以下、本発明の実施形態(以下、「本実施の形態」という。)を例示する目的で詳細に説明するが、本発明は本実施の形態に限定されるものではない。図1は、本実施の形態に係る酸化銅とリン酸エステル塩との関係を示す模式図である。図2は、本実施の形態に係る導電性基板を示す断面模式図である。図3は、本実施の形態に係る導電性基板の製造方法の各工程を示す説明図である。図4は、本実施の形態に係るハンダ層が形成された導電性基板の上面図である。
<インクジェット用酸化銅インク>
本実施の形態の酸化銅インクは、溶媒に、(1)酸化銅と、(2)分散剤、(3)還元剤とを含むことを特徴とする。酸化銅インクに還元剤が含まれることにより、焼成において酸化銅の銅への還元が促進され、銅の焼結が促進される。
還元剤の含有量は、下記式(1)の範囲を満たす。還元剤の質量比率が0.0001以上だと分散安定性が向上し、かつ銅膜の抵抗が低下する。また、0.1以下だと酸化銅インクの長期安定性が向上する。
0.0001≦(還元剤質量/酸化銅質量)≦0.10 (1)
また、還元剤は、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ナトリウム、カーボン、ヨウ化カリウム、シュウ酸、硫化鉄(II)、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、塩化スズ(II)、水素化ジイソブチルアルミニウム、蟻酸、水素化ホウ酸ナトリウム、亜硫酸塩の群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、酸化銅の分散安定性が向上するとともに、導電膜の抵抗が低下する。
また、還元剤は、ヒドラジン、または、ヒドラジン水和物であることが特に好ましい。酸化銅インクの還元剤としてヒドラジン、またはヒドラジン水和物を用いることにより、酸化銅の分散安定性がより向上するとともに、焼成において酸化銅の還元に寄与し、導電膜の抵抗がより低下する。
また、分散剤の含有量は、下記式(2)の範囲を満たす。これにより、酸化銅の凝集を抑制して、分散安定性が向上する。
0.0050≦(分散剤質量/酸化銅質量)≦0.30 (2)
また、分散剤の酸価は、20以上、130以下であることが好ましい。これにより、酸化銅インクの分散安定性が向上する。
また、酸化銅は、酸化第一銅であることが好ましい。これにより、酸化銅の還元が容易になり、還元により生じた銅を容易に焼結することができる。
本実施の形態のインクジェット用酸化銅インクは、酸化銅に対する還元剤及び分散剤の質量比率の範囲を限定することで、分散安定性が向上するとともに、導電膜の抵抗が効果的に低下する。また、分散剤の酸価の範囲を限定することで、分散安定性が効果的に向上する。また、プラズマや光、熱を用いて焼成処理を行うことができるため、酸化銅中の有機物が分解され、酸化銅の焼成が促進され、抵抗の低い導電膜を形成できる。このため、電気を流す配線や、放熱、電磁波シールド、回路など様々な銅配線を提供できる。また、本実施の形態では、インクジェット用として塗工精度が高く、詰りがなく連続生産可能なインクジェット用酸化銅インクを得ることが出来る。インクジェットは、版が必要なく、簡易的かつ設備がコンパクトなため、本実施の形態の酸化銅インクを用いることで、インクジェットを用いた製造工程を適正化でき、歩留まりの向上及び製造コストの低減を図ることが出来る。
次に、インクジェット用酸化銅インクにおける酸化銅と分散剤の状態について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、インクジェット用酸化銅インク1において、酸化銅の一例である酸化銅2の周囲には、分散剤としての例えば、リン含有有機物の一例であるリン酸エステル塩3が、リン3aを内側に、エステル塩3bを外側にそれぞれ向けて取り囲んでいる。リン酸エステル塩3は、電気絶縁性を示すため、隣接する酸化銅2との間の電気的導通は妨げられる。また、リン酸エステル塩3は、立体障害効果により酸化銅インク1の凝集を抑制する。酸化銅2は、溶媒4中に分散した状態とされている。
酸化銅2は、半導体であり導電性であるが、電気絶縁性を示すリン酸エステル塩3で覆われ且つ分散しているので、酸化銅インク1は、電気絶縁性を示す。
酸化銅及びリン含有有機物を含む塗膜(酸化銅インク1を用いた塗膜)に対し、プラズマ、光或いは熱による焼成処理を施すことで、酸化銅を銅に還元することができる。このように酸化銅が還元された銅を還元銅という。また、塗膜中のリン含有有機物は、リン酸化物に変性する。リン酸化物では、上述のエステル塩3b(図1参照)のような有機物は、レーザなどの熱によって分解し、電気絶縁性を示さないようになる。
また、図1に示すように、酸化銅2が用いられている場合、レーザなどの熱によって、酸化銅が還元銅に変化すると共に焼結し、隣接する酸化銅2同士が一体化する。これによって、優れた電気導電性を有する領域(以下、「導電性パターン」という)を形成することができる。
導電性パターンにおいて、還元銅の中にリン元素が残存している。リン元素は、リン元素単体、リン酸化物及びリン含有有機物のうち少なくとも1つとして存在している。このように残存するリン元素は、導電性パターン中に偏析して存在しており、導電性パターンの抵抗が大きくなる恐れはない。
[(1)酸化銅]
本実施形態においては銅または、金属酸化物成分の一つとして酸化銅を用いる。酸化銅としては、酸化第一銅(Cu2O)が好ましい。これは、金属酸化物の中でも還元が容易で、さらに微粒子を用いることで焼結が容易であること、価格的にも銅であるがゆえに銀などの貴金属類と比較し安価で、マイグレーションに対し有利であるためである。
酸化銅の平均二次粒子径は、特に制限されないが、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。酸化銅の平均二次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上である。ここで、平均二次粒子径とは、一次粒子が複数個集まって形成される凝集体(二次粒子)の平均粒子径のことである。
この平均二次粒子径が500nm以下であると、基板上に微細パターンを形成し易い傾向があるので好ましい。平均二次粒子径が5nm以上であれば、酸化銅インクの長期保管安定性が向上するため好ましい。酸化銅の平均二次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定することができる。
また、酸化銅の平均一次粒子径の好ましい範囲は、これを還元処理することにより得られる金属の緻密性、電気的特性の観点から、さらには焼成条件を樹脂基板の使用を考慮して基板に与えるダメージを低減する観点から、より低温化する必要がある。このため、好ましい平均一次粒子径は100nm以下であり、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。平均一次粒子径が100nm以下の場合、後述する焼成処理において、基板にダメージを与えないよう投入エネルギーを低減できる。酸化第一銅の平均粒子一次径の下限値は特に制限はないが、取り扱いの容易性から1nm以上が好ましい。これにより、粒子径が小さ過ぎることから分散安定性を保つために分散剤使用量が増大することを抑えられるため、焼成処理が容易になる。平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定することができる。平均粒子径は、例えば大塚電子製FPAR−1000を用いてキュムラント法によって測定できる。
酸化銅インクにおける酸化銅は、プラズマ処理、熱処理、光処理により容易に還元され金属になり、これが焼結することにより導電性を得るが、さらに添加されている銅粒子に対し結合剤として働き一体化することで、低抵抗化、強度の向上に寄与するものである。なお、本実施の形態において、酸化第一銅粒子の平均粒小径は、後述する針金状、樹枝状、及び鱗片状の形状を有する銅粒子によるクラック防止効果には影響しない。
酸化第一銅に関しては、市販品を用いてもよいし、合成して用いてもよい。市販品として、(株)希少金属材料研究所製の平均一次粒子径5〜50nmのものがある。合成法としては、次の方法が挙げられる。
(1)ポリオール溶剤中に、水と銅アセチルアセトナト錯体を加え、いったん有機銅化合物を加熱溶解させ、次に、反応に必要な水を後添加し、さらに昇温して有機銅の還元温度に加熱して還元する方法。
(2)有機銅化合物(銅−N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン錯体)を、ヘキサデシルアミンなどの保護材存在下、不活性雰囲気中で、300℃程度の高温で加熱する方法。
(3)水溶液に溶解した銅塩をヒドラジンで還元する方法。
この中では(3)の方法は操作が簡便で、かつ、平均粒小径の小さい酸化第一銅が得られるので好ましい。
得られた酸化第一銅は軟凝集体であるため、溶媒に分散させた酸化銅分散体を作製し、印刷、塗布に用いられる。合成終了後、合成溶液と酸化第一銅の分離を行うが、遠心分離などの既知の方法を用いればよい。また、得られた酸化第一銅を後述の分散剤、溶媒を加えホモジナイザーなど既知の方法で攪拌し分散する。溶媒によっては分散し難く分散が不充分な場合があるが、このような場合は一例として、分散しやすいアルコール類、例えばブタノールなどの溶媒を用い分散させた後、所望の溶媒への置換と所望の濃度への濃縮を行う。方法の一例としてUF膜による濃縮、所望の溶媒による希釈、濃縮を繰り返す方法が挙げられる。このようにして得られた酸化銅分散体は、後述の方法で銅粒子などと混合してもよく、本実施の形態の酸化銅インクとすることができる。この酸化銅インクが印刷、塗布に用いられる。
[(2)分散剤]
次に分散剤について説明する。分散剤としては、例えば、リン含有有機物が挙げられる。リン含有有機物は、酸化銅に吸着してもよく、この場合、立体障害効果により凝集を抑制する。また、リン含有有機物は、絶縁領域において電気絶縁性を示す材料である。リン含有有機物は、単一分子であってよいし、複数種類の分子の混合物でもよい。
分散剤の数平均分子量は、特に制限はないが、例えば、300〜30000であることが好ましい。300以上であると、絶縁性に優れ、得られる酸化銅インクの分散安定性が増す傾向があり、30000以下であると、焼成しやすい。また、構造としては酸化銅に親和性のある基を有する高分子量共重合物のリン酸エステルが好ましい。例えば、化学式(1)の構造は、酸化銅、特に酸化第一銅と吸着し、また基板への密着性にも優れるため、好ましい。
リン含有有機物は、光や熱によって分解又は蒸発しやすいものであることが好ましい。光や熱によって、分解又は蒸発しやすい有機物を用いることによって、焼成後に有機物の残渣が残りにくくなり、抵抗率の低い導電性パターンを得ることができる。
リン含有有機物の分解温度は、限定されないが、600℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。リン含有有機物の沸点は、限定されないが、300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。
リン含有有機物の吸収特性は、限定されないが、焼成に用いる光を吸収できることが好ましい。例えば、焼成のため光照射処理(例えばレーザ光での光照射処理)を行う場合は、その発光波長の、例えば355nm、405nm、445nm、450nm、532nm、1056nmなどの光を吸収するリン含有有機物を用いることが好ましい。基板が樹脂の場合、特に好ましくは、355nm、405nm、445nm、450nmの波長である。
分散剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、不飽和ポリカルボン酸ポリアミノアマイド、ポリアミノアマイドのポリカルボン酸塩、長鎖ポリアミノアマイドと酸ポリマーの塩などの塩基性基を有する高分子が挙げられる。また、アクリル系ポリマー、アクリル系共重合物、変性ポリエステル酸、ポリエーテルエステル酸、ポリエーテル系カルボン酸、ポリカルボン酸などの高分子のアルキルアンモニウム塩、アミン塩、アミドアミン塩などが挙げられる。このような分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。
上記市販品としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)―101、DISPERBYK―102、DISPERBYK−110、DISPERBYK―111、DISPERBYK―112、DISPERBYK−118、DISPERBYK―130、DISPERBYK―140、DISPERBYK−142、DISPERBYK―145、DISPERBYK―160、DISPERBYK―161、DISPERBYK―162、DISPERBYK―163、DISPERBYK―2155、DISPERBYK―2163、DISPERBYK―2164、DISPERBYK―180、DISPERBYK―2000、DISPERBYK―2025、DISPERBYK―2163、DISPERBYK―2164、BYK―9076、BYK―9077、TERRA−204、TERRA−U(以上ビックケミー社製)、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−15BHFS、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−33、フローレンDOPA−44、フローレンDOPA−17HF、フローレンTG−662C、フローレンKTG−2400(以上共栄社化学社製)、ED−117、ED−118、ED−212、ED−213、ED−214、ED−216、ED−350、ED−360(以上楠本化成社製)、プライサーフ(登録商標)M208F、プライサーフDBS(以上第一工業製薬製)などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
分散剤の必要量は、酸化銅の量に比例し、要求される分散安定性を考慮し調整する。本実施形態の酸化銅インクに含まれる分散剤の質量比率(分散剤質量/酸化銅質量)は、0.0050以上0.30以下であり、好ましくは0.050以上0.25以下であり、より好ましくは0.10以上0.23以下である。分散剤の量は分散安定性に影響し、量が少ないと凝集しやすく、多いと分散安定性が向上する傾向がある。但し、本実施の形態の酸化銅インクにおける分散剤の含有率を35質量%以下にすると、焼成して得られる導電膜において分散剤由来の残渣の影響を抑え、導電性を向上できる。
分散剤の酸価(mgKOH/g)は20以上、130以下が好ましい。より好ましくは30以上、100以下が好ましい。この範囲に入ると分散安定性に優れるため好ましい。特に平均粒子径が小さい酸化銅の場合に有効である。具体的には、ビックケミ―社製「DISPERBYK―102」(酸価101)、「DISPERBYK−140」(酸価73)、「DISPERBYK−142」(酸価46)、「DISPERBYK−145」(酸価76)、「DISPERBYK−118」(酸価36)、「DISPERBYK−180(酸価94)などが挙げられる。
[(3)還元剤]
次に還元剤について説明する。還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ナトリウム、カーボン、ヨウ化カリウム、シュウ酸、硫化鉄(II)、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、塩化スズ(II)、水素化ジイソブチルアルミニウム、蟻酸、水素化ホウ酸ナトリウム、亜硫酸塩などが挙げられる。焼成において、酸化銅、特に酸化第一銅の還元に寄与し、より抵抗の低い銅膜を作製することができる観点から、還元剤は、ヒドラジンまたはヒドラジン水和物が最も好ましい。また、ヒドラジンまたはヒドラジン水和物を用いることにより、酸化銅インクの分散安定性を維持でき、銅膜の抵抗を低くできる。
還元剤の必要量は酸化銅の量に比例し、要求される還元性を考慮し調整する。本実施の形態の酸化銅インクに含まれる還元剤の質量比率(還元剤質量/酸化銅質量)は、0.0001以上0.10以下が好ましく、より好ましくは0.0001以上0.05以下、さらに好ましくは0.0001以上0.03以下である。還元剤の質量比率は、0.0001以上だと分散安定性が向上し、かつ銅膜の抵抗が低下する。また、0.10以下だと酸化銅インクの長期安定性が向上する。
[(4)インクジェット調整剤]
次にインクジェット調整剤について説明する。本実施の形態のインクジェット用酸化銅インクは、更に、インクジェット調整剤を含むことができる。インクジェット調整剤としては、例えば、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、アクリルポリマー、アクリルラテックス、シリコーンポリマー、アクリルシリコーンラテックス、チオフェンポリマー、フッ素含有有機化合物、ポリエチレングリコールが挙げられる。インクジェット用酸化銅インクにインクジェット調整剤を含むことにより、インクジェット印刷の際のノズルの詰まりがなく連続生産性に優れる効果が得られる。また、吐出後のラインがきれいに印刷できる。プラズマや光、熱を用いて焼成処理を行う際に、酸化銅中の有機物が分解され、酸化銅の焼成が促進され、抵抗が低くかつ均一な導電膜を形成できる。
インクジェット調整剤の数平均分子量は、350以上30000以下が好ましく、より好ましくは500以上20000以下、さらに好ましくは1000以上15000以下である。350以上であると、インクジェット印刷の際のノズルの詰まりを抑制することができ、30000以下であると、インクジェット用酸化銅インクに混合させやすい。
インクジェット調整剤の必要量はインクジェット用酸化銅インクの量に比例し、要求されるインクジェット印刷性を考慮し調整する。本実施の形態のインクジェット用酸化銅インクに含まれるインクジェット調整剤の質量比率(インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量)は、0.010以上0.40以下が好ましく、より好ましくは0.020以上0.30以下、さらに好ましくは0.050以上0.20以下である。インクジェット調整剤の質量比率は、0.00010以上だとインクジェット印刷の際の吐出安定性が向上する。また、0.40以下だと酸化銅インクの長期安定性が向上する。
[溶媒]
本実施の形態のインクジェット用酸化銅インクは、上述の構成成分に加え、沸点100℃以上の溶媒(分散媒)を少なくとも2種類含むことを特徴とする。沸点100℃以上の溶媒(分散媒)を少なくとも2種類含むことで乾燥を遅くし、ヘッドの詰まりを無くすため良い。また、基板との接触角調整に使えるので高精細印刷にとっても良い。さらに、1種類は、ヘッドの詰まり、もう1種類は、熱による還元補助剤、または基板との接触角調整に用いられるため、2種類混合が好ましい。
本実施の形態に用いられる溶媒(分散媒)は、分散という観点から分散剤の溶解が可能なものの中から選択する。一方、酸化銅インクを用いて導電性パターンを形成するという観点からは、溶媒の揮発性が作業性に影響を与えるため、導電性パターンの形成方法、例えば、印刷や塗布の方式に適するものである必要がある。従って、溶媒は分散性と印刷や塗布の作業性に合わせて下記の溶剤から選択すればよい。
溶媒の具体例としては、以下の溶剤を挙げることができる。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ−1,2−プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、2−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、n−ノニルアルコール、2、6ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3、3、5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。これらに具体的に記載したもの以外にも、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル類溶剤を溶媒に用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよく、印刷方式に応じ蒸発性や、印刷機材、被印刷基板の耐溶剤性を考慮し選択する。
溶媒として、沸点が100℃以上のものを少なくとも2種類加えることで、特にインクジェット印刷の際、高精細な印刷性や、詰りなく連続生産ができる点で好ましい。具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノ‐ノルマル‐ブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ−1,2−プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、n−ブタノール、i−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、2−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、n−ノニルアルコール、2、6ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3、3、5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、デカリン、テトラリン、γブチロラクトン、γ−バレロラクトン、Nメチルピロリドン、トルエン、キシレン、N−エチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、水などが挙げられる。
溶媒として、炭素数10以下のモノアルコールがより好ましく、さらに炭素数8以下が好ましい。炭素数8以下のモノアルコール中でも、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノールが分散性、揮発性及び粘性が特に適しているのでさらに好ましい。これらのモノアルコールを単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。酸化銅の分散性の低下を抑制するため、さらに分散剤との相互作用により、より安定に分散させるためにもモノアルコールの炭素数は8以下であることが好ましい。また、炭素数は8以下を選択すると抵抗値も低くなり好ましい。
本実施の形態のインクジェット用酸化銅インクでは、溶媒の選定及び組合わせは重要である。上記溶媒は、いずれも沸点が100℃以上のものであるが、本実施の形態では、それらの内、少なくとも2種類の溶媒を組み合わせることが必要である。
2種類の溶媒の組合せでは、例えば、少なくとも1種類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールが好ましく、もう1種類として、n−ブタノール、i−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、2−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、n−ノニルアルコール、2、6ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3、3、5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、デカリン、テトラリン、γブチロラクトン、γ−バレロラクトン、Nメチルピロリドン、トルエン、キシレン、N−エチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、水が含まれることが好ましい。上記溶媒の組合せによれば、インジェット用酸化銅インクとして、印刷後の線幅が高精細で、かつインク吐出が安定し、大量生産に優れたインクとなる。
<酸化銅と銅を含む酸化銅インク(分散体)の調整>
酸化第一銅と銅粒子を含む分散体、すなわちインクジェット用酸化銅インクは、前述の酸化銅分散体に、銅微粒子、必要に応じ、更に溶媒(分散媒)を、それぞれ所定の割合で混合し、例えば、ミキサー法、超音波法、3本ロール法、2本ロール法、アトライター、ホモジナイザー、バンバリーミキサー、ペイントシェイカー、ニーダー、ボールミル、サンドミル、自公転ミキサーなどを用いて分散処理することにより調整することができる。分散処理の方法としては、ホモジナイザーを用いることが好ましい。本実施の形態では、分散液を、ホモジナイザー等の既知の方法で拡散し分散する際、窒素雰囲気等の不活性雰囲気で行う。
溶媒の一部は、既に作成した酸化銅分散体に含まれているため、この酸化銅分散体に含まれている分で充分な場合はこの工程で添加する必要はなく、粘度の低下が必要な場合は必要に応じこの工程で加えればよい。もしくはこの工程以降で加えてもよい。溶媒は、前述の酸化銅分散体作製時に加えたものと同じものでも、異なるものを加えてもよい。
この他に必要に応じ、有機バインダ、酸化防止剤、還元剤、金属粒子、金属酸化物を加えてもよく、不純物として金属や金属酸化物、金属塩及び金属錯体を含んでもよい。
また、針金状、樹枝状、鱗片状銅粒子はクラック防止効果が大きいため、単独であるいは球状、サイコロ状、多面体などの銅粒子や他の金属と複数組み合わせて加えてもよく、その表面を酸化物や他の導電性のよい金属、例えば銀などで被覆してもよい。
なお銅以外の金属粒子で、形状が針金状、樹枝状、鱗片状の一種もしくは複数を加える場合、同様な形状の銅粒子と同様にクラック防止効果を有するため、同様の形状の銅粒子の一部との置き換え、もしくは同様の形状の銅粒子に追加して使うこともできるが、マイグレーション、粒子強度、抵抗値、銅食われ、金属間化合物の形成、コストなどを考慮する必要がある。銅以外の金属粒子としては、例えば金、銀、錫、亜鉛、ニッケル、白金、ビスマス、インジウム、アンチモンを挙げることができる。
金属酸化物粒子としては、酸化第一銅を酸化銀、酸化第二銅などに置き換え、もしくは追加して使うことができる。しかしながら、金属粒子の場合と同様に、マイグレーション、粒子強度、抵抗値、銅食われ、金属間化合物の形成、コストなどを考慮する必要がある。これら金属粒子および金属酸化物粒子の添加は、導電膜の焼結、抵抗、導体強度、光焼成の際の吸光度などの調整に用いることができる。これらの金属粒子および金属酸化物粒子を加えても、針金状、樹枝状、鱗片状銅粒子の存在により、クラックは充分抑制される。これらの金属粒子および金属酸化物粒子は単独でもしくは二種類以上組み合わせて用いてもよく、形状の制限は無い。例えば銀や酸化銀は、抵抗低下や焼成温度低下などの効果が期待される。
しかしながら、銀は貴金属類でありコストがかさむことや、クラック防止の観点から、銀の添加量は、針金状、樹枝状、鱗片状銅粒子を超えない範囲が好ましい。また、錫は安価であり、また融点が低いため焼結しやすくなるという利点を有する。しかしながら、抵抗が上昇する傾向があり、クラック防止の観点からも、錫の添加量は針金状、樹枝状、鱗片状銅粒子と酸化第一銅を超えない範囲が好ましい。酸化第二銅はフラッシュランプやレーザなどの光や赤外線を用いた方法では光吸収剤、熱線吸収剤として働く。しかしながら、酸化第二銅は酸化第一銅より還元し難いこと、還元時のガス発生が多いことによる基板からの剥離を防ぐ観点から、酸化第二銅の添加量は酸化第一銅より少ない方が好ましい。
本実施の形態においては、銅以外の金属や針金状、樹枝状、鱗片状以外の銅粒子、酸化銅以外の金属酸化物を含んでいても、クラック防止効果、抵抗の経時安定性向上効果は発揮される。しかしながら、銅以外の金属や針金状、樹枝状、鱗片状以外の銅粒子、並びに酸化銅以外の金属酸化物の添加量としては針金状、樹枝状、鱗片状の銅粒子と酸化銅より少ない方が好ましい。また、針金状、樹枝状、鱗片状の銅粒子と酸化銅に対する、銅以外の金属や針金状、樹枝状、鱗片状以外の銅粒子、酸化銅以外の金属酸化物の添加割合は50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下がよい。
<導電性基板>
本実施の形態に係る導電性基板の製造方法は、本実施の形態に係る酸化銅インクを用い、インクジェット装置を用いて基板上にパターンを形成し、パターンを焼成処理して基板上に導電性パターンを形成することを特徴とする。
[導電性基板の構成]
図2に示すように、導電性基板10は、基板11と、基板11が構成する面上に、断面視において、還元銅を含む導電性パターン13と、を具備している。導電性パターン13には、リン元素が含まれている。導電性パターン13は、酸化銅インクの焼成の工程で、酸化銅インクに含まれる有機物が分解されるため、導電性パターン13において、ハンダのぬれ性が高くなる。よって、導電性パターン13の表面には、ハンダ層が容易に形成できる。
[基板へのインクジェット用酸化銅インクの塗布方法]
酸化銅インクを用いた塗布方法について説明する。本実施の形態のインクジェット用酸化銅インクは文字通り、インクジェットを用いた印刷において顕著な効果を示す。ここでインクジェット印刷の印刷方式について説明する。
本実施の形態においてインクジェットのインクとは、インクを微滴化し、被印字媒体に対し直接に吹き付ける方式を用いる印刷様式(インクジェット印刷機)に用いるインクの事である。
上記印刷方式から、用いるインクには、ヘッドから詰まることなく液を吐出させるために、酸化銅の粒子径、分散安定性を付与するための分散剤、溶媒の沸点、といった物性を適正化することが重要であるところ、本実施の形態のインクは上記の要件を満足することにより、顕著な効果を有する。また、さらに還元剤を加える事により、還元後の配線の抵抗が低いものができる為好ましい。
[基板]
本実施の形態で用いられる基板は、特に限定されるものではなく、無機材料又は有機材料で構成される。
無機材料としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラスなどのガラスや、アルミナなどのセラミック材料が挙げられる。
有機材料としては、高分子材料、紙などが挙げられる。高分子材料としては樹脂フィルムを用いることができ、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール(POM)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、ポリシロキサン、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、シクロオレフィンポリマー(COP)、アクリロ二トリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)、ナイロン樹脂(PA6、PA66)ポリブチルテレフタレート樹脂(PBT)ポリエーテルスルホン樹脂(PESU)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、及びシリコーン樹脂などを挙げることができる。特に、PI、PET及びPENは、フレキシブル性、コストの観点から好ましい。基板の厚さは、例えば1μm〜10mmとすることができ、好ましくは25μm〜250μmである。基板の厚さが250μm以下であれば、作製される電子デバイスを、軽量化、省スペース化、及フレキシブル化できるため好ましい。
紙としては、一般的なパルプを原料とした上質紙、中質紙、コート紙、ボール紙、段ボールなどの洋紙やセルロースナノファイバーを原料としたものが挙げられる。紙の場合は高分子材料を溶解したもの、もしくはゾルゲル材料などを含浸硬化させたものを使うことができる。また、これらの材料はラミネートするなど貼り合わせて使用してもよい。例えば、紙フェノール基材、紙エポキシ基材、ガラスコンポジット基材、ガラスエポキシ基材などの複合基材、テフロン(登録商標)基材、アルミナ基材、低温低湿同時焼成セラミックス(LTCC)、シリコンウェハなどが挙げられる。なお、本実施形態における基板は、配線パターンを形成するための回路基板シートの基板材料、または配線付き筐体の筐体材料を意味する。
尚、インクジェット印刷の印刷方式は、インクを直接吐出する方式であるため印刷媒体が平坦であることは求められない。すなわち、印刷媒体は、湾曲していたり、傾斜がついていたり、傾斜角が異なる複数の面を組み合わせたものであったり、平坦面と湾曲面との組み合わせであったり等、印刷媒体の面形状を限定するものではない。
[酸化銅を含む塗膜]
塗膜は、酸化銅及び分散剤とともに、還元剤として例えば、ヒドラジンを含む。ヒドラジンを用いることで、焼成において、酸化銅の還元に寄与し、より抵抗の低い銅膜を作製することができる。
<塗膜を含む製品>
本実施形態では、塗膜を含む製品は、酸化銅と、分散剤と、還元剤とを含み、還元剤の含有量が下記式(1)の範囲であり、分散剤の含有量が下記式(2)の範囲である。
0.0001≦(還元剤質量/酸化銅質量)≦0.10 (1)
0.0050≦(分散剤質量/酸化銅質量)≦0.30 (2)
この構成により、酸化銅に対する還元剤及び分散剤の質量の範囲を限定することで、インクジェット用酸化銅インクの分散安定性が向上するとともに、焼成により得られる導電膜の抵抗が効果的に低下する。また、プラズマや光、熱を用いて焼成処理を行うことができるため、酸化銅中の有機物が分解され、酸化銅の焼成が促進され、抵抗の低い導電膜を形成できる。なお、本実施形態では、塗膜には、更に、インクジェット調整剤を含むことができる。インクジェット調整剤の好ましい材質や数平均分子量等については、上記で記載した通りである。
ここでの塗膜を含む製品は、例えば、後述する図3の(g)の状態を指す。
本実施形態では、塗膜の酸化銅が酸化第一銅であることが好ましい。この構成により、酸化銅の還元が容易であり、還元により生じた銅を容易に焼結できるため、導電膜を容易に形成できる。
本実施形態では、塗膜の還元剤が、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ナトリウム、カーボン、ヨウ化カリウム、シュウ酸、硫化鉄(II)、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、塩化スズ(II)、水素化ジイソブチルアルミニウム、蟻酸、水素化ホウ酸ナトリウム、亜硫酸塩の群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。この構成により、塗膜中の酸化銅の分散安定性が向上するとともに、導電膜の抵抗が低下する。
本実施の形態では、塗膜の還元剤が、ヒドラジン、或いは、ヒドラジン水和物、であることが好ましい。この構成により、塗膜中の酸化銅の分散安定性がより向上するとともに、焼成において酸化銅の還元に寄与し、導電膜の抵抗がより低下する。
塗膜中での酸化銅を含む微粒子の平均二次粒子径は、特に制限されないが、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。微粒子の平均二次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上である。ここで、平均二次粒子径とは、一次粒子が複数個集まって形成される凝集体(二次粒子)の平均粒子径のことである。
この平均二次粒子径が500nm以下であると、基板上に微細パターンを形成し易い傾向があるので好ましい。平均二次粒子径が5nm以上であれば、酸化銅インクの長期保管安定性が向上するため好ましい。微粒子の平均二次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定することができる。
二次粒子を構成する一次粒子の平均一次粒子径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。平均一次粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは5nm以上である。平均一次粒子径が100nm以下の場合、後述する焼成の温度を低くすることができる傾向にある。このような低温焼成が可能になる理由は、粒子の粒子径が小さいほど、その表面エネルギーが大きくなって、融点が低下するためと考えられる。また、平均一次粒子径が1nm以上であれば、良好な分散性を得ることができるため好ましい。基板に配線を形成する場合、基板との密着性や低抵抗化の観点で、2nm以上、100nm以下が好ましく、5nm以上、50nm以下がより好ましい。この傾向は基板が樹脂の際に顕著である。平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定することができる。
本実施の形態の塗膜に含まれる分散剤の質量比率(分散剤質量/酸化銅質量)は、0.0050以上0.30以下であり、好ましくは0.050以上0.25以下であり、より好ましくは0.10以上0.23以下である。分散剤の量は分散安定性に影響し、量が少ないと凝集しやすく、多いと分散安定性が向上する傾向がある。但し、本実施の形態の塗膜における分散剤の含有率を35質量%以下にすると、焼成して得られる導電膜において分散剤由来の残渣の影響を抑え、導電性を向上できる。
分散剤の酸価(mgKOH/g)は20以上、130以下が好ましく、30以上、100以下がより好ましい。この範囲に入ると分散安定性に優れるため好ましい。特に平均粒子径が小さい酸化銅の場合に有効である。分散剤としては、具体的には、ビックケミ―社製「DISPERBYK―102」(酸価101)、「DISPERBYK−140」(酸価73)、「DISPERBYK−142」(酸価46)、「DISPERBYK−145」(酸価76)、「DISPERBYK−118」(酸価36)、「DISPERBYK−180(酸価94)などが挙げられる。
次に、塗膜中の還元剤について説明する。還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ナトリウム、カーボン、ヨウ化カリウム、シュウ酸、硫化鉄(II)、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、塩化スズ(II)、水素化ジイソブチルアルミニウム、蟻酸、水素化ホウ酸ナトリウム、亜硫酸塩などが挙げられる。焼成において、酸化銅、特に酸化第一銅の還元に寄与し、より抵抗の低い銅膜を作製することができる観点から、還元剤は、ヒドラジン、或いは、ヒドラジン水和物が最も好ましい。また、ヒドラジン、或いは、ヒドラジン水和物を用いることにより、酸化銅インクの分散安定性を維持でき、銅膜の抵抗を低くできる。
本実施の形態の塗膜に含まれる還元剤の質量比率(還元剤質量/酸化銅質量)は、0.0001以上0.10以下が好ましく、より好ましくは0.0001以上0.05以下、さらに好ましくは0.0001以上0.03以下である。還元剤の質量比率は、0.0001以上だと分散安定性が向上し、かつ銅膜の抵抗が低下する。また、0.10以下だと塗膜の長期安定性が向上する。塗膜における還元剤の必要量は酸化銅の量に比例し、要求される還元性を考慮し調整する。
本実施の形態の塗膜は、フィルム基板、ガラス基板、成形加工物など様々な材料、加工品に作製できる。本膜に別な樹脂層を重ねてもよい。
[導電膜形成方法]
本実施の形態の導電膜の製造方法は、塗膜における酸化銅を還元し銅を生成させ、これ自体の融着、及びインクジェット用酸化銅インクに加えられている銅粒子との融着、一体化、により導電膜(銅膜)を形成するものである。この工程を焼成と呼ぶ。従って、酸化銅の還元と融着、銅粒子との一体化による導電膜の形成ができる方法であれば特に制限はない。本実施の形態の導電膜の製造方法における焼成は、例えば、焼成炉で行ってもよいし、プラズマ、赤外線、フラッシュランプ、レーザなどを単独もしくは組み合わせて用いて行ってもよい。
図3を参照して、本実施の形態に係る導電性基板の製造方法について、より具体的に説明する。図3中(a)において、例えば、水、プロピレングリコール(PG)の混合溶媒中に酢酸銅を溶かし、還元剤としてヒドラジンを加えて攪拌する。還元剤の含有量が下記式(1)の範囲となるように調整を行う。
0.0001≦(還元剤質量/酸化銅質量)≦0.10 (1)
次に、図3中(b)、(c)において、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。次に、図3中(d)において、得られた沈殿物に、分散剤及び溶媒を加え、分散する。このとき、沸点が100℃以上の溶媒を、少なくとも2種類含有する。また、分散剤の含有量が下記式(2)の範囲となるように調整を行う。
0.0050≦(分散剤質量/酸化銅質量)≦0.30 (2)
上記により、図3中(e)に示すように、酸化銅を含有する酸化銅インク(分散体)を得る。
図3中の(f)において、例えばPET製の基板上に、酸化銅インクを、インクジェット装置を用いて所望のパターンで印刷し、酸化銅及びリン含有有機物を含む塗膜(図3(g)中、「Cu2O含有塗膜」と記載する)を形成する。
次に、図3中(h)において、基板上のパターンに対して、熱照射、光照射、或いは、プラズマ照射を行い、パターンを焼成し、酸化銅を銅(図3(i)中、「Cu」と記載する)に還元する。この結果、図3中(i)において、基板上に、銅及びリン元素を含む導電性パターン(Cu層)が形成された導電性基板が得られる。或いは、塗膜を含む製品に対して、上記した焼成処理を行うことで、得られた導電性パターンを有する製品が得られる。
このように、焼成をプラズマ照射、熱照射、光照射で行うことにより、酸化銅インクに含まれる有機物が効果的に分解されるため、得られた導電性パターンにおいて、ハンダのぬれ性が効果的に高くなる。
図3に示すように、導電性パターンを形成することにより、線幅が0.1μm以上、1cm以下の配線を形成することができ、銅配線またはアンテナとして利用できる。酸化銅粒子のナノ粒子の特長をいかし、銅配線の線幅は、0.1μm以上、500μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上、100μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以上、5μm以下がさらにより好ましい。線幅が5μm以下だと、配線の視認ができなくなるため、意匠性の観点から好ましい。
[導電膜へのハンダ層の形成]
本実施の形態に係るインクジェット用酸化銅インクを用いて作製された導電性基板は、ハンダ付け性を悪化させる分散剤、溶媒が、焼成処理の工程で分解しているため、導電性パターンに被接合体(例えば、電子部品等)をハンダ付けするとき、溶融ハンダがのりやすいという利点がある。
本実施の形態において、電子部品とは、半導体、集積回路、ダイオード、液晶ディスプレイなどの能動部品、抵抗、コンデンサ等の受動部品、及び、コネクタ、スイッチ、電線、ヒートシンク、アンテナなどの機構部品のうち、少なくとも1種である。
また、導電性パターンへのハンダ層の形成は、リフロー法で行われることが好ましい。リフロー法では、まず、ハンダ付けは、図3(i)で形成された導電性パターンの一部、例えばランドの表面にソルダペースト(クリームハンダ)を塗布する。ソルダペーストの塗布は、例えば、メタルマスク及びメタルスキージを用いたコンタクト印刷により行われる。これにより、導電性パターンの表面の一部にハンダ層が形成される。すなわち、図3(i)の工程の後、導電性パターンの表面の一部にハンダ層が形成される導電性基板が得られる。ハンダ層が形成される導電性パターンの表面の一部は、特に面積は限定されず、導電性パターンと電子部品とが接合可能な面積であればよい。
[電子部品の接合]
次に、塗布されたソルダペースト(ハンダ層)の一部に、電子部品の被接合部を接触させた状態になるように電子部品を導電性基板上に載置する。その後、電子部品が載置された導電性基板を、リフロー炉に通して加熱して、導電性パターン領域の一部(ランド等)及び電子部品の被接合部をハンダ付けする。図4は、本実施の形態に係るハンダ層が形成された導電性基板の上面図である。
図4に示すように、フレキシブル性を有する基板11上には、酸化銅インクが焼成されて形成された導電性パターンBが形成されている。導電性パターンBの表面には、ハンダ層20が形成されている。ハンダ層20により、導電性パターンBと、導線90とが適切にハンダ付けされており、導線90を介して導電性パターンBと電子部品91が適切に接続されている。
本実施の形態に係る導電性基板及び製品の製造方法によれば、酸化銅インクを焼成して導電性パターンを形成するため、酸化銅インクに含まれる有機物が分解される、これにより、得られた導電性パターンにおいて、ハンダのぬれ性が高くなり、導電性パターンの表面にハンダ層を容易に形成できる。このため、電子部品のハンダ付が可能となる。この結果、導電性パターンと、電子部品の被接合部とを接合するハンダ層の不良の発生を防ぎ、高い歩留まりで、電子部品がハンダ付けされる導電性基板を製造できる。
焼成処理の方法には、本発明の効果を発揮する導電膜を形成可能であれば、特に限定されないが、具体例としては、焼却炉、プラズマ焼成法、光焼成法などを用いる方法が挙げられる。
[焼成炉]
酸素の影響を受けやすい焼成炉などで焼成を行う方法では、非酸化性雰囲気において酸化銅インクの塗膜を処理することが好ましい。また酸化銅インク中に含まれる有機成分だけでは酸化銅が還元されにくい場合、還元性雰囲気で焼成することが好ましい。非酸化性雰囲気とは、酸素などの酸化性ガスを含まない雰囲気であり、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンなどの不活性ガスで満たされた雰囲気である。また還元性雰囲気とは、水素、一酸化炭素などの還元性ガスが存在する雰囲気を指すが、不活性ガスと混合して使用してよい。これらのガスを焼成炉中に充填し密閉系でもしくはガスを連続的に流しながら酸化銅インクの塗膜を焼成してもよい。また、焼成は、加圧雰囲気で行ってもよいし減圧雰囲気で行ってもよい。
[プラズマ焼成法]
本実施形態のプラズマ法は焼成炉を用いる方法と比較し、より低い温度での処理が可能であり、耐熱性の低い樹脂フィルムを基材とする場合の焼成法として、よりよい方法の一つである。またプラズマにより、パターン表面の有機物質除去や酸化膜の除去が可能であるため、良好なハンダ付け性を確保できるという利点もある。具体的には、還元性ガスもしくは還元性ガスと不活性ガスとの混合ガスをチャンバ内に流し、マイクロ波によりプラズマを発生させ、これにより生成する活性種を、還元または焼結に必要な加熱源として、さらには分散剤などに含まれる有機物の分解に利用し導電膜を得る方法である。
特に金属部分では活性種の失活が多く、金属部分が選択的に加熱され、基板自体の温度は上がりにくいため、基板として樹脂フィルムにも適用可能である。酸化銅インクは金属として銅を含み、酸化銅は焼成が進むにつれ銅に変化するためパターン部分のみの加熱が促進される。また導電性パターン中に分散剤やバインダ成分の有機物が残ると焼結の妨げとなり、抵抗が上がる傾向にあるが、プラズマ法は導体パターン中の有機物除去効果が大きい。プラズマ法により、塗膜の表面の有機物及び酸化膜の除去が可能であるため、導電性パターンのハンダ付け性を効果的に改善できるという利点もある。
還元性ガス成分としては水素など、不活性ガス成分としては窒素、ヘリウム、アルゴンなどを用いることができる。これらは単独で、もしくは還元ガス成分と不活性ガス成分を任意の割合で混合して用いてもよい。また不活性ガス成分を二種以上混合し用いてもよい。
プラズマ焼成法は、マイクロ波投入パワー、導入ガス流量、チャンバ内圧、プラズマ発生源から処理サンプルまでの距離、処理サンプル温度、処理時間での調整が可能であり、これらを調整することで処理の強度を変えることができる。従って、上記調整項目の最適化を図れば、無機材料の基板はもちろんのこと、有機材料の熱硬化性樹脂フィルム、紙、耐熱性の低い熱可塑性樹脂フィルム、例えばPET、PENを基板として利用し、抵抗の低い導電膜を得ることが可能となる。但し、最適条件は装置構造やサンプル種類により異なるため、状況に合わせ調整する。
[光焼成法]
本実施形態の光焼成法は、光源としてキセノンなどの放電管を用いたフラッシュ光方式やレーザ光方式が適用可能である。これらの方法は強度の大きい光を短時間露光し、基板上に塗布した酸化銅インクを短時間で高温に上昇させ焼成する方法で、酸化銅の還元、銅粒子の焼結、これらの一体化、及び有機成分の分解を行い、導電膜を形成する方法である。焼成時間がごく短時間であるため基板へのダメージが少ない方法で、耐熱性の低い樹脂フィルム基板への適用が可能である。
フラッシュ光方式とは、キセノン放電管を用い、コンデンサーに蓄えられた電荷を瞬時に放電する方式で、大光量のパルス光を発生させ、基板上に形成された酸化銅インクに照射することにより酸化銅を瞬時に高温に加熱し、導電膜に変化させる方法である。露光量は、光強度、発光時間、光照射間隔、回数で調整可能であり基板の光透過性が大きければ、耐熱性の低い樹脂基板、例えばPET、PENや紙などへも、酸化銅インクによる導電性パターンの形成が可能となる。
発光光源は異なるが、レーザ光源を用いても同様な効果が得られる。レーザの場合は、フラッシュ光方式の調整項目に加え、波長選択の自由度があり、パターンを形成したインクジェット用酸化銅インクの光吸収波長や基板の吸収波長を考慮し選択することも可能である。またビームスキャンによる露光が可能であり、基板全面への露光、もしくは部分露光の選択など、露光範囲の調整が容易であるといった特徴がある。レーザの種類としてはYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、YVO(イットリウムバナデイト)、Yb(イッテルビウム)、半導体レーザ(GaAs、GaAlAs、GaInAs)、炭酸ガスなどを用いることができ、基本波だけでなく必要に応じ高調波を取り出して使用してもよい。
特に、レーザ光を用いる場合、その発光波長は、300nm以上1500nm以下が好ましい。例えば355nm、405nm、445nm、450nm、532nm、1056nmなどが好ましい。基板や筐体が樹脂の場合、特に好ましくは355nm、405nm、445nm、450nmのレーザ波長である。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
[ヒドラジン定量方法]
標準添加法によりヒドラジンの定量を行った。
サンプル(銅ナノインク)50μLに、ヒドラジン33μg、サロゲート物質(ヒドラジン15N2H4)33μg、ベンズアルデヒド1%アセトニトリル溶液1mlを加えた。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行った。
同じく、サンプル(銅ナノインク)50μLに、ヒドラジン66μg、サロゲート物質(ヒドラジン15N2H4)33μg、ベンズアルデヒド1%アセトニトリル溶液1mlを加えた。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行った。
同じく、サンプル(銅ナノインク)50μLに、ヒドラジン133μg、サロゲート物質(ヒドラジン15N2H4)33μg、ベンズアルデヒド1%アセトニトリル溶液1mlを加えた。最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行った。
最後に、サンプル(銅ナノインク)50μLに、ヒドラジンを加えず、サロゲート物質(ヒドラジン15N2H4)33μg、ベンズアルデヒド1%アセトニトリル溶液1mlを加え、最後にリン酸20μLを加え、4時間後、GC/MS測定を行った。
上記4点のGC/MS測定からm/z=207のクロマトグラムラムよりヒドラジンのピーク面積値を得た。次にm/z=209のマスクロマトグラムよりサロゲートのピーク面積値を得た。x軸に、添加したヒドラジンの重量/添加したサロゲート物質の重量、y軸に、ヒドラジンのピーク面積値/サロゲート物質のピーク面積値をとり、標準添加法による検量線を得た。
検量線から得られたY切片の値を、添加したヒドラジンの重量/添加したサロゲート物質の重量で除しヒドラジンの重量を得た。
[粒子径測定]
酸化銅インクの平均粒子径は大塚電子製FPAR−1000を用いてキュムラント法によって測定した。
[分散安定性]
酸化銅インクの分散安定性は、調整直後の粒径が−17℃で酸化銅インクを保存後に2倍になるまでの期間が、A:3か月以上、B:1か月以上3か月未満、C:1か月未満として評価した。
[インクジェット印刷性]
酸化銅インクのインクジェット印刷性は、下記のように評価した。
S:ラインに途切れやかすれが認められず、1時間後の再印刷時もラインに途切れやかすれが認められない
A:ラインに途切れやかすれが認められない
B:ラインに途切れやかすれが発生
C:ラインに途切れやかすれが発生し、なおかつ液滴が線ではないところに着弾して線をかくことができない
(実施例1)
水7560g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)806gを溶かし、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)235gを加えて攪拌した。その後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物390gに、分散剤として、DISPERBYK−145(ビックケミー製)(以下、BYK145と略する)54.8g、及び、ジエチレングリコール(和光純薬製)490gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散した。
次いで、UF膜モジュールによる濃縮とジエチレングリコールによる希釈を繰り返し、平均二次粒径20nmの酸化第一銅を含有する酸化第一銅分散体を得た。得られた酸化第一銅分散体に、γブチロラクトン(和光純薬製)を追加し、下記の組成割合となるように調整し、インクジェット用酸化銅インク(1)を得た。
Cu2O/DEG/BYK145/γブチロラクトン/ヒドラジン=20/36/4/39.7/0.3(単位は質量%)。
酸化銅インクは良好に分散されていた。100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は21nmであった。ヒドラジン量は2700ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例1において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.2であり、分散安定性はAだった。
実施例1における酸化銅インクに含有される溶媒は、ジエチレングリコールと、γブチロラクトンであり、ジエチレングリコールの沸点は約245℃、γブチロラクトンの沸点は約200℃であった。
得られた酸化銅インクをDMC−11601カートリッジ(富士フイルム製)に充てんし、Dimatrixマテリアルプリンター(富士フイルム製)を用い、ライン:20μm、スペース:20μmの条件にて、インクジェット印刷を行った。インクジェット印刷性はBだった。
[抵抗測定]
プラズマ焼成装置で1.5kw、420秒間、インクジェットで得たパターンを、加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。導電膜の体積抵抗率は、三菱化学製の低抵抗率計ロレスターGPを用いて測定した。その結果、20μΩcmであった。
(実施例2)
水7560g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)806gを溶かし、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)235gを加えて攪拌した。その後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物390gに、分散剤として、BYK145を82.2g、及び、ジエチレングリコール(和光純薬製)490gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散した。
次いで、UF膜モジュールによる濃縮とジエチレングリコールによる希釈を繰り返し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)を得た。得られた酸化第一銅分散体に、γブチロラクトン(和光純薬製)を追加し、下記の組成割合となるように調整し、インクジェット用酸化銅インク(2)を得た。
Cu2O/DEG/BYK145/γブチロラクトン/ヒドラジン=20/36/6/37.7/0.3(単位は質量%)。
インクジェット用酸化銅インク(2)は良好に分散されていた。100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は32nmであった。ヒドラジン量は2800ppmであった。また、分散剤含有量は6gであった。
実施例2において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.3であり、分散安定性はBだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(2)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、25μΩcmであった。
(実施例3)
水7560g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)806gを溶かし、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)235gを加えて攪拌した。その後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物390gに、分散剤として、BYK145を68.5g、及び、ジエチレングリコール(和光純薬製)490gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散した。
次いで、UF膜モジュールによる濃縮とジエチレングリコールによる希釈を繰り返し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)を得た。得られた酸化第一銅分散体に、γブチロラクトン(和光純薬製)を追加し、下記の組成割合となるように調整し、インクジェット用酸化銅インク(3)を得た。
Cu2O/DEG/BYK145/γブチロラクトン/ヒドラジン=20/36/5/38.7/0.3(単位は質量%)。
インクジェット用酸化銅インク(3)は良好に分散されていた。100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は25nmであった。ヒドラジン量は2700ppmであった。また、分散剤含有量は5gであった。
実施例3において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.25であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(3)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、21μΩcmであった。
(実施例4)
水7560g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)806gを溶かし、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)235gを加えて攪拌した。その後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物390gに、分散剤として、BYK145を1.37g、及び、ジエチレングリコール(和光純薬製)490gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散した。
次いで、UF膜モジュールによる濃縮とジエチレングリコールによる希釈を繰り返し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)を得た。得られた酸化第一銅分散体に、γブチロラクトン(和光純薬製)を追加し、下記の組成割合となるように調整し、インクジェット用酸化銅インク(4)を得た。
Cu2O/DEG/BYK145/γブチロラクトン/ヒドラジン=20/36/0.1/43.6/0.3(単位は質量%)。
インクジェット用酸化銅インク(4)は良好に分散されていた。100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は32nmであった。ヒドラジン量は2800ppmであった。また、分散剤含有量は0.1gであった。
実施例4において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.005であり、分散安定性はBだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(4)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、19μΩcmであった。
(実施例5)
水7560g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)806gを溶かし、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)235gを加えて攪拌した。その後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物390gに、分散剤として、BYK145を13.7g、及び、ジエチレングリコール(和光純薬製)490gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散した。
次いで、UF膜モジュールによる濃縮とジエチレングリコールによる希釈を繰り返し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)を得た。得られた酸化第一銅分散体に、γブチロラクトン(和光純薬製)を追加し、下記の組成割合となるように調整し、インクジェット用酸化銅インク(5)を得た。
Cu2O/DEG/BYK145/γブチロラクトン/ヒドラジン=20/36/1/42.7/0.3(単位は質量%)。
インクジェット用酸化銅インク(5)は良好に分散されていた。100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は26nmであった。ヒドラジン量は2800ppmであった。また、分散剤含有量は1gであった。
実施例5において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.05であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(5)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、19μΩcmであった。
(実施例6)
水7560g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)806gを溶かし、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)235gを加えて攪拌した。その後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物390gに、分散剤として、BYK145を27.4g、及び、ジエチレングリコール(和光純薬製)490gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散した。
次いで、UF膜モジュールによる濃縮とジエチレングリコールによる希釈を繰り返し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)を得た。得られた酸化第一銅分散体に、γブチロラクトン(和光純薬製)を追加し、下記の組成割合となるように調整し、インクジェット用酸化銅インク(6)を得た。
Cu2O/DEG/BYK145/γブチロラクトン/ヒドラジン=20/36/2/41.7/0.3(単位は質量%)。
インクジェット用酸化銅インク(6)は良好に分散されていた。100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は22nmであった。ヒドラジン量は2800ppmであった。また、分散剤含有量は2gであった。
実施例6において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.10であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(6)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、18μΩcmであった。
(実施例7)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)98.5gにヒドラジン1.5gを入れ、インクジェット用酸化銅インク(7)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(7)は良好に分散されていた。100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は30nmであった。ヒドラジン量は18000ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例7において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.090であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(7)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、20μΩcmであった。
(実施例8)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)99.2gにヒドラジン0.80gを入れ、インクジェット用酸化銅インク(8)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(8)は良好に分散されていた。100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は27nmであった。ヒドラジン量は11000ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例8において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.055であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(8)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、21μΩcmであった。
(実施例9)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)99.7gにヒドラジン0.30gを入れ、インクジェット用酸化銅インク(9)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(9)は良好に分散されていた。100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は22nmであった。ヒドラジン量は5900ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例9において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.030であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(9)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、18μΩcmであった。
(実施例10)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてフッ素含有有機化合物であるメガファック(登録商標)F−477(DIC株式会社製、数平均分子量6700)1.0gを入れ、インクジェット用酸化銅インク(10)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(10)は良好に分散されていた。101g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は22nmであった。ヒドラジン量は2800ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例10において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.010であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(10)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、21μΩcmであった。
(実施例11)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてメガファックF−477を66.6g入れ、インクジェット用酸化銅インク(11)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(11)は良好に分散されていた。167g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は24nmであった。ヒドラジン量は1700ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例11において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.40であり、分散安定性はBだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(11)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、35μΩcmであった。
(実施例12)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてメガファックF−477を2.0g入れ、インクジェット用酸化銅インク(12)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(12)は良好に分散されていた。102g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は24nmであった。ヒドラジン量は2700ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例12において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.020であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(12)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はAだった。導電膜の体積抵抗率は、22μΩcmであった。
(実施例13)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてメガファックF−477を42g入れ、インクジェット用酸化銅インク(13)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(13)は良好に分散されていた。142g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は28nmであった。ヒドラジン量は1900ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例13において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.30であり、分散安定性はBだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(13)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はAだった。導電膜の体積抵抗率は、30μΩcmであった。
(実施例14)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてメガファックF−477を5g入れ、インクジェット用酸化銅インク(14)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(14)は良好に分散されていた。105g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は22nmであった。ヒドラジン量は2600ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例14において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.048であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(14)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はSだった。導電膜の体積抵抗率は、24μΩcmであった。
(実施例15)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてメガファックF−477を25gを入れ、インクジェット用酸化銅インク(15)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(15)は良好に分散されていた。125g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は24nmであった。ヒドラジン量は2200ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例15において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.20であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(15)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はSだった。導電膜の体積抵抗率は、28μΩcmであった。
(実施例16)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてサーフロンS611(セイミケミカル製、数平均分子量11000)1.0gを入れ、インクジェット用酸化銅インク(16)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(16)は良好に分散されていた。101g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は22nmであった。ヒドラジン量は2800ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例16において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.010であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(16)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、22μΩcmであった。
(実施例17)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてサーフロンS611を66.6g入れ、インクジェット用酸化銅インク(17)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(17)は良好に分散されていた。167g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は24nmであった。ヒドラジン量は1800ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例17において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.40であり、分散安定性はBだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(17)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、38μΩcmであった。
(実施例18)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてPEG400(関東化学製、数平均分子量400)1.0gを入れ、インクジェット用酸化銅インク(18)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(18)は良好に分散されていた。101g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は24nmであった。ヒドラジン量は2800ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例18において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.010であり、分散安定性はAだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(18)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、25μΩcmであった。
(実施例19)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてPEG400を66.6g入れ、インクジェット用酸化銅インク(19)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(19)は良好に分散されていた。167g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は28nmであった。ヒドラジン量は1800ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例19において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.40であり、分散安定性はBだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(19)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、30μΩcmであった。
(実施例20)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)100gにインクジェット調整剤としてメガファックF−477を100g入れ、インクジェット用酸化銅インク(20)を得た。
インクジェット用酸化銅インク(20)は分散されていた。200g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は50nmであった。ヒドラジン量は1400ppmであった。また、分散剤含有量は4gであった。
実施例20において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、インクジェット調整剤質量/インクジェット用酸化銅インク質量は、0.50であり、分散安定性はCだった。
得られたインクジェット用酸化銅インク(19)を用いて実施例1と同じ条件でインクジェット印刷を行い、実施例1と同じ条件で加熱焼成して還元し、銅膜を作製した。インクジェット印刷性はBだった。導電膜の体積抵抗率は、70μΩcmであった。
(比較例1)
水7560g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)806gを溶かし、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)235gを加えて攪拌した。その後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物390gに、BYK145を54.8g、及びエタノール(関東化学株式会社製)920gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し酸化第一銅分散液1365gを得た。
比較例1においては、酸化第一銅分散液中、エタノール(沸点は約79℃)が溶媒として含まれている。
比較例1では、100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、粒子径は21nmであった。ヒドラジン量は2900ppmであった。また、比較例1では、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.015であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.2であり、分散安定性はAだった。
得られた酸化銅インクDMC−11601カートリッジ(富士フイルム製)に充てんし、Dimatrixマテリアルプリンター(富士フイルム製)を用い、ライン:20μm、スペース:20μmの条件にて、インクジェット印刷を行ったが、ラインに途切れやかすれが発生したり、液滴が線ではない所に着弾してしまい、線をかくことができず、インクジェット印刷性はCだった。
(比較例2)
水7560g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)806gを溶かし、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)235gを加えて攪拌した。その後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。得られた沈殿物390gに、DisperBYK−170(ビックケミー製)13.7g(分散剤含有量4g)、及びエタノール(関東化学株式会社製)961gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散し酸化第一銅分散液1365gを得た。
比較例2においては、酸化第一銅分散液中、エタノール(沸点は約79℃)が溶媒として含まれている。
100g中の酸化第一銅の含有量は20gであった。溶解性が悪く酸化銅粒子が凝集し、インク化が出来なかった。ヒドラジン量は2900ppmであった。分散剤の酸価は、11であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.015であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.2であり、分散安定性はCだった。また、インク化ができなかったため、インクジェット印刷ができなかった(インクジェット印刷性はC)。
(比較例3)
水7560g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)806gを溶かし、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)235gを加えて攪拌した。その後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物390gに、分散剤として、BYK145を110g、及び、ジエチレングリコール(和光純薬製)490gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散した。
次いで、UF膜モジュールによる濃縮とジエチレングリコールによる希釈を繰り返し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)を得た。得られた酸化第一銅分散体に、γブチロラクトン(和光純薬製)を追加し、下記の組成割合となるように調整したが、酸化銅粒子が凝集し、インク化ができなかった。
Cu2O/DEG/BYK145/γブチロラクトン/ヒドラジン=20/36/8/35.7/0.3(単位は質量%)。
100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、ヒドラジン量は2800ppmであった。また、分散剤含有量は8gであった。
比較例3において、分散剤の酸価は、76であった。また、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.40であり、分散安定性はCだった。また、インク化ができなかったため、インクジェット印刷ができなかった(インクジェット印刷性はC)。
(比較例4)
水7560g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)3494gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)806gを溶かし、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)235gを加えて攪拌した。その後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物390gに、ジエチレングリコール(和光純薬製)490gを加え、窒素雰囲気下でホモジナイザーを用いて分散した。
次いで、UF膜モジュールによる濃縮とジエチレングリコールによる希釈を繰り返し、酸化第一銅分散体(酸化銅インク)を得た。得られた酸化第一銅分散体に、γブチロラクトン(和光純薬製)を追加し、下記の組成割合となるように調整したが、酸化銅粒子が凝集し、インク化ができなかった。
Cu2O/DEG/BYK145/γブチロラクトン/ヒドラジン=20/36/0/43.7/0.3(単位は質量%)。
100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、ヒドラジン量は2800ppmであった。比較例4において、還元剤質量/酸化銅質量は、0.014であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.0であり、分散安定性はCだった。また、インク化ができなかったため、インクジェット印刷ができなかった(インクジェット印刷性はC)。
(比較例5)
実施例1で得られたインクジェット用酸化銅インク(1)97gにヒドラジン3.0gを入れた。
酸化銅粒子が凝集し、インク化ができなかった。
Cu2O/DEG/BYK145/γブチロラクトン/ヒドラジン=20/36/4/36/4(単位は質量%)。
100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、ヒドラジン量は33000ppmであった。比較例5において、還元剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、分散安定性はCだった。また、インク化ができなかったため、インクジェット印刷ができなかった(インクジェット印刷性はC)。
(比較例6)
ジエチレングリコール36gとγブチロラクトン(和光純薬製)40gに、酸化第一銅(EMジャパン製MP−CU2O−25)20g、DisperBYK−145(ビッグケミー製)4.0gを加え、窒素雰囲気下にてホモジナイザーで分散したが、酸化銅粒子が凝集し、インク化ができなかった。
Cu2O/DEG/BYK145/γブチロラクトン/ヒドラジン=20/36/4/40/0(単位は質量%)。
100g中の酸化第一銅の含有量は20gであり、ヒドラジン量は0.0ppmであった。酸化第二銅の粒子径は、190nmであった。比較例6において、還元剤質量/酸化銅質量は、0.0であり、分散剤質量/酸化銅質量は、0.20であり、分散安定性はCだった。また、インク化ができなかったため、インクジェット印刷ができなかった(インクジェット印刷性はC)。
実施例1〜実施例20及び比較例1〜比較例6の実験結果を以下の表1に示す。なお、表1に示す「ヒドラジン」の量は、小数第2位で四捨五入した値である。
実施例1〜実施例20では、(還元剤質量/酸化銅質量)の値は0.0001以上0.10以下であり、(分散剤質量/酸化銅質量)の値は0.0050以上0.30以下であり、沸点が100℃以上の溶媒を、少なくとも2種類含有した。これにより、実施例1〜実施例20では、インクジェット法で印刷が出来、さらに還元剤としてヒドラジンを用いることで、酸化銅の還元が促進されたと考えられ、抵抗の低い銅膜を作製することが出来た。
また、実施例1〜実施例20では、上記に加え、分散剤の酸価は20以上130以下であり、これにより、分散安定性を向上させることができ、高精細なインクジェット印刷が可能となり、配線の低抵抗化を向上させることが出来る。
これに対し、エタノールを用いた比較例1〜比較例6では、分散液においてインクジェット法による銅配線作製が困難であった。また、エタノールを用いるとともに、分散剤の酸価が20より小さい比較例2では、酸化銅インクが凝集していたため、インクジェット印刷及び抵抗の測定ができなかった。