JP2019195753A - 防汚性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 金型の転写回数が増加しても、重合体層及び金型の離型性の低下を抑制しつつ、防汚性を高める防汚性フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】 樹脂を基材の表面上に塗布するプロセス(1)と、離型処理剤が塗布された金型の表面上にフッ素系溶剤を塗布するプロセス(2)と、樹脂を間に挟んだ状態で、基材を金型のフッ素系溶剤が塗布された表面に押し当て、凹凸構造を表面に有する樹脂層を形成するプロセス(3)と、樹脂層を硬化させ、重合体層を形成するプロセス(4)と、を含み、樹脂は、パーフルオロアルキル系モノマーを含有し、パーフルオロアルキル系モノマーは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子当たり1個有し、かつ、フッ素原子濃度が50〜60重量%であり、フッ素系溶剤の沸点は、50℃以上である防汚性フィルムの製造方法。【選択図】 図1
Description
本発明は、防汚性フィルムの製造方法に関する。
反射防止性を有する光学フィルムは、種々検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。特に、ナノメートルサイズの凹凸構造(ナノ構造)を有する光学フィルムは、優れた反射防止性を有することが知られている。このような凹凸構造によれば、空気層から基材にかけて屈折率が連続的に変化するために、反射光を劇的に減少させることができる。
しかしながら、このような光学フィルムにおいては、優れた反射防止性を有する一方で、その表面の凹凸構造のために、指紋(皮脂)等の汚れが付着すると、付着した汚れが広がりやすく、更に、凸部間に入り込んだ汚れを拭き取ることが困難となることがあった。また、付着した汚れは、その反射率が光学フィルムの反射率と大きく異なるため、視認されやすかった。そのため、ナノメートルサイズの凹凸構造を表面に有し、汚れに対する拭き取り性(例えば、指紋拭き取り性)、すなわち、防汚性に優れた機能性フィルム(防汚性フィルム)が求められていた。
これに対して、本発明者らが検討したところ、光学フィルムの凹凸構造を構成する重合体層において、その構成材料としてフッ素含有モノマーを配合すれば、防汚性が高まることが分かった。更に、単官能アミドモノマーを配合すれば、フッ素含有モノマーとの相溶性が高まり、フッ素含有モノマー中のフッ素原子が重合体層の表面に偏在しやすくなるため、防汚性の向上に効果的であることが分かった。
しかしながら、本発明者らが更に検討したところ、重合体層の凹凸構造を形成する際に金型を用いる場合、重合体層の構成材料として単官能アミドモノマーが配合されていると、金型の転写回数の増加に伴って、重合体層及び金型の離型性が低下しやすくなり、結果的に、得られる防汚性フィルムの防汚性が低下しやすくなることが分かった。
以上のように、従来、防汚性フィルムを製造する際には、金型の転写回数が増加しても、重合体層及び金型の離型性の低下を抑制しつつ、防汚性を高めるという課題があった。しかしながら、上記課題を解決する手段は見出されていなかった。例えば、上記特許文献1、2には、金型の転写回数の増加に伴う、重合体層及び金型の離型性の低下に関する記載はなく、上記課題を解決するものではなかった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、金型の転写回数が増加しても、重合体層及び金型の離型性の低下を抑制しつつ、防汚性を高める防汚性フィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、金型の転写回数が増加しても、重合体層及び金型の離型性の低下を抑制しつつ、防汚性を高める防汚性フィルムの製造方法について種々検討したところ、樹脂を基材の表面上に塗布し、離型処理剤が塗布された金型の表面上にフッ素系溶剤を塗布した後、樹脂を間に挟んだ状態で、基材を金型に押し当てる方法に着目した。そして、樹脂に、所定の構造を有するパーフルオロアルキル系モノマーを配合し、フッ素系溶剤の沸点を所定の範囲とすれば、金型の転写回数が増加しても、重合体層及び金型の離型性の低下を抑制しつつ、防汚性を高めることができることを見出した。これにより、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明の一態様は、基材と、上記基材の表面上に配置され、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層と、を備える防汚性フィルムの製造方法であって、樹脂を上記基材の表面上に塗布するプロセス(1)と、離型処理剤が塗布された金型の表面上にフッ素系溶剤を塗布するプロセス(2)と、上記樹脂を間に挟んだ状態で、上記基材を上記金型の上記フッ素系溶剤が塗布された表面に押し当て、上記凹凸構造を表面に有する樹脂層を形成するプロセス(3)と、上記樹脂層を硬化させ、上記重合体層を形成するプロセス(4)と、を含み、上記樹脂は、パーフルオロアルキル系モノマーを含有し、上記パーフルオロアルキル系モノマーは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子当たり1個有し、かつ、フッ素原子濃度が50〜60重量%であり、上記フッ素系溶剤の沸点は、50℃以上である防汚性フィルムの製造方法であってもよい。
本発明によれば、金型の転写回数が増加しても、重合体層及び金型の離型性の低下を抑制しつつ、防汚性を高める防汚性フィルムの製造方法を提供することができる。
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。また、実施形態の各構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
本明細書中、「X〜Y」は、「X以上、Y以下」を意味する。
[実施形態]
実施形態の防汚性フィルムの製造方法について、図1を参照して以下に説明する。図1は、実施形態の防汚性フィルムの製造方法を説明するための断面模式図である。
実施形態の防汚性フィルムの製造方法について、図1を参照して以下に説明する。図1は、実施形態の防汚性フィルムの製造方法を説明するための断面模式図である。
(a)樹脂の塗布(プロセス(1))
図1(a)に示すように、樹脂6を基材2の表面上に塗布する。
図1(a)に示すように、樹脂6を基材2の表面上に塗布する。
樹脂6の塗布方法としては、例えば、スプレー方式、グラビア方式、スロットダイ方式、バーコート方式等で塗布する方法が挙げられる。中でも、膜厚を均一にし、生産性を向上する観点から、グラビア方式又はスロットダイ方式で塗布する方法が好ましい。
樹脂6が溶剤(有効成分以外の成分)を含有する場合、樹脂6の塗布後に、溶剤を除去する加熱処理(乾燥処理)を行ってもよい。この加熱処理は、溶剤の沸点以上の温度で行われることが好ましい。
(b)フッ素系溶剤の塗布(プロセス(2))
図1(b)に示すように、離型処理剤7が塗布された金型5の表面上にフッ素系溶剤8を塗布する。
図1(b)に示すように、離型処理剤7が塗布された金型5の表面上にフッ素系溶剤8を塗布する。
フッ素系溶剤8の塗布方法としては、例えば、上述したような樹脂6の塗布方法と同様な方法、ポッティング等が挙げられる。
樹脂6の塗布(上記(a))とフッ素系溶剤8の塗布(上記(b))とは、同じタイミングで行われてもよく、異なるタイミングで行われてもよい。
(c)樹脂層の形成(プロセス(3))
樹脂6を間に挟んだ状態で、基材2を金型5のフッ素系溶剤8が塗布された表面に押し当てる。その結果、図1(c)に示すように、凹凸構造を表面(基材2とは反対側の表面)に有する樹脂層9が形成される。
樹脂6を間に挟んだ状態で、基材2を金型5のフッ素系溶剤8が塗布された表面に押し当てる。その結果、図1(c)に示すように、凹凸構造を表面(基材2とは反対側の表面)に有する樹脂層9が形成される。
(d)重合体層の形成(プロセス(4))
樹脂層9を硬化させる。その結果、図1(d)に示すように、重合体層3が形成される。
樹脂層9を硬化させる。その結果、図1(d)に示すように、重合体層3が形成される。
樹脂層9の硬化方法としては、例えば、活性エネルギー線の照射、加熱等による方法が挙げられる。本明細書中、「活性エネルギー線」は、紫外線、可視光線、赤外線、プラズマ等を意味する。樹脂層9の硬化は、活性エネルギー線の照射によって行われることが好ましく、中でも、紫外線の照射によって行われることがより好ましい。活性エネルギー線の照射は、樹脂層9の基材2側から行われてもよく、樹脂層9の金型5側から行われてもよい。また、樹脂層9に対する活性エネルギー線の照射回数は、1回のみであってもよいし、複数回であってもよい。樹脂層9の硬化(上記(d))は、凹凸構造の形成(上記(c))と同じタイミングで行われてもよい。
(e)金型の剥離
図1(e)に示すように、金型5を重合体層3から剥離する。その結果、防汚性フィルム1が完成する。
図1(e)に示すように、金型5を重合体層3から剥離する。その結果、防汚性フィルム1が完成する。
本実施形態において、例えば、基材2をロール状にすれば、上記(a)〜(e)を連続的かつ効率的に行うことができる。本明細書では、上記(a)〜(e)のような一連のプロセスを、「金型の転写」とも呼ぶ。
防汚性フィルム1は、基材2と、基材2の表面上に配置される重合体層3と、を有している。
重合体層3は、複数の凸部(突起)4が可視光の波長(780nm)以下のピッチ(隣接する凸部4の頂点間の距離)Pで設けられる凹凸構造、すなわち、モスアイ構造(蛾の目状の構造)を表面に有している。よって、防汚性フィルム1は、モスアイ構造による優れた反射防止性(低反射性)を示すことができる。
重合体層3の厚みTは、後述するパーフルオロアルキル系モノマー(R)を含むフッ素含有モノマー中のフッ素原子を重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に高濃度で偏在させる観点から、小さいことが好ましい。具体的には、重合体層3の厚みTは、好ましくは5〜20μm、より好ましくは8〜12μmである。
複数の凸部4の形状としては、例えば、柱状の下部と半球状の上部とによって構成される形状(釣鐘状)、錐体状(コーン状、円錐状)等の、先端に向かって細くなる形状(テーパー形状)が挙げられる。図1(e)中、隣接する凸部4の間隙の底辺は傾斜した形状となっているが、傾斜せずに水平な形状であってもよい。
複数の凸部4の平均ピッチは、モアレ、虹ムラ等の光学現象の発生を充分に防止する観点から、好ましくは100〜400nm、より好ましくは100〜200nmである。複数の凸部4の平均ピッチは、具体的には、走査型電子顕微鏡で撮影された平面写真の1μm角の領域内における、すべての隣接する凸部のピッチ(図1(e)中のP)の平均値を指す。
複数の凸部4の平均高さは、後述する複数の凸部4の好ましい平均アスペクト比と両立させる観点から、好ましくは50〜600nm、より好ましくは100〜300nmである。複数の凸部4の平均高さは、具体的には、走査型電子顕微鏡で撮影された断面写真における、連続して並んだ10個の凸部の高さ(図1(e)中のH)の平均値を指す。但し、10個の凸部を選択する際は、欠損や変形した部分(測定用試料を準備する際に変形させてしまった部分等)がある凸部を除く。
複数の凸部4の平均アスペクト比は、好ましくは0.8〜1.5、より好ましくは1.0〜1.3である。複数の凸部4の平均アスペクト比が0.8よりも小さい場合、モアレ、虹ムラ等の光学現象の発生を充分に防止することができず、優れた反射防止性が得られないことがある。複数の凸部4の平均アスペクト比が1.5よりも大きい場合、凹凸構造の加工性が低下し、スティッキングが発生したり、凹凸構造を形成する際の転写具合が悪化したりする(金型5が詰まったり、巻き付いてしまう、等)ことがある。複数の凸部4の平均アスペクト比は、上述した複数の凸部4の平均高さと平均ピッチとの比(高さ/ピッチ)を指す。
複数の凸部4は、ランダムに配置されていても、周期的(規則的)に配置されていてもよい。複数の凸部4が周期的に配置されている場合、その周期性に起因する不要な回折光が発生することがあるため、複数の凸部4は、図2に示すようにランダムに配置されていることが好ましい。図2は、図1(e)中の重合体層を示す斜視模式図である。
防汚性の観点から、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に対して、水の接触角は110°以上であり、ヘキサデカンの接触角は60°以上であることが好ましい。
防汚性フィルム1の用途は、その優れた防汚性を活用するものであれば特に限定されず、例えば、反射防止フィルム等の光学フィルム用途であってもよい。このような反射防止フィルムは、表示装置の内部又は外部に取り付けられることで、視認性の向上に寄与する。
防汚性フィルム1の防汚性は、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に付着した汚れが容易に除去可能なことを意味していてもよく、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に汚れが付着しにくいことを意味していてもよい。また、防汚性フィルム1によれば、モスアイ構造による効果で、平坦面等の通常の表面を有する従来の防汚性フィルム(例えば、フッ素含有フィルム)よりも高い防汚性が得られる。
続いて、防汚性フィルム1を製造する際に用いられる各部材について、以下に説明する。
<基材>
基材2の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルメタクリレート(MMA)等の樹脂が挙げられる。基材2は、上記材料に加えて、可塑剤等の添加剤を適宜含んでいてもよい。
基材2の材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルメタクリレート(MMA)等の樹脂が挙げられる。基材2は、上記材料に加えて、可塑剤等の添加剤を適宜含んでいてもよい。
基材2の表面(重合体層3側の表面)には易接着処理(例えば、プライマー処理)が施されていてもよく、例えば、易接着処理が施されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることができる。また、基材2の表面(重合体層3側の表面)にはケン化処理が施されていてもよく、例えば、ケン化処理が施されたトリアセチルセルロースフィルムを用いることができる。
防汚性フィルム1が液晶表示装置等の偏光板を備える表示装置に取り付けられるものである場合、基材2は、偏光板の一部を構成するものであってもよい。
基材2の厚みは、透明性及び加工性を確保する観点から、好ましくは50〜100μmである。
<樹脂>
樹脂6は、パーフルオロアルキル系モノマー(R)を含有している。パーフルオロアルキル系モノマー(R)は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子当たり1個有し、かつ、フッ素原子濃度が50〜60重量%である、ものである。本明細書中、「パーフルオロアルキル系モノマー」は、パーフルオロアルキル基を有するフッ素含有モノマーを意味する。樹脂6にパーフルオロアルキル系モノマー(R)が配合されていると、フッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在し、重合体層3の表面自由エネルギーが低くなるため、防汚性が高まる。また、パーフルオロアルキル系モノマー(R)は、分子量が小さいために、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在(移行)しやすく、配合量が少なくても防汚性フィルムの防汚性が高まりやすい。また、パーフルオロアルキル系モノマー(R)は樹脂6に対する相溶性が高いため、パーフルオロアルキル系モノマー(R)の代わりにパーフルオロポリエーテル系モノマーのみがフッ素含有モノマーとして配合される場合と比較して、防汚性フィルムの透明性が高まりやすい。このような効果を得る観点から、樹脂6に配合されるパーフルオロアルキル系モノマー(R)は、フッ素含有部位として、パーフルオロアルキル基のみを有し、パーフルオロポリエーテル基等の他のフッ素含有部位を有さないことが好ましい。
樹脂6は、パーフルオロアルキル系モノマー(R)を含有している。パーフルオロアルキル系モノマー(R)は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子当たり1個有し、かつ、フッ素原子濃度が50〜60重量%である、ものである。本明細書中、「パーフルオロアルキル系モノマー」は、パーフルオロアルキル基を有するフッ素含有モノマーを意味する。樹脂6にパーフルオロアルキル系モノマー(R)が配合されていると、フッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在し、重合体層3の表面自由エネルギーが低くなるため、防汚性が高まる。また、パーフルオロアルキル系モノマー(R)は、分子量が小さいために、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在(移行)しやすく、配合量が少なくても防汚性フィルムの防汚性が高まりやすい。また、パーフルオロアルキル系モノマー(R)は樹脂6に対する相溶性が高いため、パーフルオロアルキル系モノマー(R)の代わりにパーフルオロポリエーテル系モノマーのみがフッ素含有モノマーとして配合される場合と比較して、防汚性フィルムの透明性が高まりやすい。このような効果を得る観点から、樹脂6に配合されるパーフルオロアルキル系モノマー(R)は、フッ素含有部位として、パーフルオロアルキル基のみを有し、パーフルオロポリエーテル基等の他のフッ素含有部位を有さないことが好ましい。
パーフルオロアルキル系モノマー(R)は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子当たり1個有している。パーフルオロアルキル系モノマー(R)において、アクリロイル基又はメタクリロイル基は、光、熱等の外部エネルギーによって他の成分と反応する重合性官能基として機能する。このような重合性官能基を有さないパーフルオロアルキル系モノマーによれば、樹脂6中で架橋することがないために、防汚性が長期的に得られない。また、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子当たり2個以上有するパーフルオロアルキル系モノマーによれば、分子量が大きくなるために、樹脂6中の他の成分との相溶性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)。更に、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子当たり2個以上有するパーフルオロアルキル系モノマーは、重合体層3中で主骨格又は分岐部を構成し、架橋構造に取り込まれやすくなるため、パーフルオロアルキル系モノマー(R)と比較して、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在しにくくなる。
パーフルオロアルキル系モノマー(R)中のフッ素原子濃度は、50〜60重量%である。パーフルオロアルキル系モノマー(R)中のフッ素原子濃度が50重量%よりも低い場合、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在するフッ素原子の量が少なくなり、防汚性が低下する。パーフルオロアルキル系モノマー(R)中のフッ素原子濃度が60重量%よりも高い場合、重合体層3が軟らかくなるために耐擦性が低下し、また、樹脂6中の他の成分との相溶性が低下するために防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化)。
樹脂6中のパーフルオロアルキル系モノマー(R)の含有率は、有効成分換算で、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは2〜4重量%である。パーフルオロアルキル系モノマー(R)の含有率が有効成分換算で0.5重量%よりも低い場合、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在するフッ素原子の量が少なくなり、防汚性が低下することがある。パーフルオロアルキル系モノマー(R)の含有率が有効成分換算で5重量%よりも高い場合、重合体層3が軟らかくなり、耐擦性が低下することがある。樹脂6が複数種のパーフルオロアルキル系モノマー(R)を含有する場合、複数種のパーフルオロアルキル系モノマー(R)の含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。本明細書中、「有効成分」は、硬化後に重合体層3の構成成分となるものを指し、硬化反応(重合反応)に寄与しない成分(例えば、溶剤)を除いたものを意味する。
パーフルオロアルキル系モノマー(R)としては、例えば、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチルアクリレート等が挙げられる。
1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレートの公知例としては、大阪有機化学工業社製の「ビスコート8F」等が挙げられる。1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレートの公知例としては、大阪有機化学工業社製の「ビスコート8FM」等が挙げられる。1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチルアクリレートの公知例としては、大阪有機化学工業社製の「ビスコート13F」等が挙げられる。
樹脂6は、パーフルオロアルキル系モノマー(R)とは別に、パーフルオロポリエーテル系モノマーを更に含有することが好ましい。本明細書中、「パーフルオロポリエーテル系モノマー」は、パーフルオロポリエーテル基を有するフッ素含有モノマーを意味する。パーフルオロポリエーテル系モノマーをパーフルオロアルキル系モノマー(R)と併用することで、フッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)により多く偏在し、防汚性がより高まる。また、パーフルオロポリエーテル系モノマーは、動きやすいために、重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)の滑り性が高まりやすく、結果的に、耐擦性が高まりやすい。このような効果を得る観点から、樹脂6に配合されるパーフルオロポリエーテル系モノマーは、フッ素含有部位として、パーフルオロポリエーテル基のみを有し、パーフルオロアルキル基等の他のフッ素含有部位を有さないことが好ましい。
防汚性をより高める観点から、樹脂6中のパーフルオロポリエーテル系モノマーの含有率は、有効成分換算で、好ましくは0.5〜3重量%、より好ましくは1〜2重量%である。樹脂6が複数種のパーフルオロポリエーテル系モノマーを含有する場合、複数種のパーフルオロポリエーテル系モノマーの含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。
パーフルオロポリエーテル系モノマーの公知例としては、ソルベイ社製の「フォンブリン(登録商標)MT70」、「フルオロリンク(登録商標)AD1700」等に含まれる有効成分(パーフルオロポリエーテル誘導体)が挙げられる。
樹脂6は、単官能アミドモノマーを更に含有していてもよい。本明細書中、「単官能アミドモノマー」は、アミド基を有し、かつ、アクリロイル基を1分子当たり1個有するモノマーを意味する。樹脂6に単官能アミドモノマーが配合されていると、パーフルオロアルキル系モノマー(R)を含むフッ素含有モノマーとの相溶性が高まるため、フッ素含有モノマー中のフッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在しやすくなり、防汚性がより高まる。また、樹脂層9の硬化収縮が抑制され、基材2との凝集力が高まるため、重合体層3と基材2との密着性が高まる。一方、樹脂6に単官能アミドモノマーが配合されていると、金型5を転写する際に、単官能アミドモノマーが金型5側に浸透して、離型処理剤7と相溶することによって、金型5から離型処理剤7が剥がれやすくなることが懸念される。これに対して、本実施形態では、後述するフッ素系溶剤8の作用効果によって、樹脂6に単官能アミドモノマーが配合されている場合であっても、単官能アミドモノマーの浸透による離型処理剤7の剥がれが防止される。そのため、金型5の転写回数が増加しても、重合体層3及び金型5の離型性の低下が抑制され、得られる防汚性フィルム1の防汚性が高く維持される。
樹脂6中の単官能アミドモノマーの含有率は、有効成分換算で、好ましくは1〜14重量%、より好ましくは1.5〜10重量%である。単官能アミドモノマーの含有率が有効成分換算で1重量%よりも低い場合、重合体層3と基材2との密着性が充分に高まらないことがある。単官能アミドモノマーの含有率が有効成分換算で14重量%よりも高い場合、重合体層3の架橋密度が高まらず、結果的に、耐擦性が低下することがある。樹脂6が複数種の単官能アミドモノマーを含有する場合、複数種の単官能アミドモノマーの含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。
単官能アミドモノマーとしては、例えば、N−アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド等が挙げられる。
N−アクリロイルモルホリンの公知例としては、KJケミカルズ社製の「ACMO(登録商標)」等が挙げられる。N,N−ジメチルアクリルアミドの公知例としては、KJケミカルズ社製の「DMAA(登録商標)」等が挙げられる。N,N−ジエチルアクリルアミドの公知例としては、KJケミカルズ社製の「DEAA(登録商標)」等が挙げられる。N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドの公知例としては、KJケミカルズ社製の「HEAA(登録商標)」等が挙げられる。ダイアセトンアクリルアミドの公知例としては、日本化成社製の「DAAM(登録商標)」等が挙げられる。N−n−ブトキシメチルアクリルアミドの公知例としては、MRCユニテック社製の「NBMA」等が挙げられる。
樹脂6は、多官能アクリレートを更に含有していてもよい。本明細書中、「多官能アクリレート」は、アクリロイル基を1分子当たり2個以上有するアクリレートを意味する。樹脂6に多官能アクリレートが配合されていると、重合体層3の架橋密度が高まり、適度な弾性(硬度)が付与されるため、耐擦性が高まる。
多官能アクリレートの官能基数は、2個以上であり、好ましくは4個以上、より好ましくは6個以上である。本明細書中、「多官能アクリレートの官能基数」は、1分子当たりのアクリロイル基の個数を意味する。多官能アクリレートの官能基数が多過ぎると、分子量が大きくなるために、樹脂6中の他の成分(例えば、パーフルオロアルキル系モノマー(R))との相溶性が低下し、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)ことがある。また、樹脂層9の硬化収縮等によって、重合体層3と基材2との密着性が低下することがある。このような観点から、多官能アクリレートの官能基数の好ましい上限値は、10個である。
多官能アクリレートは、エチレンオキサイド基を有する多官能アクリレートを少なくとも一種含むことが好ましい。これにより、重合体層3による適度な弾性(硬度)が付与されるため、耐擦性がより高まる。
樹脂6中の多官能アクリレートの含有率は、有効成分換算で、好ましくは75〜98重量%、より好ましくは80〜97.5重量%である。多官能アクリレートの含有率が有効成分換算で75重量%よりも低い場合、重合体層3が硬くなり、結果的に、耐擦性が低下することがある。多官能アクリレートの含有率が有効成分換算で98重量%よりも高い場合、重合体層3の架橋密度が高まらず、結果的に、耐擦性が低下することがある。樹脂6が複数種の多官能アクリレートを含有する場合、複数種の多官能アクリレートの含有率の合計が有効成分換算で上記範囲内であることが好ましい。
多官能アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
ポリエチレングリコール(200)ジアクリレートの公知例としては、新中村化学工業社製の「NKエステルA−200」等が挙げられる。ポリエチレングリコール(400)ジアクリレートの公知例としては、新中村化学工業社製の「NKエステルA−400」等が挙げられる。ポリエチレングリコール(600)ジアクリレートの公知例としては、新中村化学工業社製の「NKエステルA−600」等が挙げられる。ウレタンアクリレートの公知例としては、新中村化学工業社製の「U−10HA」等が挙げられる。
樹脂6は、重合開始剤を更に含有していてもよい。樹脂6に重合開始剤が配合されていると、樹脂層9の硬化性が高まる。
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤等が挙げられ、中でも、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は、活性エネルギー線に対して活性であり、モノマーを重合する重合反応を開始させるために添加されるものである。
光重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤等が挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のアルキルフェノン類、等が挙げられる。
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドの公知例としては、IGM Resins社製の「LUCIRIN(登録商標) TPO」、「IRGACURE(登録商標) TPO」等が挙げられる。ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドの公知例としては、IGM Resins社製の「IRGACURE 819」等が挙げられる。1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの公知例としては、IGM Resins社製の「IRGACURE 184」等が挙げられる。
樹脂6は、溶剤を更に含有していてもよい。この場合、溶剤は、樹脂6の各成分中に有効成分とともに含有されていてもよく、各成分とは独立して含有されていてもよい。
溶剤としては、例えば、アルコール(炭素数1〜10:例えば、メタノール、エタノール、n−又はi−プロパノール、n−、sec−、又は、t−ブタノール、ベンジルアルコール、オクタノール等)、ケトン(炭素数3〜8:例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル又はエーテルエステル(炭素数4〜10:例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等)、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルアセテート、エーテル(炭素数4〜10:例えば、EGモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、EGモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、芳香族炭化水素(炭素数6〜10:例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド(炭素数3〜10:例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、ハロゲン化炭化水素(炭素数1〜2:例えば、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等)、石油系溶剤(例えば、石油エーテル、石油ナフサ等)、等が挙げられる。
樹脂6の厚みT1は、好ましくは5〜15μm、より好ましくは7〜12μmである。樹脂6の厚みT1が5μmよりも小さい場合、重合体層3(樹脂層9)中のフッ素原子の量が少なくなり、防汚性が低下することがある。樹脂6の厚みT1が15μmよりも大きい場合、重合体層3(樹脂層9)の物性バランスが崩れ、結果的に、耐擦性が低下することがある。
樹脂6の粘度は、25℃において、好ましくは30cPよりも低い。樹脂6の粘度が30cP以上である場合、樹脂6中のパーフルオロアルキル系モノマー(R)の流動性が低下し、フッ素原子が重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に偏在しにくくなることがある。
<金型>
金型5としては、例えば、下記の方法で作製されるものを用いることができる。まず、金型5の材料となるアルミニウムを、支持基材の表面上にスパッタリング法によって成膜する。次に、成膜されたアルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返すことによって、モスアイ構造の雌型(金型5)を作製することができる。この際、陽極酸化を行う時間、及び、エッチングを行う時間を調整することによって、金型5の凹凸構造を変化させることができる。
金型5としては、例えば、下記の方法で作製されるものを用いることができる。まず、金型5の材料となるアルミニウムを、支持基材の表面上にスパッタリング法によって成膜する。次に、成膜されたアルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返すことによって、モスアイ構造の雌型(金型5)を作製することができる。この際、陽極酸化を行う時間、及び、エッチングを行う時間を調整することによって、金型5の凹凸構造を変化させることができる。
支持基材の材料としては、例えば、ガラス;ステンレス、ニッケル等の金属;ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的には、ノルボルネン系樹脂等である、日本ゼオン社製の「ゼオノア(登録商標)」、JSR社製の「アートン(登録商標)」)等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等の樹脂、等が挙げられる。また、支持基材の表面上にアルミニウムを成膜したものの代わりに、アルミニウム製の基材を用いてもよい。
金型5の形状としては、例えば、平板状、ロール状等が挙げられる。
<離型処理剤>
離型処理剤7は、金型5の表面の離型処理を目的として用いられるものである。離型処理剤7によれば、金型5の離型性(例えば、撥水性)が高まり、金型5を重合体層3から容易に剥離することができる。また、金型5の表面自由エネルギーが低くなるため、基材2を金型5に押し当てる際(上記(c))に、パーフルオロアルキル系モノマー(R)を含むフッ素含有モノマー中のフッ素原子を樹脂層9の表面(基材2とは反対側の表面)に均一に分布させることができる。更に、樹脂層9を硬化させる前に、フッ素原子が樹脂層9の表面(基材2とは反対側の表面)から離れてしまうことを防止することができる。その結果、防汚性フィルム1において、フッ素原子を重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に均一に分布させることができる。
離型処理剤7は、金型5の表面の離型処理を目的として用いられるものである。離型処理剤7によれば、金型5の離型性(例えば、撥水性)が高まり、金型5を重合体層3から容易に剥離することができる。また、金型5の表面自由エネルギーが低くなるため、基材2を金型5に押し当てる際(上記(c))に、パーフルオロアルキル系モノマー(R)を含むフッ素含有モノマー中のフッ素原子を樹脂層9の表面(基材2とは反対側の表面)に均一に分布させることができる。更に、樹脂層9を硬化させる前に、フッ素原子が樹脂層9の表面(基材2とは反対側の表面)から離れてしまうことを防止することができる。その結果、防汚性フィルム1において、フッ素原子を重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に均一に分布させることができる。
離型処理剤7としては、例えば、フッ素系材料、シリコン系材料、リン酸エステル系材料等が挙げられる。フッ素系材料としては、パーフルオロポリエーテル系材料が好ましく用いられ、その公知例としては、ダイキン工業社製の「オプツール(登録商標)DSX」、「オプツールAES4」等が挙げられる。
<フッ素系溶剤>
フッ素系溶剤8は、沸点が50℃以上であり、金型5の転写に伴う離型処理剤7の剥がれを防止しつつ、得られる防汚性フィルム1の防汚性を高めることを目的として用いられるものである。離型処理剤7が塗布された金型5の表面上にフッ素系溶剤8を塗布すること(上記(b))によって、フッ素系溶剤8が金型5の凹凸構造(少なくとも凸部間)に残存している状態で、基材2を金型5に押し当て、凹凸構造を表面に有する樹脂層9を形成すること(上記(c))ができる。よって、基材2を金型5に押し当てる際に、樹脂6と離型処理剤7とが物理化学的に接触することが防止され、結果的に、金型5の転写に伴う離型処理剤7の剥がれが防止される。そのため、金型5の転写回数が増加しても、重合体層3及び金型5の離型性の低下が抑制され、得られる防汚性フィルム1の防汚性が高く維持される。更に、基材2を金型5に押し当てる際、フッ素系溶剤8が金型5の凹凸構造(少なくとも凸部間)に残存している状態であるため、フッ素系溶剤8の作用によって、パーフルオロアルキル系モノマー(R)を含むフッ素含有モノマーが樹脂層9の表面(基材2とは反対側の表面)に引き寄せられやすくなる。その結果、防汚性フィルム1において、フッ素原子を重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に高濃度で偏在させることができる。
フッ素系溶剤8は、沸点が50℃以上であり、金型5の転写に伴う離型処理剤7の剥がれを防止しつつ、得られる防汚性フィルム1の防汚性を高めることを目的として用いられるものである。離型処理剤7が塗布された金型5の表面上にフッ素系溶剤8を塗布すること(上記(b))によって、フッ素系溶剤8が金型5の凹凸構造(少なくとも凸部間)に残存している状態で、基材2を金型5に押し当て、凹凸構造を表面に有する樹脂層9を形成すること(上記(c))ができる。よって、基材2を金型5に押し当てる際に、樹脂6と離型処理剤7とが物理化学的に接触することが防止され、結果的に、金型5の転写に伴う離型処理剤7の剥がれが防止される。そのため、金型5の転写回数が増加しても、重合体層3及び金型5の離型性の低下が抑制され、得られる防汚性フィルム1の防汚性が高く維持される。更に、基材2を金型5に押し当てる際、フッ素系溶剤8が金型5の凹凸構造(少なくとも凸部間)に残存している状態であるため、フッ素系溶剤8の作用によって、パーフルオロアルキル系モノマー(R)を含むフッ素含有モノマーが樹脂層9の表面(基材2とは反対側の表面)に引き寄せられやすくなる。その結果、防汚性フィルム1において、フッ素原子を重合体層3の表面(基材2とは反対側の表面)に高濃度で偏在させることができる。
フッ素系溶剤8の沸点は、50℃以上である。フッ素系溶剤8の沸点が50℃よりも低い場合、フッ素系溶剤8が揮発しやすくなるため、基材2を金型5に押し当てる際のフッ素系溶剤8の残存量が少なくなり、上述したフッ素系溶剤8の作用効果が得られなくなる。一方、フッ素系溶剤8の沸点が高過ぎると、基材2を金型5に押し当てる際のフッ素系溶剤8の残存量が多過ぎてしまい(例えば、フッ素系溶剤8が全く揮発せず)、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)ことがある。このような観点から、フッ素系溶剤8の沸点の好ましい上限値は、160℃である。
フッ素系溶剤8の厚みT2は、好ましくは0.05〜1μm、より好ましくは0.1〜0.6μmである。フッ素系溶剤8の厚みT2が0.05μmよりも小さい場合、基材2を金型5に押し当てる際のフッ素系溶剤8の残存量が少なくなり、上述したフッ素系溶剤8の作用効果が得られにくいことがある。フッ素系溶剤8の厚みT2が1μmよりも大きい場合、基材2を金型5に押し当てる際のフッ素系溶剤8の残存量が多くなり、結果的に、防汚性フィルム1(重合体層3)の透明性が低下する(白化する)ことがある。
フッ素系溶剤8の公知例としては、例えば、スリーエムジャパン社製の「Novec(登録商標)7100」、「Novec7300」、「フロリナートFC−72」、「フロリナートFC−770」、「フロリナートFC−40」、旭硝子社製の「アサヒクリン(登録商標)AE−3000」等が挙げられる。
[実施例及び比較例]
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
実施例及び比較例において、防汚性フィルムを製造するために用いた材料は以下の通りである。
<基材>
富士フイルム社製の「TAC−TD80U」を用い、その厚みは80μmであった。
富士フイルム社製の「TAC−TD80U」を用い、その厚みは80μmであった。
<樹脂>
表1、2に示すような組成(有効成分量)の樹脂A1〜A9を用いた。各成分の略称は、以下の通りである。
表1、2に示すような組成(有効成分量)の樹脂A1〜A9を用いた。各成分の略称は、以下の通りである。
(パーフルオロアルキル系モノマー(R))
・「V8F」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート8F」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のアクリロイル基)
フッ素原子濃度:53.1重量%
・「V8FM」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート8FM」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のメタクリロイル基)
フッ素原子濃度:50.6重量%
・「V13F」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート13F」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のアクリロイル基)
フッ素原子濃度:59.1重量%
・「V8F」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート8F」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のアクリロイル基)
フッ素原子濃度:53.1重量%
・「V8FM」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート8FM」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のメタクリロイル基)
フッ素原子濃度:50.6重量%
・「V13F」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート13F」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のアクリロイル基)
フッ素原子濃度:59.1重量%
(パーフルオロアルキル系モノマー(R)以外のパーフルオロアルキル系モノマー)
・「V3F」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート3F」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のアクリロイル基)
フッ素原子濃度:37重量%
・「V4F」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート4F」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のアクリロイル基)
フッ素原子濃度:40.8重量%
・「C10A」
Exfluor社製の「C10ACRY」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のアクリロイル基)
フッ素原子濃度:65重量%
・「V3F」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート3F」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のアクリロイル基)
フッ素原子濃度:37重量%
・「V4F」
大阪有機化学工業社製の「ビスコート4F」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のアクリロイル基)
フッ素原子濃度:40.8重量%
・「C10A」
Exfluor社製の「C10ACRY」(有効成分:100重量%)
パーフルオロアルキル基:有する
パーフルオロポリエーテル基:有さない
アクリロイル基又はメタクリロイル基:有する(1分子当たり1個のアクリロイル基)
フッ素原子濃度:65重量%
(パーフルオロポリエーテル系モノマー)
・「MT70」
ソルベイ社製の「フォンブリンMT70」(有効成分:80重量%)中のパーフルオロポリエーテル誘導体
パーフルオロアルキル基:有さない
パーフルオロポリエーテル基:有する
・「MT70」
ソルベイ社製の「フォンブリンMT70」(有効成分:80重量%)中のパーフルオロポリエーテル誘導体
パーフルオロアルキル基:有さない
パーフルオロポリエーテル基:有する
(単官能アミドモノマー)
・「AC」
KJケミカルズ社製の「ACMO」(有効成分:100重量%)
・「AC」
KJケミカルズ社製の「ACMO」(有効成分:100重量%)
(多官能アクリレート)
・「A−200」
新中村化学工業社製の「NKエステルA−200」(有効成分:100重量%)
官能基数:2個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり4個
・「A−400」
新中村化学工業社製の「NKエステルA−400」(有効成分:100重量%)
官能基数:2個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり9個
・「A−600」
新中村化学工業社製の「NKエステルA−600」(有効成分:100重量%)
官能基数:2個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり14個
・「U−10」
新中村化学工業社製の「U−10HA」(有効成分:100重量%)
官能基数:10個
・「A−200」
新中村化学工業社製の「NKエステルA−200」(有効成分:100重量%)
官能基数:2個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり4個
・「A−400」
新中村化学工業社製の「NKエステルA−400」(有効成分:100重量%)
官能基数:2個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり9個
・「A−600」
新中村化学工業社製の「NKエステルA−600」(有効成分:100重量%)
官能基数:2個
エチレンオキサイド基の個数:1分子当たり14個
・「U−10」
新中村化学工業社製の「U−10HA」(有効成分:100重量%)
官能基数:10個
(重合開始剤)
・「819」
IGM Resins社製の「IRGACURE 819」(有効成分:100重量%)
・「819」
IGM Resins社製の「IRGACURE 819」(有効成分:100重量%)
樹脂A1〜A9中の各成分の含有率(有効成分換算)を、表3、4に示す。
<金型>
下記の方法で作製したものを用いた。まず、金型の材料となるアルミニウムを、10cm角のガラス基板上にスパッタリング法によって成膜した。成膜されたアルミニウムの層の厚みは、1.0μmであった。次に、成膜されたアルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返すことによって、多数の微小な穴(隣り合う穴(凹部)の底点間の距離が可視光の波長以下)が設けられた陽極酸化層を形成した。具体的には、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、及び、陽極酸化を順に行う(陽極酸化:5回、エッチング:4回)ことによって、アルミニウムの層の内部に向かって細くなる形状(テーパー形状)を有する微小な穴(凹部)を多数形成し、その結果、凹凸構造を有する金型が得られた。陽極酸化は、シュウ酸(濃度:0.03重量%)を用いて、液温5℃、印加電圧80Vの条件下で行った。1回の陽極酸化を行う時間は、25秒とした。エッチングは、リン酸(濃度:1mol/l)を用いて、液温30℃の条件下で行った。1回のエッチングを行う時間は、25分とした。金型を走査型電子顕微鏡で観察したところ、凹部の深さは290nmであった。その後、金型の表面に対して、ダイキン工業社製の「オプツールAES4」を離型処理剤として塗布し、離型処理を予め施した。そして、離型処理が施された金型の表面に対して、酸素プラズマ洗浄(出力:100W)を20秒間行い、水の接触角(滴下直後の接触角)が125〜130°となるように調整した。このような調整は、金型を意図的に劣化させ、金型の初期の離型性を各例間で揃えることを目的として行われた。
下記の方法で作製したものを用いた。まず、金型の材料となるアルミニウムを、10cm角のガラス基板上にスパッタリング法によって成膜した。成膜されたアルミニウムの層の厚みは、1.0μmであった。次に、成膜されたアルミニウムの層に対して、陽極酸化及びエッチングを交互に繰り返すことによって、多数の微小な穴(隣り合う穴(凹部)の底点間の距離が可視光の波長以下)が設けられた陽極酸化層を形成した。具体的には、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、及び、陽極酸化を順に行う(陽極酸化:5回、エッチング:4回)ことによって、アルミニウムの層の内部に向かって細くなる形状(テーパー形状)を有する微小な穴(凹部)を多数形成し、その結果、凹凸構造を有する金型が得られた。陽極酸化は、シュウ酸(濃度:0.03重量%)を用いて、液温5℃、印加電圧80Vの条件下で行った。1回の陽極酸化を行う時間は、25秒とした。エッチングは、リン酸(濃度:1mol/l)を用いて、液温30℃の条件下で行った。1回のエッチングを行う時間は、25分とした。金型を走査型電子顕微鏡で観察したところ、凹部の深さは290nmであった。その後、金型の表面に対して、ダイキン工業社製の「オプツールAES4」を離型処理剤として塗布し、離型処理を予め施した。そして、離型処理が施された金型の表面に対して、酸素プラズマ洗浄(出力:100W)を20秒間行い、水の接触角(滴下直後の接触角)が125〜130°となるように調整した。このような調整は、金型を意図的に劣化させ、金型の初期の離型性を各例間で揃えることを目的として行われた。
<フッ素系溶剤>
各フッ素系溶剤の略称は、以下の通りである。
・「N7100」
スリーエムジャパン社製の「Novec7100」
沸点:61℃
・「N7300」
スリーエムジャパン社製の「Novec7300」
沸点:98℃
・「FC−72」
スリーエムジャパン社製の「フロリナートFC−72」
沸点:56℃
・「FC−770」
スリーエムジャパン社製の「フロリナートFC−770」
沸点:95℃
・「FC−40」
スリーエムジャパン社製の「フロリナートFC−40」
沸点:155℃
・「N7000」
スリーエムジャパン社製の「Novec7000」
沸点:34℃
各フッ素系溶剤の略称は、以下の通りである。
・「N7100」
スリーエムジャパン社製の「Novec7100」
沸点:61℃
・「N7300」
スリーエムジャパン社製の「Novec7300」
沸点:98℃
・「FC−72」
スリーエムジャパン社製の「フロリナートFC−72」
沸点:56℃
・「FC−770」
スリーエムジャパン社製の「フロリナートFC−770」
沸点:95℃
・「FC−40」
スリーエムジャパン社製の「フロリナートFC−40」
沸点:155℃
・「N7000」
スリーエムジャパン社製の「Novec7000」
沸点:34℃
(実施例1)
実施例1の防汚性フィルムを、上述した実施形態の製造方法によって製造した。
実施例1の防汚性フィルムを、上述した実施形態の製造方法によって製造した。
(a)樹脂の塗布
樹脂A1を基材の表面上に塗布した。樹脂A1の厚みは、10μmであった。
樹脂A1を基材の表面上に塗布した。樹脂A1の厚みは、10μmであった。
(b)フッ素系溶剤の塗布
離型処理剤が塗布された金型の表面上に、フッ素系溶剤「N7100」を塗布した。フッ素系溶剤の厚みは、0.2μmであった。
離型処理剤が塗布された金型の表面上に、フッ素系溶剤「N7100」を塗布した。フッ素系溶剤の厚みは、0.2μmであった。
(c)樹脂層の形成
樹脂A1を間に挟んだ状態で、基材を金型のフッ素系溶剤が塗布された表面に押し当てた。その結果、凹凸構造を表面(基材とは反対側の表面)に有する樹脂層が形成された。
樹脂A1を間に挟んだ状態で、基材を金型のフッ素系溶剤が塗布された表面に押し当てた。その結果、凹凸構造を表面(基材とは反対側の表面)に有する樹脂層が形成された。
(d)重合体層の形成
樹脂層に対して、基材側から紫外線(照射量:1J/cm2)を照射して硬化させた。その結果、重合体層が形成された。
樹脂層に対して、基材側から紫外線(照射量:1J/cm2)を照射して硬化させた。その結果、重合体層が形成された。
(e)金型の剥離
金型を重合体層から剥離した。その結果、防汚性フィルムが完成した。重合体層の厚みは、10μmであった。
金型を重合体層から剥離した。その結果、防汚性フィルムが完成した。重合体層の厚みは、10μmであった。
防汚性フィルムの表面仕様は、下記の通りであった。
凸部の形状:釣鐘状
凸部の平均ピッチ:200nm
凸部の平均高さ:200nm
凸部の平均アスペクト比:1.0
凸部の形状:釣鐘状
凸部の平均ピッチ:200nm
凸部の平均高さ:200nm
凸部の平均アスペクト比:1.0
防汚性フィルムの表面仕様の評価は、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡「S−4700」を用いて行われた。なお、評価時には、メイワフォーシス社製のオスミウムコーター「Neoc−ST」を用いて、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)上に富士フイルム和光純薬社製の酸化オスミウムVIII(厚み:5nm)が塗布されていた。
その後、上記(a)〜(e)(金型の転写)を20回繰り返した。以下では、金型の転写回数が1回目である場合を「仕様1」、金型の転写回数が20回目である場合を「仕様2」と呼ぶ。つまり、1回目の金型の転写で得られた防汚性フィルムを「仕様1の防汚性フィルム」、20回目の金型の転写で得られた防汚性フィルムを「仕様2の防汚性フィルム」と呼ぶ。また、1回目の転写後の金型を「仕様1の金型」、20回目の転写後の金型を「仕様2の金型」と呼ぶ。
(実施例2〜7、及び、比較例1〜5)
表5〜7に示すような条件に変更したこと以外、実施例1と同様にして、各例の防汚性フィルムを製造した。
表5〜7に示すような条件に変更したこと以外、実施例1と同様にして、各例の防汚性フィルムを製造した。
[評価]
各例の防汚性フィルム及び金型について、以下の評価を行った。結果を、表5〜7に示す。
各例の防汚性フィルム及び金型について、以下の評価を行った。結果を、表5〜7に示す。
<透明性>
仕様2の防汚性フィルムについて、日本電色工業社製のヘイズメーター「NDH7000」を用いて、ヘイズ(単位:%)を測定した。なお、ヘイズが小さいほど透明性が高いことを意味する。判定基準は、下記の通りとした。
○:「ヘイズ」≦0.5
△:0.5<「ヘイズ」<1.0
×:「ヘイズ」≧1.0
ここで、判定が○である場合を、透明性が優れていると判断した。
仕様2の防汚性フィルムについて、日本電色工業社製のヘイズメーター「NDH7000」を用いて、ヘイズ(単位:%)を測定した。なお、ヘイズが小さいほど透明性が高いことを意味する。判定基準は、下記の通りとした。
○:「ヘイズ」≦0.5
△:0.5<「ヘイズ」<1.0
×:「ヘイズ」≧1.0
ここで、判定が○である場合を、透明性が優れていると判断した。
<防汚性>
防汚性としては、防汚性フィルムの撥水性、撥油性、及び、指紋拭き取り性を評価した。
防汚性としては、防汚性フィルムの撥水性、撥油性、及び、指紋拭き取り性を評価した。
(撥水性)
仕様1、2の防汚性フィルムの各々について、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に対して水を滴下し、滴下直後の接触角を測定した。
仕様1、2の防汚性フィルムの各々について、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に対して水を滴下し、滴下直後の接触角を測定した。
(撥油性)
仕様1、2の防汚性フィルムの各々について、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に対してヘキサデカンを滴下し、滴下直後の接触角を測定した。
仕様1、2の防汚性フィルムの各々について、重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に対してヘキサデカンを滴下し、滴下直後の接触角を測定した。
接触角としては、協和界面科学社製のポータブル接触角計「PCA−1」を用いて、θ/2法(θ/2=arctan(h/r)、θ:接触角、r:液滴の半径、h:液滴の高さ)で測定された、3箇所の接触角の平均値を示した。ここで、1箇所目の測定点としては、防汚性フィルムの中央部分を選択し、2箇所目及び3箇所目の測定点としては、1箇所目の測定点から20mm以上離れ、かつ、1箇所目の測定点に対して互いに点対称な位置にある2点を選択した。
(指紋拭き取り性)
まず、仕様2の防汚性フィルムに対して、基材の重合体層とは反対側の表面に、光学粘着層を介して、黒アクリル板を貼り付けた。そして、仕様2の防汚性フィルムの重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に指紋を付着させた後、旭化成せんい社製の「ベンコット(登録商標)S−2」で10往復擦り、指紋が拭き取れるかどうかを、照度100lx(蛍光灯)の環境下で目視観察した。判定基準は、下記の通りとした。
○:指紋が完全に拭き取れ、拭き残りが見えなかった。
△:指紋は目立たないが、蛍光灯を映り込ませると拭き残りがわずかに見えた。
×:指紋が全く拭き取れなかった。
ここで、判定が○又は△である場合を、指紋拭き取り性が優れていると判断した。
まず、仕様2の防汚性フィルムに対して、基材の重合体層とは反対側の表面に、光学粘着層を介して、黒アクリル板を貼り付けた。そして、仕様2の防汚性フィルムの重合体層の表面(基材とは反対側の表面)に指紋を付着させた後、旭化成せんい社製の「ベンコット(登録商標)S−2」で10往復擦り、指紋が拭き取れるかどうかを、照度100lx(蛍光灯)の環境下で目視観察した。判定基準は、下記の通りとした。
○:指紋が完全に拭き取れ、拭き残りが見えなかった。
△:指紋は目立たないが、蛍光灯を映り込ませると拭き残りがわずかに見えた。
×:指紋が全く拭き取れなかった。
ここで、判定が○又は△である場合を、指紋拭き取り性が優れていると判断した。
<離型性>
離型性としては、金型の撥水性を評価した。
離型性としては、金型の撥水性を評価した。
(撥水性)
まず、仕様1、2の金型の各々について、表面(離型処理が施された表面)に対して水を滴下し、滴下直後の接触角を測定した。そして、仕様1、2の金型における水の接触角(単位:°)から、下記式(X)に基づいて、水の接触角の変化率(単位:%)を算出した。
「水の接触角の変化率」=100×(「仕様1の金型における水の接触角」−「仕様2の金型における水の接触角」)/「仕様1の金型における水の接触角」 (X)
判定基準は、下記の通りとした。
○:「水の接触角の変化率」<5
△:5≦「水の接触角の変化率」<10
×:「水の接触角の変化率」≧10
ここで、判定が○又は△である場合を、金型の転写回数が増加しても、金型の離型性(撥水性)が高く維持されていると判断した。
まず、仕様1、2の金型の各々について、表面(離型処理が施された表面)に対して水を滴下し、滴下直後の接触角を測定した。そして、仕様1、2の金型における水の接触角(単位:°)から、下記式(X)に基づいて、水の接触角の変化率(単位:%)を算出した。
「水の接触角の変化率」=100×(「仕様1の金型における水の接触角」−「仕様2の金型における水の接触角」)/「仕様1の金型における水の接触角」 (X)
判定基準は、下記の通りとした。
○:「水の接触角の変化率」<5
△:5≦「水の接触角の変化率」<10
×:「水の接触角の変化率」≧10
ここで、判定が○又は△である場合を、金型の転写回数が増加しても、金型の離型性(撥水性)が高く維持されていると判断した。
表5、6に示すように、実施例1〜7では、金型の転写回数が増加しても、重合体層及び金型の離型性の低下を抑制しつつ、防汚性に優れた防汚性フィルムを製造することができた。
一方、表7に示すように、比較例1〜5では、金型の転写回数が増加すると、重合体層及び金型の離型性の低下が抑制されず、防汚性に優れた防汚性フィルムを製造することができなかった。
比較例1では、樹脂に配合されたパーフルオロアルキル系モノマーのフッ素原子濃度が50重量%よりも低く、フッ素系溶剤の沸点が50℃よりも低かったため、金型の転写回数が増加すると、重合体層及び金型の離型性が低下し、結果的に、防汚性フィルムの防汚性が低下した。
比較例2では、フッ素系溶剤の沸点が50℃よりも低かったため、金型の転写回数が増加すると、重合体層及び金型の離型性が低下し、結果的に、防汚性フィルムの防汚性が低下した。
比較例3では、樹脂に配合されたパーフルオロアルキル系モノマーのフッ素原子濃度が50重量%よりも低かったため、防汚性フィルムの防汚性が低下した。
比較例4では、フッ素含有モノマーとしてパーフルオロポリエーテル系モノマーのみが樹脂に配合されていたため、防汚性フィルムの防汚性が高まりにくかった。また、パーフルオロポリエーテル系モノマーは樹脂中の他の成分と相溶しにくかったため、結果的に、防汚性フィルムの透明性が低下した。
比較例5では、樹脂に配合されたパーフルオロアルキル系モノマーのフッ素原子濃度が60重量%よりも高かったため、樹脂中の他の成分との相溶性が低下し、防汚性フィルムが白化した。
[付記]
本発明の一態様は、基材と、上記基材の表面上に配置され、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層と、を備える防汚性フィルムの製造方法であって、樹脂を上記基材の表面上に塗布するプロセス(1)と、離型処理剤が塗布された金型の表面上にフッ素系溶剤を塗布するプロセス(2)と、上記樹脂を間に挟んだ状態で、上記基材を上記金型の上記フッ素系溶剤が塗布された表面に押し当て、上記凹凸構造を表面に有する樹脂層を形成するプロセス(3)と、上記樹脂層を硬化させ、上記重合体層を形成するプロセス(4)と、を含み、上記樹脂は、パーフルオロアルキル系モノマーを含有し、上記パーフルオロアルキル系モノマーは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子当たり1個有し、かつ、フッ素原子濃度が50〜60重量%であり、上記フッ素系溶剤の沸点は、50℃以上である防汚性フィルムの製造方法であってもよい。本態様によれば、上記金型の転写回数が増加しても、上記重合体層及び上記金型の離型性の低下を抑制しつつ、防汚性に優れた防汚性フィルムを製造することができる。
本発明の一態様は、基材と、上記基材の表面上に配置され、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層と、を備える防汚性フィルムの製造方法であって、樹脂を上記基材の表面上に塗布するプロセス(1)と、離型処理剤が塗布された金型の表面上にフッ素系溶剤を塗布するプロセス(2)と、上記樹脂を間に挟んだ状態で、上記基材を上記金型の上記フッ素系溶剤が塗布された表面に押し当て、上記凹凸構造を表面に有する樹脂層を形成するプロセス(3)と、上記樹脂層を硬化させ、上記重合体層を形成するプロセス(4)と、を含み、上記樹脂は、パーフルオロアルキル系モノマーを含有し、上記パーフルオロアルキル系モノマーは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子当たり1個有し、かつ、フッ素原子濃度が50〜60重量%であり、上記フッ素系溶剤の沸点は、50℃以上である防汚性フィルムの製造方法であってもよい。本態様によれば、上記金型の転写回数が増加しても、上記重合体層及び上記金型の離型性の低下を抑制しつつ、防汚性に優れた防汚性フィルムを製造することができる。
上記樹脂は、上記パーフルオロアルキル系モノマーとは別に、パーフルオロポリエーテル系モノマーを更に含有していてもよい。これにより、防汚性がより高まる。
上記樹脂は、単官能アミドモノマーを更に含有していてもよい。これにより、上記パーフルオロアルキル系モノマーを含むフッ素含有モノマーとの相溶性が高まるため、フッ素含有モノマー中のフッ素原子が上記重合体層の表面(上記基材とは反対側の表面)に偏在しやすくなり、防汚性がより高まる。また、上記樹脂層の硬化収縮が抑制され、上記基材との凝集力が高まるため、上記重合体層と上記基材との密着性が高まる。
上記重合体層の厚みは、5〜20μmであってもよい。これにより、上記パーフルオロアルキル系モノマーを含むフッ素含有モノマー中のフッ素原子が、上記重合体層の表面(上記基材とは反対側の表面)により高濃度で偏在する。
上記複数の凸部の平均ピッチは、100〜400nmであってもよい。これにより、モアレ、虹ムラ等の光学現象の発生が充分に防止される。
上記複数の凸部の平均高さは、50〜600nmであってもよい。上記複数の凸部の好ましい平均アスペクト比と両立させることができる。
上記複数の凸部の平均アスペクト比は、0.8〜1.5であってもよい。これにより、モアレ、虹ムラ等の光学現象の発生が充分に防止され、優れた反射防止性を実現することができる。更に、上記凹凸構造の加工性の低下による、スティッキングの発生、及び、上記凹凸構造を形成する際の転写具合の悪化が充分に防止される。
1:防汚性フィルム
2:基材
3:重合体層
4:凸部
5:金型
6:樹脂
7:離型処理剤
8:フッ素系溶剤
9:樹脂層
P:凸部のピッチ
H:凸部の高さ
T:重合体層の厚み
T1:樹脂の厚み
T2:フッ素系溶剤の厚み
2:基材
3:重合体層
4:凸部
5:金型
6:樹脂
7:離型処理剤
8:フッ素系溶剤
9:樹脂層
P:凸部のピッチ
H:凸部の高さ
T:重合体層の厚み
T1:樹脂の厚み
T2:フッ素系溶剤の厚み
Claims (7)
- 基材と、前記基材の表面上に配置され、複数の凸部が可視光の波長以下のピッチで設けられる凹凸構造を表面に有する重合体層と、を備える防汚性フィルムの製造方法であって、
樹脂を前記基材の表面上に塗布するプロセス(1)と、
離型処理剤が塗布された金型の表面上にフッ素系溶剤を塗布するプロセス(2)と、
前記樹脂を間に挟んだ状態で、前記基材を前記金型の前記フッ素系溶剤が塗布された表面に押し当て、前記凹凸構造を表面に有する樹脂層を形成するプロセス(3)と、
前記樹脂層を硬化させ、前記重合体層を形成するプロセス(4)と、を含み、
前記樹脂は、パーフルオロアルキル系モノマーを含有し、
前記パーフルオロアルキル系モノマーは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1分子当たり1個有し、かつ、フッ素原子濃度が50〜60重量%であり、
前記フッ素系溶剤の沸点は、50℃以上であることを特徴とする防汚性フィルムの製造方法。 - 前記樹脂は、前記パーフルオロアルキル系モノマーとは別に、パーフルオロポリエーテル系モノマーを更に含有することを特徴とする請求項1に記載の防汚性フィルムの製造方法。
- 前記樹脂は、単官能アミドモノマーを更に含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の防汚性フィルムの製造方法。
- 前記重合体層の厚みは、5〜20μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
- 前記複数の凸部の平均ピッチは、100〜400nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
- 前記複数の凸部の平均高さは、50〜600nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
- 前記複数の凸部の平均アスペクト比は、0.8〜1.5であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防汚性フィルムの製造方法。
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