以下では、図1を用いて、第一実施形態に係る電力供給システム1について説明する。
電力供給システム1は、複数の戸建住宅(住宅H)からなる住宅街区T(住宅Hの集合体)に適用することを想定している。具体的には、住宅街区Tには、複数の(戸建)住宅Hとして、第一住宅H1、第二住宅H2及び第三住宅H3が設けられる。住宅街区Tにおいては、電力小売事業者が電力会社(系統電源S)から電力を一括購入し、当該購入した電力が各住宅Hに適宜供給(売却)される。
電力供給システム1は、電力小売事業者が電力会社から一括購入した電力等を、複数の住宅H(第一住宅H1、第二住宅H2及び第三住宅H3)間で適宜供給(融通)するためのシステムである。電力供給システム1は、主としてセンサ部10、複数の蓄電池システム20(第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23)、複数の太陽光発電システム30(第一太陽光発電システム31、第二太陽光発電システム32及び第三太陽光発電システム33)及びEMS40を具備する。
複数の住宅H(第一住宅H1、第二住宅H2及び第三住宅H3)は、人が居住する建物である。各住宅Hには適宜の電気製品が設けられ、電力が消費される。
また、各住宅Hは、系統電源Sと接続される。具体的には、各住宅Hは、上流側端部が系統電源Sと接続されると共に下流側端部が分岐して各住宅Hと接続された配電線Lを介して、当該系統電源Sと接続される。
センサ部10は、配電線Lを流通する電力を検出するものである。センサ部10は、第一センサ11、第二センサ12及び第三センサ13を具備する。
第一センサ11、第二センサ12及び第三センサ13は、それぞれ配置箇所を流通する電力を検出するものである。第一センサ11、第二センサ12及び第三センサ13は、それぞれ検出結果に関する信号を出力可能に構成される。第一センサ11、第二センサ12及び第三センサ13は、それぞれ所定の蓄電池システムと対応するように設けられ、当該対応する蓄電池システムと電気的に接続される。
具体的には、第一センサ11は、後述する第一蓄電池システム21と電気的に接続される。また、第二センサ12は、後述する第二蓄電池システム22と電気的に接続される。また、第三センサ13は、後述する第三蓄電池システム23と電気的に接続される。
また、第一センサ11、第二センサ12及び第三センサ13は、それぞれ配電線Lにおいて、前記対応する蓄電池システムが接続された連結点の直ぐ上流側に配置される。具体的には、第一センサ11、第二センサ12及び第三センサ13は、それぞれ配電線Lにおいて、後述する第一連結点P1、第二連結点P2及び第三連結点P3の直ぐ上流側に配置される。
複数の蓄電池システム20(第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23)は、後述する複数の太陽光発電システム30(より詳細には、複数の太陽光発電システム30のうち、対応する太陽光発電システム30)からの電力を適宜充電すると共に、当該電力を適宜放電するためのシステムである。各蓄電池システム20は、充放電可能な蓄電池や当該蓄電池の充放電を制御するパワーコンディショナ等を具備する。各蓄電池システム20は、所定の住宅Hに対応するように設けられる(1つの住宅Hに対して、1つの蓄電池システム20が設けられる)。各蓄電池システム20は、前記所定の住宅H(住宅Hの住人)に所有されている。
具体的には、第一蓄電池システム21は、第一住宅H1に設けられ、第一住宅H1の住人に所有されている。また、第二蓄電池システム22は、第二住宅H2に設けられ、第二住宅H2の住人に所有されている。また、第三蓄電池システム23は、第三住宅H3に設けられ、第三住宅H3の住人に所有されている。
また、各蓄電池システム20は、配電線Lの中途部に接続される。具体的には、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23は、それぞれ配電線Lの第一連結点P1、第二連結点P2及び第三連結点P3に接続される。なお、第一連結点P1、第二連結点P2及び第三連結点P3は、配電線Lにおいて下流側(前記複数の住宅側)から上流側(系統電源S側)へ向けて順番に配置されている。
また、各蓄電池システム20は、後述する複数の太陽光発電システム30(より詳細には、複数の太陽光発電システム30のうち、対応する太陽光発電システム30)において発電された電力が充電されるように構成される。太陽光発電システム30において発電された電力(特に、余剰電力)を各蓄電池システム20に充電させ、当該充電させた電力を必要に応じて放電させることで、系統電源Sからの電力の購入量を減少させ、住宅街区Tにおける電力の自給自足を促すことができる。
また、各蓄電池システム20は、上述の如く、対応するセンサ部10のセンサ(第一センサ11、第二センサ12及び第三センサ13)と電気的に接続される。各蓄電池システム20は、対応するセンサ部10のセンサから出力された信号が入力され、当該入力された信号に基づいて当該センサの検出結果を取得可能に構成される。各蓄電池システム20は、対応するセンサ部10のセンサの検出結果に基づいて、放電(出力)する電力量を調整する負荷追従運転を行うことができる。
複数の太陽光発電システム30(第一太陽光発電システム31、第二太陽光発電システム32及び第三太陽光発電システム33)は、太陽光を利用して発電するためのシステムである。太陽光発電システム30は、太陽電池(セル)を組み合わせて板状にした太陽電池モジュールや当該太陽電池モジュールからの電力を調整するパワーコンディショナ等を具備する。各太陽光発電システム30は、所定の住宅Hに対応するように設けられる(1つの住宅Hに対して、1つの太陽光発電システム30が設けられる)。各太陽光発電システム30は、前記所定の住宅H(住宅Hの住人)に所有されている。
具体的には、第一太陽光発電システム31は、第一住宅H1に設けられ、第一住宅H1の住人に所有されている。また、第二太陽光発電システム32は、第二住宅H2に設けられ、第二住宅H2の住人に所有されている。また、第三太陽光発電システム33は、第三住宅H3に設けられ、第三住宅H3の住人に所有されている。
また、各太陽光発電システム30は、所有されている住宅Hの蓄電池システム20に接続される。具体的には、第一太陽光発電システム31、第二太陽光発電システム32及び第三太陽光発電システム33は、それぞれ第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三太陽光発電システム33に接続される。このように、各蓄電池システム20と各太陽光発電システム30とが対応するように設けられている。
各太陽光発電システム30は、各蓄電池システム20を介して配電線Lへと電力を供給可能に構成される。これにより、各住宅H(住宅Hの住人)は、各太陽光発電システム30において発電された電力を適宜使用することができる。また、各太陽光発電システム30は、発電された電力のうち、各住宅Hの消費電力に対して余剰した電力(余剰電力)を、当該住宅Hの蓄電池システム20へと供給し、当該蓄電池システム20に充電させることができる。なお、以下において、各蓄電池システム20からの放電には、蓄電池からの電力と、蓄電池に充電されずに各蓄電池システム20を介して配電線Lへと出力された各太陽光発電システム30からの電力と、が含まれるものとする。このように、本実施形態における各蓄電池システム20からの放電量は、配電線Lへと出力した電力量(出力量)となる。
EMS40は、電力供給システム1の動作を管理するエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)である。EMS40は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部及びタッチパネル等の入出力部等を具備し、所定の演算処理や記憶処理等を行うことができる。EMS40には、電力供給システム1の動作を制御する際に用いられる種々の情報やプログラム等が予め記憶される。
また、EMS40は、各蓄電池システム20と電気的に接続される。EMS40は、所定の信号を各蓄電池システム20に出力し、当該各蓄電池システム20の動作を制御することができる。また、EMS40は、各蓄電池システム20から所定の信号が入力可能に構成される。これにより、EMS40は、各蓄電池システム20の動作に関する情報を取得することができる。
また、EMS40は、各住宅Hと電気的に接続される。EMS40は、各住宅Hから所定の信号が入力可能に構成される。これにより、EMS40は、各住宅Hの電力に関する情報を取得することができる。
また、EMS40は、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23に、それぞれ放電優先順位を設定する制御を実行可能とされている。本実施形態において、放電優先順位とは、複数の蓄電池システム20(第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23)の中での放電の優先順位である。
次に、上述の如く構成された電力供給システム1における、電力小売事業者による電力の売買の様子について簡単に説明する。
電力小売事業者は、電力会社(系統電源S)から一括購入した電力を、各住宅Hからの要求に応じて当該各住宅Hへと適宜売却する。各住宅Hの住人は、電力会社から購入した電力を使用することができる。また、電力小売事業者は、各蓄電池システム20から放電された電力を購入し、当該電力を各住宅Hからの要求に応じて当該各住宅Hへと適宜売却する。電力小売事業者が売買する電力の価格は適宜設定される。
このように、電力小売事業者は、電力の売買によって利益を得ることができる。また、各住宅Hの住人も、蓄電池システム20の電力(すなわち、余剰電力)を電力小売事業者に売却することで利益を得ることができる。
以下では、電力供給システム1による電力の供給(融通)態様の概要について説明する。なお、以下において、EMS40は、放電優先順位を特に設定していないものとする。
系統電源Sからの電力は、各住宅Hの消費電力に応じて、配電線Lを介して当該各住宅Hに供給される。この場合、複数の蓄電池システム20のうち最も下流側に配置された第一蓄電池システム21は、まず、第一太陽光発電システム31で発電した電力を配電線Lへ供給する。また、第一蓄電池システム21は、各住宅Hの消費電力を第一太陽光発電システム31で発電した電力だけでは賄えない場合に、蓄電池を放電して配電線Lへ供給する。このとき、第一蓄電池システム21は、第一センサ11の検出結果に基づいて負荷追従運転を行って、所定の電力量の電力を放電する。こうして、第一蓄電池システム21から放電された電力は、各住宅Hへと供給される。なお、第一蓄電池システム21から電力が放電されると、系統電源Sからの電力量が減少する。
また、各住宅Hの消費電力を第一蓄電池システム21からの電力だけで賄えない場合には、不足する分の電力が系統電源Sから各住宅Hに供給される。すなわち、系統電源Sからの電力(不足する分の電力)が、配電線Lを介して各住宅Hに供給される。この場合、複数の蓄電池システム20のうち、第一蓄電池システム21よりも一つ上流側に配置された第二蓄電池システム22は、まず、第二太陽光発電システム32で発電した電力を配電線Lへ供給する。また、第二蓄電池システム22は、各住宅Hの消費電力を第二太陽光発電システム32で発電した電力だけでは賄えない場合に、蓄電池を放電して配電線Lへ供給する。このとき、第二蓄電池システム22は、第二センサ12の検出結果に基づいて負荷追従運転を行って、所定の電力量の電力を放電する。こうして、第二蓄電池システム22から放電された電力は、各住宅Hへと供給される。なお、第二蓄電池システム22から電力が放電されると、系統電源Sからの電力量がさらに減少する。
このように、電力供給システム1においては、各住宅Hの消費電力が賄えない場合に、(放電が開始された)蓄電池システム20よりも一つ上流側に配置された蓄電池システム20からの放電が開始されるという動作が、繰り返し行われる。このように、各住宅Hの消費電力に対して、複数の蓄電池システム20のうち、下流側に配置された蓄電池システム20から上流側に配置された蓄電池システム20へと順次放電が開始されていく。また、各蓄電池システム20においては、各太陽光発電システム30で発電した電力が、蓄電池に充電された電力に対して優先的に放電されていく。
なお、第三蓄電池システム23から電力が放電されても各住宅Hの消費電力が賄えない場合には、系統電源Sから不足する分の電力が購入される(系統電源Sから購入された電力が、各住宅Hへと供給される)。
こうして、電力供給システム1においては、各蓄電池システム20から放電された電力を、当該各蓄電池システム20を所有する住人(住宅H)だけでなく、その他の住人(住宅H)へも供給することとなる。すなわち、各蓄電池システム20から放電された電力を複数の住宅H間で適宜融通することとなる。本実施形態においては、深夜の時間帯に各蓄電池システム20を満充電にし、昼間の時間帯に上述したような複数の住宅H間での電力の融通を行うようにしている。
なお、各蓄電池システム20から放電された電力は、一旦電力小売事業者によって買い取られるため、当該電力に相当する料金が各住宅H(住人)へと支払われる。また、各住宅Hへ供給される電力は電力小売事業者から買い取るものであるため、各住宅Hは、消費電力に応じた料金を電力小売事業者へ支払うことになる。
ここで、例えば、各蓄電池システム20の放電を制御して積算放電量を均等化すると、各蓄電池システム20(第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23)を単独使用したと仮定した場合と比較して積算放電量が増減することから、不公平な状況が生じる可能性がある。
本実施形態において、単独使用とは、所定の住宅Hに対して、当該所定の住宅Hが所有する蓄電池システム20からの電力のみを供給する(他の住宅Hとの間で電力を融通しない)ことを指す。具体的には、第一蓄電池システム21の単独使用とは、第一住宅H1に対して、第一住宅H1が所有する第一蓄電池システム21からの電力のみを供給することを指す。また、第二蓄電池システム22の単独使用とは、第二住宅H2に対して、第二住宅H2が所有する第二蓄電池システム22からの電力のみを供給することを指す。また、第三蓄電池システム23の単独使用とは、第三住宅H3に対して、第三住宅H3が所有する第三蓄電池システム23からの電力のみを供給することを指す。
以下では、図9を参照して、不公平な状況の発生について具体的に説明する。
図9には、各蓄電池システム20の積算放電量を均等にした場合の電力量に関する情報を示している。図9において、第一住宅H1、第二住宅H2及び第三住宅H3の積算消費電力量(1ヶ月の積算消費電力量)は、それぞれ50kWh、100kWh、150kWhとなっている。これに対して、図9において、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23の積算放電量(1ヶ月の積算放電量)は、互いに均等になるように放電が制御され、それぞれ100kWhとなっている。
図9に示す第三住宅H3では、単独使用したと仮定した場合、自身の積算消費電力(150kWh)を賄うために、自身が所有する第三蓄電池システム23から150kWh程度の電力を放電するものと考えられる。よって、第三蓄電池システム23は、積算放電量を均等にするのではなく、単独使用した場合の方が、より多くの電力を放電できたと考えられる。このように、第三住宅H3においては、積算放電量の均等化によって、単独使用した場合と比較して自身が所有する第三蓄電池システム23の積算放電量が減り、当該積算放電量の減少に起因して、電力小売事業者から得られる料金が減ってしまう(損をしてしまう)。
また、図9に示す第一住宅H1では、単独使用したと仮定した場合、自身の積算消費電力(50kWh)を賄うために、自身が所有する第一蓄電池システム21から50kWh程度の電力を放電するものと考えられる。よって、第一蓄電池システム21は、積算放電量を均等にしたことにより、単独使用した場合と比較して、より多くの電力を放電できたと考えられる。このように、第一住宅H1においては、積算放電量の均等化によって、単独使用した場合と比較して自身が所有する第一蓄電池システム21の積算放電量が増え、当該積算放電量の増加に起因して、電力小売事業者から得られる料金が増える(得をしている)ことになる。
このように、積算放電量を均等にしてしまうと単独使用した場合と比較して各蓄電池システム20の積算放電量が増減し、当該増減に応じて各住宅Hに損得が生じて不公平な状況が発生する可能性があった。
そこで、本実施形態に係るEMS40は、図2に示す放電優先順位設定処理によって放電優先順位を設定することで、上述したような不公平な状況が生じるのを抑制している。
以下では、EMS40による放電優先順位設定処理について説明する。放電優先順位設定処理は、決まったタイミングで(例えば、24時になると)行われ、その日(当日)の電力量に関する情報に基づいて翌日の放電優先順位を設定するものである。
図2に示すように、まず、ステップS10において、EMS40は、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23の電力融通時の積算放電量A1・A2・A3をそれぞれ取得する。本実施形態において、電力融通時の積算放電量A1・A2・A3とは、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23を設置した時(以下、「各蓄電池システム20の設置時」と称する)から当日までに、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23から各住宅Hへと放電したそれぞれの総放電量を指す。なお、本実施形態において電力融通時の積算放電量A1・A2・A3には、蓄電池からの電力だけではなく、蓄電池に充電されずに第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23を介して放電された第一太陽光発電システム31、第二太陽光発電システム32及び第三太陽光発電システム33からの電力も含まれる。EMS40は、電力融通時の積算放電量A1・A2・A3を、例えば、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23から取得する。EMS40は、ステップS10の処理が終了すると、ステップS20へ移行する。
ステップS20において、EMS40は、第一住宅H1、第二住宅H2及び第三住宅H3の消費電力量C1・C2・C3及び各太陽光発電システム30の発電量D1・D2・D3をそれぞれ取得する。本実施形態において、消費電力量C1・C2・C3とは、第一住宅H1、第二住宅H2及び第三住宅H3で消費したそれぞれの電力の、各蓄電池システム20の設置時から当日までの経時変化を表す情報を指す。図3(a)には、ある1日における所定の住宅Hの消費電力量C1・C2・C3のデータ(消費電力量C1・C2・C3の一部)を示している。EMS40は、例えば、第一住宅H1、第二住宅H2及び第三住宅H3(より詳細には、各住宅Hの電力メータ等)から定期的に(例えば、1分間隔や1時間間隔で)現在の消費電力を取得し、当該取得した現在の消費電力を適宜集計することで消費電力量C1・C2・C3を取得する。
また、本実施形態において、発電量D1・D2・D3とは、第一太陽光発電システム31、第二太陽光発電システム32及び第三太陽光発電システム33で発電したそれぞれの電力の、各蓄電池システム20の設置時から当日までの経時変化を表す情報を指す。図3(b)には、ある1日における所定の住宅Hの発電量D1・D2・D3のデータ(発電量D1・D2・D3の一部)を示している。EMS40は、発電量D1・D2・D3を、例えば、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23から定期的に(例えば、1分間隔や1時間間隔で)現在の発電電力を取得し、当該取得した現在の発電電力を適宜集計することで発電量D1・D2・D3を取得する。図2に示すように、EMS40は、ステップS20の処理が終了すると、ステップS30へ移行する。
ステップS30において、EMS40は、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23の単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3をそれぞれ算出する。本実施形態において、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3とは、各蓄電池システム20の設置時から当日まで単独使用したと仮定すると、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23が放電したと推定されるそれぞれの総放電量を指す。
ステップS30において、EMS40は、ステップS20で取得した消費電力量C1・C2・C3及び発電量D1・D2・D3と、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23の蓄電池の機器仕様と、に基づいて、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3をそれぞれ算出する。本実施形態において、蓄電池の機器仕様とは、蓄電池の構造及び設計内容等を指す。蓄電池の機器仕様には、蓄電池の容量、最大充放電量、充放電効率及び放電深度等が含まれる。EMS40は、蓄電池の機器仕様を、例えば、記憶部から取得する。
蓄電池の機器仕様を取得したEMS40は、例えば、単独使用したと仮定すると、ある日時において各蓄電池システム20がどの程度の電力を出力するのか、すなわち、ある日時における単独使用時の放電電力を推定する。そして、EMS40は、当該推定を日時をずらしながら(例えば、1分間隔や1時間間隔で)繰り返し行い、その推定結果を適宜積算することで単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を算出する。
以下では、ある日時における単独使用時の放電電力を推定する手順について説明する。なお、以下では、ある日時において各住宅Hの消費電力が各太陽光発電システム30の発電電力以下である場合(以下、「第一状態」と称する)と、各住宅Hの消費電力が各太陽光発電システム30の発電電力よりも大きい場合(以下、「第二状態」と称する)と、に分けて、推定する手順について説明する。
まず、第一状態における推定の手順について説明する。第一状態においては、消費電力が発電電力以下であるため、蓄電池から放電されることはない。また、第一状態において、消費電力に対して余剰する発電電力は、蓄電池に充電されるか系統電源Sへと逆潮流されることになる。仮に、前記余剰する発電電力が充電された場合、その分の電力は配電線Lへと出力されないので、単独使用時の放電電力が減ることになる。一方、前記余剰する発電電力が逆潮流された場合、その分の電力は配電線Lへと出力されるので、単独使用時の放電電力が増えることになる。
このように、各住宅Hに各太陽光発電システム30が設けられていると、第一状態において前記余剰する発電電力の用途、すなわち、蓄電池の充電に用いられるのか逆潮流されるのかに応じて、単独使用時の放電電力が変動する。そこで、EMS40は、蓄電池の機器仕様を用いて、前記余剰する発電電力の用途を判断し、当該判断結果に応じて単独使用時の放電電力を推定する。
具体的には、例えば、蓄電池は、単位時間当たりに充電可能な電力、すなわち、最大充電量が決まっている。このため、第一状態において、蓄電池は、前記余剰する発電電力を最大充電量を超えない範囲で充電することになる。そこで、EMS40は、例えば、発電電力と消費電力との差(前記余剰する発電電力)が最大充電量以下である場合に、前記余剰する発電電力を全て蓄電池に充電すると判断する。この場合、各蓄電池システム20が消費電力と同一の電力を放電することとなるため、EMS40は、ある日時における単独使用時の放電電力が、消費電力と同一の電力であると推定する。これにより、EMS40は、前記余剰する発電電力を充電させたことによる単独使用時の放電電力の減少を考慮して、単独使用時の放電電力を推定できる。
一方、EMS40は、発電電力と消費電力との差が最大充電量を超えた場合に、発電電力が消費電力及び蓄電池に対してさらに余剰する電力が逆潮流されると判断する。この場合、各蓄電池システム20は、蓄電池へ充電する電力(最大充電量)を除く電力を放電することとなる。そこで、この場合、EMS40は、単独使用時の放電電力が、発電電力から最大充電量と同一の電力を減算した電力であると推定する。これにより、EMS40は、前記余剰する発電電力を逆潮流させたことによる単独使用時の放電電力の増加を考慮して、単独使用時の放電電力を推定できる。
以上によれば、EMS40は、最大充電量(蓄電池の機器仕様)を用いて前記余剰する発電電力の用途(充電するのか逆潮流させるのか)を判断できるため、前記用途に応じた単独使用時の放電電力の増減を加味して、単独使用時の放電電力を推定できる。これによって、各住宅Hに各太陽光発電システム30が設けられていても、単独使用時の放電電力を精度よく推定できる。これにより、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を精度よく算出することができる。
次に、各住宅Hの消費電力が各太陽光発電システム30の発電電力よりも大きい第二状態における推定の手順について説明する。第二状態において、発電電力だけでは消費電力を賄えないため、蓄電池が放電されることになる。この場合、発電電力に加えて、蓄電池から放電された電力も配電線Lへと出力されることになる。このため、EMS40は、発電電力と蓄電池から放電された電力(放電電力)とを合算した電力が、単独使用時の放電電力であると推定する。また、EMS40は、蓄電池の機器仕様を用いて、蓄電池の放電電力を推定する。
具体的には、例えば、蓄電池は、単位時間当たりに放電可能な電力、すなわち、最大放電量が決まっている。このため、第二状態において、蓄電池は、最大放電量を超えない範囲で放電することになる。そこで、EMS40は、例えば、消費電力と発電電力との差(発電電力だけでは不足する電力)が最大放電量未満である場合に、前記差と同一の電力を蓄電池が放電すると判断する。この場合、EMS40は、蓄電池の放電電力が前記差と同一の電力であると推定する。一方、EMS40は、消費電力と発電電力との差が最大放電量を超えた場合に、最大放電量と同一の電力を蓄電池が放電すると判断する。この場合、EMS40は、蓄電池の放電電力が最大放電量と同一の電力であると推定する。これによれば、EMS40は、最大放電量を考慮して蓄電池の放電電力を精度よく推定できる。
また、例えば、蓄電池は、所定の電力(例えば、500Wの電力)を各住宅Hへ供給する場合に、当該所定の電力と同一の電力を放電するのではなく、放電効率に応じて当該所定の電力よりもやや多くの電力(例えば、501Wの電力)を放電することになる。そこで、EMS40は、第二状態において、放電効率を用いて蓄電池の放電電力を推定する。例えば、第二状態において発電電力だけでは500Wの電力が不足している(500Wの電力を蓄電池から各住宅Hへ供給する)と判断した場合に、発電効率を用いて蓄電池の放電電力が501Wであると推定する。これによれば、EMS40は、放電効率を考慮して蓄電池の放電電力を精度よく推定できるため、当該蓄電池の放電電力と発電電力とを合わせた単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を精度よく算出することができる。
EMS40は、以上のようにして推定した単独使用時の放電電力を適宜積算することで単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を算出する。
以下では、図3及び図4を参照して、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を算出する手順の具体例を説明する。なお、以下では、説明の便宜上、ある1日における単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を算出するものとする。
図3(a)に示す消費電力は、朝の時間帯(7時前後の時間帯)及び夜の時間帯(19時前後の時間帯)が、他の時間帯よりも大きくなっている。また、図3(b)に示す発電電力は、日の出時刻(7時前)から徐々に増加し、12時頃をピークとして徐々に減少し、日の入り時刻(19時前)に0となっている。
図4は、図3に示す消費電力と発電電力とを重ね合わせたグラフである。図4に示すように、0時から9時頃までの時間帯T1と、15時頃から24時までの時間帯T3と、において、消費電力が発電電力よりも大きくなっている。一方、時間帯T1と時間帯T3との間の時間帯(9時頃から15時頃までの時間帯)T2において、消費電力が発電電力以下となっている。
この場合、EMS40は、時間帯T2において第一状態となっていると判断する。そして、EMS40は、上述したような第一状態における推定の手順により、時間帯T2において、各太陽光発電システム30の発電電力(図4に斜線で示す領域R2)をどの程度出力しているのかを推定する。これによって、EMS40は、時間帯T2における単独使用時の放電電力を推定する。
一方、EMS40は、時間帯T1・T3において第二状態となっていると判断する。そして、EMS40は、上述したような第二状態における推定の手順により、時間帯T1・T3において、各太陽光発電システム30の発電電力(図4に斜線で示す領域R11・R31)だけでは不足する電力(図4に斜線で示す領域R12・R32)に対する蓄電池の放電電力を推定する。そして、EMS40は、当該蓄電池の放電電力と各太陽光発電システム30の発電電力とを合算した電力が、時間帯T1・T3における単独使用時の放電電力であると推定する。
EMS40は、以上のようにして推定した時間帯T1〜T3における単独使用時の放電電力を適宜積算することで、ある1日における単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を算出する。
図2に示すように、EMS40は、ステップS30の処理が終了すると、ステップS40へ移行する。
ステップS40において、EMS40は、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23の放電優先順位を設定する。このとき、EMS40は、電力融通時の積算放電量A1・A2・A3から単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を減算する。そして、EMS40は、減算結果が小さいものから順番に(小さいものが上位となるように)放電優先順位を設定する。EMS40は、ステップS40の処理が終了すると、放電優先順位設定処理を終了する。
EMS40は、放電優先順位設定処理を終了すると、各住宅Hの消費電力に応じて、放電優先順位が上位のものから順に蓄電池システム20を放電させる。より詳細には、EMS40は、まず、放電優先順位が一位に設定された蓄電池システム20を放電させる。また、EMS40は、一位の蓄電池システム20からの電力だけで各住宅Hの消費電力を賄えない場合に、放電優先順位が二位に設定された蓄電池システム20を放電させる。また、EMS40は、一位及び二位の蓄電池システム20からの電力で各住宅Hの消費電力を賄えない場合に、放電優先順位が三位に設定された蓄電池システム20を放電させる。
このように、EMS40は、各住宅Hの消費電力が賄えない場合に、(放電が開始された)蓄電池システム20よりも放電優先順位が一つ下位の蓄電池システム20からの放電を開始させるという処理を、繰り返し行う。こうして、各住宅Hの消費電力に対して、放電優先順位が上位に設定された蓄電池システム20から順次放電が開始されていく。これにより、EMS40は、放電優先順位が上位の蓄電池システム20を優先的に放電させる。また、放電が開始された蓄電池システム20は、対応するセンサ部10のセンサの検出結果に基づいて負荷追従運転を行う。
以下では、図5から図8までを参照して、放電優先順位処理の具体例について説明する。
図5には、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23を設置した日(1日目)の、電力量に関する情報を示している。図5に示すように、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23の当日の放電量(電力融通時の積算放電量)は、それぞれ4kWh、2kWh、0kWhである。なお、1日目において、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23の電力融通時の積算放電量A1・A2・A3は、それぞれ当日の放電量と同じ値となる(ステップS10)。
また、第一住宅H1、第二住宅H2及び第三住宅H3の当日の積算消費電力量は、それぞれ1kWh、2kWh、3kWhである。なお、EMS40は、当日の消費電力量(図3(a)参照)を積算することで、当日の積算消費電力量を得ることができる。また、EMS40は、前日までの積算消費電力量に当日の積算消費電力量を合算することで、当日までの積算消費電力量を得ることができる。以下においては、第一住宅H1、第二住宅H2及び第三住宅H3における当日まで(各蓄電池システム20の設置時から当日まで)の積算消費電力量を、それぞれ「積算消費電力量E1」、「積算消費電力量E2」及び「積算消費電力量E3」と称する。1日目において、第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23の積算消費電力量E1・E2・E3は、それぞれ当日の積算消費電力量と同じ値となる。
なお、以下においては、説明のため、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3の算出を簡略化し、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3は、それぞれ積算消費電力量E1・E2・E3と同一の値であるものとする。よって、図5においては、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3は、それぞれ1kWh、2kWh、3kWhとなる(ステップS20・S30)。
以上のような状態において、EMS40は、電力融通時の積算放電量A1・A2・A3から単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3をそれぞれ減算する。これにより、EMS40は、第一住宅H1の減算結果(積算放電量A1−推定積算放電量B1、図5に示すA−B累計値)として、+3kWhを得る。第一住宅H1においては、減算結果がプラスの値となっている(電力融通時の積算放電量A1が単独使用時の推定積算放電量B1を上回っている)ことから、単独使用したと仮定した場合と比較して、電力の融通により多くの放電機会を得ている(得をしている)ことがわかる。
また、EMS40は、第二住宅H2の減算結果(積算放電量A2−推定積算放電量B2)として、±0kWhを得る。この結果により、第二住宅H2においては、単独使用したと仮定しても、放電機会が変わらない(損得が生じていない)ことがわかる。
また、EMS40は、第三住宅H3の減算結果(積算放電量A3−推定積算放電量B3)として、−3kWhを得る。第三住宅H3においては、減算結果がマイナスの値となっている(電力融通時の積算放電量A3が単独使用時の推定積算放電量B3を下回っている)ことから、単独使用したと仮定した場合と比較して、電力の融通により放電機会が減ったこと(損をしている)がわかる。
EMS40は、第一住宅H1、第二住宅H2及び第三住宅H3の減算結果(+3kWh、±0kWh、−3kWh)に応じて、2日目(翌日)の放電優先順位を設定する(ステップS40)。このとき、EMS40は、減算結果が最も小さい第三住宅H3(−3kWh)が所有する第三蓄電池システム23を放電優先順位の一位に設定し、その次に減算結果が小さい第二住宅H2(±0kWh)が所有する第二蓄電池システム22を放電優先順位の二位に設定し、減算結果が最も大きい第一住宅H1(+3kWh)が所有する第一蓄電池システム21を放電優先順位の三位に設定する。
EMS40は、2日目において、以上のように設定された放電優先順位に基づいて第一蓄電池システム21、第二蓄電池システム22及び第三蓄電池システム23を放電させる。すなわち、EMS40は、2日目において、放電優先順位が一位の第三蓄電池システム23から放電を開始し、第三蓄電池システム23からの電力だけでは各住宅Hの消費電力を賄えない場合に、放電優先順位が二位の第二蓄電池システム22の放電を開始し、それでも各住宅Hの消費電力を賄えない場合に、放電優先順位が三位の第一蓄電池システム21の放電を開始する。
これにより、EMS40は、2日目において、第三住宅H3(単独使用したと仮定した場合と比較して損をした住宅)の第三蓄電池システム23を優先的に放電させる。
図6には、以上のようにして放電された2日目の電力量に関する情報を示している。
図6に示すように、2日目において、放電優先順位が三位に設定された第一蓄電池システム21は、優先的に放電されなかった結果、1日目よりも放電量が減り、当日の放電量が0kWhとなっている。よって、2日目の第一蓄電池システム21の積算放電量A1は、1日目の積算放電量A1(4kWh)に当日の放電量(0kWh)を加えた4kWhとなる。また、第一住宅H1の当日の積算消費電力量は、1kWhである。よって、2日目の第一住宅H1の積算消費電力量E1は、1日目の積算消費電力量E1(1kWh)に当日の積算消費電力量(1kWh)を加えた2kWhとなる。また、第一蓄電池システム21の2日目の単独使用時の推定積算放電量B1は、2日目の第一住宅H1の積算消費電力量E1と同じ値(2kWh)となる。よって、第一住宅H1の減算結果(積算放電量A1−推定積算放電量B1)は、+2kWhとなる。
このように、EMS40は、2日目において、前日(1日目)の減算結果(+3kWh)が他の蓄電池システム20よりも大きな第一蓄電池システム21の放電優先順位を低くすることで、放電量(積算放電量A1の増加量)を減少させ、2日目の減算結果を+3kWhから+2kWhへと減らすことができる。これにより、積算放電量A1を推定積算放電量B1に近付けることができる。
また、放電優先順位が二位に設定された第二蓄電池システム22は、ある程度優先的に放電された結果、当日の放電量が2kWhとなっている。よって、2日目の第二蓄電池システム22の積算放電量A2は、1日目の積算放電量A2(2kWh)に当日の積算放電量(2kWh)を加えた4kWhとなる。また、第二住宅H2の当日の積算消費電力量は、2kWhである。よって、2日目の第二住宅H2の積算消費電力量E2は、1日目の積算消費電力量E2(2kWh)に当日の積算消費電力量(2kWh)を加えた4kWhとなる。また、第二蓄電池システム22の2日目の単独使用時の推定積算放電量B2は、2日目の第二住宅H2の積算消費電力量E2と同じ値(4kWh)となる。よって、第二住宅H2の減算結果(積算放電量A2−推定積算放電量B2)は、±0kWhとなる。
また、放電優先順位が一位に設定された第三蓄電池システム23は、優先的に放電された結果、1日目よりも放電量が増え、当日の放電量が4kWhとなっている。よって、2日目の第三蓄電池システム23の積算放電量A3は、1日目の積算放電量A3(0kWh)に当日の積算放電量(4kWh)を加えた4kWhとなる。また、第三住宅H3の当日の積算消費電力量は、3kWhである。よって、2日目の第三住宅H3の積算消費電力量E3は、1日目の積算消費電力量E3(3kWh)に当日の積算消費電力量(3kWh)を加えた6kWhとなる。また、第三蓄電池システム23の2日目の単独使用時の推定積算放電量B3は、2日目の第三住宅H3の積算消費電力量E3と同じ値(6kWh)となる。よって、第三住宅H3の減算結果(積算放電量A3−推定積算放電量B3)は、−2kWhとなる。
このように、EMS40は、2日目において、前日(1日目)の減算結果(−3kWh)が他の蓄電池システム20よりも小さな第三蓄電池システム23の放電優先順位を高くすることで、放電量(積算放電量A3の増加量)を増加させ、2日目の減算結果を−3kWhから−2kWhへと増やすことができる。これにより、積算放電量A3を推定積算放電量B3に近付けることができる。
なお、2日目において、減算結果は、1日目から変動があったものの、各住宅H間での大小関係は変わっていない。よって、EMS40は、1日目と同様に、第三蓄電池システム23を放電優先順位の一位に設定し、第二蓄電池システム22を放電優先順位の二位に設定し、第一蓄電池システム21を放電優先順位の三位に設定する。
図7には、以上のようにして設定された放電優先順位に基づいて放電された、3日目の電力量に関する情報を示している。
図7に示すように、3日目において、放電優先順位が三位に設定された第一蓄電池システム21は、2日目と同様に、当日の放電量が0kWhとなっている。よって、3日目の第一蓄電池システム21の積算放電量A1は、2日目の積算放電量A1(4kWh)に当日の放電量(0kWh)を加えた4kWhとなる。また、第一住宅H1の当日の積算消費電力量は、1kWhである。よって、3日目の第一住宅H1の積算消費電力量E1は、2日目の積算消費電力量E1(2kWh)に当日の積算消費電力量(1kWh)を加えた3kWhとなる。また、第一蓄電池システム21の3日目の単独使用時の推定積算放電量B1は、3日目の第一住宅H1の積算消費電力量E1と同じ値(3kWh)となる。よって、第一住宅H1の減算結果(積算放電量A1−推定積算放電量B1)は、+1kWhとなる。
このように、EMS40は、2日目に続いて3日目においても、前日(2日目)の減算結果(+2kWh)が他の蓄電池システム20よりも大きな第一蓄電池システム21の放電優先順位を低くすることで、3日目の減算結果をさらに減らすことができる。
また、放電優先順位が二位に設定された第二蓄電池システム22は、2日目と同様に、当日の放電量が2kWhとなっている。よって、3日目の第二蓄電池システム22の積算放電量A2は、2日目の積算放電量A2(4kWh)に当日の放電量(2kWh)を加えた6kWhとなる。また、第二住宅H2の当日の積算消費電力量は、2kWhである。よって、3日目の第二住宅H2の積算消費電力量E2は、2日目の積算消費電力量E2(4kWh)に当日の積算消費電力量(2kWh)を加えた6kWhとなる。また、第二蓄電池システム22の3日目の単独使用時の推定積算放電量B2は、3日目の第二住宅H2の積算消費電力量E2と同じ値(6kWh)となる。よって、第二住宅H2の減算結果(積算放電量A2−推定積算放電量B2)は、±0kWhとなる。
また、放電優先順位が一位に設定された第三蓄電池システム23は、2日目と同様に、当日の放電量が4kWhとなっている。よって、3日目の第三蓄電池システム23の積算放電量A3は、2日目の積算放電量A3(4kWh)に当日の放電量(4kWh)を加えた8kWhとなる。また、第三住宅H3の当日の積算消費電力量は、3kWhである。よって、3日目の第三住宅H3の積算消費電力量E3は、2日目の積算消費電力量E3(6kWh)に当日の積算消費電力量(3kWh)を加えた9kWhとなる。また、第三蓄電池システム23の3日目の単独使用時の推定積算放電量B3は、3日目の第三住宅H3の積算消費電力量E3と同じ値(9kWh)となる。よって、第三住宅H3の減算結果(積算放電量A3−推定積算放電量B3)は、−1kWhとなる。
このように、EMS40は、2日目に続いて3日目においても、前日(2日目)の減算結果が小さな第三蓄電池システム23の放電優先順位を高くすることで、3日目の減算結果をさらに増やすことができる。
なお、3日目において、減算結果は、2日目から変動があったものの、各住宅H間での大小関係は変わっていない。よって、EMS40は、2日目と同様に、第三蓄電池システム23を放電優先順位の一位に設定し、第二蓄電池システム22を放電優先順位の二位に設定し、第一蓄電池システム21を放電優先順位の三位に設定する。
図8には、以上のようにして設定された放電優先順位に基づいて放電された、4日目の電力量に関する情報を示している。
図8に示すように、4日目において、放電優先順位が三位に設定された第一蓄電池システム21は、3日目と同様に、当日の放電量が0kWhとなっている。よって、4日目の第一蓄電池システム21の積算放電量A1は、3日目の積算放電量A1(4kWh)に当日の放電量(0kWh)を加えた4kWhとなる。また、第一住宅H1の当日の積算消費電力量は、1kWhである。よって、4日目の第一住宅H1の積算消費電力量E1は、3日目の積算消費電力量E1(3kWh)に当日の積算消費電力量(1kWh)を加えた4kWhとなる。また、第一蓄電池システム21の4日目の単独使用時の推定積算放電量B1は、4日目の第一住宅H1の積算消費電力量E1と同じ値(4kWh)となる。よって、第一住宅H1の減算結果(積算放電量A1−推定積算放電量B1)は、±0kWhとなる。
このように、EMS40は、3日目に続いて4日目においても、前日(3日目)の減算結果が大きな第一蓄電池システム21の放電優先順位を低くすることで、4日目の減算結果をさらに減らして±0kWhにすることができる。
また、放電優先順位が二位に設定された第二蓄電池システム22は、3日目と同様に、当日の放電量が2kWhとなっている。よって、4日目の第二蓄電池システム22の積算放電量A2は、3日目の積算放電量A2(6kWh)に当日の放電量(2kWh)を加えた8kWhとなる。また、第二住宅H2の当日の積算消費電力量は、2kWhである。よって、4日目の第二住宅H2の積算消費電力量E2は、3日目の積算消費電力量E2(6kWh)に当日の積算消費電力量(2kWh)を加えた8kWhとなる。また、第二蓄電池システム22の4日目の単独使用時の推定積算放電量B2は、4日目の第二住宅H2の積算消費電力量E2と同じ値(8kWh)となる。よって、第二住宅H2の減算結果(積算放電量A2−推定積算放電量B2)は、±0kWhとなる。
また、放電優先順位が一位に設定された第三蓄電池システム23は、3日目と同様に、当日の放電量が4kWhとなっている。よって、4日目の第三蓄電池システム23の積算放電量A3は、3日目の積算放電量A3(8kWh)に当日の放電量(4kWh)を加えた12kWhとなる。また、第三蓄電池システム23を所有する第三住宅H3の当日の積算消費電力量は、3kWhである。よって、4日目の第三住宅H3の積算消費電力量E3は、3日目の積算消費電力量E3(9kWh)に当日の積算消費電力量(3kWh)を加えた12kWhとなる。また、第三蓄電池システム23の4日目の単独使用時の推定積算放電量B3は、3日目の第三住宅H3の積算消費電力量E3と同じ値(12kWh)となる。よって、第三住宅H3の減算結果(積算放電量A3−推定積算放電量B3)は、±0kWhとなる。
このように、EMS40は、3日目に続いて4日目においても、前日(3日目)の減算結果が小さな第三蓄電池システム23の放電優先順位を高くすることで、4日目の減算結果をさらに増やして±0kWhにすることができる。
以上のように、EMS40によれば、電力融通時の積算放電量A1・A2・A3及び単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を用いることで(ステップS30・S40)、電力の融通により各住宅Hに生じた損得を考慮した放電優先順位の設定を行うことができる。より詳細には、積算放電量A1・A2・A3と推定積算放電量B1・B2・B3との差により、電力の融通によって各住宅Hで損得が生じたのかを判断することができる。当該判断結果に基づいて放電優先順位を設定すれば、電力の融通によって損をした住宅Hが所有する蓄電池システム20(図9では第三住宅H3の第三蓄電池システム23)の放電優先順位を高くして、他の住宅Hが所有する蓄電池システム20に対して優先的に放電させることができる。これによって、電力の融通によって損をした住宅Hが所有する蓄電池システム20の放電量を増やすことができる。こうして、電力の融通によって損をした住宅Hが他の住宅Hよりも多くの料金を得られるようにすることができる。
また、単独使用した場合と比較して、電力の融通によって得をした住宅Hが所有する蓄電池システム20(図9では第一住宅H1の第一蓄電池システム21)の放電優先順位を低くして、放電量を減らすことができる。これにより、電力の融通によって得をした住宅Hに、過剰に(自身の消費電力に対して過剰に)料金が支払われるのを抑制することができる。
以上により、EMS40は、単独使用したと仮定した場合と比較して、各蓄電池システム20の積算放電量A1・A2・A3が増減するのを抑制できるため、各住宅Hに損得が生じるのを抑制して不公平な状況が生じるのを抑制することができる。
また、EMS40は、積算放電量A1・A2・A3と推定積算放電量B1・B2・B3との差を求めることで、最適な優先順位を設定することができる(ステップS30・S40)。より詳細には、EMS40は、当該差を求めることで、各住宅Hの実情に沿って損得が生じたのかを判断することができる。これによって、電力の融通によって各住宅Hで損得が生じたのかを正確に判断することができる。また、EMS40は、当該差により放電優先順位を設定することで(ステップS40)、各住宅Hの実情に沿った放電優先順位の設定を行うことができる。こうして、最適な放電優先順位を設定することができる。
また、EMS40は、蓄電池の充放電に関する複数のパラメータ(蓄電池の機器仕様、具体的には充放電効率や最大充放電量等)を用いて単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を算出している(ステップS30)。これにより、蓄電池の実情に沿って単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を精度よく算出することができる。
また、図5から図8までを用いた具体例においては、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3の算出を簡略化し、推定積算放電量B1・B2・B3は、それぞれ積算消費電力量E1・E2・E3と同一の値であるものとした。このように推定積算放電量B1・B2・B3を積算消費電力量E1・E2・E3に置き換えることで、EMS40は、太陽光発電システム30の発電量D1・D2・D3等を考慮しなくて済むため、放電優先順位を簡単に設定することができる。
また、EMS40は、放電優先順位を設定することで、各住宅Hの減算結果が0未満とならない(積算放電量A1・A2・A3が推定積算放電量B1・B2・B3を下回らない)ようにしている。これにより、各住宅Hの住人が、単独使用していた方がより多くの電力を放電できた(電力の融通をしなければよかった)といった不満感を持たないようにすることができる。
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、負荷を有する複数の住宅H(需要家)に対応するように設けられ、前記住宅Hとの対応関係に関わらず、放電した電力を前記複数の住宅Hの前記負荷へ供給可能な複数の蓄電池システム20(蓄電池)と、前記複数の蓄電池システム20の放電に関する放電優先順位(優先順位)に基づいて、前記複数の蓄電池システム20の放電を制御するEMS40(制御部)と、を具備し、前記EMS40は、前記複数の蓄電池システム20の積算放電量A1・A2・A3及び前記複数の住宅Hの消費電力量C1・C2・C3に基づいて前記放電優先順位を設定するものである。
このように構成することにより、不公平な状況が生じるのを抑制することができる。具体的には、EMS40は、消費電力量C1・C2・C3から積算消費電力量E1・E2・E3を取得することができる。EMS40は、当該積算消費電力量E1・E2・E3及び積算放電量A1・A2・A3により、積算消費電力量E1・E2・E3に対して積算放電量A1・A2・A3が小さい住宅、すなわち、単独使用したと仮定した場合と比較して損をしている住宅H(図5に示す第三住宅H3)を判断することができる。当該判断結果に基づいて放電優先順位を設定すれば、損をしている住宅Hの蓄電池システム20を優先的に放電させて積算放電量A1・A2・A3を増やすことができる。これにより、単独使用したと仮定した場合と比較して損をしないように積算放電量A1・A2・A3を調整できるため、不公平な状況が生じるのを抑制することができる。
また、前記EMS40は、前記住宅Hの前記負荷に対して当該住宅Hに対応する前記蓄電池システム20のみが放電したと仮定した場合において、当該蓄電池システム20が放電したと推定される推定積算放電量B1・B2・B3を、前記消費電力量C1・C2・C3に基づいて算出し、前記積算放電量A1・A2・A3と前記推定積算放電量B1・B2・B3との差に基づいて、前記放電優先順位を設定するものである。
このように構成することにより、電力の融通によって損をした住宅Hを正確に把握することができるため、放電優先順位を最適なものにすることができる。
また、前記EMS40は、前記蓄電池システム20の仕様情報(蓄電池の機器仕様)及び前記消費電力量C1・C2・C3に基づいて、前記推定積算放電量B1・B2・B3を算出するものである。
このように構成することにより、推定積算放電量B1・B2・B3を精度よく算出することができる。これによって、放電優先順位を最適なものにすることができる。
また、前記複数の住宅Hに対応するように設けられ、自然エネルギーを利用して発電可能な複数の太陽光発電システム30(発電部)をさらに具備し、前記EMS40は、前記消費電力量C1・C2・C3、前記蓄電池システム20の仕様情報及び前記太陽光発電システム30の発電量D1・D2・D3に基づいて前記推定積算放電量B1・B2・B3を算出するものである。
このように構成することにより、太陽光発電システム30を具備していても、推定積算放電量B1・B2・B3を精度よく算出することができる。
なお、本実施形態に係る蓄電池システム20は、本発明に係る蓄電池の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るEMS40は、本発明に係る制御部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る太陽光発電システム30は、本発明に係る発電部の実施の一形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、電力供給システム1は、集合住宅に設けられるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、オフィス等に設けられるものであってもよい。
また、本実施形態において各住宅Hの戸数は、3戸であるものとしたが、これに限定されるものではなく、2戸以上の任意の戸数とすることができる。
また、電力供給システム1の構成は、本実施形態に限定されるものではなく、パワコンに蓄電池及び太陽光発電部が別々に接続されたハイブリッド蓄電池システムを具備する構成であってもよい。
また、本実施形態において蓄電池システム20及び太陽光発電システム30の台数は、3台であるものとしたが、これに限定されるものではなく、各住宅Hの戸数に応じて任意の台数とすることができる。
また、発電部は、太陽光を利用して発電する太陽光発電システム30であるものとしたが、自然エネルギー(例えば、水力や風力)を利用して発電するものであれば、これに限定されるものではない。
また、電力供給システム1は、各住宅Hへ電力を供給する機器として、少なくとも蓄電池システム20を具備していればよく、必ずしも太陽光発電システム30を具備する必要はない。
また、蓄電池システム20は、配電線Lに直列に(上流側から下流側へと並ぶように)配置されるものとしたが、蓄電池システム20の配置はこれに限定されるものではなく、例えば、配電線Lの中途部において互いに並列に配置されていてもよい。
また、EMS40は、蓄電池の動作に関する制御を考慮して、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を算出してもよい。すなわち、本実施形態において、蓄電池は、深夜の時間帯に満充電となるように、動作が制御されている。そこで、EMS40は、当該深夜の時間帯においては、蓄電池が放電しない(放電電力が0である)と判断し、当該深夜の時間帯における単独使用時の放電電力を0と推定する。これによれば、EMS40は、蓄電池の動作に関する制御を考慮して、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を精度よく算出することができる。
また、EMS40は、単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を算出する場合に、必ずしも蓄電池の機器仕様を用いる必要はない。この場合、EMS40は、例えば、各住宅Hの消費電力が各太陽光発電システム30の発電電力以下である第一状態において、消費電力に対し余剰する発電電力を全て充電している、又は、前記余剰する発電電力を全て逆潮流させていると判断すればよい。仮に、全て充電していると判断した場合、第一状態における単独使用時の放電電力は消費電力と同一の電力であると推定すればよい。また、仮に、全て逆潮流させていると判断した場合、第一状態における単独使用時の放電電力は発電電力と同一の電力であると推定すればよい。また、EMS40は、各住宅Hの消費電力が各太陽光発電システム30の発電電力よりも大きい第二状態において、蓄電池の放電により消費電力を全て賄っていると判断すればよい。この場合、第二状態における単独使用時の放電電力は消費電力と同一の電力であると推定すればよい。
また、EMS40は、電力の融通により各住宅Hに生じた損得を考慮して放電優先順位を設定するものであればよく、必ずしも単独使用時の推定積算放電量B1・B2・B3を用いて放電優先順位を設定する必要はない。EMS40は、例えば、各住宅Hの積算消費電力量E1・E2・E3を用いて放電優先順位を設定してもよい。
また、本実施形態において、優先順位を設定するのはEMS40であるとしたが、優先順位を設定する機器は、これに限定されるものではなく、種々の機器を用いることができる。