JP2019065409A - 乾燥固形物および乾燥固形物の製造方法 - Google Patents

乾燥固形物および乾燥固形物の製造方法 Download PDF

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【課題】金属微粒子の特性を保持しつつ再分散可能な乾燥固形物、および当該乾燥固形物の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の乾燥固形物は、少なくとも結晶表面にアニオン性官能基を有する微細化セルロースの表面上に、1種以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子が担持されてなる金属微粒子/微細化セルロース複合体と、金属微粒子が担持されていない遊離微細化セルロースとを含み、金属微粒子/微細化セルロース複合体の表面が遊離微細化セルロースに覆われている。【選択図】なし

Description

本発明は、乾燥固形物および乾燥固形物の製造方法に関するものであり、特に1種以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子が微細化セルロースと結合されてなることを特徴とする金属微粒子/微細化セルロースの複合体を含み、溶媒に再分散可能であることを特徴とする乾燥固形物およびその製造方法に関する。
近年、木材中のセルロース繊維を、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化し、新規な機能性材料として利用しようとする試みが活発に行われている。
例えば、特許文献1に示されるように、木材セルロースに対しブレンダーやグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース繊維、すなわちセルロースナノファイバー(以下、CNFとも称する。)が得られることが開示されている。この方法で得られるCNFは、短軸径10〜50nm、長軸径が1μmから10mmに及ぶことが報告されている。このCNFは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m/g以上の膨大な比表面積を有することから、樹脂強化用ナノ繊維として用いた例が既に数多く報告されている。(例えば、特許文献2、3を参照)しかしながら、機械処理のみを行う方法ではセルロース原料を微細化するために多大なエネルギーを要してしまうという問題があった。
そこで、木材中のセルロース繊維を微細化しやすいように化学処理したのち、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで機械処理により微細化して、微細化セルロース繊維、すなわちセルロースナノファイバーとして利用しようとする試みが活発に行われている。上記化学処理の方法は特に限定されないが、セルロース繊維にアニオン性官能基を導入して微細化し易くする方法が好ましい。セルロース繊維にアニオン性官能基が導入されることによってセルロースミクロフィブリル構造間に浸透圧効果で溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料の微細化に要するエネルギーを大幅に減少することができる。上記アニオン性官能基の導入方法としては特に限定されないが、例えば特許文献4にはリン酸エステル化処理を用いて、セルロースの微細繊維表面を選択的にリン酸エステル化処理する方法が開示されている。また、特許文献5には、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行う方法が開示されている。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入しても良い。比較的安定なN−オキシル化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル(TEMPO)を触媒として用い、セルロースの微細繊維表面を選択的に酸化する方法も報告されている(例えば、特許文献6を参照)。TEMPOを触媒として用いる酸化反応(TEMPO酸化反応)は、水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能であり、木材中のセルロースに適用した場合、結晶内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つアルコール性1級炭素のみを選択的にカルボキシ基へと変換することができる。
結晶表面に導入されたカルボキシ基同士の静電的な反発により、溶媒中で一本一本のセルロースミクロフィブリル単位に分散させた、セルロースシングルナノファイバー(以下、CSNFとも称する。)を得ることが可能となる。木材からTEMPO酸化反応によって得られる木材由来のCSNFは、短軸径が3nm前後、長軸径が数十nm〜数μmに及ぶ高アスペクト比を有する構造体であり、その水分散液および成形体は高い透明性を有することが報告されている。また、CSNFの用途としては、例えば、透明基材に積層することによってガスバリア膜を形成し、植物由来の新規透明包装材料として用いた応用例が報告されている(例えば、特許文献7を参照)。
このように、カーボンニュートラル材料であるCNFまたはCSNFを始めとする、微細化セルロースを用いた高機能部材開発に関して様々な検討がなされている。
一方、微細化セルロースの実用化に向けては、得られる微細化セルロース分散液の固形分濃度が0.1〜5%程度と低くなってしまうことが課題となっている。例えば微細化セルロース分散体を輸送しようとした場合、大量の溶媒を輸送するに等しいため輸送費の高騰を招き、事業性が著しく損なわれるという問題がある。また、樹脂強化用の添加剤として用いる際にも、固形分が低いことによる添加効率の悪化や、溶媒である水が樹脂と馴染まない場合には複合化が困難となるといった問題がある。また、含水状態で取り扱う場合、腐敗の恐れもあるため、冷蔵保管や防腐処理などの対策が必要となりコストアップに繋がる恐れもある。
しかしながら、単純に熱乾燥などで微細化セルロース分散液の溶媒を除去してしまうと、微細化セルロース同士が凝集・角質化し、ナノレベルでの均一な再分散が困難になるという問題がある。均一な再分散が出来ない状態では透明性が損なわれるなど、安定な機能発現が困難になってしまうため不適である。
また、完全な乾燥は行わず、固形分濃度を上げる方法も提案されている。特許文献8には再分散促進剤を添加したCSNF水分散液を噴霧乾燥して固形分濃度を70%まで上げた、再分散用ゲル状体が開示されている。しかしながら、このような方法では完全に水を除去できないため、依然として輸送費高騰の懸念や腐敗対策の問題は残存するうえ、用途によっては再分散促進剤が適用できない場合もあり、汎用性に欠ける。
なお、特許文献9において、完全乾燥した微細化セルロースをナノレベルで均一に再分散する方法が開示されている。特許文献9においては、微細化セルロースの再分散を妨げる原因が微細化セルロース中に存在するケトン基およびアルデヒド基であるとされており、微細化セルロースを還元剤で処理する工程によってケトン基およびアルデヒド基を除去したのちに乾燥して得られた微細化セルロースの乾燥固形物であれば、ナノレベルで均一な水への再分散が可能であると報告されている。
一方、金属あるいは金属酸化物の粒子サイズがナノメートルオーダーにまで小さくなった金属微粒子(以下、金属ナノ粒子とも称する。)は、バルク状態の金属とは異なる物理的、化学的性質を示すことがある。この現象はいわゆる量子サイズ効果として知られており、具体的な効果のひとつとして局在表面プラズモン共鳴(以下、LSPRとも称する。)が知られている。
局在表面プラズモンとは金属ナノ粒子中の自由電子の集団的な振動によって生じた電場と特定の波長の光が共鳴して強く吸収・散乱される現象である。局在表面プラズモンを生じる光の波長は金属種によって異なるが、金・銀の場合、可視光〜近赤外光領域において局在表面プラズモン共鳴を生じるため、古くからステンドグラスなどの発色材などとして利用されてきた歴史も有り、有用である。また、近年では金・銀ナノ粒子のプラズモンの電場増強効果を利用した増強ラマン分析などのセンサーが実用化されており、今後の更なる応用が期待されている分野である。
また、局在表面プラズモンの応用においては、異方形状を有する金属ナノ粒子が注目を集めている。例えば、板状、ロッド状といった金属ナノ粒子においては、球状の粒子と異なる波長において局在表面プラズモン共鳴が生じる場合があることから、応用の幅が広がることが期待されている。
異方形状を有する金属ナノ粒子の中でも、特に応用が期待されているのが金・銀ナノ粒子である。例えば粒子径が数nm〜数十nmの球状金ナノ粒子は局在表面プラズモン共鳴により波長550nm付近に吸収を持つため、赤味を呈することが知られているが、板状やロッド状に異方成長させることで吸収波長を長波長領域にシフトさせることが可能である。さらに銀の場合は、波長の選択領域がさらに広い。粒子径が数nm〜数十nmの球状銀ナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴により、波長400nm付近に吸収を持つため、黄色味を呈することが知られている。しかしながら、異方成長した銀ナノ粒子はこの限りではなく、例えば、平板状の銀ナノ粒子は、吸収ピークが長波長領域にドラスティックにシフトすることが知られている。この際、平板状銀ナノ粒子のアスペクト比(すなわち、粒子径/粒子厚み)が大きくなるほど、吸収ピークがより長波側にシフトすることが確認されている。すなわち、平板状銀ナノ粒子は、任意の波長を吸収する光学材料として用いることができる。また、可視光領域で吸収波長を制御すれば、黄色以外にも赤色、青色など鮮やかな色調を呈する平板状銀ナノ粒子を得ることができ、機能性色材としての利用が期待できる。さらに、平板状銀ナノ粒子のアスペクト比によっては、可視光領域外の近赤外線領域にまで吸収ピークをシフトさせることも可能である。
なお、本明細書において、可視光とは波長領域がおよそ400nmから700nmである電磁波を指し、近赤外線とは赤外線の中でも可視光に近い波長領域(およそ700nmから2500nm)の電磁波を指すものとする。この近赤外線は可視光に近い性質を有しており、特に太陽光に含まれる波長領域700nmから1200nm付近の光は、物体表面に吸収され熱エネルギーに変換されやすいことが知られている。このような近赤外線吸収材料は、熱線を吸収できるため、例えば遮熱材料や光熱変換材料としても利用可能な、付加価値の高い機能性材料である。
このように、金属ナノ粒子の局在表面プラズモンに関しては様々な応用展開が期待されている。
一方、金属ナノ粒子は量子サイズ効果を維持するために一般的には溶媒中にナノ分散された分散液の状態で提供される。しかし、金属ナノ粒子は比表面積が増大するため、分散液中で互いに凝集しやすく、分散安定性に問題がある。凝集して二次粒子を形成してしまえば局在表面プラズモン効果は失われてしまう。そのため、金属ナノ粒子同士の凝集を妨げるために、様々な添加剤を用いる必要がある上、提供される金属ナノ粒子分散液の固形分濃度を上げることが出来ないという問題がある。
そのため、金属ナノ粒子の応用においても、微細化セルロース分散液の場合と同様に溶媒を除去して乾燥固形物として取扱性を向上することが強く望まれているが、金属ナノ粒子から完全に溶媒を除去してしまうと金属粒子同士が強固な凝集体を形成、あるいは融着してしまうことにより、一次粒子レベルでのナノ粒子の再分散が困難となり、再分散後に局在表面プラズモン共鳴効果を利用できない。以上より、金属ナノ粒子を、再分散時にその特性を発揮できるように乾燥状態で輸送することは、不可能であるというのが現在の技術的常識と言える。
一方、特許文献10には、微細化セルロースの一種であるCSNFと金属微粒子との複合体として、金属ナノ粒子がCSNFに担持された複合体(金属ナノ粒子担持CSNF)が開示されている。この特許文献10には、金属ナノ粒子担持CSNFを触媒として用いる例が開示されている。しかしながら、特許文献10においては金属ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴の利用や粒子形状の制御の可能性、機能性色材や近赤外線吸収材料といった光学材料への適用可能性については、何ら開示も示唆もされていない。
さらに特許文献11には、平板状金属ナノ粒子と微細化セルロースが複合化された新規機能性材料;平板状銀/微細化セルロース複合体と、同複合体のサイズ制御に基づいた可視から近赤外領域におよぶ波長選択的な局在表面プラズモン共鳴効果の利用に関する情報開示がなされている。しかしながら特許文献11の複合体分散液も、その固形分濃度は微細化セルロース分散液と同程度に低く、その輸送効率向上等の可能性について、特許文献11には何ら開示も示唆もされていない。
特開2010−216021号公報 特開2006−240295号公報 特開2008−007646号公報 国際公開第2014/185505号 国際公開第2014/088072号 特開2008−001728号公報 国際公開第2013/042654号 特開2014−118521号公報 国際公開第2015/087868号 再公表WO2010/095574号公報 国際公開第2015/170613号
上記事情を踏まえ、本発明は、金属微粒子の特性を保持しつつ再分散可能な乾燥固形物、および当該乾燥固形物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第一の態様は、少なくとも結晶表面にアニオン性官能基を有する微細化セルロースの表面上に、1種以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子が担持されてなる金属微粒子/微細化セルロース複合体と、前記金属微粒子が担持されていない遊離微細化セルロースとを含み、前記金属微粒子/微細化セルロース複合体の表面が前記遊離微細化セルロースに覆われている乾燥固形物である。
前記乾燥固形物におけるセルロースの含有率は、30質量%以上であってもよい。
前記金属微粒子は、少なくとも金、銀、白金、パラジウムより選ばれた1種類以上の金属またはその化合物を含んでもよい。
前記アニオン性官能基の含有量は、セルロース1gあたり0.1mmol以上5.0mmol以下であってもよい。
前記微細化セルロースの結晶構造は、セルロースI型であってもよい。
前記微細化セルロースの形状は、天然セルロースのミクロフィブリル構造由来の繊維状であってもよい。
前記微細化セルロースは、数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であってもよい。
前記金属微粒子は平板状であってもよい。
本発明の第二の態様は、セルロース原料にアニオン性官能基を導入する第一工程と、前記アニオン性官能基が導入された前記セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る第二工程と、前記微細化セルロース分散液と、1種類以上の金属イオンを含有する金属イオン含有溶液とを混合して混合溶液を得る第三工程と、前記混合溶液中の前記金属イオンを還元して、1種以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子を成長させることにより前記混合溶液中に金属微粒子/微細化セルロース複合体を形成し、前記金属微粒子/微細化セルロース複合体と遊離微細化セルロースとを含む分散液を得る第四工程と、前記分散液から溶媒を除去して乾燥固形物を得る第五工程とを備える乾燥固形物の製造方法である。
前記第五工程は、凍結真空乾燥により行われてもよい。
前記第一工程において、前記アニオン性官能基が、セルロース1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下導入されてもよい。
本発明によれば、金属微粒子の特性を保持しつつ再分散可能な乾燥固形物を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る乾燥固形物に含まれる複合体の構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る乾燥固形物に含まれる複合体の製造方法の、工程の一部を説明するための模式図である。 実施例1で得られた微細化セルロースの水分散液の分光透過スペクトル測定結果である。 実施例1で得られた微細化セルロースの水分散液に対し、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行った結果である。 実施例1で得られたネガティブ染色済み複合体の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。 実施例1で得られた複合体を、TEMによって断面方向から観察した結果を示す図(TEM画像)である。 実施例1における平板状銀微粒子/微細化セルロース複合体分散液の、乾燥前後での分光透過スペクトルの比較図である。 実施例6における平板状銀微粒子/微細化セルロース複合体分散液の、乾燥前後での分光透過スペクトルの比較図である。 実施例5における球状銀微粒子/微細化セルロース複合体の走査透過型電子顕微鏡(STEM)画像である。 実施例7における球状金微粒子/微細化セルロース複合体のTEM画像である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、以下に説明する実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を限定するものではない。
<金属微粒子/微細化セルロース複合体>
まず、本発明の一実施形態に係る乾燥固形物に含まれる金属微粒子/微細化セルロース複合体(以下、単に「複合体」と称することがある。)について説明する。本発明の複合体は、その構造の少なくとも一辺がナノメートル(nm)オーダーである微細化セルロースと金属微粒子とが複合化された複合体である。本複合体は微細化セルロースの表面上に金属ナノ微粒子を直接還元析出することにより得られ、金属微粒子と微細化セルロースが不可分に結合されている。本発明における「不可分」とは、例えば本複合体を含む分散液を遠心分離処理して上澄みを除去し、さらに溶媒を加えて再分散することで複合体を精製・洗浄する操作を繰返した後であっても金属微粒子と微細化セルロースとが分離しない程度の結合状態を意味する。
金属微粒子の形状に特に制限はなく、例えば平板状、球状、あるいはロッド状等であってもよい。特に金属微粒子が金または銀、あるいはその両方を含む場合には、金属微粒子の形状を平板状とすることで、局在表面プラズモン共鳴波長を可視〜近赤外領域において幅広く制御可能であるため有用である。
図1は、本実施形態における乾燥固形物に含まれる複合体の一態様である複合体1を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、複合体1は、平板状の金属微粒子2と、少なくとも一つ以上の微細化セルロース3とが複合化されて構成されている。各微細化セルロース3は、少なくとも一部(一部分)又は全部が金属微粒子2に結合しており、残部があればその残部が金属微粒子2の周囲に露出するように複合化されている。
より具体的には、図1に示すように、各微細化セルロース3は、金属微粒子2に結合している第一部分3aと、金属微粒子2の周囲に露出している第二部分3bとを有する。そして、第一部分3aの存在により、金属微粒子2と微細化セルロース3とが不可分の状態となっている。即ち、金属微粒子2と微細化セルロース3とは、微細化セルロース3の少なくとも一部分(第一部分3a)が金属微粒子2に結合することにより、少なくとも一部同士が物理的に結合することにより、不可分の状態にある。
なお、複合体1は、すべての微細化セルロース3について、全部分(全体)が金属微粒子2に結合してもよい。すなわち、すべての微細化セルロース3に第二部分3bが存在しない複合体も、本発明の金属微粒子/微細化セルロースの複合体に含まれる。
金属微粒子の組成としては、金、銀、白金、パラジウムより選ばれた1種類以上の金属またはその化合物を含むことが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。複数の金属種を用いる場合、例えば析出した銀微粒子の周りを、銀より貴な金属あるいはシリカ等の金属酸化物などで被覆して、銀微粒子の安定性を向上させてもよい。
なお、本実施形態において「平板状」とは、概平板形状をした板状を意味し、具体的には、金属微粒子の主平面の概粒子径を概粒子厚みで割った平均アスペクト比(概粒子径/概粒子厚み)が2.0以上であることを意味する。
金属微粒子2が平板状である場合、その粒子径は20〜1000nmが好ましい。
金属微粒子2が平板状である場合、その粒子厚みは5〜100nmが好ましく、8〜50nmがより好ましい。
金属微粒子2が平板状である場合、その平均アスペクト比(粒子径/粒子厚み)は2.0以上が好ましく、2.0〜200がより好ましい。
金属微粒子2の粒子径及び厚みの具体的な測定方法、ならびにアスペクト比の算出方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)粒子径の測定法
複合体を含む分散液を透過型電子顕微鏡(TEM)観察用支持膜付き銅グリッド上にキャストして風乾したのち、TEM観察を行う。得られた画像中の金属微粒子を、円で近似した際の径を平面方向の粒子径として算出する。
(2)粒子厚みの測定法
複合体を含む分散液をPETフィルム上にキャストして風乾し包埋樹脂で固定したものをミクロトームで断面方向に切削し、TEM観察を行う。得られた画像中の金属微粒子の厚みを平面方向に対する粒子厚みとして算出する。
(3)アスペクト比の算出方法
上述のようにして求めた粒子径をaとし、粒子厚みをbとした際に、粒子径aを粒子厚みbで割った値を、アスペクト比=a/bとして算出する。
なお、上述した測定方法および算出方法は一例であり、特にこれらに限定されるものではない。
本実施形態の複合体は、微細化セルロースが結晶表面にアニオン性官能基を有している。アニオン性官能基の含有量は、セルロース1gあたり0.1mmol以上5.0mmol以下であることが好ましい。
さらに、微細化セルロースとしては、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であることが好ましい。具体的には、数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることが好ましい。また、微細化セルロースの結晶構造は、セルロースI型であることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態の複合体は、金属微粒子と微細化セルロース3との複合体であり、金属微粒子2と微細化セルロース3とが物理的に結合して不可分の状態にある。複合体は、カーボンニュートラルな、有機無機ハイブリッド材料である。
<複合体の製造方法>
次に、本実施形態における複合体1の製造方法について説明する。微細化セルロース3と、金属微粒子2を形成するための金属イオンとを含む分散液中で、微細化セルロース3上に金属を還元析出させて金属結晶を生成することによって、微細化セルロース3に金属微粒子2が担持された複合体1を得ることができる。還元析出の際に、異方性をもってこの金属結晶を成長させることにより、金属微粒子2の形状が平板状となる。
上記した製造方法は一例であり、他の公知の方法で微細化セルロースに金属微粒子が担持された複合体が製造されてもよい。
<乾燥固形物>
次に、本実施形態の乾燥固形物について説明する。本実施形態における乾燥固形物は、上述した金属微粒子/微細化セルロース複合体と、金属微粒子が担持されていない遊離微細化セルロースとを含む。乾燥固形物は溶媒をほとんど含まず、溶媒を加えることにより、溶液中に複合体を再分散させることが可能である。
乾燥固形物の乾燥の度合いは固形分率として示される。固形分率は適宜設定できるが少なくとも80%以上であり、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、100%(絶乾状態)であってもよい。
微細化セルロースは吸湿しやすいため、本発明の乾燥固形物が製造時において固形分率80%以上であっても、保管中や輸送中に空気中の水分を吸着して固形分率が経時的に低下する可能性がある。しかしながら、本発明の技術思想からは、乾燥固形物の完成時(製造が完了した時点)において固形分率が80%以上であれば、保管中や輸送中の経時変化に関係なく本発明の技術的範囲に含まれると定義する。
乾燥固形物においては、一つまたは複数の複合体が、遊離微細化セルロースに埋まった構造を有する。すなわち、各複合体の表面は遊離微細化セルロースに覆われている。微細化セルロースはガスバリア性を有するため、乾燥固形物が大気中に放置されても、遊離微細化セルロースに覆われた複合体の金属微粒子は、空気中の元素と反応することが好適に防止される。その結果、乾燥固形物である間も局在表面プラズモン共鳴等の特性を発揮可能な状態が維持され、水等の溶媒を加えて再分散されたときには良好にその特性を発揮する。
上記効果を十分に得る観点からは、乾燥固形物におけるセルロースの含有率は、30質量%(wt%)以上が好ましく、40wt%以上がより好ましい。セルロースの含有率が30%未満となると、金属微粒子をセルロースで均一に包み込むことが難しくなり、金属微粒子同士が接触して凝集し再分散が阻害されたり、金属微粒子が大気中の元素と接触・反応して変性したりする可能性があるため好ましくない。上記効果を得る観点からは、セルロース含有率の数値範囲に上限は存在しないが、セルロース含有率が低くなるほど、乾燥固形物における金属微粒子の輸送効率は向上する。
セルロースの含有率は、原子吸光分光光度計等を用いて測定することができる。ただし、複合体に含まれる微細化セルロースと遊離微細化セルロースを分けて測定することは困難であるため、本発明において、乾燥固形物におけるセルロースの含有率は、複合体に含まれる微細化セルロースと遊離微細化セルロースとの合計と定義する。
乾燥固形物のセルロース含有率を測定する場合は、以下の方法も可能である。例えば金属が銀である場合、乾燥固形物を硝酸水溶液で処理して銀のみを溶出させ、溶解液をフィルターなどでろ別し、得られたろ液中に含まれる銀濃度を測定する。これにより、乾燥固形物における銀の質量が算出でき、最終的にセルロース含有率が特定できる。
本実施形態の乾燥固形物は、溶媒をほぼ除去することが出来るため、輸送費の削減、腐敗リスクの低減、添加剤としての添加効率の向上、疎水性樹脂への混練効率向上といった様々な利点を有し、使用性に優れる。
乾燥固形物の形態は特に限定されないが、例えばフィルム形状、多孔質形状で提供することができる。また、フィルム形状あるいは多孔質形状で得られた乾燥固形物を粉砕処理することにより、粉体形状の乾燥固形物として提供することも可能である。
<乾燥固形物の製造方法>
本実施形態に係る乾燥固形物の製造方法は、セルロース原料にアニオン性官能基を導入する工程(第一工程)と、アニオン性官能基が導入されたセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る工程(第二工程)と、微細化セルロース分散液と、1種類以上の金属イオンを含有する溶液とを混合して混合溶液を得る工程(第三工程)と、混合溶液中の金属イオンを還元して1種以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子を成長させることにより混合溶液中に金属微粒子/微細化セルロース複合体を形成し、金属微粒子/微細化セルロース複合体と遊離微細化セルロースとを含む分散液を得る工程(第四工程)と、複合体と遊離微細化セルロースとを含む分散液から溶媒を除去して乾燥固形物を得る工程(第五工程)と、を備える。以下、各工程について詳細に説明する。
(第一工程)
本実施形態の乾燥固形物に含まれる微細化セルロースは、結晶表面にアニオン性官能基が導入されている。微細化セルロースは、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーであり、その調製方法については特に限定されない。
通常、微細化セルロースは、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状を取るため、本実施形態の製造方法に用いる微細化セルロースとしては、以下に示す範囲にある繊維形状の物が好ましい。すなわち、微細化セルロースの形状としては、繊維状であることが好ましい。
繊維状の微細化セルロースは、短軸径において数平均短軸径が1nm以上100nm以下であればよく、好ましくは2nm以上50nm以下であればよい。ここで、数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、金属微粒子を析出させるための足場として用いることができない。一方、数平均短軸径が100nmを超えると、金属微粒子に対してサイズが大きくなり過ぎるため、金属微粒子のサイズや形状を制御することが困難となる。繊維状の微細化セルロースの数平均長軸径については特に制限はないが、好ましくは数平均短軸径の10倍以上である。数平均長軸径が数平均短軸径の10倍未満であると、金属微粒子のサイズや形状を十分に制御することができない場合がある。
繊維状の微細化セルロースの数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その算術平均をとることにより求められる。一方、繊維状の微細化セルロースの数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その算術平均をとることにより求められる。
繊維状の微細化セルロースの原料として用いることができるセルロース原料の種類や結晶構造は特に限定されない。具体的には、セルロースI型結晶からなるセルロース原料としては、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。さらには、セルロースII型結晶からなるレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースも用いることができる。材料調達の容易さの観点からは、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプなど、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさの観点からは、針葉樹パルプが好ましい。
セルロースの結晶表面に導入されるアニオン性官能基の種類は特に限定されないが、カルボキシ基やリン酸基が好ましい。セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさからは、カルボキシ基が好ましい。導入するカルボキシ基の含有量としては、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.0mmol/g以下がより好ましい。カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると、セルロースミクロフィブリル間に浸透圧効果による溶媒進入作用が働かないため、セルロースを微細化して均一に分散させることは難しい。また、5.0mmol/gを超えると化学処理に伴う副反応によりセルロースミクロフィブリルが低分子化するため、高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、金属微粒子の成長足場材として機能しにくくなる。
木材由来のセルロースの繊維表面にカルボキシ基を導入する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行ってもよい。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースとを直接反応させることによりカルボキシ基を導入してもよい。さらには、水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、TEMPO(後述)をはじめとするN−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法を用いてもよい。
上述したN−オキシル化合物の例としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、等が挙げられる。その中でも、カルボキシ基導入部位の選択性および環境負荷低減の観点からは、TEMPOが好ましい。
N−オキシル化合物の使用量は、触媒として機能する程度の量であればよく、特に限定されない。一例を挙げると、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01〜5.0質量%程度である。
N−オキシル化合物を用いた酸化方法としては、木材系天然セルロースを水中に分散させ、N−オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N−オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N−オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、このオキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。このような酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。
共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を促進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性等の観点からは、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量であればよく、特に限定されない。一例を挙げると、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜200質量%程度である。
また、第一工程において、N−オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性の観点からは、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量であればよく、特に限定されない。一例を挙げると、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜50質量%程度である。
酸化反応の反応温度は、4〜80℃が好ましく、10〜70℃がより好ましい。4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなる。80℃を超えると副反応が促進することにより試料が低分子化して高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造が崩壊し、金属微粒子の成長を十分に促進することができないことがある。
酸化処理の反応時間は、反応温度、導入するカルボキシ基の量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、一例を挙げると、10分〜5時間程度である。
酸化反応時の反応系のpHは、9〜11が好ましい。pHが9以上であると反応を効率よく進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されるおそれがある。酸化処理においては、酸化の進行に伴ってカルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下するため、酸化処理中、反応系のpHを9〜11に保つことが好ましい。反応系のpHを9〜11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
添加するアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の無機アルカリや、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液等の有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面からは、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
N−オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止する。このとき、反応系のpHは上述した範囲内に保つことが好ましい。添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させる観点からは、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性を考慮すると、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま第二工程に供してもよいが、N−オキシル化合物等の触媒や、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては蒸留水が好ましい。
(第二工程)
第二工程では、第一工程においてアニオン性官能基が導入されたセルロース原料を溶媒中で解繊し、微細化セルロース分散液を得る。
TEMPO酸化処理を施した木材系のセルロース原料を第二工程に用いる場合、溶媒中の水の割合が50%以下になると木材由来の微細化セルロースの分散が阻害され、金属微粒子と微細化セルロースとの均一な複合体形成が難しくなる。水以外に含まれる溶媒としては親水性溶媒が好ましい。親水性溶媒については特に制限は無いが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。必要に応じて、セルロースや生成された微細化セルロースの分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、上述したアルカリ水溶液と同様のものが挙げられる。
第二工程では、アニオン性官能基が導入されたセルロース原料を含む懸濁液に物理的解繊処理を施して、セルロース原料を微細化して微細化セルロースを形成する。物理的解繊処理の方法としては特に限定されないが、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を、例えば、上述したTEMPO酸化セルロースに行うことで、懸濁液中のセルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有する微細化セルロースの分散液を得ることができる。第二工程における物理的解繊処理の時間や回数を変更することにより、第二工程後の分散液に含まれる微細化セルロースの数平均短軸径および数平均長軸径を調節することができる。
以上により、アニオン性官能基が導入された微細化セルロース分散液が得られる。第二工程後の分散液は、そのまま、または希釈、濃縮等を行ったあと、第三工程において、金属微粒子を還元析出させる反応場として用いられる。
第二工程後の分散液は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、特に限定されず、最終物質である乾燥固形物の用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、等が挙げられる。
(第三工程)
第三工程では、第二工程で得られた微細化セルロース分散液と、1種類以上の金属イオンを含有する金属イオン含有溶液とを混合して混合溶液を得る。
金属イオン含有溶液は、金属微粒子の原料となる、金属または金属を含む化合物を水などの溶媒に溶解させることにより得られる。第二工程で得られた微細化セルロース分散液を攪拌しながら、金属イオン含有溶液を少しずつ添加することにより、微細化セルロース分散液と金属イオン含有溶液との混合溶液が得られる。
金属イオン含有溶液の具体的組成は特に限定されない。銀を用いる場合は例えば硝酸銀水溶液を用いることができ、金を用いる場合は例えば塩化金酸水溶液を用いることができる。
金属微粒子の一態様である平板状銀ナノ粒子または平板状金ナノ粒子は、その制御された形状により、可視光線から近赤外光線にわたる任意の波長光を吸収することが可能であり、乾燥固形物の用途に合わせてLSPR等の所望の光学特性を容易に付与することができる。
金属微粒子が銀を含む場合、銀そのものが多菌種に対し抗菌性を有しながらも人体に対し不活性であることから、保存性、安全性の良好な乾燥固形物を得ることができる。
また、銀を用いて複合体を形成することで抗菌性を付与できることから、微細化セルロースの耐腐食性も改善することができる。金属微粒子の材料として、銀以外の複数の金属種を用いて金属イオン含有溶液を調製することも可能である。この場合、析出した銀微粒子の周りを銀より貴な金属あるいはシリカ等の金属酸化物などで被覆して、銀微粒子の安定性を向上させてもよい。
(第四工程)
第四工程では、第三工程で得られた混合溶液中の金属イオンを還元して1種以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子を成長させるとともに、金属微粒子と微細化セルロースとを複合化する。この際、金属微粒子の異方成長を促進して平板状金属微粒子としてもよい。
木材由来の微細化セルロース分散液中に平板状銀微粒子を析出させ複合体を製造する方法としては、特に限定されないが、少なくとも銀を含む金属イオン含有溶液と微細化セルロース分散液との混合溶液に還元剤を添加することにより、銀を容易に析出させることができる。
還元に用いる還元剤に関しても特に限定されない。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、ヒドロキノン、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン等が用いられる。安全性や価格の観点からは、アスコルビン酸、クエン酸、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
金属微粒子の異方成長を促進し、平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体を好適に形成するためには、還元析出処理時に用いられる金属イオンの総量が、微細化セルロース1gに対して0.0005mmol以上0.4mmol以下の範囲にあることが好ましく、0.001mmol以上0.2mmol以下の範囲にあることがさらに好ましく、0.002mmol以上0.1mmol以下の範囲にあることが特に好ましい。
図2は、本実施形態における第四工程の一部を説明するための模式図である。
第四工程では、まず、混合溶液中への還元剤の添加により、微細化セルロース3に設けたカルボキシ基を起点に金属の析出が始まる。そして、析出した金属は一次粒子(金属微粒子)2aを形成する(図2における左側参照)。この状態で金属微粒子/微細化セルロース複合体が生成される。さらに反応条件を制御することによって、これらの一次粒子2aを起点として、平板状の金属微粒子(すなわち、平板状金属微粒子)2を形成することも可能である。この際、微細化セルロース3の第一部分3aが金属結晶に結合するとともに第二部分3bが平板状金属微粒子の周囲に露出した状態で複合化する(図2における右側参照)。
第四工程により、本実施形態における複合体の一態様である金属微粒子2aと微細化セルロース3との複合体や、平板状金属微粒子2と微細化セルロース3との複合体1を得ることができる。第四工程において、金属が析出しなかった微細化セルロースは、そのまま混合溶液中に残留して遊離微細化セルロースとなる。したがって、第四工程により、金属微粒子/微細化セルロース複合体と遊離微細化セルロースとを含む分散液が得られる。
(第五工程)
第五工程では、第四工程で得られた金属微粒子/微細化セルロース複合体を含む分散液から溶媒を除去して乾燥固形物を得る。
分散液に含まれる複合体において、金属微粒子が担持された微細化セルロース3は第二部分3bを有するため、溶媒の除去に伴って複合体同士が接近しても、金属微粒子同士が結合することが好適に抑制される。さらに、複合体の周囲に存在する遊離微細化セルロースも、複合体の金属微粒子同士の結合抑制に寄与する。その結果、金属微粒子の接触による結合や凝集等が防止されつつ、再分散された際に所望の特性を発揮可能な状態で乾燥される。
分散液から溶媒を除去する方法は特に限定されないが、例えば熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射、エバポレーション、真空乾燥、凍結真空乾燥、超臨界乾燥など、公知の乾燥方法を適宜選択して用いることができる。乾燥条件としては、特に限定しないが、乾燥温度としては200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。200℃以上ではセルロースが熱分解してしまうおそれがある。凍結真空乾燥は、絶乾状態を得やすいため、固形分率を高めたい場合に有用である。
最終産物としての乾燥固形物の形態も特に限定されない。例えば所望の容器等に分散液をキャストし、熱乾燥によって溶媒を除去することによってフィルム状の乾燥固形物を得てもよいし、ナスフラスコに分散液を封入して、凍結真空乾燥法により多孔質形状を有する乾燥固形物を得てもよい。また、これらの乾燥固形物を粉砕処理することにより、粉体の乾燥固形物を得てもよい。粉砕方法は特に限定されないが、例えばビーズミル粉砕、ボールミル粉砕、凍結粉砕を用いることができる。
以上説明したように、本実施形態の乾燥固形物は、環境への負荷が低く、簡便な手順で、金属微粒子/微細化セルロース複合体を含む乾燥固形物を、溶媒に再分散可能な形で提供することができる。
本実施形態の製造方法により得られる乾燥固形物は、第四工程で得られる分散液に比して、金属微粒子/微細化セルロース複合体をはるかに高濃度で含有しているため、輸送費の削減や添加率向上のために好適である。更に、乾燥固形物は溶媒に再分散可能であり、再分散後も金属微粒子由来の局在表面プラズモン共鳴等の所望の特性を維持しているため、有用である。
さらに、乾燥固形物に含まれる遊離微細化セルロースは、第五工程において、複合体の金属微粒子の外面を膜状に被覆する。微細化セルロースはバリア性を有するため、金属微粒子の外面を膜状に被覆する遊離微細化セルロースは、金属微粒子を構成する金属元素が大気中の元素と接触・反応することを好適に防止する。これにより、その特性を維持したまま乾燥状態で輸送することが不可能であった金属ナノ粒子を、凝集や劣化等の心配なく効率よく輸送することが可能となる。
なお、発明者らは、第四工程で得られた平板状銀ナノ粒子を含む分散液から遊離微細化セルロースを除去した後に乾燥して放置したところ、銀鏡反応を生じ、分散液の状態で発揮されていたLSPRが失われることを確認している。
加えて、遊離微細化セルロースは透明度が高いため、再分散後に除去しなくても、局在表面プラズモン共鳴等の光学特性にほとんど影響しない。したがって、用途によっては、再分散後に遊離微細化セルロースの分離除去等の処理を行うことなく使用が可能であり、この観点からも使用性に優れている。
本実施形態の製造方法において、第二工程の分散液における微細化セルロースの濃度は特に限定されないが、0.01%以上20%未満であることが好ましい。0.01%未満では溶媒が多すぎ各種用途における生産性が不十分となる。20%以上では微細化セルロース同士の絡み合いで粘度が急激に上昇し、第三工程における均一な攪拌が難しくなる。
また、第三工程の金属イオン含有溶液における金属イオン濃度は特に限定されないが、第三工程で得られる混合溶液中の金属イオン量が微細化セルロース表面に存在するカルボキシ基量未満となるように調製されることが好ましい。混合溶液中の金属イオン量が微細化セルロース表面に存在するカルボキシ基量を上回ってしまうと微細化セルロースが凝集してしまうためである。
さらに、第四工程の混合溶液における還元剤の濃度は特に限定されないが、金属イオン濃度と同等以上であることが好ましい。混合溶液中の還元剤濃度が金属イオン濃度以下であると、未還元の金属イオンが混合溶液中に残存してしまうためである。
また、金属微粒子が平板状に析出する場合、微細化セルロース濃度、金属イオン濃度および還元剤濃度の三条件は、析出する平板状金属微粒子のアスペクト比を決定する。すなわち、これらの三条件を適切な値に設定することで、目的とする波長に吸収ピークを有する平板状金属微粒子/微細化セルロース複合体を適宜形成することが可能である。なお、傾向として金属イオン濃度が低くなると平板状金属微粒子のアスペクト比が上昇し、金属イオン濃度が高くなるとアスペクト比は低下する。
上述した、微細化セルロース濃度、金属イオン濃度、および還元剤濃度と、得られる平板状金属微粒子/微細化セルロース複合体のアスペクト比の関係については、理論的なメカニズムは不明な点が多い。平板状金属微粒子と微細化セルロースとの複合体の具体的な作製法については、後述する実施例においても詳細を記している。
本実施形態の製造方法において、第四工程で形成される複合体として、還元析出した金属微粒子が球状のものと平板状のものが混在する場合がある。したがって、第五工程に進む前に、遠心分離等により所望でない金属微粒子を含む複合体が除去されてもよい。
例えば、少なくとも銀を含む直径が数nmの球状金属微粒子は、波長400nm付近の光を吸収するために黄色味を呈するが、遠心分離等によってこれらの球状金属微粒子を含む複合体を除去することにより、平板状銀微粒子/微細化セルロース複合体の共振ピークに由来する波長のみを吸収する光学材料のみを含んだ乾燥固形物を得ることができる。
他の例として、平板状銀微粒子または平板状金微粒子と微細化セルロースとの複合体のうち、アスペクト比が所定値以上であると、可視光透過率の高い近赤外線吸収材料として用いることが可能であるため、遠心分離等によってこれらのアスペクト比が所定値未満の複合体を除去することにより、可視光透過率の高い近赤外線吸収材料のみを含んだ乾燥固形物を得ることができる。
本実施形態に用いる微細化セルロースとして、上述した特許文献4に記載の方法に従い、各種セルロースをTEMPO触媒酸化することにより微細化したものを用いると、微細化セルロースの短軸径が3nm程度とカーボンナノチューブ並みに極細であることから、分散液およびそれを用いた成型体の高透明性をも達成することができる。その場合、例えば、金属微粒子のLSPR特性を妨げることがないため、光学部材として好適に用いることが可能である。また、TEMPO酸化によって作製された微細化セルロースは、その他の種類の微細化セルロースよりも金属微粒子の異方成長を均質に、かつ再現性良く達成する。この詳細なメカニズムは不明ではあるが、短軸径が3nm程度で揃っており、金属イオンと相互作用するカルボキシ基を有し、且つこのカルボキシ基が微細化セルロース結晶表面に等間隔に固定化された構造が原因ではないかと推察される。すなわち、本実施形態の製造方法において微細化セルロース繊維の種類は特に限定されないが、上述した形状制御能および透明性の観点からは、カルボキシ基が導入された微細化セルロース繊維が好ましく、価格および供給の面からは木材をTEMPO酸化することで得られる微細化セルロースがより好ましい。
続いて、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特にことわりのない限り、質量%(w/w%)を示す。
<実施例1>
実施例1から6は、金属として銀を用いた乾燥固形物の実施例である。
(木材セルロースのTEMPO酸化:第一工程)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの重量に対して、水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
(酸化パルプのカルボキシ基量測定)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプおよび再酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
(酸化パルプの解繊処理:第二工程)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、濃度1%の微細化セルロース水分散液を得た。この分散液を光路長1cmの石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所社製、「UV−3600」)を用いて分光透過スペクトルの測定を行った結果を図3に示す。図3から明らかなように、微細化セルロース水分散液は高い透明性を示した。微細化セルロース水分散液に含まれる微細化セルロースの数平均短軸径は3nm、数平均長軸径は1110nmであった。図4に、レオメーターを用いて微細化セルロース水分散液の定常粘弾性測定を行った結果を示す。図4から明らかなように、微細化セルロース水分散液はチキソトロピック性を示した。
(硝酸銀水溶液(金属イオン含有溶液)の調製)
硝酸銀50mgを蒸留水10mLに溶解させ、硝酸銀水溶液を調製した。
(水素化ホウ素ナトリウム水溶液の調製)
水素化ホウ素ナトリウム50mgを蒸留水10mLに溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。
(銀微粒子と微細化セルロースとの複合体の作製:第三工程および第四工程)
上述した1%微細化セルロース水分散液100gを温度一定(15℃)に保ち攪拌しながら、硝酸銀水溶液4mLを添加した。5分攪拌を続けたのち、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を4mL添加し、さらに30分ほど攪拌を続けることによって銀微粒子と微細化セルロースとの複合体(金属微粒子/微細化セルロース複合体)を作製した。
(複合体の形状観察)
得られた銀微粒子と微細化セルロースとの複合体分散液50gを、高速冷却遠心機を用い、75,600g(30分×5セット)の条件で精製・分画した。精製済みの銀微粒子を酢酸ウラニルによるネガティブ染色法を用いてTEM観察を行った。透過型電子顕微鏡はJEM1400Plus(日本電子)を用い、加速電圧は100kvとした。結果を図5に示す。銀微粒子と微細化セルロースとの同時観察を行うことで、微細化セルロースと銀微粒子とが相互に結合した状態が確認された。
精製済みの銀微粒子と微細化セルロースとの複合体をPETフィルム上にキャストし、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、「JEM2100F」)を用いて断面方向から観察した。結果を図6に示す。また、図5および図6の結果から、得られた複合体における金属微粒子の形状を特定した。
(複合体の分光透過スペクトル測定)
銀微粒子と微細化セルロースとの複合体分散液50gを、高速冷却遠心機を用い、75,600g(30分×1セット)の条件で精製・分画し複合体ペーストを得た。得られた複合体ペーストを、水を用いて再希釈し、光路長1cmの石英セルに入れ、分光光度計(UV−3600)を用いて分光透過スペクトルを測定し、LSPR由来の共振ピーク波長λmaxの値を調べた。
上記複合体ペーストの固形分濃度は6.32%であった。さらに、原子吸光分光光度計(日立ハイテクサイエンス製 ZA3700)を用いて複合体ペーストの固形分における銀の重量比率を測定したところ、2.78%であった。したがって、複合体ペーストの固形分におけるセルロースの割合は、約97%であった。
(乾燥固形物の作製:第五工程)
上述の複合体ペーストを再希釈し、ナスフラスコに封入して凍結真空乾燥し、溶媒を完全に除去して乾燥固形物を得た。得られた乾燥固形物をさらにビーズミルで処理し、粉体状にした。光学顕微鏡で粉体の粒径を観察したところ、粒径100から500μmほどの粒子サイズであった。また、粉体の一部を105℃のオーブンでさらに3時間熱乾燥し、熱乾燥前後の重量変化の差分を取ることによって固形分率を測定したところ、99.9%であった。
また、図示を省略するが、乾燥固形物のSEM観察により、複合体における銀微粒子の外面が膜状の微細化セルロースに覆われた状態であることを確認した。
(乾燥固形物再分散液の分光透過スペクトル測定)
粉体状の乾燥固形物をスクリュー管に封入し、ペースト希釈品と同様の固形分濃度になるように純水を添加し、攪拌子で3時間攪拌し、乾燥固形物の再分散液を得た。この再分散液について、上述の手順で分光透過スペクトルを行い、乾燥前の分散液のスペクトルと比較した。
<実施例2>
硝酸銀水溶液の添加量を2mLとした点を除き、実施例1と同様の条件で実施例2の乾燥固形物を作製した。
<実施例3>
硝酸銀水溶液の添加量を1mLとした点を除き、実施例1と同様の条件で実施例3の乾燥固形物を作製した。
<実施例4>
微細化セルロースの濃度を1.5%、硝酸銀水溶液の添加量を6mL、水素化ホウ素ナトリウム水溶液の添加量を6mLとした点を除き、実施例1と同様の条件で実施例4の乾燥固形物を作製した。
<実施例5>
硝酸銀水溶液の添加量を10mLとした点を除き、実施例1と同様の条件で実施例5の乾燥固形物を作製した。
<実施例6>
第五工程の乾燥条件を、105℃で1時間真空乾燥とした点を除き、実施例1と同様の条件で実施例6の乾燥固形物を作製した。
<実施例7>
実施例7は、金属として金を用いた乾燥固形物の実施例である。
(塩化金酸水溶液(金属イオン含有溶液)の調製)
2.47M塩化金酸水溶液を田中貴金属工業株式会社より購入し、水を用いて希釈して1.0mM塩化金酸水溶液を調製した。
(水素化ホウ素ナトリウム水溶液の調製)
水素化ホウ素ナトリウムを蒸留水に溶解し、12mM水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。
(金微粒子と微細化セルロースとの複合体の作製:第三工程および第四工程)
第一工程および第二工程は実施例1と同一である。
第二工程で得られた微細化セルロース水分散液を希釈して固形分を0.2%に調節した。0.2%微細化セルロース水分散液20gを温度一定(25℃)に保ち攪拌しながら、上述した1.0mM塩化金酸水溶液20gを添加した。30分攪拌を続けたのち、上述した12mM水素化ホウ素ナトリウム水溶液を20g添加し、さらに90分ほど攪拌を続けることによって金微粒子と微細化セルロースの複合体(金属微粒子/微細化セルロース複合体)を作製した。
(複合体の形状観察)
金微粒子と微細化セルロースの複合体分散液を、TEM観察用グリッドにキャストし、TEM観察を行った。観察時の加速電圧は80kvとした。
(乾燥固形物)
金微粒子と微細化セルロースの複合体分散液に対し、実施例1と同一の第五工程を行うことにより、実施例7の乾燥固形物を得た。
実施例7においても、実施例1と同様に分光透過スペクトル測定を行い、再分散性を評価した。
<比較例1>
市販の導電性銀ナノインク(NBSIJ―MU01、三菱製紙株式会社)に対して実施例1と同一の第五工程を行うことにより、比較例1の乾燥固形物を得た。
乾燥前の銀ナノインクおよび乾燥固形物を用いて実施例1と同様に形状観察と分光透過スペクトル測定を行い、再分散性を評価した。
<比較例2>
市販の銀ナノプレート分散液(JMW1080、ナノコンポジクス社)に対して実施例1と同一の第五工程を行うことにより、比較例2の乾燥固形物を得た。
乾燥前の銀ナノプレート分散液および乾燥固形物を用いて実施例1と同様に形状観察と分光透過スペクトル測定を行い、再分散性を評価した。
結果を表1に示す。表1における再分散性は、以下をすべて満たすものを「○(good)」、そうでないものを「×(bad)」とする2段階で評価した結果である。
・乾燥の前後で、分散液の分光透過スペクトルにおけるλmaxが同一である
・目視で再分散液中に凝集物を認めない
各実施例においては、再分散性が良好であり、複合体の光学特性が好適に保持されていることが確認された。
本発明の乾燥固形物に含まれる金属微粒子/微細化セルロース複合体は、結晶性の剛直な微細化セルロースの繊維に金属微粒子が固定されているため、溶媒が除去されても複合体を形成する微細化セルロースおよび遊離微細化セルロースによって金属微粒子同士の接触が妨げられ、金属微粒子由来のLSPR特性等を損なうことなく再分散が可能になったと推測される。
さらに、本発明の乾燥固形物の製造方法では、第四工程において金属イオンが還元される際に、微細化セルロースからケトン基やアルデヒド基が除去される。ケトン基やアルデヒド基に関しては、微細化セルロースの再分散を阻害する可能性が指摘されているが、本発明の乾燥固形物の製造方法では、第四工程を備えることにより、金属微粒子を含む複合体のみならず、遊離微細化セルロースも好適に再分散する。その結果、再分散液において遊離微細化セルロースが凝集することはなく、再分散液は好適な透明性を示す。したがって、再分散液の利用にあたり遊離微細化セルロースを除去する等の煩雑な処理は必要なく、再分散後の使用性にも優れている。
実施例1における乾燥前後の分光透過スペクトルを図7に、実施例6における乾燥前後の分光透過スペクトルを図8に、それぞれ示す。実施例1および実施例6のいずれにおいても、乾燥前のスペクトルと乾燥後再分散液のスペクトルとがほぼ一致していることがわかる。
実施例1から6の乾燥固形物中の複合体は、乾燥履歴を経ていても銀微粒子同士が凝集することなく、ナノレベルで均一に再分散可能であり、LSPRに由来する共振ピークλmaxも乾燥前後で変化がないことが確認された。
実施例5における銀微粒子/微細化セルロース複合体の走査透過電子顕微鏡(STEM)観察像を図9に示す。実施例5では、銀微粒子は球状を呈した。また、複合体分散液のλmaxは400nmであり、黄色味を呈した。実施例5においても、乾燥固形物の再分散性は良好であった。
図9において、細い網目状に見えるものが微細化セルロースである。微細化セルロース上に存在する微小な黒点(例えば、図9に一点鎖線で示す領域A内を参照。)が銀微粒子である。
実施例7における金微粒子/微細化セルロース複合体のTEM観察像を図10に示す。実施例7においては、球状の金ナノ粒子と繊維状の微細化セルロースとが複合体を形成していた。また、複合体分散液のλmaxは約511nmであり、赤味を呈した。実施例7においても、乾燥固形物の再分散性は良好であった。
図5は、実施例1における銀微粒子/微細化セルロース複合体を透析処理および遠心分離処理で精製したのち、酢酸ウラニルによるネガティブ染色法を用いてTEM観察を行った像である。図5では、ネガティブ染色効果により、銀微粒子とそれに結合した微細化セルロースが同一視野内で明瞭に観察されている。また、驚くべきことに遠心分離による分画精製処理後にもかかわらず、観察された微細化セルロースは必ず銀微粒子に結合した状態であった。この結果は、実施例1に係る複合体において、銀微粒子と微細化セルロースとが不可分の状態で結合していることを示す証拠である。
図6は、実施例1における銀微粒子/微細化セルロース複合体を、TEMによって断面方向から観察した像である。図6に示すように、断面方向から見た銀微粒子の形状は長方形であり、短軸方向の長さは約10nmであったことから、実施例1の複合体における銀微粒子の形状は平板状(プレート状)であることが確認された。
図示を省略するが、実施例2から4に係る複合体も、平板状銀微粒子と微細化セルロースとから形成されており、その厚みは10nm程度であった。これらの複合体は、平板状銀微粒子の形状に由来して、可視光〜近赤外光領域における波長選択的なLSPR特性を示す。平板状銀微粒子の厚みがどの実施例においても概ね同一であったことから、硝酸銀水溶液添加量を調節することにより平板状銀微粒子の面方向における粒径サイズを選択的に制御可能であることが示された。
一方、比較例1および2の乾燥固形物は、再分散性が不良であった。
比較例1においては、分散後のλmaxに変化は無かったが、再分散液中に目視で凝集体が認められ、ナノレベルで均一には分散していなかった。また、乾燥固形物の再分散液において、λmaxの波長における透過率が乾燥前に比して高くなっていた。これは、銀微粒子の一部のみが分散したに過ぎないため、再分散時に分散液の吸光度が下がってしまったことによるものと考えられる。
比較例2においては、再分散液の測定において明瞭な透過率のピークを得ることができず、λmaxを特定することができなかった。これは、第五工程において金属微粒子同士が接触し、金属微粒子の結晶面同士がスタッキングすることによって凝集が促進され、金属微粒子のもともとの粒子形状に由来するLSPR効果が生じなくなったことによるものと考えられる。すなわち、比較例2においては、乾燥固形物としたことにより金属微粒子の特性が失われたと言える。
以上、本発明の実施形態および実施例について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態および実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
1 複合体
2 金属微粒子
3 微細化セルロース
3a 第一部分
3b 第二部分

Claims (11)

  1. 少なくとも結晶表面にアニオン性官能基を有する微細化セルロースの表面上に、1種以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子が担持されてなる金属微粒子/微細化セルロース複合体と、
    前記金属微粒子が担持されていない遊離微細化セルロースと、
    を含み、
    前記金属微粒子/微細化セルロース複合体の表面が前記遊離微細化セルロースに覆われている、
    乾燥固形物。
  2. 前記乾燥固形物におけるセルロースの含有率が30質量%以上である、請求項1に記載の乾燥固形物。
  3. 前記金属微粒子が少なくとも金、銀、白金、パラジウムより選ばれた1種類以上の金属またはその化合物を含む、請求項1または2に記載の乾燥固形物。
  4. 前記アニオン性官能基の含有量が、セルロース1gあたり0.1mmol以上5.0mmol以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の乾燥固形物。
  5. 前記微細化セルロースの結晶構造が、セルロースI型である、請求項1から4のいずれか一項に記載の乾燥固形物。
  6. 前記微細化セルロースの形状が、天然セルロースのミクロフィブリル構造由来の繊維状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の乾燥固形物。
  7. 前記微細化セルロースは、数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の乾燥固形物。
  8. 前記金属微粒子が平板状である、請求項1から7のいずれか一項に記載の乾燥固形物。
  9. セルロース原料にアニオン性官能基を導入する第一工程と、
    前記アニオン性官能基が導入された前記セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る第二工程と、
    前記微細化セルロース分散液と、1種類以上の金属イオンを含有する金属イオン含有溶液とを混合して混合溶液を得る第三工程と、
    前記混合溶液中の前記金属イオンを還元して、1種以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子を成長させることにより前記混合溶液中に金属微粒子/微細化セルロース複合体を形成し、前記金属微粒子/微細化セルロース複合体と遊離微細化セルロースとを含む分散液を得る第四工程と、
    前記分散液から溶媒を除去して乾燥固形物を得る第五工程と、
    を備える、
    乾燥固形物の製造方法。
  10. 前記第五工程が凍結真空乾燥により行われる、
    請求項9に記載の乾燥固形物の製造方法。
  11. 前記第一工程において、前記アニオン性官能基が、セルロース1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下導入される、
    請求項9または10に記載の乾燥固形物の製造方法。
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