本発明の一実施形態について図1〜図6を参照して説明する。本実施形態では、本発明の冷凍サイクル装置10を定置式冷蔵庫に適用した例について説明する。冷凍サイクル装置10は、冷蔵庫の庫内温度を所望の温度に調整する装置として機能する。
図1に示すように、冷凍サイクル装置10は、圧縮装置12、放熱器14、エジェクタ16、気液分離器18、低段側膨張弁20、蒸発器22等を順次配管で接続した蒸気圧縮式の冷凍サイクルとして構成されている。冷凍サイクル装置10を循環する冷媒としては、通常のフロン系冷媒が採用されている。なお、冷媒としては、二酸化炭素、炭化水素系冷媒等が採用されていてもよい。
圧縮装置12は、低段側圧縮部122および高段側圧縮部124を有する二段昇圧式の圧縮機で構成されている。本実施形態の低段側圧縮部122および高段側圧縮部124は単一のハウジング120の内部に収容されている。
ハウジング120は、耐圧性に優れた金属製の密閉容器で構成されている。ハウジング120には、冷媒を吸入する吸入ポート120a、冷媒を吐出する吐出ポート120b、サイクル内において中間圧となる中間圧冷媒を吸入するインジェクションポート120cが設けられている。
低段側圧縮部122は、吸入ポート120aからサイクル内の冷媒を圧縮して吐出する圧縮機構で構成されている。高段側圧縮部124は、低段側圧縮部122から吐出された冷媒、およびインジェクションポート120cから吸入される中間圧冷媒それぞれを圧縮し、吐出ポート120bから吐出する圧縮機構である。低段側圧縮部122および高段側圧縮部124は、電動機によって駆動される電動圧縮機で構成されている。なお、低段側圧縮部122および高段側圧縮部124は、内燃機関等によって駆動される構成になっていてもよい。
圧縮装置12の冷媒吐出側には、高段側圧縮部124から吐出された高圧冷媒を放熱させる放熱器14が接続されている。放熱器14は、高段側圧縮部124から吐出された高圧冷媒を図示しない冷却ファンにより送風される外気と熱交換させて、高圧冷媒を冷却する。
放熱器14の冷媒出口側には、エジェクタ16が接続されている。エジェクタ16は、冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、高速で噴射する冷媒流の巻き込み作用によって冷媒を吸引するポンプ手段としての役割を兼ねるものである。
図2に示すように、エジェクタ16は、放熱器14を通過した高圧冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させるノズル部161を有している。エジェクタ16には、ノズル部161から噴射される冷媒流により外部の冷媒を内部に吸引するための冷媒吸引口162が設けられている。この冷媒吸引口162は、後述する冷媒吸引通路26を介して気液分離器18の冷媒吸引ポート184に接続されている。
また、エジェクタ16には、ノズル部161の冷媒流れ下流側に、ノズル部161からの噴射された冷媒流と冷媒吸引口162から吸引された冷媒とを混合させる混合部163が設けられている。そして、エジェクタ16には、混合部163の冷媒流れ下流側に、混合部163で混合された冷媒を昇圧させる昇圧部としてディフューザ部164が設けられている。
さらに、エジェクタ16には、ノズル部161の絞り開度を調整するための可変ニードル165が設けられている。エジェクタ16は、可変ニードル165の位置制御によって、ノズル部161の絞り開度を電気的に制御できるようになっている。
図1に戻り、エジェクタ16のディフューザ部164の冷媒流れ下流側には、気液分離器18が接続されている。気液分離器18は、エジェクタ16のディフューザ部164で昇圧された冷媒の気液を分離するものである。
気液分離器18には、ディフューザ部164からの冷媒を導入する冷媒導入部181、および気液分離器18で分離された液相冷媒を後述する低段側膨張弁20に導出する冷媒導出部182が設けられている。なお、気液分離器18の詳細については後述する。
気液分離器18の冷媒出口側には、低段側膨張弁20が接続されている。低段側膨張弁20は、気液分離器18で分離された液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧する低段側減圧機器である。本実施形態の低段側膨張弁20は、蒸発器22の冷媒出口側における冷媒の状態が所望の状態(過熱度を有する状態となっていることが望ましい。)となるように絞り開度を自動的に調整する温度式膨張弁で構成されている。なお、低段側膨張弁20は、機械式の温度式膨張弁に限らず、電気式の膨張弁で構成されていてもよい。
低段側膨張弁20の冷媒出口側には、低段側膨張弁20を通過した冷媒を蒸発させて低段側圧縮部122の冷媒吸入側に流出させる蒸発器22が接続されている。蒸発器22は、低段側膨張弁20で減圧された低圧冷媒を図示しない庫内ファンにより循環送風される冷蔵庫内の空気(すなわち、庫内空気)と熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させる熱交換器である。庫内ファンにより送風される空気は、蒸発器22における冷媒の蒸発潜熱によって所望の温度まで冷却される。
続いて、本実施形態の気液分離器18の詳細について説明する。本実施形態の気液分離器18には、その内部に存在するガスリッチな冷媒(ガス単相の気相冷媒またはガスリッチな気液二相冷媒)を外部に導出する中間圧ポート183が設けられている。この中間圧ポート183には、中間圧冷媒通路24が接続されている。
中間圧冷媒通路24は、気液分離器18に存在するガスリッチな冷媒を高段側圧縮部124の冷媒吸入側に導く冷媒通路である。中間圧冷媒通路24は、一端側が気液分離器18の中間圧ポート183に接続され、他端側が圧縮装置12のインジェクションポート120cに接続されている。
中間圧冷媒通路24には、後述する中間熱交換器28のインジェクション側熱交換部281が設けられるとともに、インジェクション側熱交換部281の冷媒流れ下流側に中間流量調整機構30が設けられている。
また、本実施形態の気液分離器18には、その内部に存在する液リッチな冷媒(液単相の液相冷媒または液リッチな気液二相冷媒)を外部に導出する冷媒吸引ポート184が設けられている。この冷媒吸引ポート184には、冷媒吸引通路26が接続されている。
冷媒吸引通路26は、気液分離器18に存在する液リッチな冷媒をエジェクタ16の冷媒吸引口162に導く冷媒通路である。冷媒吸引通路26は、一端側が気液分離器18の冷媒吸引ポート184に接続され、他端側がエジェクタ16の冷媒吸引口162に接続されている。
冷媒吸引通路26には、後述する中間熱交換器28の吸引側熱交換部282が設けられるとともに、吸引側熱交換部282の冷媒流れ上流側に吸引流量調整機構32が設けられている。
中間熱交換器28は、中間圧冷媒通路24を流れる冷媒と冷媒吸引通路26を流れる冷媒とを熱交換させて中間圧冷媒通路24を流れる冷媒を冷却する内部熱交換器である。中間熱交換器28は、中間圧冷媒通路24側の冷媒が流通するインジェクション側熱交換部281、および冷媒吸引通路26側の冷媒が流通する吸引側熱交換部282を有している。中間熱交換器28としては、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器等を採用することができる。
中間圧冷媒通路24には、インジェクション側熱交換部281の冷媒流れ下流側に、中間圧冷媒通路24を流れる冷媒の流量、すなわち、高段側圧縮部124への冷媒のインジェクション量を調整する中間流量調整機構30が設けられている。本実施形態の中間流量調整機構30は、絞り開度を制御可能な電気式の可変絞り機構で構成されている。
ここで、冷凍サイクル装置10では、放熱器14の冷媒出口側の冷媒のエンタルピが小さい場合、気液分離器18で分離される気相冷媒の冷媒量が少なくなる。一方、放熱器14の冷媒出口側の冷媒のエンタルピが大きい場合、気液分離器18で分離される気相冷媒の冷媒量が多くなる。
このような特性を踏まえて、中間流量調整機構30は、放熱器14の冷媒出口側の冷媒のエンタルピが小さい場合、エンタルピが大きい場合に比べて、中間圧冷媒通路24を流れる冷媒の流量を減少させる構成となっている。すなわち、中間流量調整機構30は、放熱器14の冷媒出口側の冷媒のガス量が少ない程、図示しない制御装置によって絞り開度が小さくなるように制御される構成になっている。
また、冷媒吸引通路26には、吸引側熱交換部282の冷媒流れ下流側に、冷媒を減圧するとともに冷媒吸引通路26を流れる冷媒の流量を調整可能な吸引流量調整機構32が設けられている。本実施形態の吸引流量調整機構32は、絞り開度を制御可能な電気式の可変絞り機構で構成されている。
ここで、中間熱交換器28のうちインジェクション側熱交換部281を通過する冷媒の流量は、サイクルの負荷変動に応じて変化する。この際、例えば、吸引側熱交換部282を通過する冷媒が一定の流量になっていると、インジェクション側熱交換部281を通過する冷媒が過度に冷却されてしまう虞がある。インジェクション側熱交換部281を通過する冷媒が過度に冷却されることは、高段側圧縮部124における液圧縮等が生ずる要因となることから好ましくない。
そこで、本実施形態の吸引流量調整機構32は、高段側圧縮部124に対して飽和蒸気または過熱度を有する過熱蒸気が吸入されるように、冷媒吸引通路26を介して中間熱交換器28の吸引側熱交換部282に流れる冷媒の流量を調整する構成となっている。すなわち、吸引流量調整機構32は、高段側圧縮部124に対して飽和蒸気または過熱度を有する過熱蒸気が吸入されるように、図示しない制御装置によって絞り開度が制御される構成になっている。
図示しない制御装置は、プロセッサ、ROMやRAM等のメモリを含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路で構成される。制御装置は、メモリに記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って、冷凍サイクル装置10の各種機器の作動を制御する。
次に、本実施形態の冷凍サイクル装置10の作動について、図3に示すモリエル線図を参照して説明する。冷凍サイクル装置10は、冷凍サイクル装置10の運転スイッチがオンされると、制御装置が冷凍サイクル装置10の各種機器を作動させる。これにより、圧縮装置12が冷媒を吸引し、吸引した冷媒を高圧PHとなるまで圧縮して吐出する(図3のA1点)。
圧縮装置12の高段側圧縮部124から吐出された高圧冷媒は、放熱器14に流入して外気との熱交換によって放熱して凝縮する(図3のA1点→A2点)。放熱器14を通過した冷媒は、エジェクタ16のノズル部161に流入し、等エントロピ的に減圧膨張する(図3のA2点→A3点)。そして、減圧膨張時に冷媒の圧力エネルギが速度エネルギに変換されて、冷媒がノズル部161の冷媒噴射口から高速度になって噴射される。この噴射冷媒の冷媒吸引作用によって、冷媒吸引口162から気液分離器18に存在する液リッチな冷媒が吸引される。
さらに、ノズル部161から噴射された冷媒と冷媒吸引口162から吸引された冷媒がエジェクタ16の混合部163で混合された後、ディフューザ部164で中間圧PMとなるまで昇圧される(図3のA3点→A4点)。なお、ディフューザ部164では、冷媒の通路面積の拡大によって冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換されるため、冷媒の圧力が中間圧PMまで上昇する。
ディフューザ部164から吐出された冷媒は、気液分離器18に流入して気液が分離される(図3のA4点→A5点、A4点→A6点)。気液分離器18の冷媒導出部182から流出した液相冷媒は、低段側膨張弁20で等エントロピ的に減圧膨張して気液二相状態となる(図3のA5点→A7点)。すなわち、気液分離器18から流出した液相冷媒は、低段側膨張弁20にて低圧PLとなるまで減圧される。
低段側膨張弁20から流出した冷媒は、蒸発器22に流入して、庫内ファンにより循環送風される庫内空気から吸熱して蒸発する(図3のA7点→A8点)。この際、庫内空気は、冷媒の吸熱作用によって所望の温度まで冷却される。
蒸発器22から流出した低圧冷媒は、圧縮装置12の低段側圧縮部122に吸入された後に圧縮される(図3のA8点→A9点)。そして、圧縮装置12では、低段側圧縮部122から吐出された冷媒とインジェクションポート120cから吸入された冷媒とが合流する(図3のA9点→A10点)。圧縮装置12の内部で合流した冷媒は、その圧力PMsが高圧PHとなるまで高段側圧縮部124にて圧縮される(図3のA10点→A1点)。
ここで、気液分離器18に存在する液リッチな冷媒の一部は、冷媒吸引通路26に流入し、吸引流量調整機構32にて減圧される(図3のA5点→A11点)。吸引流量調整機構32にて減圧された冷媒は、中間熱交換器28の吸引側熱交換部282にて中間圧冷媒通路24を流れる冷媒と熱交換してエンタルピが増加する(図3のA11点→A12点)。中間熱交換器28の吸引側熱交換部282から流出した冷媒は、エジェクタ16の冷媒吸引口162に吸引される。
また、気液分離器18に存在するガスリッチな冷媒の一部は、中間圧冷媒通路24に流入し、中間熱交換器28のインジェクション側熱交換部281にて冷媒吸引通路26を流れる冷媒と熱交換して冷却されてエンタルピが減少する(図3のA6点→A13点)。中間熱交換器28のインジェクション側熱交換部281を通過した冷媒は、中間流量調整機構30を介して圧縮装置12のインジェクションポート120cに吸入される(図3のA13点→A14点)。そして、インジェクションポート120cに吸入された冷媒は、圧縮装置12の内部で低段側圧縮部122から吐出された冷媒と合流する(図3のA14点→A10点)。これにより、低温の冷媒が圧縮装置12の高段側圧縮部124に供給されるので、圧縮装置12の冷却を行ったり、圧縮機12から吐出される冷媒の温度上昇を抑制したりすることができる。
次に、本実施形態の冷凍サイクル装置10の効果を説明するために、本実施形態の比較例となる冷凍サイクル装置CEの構成および作動について図4〜図6を参照して説明する。なお、図4では、比較例の冷凍サイクル装置CEのうち本実施形態の冷凍サイクル装置10と同様に構成される機器等に対して同じ符号を付している。また、以下では、比較例の冷凍サイクル装置CEのうち、本実施形態の冷凍サイクル装置10と同様に構成される機器についての説明を省略する。
比較例の冷凍サイクル装置CEは、圧縮装置12、放熱器14、高段側膨張弁Vh、気液分離器18、低段側膨張弁20、蒸発器22等を順次配管で接続した蒸気圧縮式の冷凍サイクルとして構成されている。
高段側膨張弁Vhは、放熱器14を通過した高圧冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させる高段側減圧機器である。高段側膨張弁Vhは、本実施形態のエジェクタ16に対応する機器であり、放熱器14を通過した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧する。
比較例の気液分離器18の中間圧ポート183には、中間圧冷媒通路GLが接続されており、当該中間圧冷媒通路GLに中間流量調整機構30が設けられている。なお、中間圧冷媒通路GLには、本実施形態の冷凍サイクル装置10における中間熱交換器28に相当する構成が設けられていない。
また、比較例の気液分離器18の冷媒吸引ポート184には、中間圧冷媒通路GLを流れる冷媒に液相冷媒を混合させるための液相冷媒通路LLが接続されている。液相冷媒通路LLは、一端側が冷媒吸引ポート184に接続され、他端側が中間圧冷媒通路GLに設けられた合流部JPに接続されている。
液相冷媒通路LLには、中間圧冷媒通路GLを流れる冷媒に混合させる液相冷媒の流量を調整するための流量調整機構FAが設けられている。この流量調整機構FAは、高段側圧縮部124で液圧縮が生じないように高圧損な絞り機構となっている。
このように構成される冷凍サイクル装置CEの作動について、図5、図6に示すモリエル線図を参照して説明する。図5、図6では、液相冷媒を高段側圧縮部124にインジェクションする場合の冷媒の状態変化を実線で示し、液相冷媒を高段側圧縮部124にインジェクションしない場合の冷媒の状態変化を一点鎖線で示している。
図5のモリエル線図は、高段側圧縮部124の冷媒吸入側に液相冷媒をインジェクションする場合とインジェクションしない場合とで高段側膨張弁Vhを同様に作動させる際の冷媒の状態変化を示している。
一方、図6のモリエル線図は、高段側圧縮部124の冷媒吸入側への液相冷媒のインジェクションの有無によらず、高段側圧縮部124の冷媒吸入側の圧力が所定の圧力に維持されるように高段側膨張弁Vhを作動させる際の冷媒の状態変化を示している。
まず、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションする場合とインジェクションしない場合とで高段側膨張弁Vhを同様に作動させる際の作動について説明する。冷凍サイクル装置CEは、運転スイッチがオンされると、圧縮装置12が冷媒を吸引し、吸引した冷媒を高圧PHとなるまで圧縮して吐出する(図5のB1点)。そして、圧縮装置12の高段側圧縮部124から吐出された高圧冷媒は、放熱器14に流入して外気との熱交換によって放熱して凝縮する(図5のB1点→B2点)。
放熱器14を通過した冷媒は、高段側膨張弁Vhに流入し、等エントロピ的に減圧膨張する(図5のB2点→B3点)。すなわち、放熱器14を通過した冷媒は、高段側膨張弁Vhにて中間圧PMとなるまで減圧される。
高段側膨張弁Vhから流出した冷媒は、気液分離器18に流入して気液が分離される(図5のB3点→B4点、B3点→B5点)。気液分離器18の冷媒導出部182から流出した液相冷媒は、低段側膨張弁20で等エントロピ的に減圧膨張して気液二相状態となる(図5のB4点→B6点)。すなわち、気液分離器18から流出した液相冷媒は、低段側膨張弁20にて低圧PLとなるまで減圧される。
低段側膨張弁20から流出した冷媒は、蒸発器22に流入して、庫内ファンにより循環送風される庫内空気から吸熱して蒸発する(図5のB6点→B7点)。この際、庫内空気は、冷媒の吸熱作用によって所望の温度まで冷却される。
蒸発器22から流出した低圧冷媒は、圧縮装置12の低段側圧縮部122に吸入された後に圧縮される(図5のB7点→B8点)。そして、圧縮装置12では、低段側圧縮部122から吐出された冷媒とインジェクションポート120cから吸入された冷媒とが合流する(図3のB8点→B9点)。圧縮装置12の内部で合流した冷媒は、その圧力PMsが高圧PHとなるまで高段側圧縮部124にて圧縮される(図5のB9点→B1点)。
ここで、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションする場合、気液分離器18に存在する液相冷媒の一部が、液相冷媒通路LLを介して中間圧冷媒通路GLに流入する。液相冷媒通路LLに流入した液相冷媒は、流量調整機構FAにて中間圧PMよりも低い圧力まで減圧される(図5のB4点→B10点)。
中間圧冷媒通路GLを流れる冷媒は、通路途中において液相冷媒通路LLを流れる液相冷媒との混合により圧力が低下した後、圧縮装置12のインジェクションポート120cに吸入される(図5のB5点→B11点)。そして、インジェクションポート120cに吸入された冷媒は、圧縮装置12の内部で低段側圧縮部122から吐出された冷媒と合流する(図5のB11点→B9点)。
このように比較例の冷凍サイクル装置CEでは、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションする場合、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションしない場合に比べて、圧縮装置12にインジェクションされる冷媒の圧力PMsが低くなる。これにより、高段側圧縮部124の冷媒の吸入圧力が低下することで、高段側圧縮部124の負荷が増加する。このことは、圧縮装置12から吐出する冷媒の温度上昇や、サイクルのCOPの低下を招く要因となる。
続いて、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションする場合とインジェクションしない場合とで、高段側圧縮部124に吸入される冷媒の圧力が変化しないように、高段側膨張弁Vhを作動させる際の作動について説明する。冷凍サイクル装置CEは、運転スイッチがオンされると、圧縮装置12が冷媒を吸引し、吸引した冷媒を高圧PHとなるまで圧縮して吐出する(図6のC1点)。そして、圧縮装置12の高段側圧縮部124から吐出された高圧冷媒は、放熱器14に流入して外気との熱交換によって放熱して凝縮する(図6のC1点→C2点)。
放熱器14を通過した冷媒は、高段側膨張弁Vhに流入し、等エントロピ的に減圧膨張する(図6のC2点→C3点)。この際、高段側膨張弁Vhは、高段側圧縮部124への液相冷媒のインジェクションの有無によらず、高段側圧縮部124に吸入される冷媒の圧力が所定の圧力に維持されるように作動する。具体的には、高段側膨張弁Vhは、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションする場合、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションしない場合に比べて、絞り開度が大きくなるように作動する。
高段側膨張弁Vhから流出した冷媒は、気液分離器18に流入して気液が分離される(図6のC3点→C4点、C3点→C5点)。気液分離器18の冷媒導出部182から流出した液相冷媒は、低段側膨張弁20で等エントロピ的に減圧膨張して気液二相状態となる(図6のC4点→C6点)。すなわち、気液分離器18から流出した液相冷媒は、低段側膨張弁20にて低圧PLとなるまで減圧される。なお、気液分離器18の冷媒導出部182から流出した液相冷媒は、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションする場合、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションしない場合に比べて、エンタルピが増加する。
低段側膨張弁20から流出した冷媒は、蒸発器22に流入して、庫内ファンにより循環送風される庫内空気から吸熱して蒸発する(図6のC6点→C7点)。この際、庫内空気は、冷媒の吸熱作用によって所望の温度まで冷却される。
蒸発器22から流出した低圧冷媒は、圧縮装置12の低段側圧縮部122に吸入された後に圧縮される(図6のC7点→C8点)。そして、圧縮装置12では、低段側圧縮部122から吐出された冷媒とインジェクションポート120cから吸入された冷媒とが合流する(図6のC8点→C9点)。圧縮装置12の内部で合流した冷媒は、その圧力PMsが高圧PHとなるまで高段側圧縮部124にて圧縮される(図6のC9点→C1点)。
ここで、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションする場合、気液分離器18に存在する液相冷媒の一部が、液相冷媒通路LLを介して中間圧冷媒通路GLに流入する。液相冷媒通路LLに流入した液相冷媒は、流量調整機構FAにて中間圧PMよりも低い圧力となるまで減圧される(図6のC4点→C10点)。
中間圧冷媒通路GLを流れる冷媒は、通路途中において液相冷媒通路LLを流れる液相冷媒との混合により圧力が中間圧PMまで低下した後、圧縮装置12のインジェクションポート120cに吸入される(図6のC5点→C11点)。そして、インジェクションポート120cに吸入された冷媒は、圧縮装置12の内部で低段側圧縮部122から吐出された冷媒と合流する(図6のC11点→C9点)。
このように比較例の冷凍サイクル装置CEでは、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションする場合、高段側圧縮部124に液相冷媒をインジェクションしない場合に比べて、気液分離器18から流出した液相冷媒のエンタルピが増加する。これにより、蒸発器22の冷媒出口側と冷媒入口側とのエンタルピ差が小さくなることで蒸発器22の吸熱能力が減少する。このことは、サイクルのCOPの低下を招く要因となる。
以上の如く、比較例の冷凍サイクル装置CEでは、高段側圧縮部124に液相冷媒を導入する構成となっているため、高段側圧縮部124の負荷上昇や蒸発器22の吸熱能力の減少によるCOPの低下等が避けられない。
これに対して、本実施形態の冷凍サイクル装置10は、液リッチな冷媒を高段側圧縮部124に直接供給することなく、液リッチな冷媒によって高段側圧縮部124に供給するガスリッチな冷媒を冷却する構成になっている。このため、圧縮装置12を冷却したり、圧縮装置12から吐出される冷媒の温度を抑えたりすることができる。そして、本実施形態の冷凍サイクル装置10は、液リッチな冷媒を高段側圧縮部124に供給しないので、圧縮装置12における液圧縮を抑制することができる。
また、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、中間熱交換器28を通過した液リッチな冷媒がエジェクタ16の冷媒吸引口162に吸引された後、ノズル部161から噴射された冷媒流と共にディフューザ部164で昇圧される。このため、中間熱交換器28を通過した液リッチな冷媒を気液分離器18の冷媒流れ上流側に戻したとしても、中間圧冷媒通路24を流れる冷媒の圧力低下を抑えることができる。
このように、本実施形態の冷凍サイクル装置10によれば、上述の構成を備えることで、高段側圧縮部124に導入される冷媒の圧力低下を抑えつつ、圧縮装置12の保護を図ることが可能となる。
また、本実施形態の冷凍サイクル装置10は、冷媒吸引通路26のうち中間熱交換器28の冷媒流れ上流側に、冷媒を減圧するとともに冷媒吸引通路26を流れる冷媒の流量を調整可能な吸引流量調整機構32が設けられている。
これによると、中間熱交換器28における冷媒吸引通路26を流れる冷媒と中間圧冷媒通路24を流れる冷媒との熱交換によって中間圧冷媒通路24を流れる冷媒を冷却することができる。また、吸引流量調整機構32によって冷媒吸引通路26を流れる冷媒の流量を調整する構成とすれば、中間熱交換器28における熱交換量を調整して中間圧冷媒通路24の冷媒出口側のエンタルピをサイクルに適した状態に調整することが可能となる。
ここで、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒吸引通路26を流れる冷媒が高段側圧縮部124に直接供給されない構成になっている。このため、高段側圧縮部124に対して液リッチな冷媒を供給する場合に比べて、液リッチな冷媒の流量を極端に減少させなくてもよい。すなわち、本実施形態の冷凍サイクル装置10は、従来技術の要求された流量調整機構の小型化や高圧損化が必須とならないので、比較的容易に装置構成を実現することができる。
特に、本実施形態の吸引流量調整機構32は、飽和蒸気または過熱度を有する過熱蒸気が高段側圧縮部124に吸入されるように、冷媒吸引通路26を介して中間熱交換器28に流れる冷媒の流量を調整する構成となっている。これによると、高段側圧縮部124における液圧縮を回避することができるので、圧縮装置12の保護を充分に図ることができる。
また、本実施形態の中間圧冷媒通路24には、中間熱交換器28の冷媒流れ下流側に中間圧冷媒通路24を流れる冷媒の流量を調整する中間流量調整機構30が設けられている。これによると、サイクルの負荷変動が生じたとしても、当該負荷変動に合わせて高段側圧縮部124への冷媒の供給量を適切な量に調整可能となるので、冷凍サイクル装置10のサイクルバランスを最適な状態に維持することが可能となる。
(他の実施形態)
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
上述の実施形態の如く、中間圧冷媒通路24に設けた中間流量調整機構30を可変絞り機構で構成することが望ましいが、これに限定されない。中間流量調整機構30は、例えば、固定絞り機構で構成されていてもよい。また、中間流量調整機構30は、必須ではなく省略されていてもよい。
上述の各実施形態の如く、冷媒吸引通路26に設けた吸引流量調整機構32を可変絞り機構で構成することが望ましいが、これに限定されない。吸引流量調整機構32は、例えば、減圧機能を発揮する固定絞り機構で構成されていてもよい。
上述の実施形態では、圧縮装置12として低段側圧縮部122および高段側圧縮部124が単一のハウジング120に収容されるものを採用する例について説明したが、これに限定されない。圧縮装置12は、例えば、低段側圧縮部122および高段側圧縮部124が独立した圧縮機として構成され、各圧縮部122、124の間に中間圧冷媒を合流させる合流部が設けられたものが採用されていてもよい。
上述の実施形態では、本発明の冷凍サイクル装置を定置式冷蔵庫に適用した例について説明したが、これに限定されない。本発明の冷凍サイクル装置は、例えば、車両に搭載された冷凍庫、車両の空調装置、家庭用の空調装置等の様々な装置に適用可能である。
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、冷凍サイクル装置は、低段側圧縮部および高段側圧縮部を含む圧縮装置と、放熱器と、エジェクタと、気液分離器と、低段側減圧機器と、蒸発器と、を備える。また、冷凍サイクル装置は、気液分離器内のガスリッチな冷媒を高段側圧縮部の冷媒吸入側に導く中間圧冷媒通路と、気液分離器内の液リッチな冷媒を冷媒吸引口に導く冷媒吸引通路と、を備える。さらに、冷凍サイクル装置は、中間圧冷媒通路を流れる冷媒と冷媒吸引通路を流れる冷媒とを熱交換させることで中間圧冷媒通路を流れる冷媒を冷却する中間熱交換器を備える。
第2の観点によれば、冷凍サイクル装置は、冷媒吸引通路における中間熱交換器の冷媒流れ上流側に、冷媒を減圧するとともに冷媒吸引通路を流れる冷媒の流量を調整可能な吸引流量調整機構が設けられている。
これによると、吸引流量調整機構によって減圧された冷媒が中間熱交換器に供給されるので、中間熱交換器における冷媒吸引通路を流れる冷媒と中間圧冷媒通路を流れる冷媒との熱交換によって中間圧冷媒通路を流れる冷媒を冷却することができる。また、吸引流量調整機構によって冷媒吸引通路を流れる冷媒の流量を調整する構成とすれば、中間熱交換器における熱交換量を調整して中間圧冷媒通路の冷媒出口側のエンタルピをサイクルに適した状態に調整することが可能となる。
ここで、本発明の冷凍サイクル装置では、冷媒吸引通路を流れる冷媒が高段側圧縮部に直接供給されない構成になっているので、高段側圧縮部に対して液リッチな冷媒を供給する場合に比べて、液リッチな冷媒の流量を極端に減少させなくてもよい。すなわち、本発明の冷凍サイクル装置は、従来技術の要求された流量調整機構の小型化や高圧損化が必須とならないので、比較的容易に装置構成を実現することができる。
第3の観点によれば、冷凍サイクル装置の吸引流量調整機構は、飽和蒸気または過熱度を有する過熱蒸気が高段側圧縮部に吸入されるように、冷媒吸引通路を介して中間熱交換器に流れる冷媒の流量を調整する構成になっている。これによると、高段側圧縮部における液圧縮を回避することができるので、圧縮装置の保護を充分に図ることができる。
第4の観点によれば、冷凍サイクル装置は、中間圧冷媒通路における中間熱交換器の冷媒流れ下流側に中間圧冷媒通路を流れる冷媒の流量を調整する中間流量調整機構が設けられている。
これによると、サイクルの負荷変動が生じたとしても、当該負荷変動に合わせて高段側圧縮部への冷媒の供給量を適切な量に調整可能となるので、冷凍サイクル装置のサイクルバランスを最適な状態に維持することが可能となる。
ここで、放熱器の冷媒出口側の冷媒が過冷却度(すなわち、サブクール)を有する場合、気液分離器で分離されるガス冷媒の冷媒量が少なくなる。一方、放熱器の冷媒出口側の冷媒が過冷却度を有していない場合、気液分離器で分離されるガス冷媒の冷媒量が多くなる。このため、中間流量調整機構は、放熱器の冷媒出口側の冷媒が過冷却度を有する場合、放熱器の冷媒出口側の冷媒が過冷却度を有していない場合に比べて、中間圧冷媒通路を流れる冷媒の流量を減少させる構成となっていることが望ましい。