以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図41は、本発明による一実施の形態およびその変形例を説明するための図である。以下の実施の形態およびその変形例では、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクおよび蒸着マスク中間体を例にあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクおよび蒸着マスク中間体に対し、本発明を適用することができる。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念であり、したがって、例えば「金属板」は、「金属シート」や「金属フィルム」と呼ばれる部材と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。また、板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる法線方向とは、当該部材の板面(シート面、フィルム面)に対する法線方向のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」、「同等」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
(蒸着マスク装置)
まず、蒸着マスクを含む蒸着マスク装置の一例について、主に図1〜図6を参照して説明する。ここで、図1は、蒸着マスクを含む蒸着マスク装置の一例を示す平面図であり、図2は、図1に示す蒸着マスク装置の使用方法を説明するための図である。図3は、蒸着マスクを第1面の側から示す平面図であり、図4〜図6は、図3の各位置における断面図である。このうち図4では、図3のIV−IV線断面に加えて、ダミー領域80の後述するダミー孔86も示している。
図1及び図2に示された蒸着マスク装置10は、略矩形状の金属板21からなる複数の蒸着マスク20と、複数の蒸着マスク20の周縁部に取り付けられたフレーム15と、を備えている。各蒸着マスク20には、第1面21aおよび第1面21aの反対側に位置する第2面21bを含む金属板21を、第1面21a側および第2面21b側の両方でエッチングすることにより形成された貫通孔25が、多数設けられている。この蒸着マスク装置10は、図2に示すように、蒸着マスク20が蒸着対象物である基板92、例えばガラス基板の下面に対面するようにして蒸着装置90内に支持され、基板92への蒸着材料98の蒸着に使用される。
蒸着装置90内では、不図示の磁石からの磁力によって、蒸着マスク20と基板92とが密着するようになる。蒸着装置90内には、蒸着マスク装置10の下方に、蒸着材料(一例として、有機発光材料)98を収容するるつぼ94と、るつぼ94を加熱するヒータ96とが配置されている。るつぼ94内の蒸着材料98は、ヒータ96からの加熱により、気化または昇華して基板92の表面に付着するようになる。上述したように、蒸着マスク20には多数の貫通孔25が形成されており、蒸着材料98はこの貫通孔25を介して基板92に付着する。この結果、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98が基板92の表面に成膜される。
上述したように、本実施の形態では、貫通孔25が後述する各有効領域22において所定のパターンで配置されている。なお、カラー表示を行いたい場合には、貫通孔25の配列方向(前述の一方向)に沿って蒸着マスク20(蒸着マスク装置10)と基板92とを少しずつ相対移動させ、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を順に蒸着させていってもよい。若しくは、有機発光材料の色に応じて異なる蒸着マスク20を用いて、蒸着材料98を基板92の表面に成膜してもよい。
なお、蒸着マスク装置10のフレーム15は、矩形状の蒸着マスク20の周縁部に取り付けられている。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように蒸着マスク20を張った状態に保持する。蒸着マスク20とフレーム15とは、例えばスポット溶接により互いに対して固定されている。
蒸着処理は、高温雰囲気となる蒸着装置90の内部で実施される。従って、蒸着処理の間、蒸着装置90の内部に保持される蒸着マスク20、フレーム15および基板92も加熱される。この際、蒸着マスク20、フレーム15および基板92は、各々の熱膨張係数に基づいた寸法変化の挙動を示すことになる。この場合、蒸着マスク20やフレーム15と基板92の熱膨張係数が大きく異なっていると、それらの寸法変化の差異に起因した位置ずれが生じ、この結果、基板92上に付着する蒸着材料98の寸法精度や位置精度が低下してしまう。このような課題を解決するため、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数が、基板92の熱膨張係数と同等の値であることが好ましい。例えば、基板92としてガラス基板が用いられる場合、蒸着マスク20およびフレーム15の主要な材料として、ニッケルを含む鉄合金を用いることができる。例えば、蒸着マスク20を構成する金属板の材料として、30〜54質量%のニッケルを含む鉄合金を用いることができる。
ニッケルを含む鉄合金の具体例としては、34〜38質量%のニッケルを含むインバー材、30〜34質量%のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材、48〜54質量%のニッケルを含む低熱膨張Fe−Ni系めっき合金などを挙げることができる。なお本明細書において、「〜」という記号によって表現される数値範囲は、「〜」という符号の前後に置かれた数値を含んでいる。例えば、「34〜38質量%」という表現によって画定される数値範囲は、「34質量%以上かつ38質量%以下」という表現によって画定される数値範囲と同一である。
なお蒸着処理の際に、蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92の温度が高温には達しない場合は、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数を有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値にする必要は特にない。この場合、蒸着マスク20を構成する後述する金属板21の材料として、上述の鉄合金以外の材料を用いてもよい。例えば、クロムを含む鉄合金など、上述のニッケルを含む鉄合金以外の鉄合金を用いてもよい。
クロムを含む鉄合金としては、例えば、いわゆるステンレスと称される鉄合金を用いることができる。また、ニッケルやニッケル−コバルト合金など、鉄合金以外の合金を用いてもよい。
はじめに、図1に示す蒸着マスク20がエッチング処理によって作製されている場合について説明する。
(蒸着マスク)
図1に示すように、本実施の形態において、蒸着マスク20は、金属板21からなり、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。蒸着マスク20は、規則的な配列で貫通孔25が形成された有効領域22と、有効領域22の周囲に位置する周囲領域23と、を含んでいる。周囲領域23は、有効領域22を支持するための領域であり、基板92へ蒸着されることを意図された蒸着材料98が通過する領域ではない。例えば、有機EL表示装置用の有機発光材料の蒸着に用いられる蒸着マスク20においては、有効領域22は、有機発光材料が蒸着して画素を形成するようになる基板92上の区域、すなわち、作製された有機EL表示装置用基板の表示面をなすようになる基板92上の区域に対面する、蒸着マスク20内の領域のことである。ただし、種々の目的から、周囲領域23に貫通孔や凹部が形成されていてもよい。図1に示された例において、各有効領域22は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。
図示された例において、蒸着マスク20の複数の有効領域22は、蒸着マスク20の長手方向と平行な一方向に沿って所定の間隔を空けて一列に配列されている。このような蒸着マスク20は、いわゆるスティック状の蒸着マスクと呼ばれることもある。図示された例では、一つの有効領域22が一つの有機EL表示装置に対応するようになっている。すなわち、図1に示された蒸着マスク装置10(蒸着マスク20)によれば、多面付蒸着が可能となっている。
図3に示すように、図示された例において、各有効領域22に形成された複数の貫通孔25は、当該有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。この金属板21に形成された貫通孔25の一例について、図3〜図6を主に参照して更に詳述する。
図4〜図6に示すように、複数の貫通孔25は、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った一方の側となる第1面20aから、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った他方の側となる第2面20bへ貫通している。図示された例では、後に詳述するように、蒸着マスク20の法線方向Nにおける一方の側となる金属板21の第1面21aに第1凹部30がエッチングによって形成され、蒸着マスク20の法線方向Nにおける他方の側となる金属板21の第2面21bに第2凹部35が形成される。第1凹部30は、第2凹部35に接続され、これによって第2凹部35と第1凹部30とが互いに通じ合うように形成される。貫通孔25は、第2凹部35と、第2凹部35に接続された第1凹部30とによって構成されている。
図3〜図6に示すように、蒸着マスク20の第2面20bの側から第1面20aの側へ向けて、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面での各第2凹部35の開口面積は、しだいに小さくなっていく。同様に、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面での各第1凹部30の開口面積は、蒸着マスク20の第1面20aの側から第2面20bの側へ向けて、しだいに小さくなっていく。
図4〜図6に示すように、第1凹部30の壁面31と、第2凹部35の壁面36とは、周状の接続部41を介して接続されている。接続部41は、蒸着マスク20の法線方向Nに対して傾斜した第1凹部30の壁面31と、蒸着マスク20の法線方向Nに対して傾斜した第2凹部35の壁面36とが合流する張り出し部の稜線によって、画成されている。
そして、接続部41は、蒸着マスク20の平面視において貫通孔25の開口面積が最小になる貫通部42を画成する。
図4〜図6に示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った他方の側の面、すなわち、蒸着マスク20の第1面20a上において、隣り合う二つの貫通孔25は、蒸着マスク20の板面に沿って互いから離間している。すなわち、後述する製造方法のように、蒸着マスク20の第1面20aに対応するようになる金属板21の第1面21a側から当該金属板21をエッチングして第1凹部30を作製する場合、隣り合う二つの第1凹部30の間に金属板21の第1面21aが残存するようになる。
同様に、図4および図6に示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った一方の側、すなわち、蒸着マスク20の第2面20bの側においても、隣り合う二つの第2凹部35が、蒸着マスク20の板面に沿って互いから離間していてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部35の間に金属板21の第2面21bが残存していてもよい。以下の説明において、金属板21の第2面21bの有効領域22のうちエッチングされずに残っている部分のことを、トップ部43とも称する。このようなトップ部43が残るように蒸着マスク20を作製することにより、蒸着マスク20に十分な強度を持たせることができる。
このことにより、例えば搬送中などに蒸着マスク20が破損してしまうことを抑制することができる。なおトップ部43の幅βが大きすぎると、蒸着工程においてシャドーが発生し、これによって蒸着材料98の利用効率が低下することがある。従って、トップ部43の幅βが過剰に大きくならないように蒸着マスク20が作製されることが好ましい。例えば、トップ部43の幅βが2μm以下であることが好ましい。なおトップ部43の幅βは一般に、蒸着マスク20を切断する方向に応じて変化する。例えば、図4および図6に示すトップ部43の幅βは互いに異なることがある。この場合、いずれの方向で蒸着マスク20を切断した場合にもトップ部43の幅βが2μm以下になるよう、蒸着マスク20が構成されていてもよい。
なお図5に示すように、場所によっては隣り合う二つの第2凹部35が接続されるようにエッチングが実施されてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部35の間に、金属板21の第2面21bが残存していない場所が存在していてもよい。
図2に示すようにして蒸着マスク装置10が蒸着装置90に収容された場合、図4に二点鎖線で示すように、蒸着マスク20の第2面20bが蒸着材料98を保持したるつぼ94側に位置し、蒸着マスク20の第1面20aが基板92に対面する。したがって、蒸着材料98は、次第に開口面積が小さくなっていく第2凹部35を通過して基板92に付着する。図4において第2面20b側から第1面20aへ向かう矢印で示すように、蒸着材料98は、るつぼ94から基板92に向けて基板92の法線方向Nに沿って移動するだけでなく、基板92の法線方向Nに対して大きく傾斜した方向に移動することもある。このとき、蒸着マスク20の厚みが大きいと、斜めに移動する蒸着材料98の多くは、貫通孔25を通って基板92に到達するよりも前に、第2凹部35の壁面36に到達して付着する。従って、蒸着材料98の利用効率を高めるためには、蒸着マスク20の厚みtを小さくし、これによって、第2凹部35の壁面36や第1凹部30の壁面31の高さを小さくすることが好ましいと考えられる。すなわち、蒸着マスク20を構成するための金属板21として、蒸着マスク20の強度を確保できる範囲内で可能な限り厚みtの小さな金属板21を用いることが好ましいと言える。この点を考慮し、本実施の形態において、好ましくは蒸着マスク20の厚みtは、85μm以下に、例えば5〜85μmの範囲内に設定される。なお厚みtは、周囲領域23の厚み、すなわち蒸着マスク20のうち第1凹部30および第2凹部35が形成されていない部分の厚みである。従って厚みtは、金属板21の厚みであると言うこともできる。
図4において、貫通孔25の最小開口面積を持つ部分となる接続部41と、第2凹部35の壁面36の他の任意の位置と、を通過する直線L1が、蒸着マスク20の法線方向Nに対してなす最小角度が、符号θ1で表されている。斜めに移動する蒸着材料98を、壁面36に到達させることなく可能な限り基板92に到達させるためには、角度θ1を大きくすることが有利となる。角度θ1を大きくする上では、蒸着マスク20の厚みtを小さくすることの他にも、上述のトップ部43の幅βを小さくすることも有効である。
図6において、符号αは、金属板21の第1面21aの有効領域22のうちエッチングされずに残っている部分(以下、リブ部とも称する)の幅を表している。リブ部の幅αおよび貫通部42の寸法r
2は、有機EL表示装置の寸法および表示画素数に応じて適宜定められる。表1に、5インチの有機EL表示装置において、表示画素数、および表示画素数に応じて求められるリブ部の幅αおよび貫通部42の寸法r
2の値の一例を示す。
限定はされないが、本実施の形態による蒸着マスク20は、450ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合に特に有効なものである。以下、図7を参照して、そのような高い画素密度の有機EL表示装置を作製するために求められる蒸着マスク20の寸法の一例について説明する。図7は、図4に示す蒸着マスク20の貫通孔25およびその近傍の領域を拡大して示す断面図である。
図7においては、貫通孔25の形状に関連するパラメータとして、蒸着マスク20の第1面20aから接続部41までの、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った方向における距離、すなわち第1凹部30の壁面31の高さが符号r1で表されている。さらに、第1凹部30が第2凹部35に接続する部分における第1凹部30の寸法、すなわち貫通部42の寸法が符号r2で表されている。また図7において、接続部41と、金属板21の第1面21a上における第1凹部30の先端縁と、を結ぶ直線L2が、金属板21の法線方向Nに対して成す角度が、符号θ2で表されている。
450ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合、貫通部42の寸法r2は、好ましくは10〜60μmの範囲内に設定される。これによって、高い画素密度の有機EL表示装置を作製することができる蒸着マスク20を提供することができる。好ましくは、第1凹部30の壁面31の高さr1は、6μm以下に設定される。
次に、図7に示す上述の角度θ2について説明する。角度θ2は、金属板21の法線方向Nに対して傾斜するとともに接続部41近傍で貫通部42を通過するように飛来した蒸着材料98のうち、基板92に到達することができる蒸着材料98の傾斜角度の最大値に相当する。なぜなら、角度θ2よりも大きな傾斜角度で飛来した蒸着材料98は、基板92に到達するよりも前に第1凹部30の壁面31に付着するからである。従って、角度θ2を小さくすることにより、大きな傾斜角度で飛来して貫通部42を通過した蒸着材料98が基板92に付着することを抑制することができ、これによって、基板92のうち貫通部42に重なる部分よりも外側の部分に蒸着材料98が付着してしまうことを抑制することができる。すなわち、角度θ2を小さくすることは、基板92に付着する蒸着材料98の面積や厚みのばらつきの抑制を導く。このような観点から、例えば貫通孔25は、角度θ2が45度以下になるように形成される。なお図7においては、第1面21aにおける第1凹部30の寸法、すなわち、第1面21aにおける貫通孔25の開口寸法が、接続部41における第1凹部30の寸法r2よりも大きくなっている例を示した。すなわち、角度θ2の値が正の値である例を示した。しかしながら、図示はしないが、接続部41における第1凹部30の寸法r2が、第1面21aにおける第1凹部30の寸法よりも大きくなっていてもよい。すなわち、角度θ2の値は負の値であってもよい。
図1に示すように、蒸着マスク20の長手方向(第1の方向)における有効領域22の両側には、一対の耳部24が設けられている。耳部24は、蒸着マスク20の長手方向における両端部20eに位置付けられている。ここで耳部24とは、蒸着マスク20のうちフレーム15に取り付けられる部分のことである。図1においては、蒸着マスク20の長手方向の全体の長さおよび耳部24の長さが、それぞれ符号AおよびA1で表されている。蒸着マスク20の全体の長さAは、例えば、850mm〜1350mmの範囲内になっており、耳部24の長さA1は、50mm〜250mmの範囲内になっている。このように図1に示す形態では、一対の耳部24は、蒸着マスク20の長手方向に配列されており、一対の耳部24が配列される第1の方向が、当該長手方向になっている。なお、蒸着マスク20の全体の長さA(図1参照)が、蒸着マスク20の幅寸法(長さAが示す方向に直交する方向の寸法)よりも小さい場合には、一対の耳部24が配列される第1の方向は、蒸着マスク20の長手方向ではなく短手方向となるが、この場合であっても本発明の適用範囲内である。
耳部24の各々と有効領域22との間には、ダミー領域80が介在されている。言い換えると、蒸着マスク20の長手方向において、複数の有効領域22の両側にダミー領域80が設けられている。なお、蒸着マスク20が有効領域22を1つだけ備えている場合には、ダミー領域80は、この単一の有効領域22の両側に設ければよい。
ダミー領域80は、張設時に蒸着マスク20に付与された張力によって、有効領域22に付与される張力を蒸着マスク20の幅方向(第2の方向、蒸着マスク20の長手方向に直交する方向)の位置に応じて調整することを意図した領域である。すなわち、ダミー領域80は、フレーム15に張設された際に、ダミー領域80自体の伸びが当該幅方向で異なるように構成されている領域である。図1においては、各ダミー領域80は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有しており、ダミー領域80が有効領域22と同等な平面形状を有している例が示されている。また、図1に示された例においては、ダミー領域80は、有効領域22の配列方向に沿って(蒸着マスク20の長手方向に沿って)配列されており、ダミー領域80とこれに隣り合う有効領域22との間隔は、互いに隣り合う有効領域22の間隔と同等となっている。上述した周囲領域23は、有効領域22だけでなく、有効領域22およびダミー領域80の両方の周囲に位置する領域となっている。
図8Aおよび図8Bに示すように、ダミー領域80は、蒸着マスク20の幅方向の一側に設けられた第1領域側縁部81と、他側(第1領域側縁部81に対して当該幅方向の反対側)に設けられた第2領域側縁部82と、第1領域側縁部81と第2領域側縁部82との間に設けられた領域中央部83と、を有している。このうち第1領域側縁部81は、蒸着マスク20の第1側縁20fの側に配置されている部分であり、第2領域側縁部82は、第2側縁20gの側に配置されている部分である。領域中央部83は、第1領域側縁部81よりも中央側であって第2領域側縁部82よりも中央側に配置されている領域である。ここでは、領域中央部83は、蒸着マスク20の幅方向における中心位置に配置されている部分となっている。
図4に示すように、ダミー領域80には、複数の第1面ダミー開口部84および複数の第2面ダミー開口部85が設けられている。このうち第1面ダミー開口部84は、蒸着マスク20の第1面20aに設けられており、第2面ダミー開口部85は、蒸着マスク20の第2面20bに設けられている。本実施の形態においては、ダミー領域80に、上述した第1面ダミー開口部84と第2面ダミー開口部85とによって画定されるダミー孔86が設けられており、ダミー孔86がダミー領域80を貫通している。言い換えると、第1面20aにおいてダミー孔86は第1面ダミー開口部84によって画定され、第2面20bにおいてダミー孔86は第2面ダミー開口部85によって画定されている。第1面ダミー開口部84の開口形状と第2面ダミー開口部85の開口形状とは同一または相似している。そして、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面でのダミー孔86の開口形状は、第1面ダミー開口部84の平面形状および第2面ダミー開口部85の平面形状に同一または相似している。このようなダミー孔86は、第1領域側縁部81、第2領域側縁部82および領域中央部83の各々に、多数設けられている。
ダミー領域80内における蒸着マスク20を構成する材料(ここでは金属板21を構成する材料)の材料残存量は、蒸着マスク20の幅方向に異なっている。ここで、材料残存量は、複数のダミー孔86が形成されたダミー領域80のうち、金属板21を構成する材料が残存している量である。より具体的には、エッチング処理によって作製される蒸着マスク20においては、材料残存量とは、エッチング処理で除去されることなく残存している金属板21の材料の量を意味している。
本実施の形態においては、図8Aおよび図8Bに示すように、ダミー領域80の第1領域側縁部81における材料残存量は、第2領域側縁部82における材料残存量よりも大きくなっている。また、領域中央部83における材料残存量は、第1領域側縁部81における材料残存量よりも小さく、かつ第2領域側縁部82における材料残存量よりも大きくなっている。領域中央部83が蒸着マスク20の幅方向の中心位置に配置されている場合には、領域中央部83における材料残存量は、第1領域側縁部81における材料残存量と第2領域側縁部82における材料残存量の平均値程度であることが好適である。更に言えば、ダミー領域80の材料残存量は、第1領域側縁部81、第2領域側縁部82および領域中央部83だけでなく、当該幅方向に更に細かい部分に区分けして、各部分における材料残存量を、第2領域側縁部82から第1領域側縁部81に向かって、徐々に大きくするようにしてもよい。
次に、ダミー領域80の具体例について図8Aおよび図8Bを用いて説明する。図8Aおよび図8Bは、蒸着マスク20の第1面20aを模式的に示す平面図になっている。ここでは、一例として、第1面ダミー開口部84が矩形状に形成されている例が示されている。第2面ダミー開口部85(図4参照)の中心は、平面視において、第1面ダミー開口部84の中心と重なっている。そして、第1面ダミー開口部84(および第2面ダミー開口部85)が、格子状に配置されている。なお、図8Aおよび図8Bでは、図面を明瞭にするために、第2面ダミー開口部85の図示を省略している。
図8Aに示す形態では、蒸着マスク20の第1面20aに、開口面積が同一である第1面ダミー開口部84が多数形成されている。ここでは、蒸着マスク20の幅方向における第1面ダミー開口部84の配置ピッチが、当該幅方向の位置に応じて異なっている。より具体的には、第1領域側縁部81における当該幅方向の配置ピッチP1を、第2領域側縁部82における当該幅方向の配置ピッチP2よりも大きくしている(P1>P2)。このことにより、第1領域側縁部81における残量残存量を、第2領域側縁部82における材料残存量よりも大きくすることができる、更に本実施の形態では、領域中央部83における蒸着マスク20の幅方向の配置ピッチP3を、第1領域側縁部81における配置ピッチP1よりも小さく、かつ第2領域側縁部82における配置ピッチP2よりも大きくしている(P1>P3>P2)。このことにより、領域中央部83における材料残存量を、第1領域側縁部81における材料残存量よりも小さくし、かつ第2領域側縁部82における材料残存量よりも大きくすることができる。なお、上述した配置ピッチP1、P2、P3は、蒸着マスク20の幅方向ではなく、蒸着マスク20の長手方向の配置ピッチとしてもよい。
図8Bに示す形態では、蒸着マスク20の第1面20aに、配置ピッチが同一である第1面ダミー開口部84が多数形成されている。ここでは、第1面ダミー開口部84の開口面積が、蒸着マスク20の幅方向の位置に応じて異なっている。より具体的には、第1領域側縁部81における第1面ダミー開口部84のうち蒸着マスク20の長手方向の寸法B1を、第2領域側縁部82における第1面ダミー開口部84の当該長手方向の寸法B2よりも小さくしている(B1<B2)。このことにより、第1領域側縁部81における材料残存量を、第2領域側縁部82における材料残存量よりも大きくすることができる。更に本実施の形態では、領域中央部83における第1面ダミー開口部84の当該長手方向の寸法B3を、第1領域側縁部81における第1面ダミー開口部84の寸法B1よりも大きく、かつ第2領域側縁部82における第1面ダミー開口部84の寸法B2よりも小さくしている(B1<B3<B2)。このことにより、領域中央部83における材料残存量を、第1領域側縁部81における材料残存量よりも小さくし、かつ第2領域側縁部82における材料残存量よりも大きくすることができる。なお、第1面ダミー開口部84の当該長手方向の寸法を変えることに限られることはなく、第1面ダミー開口部84のうち蒸着マスク20の幅方向の寸法を変えることにより、第1面ダミー開口部84の開口面積を変えるようにしてもよい。
このようなダミー孔86は、上述した貫通孔25と同様に、金属板21の第1面21a側からのエッチングと、第2面21b側からのエッチングとによって、金属板21を貫通させるように形成することができる。ダミー孔86の断面形状は、特に限られることはないが、例えば、図4に示すような、有効領域22に形成された貫通孔25と同様の形状とすることができる。
図4に示すように、隣り合う二つの第1面ダミー開口部84の間に、金属板21の第1面21aが残存している。また、隣り合う二つの第2面ダミー開口部85の間に、金属板21の第2面21bが残存して、有効領域22のトップ部43と同様なトップ部89(図9Aおよび図9B参照)が形成されている。このトップ部89が形成されることにより、蒸着マスク20に十分な強度を持たせることができ、例えば搬送中などに蒸着マスク20が破損してしまうことを抑制することができる。
ダミー領域80のトップ部89の形状は、第2面ダミー開口部85の配置ピッチや、開口面積などに応じて異なってくる。例えば、第2面ダミー開口部85の配置ピッチが大きくなると、図9Aに示すように、隣り合う二つの第2面ダミー開口部85が互いから離れるため、トップ部89は、第2面ダミー開口部85の周囲に形成されるようになる。一方、隣り合う二つの第2面ダミー開口部85の配置ピッチが小さくなると、図9Bに示すように、隣り合う二つの第2面ダミー開口部85が互いに近づくため、トップ部89は、対角線方向に隣り合う第2面ダミー開口部85の間で、略ひし形状に形成される。しかしながら、蒸着マスク20の長手方向および幅方向(図9Bにおける左右方向および上下方向)において隣り合う二つの第2面ダミー開口部85の間では、トップ部89は形成されることなく、これら二つの第2面ダミー開口部85は互いに接続されるようになる。なお、図示しないが、第2面ダミー開口部85の開口面積が小さくなると、図9Aに示すようなトップ部89が形成される傾向にある。一方、第2面ダミー開口部85の開口面積が小さくなると、図9Bに示すようなトップ部89が形成される傾向にある。また、第2面ダミー開口部85の配置ピッチが過度に小さくなったり、開口面積が過度に大きくなったりすると、上述したトップ部89は形成されない傾向にあるが、蒸着マスク20の強度を確保するためには、このようなトップ部89が形成されるように、第2面ダミー開口部85の配置ピッチや開口面積を設定することが好適である。
また、図8Aおよび図8Bにおいては、第1面ダミー開口部84の平面形状および第2面ダミー開口部85の平面形状が矩形状である例を示した。しかしながら、このことに限られることはなく、ダミー孔86の平面形状は、スリット形状や、円形状など、任意の形状とすることができる。
ここで、材料残存量についてより詳細に説明する。蒸着マスク20を構成する材料(ここでは金属板21を構成する材料)の材料残存量は、単位面積当たりの体積をV、厚みをtuとしたときに、V/tuで定義される。例えば、図10に示すように、ダミー領域80内の所定の基準領域Uを画定し、この基準領域Uの面積SUと体積VUとから、単位面積当たりの体積Vを求め、厚みtuは、基準領域Uの厚みとして、材料残存量を求めることができる。ここで基準領域Uは、ダミー領域80内の任意の領域とすることができるが、例えば、図10に示すような円形状の平面形状を有する領域とすることができる。
厚みtuは、例えば、基準領域Uの中心位置Ouまたは当該中心位置Ouの近傍の位置の厚みとしてもよい。より具体的には、厚みtuは、当該中心位置Ouまたは当該中心位置Ouの近傍に形成されているトップ部89における蒸着マスク20の第1面20aと第2面20b(ここでは金属板21の第1面21aと第2面21b)との間の距離とすることができる。なお、厚みtuは、蒸着マスク20の幅方向における各位置での局所的な厚みを意味しており、上述した蒸着マスク20の厚みtは、蒸着マスク20の全体の平均的な厚みを意味している。
上述のようにして定義される材料残存量は、ダミー領域80の厚みの影響を排除した量となっている。すなわち、蒸着マスク20の厚みが、幅方向で異なる場合には、この厚みの違いによって材料残存量も変わってくると考えられる。しかしながら、本実施の形態では、第1面ダミー開口部84や第2面ダミー開口部85の配置ピッチや大きさなどによって、蒸着マスク20の幅方向においてダミー孔86の開口率を変化させて、ダミー領域80の伸び率を幅方向で異ならせている。このため、材料残存量を上述のように定義することにより、ダミー領域80の厚みの違いの影響を排除して、ダミー領域80の伸び率に影響を与え得るダミー領域80の材料残存量を定義することができる。
次に、材料残存量を求める方法について説明する。
まず、図10に示すように、ダミー領域80の第1領域側縁部81、第2領域側縁部82および領域中央部83から、基準領域Uが金属片として切り取られる。この場合、各部81〜83から切り取られる基準領域Uは、すべて同一の面積を有していることが好適である。ここでは、切り取られる基準領域Uが、円形状の平面形状を有している例が示されている。基準領域Uの直径は、体積を精度良く測定することができるとともに、ダミー孔86の配置の影響を排除することができる程度の個数のダミー孔86を含むことができる大きさを有していれば特に限られることはない。例えば、ダミー領域80の幅が80mmである場合には、基準領域Uの直径を20mmとすることが好適である。また、基準領域Uを切り取る方法としては特に限られることはないが、例えば、金型を用いた打ち抜き(パンチング)、切削工具を用いた機械加工、レーザによる切断等の方法を用いることができる。とりわけ金型を用いた打ち抜きによれば、各部81〜83から切り取られる基準領域Uの大きさ、形状を精度良く同一にすることができる。なお、各部81〜83から切り取られる基準領域Uは、互いに同一の面積を有している限り、必ずしも同一の形状を有しているものに限られないが、各部81〜83から切り取られる基準領域Uが互いに同一の形状を有するようにすると、上述の金型を用いた打ち抜き等により各部81〜83から基準領域Uを切り取ることができ、切り取り精度の向上や切り取り工程の簡易化を図ることができる。
続いて、切り取られた基準領域Uの面積SUと体積VUが求められる。このうち基準領域Uの面積SUは、図10に示すように蒸着マスク20の法線方向Nに沿って見たときの基準領域Uの平面面積として求められる。基準領域Uの体積VUは、例えばヘリウム(He)ガス置換法を用いて測定することができる。この場合、気相置換によって体積が測定されるため、多数の微小なダミー孔86が形成されている基準領域Uであっても、基準領域Uの体積の測定精度を向上させることができる。体積の測定には、例えば、マイクロメリティックス社製の比重びん法密度測定装置(AccuPyc II 1340)を用いることができる。
基準領域Uの体積VUを求める他の方法として、基準領域Uの体積VUを重量Wと密度ρとから求める方法が挙げられる。この方法では、基準領域Uの重量Wが測定されるとともに、基準領域Uの化学分析が行われて組成が求められる。求められた組成と一致する合金の密度が文献等に記載の値から求められて、基準領域Uの密度が得られる。このようにして得られた重量と密度とから基準領域Uの体積VUを求めることができる。なお、密度ρについては、例えば、蒸着マスク20の周囲領域23うち孔や凹部が形成されていない平坦な部分(通常、基準領域Uと同一の組成を有していると考えられる)から所定の領域を金属片として切り取り、当該領域の重量を測定するとともに体積を上述と同様に測定して、これらの重量と体積とから密度を求めて代用することもできる。
次に、切り取られた基準領域Uの中心位置Ouまたは当該中心位置Ouの近傍の位置における厚みtuが測定される。厚みの測定方法としては、例えば、マイクロメータを用いて測定する方法が挙げられる。この方法以外にも、例えば、蛍光X線を用いて測定する方法が挙げられる。この方法では、X線が基準領域Uのトップ部89に照射されて、トップ部89から放出される蛍光X線が測定される。測定される蛍光X線の強度が、トップ部89を構成する元素(すなわち金属板21を構成する元素)の量、ひいては、トップ部89の厚みに依存することを利用するものである。
その後、求められた基準領域Uの体積VUを、基準領域Uの面積SUで除算することにより、単位面積当たりの体積Vが求められ、この単位面積当たりの体積Vを、測定された基準領域Uのトップ部89の厚みtuで除算することにより、基準領域Uにおける材料残存量が得られる。
(蒸着マスク中間体)
ところで、上述した本実施の形態による蒸着マスク20は、一つの有機EL表示装置に対応する複数の貫通孔25を含む有効領域22を、後述する長尺金属板64に複数形成し、その後、長尺金属板64を複数に切断して得られる。これによって、細長状の複数の蒸着マスク20が一度に製造されるようになる。この場合、図11に示すように、複数の蒸着マスク20が割り付けられるように、長尺金属板64に複数の有効領域22A、22Bが形成された蒸着マスク中間体100を作製し、その後、長尺金属板64が切断されて、個々の蒸着マスク20A、20Bが得られる。
次に、図11および図12を用いて、蒸着マスク中間体100について説明する。蒸着マスク中間体100は、複数の蒸着マスク(ここでは、第1蒸着マスク20Aおよび第2蒸着マスク20B)を多面付して製造するためのものである。この蒸着マスク中間体100は、長尺金属板64から枚葉状の蒸着マスク20A、20Bを作製する過程の途中段階に存在する半製品と言うこともできる。
図11に示すように、蒸着マスク中間体100は、長尺金属板64と、長尺金属板64に設けられた第1有効領域22Aおよび第2有効領域22Bと、を備えている。本実施の形態においては、長尺金属板64に複数の第1有効領域22Aと複数の第2有効領域22Bとが、長尺金属板64の長手方向D1に沿ってそれぞれ配列されている。このうち第1有効領域22Aは、第1蒸着マスク20Aを構成し、第2有効領域22Bは、第2蒸着マスク20Bを構成する。第2有効領域22Bは、第1有効領域22Aよりも、長尺金属板64の幅方向D2の中央側に配列されている。図11に示す形態では、第1有効領域22Aは、長尺金属板64の幅を画定する一対の側縁64eのうちの一方の側縁64eの側と、他方の側縁64eの側とに配列されており、第2有効領域22Bは、長尺金属板64の幅方向D2の中心位置に配列されている。すなわち、第1有効領域22Aがなす2つの列の間に第2有効領域22Bが配列されている。なお、第1有効領域22Aおよび第2有効領域22Bには、上述した貫通孔25が形成されている。
第1有効領域22Aおよび第2有効領域22Bの配列方向は、長尺金属板64の長手方向D1に沿っている。蒸着マスク中間体100から第1蒸着マスク20Aおよび第2蒸着マスク20Bを得る場合には、長尺金属板64が張った状態に保持されて、第1有効領域22Aおよび第2有効領域22Bに対応するように長尺金属板64が切断される。この結果として、第1蒸着マスク20Aおよび第2蒸着マスク20Bは、長尺金属板64の長手方向D1に沿うように切断されて、細長の矩形状に形成される。すなわち、本実施の形態による蒸着マスク20(20A、20B)は、その長手方向が長尺金属板64の長手方向D1に沿うように長尺金属板64に割り付けられて、当該長尺金属板64から個々に切断されて得られるようになっている。
しかしながら、詳細に見ると、上述のようにして得られる第1蒸着マスク20Aの平面形状は、図12に示すように、張られていない状態において全体的に湾曲している。ここで、図12は、図11に示す蒸着マスク中間体100から得られた第1蒸着マスク20Aおよび第2蒸着マスク20Bを、長尺金属板64に割り付けられていた状態で示している。
図12に示すように、第1蒸着マスク20Aは、第2蒸着マスク20Bの側(長尺金属板64の幅方向D2の中央側)に向かって凸となり、第2蒸着マスク20Bの側とは反対側、すなわち長尺金属板64の側縁64eの側では凹むように形成されている。これは、圧延によって得られた長尺金属板64の幅方向D2の側縁64eに現れる上述の波打ち形状(耳伸び)を原因とするものと考えられる。すなわち、側縁64eに波打ち形状が形成されている長尺金属板64を露光する際、後述する露光マスク68a、68b(図17参照)に長尺金属板64が真空密着する。この際、波打ち形状が形成されていた側縁64eはしわが存在しないように延ばされて露光マスク68a、68bに密着する。このように密着した状態で、有効領域22A、22Bの貫通孔25を形成するために長尺金属板64が露光される。すなわち、長尺金属板64にしわが存在しないように張設された状態で正規寸法の貫通孔25が得られるように長尺金属板64が露光される。露光後、長尺金属板64から露光マスク68a、68bが除去されると、長尺金属板64の側縁64eには、再び波打ち形状が現れ、当該側縁64eが縮んだ状態になる。
第1蒸着マスク20Aの第1側縁20fは、長尺金属板64の一対の側縁64eのうちの一方の側縁64eの側に対応する。第2側縁20gは、当該側縁64eの側とは反対側、すなわち長尺金属板64の幅方向D2の中心側に対応する。このため、第1側縁20fは、第2側縁20gよりも波打ち形状が大きく現れ、長尺金属板64をその法線方向に沿って見たときに、第1蒸着マスク20Aは、湾曲したような平面形状を有するようになる。このようにして、第1蒸着マスク20Aの第1側縁20fが、平面視で凹むように形成され、第2側縁20gが、平面視で凸となるように形成される。
そこで、本実施の形態では、図11および図12に示す第1蒸着マスク20Aが、図1等に示す上述した蒸着マスク20によって構成される。すなわち、長尺金属板64の長手方向D1において、第1蒸着マスク20Aを構成する第1有効領域22Aの両側にダミー領域80が設けられている。このダミー領域80は、第2蒸着マスク20Bの側とは反対側に設けられた第1領域側縁部81(図8Aおよび図8B参照)と、第2蒸着マスク20Bの側に設けられた第2領域側縁部82と、を含んでいる。このうち、第1領域側縁部81が、長尺金属板64の一方の側縁64eの側に配置されている。第2領域側縁部82は、当該側縁64eの側とは反対側、すなわち長尺金属板64の幅方向D2の中心側に配置されている。
なお、図11および図12においては、蒸着マスク中間体100から、2つの第1蒸着マスク20Aと1つの第2蒸着マスク20Bとが得られる例を示した。しかしながら、このことに限られることはなく、長尺金属板64のうち、波打ち形状の影響を比較的大きく受ける部分(側縁64eの側の部分)から、ダミー領域80を有する第1蒸着マスク20Aが得られれば、蒸着マスク中間体100から得られる第1蒸着マスク20Aの個数および第2蒸着マスク20Bの個数は任意である。例えば、波打ち形状が現れている長尺金属板64の幅方向D2に5つの蒸着マスクが割り付けられる場合、側縁64eに隣り合う最も外側の2つの蒸着マスクを第1蒸着マスク20Aとし、最も中央の1つの蒸着マスクを第2蒸着マスク20Bとすることが好適である。この場合、第1蒸着マスク20Aと第2蒸着マスク20Bとの間の残りの2つの蒸着マスクについては、当該蒸着マスクが割り付けられる部分での波打ち形状の程度に応じて、当該蒸着マスクを第1蒸着マスク20Aとしてもよく、第2蒸着マスク20Bとしてもよい。また、例えば、波打ち形状が現れている長尺金属板64の幅方向D2に4つの蒸着マスクが割り付けられる場合、側縁64eに隣り合う最も外側の2つの蒸着マスクを第1蒸着マスク20Aとし、中央側の2つの蒸着マスクを第2蒸着マスク20Bとすることが好適である。
次に、このような構成からなる本実施の形態とその作用および効果について説明する。
ここでは、はじめに、蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法について説明する。次に、得られた金属板を用いて蒸着マスクを製造する方法について説明する。
その後、得られた蒸着マスクを用いて基板上に蒸着材料を蒸着させる方法について説明する。
(金属板の製造方法)
はじめに図13および図14を参照して、金属板の製造方法について説明する。図13は、母材を圧延して、所望の厚みを有する金属板を得る工程を示す図であり、図14は、圧延によって得られた金属板をアニールする工程を示す図である。
〔圧延工程〕
はじめに図13に示すように、ニッケルを含む鉄合金から構成された母材55を準備し、この母材55を、一対の圧延ロール56a,56bを含む圧延装置56に向けて、矢印D1で示す搬送方向に沿って搬送する。一対の圧延ロール56a,56bの間に到達した母材55は、一対の圧延ロール56a,56bによって圧延され、この結果、母材55は、その厚みが低減されるとともに、搬送方向に沿って伸ばされる。これによって、厚みt0の板材64Xを得ることができる。図13に示すように、板材64Xをコア61に巻き取ることによって巻き体62を形成してもよい。厚みt0の具体的な値は、好ましくは上述のように5〜85μmの範囲内となっている。
なお図13は、圧延工程の概略を示すものに過ぎず、圧延工程を実施するための具体的な構成や手順が特に限られることはない。例えば圧延工程は、母材55を構成するインバー材の結晶配列を変化させる温度以上の温度で母材を加工する熱間圧延工程や、インバー材の結晶配列を変化させる温度以下の温度で母材を加工する冷間圧延工程を含んでいてもよい。また、一対の圧延ロール56a,56bの間に母材55や板材64Xを通過させる際の向きが一方向に限られることはない。例えば、図13および図14において、紙面左側から右側への向き、および紙面右側から左側への向きで繰り返し母材55や板材64Xを一対の圧延ロール56a,56bの間に通過させることにより、母材55や板材64Xを徐々に圧延してもよい。
〔スリット工程〕
その後、圧延工程によって得られた板材64Xの幅方向における両端をそれぞれ3mm以上かつ5mm以下の範囲にわたって切り落とすスリット工程を実施してもよい。このスリット工程は、圧延に起因して板材64Xの両端に生じ得るクラックを除去するために実施される。このようなスリット工程を実施することにより、板材64Xが破断してしまう現象、いわゆる板切れが、クラックを起点として生じてしまうことを防ぐことができる。
〔アニール工程〕
その後、圧延によって板材64X内に蓄積された残留応力を取り除くため、図14に示すように、アニール装置57を用いて板材64Xをアニールし、これによって長尺金属板64を得る。アニール工程は、図14に示すように、板材64Xや長尺金属板64を搬送方向(長手方向D1)に引っ張りながら実施されてもよい。すなわち、アニール工程は、いわゆるバッチ式の焼鈍ではなく、搬送しながらの連続焼鈍として実施されてもよい。アニール工程が実施される期間は、長尺金属板64の厚みや圧延率などに応じて適切に設定されるが、例えば200℃〜600℃で30秒〜30分にわたってアニール工程が実施される。なお上記「60秒」は、アニール装置57中の500℃に加熱された空間を板材64Xが通過することに要する時間が60秒であることを意味している。
好ましくは上述のアニール工程は、非還元雰囲気や不活性ガス雰囲気で実施される。ここで非還元雰囲気とは、水素などの還元性ガスを含まない雰囲気のことである。「還元性ガスを含まない」とは、水素などの還元性ガスの濃度が10%以下であることを意味している。また不活性ガス雰囲気とは、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスが90%以上存在する雰囲気のことである。非還元雰囲気や不活性ガス雰囲気でアニール工程を実施することにより、上述のニッケル水酸化物が長尺金属板64の第1面64aや第2面64bに生成されることを抑制することができる。
アニール工程を実施することにより、残留歪がある程度除去された、厚みt0の長尺金属板64を得ることができる。なお厚みt0は通常、蒸着マスク20の厚みtに等しくなる。
なお、上述の圧延工程、スリット工程およびアニール工程を複数回繰り返すことによって、厚みt0の長尺の金属板64を作製してもよい。また図14においては、アニール工程が、長尺金属板64を長手方向D1に引っ張りながら実施される例を示したが、これに限られることはなく、アニール工程を、長尺金属板64がコア61に巻き取られた状態で実施してもよい。すなわちバッチ式の焼鈍が実施されてもよい。なお、長尺金属板64がコア61に巻き取られた状態でアニール工程を実施する場合、長尺金属板64に、巻き体62の巻き取り径に応じた反りの癖がついてしまうことがある。従って、巻き体62の巻き径や母材55を構成する材料によっては、長尺金属板64を長手方向D1に引っ張りながらアニール工程を実施することが有利である。
〔切断工程〕
その後、長尺金属板64の幅方向D2における両端をそれぞれ所定範囲にわたって切り落とし、これによって、長尺金属板64の幅を所望の幅に調整する切断工程を実施する。
このようにして、所望の厚みおよび幅を有する長尺金属板64を得ることができる。
(蒸着マスクの製造方法)
次に、上述のようにして選別された長尺金属板64を用いて蒸着マスク20を製造する方法について、主に図15〜図23を参照して説明する。以下に説明する蒸着マスク20の製造方法では、図15に示すように、長尺金属板64が供給され、この長尺金属板64に貫通孔25およびダミー孔86が形成されて蒸着マスク中間体100が得られ、さらに長尺金属板64を切断することによって枚葉状の金属板21からなる蒸着マスク20が得られる。
より具体的には、蒸着マスク20の製造方法、帯状に延びる長尺の金属板64を供給する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを長尺の金属板64に施して、長尺金属板64に第1面64aの側から第1凹部30および第1ダミー孔凹部86aを形成する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを長尺金属板64に施して、長尺金属板64に第2面64bの側から第2凹部35および第2ダミー孔凹部86bを形成する工程と、を含んでいる。そして、長尺金属板64に形成された第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合うことによって、長尺金属板64に貫通孔25が作製されるとともに、第1ダミー孔凹部86aと第2ダミー孔凹部86bとが互いに通じ合うことによって、長尺金属板64にダミー孔86が作製される。図16〜図23に示された例では、第1凹部30の形成工程が、第2凹部35の形成工程の前に実施され、且つ、第1凹部30の形成工程と第2凹部35の形成工程の間に、作製された第1凹部30を封止する工程が、さらに設けられている。以下において、各工程の詳細を説明する。
図15には、蒸着マスク20を作製するための製造装置60が示されている。図15に示すように、まず、長尺金属板64をコア61に巻き取った巻き体62が準備される。そして、このコア61が回転して巻き体62が巻き出されることにより、図15に示すように帯状に延びる長尺金属板64が供給される。なお、長尺金属板64は、貫通孔25を形成されて枚葉状の金属板21、さらには蒸着マスク20をなすようになる。
供給された長尺金属板64は、搬送ローラー72によって、エッチング装置(エッチング手段)70に搬送される。エッチング装置70によって、図16〜図23に示された各処理が施される。なお本実施の形態においては、上述したように長尺金属板64の幅方向D2に複数の蒸着マスク20が割り付けられるものとする(図11および図12参照)。
すなわち、複数の蒸着マスク20が、長尺金属板64の長手方向D1において長尺金属板64の所定の位置を占める領域から作製される。この場合、好ましくは、蒸着マスク20の長手方向が長尺金属板64の圧延方向(長手方向D1)に一致するよう、複数の蒸着マスク20が長尺金属板64に割り付けられる。
まず、図16に示すように、長尺金属板64の第1面64a上および第2面64b上にネガ型の感光性レジスト材料を含むレジスト膜65c、65dを形成する。レジスト膜65c、65dを形成する方法としては、アクリル系光硬化性樹脂などの感光性レジスト材料を含む層が形成されたフィルム、いわゆるドライフィルムを長尺金属板64の第1面64a上および第2面64b上に貼り付ける方法が採用される。
次に、レジスト膜65c、65dのうちの除去したい領域に光を透過させないようにした露光マスク68a、68bを準備し、露光マスク68a、68bをそれぞれ図17に示すようにレジスト膜65c、65d上に配置する。露光マスク68a、68bとしては、例えば、レジスト膜65c、65dのうちの除去したい領域に光を透過させないようにしたガラス乾板が用いられる。その後、真空密着によって露光マスク68a、68bをレジスト膜65c、65dに十分に密着させる。なお感光性レジスト材料として、ポジ型のものが用いられてもよい。この場合、露光マスクとして、レジスト膜のうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクが用いられる。
その後、レジスト膜65c、65dを露光マスク68a、68b越しに露光する。さらに、露光されたレジスト膜65c、65dに像を形成するためにレジスト膜65c、65dを現像する(現像工程)。以上のようにして、図18に示すように、長尺金属板64の第1面64a上に第1レジストパターン65aを形成し、長尺金属板64の第2面64b上に第2レジストパターン65bを形成することができる。なお現像工程は、レジスト膜65c、65dの硬度を高めるための、または長尺金属板64に対してレジスト膜65c、65dをより強固に密着させるためのレジスト熱処理工程を含んでいてもよい。レジスト熱処理工程は、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気において、例えば100〜400℃の範囲内で実施される。
次に、図19に示すように、長尺金属板64の第1面64aのうち第1レジストパターン65aによって覆われていない領域を、第1エッチング液を用いてエッチングする第1面エッチング工程を実施する。例えば、第1エッチング液が、搬送される長尺金属板64の第1面64aに対面する側に配置されたノズルから、第1レジストパターン65a越しに長尺金属板64の第1面64aに向けて噴射される。この結果、図19に示すように、長尺金属板64のうちの第1レジストパターン65aによって覆われていない領域で、第1エッチング液による浸食が進む。これによって、長尺金属板64の第1面64aに多数の第1凹部30と多数の第1ダミー孔凹部86aが形成される。第1エッチング液としては、例えば塩化第2鉄溶液および塩酸を含むものが用いられる。
その後、図20に示すように、後の第2面エッチング工程において用いられる第2エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって、第1凹部30および第1ダミー孔凹部86aが被覆される。すなわち、第2エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって、第1凹部30および第1ダミー孔凹部86aが封止される。図20に示す例において、樹脂69の膜が、形成された第1凹部30および第1ダミー孔凹部86aだけでなく、第1面64a(第1レジストパターン65a)も覆うように形成されている。
次に、図21に示すように、長尺金属板64の第2面64bのうち第2レジストパターン65bによって覆われていない領域をエッチングし、第2面64bに第2凹部35および第2ダミー孔凹部86bを形成する第2面エッチング工程を実施する。第2面エッチング工程は、第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合い、これによって貫通孔25が形成されるようになるまで実施される。この際、第1ダミー孔凹部86aと第2ダミー孔凹部86bとが互いに通じ合ってダミー孔86が形成される。第2エッチング液としては、上述の第1エッチング液と同様に、例えば塩化第2鉄溶液および塩酸を含むものが用いられる。
なお第2エッチング液による浸食は、長尺金属板64のうちの第2エッチング液に触れている部分において行われていく。従って、浸食は、長尺金属板64の法線方向N(厚み方向)のみに進むのではなく、長尺金属板64の板面に沿った方向にも進んでいく。ここで好ましくは、第2面エッチング工程は、第2レジストパターン65bの隣り合う二つの孔66aに対面する位置にそれぞれ形成された二つの第2凹部35が、二つの孔66aの間に位置するブリッジ部67aの裏側において合流するよりも前に終了される。これによって、図22に示すように、長尺金属板64の第2面64bに上述のトップ部43を残すことができる。
その後、図23に示すように、長尺金属板64から樹脂69が除去される。樹脂69は、例えばアルカリ系剥離液を用いることによって、除去することができる。アルカリ系剥離液が用いられる場合、図23に示すように、樹脂69と同時にレジストパターン65a,65bも除去される。なお、樹脂69を除去した後、樹脂69を剥離させるための剥離液とは異なる剥離液を用いて、樹脂69とは別途にレジストパターン65a,65bを除去してもよい。
このようにして長尺金属板64に多数の貫通孔25と多数のダミー孔86とが形成された蒸着マスク中間体100が得られる。
蒸着マスク中間体100は、図15に示すように、当該長尺金属板64を狭持した状態で回転する搬送ローラー72,72により、切断装置(切断手段)73へ搬送される。なお、この搬送ローラー72,72の回転によって長尺金属板64に作用するテンション(引っ張り応力)を介し、上述した供給コア61が回転させられ、巻き体62から長尺金属板64が供給されるようになっている。
その後、多数の貫通孔25と多数のダミー孔86とが形成された長尺金属板64を切断装置(切断手段)73によって所定の長さおよび幅に切断することにより、長尺金属板64が個片化され、多数の貫通孔25および多数のダミー孔86が形成された枚葉状の金属板21が得られる。
以上のようにして、多数の貫通孔25および多数のダミー孔86が形成された金属板21からなる蒸着マスク20が得られる。
(蒸着工程)
次に、得られた蒸着マスク20を用いて基板92上に蒸着材料98を蒸着させる方法について説明する。はじめに図2に示すように、蒸着マスク20の第1面20aを基板92の面に密着させる。この際、図示しない磁石などを用いて、蒸着マスク20の第1面20aを基板92の面に密着させてもよい。また図1に示すように、複数の蒸着マスク20がフレーム15に張設される。より具体的には、蒸着マスク20に、当該蒸着マスク20の長手方向の張力が付与されて、この張力が付与された状態で、蒸着マスク20の耳部24がフレーム15に取り付けられる。耳部24は、フレーム15に、例えばスポット溶接で固定される。このようにして、蒸着マスク20の面が基板92の面に平行になる。なお、図1においては、フレーム15に張設された全ての蒸着マスク20がダミー領域80を有している例を示しているが、これに限られることはなく、ダミー領域80を有する蒸着マスク20(第1蒸着マスク20A)と、ダミー領域80を有しない蒸着マスク(第2蒸着マスク20B)とが混在していてもよい。
蒸着マスク20が張設されている状態では、蒸着マスク20のダミー領域80が伸びるが、その伸びは蒸着マスク20の幅方向において異なっている。これに応じて、有効領域22の伸びが、当該幅方向で異なるようになる。
ここで、蒸着マスク20の平面形状が、図12に示すように湾曲しており、かつ上述したダミー領域80を有していない蒸着マスク20を張設する場合について説明する。このような蒸着マスク20に長手方向の張力を付与すると、有効領域22のうち、平面視で凹むように形成されている蒸着マスク20の第1側縁20fの側の部分は縮んで弛んだ状態であるため、当該部分には張力がかかりにくく、伸びにくい。このことにより、第1側縁20fの側の部分の伸びが、第2側縁20gの側の部分の伸びよりも小さくなり得る。このため、有効領域22のうち第1側縁20fの側の部分では、貫通孔25が正規位置に位置するまで伸びることができずに、蒸着時の貫通孔25の位置がずれる可能性がある。また、第1側縁20fの側の部分と第2側縁20gの側の部分とがほぼ均等に伸びた場合であっても、張力付与前では第1側縁20fの側の部分は弛んでいたため、第1側縁20fの側の部分がある程度伸びたとしても依然として弛んだ状態にあって、貫通孔25が正規位置に位置するまで伸びることが困難であると考えられる。このため、貫通孔25の位置がずれる可能性がある。
また、張設時、有効領域22のうち蒸着マスク20の幅方向の中央部分の伸びは、第1側縁20fの側の部分の伸びよりも大きいが、第2側縁20gの側の部分の伸びよりも小さくなり得る。このため、当該幅方向の中央部分においても、貫通孔25が正規位置に位置するまで伸びることができずに、蒸着時の貫通孔25の位置がずれる可能性がある。
これに対して本実施の形態によれば、ダミー領域80の第1領域側縁部81における材料残存量が、第2領域側縁部82における材料残存量よりも大きくなっている。この場合、第1領域側縁部81に設けられた複数のダミー孔86の開口率を、第2領域側縁部82に設けられた複数のダミー孔86の開口率よりも小さくすることができる。このことにより、張設時におけるダミー領域80の第1領域側縁部81の伸び率を、第2領域側縁部82の伸び率よりも小さくすることができる。
この場合、有効領域22のうち第1側縁20fの側の部分にかかる張力を、第2側縁20gの側の部分にかかる張力よりも大きくすることができる。このことにより、有効領域22のうち第1側縁20fの側の部分の伸びを、第2側縁20gの側の部分の伸びよりも大きくすることができる。このため、張設時に有効領域22の第1側縁20fの側の部分の伸びを、効果的に大きくすることができる。一方、張設時に有効領域22の第2側縁20gの側の部分の伸びを、効果的に小さくすることができる。この結果、有効領域22に形成された貫通孔25の位置を正規位置に位置づける(または近づける)ことができ、貫通孔25の位置がずれることを防止できる。
また本実施の形態によれば、ダミー領域80の第1領域側縁部81と第2領域側縁部82との間に設けられた領域中央部83における材料残存量は、第1領域側縁部81における材料残存量よりも小さく、かつ第2領域側縁部82における材料残存量よりも大きくなっている。この場合、領域中央部83に設けられた複数のダミー孔86の開口率を、第1領域側縁部81に設けられた複数のダミー孔86の開口率よりも大きくすることができるとともに、第2領域側縁部82に設けられた複数のダミー孔86の開口率よりも小さくすることができる。このことにより、張設時におけるダミー領域80の領域中央部83の伸び率を、第1領域側縁部81の伸び率よりも大きくすることができるとともに、第2領域側縁部82の伸び率よりも小さくすることができる。
この場合、有効領域22のうち蒸着マスク20の幅方向の中央部分にかかる張力を、第2側縁20gの側の部分にかかる張力よりも大きくすることができるとともに、第1側縁20fの側の部分にかかる張力よりも小さくすることができる。このことにより、有効領域22のうち当該中央部分の伸びを、第2側縁20gの側の部分の伸びよりも大きくすることができるとともに、第1側縁20fの側の部分の伸びよりも小さくすることができる。このため、有効領域22の伸びを、第2側縁20gから第1側縁20fに向かって段階的に大きくすることができる。この結果、張設時に有効領域22の当該中央部分に形成された貫通孔25の位置を正規位置に位置づける(または近づける)ことができ、当該貫通孔25の位置がずれることを防止できる。
蒸着マスク20を張設した後、るつぼ94内の蒸着材料98を加熱することにより、蒸着材料98を気化または昇華させる。気化または昇華した蒸着材料98は、蒸着マスク20の貫通孔25を通って基板92に付着する。この結果、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98が基板92の表面に成膜される。
このように本実施の形態によれば、蒸着マスク20の耳部24と有効領域22との間に設けられたダミー領域80の第1領域側縁部81における材料残存量が、第2領域側縁部82における材料残存量よりも大きくなっている。このことにより、有効領域22のうち、平面視で凹むように形成されていた蒸着マスク20の第1側縁20f(図12参照)の側の部分の伸びを効果的に大きくすることができる。このため、有効領域22に形成された貫通孔25の位置がずれることを防止でき、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができる。
また本実施の形態によれば、ダミー領域80の第1領域側縁部81と第2領域側縁部82との間に設けられた領域中央部83における材料残存量は、第1領域側縁部81における材料残存量よりも小さく、かつ第2領域側縁部82における材料残存量よりも大きくなっている。このことにより、有効領域22のうち、蒸着マスク20の幅方向の中央部分の伸びを、第2側縁20gの側の部分の伸びよりも大きくすることができるとともに、第1側縁20fの側の部分の伸びよりも小さくすることができる。このため、有効領域22に形成された貫通孔25の位置がずれることをより一層防止でき、張設時の貫通孔25の位置精度をより一層向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による蒸着マスクおよび蒸着マスク中間体は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
(金属板の変形例)
上述の本実施の形態においては、所望の厚みを有する板材が、母材を圧延して金属板を作製し、その後、金属板をアニールすることによって得られる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、めっき処理を利用した製箔工程によって、所望の厚みを有する金属板を作製してもよい。製箔工程においては、例えば、めっき液の中に部分的に浸漬されたステンレス製などのドラムを回転させながら、ドラムの表面にめっき膜を形成し、このめっき膜を剥がしていくことにより、長尺状の金属板をロールトゥーロールで作製することができる。ニッケルを含む鉄合金からなる金属板を作製する場合、めっき液としては、ニッケル化合物を含む溶液と、鉄化合物を含む溶液との混合溶液を用いることができる。例えば、スルファミン酸ニッケルを含む溶液と、スルファミン酸鉄を含む溶液との混合溶液を用いることができる。めっき液には、マロン酸やサッカリンなどの添加剤が含まれていてもよい。
このようにして得られた金属板に対して、次に、上述のアニール工程を実施してもよい。また、アニール工程の後に、金属板の幅を所望の幅に調整するために金属板の両端を切り落とす上述の切断工程を実施してもよい。
めっき処理を利用して金属板を作製した場合も、上述の本実施の形態の場合と同様に、その後、レジストパターン65a,65bを形成する工程や、金属板の第1面および第2面をエッチングする工程を実施することにより、複数の貫通孔25が形成された蒸着マスク20を得ることができる。
(貫通孔の配置の変形例)
上述した本実施の形態においては、蒸着マスク20の法線方向Nに沿って蒸着マスク20を見た場合に複数の貫通孔25が格子状に配置される例を示した。しかしながら、貫通孔25の配置は特に限られることはない。例えば図24に示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿って蒸着マスク20を見た場合に複数の貫通孔25が千鳥足状に配置されていてもよい。
(ダミー孔の配置の変形例)
上述した本実施の形態においては、図8Aおよび図8Bに示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿って蒸着マスク20を見た場合に第1面ダミー開口部84および第2面ダミー開口部85が格子状に配置されている例を示した。しかしながら、第1面ダミー開口部84および第2面ダミー開口部85の配置は特に限られることはなく、例えば図25に示すように、図24に示す貫通孔25と同様な千鳥足状に配置されていてもよい。この場合においても、張設時に有効領域22に付与される張力を蒸着マスク20の幅方向の位置に応じて調整することができる。なお、図25においては、ダミー領域80のうちの任意の部分における第1面ダミー開口部84の配置例を示している。
(ダミー領域の変形例)
上述した本実施の形態においては、ダミー領域80に、第1面ダミー開口部84と第2面ダミー開口部85とによって画定されるダミー孔86が設けられている例を示した。しかしながら、このようなダミー孔86は設けられていなくてもよい。例えば、図26に示すように、ダミー領域80において、蒸着マスク20の第1面20aに、第1面ダミー開口部84によって画定された第1ダミー凹部87が設けられ、第2面20bに、第2面ダミー開口部85によって画定された第2ダミー凹部88が設けられていてもよい。この場合においても、張設時に有効領域22に付与される張力を蒸着マスク20の幅方向の位置に応じて調整することができる。
また、図26および図27に示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿って見たときに、第1面ダミー開口部84の中心と、第2面ダミー開口部85の中心とが、重なっているのではなく、交互に配置されていてもよい。この場合、ダミー領域80を貫通するダミー孔86は設けられていなくても、ダミー領域80の剛性を効果的に低減することができる。すなわち、ダミー領域80における蒸着マスク20の法線方向Nかつ幅方向に沿った断面積を小さくすることができ、ダミー領域80の剛性を効果的に低減することができる。また、図26に示す形態では、ダミー領域80における蒸着マスク20の法線方向Nかつ長手方向に沿った断面形状を概略的に蛇腹状に形成することができ、この点においても、ダミー領域80の剛性の効果的な低減に寄与できる。なお、図27においては、ダミー領域80のうちの任意の部分における第1面ダミー開口部84および第2面ダミー開口部85の配置例を示している。
このような第1ダミー凹部87は、第1面21a側からのエッチングによって形成することができ、第2ダミー凹部88は、第2面21b側からのエッチングによって形成することができる。すなわち、第1ダミー凹部87は、上述した第1凹部30と同様にしてエッチングによって形成することができる。この場合、第1レジストパターン65aに形成する第1ダミー凹部87用の孔を、第1凹部30用の孔と同程度の大きさとすることにより、第1ダミー凹部87の深さを第1凹部30と同程度にすることができるが、第1ダミー凹部87と第2ダミー凹部88とが通じ合わなければ、これに限られることはない。一方、第2レジストパターン65bに形成する第2ダミー凹部88用の孔を第2凹部35用の孔66aよりも小さくすることにより、図26に示すような第2凹部35よりも深さが浅い第2ダミー凹部88を形成することができる。この場合、第2ダミー凹部88が、第1ダミー凹部87や第1面20aに通じることを防止できる。なお、図26においては、第1ダミー凹部87および第2ダミー凹部88の断面が半円状に形成されている例が示されているが、これに限られることはない。また、第1ダミー凹部87を画定する第1面ダミー開口部84および第2ダミー凹部88を画定する第2面ダミー開口部85の平面形状が矩形状である例を示しているが、これに限られることはなく、スリット形状や、円形状など、任意の形状とすることができる。
なお、上述した第1ダミー凹部87および第2ダミー凹部88との用語は、ダミー領域80の剛性の低減に寄与できる程度の深さを有している凹部を意味するものとして用いている。すなわち、第1ダミー凹部87および第2ダミー凹部88は、エッチングなどによって長尺金属板64に意図的に形成されたものであって、長尺金属板64の製造時や、蒸着マスクの製造時に不所望に形成された深さが極めて浅い凹み等は含まない凹部としている。
なお、図26に示す形態では、第1面20aに第1ダミー凹部87が設けられるとともに、第2面20bに第2ダミー凹部88が設けられている例が示されているが、これに限られることはない。例えば、ダミー領域80には、第1ダミー凹部87および第2ダミー凹部88のいずれか一方のみが設けられるようにしてもよい。この場合においても、張設時に有効領域22に付与される張力を蒸着マスク20の幅方向の位置に応じて調整することができる。
(ダミー領域の変形例)
なお、上述した実施の形態においては、ダミー領域80が、耳部24の各々と有効領域22との間に介在され、蒸着マスク20の長手方向における有効領域22の両側に設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、ダミー領域80は、一対の耳部24のうちの少なくとも一方の耳部24と有効領域22との間に介在され、他方の耳部24と有効領域22との間には、ダミー領域80は介在されていなくてもよい。言い換えると、蒸着マスク20の長手方向における有効領域22の一方の側に設けられて、他方の側に設けられていなくてもよい。例えば、図1において、3つの有効領域22の上側または下側(図1に示す参照符号によって上下方向を特定した場合の上側または下側)のダミー領域80は設けられていなくてもよい。この場合においても、1つの上述したダミー領域80によって、有効領域22のうち、平面視で凹むように形成されていた蒸着マスク20の第1側縁20f(図12参照)の側の部分の伸びを効果的に大きくすることができる。このため、有効領域22に形成された貫通孔25の位置がずれることを防止でき、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができる。
(蒸着マスクの製造方法の第1の変形例)
上述の本実施の形態においては、蒸着マスク20がエッチング処理によって製造される例を示した。しかしながら、蒸着マスク20はめっき処理によって製造されてもよい。この場合の蒸着マスク20について、以下に詳細に説明する。
図28及び図29に示すように、蒸着マスク20は、第1面20aを構成する第1金属層32と、第2面20bを構成する第2金属層37と、を備える。第1金属層32には、所定のパターンで第1開口部30が設けられており、また、第2金属層37には、所定のパターンで第2開口部35が設けられている。有効領域22においては、第1開口部30と第2開口部35とが互いに連通することにより、蒸着マスク20の第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25が構成されている。なお、図29では、図28のX−X方向から見た断面に加えて、ダミー領域80のダミー孔86も示している。
図28に示すように、貫通孔25を構成する第1開口部30や第2開口部35は、平面視において略多角形状になっていてもよい。ここでは第1開口部30および第2開口部35が、略四角形状、より具体的には略正方形状になっている例が示されている。また、図示はしないが、第1開口部30や第2開口部35は、略六角形状や略八角形状など、その他の略多角形状になっていてもよい。なお「略多角形状」とは、多角形の角部が丸められている形状を含む概念である。また図示はしないが、第1開口部30や第2開口部35は、円形状になっていてもよい。また、平面視において第2開口部35が第1開口部30を囲う輪郭を有する限りにおいて、第1開口部30の形状と第2開口部35の形状が相似形になっている必要はない。
図29において、符号41は、第1金属層32と第2金属層37とが接続される接続部を表している。また符号S0は、第1金属層32と第2金属層37との接続部41における貫通孔25の寸法を表している。なお図29においては、第1金属層32と第2金属層37とが接している例を示したが、これに限られることはなく、第1金属層32と第2金属層37との間にその他の層が介在されていてもよい。例えば、第1金属層32と第2金属層37との間に、第1金属層32上における第2金属層37の析出を促進させるための触媒層が設けられていてもよい。
図30は、図29の第1金属層32および第2金属層37の一部を拡大して示す図である。図30に示すように、蒸着マスク20の第2面20bにおける第2金属層37の幅M2は、蒸着マスク20の第1面20aにおける第1金属層32の幅M1よりも小さくなっている。言い換えると、第2面20bにおける貫通孔25(第2開口部35)の開口寸法S2は、第1面20aにおける貫通孔25(第1開口部30)の開口寸法S1よりも大きくなっている。以下、このように第1金属層32および第2金属層37を構成することの利点について説明する。
蒸着マスク20の第2面20b側から飛来する蒸着材料98は、貫通孔25の第2開口部35および第1開口部30を順に通って有機EL基板92に付着する。有機EL基板92のうち蒸着材料98が付着する領域は、第1面20aにおける貫通孔25の開口寸法S1や開口形状によって主に定められる。ところで、図29において第2面20b側から第1面20aへ向かう矢印L1で示すように、蒸着材料98は、るつぼ94から有機EL基板92に向けて蒸着マスク20の法線方向Nに沿って移動するだけでなく、蒸着マスク20の法線方向Nに対して大きく傾斜した方向に移動することもある。ここで、仮に第2面20bにおける貫通孔25の開口寸法S2が第1面20aにおける貫通孔25の開口寸法S1と同一であるとすると、蒸着マスク20の法線方向Nに対して大きく傾斜した方向に移動する蒸着材料98の多くは、貫通孔25を通って有機EL基板92に到達するよりも前に、貫通孔25の第2開口部35の壁面36に到達して付着してしまう。従って、蒸着材料98の利用効率を高めるためには、第2開口部35の開口寸法S2を大きくすること、すなわち第2金属層37の幅M2を小さくすることが好ましいと言える。
図29において、第2金属層37の壁面36及び第2金属層37の壁面31に接する(端部38を通る)直線L1が、蒸着マスク20の法線方向Nに対してなす最小角度が、符号θ1で表されている。斜めに移動する蒸着材料98を、可能な限り有機EL基板92に到達させるためには、角度θ1を大きくすることが有利となる。例えば、角度θ1を45°以上にすることが好ましい。
角度θ1を大きくする上では、第1金属層32の幅M1に比べて第2金属層37の幅M2を小さくすることが有効である。また、図から明らかなように、角度θ1を大きくする上では、第1金属層32の厚みT1や第2金属層37の厚みT2を小さくすることも有効である。なお、第2金属層37の幅M2、第1金属層32の厚みT1や第2金属層37の厚みT2を過剰に小さくしてしまうと、蒸着マスク20の強度が低下し、このため搬送時や使用時に蒸着マスク20が破損してしまうことが考えられる。例えば、蒸着マスク20をフレーム15に張設する際に蒸着マスク20に加えられる引張り応力によって、蒸着マスク20が破損してしまうことが考えられる。これらの点を考慮すると、第1金属層32および第2金属層37の寸法が以下の範囲に設定されることが好ましいと言える。これによって、上述の角度θ1を例えば45°以上にすることができる。
・第1金属層32の幅M1:5μm以上且つ25μm以下
・第2金属層37の幅M2:2μm以上且つ20μm以下
・蒸着マスク20の厚みT0:5μm以上且つ50μm以下、より好ましくは3μm以上且つ50μm以下、さらに好ましくは3μm以上且つ30μm以下、さらに好ましくは3μm以上且つ25μm以下
・第1金属層32の厚みT1:5μm以下
・第2金属層37の厚みT2:2μm以上且つ50μm以下、より好ましくは3μm以上且つ50μm以下、さらに好ましくは3μm以上且つ30μm以下、さらに好ましくは3μm以上且つ25μm以下
なお、本実施の形態において、蒸着マスク20の厚みT0は、耳部17及び周囲領域23のいずれにおいても同一である。
上述の開口寸法S0,S1,S2は、有機EL表示装置の画素密度や上述の角度θ1の所望値などを考慮して、適切に設定される。例えば、400ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合、接続部41における貫通孔25の開口寸法S0は、15μm以上且つ60μm以下に設定され得る。また、第1面20aにおける第1開口部30の開口寸法S1は、10μm以上且つ50μm以下に設定され、第2面20bにおける第2開口部35の開口寸法S2は、15μm以上且つ60μm以下に設定され得る。
図30に示すように、第1金属層32によって構成される蒸着マスク20の第1面20aには、窪み部34が形成されていてもよい。窪み部34は、めっき処理によって蒸着マスク20を製造する場合に、後述するパターン基板150の導電性パターン152に対応して形成される。窪み部34の深さDは、例えば50nm以上且つ500nm以下である。好ましくは、第1金属層32に形成される窪み部34の外縁34eは、第1金属層32の端部33と接続部41との間に位置する。
上述した蒸着マスク20においても、エッチング処理によって作成された蒸着マスク20と同様にダミー領域80が設けられており、蒸着マスク20の第1面20aに複数の第1面ダミー開口部84が設けられるとともに、第2面20bに複数の第2面ダミー開口部85が設けられている。ここでは、第1面ダミー開口部84と第2面ダミー開口部85とによって画定されるダミー孔86がダミー領域80に設けられており、このダミー孔86がダミー領域80を貫通している。そして、ダミー孔86は、貫通孔25と同様に形成することができ、例えば、ダミー孔86の断面形状は、有効領域22に形成された貫通孔25と同様の形状とすることができるが、これに限られることはない。
めっき処理によって作製される蒸着マスク20においては、材料残存量は、具体的には、めっき処理によって形成された第1金属層32と第2金属層37を構成する材料の量を意味している。このような蒸着マスク20における材料残存量は、上述したエッチング処理によって作製される蒸着マスク20における材料残存量と同様に求めることができる。
なお、厚みtuは、基準領域Uの中心位置Ouまたは当該中心位置Ouの近傍の位置(図10参照)における蒸着マスク20の第1面20aと第2面20bとの間の距離とすればよい。
次に、めっき処理によって蒸着マスク20を製造する方法について説明する。
(蒸着マスクの製造方法)
図31乃至図34は、蒸着マスク20の製造方法を説明する図である。
〔パターン基板準備工程〕
まず、図31に示すパターン基板150を準備する。パターン基板150は、絶縁性を有する基材151と、基材151上に形成された導電性パターン152と、を有する。導電性パターン152は、第1金属層32に対応するパターンを有する。
絶縁性および適切な強度を有する限りにおいて基材151を構成する材料や基材151の厚みが特に限られることはない。例えば基材151を構成する材料として、ガラスや合成樹脂などを用いることができる。
導電性パターン152を構成する材料としては、金属材料や酸化物導電性材料等の、導電性を有する材料が適宜用いられる。金属材料の例としては、例えばクロムや銅などを挙げることができる。導電性パターン152の厚みは、例えば50nm以上且つ500nm以下である。
なお、蒸着マスク20をパターン基板150から分離させる後述する分離工程を容易化するため、パターン基板150に離型処理を施しておいてもよい。
例えば、まず、パターン基板150の表面の油分を除去する脱脂処理を実施する。例えば、酸性の脱脂液を用いて、パターン基板150の導電性パターン152の表面の油分を除去する。
次に、導電性パターン152の表面を活性化する活性化処理を実施する。例えば、後述する第1めっき処理工程において用いられる第1めっき液に含まれる酸性溶液と同一の酸性溶液を、導電性パターン152の表面に接触させる。例えば、第1めっき液がスルファミン酸ニッケルを含む場合、スルファミン酸を導電性パターン152の表面に接触させる。
次に、導電性パターン152の表面に有機物の膜を形成する有機膜形成処理を実施する。例えば、有機物を含む離型剤を導電性パターン152の表面に接触させる。この際、有機膜の厚みを、有機膜の電気抵抗が、電解めっきによる第1金属層32の析出が有機膜によって阻害されない程度に薄く設定する。離型剤は、硫黄成分を含んでいてもよい。
なお、脱脂処理、活性化処理および有機膜形成処理の後には、パターン基板150を水で洗浄する水洗処理をそれぞれ実施する。
〔第1めっき処理工程〕
次に、導電性パターン152が形成された基材151上に第1めっき液を供給して、導電性パターン152上に第1金属層32を析出させる第1めっき処理工程を実施する。例えば、導電性パターン152が形成された基材151を、第1めっき液が充填されためっき槽に浸す。これによって、図32に示すように、パターン基板150上に、所定のパターンで第1開口部30および第1面ダミー開口部84が設けられた第1金属層32を得ることができる。
なお、めっき処理の特性上、図32に示すように、第1金属層32は、基材151の法線方向に沿って見た場合に導電性パターン152と重なる部分だけでなく、導電性パターン152と重ならない部分にも形成され得る。これは、導電性パターン152の端部154と重なる部分に析出した第1金属層32の表面にさらに第1金属層32が析出するためである。この結果、図32に示すように、第1開口部30の端部33は、基材151の法線方向に沿って見た場合に導電性パターン152と重ならない部分に位置するようになり得る(第1面ダミー開口部84の端部も同様)。また、第1金属層32のうち導電性パターン152と接する側の面には、導電性パターン152の厚みに対応する上述の窪み部34が形成される。
図32において、第1金属層32のうち導電性パターン152と重ならない部分(すなわち窪み部34が形成されない部分)の幅が符号wで表されている。幅wは、例えば0.5μm以上且つ5.0μm以下になる。導電性パターン152の寸法は、この幅wを考慮して設定される。
導電性パターン152上に第1金属層32を析出させることができる限りにおいて、第1めっき処理工程の具体的な方法が特に限られることはない。例えば、第1めっき処理工程は、導電性パターン152に電流を流すことによって導電性パターン152上に第1金属層32を析出させる、いわゆる電解めっき処理工程として実施されてもよい。若しくは、第1めっき処理工程は、無電解めっき処理工程であってもよい。なお、第1めっき処理工程が無電解めっき処理工程である場合、導電性パターン152上には適切な触媒層が設けられていてもよい。若しくは、導電性パターン152が、触媒層として機能するよう構成されていてもよい。電解めっき処理工程が実施される場合にも、導電性パターン152上に触媒層が設けられていてもよい。
用いられる第1めっき液の成分は、第1金属層32に求められる特性に応じて適宜定められる。例えば第1金属層32が、ニッケルを含む鉄合金によって構成される場合、第1めっき液として、ニッケル化合物を含む溶液と、鉄化合物を含む溶液との混合溶液を用いることができる。例えば、スルファミン酸ニッケルや臭化ニッケルを含む溶液と、スルファミン酸第一鉄を含む溶液との混合溶液を用いることができる。めっき液には、様々な添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、ホウ酸などのpH緩衝剤、サッカリンナトリウなどの一次光沢剤、ブチンジオール、プロパギルアルコール、クマリン、ホルマリン、チオ尿素などの二次光沢剤や、酸化防止剤などが用いられ得る。一次光沢剤は、硫黄成分を含んでいてもよい。
〔レジスト形成工程〕
次に、基材151上および第1金属層32上に、所定の隙間156を空けてレジストパターン155を形成するレジスト形成工程を実施する。図33は、基材151上に形成されたレジストパターン155を示す断面図である。図33に示すように、レジスト形成工程は、第1金属層32の第1開口部30および第1面ダミー開口部84がレジストパターン155によって覆われるとともに、レジストパターン155の隙間156が第1金属層32上に位置するように実施される。
以下、レジスト形成工程の一例について説明する。はじめに、基材151上および第1金属層32上にドライフィルムを貼り付けることによって、ネガ型のレジスト膜を形成する。ドライフィルムとは、基材151などの対象物の上にレジスト膜を形成するために対象物に貼り付けられるフィルムのことである。ドライフィルムは、PETなどからなるベースフィルムと、ベースフィルムに積層され、感光性を有する感光層と、を少なくとも含む。感光層は、アクリル系光硬化性樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレン系樹脂などの感光性材料を含む。なお、レジストパターン155用の材料を基材151上に塗布し、その後に必要に応じて焼成を実施することにより、レジスト膜を形成してもよい。
次に、レジスト膜のうち隙間156となるべき領域に光を透過させないようにした露光マスクを準備し、露光マスクをレジスト膜上に配置する。その後、真空密着によって露光マスクをレジスト膜に十分に密着させる。その後、レジスト膜を露光マスク越しに露光する。さらに、露光されたレジスト膜に像を形成するためにレジスト膜を現像する。以上のようにして、図33に示すように、第1金属層32上に位置する隙間156が設けられるとともに第1金属層32の第1開口部30および第1面ダミー開口部84を覆うレジストパターン155を形成することができる。なお、レジストパターン155を基材151および第1金属層32に対してより強固に密着させるため、現像工程の後にレジストパターン155を加熱する熱処理工程を実施してもよい。
なお、レジスト膜として、ポジ型のものが用いられてもよい。この場合、露光マスクとして、レジスト膜のうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクが用いられる。
〔第2めっき処理工程〕
次に、レジストパターン155の隙間156に第2めっき液を供給して、第1金属層32上に第2金属層37を析出させる第2めっき処理工程を実施する。例えば、第1金属層32が形成された基材151を、第2めっき液が充填されためっき槽に浸す。これによって、図34に示すように、第1金属層32上に第2金属層37を形成することができる。
第1金属層32上に第2金属層37を析出させることができる限りにおいて、第2めっき処理工程の具体的な方法が特に限られることとはない。例えば、第2めっき処理工程は、第1金属層32に電流を流すことによって第1金属層32上に第2金属層37を析出させる、いわゆる電解めっき処理工程として実施されてもよい。若しくは、第2めっき処理工程は、無電解めっき処理工程であってもよい。なお第2めっき処理工程が無電解めっき処理工程である場合、第1金属層32上には適切な触媒層が設けられていてもよい。電解めっき処理工程が実施される場合にも、第1金属層32上に触媒層が設けられていてもよい。
第2めっき液としては、上述の第1めっき液と同一のめっき液が用いられてもよい。若しくは、第1めっき液とは異なるめっき液が第2めっき液として用いられてもよい。第1めっき液の組成と第2めっき液の組成とが同一である場合、第1金属層32を構成する金属の組成と、第2金属層37を構成する金属の組成も同一になる。
なお、図34においては、レジストパターン155の上面と第2金属層37の上面とが一致するようになるまで第2めっき処理工程が継続される例を示したが、これに限られることはない。第2金属層37の上面がレジストパターン155の上面よりも下方に位置する状態で、第2めっき処理工程が停止されてもよい。
〔除去工程〕
その後、レジストパターン155を除去する除去工程を実施する。例えばアルカリ系剥離液を用いることによって、レジストパターン155を基材151、第1金属層32や第2金属層37から剥離させることができる。
〔分離工程〕
次に、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体を基材151から分離させる分離工程を実施する。これによって、所定のパターンで第1開口部30および第1面ダミー開口部84が設けられた第1金属層32と、第1開口部30に連通する第2開口部35および第1面ダミー開口部84に連通する第2面ダミー開口部85が設けられた第2金属層37と、を備えた蒸着マスク20を得ることができる。
以下、分離工程の一例について詳細に説明する。はじめに、粘着性を有する物質が塗工などによって設けられているフィルムを、基材151上に形成された第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体に貼り付ける。次に、フィルムを引き上げたり巻き取ったりすることにより、フィルムを基材151から引き離し、これによって、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体をパターン基板150の基材151から分離させる。その後、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体からフィルムを剥がす。
その他にも、分離工程においては、はじめに、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体と基材151との間に、分離のきっかけとなる間隙を形成し、次に、この間隙にエアを吹き付け、これによって分離工程を促進してもよい。
なお、粘着性を有する物質としては、UVなどの光を照射されることによって、または加熱されることによって粘着性を喪失する物質を使用してもよい。この場合、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体を基材151から分離させた後、フィルムに光を照射する工程やフィルムを加熱する工程を実施する。これによって、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体からフィルムを剥がす工程を容易化することができる。例えば、フィルムと第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体とを可能な限り互いに平行な状態に維持した状態で、フィルムを剥がすことができる。これによって、フィルムを剥がす際に第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体が湾曲することを抑制することができ、このことにより、蒸着マスク20に湾曲などの変形のくせがついてしまうことを抑制することができる。
このようにして作製される蒸着マスク20は、図11に示す蒸着マスク中間体100と同様に、図35に示すような、複数の蒸着マスク20が一度に作製される蒸着マスク中間体110から作製される場合がある。この蒸着マスク中間体110は、図11に示す蒸着マスク中間体110のように長尺状にはなっていない。一方、このような蒸着マスク中間体110として作製されずに、蒸着マスク20が枚葉状に個別に作製される場合もある。
いずれの場合においても電流密度の不均一性等を理由として、エッチング処理によって作製された蒸着マスク20と同様に、平面視で凹むように形成される場合がある。この場合であっても、上述したようなダミー領域80が設けられていることにより、張設時に、有効領域22に形成された貫通孔25の位置がずれることを防止でき、貫通孔25の位置精度を向上させることができる。
なお、図28乃至図35に示した蒸着マスク20においては、ダミー孔86の断面形状を貫通孔25の断面と同様の形状とした例を示した。しかしながら、めっき処理によって形成することができれば、ダミー孔86の断面形状は任意とすることができる。更に言えば、図26に示すような第2ダミー凹部88も、めっき処理によって形成することができる。この場合、例えば、図33に示すレジスト形成工程において、第1金属層32上にレジストパターン155を形成して第2めっき処理工程を行うことにより、レジストパターン155によって第2金属層37が形成されない部分に、第2ダミー凹部88を形成することができる。
(蒸着マスクの製造方法の第2の変形例)
上述の本実施の形態においては、蒸着マスク20が、第1金属層32および第2金属層37という、少なくとも2つの金属層を積層させることによって構成される例を示した。
しかしながら、蒸着マスク20は、所定のパターンで複数の貫通孔25が形成された1つの金属層27によって構成されていてもよい。以下、図36〜図38を参照して、蒸着マスク20が1つの金属層27を備える例について説明する。なお、本変形例においては、蒸着マスク20の第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25のうち第1面20a上に位置する部分を第1開口部30と称し、貫通孔25のうち第2面20b上に位置する部分を第2開口部35と称する。
図38に示す蒸着マスク20においては、材料残存量は、具体的には、めっき処理によって形成された金属層27を構成する材料の量を意味している。このような蒸着マスク20における材料残存量も、上述したエッチング処理によって作製される蒸着マスク20における材料残存量と同様に求めることができるため、ここでは詳細な説明は省略する。なお、厚みtuは、基準領域Uの中心位置Ouまたは当該中心位置Ouの近傍の位置(図10参照)における蒸着マスク20の第1面20aと第2面20bとの間の距離とすればよい。
本変形例による蒸着マスク20を製造する方法について説明する。
まず、所定の導電性パターン152が形成された基材151を準備する。次に図36に示すように、基材151上に、所定の隙間156を空けてレジストパターン155を形成するレジスト形成工程を実施する。好ましくは、レジストパターン155の隙間156を画成するレジストパターン155の側面157の間の間隔は、基材151から遠ざかるにつれて狭くなっている。すなわち、レジストパターン155が、基材151から遠ざかるにつれてレジストパターン155の幅が広くなる形状、いわゆる逆テーパ形状を有している。
このようなレジストパターン155を形成する方法の一例について説明する。例えば、はじめに、基材151の面のうち導電性パターン152が形成された側の面上に、光硬化性樹脂を含むレジスト膜を設ける。次に、基材151のうちレジスト膜が設けられている側とは反対の側から基材151に入射させた露光光をレジスト膜に照射して、レジスト膜を露光する。その後、レジスト膜を現像する。この場合、露光光の回り込み(回折)に基づいて、図36に示すような逆テーパ形状を有するレジストパターン155を得ることができる。
次に図37に示すように、レジストパターン155の隙間156にめっき液を供給して、導電性パターン152上に金属層27を析出させるめっき処理工程を実施する。その後、上述の除去工程および分離工程を実施することにより、図38に示すように、所定のパターンで貫通孔25が設けられた金属層27を備えた蒸着マスク20を得ることができる。
(蒸着マスクの変形例)
上述の本実施の形態においては、図1に示すように、蒸着マスク20の有効領域22が、蒸着マスク20の長手方向に一列に配列された、いわゆるスティック状の蒸着マスク20である例について説明した。しかしながら、例えば、図39に示すように有効領域が格子状に配置された蒸着マスク20にダミー領域を設けることによっても、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができる。
図39に示す蒸着マスク20は、蒸着マスク20の長手方向(第1の方向)に配列された複数の第1有効領域22Aと、当該長手方向に配列された複数の第2有効領域22Bと、を備えている。このうち第2有効領域22Bは、蒸着マスク20の長手方向に直交する幅方向(第2の方向)において、第1有効領域22Aとは異なる位置に設けられている。
とりわけ、図39に示す形態では、第2有効領域22Bは、第1有効領域22Aよりも蒸着マスク20の幅方向の中央側に設けられている。第1有効領域22Aおよび第2有効領域22Bには、上述した貫通孔25がそれぞれ形成されている。図39に示す形態では、第1有効領域22Aは、蒸着マスク20の幅を確定する一対の側縁20hのうちの一方の側縁20hの側と、他方の側縁20hの側とにそれぞれ配列されており、第2有効領域22Bは、蒸着マスク20の幅方向の中心位置に配列されている。すなわち、第1有効領域22Aがなす2つの列の間に、第2有効領域22Bが配列されており、合計で有効領域22A、22Bの3つの列が形成されている。
図39に示す蒸着マスク20においては、一対の耳部24は、蒸着マスク20の長手方向における第1有効領域22Aおよび第2有効領域22Bの両側に設けられている。耳部24は、蒸着マスク20の長手方向における両端部20eに位置づけられている。言い換えると、一対の耳部24の間に、第1有効領域22Aがなす2つの列と、第2有効領域22Bがなす1つの列とが設けられている。このように図39に示す形態では、一対の耳部24は、蒸着マスク20の長手方向に配列されており、一対の耳部24が配列される第1の方向が、当該長手方向になっている。なお、蒸着マスク20の全体の長さA(図1参照)が、蒸着マスク20の幅寸法(長さAが示す方向に直交する方向の寸法)よりも小さい場合には、一対の耳部24が配列される第1の方向は、蒸着マスク20の長手方向ではなく短手方向となるが、この場合であっても本発明の適用範囲内である。
耳部24の各々と第1有効領域22Aとの間には、第1ダミー領域80Aが介在されている。言い換えると、蒸着マスク20の長手方向において、複数の第1有効領域22Aの両側に第1ダミー領域80Aが設けられている。同様に、耳部24の各々と第2有効領域22Bとの間には、第2ダミー領域80Bが介在されている。言い換えると、蒸着マスク20の長手方向において、複数の第2有効領域22Bの両側に第2ダミー領域80Bが設けられている。
第1ダミー領域80Aおよび第2ダミー領域80Bは、張設時に蒸着マスク20に付与された張力によって、各有効領域22A、22Bに付与される張力を調整することを意図した領域である。すなわち、第1ダミー領域80Aおよび第2ダミー領域80Bは、フレーム15(図1参照)に張設された際に、第1ダミー領域80A自体の伸びが、第2ダミー領域80B自体の伸びと異なるように構成されている領域である。第1ダミー領域80Aおよび第2ダミー領域80Bは、各々の伸びが幅方向にわたって均一になるように構成されている点で図1等に示すダミー領域80と相違するが、このこと以外の点では、ダミー領域80と同様の構成を有している。一例として、第1ダミー領域80Aおよび第2ダミー領域80Bには、図4に示すようなダミー孔86が設けられている。
第1ダミー領域80Aにおける蒸着マスク20を構成する材料の材料残存量と、第2ダミー領域80Bにおける蒸着マスク20を構成する材料の材料残存量とは、互いに異なっている。図39に示す形態では、第1ダミー領域80Aの材料残存量は、第2ダミー領域80Bの材料残存量よりも大きくなっている。例えば、第1面ダミー開口部84の幅方向の配置ピッチ(図8A参照)を、第2ダミー領域80Bよりも第1ダミー領域80Aで大きくすることにより、第1ダミー領域80Aの材料残存量を、第2ダミー領域80Bの材料残存量よりも大きくすることができる。また、例えば、第1面ダミー開口部84の(蒸着マスク20の)長手方向の寸法(図8B参照)を、第2ダミー領域80Bよりも第1ダミー領域80Aで小さくすることにより、第1ダミー領域80Aの材料残存量を、第2ダミー領域80Bの材料残存量よりも大きくすることができる。
第1ダミー領域80A内では、蒸着マスク20の幅方向にわたって材料残存量は同一であり、第2ダミー領域80B内では、当該幅方向にわたって材料残存量は同一となっている。このような第1ダミー領域80Aおよび第2ダミー領域80Bは、例えば、第1面ダミー開口部84、第2面ダミー開口部85およびダミー孔86の配置ピッチや形状が、各々のダミー領域80A、80B内において、幅方向にわたって同一となっている。
ここで、材料残存量を求める方法について説明する。基準領域Uは、各ダミー領域80A、80B内の任意の領域とすることができるが、例えば、図10に示すような円形状の平面形状を有する領域とすることができる。一例として、各ダミー領域80A、80Bの幅が80mmである場合には、基準領域Uの直径を20mmとすることが好適である。
上述のようにして定義される材料残存量は、各ダミー領域80A、80Bの厚みの影響を排除した量となっている。すなわち、第1ダミー領域80Aと第2ダミー領域80Bとで厚みが異なる場合には、この厚みの違いによって材料残存量も変わってくると考えられる。しかしながら、図39に示す蒸着マスク20では、第1ダミー領域80Aにおける第1面ダミー開口部84や第2面ダミー開口部85の配置ピッチや大きさと、第2ダミー領域80Bにおける第1面ダミー開口部84や第2面ダミー開口部85の配置ピッチや大きさを異ならせて、第1ダミー領域80Aにおけるダミー孔86の開口率と第2ダミー領域80Bにおけるダミー孔86の開口率とを異ならせている。これにより、第1ダミー領域80Aの伸び率と、第2ダミー領域80Bの伸び率とを異ならせている。このため、材料残存量を上述のように定義することにより、各ダミー領域80A、80Bの厚みの違いの影響を排除して、各ダミー領域80A、80Bの伸び率に影響を与え得る各ダミー領域80A、80Bの材料残存量を定義することができる。
なお、図39に示す蒸着マスク20の各ダミー領域80A、80Bにおける材料残存量を求めるより具体的な方法は、図10を用いて説明した材料残存量を求める方法と同様であるため、ここでは、詳細な説明は省略する。
ところで、図39に示す蒸着マスク20は、例えば、図40に示す長尺金属板64から作製することができる。この場合、第1有効領域22Aは、長尺金属板64の一対の側縁64eのうちの一方の側縁64eの側と、他方の側縁64eの側とに配列され、第2有効領域22Bは、第1有効領域22Aよりも長尺金属板64の幅方向D2の中央側に(ここでは、長尺金属板64の幅方向の中心位置に)配列される。長尺金属板64の側縁64eには、図11に示すように上述した波打ち形状(耳伸び)と同様な波打ち形状が現れている。このため、第1有効領域22Aには、第2有効領域22Bよりも大きな波打ち形状が現れ得る。
そこで、図39に示す蒸着マスク20では、上述したように、蒸着マスク20の長手方向において、第1有効領域22Aの両側に第1ダミー領域80Aが設けられ、第2有効領域22Bの両側に第2ダミー領域80Bが設けられている。第1ダミー領域80Aの材料残存量は、第2ダミー領域80Bの材料残存量よりも大きくなっている。
このことにより、蒸着マスク20の張設時に、第1ダミー領域80Aの伸びを第2ダミー領域80Bの伸びよりも小さくすることができる。この場合、波打ち形状が比較的大きい第1有効領域22Aにかかる張力を、波打ち形状が比較的小さい第2有効領域22Bにかかる張力よりも大きくすることができ、第1有効領域22Aの伸びを効果的に大きくすることができる。このため、第1有効領域22Aに形成された貫通孔25の位置がずれることを防止でき、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができる。
なお、図39に示す蒸着マスク20では、蒸着マスク20の幅方向において、第1有効領域22Aがなす2つの列の間に、第2有効領域22Bがなす1つの列が形成されている例を示した。しかしながら、第1有効領域22Aがなす列の数、および第2有効領域22Bがなす列の数は任意である。例えば、図示しないが、第1有効領域22Aがなす列と、第2有効領域22Bがなす列の間に、他の有効領域がなす列が介在され、蒸着マスク20には、合計で有効領域の5つの列が形成されていてもよい。そして、この他の有効領域の長手方向両側に、他のダミー領域が設けられていてもよい。この他のダミー領域については、当該他の有効領域における波打ち形状の程度に応じて、材料残存量を設定することが好適である。例えば、他のダミー領域の材料残存量における材料残存量が、第1ダミー領域80Aにおける材料残存量よりも小さく、かつ第2ダミー領域80Bにおける材料残存量よりも大きくなっていてもよい。また、例えば、第1有効領域22Aがなす2つの列の間に、第1有効領域22Aがなす2つの列が介在され、蒸着マスク20には、合計で有効領域の4つの列が形成されていてもよい。
(蒸着マスクの他の変形例)
上述の本実施の形態においては、図11に示すように、蒸着マスク中間体100から、スティック状の2つの第1蒸着マスク20Aと、スティック状の1つの第2蒸着マスク20Bとが製造される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、図41に示すように、格子状に配置された有効領域を有する蒸着マスク20が蒸着マスク中間体100から製造されるようにしてもよい。
図41に示す蒸着マスク20は、蒸着マスク20の長手方向に1列に配列された複数の第1有効領域22Aと、当該長手方向に1列に配列された複数の第2有効領域22Bと、を備えており、合計で有効領域の2つの列が形成されている。そして、蒸着マスク中間体100は、このような蒸着マスク20を2つ備えている。
図41に示す蒸着マスク中間体100は、長尺金属板64と、長尺金属板64に設けられた第1有効領域22Aおよび第2有効領域22Bと、を備えている。このうち第1有効領域22Aは、長尺金属板64の一対の側縁64eのうちの一方の側縁64eの側に配置されている。第2有効領域22Bは、第1有効領域22Aよりも長尺金属板64の幅方向D2の中央側に配列されている。すなわち、図41に示す蒸着マスク中間体100においては、2つの蒸着マスク20の第1有効領域22Aの輪郭および第2有効領域22Bの輪郭は、長尺金属板64の幅方向D2における中心を通って長尺金属板64の長手方向D1に延びる中心線64CLに対して、互いに線対称に配置される。ここで、有効領域22A、22Bの輪郭とは、多数形成されている貫通孔25のうち最も外側に位置する貫通孔25に対して外接する蒸着マスク20の長手方向に延びる外接線と幅方向に延びる外接線とによって模擬された輪郭を意味している。また、有効領域22A、22Bの輪郭が線対称に配置される場合、各有効領域22A、22Bに形成される貫通孔25のパターンまでもが線対称に形成されることに限られることはない。すなわち、各有効領域22A、22Bの輪郭が線対称に配置される場合であっても、例えば、各有効領域22A、22Bに形成される貫通孔25のパターンが同一である場合(言い換えると、各有効領域22A、22Bの貫通孔25のパターンが平行移動した関係にある場合)と、各有効領域22A、22Bで貫通孔25のパターンが異なっている場合とがあり得る。
このような蒸着マスク中間体100から得られる各蒸着マスク20は、蒸着マスク20の長手方向に配列された複数の第1有効領域22Aと、蒸着マスク20の長手方向に配列された複数の第2有効領域22Bと、を備えている。このうち、第2有効領域22Bは、蒸着マスク20の幅方向において、第1有効領域22Aとは異なる位置に設けられている。より具体的には、第1有効領域22Aが、蒸着マスク20の一対の側縁20hのうちの一方の側縁20hの側に配列され、第2有効領域22Bが、他方の側縁20hの側に配列されている。これらの第1有効領域22Aの輪郭と第2有効領域22Bの輪郭は、蒸着マスク20の幅方向における中心を通って蒸着マスク20の長手方向に延びる中心線20CLに対して、互いに線対称に配置されている。なお、第1有効領域22Aに対応する一方の側縁20hが、長尺金属板64の一方の側縁64の側に対応し、第2有効領域22Bに対応する他方の側縁20hが、長尺金属板64の幅方向の中央側に対応している。このため、第1有効領域22Aに対応する一方の側縁20hは、第2有効領域22Bに対応する他方の側縁20hよりも大きな波打ち形状が現れ得る。
図41に示す蒸着マスク20においても、図39に示す蒸着マスク20と同様に、第1有効領域22Aの両側に第1ダミー領域80Aが設けられ、第2有効領域22Bの両側に第2ダミー領域80Bが設けられている。第1ダミー領域80Aの材料残存量は、第2ダミー領域80Bの材料残存量よりも大きくなっている。このため、第1有効領域22Aに、第2有効領域22Bよりも大きな波打ち形状が現れている場合であっても、波打ち形状が比較的大きい第1有効領域22Aにかかる張力を、波打ち形状が比較的小さい第2有効領域22Bにかかる張力よりも大きくすることができる。このことにより、第1有効領域22Aの伸びを効果的に大きくすることができる。このため、第1有効領域22Aに形成された貫通孔25の位置がずれることを防止でき、張設時の貫通孔25の位置精度を向上させることができる。
なお、図41に示す蒸着マスク中間体100では、合計で有効領域の2つの列が形成された蒸着マスク20を2つ備えている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1有効領域22Aにおける波打ち形状が第2有効領域22Bにおける波打ち形状よりも大きければ、蒸着マスク中間体100が備える蒸着マスク20の個数は任意であり、また、蒸着マスク20に形成される有効領域の列数は任意である。