JP7104902B2 - 蒸着マスクの製造方法、及び蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法 - Google Patents

蒸着マスクの製造方法、及び蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法 Download PDF

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本発明は、蒸着マスクの製造方法に関する。また、本発明は、蒸着マスクを作製するために用いられる金属板の製造方法に関する。
近年、スマートフォンやタブレットPC等の持ち運び可能なデバイスで用いられる表示装置に対して、高精細であること、例えば画素密度が400ppi以上であることが求められている。また、持ち運び可能なデバイスにおいても、ウルトラフルハイビジョンに対応することへの需要が高まっており、この場合、表示装置の画素密度が例えば800ppi以上であることが求められる。
表示装置の中でも、応答性の良さ、消費電力の低さやコントラストの高さのため、有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の画素を形成する方法として、所望のパターンで配列された貫通孔が形成された蒸着マスクを用い、所望のパターンで画素を形成する方法が知られている。具体的には、はじめに、有機EL表示装置用の基板に対して蒸着マスクを密着させ、次に、密着させた蒸着マスクおよび基板を共に蒸着装置に投入し、有機材料を基板に蒸着させる蒸着工程を行う。これによって、蒸着マスクの貫通孔のパターンに対応したパターンで、基板上に、有機材料を含む画素を形成することができる。
蒸着マスクの製造方法としては、例えば特許文献1に開示されているように、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングによって金属板に貫通孔を形成する方法が知られている。例えば、はじめに、金属板の第1面上に露光・現像処理によって第1レジストパターンを形成し、また金属板の第2面上に露光・現像処理によって第2レジストパターンを形成する。次に、金属板の第1面のうち第1レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングして、金属板の第1面に第1開口部を形成する。その後、金属板の第2面のうち第2レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングして、金属板の第2面に第2開口部を形成する。この際、第1開口部と第2開口部とが通じ合うようにエッチングを行うことにより、金属板を貫通する貫通孔を形成することができる。蒸着マスクを作製するための金属板は、例えば、ニッケルを含む鉄合金からなる母材を圧延することによって作製される。
特許第5382259号公報
本件発明者らが鋭意研究を行ったところ、圧延後の金属板の表面層に多くの介在物が存在することを見出した。また、本件発明者らが鋭意研究を行ったところ、表面層に多くの介在物が存在する金属板をエッチングして金属板に貫通孔を形成した場合、貫通孔の形状にばらつきが生じ易いことを見出した。貫通孔の形状がばらつくと、貫通孔を通って基板に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまう。
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る蒸着マスクの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、複数の貫通孔を形成して蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法であって、ニッケルを含む鉄合金からなる母材を圧延して、第1面及び第2面を含む金属板を作製する圧延工程と、前記金属板の少なくとも前記第1面側の表面層を除去する表面層除去工程と、を備える、金属板の製造方法である。
本発明による金属板の製造方法において、前記表面層除去工程は、前記金属板の厚み方向において0.5μm以上且つ20μm以下の範囲内で前記表面層を除去してもよい。
本発明による金属板の製造方法において、前記表面層除去工程は、前記金属板の少なくとも前記第1面にエッチング液を接触させるウェットエッチング工程を含んでいてもよい。
本発明による金属板の製造方法において、前記ウェットエッチング工程は、前記金属板の前記第1面が下方を向く状態で前記第1面に向けて前記エッチング液を噴射する噴射工程を含んでいてもよい。
本発明による金属板の製造方法において、前記表面層除去工程は、前記第1面側の前記表面層を除去する工程及び前記第2面側の前記表面層を除去する工程を含んでいてもよい。
本発明による金属板の製造方法において、前記表面層除去工程によって前記表面層が除去された後の前記金属板の厚みは、5μm以上且つ50μm以下であってもよい。
本発明は、複数の貫通孔が形成された蒸着マスクを製造する方法であって、ニッケルを含む鉄合金からなり、前記貫通孔を通過した蒸着材料が付着する基板側に位置する第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、を含む金属板を準備する準備工程と、前記金属板の少なくとも前記第1面側の表面層を除去する表面層除去工程と、前記金属板をエッチングして前記金属板に前記貫通孔を形成する加工工程と、を備える、蒸着マスクの製造方法である。
本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記準備工程において、前記金属板は、ニッケルを含む鉄合金からなる母材を圧延することによって作製されたものであってもよい。
本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記表面層除去工程は、前記金属板の厚み方向において0.5μm以上且つ20μm以下の範囲内で前記表面層を除去してもよい。
本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記表面層除去工程は、前記金属板の少なくとも前記第1面にエッチング液を接触させるウェットエッチング工程を含んでいてもよい。
本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記ウェットエッチング工程は、前記金属板の前記第1面が下方を向く状態で前記第1面に向けて前記エッチング液を噴射する噴射工程を含んでいてもよい。
本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記表面層除去工程は、前記第1面側の前記表面層を除去する工程及び前記第2面側の前記表面層を除去する工程を含んでいてもよい。
本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記表面層除去工程によって前記表面層が除去された後の前記金属板の厚みは、5μm以上且つ50μm以下であってもよい。
本発明によれば、貫通孔の形状のばらつきが小さい蒸着マスクを製造することができる。
本発明の一実施形態による蒸着マスク装置を備えた蒸着装置を示す図である。 図1に示す蒸着マスク装置を用いて製造した有機EL表示装置を示す断面図である。 本発明の一実施形態による蒸着マスク装置を示す平面図である。 図3に示された蒸着マスクの有効領域を示す部分平面図である。 図4のV-V線に沿った断面図である。 図4のVI-VI線に沿った断面図である。 図4のVII-VII線に沿った断面図である。 図5に示す貫通孔およびその近傍の領域を拡大して示す断面図である。 母材を圧延して、所望の厚みを有する金属板を得る工程を示す図である。 圧延によって得られた金属板をアニールする工程を示す図である。 圧延によって得られた金属板の表面層に介在物が存在する様子を示す断面図である。 図11に示す金属板を第1面側からエッチングして第1凹部を形成する工程を示す断面図である。 図12に示す状態から更にエッチングを進行させて第1凹部を拡大する工程を示す断面図である。 表面層に多くの介在物が存在する金属板を用いて製造された蒸着マスクの一例を示す断面図である。 蒸着マスクの製造方法の一例を全体的に説明するための模式図である。 金属板の表面層を除去する工程を示す図である。 表面層が除去された金属板を示す図である。 金属板上にレジスト膜を形成する工程を示す図である。 レジスト膜に露光マスクを密着させる工程を示す図である。 レジスト膜を現像する工程を示す図である。 第1面エッチング工程を示す図である。 第1凹部を樹脂によって被覆する工程を示す図である。 第2面エッチング工程を示す図である。 図23に続く第2面エッチング工程を示す図である。 金属板から樹脂及びレジストパターンを除去する工程を示す図である。 金属板の表面層を除去する工程の一変形例を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1~図23は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。以下の実施の形態およびその変形例では、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクの製造方法を例にあげて説明する。
ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクに対し、本発明を適用することができる。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。また、板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる法線方向とは、当該部材の板面(シート面、フィルム面)に対する法線方向のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」、「同等」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
(蒸着装置)
まず、対象物に蒸着材料を蒸着させる蒸着処理を実施する蒸着装置90について、図1を参照して説明する。図1に示すように、蒸着装置90は、その内部に、蒸着源(例えばるつぼ94)、ヒータ96、及び蒸着マスク装置10を備える。また、蒸着装置90は、蒸着装置90の内部を真空雰囲気にするための排気手段を更に備える。るつぼ94は、有機発光材料などの蒸着材料98を収容する。ヒータ96は、るつぼ94を加熱して、真空雰囲気の下で蒸着材料98を蒸発させる。蒸着マスク装置10は、るつぼ94と対向するよう配置されている。
(蒸着マスク装置)
以下、蒸着マスク装置10について説明する。図1に示すように、蒸着マスク装置10は、蒸着マスク20と、蒸着マスク20を支持するフレーム15と、を備える。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように、蒸着マスク20をその面方向に引っ張った状態で支持する。蒸着マスク装置10は、図1に示すように、蒸着マスク20が、蒸着材料98を付着させる対象物である基板、例えば有機EL基板92に対面するよう、蒸着装置90内に配置される。以下の説明において、蒸着マスク20の面のうち、有機EL基板92側の面を第1面20aと称し、第1面20aの反対側に位置する面を第2面20bと称する。
蒸着マスク装置10は、図1に示すように、有機EL基板92の、蒸着マスク20と反対の側の面に配置された磁石93を備えていてもよい。磁石93を設けることにより、磁力によって蒸着マスク20を磁石93側に引き寄せて、蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させることができる。
図3は、蒸着マスク装置10を蒸着マスク20の第1面20a側から見た場合を示す平面図である。図3に示すように、蒸着マスク装置10は、複数の蒸着マスク20を備える。各蒸着マスク20は、一対の長辺26及び一対の短辺27を含んでおり、例えば矩形状の形状を有している。各蒸着マスク20は、一対の短辺27又はその近傍の部分において、例えばスポット溶接によってフレーム15に固定されている。
蒸着マスク20は、蒸着マスク20を貫通する複数の貫通孔25が形成された、金属製の板状の基材を含む。るつぼ94から蒸発して蒸着マスク装置10に到達した蒸着材料98は、蒸着マスク20の貫通孔25を通って有機EL基板92に付着する。これによって、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98を有機EL基板92の表面に成膜することができる。
図2は、図1の蒸着装置90を用いて製造した有機EL表示装置100を示す断面図である。有機EL表示装置100は、有機EL基板92と、パターン状に設けられた蒸着材料98を含む画素と、を備える。
なお、複数の色によるカラー表示を行いたい場合には、各色に対応する蒸着マスク20が搭載された蒸着装置90をそれぞれ準備し、有機EL基板92を各蒸着装置90に順に投入する。これによって、例えば、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を順に有機EL基板92に蒸着させることができる。
ところで、蒸着処理は、高温雰囲気となる蒸着装置90の内部で実施される場合がある。この場合、蒸着処理の間、蒸着装置90の内部に保持される蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92も加熱される。この際、蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92は、各々の熱膨張係数に基づいた寸法変化の挙動を示すことになる。
この場合、蒸着マスク20やフレーム15と有機EL基板92の熱膨張係数が大きく異なっていると、それらの寸法変化の差異に起因した位置ずれが生じ、この結果、有機EL基板92上に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまう。
このような課題を解決するため、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数が、有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値であることが好ましい。例えば、有機EL基板92としてガラス基板が用いられる場合、蒸着マスク20およびフレーム15の主要な材料として、ニッケルを含む鉄合金を用いることができる。例えば、蒸着マスク20を構成する基材の材料として、30質量%以上且つ54質量%以下のニッケルを含む鉄合金を用いることができる。ニッケルを含む鉄合金の具体例としては、34質量%以上且つ38質量%以下のニッケルを含むインバー材、30質量%以上且つ34質量%以下のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材、38質量%以上且つ54質量%以下のニッケルを含む低熱膨張Fe-Ni系めっき合金などを挙げることができる。
なお蒸着処理の際に、蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92の温度が高温には達しない場合は、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数を、有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値にする必要は特にない。この場合、蒸着マスク20を構成する材料として、上述の鉄合金以外の材料を用いてもよい。例えば、クロムを含む鉄合金など、上述のニッケルを含む鉄合金以外の鉄合金を用いてもよい。クロムを含む鉄合金としては、例えば、いわゆるステンレスと称される鉄合金を用いることができる。また、ニッケルやニッケル-コバルト合金など、鉄合金以外の合金を用いてもよい。
(蒸着マスク)
次に、蒸着マスク20について詳細に説明する。図3に示すように、蒸着マスク20は、蒸着マスク20の一対の短辺27を含む一対の耳部(第1耳部17a及び第2耳部17b)と、一対の耳部17a,17bの間に位置する中間部18と、を備えている。
(耳部)
まず、耳部17a,17bについて詳細に説明する。耳部17a,17bは、蒸着マスク20のうちフレーム15に固定される部分である。本実施の形態において、耳部17a,17bは、中間部18と一体的に構成されている。なお、耳部17a,17bは、中間部18とは別の部材によって構成されていてもよい。この場合、耳部17a,17bは、例えば溶接によって中間部18に接合される。
(中間部)
次に、中間部18について説明する。中間部18は、第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25が形成された、少なくとも1つの有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含む。有効領域22は、蒸着マスク20のうち、有機EL基板92の表示領域に対面する領域である。
図3に示す例において、中間部18は、蒸着マスク20の長辺26に沿って所定の間隔を空けて配列された複数の有効領域22を含む。一つの有効領域22は、一つの有機EL表示装置100の表示領域に対応する。このため、図1に示す蒸着マスク装置10によれば、有機EL表示装置100の多面付蒸着が可能である。なお、一つの有効領域22が複数の表示領域に対応する場合もある。
図3に示すように、有効領域22は、例えば、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有する。なお図示はしないが、各有効領域22は、有機EL基板92の表示領域の形状に応じて、様々な形状の輪郭を有することができる。例えば各有効領域22は、円形状の輪郭を有していてもよい。
以下、有効領域22について詳細に説明する。図4は、蒸着マスク20の第2面20b側から有効領域22を拡大して示す平面図である。図4に示すように、図示された例において、各有効領域22に形成された複数の貫通孔25は、当該有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。貫通孔25の一例について、図5~図7を主に参照して更に詳述する。図5~図7はそれぞれ、図4の有効領域22のV-V方向~VII-VII方向に沿った断面図である。
図5~図7に示すように、複数の貫通孔25は、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った一方の側となる第1面20aから、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った他方の側となる第2面20bへ貫通している。図示された例では、後に詳述するように、蒸着マスク20の法線方向Nにおける一方の側となる基材21の第1面21aに第1凹部30がエッチングによって形成され、蒸着マスク20の法線方向Nにおける他方の側となる基材21の第2面21bに第2凹部35が形成される。第1凹部30は、第2凹部35に接続され、これによって第2凹部35と第1凹部30とが互いに通じ合うように形成される。貫通孔25は、第2凹部35と、第2凹部35に接続された第1凹部30とによって構成されている。
図5~図7に示すように、蒸着マスク20の第2面20bの側から第1面20aの側へ向けて、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面での各第2凹部35の開口面積は、しだいに小さくなっていく。同様に、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面での各第1凹部30の開口面積は、蒸着マスク20の第1面20aの側から第2面20bの側へ向けて、しだいに小さくなっていく。
図5~図7に示すように、第1凹部30の壁面31と、第2凹部35の壁面36とは、周状の接続部41を介して接続されている。接続部41は、蒸着マスク20の法線方向Nに対して傾斜した第1凹部30の壁面31と、蒸着マスク20の法線方向Nに対して傾斜した第2凹部35の壁面36とが合流する張り出し部の稜線によって、画成されている。
そして、接続部41は、蒸着マスク20の平面視において貫通孔25の開口面積が最小になる貫通部42を画成する。
図5~図7に示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った他方の側の面、すなわち、蒸着マスク20の第1面20a上において、隣り合う二つの貫通孔25は、蒸着マスク20の板面に沿って互いから離間している。すなわち、後述する製造方法のように、蒸着マスク20の第1面20aに対応するようになる基材21の第1面21a側から当該基材21をエッチングして第1凹部30を作製する場合、隣り合う二つの第1凹部30の間に基材21の第1面21aが残存するようになる。
同様に、図5及び図7に示すように、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った一方の側、すなわち、蒸着マスク20の第2面20bの側においても、隣り合う二つの第2凹部35が、蒸着マスク20の板面に沿って互いから離間していてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部35の間に基材21の第2面21bが残存していてもよい。以下の説明において、基材21の第2面21bの有効領域22のうちエッチングされずに残っている部分のことを、トップ部43とも称する。このようなトップ部43が残るように蒸着マスク20を作製することにより、蒸着マスク20に十分な強度を持たせることができる。このことにより、例えば搬送中などに蒸着マスク20が破損してしまうことを抑制することができる。なおトップ部43の幅βが大きすぎると、蒸着工程においてシャドーが発生し、これによって蒸着材料98の利用効率が低下することがある。従って、トップ部43の幅βが過剰に大きくならないように蒸着マスク20が作製されることが好ましい。例えば、トップ部43の幅βが2μm以下であることが好ましい。なおトップ部43の幅βは一般に、蒸着マスク20を切断する方向に応じて変化する。例えば、図5及び図7に示すトップ部43の幅βは互いに異なることがある。この場合、いずれの方向で蒸着マスク20を切断した場合にもトップ部43の幅βが2μm以下になるよう、蒸着マスク20が構成されていてもよい。
なお図6に示すように、場所によっては隣り合う二つの第2凹部35が接続されるようにエッチングが実施されてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部35の間に、基材21の第2面21bが残存していない場所が存在していてもよい。また、図示はしないが、第2面21bの全域にわたって隣り合う二つの第2凹部35が接続されるようにエッチングが実施されてもよい。
図1に示すようにして蒸着マスク装置10が蒸着装置90に収容された場合、図5に二点鎖線で示すように、蒸着マスク20の第1面20aが、有機EL基板92に対面し、蒸着マスク20の第2面20bが、蒸着材料98を保持したるつぼ94側に位置する。したがって、蒸着材料98は、次第に開口面積が小さくなっていく第2凹部35を通過して有機EL基板92に付着する。図5において第2面20b側から第1面20aへ向かう矢印で示すように、蒸着材料98は、るつぼ94から有機EL基板92に向けて有機EL基板92の法線方向Nに沿って移動するだけでなく、有機EL基板92の法線方向Nに対して大きく傾斜した方向に移動することもある。このとき、蒸着マスク20の厚みが大きいと、斜めに移動する蒸着材料98が、トップ部43、第2凹部35の壁面36や第1凹部30の壁面31に引っ掛かり易くなり、この結果、貫通孔25を通過できない蒸着材料98の比率が多くなる。従って、蒸着材料98の利用効率を高めるためには、蒸着マスク20の厚みtを小さくし、これによって、第2凹部35の壁面36や第1凹部30の壁面31の高さを小さくすることが好ましいと考えられる。すなわち、蒸着マスク20を構成するための基材21として、蒸着マスク20の強度を確保できる範囲内で可能な限り厚みtの小さな基材21を用いることが好ましいと言える。この点を考慮し、本実施の形態において、好ましくは蒸着マスク20の厚みtは、50μm以下に、例えば5μm以上且つ50μm以下に設定される。なお厚みtは、周囲領域23の厚み、すなわち蒸着マスク20のうち第1凹部30および第2凹部35が形成されていない部分の厚みである。従って厚みtは、基材21の厚みであると言うこともできる。
図5において、貫通孔25の最小開口面積を持つ部分となる接続部41と、第2凹部35の壁面36の他の任意の位置と、を通過する直線L1が、蒸着マスク20の法線方向Nに対してなす最小角度が、符号θ1で表されている。斜めに移動する蒸着材料98を、壁面36に到達させることなく可能な限り有機EL基板92に到達させるためには、角度θ1を大きくすることが有利となる。角度θ1を大きくする上では、蒸着マスク20の厚みtを小さくすることの他にも、上述のトップ部43の幅βを小さくすることも有効である。
図7において、符号αは、基材21の第1面21aの有効領域22のうちエッチングされずに残っている部分(以下、リブ部とも称する)の幅を表している。リブ部の幅αおよび貫通部42の寸法rは、有機EL表示装置の寸法および表示画素数に応じて適宜定められる。例えば、リブ部の幅αは5μm以上且つ40μm以下であり、貫通部42の寸法rは10μm以上且つ60μm以下である。
限定はされないが、本実施の形態による蒸着マスク20は、450ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合に特に有効なものである。以下、図8を参照して、そのような高い画素密度の有機EL表示装置を作製するために求められる蒸着マスク20の寸法の一例について説明する。図8は、図5に示す蒸着マスク20の貫通孔25およびその近傍の領域を拡大して示す断面図である。
図8においては、貫通孔25の形状に関連するパラメータとして、蒸着マスク20の第1面20aから接続部41までの、蒸着マスク20の法線方向Nに沿った方向における距離、すなわち第1凹部30の壁面31の高さが符号rで表されている。さらに、第1凹部30が第2凹部35に接続する部分における第1凹部30の寸法、すなわち貫通部42の寸法が符号rで表されている。また図8において、接続部41と、基材21の第1面21a上における第1凹部30の先端縁と、を結ぶ直線L2が、基材21の法線方向Nに対して成す角度が、符号θ2で表されている。
450ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合、貫通部42の寸法rは、好ましくは10μm以上且つ60μm以下に設定される。これによって、高い画素密度の有機EL表示装置を作製することができる蒸着マスク20を提供することができる。好ましくは、第1凹部30の壁面31の高さrは、6μm以下に設定される。
次に、図8に示す上述の角度θ2について説明する。角度θ2は、基材21の法線方向Nに対して傾斜するとともに接続部41近傍で貫通部42を通過するように飛来した蒸着材料98のうち、有機EL基板92に到達することができる蒸着材料98の傾斜角度の最大値に相当する。なぜなら、接続部41を通って角度θ2よりも大きな傾斜角度で飛来した蒸着材料98は、有機EL基板92に到達するよりも前に第1凹部30の壁面31に付着するからである。従って、角度θ2を小さくすることにより、大きな傾斜角度で飛来して貫通部42を通過した蒸着材料98が有機EL基板92に付着することを抑制することができ、これによって、有機EL基板92のうち貫通部42に重なる部分よりも外側の部分に蒸着材料98が付着してしまうことを抑制することができる。すなわち、角度θ2を小さくすることは、有機EL基板92に付着する蒸着材料98の面積や厚みのばらつきの抑制を導く。このような観点から、例えば貫通孔25は、角度θ2が45度以下になるように形成される。なお図8においては、第1面21aにおける第1凹部30の寸法、すなわち、第1面21aにおける貫通孔25の開口寸法が、接続部41における第1凹部30の寸法r2よりも大きくなっている例を示した。すなわち、角度θ2の値が正の値である例を示した。しかしながら、図示はしないが、接続部41における第1凹部30の寸法r2が、第1面21aにおける第1凹部30の寸法よりも大きくなっていてもよい。すなわち、角度θ2の値は負の値であってもよい。
次に、蒸着マスク20を製造する方法について説明する。
金属板の製造方法
はじめに、蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法について説明する。
(圧延工程)
はじめに図9に示すように、ニッケルを含む鉄合金から構成された母材60を準備し、この母材60を、一対の圧延ロール66a,66bを含む圧延装置66に向けて、矢印D1で示す方向に沿って搬送する。一対の圧延ロール66a,66bの間に到達した母材60は、一対の圧延ロール66a,66bによって圧延され、この結果、母材60は、その厚みが低減されるとともに、搬送方向に沿って伸ばされる。これによって、厚みT0の金属板64を得ることができる。図9に示すように、金属板64をコア61に巻き取ることによって巻き体62を形成してもよい。厚みT0は、例えば10μm以上且つ50μm以下となっている。
なお図9は、圧延工程の概略を示すものに過ぎず、圧延工程を実施するための具体的な構成や手順が特に限られることはない。例えば圧延工程は、母材60を構成するインバー材の結晶配列を変化させる温度以上の温度で母材を加工する熱間圧延工程や、インバー材の結晶配列を変化させる温度以下の温度で母材を加工する冷間圧延工程を含んでいてもよい。また、一対の圧延ロール66a,66bの間に母材60や金属板64を通過させる際の向きが一方向に限られることはない。例えば、図9及び図10において、紙面左側から右側への向き、および紙面右側から左側への向きで繰り返し母材60や金属板64を一対の圧延ロール66a,66bの間に通過させることにより、母材60や金属板64を徐々に圧延してもよい。
(スリット工程)
その後、金属板64の幅が所定の範囲内になるよう、圧延工程によって得られた金属板64の幅方向における両端をそれぞれ所定の範囲にわたって切り落とすスリット工程を実施してもよい。このスリット工程は、圧延に起因して金属板64の両端に生じ得るクラックを除去するために実施される。このようなスリット工程を実施することにより、金属板64が破断してしまう現象、いわゆる板切れが、クラックを起点として生じてしまうことを防ぐことができる。
(アニール工程)
その後、圧延によって金属板64内に蓄積された残留応力を取り除くため、図10に示すように、アニール装置67を用いて金属板64をアニールしてもよい。アニール工程は、図10に示すように、金属板64を搬送方向(長手方向)に引っ張りながら実施されてもよい。すなわち、アニール工程は、いわゆるバッチ式の焼鈍ではなく、搬送しながらの連続焼鈍として実施されてもよい。
好ましくは上述のアニール工程は、非還元雰囲気や不活性ガス雰囲気で実施される。ここで非還元雰囲気とは、水素などの還元性ガスを含まない雰囲気のことである。「還元性ガスを含まない」とは、水素などの還元性ガスの濃度が0.5%以下であることを意味している。また不活性ガス雰囲気とは、還元性ガスの濃度が0.5%以下であり、且つアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスの濃度が90%以上である雰囲気のことである。非還元雰囲気や不活性ガス雰囲気でアニール工程を実施することにより、ニッケル水酸化物などのニッケル化合物が金属板64の表面層に生成されることを抑制することができる。
アニール工程を実施することにより、残留歪がある程度除去された、厚みT0の金属板64を得ることができる。
なお、上述の圧延工程、スリット工程およびアニール工程を複数回繰り返すことによって、厚みT0の長尺状の金属板64を作製してもよい。また図10においては、アニール工程が、金属板64を長手方向に引っ張りながら実施される例を示したが、これに限られることはなく、アニール工程を、金属板64がコア61に巻き取られた状態で実施してもよい。すなわちバッチ式の焼鈍が実施されてもよい。なお、金属板64がコア61に巻き取られた状態でアニール工程を実施する場合、金属板64に、巻き体62の巻き取り径に応じた反りの癖がついてしまうことがある。従って、巻き体62の巻き径や母材60を構成する材料によっては、金属板64を長手方向に引っ張りながらアニール工程を実施することが有利である。
(切断工程)
その後、金属板64の幅方向における両端をそれぞれ所定範囲にわたって切り落とし、これによって、金属板64の幅を所望の幅に調整する切断工程を実施する。このようにして、所望の厚みおよび幅を有する金属板64を得ることができる。
ところで、本件発明者らが鋭意研究を行ったところ、圧延後の金属板64の表面層に多くの介在物が存在することを見出した。図11は、圧延によって得られた金属板64の表面層に介在物64cが存在する様子を示す断面図である。介在物とは、アルミニウムやマグネシウムなどの鉄以外の金属元素を含む化合物からなる粒状の物質のことである。介在物64cの粒径の平均値は、例えば0.5μm以上且つ20μm以下である。また、介在物64cの粒径の平均値は、0.5μm以上且つ10μm以下の場合もあれば、0.5μm以上且つ5μm以下の場合もある。化合物は、例えば、酸化物、硫化物、炭化物、窒化物、金属間化合物などである。
図11に示すように、介在物64cは、金属板64の厚み方向において符号T1で表される範囲内に位置する、金属板64の第1面64a側の第1表面層に多く存在する。同様に、介在物64cは、金属板64の厚み方向において符号T2で表される範囲内に位置する、金属板64の第2面64b側の第2表面層にも多く存在する。第1表面層T1は、例えば、圧延後の金属板64の第1面64aから厚み方向において5μm以内の部分である。また、第2表面層T2は、例えば、圧延後の金属板64の第2面64bから厚み方向において5μm以内の部分である。また、図11に示すように、介在物64cは、第1表面層T1と第2表面層T2との間に位置する中間層T3にはほとんど存在しない。
図12は、図11に示す金属板64を第1面64a側からエッチングして第1凹部30を形成する工程を示す断面図である。介在物64cが存在する場所までエッチングが進行すると、図12に示すように、介在物64cが第1凹部30の壁面31に露出する。図12に示す状態において、壁面31に露出している介在物64cの表面の大部分は、金属板64を構成する鉄合金に接しており、このため、介在物64cは、壁面31に対して固定されている。
図13は、図12に示す状態から更にエッチングを進行させて第1凹部30を拡大する工程を示す断面図である。エッチングが進行すると、図12において壁面31に露出していた介在物64cの表面の大部分が、金属板64を構成する鉄合金に接しないようになる。この結果、介在物64cが金属板64から離脱し、図13に示すように、壁面31のうち介在物64cが存在していた場所が窪み部31aになることが考えられる。このような窪み部は、金属板64の第2面64b側に形成される第2凹部35の壁面36にも生じ得る。
窪み部においては、その他の部分に比べてエッチングが早く進行する。この結果、第1凹部30及び第2凹部35からなる上述の貫通孔25の形状に窪み部の影響が現れることが考えられる。図14は、表面層T1,T2に多くの介在物64cが存在する金属板64を用いて製造された蒸着マスク20の一例を示す断面図である。本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、図14に示すように、介在物64cの離脱によって形成される窪み部の影響は、蒸着マスク20の第2面20b側よりも第1面20a側に多く現れることを見出した。例えば、図14に示すように、第1凹部30の壁面31には、蒸着マスク20の第1面20aに達する窪み部31aが形成され得る。また、接続部41には、窪み部に起因して欠け部41aが形成され得る。
図8に示す上述の角度θ2は、第1面20aにおける第1凹部30の壁面31の位置、及び接続部41の位置によって定められる。上述のように、角度θ2は、有機EL基板92に到達することができる蒸着材料98の飛来方向の傾斜角度の最大値に相当する。従って、図14に示す窪み部31aや欠け部41aは、有機EL基板92に到達し得る蒸着材料98の飛来方向の範囲にばらつきを生じさせる要因になる。このため、貫通孔25に窪み部31aや欠け部41aが存在していると、貫通孔25を通って有機EL基板92に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまうと考えられる。
このような課題を解決するため、本実施の形態においては、金属板64をエッチングして金属板64に貫通孔25を形成する工程の前に、金属板64の表面層を除去する表面層除去工程を実施することを提案する。これにより、金属板64のうち介在物64cが多く存在する部分を除去することができる。このことにより、介在物64cの離脱によって形成される窪み部に起因して貫通孔25の形状にばらつきが生じることを抑制することができる。以下、表面層除去工程を含む蒸着マスクの製造方法について説明する。なお、以下の説明において、表面層除去工程を実施することによって表面層が除去された金属板を、符号64zで表す。
蒸着マスクの製造方法
金属板64を用いて蒸着マスク20を製造する方法について、主に図15~図25を参照して説明する。図15は、金属板64を用いて蒸着マスク20を製造する製造装置70を示す図である。まず、金属板64をコア61に巻き取った巻き体62を準備する。そして、このコア61を回転させて巻き体62を巻き出すことにより、図15に示すように帯状に延びる金属板64を供給する。
供給された金属板64は、搬送ローラー75によって、表面層除去装置71、加工装置72、分離装置73へ順に搬送される。表面層除去装置71は、圧延によって得られた金属板64の表面層のうち少なくとも第1面64a側の第1表面層T1を除去する表面層除去工程を実施する。加工装置72は、表面層が除去された金属板64zを加工して金属板64zに貫通孔25を形成する加工工程を実施する。なお本実施の形態においては、複数枚の蒸着マスク20に対応する多数の貫通孔25を金属板64zに形成する。言い換えると、金属板64zに複数枚の蒸着マスク20を割り付ける。分離装置73は、金属板64zのうち1枚分の蒸着マスク20に対応する複数の貫通孔25が形成された部分を金属板64zから分離する分離工程を実施する。このようにして、枚葉状の蒸着マスク20を得ることができる。
(表面層除去工程)
まず、表面層除去工程について、図16及び図17を参照して説明する。表面層除去工程においては、例えば、図16に示すように、噴射装置71aが金属板64の第1面64aに向けてエッチング液を噴射し、金属板64の第1面64aにエッチング液を接触させる(噴射工程)。エッチング液としては、例えば塩化第2鉄溶液を用いることができる。
このようなウェットエッチング工程を実施することにより、図17に示すように、金属板64の厚み方向において所定の範囲E1にわたって第1表面層T1を除去することができる。厚み方向において第1表面層T1を除去する範囲E1は、例えば0.5μm以上且つ20μm以下であり、好ましくは0.5μm以上且つ10μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上且つ5μm以下である。範囲E1を適切に設定することにより、金属板64zの第1面64aを、介在物64cがほとんど存在しない中間層T3によって構成することができる。第1表面層T1が所定の範囲にわたって除去された後の金属板64zの厚みT4は、例えば5μm以上且つ50μm以下である。
ところで、金属板64の第1面64aが上方を向く状態で第1面64aに向けてエッチング液を噴射する場合、エッチング液が一時的に第1面64a上に滞留する。この結果、エッチングが過剰に進行したり、エッチングの均一性が低くなったりすることが考えられる。このような課題を考慮し、好ましくは、図16に示すように、噴射工程は、金属板64の第1面64aが下方を向く状態で第1面64aに向けてエッチング液を噴射する。この場合、第1面64aに付着し第1表面層T1を溶解した後のエッチング液は、重力によって第1面64aから自然に落下したり流れたりする。これにより、エッチング液が第1面64a上に滞留することを抑制することができる。このため、金属板64の第1面64aが過剰にエッチングされることを抑制することができ、また、エッチングの均一性を向上させることができる。これにより、金属板64zの厚みT4を精密に制御することができる。
(加工工程)
次に、金属板64zに貫通孔25を形成する加工工程について、図18乃至図25を参照して説明する。なお、図18乃至図25においては、介在物64cの図示を省略している。
金属板64zを加工する工程は、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを長尺状の金属板64zに施して、金属板64zに第1面64aの側から第1凹部30を形成する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを金属板64zに施して、金属板64zに第2面64bの側から第2凹部35を形成する工程と、を含んでいる。そして、金属板64zに形成された第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合うことによって、金属板64zに貫通孔25が作製される。以下に説明する例では、第1凹部30の形成工程を、第2凹部35の形成工程の前に実施し、且つ、第1凹部30の形成工程と第2凹部35の形成工程の間に、作製された第1凹部30を封止する工程を実施する。以下、各工程の詳細を説明する。
まず、図18に示すように、金属板64zの第1面64a上および第2面64b上にネガ型の感光性レジスト材料を含むレジスト膜65c、65dを形成する。例えば、金属板64zの第1面64a上および第2面64b上に、カゼインなどの感光性レジスト材料を含む塗布液を塗布し、その後、塗布液を乾燥させることにより、レジスト膜65c、65dを形成する。
次に、レジスト膜65c、65dのうちの除去したい領域に光を透過させないようにした露光マスク68a、68bを準備し、露光マスク68a、68bをそれぞれ、図19に示すようにレジスト膜65c、65d上に配置する。この際、第1面64a側の露光マスク68aと第2面64b側の露光マスク68bとの間の相対的な位置関係を調整するアライメント工程を実施してもよい。露光マスク68a、68bとしては、例えば、レジスト膜65c、65dのうちの除去したい領域に光を透過させないようにしたガラス乾板を用いる。その後、真空密着によって露光マスク68a、68bをレジスト膜65c、65dに十分に密着させる。
なお感光性レジスト材料として、ポジ型のものが用いられてもよい。この場合、露光マスクとして、レジスト膜のうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクを用いる。
その後、レジスト膜65c、65dを露光マスク68a、68b越しに露光する(露光工程)。さらに、露光されたレジスト膜65c、65dに像を形成するためにレジスト膜65c、65dを現像する(現像工程)。以上のようにして、図20に示すように、金属板64zの第1面64a上に第1レジストパターン65aを形成し、金属板64zの第2面64b上に第2レジストパターン65bを形成することができる。なお現像工程は、レジスト膜65c、65dの硬度を高めるための、または金属板64zに対してレジスト膜65c、65dをより強固に密着させるためのレジスト熱処理工程を含んでいてもよい。
レジスト熱処理工程は、例えば室温以上且つ400℃以下で実施され得る。
次に、図21に示すように、金属板64zの第1面64aのうち第1レジストパターン65aによって覆われていない領域を、第1エッチング液を用いてエッチングする第1面エッチング工程を実施する。例えば、第1エッチング液を、搬送される金属板64zの第1面64aに対面する側に配置されたノズルから、第1レジストパターン65a越しに金属板64zの第1面64aに向けて噴射する。この結果、図21に示すように、金属板64zのうちの第1レジストパターン65aによって覆われていない領域で、第1エッチング液による浸食が進む。これによって、金属板64zの第1面64aに多数の第1凹部30が形成される。第1エッチング液としては、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものを用いる。
その後、図22に示すように、後の第2面エッチング工程において用いられる第2エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって、第1凹部30を被覆する。すなわち、第2エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって、第1凹部30を封止する。図22に示す例においては、樹脂69の膜を、形成された第1凹部30だけでなく、第1面64a(第1レジストパターン65a)も覆うように形成する。
次に、図23に示すように、金属板64zの第2面64bのうち第2レジストパターン65bによって覆われていない領域をエッチングし、第2面64bに第2凹部35を形成する第2面エッチング工程を実施する。第2面エッチング工程は、第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合い、これによって貫通孔25が形成されるようになるまで実施される。第2エッチング液としては、上述の第1エッチング液と同様に、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものを用いる。
なお第2エッチング液による浸食は、金属板64zのうちの第2エッチング液に触れている部分において行われていく。従って、浸食は、金属板64zの法線方向N(厚み方向)のみに進むのではなく、金属板64zの板面に沿った方向にも進んでいく。ここで好ましくは、第2面エッチング工程は、第2レジストパターン65bの隣り合う二つの孔66aに対面する位置にそれぞれ形成された二つの第2凹部35が、二つの孔66aの間に位置するブリッジ部67aの裏側において合流するよりも前に終了される。これによって、図24に示すように、金属板64zの第2面64bに上述のトップ部43を残すことができる。
その後、図25に示すように、金属板64zから樹脂69を除去する。樹脂69は、例えばアルカリ系剥離液を用いることによって、除去することができる。アルカリ系剥離液が用いられる場合、図25に示すように、樹脂69と同時にレジストパターン65a,65bも除去される。なお、樹脂69を除去した後、樹脂69を剥離させるための剥離液とは異なる剥離液を用いて、樹脂69とは別途にレジストパターン65a,65bを除去してもよい。
(分離工程)
その後、金属板64zのうち1枚分の蒸着マスク20に対応する複数の貫通孔25が形成された部分を金属板64zから分離することにより、蒸着マスク20を得ることができる。
(本実施の形態の作用)
本実施の形態による蒸着マスク20の製造方法においては、金属板64を加工して金属板64に貫通孔25を形成する前に、金属板64の第1面64a側の第1表面層T1を除去する表面層除去工程を実施する。これにより、第1面64a側における介在物64cの密度が低減された金属板64zを得ることができる。このことにより、介在物64cの離脱によって形成される窪み部に起因して貫通孔25の形状にばらつきが生じることを抑制することができる。従って、貫通孔25を通って有機EL基板92に付着する蒸着材料の寸法精度及び位置精度を高めることができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
(除去される表面層の変形例)
上述の実施の形態においては、金属板64の第1面64a側の第1表面層T1のみを、厚み方向における範囲E1にわたって除去し、第2面64b側の第2表面層T2は除去しない例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図26に示すように、第1表面層T1に加えて、金属板64の第2面64b側の第2表面層T2を、厚み方向における範囲E2にわたって更に除去してもよい。厚み方向において第2表面層T2を除去する範囲E2は、例えば0.5μm以上且つ20μm以下であり、好ましくは0.5μm以上且つ10μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上且つ5μm以下である。第1表面層T1及び第2表面層T2が所定の範囲にわたって除去された後の金属板64zの厚みT4は、例えば5μm以上且つ50μm以下である。
(除去方法の変形例)
上述の実施の形態においては、金属板64の表面に向けてエッチング液を噴射することによって金属板64の表面層を除去する例を示したが、表面層を除去する方法が特に限られることはない。例えば、エッチング液が貯留されているエッチング槽に金属板64を浸漬させることによって、金属板64の表面層を除去してもよい。また、エッチング液が含浸された布などの部材を金属板64の表面に接触させることによって、金属板64の表面層を除去してもよい。
10 蒸着マスク装置
15 フレーム
20 蒸着マスク
21 基材
22 有効領域
23 周囲領域
25 貫通孔
30 第1凹部
31 壁面
31a 窪み部
35 第2凹部
36 壁面
41 接続部
41a 欠け部
43 トップ部
50 中間製品
64 金属板
64c 介在物
64z 金属板
65a 第1レジストパターン
65b 第2レジストパターン
65c 第1レジスト膜
65d 第2レジスト膜
71 表面層除去装置
72 加工装置
73 分離装置
90 蒸着装置
92 有機EL基板
98 蒸着材料

Claims (1)

  1. 複数の貫通孔を形成して蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法であって、
    ニッケルを含む鉄合金からなる母材を圧延して、第1面及び第2面を含む金属板を作製する圧延工程と、
    前記金属板の少なくとも前記第1面側の表面層を除去する表面層除去工程と、を備え、
    前記表面層除去工程は、前記第1面側の表面層を0.5μm以上除去する処理は実施するが、前記第2面側の表面層を0.5μm以上除去する処理は実施せず、
    前記金属板に前記複数の貫通孔を形成して前記蒸着マスクを製造するとき、前記第1面には第1凹部が形成され、前記第2面には、平面視において前記第1凹部よりも大きな寸法を有し、前記金属板の厚み方向において前記第1凹部に接続される第2凹部が形成される、 金属板の製造方法。
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