JP2020084250A - 継目無鋼管用鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】MnS及び低融点酸化物の生成を抑制し、靭性及び耐食性に優れた継目無鋼管用鋼材を提供する。【解決手段】C、Si、Mn、Al、Ti、Cr、Mo、Ca、REMを所定の範囲で含有し、残部が鉄及び不純物からなり、前記不純物のうちP,S,O,Nを所定値以下に制限し、鋼中の各成分元素Mの質量比を[M]で表示した場合に、[REM]を以下の(1)式で示す第1閾値[REM_1]、及び、(2)式で示す第2閾値[REM_2]によって3つの領域に区別し、それぞれの領域において、鋼中のCa量[Ca]が、以下の(3)式に示すa1、(4)式に示すb1、(5)式に示すa2、(6)式に示すb2、(7)式に示すb3を用いて、以下の(8)式、(9)式、(10)式を満足するとともに、鋼中に含まれる円相当径が1.0μm以上の介在物の個数密度が100個/mm2以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、油井管やラインパイプに用いられる継目無鋼管の素材として特に適した継目無鋼管用鋼材に関するものであり、特に、介在物が少なく、靭性に優れた継目無鋼管用鋼材に関するものである。
石油や天然ガス(以降、石油と記載)を生産するために、油井管やラインパイプが用いられる。油井管は、石油や天然ガスの井戸を掘削し、井戸を構成する鋼管であり、ラインパイプは、石油や天然ガスを輸送する、海底や海中、地上に敷設される鋼管である。
油田やガス田(以降、油田と記載)の開発が進展するに伴い、深度が深く高圧がかかる高深度油田、天然ガスの高圧輸送、HSガスを多く含有する高腐食性油田、海底や寒冷地域の油田など、条件が厳しい油田開発が増えており、鋼材に、高強度、高耐食性、高靭性が求められている。
これらの課題を解決するうえで、鋼材中に含まれる介在物は有害であり様々な問題を引き起こす。まず、非金属である介在物自体は破壊起点となりやすいので、粗大介在物が多い場合、鋼材の靭性、特に低温靭性が低下する。また、HSガスを多く含有するサワー環境下では、鋼材中の介在物を起点として、硫化物応力誘起割れ(SSC)や水素誘起割れ(HIC)が生じやすい。
代表的な有害介在物は、MnSである。孔食発生起点となりSSCを引き起こすほか、圧延時に容易に延伸するので、HICや靭性低下の原因となる。MnSは鋳片のデンドライト樹間のミクロ偏析部や、中心偏析部に生じる。特に、中心偏析部に生成するMnSは粗大であり、そのため圧延時に延伸して、圧延方向長さが数百μm以上に達する場合があり、製品特性に大きく影響するので、従来から問題視されてきた。
そこで、例えば、低S化やCa処理によるMnS生成量の低減技術、連続鋳造時の凝固末期軽圧下による中心偏析防止技術などが開発されてきた。一方、デンドライト樹間のミクロ偏析は、従来はそれほど問題視されてこなかった。しかし、近年、強度や焼き入れ性を高めるために、Mn濃度が増えつつあるため、ミクロ偏析部のMnS対策も必要になってきている。
ところで、中心偏析部のMnSをはじめ、介在物の影響度合いは、鋼管の製造方法によって異なる。鋼管は、鋼材を筒状に成形し、軸方向の突合せ溶接(シーム溶接)により製造する溶接鋼管と、ビレットを素材として中心部に穴を開けて製造する継目無鋼管と、に大別される。溶接鋼管では、鋼材を素材とするので寸法精度が高い利点があるが、鋼材の中心偏析、特に中心偏析部に残存する延伸MnSが、鋼管特性に大きく影響する。一方、継目無鋼管では、ビレット中心部を穿孔するので、中心偏析は溶接鋼管に比べると問題にならず、HICやSSCの問題は相対的に小さい。また、一般に溶接鋼管の溶接部は、溶接部から押し出された鋼中介在物が内外表面に露出したり、溶接後の圧接時に延伸した鋼中介在物が残存したり、溶接部の金属組織が母材と異なる結果として、母材に比べて、耐食性や靭性が劣るなどの課題がある。一方、継目無鋼管にはシーム溶接部が無い。
このように、溶接鋼管に比べて継目無鋼管ではMnSをはじめとする介在物の影響度は低い。そのため、鋼中[S]は高めでも特性は良好であり、精錬時の脱S負荷は低い。
一方で、溶接鋼管では鋼材製造時に加工熱処理を行って材質作りこみが可能であるのに対し、継目無鋼管では、造管後に加工熱処理を行うことになるので、処理条件が制約される。その対策として、焼き入れ性を高めるため、例えば、CrやMoなどが多めに添加されることが多い。製造工程と介在物の影響度に差があるので、鋼材の介在物制御に関する技術において、溶接鋼管に用いる鋼材の技術を、そのまま継目無鋼管に用いる鋼材に適用することには課題がある。
ここで、従来から、鋼材の清浄性を高め、材質特性を向上させるために、様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1においては、Ca:0.001〜0.030%および希土類元素:0.001〜0.030%の1種以上、を含有して、S:0.010%以下とし、鋼中介在物を球状化して圧延方向と直角方向の靭性を向上させるとともに、硫化物応力腐食割れ感受性を低減する技術が提案されている。
また、特許文献2においては、Ca、MgおよびREMのうちの1種または2種以上を合計で0.0002〜0.005%含有し、Sを0.005%以下とし、介在物の形態制御によって靭性、耐食性を改善する技術が提案されている。
さらに、特許文献3においては、Sが0.005%以下、Oが0.005%以下であり、CaおよびREMの1種または2種の合計:0.0002〜0.007%を含有することにより、MnSの析出を防止し、介在物の形態制御により鋼の靭性、耐食性を改善する技術が提案されている。
特開昭62−010241号公報 特開2010−242222号公報 再公表WO2007/023804号公報
ところで、CaやREMは、脱硫元素であると同時に、強力な脱酸元素である。したがって、酸素量t.[O]が高い場合、酸化物CaOやREMが優先的に形成されるので、硫化物CaSやREMS(または、酸硫化物REMS)としてSを十分に固定せず、その結果MnSが生成する可能性がある。介在物組成を制御し、ひいてはMnS生成を抑制するためには、t.[O]を規定することが必要である。
ここで、特許文献1及び特許文献2においては、t.[O]を規定していない。また、特許文献3においては、t.[O]≦0.005%として上限のみ規定しており、MnS抑制には不十分な場合がある。また、特許文献3においては、特に30mm以上の肉厚材を対象に想定しているため、Mn:1.5〜3.0%と高めの濃度範囲に限定されており、中心偏析部だけでなく、ミクロ偏析部のMnSもが問題になる可能性がある。
次に、MnS以外の低融点介在物が生成する懸念がある。上記特許文献1〜3は、いずれも、CaとREMのうち少なくとも1種以上を含有させればよく、CaとREMを組み合わせた複合添加を必須としていない。そのため、Ca単独で含有した場合、CaO−Al系酸化物が生成するが、t.[O]によっては、低融点酸化物組成となり、圧延時に延伸する懸念がある。低融点CaO−Al系酸化物は圧延時に容易に延伸し、先端が鋭い切欠き状となるため、靭性が低下する。特許文献1及び特許文献2においては、t.[O]を規定していないため、t.[O]が高い場合、延伸し易い低融点酸化物が生成する可能性が高い。特許文献3は、t.[O]≦0.005%として上限を規定しているが、t.[O]に応じて、[Ca]や[REM]を規定しなければ、低融点酸化物の生成を十分に回避することができない。
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、MnS及び低融点酸化物の生成を抑制し、靭性に優れた継目無鋼管用鋼材を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。
圧延方向に延伸した介在物は、先端が切欠き状であるため、特に有害である。また、非延伸介在物であっても、粗大なものは有害性が高く、低減することが重要である。ここで、延伸介在物としては、上述したMnSに加えて、低融点酸化物が挙げられる。
低融点酸化物は、一般には、溶鋼中(標準的には1600℃を想定)で液相である酸化物を指すことが多い。圧延温度では固相であるが、低融点であるために、容易に変形・延伸する。MnSに比べると延伸の程度(アスペクト比)は低いが、高強度の鋼材では問題視されるようになっている。例えば、Ca処理時に、低融点組成であるCaO−Al系酸化物が生じて、延伸する例が観察される。低融点組成を避ける手段として、t.[O]を規制・制御する、あるいはt.[O]に応じて、[Ca]を制御し、酸化物を高融点組成に制御することが有効である。
また、非延伸介在物としては、鋼種によっては、TiSなど硫化物、Ti(C)Nなど(炭)窒化物が生成する場合もあるが、本発明では、主な介在物である酸化物を想定して説明する。従来、非延伸介在物については、まず、サイズが問題視され、粗大な介在物(酸化物)を除去する対策が重視されてきた。しかし、鋼材の高強度化や安全性重視を背景に、従来は問題視されていなかったサイズや個数(量)でも、一段と低減(清浄化)が要求されるようになっている。そこで、溶鋼中から酸化物を浮上除去するために、二次精錬撹拌時間を延長することが広く行われている。酸化物の総量は、鋼中のt.[O]が指標となる。例えば、高清浄度が特に求められる軸受鋼では、t.[O]が厳しく管理されており、撹拌時間延長により、t.[O]が着実に低減する。
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明に係る継目無鋼管用鋼材は、質量%で、
C:0.20%以上0.34%未満、
Si:0.15%以上0.40%以下、
Mn:0.30%以上1.50%未満、
Al:0.003%以上0.050%以下、
Ti:0%以上0.060%以下、
Cr:0%以上1.50%以下、
Mo:0%以上1.0%以下、
Ca:0.0003%以上0.0050%以下、
REM:0.0003%以上0.0050%以下、
を含有し、残部が鉄及び不純物からなり、前記不純物のうちP,S,O,Nを、
P:0.020%以下、
S:0.0050%以下、
O:0.0050%以下、
N:0.0075%以下、
に制限し、
鋼中の各成分元素Mの質量比を[M]で表示した場合に、[REM]を以下の(1)式で示す第1閾値[REM_1]、及び、(2)式で示す第2閾値[REM_2]によって3つの領域に区別し、それぞれの領域において、鋼中のCa量[Ca]が、以下の(3)式に示すa1、(4)式に示すb1、(5)式に示すa2、(6)式に示すb2、(7)式に示すb3を用いて、以下の(8)式、(9)式、(10)式を満足するとともに、
鋼中に含まれる円相当径が1.0μm以上の介在物の個数密度が100個/mm以下であることを特徴とする。
(1)式:[REM_1]=0.400×[S]−0.0006
(2)式:[REM_2]=0.005×[Al]+0.300×[S]+1.590×[O]−0.0014
(3)式:a1=5.000×[Al]−35.714×[S]−29.870×[O]−0.0675
(4)式:b1=−0.005×[Al]+0.400×[S]+1.155×[O]−0.0007
(5)式:a2=2.143×[Al]+53.571×[S]+31.169×[O]−1.0471
(6)式:b2=−0.002×[Al]+0.618×[S]+1.100×[O]−0.0010
(7)式:b3=0.475×[S]−0.0005
(8)式:[REM]<[REM_1]の場合、[Ca]≧a1×[REM]+b1
(9)式:[REM_1]≦[REM]<[REM_2]の場合、[Ca]≧a2×[REM]+b2
(10)式:[REM_2]≦[REM]≦0.0050%の場合、[Ca]≧b3
このような構成の継目無鋼管用鋼材によれば、上述のように、t.[O]を考慮して、[REM]と[Ca]の関係を規定していることから、CaやREMが酸化物を形成しても、Sと結合するCaやREM量が確保され、MnS系介在物を低減することが可能となる。
また、鋼中の[Ca]、[REM]、t.[Al]、t.[O]、[S]の各量の関係を上述のように規定しているので、介在物中のAlの比率を低減でき、低融点酸化物の生成を抑制することが可能となる。さらに、CaとREMを複合添加し、酸化物の主要組成を、REMを含有する三元系、Al−CaO−REM系とすることで、圧延時の破砕性が増し、圧延後のサイズが微細化するので、有害性を低減できる。
さらに、円相当径1.0μm以上の介在物個数密度を100個/mm以下に規定しているので、破壊の起点となる介在物の個数が十分に低減されている。
よって、使用時や加工時におけるクラック等の発生が抑制された高品位な継目無鋼管用鋼材を提供することができる。
ここで、本発明の継目無鋼管用鋼材においては、さらに、質量%で、
Cu:0%以上0.05%以下、
Nb:0%以上0.05%以下、
V:0%以上0.10%以下、
Ni:0%以上0.10%以下、
B:0%以上0.0050%以下、
からなる群から選択される一種又は二種以上を含む構成としてもよい。
この場合、上述の元素をさらに含有することで、継目無鋼管用鋼材の様々な特性を向上させることが可能となる。
また、本発明の継目無鋼管用鋼材においては、内部に存在する介在物における各化合物MXの質量比を(MX)とした場合に、以下の(11)式及び(12)式の両方を満足することが好ましい。
(11)式:(Al)/{(Al)+(CaO)+(REM)}≦0.40
(12)式:(REM)/{(Al)+(CaO)+(REM)}≧0.05
この場合、介在物の組成が上述のように規定されているので、介在物の融点が低下することを抑制でき、低融点酸化物に起因する延伸介在物の個数をさらに低減することが可能となる。
上述のように、本発明によれば、MnS及び低融点酸化物の生成を抑制し、靭性に優れた継目無鋼管用鋼材を提供することが可能となる。
ラボ実験における延伸介在物の発生状況を示すグラフである。 t.[O]によって層別した結果を示すグラフである。(a)がt.[O]:0.0005%以上0.0012%未満、(b)がt.[O]:0.0012%以上0.0017%未満、(c)がt.[O]:0.0017%以上0.0022%未満、(d)がt.[O]:0.0022%以上0.0030%未満。 ラボ実験における延伸介在物の生成を抑制する条件を示すグラフである。 延伸介在物の個数密度とシャルピー吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。 円相当径≧1.0μmの介在物の個数密度と延伸介在物の個数密度との関係を示すグラフである。
以下に、本発明の実施形態である継目無鋼管用鋼材について、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
ここで、本実施形態である継目無鋼管用鋼材は、油井管やラインパイプに用いることができる継目無鋼管としての使用されるものである。さらに、本実施形態である継目無鋼管用鋼材は、ビレット等の鋳造材とされている。
本実施形態である鋼材においては、質量%で、C:0.20%以上0.34%未満、Si:0.15%以上0.40%以下、Mn:0.30%以上1.50%未満、Al:0.003%以上0.050%以下、Ti:0%以上0.060%以下、Cr:0%以上1.50%以下、Mo:0%以上1.0%以下、Ca:0.0003%以上0.0050%以下、REM:0.0003%以上0.0050%以下、を含有し、残部が鉄及び不純物からなる組成を有し、さらに、前記不純物のうちP,S,O,Nを、P:0.020%以下、S:0.0050%以下、O:0.0050%以下、N:0.0075%以下、に制限している。
そして、鋼中の各成分元素Mの質量比を[M]で表示した場合に、[REM]を以下の(1)式で示す第1閾値[REM_1]、及び、(2)式で示す第2閾値[REM_2]によって3つの領域に区別し、それぞれの領域において、鋼中のCa量[Ca]が、以下の(3)式に示すa1、(4)式に示すb1、(5)式に示すa2、(6)式に示すb2、(7)式に示すb3を用いて、以下の(8)式、(9)式、(10)式を満足するように規定されている。
(1)式:[REM_1]=0.400×[S]−0.0006
(2)式:[REM_2]=0.005×[Al]+0.300×[S]+1.590×[O]−0.0014
(3)式:a1=5.000×[Al]−35.714×[S]−29.870×[O]−0.0675
(4)式:b1=−0.005×[Al]+0.400×[S]+1.155×[O]−0.0007
(5)式:a2=2.143×[Al]+53.571×[S]+31.169×[O]−1.0471
(6)式:b2=−0.002×[Al]+0.618×[S]+1.100×[O]−0.0010
(7)式:b3=0.475×[S]−0.0005
(8)式:[REM]<[REM_1]の場合、[Ca]≧a1×[REM]+b1
(9)式:[REM_1]≦[REM]<[REM_2]の場合、[Ca]≧a2×[REM]+b2
(10)式:[REM_2]≦[REM]≦0.0050%の場合、[Ca]≧b3
さらに、本実施形態である鋼材においては、鋼中に含まれる円相当径が1.0μm以上の介在物の個数密度が100個/mm以下とされている。
なお、本実施形態である鋼材においては、必要に応じて、さらに、質量%で、Cu:0%以上0.05%以下、Nb:0%以上0.05%以下、V:0%以上0.10%以下、Ni:0%以上0.10%以下、B:0%以上0.0050%以下、からなる群から選択される一種又は二種以上を含んでいてもよい。
さらに、本実施形態である鋼材においては、内部に存在する介在物における各化合物MXの質量比を(MX)とした場合に、以下の(11)式及び(12)式の両方を満足するものとしてもよい。
(11)式:(Al)/{(Al)+(CaO)+(REM)}≦0.40
(12)式:(REM)/{(Al)+(CaO)+(REM)}≧0.05
以下に、本実施形態である鋼材において、各成分を上述のように規定した理由について説明する。
(C:0.20%以上0.34%未満)
C(炭素)は、鋼材の強度や焼入れ性を確保するうえで重要な元素である。C含有量を0.20%以上とすることにより、用途に十分な強度を確保する。一方、C含有量が0.34%以上になると、靭性が劣化する。よって、C含有量を0.20%超0.34%未満の範囲に制御する。
(Si:0.15%以上0.40%以下)
Si(ケイ素)は、脱酸剤として作用し、また、焼入れ性を高めて鋼材の強度を向上させるのに有効な元素である。一方、0.40%を超えると、靭性が劣化する。よって、Si含有量を0.15%以上0.40%以下の範囲に制御する。
(Mn:0.30%以上1.50%未満)
Mn(マンガン)は、脱酸剤として作用する元素であるとともに、焼入れ性を高めて鋼材の強度、靭性を向上させるのに有効な元素である。焼入れ後の強度には、Mnをはじめとする合金元素量と共に、焼き入れ時の冷却速度が影響する。鋼材厚みが厚いほど、厚み中心の冷却速度は減少するので、厚肉材ほど焼き入れ性が低下する。したがって、焼き入れ性に影響する合金元素量は、鋼材の厚さによって変えることが好ましい。
本実施形態である鋼材は、一般的な肉厚の鋼管、おおよそ十数mm〜二十数mm程度の鋼管の素材を想定して決定した。(したがって、この範囲を大きく超える、例えば30mm以上の極厚肉材では、Mnをはじめとする合金元素量を増やさなければ、厚み中心の焼き入れ性を確保できない。)
本実施形態の場合、Mn含有量が0.30%未満では、強度や靭性を高めるその効果が十分得られない。一方、Mn含有量が1.50%以上では、上記の想定厚み十数mm〜二十数mmの鋼材では、強度が高くなり過ぎて靭性が劣化するほか、偏析部に粗大なMnSが生成して、鋼材の耐HIC特性が劣化するおそれがある。よって、Mn含有量を0.30%以上1.50%未満の範囲に制御する。
なお、Mn含有量の下限は0.80%以上であることが好ましく、Mn含有量の上限は1.35%以下であることが好ましい。
(Al:0.003%以上0.050%以下)
Al(アルミニウム)は、脱酸剤として作用する元素であるとともに、Nを固定することで鋼材の靭性を高めるのに有効な元素である。本実施形態においては、鋼マトリックスに固溶した、いわゆる酸可溶Alだけでなく、酸化物や窒化物を形成したAlをも合計した、トータルAl(以降、t.Alと記載する)を指す。Al含有量が0.003%未満では、上記含有効果が十分に得られないので、0.003%以上を含有させる必要がある。一方、Al含有量が0.050%を超えると、上記含有効果は飽和し、さらに、粗大な介在物が増加する。この粗大な介在物によって、靭性が劣化する、または鋼管の外面および内面に表面疵が発生し易くなる。よって、Al含有量を0.003%以上0.050%以下の範囲に制御する。
なお、Al含有量の下限は0.010%以上とすることが好ましく、Al含有量の上限は0.040%以下であることが好ましい。
(Ti:0%以上0.060%以下)
Ti(チタン)は、炭窒化物を形成することにより強度を高める効果のほか、結晶粒微細化作用があるので、必要に応じて、0.060%以下の範囲内で含有させても良い。一方、Ti含有量が0.060%を超えると、粗大な角状の炭窒化物が形成されやすくなり、靭性が劣化する。よって、Ti含有量を0.060%以下に制限する。Ti含有量の下限は0%でもよい。また、現行の一般的な精錬(二次精錬を含む)を考慮すると、Ti含有量の下限は0.0005%以上であってもよい。
(Cr:0%以上1.50%以下)
Cr(クロム)は、焼入れ性を高めて鋼材の強度を向上させるほか、耐食性向上に有効な元素である。そのため、必要に応じて、Crを1.50%以下の範囲内で含有させても良い。また、Cr含有量の下限値を0.40%とすると、好ましく上記効果を得ることができる。Cr含有量が1.50%を超えると、靭性が劣化する。さらに、コストが増える一方で、含有効果は飽和する。よって、Cr含有量を1.50%以下に制御する。
(Mo:0%以上1.0%以下)
Mo(モリブデン)は、焼入れ性の向上と焼戻し軟化抵抗性の向上とにより、鋼材の強度を向上させる効果を有するほか、耐食性を向上させる効果がある元素である。そのため、必要に応じて、Moを1.0%以下の範囲内で含有させても良い。また、Mo含有量の下限を0.10%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、Mo含有量が1.0%を超えると、コストが増加する一方で、含有効果は飽和する。さらに、Mo含有量が1.0%を超えると、鋼材の靭性が劣化する。以上の理由により、Mo含有量の上限を1.0%とする。なお、Mo含有量の好ましい範囲は0.30%以上0.80%以下である。
(Ca:0.0003%以上0.0050%以下)
Ca(カルシウム)は、MnSを低減して介在物の形態を制御し、これにより鋼材の靭性を向上させるために有効な元素である。Ca含有量が0.0003%未満では、上記効果が十分に得られない。一方、Ca含有量が0.0050%を超えると、酸化物、CaS系介在物などが粗大化し、これらによって鋼材の靭性が悪化するおそれがある。さらに、Ca含有量が0.0050%を超えると、ノズル耐火物が溶損しやすくなることにより連続鋳造の操業が安定しなくなるおそれがある。よって、Ca含有量を0.0003%以上0.0050%以下の範囲に制御する。
なお、Ca含有量の下限は0.0010%以上とすることが好ましく、Ca含有量の上限は0.0035%以下とすることが好ましい。
(REM:0.0003%以上0.0050%以下)
REM(Rare Earth Metal)は希土類元素を意味し、スカンジウムSc(原子番号21)、イットリウムY(原子番号39)およびランタノイド(原子番号57のランタンから原子番号71のルテシウムまでの15元素)の17元素の総称である。本実施形態に係る鋼材では、これらのうちから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有する。一般的に、REMとして、入手のし易さから、Ce(セリウム)、La(ランタン)、Nd(ネオジム)、Pr(プラセオジム)などから選ばれることが多い。添加方法としては、例えば、鋼中にこれらの元素の混合物であるミッシュメタルとして添加することが広く行われている。ミッシュメタルの主成分はCe、La、Nd、およびPrである。本実施形態に係る鋼材では、鋼材に含有されるこれら希土類元素の合計量を、REM含有量とする。なお、本実施形態では、ミッシュメタルの平均原子量が約140であるので、REMの原子量を140としている。
REMは、MnSを低減して介在物の形態を制御し、鋼材の靭性を向上させるために有効な元素である。REM含有量が0.0003%未満では、上記効果が十分に得られない。一方、REM含有量が0.0050%を超えると、連続鋳造時のノズル詰まりが起こりやすくなる。また、REM含有量が0.0050%を超えると、生成するREM系介在物(酸化物やオキシサルファイド)の個数密度が比較的高くなるので、鋳片の連続鋳造時に湾曲する鋳片の下面側にこれらREM系介在物が堆積する。このことが、鋳片を圧延して得られた製品に内部欠陥を引き起こし、さらに、鋼材の靭性を悪化させるおそれがある。よって、REM含有量を0.0003%以上0.0050%以下の範囲に制御する。
なお、REM含有量の下限は0.0010%以上とすることが好ましく、REM含有量の上限を0.0030%以下とすることが好ましい。
さらに、Ca及びREMの含有量を、S、t.O、t.Alの含有量に応じて、制御する必要がある。具体的には、化学成分中の各元素の質量%で示した含有量を、上述の(1)〜(10)式によって表わされる範囲に制御する必要がある。この式(1)〜(10)の理由については後述する。
本実施形態に係る鋼材は、上記した基本成分の他に、不純物を含有する。ここで、不純物とは、スクラップ等の副原料や、製造工程からに混入する、P、S、O、N、Cd、Zn、Sb、W、Mg、Zr、As、Co、Sn、およびPb等の元素を意味する。これら元素の含有は必須ではないので、これら元素の含有量の下限値は0%である。この中で、P、S、O、及びNは、上記効果を好ましく発揮させるために、以下のように制限する。また、P、S、O、及びN以外の上記不純物は、それぞれ0.01%以下に制限することが好ましい。ただ、これらの不純物が、0.01%以下含まれても、上記効果を失するものではない。ここで、記載する%は、質量%である。
(P:0.020%以下)
過剰な量のPを含有すると、鋼材の靭性が劣化する。よって、P含有量を0.020%以下に制限する。P含有量の下限は0%でもよい。また、現行の一般的な精錬(二次精錬を含む)を考慮すると、P含有量の下限は0.005%以上であってもよい。
(S:0.0050%以下)
S(硫黄)は、MnSを主とする非金属介在物を形成することにより、継目無鋼管用鋼材の靭性を劣化させる不純物元素である。よって、S含有量を0.0050%以下に制限し、好ましくは、0.0040%以下に制限する。また、現行の一般的な精錬負荷(二次精錬を含む)を考慮すると、S含有量の下限は0.0020%以上であってもよく、特に製錬負荷を下げる場合には、S含有量の下限は0.0035%以上であってもよい。
(O:0.0050%以下)
O(酸素)は、酸化物(非金属介在物)を形成し、この酸化物が凝集および粗大化することにより、そして、酸化物の組成によっては圧延時に延伸するので、継目無鋼管用鋼材の靭性を劣化させる不純物元素である。よって、O含有量を0.0050%以下に制限する。O含有量の下限は0%でもよい。また、現行の一般的な精錬(二次精錬を含む)を考慮すると、O含有量の下限は0.0005%以上であってもよい。本実施形態に係る継目無鋼管用鋼材のO含有量は、鋼中に固溶しているOや、介在物中に存在するOなどの、すべてのO含有量を合計したトータルO含有量(t.O)を意味する。トータルO含有量(t.O)の分析は、一般的に行われている、JIS G 1239(2014年制定)に記載の「不活性ガス融解−赤外線吸収法」で分析した。
t.Oは、酸化物の組成、および酸化物の総量に大きく影響するので、制御することは非常に重要である。したがって、t.Oは、Ca及びREMの含有量を規定する上述の(1)〜(10)式に、S、Alと共に含まれている。定性的には、延伸し易い低融点酸化物を低減するために、かつ、酸化物総量を低減するために、t.Oを低減することが好ましい。t.Oを低減するために、例えば、二次精錬の撹拌時間を延長して、介在物の浮上除去を促進することが行われている。
(N:0.0075%以下)
N(窒素)は、窒化物(非金属介在物)を形成し、継目無鋼管用鋼材の靭性を低下させる不純物元素である。よって、N含有量を0.0075%以下に制限する。N含有量の下限は0%でもよい。また、現行の一般的な精錬(二次精錬を含む)を考慮すると、N含有量の下限は0.0010%であってもよい。
本実施形態に係る継目無鋼管用鋼材は、上記の基本成分が制御され、残部が鉄及び上記の不純物よりなる。しかし、本実施形態に係る継目無鋼管用鋼材は、この基本成分に加えて、残部のFeの一部の代わりに、さらに必要に応じて以下の選択成分を鋼中に含有させてもよい。
すなわち、本実施形態に係る継目無鋼管用鋼材は、上記した基本成分及び不純物の他に、更に、選択成分として、Cu、Nb、V、Ni、Bのうちの1種以上を含有してもよい。以下に、選択成分の数値限定範囲とその限定理由とを説明する。ここで、記載する%は、質量%である。
(Cu:0%以上0.05%以下)
Cu(銅)は、継目無鋼管用鋼材の強度向上や、耐食性向上の効果を有する選択元素である。そのため、必要に応じて、Cuを0.05%以下の範囲内で含有させても良い。また、Cu含有量の下限を0.01%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、Cu含有量が0.05%を超えると、含有効果が飽和するほか、溶融金属脆化(Cu割れ)によって造管時に熱間加工割れが生じるおそれがある。なお、Cu含有量の好ましい範囲は0.02%以上0.04%以下である。
(Nb:0%以上0.05%以下)
Nb(ニオブ)は、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止および継目無鋼管用鋼材の靭性の改善に有効な選択元素である。そのため、必要に応じて、Nbを0.05%以下の範囲内で含有させても良い。また、Nb含有量の下限を0.01%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、Nb含有量が0.05%を超えると、粗大なNb炭窒化物が析出して継目無鋼管用鋼材の靭性の劣化を招くおそれがある。なお、Nb含有量の好ましい範囲は0.02%以上0.04%以下である。
(V:0%以上0.10以下)
V(バナジウム)は、Nbと同様に炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止や靭性の改善に有効な選択元素である。そのため、必要に応じて、Vを0.10%以下の範囲内で含有させても良い。また、V含有量の下限を0.01%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、V含有量が0.10%を超えると、粗大なV炭窒化物が生成して継目無鋼管用鋼材の靭性の劣化を招くおそれがある。なお、V含有量の好ましい範囲は0.02%以上0.04%以下である。
(Ni:0%以上0.10%以下)
Ni(ニッケル)は、焼入れ性の向上による継目無鋼管用鋼材の強度の向上や、靭性の向上に有効な選択元素である。また、Cu含有時の溶融金属脆化(Cu割れ)を防止する効果も有する選択元素である。そのため、必要に応じて、Niを0.10%以下の範囲内で含有させても良い。また、Ni含有量の下限を0.01%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、Ni含有量が0.10%を超えると、コストが増加する一方で、含有効果は飽和するので、Ni含有量の上限を0.10%以下とする。なお、Ni含有量の好ましい範囲は0.01%以上0.08%以下である。
(B:0%以上0.0050%以下)
B(ホウ素)は、焼入れ性を高めて継目無鋼管用鋼材の強度を向上させる効果を有する選択元素である。そのため、必要に応じて、Bを0.0050%以下の範囲内で含有させても良い。一方、B含有量が0.0050%を超えると、窒化物が生成して継目無鋼管用鋼材の靭性性が低下するので上限を0.0050%以下とする。なお、B含有量の上限を0.0020%以下とすることが好ましい。
次に、介在物の個数、式(1)〜(12)を、上述のように規定するための知見を得たラボ実験の結果について説明する。
真空溶解炉で、質量%で、C:0.23%以上0.28%以下、Si:0.23%以上0.28%以下、Mn:0.90%以上1.00%以下、P:0.006%以上0.009%以下、S:0.0037%以上0.0043%以下、t.Al:0.027%以上0.033%以下、Cr:0.47%以上0.53%以下、Ti:0.004%以上0.007%以下、t.O:0.0012%以上0.0030%以下を含有する複数種類の溶鋼を溶製し、さらに、REMとCaのそれぞれの量を変えて添加して、50kgインゴットを作製した。REMは、Ce、La、Ndを含むミッシュメタルを添加した。
これらのインゴットを、仕上圧延温度920℃狙いで15mm厚に熱間圧延し、水冷した後、550℃で焼き戻し処理を行って、熱延鋼板を得た。なお、上記ならびに以降、本発明で記載した各成分値は、添加量ではなく、熱延鋼板の分析値(含有量)である。
本実施形態においては、鋼中含有量や、介在物組成を記載するが、単位は全て質量%で表記する。そして、鋼中含有量を、元素記号Mを矩形の括弧で挟んで[M]と表記する。例えば、Caの鋼中含有量は[Ca]と表記する。なお、トータル酸素量t.Oについては、t.[O]と表記する
また、介在物中の化合物MXの含有量は、化合物MXを丸括弧で挟んで(MX)と表記する。例えば、介在物中のCaOの含有量は(CaO)と表記する。
この熱延鋼板の圧延方向と板厚方向とに平行な断面(L断面)を観察面として、熱延鋼板中の介在物を、光学顕微鏡により倍率400倍(ただし、介在物形状を詳細に測定する際は倍率1000倍)で、合計60視野にて観察した。各観察視野で、粒径(形状が球状の介在物の場合)または長径(形状が球状でない介在物の場合)が1μm以上の介在物を観察し、それらの介在物を、(長径)/(短径)で計算されるアスペクト比が3.0以下のものと、3.0を超えるものに分類し、それらの個数密度を計測した。アスペクト比>3.0の介在物個数密度が、10個/mmを超えた試料を「劣位」、10個/mm以下を「良好」と評価した。
また、EPMA(電子線マイクロ分析、Electron Probe Micro Analysis)、またはEDX(エネルギー分散型X線分析、Energy Dispersive X−Ray Analysis)を備えるSEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)を用いて熱延鋼板中の介在物を分析した。
そして、上記で得られた熱延鋼板の靭性の指標として、室温(0℃)におけるシャルピー衝撃値を測定した。シャルピー試験片は、鋼板のC方向からフルサイズを採取した。すなわち、試験片長さ55mmを鋼板の幅方向から、試験片高さを鋼板長手(圧延)方向10mm、試験片幅を鋼板厚み方向10mmから採取した。55mm長さ×鋼板厚み方向10mmの面に、2mmVノッチを加工した。この方向で試験片を採取すると、鋼板のL断面が破断面となるので、延伸介在物の影響を評価し易い。
熱延鋼板中で観察される介在物組成は、MnS、CaS、Al−CaO−REM系酸化物である。上記3種類は、それぞれ単独で存在している場合のほか、例えば、Al−CaO−REM系酸化物の周囲の一部にMnSやCaSが付着する場合のように、複数の相が共存している場合が多い。
まず、熱延鋼板の清浄性の調査結果を説明する。図1に、CaとREMの鋳片含有量と延伸介在物の生成状況を示した。図1中の「○」は、アスペクト比>3.0の介在物個数が10個/mm以下の良好材を示し、図1中の「△」は10個/mmを超えた劣位材を示す。
ここで、全ての試料をプロットした図1では、良好材と劣位材が混在し、有害な延伸介在物の生成防止の境界条件は不明確であった。
アスペクト比が3.0を超えて延伸した介在物組成をSEMに付属したEDSで分析した結果、(i)単独のMnSが延伸した場合と、(ii)Al−CaO−REM系酸化物で低融点組成である場合(周囲の一部にMnSやCaSが付着する場合もある。後述するように、EDS分析結果から、周囲に付着したMnSやCaSと、酸化物とを分けて、組成を計算できる。)であることが分かった。
後者(ii)の組成を詳細解析した結果、(Al)/{(Al)+(CaO)+(REM)}>0.40である酸化物が、アスペクト比>3.0に延伸していることが分かった。
一方、(Al)/{(Al)+(CaO)+(REM)}≦0.40であれば、酸化物のアスペクト比≦3.0であった。酸化物の融点が上昇し、圧延時に延伸しにくくなるためと考えられる。
介在物の組成である(CaO)、(Al)、(REM)は、SEM付属EDSによる介在物分析結果を基に、元素のマスバランスを考慮して算出することができる。EDS分析結果は、元素別に質量%で出力される。以下の説明では、介在物から検出された元素Mの含有量を(M)と表記する。
(Ca)、(Al)、(REM)のそれぞれから、原子量を用いて、酸化物量を算出し、(11)式、(12)式を計算できる。例えば、(Al)は、Alの原子量27と酸素の原子量16を用いて、(27×2+16×3)/(27×2)×(Al)で計算できる。なお、介在物をSEMで観察して、介在物にAlNが生成していないことを確認した。AlNは、特徴的な角形状なので、SEM観察で容易に判別可能である。ここでは介在物組成の算出に影響するサブミクロンオーダー以上のサイズのAlNの生成を問題にしている。
同様の方法で、(Ca)から(CaO)を、(REM)から(REM)を求めることができる。ここで、(REM)は、検出された希土類元素の合計量、具体的には、本実験で検出されたCe、La、Ndの合計量である。
なお、CaやREMは、酸化物のほか、硫化物を形成するので、Sのマスバランスを考慮して、Sと結合して硫化物を形成するCaやREMを差し引いて、酸化物を形成するCaとREMの量を求めることに注意する必要がある。
具体的には、まず、MnSを形成するS量を、MnとSの原子量を用いて、32/55×(Mn)から計算し、S総量から除く。本実験はAl脱酸鋼なので、介在物から検出されたMnはMnSから検出されたとみなせるからである。このS残量が、CaS、REMS(オキシサルファイド)、REMS(REM原子とS原子がモル比1:1で結合した硫化物)を形成しているS量である。熱力学的に、CaSが最も生成し易く、次にREMS、最後にREMSが生成すると考えられる。この順番で、Sのマスバランスを考慮して、硫化物やオキシサルファイドの生成量を計算すればよい。
こうして求めた硫化物やオキシサルファイドを形成するCaやREMを、それぞれの総量から差し引いた残量が、酸化物を形成しているCa、REM量である。Ca、REM、Oの原子量を用いて、(CaO)、(REM)を計算すればよい。多くの場合、SはMnSとCaSとして存在し、マスバランス上、REMと結合したものは少なかった。すなわち、CaはCaSとCaOとして、REMは酸化物として存在することが多かった。特にSが多量の場合は、REMSやREMSが生成した例があった。
酸化物組成は、鋼中のt.[O]によって変化する。そこで、t.[O]別にデータ整理すると、アスペクト比>3.0の延伸介在物個数を10個/mm以下に防止できる条件(以降、生成防止条件と記載)を明確化できることを見出した(図2)。図中記号は図1と同様、○:アスペクト比>3.0の延伸介在物個数≦10個/mm(生成防止範囲)、△:アスペクト比>3.0の延伸介在物個数>10個/mmを示す。生成防止条件(境界線)は、[REM]に応じて、領域I、領域II、領域IIIの3つの領域に分かれる(図3)。
(領域I)
領域Iは、[REM]<[REM_1]の、[REM]が低い領域である。
まず、[REM]を低い含有量に固定し、[Ca]を増やす場合を考える。当初は、[REM]も[Ca]も低いので、MnSが生成し、圧延時に延伸する。[Ca]の増加につれて、SがCaと結合して、MnSは減少する。一方、Al−CaO−REM系酸化物が生成するが、[REM]が低い場合はAl−CaO系主体である低融点酸化物であるので、圧延時に延伸する。MnSが減る一方、低融点酸化物が生成するので、[Ca]が低い場合は、延伸介在物の合計量は大きくは減少しない。[Ca]を更に増加すると酸化物融点が上昇して、酸化物の延伸度が次第に減少し、式で規定された下限[Ca]以上を含有すると延伸する酸化物数が基準以下となる。
次に、[REM]を上記よりも増やした場合を考える。[Ca]増加につれて、SがCaと結合して、MnSは減少する点は同様である。一方、Al−CaO−REM系酸化物の融点は、領域Iでは[REM]が増えても(したがって、Al−CaO−REM系酸化物に含まれる(REM)が増えても)、それほど変化しない。したがって、境界線の傾きは比較的小さい。
このようにして、領域Iでは、式(8)で規定される下限[Ca]以上を含有すると、MnSを十分に低減でき、かつ、酸化物の組成は、式(11)と式(12)を同時に満たしているので、低融点酸化物の組成となることを回避でき、圧延時の延伸を防止できる。
式(8)を満たさない場合、MnSを十分に低減できなかったり、式(11)、(12)の少なくとも一方を満たさないAl−CaO−REM系の低融点酸化物が生成したりするので、これらが圧延時に容易に延伸し、アスペクト比>3.0となる介在物が多く発生して、継目無鋼管用鋼材の靭性が劣位となる。
(領域II)
領域IIは、[REM_1]≦[REM]<[REM_2]の範囲であり、式(9)で規定される下限[Ca]が、[REM]増加につれて低下する。低下する傾きは、領域Iより大きい。これは、[REM]が増えて、酸化物中の(REM)が増加するほど、Al−CaO−REM系酸化物の融点が比較的大きく上昇して、延伸しにくくなるためである。
領域IIで、式(9)で規定される下限[Ca]以上を含有すると、MnSを十分に低減でき、かつ、酸化物の組成は、式(11)、(12)を満たす。
式(9)を満たさない場合、MnSを十分に低減できなかったり、式(11)、(12)の少なくとも一方を満たさないAl−CaO−REM系の低融点酸化物が生成したりするので、これが圧延時に容易に延伸し、アスペクト比>3.0となる介在物が多く発生して、継目無鋼管用鋼材の靭性が劣位となる。
(領域III)
領域IIIは、[REM_2]≦[REM]≦0.0050%の範囲であり、式(10)で規定される下限[Ca]が、領域Iや領域IIに比べて低位で、[REM]に依らずに一定した領域である。[REM_2]≦[REM]では、式(11)で計算されるAl−CaO−REM系酸化物中の(Al)が40%以下に低下するため、融点が高く、圧延時に延伸し難い。高[REM]なので、式(12)も同時に満たされる。そのため、MnS防止に必要な[Ca]が、この領域の下限[Ca]である。この領域では、高[REM]なので、鋼中のt.[O]は主にREM(およびAl)に結合し、Sと結合する有効[Ca]は十分なので、下限[Ca]は[REM]に依らず一定である。
領域IIIで、下限[Ca]以上を含有すると、MnSを十分に低減でき、かつ、酸化物の組成は、式(11)、(12)を満たすので、高融点であり、圧延時に延伸し難い。
領域IIIにおいて、式(10)を満たさない場合、MnSを十分に防止できないので、圧延時にアスペクト比>3.0に延伸したMnSが継目無鋼管用鋼材中に残存し、継目無鋼管用鋼材の靭性が劣位となる。
図2(a)〜(d)から、領域I〜IIIを分ける[REM_1]、[REM_2]、各領域の境界(下限)[Ca]を、[Al]、[S]、t.[O]の回帰式を求め、上述の式(1)〜(10)を規定した。
次に、アスペクト比>3.0である延伸介在物個数密度とシャルピー衝撃値の関係を、図4に示す。延伸介在物が10個/mmを超えると衝撃値が急激に低減し、基準値80(J/cm)を下回る。そして、延伸介在物個数は、図5に示すように、円相当径≧1.0μmの介在物個数と相関がある。これは、全ての介在物個数(の指数としての円相当径≧1.0μmの介在物個数)が少ない場合には、全体的に介在物サイズ分布が、小サイズ側にシフトするため、圧延時にアスペクト比>3.0を超えて延伸する低融点酸化物が減少するためと考えられる。圧延後に延伸した介在物を観察すると、介在物の円相当径、すなわち体積が小さいものは、体積が大きいものより、アスペクト比が小さい傾向がある。この理由は、圧延後の介在物の厚みが、無限に薄くなるのではなく、ある程度の厚み、例えば0.1μm程度に収束するためと考えられる。圧延後の厚みに下限があるので、体積保存を前提とすれば、体積が大きいものほど延伸し、アスペクト比が大きくなると考えられる。すなわち、低融点組成で、かつ、圧延前サイズが粗大なものほど、圧延時にアスペクト比>3.0となる介在物が増加すると解釈できる。
このように、介在物組成を制御し、介在物のサイズや個数を低減することによって、破壊起点となる有害なアスペクト比>3.0の延伸介在物を低減することができる。このため、本実施形態では、円相当径1.0μm以上の介在物個数密度を100個/mm以下に規定している。
なお、本実施形態に係る継目無鋼管用鋼材では、粒径(形状が略球状の介在物の場合)または長径(球状でない介在物の場合)が1.0μm以上の介在物のみを考慮する。粒径または長径が1.0μm未満の介在物は、たとえ鋼中に含まれていても、継目無鋼管用鋼材の靭性に与える影響が小さいので、本実施形態ではこのような介在物を考慮しない。また、上記した長径とは、観察面上の介在物の断面輪郭での、隣り合わない各頂点を結ぶ線分のうちの最大長となる線分と定義する。同様に、上記した短径とは、観察面上の介在物の断面輪郭での、隣り合わない各頂点を結ぶ線分のうちの最小長となる線分と定義する。以降、「粒径(形状が略球状の介在物の場合)または長径(球状でない介在物の場合)」との記載を「粒径または長径」と略す場合がある。
ここで、本実施形態では、特にt.[O]に応じて、[Ca]や[REM]をはじめとする鋼中成分を制御することにより、ひいては介在物組成を制御することを重要視している。
式(1)〜(10)に示す通り、t.[O]をはじめ、t.[Al]、[S]に応じて、[REM]と下限[Ca]の適正な組み合わせ条件が決まる。したがって、[REM]と[Ca]を添加する以前に、t.[O]、t.[Al]、[S]が判明していれば、[REM]と[Ca]の目標範囲を正確に設定できる。しかし、数分を争う、効率的な操業が常に求められる製造現場では、必要な全ての成分、特にt.[O]が操業中に判明することは困難であることが多い。
そこで、実操業で本発明を実施するための現実的な方策として、従来の操業結果に基づき、t.[O]をはじめとする成分の変動をあらかじめ考慮して、[REM]や[Ca]の目標範囲を設定することができる。可能な限り類似した鋼種で、できるだけ多くの既存の操業実績を集めることで、それぞれの成分範囲を、変動幅を含めて、予測することが現実に十分可能である。
以下では、t.[O]を例に説明する。ある鋼種で、かなり高い確率で、t.[O]=α〜βの範囲に収まることが分かったとする。t.[O]=αの場合と、βの場合とで、[REM]と[Ca]の組合せ条件を、それぞれ計算できる。この二条件で共通する[REM]や[Ca]の範囲を、実操業の目標範囲とすれば良い。t.[O]の変動幅を広く想定するほど、すなわちαとβの差を大きく考えるほど、実際の濃度がα〜βの間に収まる確率は高くなる。一方で、αとβの二条件で共通する、[REM]や[Ca]の範囲は狭まる。したがって、成分変動をあまりに広く想定すると、[REM]や[Ca]が目標範囲に的中しにくくなってしまう。このため、成分の変動幅を狭める対策は、[REM]や[Ca]の目標範囲を広げ、操業を容易にするために有効である。t.[O]の変動は、介在物浮上を促進するための二次精錬処理後の撹拌時間の延長や、溶鋼の静置時間の延長などが考えられる。
以上、t.[O]の変動を例に説明したが、他の成分でも変動範囲について同様に考えて、[REM]や[Ca]の目標範囲を設定することができる。
次に、本実施形態に係る継目無鋼管用鋼材の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係る継目無鋼管用鋼材は、一般的な鋼材と同様に、例えば高炉溶銑を原料とし、転炉精錬や二次精錬を行って製造した溶鋼を、連続鋳造によって鋳片とした後、中心部を穿孔し、必要に応じ熱処理を行って継目無鋼管を製造することができる。その際、転炉における脱炭処理の後、取鍋での二次精錬で、鋼の成分調整とともに、Ca及びREMの添加による介在物制御を行う。なお、高炉溶銑のほか、鉄スクラップを原料として電気炉で溶解した溶鋼を原料として用いても良い。
CaおよびREMは、他の含有元素の成分を調整し、さらに、Al脱酸により生じるAlを溶鋼から浮上させてから、添加すると良い。Alが溶鋼中に多量に残存していると、CaやREMがAlを還元するので、その分、消費される。そのため、Sの固定に使われるCaおよびREMの含有量が減少し、MnSの生成を十分に防止出来なくなる。
Caは、蒸気圧が高いので、歩留を上げるために、Ca−Si合金、Fe―Ca−Si合金、あるいはCa−Ni合金等として添加するのがよい。これらの合金添加のために、これら合金から構成される合金ワイヤーを用いてもよい。REMは、Fe−Si−REM合金、およびミッシュメタル等の形で添加すればよい。ミッシュメタルとは希土類元素の混合物であり、具体的には、Ceを40〜50%程度、Laを20〜40%程度含有することが多い。例えば、Ce45%、La35%、Nd9%、Pr6%、他不純物からなるミッシュメタルなどが入手できる。
Ca及びREMの添加順序は特に制限されるものではない。しかし、REM添加後にCa添加すると、介在物のサイズが小さくなる傾向が見られる。従って、REM添加後にCaを添加するのが好ましい。
Al脱酸後にAlが生成し、一部がクラスター化する。次に、REMあるいはCaを添加するが、REMをCaよりも先に添加すると、REM添加時にAlクラスターの一部が還元・分解され、クラスターのサイズを低減できる。一方、CaをREMよりも先に添加すると、AlがCaO−Al系介在物に改質され、この介在物は低融点であり、溶鋼中で液相なので容易に凝集して粗大なCaO−Al系介在物となってしまうおそれがある。このため、REM添加後にCa添加することが好ましい。
ここで、Alを添加した際に生成したAlを十分に浮上させるため、Al添加後に5分以上保持することが好ましい。次に、REMを添加する。このとき、REMが均一に混合するように3分以上保持することが好ましい。そして、REMが均一に混合した状態で、Caを添加することが好ましい。
以上のようにして、本実施形態である継目無鋼管用鋼材が製造される。
以上のような構成とされた本実施形態である継目無鋼管用鋼材によれば、t.[O]を考慮して、REMとCaの関係を規定していることから、CaやREMが酸化物を形成しても、Sと結合するCaやREM量が確保され、MnS系介在物を低減することが可能となる。
また、鋼中の[Ca]、[REM]、t.[Al]、t.[O]、[S]の各量の関係を上述のように規定しているので、介在物中のAlの含有率を低減でき、低融点酸化物の生成を抑制することが可能となる。さらに、CaとREMを複合添加し、酸化物の主要組成を、REMを含有する三元系であるAl−CaO−REM系とすることで、圧延時の破砕性が増し、圧延後のサイズが微細化するので、有害性を低減できる。
さらに、円相当径1.0μm以上の介在物個数密度を100個/mm以下に規定しているので、破壊の起点となる介在物の個数が十分に低減されている。
よって、造管時ならびに使用時におけるクラック等の発生が抑制された高品位な継目無鋼管として使用可能な、靭性に優れた継目無鋼管用鋼材を提供することができる。
また、本実施形態である継目無鋼管用鋼材において、Cu:0%以上0.05%以下、Nb:0%以上0.05%以下、V:0%以上0.10%以下、Ni:0%以上0.10%以下、B:0%以上0.0050%以下、からなる群から選択される一種又は二種以上を含む場合には、要求特性に応じて、継目無鋼管用鋼材の様々な特性を向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態である継目無鋼管用鋼材において、内部に存在する介在物における各化合物MXの質量比を(MX)とした場合に、上述の(11)式と(12)式を満足する場合には、延伸介在物の個数をさらに低減することが可能となる。
以上、本発明の実施形態である継目無鋼管用鋼材について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、実施形態では、本発明の継目無鋼管用鋼材を製造する継目無鋼管用鋼材の製造方法の一例を示したが、これに限定されることはなく、他の製造方法を適用してもよい。
また、本実施形態では、油井管やラインパイプに用いることができる継目無鋼管としての使用を想定したものとして説明したが、用途はこれらに限定するものではない。
さらに、本実施形態では、上述のように、継目無鋼管用鋼材に含有される成分と介在物を規定しているが、金属組織は特に規定しないので、適宜、加工熱処理して、金属組織を作り分けできる。その際、本実施形態で規定する介在物組成は変わらないため、加工熱処理したものであっても有効である。
以下に、本発明の効果を確認すべく、実施した実験結果について説明する。
高炉溶銑を原料とし、溶銑予備処理、転炉における脱炭処理の後、取鍋精錬で成分調整を行って溶鋼250トンを溶製した。取鍋精錬では、まずAlを添加して脱酸を行い、次にTiなどのその他の元素の成分を調整した後、Al脱酸で生じたAlを浮上させるため5分間以上保持した後に、REMを添加し、均一に混合するために3分間保持してから、Caを添加した。REMはミッシュメタルを用いた。このミッシュメタルに含まれるREM元素は、Ce50%、La25%、Nd10%であり、残部が不純物であった。よって、得られる鋼板に含まれる各REM元素の比率は、上記した各REM元素の比率とほぼ同一となった。Caは蒸気圧が高いため、歩留を上げるためにCa−Si合金を添加した。
精錬後の上記溶鋼を、丸断面形状鋳型に注入して連続鋳造し、分塊圧延して、ビレット(圧延素材)を製造した。ビレットを加熱し、熱間での穿孔、延伸圧延による造管加工を行い、外径約340mm×肉厚約16mmの継目無鋼管を製造した。得られた鋼管を、950℃に加熱して水焼入れした後、成分に応じて550〜650℃の範囲で焼き戻し処理して、鋼管の強度を揃えるようにした。
得られた継目無鋼管用鋼材について、介在物の組成と変形挙動(圧延後の長径/短径の比;アスペクト比)とを調査した。光学顕微鏡を用いて、圧延方向と鋼管肉厚方向とに平行な断面を観察面として、光学顕微鏡により倍率400倍(ただし、介在物形状を詳細に測定する際は倍率1000倍)で60視野観察した。各観察視野で、粒径(形状が球状の介在物の場合)または長径(球状でない介在物の場合)が1.0μm以上の介在物を観察し、それらの介在物を、アスペクト比3.0を基準に分類した。アスペクト比>3.0の介在物個数密度が、10個/mmを超えた試料を「劣位」、10個/mm以下を「良好」と評価した。
また、粒径(形状が球状の介在物の場合)または長径(球状でない介在物の場合)が1.0μm以上である代表的な介在物10個をランダムに選択し、各介在物の断面全体の平均組成をSEMに付属したEDX装置を用いて分析し、10個の平均組成を求めた。
各介在物の組成として、例えば介在物中心部の組成で代表させるのではなく、断面全体の平均組成を測定したのは、例えば単独MnSの様に組成が均一な介在物より、Al−CaO−REM系酸化物の周囲の一部にMnSやCaSが付着する場合のように、複数の相が共存している場合が多いためである。この様な介在物の平均組成は、介在物全断面をEDX分析範囲に含めて分析すれば求めることができる。あるいは、それぞれの介在物相ごとに、点分析を行い、SEM像から求まるそれぞれの相の面積率を乗じて平均組成を算出しても良い。
そして、上記で得られた継目無鋼管用鋼材の靭性の指標として、0℃におけるシャルピー衝撃値を測定した。フルサイズ試験片を、鋼管の長手(圧延)方向と直交する方向から採取した(T方向試験片)。すなわち、試験片長さ55mmを鋼管の周方向から、試験片高さを鋼管長手(圧延)方向に10mm、試験片幅を鋼管肉厚方向に10mmとして採取した。55mm長さ×肉厚方向10mm幅の面に、2mmVノッチを加工した。この方向で試験片を採取すると、鋼管のL断面(圧延方向と鋼管肉厚方向とに平行な断面)が破断面となるので、延伸介在物の影響を評価し易い。鋼板中に、割れ起点となる介在物、特に圧延方向に延伸した介在物が少ないほど、シャルピー吸収エネルギー(衝撃値)(J/cm)は向上する。
Figure 2020084250
Figure 2020084250
Figure 2020084250
Figure 2020084250
No.51〜55は比較例である。
No.51は、式(1)から、[REM]<[REM_1]であり、領域Iであるが、[Ca]は式(8)を満たしていない。そのため、MnSを十分に低減できず、延伸介在物個数は10個/mmを超え、円相当径1.0μm以上の介在物個数が100個/mmを超え、衝撃値は基準値80J/cmに未達であった。
No.52は、式(1)および(2)から、[REM_1]≦[REM]<[REM_2]であり、領域IIであるが、[Ca]は式(9)を満たしていない。そのため、MnSが十分に低減せず、延伸介在物個数は10個/mmを超え、円相当径1.0μm以上の介在物個数が100個/mmを超え、衝撃値は基準値80J/cmに未達であった。
No.53は、式(2)から、[REM_2]≦[REM]<0.0050%であり、領域IIIであるが、[Ca]は式(10)を満たしていない。そのため、MnSが十分に低減せず、延伸介在物個数は10個/mmを超え、円相当径1.0μm以上の介在物個数が100個/mmを超え、衝撃値は基準値80J/cmに未達であった。
No.54は、REMを添加せず、Caを単独添加した例である。介在物中にREMが含まれず式(12)を満たさなかったので、Al−CaO系の低融点酸化物が生成し、造管時に延伸した。その結果、延伸介在物個数は10個/mmを超えるとともに、円相当径1.0μm以上の介在物個数が100個/mmを超えており、衝撃値は基準値80J/cmに未達であった。
No.55は、[REM]=0.0002%であり、下限値0.0003%未満である。そのため、介在物中の(REM)が少なく、式(12)を満たさなかったので、延伸介在物個数は10個/mmを超えるとともに、円相当径1.0μm以上の介在物個数が100個/mmを超えており、衝撃値は基準値80J/cmに未達であった。
これに対して、式(1)〜(10)で規定される成分条件を満たした本発明例No.1〜29は、延伸介在物個数が10個/mm以下であり、円相当径1.0μm以上の介在物個数が100個/mm以下であった。そして、介在物の平均組成は、式(11)と(12)を満たしていた。その結果、衝撃値(シャルピー吸収エネルギー)は基準値80J/cm以上であり、良好な材質であった。
以上のことから、本発明によれば、MnS、および低融点酸化物のいずれも含めて、延伸介在物の生成を防止でき、かつ、円相当径が1.0μm以上である介在物の個数密度が100個/mm以下である、清浄性や靭性に優れた継目無鋼管として使用できる継目無鋼管用鋼材を製造することができた。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.20%以上0.34%未満、
    Si:0.15%以上0.40%以下、
    Mn:0.30%以上1.50%未満、
    Al:0.003%以上0.050%以下、
    Ti:0%以上0.060%以下、
    Cr:0%以上1.50%以下、
    Mo:0%以上1.0%以下、
    Ca:0.0003%以上0.0050%以下、
    REM:0.0003%以上0.0050%以下、
    を含有し、残部が鉄及び不純物からなり、前記不純物のうちP,S,O,Nを、
    P:0.020%以下、
    S:0.0050%以下、
    O:0.0050%以下、
    N:0.0075%以下、
    に制限し、
    鋼中の各成分元素Mの質量比を[M]で表示した場合に、[REM]を以下の(1)式で示す第1閾値[REM_1]、及び、(2)式で示す第2閾値[REM_2]によって3つの領域に区別し、それぞれの領域において、鋼中のCa量[Ca]が、以下の(3)式に示すa1、(4)式に示すb1、(5)式に示すa2、(6)式に示すb2、(7)式に示すb3を用いて、以下の(8)式、(9)式、(10)式を満足するとともに、
    鋼中に含まれる円相当径が1.0μm以上の介在物の個数密度が100個/mm以下であることを特徴とする継目無鋼管用鋼材。
    (1)式:[REM_1]=0.400×[S]−0.0006
    (2)式:[REM_2]=0.005×[Al]+0.300×[S]+1.590×[O]−0.0014
    (3)式:a1=5.000×[Al]−35.714×[S]−29.870×[O]−0.0675
    (4)式:b1=−0.005×[Al]+0.400×[S]+1.155×[O]−0.0007
    (5)式:a2=2.143×[Al]+53.571×[S]+31.169×[O]−1.0471
    (6)式:b2=−0.002×[Al]+0.618×[S]+1.100×[O]−0.0010
    (7)式:b3=0.475×[S]−0.0005
    (8)式:[REM]<[REM_1]の場合、[Ca]≧a1×[REM]+b1
    (9)式:[REM_1]≦[REM]<[REM_2]の場合、[Ca]≧a2×[REM]+b2
    (10)式:[REM_2]≦[REM]≦0.0050%の場合、[Ca]≧b3
  2. さらに、質量%で、
    Cu:0%以上0.05%以下、
    Nb:0%以上0.05%以下、
    V:0%以上0.10%以下、
    Ni:0%以上0.10%以下、
    B:0%以上0.0050%以下、
    からなる群から選択される一種又は二種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の継目無鋼管用鋼材。
  3. 内部に存在する介在物における各化合物MXの質量比を(MX)とした場合に、以下の(11)式及び(12)式の両方を満足することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の継目無鋼管用鋼材。
    (11)式:(Al)/{(Al)+(CaO)+(REM)}≦0.40
    (12)式:(REM)/{(Al)+(CaO)+(REM)}≧0.05
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