JP2020106139A - 回転減速伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 容易な製造を可能にして製造コストの削減を図るとともに、金属疲労や動作不良等を低減して耐久性及び信頼性の向上を図る。【解決手段】 カム本体部3c,オーバルシャフト部3及びインナギア5gを有するインターナルギア部5を備えるとともに、複数の噛合位置T…でインナギア5gに噛合するアウタギア4gを有し、かつ伝達ピン本体4pm…及びこの伝達ピン本体4pm…に偏心位置Xpが回動自在に支持される伝達ローラ4pr…を有する複数の伝達ピン部4p…を設けたフレックスギア部4と、伝達ローラ4pr…の外径よりも大径に形成することにより伝達ローラ4pr…の偏心方向Fpにおける最短半径部の外周面位置Xfが、回転伝達時に、内周面7shi…に常時係合する内径に選定した円形の係合孔7sh…を、周方向Ffに沿って所定間隔置きに形成してなる出力プレート部7とを備える。【選択図】 図1
Description
本発明は、ロボット等に内蔵することにより、入力する回転運動を減速して出力する回転減速伝達装置に関する。
一般に、量産性が要求される生産工場の生産ラインでは、複数のアーム部を関節機構により連結して構成した産業用ロボットが設置される。関節機構は、任意のアーム部の端部と他のアーム部の端部を回動可能に連結するとともに、任意のアーム部に内蔵する駆動モータの回転を、1/100〜1/200程度に減速し、減速した回転出力により他のアーム部を回転駆動可能な回転減速伝達装置を備えている。したがって、この種の回転減速伝達装置には、高精度の、位置決め制御,角度制御,速度制御等が要求される。
従来、このような要求に応える回転減速伝達装置としては、通称、ハーモニックドライブ(登録商標)と呼ばれる波動歯車機構による減速機が広く用いられており、この波動歯車機構を備えるロボット或いはロボット関連装置としては、例えば、特許文献1で開示される原動装置、特許文献2で開示される産業用ロボットの手首機構、特許文献3で開示される多関節ロボットなどが知られている。
この場合、特許文献1で開示される原動装置は、カップ状のハウジングと、このハウジングの内周にリング状のサーキュラ・スプラインを回転可能に支承させるとともに、このサーキュラ・スプラインの内側に配設され、ウェーブジェネレータに付勢されて、サーキュラ・スプラインに噛合するカップ状のフレクスプラインをハウジングに固定してなるハーモニック減速機と、ハウジングに支軸の一端を固着するとともに、この支軸回りに回転するケーシングをフレクスプラインの内部に配設し、このケーシングにウェーブジェネレータを設けてなる液圧モータとを具備し、回転出力をサーキュラ・スプラインから取り出し得るように構成されたものである。
また、特許文献2で開示される産業用ロボットの手首機構は、アームに支持されたアーム軸を中心として回転自在に支承された手首全体を回転させる第3軸と、この第3軸に支持され、第3軸に直角な軸を中心として回転自在に支承された手首先端部を傾動させる第2軸と、第2軸に支持され、第2軸に直角な軸を中心として回軸自在に支承された手首先端部の加工具把持部を回転させる第1軸を設け、第1軸および第2軸は、同一中心軸に重ね合わせて配置された減速機にて手首内において減速させ、第3軸は、手首外においてあらかじめ減速させるように構成されたものである。
さらに、特許文献3で開示される多関節ロボットは、少くとも2つの制御アームと、両制御アームの関節部に設けられた同一軸上で相対する2つの減速機とを有する多関節ロボットにおいて、2つの減速機が一方の制御アームの関節部に固定された共通のサーキュラスプラインと、該共通のサーキュラスプラインの一端に該サーキュラスプラインと相対的に回動するように取付けられ、かつ他方の制御アームの関節部に連結されたブラケットとを備えた第1および第2のハーモニックドライブ減速磯から構成されたものである。
しかし、上述した従来における波動歯車機構を備える回転減速伝達装置は、次のような問題点があった。
第一に、主要構成部品として、フレクスプライン、ウェーブジェネレータ、サーキュラスプラインを備えており、フレクスプラインは、薄肉の金属弾性プレートにより全体をカップ状に形成するとともに、楕円状に変形する開口部の外周に形成した歯車部を、位置を固定したサーキュラスプラインの内周に形成した歯車部に噛合させている。したがって、カップ状に一体形成するフレクスプラインは、高度の精密部品として製造する必要があるため、その製造が容易でなく、高コスト化が避けられない。しかも、フレクスプラインは、使用による金属疲労や動作不良を生じ易く、耐久性にも難がある。結局、従来の波動歯車機構は、イニシャルコスト及びランニングコストの双方において大幅なコストアップを招いてしまう。
第二に、カップ状に形成するフレクスプラインにおける開口部の外周に歯車部を形成し、この歯車部を、楕円状のウェーブジェネレータにより波動変形させるとともに、底部の中心に、減速回転を出力する出力軸を結合するため、フレクスプラインを機能させるためには、当該フレクスプラインの軸方向長さをある程度確保する必要があり、減速伝達装置における全体構造の薄型化(小型化)を図るには限界があった
第三に、フレクスプラインの全体形状をカップ状に形成し、一端を閉塞する底部の中心に出力軸を結合するため、接続ケーブルを引き回すための空間確保が容易でない。特に、ロボットの場合、多数の関節機構を備え、多彩な動きを実現するための多数の駆動モータを内蔵するため、この駆動モータとロボットコントローラを接続する接続ケーブルの本数は少なくとも駆動モータの数だけ必要になるとともに、この本数を備える接続ケーブルを引き回す必要がある。したがって、多数の接続ケーブルを引き回すことができる空間を確保する観点からも更なる改善の余地があった。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した回転減速伝達装置の提供を目的とするものである。
本発明に係る回転減速伝達装置1は、上述した課題を解決するため、入力する回転運動を減速して出力する回転減速伝達装置であって、回転運動が入力する回転入力部2と、この回転入力部2と一体に回転するカム本体部3c,及びこのカム本体部3cの外周に沿って設けた内輪3biとこの内輪3biに対して相対的に回動変位可能となるフレキシブルな外輪3boを有するオーバルシャフト部3と、内周にインナギア5gを形成し、かつ位置を固定したインターナルギア部5と、外周の周方向Ffに沿って形成し、かつインナギア5gに対して歯数を少なくして、オーバルシャフト部3の外周に付設した際に、周方向Ffにおける複数の噛合位置T…でインナギア5gに噛合するアウタギア4gを有するとともに、側面から突出した伝達ピン本体4pm…及びこの伝達ピン本体4pm…を軸にして、偏心位置Xpが回動自在に支持される伝達ローラ4pr…を有し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに配した複数の伝達ピン部4p…を設けたフレックスギア部4と、伝達ローラ4pr…の外径よりも大径に形成することにより伝達ローラ4pr…の偏心方向Fpにおける最短半径部の外周面位置Xf…が、回転伝達時に、内周面7shi…に常時係合する内径に選定した円形の係合孔7sh…を、周方向Ffに沿って所定間隔置きに形成してなる出力プレート部7とを備えることを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、伝達ピン本体4pmは、フレックスギア部4に設けた取付孔部4sに挿入して直接固定してもよいし、取付プレート4bに固定し、この取付プレート4bの複数位置を複数の固定部材4x…によりフレックスギア部4に固定する固定機構4uを介して取付けてもよい。また、伝達ローラ4prは、金属素材Mm又は合成樹脂素材Rmを含む硬質素材により形成することができる。他方、回転入力部2は、内周面11iの内方を、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sに形成するとともに、外周面11oに、少なくともオーバルシャフト部3のカム本体部3cを設けてなる筒形の入力回転体11により構成できるとともに、出力プレート部7は、リング形に形成することができる。
このような構成を有する本発明に係る回転減速伝達装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) 薄肉の金属弾性プレート材を用いて全体形状をカップ状に形成する従来のフレクスプラインは不要になるため、容易に製造可能となり、製造コストの大幅な削減を図れるとともに、金属疲労や動作不良等も大幅に低減できるため、耐久性及び信頼性の向上を図ることができるなど、イニシャルコスト及びランニングコストの双方における大幅なコストダウンを実現できる。
(2) 従来のフレクスプラインが不要になるため、軸方向Fsにおける配設スペースのサイズダウンを図ることができる。したがって、全体構造における薄型化が可能になり、小型化に限界のあった、特に産業用ロボット等の更なる小型化を容易に実現できる。
(3) 伝達ローラ4pr…と係合孔7sh…間を安定に係合させることができるため、フレックスギア部4から出力プレート部7への回転伝達を効率的に行うことができるとともに、無用な発熱や減耗を排除して長期使用における信頼性を高めることができる。しかも、係合孔7sh…と伝達ローラ4pr…の組合わせによる単純形状の部品や加工部位により実現できるため、実施の容易性及び低コスト性に優れる。
(4) 好適な態様により、伝達ピン本体4pmを設けるに際して、フレックスギア部4に設けた取付孔部4sに挿入して直接固定すれば、最もシンプルな取付構造により実施できるため、部品点数の削減及び取付構造の小型化に寄与できる。
(5) 好適な態様により、伝達ピン本体4pmを設けるに際して、取付プレート4bに固定し、この取付プレート4bの複数位置を複数の固定部材4x…によりフレックスギア部4に固定する固定機構4uを介して取付ければ、特に回転伝達方向の応力に強い取付構造を実現できるため、伝達機構における安定性及び信頼性を高めることができる。
(6) 好適な態様により、伝達ローラ4prを、金属素材Mm又は合成樹脂素材Rmを含む硬質素材により形成すれば、機械的強度の高い汎用性素材により伝達性及び伝達安定性の高い伝達ローラ4prを形成できるとともに、実施の容易性及び低コスト性に優れる。特に、合成樹脂素材Rmを使用した場合には、所定の弾性に基づく機械的な寸法誤差の吸収機能により、より伝達性及び伝達安定性の高い伝達ローラ4prを形成できるとともに、加工上の厳格な精度は不要になるため、射出成形機による一体成形が可能になり、量産性及び更なる低コスト性に寄与できる。
(7) 好適な態様により、回転入力部2を構成するに際し、内周面11iの内方を、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sに形成するとともに、外周面11oに、少なくともオーバルシャフト部3のカム本体部3cを設けてなる筒形の入力回転体11により構成すれば、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sを確保できるため、ケーブル類Ka…の本数が多くなった場合であっても、他の周辺構造と併せて全体の煩雑化を回避できる。
(8) 好適な態様により、出力プレート部7をリング形に形成すれば、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sを確保できるとともに、特に、筒形に形成する入力回転体11と組合わせることにより、全体構造のシンプル化及び高剛性化に寄与できる。
次に、本発明の好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
最初に、同好適実施形態に係る回転減速伝達装置1の理解を容易にするため、原理説明用の原理形態に係る回転減速伝達装置100の構成及び動作について、図1〜図10を参照して説明する。
この種の回転減速伝達装置100,1は、図9に示すような産業用ロボットRの関節機構Mjに用いることができる。例示の産業用ロボットRは、垂直多関節ロボットRvであり、機台21の上面に設置したロボット本体部22と、この機台21の下方スペースに収容することによりロボット本体部22を駆動制御するロボットコントローラ23を備える。ロボット本体部22は、第1アーム部(任意のアーム部)15と第2アーム部(他のアーム部)16を備えており、この第1アーム部15と第2アーム部16が関節機構Mjを介して連結される。即ち、第1アーム部15の先端部15sに、回転減速伝達装置100,1を内蔵し、この回転減速伝達装置100,1により第2アーム部16の後端部16rを回転駆動する。これにより、第2アーム部16の位置決め制御,角度制御及び速度制御等を行うことができる。
図1及び図2に、回転減速伝達装置100の全体構造を示す。なお、図2において、図9に示した産業用ロボットRにおける第1アーム部15の先端部15s及び第2アーム部16の後端部16rを、それぞれ仮想線で示している。図1及び図2に示すように、回転減速伝達装置100は、大別して、回転の伝達方向上流側から、回転入力部2,オーバルシャフト部3,フレックスギア部4,インターナルギア部5及び出力プレート部7(回転出力機構9)を備える。これにより、回転入力部2に入力する回転運動は、予め設定した1/100〜1/200レベルで減速され、減速された回転運動は回転出力機構9から出力する。
以下、各部の構成について具体的に説明する。回転入力部2は、全体を筒形に形成した入力回転体11により構成する。この入力回転体11はベアリング(ボールベアリング等)31により回動自在に支持される。この場合、ベアリング31は、外輪を第1アーム部15の内面に取付けた支持筒32に固定するとともに、内輪を入力回転体11の外周面に固定する。入力回転体11は、図2に示すように、内周面11iの内方がケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sとなる。このため、確保する配線空間Sの広さを考慮して内径等を選定することができる。また、入力回転体11の外周面11oにおける軸方向Fsの中間部位には、オーバルシャフト部3を構成するカム本体部3cを一体形成する。
したがって、このような筒形の入力回転体11を用いれば、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sを確保できるため、ケーブル類Ka,Kb…の本数が多くなった場合であっても、他の周辺構造と併せて全体の煩雑化を回避できる利点がある。なお、符号33は、入力回転体11の端面に固定した入力ギアリングである。
オーバルシャフト部3は、図6に示すように、入力回転体11に一体形成したカム本体部3cと、このカム本体部3cの外周面に沿って設けた内輪3biと、フレキシブルな外輪3boと、この内輪3biと外輪3bo間に介在させた複数の転動体3bm…を備える。例示の転動体3bm…はボールである。このような構造により、外輪3boは内輪3biに対して相対的に回動変位可能となる。なお、内輪3biは、カム本体部3cの外周面に兼用させることも可能である。これにより、カム本体部3cにおける内周面11iの軸直角方向の断面形状は円形状になるとともに、カム本体部3cにおける外周面11oの軸直角方向の断面形状は楕円形状(オーバル形状)になる(図6参照)。
一方、第1アーム部15の内面には、サーボモータ等の駆動モータ34を固定し、この駆動モータ34の回転シャフトに取付けた駆動ギア34gを入力ギアリング33に噛合させる。これにより、回動自在に支持される入力回転体11に、駆動モータ34からの回転運動が入力する。このように、回転入力部2(入力回転体11)に、駆動モータ34の回転運動を入力させるようにすれば、回転減速伝達装置100は、駆動モータ34を含めた駆動部として構成できるため、例えば、産業用ロボットのアーム部に内蔵する駆動部の小型化、更には耐久性向上及び信頼性向上に寄与できる利点がある。なお、駆動モータ34から回転入力部2に対する回転伝達方式として、ギア伝達機構を例示したが、タイミングベルトとプーリを利用したベルト伝達機構等の他の回転伝達方式を用いてもよい。
フレックスギア部4は、全体を金属素材(特殊鋼等)によりフレキシブル性を有する無端ベルト状に構成し、図6に示すように、オーバルシャフト部3の外輪3boの外周面に沿って付設する。図4に、フレックスギア部4の全体形状を示すとともに、図5に、フレックスギア部4の一部の拡大形状を示す。フレックスギア部4は、外周面に、周方向Ffに沿ったアウタギア4gを形成する。
また、アウタギア4gを構成する各歯部(山部)4gs…の一つ置きに伝達ピン本体4pm…を埋設(穴に圧入)する。この場合、各歯部(山部)4gs…は、各伝達ピン本体4pm…を支持する機能を有するため、支持強度を確保できる厚さ及び形状を選定する。なお、伝達ピン本体4pm…は、各歯部(山部)4gs…の一つ置きに配した例を示したが、各伝達ピン本体4pm…の間隔は任意に設定できる。各伝達ピン本体4pm…は、剛性の高い耐摩耗性を有する金属素材を使用し、図3〜図5に示すように、断面が円形となる丸棒状に形成し、図8に示すように、一端側を、各歯部(山部)4gs…に埋設するとともに、他端側を、フレックスギア部4の側面から横側方(図8では上方)に突出させる。これにより、各伝達ピン本体4pm…は、フレックスギア部4の周方向Ffに沿って一定間隔置きに配される。
さらに、フレックスギア部4の横側方から突出する各伝達ピン本体4pm…の他端側には伝達ローラ4pr…の偏心位置を回動自在に取付ける。これにより、各伝達ローラ4pr…の偏心位置が各伝達ピン本体4pm…により回動自在に支持される。このように、フレックスギア部4から突出した伝達ピン本体4pm…と、この伝達ピン本体4pm…を軸にして、偏心位置が回動自在に支持される伝達ローラ4pr…により伝達ピン部4p…が構成される。なお、伝達ピン部4p…はこのような伝達ピン本体4pm…と伝達ローラ4pr…により構成することが望ましいが、伝達ローラ4pr…を使用することなく伝達ピン本体4pm…の形状を選定した一体化した伝達ピン部4p…であってもよい。
他方、フレックスギア部4の内周面であって、各歯部(山部)4gs…間の谷部4gd…に対応するそれぞれの位置には、図5に示すように、U形形状となる切込部4c…を放射方向Fdに形成する。これにより、各谷部4gd…と各切込部4c…間の厚さは、オーバルシャフト部3の回転に対して円滑かつ安定に追従可能なフレキシブル性(弾性)が確保される。図5における実線部分が、図4に示すフレックスギア部4がインターナルギア部5から最離間したときの形状を示すとともに、図5における仮想線部分が、図4に示すフレックスギア部4がインターナルギア部5に最接近したときの形状を示している。
インターナルギア部5は、全体を金属素材により剛性を有するリング状に形成し、図3に示すように、内周面には、周方向Ffに沿ったインナギア5gを形成する。そして、図2に示すように、インターナルギア部5の外周面を第1アーム部15の内面に取付けて固定するとともに、インナギア5gに、上述したフレックスギア部4のアウタギア4gを噛合させる。この際、インターナルギア部5に形成するインナギア5gの一周の歯数は、フレックスギア部4に形成するアウタギア4gの一周の歯数に対して、多くなるように設定する。例示の場合、アウタギア4gの歯数を「N」に設定し、インナギア5gの歯数は「N+2」に設定した。
この場合、フレックスギア部4の全体の外周形状は楕円形となるため、フレックスギア部4は、インナギア5gに対して180〔°〕の位置関係となる二個所の噛合位置T,Tで噛合する。このように、フレックスギア部4を、インナギア5gに対して180〔°〕の位置関係となる二個所の噛合位置T,Tで噛合させるようにすれば、フレックスギア部4を、最も、単純な形状となる楕円形状を選定できるため、例えば、三個所以上の噛合位置T…で噛合させる場合に要求される精度に対してより低く抑えることが可能となり、製造容易性及び加工容易性を高めることができるとともに、耐久性,静音性及び信頼性の向上にも寄与できる利点がある。
回転出力機構9は、リング状に形成した出力プレート保持体12を備え、この出力プレート保持体12は、この内周面と入力回転体11の外周面間に配したベアリング(ローラベアリング)36により内周面側が支持されるとともに、この出力プレート保持体12の外周面と第1アーム部15の内面間に配したクロスローラベアリング37により外周面側が支持される。出力プレート保持体12におけるフレックスギア部4に対向する端面12sには、出力プレート部7を嵌合させるリング凹部12hを形成し、このリング凹部12hに、図2に示す出力プレート部7を嵌合させる。一方、出力プレート保持体12におけるリング凹部12hを有する端面12sに対して反対側の端面12tには、出力接続プレート38を固定する。
また、出力プレート部7はリング形(リング板状)に形成するとともに、伝達ローラ4pr…が係合可能な複数の係合孔7sh…を形成する。係合孔7sh…は、出力プレート部7の周方向Ffに沿って所定間隔置きに形成するとともに、出力プレート部7が回転したときの伝達ローラ4pr…の変位を許容できるように、放射方向Fdに沿ったスリット状の長孔として形成する。なお、出力プレート部7をリング形に形成すれば、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間を確保可能になるとともに、特に、筒形に形成する入力回転体11と組合わせることにより、全体構造のシンプル化及び高剛性化に寄与できる利点がある。その他、図1及び図2において、符号40…は、シールリングを示す。
このように、回転出力機構9を構成するに際し、伝達ピン本体4pm…を軸にして、偏心位置が支持される伝達ローラ4pr…,及びこの伝達ローラ4pr…が係合し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに形成するとともに、回転伝達時に伝達ローラ4pr…の変位を許容する複数の係合孔7sh…を放射方向Fdに設けたリング形の出力プレート部7を用いて構成すれば、周方向Ffの異なる位置で生じる係合孔7sh…に対する伝達ピン部4p…の変位を有効に吸収することができる。したがって、係合孔7sh…と伝達ピン本体4pm…を直接係合させた際に生じる無用な応力を排除し、伝達ピン部4p…から回転出力機構9への回転伝達を安定かつ円滑に行うことができるとともに、無用なロス分を排除して回転伝達効率をより向上させることができる。
よって、このような原理形態に係る回転減速伝達装置100によれば、回転運動が入力する回転入力部2と、この回転入力部2と一体に回転するカム本体部3c,及びこのカム本体部3cの外周に沿って設けた内輪3biとフレキシブルな外輪3bo間に複数の転動体3bm…を介在させたオーバルシャフト部3と、インナギア5gを内周に形成し、かつ位置を固定したインターナルギア部5と、外周の周方向Ffに沿って形成し、かつインナギア5gに対して歯数を少なくして、オーバルシャフト部3の外周に付設した際に、周方向Ffにおける二個所(一般的には複数個所)の噛合位置T…でインナギア5gに噛合するアウタギア4gを有するとともに、側面から突出し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに設けた複数の伝達ピン本体4pm…及びこの伝達ピン本体4pm…を軸にして、偏心位置が回動自在に支持される伝達ローラ4pr…により構成した伝達ピン部4p…を有するフレックスギア部4と、この伝達ピン部4p…が係合し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに設けるとともに、回転伝達時に伝達ピン部4p…の変位を許容する複数の係合孔7sh…を放射方向Fdに設けた出力プレート部7を有する回転出力機構9とを備えるため、薄肉の金属弾性プレート材を用いて全体形状をカップ状に形成する従来のフレクスプラインは不要になる。
この結果、容易に製造可能となり、製造コストの大幅な削減を図れるとともに、金属疲労や動作不良等も大幅に低減できるため、耐久性及び信頼性の向上を図ることができるなど、イニシャルコスト及びランニングコストの双方における大幅なコストダウンを実現できる。しかも、従来のフレクスプラインが不要になることから、軸方向Fsにおける配設スペースのサイズダウンを図ることができ、全体構造における薄型化が可能になる。したがって、小型化に限界のあった、特に産業用ロボット等の更なる小型化を容易に実現することができる。
また、回転減速伝達装置100を、ロボットRを構成する任意のアーム部15と他のアーム部16を連結する関節機構Mjに用いれば、関節機構Mjの薄型化(小型化)、耐久性及び信頼性の向上に寄与できるため、特に、生産ラインに設置するための最適な産業用ロボット(垂直多関節ロボットRv,水平多関節ロボット,デルタ型ロボット等)を構築できる利点がある。
次に、このような原理形態を有する回転減速伝達装置100の動作について、図1〜図9を参照し、主に図10(a)〜(d)に従って説明する。なお、図10(a)〜(d)は原理図のため、カム本体部3cの楕円形状は誇張した細長形状で描いている。
まず、ロボットコントローラ23により駆動モータ34をON制御すれば、駆動モータ34が作動し、駆動ギア34gが回転する。この回転運動は入力ギアリング33に伝達されるとともに、さらに、カム本体部3cを含む入力回転体11に伝達される。これにより、カム本体部3cは比較的高速で回転する。
図10(a)は、カム本体部3cの回転が開始する前の状態を示している。この状態では、カム本体部3cが位置Psで停止し、カム本体部3cの長手方向(楕円直径の最大方向)は上下方向となる。したがって、フレックスギア部4における始点は符号Xsの位置にありインターナルギア部5の基準点Xoに一致する。図10(a)の状態では、フレックスギア部4のアウタギア4gがインターナルギア部5のインナギア5gに対して上下二個所の噛合位置T,Tで噛合する。
次いで、カム本体部3cが、図10(a)の位置Psから矢印Dr方向に90°回転した状態を想定する。この状態を図10(b)に示す。この場合、カム本体部3cは、位置Psから時計方向へ90°回転した位置P1まで変位する。これにより、カム本体部3cの長手方向は、図10(b)に示すように左右方向となる。したがって、カム本体部3cの回転時には、アウタギア4gがインナギア5gに噛合する上側の噛合位置T(下側の噛合位置Tも同じ)が時計方向に噛み合いつつ90°移動することになる。この際、アウタギア4gの歯数はN、インナギア5gの歯数はN+2のため、フレックスギア部4の始点は、基準点Xoに対して、角度Q1=(360°/N)×2)/4だけ、反時計方向となる位置X1へ変位する。
さらに、カム本体部3cが図10(b)の位置P1から矢印Dr方向に90°回転した状態を想定する。この状態を図10(c)に示す。この場合、カム本体部3cは位置P1から時計方向へ90°回転した位置P2まで変位する。これにより、カム本体部3cの長手方向は、図10(c)に示すように上下方向となる。したがって、フレックスギア部4の始点は、基準点Xoに対して、角度Q2=(360°/N)×2)/2だけ反時計方向となる位置X2へ変位する。
次いで、カム本体部3cが図10(c)の状態から矢印Dr方向に180°回転した状態を想定する。この状態を図10(d)に示す。この場合、カム本体部3cは位置P2から180°回転した位置P3まで変位する。これにより、カム本体部3cの長手方向は、上下方向となり、図10(c)の位置に対して上下反転する。したがって、フレックスギア部4の始点は、基準点Xoに対して、角度Q3=(360°/N)×2)だけ反時計方向となる位置X3へ変位する。以上により、カム本体部3cは、時計方向へ1回転するとともに、フレックスギア部4は、歯数「2」だけ反時計方向へ移動する減速処理が行われる。
さらに、減速されたフレックスギア部4の回転運動は、回転出力機構9に伝達される。即ち、フレックスギア部4から突出する伝達ピン部4p…は、出力プレート部7の係合孔7sh…に係合する偏心位置が支持される伝達ローラ4pr…を備えるため、出力プレート部7はフレックスギア部4の回転運動に完全に同調して回転する。この場合、伝達ピン部4p…は、カム本体部3cの外周面の軌跡に従って放射方向Ddに反復変位するが、この変位は、長孔により形成した係合孔7sh…により吸収される。
そして、図2に示すように、出力プレート部7の回転運動は、入力した回転運動に対して大きく減速されるとともに、出力プレート保持体12,出力接続プレート38を含む出力プレート部7以外の回転出力機構9を介して第2アーム部16に伝達され、第2アーム部16が回転変位する。即ち、第1アーム部15を支点に高精度で回転制御される。
次に、このような原理形態を踏まえ、本発明の好適実施形態に係る回転減速伝達装置1について、図11〜図16を参照して詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る回転減速伝達装置1の構成について、図11〜図16を参照して説明する。本実施形態は、前述した図1〜図10に示した原理形態に対して、特に、フレックスギア部4と出力プレート部7間における回転伝達機構を改善したものである。したがって、本実施形態では、外周の周方向Ffに沿って形成し、かつインナギア5gに対して歯数を少なくして、オーバルシャフト部3の外周に付設した際に、周方向Ffにおける複数の噛合位置T…でインナギア5gに噛合するアウタギア4gを有するとともに、側面から突出した伝達ピン本体4pm…及びこの伝達ピン本体4pm…を軸にして、偏心位置Xpが回動自在に支持される伝達ローラ4pr…を有し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに配した複数の伝達ピン部4p…を設けてなるフレックスギア部4を備える基本的な構成は、図1〜図10に示した原理形態と同じとなるが伝達ローラ4pr…の偏心位置Xpが異なる。特に、伝達ローラ4prの偏心位置Xpは、図11に示すように、伝達ローラ4prの中心位置Xcから距離Lpだけオフセットした位置にある。
また、出力プレート部7は、図11及び図12に示すように、伝達ローラ4pr…の外径よりも大径に形成することにより伝達ローラ4pr…の偏心方向Fpにおける最短半径部の外周面Xfが、回転伝達時に、内周面7shi…に常時係合する内径に選定した円形の係合孔7sh…を、周方向Ffに沿って所定間隔置きに形成する。この場合、偏心位置Xpの選定及び係合孔7shの径の選定は、伝達ローラ4pr…の偏心方向Fpにおける最短半径部の外周面Xf、即ち、外周面Xfの一点(一ライン)が、回転伝達時に、円形の係合孔7shの内周面7shiに常時係合する条件を満たすように選定する。
したがって、本実施形態における一つの伝達ピン部4pは、図11及び図12に示すように、丸棒状のピン部材により形成した伝達ピン本体4pmと、この伝達ピン本体4pmを軸にして、偏心位置Xpが回動自在に支持される円形(円筒形)の伝達ローラ4prにより構成する。この場合、伝達ピン本体4pmは、機械的強度の高い汎用性素材である金属素材Mmにより形成する。一方、伝達ローラ4prは、金属素材Mm又は合成樹脂素材を含む硬質素材により形成することができる。これにより、機械的強度の高い汎用性素材により伝達性及び伝達安定性の高い伝達ローラ4prを形成できるとともに、実施の容易性及び低コスト性に優れる。
特に、合成樹脂素材を使用した場合には、所定の弾性に基づく機械的な寸法誤差の吸収機能により、より伝達性及び伝達安定性の高い伝達ローラ4prを形成できるとともに、加工上の厳格な精度は不要になるため、射出成形機による一体成形が可能になり、量産性及び更なる低コスト性に寄与できる利点がある。なお、合成樹脂素材としては、例えば、ふっ素系樹脂素材又はポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂素材等を用いることができる。これらの素材は、適度な弾性を確保しつつ、耐摩耗性及び摩擦特性(潤滑性)、更には高い機械的強度及び寸法安定性を有する自身の特性を有効に活かすことができる。また、合成樹脂素材としては、合成樹脂素材をそのまま利用することも可能であるが、より好ましくは、充填剤を配合した合成樹脂素材を用いることもできる。充填剤としては、少なくとも二硫化モリブデン,グラファイト等の各種潤滑材を含ませることができる。これにより、伝達ローラ4prの外周面又は内周面が接触する際の接触摩擦をより低減できるなど、円滑性かつ効率の高い回転伝達を行うことができる。また、必要に応じて、伝達ローラ4prとしての特性(性能)を高めるための各種充填剤(添加剤)を配合することも可能である。なお、充填剤を配合するとは、混合する場合のみならず表面をコーティングする場合も含む概念である。さらに、金属素材Mmにより形成した伝達ローラの外周面又は内周面に、合成樹脂素材により形成した筒形部材を組合わせて構成してもよい。
一方、伝達ピン本体4pmは、図12に示すように、フレックスギア部4の側面から突出させるとともに、偏心形の伝達ローラ4prは伝達ピン本体4pmの外周面に対して回動自在に組付ける。これにより、伝達ローラ4prの偏心位置Xpが伝達ピン本体4pmにより回動自在に支持される伝達ピン部4pが構成される。また、複数の伝達ピン部4p…を用意し、図11に示すように、フレックスギア部4の周方向Ffに沿って所定間隔置きに配設する。
この場合、伝達ピン部4p…を除くフレックスギア部4は、図4に示した原理形態のフレックスギア部4を用いることができる。なお、図14は、フレックスギア部4の変更例を示している。図4(図5)に示した原理形態のフレックスギア部4に対して、図14に示すフレックスギア部4は、各切込部4c…を、より広く形成するとともに、各切込部4c…間に、各伝達ピン本体4pm…を配した点を異ならせたものである。基本的な機能は同じとなるが、よりフレックス性を高めることができる。
また、伝達ピン部4pの取付けに際しては、図12に示すように、伝達ピン本体4pmをフレックスギア部4に対して直接固定する方法、又は図15〜図18に示すように、別途の固定機構4uを介して取付ける方法を用いることができる。伝達ピン部4pを直接固定する方法は、図12に示すように、フレックスギア部4の側面から面直角方向に取付孔部4sを形成し、この取付孔部4sに伝達ピン本体4pmを圧入するなどにより直接固定することができる。この方法は、最もシンプルな取付構造により実施できるため、部品点数の削減及び取付構造の小型化に寄与できる。さらに、この伝達ピン本体4pmに対して、伝達ローラ4prを組付けるには、図12に示すように、伝達ローラ4prの内孔部に対して、伝達ピン本体4pmを単に挿入するのみで組付けることができる。この場合、伝達ローラ4prの一端面は、フレックスギア部4の側面に規制されるとともに、伝達ローラ4prの他端面は、図2に示すインターナルギア部5の端面により規制されるため、伝達ローラ4prの、伝達ピン本体4pmからの抜脱が阻止され、伝達ローラ4prに対して伝達ピン本体4pmを単に挿入するのみで組付可能となる。
他方、伝達ピン本体4pmを、固定機構4uを介して取付ける方法では、図15及び図16に示すような横長の取付プレート4bを用意し、この取付プレート4bの中央位置に伝達ピン本体4pmの一端をネジ止め方式等により固定するとともに、この取付プレート4bの両側位置(一般的には複数位置)を、それぞれ固定部材4x,4xにより、フレックスギア部4の側面に固定することができる。例示の固定部材4x,4xは、丸棒状に形成し、一端側をフレックスギア部4の側面から面直角方向に形成した取付孔51,51に圧入するとともに、他端側を取付プレート4bに形成した取付孔52,52に圧入して固定できる。なお、53,53は、取付プレート4bとフレックスギア部4の側面間に介在させたワッシャ部材を示す。このような取付方法を採用すれば、特に、回転伝達方向の応力に強い取付構造を実現できるため、伝達機構における安定性及び信頼性を高めることができる。
図17は、フレックスギア部4の側面に、複数の固定機構4u…を介して各伝達ピン部4p…を取付ける際の配置状態を示している。なお、図18は、取付プレート4bの変更例を示す。図18に示す取付プレート4bは、図15に示した取付プレート4bに対して、長手方向の長さを、更に長く形成するとともに、中間部位をフレックスギア部4の円弧形状に沿わせてへの字形にやや折曲形成したものである。このような形状的な相違点を除き、基本的には、図15に示した取付プレート4bと同様に用いることができる。したがって、取付プレート4bは各種形状や形態により実施可能である。
その他、図11〜図18において、図1〜図10と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
次に、本実施形態に係る回転減速伝達装置1の動作(機能)について、図11〜図13を参照して説明する。
本実施形態に係る回転減速伝達装置1では、図11に示すように、各係合孔7sh…は、出力プレート部7の周方向Ffに沿って、所定間隔毎に形成するため、例示の場合、約1/4周の範囲において、八つの係合孔7sh…が形成される。したがって、今、図11に示すように、最上部に位置する係合孔7shにおいては、伝達ローラ4prの上端位置、即ち、偏心方向Fpにおける最短半径部の外周面位置Xfが、当該係合孔7shの内周面7shiの上端となる位置X1で当接するとともに、出力プレート部7の回転方向が、図中時計回りであるとすれば、カム本体部3c(図6,図10)がQs〔°〕だけ回転することにより、伝達ローラ4prと係合孔7shが当接する位置X2は、伝達ローラ4prから見て反時計方向へQs〔°〕だけ角度変位する。同様に、カム本体部3cが、Qs〔°〕×2だけ回転することにより、伝達ローラ4prと係合孔7shが当接する位置X3は、伝達ローラ4prから見て反時計方向へQs〔°〕×2だけ変位する。以下、同様の動作が行われる。
この結果、係合孔7sh…の中心位置は、図11中、真円となる鎖線円Tc上を変位(移動)するとともに、伝達ピン部4p…の中心位置は、楕円となる鎖線円Te上を変位する。この楕円となる鎖線円Teは、上下端位置において、鎖線円Tcに対して最大となる外側に位置し、左右端位置において、鎖線円Tcに対して最大となる外側に位置する。したがって、カム本体部3cが回転する360〔°〕のいずれの角度位置においても、伝達ローラ4prの外周面の一点(一ライン)は係合孔7shの内周面に当接することになる。図13は、一つの係合孔7shにおける伝達ピン部4pの動きの位置を示している。実線及びハッチングで示した伝達ピン部4pは、上述した偏心方向Fpにおける最短半径部の外周面位置Xfが、当該係合孔7shの内周面7shiの上端となる位置X1で当接する状態を示している。この状態から、図11中、時計方向へ45°回転すれば、位置X1における外周面位置Xfは、図13中、反時計方向へ45°回転した位置X8へ変位する。さらに、図11中、時計方向へ45°回転すれば、位置X8における外周面位置Xfは、図13中、反時計方向へ45°回転した位置X16へ変位する。図13は、この状態を示しており、伝達ローラ4pr…の偏心方向Fpにおける最短半径部の外周面位置Xf…は、回転伝達時に、係合孔7shの内周面7shi…に常時係合(当接)することになる。
このように、本実施形態に係る回転減速伝達装置1は、基本構成として、回転運動が入力する回転入力部2と、この回転入力部2と一体に回転するカム本体部3c,及びこのカム本体部3cの外周に沿って設けた内輪3biとフレキシブルな外輪3bo間に複数の転動体3bm…を介在させたオーバルシャフト部3と、インナギア5gを内周に形成し、かつ位置を固定したインターナルギア部5と、外周の周方向Ffに沿って形成し、かつインナギア5gに対して歯数を少なくして、オーバルシャフト部3の外周に付設した際に、周方向Ffにおける複数の噛合位置T…でインナギア5gに噛合するアウタギア4gを有するとともに、側面から突出した伝達ピン本体4pm…及びこの伝達ピン本体4pm…を軸にして、偏心位置Xpが回動自在に支持される伝達ローラ4pr…を有し、かつ周方向Ffに沿って所定間隔置きに配した複数の伝達ピン部4p…を設けたフレックスギア部4と、伝達ローラ4pr…の外径よりも大径に形成することにより伝達ローラ4pr…の偏心方向Fpにおける最短半径部の外周面Xfが、回転伝達時に、内周面7shi…に常時係合する内径に選定した円形の係合孔7sh…を、周方向Ffに沿って所定間隔置きに形成してなる出力プレート部7とを備え、入力する回転運動を減速して出力する機能を有するため、薄肉の金属弾性プレート材を用いて全体形状をカップ状に形成する従来のフレクスプラインは不要になり、容易に製造可能となる。これにより、製造コストの大幅な削減を図れるとともに、金属疲労や動作不良等も大幅に低減できるため、耐久性及び信頼性の向上を図ることができるなど、イニシャルコスト及びランニングコストの双方における大幅なコストダウンを実現できる。
また、従来のフレクスプラインが不要になるため、軸方向Fsにおける配設スペースのサイズダウンを図ることができる。したがって、全体構造における薄型化が可能になり、小型化に限界のあった、特に産業用ロボット等の更なる小型化を容易に実現できる。さらに、伝達ローラ4pr…と係合孔7sh…間を安定に係合させることができるため、フレックスギア部4から出力プレート部7への回転伝達を効率的に行うことができるとともに、無用な発熱や減耗を排除して長期使用における信頼性を高めることができる。しかも、係合孔7sh…と伝達ローラ4pr…の組合わせによる単純形状の部品や加工部位により実現できるため、実施の容易性及び低コスト性に優れる。
以上、変更例を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値,方法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、出力プレート部7をリング形に形成するとともに、回転入力部2を筒形の入力回転体11により構成した場合を示したが、ケーブル類Ka,Kb…の配線空間Sを設けない場合には、リング形又は筒形に構成することを要しない。また、回転入力部2は、外周面11oに、少なくともオーバルシャフト部3のカム本体部3cを一体形成した場合を示したが、別体のカム本体部3cを所定の取付手段により取付けてもよい。一方、フレックスギア部4は、インターナルギア部5のインナギア5gに対して180〔°〕の位置関係となる二個所の噛合位置T,Tで噛合させる場合を例示したが、カム本体部3cの形状を三角状,四角状又は五角状に形成し、三個所の噛合位置T…,四個所の噛合位置T…又は五個所の噛合位置T…で噛合させることも可能である。さらに、回転出力機構9には、回動自在に支持され、かつ端面12sに、出力プレート部7を保持するリング凹部12hを形成したリング形の出力プレート保持体12を設けた形態を例示したが、同一の機能を発揮できる他の構成により置換する場合を排除するものではない。また、各伝達ピン4p…は、アウタギア4gにおける各歯部(山部)4gsの位置に対応して設けた場合を例示したが、必ずしも位置を対応させる必要はないとともに、各伝達ピン4p…の数量及び間隔は、各歯部(山部)4gs…の数量と間隔に一致させる必要はない。一方、入力する回転運動として駆動モータ34の回転運動を例示したが、他の各種の回転運動源を適用できる。さらに、各部の形成素材として金属素材を例示したが合成樹脂素材や繊維強化複合素材等であってもよいし、弾性が不要となる部品についてはセラミックス素材等であってもよく、素材の種類は、特定の素材に限定されるものではない。なお、フレックスギア部4の内周面であって、各歯部(山部)4gs…間の谷部4gd…に対応するそれぞれの位置に、U形形状となる切込部4c…を放射方向Fdに形成した場合を例示したが、切込部4c…の形状や位置(間隔)は任意であり、また、必ずしも設けることを要しない。一方、伝達ピン本体4pmを設けるに際しては、フレックスギア部4に設けた取付孔部4sに挿入して直接固定する場合と、伝達ピン本体4pmを、取付プレート4bに固定し、この取付プレート4bの複数位置を複数の固定部材4x…により固定する固定機構4uを介してフレックスギア部4に取付ける場合とを例示したが、その他、公知の各種取付構造を利用することができる。
本発明に係る回転減速伝達装置は、産業用ロボットのアーム部を連結する関節機構をはじめ、入力する回転運動を減速して出力する機能を必要とする各種回転減速伝達装置として利用できる。
1:回転減速伝達装置,2:回転入力部,3:オーバルシャフト部,3c:カム本体部,3bi:内輪,3bo:外輪,4:フレックスギア部,4g:アウタギア,4s:取付孔部,4b:取付プレート,4x…:固定部材,4u:固定機構,4p…:伝達ピン部,4pr…:伝達ローラ,4pm…:伝達ピン本体,5:インターナルギア部,5g:インナギア,7:出力プレート部,7shi…:内周面,7sh…:係合孔,11:入力回転体,11i:内周面,11o:外周面,Xp:偏心位置,Xf:外周面位置,Fp:偏心方向,Ff:周方向,Mm:金属素材,Rm:合成樹脂素材,S:配線空間,T…:噛合位置,Ka:ケーブル類,Kb…:ケーブル類
Claims (7)
- 入力する回転運動を減速して出力する回転減速伝達装置であって、回転運動が入力する回転入力部と、この回転入力部と一体に回転するカム本体部,及びこのカム本体部の外周に沿って設けた内輪とこの内輪に対して相対的に回動変位可能となるフレキシブルな外輪を有するオーバルシャフト部と、内周にインナギアを形成し、かつ位置を固定したインターナルギア部と、外周の周方向に沿って形成し、かつ前記インナギアに対して歯数を少なくして、前記オーバルシャフト部の外周に付設した際に、周方向における複数の噛合位置で前記インナギアに噛合するアウタギアを有するとともに、側面から突出した伝達ピン本体及びこの伝達ピン本体を軸にして、偏心位置が回動自在に支持される伝達ローラを有し、かつ周方向に沿って所定間隔置きに配した複数の伝達ピン部を設けたフレックスギア部と、前記伝達ローラの外径よりも大径に形成することにより前記伝達ローラの偏心方向における最短半径部の外周面位置が、回転伝達時に、内周面に常時係合する内径に選定した円形の係合孔を、周方向に沿って所定間隔置きに形成してなる出力プレート部とを備えることを特徴とする回転減速伝達装置。
- 前記伝達ピン本体は、前記フレックスギア部に設けた取付孔部に挿入して直接固定することを特徴とする請求項1記載の回転減速伝達装置。
- 前記伝達ピン本体は、取付プレートに固定し、この取付プレートの複数位置を複数の固定部材により前記フレックスギア部に固定する固定機構を介して取付けることを特徴とする請求項1記載の回転減速伝達装置。
- 前記伝達ローラは、硬質素材により形成することを特徴とする請求項1記載の回転減速伝達装置。
- 前記硬質素材には、金属素材又は合成樹脂素材を含むことを特徴とする請求項4記載の回転減速伝達装置。
- 前記回転入力部は、内周面の内方を、ケーブル類の配線空間に形成するとともに、外周面に、少なくとも前記オーバルシャフト部のカム本体部を設けてなる筒形の入力回転体により構成することを特徴とする請求項1記載の回転減速伝達装置。
- 前記出力プレート部は、リング形に形成することを特徴とする請求項1記載の回転減速伝達装置。
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