以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン12と第1回転機MG1と第2回転機MG2と動力伝達装置14と駆動輪16とを備えるハイブリッド車両である。
図2は、エンジン12の概略構成を説明する図である。図2において、エンジン12は、車両10の走行用の動力源であり、過給機18を有するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関、すなわち過給機18付きエンジンである。エンジン12の吸気系には吸気管20が設けられており、吸気管20はエンジン本体12aに取り付けられた吸気マニホールド22に接続されている。エンジン12の排気系には排気管24が設けられており、排気管24はエンジン本体12aに取り付けられた排気マニホールド26に接続されている。過給機18は、吸気管20に設けられたコンプレッサー18cと排気管24に設けられたタービン18tとを有する、公知の排気タービン式の過給機すなわちターボチャージャーである。タービン18tは、排出ガスすなわち排気の流れにより回転駆動させられる。コンプレッサー18cは、タービン18tに連結されており、タービン18tによって回転駆動させられることでエンジン12への吸入空気すなわち吸気を圧縮する。
排気管24には、タービン18tの上流側から下流側へタービン18tを迂回させて排気を流す為の排気バイパス28が並列に設けられている。排気バイパス28には、タービン18tを通過する排気と排気バイパス28を通過する排気との割合を連続的に制御する為のウェイストゲートバルブ(=WGV)30が設けられている。ウェイストゲートバルブ30は、後述する電子制御装置100によって不図示のアクチュエータが作動させられることにより弁開度が連続的に調節される。ウェイストゲートバルブ30の弁開度が大きい程、エンジン12の排気は排気バイパス28を通って排出され易くなる。従って、過給機18の過給作用が効くエンジン12の過給状態において、過給機18による過給圧Pchgはウェイストゲートバルブ30の弁開度が大きい程低くなる。過給機18による過給圧Pchgは、吸気の圧力であり、吸気管20内でのコンプレッサー18cの下流側気圧である。尚、過給圧Pchgの低い側は、例えば過給機18の過給作用が全く効いていないエンジン12の非過給状態における吸気の圧力となる側、見方を換えれば過給機18を有していないエンジンにおける吸気の圧力となる側である。
吸気管20の入口にはエアクリーナ32が設けられ、エアクリーナ32よりも下流であってコンプレッサー18cよりも上流の吸気管20には、エンジン12の吸入空気量Qairを測定するエアフローメータ34が設けられている。コンプレッサー18cよりも下流の吸気管20には、吸気と外気又は冷却水とで熱交換を行うことで過給機18により圧縮された吸気を冷却する熱交換器であるインタークーラ36が設けられている。インタークーラ36よりも下流であって吸気マニホールド22よりも上流の吸気管20には、後述する電子制御装置100によって不図示のスロットルアクチュエータが作動させられることにより開閉制御される電子スロットル弁38が設けられている。インタークーラ36と電子スロットル弁38との間の吸気管20には、過給機18による過給圧Pchgを検出する過給圧センサ40、吸気の温度である吸気温度THairを検出する吸気温センサ42が設けられている。電子スロットル弁38の近傍例えばスロットルアクチュエータには、電子スロットル弁38の開度であるスロットル弁開度θthを検出するスロットル弁開度センサ44が設けられている。
吸気管20には、コンプレッサー18cの下流側から上流側へコンプレッサー18cを迂回させて空気を再循環させる為の空気再循環バイパス46が並列に設けられている。空気再循環バイパス46には、例えば電子スロットル弁38の急閉時に開弁させられることによりサージの発生を抑制してコンプレッサー18cを保護する為のエアバイパスバルブ(=ABV)48が設けられている。
エンジン12は、後述する電子制御装置100によって、電子スロットル弁38や燃料噴射装置や点火装置やウェイストゲートバルブ30等を含むエンジン制御装置50(図1参照)が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
図1に戻り、第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、車両10の走行用の動力源となり得る。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられたバッテリ54に接続されている。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、後述する電子制御装置100によってインバータ52が制御されることにより、第1回転機MG1の出力トルクであるMG1トルクTg及び第2回転機MG2の出力トルクであるMG2トルクTmが制御される。回転機の出力トルクは、例えば正回転の場合、加速側となる正トルクでは力行トルクであり、減速側となる負トルクでは回生トルクである。バッテリ54は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々に対して電力を授受する蓄電装置である。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース56内に設けられている。
動力伝達装置14は、ケース56内に、変速部58、差動部60、ドリブンギヤ62、ドリブン軸64、ファイナルギヤ66、ディファレンシャルギヤ68、リダクションギヤ70等を備えている。変速部58と差動部60とは、変速部58の入力回転部材である入力軸72と同軸心に配置されている。変速部58は、入力軸72などを介してエンジン12に連結されている。差動部60は、変速部58と直列に連結されている。ドリブンギヤ62は、差動部60の出力回転部材であるドライブギヤ74と噛み合っている。ドリブン軸64は、ドリブンギヤ62とファイナルギヤ66とを各々相対回転不能に固設する。ファイナルギヤ66は、ドリブンギヤ62よりも小径である。ディファレンシャルギヤ68は、デフリングギヤ68aを介してファイナルギヤ66と噛み合っている。リダクションギヤ70は、ドリブンギヤ62よりも小径であって、ドリブンギヤ62と噛み合っている。リダクションギヤ70には、入力軸72とは別にその入力軸72と平行に配置された、第2回転機MG2のロータ軸76が連結されており、第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。又、動力伝達装置14は、ディファレンシャルギヤ68に連結された車軸78等を備えている。
このように構成された動力伝達装置14は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式或いはRR(リヤエンジン・リヤドライブ)方式の車両に好適に用いられる。又、動力伝達装置14では、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2から各々出力される動力は、ドリブンギヤ62へ伝達され、そのドリブンギヤ62から、ファイナルギヤ66、ディファレンシャルギヤ68、車軸78等を順次介して駆動輪16へ伝達される。このように、第2回転機MG2は、駆動輪16に動力伝達可能に連結されている。又、動力伝達装置14では、エンジン12、変速部58、差動部60、及び第1回転機MG1と、第2回転機MG2とが異なる軸心上に配置されることで、軸長が短縮化されている。又、第2回転機MG2の減速比を大きくとることができる。尚、上記動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同意である。
変速部58は、第1遊星歯車機構80、クラッチC1、及びブレーキB1を備えている。差動部60は、第2遊星歯車機構82を備えている。第1遊星歯車機構80は、第1サンギヤS1、第1ピニオンP1、第1ピニオンP1を自転及び公転可能に支持する第1キャリアCA1、第1ピニオンP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を備える公知のシングルピニオン型の遊星歯車装置である。第2遊星歯車機構82は、第2サンギヤS2、第2ピニオンP2、第2ピニオンP2を自転及び公転可能に支持する第2キャリアCA2、第2ピニオンP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備える公知のシングルピニオン型の遊星歯車装置である。
第1遊星歯車機構80において、第1キャリアCA1は、入力軸72に一体的に連結されており、その入力軸72を介してエンジン12が動力伝達可能に連結された回転要素である。第1サンギヤS1は、ブレーキB1を介してケース56に選択的に連結される回転要素である。第1リングギヤR1は、差動部60の入力回転部材である第2遊星歯車機構82の第2キャリアCA2に連結された回転要素であり、変速部58の出力回転部材として機能する。又、第1キャリアCA1と第1サンギヤS1とは、クラッチC1を介して選択的に連結される。
クラッチC1及びブレーキB1は、何れも湿式の摩擦係合装置であり、油圧アクチュエータによって係合制御される多板型の油圧式摩擦係合装置である。このクラッチC1及びブレーキB1は、車両10に備えられた油圧制御回路84が後述する電子制御装置100によって制御されることにより、その油圧制御回路84から出力される調圧された各油圧Pc1,Pb1に応じて、各々、係合や解放などの状態である作動状態が切り替えられる。
クラッチC1及びブレーキB1が共に解放された状態においては、第1遊星歯車機構80の差動が許容される。よって、この状態では、第1サンギヤS1にてエンジントルクTeの反力トルクが取れない為、変速部58は機械的な動力伝達が不能な中立状態すなわちニュートラル状態とされる。又、クラッチC1が係合され且つブレーキB1が解放された状態においては、第1遊星歯車機構80は各回転要素が一体回転させられる。よって、この状態では、エンジン12の回転は等速で第1リングギヤR1から第2キャリアCA2へ伝達される。一方で、クラッチC1が解放され且つブレーキB1が係合された状態においては、第1遊星歯車機構80は第1サンギヤS1の回転が止められ、第1リングギヤR1の回転が第1キャリアCA1の回転よりも増速される。よって、この状態では、エンジン12の回転は増速されて第1リングギヤR1から出力される。このように、変速部58は、変速比が「1.0」の直結状態となるローギヤと、変速比が例えば「0.7」のオーバードライブ状態となるハイギヤとに切り替えられる2段の有段変速機として機能する。又、クラッチC1及びブレーキB1が共に係合された状態においては、第1遊星歯車機構80は各回転要素の回転が止められる。よって、この状態では、変速部58の出力回転部材である第1リングギヤR1の回転が停止させられることで、差動部60の入力回転部材である第2キャリアCA2の回転が停止させられる。
第2遊星歯車機構82において、第2キャリアCA2は、変速部58の出力回転部材である第1リングギヤR1に連結された回転要素であり、差動部60の入力回転部材として機能する。第2サンギヤS2は、第1回転機MG1のロータ軸86に一体的に連結されており、第1回転機MG1が動力伝達可能に連結された回転要素である。第2リングギヤR2は、ドライブギヤ74に一体的に連結されており、駆動輪16に動力伝達可能に連結された回転要素であり、差動部60の出力回転部材として機能する。第2遊星歯車機構82は、変速部58を介して第2キャリアCA2に入力されるエンジン12の動力を第1回転機MG1及びドライブギヤ74に機械的に分割する動力分割機構である。つまり、第2遊星歯車機構82は、エンジン12の動力を駆動輪16と第1回転機MG1とに分割して伝達する差動機構である。第2遊星歯車機構82において、第2キャリアCA2は入力要素として機能し、第2サンギヤS2は反力要素として機能し、第2リングギヤR2は出力要素として機能する。差動部60は、第2遊星歯車機構82に動力伝達可能に連結された第1回転機MG1とともに、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより第2遊星歯車機構82の差動状態が制御される電気式変速機構例えば電気式無段変速機を構成する。第1回転機MG1は、エンジン12の動力が伝達される回転機である。変速部58はオーバードライブであるので、第1回転機MG1の高トルク化が抑制される。尚、第1回転機MG1の運転状態を制御することは、第1回転機MG1の運転制御を行うことである。
図3は、差動部60における各回転要素の回転速度を相対的に表す共線図である。図3において、3本の縦線Y1、Y2、Y3は、差動部60を構成する第2遊星歯車機構82の3つの回転要素に対応している。縦線Y1は、第1回転機MG1(図中の「MG1」参照)が連結された第2回転要素RE2である第2サンギヤS2の回転速度を表している。縦線Y2は、変速部58を介してエンジン12(図中の「ENG」参照)が連結された第1回転要素RE1である第2キャリアCA2の回転速度を表している。縦線Y3は、ドライブギヤ74(図中の「OUT」参照)と一体的に連結された第3回転要素RE3である第2リングギヤR2の回転速度を表している。ドライブギヤ74と噛み合うドリブンギヤ62には、リダクションギヤ70等を介して第2回転機MG2(図中の「MG2」参照)が連結されている。第2キャリアCA2には、車両10に備えられた機械式のオイルポンプ(図中の「MOP」参照)が連結されている。この機械式のオイルポンプは、第2キャリアCA2の回転に伴って駆動されることで、クラッチC1及びブレーキB1の各係合作動や各部の潤滑や各部の冷却に用いられるオイルを供給する。第2キャリアCA2の回転が停止される場合には、車両10に備えられた電動式のオイルポンプ(不図示)によりオイルが供給される。縦線Y1、Y2、Y3の相互の間隔は、第2遊星歯車機構82の歯車比ρ(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)に応じて定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリアとの間が「1」に対応する間隔とされると、キャリアとリングギヤとの間が歯車比ρに対応する間隔とされる。
図3の実線Lefは、少なくともエンジン12を動力源として走行するハイブリッド走行(=HV走行)が可能な走行モードであるHV走行モードでの前進走行における各回転要素の相対速度の一例を示している。又、図3の実線Lerは、HV走行モードでの後進走行における各回転要素の相対速度の一例を示している。このHV走行モードでは、第2遊星歯車機構82において、例えば変速部58を介して第2キャリアCA2に入力される正トルクのエンジントルクTeに対して、第1回転機MG1による負トルクの反力トルクとなるMG1トルクTgが第2サンギヤS2に入力されると、第2リングギヤR2には正トルクのエンジン直達トルクTdが現れる。例えば、クラッチC1が係合され且つブレーキB1が解放されて変速部58が変速比「1.0」の直結状態とされている場合、第2キャリアCA2に入力されるエンジントルクTeに対して、反力トルクとなるMG1トルクTg(=-ρ/(1+ρ)×Te)が第2サンギヤS2に入力されると、第2リングギヤR2にはエンジン直達トルクTd(=Te/(1+ρ)=-(1/ρ)×Tg)が現れる。そして、要求駆動力に応じて、ドリブンギヤ62に各々伝達されるエンジン直達トルクTdとMG2トルクTmとの合算トルクが車両10の駆動トルクとして駆動輪16へ伝達され得る。第1回転機MG1は、正回転にて負トルクを発生する場合には発電機として機能する。第1回転機MG1の発電電力Wgは、バッテリ54に充電されたり、第2回転機MG2にて消費される。第2回転機MG2は、発電電力Wgの全部又は一部を用いて、或いは発電電力Wgに加えてバッテリ54からの電力を用いて、MG2トルクTmを出力する。前進走行時のMG2トルクTmは正回転の正トルクとなる力行トルクであり、後進走行時のMG2トルクTmは負回転の負トルクとなる力行トルクである。
差動部60は、電気的な無段変速機として作動させられ得る。例えば、HV走行モードにおいて、駆動輪16の回転に拘束されるドライブギヤ74の回転速度である出力回転速度Noに対して、第1回転機MG1の運転状態が制御されることによって第1回転機MG1の回転速度つまり第2サンギヤS2の回転速度が上昇或いは低下させられると、第2キャリアCA2の回転速度が上昇或いは低下させられる。第2キャリアCA2は変速部58を介してエンジン12と連結されているので、第2キャリアCA2の回転速度が上昇或いは低下させられることで、エンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Neが上昇或いは低下させられる。従って、ハイブリッド走行では、エンジン動作点Pengを効率の良い動作点に設定する制御を行うことが可能である。この種のハイブリッド形式は、機械分割式或いはスプリットタイプと称される。第1回転機MG1は、エンジン回転速度Neを制御可能な回転機である。動作点は、回転速度とトルクとで表される運転点であり、エンジン動作点Pengは、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで表されるエンジン12の運転点である。
図3の破線Lm1は、モータ走行(=EV走行)モードのうちの第2回転機MG2のみを動力源とするモータ走行が可能な単独駆動EVモードでの前進走行における各回転要素の相対速度の一例を示している。図3の破線Lm2は、EV走行モードのうちの第1回転機MG1及び第2回転機MG2の両方を動力源とするモータ走行が可能な両駆動EVモードでの前進走行における各回転要素の相対速度の一例を示している。EV走行モードは、エンジン12の運転を停止した状態で第1回転機MG1及び第2回転機MG2のうちの少なくとも一方の回転機を動力源として走行するモータ走行が可能な走行モードである。
前記単独駆動EVモードでは、クラッチC1及びブレーキB1が共に解放されて変速部58がニュートラル状態とされることで差動部60もニュートラル状態とされ、この状態でMG2トルクTmが車両10の駆動トルクとして駆動輪16へ伝達され得る。単独駆動EVモードでは、例えば第1回転機MG1における引き摺り損失等を低減する為に、第1回転機MG1はゼロ回転に維持される。例えば第1回転機MG1をゼロ回転に維持する制御を行っても、差動部60はニュートラル状態であるので、駆動トルクに影響を与えない。
前記両駆動EVモードでは、クラッチC1及びブレーキB1が共に係合されて第1遊星歯車機構80の各回転要素の回転が止められることで第2キャリアCA2はゼロ回転で停止状態とされ、この状態でMG1トルクTg及びMG2トルクTmが車両10の駆動トルクとして駆動輪16へ伝達され得る。
図1に戻り、車両10は、更に、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2などの制御に関連する車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置100を備えている。電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。電子制御装置100は、必要に応じてエンジン制御用、回転機制御用、油圧制御用等の各コンピュータを含んで構成される。
電子制御装置100には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエアフローメータ34、過給圧センサ40、吸気温センサ42、スロットル弁開度センサ44、エンジン回転速度センサ88、出力回転速度センサ90、MG1回転速度センサ92、MG2回転速度センサ94、アクセル開度センサ96、バッテリセンサ98など)による検出値に基づく各種信号等(例えば吸入空気量Qair、過給圧Pchg、吸気温度THair、スロットル弁開度θth、エンジン回転速度Ne、車速Vに対応する出力回転速度No、第1回転機MG1の回転速度であるMG1回転速度Ng、第2回転機MG2の回転速度であるMG2回転速度Nm、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbatなど)が、それぞれ供給される。又、電子制御装置100からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路84など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を各々制御する為の回転機制御指令信号Smg、クラッチC1及びブレーキB1の各々の作動状態を制御する為の油圧制御指令信号Spなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置100は、例えばバッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいてバッテリ54の充電状態を示す値としての充電状態値SOC[%]を算出する。又、電子制御装置100は、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ54の充電状態値SOCに基づいて、バッテリ54のパワーであるバッテリパワーPbatの使用可能な範囲を規定する充放電可能電力Win,Woutを算出する。充放電可能電力Win,Woutは、バッテリ54の入力電力の制限を規定する入力可能電力としての充電可能電力Win、及びバッテリ54の出力電力の制限を規定する出力可能電力としての放電可能電力Woutである。充放電可能電力Win,Woutは、例えばバッテリ温度THbatが常用域より低い低温域ではバッテリ温度THbatが低い程小さくされ、又、バッテリ温度THbatが常用域より高い高温域ではバッテリ温度THbatが高い程小さくされる。又、充電可能電力Winは、例えば充電状態値SOCが高い領域では充電状態値SOCが高い程小さくされる。又、放電可能電力Woutは、例えば充電状態値SOCが低い領域では充電状態値SOCが低い程小さくされる。
電子制御装置100は、車両10における各種制御を実現する為に、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部102を備えている。
ハイブリッド制御部102は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部としての機能と、インバータ52を介して第1回転機MG1及び第2回転機MG2の作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部としての機能と、変速部58における動力伝達状態を切り替える動力伝達切替手段すなわち動力伝達切替部としての機能とを含んでおり、それら制御機能によりエンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2によるハイブリッド駆動制御等を実行する。
ハイブリッド制御部102は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である例えば駆動力マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで車両10に対して要求される駆動トルクTwである要求駆動トルクTwdemを算出する。この要求駆動トルクTwdemは、見方を換えればそのときの車速Vにおける要求駆動パワーPwdemである。ここでは、車速Vに替えて出力回転速度Noなどを用いても良い。
ハイブリッド制御部102は、バッテリ54に対して要求される充放電パワーである要求充放電パワー等を考慮して、エンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2のうちの少なくとも1つの動力源によって要求駆動パワーPwdemを実現するように、エンジン12を制御する指令信号であるエンジン制御指令信号Seと、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を制御する指令信号である回転機制御指令信号Smgとを出力する。
例えばHV走行モードにて走行させる場合、エンジン制御指令信号Seは、要求駆動パワーPwdemに要求充放電パワーやバッテリ54における充放電効率等を加味した要求エンジンパワーPedemを実現する、最適エンジン動作点Pengf等を考慮した目標エンジン回転速度Netgtにおける目標エンジントルクTetgtを出力するエンジンパワーPeの指令値である。又、回転機制御指令信号Smgは、エンジン回転速度Neを目標エンジン回転速度Netgtとする為の反力トルクとしての指令出力時のMG1回転速度NgにおけるMG1トルクTgを出力する第1回転機MG1の発電電力Wgの指令値、及び、指令出力時のMG2回転速度NmにおけるMG2トルクTmを出力する第2回転機MG2の消費電力Wmの指令値である。HV走行モードにおけるMG1トルクTgは、例えばエンジン回転速度Neが目標エンジン回転速度Netgtとなるように第1回転機MG1を作動させるフィードバック制御において算出される。HV走行モードにおけるMG2トルクTmは、例えばエンジン直達トルクTdによる駆動トルクTw分と合わせて要求駆動トルクTwdemが得られるように算出される。最適エンジン動作点Pengfは、例えば要求エンジンパワーPedemを実現するときに、エンジン12単体の燃費にバッテリ54における充放電効率等を考慮した車両10におけるトータル燃費が最も良くなるエンジン動作点Pengとして予め定められている。目標エンジン回転速度Netgtは、エンジン回転速度Neの目標値であり、目標エンジントルクTetgtは、エンジントルクTeの目標値であり、エンジンパワーPeはエンジン12のパワーである。このように、車両10は、エンジン回転速度Neが目標エンジン回転速度Netgtとなるように第1回転機MG1の反力トルクとなるMG1トルクTgを制御する車両である。
図4は、エンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeを変数とする二次元座標上に、最適エンジン動作点Pengfの一例を示す図である。図4において、実線Lengは、最適エンジン動作点Pengfの集まりを示している。等パワー線Lpw1,Lpw2,Lpw3は、各々、要求エンジンパワーPedemが要求エンジンパワーPe1,Pe2,Pe3であるときの一例を示している。点Aは、要求エンジンパワーPe1を最適エンジン動作点Pengf上で実現するときのエンジン動作点PengAであり、点Bは、要求エンジンパワーPe3を最適エンジン動作点Pengf上で実現するときのエンジン動作点PengBである。点A,Bは、各々、目標エンジン回転速度Netgtと目標エンジントルクTetgtとで表されるエンジン動作点Pengの目標値すなわち目標エンジン動作点Pengtgtでもある。アクセル開度θaccの増大により、例えば目標エンジン動作点Pengtgtが点Aから点Bへ変化させられた場合、最適エンジン動作点Pengf上を通る経路aでエンジン動作点Pengが変化させられるように制御される。
ハイブリッド制御部102は、走行モードとして、EV走行モード或いはHV走行モードを走行状態に応じて選択的に成立させて、各走行モードにて車両10を走行させる。例えば、ハイブリッド制御部102は、要求駆動パワーPwdemが予め定められた閾値よりも小さなモータ走行領域にある場合には、EV走行モードを成立させる一方で、要求駆動パワーPwdemが予め定められた閾値以上となるハイブリッド走行領域にある場合には、HV走行モードを成立させる。ハイブリッド制御部102は、要求駆動パワーPwdemがモータ走行領域にあるときであっても、バッテリ54の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合やエンジン12の暖機が必要な場合などには、HV走行モードを成立させる。前記エンジン始動閾値は、エンジン12を強制的に始動してバッテリ54を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断する為の予め定められた閾値である。
図5は、モータ走行とハイブリッド走行との切替制御に用いる動力源切替マップの一例を示す図である。図5において、実線Lswpは、モータ走行とハイブリッド走行とを切り替える為のモータ走行領域とハイブリッド走行領域との境界線である。車速Vが比較的低く且つ要求駆動トルクTwdemが比較的小さい、要求駆動パワーPwdemが比較的小さな領域がモータ走行領域に予め定められている。車速Vが比較的高い又は要求駆動トルクTwdemが比較的大きい、要求駆動パワーPwdemが比較的大きな領域がハイブリッド走行領域に予め定められている。バッテリ54の充電状態値SOCがエンジン始動閾値未満となるとき又はエンジン12の暖機が必要なときには、図5におけるモータ走行領域がハイブリッド走行領域に変更されても良い。
ハイブリッド制御部102は、EV走行モードを成立させたときに、第2回転機MG2のみで要求駆動パワーPwdemを実現できる場合には、単独駆動EVモードを成立させる。一方で、ハイブリッド制御部102は、EV走行モードを成立させたときに、第2回転機MG2のみでは要求駆動パワーPwdemを実現できない場合には、両駆動EVモードを成立させる。ハイブリッド制御部102は、第2回転機MG2のみで要求駆動パワーPwdemを実現できるときであっても、第2回転機MG2のみを用いるよりも第1回転機MG1及び第2回転機MG2を併用した方が効率が良い場合には、両駆動EVモードを成立させても良い。
ハイブリッド制御部102は、エンジン12の運転停止時にHV走行モードを成立させた場合には、エンジン12を始動する始動制御を行う。ハイブリッド制御部102は、エンジン12を始動するときには、例えば第1回転機MG1によりエンジン回転速度Neを上昇させつつ、エンジン回転速度Neが点火可能な所定回転速度以上となったときに点火することでエンジン12を始動する。すなわち、ハイブリッド制御部102は、第1回転機MG1によりエンジン12をクランキングすることでエンジン12を始動する。
ハイブリッド制御部102は、成立させた走行モードに基づいて、クラッチC1及びブレーキB1の各係合作動を制御する。ハイブリッド制御部102は、成立させた走行モードにて走行する為の動力伝達が可能となるように、クラッチC1及びブレーキB1を各々係合及び/又は解放させる油圧制御指令信号Spを油圧制御回路84へ出力する。
図6は、各走行モードにおけるクラッチC1及びブレーキB1の各作動状態を示す図表である。図6において、○印はクラッチC1及びブレーキB1の各々の係合を示し、空欄は解放を示し、△印は回転停止状態のエンジン12を連れ回し状態とするエンジンブレーキの併用時に何れか一方を係合することを示している。又、「G」は第1回転機MG1を主にジェネレータとして機能させることを示し、「M」は第1回転機MG1及び第2回転機MG2の各々を駆動時には主にモータとして機能させ、回生時には主にジェネレータとして機能させることを示している。車両10は、走行モードとして、EV走行モード及びHV走行モードを選択的に実現することができる。EV走行モードは、単独駆動EVモードと両駆動EVモードとの2つのモードを有している。
単独駆動EVモードは、クラッチC1及びブレーキB1が共に解放された状態で実現される。単独駆動EVモードでは、クラッチC1及びブレーキB1が解放されることで、変速部58がニュートラル状態とされる。変速部58がニュートラル状態とされると、差動部60は第1リングギヤR1に連結された第2キャリアCA2にてMG1トルクTgの反力トルクが取れないニュートラル状態とされる。この状態で、ハイブリッド制御部102は、第2回転機MG2から走行用のMG2トルクTmを出力させる(図3の破線Lm1参照)。単独駆動EVモードでは、前進走行時に対して第2回転機MG2を逆回転させて後進走行することも可能である。
単独駆動EVモードでは、第1リングギヤR1は第2キャリアCA2に連れ回されるが、変速部58はニュートラル状態であるので、エンジン12は連れ回されずゼロ回転で停止状態とされる。よって、単独駆動EVモードでの走行中に第2回転機MG2にて回生制御を行う場合、回生量を大きく取ることができる。単独駆動EVモードでの走行時に、バッテリ54が満充電状態となり回生エネルギーが取れない場合、エンジンブレーキを併用することが考えられる。エンジンブレーキを併用する場合は、ブレーキB1又はクラッチC1が係合される(図6の「エンブレ併用」参照)。ブレーキB1又はクラッチC1が係合されると、エンジン12は連れ回し状態とされて、エンジンブレーキが作用させられる。
両駆動EVモードは、クラッチC1及びブレーキB1が共に係合された状態で実現される。両駆動EVモードでは、クラッチC1及びブレーキB1が係合されることで、第1遊星歯車機構80の各回転要素の回転が停止させられ、エンジン12はゼロ回転で停止状態とされ、又、第1リングギヤR1に連結された第2キャリアCA2の回転も停止させられる。第2キャリアCA2の回転が停止させられると、第2キャリアCA2にてMG1トルクTgの反力トルクが取れる為、MG1トルクTgを第2リングギヤR2から機械的に出力させて駆動輪16へ伝達することができる。この状態で、ハイブリッド制御部102は、第1回転機MG1及び第2回転機MG2から各々走行用のMG1トルクTg及びMG2トルクTmを出力させる(図3の破線Lm2参照)。両駆動EVモードでは、前進走行時に対して第1回転機MG1及び第2回転機MG2を共に逆回転させて後進走行することも可能である。
HV走行モードのロー状態は、クラッチC1が係合された状態且つブレーキB1が解放された状態で実現される。HV走行モードのロー状態では、クラッチC1が係合されることで、第1遊星歯車機構80の回転要素が一体回転させられ、変速部58は直結状態とされる。その為、エンジン12の回転は等速で第1リングギヤR1から第2キャリアCA2へ伝達される。HV走行モードのハイ状態は、ブレーキB1が係合された状態且つクラッチC1が解放された状態で実現される。HV走行モードのハイ状態では、ブレーキB1が係合されることで、第1サンギヤS1の回転が停止させられ、変速部58はオーバードライブ状態とされる。その為、エンジン12の回転は増速されて第1リングギヤR1から第2キャリアCA2へ伝達される。HV走行モードにおいて、ハイブリッド制御部102は、エンジントルクTeに対する反力トルクとなるMG1トルクTgを第1回転機MG1の発電により出力させると共に、第1回転機MG1の発電電力により第2回転機MG2からMG2トルクTmを出力させる(図3の実線Lef参照)。HV走行モードでは例えばHV走行モードのロー状態では、前進走行時に対して第2回転機MG2を逆回転させて後進走行することも可能である(図3の実線Ler参照)。HV走行モードでは、バッテリ54からの電力を用いたMG2トルクTmを更に付加して走行することも可能である。HV走行モードでは、例えば車速Vが比較的高く且つ要求駆動トルクTwdemが比較的小さいときには、HV走行モードのハイ状態が成立させられる。
ここで、前述したようにHV走行モードにおけるMG2トルクTmを例えば要求駆動トルクTwdemとエンジン直達トルクTdとに基づいて算出するような場合、エンジントルクTeの実際値すなわち実エンジントルクTerが正確に検出されることが望ましい。過給機18を有するエンジン12では、スロットル弁開度θthやエンジン回転速度Neを用いて実エンジントルクTerを推定することが難しい。これに対して、第1回転機MG1の反力トルクであるMG1トルクTgには実エンジントルクTerが反映されているので、第1回転機MG1の反力トルクを用いて実エンジントルクTerを推定することが可能である。
電子制御装置100は、エンジン回転速度Neが目標エンジン回転速度Netgtとなるように制御するときの第1回転機MG1の反力トルクであるMG1トルクTgに基づいてエンジントルクTeの推定値すなわち推定エンジントルクTeesを算出し、その算出した推定エンジントルクTeesを実エンジントルクTerとして検出するエンジントルク検出装置としての機能を有している。
ところで、例えばエンジン回転速度センサ88の信号に重畳するノイズやエンジン12の動力を伝達する変速部58や差動部60等の捩れ振動により、エンジン回転速度Neが目標エンジン回転速度Netgtとなるように制御されるときの第1回転機MG1の反力トルクに変動が生じる場合がある。このような場合、第1回転機MG1の反力トルクに基づいて算出される推定エンジントルクTeesにも変動が生じることとなり、ロバスト性が悪化する可能性がある。電子制御装置100は、ロバスト性を得る為に、逐次取得した反力トルクに基づいて算出した一連のエンジントルクTeに重み付けを行って推定エンジントルクTeesを算出する。この重み付けは、上記一連のエンジントルクTeを平滑処理するものであり、推定エンジントルクTeesの変化を緩和するものである。しかしながら、過給圧Pchgが高くされると又は過給圧Pchgが大きく変化させられるとエンジントルクTeが大きく変化する為、上記エンジントルクTeに対する重み付けに係る重みをロバスト性が得られる値に設定すると、実エンジントルクTerが大きく変化したときの検出遅れが問題となる可能性がある。
電子制御装置100は、ロバスト性の悪化を抑制しつつ、過給圧Pchgが高くされたとき又は過給圧Pchgが大きく変化させられたときの実エンジントルクTerの検出遅れを抑制するという制御機能を実現する為に、更に、推定エンジントルク算出手段すなわち推定エンジントルク算出部104、重み設定手段すなわち重み設定部106、及び状態判定手段すなわち状態判定部108を備えている。
状態判定部108は、過給機18による過給作用が効いている過給状態であるか否か、すなわち過給中であるか否かを判定する。状態判定部108は、過給圧Pchgが所定過給圧Pchgf以上であるか否かに基づいて過給中であるか否かを判定する。所定過給圧Pchgfは、例えば過給機18による過給作用が効いていると判断することができる予め定められた過給圧Pchgの下限値である。
推定エンジントルク算出部104は、エンジン回転速度Neが目標エンジン回転速度Netgtとなるように制御されるときの第1回転機MG1の反力トルクであるMG1トルクTgを逐次取得する。逐次取得したMG1トルクTgを逐次取得MG1トルクTg(n)とする。推定エンジントルク算出部104は、回転機制御指令信号Smgに基づいて逐次取得MG1トルクTg(n)を取得する。逐次取得するとは、例えば繰り返し実行される後述の図9に示すようなフローチャートにおける制御作動毎に取得すること、又は、ロバスト性を得る為の予め定められた所定間隔毎に取得することなどである。つまり、逐次取得するとは、予め定められたサンプリング周期TMs毎に取得することである。逐次取得MG1トルクTg(n)の「(n)」は直近時点の値すなわち最新値を表しており、例えば「(n-1)」は前回値を表している。
推定エンジントルク算出部104は、逐次取得MG1トルクTg(n)に基づいてエンジントルクTeを算出する。逐次取得MG1トルクTg(n)に基づいて算出したエンジントルクTeを逐次算出推定エンジントルクTees(n)とする。推定エンジントルク算出部104は、予め定められた次式(1)に逐次取得MG1トルクTg(n)を適用することで逐次算出推定エンジントルクTees(n)を算出する。次式(1)において、「ρ」は第2遊星歯車機構82の歯車比ρである。推定エンジントルク算出部104は、電子制御装置100が備える例えばRAM又はEEPROM等のメモリに逐次算出推定エンジントルクTees(n)を記憶させる。逐次算出推定エンジントルクTees(n)は少なくとも所定数記憶させられる。前記所定数は、例えばロバスト性が得られる為の予め定められた値である。最新値は常に「Tees(n)」として記憶され、前回の最新値は「Tees(n-1)」とされる。従って、所定数が五つの場合、最新値を含む所定数の一連の逐次算出推定エンジントルクTees(n)は、「Tees(n)」、「Tees(n-1)」、「Tees(n-2)」、「Tees(n-3)」、「Tees(n-4)」である。以下、所定数が五つの場合を例示して説明を行う。尚、次式(1)は、変速部58が変速比「1.0」の直結状態とされている場合である。
Tees(n)=-(1+ρ)/ρ×Tg(n) …(1)
推定エンジントルク算出部104は、最新値を含む所定数の一連の逐次算出推定エンジントルクTees(n)に重み付けを行って推定エンジントルクTeesを算出する。推定エンジントルク算出部104は、例えば予め定められた次式(2)に最新値を含む所定数の一連の逐次算出推定エンジントルクTees(n)を適用することで推定エンジントルクTeesを算出する。次式(2)において、「W0~W4」は各々逐次算出推定エンジントルクTees(n)に対する重み付けに係る重みを表す値、すなわち重み係数Wxである。重み係数W0は逐次算出推定エンジントルクTees(n)の最新値「Tees(n)」に対する重み係数Wxであり、重み係数W1は前回の最新値「Tees(n-1)」に対する重み係数Wxであり、重み係数W2,W3,W4は順に「Tees(n-2)」,「Tees(n-3)」,「Tees(n-4)」に対する重み係数Wxである。重み係数Wxの合算値は、例えば「1」(=W0+W1+W2+W3+W4)である。
Tees=W4×Tees(n-4)+W3×Tees(n-3)
+W2×Tees(n-2)+W1×Tees(n-1)+W0×Tees(n) …(2)
重み設定部106は、重み係数Wxを設定する。重み設定部106は、状態判定部108により過給中でないと判定された場合には、非過給時の重み係数Wxを設定する。一方で、重み設定部106は、状態判定部108により過給中であると判定された場合には、過給時の重み係数Wxを設定する。
図7は、重み係数Wxの一例を示す図である。図7において、過給圧Pchgが低い状態又は過給圧Pchgの変化が小さい状態は、非過給時と同等の状態である。最新値「Tees(n)」に対する重み係数W0は、過給圧Pchgが高い程又は過給圧Pchgの変化が大きい程、大きな値に設定されている。又、逐次算出推定エンジントルクTees(n)の古い値に対する重み係数Wxは、新しい値に対する重み係数Wxと比べて、小さな値に設定されている。非過給時の重み係数Wxは、結果的に例えば次式(3)に示すような各重み係数W0~W4が等しい値又は略等しい値に設定されている。一方で、過給時の重み係数Wxは、結果的に例えば次式(4)に示すような傾向に設定されている。尚、過給時に最新値「Tees(n)」に対する重み係数W0が大きくされる傾向に設定されれば実エンジントルクTerの検出遅れを抑制するという一応の効果は得られるので、過給時の重み係数Wxは、例えば次式(5)に示すような傾向に設定されても良い。
W4≒W3≒W2≒W1≒W0 …(3)
W4<W3<W2<W1<W0 …(4)
W4≒W3≒W2≒W1<W0 …(5)
上述したように、重み設定部106は、過給機18による過給圧Pchg又は過給圧Pchgの変化に基づいて重み係数Wxを設定するものであり、過給圧Pchgが高いときには低いときに比べて又は過給圧Pchgの変化が大きいときには小さいときに比べて推定エンジントルクTeesの変化の緩和度合が小さくなるように重み係数Wxを設定する。
吸気温度THairが低くされると過給圧Pchgが高くされたことによるエンジントルクTeの増大効果が得られ易くされる。図8は、吸気温度THairに応じた最新値「Tees(n)」に対する重み係数W0の一例を示す図である。図8において、最新値「Tees(n)」に対する重み係数W0は、吸気温度THairが低い程、大きな値に設定されている。最新値「Tees(n)」よりも古い値に対する重み係数W1~W4は、前述したように、重み係数W0の値に応じて変化させられる。このように、重み設定部106は、吸気温度THairに基づいて重み係数Wxを設定するものであり、吸気温度THairが低いときには高いときに比べて推定エンジントルクTeesの変化の緩和度合が小さくなるように重み係数Wxを設定する。
図9は、電子制御装置100の制御作動の要部すなわちエンジントルクTeを検出する際のロバスト性の悪化を抑制しつつ過給圧Pchgが高くされたとき又は過給圧Pchgが大きく変化させられたときのエンジントルクTeの検出遅れを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
図9において、先ず、状態判定部108の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、過給中であるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は重み設定部106の機能に対応するS20において、例えば前記式(3)に示すように、非過給時の重み係数Wxが設定される。一方で、上記S10の判断が肯定される場合は重み設定部106の機能に対応するS30において、例えば図7に示すように、過給圧Pchg又は過給圧Pchgの変化に基づいて過給時の重み係数Wxが設定される。上記S20に次いで、又は、上記S30に次いで、推定エンジントルク算出部104の機能に対応するS40において、例えば前記式(1)及び前記式(2)を用いて推定エンジントルクTeesが算出される。
上述のように、本実施例によれば、逐次取得MG1トルクTg(n)に基づいて算出された一連の逐次算出推定エンジントルクTees(n)に重み付けが行われて推定エンジントルクTeesが算出されるに際して、過給圧Pchgが高いときには低いときに比べて又は過給圧Pchgの変化が大きいときには小さいときに比べて推定エンジントルクTeesの変化の緩和度合が小さくなるように重み係数Wxが設定されるので、一連の逐次算出推定エンジントルクTees(n)に対する重み付けによりロバスト性が得られつつ、大きく変化させられたときの逐次算出推定エンジントルクTees(n)が推定エンジントルクTeesに反映され易くされる。よって、エンジントルクTeを検出する際のロバスト性の悪化を抑制しつつ、過給圧Pchgが高くされたとき又は過給圧Pchgが大きく変化させられたときの実エンジントルクTerの検出遅れを抑制することができる。
また、本実施例によれば、吸気温度THairが低いときには高いときに比べて推定エンジントルクTeesの変化の緩和度合が小さくなるように重み係数Wxが設定されるので、大きく変化させられたときの逐次算出推定エンジントルクTees(n)が推定エンジントルクTeesに一層反映され易くされる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。尚、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
エンジン回転速度NeやMG1回転速度Ngが変化しているときには、第1回転機MG1の反力トルクは、エンジン回転速度Neの変化に伴うイナーシャトルクTiengやMG1回転速度Ngの変化に伴うイナーシャトルクTimg1の影響を受ける。その為、エンジントルクTeの推定精度すなわち推定エンジントルクTeesの算出精度を向上するには、これらのイナーシャトルクTieng,Timg1を考慮して逐次算出推定エンジントルクTees(n)を算出することが好ましい。
推定エンジントルク算出部104は、予め定められた次式(6)に逐次取得MG1トルクTg(n)、逐次取得MG1回転速度Ng(n)、及び逐次取得エンジン回転速度Ne(n)を適用することで逐次算出推定エンジントルクTees(n)を算出する。逐次取得MG1回転速度Ng(n)は、逐次取得MG1トルクTg(n)が取得された時点で取得されたMG1回転速度Ngであり、逐次取得エンジン回転速度Ne(n)は、逐次取得MG1トルクTg(n)が取得された時点で取得されたエンジン回転速度Neである。次式(6)において、「Jg」は第1回転機MG1のイナーシャであり、「Je」はエンジン12のイナーシャであり、「TMs」はサンプリング周期である。次式(6)の右辺第2項は、第2遊星歯車機構82の第2キャリアCA2上に置換した第1回転機MG1によるイナーシャトルクTimg1分を表しており、右辺第3項は、第2遊星歯車機構82の第2キャリアCA2上に現れるエンジン12によるイナーシャトルクTieng分を表している。尚、次式(6)は、変速部58が変速比「1.0」の直結状態とされている場合である。
Tees(n)=-(1+ρ)/ρ×Tg(n)
+(1+ρ)/ρ×Jg×(Ng(n)-Ng(n-1))/TMs
+Je×(Ne(n)-Ne(n-1))/TMs …(6)
上述したように、推定エンジントルク算出部104は、エンジン回転速度Neの変化に伴うイナーシャトルクTiengとMG1回転速度Ngの変化に伴うイナーシャトルクTimg1とを用いて、逐次取得MG1トルクTg(n)に基づいて算出する逐次算出推定エンジントルクTees(n)を補正する。
本実施例では、図9のフローチャートのS40において、例えば前記式(6)及び前記式(2)を用いて推定エンジントルクTeesが算出される。
本実施例によれば、エンジン12によるイナーシャトルクTiengと第1回転機MG1によるイナーシャトルクTimg1とを用いて逐次算出推定エンジントルクTees(n)が補正されるので、推定エンジントルクTeesの算出精度が向上させられる。
過給圧Pchgが高い程又は過給圧Pchgの変化が大きい程、エンジン回転速度NeやMG1回転速度Ngが変化し易く、第1回転機MG1の反力トルクは、エンジン12によるイナーシャトルクTiengや第1回転機MG1によるイナーシャトルクTimg1の影響を受け易い。その為、過給圧Pchgが高い程又は過給圧Pchgの変化が大きい程、イナーシャトルクTiengやイナーシャトルクTimg1が逐次算出推定エンジントルクTees(n)の補正に反映され易くすることが好ましい。
推定エンジントルク算出部104は、エンジン12によるイナーシャトルクTiengと第1回転機MG1によるイナーシャトルクTimg1とに各々重み付けを行って、逐次取得MG1トルクTg(n)に基づいて算出する逐次算出推定エンジントルクTees(n)を補正する。推定エンジントルク算出部104は、予め定められた次式(7)に逐次取得MG1トルクTg(n)、逐次取得MG1回転速度Ng(n)、及び逐次取得エンジン回転速度Ne(n)を適用することで逐次算出推定エンジントルクTees(n)を算出する。次式(7)において、「WM」,「WE」は各々イナーシャトルクに対する重み付けに係る重みを表す値、すなわち重み係数Wiであり、「WM」は第1回転機MG1によるイナーシャトルクTimg1に対する重み係数Wiであり、「WE」はエンジン12によるイナーシャトルクTiengに対する重み係数Wiである。次式(7)は、前記式(6)の右辺第2項に重み係数WMが乗算され、前記式(6)の右辺第3項に重み係数WEが乗算されている点が前記式(6)と相違する。
Tees(n)=-(1+ρ)/ρ×Tg(n)
+WM×(1+ρ)/ρ×Jg×(Ng(n)-Ng(n-1))/TMs
+WE×Je×(Ne(n)-Ne(n-1))/TMs …(7)
重み設定部106は、重み係数Wiを設定する。図10は、重み係数Wiの一例を示す図である。図10において、重み係数Wiつまり重み係数WM,WEは、各々、過給圧Pchgが高い程又は過給圧Pchgの変化が大きい程、大きな値に設定されている。又、エンジン12は第1回転機MG1よりもイナーシャが大きくノイズ等に対するロバスト性が高いので、重み係数WEは重み係数WMよりも小さく設定されている。
上述したように、重み設定部106は、過給圧Pchgが高いときには低いときに比べて又は過給圧Pchgの変化が大きいときには小さいときに比べて、重み係数WM,WEを各々大きな値に設定する。又、重み設定部106は、重み係数WEよりも重み係数WMを大きな値に設定する。
本実施例では、図9のフローチャートのS20又はS30において、重み係数Wxに加えて重み係数Wiが設定される。又、図9のフローチャートのS40において、例えば前記式(7)及び前記式(2)を用いて推定エンジントルクTeesが算出される。
本実施例によれば、エンジン12によるイナーシャトルクTiengと第1回転機MG1によるイナーシャトルクTimg1とに各々重み付けが行われて、逐次算出推定エンジントルクTees(n)が補正され、過給圧Pchgが高いときには低いときに比べて又は過給圧Pchgの変化が大きいときには小さいときに比べて、エンジン12によるイナーシャトルクTiengに対する重み係数WEと第1回転機MG1によるイナーシャトルクTimg1に対する重み係数WMとが各々大きな値に設定されるので、回転速度Ne,Ngが大きく変化させられたときのイナーシャトルクTieng,Timg1が逐次算出推定エンジントルクTees(n)の補正に反映され易くされる。
また、本実施例によれば、重み係数WEよりも重み係数WMが大きな値に設定されるので、イナーシャJgが比較的小さいことでノイズ等により変動し易い第1回転機MG1によるイナーシャトルクTimg1が補正に反映され易くされる。
本実施例では、前述の実施例1で示した車両10とは別の、図11に示すような車両200を例示する。図11は、本発明が適用される車両200の概略構成を説明する図である。図11において、車両200は、エンジン202と第1回転機MG1と第2回転機MG2と動力伝達装置204と駆動輪206とを備えるハイブリッド車両である。
エンジン202、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2は、前述の実施例1で示したエンジン12、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2と同様の構成である。エンジン202は、後述する電子制御装置240によって、車両200に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置やウェイストゲートバルブ等のエンジン制御装置208が制御されることによりエンジントルクTeが制御される。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、車両200に備えられたインバータ210を介して、車両200に備えられたバッテリ212に接続されている。第1回転機MG1及び第2回転機MG2は、各々、電子制御装置240によってインバータ210が制御されることにより、MG1トルクTg及びMG2トルクTmが制御される。
動力伝達装置204は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース214内において共通の軸心上に直列に配設された、電気式無段変速部216及び機械式有段変速部218等を備えている。電気式無段変速部216は、直接的に或いは図示しないダンパーなどを介して間接的にエンジン202に連結されている。機械式有段変速部218は、電気式無段変速部216の出力側に連結されている。又、動力伝達装置204は、機械式有段変速部218の出力回転部材である出力軸220に連結された差動歯車装置222、差動歯車装置222に連結された一対の車軸224等を備えている。動力伝達装置204において、エンジン202や第2回転機MG2から出力される動力は、機械式有段変速部218へ伝達され、その機械式有段変速部218から差動歯車装置222等を介して駆動輪206へ伝達される。このように構成された動力伝達装置204は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)方式の車両に好適に用いられる。尚、以下、電気式無段変速部216を無段変速部216、機械式有段変速部218を有段変速部218という。又、無段変速部216や有段変速部218等は上記共通の軸心に対して略対称的に構成されており、図11ではその軸心の下半分が省略されている。上記共通の軸心は、エンジン202のクランク軸、そのクランク軸に連結された連結軸226などの軸心である。
無段変速部216は、エンジン202の動力を第1回転機MG1及び無段変速部216の出力回転部材である中間伝達部材228に機械的に分割する動力分割機構としての差動機構230を備えている。第1回転機MG1は、エンジン202の動力が伝達される回転機である。中間伝達部材228には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。中間伝達部材228は、有段変速部218を介して駆動輪206に連結されているので、第2回転機MG2は、駆動輪206に動力伝達可能に連結された回転機である。又、差動機構230は、エンジン202の動力を駆動輪206と第1回転機MG1とに分割して伝達する差動機構である。無段変速部216は、第1回転機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構230の差動状態が制御される電気式無段変速機である。第1回転機MG1は、エンジン回転速度Neを制御可能な回転機である。
差動機構230は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS0、キャリアCA0、及びリングギヤR0を備えている。キャリアCA0には連結軸226を介してエンジン202が動力伝達可能に連結され、サンギヤS0には第1回転機MG1が動力伝達可能に連結され、リングギヤR0には第2回転機MG2が動力伝達可能に連結されている。差動機構230において、キャリアCA0は入力要素として機能し、サンギヤS0は反力要素として機能し、リングギヤR0は出力要素として機能する。
有段変速部218は、中間伝達部材228と駆動輪206との間の動力伝達経路の一部を構成する有段変速機としての機械式変速機構、つまり差動機構230と駆動輪206との間の動力伝達経路の一部を構成する自動変速機である。中間伝達部材228は、有段変速部218の入力回転部材としても機能する。有段変速部218は、例えば第1遊星歯車装置232及び第2遊星歯車装置234の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置とを備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。
係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、車両200に備えられた油圧制御回路236内のソレノイドバルブSL1-SL4等から各々出力される調圧された係合装置CBの各係合油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量である係合トルクTcbが変化させられることで、各々、係合や解放などの状態である作動状態が切り替えられる。
有段変速部218は、第1遊星歯車装置232及び第2遊星歯車装置234の各回転要素が、直接的に或いは係合装置CBやワンウェイクラッチF1を介して間接的に、一部が互いに連結されたり、中間伝達部材228、ケース214、或いは出力軸220に連結されている。第1遊星歯車装置232の各回転要素は、サンギヤS1、キャリアCA1、リングギヤR1であり、第2遊星歯車装置234の各回転要素は、サンギヤS2、キャリアCA2、リングギヤR2である。
有段変速部218は、複数の係合装置の何れかが係合されることによって、変速比γat(=AT入力回転速度Ni/AT出力回転速度No)が異なる複数のギヤ段のうちの何れかのギヤ段が形成される。本実施例では、有段変速部218にて形成されるギヤ段をATギヤ段と称す。AT入力回転速度Niは、有段変速部218の入力回転速度であって、中間伝達部材228の回転速度と同値であり、又、MG2回転速度Nmと同値である。AT出力回転速度Noは、有段変速部218の出力回転速度である出力軸220の回転速度であって、無段変速部216と有段変速部218とを合わせた全体の変速機である複合変速機238の出力回転速度でもある。
有段変速部218は、例えば図12の係合作動表に示すように、複数のATギヤ段として、AT1速ギヤ段(図中の「1st」)-AT4速ギヤ段(図中の「4th」)の4段の前進用のATギヤ段が形成される。AT1速ギヤ段の変速比γatが最も大きく、ハイ側のATギヤ段程、変速比γatが小さくなる。又、後進用のATギヤ段(図中の「Rev」)は、例えばクラッチC1の係合且つブレーキB2の係合によって形成される。つまり、後述するように、後進走行を行う際には、例えばAT1速ギヤ段が形成される。図12の係合作動表は、各ATギヤ段と複数の係合装置の各作動状態との関係をまとめたものである。図12において、「○」は係合、「△」はエンジンブレーキ時や有段変速部218のコーストダウンシフト時に係合、空欄は解放をそれぞれ表している。
有段変速部218は、後述する電子制御装置240によって、ドライバー(すなわち運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成されるATギヤ段が切り替えられる、すなわち複数のATギヤ段が選択的に形成される。例えば、有段変速部218の変速制御においては、係合装置CBの何れかの掴み替えにより変速が実行される、すなわち係合装置CBの係合と解放との切替えにより変速が実行される、所謂クラッチツゥクラッチ変速が実行される。本実施例では、例えばAT2速ギヤ段からAT1速ギヤ段へのダウンシフトを2→1ダウンシフトと表す。他のアップシフトやダウンシフトについても同様である。
車両200は、更に、ワンウェイクラッチF0を備えている。ワンウェイクラッチF0は、キャリアCA0を回転不能に固定することができるロック機構である。すなわち、ワンウェイクラッチF0は、エンジン202のクランク軸と連結された、キャリアCA0と一体的に回転する連結軸226を、ケース214に対して固定することができるロック機構である。ワンウェイクラッチF0は、相対回転可能な2つの部材のうちの一方の部材が連結軸226に一体的に連結され、他方の部材がケース214に一体的に連結されている。ワンウェイクラッチF0は、エンジン202の運転時の回転方向である正回転方向に対して空転する一方で、エンジン202の運転時とは逆の回転方向に対して自動係合する。従って、ワンウェイクラッチF0の空転時には、エンジン202はケース214に対して相対回転可能な状態とされる。一方で、ワンウェイクラッチF0の係合時には、エンジン202はケース214に対して相対回転不能な状態とされる。すなわち、ワンウェイクラッチF0の係合により、エンジン202はケース214に固定される。このように、ワンウェイクラッチF0は、エンジン202の運転時の回転方向となるキャリアCA0の正回転方向の回転を許容し且つキャリアCA0の負回転方向の回転を阻止する。すなわち、ワンウェイクラッチF0は、エンジン202の正回転方向の回転を許容し且つ負回転方向の回転を阻止することができるロック機構である。
図13は、無段変速部216と有段変速部218とにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図13において、無段変速部216を構成する差動機構230の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素RE2に対応するサンギヤS0の回転速度を表すg軸であり、第1回転要素RE1に対応するキャリアCA0の回転速度を表すe軸であり、第3回転要素RE3に対応するリングギヤR0の回転速度(すなわち有段変速部218の入力回転速度)を表すm軸である。又、有段変速部218の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素RE4に対応するサンギヤS2の回転速度、第5回転要素RE5に対応する相互に連結されたリングギヤR1及びキャリアCA2の回転速度(すなわち出力軸220の回転速度)、第6回転要素RE6に対応する相互に連結されたキャリアCA1及びリングギヤR2の回転速度、第7回転要素RE7に対応するサンギヤS1の回転速度をそれぞれ表す軸である。縦線Y1、Y2、Y3の相互の間隔は、差動機構230の歯車比ρ0に応じて定められている。又、縦線Y4、Y5、Y6、Y7の相互の間隔は、第1、第2遊星歯車装置232,234の各歯車比ρ1,ρ2に応じて定められている。
図13の共線図を用いて表現すれば、無段変速部216の差動機構230において、第1回転要素RE1にエンジン202(図中の「ENG」参照)が連結され、第2回転要素RE2に第1回転機MG1(図中の「MG1」参照)が連結され、中間伝達部材228と一体回転する第3回転要素RE3に第2回転機MG2(図中の「MG2」参照)が連結されて、エンジン202の回転を中間伝達部材228を介して有段変速部218へ伝達するように構成されている。無段変速部216では、縦線Y2を横切る各直線L0e,L0m,L0Rにより、サンギヤS0の回転速度とリングギヤR0の回転速度との関係が示される。
又、有段変速部218において、第4回転要素RE4はクラッチC1を介して中間伝達部材228に選択的に連結され、第5回転要素RE5は出力軸220に連結され、第6回転要素RE6はクラッチC2を介して中間伝達部材228に選択的に連結されると共にブレーキB2を介してケース214に選択的に連結され、第7回転要素RE7はブレーキB1を介してケース214に選択的に連結されている。有段変速部218では、係合装置CBの係合解放制御によって縦線Y5を横切る各直線L1,L2,L3,L4,LRにより、出力軸220における「1st」,「2nd」,「3rd」,「4th」,「Rev」の各回転速度が示される。
図13中の実線で示す、直線L0e及び直線L1,L2,L3,L4は、少なくともエンジン202を動力源として走行するハイブリッド走行が可能なハイブリッド走行モードでの前進走行における各回転要素の相対速度を示している。このハイブリッド走行モードでは、差動機構230において、キャリアCA0に入力されるエンジントルクTeに対して、第1回転機MG1による負トルクである反力トルクが正回転にてサンギヤS0に入力されると、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるエンジン直達トルクTd(=Te/(1+ρ0)=-(1/ρ0)×Tg)が現れる。そして、要求駆動力に応じて、エンジン直達トルクTdとMG2トルクTmとの合算トルクが車両200の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段-AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部218を介して駆動輪206へ伝達される。このとき、第1回転機MG1は正回転にて負トルクを発生する発電機として機能する。第1回転機MG1の発電電力Wgは、バッテリ212に充電されたり、第2回転機MG2にて消費される。第2回転機MG2は、発電電力Wgの全部又は一部を用いて、或いは発電電力Wgに加えてバッテリ212からの電力を用いて、MG2トルクTmを出力する。
図13中の一点鎖線で示す直線L0m及び図13中の実線で示す直線L1,L2,L3,L4は、エンジン202の運転を停止した状態で第1回転機MG1及び第2回転機MG2のうちの少なくとも一方の回転機を動力源として走行するモータ走行が可能なモータ走行モードでの前進走行における各回転要素の相対速度を示している。モータ走行モードでの前進走行におけるモータ走行としては、例えば第2回転機MG2のみを動力源として走行する単駆動モータ走行と、第1回転機MG1及び第2回転機MG2を共に動力源として走行する両駆動モータ走行とがある。単駆動モータ走行では、キャリアCA0はゼロ回転とされ、リングギヤR0には正回転にて正トルクとなるMG2トルクTmが入力される。このとき、サンギヤS0に連結された第1回転機MG1は、無負荷状態とされて負回転にて空転させられる。単駆動モータ走行では、ワンウェイクラッチF0が解放されており、連結軸226はケース214に対して固定されていない。両駆動モータ走行では、キャリアCA0がゼロ回転とされた状態で、サンギヤS0に負回転にて負トルクとなるMG1トルクTgが入力されると、キャリアCA0の負回転方向への回転が阻止されるようにワンウェイクラッチF0が自動係合される。ワンウェイクラッチF0の係合によってキャリアCA0が回転不能に固定された状態においては、MG1トルクTgによる反力トルクがリングギヤR0へ入力される。加えて、両駆動モータ走行では、単駆動モータ走行と同様に、リングギヤR0にはMG2トルクTmが入力される。キャリアCA0がゼロ回転とされた状態で、サンギヤS0に負回転にて負トルクとなるMG1トルクTgが入力された際に、MG2トルクTmが入力されなければ、MG1トルクTgによる単駆動モータ走行も可能である。モータ走行モードでの前進走行では、エンジン202は駆動されず、エンジン回転速度Neはゼロとされ、MG1トルクTg及びMG2トルクTmのうちの少なくとも一方のトルクが車両200の前進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段-AT4速ギヤ段のうちの何れかのATギヤ段が形成された有段変速部218を介して駆動輪206へ伝達される。モータ走行モードでの前進走行では、MG1トルクTgは負回転且つ負トルクの力行トルクであり、MG2トルクTmは正回転且つ正トルクの力行トルクである。
図13中の破線で示す、直線L0R及び直線LRは、モータ走行モードでの後進走行における各回転要素の相対速度を示している。このモータ走行モードでの後進走行では、リングギヤR0には負回転にて負トルクとなるMG2トルクTmが入力され、そのMG2トルクTmが車両200の後進方向の駆動トルクとして、AT1速ギヤ段が形成された有段変速部218を介して駆動輪206へ伝達される。車両200では、後述する電子制御装置240によって、複数のATギヤ段のうちの前進用のロー側のATギヤ段である例えばAT1速ギヤ段が形成された状態で、前進走行時における前進用のMG2トルクTmとは正負が反対となる後進用のMG2トルクTmが第2回転機MG2から出力させられることで、後進走行を行うことができる。モータ走行モードでの後進走行では、MG2トルクTmは負回転且つ負トルクの力行トルクである。尚、ハイブリッド走行モードにおいても、直線L0Rのように第2回転機MG2を負回転とすることが可能であるので、モータ走行モードと同様に後進走行を行うことが可能である。
ハイブリッド走行モードにおいては、有段変速部218にてATギヤ段が形成されたことで駆動輪206の回転に拘束されるリングギヤR0の回転速度に対して、第1回転機MG1の回転速度を制御することによってサンギヤS0の回転速度が上昇或いは下降させられると、キャリアCA0の回転速度つまりエンジン回転速度Neが上昇或いは下降させられる。従って、ハイブリッド走行では、エンジン202を効率の良い運転点にて作動させることが可能である。つまり、ATギヤ段が形成された有段変速部218と無段変速機として作動させられる無段変速部216とで、複合変速機238全体として無段変速機を構成することができる。又は、無段変速部216を有段変速機のように変速させることも可能であるので、ATギヤ段が形成される有段変速部218と有段変速機のように変速させる無段変速部216とで、複合変速機238全体として有段変速機のように変速させることができる。
車両200は、更に、エンジン202、第1回転機MG1、及び第2回転機MG2などの制御に関連する車両200の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置240を備えている。電子制御装置240は、前述の実施例1で示した電子制御装置100と同様の構成である。電子制御装置240には、電子制御装置100に供給されると同様の各種信号等が供給される。電子制御装置240からは、電子制御装置100が出力すると同様の各種指令信号が出力される。電子制御装置240は、電子制御装置100が備える、ハイブリッド制御部102、推定エンジントルク算出部104、重み設定部106、状態判定部108の各機能と同等の機能を有しており、電子制御装置100と同様のエンジントルク検出装置の機能を有している。電子制御装置240は、前述の実施例1-3で示したような電子制御装置100によって実現されたと同様の、ロバスト性の悪化を抑制しつつ、過給圧Pchgが高くされたとき又は過給圧Pchgが大きく変化させられたときの実エンジントルクTerの検出遅れを抑制するという制御機能を実現することができる。
ところで、車両200は、無段変速部216の後段側に直列に有段変速部218を備えている。有段変速部218の変速中には中間伝達部材228等の回転変化に伴うイナーシャトルクが発生する。その為、車両200では、逐次取得MG1トルクTg(n)に基づく逐次算出推定エンジントルクTees(n)の算出つまり推定エンジントルクTeesの算出において、有段変速部218の変速中はその変速に伴うイナーシャトルクの影響を受けて推定エンジントルクTeesの算出精度が低下する可能性がある。電子制御装置240が機能的に有する推定エンジントルク算出部は、推定エンジントルクTeesの算出を、有段変速部218の変速中以外となる非変速時に行う。
電子制御装置240が機能的に有する状態判定部は、有段変速部218の変速中、特には有段変速部218の変速過渡におけるイナーシャ相中であるか否かを判定する。電子制御装置240は、有段変速部218の変速中であると判定した場合には、推定エンジントルクTeesの算出に関わる制御作動を行わない一方で、有段変速部218の変速中でないと判定した場合には、推定エンジントルクTeesの算出に関わる制御作動を行う。
図14は、電子制御装置240の制御作動の要部すなわちエンジントルクTeを検出する際のロバスト性の悪化を抑制しつつ過給圧Pchgが高くされたとき又は過給圧Pchgが大きく変化させられたときのエンジントルクTeの検出遅れを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。図14のフローチャートは図9のフローチャートとは別の実施例である。
図14において、先ず、電子制御装置240が機能的に有する状態判定部の機能に対応するS5において、有段変速部218の変速中であるか否かが判定される。このS5の判断が肯定される場合は、本ルーチンが終了させられる。このS5の判断が否定される場合は、図9のフローチャートと同様に、S10以降が実行される。
本実施例によれば、前述の実施例1-3と同様の効果が得られる。また、本実施例によれば、差動機構230と駆動輪206との間の動力伝達経路の一部を構成する有段変速部218を更に備えた車両200において、推定エンジントルクTeesの算出が有段変速部218の非変速時に行われるので、推定エンジントルクTeesが算出される際に有段変速部218の変速に伴うイナーシャトルク等の影響が防止され得る。
本実施例では、前述の実施例1で示した車両10とは別の、図15に示すような車両300を例示する。図15は、本発明が適用される車両300の概略構成を説明する図である。図15において、車両300は、エンジン302と発電機304とモータ306と動力伝達装置308と駆動輪310とを備えるシリーズ式のハイブリッド車両である。
エンジン302は、前述の実施例1で示したエンジン12と同様の構成である。エンジン302は、後述する電子制御装置318によって、車両300に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置やウェイストゲートバルブ等のエンジン制御装置312が制御されることによりエンジントルクTeが制御される。エンジン302は、駆動輪310とは機械的に連結されていない。
発電機304は、専ら発電機としての機能を有する回転電気機械である。発電機304は、エンジン302と機械的に連結されており、エンジン302の動力が伝達される回転機である。発電機304は、エンジン302によって回転駆動されることで、エンジン302の動力によって発電させられる。モータ306は、電動機としての機能及び発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。モータ306は、動力伝達装置308を介して駆動輪310に動力伝達可能に連結された第2回転機である。発電機304及びモータ306は、各々、車両300に備えられたインバータ314を介して、車両300に備えられたバッテリ316に接続されている。発電機304及びモータ306は、各々、電子制御装置318によってインバータ314が制御されることにより、発電機304の出力トルクである発電機トルクTgr及びモータ306の出力トルクであるモータトルクTmtが制御される。発電機304の発電電力Wgrは、バッテリ316に充電されたり、モータ306にて消費される。モータ306は、発電電力Wgrの全部又は一部を用いて、或いは発電電力Wgrに加えてバッテリ316からの電力を用いて、モータトルクTmtを出力する。このように、モータ306は、発電機304の発電電力Wgrによって駆動させられる。
車両300は、更に、エンジン302、発電機304、及びモータ306などの制御に関連する車両300の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置318を備えている。電子制御装置318は、前述の実施例1で示した電子制御装置100と同様の構成である。電子制御装置318には、電子制御装置100に供給されると同様の各種信号等が供給される。電子制御装置318からは、電子制御装置100が出力すると同様の各種指令信号が出力される。電子制御装置318は、電子制御装置100が備える、ハイブリッド制御部102、推定エンジントルク算出部104、重み設定部106、状態判定部108の各機能と同等の機能を有しており、電子制御装置100と同様のエンジントルク検出装置の機能を有している。電子制御装置318は、前述の実施例1-3で示したような電子制御装置100によって実現されたと同様の、ロバスト性の悪化を抑制しつつ、過給圧Pchgが高くされたとき又は過給圧Pchgが大きく変化させられたときの実エンジントルクTerの検出遅れを抑制するという制御機能を実現することができる。
具体的には、電子制御装置318は、エンジン回転速度Neが目標値となるように発電機304の反力トルクを制御することが可能であり、この制御の際の運動方程式は次式(8)で示される。次式(8)において、「Je」はエンジン302のイナーシャであり、「Jgr」は発電機304のイナーシャである。次式(8)では、発電機304の回転速度である発電機回転速度Ngrはエンジン回転速度Neと等しい値としている。次式(8)より、逐次算出推定エンジントルクTees(n)は次式(9)で示される。次式(9)において、「Tgr(n)」は、電子制御装置318が機能的に有する推定エンジントルク算出部によって逐次取得された、エンジン回転速度Neが目標値となるように制御されるときの発電機トルクTgrであり、「Tees(n)」は、逐次取得発電機トルクTgr(n)に基づいて算出されるエンジントルクTeである。電子制御装置318が機能的に有する推定エンジントルク算出部は、例えば前記式(2)に最新値を含む所定数の一連の逐次算出推定エンジントルクTees(n)を適用することで推定エンジントルクTeesを算出する。又、前述の実施例3で示したように、次式(9)の右辺第1項のイナーシャトルクには各々重み付けを行うことも可能である。
(Je+Jgr)×dNe/dt=Te-Tgr …(8)
Tees(n)=(Je+Jgr)×dNe/dt+Tgr(n) …(9)
本実施例によれば、前述の実施例1-3と同様の効果が得られる。
本実施例では、前述の実施例1で示した車両10とは別の、図16に示すような車両400を例示する。図16は、本発明が適用される車両400の概略構成を説明する図である。図16において、車両400は、エンジン402とオルタネータ404と回転機MGと動力伝達装置406と駆動輪408とを備えるハイブリッド車両である。
エンジン402は、前述の実施例1で示したエンジン12と同様の構成である。エンジン402は、後述する電子制御装置418によって、車両400に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置やウェイストゲートバルブ等のエンジン制御装置410が制御されることによりエンジントルクTeが制御される。
オルタネータ404は、エンジン402をクランキングするスタータとしての機能、及び発電機としての機能を有する回転電気機械である。オルタネータ404は、エンジン402と機械的に連結されており、エンジン402の動力が伝達される回転機である。オルタネータ404は、エンジン402によって回転駆動されることで、エンジン402の動力によって発電させられる。回転機MGは、電動機としての機能及び発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。回転機MGは、動力伝達装置406を介して駆動輪408に動力伝達可能に連結された第2回転機である。オルタネータ404及び回転機MGは、各々、車両400に備えられたインバータ412を介して、車両400に備えられたバッテリ414に接続されている。オルタネータ404及び回転機MGは、各々、電子制御装置418によってインバータ412が制御されることにより、オルタネータ404の出力トルクであるオルタネータトルクTalt及び回転機MGの出力トルクであるMGトルクTmgが制御される。オルタネータ404の発電電力Waltは、バッテリ414に充電されたり、回転機MGにて消費される。回転機MGは、発電電力Waltの全部又は一部を用いて、或いは発電電力Waltに加えてバッテリ414からの電力を用いて、MGトルクTmgを出力する。このように、回転機MGは、オルタネータ404の発電電力Waltによって駆動させられる。
動力伝達装置406は、クラッチK0、自動変速機416等を備えている。自動変速機416の入力回転部材は、クラッチK0を介してエンジン402と連結されていると共に、直接的に回転機MGと連結されている。動力伝達装置406において、エンジン402の動力はクラッチK0、自動変速機416等を順次介して駆動輪408へ伝達され、回転機MGの動力は自動変速機416等を介して駆動輪408へ伝達される。エンジン402と回転機MGとは、各々、駆動輪408に動力伝達可能に連結された、車両400の走行用の動力源である。
クラッチK0は、エンジン402と駆動輪408との間の動力伝達経路を接続したり切断したりする油圧式の摩擦係合装置である。自動変速機416は、前述の実施例4で示した有段変速部218と同様に、例えば公知の遊星歯車式の自動変速機である。
車両400では、クラッチK0を解放し、エンジン402の運転を停止した状態で、バッテリ414からの電力を用いて回転機MGのみを走行用の動力源とするモータ走行が可能である。又、車両400では、クラッチK0を係合した状態でエンジン402を運転させて、少なくともエンジン402を走行用の動力源とするハイブリッド走行が可能である。
車両400は、更に、エンジン402、オルタネータ404、及び回転機MGなどの制御に関連する車両400の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置418を備えている。電子制御装置418は、前述の実施例1で示した電子制御装置100と同様の構成である。電子制御装置418には、電子制御装置100に供給されると同様の各種信号等が供給される。電子制御装置418からは、電子制御装置100が出力すると同様の各種指令信号が出力される。電子制御装置418は、電子制御装置100が備える、ハイブリッド制御部102、推定エンジントルク算出部104、重み設定部106、状態判定部108の各機能と同等の機能を有しており、電子制御装置100と同様のエンジントルク検出装置の機能を有している。電子制御装置418は、前述の実施例1-3で示したような電子制御装置100によって実現されたと同様の、ロバスト性の悪化を抑制しつつ、過給圧Pchgが高くされたとき又は過給圧Pchgが大きく変化させられたときの実エンジントルクTerの検出遅れを抑制するという制御機能を実現することができる。
具体的には、上述したようなクラッチK0を解放したモータ走行では、エンジン402によりオルタネータ404を発電させて、その発電電力Waltを回転機MGに供給する、所謂シリーズ式のハイブリッド走行が可能である。この際、電子制御装置418は、エンジン回転速度Neが目標値となるようにオルタネータ404の反力トルクを制御することが可能である。このシリーズ式のハイブリッド走行は、前述の実施例5で示したシリーズ式のハイブリッド車両での走行に相当する。車両400では、このシリーズ式のハイブリッド走行において、前述の実施例5で示したように推定エンジントルクTeesが算出され得る。
本実施例によれば、前述の実施例1-3と同様の効果が得られる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例3において、電子制御装置100がエンジン回転速度NeやMG1回転速度Ngの信号を取得する際に通信遅れ等がある場合、取得したエンジン回転速度NeやMG1回転速度Ngは実際の値に対して通信遅れ分だけ古いデータとなる。その為、回転変化に伴うイナーシャトルクに対する重み係数Wiは、通信遅れとの整合性を取った値を設定するようにしても良い。例えば、通信遅れが大きい場合には、小さな重み係数Wiが設定される。
また、前述の実施例1-3において、車両10は、車両200のように、変速部58を備えず、エンジン12が差動部60に連結される車両であっても良い。差動部60は、第2遊星歯車機構82の回転要素に連結されたクラッチ又はブレーキの制御により差動作用が制限され得る機構であっても良い。又、第2遊星歯車機構82は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であっても良い。又、第2遊星歯車機構82は、複数の遊星歯車装置が相互に連結されることで4つ以上の回転要素を有する差動機構であっても良い。又、第2遊星歯車機構82は、エンジン12によって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車に第1回転機MG1及びドライブギヤ74が各々連結された差動歯車装置であっても良い。又、第2遊星歯車機構82は、2以上の遊星歯車装置がそれらを構成する一部の回転要素で相互に連結された構成において、それらの遊星歯車装置の回転要素にそれぞれエンジン、回転機、駆動輪が動力伝達可能に連結される機構であっても良い。
また、前述の実施例4では、キャリアCA0を回転不能に固定することができるロック機構としてワンウェイクラッチF0を例示したが、この態様に限らない。このロック機構は、例えば連結軸226とケース214とを選択的に連結する、噛合式クラッチ、クラッチやブレーキなどの油圧式摩擦係合装置、乾式の係合装置、電磁式摩擦係合装置、磁粉式クラッチなどの係合装置であっても良い。或いは、車両200は、必ずしもワンウェイクラッチF0を備える必要はない。
また、前述の実施例5において、車両300では、エンジン302は駆動輪310とは機械的に連結されていないが、この態様に限らない。例えば、車両300では、クラッチを介してエンジン302と駆動輪310とを連結する構成とし、例えば高速走行時にそのクラッチを係合してエンジン302の動力を機械的に駆動輪310へ伝達しても良い。
また、前述の実施例では、過給機18は、公知の排気タービン式の過給機であったが、この態様に限らない。例えば、過給機18は、エンジン或いは電動機によって回転駆動される機械ポンプ式の過給機であっても良い。又、過給機として、排気タービン式の過給機と機械ポンプ式の過給機とが併用で設けられていても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。