JP2019035111A - 鉄鋼部材及びその製造方法 - Google Patents

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勇也 平井
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Abstract

【課題】面圧疲労強度が高い鉄鋼部材、及びその製造方法を提供する。【解決手段】表面層2と、表面層2の下層に配置される、窒素元素の濃度が0.2〜1.0質量%である第1のマルテンサイト層4と、を備え、表面層2は、リチウム鉄複合酸化物、FeO、及びFe3O4の少なくともいずれかを主成分とし、かつ、固溶ケイ素、ケイ素酸化物、及びケイ素窒化物からなる群より選択される少なくとも一種を含有し、第1のマルテンサイト層4は、面積率30%以下のγ相15、及び面積率10%以下のε相17を含有する鉄鋼部材10である。窒化処理鋼の表面に脱窒素防止剤を塗布した後、高周波加熱焼入れして鉄鋼部材を製造する。【選択図】図1

Description

本発明は、動力伝達部品等として有用な面圧疲労強度が高い鉄鋼部材、及びその製造方法に関する。
産業機械用の動力伝達部品等の鋼材は、高い面圧疲労強度を有することが要求される。このような鋼材に優れた面圧疲労強度を付与する手段として、従来、浸炭処理、窒化処理、及び高周波加熱焼入れ等の表面硬化処理が広く知られている。なかでも、近年、低騒音化の要求の高まりに伴い、浸炭処理に比べて熱歪が小さい表面硬化処理である高周波加熱焼入れや軟窒化処理が注目されている。
高周波加熱焼入れは、表層部の必要な部分のみ短時間加熱するので、焼入れ歪が小さく、高精度の表面硬化部品を得ることができる。また、軟窒化処理は、浸炭処理に比べて処理時間が短く、歪みの少ないことが要求される鋼材に頻繁に適用されている。そして、近年、より優れた機械的性質を有する鋼材を製造する手法として、窒化処理後に高周波加熱焼入れ処理する方法が提案されている。例えば、特定の鋼材を窒化処理した後、高周波焼入れ処理することで、機械的強度を高めた機械構造部品等を製造する方法、及びその方法により製造された機械構造部品等が提案されている(特許文献1〜4)。
特許第3145517号公報 特許第3381738号公報 特許第5958652号公報 特許第5994924号公報
特許文献1〜4で提案された方法によれば、ある程度高硬度の表面層を有する機械構造部品等の鋼材を製造することが可能ではあった。しかしながら、近年要求される十分に高いレベルの面圧疲労強度を有する鋼材を製造することは困難であった。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、面圧疲労強度が高い鉄鋼部材を提供することにある。また、本発明の課題は、面圧疲労強度が高い鉄鋼部材の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、以下に示す鉄鋼部材が提供される。
[1]表面層と、前記表面層の下層に配置される、窒素元素の濃度が0.2〜1.0質量%である第1のマルテンサイト層と、を備え、前記表面層は、リチウム鉄複合酸化物、FeO、及びFe34の少なくともいずれかを主成分とし、かつ、固溶ケイ素、ケイ素酸化物、及びケイ素窒化物からなる群より選択される少なくとも一種を含有し、前記第1のマルテンサイト層は、面積率30%以下のγ相、及び面積率10%以下のε相を含有する鉄鋼部材。
[2]前記表面層の厚さが、0.1μm以上であり、前記第1のマルテンサイト層の厚さが、10μm以上である前記[1]に記載の鉄鋼部材。
[3]前記第1のマルテンサイト層の下層に配置される、窒素元素の濃度が0.2質量%未満である厚さ100μm以上の第2のマルテンサイト層をさらに備える前記[1]又は[2]に記載の鉄鋼部材。
また、本発明によれば、以下に示す鉄鋼部材の製造方法が提供される。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の鉄鋼部材の製造方法であって、窒化処理鋼の表面に脱窒素防止剤を塗布した後、高周波加熱焼入れする工程を有する鉄鋼部材の製造方法。
[5]前記脱窒素防止剤が、ポリシロキサン系化合物及びその前駆体の少なくともいずれかを含有する前記[4]に記載の鉄鋼部材の製造方法。
[6]前記脱窒素防止剤として、浸炭防止剤を用いる前記[4]に記載の鉄鋼部材の製造方法。
[7]850℃以上で5秒以下高周波加熱焼入れする前記[4]〜[6]のいずれかに記載の鉄鋼部材の製造方法。
[8]前記窒化処理鋼が、その表面に厚さ0.1μm以上の酸化層を有する前記[4]〜[7]のいずれかに記載の鉄鋼部材の製造方法。
本発明によれば、面圧疲労強度が高い鉄鋼部材を提供することができる。また、本発明によれば、面圧疲労強度が高い鉄鋼部材の製造方法を提供することができる。
本発明の鉄鋼部材の層構成を模式的に示す断面図である。 実施例1で製造した鉄鋼部材の断面の電子顕微鏡写真である。 実施例1で製造した鉄鋼部材のX線回折の結果を示すチャート(XRDチャート)である。 実施例1で製造した鉄鋼部材の元素分析(ケイ素(Si)マッピング)の結果を示す図である。 実施例1で製造した鉄鋼部材の元素分析(酸素(O)マッピング)の結果を示す図である。
<鉄鋼部材>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の鉄鋼部材は、表面層と、この表面層の下層に配置される、窒素元素の濃度が0.2〜1.0質量%である第1のマルテンサイト層と、を備える。表面層は、リチウム鉄複合酸化物、FeO、及びFe34の少なくともいずれかを主成分とし、かつ、固溶ケイ素、ケイ素酸化物、及びケイ素窒化物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する。また、第1のマルテンサイト層は、面積率30%以下のγ相、及び面積率10%以下のε相を含有する。
鉄系の鋼材に窒化処理(軟窒化処理を含む)を施すと、鋼材の表面に窒素(N)が浸透するとともに、浸透した窒素と鉄(Fe)によりγ’相(Fe4N)やε相(ε−Fe2〜3N)を主体とする高硬度の酸化層(化合物層)が形成される。従来の技術においては、窒化処理後の鋼材に高周波加熱焼入れを施すことで、鋼材の面圧疲労強度を高めていた。しかしながら、高周波加熱焼入れを施すことで、(i)酸化層の分解が進行する一方で窒素(N)が酸化層から抜けやすいこと;及び(ii)窒素(N)が抜けることで、面圧疲労強度がさほど向上しなくなること;等の知見を本発明者らは見出した。
このような知見の下、本発明者らは、窒素(N)の脱離を防止又は抑制する機能を有する成分、いわゆる脱窒素防止剤を窒化処理後の鋼材の表面に塗布した後に高周波加熱焼入れする方法について検討した。その結果、面圧疲労強度を向上させる観点からはさほど重要ではない酸化層の分解を進行させて特定の化合物層(表面層)を形成しながら、鋼材表面からの窒素(N)の脱離を抑え、面圧疲労強度の向上に有用な窒素濃度(以下、「N濃度」とも記す)の高いマルテンサイト層を表面層の下層に形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
図1を参照しつつ、本発明の鉄鋼部材の詳細について説明する。図1は、本発明の鉄鋼部材の層構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明の一実施形態である鉄鋼部材10は、表面層2と、表面層2の下層に配置される第1のマルテンサイト層4とを備える。
表面層2は、リチウム鉄複合酸化物、FeO、及びFe34の少なくともいずれかを主成分とする。表面層2は、主として、優れた面圧疲労強度を鉄鋼部材10に付与するための層である。リチウム鉄複合酸化物は、例えば、α−LiFeO2、Li2Fe34、Li2Fe35、若しくはLi5Fe2.54の結晶構造を有する複合酸化物、又はこれらの混合物であることが好ましい。リチウム鉄複合酸化物、FeO(ウスタイト)、及びFe34(マグネタイト)の少なくともいずれかを主成分とする表面層2を備えることで、鉄鋼部材10の面圧疲労強度を向上させることができる。なお、表面層2は、微量の酸化鉄(III)(Fe23)を含んでいてもよい。
表面層2は、固溶ケイ素、ケイ素酸化物、及びケイ素窒化物からなる群より選択される少なくとも一種(以下、まとめて「ケイ素成分」とも記す)を含有する。これらのケイ素成分は、酸化層の分解を進行させながら窒素(N)の脱離を抑制すべく窒化処理後の鋼材(窒化処理鋼)の表面に塗布した、ケイ素(Si)を含有する脱窒素防止剤に由来して表面層2中に形成される成分である。すなわち、これらのケイ素成分は、脱窒素防止剤を塗布した窒化処理鋼を高周波加熱焼入れすることでケイ素(Si)が窒化処理鋼中に浸透し、形成される表面層2中に含有されることとなった成分である。
脱窒素防止剤に由来する固溶ケイ素、ケイ素酸化物、及びケイ素窒化物等のケイ素成分が表面層2に含まれているか否かについては、例えば、鉄鋼部材10の表面層2を元素分析するとともに、表面層2の任意の断面において特定の元素(Si)をマッピングすることで同定することができる。
表面層2の厚さTSは、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。表面層2の厚さTSが0.1μm未満であると、鉄鋼部材10の面圧疲労強度がやや不十分になる場合がある。表面層2の厚さTSの上限は特に限定されないが、実質的には11μm以下であればよい。
表面層2の厚さTSは、例えば、原材料として用いる窒化処理鋼の酸化層(最表面層)の厚さに左右される。また、窒化処理鋼の酸化層の厚さは、処理温度及び処理時間を適宜調整することで制御することができる。表面層2の厚さTSは、鉄鋼部材10の側面又は断面を光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。後述する他の層の厚さについても、同様の方法で測定することができる。
表面層2の下層に配置される第1のマルテンサイト層4は、窒素元素を比較的高濃度に含有する、いわゆる高窒素マルテンサイト層である。具体的には、第1のマルテンサイト層4の窒素元素の濃度(N濃度)は0.2〜1.0質量%であり、好ましくは0.30〜0.65質量%である。窒化処理鋼の表面に脱窒素防止剤を塗布して高周波加熱焼入れを施すことで、窒素が抜けにくく、十分な量の窒素を含有する第1のマルテンサイト層4を形成することができる。そして、このように窒素を高濃度に含有する第1のマルテンサイト層4を備えることで、面圧疲労強度の高い鉄鋼部材10とすることができる。さらに、第1のマルテンサイト層4が十分な量の窒素を含有することで、高硬度の鉄鋼部材10とすることができる。
第1のマルテンサイト層4は、γ相(オーステナイト相)15及びε相(ε−Fe2〜3N)17を含有する。γ相15及びε相17は、原材料として用いた窒化処理鋼に由来して残留した相である。第1のマルテンサイト層4中のγ相15の面積率は30%以下であり、好ましくは15〜25質量%である。また、第1のマルテンサイト層4中のε相17の面積率は10%以下であり、好ましくは5質量%以下である。これらの相の面積率(含有割合)が所定の割合以下であるため、優れた面圧疲労強度の鉄鋼部材10とすることができる。第1のマルテンサイト層4中のγ相15及びε相17の面積率は、鉄鋼部材10の任意の断面を光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察し、第1のマルテンサイト層4の全体の面積に占める比率として、それぞれ測定及び算出することができる。
第1のマルテンサイト層4の厚さT1は、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。第1のマルテンサイト層4の厚さT1を上記の範囲とすることで、鉄鋼部材10の面圧疲労強度をさらに高めることができる。なお、第1のマルテンサイト層4の厚さT1は、例えば、原材料として用いる窒化処理鋼の酸化層の厚さを選択することで制御することができる。
本発明の鉄鋼部材は、図1に示すように、第1のマルテンサイト層4の下層に配置される第2のマルテンサイト層6をさらに備えていてもよい。第2のマルテンサイト層6は、第1のマルテンサイト層4に比してN濃度が低い、いわゆる低窒素マルテンサイト層である。具体的には、第2のマルテンサイト層6のN濃度は、通常0.2質量%未満であり、好ましくは0%(実質的に含まれていない)である。
第2のマルテンサイト層6の厚さT2は、通常100μm以上であり、好ましくは120μm以上である。第2のマルテンサイト層6の厚さT2は、例えば、原材料として用いる窒化処理鋼の厚さにより左右される。
<鉄鋼部材の製造方法>
本発明の鉄鋼部材の製造方法は、上述してきた鉄鋼部材を製造する方法であり、窒化処理鋼の表面に脱窒素防止剤を塗布した後、高周波加熱焼入れする工程を有する。以下、その詳細について説明する。
窒化処理鋼としては、その表面に厚さ0.1μm以上、好ましくは1μm以上の酸化層を有するものを用いることが好ましい。厚さ0.1μm以上の酸化層を有する窒化処理鋼を用いることで、十分な厚さの表面層及び第1のマルテンサイト層を有する鉄鋼部材を製造することができる。
窒化処理鋼は、例えば、鉄系の鋼材に塩浴窒化処理(塩浴軟窒化処理を含む)を施すことで製造することができる。鉄系の鋼材に塩浴窒化処理を施すことで、その表面に酸化層が形成された窒化処理鋼を得ることができる。塩浴窒化処理としては、例えば、カチオン成分としてLi+、Na+、及びK+を含むとともに、アニオン成分としてCNO-及びCO3 2-を含む溶融塩浴中に鉄系の鋼材を浸漬する方法等を挙げることができる。なお、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を添加した溶融塩浴を用いることが好ましい。塩浴窒化処理は、例えば、特開2002−226963号公報及び特開2004−91906号公報に開示された塩浴窒化処理に準じて実施することができる。
鉄系の鋼材としては、炭素鋼、低合金鋼、中合金鋼、高合金鋼、鋳鉄等を用いることができる。コストの観点から、炭素鋼及び低合金鋼が好ましい。炭素鋼としては、例えば、機械構造用の炭素鋼鋼材(S20C〜S58C)等を挙げることができる。なお、機械構造用の炭素鋼鋼材の組成としては、例えば、C:0.2〜1.2質量%、Si:0.05〜0.5質量%、Mn:0.2〜1.8質量%、P:0.03質量%以下(0質量%を含まない)、及びS:0.03質量%以下(0質量%を含まない)をそれぞれ含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であるものを挙げることができる。
低合金鋼としては、例えば、ニッケルクロム鋼鋼材(SNC236〜836)、ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材(SNCM220〜815)、クロムモリブデン鋼鋼材(SCM415〜445、822)、クロム鋼鋼材(SCr415〜445)、機械構造用マンガン鋼鋼材(SMn420〜443)、マンガンクロム鋼鋼材(SMnC420、443)等を挙げることができる。
本発明の鉄鋼部材の製造方法では、窒化処理鋼の表面に脱窒素防止剤を塗布する。脱窒素防止剤としては、窒化処理鋼の表面に存在する酸化層からの窒素(N)の脱離を防止又は抑制する機能を有する成分を用いる。このような機能を有する脱窒素防止剤としては、例えば、(i)ポリシロキサン系化合物及びその前駆体の少なくともいずれかを含有する組成物;(ii)いわゆる浸炭防止剤;などを用いることができる。脱窒素防止剤は、使用しやすさの観点から、水系又は有機溶剤系の液状組成物であることが好ましい。また、二種以上の脱窒素防止剤を併用してもよい。
窒化処理鋼の表面に付与されたポリシロキサン系化合物は、窒化処理鋼の酸化層の表面において、窒素元素(N)の透過を抑制又は防止しうる極めて微細な細孔を持った適度な網目構造を有する塗膜を形成すると推測される。なお、ポリシロキサン系化合物の前駆体、すなわち、塗布後にポリシロキサン系化合物となる化合物を用いることでも、上記のような塗膜を形成することができると推測される。このような塗膜を形成した状態で高周波加熱焼入れすることで、酸化層からの窒素の脱離を抑制し、N濃度の高い第1のマルテンサイト層を表面層の下層に形成することができると考えられる。
ポリシロキサン系化合物としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル;変性シリコーンオイル;等を挙げることができる。さらに、変性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性等の反応性シリコーンオイル;ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、脂肪酸エステル変性等の非反応性シリコーンオイル;等を挙げることができる。また、ポリシロキサン系化合物の前駆体としては、例えば、アルコキシシラン及びその誘導体等を挙げることができる。
ポリシロキサン系化合物及びその前駆体の少なくともいずれかを含有する組成物としては、市販の「窒化防止剤」を用いることができる。市販の窒化防止剤の具体例としては、商品名「ナイトロバスター」シリーズ(パーカー熱処理工業社製)等を挙げることができる。
浸炭防止剤は、例えば、ホウ酸を主成分とし、ケイ素を含有するタイプの剤;Na2SiO3(いわゆる水ガラス)を含有するタイプの剤;等に分類される。窒化処理鋼の表面に付与された浸炭防止剤は、窒素元素(N)の透過を物理的に抑制又は防止しうる塗膜を酸化層の表面に形成すると推測される。このような塗膜を形成した状態で高周波加熱焼入れすることで、酸化層からの窒素の脱離を抑制し、N濃度の高い第1のマルテンサイト層を表面層の下層に形成することができると考えられる。
浸炭防止剤としては、市販されているものを用いることができる。市販の浸炭防止剤の具体例としては、商品名「カーボンバスター」シリーズ(パーカー熱処理工業社製);商品名「コンドルサル」(ヌスレー社製);商品名「アビオン」(AVION社製)等を挙げることができる。
その表面に脱窒素防止剤を塗布した窒化処理鋼を高周波加熱焼入れすることで、前述の本発明の鉄鋼部材を得ることができる。高周波加熱焼入れの条件については特に限定されず、一般的な鉄鋼材料に適用される通常の高周波加熱焼入れの条件を適用することができる。ただし、高周波加熱焼入れの際の加熱温度は、850℃以上とすることが好ましく、870℃以上とすることがさらに好ましい。加熱温度が850℃未満であると、窒化処理鋼の酸化層の分解がやや不十分になるとともに、形成される表面層(化合物層)の厚さがやや不足する傾向にある。また、高周波加熱焼入れの際の加熱時間は、5秒以下とすることが好ましく、4秒以下とすることがさらに好ましい。加熱時間が5秒超であると、窒素(N)が抜けやすくなる場合があり、形成される第1のマルテンサイト層のN濃度が低下しやすくなることがある。
本発明の鉄鋼部材の製造方法によれば、変速機のシーブ、ジョイント、ハブ、シャフトなどの動力伝達部品等として有用な、面圧疲労強度に優れた鉄鋼部材を簡便な操作で製造することができる。さらに、本発明の鉄鋼部材の製造方法によれば、個体間の面圧疲労強度のバラツキが比較的少なく、均一な特性を有する鉄鋼部材を製造することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
<鉄鋼部材の製造>
(実施例1)
焼準したJIS規格S45C相当鋼(C:0.42〜0.48%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.6〜0.9%、P:0.03%以下(0%を含まない)、及びS:0.03%以下(0%を含まない)を含み、残部が鉄及び不可避的不純物からなる炭素鋼、直径26mmφ×150mm)を円柱状試験片として用意した。シアン酸塩、炭酸塩、及びリチウム塩を含有する600℃の溶融塩に円柱状試験片を2時間浸漬する塩浴軟窒化処理を施し、窒化処理鋼を得た。得られた窒化処理鋼の表面に形成された酸化層の厚さは18.8μmであった。酸化層の厚さは、窒化処理鋼の断面を走査型電子顕微鏡で観察して測定した。得られた窒化処理鋼の表面に脱窒素防止剤Aを塗布した後、一発焼入れ方式による高周波加熱焼入れ(200kHz、水焼入れ)を実施して、面圧疲労強度測定用の試験片(鉄鋼部材)を得た。なお、高周波加熱焼入れの温度は1,030℃、時間は1.4秒とした。
(実施例2〜14、比較例1〜9)
表1に示す温度で塩浴軟窒化処理を施して窒化処理鋼を得たこと、及び得られた窒化処理鋼を用いて表2に示す条件で高周波加熱焼入れを実施したこと以外は、前述の実施例1と同様にして、面圧疲労強度測定用の試験片(鉄鋼部材)を得た。窒化処理鋼の表面に形成された酸化層の厚さを表1に示す。また、使用した脱窒素防止剤の種類を以下に示す。
[脱窒素防止剤]
・脱窒素防止剤A:アルコキシシランを主成分とする窒化防止剤(商品名「ナイトロバスター202」、パーカー熱処理工業社製)
・脱窒素防止剤B:ホウ酸を主成分とし、ケイ素を含有する浸炭防止剤(商品名「カーボンバスター201」、パーカー熱処理工業社製)
<評価>
(層構成(組成))
製造した各試験片(鉄鋼部材)の層構成(組成)の分析・測定結果を表2に示す。各層の厚さは、試験片の断面を走査型電子顕微鏡で観察して測定した。代表例として、実施例1で製造した鉄鋼部材の断面の電子顕微鏡写真を図2に示す。第1のマルテンサイト層及び第2のマルテンサイト層のN濃度は、SEMに付属した波長分散型X線分析装置(WDS)を使用し、検量線法により測定した。
表面層中の各成分(リチウム鉄複合酸化物、Fe34、…)の存在の有無は、X線回折装置(装置名「SmartLab」、リガク社製)を使用したX線回折により確認した。また、解析用ソフトウェアとして、商品名「PDXL2」(リガク社製)を使用した。表2中、表面層中の存在が確認されたものを「○」、存在が確認されなかったものを「×」とした。実施例1で製造した鉄鋼部材のX線回折の結果を示すチャート(XRDチャート)を図3に示す。
代表例として、実施例1で製造した鉄鋼部材の元素分析(ケイ素(Si)マッピング)の結果を図4に示す。また、実施例1で製造した鉄鋼部材の元素分析(酸素(O)マッピング)の結果を図5に示す。第1のマルテンサイト中の各相(γ相、ε相、及びγ’相)の割合(面積%)は、試験片の断面を走査型電子顕微鏡で観察して測定及び算出した。
(50μmまでの最高硬さ)
JIS Z 2244に準拠した方法にしたがって、製造した各試験片(鉄鋼部材)の50μmまでの最高硬さ(HV)を測定した。結果を表3に示す。
(有効硬化層深さ(513HV深さ))
JIS G 0559に準拠した方法にしたがって、製造した各試験片(鉄鋼部材)の有効硬化層深さ(513HV深さ)(mm)を測定した。結果を表3に示す。
(ピッチング寿命)
製造した各試験片(鉄鋼部材)について、95±5℃に保持した変速機オイルにより潤滑させ、以下に示す条件でローラーピッチング試験(二円筒式面圧疲労試験)を実施し、ピッチングが発生するまでの回転数を測定した。結果を表3に示す。
・相手材:調質したJIS規格SUJ2相当鋼(直径130mmφ)
・面圧:3.91GPa
・すべり率:−40%
・回転速度:1,500rpm
本発明の鉄鋼部材は、高い面圧疲労強度を有することが要求される、変速機のシーブ、ジョイント、ハブ、シャフトなどの動力伝達部品等として有用である。
2:表面層
4:第1のマルテンサイト層
6:第2のマルテンサイト層
10:鉄鋼部材
15:γ相
17:ε相

Claims (8)

  1. 表面層と、
    前記表面層の下層に配置される、窒素元素の濃度が0.2〜1.0質量%である第1のマルテンサイト層と、を備え、
    前記表面層は、リチウム鉄複合酸化物、FeO、及びFe34の少なくともいずれかを主成分とし、かつ、固溶ケイ素、ケイ素酸化物、及びケイ素窒化物からなる群より選択される少なくとも一種を含有し、
    前記第1のマルテンサイト層は、面積率30%以下のγ相、及び面積率10%以下のε相を含有する鉄鋼部材。
  2. 前記表面層の厚さが、0.1μm以上であり、
    前記第1のマルテンサイト層の厚さが、10μm以上である請求項1に記載の鉄鋼部材。
  3. 前記第1のマルテンサイト層の下層に配置される、窒素元素の濃度が0.2質量%未満である厚さ100μm以上の第2のマルテンサイト層をさらに備える請求項1又は2に記載の鉄鋼部材。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉄鋼部材の製造方法であって、
    窒化処理鋼の表面に脱窒素防止剤を塗布した後、高周波加熱焼入れする工程を有する鉄鋼部材の製造方法。
  5. 前記脱窒素防止剤が、ポリシロキサン系化合物及びその前駆体の少なくともいずれかを含有する請求項4に記載の鉄鋼部材の製造方法。
  6. 前記脱窒素防止剤として、浸炭防止剤を用いる請求項4に記載の鉄鋼部材の製造方法。
  7. 850℃以上で5秒以下高周波加熱焼入れする請求項4〜6のいずれか一項に記載の鉄鋼部材の製造方法。
  8. 前記窒化処理鋼が、その表面に厚さ0.1μm以上の酸化層を有する請求項4〜7のいずれか一項に記載の鉄鋼部材の製造方法。
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