上であればこれらの溶剤が持つ特性を付与することができ、95%以下であれば本発明の2−シクロヘキシルプロパン誘導体の特性を発揮できる。
プリンタブルエレクトロニクスの分野において、本発明のバインダー樹脂用溶剤は、金属粉末、有機金属化合物粉末またはガラス粉末などを含む電極ペースト、誘電体ペースト、導電性ペースト等の各種電子情報材料用ペーストや導電性インク等の各種インクジェット用インクに用いられるが、用いられる金属粒子は、特に限定されない。例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)等の金属の単体、およびこれら金属の混合物又は合金から選ばれる1種以上の微粒子やナノ粒子が挙げられる。Ni合金としては、例えば、Mn、Cr、Co、Al、Fe、Cu、Zn、Ag、Au、PtおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素とNiとの合金(Ni合金)が用いることができる。カーボンブラック、カーボンナノチューブおよびグラフェン等の炭素材料、LaSrCoFeO系酸化物、LaMnO系酸化物、LaFeO酸化物、LaCoO系酸化物等の遷移金属ペロブスカイト型酸化物に代表される導電性セラミックスなども用いることができる。
一方、有機金属化合物は、特に限定されないが、例えば前記金属のアセチルアシレート錯塩、カルボン酸塩、硫化物等が挙げられ、ガラス粉末、または誘電性セラミックスとして酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化カルシウム(PbO−B−SiO−CaO)系、酸化亜鉛-酸化ホウ素-酸化ケイ素(ZnO−B−SiO)系、および酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素(PbO−ZnO−B−SiO)系のガラス粉末などを含むペーストの製造に使用できる。
粒子の形状や粒径は特に制限されるものではなく、例えば、平均粒径が数nm〜数十μm、好ましくは1nm〜10μm程度のものから用途に応じて選択することができる。
また、本発明のバインダー樹脂用溶剤とバインダー樹脂を含むバインダー樹脂組成物を用いた各種ペーストやインクの製造において、添加剤として粘着性付与剤、可塑剤、表面張力調整剤、安定剤、消泡剤、分散剤などを任意成分として加えてもよい。
本発明のバインダー樹脂用溶剤とバインダー樹脂を含むバインダー樹脂組成物を用いた各種ペーストやインク組成物は、各成分を混練することにより得られる。混錬方法としては、三本ロール等のロール式混錬機やホモミキサー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー等の当業者に公知の混錬方法を用いて製造することができる。
本発明のバインダー樹脂用溶剤とバインダー樹脂を含むバインダー樹脂組成物を用いた各種ペーストやインクの塗布方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スプレー塗布、スピンコート塗布、スリットダイ、スロットダイ等のダイコーター塗布、ブレードコーター塗布などが挙げられる。塗布対象物に直接塗布するか、支持基材などを介して転写塗布して塗布膜を形成することができる。好ましくは、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、スリットダイ、スロットダイなどの高速薄膜印刷やインクジェット印刷に好適に使用される。
各種ペースト組成物やインク組成物の塗布膜は、室温または150〜300℃程度の温度で加熱による乾燥後、約600〜1200℃で焼成することにより金属成分又はガラス成分のみが残り薄膜回路やガラス層などを形成することができる。
本発明の2−シクロヘキシルプロパン誘導体は、例えば、次のような方法で製造することができる。
すなわち、下記構造式(2)で表される2−フェニル−1−プロパノールまたは構造式(3)で表される2−フェニルプロピオンアルデヒドを金属触媒下で芳香環を還元することで得られる下記構造式(4)で表される2−シクロヘキシルプロパノールを、溶媒中、アシル化剤を用いるアシル化反応に付すことにより製造できる。
上記の金属触媒を用いた上記の2−フェニル−1−プロパノールまたは2−フェニルプロピオンアルデヒドの還元反応は、適当な溶媒に溶かし、少量の金属触媒を加え、オートクレーブ容器に高圧水素ガス雰囲気下で撹拌して反応を行うことができる。
上記の芳香環還元の金属触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、およびラネーニッケルなどの不均一系触媒が挙げられ、白金においてはPtO(Adams触媒)が、その他の金属は活性炭、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの不活性単体に保持された状態のものが挙げられる。
上記の芳香環還元の金属触媒を用いる還元反応は、通常、水、アルコール、酢酸エチルまたは酢酸などがよく用いられ、エーテル、ベンゼン、ヘキサンあるいはジオキサンなどの不活性溶媒の存在下、あるいは溶媒の非存在下においても行うことができる。
具体的には前記の構造式(4)で表される2−シクロヘキシルプロパノールは、構造式(2)で表される2−フェニル−1−プロパノール、または構造式(3)で表される2−フェニルプロピオンアルデヒドに、ラネーニッケルまたはRu/C触媒の存在下で高圧水素ガスを反応させ、反応液をろ過することにより製造することができる。
これら例示した製造方法は用いる原料および金属触媒により反応条件は異なるが、0.9〜4.5MPa、80℃〜200℃の範囲で実施される。さらに製造した構造式(4)で表される2−シクロヘキシルプロパノールは、常圧、あるいは減圧条件下で、蒸留、シリカゲルもしくはアルミナカラムクロマトグラフィーまたはHPLCなどの公知の方法により精製することも可能であるが、場合によっては反応後得られた化合物を未精製の状態で使用することもできる。
上記のアシル化剤としては、カルボン酸:酢酸、カルボン酸無水物:酢酸無水物、カルボン酸ハライド:塩化アセチル、カルボン酸イミダゾール化合物:酢酸イミダゾールなどの当業者に周知のアシル化剤が挙げられる。
上記のアシル化剤を用いるアシル化反応は、通常、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、ベンゼンまたはトルエンなどの不活性溶媒中、冷却下または室温〜溶媒の沸点の間の温度で行うことができる。
例えば、上記のカルボン酸を用いる上記の2−シクロヘキシルプロパノールのアシル化反応は、通常、ベンゼンまたはトルエン中、触媒量の硫酸またはp−トルエンスルホン酸などの酸触媒の存在下または非存在下に、加熱還流し、ディーンスタークにより脱水縮合により生成した水を留去しながら反応を行うか、過剰のカルボン酸を用いて反応を行うこができる。
あるいは、上記の反応において、ディーンスタークを用いる代わりに、乾燥し活性化した十分な量のモレキュラーシーブに脱水縮合により生成した水を吸着させて反応を行うか、N,N'−ジシクロへキシルカルボジイミドなどの縮合剤の存在下に反応を行うことにより、2−シクロヘキシルプロパノールをアシル化することができる。
また、上記のカルボン酸無水物を用いるアシル化反応は前記の溶媒の存在下または非存在下に、上記のカルボン酸イミダゾール化合物を用いるアシル化反応は前記の溶媒の存在下に、2−シクロヘキシルプロパノールと反応を行うことにより、2−シクロヘキシルプロパノールをアシル化することができる。
また、上記のカルボン酸ハライドを用いるアシル化反応は、前記の溶媒中、トリエチルアミン、ピリジンもしくは4−ジメチルアミノピリジンなどのルイス塩基の存在下に反応を行うことにより、2−シクロヘキシルプロパノールをアシル化することができる。
具体的には、前記の構造式(1)で表される2−シクロヘキシルプロピルアセテートは、構造式(4)で表される2−シクロヘキシルプロパノールに、酢酸、無水酢酸または塩化アセチルを反応させることにより製造できる。
これら例示した製造方法は用いる原料、アシル化剤および縮合反応により反応条件は異なるが、通常、常圧あるいは減圧下、0℃〜200℃の範囲、好ましくは室温〜溶媒の沸点の間の温度で実施される。さらに製造した構造式(1)で表されるバインダー樹脂用溶剤は、常圧、あるいは減圧条件下で、蒸留、シリカゲルもしくはアルミナカラムクロマトグラフィーまたはHPLCなどの公知の方法により精製することも可能であるが、場合によっては反応後得られた化合物を未精製の状態で使用することもできる。
以下に具体的な製造例、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの製造例および実施例によりなんら制限されるものではない。
製造例1
2−シクロヘキシルプロパノールの製造(その1)
2−フェニル−1−プロパノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)300g(2.2モル)に5%Ru/Alを9g(3重量%)加えてオートクレーブ容器に入れ、高速撹拌を行いながら120℃にて水素圧9.5〜7.0kgf/cmを維持した。191時間後、反応液をラヂオライトろ過し、得られたろ液をエバポレータ−で減圧濃縮して216gの濃縮物を得た。この生成物をH−もしくは13C−NMRおよびガスクロマトグラフィーで確認したところ、目的とする2−シクロヘキシルプロパノールが78.4%、エチルシクロヘキサンが16.8%、イソプロピルシクロヘキサンが4.8%、原料の2−フェニル−1−プロパノールは検出されなかった。さらにこの濃縮物を減圧度4.8〜1.4kPa、留出温度48.9〜90.1℃で上記の副生成物の2化合物を回収し、その後、減圧度1.3kPa、留出温度102.8℃で本留分として68.0gを得た。
ガスクロマトグラフィー分析条件:InertCap(登録商標)1 内径0.25mm 膜厚0.25μm 長さ30mカラム、窒素キャリアーガス、インジェクション温度200℃、検出器温度250℃、カラムオーブン温度60℃5分保持から240℃7分保持、10℃/分昇温
製造例2
2−シクロヘキシルプロパノールの製造(その2)
2−フェニル−1−プロパノール200g(1.4モル)にラネーニッケル(含水)を10g(5重量%)加えてオートクレーブ容器に入れ、高速撹拌を行いながら120℃にて水素圧4.5MPaを維持した。18時間後、反応液をろ過して151gのろ液を得た。この生成物をH−もしくは13C−NMRおよびガスクロマトグラフィー(分析条件は前記記載の方法)で確認したところ、目的とする2−シクロヘキシルプロパノールが93.7%、エチルシクロヘキサンが2.2%、イソプロピルシクロヘキサンが3.7%含まれていることが分かった。
製造例3
2−シクロヘキシルプロピルアセテートの製造
2−シクロヘキシルプロパノール642g(4.5モル)に酢酸270g(4.5モル)を混ぜて加熱し、留出温度が91〜96℃となるように反応液の温度を125〜140℃に維持した。6時間後、54gの水および酢酸が留出したところで冷却した。反応温度80℃になった時点で、アスピレーターにより減圧を行い、徐々に昇温しながら減圧度11.5〜7.7kPa、留出温度46℃で反応液中に存在する水および未反応の酢酸を回収した。反応温度88℃になった時点で、無水酢酸204g(2モル)を滴下し、反応温度100〜110℃で撹拌した。2時間後、ガスクロマトグラフィーで原料2−シクロヘキシルプロパノールがほぼ消失したことを確認後、アスピレーターにより減圧を行い、減圧度9.8kPa、留出温度52〜60℃で酢酸および未反応の無水酢酸を回収した。その後、減圧度1.8〜1.3kPa、留出温度107〜97℃で本留分として814gを得た。この生成物をH−もしくは13C−NMRおよびガスクロマトグラフィーで確認したところ、目的とする2−シクロヘキシルプロピルアセテートが99.7%含まれていることが分かった。
製造例4
2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートの製造
2−シクロヘキシルプロパノール500g(3.5モル)にプロピオン酸260g(3.5モル)を混ぜて加熱し、留出温度が65〜70℃となるように反応液の温度を125〜140℃に維持した。6時間後、32gの水およびプロピオン酸が留出したところで冷却した。反応温度80℃になった時点で、アスピレーターにより減圧を行い、徐々に昇温しながら減圧度8.6〜4.5kPa、留出温度34℃で反応液中に存在する水および未反応のプロピオン酸を回収した。反応温度88℃になった時点で、無水プロピオン酸190g(1.4モル)を滴下し、反応温度100〜110℃で撹拌した。4時間後、ガスクロマトグラフィーで原料2−シクロヘキシルプロパノールがほぼ消失したことを確認後、アスピレーターにより減圧を行い、減圧度7.4kPa、留出温度73〜82℃でプロピオン酸および未反応の無水プロピオン酸を回収した。その後、減圧度1.0〜0.6kPa、留出温度115〜100℃で本留分として616gを得た。この生成物をH−もしくは13C−NMRおよびガスクロマトグラフィーで確認したところ、目的とする2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートが99.7%含まれていることが分かった。
各バインダー樹脂用溶剤について、以下の評価を行った。
[評価方法]
(1)均一分散
各バインダー樹脂用溶剤20gに対してエチルセルロース樹脂5gを添加し、60℃で十分に撹拌し、目視により溶解確認を行った。判定基準は下記のとおりとした。
○:残存するバインダー粒子を確認できず、かつバインダー樹脂組成物が無色透明である。
×:残存するバインダー粒子を確認できる、あるいはバインダー樹脂組成物が濁っている。
(2)乾燥斑
各バインダー樹脂用溶剤をグリーンシート上に塗布して乾燥させ、目視により乾燥斑が確認できなければ○、確認されれば×とした。
(3)乾燥残渣
TG分析装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「TG/DTA6300」により、30〜400℃、10分/分昇温、空気流量100mL/分で各バインダー樹脂用溶剤約30mgのTG(ThermoGravimetry)測定を行い、測定後のアルミパン中の各バインダー樹脂用溶剤の残渣の有無を下記式および目視にて確認した。
判定基準は下記のとおりとした。
○:99.9<熱分析重量変化≦100、かつ目視による残渣なし
×:熱分析重量変化<99.9、もしくは目視による残渣あり
(4)粘度
各バインダー樹脂用溶剤にバインダー樹脂を溶解し、各バインダー樹脂組成物の粘度(B型粘度計:BROOKFIELD社製DV−II Pro VISCOMETER)を25℃で測定した。判定基準は以下の通りとした。バインダー樹脂はダウ・ケミカル社製のETHOCELTMSTD4を使用した。
◎:各バインダー樹脂用溶剤に対して5%のエチルセルロースを溶解したバインダー樹脂組成物の粘度が70mPa・s以下。
○:各バインダー樹脂用溶剤に対して5%のエチルセルロースを溶解したバインダー樹脂組成物の粘度が500mPa・s以下。
×:各バインダー樹脂用溶剤に対して5%のエチルセルロースを溶解したバインダー樹脂組成物の粘度が500mPa・sを超える。
(5)高速印刷
(4)の粘度評価で作成した各種バインダー樹脂組成物500gを準備し、小型のテスト用グラビアコーターを用いて、幅15cm、乾燥膜厚が5μmになるように塗布乾燥し、薄膜サンプルを作成した。乾燥後の薄膜表面の状態を光学顕微鏡にて観察し、表面が平滑なものを〇、凹凸やスジ、膜厚変動の大きいものを×とした。塗布速度は10m/分〜50m/分、乾燥温度は150℃〜200℃で実施した。
(6)品質
天然物由来の原料によってしか製造できない溶剤は天然物の性状によって品質が決まってしまうため×、石化系原料によってできる溶剤を○とした。
(7)供給安定性
天然物を原料としているために自然環境や需要逼迫などにより入手性が左右されるものを×、そうでないものを○とした。
(8)溶剤削減
エチルセルロース樹脂をバインダーとして用いたバインダー樹脂組成物の粘度を500mPa・sとなるように調整した。ジヒドロターピネオールまたはジヒドロターピニルアセテートをバインダー樹脂用溶剤として使用した場合の使用量を100として本発明のバインダー樹脂用溶剤の使用量を計算し、100から本発明のバインダ樹脂用溶剤の使用量を差し引いた値を溶剤削減率として記載した。また、より高い粘度での調整が必要になる場合(例えばポリビニルブチラール樹脂を使用した場合60000mPa・s、エチルセルロース樹脂を使用した場合4000mPa・s)についても検討した。
実施例1
バインダー樹脂用溶剤として2−シクロヘキシルプロピルアセテートを用い、バインダー樹脂としてエチルセルロース樹脂(ダウ・ケミカル社製、ETHOCEL STD4)を使用して(8)溶剤削減評価をジヒドロターピニルアセテートとの比較で行い、その他の評価は評価方法に記載の方法で行った。
実施例2
バインダー樹脂用溶剤として2−シクロヘキシルプロパノールを用い、バインダー樹脂としてエチルセルロース樹脂(ダウ・ケミカル社製、ETHOCEL STD4)およびポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製、BH−3)を使用して(8)溶剤削減評価をジヒドロターピネオールとの比較で行い、その他の評価は評価方法に記載の方法で行った。
実施例3
バインダー樹脂用溶剤として2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートを用いたこと以外は、実施例1と同様に評価した。
比較例1
バインダー樹脂用溶剤として2−フェニル−1−プロパノールを用いたこと以外は実施例2と同様に評価した。
比較例2
バインダー樹脂用溶剤としてターピネオールを用いたこと以外は実施例2と同様に評価した。
比較例3
バインダー樹脂用溶剤としてジヒドロターピネオールを用いたこと以外は実施例2と同様に評価した。
比較例4
バインダー樹脂用溶剤としてジヒドロターピニルアセテートを用いたこと以外は実施例1と同様に評価した。
上記の評価結果を以下に示す。
上記の評価結果を総合的に判断すると、本願発明の実施例1〜3に記載のバインダー樹脂用溶剤は、比較例1〜4に記載の既存のバインダー樹脂用溶剤に比べて優れていることが判った。
さらに、実施例1および3ならびに比較例1〜3に記載のバインダー樹脂用溶剤とバインダー樹脂を用いて、以下の評価を行った。
(9)シートアタック性
チタン酸バリウムスラリー(チタン酸バリウム(堺化学工業社製、BT−01)、ポリビニルブチラール樹脂、分散剤を含む)を均一に分散し、これをグラビアコーターでPETフィルムに塗布し、乾燥して厚さ1.7μmのグリーンシートを作成した。このグリーンシート上にバインダー樹脂用溶剤を塗布して50℃で10分間乾燥させた後、顕微鏡によりシートアタック特有の膨潤現象や破れが確認されず、さらに裏面観察により溶剤跡が確認されなければ○、確認されれば×とした。
(10)吸水性
バインダー樹脂用溶剤を25℃にて撹拌し、適宜サンプリングしてカールフィッシャー水分計によりバインダー樹脂用溶剤中の水分を測定した。水分測定計:京都電子工業株式会社製「MKA−510」、測定条件:アクアミクロン滴定剤SS3mg、アクアミクロン脱水溶剤MS、サンプル量0.1〜0.3gを使用して同一試料で3回測定し、測定結果の平均を採用した。実験開始時の水分と比較して0.1%上がるまでの経過日数が1日〜2日の場合は×、3日目以降変化がなかったものは○とした。
上記の結果から、本願発明の実施例1および3に記載のバインダー樹脂用溶剤は、比較例1〜3に記載の既存のバインダー樹脂用溶剤と比べて、シートアタック性および吸水性の点からも優れていることが判った。
本発明によるバインダー樹脂用溶剤は、バインダー樹脂を均一に溶解し、乾燥時に長時間を要さず、さらに乾燥ムラや乾燥残渣を生じず、その上、シートアタック性および吸水性の点からも優れているとともに、塗工時に薄膜化に適する粘度を有するペースト用樹脂溶液などを容易に製造できる。

Claims (6)

  1. 一般式(1):
    [式中、Rは、水素原子又はC1〜C4アシル基である]
    で表わされる2−シクロヘキシルプロパン誘導体であることを特徴とするバインダー樹脂用溶剤。
  2. 一般式(1)のRが、水素又はホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリルおよびイソブチリル基からなる群から選択されるC1〜C4アシル基である請求項1に記載のバインダー樹脂用溶剤。
  3. 前記2−シクロヘキシルプロパン誘導体が、2−シクロヘキシルプロパノール、2−シクロヘキシルプロピルアセテートおよび2−シクロヘキシルプロピルプロピオネートから選択される化合物である請求項1または2に記載のバインダー樹脂用溶剤。
  4. 前記2−シクロヘキシルプロパン誘導体が、単独または2種類以上の混合物である請求項1〜3のいずれか1つに記載のバインダー樹脂用溶剤。
  5. 前記バインダー樹脂用溶剤が、アルコール系溶剤、エステル系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種の溶剤をさらに含む請求項1〜4のいずれか1つに記載のバインダー樹脂用溶剤。
  6. 前記請求項1〜5のいずれか1つに記載のバインダー樹脂用溶剤と、ポリエーテル樹脂、セルロース樹脂、ヒドロキシアルキルセルロース樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、ロジン、アルキッド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂とを含むバインダー樹脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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