バックドア開閉用のキックセンサをリアバンパカバーの内側に設ける場合、車両走行中に土や雨、雪等の異物が入り込むと、誤動作が生じ得る。そこで、キックセンサの配置領域に異物が入り込むことを抑制して、誤動作を防止できる車両下部構造が要望される。
本開示に係る車両下部構造は、リアバンパカバーと、車両のフロアパネルよりも車両上下方向の下方側、且つ、リアバンパカバーに対し車両前方側に設けられたアンダーカバーと、車両幅方向に延伸している信号線、及び、信号線上に配置されたセンサ部を有するキックセンサと、を備え、キックセンサは、リアバンパカバー及びアンダーカバーの接続体に囲まれ車両外部から隔離されてフロアパネルの側に形成された閉断面空間の内側に配置されている。
上記構成によれば、キックセンサは、車両外部から隔離されてフロアパネルの側に形成された閉断面空間の内側に配置されるので、キックセンサの配置領域に異物が入り込むことを抑制できる。
本開示に係る車両下部構造において、アンダーカバーは、車両前方側の端部はフロアパネルに接続され、車両後方側の端部はリアバンパカバーに接続されたリアフロアカバーであり、キックセンサは、閉断面空間の内でリアフロアカバーの部分に配置されていることが好ましい。
車両下部構造において、ユーザの足先が突き出されることを正確に検出できるようにキックセンサを配置するためには、ある程度の車両前後方向に沿った長さを有し、車両前後方向に沿った適当な傾斜の角度を有し、滑らかな曲面である配置面が必要である。車両の後部意匠等の仕様によっては、リアバンパカバーにキックセンサのための適当な配置面が確保できない場合が生じ得る。その場合でも、上記構成によれば、アンダーカバーとしてのリアフロアカバーに配置できる。これにより、車両の後部意匠等の仕様を満たしながら、ユーザの足先が突き出されることを正確に検出できるキックセンサの配置が可能になる。
本開示に係る車両下部構造において、リアフロアカバーは、フロアパネルの側を向く内壁面と一体化されて突き出し所定の縦壁厚さを有する複数のフロアカバーリブ部を有し、キックセンサは、信号線の外周側を包み込んで支持する信号線保持部、及び、信号線保持部と一体化され、且つ、車両前後方向に開閉可能なクリップ部を含み、信号線の延伸方向に沿って複数配置されたキックセンサ係止部と、を有し、クリップ部がフロアカバーリブ部に係止されていることが好ましい。
上記構成によれば、キックセンサは、クリップ部でフロアカバーリブ部を挟み込んで信号線を係止することができる。これにより、キックセンサは、リアフロアカバーに対し着脱自在に取付固定できるので、例えば、両面接着シート等を用いて固定した場合と異なり、キックセンサの取替が可能となり、信号線の固定作業が容易となる。これにより、両面接着シート等の固定用部品のコストを削減でき、取付作業工数も削減できる。
本開示の車両下部構造において、リアフロアカバーには、互いに所定の挟込間隔を有して車両前後方向に向かい合い所定の挟込高さの脚部の頂部に係止爪を備えて対を成す係爪脚部がフロアパネルの側を向く内壁面と一体化されて車両幅方向に沿って複数対配置されており、キックセンサは、係爪脚部の挟込間隔に信号線が挟み込まれて係止されていることが好ましい。
上記構成によれば、リアフロアカバーの内壁面には、先端に係止爪を有する係爪脚部が向かい合って対をなして配置されるので、向かい合っている対の係止爪の間に信号線を当てがって押し込むことで、係爪脚部を介して信号線をリアフロアカバーに固定できる。これにより、信号線の固定作業が容易となり、固定作業の工数を削減できる。
また、係爪脚部はリアフロアカバーと一体化されるので、両面接着シートやクリップ等の特別な固定用部品が不要で、コストも削減できる。この場合、係爪脚部の頂部の係止爪をリアフロアカバーと一体化成形するには、全体外形を成形する1つの金型の他に、係爪脚部の向かい合う脚部の間の空間を残すためのスライド型が必要になる。車両下部構造の仕様によっては、リアフロアカバーの上方側が完全な開放空間とできず、車両上下方向にスライドするスライド型の使用が困難なことが生じ得る。その場合でも、車両幅方向にスライドするスライド型を用いることで、係爪脚部はリアフロアカバーと一体化成形できる。
本開示に係る車両下部構造において、リアフロアカバーには、対をなす係爪脚部において互いに向かい合う脚部の間に、挟込間隔に対応する成形型抜穴が設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、成形型抜穴が設けられるので、これを用いて、係爪脚部における頂部の係止爪の形状を挟んで、上金型と下金型の2つの金型を用いることができる。これにより、スライド型を用いなくても係爪脚部の一体化成形が可能となる。
本開示に係る車両下部構造において、キックセンサは、閉断面空間の内でリアバンパカバーの部分に配置されていることが好ましい。
車両の後部意匠等の仕様によっては、リアバンパカバーにキックセンサのための適当な配置面が確保できる。その場合には、車両後方側にいるユーザにより近いリアバンパカバーの部分にキックセンサを配置できる。キックセンサの配置領域は、リアバンパカバー及びアンダーカバーの接続体に囲まれ車両外部から隔離されてフロアパネル側に形成された閉断面空間の内側であるので、キックセンサの配置領域に異物が入り込むことを抑制できる。
本開示に係る車両下部構造において、キックセンサは、上面に互いに所定の挟込間隔を有して向かい合い所定の挟込高さの脚部の頂部に係止爪を備えて対を成す係爪脚部が車両幅方向に沿って複数対配置されており、且つ、周縁部に複数の取付穴を有する係爪付プレートを含み、係爪付プレートの複数の取付穴は、リアバンパカバーのフロアパネルの側を向く内壁面に設けられた複数の取付部に締結具によって締結固定されていることが好ましい。
上記構成によれば、係爪付プレートは、取付穴を用いてリアバンパカバーに締結固定できる。これにより、キックセンサは、リアバンパカバーに対し着脱自在に取付固定できるので、例えば、両面接着シート等を用いて固定した場合と異なり、キックセンサの取替が可能となる。また、信号線の固定作業が容易で、両面接着シート等の固定用部品のコストを削減でき、取付作業工数も削減できる。
本開示に係る車両下部構造において、リアバンパカバーは、フロアパネルの側を向く内壁面と一体化されて車両前後方向に延伸している複数のバンパカバーリブ部を有し、キックセンサは、信号線の外周側を包み込んで支持する信号線保持部、及び信号線保持部と一体化され、且つ、車両幅方向に開閉可能なクリップ部を含み、信号線の延伸方向に沿って複数配置されたキックセンサ係止部を有し、クリップ部がバンパカバーリブ部に係止されていることが好ましい。
上記構成によれば、キックセンサは、クリップ部でバンパカバーリブ部を挟み込んで信号線を係止することができる。これにより、キックセンサは、リアバンパカバーに対し着脱自在に取付固定できるので、例えば、両面接着シート等を用いて固定した場合と異なり、キックセンサの取替が可能となる。また、信号線の固定作業が容易で、両面接着シート等の固定用部品のコストを削減でき、取付作業工数も削減できる。
本開示に係る車両下部構造において、車両のフロアパネルよりも車両上下方向の下方側、且つ、リアバンパカバーに対し車両前方側に設けられたマフラーを備え、アンダーカバーは、マフラーとリアバンパカバーとの間に設けられ、車両前方側へはマフラーの上面とフロアパネルとの間に延伸し、車両後方側の端部はリアバンパカバーと接続されているヒートインシュレータであり、キックセンサは、閉断面空間の内でリアバンパカバーの部分に配置されていることが好ましい。
車両によっては、車両が走行中に車両の下面側と路面との間を流れる下面流れの空気抵抗を低減するためのリアフロアカバーを有していないが、車両の後部意匠等の制約が少なく、リアバンパカバーにキックセンサのための適当な配置面が確保できるものがある。このような車両に対応して、上記構成によれば、アンダーカバーとしてのヒートインシュレータがリアバンパカバーに接続されて閉断面空間を形成するので、リアバンパカバーに配置されるキックセンサは、その閉断面空間にあり、キックセンサの配置領域に異物が入り込むことが抑制される。
上記構成の車両下部構造によれば、キックセンサの配置領域に異物が入り込むことを抑制して、誤動作を防止できる。
以下に図面を用いて本開示に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において、バックドアは、跳ね上げ式を述べるが、これは説明のための例示であって、横開き式のバックドアであってもよい。
以下に述べる形状、材質等は、説明のための例示であって、車両下部構造の仕様等により、適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、車両10における車両下部構造20を示す断面図である。以下では、特に断らない限り、車両下部構造20を、下部構造20と呼ぶ。図1は、車両10における車両後部側の断面図で、後輪12と、車両10の背面側に設けられるバックドア14が示される。また、図1には、下部構造20の構成要素ではないが、路面4、荷物6を手で持ったユーザ8、及び、ユーザ8の足先9を示す。
図1では、下部構造20として、車両10において、バックドア14の開閉に用いられるキックセンサ80が配置される車両後方側の構造を示す。下部構造20は、キックセンサ80の他に、マフラー22、ヒートインシュレータ24、フロアパネル30、リアバンパカバー40、リアフロアカバー60を含む。
マフラー22は、車両10の図示しないエンジンからの排気ガスの排気音を抑制する等のための消音排気装置である。ヒートインシュレータ24は、高温の排気ガスが通るマフラー22の熱に対して、隣接する車載部品を保護する熱遮蔽材である。
フロアパネル30は、車両10の床面に配置され、車室側と車両外部とを仕切るパネル材である。ここで車両外部とは、路面4側のことで、車両10に対し、走行風を始め、埃、土砂、雨、雪等の異物が存在する空間である。
リアバンパカバー40は、車両10が受ける衝撃を緩和するために車両の後方側に設けられるリアバンパーの外装部材である。リアバンパカバー40は、適当な合成樹脂で成形され、所定以上の外力がかかると車両内側に変形して衝撃を吸収する機能を有する。
リアフロアカバー60は、車両10のフロアパネル30よりも車両上下方向の下方側、且つ、リアバンパカバー40に対し車両前方側に設けられるアンダーカバーの一種である。リアフロアカバー60は、特に、車両10が走行中に車両10の下面側と路面4との間を流れる下面流れの空気抵抗を低減するために設けられる。リアフロアカバー60の詳細は後述する。
キックセンサ80は、バックドア14を有する車両10において、ユーザ8がバックドア14を開閉する場合の利便性を図って、車両後部に設けられるセンサである。図1に示すように、特に荷物6を両手で持っているユーザ8は、そのままでは手でバックドア14を開閉できない。キックセンサ80は、ユーザ8が足先9を車両10の後部下側に突き出したことを検出するセンサである。例えば、ユーザ8が荷物6を持ったまま、閉状態のバックドア14に近づき、足先9を車両下側に突き出すと、キックセンサ80はこれを検出する。検出結果に従って図示しないバックドア開閉部が制御され、バックドア14は、自動的に開いて、車両10の上方側に跳ね上がったバックドア15の状態となる。
以下の各図において、車両幅方向、車両前後方向、車両上下方向を適宜示す。車両幅方向については、車両10を後方側から前方側を見たときに、車両の右側が、右側の方向で、車両の左側が左側の方向である。車両前後方向については、FRと示す方向が車両前方側の方向で、反対方向が車両後方側の方向である。車両上下方向については、UPと示す方向が路面に対して上側の上方側であり、反対方向が路面側の方向の下方側である。
場合によって、車両幅方向についての右側の方向、左側の方向、車両前方側の方向、車両後方側の方向を、それぞれ、右側、左側、前方側、後方側と呼ぶ。
図2は、図1のI部の拡大図である。リアフロアカバー60は、車両幅方向に延び、車両前後方向に延びる部材である。リアフロアカバー60の車両前方側は、フロアパネル30側に向かって車両上方側に立ち上がる縦壁部61を有し、縦壁部61の車両前方側の端部62は、適当な固定部材63によってフロアパネル30に接続される。また、車両後方側の端部64は、リアバンパカバー40の車両前方側の端部42に接続される。リアフロアカバー60の端部64とリアバンパカバー40の端部42の接続は、車両外部の走行風を滑らかに流すことができ、埃、雨、雪等の異物が入り込まなければよく、固定手段を用いずに、ラビリンス等の微小隙間を設ける配置による接続でもよい。これによって、リアバンパカバー40及びリアフロアカバー60の接続体に囲まれて、フロアパネル30の側に、閉断面空間26が形成される。かかるリアフロアカバー60は、適当な合成樹脂を用いて所定の形状に成形されたものが用いられる。
閉断面空間26は、車両外部からの異物が入り込まない空間であるので、キックセンサ80は、この閉断面空間26の内部に配置される。これによって、車両外部からの異物によるキックセンサ80の誤動作を防止できる。閉断面空間26の内で、キックセンサ80をリアフロアカバー60側に配置するか、リアバンパカバー40側に配置するかは、車両10の仕様等によって定めることができる。下部構造20において、ユーザ8の足先9が突き出されることを正確に検出できるようにキックセンサ80を配置するためには、ある程度の車両前後方向に沿った長さと、車両前後方向に沿った適当な傾斜の角度と、滑らかな曲面である配置面が必要である。車両の後部意匠等の仕様によっては、リアバンパカバー40にキックセンサ80のための適当な配置面が確保できない場合が生じ得る。その場合には、閉断面空間26の内のリアフロアカバー60の部分にキックセンサ80を配置する。これに対し、車両10の後部意匠等の仕様によっては、リアバンパカバー40にキックセンサ80のための適当な配置面が確保できる場合には、閉断面空間26の内で、車両後方側のユーザ8に近い側のリアバンパカバー40の部分にキックセンサ80を配置する。
いずれの場合でも、車両10の後部意匠等の仕様等を満たしながら、閉断面空間26内にキックセンサ80が配置されるので、キックセンサ80の配置領域に車両外部からの異物が入り込むことが抑制され、キックセンサ80の誤動作を防止できる。以下では、閉断面空間26の内でリアフロアカバー60の部分にキックセンサ80を配置する場合を説明し、その次に、リアバンパカバー40の部分にキックセンサ80を配置する場合を述べる。
図3は、リアフロアカバー60に配置されるキックセンサ80を示す斜視図である。図3には、リアフロアカバー60にキックセンサ80を取付けて固定する直前の状態が示される。
キックセンサ80は、車両幅方向に延伸する2本の信号線82,84と、信号線82,84上に配置される複数のセンサ部86,88と、センサ信号処理部90とを含む。センサ信号処理部90は、センサ部86,88の検出結果を受け取り、信号処理を行って、図示しないバックドア開閉部に指令信号を出力する制御回路である。
センサ部86,88は、センサ電極を有し、検知対象であるユーザ8の足先9との静電容量変化を検出する静電センサである。静電容量変化を検出することに代えて、センサ電極間に電場を発生させ、検知対象に起因する電波の変化を検出するセンサを用いてもよい。センサ部86,88は、ユーザ8が車両幅方向に沿ったどの位置にいても検出可能なように、車両幅方向に沿って複数配置される。図3の例では、車両10の右側端、左側端、中央部にそれぞれ1つずつで2列の合計6個配置される。これは説明のための例示であり、センサ部86,88の個数、配置位置は、車両10の仕様等によって適宜変更が可能である。
2本の信号線82,84は、それぞれ3つのセンサ部86,88からの検出信号をセンサ信号処理部90に伝送するための検出信号線である。信号線82,84が2本用いられるのは、ユーザ8の足先9がキックセンサ80側に確かに突き出されていることに関する誤検出の防止のためである。例えば、センサ信号処理部90は、信号線82と信号線84の双方から検出信号が伝送されてきた場合に、ユーザ8の開閉意志があるとする。これに対し、信号線82と信号線84のいずれか一方のみからの検出信号では、ユーザ8のバックドア14の開閉意志があるとしない。これによって、キックセンサ80の誤検出を適切に防止できる。
キックセンサ80をリアフロアカバー60に取付け固定するために、リアフロアカバー60には、複数のフロアカバーリブ部66,68が設けられ、キックセンサ80は、これに対応して、複数のキックセンサ係止部100,102を有する。フロアカバーリブ部66と、キックセンサ係止部100とは、信号線82をリアフロアカバー60に取付け固定する。フロアカバーリブ部68と、キックセンサ係止部102とは、信号線84をリアフロアカバー60に取付け固定する。
フロアカバーリブ部66,68は、フロアパネル30側を向く内壁面65と一体化されて突き出し所定の縦壁厚さt0を有する複数の突出リブである。図3の例では、フロアカバーリブ部66,68は、信号線82,84が車両幅方向に延伸することに対応し、内壁面65上に、車両幅方向に沿って4つずつ2列の合計8つが配置される。縦壁厚さt0は、車両前後方向に沿った厚さである。
キックセンサ係止部100,102は、フロアカバーリブ部66,68の配置に合わせ、信号線82に沿って4つ、信号線84に沿って4つの合計8つが配置される。8つのキックセンサ係止部100,102は、信号線82,84に沿った配置位置が異なるが、同じ構成であるので、以下では、図2の断面図を用いて、信号線82に設けられるキックセンサ係止部100の構成を主に述べる。
キックセンサ係止部100は、信号線82の外周側を包み込んで支持する信号線保持部104、及び、信号線保持部104と一体化され、且つ、車両前後方向に開閉可能なクリップ部106を有する。信号線保持部104は、信号線82を包み込むので、絶縁体が好ましい。例えば、樹脂のテープ等の巻物体を信号線保持部104として用いることができる。クリップ部106は、開閉可能なワニグチクリップを用いることができる。クリップ部106としては、常時閉状態に付勢されたプラスチックワニグチクリップを用いることができる。これに代えて、金属製のワニグチクリップを用いてもよい。クリップ部106と信号線保持部104の一体化方法としては、接着等を用いることができる。これは説明のための例示であって、信号線82を包み込む部分とクリップ部分とが一体として接続されていれば、これ以外の構成でも構わない。
キックセンサ係止部102も同様に、信号線84の外周側を包み込んで支持する信号線保持部108、及び、信号線保持部108と一体され、且つ、車両前後方向に開閉可能なクリップ部110を有する。そして、信号線82,84にそれぞれ設けられたキックセンサ係止部100,102は、クリップ部106,110を用いて、フロアカバーリブ部66,68にそれぞれ係止される。
図3に戻り、リアフロアカバー60の内壁面65の左側に設けられた保持台部91と、リアフロアカバー60の左端部に形成された爪受部72とは、センサ信号処理部90をリアフロアカバー60に固定するためのものである。保持台部91には、センサ信号処理部90を固定するための雌ねじ穴71が設けられる。センサ信号処理部90は、係止爪73を有する保持板部74で保持されて、保持台部91に配置される。その際に、保持板部74の係止爪73は、リアフロアカバー60の爪受部72に嵌め込まれる。そして、センサ信号処理部90を保持している保持板部74に設けられた固定用穴75に固定ねじ76が挿入され、保持台部91の雌ねじ穴71を用いて、締結される。これによって、センサ信号処理部90は、リアフロアカバー60に固定される。
上記構成によれば、クリップ部106,110を開くことで、信号線82,84はフロアカバーリブ部66,68から取り外すことができる。また、固定ねじ76を緩めて外せば、センサ信号処理部90を保持台部91から外せる。このように、キックセンサ80は、リアフロアカバー60に対し着脱自在に取付固定できるので、例えば、両面接着シート等を用いて固定した場合と異なり、キックセンサ80の取替が可能となる。また、信号線82,84の固定作業が容易で、両面接着シート等の固定用部品のコストを削減でき、取付作業工数も削減できる。
上記では、フロアカバーリブ部66,68と、クリップ部106,110とを用いて、キックセンサ80をリアフロアカバー60に固定した。これに代えて、リアフロアカバー60に複数の係爪脚部を設け、この係爪脚部で信号線82,84を固定してもよい。図4Aは、図2、図3で述べたキックセンサ係止部100,102を設けず、リアフロアカバー60に、対を成す係爪脚部120,122と、対を成す係爪脚部124,126を設け、2つの信号線82,84を挟み込んで係止する構成を示す図である。対を成す係爪脚部120,122と、対を成す係爪脚部124,126は、図3の例に従えば、それぞれ、4対ずつ、車両幅方向に2列に配置される。
対を成す係爪脚部120,122と、対を成す係爪脚部124,126とは、挟み込む信号線が相違するだけで、同じ構成であるので、以下では、信号線82を挟み込むための対を成す係爪脚部120,122について主に述べる。対を成す係爪脚部120,122は、互いに所定の挟込間隔w0を有して車両前後方向に向かい合う係爪脚部120と、係爪脚部122を含む。係爪脚部120は、所定の挟込高さh0の脚部130と、脚部130の頂部の係止爪132を備える。脚部130と係止爪132は、リアフロアカバー60の内壁面65と一体で成形される。同様に、係爪脚部122は、所定の挟込高さh0の脚部134と、脚部134の頂部の係止爪136を備える。挟込間隔w0と挟込高さh0は、信号線82の直径よりも大きめに設定される。係止爪132と係止爪136の向かい合う隙間は、信号線82の直径よりも小さめに設定される。
上記構成によれば、リアフロアカバー60の内壁面65には、先端に係止爪132,136を有する係爪脚部120,122が向かい合って対を成して配置される。そこで、向かい合っている対の係止爪132,136の間に信号線82を当てがって押し込むことで、係爪脚部120,122を介して信号線82をリアフロアカバー60に固定できる。これにより、信号線82の固定作業が容易となり、固定作業の工数を削減できる。対を成す係爪脚部124,126も同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
図4Bは、図4Aにおける係爪脚部120,122の成形法を示す図である。係爪脚部120,122の頂部の係止爪132,136をリアフロアカバー60と一体化成形するには、全体外形を成形する1つの金型の他に、係爪脚部120,122の向かい合う脚部130,134の間の空間を残すためのスライド型が必要になる。下部構造20の仕様によっては、リアフロアカバー60の上方側が完全な開放空間とできず、車両上下方向にスライドするスライド型の使用が困難なことが生じ得る。その場合でも、車両幅方向のスライド型112を用いることができる。図4Aの例では、係爪脚部120,122の向かい合う脚部130,134の間の空間は、車両幅方向に沿っているので、スライド型112の使用が可能である。そこで、リアフロアカバー60と係爪脚部120,122の一体化樹脂成形の際には、スライド型112を脚部130,134の間の空間に対応してセットし、樹脂成形が終われば、スライド型112を、図4Bの矢印の方向にスライドさせる。これによって、図4Aの構造を得ることができる。
このように、スライド型112を用いることで、係爪脚部120,122はリアフロアカバー60と一体化成形されるので、両面接着シートやクリップ等の特別な固定用部品が不要で、コストも削減できる。
図5Aは、図4Aで述べた係爪脚部120,122について、スライド型112を用いずに、リアフロアカバー60と一体化する例を示す図である。図4Aと異なるのは、リアフロアカバー60において、係爪脚部120,122の脚部130,134が向かい合う挟込間隔w0の部分が貫通し、成形型抜穴114となっていることである。図5Bは、図4Bに対応する斜視図である。
図5Cは、樹脂成形する際の下金型116と上金型118の配置関係を示す図である。下金型116は、成形型抜穴114を通って、脚部130,134と係止爪132,136との境界位置まで延びる形状を有する。この下金型116と上金型118を用いて、キャビティ117に樹脂を充填し、その後、下金型116と上金型118をそれぞれ矢印の方向に開くことで、図5Aの構造が得られる。
上記構成によれば、成形型抜穴114が設けられるので、これを用いて、係爪脚部120,122における頂部の係止爪132,136の形状を挟んで、下金型116と上金型118の2つの金型を用いることができる。これにより、スライド型112を用いなくても、リアフロアカバー60と係爪脚部120,122の一体成形が可能となる。
上記では、閉断面空間26の内で、リアフロアカバー60の部分にキックセンサ80が配置される。車両10の後部意匠等の仕様によっては、リアバンパカバー40にキックセンサ80のための適当な配置面が確保できる場合がある。その場合には、閉断面空間26の内で、車両後方側にいるユーザ8により近い側のリアバンパカバー40の部分にキックセンサ80を配置する。以下では、リアバンパカバー40の部分にキックセンサ80を配置する例を述べる。
図6は、リアバンパカバー40とリアフロアカバー60の接続体で囲まれ、車両外部から隔離されてフロアパネル30の側に形成された閉断面空間26の内、リアバンパカバー40の部分にキックセンサ80が配置される例を示す図である。リアバンパカバー40は、図3に示すように、車両幅方向の両端側で曲がり部を有し、車両後方側で縦壁部を有するので、キックセンサ80のリアバンパカバー40への取付に制約が多い。そこで、図6では、係爪付プレート140を用いる。係爪付プレート140は、図4Aで述べた対を成す係爪脚部120,122と、対を成す係爪脚部124,126をリアバンパカバー40とは独立のプレート上に成形したものである。図4Aで述べたように、信号線82のための対を成す係爪脚部120,122が4対、信号線84のための対を成す係爪脚部124,126が4対成形される。対を成す係爪脚部120,122と、対を成す係爪脚部124,126が成形された係爪付プレート140は、両面接着シート142を用いて、リアバンパカバー40の内壁面41の上に固定される。キックセンサ80は、閉断面空間26内に配置されるので、キックセンサ80の配置領域に車両外部からの異物が入り込むことが抑制され、キックセンサ80の誤動作を防止できる。
両面接着シート142を用いて係爪付プレート140をリアバンパカバー40に固定すると、キックセンサ80の取替が困難である。図7は、両面接着シート142を用いない係爪付プレート150の例を示す図である。係爪付プレート140と比較して、係爪付プレート150は、周縁部に複数の取付穴を有することが相違する。図7の例では、車両前方側の周縁部152と車両後方側の周縁部154とに取付穴が設けられる。これに対応し、リアバンパカバー40の内壁面41から取付穴を有する取付部43,44が設けられる。そして、係爪付プレート150の周縁部152,154の取付穴と、リアバンパカバー40の取付部43,44の取付穴とが合わせられて、適当な締結具46,48を用いて互いに固定される。締結具46,48として、ボルト・ナットの組み合わせを用いることで、係爪付プレート150をリアバンパカバー40に対して着脱自在にできる。
上記構成により、キックセンサ80は、リアバンパカバー40に対し着脱自在に取付固定できるので、例えば、両面接着シート142等を用いて固定する図6の場合と異なり、キックセンサ80の取替が可能となる。また、信号線82,84の固定作業が容易で、両面接着シート142のコストを削減でき、取付作業工数も削減できる。
図8Aは、対をなす係爪脚部120,122を用いる代わりに、図2、図3で説明したクリップを有するキックセンサ係止部を用いる例である。ここでは、リアバンパカバー40における一体化成形の制約を考慮して、リアバンパカバー40の内壁面41と一体化成形されるバンパカバーリブ部50は、車両前後方向に延伸するものとする。図3の例に従い、バンパカバーリブ部50は、車両幅方向に4つ設けられる。信号線82に設けられるキックセンサ係止部160と、信号線84に設けられるキックセンサ係止部170は、対を成して同じバンパカバーリブ部50に取付けられる。すなわち、キックセンサ係止部160の信号線保持部162は信号線82を包み込むが、クリップ部164は、バンパカバーリブ部50を挟み込む。キックセンサ係止部170の信号線保持部172は信号線84を包み込むが、クリップ部174は、バンパカバーリブ部50を挟み込む。クリップ部164,174は、図3の場合と異なり、車両幅方向に開閉する。
図8Bは、図8Aの斜視図である。ここでは、信号線82に関する2つのキックセンサ係止部160を示す。同じ信号線82に関する2つのキックセンサ係止部160は、車両幅方向に沿って異なる配置位置のバンパカバーリブ部50に取り付けられる。
上記構成によれば、キックセンサ80は、クリップ部164,174でバンパカバーリブ部50を挟み込んで信号線82,84を固定することができる。これにより、キックセンサ80は、リアバンパカバー40に対し着脱自在に取付固定できるので、例えば、両面接着シート142等を用いて固定した場合と異なり、キックセンサ80の取替が可能となる。また、信号線82,84の固定作業が容易で、取付作業工数も削減できる。
上記では、リアバンパカバー40とリアフロアカバー60の接続体に囲まれ、車両外部から隔離されてフロアパネル30側に閉断面空間26が形成されるものとした。車両10の仕様によっては、リアフロアカバー60を有していないが、車両10の後部意匠等の制約が少なく、リアバンパカバー40にキックセンサ80のための適当な配置面が確保できる場合がある。このような車両10については、リアフロアカバー60に代えて、ヒートインシュレータ24を用い、リアバンパカバー40とヒートインシュレータ24の接続体に囲まれ、車両外部から隔離されて、フロアパネル30側に閉断面空間26を形成してよい。この場合、ヒートインシュレータ24は、閉断面空間26を形成するためのアンダーカバーとして働く。
図9は、リアバンパカバー40とヒートインシュレータ24の接続体に囲まれ、車両外部から隔離されて、フロアパネル30側に閉断面空間26を形成する例を示す図である。ここでは、車両10のフロアパネル30よりも車両上下方向の下方側、且つ、リアバンパカバー40に対し車両前方側に設けられるマフラー22を備える。アンダーカバーの一種であるヒートインシュレータ24は、マフラー22とリアバンパカバー40との間に設けられ、マフラー22の上面とフロアパネル30との間に延伸する車両前方側の部分を有する。そして車両前方側の部分から縦壁部27を経由し、車両後方側の端部でリアバンパカバー40と接続される。キックセンサ80は、図6で述べた係爪付プレート140と、両面接着シート142を用いて、リアバンパカバー40の部分に固定される。
上記構成によれば、アンダーカバーとしてのヒートインシュレータ24がリアバンパカバー40に接続されて閉断面空間26を形成する。リアバンパカバー40に配置されるキックセンサ80は、その閉断面空間26にあり、キックセンサ80の配置領域に異物が入り込むことが抑制され、キックセンサ80の誤動作を防止できる。
図10は、比較のために、図1と同様な図面で従来技術の下部構造21を示す図である。図11は、図10のII部の拡大図である。キックセンサ80は、図6、図9で述べた係爪付プレート140と両面接着シート142によってリアバンパカバー40に固定される。この下部構造21は、リアフロアカバー60を備えず、ヒートインシュレータ25は有しているが、図9のヒートインシュレータ24と比較すると、ヒートインシュレータ25の車両後方側の端部がリアバンパカバー40と接続されていない。したがって、車両外部から隔離された閉断面空間26が形成されず、キックセンサ80は、車両外部に対して開放された空間に配置されている。
このように、従来技術の下部構造21において、キックセンサ80は、車両外部に対する開放空間内に配置されるので、キックセンサ80の配置領域に車両外部からの異物が入り込み、キックセンサ80の誤動作が生じ得る。また、両面接着シート142を用いて係爪付プレート140をリアバンパカバー40に固定しているので、キックセンサ80の取替が困難である。これに対し、図1で述べた下部構造20においては、キックセンサ80は、閉断面空間26内に配置されるので、キックセンサ80の配置領域に車両外部からの異物が入り込むことが抑制され、キックセンサ80の誤動作を防止できる。また、キックセンサ係止部100,102のクリップ部106,110を用いて、リアフロアカバー60のフロアカバーリブ部66,68を挟み込んでキックセンサ80をリアフロアカバー60に固定するので、キックセンサ80の取替が容易である。