JP2021003963A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】過給機付きエンジンの始動性の悪化を抑制しつつ、停止時におけるエンジンのクランク角度が所定角度範囲から外れてしまうのを抑制する。【解決手段】エンジン12の停止時にウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48が開弁状態に制御されるので、エンジン12の始動時におけるエンジン12のピストンの往復運動の抵抗を下げることができる。一方で、エンジン12の停止時であっても、モータ走行中且つ有段変速部60の変速中である場合は、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブが閉弁状態に制御されるので、エンジン12のピストンの往復運動の抵抗が大きくされて、エンジン12が連れ回され難くされる。よって、過給機18付きエンジン12の始動性の悪化を抑制しつつ、停止時におけるクランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrgから外れてしまうのを抑制することができる。【選択図】図11
Description
本発明は、過給機付きエンジンと電気式変速機構と機械式変速機構とを備えたハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
エンジンと、前記エンジンが動力伝達可能に連結された差動機構と前記差動機構に動力伝達可能に連結された第1回転機とを有して前記第1回転機の運転状態が制御されることにより前記差動機構の差動状態が制御される電気式変速機構と、駆動輪に動力伝達可能に連結された第2回転機とを備えたハイブリッド車両の制御装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド車がそれである。この特許文献1には、ハイブリッド車の制御方法において、エンジンを始動するときに生じる振動を抑制する為に、第1回転機の出力トルク等を制御してエンジンの停止時におけるクランク角度を所定角度範囲内に制御することが開示されている。
ところで、電気式変速機構と駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構を更に備えたハイブリッド車両も良く知られている。このようなハイブリッド車両において、エンジンを停止した状態で第2回転機を動力源として走行するモータ走行中に機械式変速機構の変速が為される場合がある。このような場合、変速過渡中における機械式変速機構の入力回転部材すなわち電気式変速機構の出力回転部材の回転変化にエンジンが連れ回されて、停止時におけるエンジンのクランク角度が所定角度範囲から外れてしまうおそれがある。前記エンジンが、排気管に設けられたタービンを迂回させて排気を流す為の排気バイパスと、前記排気バイパスに設けられたウェイストゲートバルブと、吸気管に設けられたコンプレッサーを迂回させて空気を再循環させる為の空気再循環バイパスと、前記空気再循環バイパスに設けられたエアバイパスバルブとを備えた過給機付きエンジンである場合において、上述したような課題を解決しようとすることについて提案する。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、過給機付きエンジンの始動性の悪化を抑制しつつ、停止時におけるエンジンのクランク角度が所定角度範囲から外れてしまうのを抑制することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
第1の発明の要旨とするところは、(a)エンジンと、前記エンジンが動力伝達可能に連結された差動機構と前記差動機構に動力伝達可能に連結された第1回転機とを有して前記第1回転機の運転状態が制御されることにより前記差動機構の差動状態が制御される電気式変速機構と、前記電気式変速機構と駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構と、前記駆動輪に動力伝達可能に連結された第2回転機とを備えるものであり、前記エンジンは、排気管に設けられたタービンを迂回させて排気を流す為の排気バイパスと、前記排気バイパスに設けられたウェイストゲートバルブと、吸気管に設けられたコンプレッサーを迂回させて空気を再循環させる為の空気再循環バイパスと、前記空気再循環バイパスに設けられたエアバイパスバルブとを備えた過給機付きエンジンであるハイブリッド車両の、制御装置であって、(b)前記エンジンの停止時におけるクランク角度を所定角度範囲内に制御するエンジン停止時クランク角制御部と、(c)前記エンジンの停止時に前記ウェイストゲートバルブ及び前記エアバイパスバルブを開弁状態に制御する一方で、前記エンジンの停止時であっても、前記第2回転機を動力源として走行するモータ走行中且つ前記機械式変速機構の変速中である場合は、前記ウェイストゲートバルブ及び前記エアバイパスバルブのうちの少なくとも一方のバルブを閉弁状態に制御するバルブ閉じ制御を実行するエンジン停止時バルブ制御部とを、含むことにある。
また、第2の発明は、前記第1の発明に記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記エンジン停止時バルブ制御部は、前記エンジンの停止時において前記エンジンのクランク角度が前記所定角度範囲内に制御されていることを条件に、前記バルブ閉じ制御を実行することにある。
また、第3の発明は、前記第1の発明又は第2の発明に記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記エンジン停止時バルブ制御部は、前記機械式変速機構の変速指令の出力に先立って、前記バルブ閉じ制御を開始することにある。
また、第4の発明は、前記第3の発明に記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記エンジン停止時バルブ制御部は、前記機械式変速機構の変速を予測した時点から、前記開弁状態におけるバルブの開き量に応じて予め定められた前記変速指令の出力に対する前出し時間が得られるように設定した待機時間が経過した時点で前記バルブ閉じ制御を開始することにある。
また、第5の発明は、前記第1の発明から第4の発明の何れか1つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記エンジン停止時バルブ制御部は、前記機械式変速機構の変速過渡におけるイナーシャ相開始前に、前記ウェイストゲートバルブ及び前記エアバイパスバルブのうちの少なくとも一方のバルブを閉弁状態とした状態に制御することにある。
また、第6の発明は、前記第1の発明から第5の発明の何れか1つに記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記エンジンの停止時は、前記エンジンの運転を停止し、且つ、前記エンジンによるエンジンブレーキトルクを前記ハイブリッド車両に作用させていない前記エンジンの回転停止時である。
前記第1の発明によれば、過給機付きエンジンにおいて、エンジンの停止時にウェイストゲートバルブ及びエアバイパスバルブが開弁状態に制御されるので、エンジンの始動時におけるエンジンのピストンの往復運動の抵抗を下げることができ例えばエンジンのポンピングロスを小さくすることができ、エンジンの始動性を向上することができる。このように、エンジンの停止時にエンジンの始動に備えておくことができる。一方で、エンジンの停止時にウェイストゲートバルブ及びエアバイパスバルブが開弁状態に制御されていると、モータ走行中に機械式変速機構の変速が為された場合に、エンジンが連れ回され易くされて、停止時におけるエンジンのクランク角度が所定角度範囲から外れてしまうおそれがある。前記第1の発明によれば、エンジンの停止時であっても、モータ走行中且つ機械式変速機構の変速中である場合は、ウェイストゲートバルブ及びエアバイパスバルブのうちの少なくとも一方のバルブを閉弁状態に制御するバルブ閉じ制御が実行されるので、エンジンのピストンの往復運動の抵抗が大きくされて例えばエンジンのポンピングロスが増加させられて、エンジンが連れ回され難くされる。よって、過給機付きエンジンの始動性の悪化を抑制しつつ、停止時におけるエンジンのクランク角度が所定角度範囲から外れてしまうのを抑制することができる。
また、前記第2の発明によれば、エンジンの停止時においてエンジンのクランク角度が所定角度範囲内に制御されていることを条件に、前記バルブ閉じ制御が実行されるので、前記バルブ閉じ制御の実行に伴うエンジンの始動性への影響を抑えることができる。
また、前記第3の発明によれば、機械式変速機構の変速指令の出力に先立って、前記バルブ閉じ制御が開始されるので、機械式変速機構の変速中にウェイストゲートバルブ及びエアバイパスバルブのうちの少なくとも一方のバルブが閉弁状態とされ易くされる。
また、前記第4の発明によれば、機械式変速機構の変速が予測された時点から、開弁状態におけるバルブの開き量に応じた待機時間が経過した時点で前記バルブ閉じ制御が開始されるので、前記バルブ閉じ制御が適切なタイミングで開始され得て、機械式変速機構の変速中にはウェイストゲートバルブ及びエアバイパスバルブのうちの少なくとも一方のバルブが確実に閉弁状態とされる。
また、前記第5の発明によれば、機械式変速機構の変速過渡におけるイナーシャ相開始前に、ウェイストゲートバルブ及びエアバイパスバルブのうちの少なくとも一方のバルブが閉弁状態とした状態に制御されるので、機械式変速機構の変速中のうちでエンジンの連れ回しが生じ得るイナーシャ相中には、ウェイストゲートバルブ及びエアバイパスバルブのうちの少なくとも一方のバルブが確実に閉弁状態とされる。これにより、停止時におけるエンジンのクランク角度が所定角度範囲から外れてしまうのを適切に抑制することができる。
また、前記第6の発明によれば、前記エンジンの停止時は、エンジンの運転を停止し、且つ、エンジンブレーキトルクをハイブリッド車両に作用させていないエンジンの回転停止時であるので、過給機付きエンジンにおいて、エンジンの始動性の悪化を抑制しつつ、停止時におけるエンジンのクランク角度が所定角度範囲から外れてしまうのを抑制することができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2を備えたハイブリッド車両である。又、車両10は、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16とを備えている。
図2は、エンジン12の概略構成を説明する図である。図2において、エンジン12は、車両10の走行用の動力源であり、過給機18を有するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関、すなわち過給機18付きエンジンである。エンジン12の吸気系には吸気管20が設けられており、吸気管20はエンジン本体12aに取り付けられた吸気マニホールド22に接続されている。エンジン12の排気系には排気管24が設けられており、排気管24はエンジン本体12aに取り付けられた排気マニホールド26に接続されている。過給機18は、吸気管20に設けられたコンプレッサー18cと排気管24に設けられたタービン18tとを有する、公知の排気タービン式の過給機すなわちターボチャージャーである。タービン18tは、排出ガスすなわち排気の流れにより回転駆動させられる。コンプレッサー18cは、タービン18tに連結されており、タービン18tによって回転駆動させられることでエンジン12への吸入空気すなわち吸気を圧縮する。
排気管24には、タービン18tの上流側から下流側へタービン18tを迂回させて排気を流す為の排気バイパス28が並列に設けられている。排気バイパス28には、タービン18tを通過する排気と排気バイパス28を通過する排気との割合を連続的に制御する為のウェイストゲートバルブ(=WGV)30が設けられている。ウェイストゲートバルブ30は、後述する電子制御装置100によって不図示のアクチュエータが作動させられることにより弁開度が連続的に調節される。ウェイストゲートバルブ30の弁開度が大きい程、エンジン12の排気は排気バイパス28を通って排出され易くなる。従って、過給機18の過給作用が効くエンジン12の過給状態において、過給機18による過給圧Pchgはウェイストゲートバルブ30の弁開度が大きい程低くなる。過給機18による過給圧Pchgは、吸気の圧力であり、吸気管20内でのコンプレッサー18cの下流側気圧である。尚、過給圧Pchgの低い側は、例えば過給機18の過給作用が全く効いていないエンジン12の非過給状態における吸気の圧力となる側、見方を換えれば過給機18を有していないエンジンにおける吸気の圧力となる側である。
吸気管20の入口にはエアクリーナ32が設けられ、エアクリーナ32よりも下流であってコンプレッサー18cよりも上流の吸気管20には、エンジン12の吸入空気量Qairを測定するエアフローメータ34が設けられている。コンプレッサー18cよりも下流の吸気管20には、吸気と外気又は冷却水とで熱交換を行うことで過給機18により圧縮された吸気を冷却する熱交換器であるインタークーラ36が設けられている。インタークーラ36よりも下流であって吸気マニホールド22よりも上流の吸気管20には、後述する電子制御装置100によって不図示のスロットルアクチュエータが作動させられることにより開閉制御される電子スロットル弁38が設けられている。インタークーラ36と電子スロットル弁38との間の吸気管20には、過給機18による過給圧Pchgを検出する過給圧センサ40、吸気の温度である吸気温度THairを検出する吸気温センサ42が設けられている。電子スロットル弁38の近傍例えばスロットルアクチュエータには、電子スロットル弁38の開度であるスロットル弁開度θthを検出するスロットル弁開度センサ44が設けられている。
吸気管20には、コンプレッサー18cの下流側から上流側へコンプレッサー18cを迂回させて空気を再循環させる為の空気再循環バイパス46が並列に設けられている。空気再循環バイパス46には、例えば電子スロットル弁38の急閉時に開弁させられることによりサージの発生を抑制してコンプレッサー18cを保護する為のエアバイパスバルブ(=ABV)48が設けられている。エアバイパスバルブ48は、後述する電子制御装置100によって不図示のアクチュエータが作動させられることにより弁開度が連続的に調節される。
エンジン12は、後述する電子制御装置100によって、電子スロットル弁38や燃料噴射装置や点火装置やウェイストゲートバルブ30やエアバイパスバルブ48等を含むエンジン制御装置50(図1参照)が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
図1に戻り、第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、車両10の走行用の動力源となり得る。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられたバッテリ54に接続されている。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、後述する電子制御装置100によってインバータ52が制御されることにより、第1回転機MG1の出力トルクであるMG1トルクTg及び第2回転機MG2の出力トルクであるMG2トルクTmが制御される。回転機の出力トルクは、例えば正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。バッテリ54は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々に対して電力を授受する蓄電装置である。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース56内に設けられている。
動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース56内において共通の軸心上に直列に配設された、電気式無段変速部58及び機械式有段変速部60等を備えている。電気式無段変速部58は、直接的に或いは図示しないダンパーなどを介して間接的にエンジン12に連結されている。機械式有段変速部60は、電気式無段変速部58の出力側に連結されている。又、動力伝達装置16は、機械式有段変速部60の出力回転部材である出力軸62に連結された差動歯車装置64、差動歯車装置64に連結された車軸66等を備えている。動力伝達装置16において、エンジン12や第2回転機MG2から出力される動力は、機械式有段変速部60へ伝達され、その機械式有段変速部60から差動歯車装置64等を介して駆動輪14へ伝達される。このように構成された動力伝達装置16は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)方式の車両に好適に用いられる。尚、以下、電気式無段変速部58を無段変速部58、機械式有段変速部60を有段変速部60という。又、動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。又、無段変速部58や有段変速部60等は上記共通の軸心に対して略対称的に構成されており、図1ではその軸心の下半分が省略されている。上記共通の軸心は、エンジン12のクランク軸、そのクランク軸に連結された連結軸68などの軸心である。
無段変速部58は、第1回転機MG1と、エンジン12の動力を第1回転機MG1及び無段変速部58の出力回転部材である中間伝達部材70に機械的に分割する動力分割機構としての差動機構72とを備えている。中間伝達部材70には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。第1回転機MG1は、エンジン12の動力が伝達される回転機である。中間伝達部材70は、有段変速部60を介して駆動輪14に連結されているので、第2回転機MG2は、駆動輪14に動力伝達可能に連結された回転機である。無段変速部58は、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構72の差動状態が制御される電気式無段変速機である。第1回転機MG1は、エンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Neを制御可能な回転機、例えばエンジン回転速度Neを引き上げることが可能な回転機である。動力伝達装置16は、動力源の動力を駆動輪14へ伝達する。尚、第1回転機MG1の運転状態を制御することは、第1回転機MG1の運転制御を行うことである。
差動機構72は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS0、キャリアCA0、及びリングギヤR0を備えている。キャリアCA0には連結軸68を介してエンジン12が動力伝達可能に連結され、サンギヤS0には第1回転機MG1が動力伝達可能に連結され、リングギヤR0には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。差動機構72において、キャリアCA0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能する。
有段変速部60は、中間伝達部材70と駆動輪14との間の動力伝達経路の一部を構成する有段変速機としての自動変速機、つまり無段変速部58と駆動輪14との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構である。中間伝達部材70は、有段変速部60の入力回転部材としても機能する。中間伝達部材70には第2回転機MG2が一体回転するように連結されているので、又は、無段変速部58の入力側にはエンジン12が連結されているので、有段変速部60は、動力源(第2回転機MG2又はエンジン12)と駆動輪14との間の動力伝達経路の一部を構成する変速機である。中間伝達部材70は、駆動輪14に動力源の動力を伝達する為の伝達部材である。有段変速部60は、例えば第1遊星歯車装置74及び第2遊星歯車装置76の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置とを備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。
係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、車両10に備えられた油圧制御回路78から出力される調圧された係合装置CBの各油圧Pc1,Pc2,Pb1,Pb2(後述する図6参照)により、各々、係合や解放などの状態である作動状態が切り替えられる。
有段変速部60は、第1遊星歯車装置74及び第2遊星歯車装置76の各回転要素が、直接的に或いは係合装置CBやワンウェイクラッチF1を介して間接的に、一部が互いに連結されたり、中間伝達部材70、ケース56、或いは出力軸62に連結されている。第1遊星歯車装置74の各回転要素は、サンギヤS1、キャリアCA1、リングギヤR1であり、第2遊星歯車装置76の各回転要素は、サンギヤS2、キャリアCA2、リングギヤR2である。
有段変速部60は、複数の係合装置のうちの何れかの係合装置である例えば所定の係合装置の係合によって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。つまり、有段変速部60は、複数の係合装置が選択的に係合されることによって、ギヤ段が切り替えられるすなわち変速が実行される。有段変速部60は、複数のギヤ段の各々が形成される、有段式の自動変速機である。本実施例では、有段変速部60にて形成されるギヤ段をATギヤ段と称す。AT入力回転速度Niは、有段変速部60の入力回転部材の回転速度である有段変速部60の入力回転速度であって、中間伝達部材70の回転速度と同値であり、又、第2回転機MG2の回転速度であるMG2回転速度Nmと同値である。AT入力回転速度Niは、MG2回転速度Nmで表すことができる。出力回転速度Noは、有段変速部60の出力回転速度である出力軸62の回転速度であって、無段変速部58と有段変速部60とを合わせた全体の変速機である複合変速機80の出力回転速度でもある。複合変速機80は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路の一部を構成する変速機である。
有段変速部60は、例えば図3の係合作動表に示すように、複数のATギヤ段として、AT1速ギヤ段(図中の「1st」)−AT4速ギヤ段(図中の「4th」)の4段の前進用のATギヤ段が形成される。AT1速ギヤ段の変速比γatが最も大きく、ハイ側のATギヤ段程、変速比γatが小さくなる。又、後進用のATギヤ段(図中の「Rev」)は、例えばクラッチC1の係合且つブレーキB2の係合によって形成される。つまり、後述するように、後進走行を行う際には、例えばAT1速ギヤ段が形成される。図3の係合作動表は、各ATギヤ段と複数の係合装置の各作動状態との関係をまとめたものである。すなわち、図3の係合作動表は、各ATギヤ段と、各ATギヤ段において各々係合される係合装置である所定の係合装置との関係をまとめたものである。図3において、「○」は係合、「△」はエンジンブレーキ時や有段変速部60のコーストダウンシフト時に係合、空欄は解放をそれぞれ表している。
有段変速部60は、後述する電子制御装置100によって、ドライバー(すなわち運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成されるATギヤ段が切り替えられる、すなわち複数のATギヤ段が選択的に形成される。例えば、有段変速部60の変速制御においては、係合装置CBの何れかの掴み替えにより変速が実行される、すなわち係合装置CBの係合と解放との切替えにより変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される。本実施例では、例えばAT2速ギヤ段からAT1速ギヤ段へのダウンシフトを2→1ダウンシフトと表す。他のアップシフトやダウンシフトについても同様である。
車両10は、更に、ワンウェイクラッチF0、機械式のオイルポンプであるMOP82、電動式のオイルポンプであるEOP84等を備えている。
ワンウェイクラッチF0は、キャリアCA0を回転不能に固定することができるロック機構である。すなわち、ワンウェイクラッチF0は、エンジン12のクランク軸と連結された、キャリアCA0と一体的に回転する連結軸68を、ケース56に対して固定することができるロック機構である。ワンウェイクラッチF0は、相対回転可能な2つの部材のうちの一方の部材が連結軸68に一体的に連結され、他方の部材がケース56に一体的に連結されている。ワンウェイクラッチF0は、エンジン12の運転時の回転方向である正回転方向に対して空転する一方で、エンジン12の運転時とは逆の回転方向に対して自動係合する。従って、ワンウェイクラッチF0の空転時には、エンジン12はケース56に対して相対回転可能な状態とされる。一方で、ワンウェイクラッチF0の係合時には、エンジン12はケース56に対して相対回転不能な状態とされる。すなわち、ワンウェイクラッチF0の係合により、エンジン12はケース56に固定される。このように、ワンウェイクラッチF0は、エンジン12の運転時の回転方向となるキャリアCA0の正回転方向の回転を許容し且つキャリアCA0の負回転方向の回転を阻止する。すなわち、ワンウェイクラッチF0は、エンジン12の正回転方向の回転を許容し且つ負回転方向の回転を阻止することができるロック機構である。
MOP82は、連結軸68に連結されており、エンジン12の回転と共に回転させられて動力伝達装置16にて用いられる作動油oilを吐出する。MOP82は、例えばエンジン12により回転させられて作動油oilを吐出する。EOP84は、車両10に備えられたオイルポンプ専用のモータ86により回転させられて作動油oilを吐出する。MOP82やEOP84が吐出した作動油oilは、油圧制御回路78へ供給される(後述する図6参照)。係合装置CBは、作動油oilを元にして油圧制御回路78により調圧された各油圧Pc1,Pc2,Pb1,Pb2によって作動状態が切り替えられる。
図4は、無段変速部58と有段変速部60とにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図4において、無段変速部58を構成する差動機構72の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素RE2に対応するサンギヤS0の回転速度を表すg軸であり、第1回転要素RE1に対応するキャリアCA0の回転速度を表すe軸であり、第3回転要素RE3に対応するリングギヤR0の回転速度(すなわち有段変速部60の入力回転速度)を表すm軸である。又、有段変速部60の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素RE4に対応するサンギヤS2の回転速度、第5回転要素RE5に対応する相互に連結されたリングギヤR1及びキャリアCA2の回転速度(すなわち出力軸62の回転速度)、第6回転要素RE6に対応する相互に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2の回転速度、第7回転要素RE7に対応するサンギヤS1の回転速度をそれぞれ表す軸である。縦線Y1、Y2、Y3の相互の間隔は、差動機構72の歯車比ρ0に応じて定められている。又、縦線Y4、Y5、Y6、Y7の相互の間隔は、第1、第2遊星歯車装置74,76の各歯車比ρ1,ρ2に応じて定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリアとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリアとリングギヤとの間が遊星歯車装置の歯車比ρ(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)に対応する間隔とされる。
図4の共線図を用いて表現すれば、無段変速部58の差動機構72において、第1回転要素RE1にエンジン12(図中の「ENG」参照)が連結され、第2回転要素RE2に第1回転機MG1(図中の「MG1」参照)が連結され、中間伝達部材70と一体回転する第3回転要素RE3に第2回転機MG2(図中の「MG2」参照)が連結されて、エンジン12の回転を中間伝達部材70を介して有段変速部60へ伝達するように構成されている。無段変速部58では、縦線Y2を横切る各直線L0e,L0m,L0Rにより、サンギヤS0の回転速度とリングギヤR0の回転速度との関係が示される。
又、有段変速部60において、第4回転要素RE4はクラッチC1を介して中間伝達部材70に選択的に連結され、第5回転要素RE5は出力軸62に連結され、第6回転要素RE6はクラッチC2を介して中間伝達部材70に選択的に連結されると共にブレーキB2を介してケース56に選択的に連結され、第7回転要素RE7はブレーキB1を介してケース56に選択的に連結されている。有段変速部60では、係合装置CBの係合解放制御によって縦線Y5を横切る各直線L1,L2,L3,L4,LRにより、出力軸62における「1st」,「2nd」,「3rd」,「4th」,「Rev」の各回転速度が示される。
図4中の実線で示す、直線L0e及び直線L1,L2,L3,L4は、少なくともエンジン12を動力源として走行するハイブリッド走行が可能なハイブリッド走行(=HV走行)モードでの前進走行における各回転要素の相対速度を示している。このハイブリッド走行モードでは、差動機構72において、キャリアCA0に入力される正トルクのエンジントルクTeに対して、第1回転機MG1による負トルクの反力トルクとなるMG1トルクTgがサンギヤS0に入力されると、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるエンジン直達トルクTd(=Te/(1+ρ0)=−(1/ρ0)×Tg)が現れる。そして、要求駆動力に応じて、エンジン直達トルクTdとMG2トルクTmとの合算トルクが車両10の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段−AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部60を介して駆動輪14へ伝達される。第1回転機MG1は、正回転にて負トルクを発生する場合には発電機として機能する。第1回転機MG1の発電電力Wgは、バッテリ54に充電されたり、第2回転機MG2にて消費される。第2回転機MG2は、発電電力Wgの全部又は一部を用いて、或いは発電電力Wgに加えてバッテリ54からの電力を用いて、MG2トルクTmを出力する。
図4中の一点鎖線で示す直線L0m及び図4中の実線で示す直線L1,L2,L3,L4は、エンジン12の運転を停止した状態で第1回転機MG1及び第2回転機MG2のうちの少なくとも一方の回転機を動力源として走行するモータ走行が可能なモータ走行(=EV走行)モードでの前進走行における各回転要素の相対速度を示している。モータ走行モードでの前進走行におけるモータ走行としては、例えば第2回転機MG2のみを動力源として走行する単駆動モータ走行と、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を共に動力源として走行する両駆動モータ走行とがある。単駆動モータ走行では、キャリアCA0はゼロ回転とされ、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるMG2トルクTmが入力される。このとき、サンギヤS0に連結された第1回転機MG1は、無負荷状態とされて負回転にて空転させられる。単駆動モータ走行では、ワンウェイクラッチF0が解放されており、連結軸68はケース56に対して固定されていない。両駆動モータ走行では、キャリアCA0がゼロ回転とされた状態で、サンギヤS0に負回転にて負トルクとなるMG1トルクTgが入力されると、キャリアCA0の負回転方向への回転が阻止されるようにワンウェイクラッチF0が自動係合される。ワンウェイクラッチF0の係合によってキャリアCA0が回転不能に固定された状態においては、MG1トルクTgによる反力トルクがリングギヤR0へ入力される。加えて、両駆動モータ走行では、単駆動モータ走行と同様に、リングギヤR0にはMG2トルクTmが入力される。キャリアCA0がゼロ回転とされた状態で、サンギヤS0に負回転にて負トルクとなるMG1トルクTgが入力された際に、MG2トルクTmが入力されなければ、MG1トルクTgによる単駆動モータ走行も可能である。モータ走行モードでの前進走行では、エンジン12は駆動されず、エンジン回転速度Neはゼロとされ、MG1トルクTg及びMG2トルクTmのうちの少なくとも一方のトルクが車両10の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段−AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部60を介して駆動輪14へ伝達される。モータ走行モードでの前進走行では、MG1トルクTgは負回転且つ負トルクの力行トルクであり、MG2トルクTmは正回転且つ正トルクの力行トルクである。
図4中の破線で示す、直線L0R及び直線LRは、モータ走行モードでの後進走行における各回転要素の相対速度を示している。このモータ走行モードでの後進走行では、リングギヤR0には負回転にて負トルクとなるMG2トルクTmが入力され、そのMG2トルクTmが車両10の後進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段が形成された有段変速部60を介して駆動輪14へ伝達される。車両10では、後述する電子制御装置100によって、複数のATギヤ段のうちの前進用のロー側のATギヤ段である例えばAT1速ギヤ段が形成された状態で、前進走行時における前進用のMG2トルクTmとは正負が反対となる後進用のMG2トルクTmが第2回転機MG2から出力させられることで、後進走行を行うことができる。モータ走行モードでの後進走行では、MG2トルクTmは負回転且つ負トルクの力行トルクである。尚、ハイブリッド走行モードにおいても、直線L0Rのように第2回転機MG2を負回転とすることが可能であるので、モータ走行モードと同様に後進走行を行うことが可能である。
動力伝達装置16では、エンジン12が動力伝達可能に連結された第1回転要素RE1としてのキャリアCA0と第1回転機MG1が動力伝達可能に連結された第2回転要素RE2としてのサンギヤS0と中間伝達部材70が連結された第3回転要素RE3としてのリングギヤR0との3つの回転要素を有する差動機構72を備えて、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構72の差動状態が制御される電気式変速機構としての無段変速部58が構成される。中間伝達部材70が連結された第3回転要素RE3は、見方を換えれば第2回転機MG2が動力伝達可能に連結された第3回転要素RE3である。つまり、動力伝達装置16では、エンジン12が動力伝達可能に連結された差動機構72と差動機構72に動力伝達可能に連結された第1回転機MG1とを有して、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構72の差動状態が制御される無段変速部58が構成される。無段変速部58は、入力回転部材となる連結軸68の回転速度と同値であるエンジン回転速度Neと、出力回転部材となる中間伝達部材70の回転速度であるMG2回転速度Nmとの比の値である変速比γ0(=Ne/Nm)が変化させられる電気的な無段変速機として作動させられる。
例えば、ハイブリッド走行モードにおいては、有段変速部60にてATギヤ段が形成されたことで駆動輪14の回転に拘束されるリングギヤR0の回転速度に対して、第1回転機MG1の回転速度を制御することによってサンギヤS0の回転速度が上昇或いは下降させられると、キャリアCA0の回転速度つまりエンジン回転速度Neが上昇或いは下降させられる。従って、ハイブリッド走行では、エンジン12を効率の良いエンジン動作点Pengにて作動させることが可能である。動作点は、回転速度とトルクとで表される運転点であり、エンジン動作点Pengは、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで表されるエンジン12の運転点である。動力伝達装置16では、ATギヤ段が形成された有段変速部60と無段変速機として作動させられる無段変速部58とで、無段変速部58と有段変速部60とが直列に配置された複合変速機80全体として無段変速機を構成することができる。
又は、無段変速部58を有段変速機のように変速させることも可能であるので、動力伝達装置16では、ATギヤ段が形成される有段変速部60と有段変速機のように変速させる無段変速部58とで、複合変速機80全体として有段変速機のように変速させることができる。つまり、複合変速機80において、エンジン回転速度Neの出力回転速度Noに対する比の値を表す変速比γt(=Ne/No)が異なる複数のギヤ段を選択的に成立させるように、有段変速部60と無段変速部58とを制御することが可能である。本実施例では、複合変速機80にて成立させられるギヤ段を模擬ギヤ段と称する。変速比γtは、直列に配置された、無段変速部58と有段変速部60とで形成されるトータル変速比であって、無段変速部58の変速比γ0と有段変速部60の変速比γatとを乗算した値(γt=γ0×γat)となる。
模擬ギヤ段は、例えば有段変速部60の各ATギヤ段と1又は複数種類の無段変速部58の変速比γ0との組合せによって、有段変速部60の各ATギヤ段に対してそれぞれ1又は複数種類を成立させるように割り当てられる。例えば、図5は、ギヤ段割当テーブルの一例である。図5において、複合変速機80のアップシフトでは、AT1速ギヤ段に対して模擬1速ギヤ段−模擬3速ギヤ段が成立させられ、AT2速ギヤ段に対して模擬4速ギヤ段−模擬6速ギヤ段が成立させられ、AT3速ギヤ段に対して模擬7速ギヤ段−模擬9速ギヤ段が成立させられ、AT4速ギヤ段に対して模擬10速ギヤ段が成立させられるように予め定められている。又、複合変速機80のダウンシフトでは、AT1速ギヤ段に対して模擬1速ギヤ段−模擬2速ギヤ段が成立させられ、AT2速ギヤ段に対して模擬3速ギヤ段−模擬5速ギヤ段が成立させられ、AT3速ギヤ段に対して模擬6速ギヤ段−模擬8速ギヤ段が成立させられ、AT4速ギヤ段に対して模擬9速ギヤ段−模擬10速ギヤ段が成立させられるように予め定められている。複合変速機80では、出力回転速度Noに対して所定の変速比γtを実現するエンジン回転速度Neとなるように無段変速部58が制御されることによって、あるATギヤ段において異なる模擬ギヤ段が成立させられる。又、複合変速機80では、ATギヤ段の切替えに合わせて無段変速部58が制御されることによって、模擬ギヤ段が切り替えられる。尚、図5では、アップシフトとダウンシフトとで、ATギヤ段に対して割り当てられる模擬ギヤ段が異なる場合がある一例を示したが、同じであっても良い。
図1に戻り、車両10は、エンジン12、無段変速部58、及び有段変速部60などの制御に関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置100を備えている。よって、図1は、電子制御装置100の入出力系統を示す図であり、又、電子制御装置100による制御機能の要部を説明する機能ブロック図である。電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置100は、必要に応じてエンジン制御用、回転機制御用、油圧制御用等の各コンピュータを含んで構成される。
電子制御装置100には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエアフローメータ34、過給圧センサ40、吸気温センサ42、スロットル弁開度センサ44、エンジン回転速度センサ88、出力回転速度センサ90、MG1回転速度センサ92、MG2回転速度センサ94、アクセル開度センサ96、バッテリセンサ98、油温センサ99など)による検出値に基づく各種信号等(例えば吸入空気量Qair、過給圧Pchg、吸気温度THair、スロットル弁開度θth、エンジン回転速度Ne及びエンジン12のクランク軸の回転位置を示すクランク角度Acr、車速Vに対応する出力回転速度No、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng、AT入力回転速度Niと同値であるMG2回転速度Nm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、作動油oilの温度である作動油温THoilなど)が、それぞれ供給される。
電子制御装置100からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路78、モータ86など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を各々制御する為の回転機制御指令信号Smg、係合装置CBの作動状態を制御する為の油圧制御指令信号Sat、EOP84の作動を制御する為のEOP制御指令信号Seopなど)が、それぞれ出力される。この油圧制御指令信号Satは、有段変速部60の変速を制御する為の油圧制御指令信号でもあり、例えば係合装置CBの各々の油圧アクチュエータへ供給される各油圧Pc1,Pc2,Pb1,Pb2を調圧する各ソレノイドバルブSL1−SL4等(後述する図6参照)を駆動する為の指令信号である。電子制御装置100は、各油圧Pc1,Pc2,Pb1,Pb2の値に対応する油圧指示値を設定し、その油圧指示値に応じた駆動電流又は駆動電圧を油圧制御回路78へ出力する。
電子制御装置100は、例えばバッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいてバッテリ54の充電状態を示す値としての充電状態値SOC[%]を算出する。又、電子制御装置100は、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ54の充電状態値SOCに基づいて、バッテリ54のパワーであるバッテリパワーPbatの使用可能な範囲を規定する充放電可能電力Win,Woutを算出する。充放電可能電力Win,Woutは、バッテリ54の入力電力の制限を規定する入力可能電力としての充電可能電力Win、及びバッテリ54の出力電力の制限を規定する出力可能電力としての放電可能電力Woutである。充放電可能電力Win,Woutは、例えばバッテリ温度THbatが常用域より低い低温域ではバッテリ温度THbatが低い程小さくされ、又、バッテリ温度THbatが常用域より高い高温域ではバッテリ温度THbatが高い程小さくされる。又、充電可能電力Winは、例えば充電状態値SOCが高い領域では充電状態値SOCが高い程小さくされる。又、放電可能電力Woutは、例えば充電状態値SOCが低い領域では充電状態値SOCが低い程小さくされる。
図6は、油圧制御回路78を説明する図であり、又、油圧制御回路78へ作動油oilを供給する油圧源を説明する図である。図6において、MOP82とEOP84とは、作動油oilが流通する油路の構成上、並列に設けられている。MOP82及びEOP84は、各々、係合装置CBの各々の作動状態を切り替えたり、動力伝達装置16の各部に潤滑油を供給したりする為の油圧の元となる作動油oilを吐出する。MOP82及びEOP84は、各々、ケース56の下部に設けられたオイルパン120に還流した作動油oilを、共通の吸い込み口であるストレーナ122を介して吸い上げて、各々の吐出油路124,126へ吐出する。吐出油路124,126は、各々、油圧制御回路78が備える油路、例えばライン圧PLが流通する油路であるライン圧油路128に連結されている。MOP82から作動油oilが吐出される吐出油路124は、油圧制御回路78に備えられたMOP用チェックバルブ130を介してライン圧油路128に連結されている。EOP84から作動油oilが吐出される吐出油路126は、油圧制御回路78に備えられたEOP用チェックバルブ132を介してライン圧油路128に連結されている。MOP82は、エンジン12と共に回転し、エンジン12により回転駆動されることで作動油圧を発生する。EOP84は、エンジン12の回転状態に拘わらず、モータ86により回転駆動されることで作動油圧を発生する。EOP84は、例えばモータ走行モードでの走行時に作動させられる。
油圧制御回路78は、前述したライン圧油路128、MOP用チェックバルブ130、及びEOP用チェックバルブ132の他に、レギュレータバルブ134、各ソレノイドバルブSLT,SL1−SL4などを備えている。
レギュレータバルブ134は、MOP82及びEOP84の少なくとも一方が吐出する作動油oilを元にしてライン圧PLを調圧する。ソレノイドバルブSLTは、例えばリニアソレノイドバルブであり、アクセル開度θacc或いは有段変速部60への入力トルク等に応じたパイロット圧Psltをレギュレータバルブ134へ出力するように電子制御装置100により制御される。レギュレータバルブ134においては、スプール136がパイロット圧Psltによって付勢され、排出用流路138の開口面積の変化を伴ってスプール136が軸方向に移動させられることにより、パイロット圧Psltに応じてライン圧PLが調圧される。これにより、ライン圧PLは、アクセル開度θacc或いは有段変速部60の入力トルク等に応じた油圧とされる。ソレノイドバルブSLTに入力される元圧は、例えばライン圧PLを元圧として不図示のモジュレータバルブによって一定値に調圧されたモジュレータ圧PMである。
ソレノイドバルブSL1−SL4は、何れも例えばリニアソレノイドバルブであり、ライン圧油路128を介して供給されるライン圧PLを元圧として、係合装置CBの各油圧Pc1,Pc2,Pb1,Pb2を出力するように電子制御装置100により制御される。ソレノイドバルブSL1は、クラッチC1の油圧アクチュエータへ供給するC1油圧Pc1を調圧する。ソレノイドバルブSL2は、クラッチC2の油圧アクチュエータへ供給するC2油圧Pc2を調圧する。ソレノイドバルブSL3は、ブレーキB1の油圧アクチュエータへ供給するB1油圧Pb1を調圧する。ソレノイドバルブSL4は、ブレーキB2の油圧アクチュエータへ供給するB2油圧Pb2を調圧する。
図1に戻り、電子制御装置100は、車両10における各種制御を実現する為に、AT変速制御手段すなわちAT変速制御部102、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部104、及びエンジン停止時クランク角制御手段すなわちエンジン停止時クランク角制御部106を備えている。
AT変速制御部102は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である例えばATギヤ段変速マップを用いて有段変速部60の変速判断を行い、必要に応じて有段変速部60の変速制御を実行する。AT変速制御部102は、この有段変速部60の変速制御では、有段変速部60のATギヤ段を自動的に切り替えるように、ソレノイドバルブSL1−SL4により係合装置CBの係合解放状態を切り替える為の油圧制御指令信号Satを油圧制御回路78へ出力する。上記ATギヤ段変速マップは、例えば出力回転速度No及びアクセル開度θaccを変数とする二次元座標上に、有段変速部60の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。ここでは、出力回転速度Noに替えて車速Vなどを用いても良いし、又、アクセル開度θaccに替えて要求駆動トルクTwdemやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。上記ATギヤ段変速マップにおける各変速線は、アップシフトが判断される為のアップシフト線、及びダウンシフトが判断される為のダウンシフト線である。この各変速線は、あるアクセル開度θaccを示す線上において出力回転速度Noが線を横切ったか否か、又は、ある出力回転速度Noを示す線上においてアクセル開度θaccが線を横切ったか否か、すなわち変速線上の変速を実行すべき値である変速点を横切ったか否かを判断する為のものであり、この変速点の連なりとして予め定められている。
ハイブリッド制御部104は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部としての機能と、インバータ52を介して第1回転機MG1及び第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部としての機能とを含んでおり、それら制御機能によりエンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。
ハイブリッド制御部104は、予め定められた関係である例えば駆動力マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで車両10に対して要求される駆動トルクTwである要求駆動トルクTwdemを算出する。この要求駆動トルクTwdemは、見方を換えればそのときの車速Vにおける要求駆動パワーPwdemである。ここでは、車速Vに替えて出力回転速度Noなどを用いても良い。ハイブリッド制御部104は、バッテリ54に対して要求される充放電パワーである要求充放電パワー等を考慮して、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2のうちの少なくとも1つの動力源によって要求駆動パワーPwdemを実現するように、エンジン12を制御する指令信号であるエンジン制御指令信号Seと、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を制御する指令信号である回転機制御指令信号Smgとを出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えばそのときのエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジン12のパワーであるエンジンパワーPeの指令値である。回転機制御指令信号Smgは、例えばエンジントルクTeの反力トルクとしての指令出力時のMG1回転速度NgにおけるMG1トルクTgを出力する第1回転機MG1の発電電力Wgの指令値であり、又、指令出力時のMG2回転速度NmにおけるMG2トルクTmを出力する第2回転機MG2の消費電力Wmの指令値である。
ハイブリッド制御部104は、例えば無段変速部58を無段変速機として作動させて複合変速機80全体として無段変速機として作動させる場合、要求駆動パワーPwdemに要求充放電パワーやバッテリ54における充放電効率等を加味した要求エンジンパワーPedemを実現する、最適エンジン動作点Pengf等を考慮した目標エンジン回転速度Netgtにおける目標エンジントルクTetgtを出力するエンジンパワーPeとなるように、エンジン12を制御する。加えて、ハイブリッド制御部104は、エンジン回転速度Neを目標エンジン回転速度Netgtとする為のMG1トルクTgを出力するように第1回転機MG1の発電電力Wgを制御することで、無段変速部58の無段変速制御を実行して無段変速部58の変速比γ0を変化させる。この制御の結果として、無段変速機として作動させる場合の複合変速機80の変速比γtが制御される。複合変速機80全体として無段変速機として作動させるときのMG1トルクTgは、例えばエンジン回転速度Neが目標エンジン回転速度Netgtとなるように第1回転機MG1を作動させるフィードバック制御において算出される。複合変速機80全体として無段変速機として作動させるときのMG2トルクTmは、例えばエンジン直達トルクTdによる駆動トルクTw分と合わせて要求駆動トルクTwdemが得られるように算出される。
最適エンジン動作点Pengfは、例えば要求エンジンパワーPedemを実現するときに、エンジン12単体の燃費にバッテリ54における充放電効率等を考慮した車両10におけるトータル燃費が最も良くなるエンジン動作点Pengとして予め定められている。目標エンジン回転速度Netgtは、エンジン回転速度Neの目標値であり、目標エンジントルクTetgtは、エンジントルクTeの目標値である。
図7は、エンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeを変数とする二次元座標上に、最適エンジン動作点Pengfの一例を示す図である。図7において、実線Lengは、最適エンジン動作点Pengfの集まりを示している。等パワー線Lpw1,Lpw2,Lpw3は、各々、要求エンジンパワーPedemが要求エンジンパワーPe1,Pe2,Pe3であるときの一例を示している。点Aは、要求エンジンパワーPe1を最適エンジン動作点Pengf上で実現するときのエンジン動作点PengAであり、点Bは、要求エンジンパワーPe3を最適エンジン動作点Pengf上で実現するときのエンジン動作点PengBである。点A,Bは、各々、目標エンジン回転速度Netgtと目標エンジントルクTetgtとで表されるエンジン動作点Pengの目標値すなわち目標エンジン動作点Pengtgtでもある。アクセル開度θaccの増大により、例えば目標エンジン動作点Pengtgtが点Aから点Bへ変化させられた場合、最適エンジン動作点Pengf上を通る経路aでエンジン動作点Pengが変化させられるように制御される。
ハイブリッド制御部104は、例えば無段変速部58を有段変速機のように変速させて複合変速機80全体として有段変速機のように変速させる場合、予め定められた関係である例えば模擬ギヤ段変速マップを用いて複合変速機80の変速判断を行い、AT変速制御部102による有段変速部60のATギヤ段の変速制御と協調して、複数の模擬ギヤ段を選択的に成立させるように無段変速部58の変速制御を実行する。複数の模擬ギヤ段は、それぞれの変速比γtを維持できるように出力回転速度Noに応じて第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを制御することによって成立させることができる。各模擬ギヤ段の変速比γtは、出力回転速度Noの全域に亘って必ずしも一定値である必要はなく、所定領域で変化させても良いし、各部の回転速度の上限や下限等によって制限が加えられても良い。複数の模擬ギヤ段は、出力回転速度Noに応じてエンジン回転速度Neを制御するだけで良く、有段変速部60のATギヤ段の種類とは関係無く所定の模擬ギヤ段を成立させることができる。このように、ハイブリッド制御部104は、エンジン回転速度Neを有段変速のように変化させる変速制御が可能である。
上記模擬ギヤ段変速マップは、ATギヤ段変速マップと同様に出力回転速度No及びアクセル開度θaccをパラメータとして予め定められている。図8は、模擬ギヤ段変速マップの一例であって、実線はアップシフト線であり、破線はダウンシフト線である。模擬ギヤ段変速マップに従って模擬ギヤ段が切り替えられることにより、無段変速部58と有段変速部60とが直列に配置された複合変速機80全体として有段変速機と同様の変速フィーリングが得られる。複合変速機80全体として有段変速機のように変速させる模擬有段変速制御は、例えば運転者によってスポーツ走行モード等の走行性能重視の走行モードが選択された場合や要求駆動トルクTwdemが比較的大きい場合に、複合変速機80全体として無段変速機として作動させる無段変速制御に優先して実行するだけでも良いが、所定の実行制限時を除いて基本的に模擬有段変速制御が実行されても良い。
ハイブリッド制御部104による模擬有段変速制御と、AT変速制御部102による有段変速部60の変速制御とは、協調して実行される。本実施例では、AT1速ギヤ段−AT4速ギヤ段の4種類のATギヤ段に対して、模擬1速ギヤ段−模擬10速ギヤ段の10種類の模擬ギヤ段が割り当てられている。その為、模擬ギヤ段の変速タイミングと同じタイミングでATギヤ段の変速が行われるように、ATギヤ段変速マップが定められている。具体的には、図8における模擬ギヤ段の「3→4」、「6→7」、「9→10」の各アップシフト線は、ATギヤ段変速マップの「1→2」、「2→3」、「3→4」の各アップシフト線と一致している(図8中に記載した「AT1→2」等参照)。又、図8における模擬ギヤ段の「2←3」、「5←6」、「8←9」の各ダウンシフト線は、ATギヤ段変速マップの「1←2」、「2←3」、「3←4」の各ダウンシフト線と一致している(図8中に記載した「AT1←2」等参照)。又は、図8の模擬ギヤ段変速マップによる模擬ギヤ段の変速判断に基づいて、ATギヤ段の変速指令をAT変速制御部102に対して出力するようにしても良い。このように、有段変速部60のアップシフト時は、複合変速機80全体のアップシフトが行われる一方で、有段変速部60のダウンシフト時は、複合変速機80全体のダウンシフトが行われる。AT変速制御部102は、有段変速部60のATギヤ段の切替えを、模擬ギヤ段が切り替えられるときに行う。模擬ギヤ段の変速タイミングと同じタイミングでATギヤ段の変速が行われる為、エンジン回転速度Neの変化を伴って有段変速部60の変速が行われるようになり、その有段変速部60の変速に伴うショックがあっても運転者に違和感を与え難くされる。
ハイブリッド制御部104は、走行モードとして、モータ走行モード或いはハイブリッド走行モードを走行状態に応じて選択的に成立させて、各走行モードにて車両10を走行させる。例えば、ハイブリッド制御部104は、要求駆動パワーPwdemが予め定められた閾値よりも小さなモータ走行領域にある場合には、モータ走行モードを成立させる一方で、要求駆動パワーPwdemが予め定められた閾値以上となるハイブリッド走行領域にある場合には、ハイブリッド走行モードを成立させる。ハイブリッド制御部104は、要求駆動パワーPwdemがモータ走行領域にあるときであっても、バッテリ54の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合やエンジン12の暖機が必要な場合などには、ハイブリッド走行モードを成立させる。前記エンジン始動閾値は、エンジン12を強制的に始動してバッテリ54を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断する為の予め定められた閾値である。
図9は、モータ走行とハイブリッド走行との切替制御に用いる動力源切替マップの一例を示す図である。図9において、実線Lswpは、モータ走行とハイブリッド走行とを切り替える為のモータ走行領域とハイブリッド走行領域との境界線である。車速Vが比較的低く且つ要求駆動トルクTwdemが比較的小さい、要求駆動パワーPwdemが比較的小さな領域がモータ走行領域に予め定められている。車速Vが比較的高い又は要求駆動トルクTwdemが比較的大きい、要求駆動パワーPwdemが比較的大きな領域がハイブリッド走行領域に予め定められている。バッテリ54の充電状態値SOCがエンジン始動閾値未満となるとき又はエンジン12の暖機が必要なときには、図9におけるモータ走行領域がハイブリッド走行領域に変更されても良い。
ハイブリッド制御部104は、モータ走行モードを成立させたときに、第2回転機MG2のみで要求駆動パワーPwdemを実現できる場合には、第2回転機MG2による単駆動モータ走行にて車両10を走行させる。一方で、ハイブリッド制御部104は、モータ走行モードを成立させたときに、第2回転機MG2のみでは要求駆動パワーPwdemを実現できない場合には、両駆動モータ走行にて車両10を走行させる。ハイブリッド制御部104は、第2回転機MG2のみで要求駆動パワーPwdemを実現できるときであっても、第2回転機MG2のみを用いるよりも第1回転機MG1及び第2回転機MG2を併用した方が効率が良い場合には、両駆動モータ走行にて車両10を走行させても良い。
ハイブリッド制御部104は、エンジン12の運転停止時にハイブリッド走行モードを成立させた場合には、エンジン12を始動する始動制御を行う。ハイブリッド制御部104は、エンジン12を始動するときには、例えば第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを上昇させつつ、エンジン回転速度Neが点火可能な所定回転速度以上となったときに点火することでエンジン12を始動する。すなわち、ハイブリッド制御部104は、第1回転機MG1によりエンジン12をクランキングすることでエンジン12を始動する。
ハイブリッド制御部104は、運転者によるアクセル操作(例えばアクセル開度θacc、アクセル開度θaccの減少速度)、車速V、降坂路の勾配、ホイールブレーキを作動させる為の運転者によるブレーキ操作(例えばブレーキ操作量、ブレーキ操作速度)などに基づいて目標減速度を設定する。ハイブリッド制御部104は、設定した目標減速度が実現されるように車両10の制動トルクを発生させる。車両10の制動トルクは、例えば第2回転機MG2による回生トルク、不図示のホイールブレーキ装置によるホイールブレーキトルク、エンジン12によるエンジンブレーキトルクなどによって発生させられる。車両10の制動トルクは、例えば燃費向上の観点では、第2回転機MG2による回生トルクにて優先して発生させられる。車両10の制動トルクは、例えばバッテリ54の充電状態値SOCが高いなどの要因によって第2回転機MG2による回生トルクが制限されたり、及び/又は、大きな目標減速度が設定されるなどの場合には、回生トルクに替えて又は回生トルクに加えて、ホイールブレーキトルク及び/又はエンジンブレーキトルクにて発生させられる。ハイブリッド制御部104は、モータ走行中にエンジンブレーキトルクを発生させる場合には、エンジン12の運転を停止したままで第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを引き上げることで、エンジン回転速度Neに応じた所望のエンジンブレーキトルクを発生させる。
エンジン停止時クランク角制御部106は、エンジン12の停止時におけるクランク角度Acrを所定角度範囲Acrfrg内に制御する停止位置制御を実施する。具体的には、エンジン12を停止した際には、次回のエンジン始動時に生じる振動を抑制する為に、例えばクランク角度Acrがエンジン12の何れかの気筒の圧縮行程における上死点の前の角度Acr1から上死点の後の角度Acr2までの所定角度範囲Acrfrg内となっているようにエンジン12が回転停止していることが望ましい。所定角度範囲Acrfrgは、例えばエンジン始動時のショックが小さくなる予め定められたクランク角度Acrの範囲である。エンジン停止時クランク角制御部106は、エンジン12の停止時にクランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrg外である場合には、クランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrg内となるようにクランク角度Acrと停止時目標クランク角度Acrtgtとの差に基づいてMG1トルクTgの指令値を設定し、第1回転機MG1を駆動する。停止時目標クランク角度Acrtgtは、所定角度範囲Acrfrg内の予め定められた値であって、例えば所定角度範囲Acrfrgの中央の値である。ここでのエンジン12の停止時は、エンジン12の運転を停止し、且つ、エンジン12によるエンジンブレーキトルクを車両10に作用させていないエンジン12の回転停止時である。
ここで、次回のエンジン始動時に生じる振動を抑制するという観点とは別に、次回のエンジン始動性を向上するという観点では、エンジン12の始動時におけるエンジン12のピストンの往復運動の抵抗を下げるうえで例えばエンジン12のポンピングロスを小さくするうえで、エンジン12の停止時には、エンジン12の始動に備えて、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48を開弁状態に制御しておくことが望ましい。
ところで、車両10では、無段変速部58と直列に有段変速部60を備えているので、第2回転機MG2を動力源として走行するモータ走行中に有段変速部60の変速が為される場合、変速過渡中における中間伝達部材70の回転変化によって停止中のエンジン12が連れ回される可能性がある。エンジン12の停止時にウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48が開弁状態に制御されていると、有段変速部60の変速によってエンジン12が連れ回され易くされて、停止時におけるクランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrgから外れてしまうおそれがある。エンジン12の停止時にウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブを閉弁状態に制御することで、エンジン12の停止時におけるエンジン12のピストンの往復運動の抵抗が比較的大きくされるので、エンジン12が連れ回され難くされる。しかしながら、エンジン12の始動性の悪化を招くおそれがある。
電子制御装置100は、エンジン12の始動性の悪化を抑制しつつ、停止時におけるクランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrgから外れてしまうのを抑制するという制御機能を実現する為に、更に、状態判定手段すなわち状態判定部108、及びエンジン停止時バルブ制御手段すなわちエンジン停止時バルブ制御部110を備えている。
状態判定部108は、モータ走行中であるか否か、特には第2回転機MG2を動力源として走行するモータ走行中すなわち第2回転機MG2による単駆動モータ走行中であるか否かを判定する。又、状態判定部108は、エンジン12によるエンジンブレーキトルクを車両10に作用させているか否か、つまりエンジンブレーキを使用した走行中であるか否かを判定する。すなわち、状態判定部108は、エンジン12のクランク軸が回転している状態であるか否かすなわちエンジン12が回転停止していない状態であるか否かを判定する。又、状態判定部108は、有段変速部60の変速中ではないか否かすなわち有段変速部60の非変速中であるか否かを判定する。又、状態判定部108は、エンジン12の停止位置が変化しているか否かを判定する。基本的には、エンジン12の停止時には、エンジン停止時クランク角制御部106により前記停止位置制御が実施されるが、その後、クランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrgから外れる可能性もある。状態判定部108は、エンジン12の停止時に、クランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrg外であるか否かを判定することで、エンジン12の停止位置が変化しているか否かを判定する。
エンジン停止時バルブ制御部110は、状態判定部108により、第2回転機MG2による単駆動モータ走行中であると判定され、且つ、エンジンブレーキを使用した走行中でないと判定され、且つ、有段変速部60の非変速中であると判定された場合には、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48を開弁状態に制御する。このように、エンジン停止時バルブ制御部110は、エンジン12の停止時にウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48を開弁状態に制御する。
エンジン停止時バルブ制御部110は、状態判定部108により、第2回転機MG2による単駆動モータ走行中であると判定され、且つ、エンジンブレーキを使用した走行中でないと判定され、且つ、有段変速部60の非変速中でないと判定された場合には、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブを閉弁状態に制御するバルブ閉じ制御を実行する。このように、エンジン停止時バルブ制御部110は、エンジン12の停止時であっても、第2回転機MG2による単駆動モータ走行中且つ有段変速部60の変速中である場合は、前記バルブ閉じ制御を実行する。
エンジン停止時クランク角制御部106は、エンジン12の停止時に、状態判定部108によりエンジン12の停止位置が変化していると判定された場合には、前記停止位置制御を実施する。
エンジン停止時バルブ制御部110は、状態判定部108によりエンジン12の停止位置が変化していないと判定された場合に、又は、状態判定部108によりエンジン12の停止位置が変化していると判定されたときにエンジン停止時クランク角制御部106により前記停止位置制御が実施された場合に、前記バルブ閉じ制御を実行する。このように、エンジン停止時バルブ制御部110は、エンジン12の停止時においてクランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrg内に制御されていることを条件に、前記バルブ閉じ制御を実行する。
有段変速部60の変速中には、前記バルブ閉じ制御が実行された状態すなわちウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブが閉弁状態とされた状態にあることが望ましい。前記バルブ閉じ制御を開始してからバルブが閉弁状態とされた状態になるまでには相応の時間を要する。その為、エンジン停止時バルブ制御部110は、有段変速部60の変速出力すなわち有段変速部60の変速指令である油圧制御指令信号Satの出力に先立って、前記バルブ閉じ制御を開始する。
具体的には、有段変速部60の変速制御では、例えばATギヤ段変速マップを用いて有段変速部60の変速判断が行われ、有段変速部60の変速判断が為された時点から所定時間T1経過後に有段変速部60の変速出力が行われる。所定時間T1は、例えば変速判断に対して変速出力を待機させる為の予め定められた時間である。有段変速部60の変速出力に対して、前記バルブ閉じ制御の開始から前記バルブ閉じ制御が実行された状態とされるまでに要する時間分前出して前記バルブ閉じ制御を開始すれば、有段変速部60の変速中に前記バルブ閉じ制御が実行された状態とすることができる。
図10は、有段変速部60の変速出力に対する前出し時間TBの一例を示す図である。図10において、「TBW」は、ウェイストゲートバルブ30に対して前記バルブ閉じ制御を開始するときの前出し時間であり、「TBA」は、エアバイパスバルブ48に対して前記バルブ閉じ制御を開始するときの前出し時間である。前出し時間TBW,TBAは、各々、開弁状態におけるバルブの開き量である弁開き量に応じて予め定められており、弁開き量が大きい程、長くされている。前出し時間TBW,TBAは、前記バルブ閉じ制御を開始してから確実にバルブが閉弁状態とされた状態とされるまでの時間として予め定められている。弁開き量は、例えばエンジン制御装置50へのエンジン制御指令信号Seにおけるウェイストゲートバルブ30に対する指令値やエアバイパスバルブ48に対する指令値に基づいて、電子制御装置100により取得される。
エンジン停止時バルブ制御部110は、この先、変速判断がどの時点で為されるのかすなわち変速判断時点から所定時間T1経過後の変速出力がどの時点で為されるのかを予測し、予測した現時点から予測した変速出力時点までの時間Tfsから前出し時間TBW,TBAを減算した時間T01(=Tfs−TBW),T02(=Tfs−TBA)だけ予測した現時点から経過したら、前記バルブ閉じ制御を開始する。時間T01,T02は、前記バルブ閉じ制御の開始を待機する為の待機時間T0である。有段変速部60の変速判断は、例えばATギヤ段変速マップを用いて出力回転速度Noやアクセル開度θaccに基づいて為される。従って、エンジン停止時バルブ制御部110は、例えば有段変速部60の変速判断が為される変速点に近づいたか否かを出力回転速度Noやアクセル開度θaccの各変化や変化速度に基づいて判断し、その変速点に近づいたと判断した時点で変速判断がどの時点で為されるのかを予測する。エンジン停止時バルブ制御部110は、予測した変速判断時点に所定時間T1を加えて変速出力がどの時点で為されるのかを予測する。上記変速点に近づいたと判断した時点は、有段変速部60の変速を予測した時点に相当する。このように、エンジン停止時バルブ制御部110は、有段変速部60の変速を予測した時点から、変速出力に対する前出し時間TBが得られるように設定した待機時間T0が経過した時点で前記バルブ閉じ制御を開始する。
有段変速部60の変速中のうちで、エンジン12の連れ回しが生じ得るのは、中間伝達部材70が回転変化するイナーシャ相中である。従って、少なくともイナーシャ相の開始までに、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブが閉弁状態とされた状態にあれば良い。エンジン停止時バルブ制御部110は、有段変速部60の変速過渡におけるイナーシャ相開始前に、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブを閉弁状態とした状態に制御する。
図11は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわちエンジン12の始動性の悪化を抑制しつつ、停止時におけるクランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrgから外れてしまうのを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。図12は、図11のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
図11において、先ず、状態判定部108の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、単駆動モータ走行中であるか否かが判定される。このS10の判断が肯定される場合は状態判定部108の機能に対応するS20において、エンジンブレーキを使用した走行中であるか否かが判定される。このS20の判断が否定される場合は状態判定部108の機能に対応するS30において、有段変速部60の非変速中であるか否かが判定される。このS30の判断が否定される場合は状態判定部108の機能に対応するS40において、クランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrg外であるか否かに基づいて、エンジン12の停止位置が変化しているか否かが判定される。このS40の判断が肯定される場合はエンジン停止時クランク角制御部106の機能に対応するS50において、前記停止位置制御が実施される。上記S40の判断が否定される場合は、又は、上記S50に次いで、エンジン停止時バルブ制御部110の機能に対応するS60において、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブを閉弁状態に制御する前記バルブ閉じ制御が実施される。上記S10の判断が否定される場合は、又は、上記S20の判断が肯定される場合は、又は、上記S30の判断が肯定される場合は、エンジン停止時バルブ制御部110又はハイブリッド制御部104などの機能に対応するS70において、前記バルブ閉じ制御以外のその他制御が実施される。例えば、上記S30の判断が肯定される場合は、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48が開弁状態に制御される。又、上記S20の判断が肯定される場合は、第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neが引き上げられることで、エンジン回転速度Neに応じた所望のエンジンブレーキトルクが発生させられる。
図12は、第2回転機MG2による単駆動モータ走行中に有段変速部60の2→3アップシフトが実施される場合の一例を示す図である。図12において、t1時点は、有段変速部60の変速判断に先立って、有段変速部60の変速が予測された時点を示している。この変速が予測された時点で、ウェイストゲートバルブ30に対する前出し時間TBWは待機時間T01が設定されることで実現される。又、この変速が予測された時点で、エアバイパスバルブ48に対する前出し時間TBAは待機時間T02が設定されることで実現される。t1時点から待機時間T01が経過したt2時点で、ウェイストゲートバルブ30に対する前記バルブ閉じ制御を実施する指令が出力される。又、t1時点から待機時間T02が経過したt3時点で、エアバイパスバルブ48に対する前記バルブ閉じ制御を実施する指令が出力される。その後、有段変速部60の変速判断が為され(t4時点参照)、所定時間T1経過後に有段変速部60の変速出力が行われて(t5時点参照)、イナーシャ相が開始されるが(t6時点参照)、有段変速部60の変速出力に先立つ前記バルブ閉じ制御の開始によって、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48は、イナーシャ相の開始までに閉弁状態とした状態に制御される。t7時点は、イナーシャ相の終了時点を示している。
上述のように、本実施例によれば、エンジン12の停止時にウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48が開弁状態に制御されるので、エンジン12の始動時におけるエンジン12のピストンの往復運動の抵抗を下げることができ例えばエンジン12のポンピングロスを小さくすることができ、エンジン12の始動性を向上することができる。このように、エンジン12の停止時にエンジン12の始動に備えておくことができる。一方で、エンジン12の停止時であっても、モータ走行中且つ有段変速部60の変速中である場合は、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブを閉弁状態に制御するバルブ閉じ制御が実行されるので、エンジン12のピストンの往復運動の抵抗が大きくされて例えばエンジン12のポンピングロスが増加させられて、エンジン12が連れ回され難くされる。よって、過給機18付きエンジン12の始動性の悪化を抑制しつつ、停止時におけるエンジン12のクランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrgから外れてしまうのを抑制することができる。
また、本実施例によれば、エンジン12の停止時においてクランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrg内に制御されていることを条件に、前記バルブ閉じ制御が実行されるので、前記バルブ閉じ制御の実行に伴うエンジン12の始動性への影響を抑えることができる。
また、本実施例によれば、有段変速部60の変速指令の出力に先立って、前記バルブ閉じ制御が開始されるので、有段変速部60の変速中にウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブが閉弁状態とされ易くされる。
また、本実施例によれば、有段変速部60の変速が予測された時点から、開弁状態におけるバルブの開き量に応じた待機時間T0が経過した時点で前記バルブ閉じ制御が開始されるので、前記バルブ閉じ制御が適切なタイミングで開始され得て、有段変速部60の変速中にはウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブが確実に閉弁状態とされる。
また、本実施例によれば、有段変速部60の変速過渡におけるイナーシャ相開始前に、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブが閉弁状態とした状態に制御されるので、有段変速部60の変速中のうちでエンジン12の連れ回しが生じ得るイナーシャ相中には、ウェイストゲートバルブ30及びエアバイパスバルブ48のうちの少なくとも一方のバルブが確実に閉弁状態とされる。これにより、停止時におけるクランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrgから外れてしまうのを適切に抑制することができる。
また、本実施例によれば、エンジン12の停止時は、エンジン12の運転を停止し、且つ、エンジンブレーキトルクを車両10に作用させていないエンジン12の回転停止時であるので、過給機18付きエンジン12において、エンジン12の始動性の悪化を抑制しつつ、停止時におけるクランク角度Acrが所定角度範囲Acrfrgから外れてしまうのを抑制することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、キャリアCA0を回転不能に固定することができるロック機構としてワンウェイクラッチF0を例示したが、この態様に限らない。このロック機構は、例えば連結軸68とケース56とを選択的に連結する、噛合式クラッチ、クラッチやブレーキなどの油圧式摩擦係合装置、乾式の係合装置、電磁式摩擦係合装置、磁粉式クラッチなどの係合装置であっても良い。或いは、車両10は、必ずしもワンウェイクラッチF0を備える必要はない。
また、前述の実施例において、無段変速部58は、差動機構72の回転要素に連結されたクラッチ又はブレーキの制御により差動作用が制限され得る変速機構であっても良い。又、差動機構72は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であっても良い。又、差動機構72は、複数の遊星歯車装置が相互に連結されることで4つ以上の回転要素を有する差動機構であっても良い。又、差動機構72は、エンジン12によって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車に第1回転機MG1及び中間伝達部材70が各々連結された差動歯車装置であっても良い。又、差動機構72は、2以上の遊星歯車装置がそれらを構成する一部の回転要素で相互に連結された構成において、それらの遊星歯車装置の回転要素にそれぞれエンジン、回転機、駆動輪が動力伝達可能に連結される機構であっても良い。
また、前述の実施例において、電気式変速機構と駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構として、有段変速部60を例示したが、この態様に限らない。例えば、前記機械式変速機構としては、同期噛合型平行2軸式自動変速機、その同期噛合型平行2軸式自動変速機であって入力軸を2系統備える公知のDCT(Dual Clutch Transmission)、ベルト式の無段変速機等の公知の機械式の無段変速機などの自動変速機であっても良い。
また、前述の実施例において、排気タービン式の過給機18に加えて、エンジン或いは電動機によって回転駆動される機械ポンプ式の過給機が設けられていても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両(ハイブリッド車両)
12:エンジン
14:駆動輪
18:過給機
18c:コンプレッサー
18t:タービン
20:吸気管
24:排気管
28:排気バイパス
30:ウェイストゲートバルブ
46:空気再循環バイパス
48:エアバイパスバルブ
58:電気式無段変速部(電気式変速機構)
60:機械式有段変速部(機械式変速機構)
72:差動機構
100:電子制御装置(制御装置)
106:エンジン停止時クランク角制御部
110:エンジン停止時バルブ制御部
MG1:第1回転機
MG2:第2回転機
12:エンジン
14:駆動輪
18:過給機
18c:コンプレッサー
18t:タービン
20:吸気管
24:排気管
28:排気バイパス
30:ウェイストゲートバルブ
46:空気再循環バイパス
48:エアバイパスバルブ
58:電気式無段変速部(電気式変速機構)
60:機械式有段変速部(機械式変速機構)
72:差動機構
100:電子制御装置(制御装置)
106:エンジン停止時クランク角制御部
110:エンジン停止時バルブ制御部
MG1:第1回転機
MG2:第2回転機
Claims (6)
- エンジンと、前記エンジンが動力伝達可能に連結された差動機構と前記差動機構に動力伝達可能に連結された第1回転機とを有して前記第1回転機の運転状態が制御されることにより前記差動機構の差動状態が制御される電気式変速機構と、前記電気式変速機構と駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機構と、前記駆動輪に動力伝達可能に連結された第2回転機とを備えるものであり、前記エンジンは、排気管に設けられたタービンを迂回させて排気を流す為の排気バイパスと、前記排気バイパスに設けられたウェイストゲートバルブと、吸気管に設けられたコンプレッサーを迂回させて空気を再循環させる為の空気再循環バイパスと、前記空気再循環バイパスに設けられたエアバイパスバルブとを備えた過給機付きエンジンであるハイブリッド車両の、制御装置であって、
前記エンジンの停止時におけるクランク角度を所定角度範囲内に制御するエンジン停止時クランク角制御部と、
前記エンジンの停止時に前記ウェイストゲートバルブ及び前記エアバイパスバルブを開弁状態に制御する一方で、前記エンジンの停止時であっても、前記第2回転機を動力源として走行するモータ走行中且つ前記機械式変速機構の変速中である場合は、前記ウェイストゲートバルブ及び前記エアバイパスバルブのうちの少なくとも一方のバルブを閉弁状態に制御するバルブ閉じ制御を実行するエンジン停止時バルブ制御部と
を、含むことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 前記エンジン停止時バルブ制御部は、前記エンジンの停止時において前記エンジンのクランク角度が前記所定角度範囲内に制御されていることを条件に、前記バルブ閉じ制御を実行することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記エンジン停止時バルブ制御部は、前記機械式変速機構の変速指令の出力に先立って、前記バルブ閉じ制御を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記エンジン停止時バルブ制御部は、前記機械式変速機構の変速を予測した時点から、前記開弁状態におけるバルブの開き量に応じて予め定められた前記変速指令の出力に対する前出し時間が得られるように設定した待機時間が経過した時点で前記バルブ閉じ制御を開始することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記エンジン停止時バルブ制御部は、前記機械式変速機構の変速過渡におけるイナーシャ相開始前に、前記ウェイストゲートバルブ及び前記エアバイパスバルブのうちの少なくとも一方のバルブを閉弁状態とした状態に制御することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記エンジンの停止時は、前記エンジンの運転を停止し、且つ、前記エンジンによるエンジンブレーキトルクを前記ハイブリッド車両に作用させていない前記エンジンの回転停止時であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2019117894A JP2021003963A (ja) | 2019-06-25 | 2019-06-25 | ハイブリッド車両の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2019117894A JP2021003963A (ja) | 2019-06-25 | 2019-06-25 | ハイブリッド車両の制御装置 |
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Family Applications (1)
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