JP2019053930A - 水系リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
水系電解液が有する上記の課題を解決する手段の一つとして、非特許文献1には、特定の2種類のリチウム塩と水とを所定の割合で混合してなるハイドレートメルトと呼ばれる高濃度水系電解液が開示されている。非特許文献1においては、このような高濃度水系電解液を用いることで、従来の水系リチウムイオン電池では負極活物質として使用が困難であったLi4Ti5O12(以下「LTO」という場合がある。)を負極活物質として使用して、水系リチウムイオン二次電池の充放電を確認している。
これは、集電体と水系電解液の反応電位より卑な充電電位を有するLTO等の負極活物質を用いると、負極活物質の充電電位が水系電解液の電位窓に収まっていないため、水系電解液が負極活物質の充電電位よりも貴な電位で電気化学的に還元分解する。その結果、電解液の還元分解反応に電流が消費され、負極活物質の充電反応が進行しないためであると考えられる。
また、非特許文献1においては、水系電解液として高濃度水系電解液を用い、負極集電体としてAlを用いることによって、水系電解液の還元側電位窓を拡大させ、負極活物質としてLTOを備える水系リチウムイオン二次電池の充放電を可能としている。
しかし、水系リチウムイオン二次電池において、集電体と水系電解液の反応電位より卑な充電電位を有するLTO等の負極活物質を用いた場合、二次電池としてのサイクル安定性が悪いという問題がある。
本開示は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本開示の目的は、二次電池としてのサイクル安定性を確保できる水系リチウムイオン二次電池を提供することである。
前記負極活物質と前記水系電解液とを用いたサイクリックボルタンメトリー測定により観測される還元ピーク電流値から算出される前記負極活物質の充電電位が、前記水系電解液のカーボンでの還元分解電位よりも貴な電位であり、且つ、前記水系電解液の前記負極集電体での還元分解電位よりも卑な電位であり、
前記負極集電体は、表面にカーボンコート層を有することを特徴とする。
本開示の水系リチウムイオン二次電池において、前記水系電解液のpHが3以上11以下であってもよい。
本開示の水系リチウムイオン二次電池において、前記電解質が、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであってもよい。
本開示の水系リチウムイオン二次電池において、前記負極集電体は、Al、Zn、Sn、Ni、SUS、及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種の材料であってもよい。
前記負極活物質と前記水系電解液とを用いたサイクリックボルタンメトリー測定により観測される還元ピーク電流値から算出される前記負極活物質の充電電位が、前記水系電解液のカーボンでの還元分解電位よりも貴な電位であり、且つ、前記水系電解液の前記負極集電体での還元分解電位よりも卑な電位であり、
前記負極集電体は、表面にカーボンコート層を有することを特徴とする。
図1に示すように、水系電解液11の一方の面に負極17が存在し、水系電解液11の他方の面に正極16が存在する。正極16、及び、負極17は、水系リチウムイオン二次電池において水系電解液11に接触させて使用される。なお、本開示の水系リチウムイオン二次電池は、必ずしもこの例のみに限定されるものではない。
本開示の水系リチウムイオン二次電池においては、負極活物質層と正極活物質層との間にセパレータが設けられていてもよく、当該セパレータと負極活物質層と正極活物質層とは、ともに水系電解液に浸漬されていてもよい。
また、本開示の水系リチウムイオン二次電池においては、負極集電体は表面にカーボンコート層を有している。
水系電解液は、負極活物質層及び正極活物質層の内部に浸透していてもよく、負極集電体及び正極集電体と接触していてもよい。
負極は、負極活物質層と、当該負極活物質層の集電を行う負極集電体を備える。
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有し、必要に応じ、導電助剤、及び、バインダーを含有する。
本開示において、水系電解液のカーボンでの還元分解電位とは、水系電解液がカーボンに接触することにより還元分解する電位であり、約1.3V(vs. Li/Li+)である。
水系電解液の負極集電体での還元分解電位の算出方法は、例えば、水系電解液を用いて負極集電体についてCV測定を実施する。そして、CV測定で得られる1サイクル目のサイクリックボルタモグラムにおいて、卑電位方向に掃引した時に観測される還元側の電解電流(ファラデー電流)が流れる直前の変曲点の電位を水系電解液の負極集電体での還元分解電位として算出してもよい。なお、還元分解電位は、測定誤差を小さくする観点から、CV測定に用いる水系電解液の溶媒の種類(例えば水)、電解質の種類(例えばLiTFSI)、当該電解質の濃度(例えば21mol/kg)、CV測定時の掃引速度(例えば1mV/s)等の条件を統一して算出してもよい。また、CV測定時の掃引速度は、特に限定されないが、上限値は10mV/s以下であってもよく、測定誤差を小さくする観点から、1mV/s以下であってもよく、下限値は、0.1mV/s以上であってもよい。
したがって、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定により観測される還元ピーク電流値から算出される前記負極活物質の充電電位が、前記水系電解液のカーボンでの還元分解電位よりも貴な電位であり、且つ、前記水系電解液の前記負極集電体での還元分解電位よりも卑な電位であるとは、負極活物質が、下限値が1.3V(vs. Li/Li+)を超え、上限値は負極集電体の材料によって変動するが、例えばAlの場合は1.74Vvs. Li/Li+未満の範囲に充電電位を有することを意味する。
なお、LTOの上記CV測定により観測される還元ピーク電流値から算出される充電電位は約1.5〜1.65V(vs. Li/Li+)である。
また、TiO2の上記CV測定により観測される還元ピーク電流値から算出される充電電位は約1.6V(vs. Li/Li+)である。
具体的には、上記サイクリックボルタモグラムにおいて、卑電位方向に掃引速度1mV/sで掃引した時に観測される還元側の電解電流(ファラデー電流)が流れる直前の変曲点の電位(還元ピークとして立ち上がる直前の電位)を負極活物質の充電電位(還元側電位)としてもよい。なお、負極活物質の充電電位は、測定誤差を小さくする観点から、CV測定に用いる水系電解液の溶媒の種類(例えば水)、電解質の種類(例えばLiTFSI)、当該電解質の濃度(例えば21mol/kg)、CV測定時の掃引速度(例えば1mV/s)等の条件を統一して算出してもよい。また、CV測定時の掃引速度は、上記還元分解電位の算出方法に記載の速度と同様とすることができる。さらに、負極活物質の充電電位の算出に用いる水系電解液と、本開示の水系リチウムイオン二次電池に用いる水系電解液とは、含まれる溶媒の種類、電解質の種類、及び、その他の成分の種類が同じであっても異なっていてもよく、同じであってもよい。また、上記電解質の濃度、上記その他の成分の濃度、及び、上記水系電解液のpHは、同じであっても異なっていてもよいが、同じであってもよい。
一方、本開示において、負極活物質の放電電位とは、負極活物質と水系電解液とを用いたCV測定により観測される酸化ピーク電流値から算出される電位である。
負極活物質の放電電位は、例えば、水系電解液を用いて負極活物質について掃引速度1mV/sでCV測定を実施し、CV測定で得られる1サイクル目のサイクリックボルタモグラムの酸化ピーク電流値から算出することができる。
具体的には、上記サイクリックボルタモグラムにおいて、貴電位方向に掃引速度1mV/sで掃引した時に観測される酸化側の電解電流(ファラデー電流)が流れる直前の変曲点の電位(酸化ピークとして立ち上がる直前の電位)を負極活物質の放電電位(酸化側電位)としてもよい。
さらに、本開示において充放電電位とは、上記充電電位と放電電位の平均値である。
CV測定には、ポテンショスタット、ポテンショ・ガルバノスタット等を用いることができる。
また、電池の使用時の環境に耐えることが可能な金属材料を用いてもよい。
導電助剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
導電助剤の形状は、粉末状、繊維状等、種々の形状を採用できる。
負極活物質層に含まれる導電助剤の量は特に限定されるものではない。例えば、負極活物質層全体を基準(100質量%)として、導電助剤が1質量%以上であってもよく、特に3質量%以上であってもよく、さらに10質量%以上であってもよい。上限は特に限定されるものではないが、90質量%以下であってもよく、特に70質量%以下であってもよく、さらに60質量%以下であってもよい。導電助剤の含有量がこのような範囲であれば、イオン伝導性及び電子伝導性に優れる負極活物質層を得ることができる。
バインダーは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
負極活物質層に含まれるバインダーの量は特に限定されるものではない。例えば、負極活物質層全体を基準(100質量%)として、バインダーが1質量%以上であってもよく、特に3質量%以上であってもよく、さらに5質量%以上であってもよい。上限は特に限定されるものではないが、90質量%以下であってもよく、特に70質量%以下であってもよく、さらに50質量%以下であってもよい。バインダーの含有量がこのような範囲であれば、負極活物質等を適切に結着することができるとともに、イオン伝導性及び電子伝導性に優れる負極活物質層を得ることができる。
負極活物質層の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上1mm以下、特に1μm以上100μm以下であってもよい。
負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状、パンチングメタル状、発泡体等とすることができる。
負極集電体の表面にカーボンコート層を設けずに、そのまま用いた場合、本開示の負極活物質の充電電位は、水系電解液の負極集電体との分解電位よりも卑であるため、水系電解液は負極活物質よりも先に負極集電体と反応して液分解が起こりやすくなる。
一方、負極集電体の表面にカーボンコート層を設けることにより、負極集電体と水系電解液との反応よりも、負極活物質と水系電解液との反応を優先して起こさせることができるようになり、水系電解液が負極集電体に接触することにより生じる液分解を抑制することができ、その結果、電池のサイクル特性を向上させることができる。
カーボンコートに用いるカーボン材料は特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。
カーボンコートの方法は、特に限定されず、例えば、特許文献1に記載の方法を用いることができる。具体的には、導電性の微粒カーボンをグラビア印刷などの印刷によりコーティングしてもよい。また、化学気相成長(CVD)や物理気相成長(PVD)などの蒸着によりコーティングしたものとしてもよいし、スパッタによりコーティングしたものとしてもよい。
カーボンコート層の厚みは、5μm以下であってもよく、1μm程度のものとしてもよい。
カーボンコート層は、負極集電体と水系電解液との接触による負極集電体表面での水系電解液の還元分解を抑制できれば、負極集電体の表面の少なくとも一部を覆っていてもよく、負極集電体への水系電解液の浸み込みを抑制する観点から、負極集電体表面の全体を覆っていてもよい。
また、本開示の水系リチウムイオン二次電池が、電池ケース内に水系電解液が充填され、負極集電体表面全体が水系電解液と接触する形態の場合は、負極集電体は、当該表面全体にカーボンコート層を有していてもよい。
一方、本開示の水系リチウムイオン二次電池が、セパレータに水系電解液が含浸され、当該セパレータと負極活物質層とが接触し、負極集電体が当該セパレータと直接接触しない形態の場合は、カーボンコート層は、負極集電体の表面であって、負極集電体が負極活物質層と接触する面に少なくとも形成されていてもよく、負極集電体の表面全体を被覆していてもよい。
カーボンコートされたか否かは、CVやエネルギー分散型X線分析(EDX)で確認することができる。
正極は、少なくとも正極活物質層を有し、必要に応じ、さらに正極集電体を備える。
正極活物質層は少なくとも正極活物質を含有し、必要に応じ、導電助剤、及び、バインダーを含有する。
なお、正極活物質は1次粒子同士が集合して2次粒子を形成していてもよい。この場合、2次粒子の粒子径は、特に限定されるものではないが、通常0.5μm以上50μm以下である。下限が1μm以上であってもよく、上限が20μm以下であってもよい。正極活物質の粒子径がこのような範囲であれば、イオン伝導性及び電子伝導性に優れる正極活物質層を得ることができる。
正極活物質層に含まれる導電助剤、バインダーの種類は特に限定されるものではなく、例えば、上記負極活物質層に含まれる導電助剤、バインダーとして例示したものから適宜選択して用いることができる。
正極活物質層に含まれる導電助剤の量は特に限定されるものではない。例えば、正極活物質層全体を基準(100質量%)として、導電助剤が0.1質量%以上であってもよく、特に0.5質量%以上であってもよく、さらに1質量%以上であってもよい。上限は特に限定されるものではないが、50質量%以下であってもよく、特に30質量%以下であってもよく、さらに10質量%以下であってもよい。
また、正極活物質層に含まれるバインダーの量は特に限定されるものではない。例えば、正極活物質層全体を基準(100質量%)として、バインダーが0.1質量%以上であってもよく、特に0.5質量%以上であってもよく、さらに1質量%以上であってもよい。上限は特に限定されるものではないが、50質量%以下であってもよく、特に30質量%以下であってもよく、さらに10質量%以下であってもよい。導電助剤やバインダーの含有量がこのような範囲であれば、イオン伝導性及び電子伝導性に優れる正極活物質層を得ることができる。
また、正極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、メッシュ状、パンチングメタル状等、種々の形状とすることができる。
正極は、さらに、正極集電体に接続された正極リードを備えていてもよい。
水系電解液の溶媒は主成分として水を含んでいる。すなわち、電解液を構成する溶媒(液体成分)の全量を基準(100mol%)として、50mol%以上、特に70mol%以上、さらに90mol%以上を水が占めていてもよい。一方、溶媒に占める水の割合の上限は特に限定されない。
通常、水系電解液中の電解質の濃度が高くなるほど、電位窓は広くなるが、溶液の粘度が高くなるためLiイオン伝導度が低下する傾向がある。そのため、一般的には、Liイオン伝導度と電位窓の拡大効果を考慮して、求める電池の特性に合わせて濃度を設定する。
例えば、電解質としてLiTFSIを用いる場合、水系電解液は、上記水1kgあたりLiTFSIを1mol以上含んでいてもよく、特に5mol以上であってもよく、さらに7.5mol以上であってもよい。上限は特に限定されるものではなく、例えば、25mol以下であってもよい。水系電解液においては、LiTFSIの濃度が高まるほど、水系電解液の還元側電位窓が拡大する傾向にある。
なお、本開示に用いる水系電解液の電位窓は、使用する電解質の材質、電解質の濃度、集電体の材料等によって変動するが、例えば、電解質として、LiTFSIを用いた場合、約1.93〜4.94V(vs. Li/Li+)である。
また、水系電解液は、水系電解液のpHを調整するために水酸化リチウム等が含まれていてもよい。
pHの上限は特に限定されないが、酸化側電位窓を高く保つ観点から、pHが11以下であってもよく、特に8以下であってもよい。
本開示の水系リチウムイオン二次電池においては、負極活物質層と正極活物質層との間にセパレータが配置されていてもよい。セパレータは、正極と負極との接触を防止し、水系電解液を保持して電解質層を形成する機能を有する。
セパレータは、水系電解液電池(例えば、NiMH、Zu−Air等)で通常用いられるセパレータであればよく、例えばセルロース系の不織布、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、及びポリアミド等の樹脂等が挙げられる。
セパレータの厚みは特に限定されるものではなく、例えば、5μm以上1mm以下のものを用いることができる。
外装体の形状としては、特に限定されないが、ラミネート型等を挙げることができる。
外装体の材質は、電解質に安定なものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、アクリル樹脂等の樹脂が挙げられる。
(1)負極活物質層を構成する負極活物質等を溶媒に分散させて負極活物質層用スラリーを得る。この場合に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではなく、水や各種有機溶媒を用いることができる。そして、負極集電体の表面をカーボンコートする。その後、ドクターブレード等を用いて負極活物質層用スラリーを、カーボンコート層を有する負極集電体の表面に塗工し、その後乾燥させることで、当該負極集電体の表面に負極活物質層を形成し、負極とする。
(2)正極活物質層を構成する正極活物質等を溶媒に分散させて正極活物質層用スラリーを得る。この場合に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではなく、水や各種有機溶媒を用いることができる。ドクターブレード等を用いて正極活物質層用スラリーを正極集電体の表面に塗工し、その後乾燥させることで、正極集電体の表面に正極活物質層を形成し、正極とする。
(3)負極と正極とでセパレータを挟み込み、負極集電体、負極活物質層、セパレータ、正極活物質層及び正極集電体をこの順に有する積層体を得る。積層体には必要に応じて端子等のその他の部材を取り付ける。
(4)積層体を電池ケースに収容するとともに電池ケース内に水系電解液を充填し、積層体を水系電解液に浸漬するようにして、電池ケース内に積層体及び水系電解液を密封することで、水系リチウムイオン二次電池とする。
カーボン:結着材=92.5:7.5(質量比)になるようにアセチレンブラック(HS−100, 日立化成社製)にPVdF(#9305, クレハ社製)を添加して乳鉢で混合した。N−メチルピロリドン(NMP)を、粘性を確認しながら添加し、乳鉢での混合を均一になるまで続け、その後、軟膏容器に移し、自転・公転方式ミキサー(製品名:泡とり練太郎 Shinky社製)にて3000rpmで10分間混合し、スラリーを得た。得られたスラリーをAl箔上に乗せ、ドクターブレードにより塗工し、カーボンコートAl集電体を得た。
1.電位窓評価
1.1.水系電解液の調製
LiTFSIを水1kgあたり21mol含まれるように調製し、水系電解液を得た。
その後、恒温槽にて30℃で一晩放置した。その後、評価の3時間以上前から、25℃の恒温槽を用いて温度を安定させた。
作用極に参考例1はカーボン板(ニラコ社製)、参考例2はSUS316L箔(ニラコ社製)、参考例3はAl箔、参考例4はカーボンコートAl箔を用い、参考例1〜4は、全て対極にAuを蒸着したSUS板(コイン電池のスペーサー)を用い、開口径φ10mmの対向セルに組み付けた(極板間距離約9mm)。
参照極にAg/AgCl(インターケミ社製)を用い、セルに各種電解液を約2cc注液することで評価セルを作製した。
評価に用いた装置及び条件は以下の通りである。
(装置)
・ 電気化学測定装置:マルチチャンネル ポテンショスタット/ガルバノスタット(Bio Logic社製、型番:VMP3)
・ 恒温槽:LU−124(Espec社製)
・ 条件:カーボン板(参考例1)、SUS316L箔(参考例2)については、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)、1mV/s
・ 条件:Al箔(参考例3)、カーボンコートAl箔(参考例4)については、サイクリックボルタンメトリー(CV)、1mV/s
還元側は開回路電位(OCP、約3.2V vs. Li/Li+)から卑電位側(カソード側)に掃引を開始し、−1.7V vs. Ag/AgCl(約1.5V vs. Li/Li+)を目安に還元側の電解電流(ファラデー電流)が連続的に流れる電位以降で掃引を停止させた。
参考例1のカーボン板を作用極とした評価セル、及び、参考例2のSUS316L箔を作用極とした評価セルのリニアスイープボルタモグラムを重ねて示したグラフを図2に示す。
還元側は開回路電位(OCP、約3.2V vs. Li/Li+)から卑電位側(カソード側)に掃引を開始し、−1.7V vs. Ag/AgCl(約1.5V vs. Li/Li+)を目安に還元側の電解電流(ファラデー電流)が連続的に流れる電位以降で掃引を反転させた。そして、同じ掃引速度で0V vs. Ag/AgCl(約3.2V(vs. Li/Li+)まで掃引した。
参考例3のAl箔(カーボンコート未処理Al箔)を作用極とした評価セル、及び、参考例4のカーボンコートAl箔を作用極とした評価セルの5サイクル目のサイクリックボルタモグラムを重ねて示したグラフを図3に示す。
図2に示すように、参考例1のカーボン板を作用極とした評価セルの場合は、1.3Vvs. Li/Li+付近で還元電流(水の分解電流)が観測されることがわかる。
一方、参考例2のSUS箔を作用極とした評価セルの場合は、2.0Vvs. Li/Li+付近で還元電流(水の分解電流)が観測されることがわかる。
図3に示すように、参考例3のAl箔(カーボンコート未処理Al箔)を作用極とした評価セルは、−1.3Vvs. Ag/AgCl(約1.9V vs. Li/Li+)付近で水の分解電流が観測される。
一方、参考例4のカーボンコートAl箔を作用極とした評価セルは、−1.7V vs. Ag/AgCl(約1.5V vs. Li/Li+)付近で緩やかに、水の分解電流が観測される。これは、下地のAl箔の影響により緩やかではあるが、水の分解反応が起こっているが、カーボンコートにより水の分解が抑制されていると推定される。
したがって、図2に示すように、カーボンはSUSと比べて非常に卑な電位まで水が安定に存在できる事から、図3に示すように、集電体表面をカーボンで被覆する事により集電体の耐電性がカーボンの耐電性と同程度発現されて、下地の集電体の影響が大幅に緩和されていることがわかる。
2.充放電評価
2.1.水系電解液の調製
上記1.1.と同様に水系電解液を調製した。
活物質は作用極(負極)にLi4Ti5O12(LTO)を、対極(正極)にLiMn2O4(LMO)を用いた。
導電助剤にはアセチレンブラック(HS−100, 日立化成社製)、バインダーにはPVdF(#9305, クレハ社製)を用いた。
負極集電体として実施例1は上記[カーボンコート集電体の調製]で準備したカーボンコートAl箔、比較例1はAl箔、比較例2はSUS316L箔を各々用いた。
正極集電体として、実施例1、及び、比較例1〜2は、全てSUS316L箔(ニラコ社製)を用いた。
まず、活物質と導電助剤とを乳鉢で混合した後、PVdFを添加した。活物質と導電助剤とPVdFとの質量比は、活物質:導電助剤:PVdF=85:10:5とした。粘性を確認しながらNMPを添加し、乳鉢混合を続けて均一になった後で、軟膏容器に移し、自転・公転方式ミキサー(製品名:泡とり練太郎 Shinky社製)にて3000rpmで10分間混合した。このようにして得られたスラリーを金属箔上に載せ、ドクターブレードによって塗工した。その後、60℃の乾燥機にて一晩静置して溶媒を乾燥させて電極とした。得られた各電極をφ16mmで打ち抜き、空隙率が40%になるようにロールプレスにかけた。容量はLTOが0.3mAh/cm2、LMOが0.6mAh/cm2となるようにした。
作用極(負極)としてLTO電極、対極(正極)としてLMO電極を用い、開口径φ10mmの対向セルに組み付けた(極板間距離約9mm)。参照極にAg/AgCl(インターケミ社製)を用い、セルに上記で調製した水系電解液を約2cc注液することで評価セルを作製した。
評価に用いた装置及び条件は以下の通りである。
(装置)
・ 電気化学測定装置:マルチチャンネル ポテンショスタット/ガルバノスタット(Bio Logic社製、型番:VMP3)
・ 恒温槽:LU−124(Espec社製)
(条件)
・ 前処理としての電位Holdを行わず、CVにて掃引速度10mV/sでOCPから卑電位側に掃引し、−1.6V vs. Ag/AgCl(約1.6V vs. Li/Li+)にて掃引反転した。そして、同じ掃引速度で0V vs. Ag/AgCl(約3.2V(vs. Li/Li+)まで掃引した。これを100サイクル実施した。
図4にカーボンコートAl箔にLTO電極を塗工した作用極を用いた評価セル(実施例1)、及び、SUS箔にLTO電極を塗工した作用極を用いた評価セル(比較例2)の1サイクル目のサイクリックボルタモグラムを重ねて示したグラフを示す。
また、図5にカーボンコートAl箔にLTO電極を塗工した作用極を用いた評価セル(実施例1)、及び、Al箔にLTO電極を塗工した作用極を用いた評価セル(比較例1)の1サイクル目から100サイクル目までの、CVサイクル数に対する酸化電気量(≒放電容量)(mC)の関係を重ねて示したグラフを示す。CVサイクル数に対する酸化電気量の値を表1に示す。
さらに、図6にカーボンコートAl箔にLTO電極を塗工した作用極を用いた評価セル(実施例1)の1サイクル目から100サイクル目までのサイクリックボルタモグラムを示す。
また、図7にAl箔にLTO電極を塗工した作用極を用いた評価セル(比較例1)の1サイクル目から100サイクル目までのサイクリックボルタモグラムを示す。
なお、図6〜7から、評価セルのサイクル安定性を評価することができる。
図4に示すように、実施例1のカーボンコートAl箔を用いた評価セルは充放電可能であることがわかる。これは、Al箔をカーボンコートすることにより、液分解に対する耐電性が向上し、LTOの充電電位よりも卑な電位で液分解が進行するようになる。そのため、集電体表面での液分解が大幅に抑制され、LTOの充電反応が優先して起こり、LTOの充電反応に電気が十分に消費されるようになり、LTOの放電に帰属される酸化電流のピークが発現したと推定される。
一方、比較例2のSUS箔を用いた評価セルでは充電ができないことがわかる。これは、SUSでは、液分解に対する耐電性が不十分のため、LTOの充電電位よりも貴な電位で液分解が進行する。そのため、LTOの充電反応が起こらず、LTOの放電に帰属される酸化電流のピークが発現しなかったと推定される。
なお、上記の結果からカーボンコートSUS箔を含むAl以外のカーボンコートした金属材料を用いた電池であればカーボンコートAl箔を用いた電池と同様に、充放電が可能であることは自明である。
一方、実施例1のカーボンコートAl箔を用いた評価セルでは、充放電サイクルが60サイクルを超えても、電池の容量維持率を50%以上に保つことができていることがわかる。これはカーボンコートによってAl表面上で生じる水系電解液の分解を抑制しているためと推定される。
しかし、カーボンコートAl箔を用いた評価セルでも充放電サイクルによって電池の容量維持率が低下していくことがわかる。これは、カーボンコート層が完全にAl箔表面への水系電解液の染み込みによる接触を抑制出来ているわけではなく、Al箔表面での水分解反応物(H2ガス)によってカーボンコート層が荒れる事で、充放電サイクルによる電池の劣化が生じるためであると推定される。
12 正極活物質層
13 負極活物質層
14 正極集電体
15 負極集電体
16 正極
17 負極
100 水系リチウムイオン二次電池
Claims (5)
- 水系リチウムイオン二次電池であって、
水及び電解質を含む水系電解液と、負極活物質を含む負極活物質層と、負極集電体とを有し、
前記負極活物質と前記水系電解液とを用いたサイクリックボルタンメトリー測定により観測される還元ピーク電流値から算出される前記負極活物質の充電電位が、前記水系電解液のカーボンでの還元分解電位よりも貴な電位であり、且つ、前記水系電解液の前記負極集電体での還元分解電位よりも卑な電位であり、
前記負極集電体は、表面にカーボンコート層を有することを特徴とする、水系リチウムイオン二次電池。 - 前記負極活物質は、Li4Ti5O12及びTiO2からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項1に記載の水系リチウムイオン二次電池。
- 前記水系電解液のpHが3以上11以下である、請求項1又は2に記載の水系リチウムイオン二次電池。
- 前記電解質が、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水系リチウムイオン二次電池。
- 前記負極集電体は、Al、Zn、Sn、Ni、SUS、及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種の材料である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水系リチウムイオン二次電池。
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