JP2020082575A - 防汚性フィルム及び重合性組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐擦性に優れ、防汚性が長期間高く維持される防汚性フィルムを提供する。【解決手段】 基材と、基材の表面上に配置され、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層と、を備える防汚性フィルムであって、重合体層は、重合性組成物の硬化物であり、重合性組成物は、有効成分換算で、重合性モノマーを75〜95重量%、フッ素及びエステル含有ウレタンアクリレートを2.5〜12.5重量%、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマーを2.5〜9重量%含有し、重合性モノマーは、エチレンオキサイド基を有する2官能アクリレートと、エチレンオキサイド基を有さない多官能アクリレートと、を含み、パーフルオロアルキル系モノマー中のフッ素原子濃度は、50〜60重量%であり、重合性組成物中のエチレンオキサイド基濃度は、20〜50重量%である。【選択図】 図1
Description
本発明は、防汚性フィルム及び重合性組成物に関する。
反射防止性を有する光学フィルムは、種々検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特に、ナノメートルサイズの凹凸構造(ナノ構造)を有する光学フィルムは、優れた反射防止性を有することが知られている。このような凹凸構造によれば、空気層から基材にかけて屈折率が連続的に変化するために、反射光を劇的に減少させることができる。一方、反射防止性を有するものではないが、耐擦性を有するものとして、光学フィルム用途のハードコートフィルムが検討されている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、ナノメートルサイズの凹凸構造を有する光学フィルムにおいては、優れた反射防止性を有する一方で、その表面の凹凸構造のために、指紋(皮脂)等の汚れが付着すると、付着した汚れが広がりやすく、更に、凸部間に入り込んだ汚れを拭き取ることが困難となることがあった。また、付着した汚れは、その反射率が光学フィルムの反射率と大きく異なるため、視認されやすかった。そのため、ナノメートルサイズの凹凸構造を表面に有し、汚れに対する拭き取り性(例えば、指紋拭き取り性)、すなわち、防汚性に優れた機能性フィルム(防汚性フィルム)が求められていた。
これに対して、本発明者らが検討したところ、光学フィルムの凹凸構造を構成する重合体層において、その構成成分としてフッ素系化合物を配合すれば、防汚性が高まることが分かった。
しかしながら、本発明者らが更に検討したところ、重合体層の構成成分によっては、防汚性が初期の段階では高いものの、時間経過に伴って低下しやすくなることが分かった。これに対して、上記特許文献1〜3に記載の発明では、防汚性を長期間高く維持する点で改善の余地があった。
一方、上記特許文献4に記載の発明では、ハードコート層の構成成分としてフッ素系化合物が配合されているが、上述したような凹凸構造を構成する重合体層に適用されたものではなく、この配合だけでは防汚性を長期間高く維持する点で改善の余地があった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐擦性に優れ、防汚性が長期間高く維持される防汚性フィルムと、上記防汚性フィルムの重合体層を構成可能な重合性組成物と、を提供することを目的とするものである。
本発明の一態様は、基材と、上記基材の表面上に配置され、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層と、を備える防汚性フィルムであって、上記重合体層は、重合性組成物の硬化物であり、上記重合性組成物は、有効成分換算で、重合性モノマーを75〜95重量%、フッ素及びエステル含有ウレタンアクリレートを2.5〜12.5重量%、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマーを2.5〜9重量%含有し、上記重合性モノマーは、エチレンオキサイド基を有する2官能アクリレートと、エチレンオキサイド基を有さない多官能アクリレートと、を含み、上記パーフルオロアルキル系モノマー中のフッ素原子濃度は、50〜60重量%であり、上記重合性組成物中のエチレンオキサイド基濃度は、20〜50重量%である、防汚性フィルムであってもよい。
本発明の別の一態様は、有効成分換算で、重合性モノマーを75〜95重量%、フッ素及びエステル含有ウレタンアクリレートを2.5〜12.5重量%、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマーを2.5〜9重量%含有し、上記重合性モノマーは、エチレンオキサイド基を有する2官能アクリレートと、エチレンオキサイド基を有さない多官能アクリレートと、を含み、上記パーフルオロアルキル系モノマー中のフッ素原子濃度は、50〜60重量%であり、エチレンオキサイド基濃度は、20〜50重量%である、重合性組成物であってもよい。
本発明によれば、耐擦性に優れ、防汚性が長期間高く維持される防汚性フィルムと、上記防汚性フィルムの重合体層を構成可能な重合性組成物と、を提供することができる。
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。また、実施形態の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
本明細書中、「X〜Y」は、「X以上、Y以下」を意味する。
[実施形態]
実施形態の防汚性フィルムについて、以下に説明する。図1は、実施形態の防汚性フィルムを示す断面模式図である。図2は、図1中の重合体層を示す斜視模式図である。
実施形態の防汚性フィルムについて、以下に説明する。図1は、実施形態の防汚性フィルムを示す断面模式図である。図2は、図1中の重合体層を示す斜視模式図である。
防汚性フィルム1は、基材2と、基材2の表面上に配置される重合体層3と、を有している。
<基材>
基材2の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルメタクリレート(MMA)、等の樹脂が挙げられる。基材2は、上記材料に加えて、可塑剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
基材2の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルメタクリレート(MMA)、等の樹脂が挙げられる。基材2は、上記材料に加えて、可塑剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
基材2の表面(重合体層3側の表面)には易接着処理(例えば、プライマー処理)が施されていてもよく、例えば、易接着処理が施されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることができる。また、基材2の表面(重合体層3側の表面)にはケン化処理が施されていてもよく、例えば、ケン化処理が施されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることができる。
防汚性フィルム1が偏光板を有する表示装置(例えば、液晶表示装置)に取り付けられるものである場合、基材2は、偏光板の一部を構成するものであってもよい。
基材2の厚みは、透明性及び加工性を確保する観点から、好ましくは50〜100μmである。
<重合体層>
重合体層3は、複数の凸部(突起)4が可視光の波長(780nm)以下のピッチ(隣接する凸部4の頂点間の距離)Pで設けられる凹凸構造、すなわち、モスアイ構造(蛾の目状の構造)を表面に有している。よって、防汚性フィルム1は、モスアイ構造による優れた反射防止性(低反射性)を示すことができる。
重合体層3は、複数の凸部(突起)4が可視光の波長(780nm)以下のピッチ(隣接する凸部4の頂点間の距離)Pで設けられる凹凸構造、すなわち、モスアイ構造(蛾の目状の構造)を表面に有している。よって、防汚性フィルム1は、モスアイ構造による優れた反射防止性(低反射性)を示すことができる。
重合体層3の厚みTは、後述する重合性組成物に配合されるフッ素系化合物中のフッ素原子を重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在させる観点から、小さいことが好ましい。具体的には、重合体層3の厚みTは、好ましくは5〜20μm、より好ましくは8〜12μmである。
複数の凸部4の形状としては、例えば、柱状の下部と半球状の上部とによって構成される形状(釣鐘状)、錐体状(コーン状、円錐状)、等の、先端に向かって細くなる形状(テーパー形状)が挙げられる。図1中、隣接する凸部4の間隙の底辺は傾斜した形状となっているが、傾斜せずに水平な形状であってもよい。
複数の凸部4の平均ピッチは、モアレ、虹ムラ等の光学現象の発生を充分に防止する観点から、好ましくは100〜400nm、より好ましくは100〜200nmである。複数の凸部4の平均ピッチは、具体的には、走査型電子顕微鏡で撮影された平面写真の1μm角の領域内における、すべての隣接する凸部のピッチ(図1中のP)の平均値を指す。
複数の凸部4の平均高さは、後述する複数の凸部4の好ましい平均アスペクト比と両立させる観点から、好ましくは50〜600nm、より好ましくは100〜300nmである。複数の凸部4の平均高さは、具体的には、走査型電子顕微鏡で撮影された断面写真における、連続して並んだ10個の凸部の高さ(図1中のH)の平均値を指す。但し、10個の凸部を選択する際は、欠損や変形した部分(測定用試料を準備する際に変形させてしまった部分等)がある凸部を除く。
複数の凸部4の平均アスペクト比は、好ましくは0.8〜1.5、より好ましくは1.0〜1.3である。複数の凸部4の平均アスペクト比が0.8よりも小さい場合、モアレ、虹ムラ等の光学現象の発生を充分に防止することができず、優れた反射防止性が得られないことがある。複数の凸部4の平均アスペクト比が1.5よりも大きい場合、凹凸構造の加工性が低下し、スティッキングが発生したり、凹凸構造を形成する際の金型の転写具合が悪化したりする(金型が詰まったり、巻き付いてしまう、等)ことがある。複数の凸部4の平均アスペクト比は、上述した複数の凸部4の平均高さと平均ピッチとの比(高さ/ピッチ)を指す。
複数の凸部4は、ランダムに配置されていても、周期的(規則的)に配置されていてもよい。複数の凸部4が周期的に配置されている場合、その周期性に起因する不要な回折光が発生することがあるため、複数の凸部4は、図2に示すようにランダムに配置されていることが好ましい。
重合体層3は、重合性組成物の硬化物である。重合体層3としては、例えば、活性エネルギー線硬化性の重合性組成物の硬化物(光重合性組成物の硬化物)、熱硬化性の重合性組成物の硬化物、等が挙げられる。本明細書中、「活性エネルギー線」は、紫外線、可視光線、赤外線、プラズマ、等を意味する。重合体層3は、活性エネルギー線硬化性の重合性組成物の硬化物であることが好ましく、中でも、紫外線硬化性の重合性組成物の硬化物であることがより好ましい。
重合体層3を構成する重合性組成物は、重合性モノマー(R)と、フッ素及びエステル含有ウレタンアクリレート(S)と、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマー(T)と、を含有している。本明細書中、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
(重合性モノマー(R))
重合性モノマー(R)は、光、熱等の外部エネルギーによって他の成分と反応する重合性官能基(例えば、アクリロイル基)を有し、かつ、フッ素原子を有さないモノマーである。
重合性モノマー(R)は、光、熱等の外部エネルギーによって他の成分と反応する重合性官能基(例えば、アクリロイル基)を有し、かつ、フッ素原子を有さないモノマーである。
重合性組成物は、有効成分換算で、重合性モノマー(R)を75〜95重量%、好ましくは85〜91重量%含有している。重合性組成物中の重合性モノマー(R)の含有率が有効成分換算で75重量%よりも低い場合、重合体層3が硬くなり、防汚性フィルム1の耐擦性が低下する。重合性組成物中の重合性モノマー(R)の含有率が有効成分換算で95重量%よりも高い場合、重合体層3の架橋密度が高まらず、防汚性フィルム1の耐擦性が低下する。このように防汚性フィルム1の耐擦性が低下する場合、例えば、不織布等の軟らかいもので重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)を擦ると、複数の凸部4が起き上がらず、擦られた部分は、擦られなかった部分との反射率の違いにより白化して見える。重合性組成物が複数種の重合性モノマー(R)を含有する場合、複数種の重合性モノマー(R)の含有率の合計が有効成分換算で75〜95重量%であればよい。
本明細書中、重合性組成物の「有効成分」は、硬化後に重合体層の構成成分となるものであり、硬化反応(重合反応)に寄与しない成分(例えば、溶剤)を除いたものを意味する。
重合性モノマー(R)は、エチレンオキサイド基を有する2官能アクリレート(R1)と、エチレンオキサイド基を有さない多官能アクリレート(R2)と、を含んでいる。本明細書中、「多官能アクリレート」は、アクリロイル基を1分子当たり2個以上有するアクリレートを意味する。つまり、「2官能アクリレート」は、アクリロイル基を1分子当たり2個有するアクリレートを意味する。
重合性組成物に多官能アクリレートが配合されることによって、重合体層3の架橋密度が高まり、適度な弾性(硬度)が付与されるため、防汚性フィルム1の耐擦性が高まる。本発明者らの検討によれば、その多官能アクリレートにエチレンオキサイド基(ソフトセグメント)が導入されることによって、耐擦性がより高まることが分かっている。しかしながら、エチレンオキサイド基の導入によって多官能アクリレートの分子量が増加すると、重合性組成物中の他の成分(例えば、フッ素系化合物)との相溶性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)ことがある。これに対して、本実施形態では、多官能アクリレート(R2)を配合することによって耐擦性をある程度確保しつつ、分子量が比較的小さい2官能アクリレートにエチレンオキサイド基が導入された2官能アクリレート(R1)を更に配合することによって、重合性組成物中の他の成分(例えば、フッ素系化合物)との相溶性を確保しつつ、耐擦性をより高めている。
重合性組成物は、有効成分換算で、2官能アクリレート(R1)を、好ましくは35〜75重量%含有している。重合性組成物中の2官能アクリレート(R1)の含有率が有効成分換算で35重量%よりも低い場合、重合体層3が硬くなり、防汚性フィルム1の耐擦性が低下することがある。重合性組成物中の2官能アクリレート(R1)の含有率が有効成分換算で75重量%よりも高い場合、重合体層3の架橋密度が高まらず、防汚性フィルム1の耐擦性が低下することがある。重合性組成物が複数種の2官能アクリレート(R1)を含有する場合、複数種の2官能アクリレート(R1)の含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。
2官能アクリレート(R1)としては、例えば、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、等が挙げられる。
ポリエチレングリコール(200)ジアクリレートの公知例としては、MIWON社製の「MIRAMER(登録商標) M282」等が挙げられる。ポリエチレングリコール(400)ジアクリレートの公知例としては、MIWON社製の「MIRAMER M280」等が挙げられる。
多官能アクリレート(R2)の官能基数は、2個以上であり、好ましくは3〜6個である。本明細書中、「多官能アクリレートの官能基数」は、1分子当たりのアクリロイル基の個数を意味する。多官能アクリレート(R2)の官能基数が6個よりも多い場合、分子量の増加に伴って、重合性組成物中の他の成分(例えば、フッ素系化合物)との相溶性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)ことがある。また、重合体層3の架橋密度が高まり過ぎて、フッ素系化合物中のフッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在しにくくなり、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持されないことがある。
重合性組成物は、有効成分換算で、多官能アクリレート(R2)を、好ましくは5〜45重量%含有している。重合性組成物中の多官能アクリレート(R2)の含有率が有効成分換算で5重量%よりも低い場合、重合体層3が硬くなり、防汚性フィルム1の耐擦性が低下することがある。重合性組成物中の多官能アクリレート(R2)の含有率が有効成分換算で45重量%よりも高い場合、重合体層3の架橋密度が高まらず、防汚性フィルム1の耐擦性が低下することがある。重合性組成物が複数種の多官能アクリレート(R2)を含有する場合、複数種の多官能アクリレート(R2)の含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。
多官能アクリレート(R2)としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ウレタンアクリレート、等が挙げられる。
トリメチロールプロパントリアクリレートの公知例としては、MIWON社製の「MIRAMER M300」等が挙げられる。ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの公知例としては、MIWON社製の「MIRAMER M600」等が挙げられる。ウレタンアクリレートの公知例としては、新中村化学工業社製の「U−10HA」等が挙げられる。
重合性モノマー(R)は、単官能アミドモノマーを更に含んでいてもよい。本明細書中、「単官能アミドモノマー」は、アミド基を有し、かつ、アクリロイル基を1分子当たり1個有するモノマーを意味する。
重合性組成物に単官能アミドモノマーが配合されることによって、フッ素系化合物との相溶性が高まるため、フッ素系化合物中のフッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在しやすくなり、防汚性フィルム1の防汚性が充分に高まる。また、重合性組成物を硬化させる際の硬化収縮が抑制され、基材2との凝集力が高まるため、重合体層3と基材2との密着性が高まる。
重合性組成物は、有効成分換算で、単官能アミドモノマーを、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%含有していてもよい。重合性組成物中の単官能アミドモノマーの含有率が有効成分換算で1重量%よりも低い場合、重合体層3と基材2との密着性が充分に高まらないことがある。重合性組成物中の単官能アミドモノマーの含有率が有効成分換算で15重量%よりも高い場合、凹凸構造を形成する際の金型の転写時に、単官能アミドモノマーが金型に浸透して金型の離型性が低下し、結果的に、得られる防汚性フィルム1の防汚性が充分に高まらないことがある。また、重合体層3の架橋密度が高まらず、防汚性フィルム1の耐擦性が低下することがある。重合性組成物が複数種の単官能アミドモノマーを含有する場合、複数種の単官能アミドモノマーの含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。
単官能アミドモノマーとしては、例えば、N−アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、等が挙げられる。
N−アクリロイルモルホリンの公知例としては、KJケミカルズ社製の「ACMO(登録商標)」等が挙げられる。N,N−ジメチルアクリルアミドの公知例としては、KJケミカルズ社製の「DMAA(登録商標)」等が挙げられる。N,N−ジエチルアクリルアミドの公知例としては、KJケミカルズ社製の「DEAA(登録商標)」等が挙げられる。N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドの公知例としては、KJケミカルズ社製の「HEAA(登録商標)」等が挙げられる。ダイアセトンアクリルアミドの公知例としては、日本化成社製の「DAAM(登録商標)」等が挙げられる。N−n−ブトキシメチルアクリルアミドの公知例としては、MRCユニテック社製の「NBMA」等が挙げられる。
(ウレタンアクリレート(S))
ウレタンアクリレート(S)は、フッ素原子及びエステル結合を含有するウレタンアクリレート、すなわち、フッ素系化合物の一種である。ウレタンアクリレート(S)中のエステル結合は、アクリロイルオキシ基を有するイソシアネート成分由来のエステル結合、又は、活性水素原子を有するアクリレート成分由来のエステル結合である。ウレタンアクリレート(S)中のアクリロイル基は、光、熱等の外部エネルギーによって他の成分と反応する重合性官能基として機能する。
ウレタンアクリレート(S)は、フッ素原子及びエステル結合を含有するウレタンアクリレート、すなわち、フッ素系化合物の一種である。ウレタンアクリレート(S)中のエステル結合は、アクリロイルオキシ基を有するイソシアネート成分由来のエステル結合、又は、活性水素原子を有するアクリレート成分由来のエステル結合である。ウレタンアクリレート(S)中のアクリロイル基は、光、熱等の外部エネルギーによって他の成分と反応する重合性官能基として機能する。
重合性組成物にウレタンアクリレート(S)が配合されることによって、ウレタンアクリレート(S)由来のフッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在し、重合体層3の表面自由エネルギーが低くなるため、防汚性フィルム1の防汚性が高まる。また、ウレタンアクリレート(S)は、分子量が小さく、エチレンオキサイド基との親和性が低いために、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に移行しやすく、配合量が少なくても防汚性フィルム1の防汚性が高まりやすい。また、ウレタンアクリレート(S)は、アクリロイル基によって重合体層3中で架橋するため、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持される。更に、ウレタンアクリレート(S)には強固なエステル結合が存在するため、防汚性フィルム1の耐擦性が高まりやすい。
ウレタンアクリレート(S)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、好ましくは100〜100000、より好ましくは200〜20000、更に好ましくは300〜2000である。ウレタンアクリレート(S)の重量平均分子量が100よりも小さい場合、ウレタンアクリレート(S)が、フリップフロップ効果によって重合体層3の内部に潜り込んでしまい、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持されないことがある。ウレタンアクリレート(S)の重量平均分子量が100000よりも大きい場合、ウレタンアクリレート(S)が、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在しにくくなり、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持されないことがある。
重合性組成物は、有効成分換算で、ウレタンアクリレート(S)を2.5〜12.5重量%、好ましくは3.5〜10重量%含有している。重合性組成物中のウレタンアクリレート(S)の含有率が有効成分換算で2.5重量%よりも低い場合、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在するフッ素原子の量が少なくなり、防汚性フィルム1の防汚性が低下する。重合性組成物中のウレタンアクリレート(S)の含有率が有効成分換算で12.5重量%よりも高い場合、重合性組成物中の他の成分との相溶性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)。重合性組成物が複数種のウレタンアクリレート(S)を含有する場合、複数種のウレタンアクリレート(S)の含有率の合計が有効成分換算で2.5〜12.5重量%であればよい。
ウレタンアクリレート(S)の公知例としては、上記特許文献4に記載されているように、ダイセル・オルネクス社製の「EBECRYL(登録商標)8110」、DIC社製の「メガファック(登録商標)RS−75」、等が挙げられる。これらの例示したフッ素系化合物は、パーフルオロアルキル系オリゴマーの一種である。本明細書中、「パーフルオロアルキル系オリゴマー」は、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系オリゴマーを意味する。
一方、本実施形態と異なり、例えば、ウレタンアクリレート(S)の代わりにフッ素含有ポリエーテル型ウレタンアクリレートが重合性組成物に配合されると、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持されない。フッ素含有ポリエーテル型ウレタンアクリレートの公知例としては、上記特許文献4に記載されているように、ネオス社製の「フタージェント(登録商標)602A」等が挙げられる。この例示したフッ素系化合物も、上述したウレタンアクリレート(S)の公知例と同様にパーフルオロアルキル系オリゴマーの一種であるが、防汚性フィルム1の防汚性を長期間高く維持させる点で劣る。
(パーフルオロアルキル系モノマー(T))
パーフルオロアルキル系モノマー(T)は、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマー、すなわち、フッ素系化合物の一種である。本明細書中、「パーフルオロアルキル系モノマー」は、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系モノマーを意味する。パーフルオロアルキル系モノマー(T)中の(メタ)アクリロイル基は、光、熱等の外部エネルギーによって他の成分と反応する重合性官能基として機能する。
パーフルオロアルキル系モノマー(T)は、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマー、すなわち、フッ素系化合物の一種である。本明細書中、「パーフルオロアルキル系モノマー」は、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系モノマーを意味する。パーフルオロアルキル系モノマー(T)中の(メタ)アクリロイル基は、光、熱等の外部エネルギーによって他の成分と反応する重合性官能基として機能する。
重合性組成物にパーフルオロアルキル系モノマー(T)が配合されることによって、パーフルオロアルキル系モノマー(T)由来のフッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在し、重合体層3の表面自由エネルギーが低くなるため、防汚性フィルム1の防汚性が高まる。また、パーフルオロアルキル系モノマー(T)は、分子量が小さいために、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に移行しやすく、配合量が少なくても防汚性フィルム1の防汚性が高まりやすい。更に、パーフルオロアルキル系モノマー(T)は、アクリロイル基によって重合性組成物中で架橋するため、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持される。
一方、パーフルオロアルキル系モノマー(T)の代わりに、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり2個以上有するパーフルオロアルキル系モノマーが重合性組成物に配合されると、分子量が大きいために、重合性組成物中の他の成分との相溶性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)。更に、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり2個以上有するパーフルオロアルキル系モノマーは、重合体層3中で主骨格又は分岐部を構成し、架橋構造に取り込まれやすいため、パーフルオロアルキル系モノマー(T)と比較して、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在しにくい。
パーフルオロアルキル系モノマー(T)中のフッ素原子濃度は、50〜60重量%、好ましくは52〜60重量%である。パーフルオロアルキル系モノマー(T)中のフッ素原子濃度が50重量%よりも低い場合、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在するフッ素原子の量が少なくなり、防汚性フィルム1の防汚性が低下する。パーフルオロアルキル系モノマー(T)中のフッ素原子濃度が60重量%よりも高い場合、重合体層3が軟らかくなるために耐擦性が低下し、また、重合性組成物中の他の成分との相溶性が低下するために防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)。
重合性組成物は、有効成分換算で、パーフルオロアルキル系モノマー(T)を2.5〜9重量%、好ましくは3〜7重量%含有している。重合性組成物中のパーフルオロアルキル系モノマー(T)の含有率が有効成分換算で2.5重量%よりも低い場合、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在するフッ素原子の量が少なくなり、防汚性フィルム1の防汚性が低下する。重合性組成物中のパーフルオロアルキル系モノマー(T)の含有率が有効成分換算で9重量%よりも高い場合、重合性組成物中の他の成分との相溶性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)。重合性組成物が複数種のパーフルオロアルキル系モノマー(T)を含有する場合、複数種のパーフルオロアルキル系モノマー(T)の含有率の合計が有効成分換算で2.5〜9重量%であればよい。
パーフルオロアルキル系モノマー(T)としては、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、等が挙げられる。
2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートの公知例としては、ユニマテック社製の「CHEMINOX(登録商標) FAAC−6」等が挙げられる。2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレートの公知例としては、ユニマテック社製の「CHEMINOX FAAC−4」等が挙げられる。2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートの公知例としては、ユニマテック社製の「CHEMINOX FAMAC−6」等が挙げられる。2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレートの公知例としては、ユニマテック社製の「CHEMINOX FAMAC−4」等が挙げられる。1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレートの公知例としては、大阪有機化学工業社製の「ビスコート8F」等が挙げられる。1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートの公知例としては、大阪有機化学工業社製の「ビスコート8FM」等が挙げられる。
重合性組成物中のエチレンオキサイド基濃度は、20〜50重量%、好ましくは25〜45重量%、より好ましくは30〜40重量%である。重合性組成物中のエチレンオキサイド基濃度が20重量%よりも低い場合、重合体層3の架橋密度が高まるとともに極性が低下するため、フッ素系化合物中のフッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在しにくくなり、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持されない。重合性組成物中のエチレンオキサイド基濃度が50重量%よりも高い場合、重合性組成物へのフッ素系化合物の溶解性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)。
本実施形態では、重合体層3を構成する重合性組成物において、ウレタンアクリレート(S)とパーフルオロアルキル系モノマー(T)とをフッ素系化合物として配合し、更に、エチレンオキサイド基濃度を所定の範囲としているため、フッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)により多く偏在し、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持されやすくなる。
重合性組成物は、フッ素系化合物として、ウレタンアクリレート(S)とパーフルオロアルキル系モノマー(T)とを少なくとも含有していればよいが、パーフルオロポリエーテル系オリゴマーを更に含有していてもよい。本明細書中、「パーフルオロポリエーテル系オリゴマー」は、パーフルオロポリエーテル基を有するフッ素系オリゴマーを意味する。
パーフルオロポリエーテル系オリゴマーの公知例としては、ソルベイ社製の「フォンブリン(登録商標)MT70」、信越化学工業社製の「X−27−1203E」、等が挙げられる。
一方、本実施形態と異なり、例えば、ウレタンアクリレート(S)の代わりにパーフルオロポリエーテル系オリゴマーが重合性組成物に配合されると、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持されない。パーフルオロポリエーテル系オリゴマーは、パーフルオロポリエーテル基を有しているため、汚れを想定したものとして防汚性の評価時によく用いられるヘキサデカン及び人工汚染液との親和性が高い。そのため、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)にパーフルオロポリエーテル系オリゴマーが多く偏在してしまうと、その表面に付着したヘキサデカン及び人工汚染液は、時間経過に伴って顕著に濡れ広がってしまう。つまり、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持されない。
重合性組成物は、フッ素セグメント及び非フッ素セグメントからなるブロックコポリマーを更に含有していてもよい。本明細書中、「フッ素セグメント」は、フッ素系モノマーを主成分とするモノマーの硬化物(重合物)を意味する。フッ素系モノマーは、フッ素原子を有するラジカル重合可能なモノマーであれば特に限定されない。本明細書中、「非フッ素セグメント」は、非フッ素系モノマーを主成分とするモノマーの硬化物(重合物)を意味する。非フッ素系モノマーは、フッ素原子を有さないラジカル重合可能なモノマーであれば特に限定されない。
重合性組成物にブロックコポリマーが配合されることによって、非フッ素セグメントが、重合性組成物中の他の成分との相溶性を有する相溶性セグメントとして機能する一方で、フッ素セグメント(フッ素セグメント由来のフッ素原子)が、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在する。そのため、重合体層3の表面自由エネルギーが低くなり、防汚性フィルム1の防汚性が充分に高まる。また、ブロックコポリマーは、非フッ素セグメントの相溶性セグメントとしての機能によって、重合体層3中で固定化されやすいため、防汚性フィルム1の防汚性が長期間高く維持されやすい。
ブロックコポリマー中のフッ素セグメントの割合は、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは35〜65重量%である。ブロックコポリマー中のフッ素セグメントの割合が10重量%よりも低い場合、フッ素セグメントとしての性能、すなわち、防汚性が充分に得られないことがある。ブロックコポリマー中のフッ素セグメントの割合が90重量%よりも高い場合、重合性組成物中の他の成分との相溶性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)ことがある。
ブロックコポリマーの数平均分子量は、好ましくは5000〜1000000、より好ましくは10000〜300000、更に好ましくは10000〜100000である。ブロックコポリマーの数平均分子量が5000よりも小さい場合、フッ素セグメントが短く、その性能、すなわち、防汚性が充分に得られないことがある。ブロックコポリマーの数平均分子量が1000000よりも大きい場合、重合性組成物中の他の成分との相溶性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)ことがある。
ブロックコポリマーは、パーフルオロアルキル系コポリマーであることが好ましい。本明細書中、「パーフルオロアルキル系コポリマー」は、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系コポリマーを意味する。ブロックコポリマーがパーフルオロアルキル系コポリマーである場合、フッ素セグメントが重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在しやすくなる(剛直な分子鎖が立つように配列しやすくなる)ため、フッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に密に分布しやすく、防汚性フィルム1の防汚性が高まりやすくなる。
ブロックコポリマーは、重合性官能基として機能する(メタ)アクリロイル基を有さなくてもよい。ブロックコポリマーは、非フッ素セグメントが重合性組成物中の他の成分との相溶性を有するため、重合性官能基としての(メタ)アクリロイル基を有さなくても、重合体層3中で固定化されやすい。
重合性組成物は、有効成分換算で、ブロックコポリマーを0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%含有している。重合性組成物中のブロックコポリマーの含有率が有効成分換算で0.1重量%よりも低い場合、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在するフッ素原子の量が少なくなり、防汚性フィルム1の防汚性が充分に高まらないことがある。重合性組成物中のブロックコポリマーの含有率が有効成分換算で5重量%よりも高い場合、重合性組成物中の他の成分との相溶性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)ことがある。重合性組成物が複数種のブロックコポリマーを含有する場合、複数種のブロックコポリマーの含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。
ブロックコポリマーの公知例としては、日油社製の「モディパー(登録商標)F606」、「モディパーF206」、「モディパーF3636」、等が挙げられる。
重合性組成物は、重合開始剤を更に含有していてもよい。重合性組成物に重合開始剤が配合されることによって、重合性組成物の硬化性が高まる。
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤、等が挙げられ、中でも、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は、活性エネルギー線に対して活性である重合開始剤である。
重合性組成物は、有効成分換算で、光重合開始剤を、好ましくは1〜3重量%含有している。重合性組成物が複数種の光重合開始剤を含有する場合、複数種の光重合開始剤の含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤、等が挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、等のアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、等のケトン系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、等のベンジルケタール系光重合開始剤;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)フォスフィンオキサイド、等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のアルキルフェノン系光重合開始剤、等が挙げられる。
光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、アルキルフェノン系光重合開始剤と、を含むことが好ましい。光重合開始剤として、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とアルキルフェノン系光重合開始剤とを併用することによって、重合性組成物の硬化性が顕著に高まり、重合体層3全体(基材2側の表面及び基材2とは反対側の表面を含む)で硬化が促進する(未硬化部分が大きく減少する)ため、結果的に、フッ素系化合物中のフッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)により多く偏在しやすくなる。
重合性組成物は、有効成分換算で、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を、好ましくは0.5〜1.5重量%含有している。重合性組成物が複数種のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有する場合、複数種のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤について、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドの公知例としては、IGM Resins社製の「Omnirad(登録商標) 819」等が挙げられる。また、ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)フォスフィンオキサイドの公知例としては、IGM Resins社製の「Omnirad TPO」等が挙げられる。
重合性組成物は、有効成分換算で、アルキルフェノン系光重合開始剤を、好ましくは0.5〜1.5重量%含有している。重合性組成物が複数種のアルキルフェノン系光重合開始剤を含有する場合、複数種のアルキルフェノン系光重合開始剤の含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。
アルキルフェノン系光重合開始剤について、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの公知例としては、IGM Resins社製の「Omnirad 184」等が挙げられる。
重合性組成物は、溶剤を更に含有していてもよい。この場合、溶剤は、重合性組成物の各成分中に有効成分とともに含有されていてもよく、各成分とは独立して含有されていてもよい。
溶剤としては、例えば、アルコール(炭素数1〜10:例えば、メタノール、エタノール、n−又はi−プロパノール、n−、sec−、又は、t−ブタノール、ベンジルアルコール、オクタノール、等)、ケトン(炭素数3〜8:例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノン、等)、エステル又はエーテルエステル(炭素数4〜10:例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、等)、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルアセテート、エーテル(炭素数4〜10:例えば、EGモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、EGモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、等)、芳香族炭化水素(炭素数6〜10:例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、等)、アミド(炭素数3〜10:例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、等)、ハロゲン化炭化水素(炭素数1〜2:例えば、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、等)、石油系溶剤(例えば、石油エーテル、石油ナフサ、等)、等が挙げられる。
防汚性の観点から、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に対するヘキサデカンの接触角は、好ましくは30°以上、より好ましくは70°以上、更に好ましくは90°以上である。
防汚性フィルム1の用途は、その優れた防汚性を活用するものであれば特に限定されず、例えば、反射防止フィルム等の光学フィルム用途であってもよい。このような反射防止フィルムは、表示装置の内部又は外部に取り付けられることで、視認性の向上に寄与する。
防汚性フィルム1の防汚性は、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に付着した汚れが容易に除去可能なことを意味していてもよく、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に汚れが付着しにくいことを意味していてもよい。また、防汚性フィルム1によれば、モスアイ構造によるロータス効果で、平坦面等の通常の表面を有する従来の防汚性フィルム(例えば、フッ素含有フィルム)よりも高い防汚性が得られる。
防汚性フィルム1は、例えば、以下の製造方法によって製造されてもよい。図3A、図3B、図3C、図3D、及び、図3Eは、実施形態の防汚性フィルムの製造方法例を説明するための断面模式図である。
(A)金型の離型処理
図3Aに示すように、離型処理剤7を金型5の表面上に塗布する。
図3Aに示すように、離型処理剤7を金型5の表面上に塗布する。
離型処理剤7の塗布方法としては、例えば、スプレー方式、グラビア方式、スロットダイ方式、バーコート方式、ポッティング方式、等で塗布する方法が挙げられる。
(B)重合性組成物の塗布
図3Bに示すように、重合性組成物6を基材2の表面上に塗布する。
図3Bに示すように、重合性組成物6を基材2の表面上に塗布する。
重合性組成物6の塗布方法としては、例えば、スプレー方式、グラビア方式、スロットダイ方式、バーコート方式、等で塗布する方法が挙げられる。中でも、膜厚を均一にし、生産性を向上する観点から、グラビア方式又はスロットダイ方式で塗布する方法が好ましい。
重合性組成物6は、有効成分換算で、重合性モノマー(R)を75〜95重量%、ウレタンアクリレート(S)を2.5〜12.5重量%、パーフルオロアルキル系モノマー(T)を2.5〜9重量%含有し、エチレンオキサイド基濃度が20〜50重量%であるものである。ここで、重合性組成物6が溶剤を更に含有する場合、重合性組成物6の塗布後に、溶剤を除去する加熱処理(乾燥処理)を行ってもよい。この加熱処理は、溶剤の沸点以上の温度で行われることが好ましい。
上記(A)と上記(B)とは、同じタイミングで行われてもよく、異なるタイミングで行われてもよい。
(C)凹凸構造の形成
重合性組成物6を間に挟んだ状態で、基材2を金型5の離型処理剤7が塗布された表面に押し当てる。その結果、図3Cに示すように、重合性組成物6の表面(基材2とは反対側の表面)に凹凸構造が形成される。
重合性組成物6を間に挟んだ状態で、基材2を金型5の離型処理剤7が塗布された表面に押し当てる。その結果、図3Cに示すように、重合性組成物6の表面(基材2とは反対側の表面)に凹凸構造が形成される。
(D)重合体層の形成
重合性組成物6を硬化させる。その結果、図3Dに示すように、重合体層3が形成される。
重合性組成物6を硬化させる。その結果、図3Dに示すように、重合体層3が形成される。
重合性組成物6の硬化方法としては、例えば、活性エネルギー線の照射、加熱、等による方法が挙げられる。重合性組成物6の硬化は、活性エネルギー線の照射によって行われることが好ましく、中でも、紫外線の照射によって行われることがより好ましい。活性エネルギー線の照射は、重合性組成物6の基材2側から行われてもよく、重合性組成物6の金型5側から行われてもよい。また、重合性組成物6に対する活性エネルギー線の照射回数は、1回のみであってもよいし、複数回であってもよい。
上記(C)と上記(D)とは、同じタイミングで行われてもよく、異なるタイミングで行われてもよい。
(E)金型の剥離
図3Eに示すように、金型5を重合体層3から剥離する。
図3Eに示すように、金型5を重合体層3から剥離する。
金型5を重合体層3から剥離した後、重合体層3に対して基材2とは反対側から活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射してもよい。このように、金型5の剥離前(上記(D))に加えて、金型5の剥離後にも活性エネルギー線を照射することによって、重合体層3全体(基材2側の表面及び基材2とは反対側の表面を含む)で硬化が促進し(未硬化部分が大きく減少し)、結果的に、フッ素系化合物中のフッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)により多く偏在しやすくなる。
このような効果が得られやすい具体例として、重合性組成物6がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とアルキルフェノン系光重合開始剤とを含有し、基材2がトリアセチルセルロースフィルムである場合について説明する。
まず、金型5の剥離前(上記(D))に重合性組成物6の基材2側から紫外線を照射すると、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の作用によって、重合性組成物6の硬化反応が基材2側で優先的に進行する。これは、下記の理由1、2による。
(理由1)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の紫外線吸収波長の範囲(例えば、IGM Resins社製の「Omnirad 819」では、約450nm以下)は、トリアセチルセルロースフィルムの紫外線吸収波長の範囲(約380nm以下)を含みつつ、より広い。つまり、トリアセチルセルロースフィルムで吸収されずに透過した紫外線は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤に吸収されうる。
(理由2)アルキルフェノン系光重合開始剤の紫外線吸収波長の範囲(例えば、IGM Resins社製の「Omnirad 184」では、約380nm以下)は、トリアセチルセルロースフィルムの紫外線吸収波長の範囲(約380nm以下)に含まれる。つまり、トリアセチルセルロースフィルムで吸収されずに透過した紫外線は、アルキルフェノン系光重合開始剤に吸収されない。
(理由1)アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の紫外線吸収波長の範囲(例えば、IGM Resins社製の「Omnirad 819」では、約450nm以下)は、トリアセチルセルロースフィルムの紫外線吸収波長の範囲(約380nm以下)を含みつつ、より広い。つまり、トリアセチルセルロースフィルムで吸収されずに透過した紫外線は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤に吸収されうる。
(理由2)アルキルフェノン系光重合開始剤の紫外線吸収波長の範囲(例えば、IGM Resins社製の「Omnirad 184」では、約380nm以下)は、トリアセチルセルロースフィルムの紫外線吸収波長の範囲(約380nm以下)に含まれる。つまり、トリアセチルセルロースフィルムで吸収されずに透過した紫外線は、アルキルフェノン系光重合開始剤に吸収されない。
次に、金型5の剥離後(上記(E))に、重合体層3に対して基材2とは反対側から紫外線を照射すると、主にアルキルフェノン系光重合開始剤の作用によって、重合体層3中の未硬化部分の硬化反応が基材2とは反対側で優先的に進行する。
よって、金型5の剥離前後(上記(D)、(E))で活性エネルギー線を照射することによって、重合体層3全体(基材2側の表面及び基材2とは反対側の表面を含む)で硬化が促進し(未硬化部分が大きく減少し)、結果的に、フッ素系化合物中のフッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)により多く偏在しやすくなる。
上記(A)〜(E)によって、防汚性フィルム1が完成する。本明細書中、上記(B)〜(E)のような一連のプロセスを、「金型の転写」とも呼ぶ。本製造方法例では、防汚性フィルム1を連続的に製造する場合、上記(A)を少なくとも最初の段階(1回目の転写前)で1度行えばよく、その後、上記(B)〜(E)を繰り返せばよい。例えば、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(B)、(C)、(D)、(E)、(B)、(C)、(D)、(E)、・・・、の順のように、2回目以降の転写時に上記(A)を都度行わなくてもよい。また、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(B)、(C)、(D)、(E)、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、・・・、の順のように、2回目以降の転写時(この例では、3回目の転写時)に上記(A)を適宜行ってもよい。このような金型の転写において、例えば、基材2をロール状にすれば、上記(B)〜(E)を連続的かつ効率的に行うことができる。
<金型>
金型5としては、例えば、下記の方法で作製されるものを用いることができる。まず、金型5の材料となるアルミニウムを、支持基材の表面上にスパッタリング法によって成膜する。次に、成膜されたアルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返すことによって、モスアイ構造の雌型(金型5)を作製することができる。この際、陽極酸化を行う時間、及び、エッチングを行う時間を調節することによって、金型5の凹凸構造を変化させることができる。
金型5としては、例えば、下記の方法で作製されるものを用いることができる。まず、金型5の材料となるアルミニウムを、支持基材の表面上にスパッタリング法によって成膜する。次に、成膜されたアルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返すことによって、モスアイ構造の雌型(金型5)を作製することができる。この際、陽極酸化を行う時間、及び、エッチングを行う時間を調節することによって、金型5の凹凸構造を変化させることができる。
支持基材の材料としては、例えば、ガラス;ステンレス、ニッケル、等の金属;ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的には、ノルボルネン系樹脂等である、日本ゼオン社製の「ゼオノア(登録商標)」、JSR社製の「アートン(登録商標)」)、等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、等の樹脂、等が挙げられる。また、支持基材の表面上にアルミニウムを成膜したものの代わりに、アルミニウム製の基材を用いてもよい。
金型5の形状としては、例えば、平板状、ロール状等が挙げられる。
<離型処理剤>
離型処理剤7は、金型5の表面の離型処理を目的として用いられるものである。離型処理剤7によれば、金型5の離型性(例えば、撥水性)が高まり、金型5を重合体層3から容易に剥離することができる。また、金型5の表面自由エネルギーが低くなるため、基材2を金型5に押し当てる際に、重合性組成物6に配合されるフッ素系化合物中のフッ素原子を重合性組成物6の表面(基材2とは反対側の表面)に均一に分布させることができる。更に、重合性組成物6を硬化させる前に、フッ素原子が重合性組成物6の表面(基材2とは反対側の表面)から離れてしまうことを防止することができる。その結果、防汚性フィルム1において、フッ素原子を重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に均一に分布させることができる。
離型処理剤7は、金型5の表面の離型処理を目的として用いられるものである。離型処理剤7によれば、金型5の離型性(例えば、撥水性)が高まり、金型5を重合体層3から容易に剥離することができる。また、金型5の表面自由エネルギーが低くなるため、基材2を金型5に押し当てる際に、重合性組成物6に配合されるフッ素系化合物中のフッ素原子を重合性組成物6の表面(基材2とは反対側の表面)に均一に分布させることができる。更に、重合性組成物6を硬化させる前に、フッ素原子が重合性組成物6の表面(基材2とは反対側の表面)から離れてしまうことを防止することができる。その結果、防汚性フィルム1において、フッ素原子を重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に均一に分布させることができる。
離型処理剤7としては、例えば、フッ素系離型処理剤、シリコン系離型処理剤、リン酸エステル系離型処理剤、等が挙げられ、中でも、フッ素系離型処理剤が好ましい。フッ素系離型処理剤としては、パーフルオロポリエーテル系離型処理剤が好ましく用いられ、その公知例としては、ダイキン工業社製の「オプツール(登録商標)DSX」、「オプツールUD509」、「オプツールAES4」、等が挙げられる。
[実施例及び比較例]
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
実施例及び比較例において、防汚性フィルムを製造するために用いた材料は以下の通りである。
<基材>
富士フイルム社製の「TAC−TD80U」を用い、その厚みは80μmであった。
富士フイルム社製の「TAC−TD80U」を用い、その厚みは80μmであった。
<金型>
下記の方法で作製したものを用いた。まず、金型の材料となるアルミニウムを、10cm角のガラス基板上にスパッタリング法によって成膜した。成膜されたアルミニウムの層の厚みは、1.0μmであった。次に、成膜されたアルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返すことによって、多数の微小な穴(隣り合う穴(凹部)の底点間の距離が可視光の波長以下)が設けられた陽極酸化層を形成した。具体的には、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、及び、陽極酸化を順に行う(陽極酸化:5回、エッチング:4回)ことによって、アルミニウムの層の内部に向かって細くなる形状(テーパー形状)を有する微小な穴(凹部)を多数形成し、その結果、凹凸構造を有する金型が得られた。陽極酸化は、シュウ酸(濃度:0.03重量%)を用いて、液温5℃、印加電圧80Vの条件下で行った。1回の陽極酸化を行う時間は、25秒とした。エッチングは、リン酸(濃度:1mol/l)を用いて、液温30℃の条件下で行った。1回のエッチングを行う時間は、25分とした。金型を走査型電子顕微鏡で観察したところ、凹部の深さは290nmであった。
下記の方法で作製したものを用いた。まず、金型の材料となるアルミニウムを、10cm角のガラス基板上にスパッタリング法によって成膜した。成膜されたアルミニウムの層の厚みは、1.0μmであった。次に、成膜されたアルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返すことによって、多数の微小な穴(隣り合う穴(凹部)の底点間の距離が可視光の波長以下)が設けられた陽極酸化層を形成した。具体的には、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、及び、陽極酸化を順に行う(陽極酸化:5回、エッチング:4回)ことによって、アルミニウムの層の内部に向かって細くなる形状(テーパー形状)を有する微小な穴(凹部)を多数形成し、その結果、凹凸構造を有する金型が得られた。陽極酸化は、シュウ酸(濃度:0.03重量%)を用いて、液温5℃、印加電圧80Vの条件下で行った。1回の陽極酸化を行う時間は、25秒とした。エッチングは、リン酸(濃度:1mol/l)を用いて、液温30℃の条件下で行った。1回のエッチングを行う時間は、25分とした。金型を走査型電子顕微鏡で観察したところ、凹部の深さは290nmであった。
<離型処理剤>
ダイキン工業社製の「オプツールUD509」を用い、その有効成分濃度は0.001重量%であった。
ダイキン工業社製の「オプツールUD509」を用い、その有効成分濃度は0.001重量%であった。
<重合性組成物>
表1〜8に示すような組成(有効成分量)の重合性組成物A1〜A18、及び、B1〜B16を用いた。各成分の略称は、以下の通りである。
表1〜8に示すような組成(有効成分量)の重合性組成物A1〜A18、及び、B1〜B16を用いた。各成分の略称は、以下の通りである。
(2官能アクリレート(R1))
・「M282」
MIWON社製の「MIRAMER M282」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:2個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり4個
・「M280」
MIWON社製の「MIRAMER M280」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:2個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり9個
・「M282」
MIWON社製の「MIRAMER M282」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:2個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり4個
・「M280」
MIWON社製の「MIRAMER M280」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:2個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり9個
(多官能アクリレート(R2))
・「M300」
MIWON社製の「MIRAMER M300」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:3個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり0個
・「M600」
MIWON社製の「MIRAMER M600」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:6個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり0個
・「U−10」
新中村化学工業社製の「U−10HA」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:10個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり0個
・「M300」
MIWON社製の「MIRAMER M300」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:3個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり0個
・「M600」
MIWON社製の「MIRAMER M600」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:6個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり0個
・「U−10」
新中村化学工業社製の「U−10HA」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:10個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり0個
(2官能アクリレート(R1)及び多官能アクリレート(R2)以外の多官能アクリレート)
・「5027E」
新中村化学工業社製の「NK ECONOMER(登録商標) A−PG5027E」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:9個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり27個
・「5027E」
新中村化学工業社製の「NK ECONOMER(登録商標) A−PG5027E」
有効成分濃度:100重量%
官能基数:9個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり27個
(単官能アミドモノマー)
・「AC」
KJケミカルズ社製の「ACMO」
有効成分濃度:100重量%
・「AC」
KJケミカルズ社製の「ACMO」
有効成分濃度:100重量%
(反応性希釈剤)
・「E8110R」
ダイセル・オルネクス社製の「EBECRYL8110」由来の反応性希釈剤(有効成分)
「EBECRYL8110」中の濃度:約50重量%
・「E8110R」
ダイセル・オルネクス社製の「EBECRYL8110」由来の反応性希釈剤(有効成分)
「EBECRYL8110」中の濃度:約50重量%
(ウレタンアクリレート(S))
・「E8110」
ダイセル・オルネクス社製の「EBECRYL8110」由来のフッ素系化合物(有効成分)
「EBECRYL8110」中の濃度:約50重量%
・「RS−75」
DIC社製の「メガファックRS−75」
有効成分濃度:40重量%
・「E8110」
ダイセル・オルネクス社製の「EBECRYL8110」由来のフッ素系化合物(有効成分)
「EBECRYL8110」中の濃度:約50重量%
・「RS−75」
DIC社製の「メガファックRS−75」
有効成分濃度:40重量%
(ウレタンアクリレート(S)以外のフッ素含有ウレタンアクリレート:フッ素含有ポリエーテル型ウレタンアクリレート)
・「602A」
ネオス社製の「フタージェント602A」
有効成分濃度:約50重量%
・「602A」
ネオス社製の「フタージェント602A」
有効成分濃度:約50重量%
(パーフルオロアルキル系モノマー(T))
・「FAAC−6」
ユニマテック社製の「CHEMINOX FAAC−6」
有効成分濃度:100重量%
フッ素原子濃度:59.1重量%
・「FAAC−4」
ユニマテック社製の「CHEMINOX FAAC−4」
有効成分濃度:100重量%
フッ素原子濃度:53.7重量%
・「V8FM」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート8FM」
有効成分濃度:100重量%
フッ素原子濃度:50.7重量%
・「FAAC−6」
ユニマテック社製の「CHEMINOX FAAC−6」
有効成分濃度:100重量%
フッ素原子濃度:59.1重量%
・「FAAC−4」
ユニマテック社製の「CHEMINOX FAAC−4」
有効成分濃度:100重量%
フッ素原子濃度:53.7重量%
・「V8FM」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート8FM」
有効成分濃度:100重量%
フッ素原子濃度:50.7重量%
(パーフルオロアルキル系モノマー(T)以外のパーフルオロアルキル系モノマー)
・「V4F」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート4F」
有効成分濃度:100重量%
フッ素原子濃度:40.9重量%
・「C10A」
Exfluor社製の「C10ACRY」
有効成分濃度:100重量%
フッ素原子濃度:65.2重量%
・「V4F」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート4F」
有効成分濃度:100重量%
フッ素原子濃度:40.9重量%
・「C10A」
Exfluor社製の「C10ACRY」
有効成分濃度:100重量%
フッ素原子濃度:65.2重量%
(ブロックコポリマー)
・「F606」
日油社製の「モディパーF606」
有効成分濃度:100重量%
パーフルオロアルキル基:有する
(メタ)アクリロイル基:有さない
・「F606」
日油社製の「モディパーF606」
有効成分濃度:100重量%
パーフルオロアルキル基:有する
(メタ)アクリロイル基:有さない
(パーフルオロポリエーテル系オリゴマー)
・「MT70」
ソルベイ社製の「フォンブリンMT70」
有効成分濃度:80重量%
・「1203E」
信越化学工業社製の「X−27−1203E」
有効成分濃度:20重量%
・「MT70」
ソルベイ社製の「フォンブリンMT70」
有効成分濃度:80重量%
・「1203E」
信越化学工業社製の「X−27−1203E」
有効成分濃度:20重量%
(重合開始剤)
・「819」
IGM Resins社製の「Omnirad 819」
有効成分濃度:100重量%
・「TPO」
IGM Resins社製の「Omnirad TPO」
有効成分濃度:100重量%
・「184」
IGM Resins社製の「Omnirad 184」
有効成分濃度:100重量%
・「819」
IGM Resins社製の「Omnirad 819」
有効成分濃度:100重量%
・「TPO」
IGM Resins社製の「Omnirad TPO」
有効成分濃度:100重量%
・「184」
IGM Resins社製の「Omnirad 184」
有効成分濃度:100重量%
重合性組成物A1〜A18、及び、B1〜B16における、各成分の含有率(有効成分換算)とエチレンオキサイド基濃度とを、表9〜16に示す。
<実施例1>
実施例1の防汚性フィルムを、以下の方法によって製造した。
実施例1の防汚性フィルムを、以下の方法によって製造した。
(A)金型の離型処理
離型処理剤を金型の表面上に塗布した。離型処理剤の厚みは、5nmであった。金型の離型処理剤が塗布された表面に対する水の接触角(静的接触角)は、130°程度であった。
離型処理剤を金型の表面上に塗布した。離型処理剤の厚みは、5nmであった。金型の離型処理剤が塗布された表面に対する水の接触角(静的接触角)は、130°程度であった。
(B)重合性組成物の塗布
重合性組成物A1を基材の表面上に塗布した。重合性組成物A1の厚みは、35μmであった。
重合性組成物A1を基材の表面上に塗布した。重合性組成物A1の厚みは、35μmであった。
(C)凹凸構造の形成
重合性組成物A1を間に挟んだ状態で、基材を金型の離型処理剤が塗布された表面に押し当てた。その結果、重合性組成物A1の表面(基材とは反対側の表面)に凹凸構造が形成された。
重合性組成物A1を間に挟んだ状態で、基材を金型の離型処理剤が塗布された表面に押し当てた。その結果、重合性組成物A1の表面(基材とは反対側の表面)に凹凸構造が形成された。
(D)重合体層の形成
重合性組成物A1に対して、基材側から紫外線(照射量:1J/cm2)を照射して硬化させた。その結果、重合体層が形成された。
重合性組成物A1に対して、基材側から紫外線(照射量:1J/cm2)を照射して硬化させた。その結果、重合体層が形成された。
(E)金型の剥離
金型を重合体層から剥離した。その後、重合体層に対して基材とは反対側から紫外線(照射量:1J/cm2)を照射して更に硬化させた。その結果、防汚性フィルムが完成した。
金型を重合体層から剥離した。その後、重合体層に対して基材とは反対側から紫外線(照射量:1J/cm2)を照射して更に硬化させた。その結果、防汚性フィルムが完成した。
その後、金型の転写(上記(B)〜(E)の一連のプロセス)を100回繰り返し、防汚性フィルムを連続的に製造した。そして、100回目の金型の転写で得られた防汚性フィルム(100枚目の防汚性フィルム)を実施例1の防汚性フィルムとした。
実施例1の防汚性フィルムにおいて、重合体層の厚みは、12μmであった。
実施例1の防汚性フィルムの表面仕様は、下記の通りであった。
凸部の形状:釣鐘状
凸部の平均ピッチ:200nm
凸部の平均高さ:200nm
凸部の平均アスペクト比:1.0
凸部の形状:釣鐘状
凸部の平均ピッチ:200nm
凸部の平均高さ:200nm
凸部の平均アスペクト比:1.0
防汚性フィルムの表面仕様の評価は、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡「S−4700」を用いて行われた。なお、評価時には、メイワフォーシス社製のオスミウムコーター「Neoc−ST」を用いて、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)上に富士フイルム和光純薬社製の酸化オスミウムVIII(厚み:5nm)が塗布されていた。
<実施例2〜19、及び、比較例1〜16>
表17〜24に示すような製造条件に変更したこと以外、実施例1と同様にして、各例の防汚性フィルム(100枚目の防汚性フィルム)を製造した。
表17〜24に示すような製造条件に変更したこと以外、実施例1と同様にして、各例の防汚性フィルム(100枚目の防汚性フィルム)を製造した。
[評価]
各例について、以下の評価を行った。結果を、表17〜24に示す。
各例について、以下の評価を行った。結果を、表17〜24に示す。
<透明性>
透明性としては、重合性組成物の透明性を評価した。具体的には、まず、重合性組成物を透明な試験管に入れて、温度30℃、湿度85%の環境下で1週間放置した。その後、重合性組成物の状態を照度100lx(蛍光灯)の環境下で目視観察した。判定基準は、下記の通りとした。
○:透明又はごくわずかに白濁していた。
△:わずかに白濁しているが、更に1日間放置した後であっても沈降物は見られなかった。
×:白濁しており、更に1日間放置した後に沈降物が見られた。
ここで、重合性組成物の透明性が高いほど、重合性組成物中の各成分の相溶性が高いと判断した。
透明性としては、重合性組成物の透明性を評価した。具体的には、まず、重合性組成物を透明な試験管に入れて、温度30℃、湿度85%の環境下で1週間放置した。その後、重合性組成物の状態を照度100lx(蛍光灯)の環境下で目視観察した。判定基準は、下記の通りとした。
○:透明又はごくわずかに白濁していた。
△:わずかに白濁しているが、更に1日間放置した後であっても沈降物は見られなかった。
×:白濁しており、更に1日間放置した後に沈降物が見られた。
ここで、重合性組成物の透明性が高いほど、重合性組成物中の各成分の相溶性が高いと判断した。
<防汚性>
防汚性としては、防汚性フィルムの撥油性、及び、指紋拭き取り性を評価した。
防汚性としては、防汚性フィルムの撥油性、及び、指紋拭き取り性を評価した。
(撥油性)
防汚性フィルムに対して、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)にヘキサデカン(約10μlの液滴)を滴下し、滴下から1秒後、10分後、及び、60分後の接触角(静的接触角)を測定した。ここで、ヘキサデカンの接触角が30°以上である場合を撥油性が高いと判断した。
防汚性フィルムに対して、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)にヘキサデカン(約10μlの液滴)を滴下し、滴下から1秒後、10分後、及び、60分後の接触角(静的接触角)を測定した。ここで、ヘキサデカンの接触角が30°以上である場合を撥油性が高いと判断した。
接触角としては、協和界面科学社製のポータブル接触角計「PCA−1」を用いて、θ/2法(θ/2=arctan(h/r)、θ:接触角、r:液滴の半径、h:液滴の高さ)で測定された、3箇所の接触角の平均値を示した。ここで、1箇所目の測定点としては、防汚性フィルムの中央部分を選択し、2箇所目及び3箇所目の測定点としては、1箇所目の測定点から20mm以上離れ、かつ、1箇所目の測定点に対して互いに点対称な位置にある2点を選択した。
(指紋拭き取り性)
まず、防汚性フィルムに対して、基材の重合体層とは反対側の表面に、光学粘着層を介して、三菱レイヨン社製の黒色のアクリル板「アクリライトEX−502」を貼り付けた。次に、指紋を想定したものとして、伊勢久社製の人工汚染液を、旭化成せんい社製の「ベンコット(登録商標)S−2」に0.1ml浸み込ませてから、ゴム手袋を着用した指に付着させた。そして、防汚性フィルムに対して、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に指で人工汚染液を付着させた。人工汚染液を付着させてから10分後及び60分後において、旭化成せんい社製の「ベンコットS−2」で10往復擦り、人工汚染液が拭き取れたかどうかを、照度100lx(蛍光灯)の環境下で目視観察した。判定基準は、下記の通りとした。
○:人工汚染液が完全に拭き取れ、拭き残りが見えなかった。
△:人工汚染液は目立たないが、蛍光灯を映り込ませると拭き残りがわずかに見えた。
×:蛍光灯を映り込ませなくても拭き残りがわずかに見えた。
××:蛍光灯を映り込ませなくても拭き残りがはっきり見え、人工汚染液が全く拭き取れなかった。
ここで、判定が○又は△である場合を、指紋拭き取り性が優れていると判断した。
まず、防汚性フィルムに対して、基材の重合体層とは反対側の表面に、光学粘着層を介して、三菱レイヨン社製の黒色のアクリル板「アクリライトEX−502」を貼り付けた。次に、指紋を想定したものとして、伊勢久社製の人工汚染液を、旭化成せんい社製の「ベンコット(登録商標)S−2」に0.1ml浸み込ませてから、ゴム手袋を着用した指に付着させた。そして、防汚性フィルムに対して、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に指で人工汚染液を付着させた。人工汚染液を付着させてから10分後及び60分後において、旭化成せんい社製の「ベンコットS−2」で10往復擦り、人工汚染液が拭き取れたかどうかを、照度100lx(蛍光灯)の環境下で目視観察した。判定基準は、下記の通りとした。
○:人工汚染液が完全に拭き取れ、拭き残りが見えなかった。
△:人工汚染液は目立たないが、蛍光灯を映り込ませると拭き残りがわずかに見えた。
×:蛍光灯を映り込ませなくても拭き残りがわずかに見えた。
××:蛍光灯を映り込ませなくても拭き残りがはっきり見え、人工汚染液が全く拭き取れなかった。
ここで、判定が○又は△である場合を、指紋拭き取り性が優れていると判断した。
<耐擦性>
まず、防汚性フィルムに対して、基材の重合体層とは反対側の表面に、光学粘着層を介して、三菱レイヨン社製の黒色のアクリル板「アクリライトEX−502」を貼り付けた。その後、防汚性フィルムの重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に対して極角5°の方位から光源の光を照射し、入射角5°における正反射分光反射率を測定した。反射率の測定は、島津製作所社製の「UV−3100PC」を用いて、380〜780nmの波長領域で行われた。そして、測定結果から、450〜650nmの波長領域における平均反射率を算出し、その値を反射率F1(単位:%)とした。
まず、防汚性フィルムに対して、基材の重合体層とは反対側の表面に、光学粘着層を介して、三菱レイヨン社製の黒色のアクリル板「アクリライトEX−502」を貼り付けた。その後、防汚性フィルムの重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に対して極角5°の方位から光源の光を照射し、入射角5°における正反射分光反射率を測定した。反射率の測定は、島津製作所社製の「UV−3100PC」を用いて、380〜780nmの波長領域で行われた。そして、測定結果から、450〜650nmの波長領域における平均反射率を算出し、その値を反射率F1(単位:%)とした。
次に、旭化成せんい社製の「ベンコットラボ(登録商標)」を用いて、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)を10往復擦った。その後、上述した方法と同様にして入射角5°における正反射分光反射率を測定した。そして、測定結果から、450〜650nmの波長領域における平均反射率を算出し、その値を反射率F2(単位:%)とした。
次に、上述した方法で得られた反射率F1及び反射率F2から、下記式(Y)に基づいて、反射率の変化率「ΔF」(単位:%)を算出した。
ΔF=|100×(反射率F2−反射率F1)/反射率F1| (Y)
判定基準は、下記の通りとした。
○:ΔF≦15
△:15<ΔF<30
×:ΔF≧30
ここで、判定が○又は△である場合を、防汚性フィルム(重合体層)が白化して見えておらず、耐擦性が優れていると判断した。
ΔF=|100×(反射率F2−反射率F1)/反射率F1| (Y)
判定基準は、下記の通りとした。
○:ΔF≦15
△:15<ΔF<30
×:ΔF≧30
ここで、判定が○又は△である場合を、防汚性フィルム(重合体層)が白化して見えておらず、耐擦性が優れていると判断した。
表17〜20に示すように、実施例1〜19では、防汚性フィルムの防汚性が60分後でも高いままであり、長期間高く維持されていた。また、実施例1〜19では、防汚性フィルムの耐擦性が優れていた。
一方、表21〜24に示すように、比較例1〜16では、耐擦性に優れ、防汚性が長期間高く維持される防汚性フィルムが実現されなかった。
比較例1では、重合性組成物にフッ素系化合物が配合されていなかったため、防汚性フィルムの防汚性が初期の段階から低く、長期間高く維持されなかった。また、比較例1では、重合性組成物中の重合性モノマー(R)の含有率が有効成分換算で95重量%よりも高かったため、防汚性フィルムの耐擦性が低下した。
比較例2では、重合性組成物に、フッ素系化合物としてパーフルオロアルキル系モノマー(T)のみが配合されていたため、防汚性フィルムの防汚性が長期間高く維持されなかった。
比較例3では、重合性組成物に、フッ素系化合物としてウレタンアクリレート(S)のみが配合されていたため、防汚性フィルムの防汚性が長期間高く維持されなかった。
比較例4、5では、重合性組成物に、フッ素系化合物としてパーフルオロアルキル系モノマー(T)が配合されていたものの、ウレタンアクリレート(S)の代わりにパーフルオロポリエーテル系オリゴマーが配合されていたため、防汚性フィルムの防汚性が長期間高く維持されなかった。
比較例6では、重合性組成物中のウレタンアクリレート(S)の含有率が有効成分換算で12.5重量%よりも高かったため、重合性組成物が白濁し、結果的に、防汚性フィルム(重合体層)の透明性が低下した(白化した)。そのため、防汚性及び耐擦性の評価を中止した。
比較例7では、重合性組成物中のウレタンアクリレート(S)の含有率が有効成分換算で2.5重量%よりも低かったため、防汚性フィルムの防汚性が長期間高く維持されなかった。
比較例8では、重合性組成物に、フッ素系化合物としてウレタンアクリレート(S)が配合されていたものの、パーフルオロアルキル系モノマー(T)の代わりに、フッ素原子濃度が50重量%よりも低いパーフルオロアルキル系モノマーが配合されていたため、防汚性フィルムの防汚性が長期間高く維持されなかった。
比較例9では、重合性組成物に、フッ素系化合物としてウレタンアクリレート(S)が配合されていたものの、パーフルオロアルキル系モノマー(T)の代わりに、フッ素原子濃度が60重量%よりも高いパーフルオロアルキル系モノマーが配合されていたため、重合性組成物が白濁し、結果的に、防汚性フィルム(重合体層)の透明性が低下した(白化した)。そのため、防汚性及び耐擦性の評価を中止した。
比較例10では、重合性組成物に、重合性モノマー(R)として多官能アクリレート(R2)が配合されていたものの、2官能アクリレート(R1)の代わりにエチレンオキサイド基を有する多官能アクリレートが配合されていたため、重合性組成物が白濁し、結果的に、防汚性フィルム(重合体層)の透明性が低下した(白化した)。そのため、防汚性及び耐擦性の評価を中止した。
比較例11では、重合性組成物中のエチレンオキサイド基濃度が50重量%よりも高かったため、重合性組成物が白濁し、結果的に、防汚性フィルム(重合体層)の透明性が低下した(白化した)。そのため、防汚性及び耐擦性の評価を中止した。
比較例12では、重合性組成物中のエチレンオキサイド基濃度が20重量%よりも低かったため、防汚性フィルムの防汚性が長期間高く維持されなかった。
比較例13では、重合性組成物に、フッ素系化合物としてパーフルオロアルキル系モノマー(T)が配合されていたものの、ウレタンアクリレート(S)の代わりにフッ素含有ポリエーテル型ウレタンアクリレートが配合されていたため、防汚性フィルムの防汚性が長期間高く維持されなかった。
比較例14では、重合性組成物中のウレタンアクリレート(S)の含有率が有効成分換算で2.5重量%よりも低く、更に、重合性組成物中のパーフルオロアルキル系モノマー(T)の含有率が有効成分換算で2.5重量%よりも低かったため、防汚性フィルムの防汚性が長期間高く維持されなかった。
比較例15では、重合性組成物中のパーフルオロアルキル系モノマー(T)の含有率が有効成分換算で9重量%よりも高かったため、重合性組成物が白濁し、結果的に、防汚性フィルム(重合体層)の透明性が低下した(白化した)。そのため、防汚性及び耐擦性の評価を中止した。
比較例16では、重合性組成物中の重合性モノマー(R)の含有率が有効成分換算で75重量%よりも低かったため、防汚性フィルムの耐擦性が低下した。
[付記]
本発明の一態様は、基材と、上記基材の表面上に配置され、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層と、を備える防汚性フィルムであって、上記重合体層は、重合性組成物の硬化物であり、上記重合性組成物は、有効成分換算で、重合性モノマーを75〜95重量%、フッ素及びエステル含有ウレタンアクリレートを2.5〜12.5重量%、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマーを2.5〜9重量%含有し、上記重合性モノマーは、エチレンオキサイド基を有する2官能アクリレートと、エチレンオキサイド基を有さない多官能アクリレートと、を含み、上記パーフルオロアルキル系モノマー中のフッ素原子濃度は、50〜60重量%であり、上記重合性組成物中のエチレンオキサイド基濃度は、20〜50重量%である、防汚性フィルムであってもよい。本態様によれば、耐擦性に優れ、防汚性が長期間高く維持される防汚性フィルムが実現される。
本発明の一態様は、基材と、上記基材の表面上に配置され、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層と、を備える防汚性フィルムであって、上記重合体層は、重合性組成物の硬化物であり、上記重合性組成物は、有効成分換算で、重合性モノマーを75〜95重量%、フッ素及びエステル含有ウレタンアクリレートを2.5〜12.5重量%、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマーを2.5〜9重量%含有し、上記重合性モノマーは、エチレンオキサイド基を有する2官能アクリレートと、エチレンオキサイド基を有さない多官能アクリレートと、を含み、上記パーフルオロアルキル系モノマー中のフッ素原子濃度は、50〜60重量%であり、上記重合性組成物中のエチレンオキサイド基濃度は、20〜50重量%である、防汚性フィルムであってもよい。本態様によれば、耐擦性に優れ、防汚性が長期間高く維持される防汚性フィルムが実現される。
本発明の一態様において、上記多官能アクリレートの官能基数は、3〜6個であってもよい。これにより、上記重合性組成物中の他の成分(例えば、フッ素系化合物)との相溶性が充分に高まり、結果的に、上記防汚性フィルム(上記重合体層)の透明性が充分に高まる。また、上記重合体層の架橋密度が高まり過ぎず、フッ素系化合物中のフッ素原子が上記重合体層の表面(上記基材とは反対側の表面)に偏在しやすくなり、上記防汚性フィルムの防汚性が長期間高く維持されやすくなる。
本発明の一態様において、上記重合性モノマーは、単官能アミドモノマーを更に含んでいてもよい。これにより、フッ素系化合物との相溶性が高まるため、フッ素系化合物中のフッ素原子が上記重合体層の表面(上記基材とは反対側の表面)に偏在しやすくなり、上記防汚性フィルムの防汚性が充分に高まる。また、上記重合性組成物を硬化させる際の硬化収縮が抑制され、上記基材との凝集力が高まるため、上記重合体層と上記基材との密着性が高まる。
本発明の一態様において、上記重合性組成物は、有効成分換算で、上記単官能アミドモノマーを1〜15重量%含有していてもよい。これにより、上記重合体層と上記基材との密着性が充分に高まる。また、上記防汚性フィルムの防汚性が充分に高まる。更に、上記防汚性フィルムの耐擦性が充分に高まる。
本発明の一態様において、上記重合性組成物は、フッ素セグメント及び非フッ素セグメントからなるブロックコポリマーを更に含有していてもよい。これにより、上記非フッ素セグメントが、上記重合性組成物中の他の成分との相溶性を有する相溶性セグメントとして機能する一方で、上記フッ素セグメント(上記フッ素セグメント由来のフッ素原子)が、上記重合体層の表面(上記基材とは反対側の表面)に偏在する。そのため、上記重合体層の表面自由エネルギーが低くなり、上記防汚性フィルムの防汚性が充分に高まる。また、上記ブロックコポリマーは、上記非フッ素セグメントの相溶性セグメントとしての機能によって、上記重合体層中で固定化されやすいため、上記防汚性フィルムの防汚性が長期間高く維持されやすい。
本発明の一態様において、上記重合性組成物は、有効成分換算で、上記ブロックコポリマーを0.1〜5重量%含有していてもよい。これにより、上記防汚性フィルムの防汚性が充分に高まる。また、上記重合性組成物中の他の成分との相溶性が高まり、結果的に、上記防汚性フィルム(上記重合体層)の透明性が充分に高まる。
本発明の一態様において、上記重合性組成物は、光重合開始剤を更に含有し、上記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、アルキルフェノン系光重合開始剤と、を含んでいてもよい。これにより、上記重合性組成物の硬化性が顕著に高まり、上記重合体層全体(上記基材側の表面及び上記基材とは反対側の表面を含む)で硬化が促進する(未硬化部分が大きく減少する)ため、結果的に、フッ素系化合物中のフッ素原子が上記重合体層の表面(上記基材とは反対側の表面)により多く偏在しやすくなる。
本発明の一態様において、上記重合体層の厚みは、5〜20μmであってもよい。これにより、フッ素系化合物中のフッ素原子が、上記重合体層の表面(上記基材とは反対側の表面)に偏在しやすくなる。
本発明の一態様において、上記複数の凸部の平均ピッチは、100〜400nmであってもよい。これにより、モアレ、虹ムラ等の光学現象の発生が充分に防止される。
本発明の一態様において、上記複数の凸部の平均高さは、50〜600nmであってもよい。これにより、上記複数の凸部の好ましい平均アスペクト比と両立させることができる。
本発明の一態様において、上記複数の凸部の平均アスペクト比は、0.8〜1.5であってもよい。これにより、モアレ、虹ムラ等の光学現象の発生が充分に防止され、優れた反射防止性を実現することができる。また、上記凹凸構造の加工性の低下による、スティッキングの発生、及び、上記凹凸構造を形成する際の金型の転写具合の悪化が充分に防止される。
本発明の別の一態様は、有効成分換算で、重合性モノマーを75〜95重量%、フッ素及びエステル含有ウレタンアクリレートを2.5〜12.5重量%、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマーを2.5〜9重量%含有し、上記重合性モノマーは、エチレンオキサイド基を有する2官能アクリレートと、エチレンオキサイド基を有さない多官能アクリレートと、を含み、上記パーフルオロアルキル系モノマー中のフッ素原子濃度は、50〜60重量%であり、エチレンオキサイド基濃度は、20〜50重量%である、重合性組成物であってもよい。本態様によれば、本発明の一態様における防汚性フィルムの重合体層を構成可能な重合性組成物が実現される。
本発明の別の一態様において、上記多官能アクリレートの官能基数は、3〜6個であってもよい。
本発明の別の一態様において、上記重合性モノマーは、単官能アミドモノマーを更に含んでいてもよい。
本発明の別の一態様において、上記重合性組成物は、有効成分換算で、上記単官能アミドモノマーを1〜15重量%含有していてもよい。
本発明の別の一態様において、上記重合性組成物は、フッ素セグメント及び非フッ素セグメントからなるブロックコポリマーを更に含有していてもよい。
本発明の別の一態様において、上記重合性組成物は、有効成分換算で、上記ブロックコポリマーを0.1〜5重量%含有していてもよい。
本発明の別の一態様において、上記重合性組成物は、光重合開始剤を更に含有し、上記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、アルキルフェノン系光重合開始剤と、を含んでいてもよい。
1:防汚性フィルム
2:基材
3:重合体層
4:凸部
5:金型
6:重合性組成物
7:離型処理剤
P:凸部のピッチ
H:凸部の高さ
T:重合体層の厚み
2:基材
3:重合体層
4:凸部
5:金型
6:重合性組成物
7:離型処理剤
P:凸部のピッチ
H:凸部の高さ
T:重合体層の厚み
Claims (12)
- 基材と、
前記基材の表面上に配置され、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層と、を備える防汚性フィルムであって、
前記重合体層は、重合性組成物の硬化物であり、
前記重合性組成物は、有効成分換算で、重合性モノマーを75〜95重量%、フッ素及びエステル含有ウレタンアクリレートを2.5〜12.5重量%、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマーを2.5〜9重量%含有し、
前記重合性モノマーは、エチレンオキサイド基を有する2官能アクリレートと、エチレンオキサイド基を有さない多官能アクリレートと、を含み、
前記パーフルオロアルキル系モノマー中のフッ素原子濃度は、50〜60重量%であり、
前記重合性組成物中のエチレンオキサイド基濃度は、20〜50重量%であることを特徴とする防汚性フィルム。 - 前記多官能アクリレートの官能基数は、3〜6個であることを特徴とする請求項1に記載の防汚性フィルム。
- 前記重合性モノマーは、単官能アミドモノマーを更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の防汚性フィルム。
- 前記重合性組成物は、有効成分換算で、前記単官能アミドモノマーを1〜15重量%含有することを特徴とする請求項3に記載の防汚性フィルム。
- 前記重合性組成物は、フッ素セグメント及び非フッ素セグメントからなるブロックコポリマーを更に含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防汚性フィルム。
- 前記重合性組成物は、有効成分換算で、前記ブロックコポリマーを0.1〜5重量%含有することを特徴とする請求項5に記載の防汚性フィルム。
- 前記重合性組成物は、光重合開始剤を更に含有し、
前記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と、アルキルフェノン系光重合開始剤と、を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防汚性フィルム。 - 前記重合体層の厚みは、5〜20μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の防汚性フィルム。
- 前記複数の凸部の平均ピッチは、100〜400nmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の防汚性フィルム。
- 前記複数の凸部の平均高さは、50〜600nmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の防汚性フィルム。
- 前記複数の凸部の平均アスペクト比は、0.8〜1.5であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の防汚性フィルム。
- 有効成分換算で、重合性モノマーを75〜95重量%、フッ素及びエステル含有ウレタンアクリレートを2.5〜12.5重量%、(メタ)アクリロイル基を1分子当たり1個有するパーフルオロアルキル系モノマーを2.5〜9重量%含有し、
前記重合性モノマーは、エチレンオキサイド基を有する2官能アクリレートと、エチレンオキサイド基を有さない多官能アクリレートと、を含み、
前記パーフルオロアルキル系モノマー中のフッ素原子濃度は、50〜60重量%であり、
エチレンオキサイド基濃度は、20〜50重量%であることを特徴とする重合性組成物。
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