JP6043078B2 - 耐焼付き性に優れた電気自動車モータ用歯車 - Google Patents

耐焼付き性に優れた電気自動車モータ用歯車 Download PDF

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Description

本発明は、高回転・高すべりの発生する作動部位において使用され、優れた耐焼付き性を有する電気自動車モータ用歯車に関するものである。
例えば、自動車のトランスミッション用歯車などのような動力伝達部に使用される機械構造部品は、その使用時に、接触面圧の増大によって金属接触部分が剥離損傷するピッチング損傷を起こすことが知られている。そこで、このような用途に使用される鋼部品としては、SCr、SCM、SNCM等の各種肌焼鋼を用いて、熱間鍛造や切削加工で成形加工した後、浸炭処理や浸炭窒化処理等の表面硬化処理を施し、更に、必要によっては、部品表面に二硫化モリブデンなどの固体潤滑皮膜を形成したものが用いられている。
しかしながら、近年では、機械構造部の高出力化、小型軽量化に対する要求が高まっており、これら動力伝達部に使用される機械構造部品にかかる負荷はますます増大する傾向にある。そのため、SCr、SCM、SNCM等の各種肌焼鋼を表面硬化処理した部品のみならず、固体潤滑皮膜を形成させたとしても、要求される耐ピッチング性を達成することが困難になりつつある。
ところで、近年の環境負荷低減から生産量が拡大しつつある電気自動車においては、モータの回転を減速ギアに直接伝達するため、ガソリン車よりもこれらの部品が高回転下に曝されることになる。また、使用環境における動粘度がガソリン車よりも低い潤滑油が使用されるため、これら動力伝達部を構成する鋼部品の表面に形成される油膜が薄く、場合によっては油膜がほとんど形成されない箇所も局所的に発生する環境下にある。特に、高回転・高すべりとなるに伴い、油温も上昇し、潤滑油の動粘度が低下しやすくなり、ますます油膜切れが発生する部位が増える。そのため、これらの環境下では、鋼部品同士の金属接触による摩耗が生じやすく、また摩擦熱による温度上昇が生じて鋼部品の軟化も生じやすいため、焼付きが早期に発生する。
上記のような環境下で使用される鋼部材に関連する技術は、これまでにも種々提案されている。例えば、特許文献1では、低炭素鋼に対し、高い表面硬さを確保するため、窒化処理時に表面に硬いTi炭化物を形成させる技術が提案されている。また鋼中のPを高めることで、Fe3Pを析出させ、表面を析出強化させることも開示されている。この技術は、表面硬さを窒化処理と析出強化の複合効果によって高めることを重視しており、高面圧下において、優れた耐焼付き性が発揮される。
しかしながら、電気自動車モータ用歯車のような高すべり環境下においては、温度上昇による熱軟化はある程度抑制できるものの、金属接触による凝着摩耗については特に考慮されていないため、容易に凝着摩耗が発生し、早期に焼付きに至る。即ち、特許文献1のような技術では、高すべり環境下において、耐焼付き性を満足させることができない。
特許文献2では、鋼中のCr含有量を2%以上に高めることによって、表層のみならず深部にもCr窒化物が分散した拡散相を形成させる技術が提案されている。また、Cr含有量を高めることでN含有量も高めることができ、その結果、窒化層中のN含有量を1〜6%程度と通常の窒化処理よりも著しく増加させることができ、表層硬さをビッカース硬さで900Hv以上とし、耐摩耗性および耐焼付き性を向上させることも開示されている。この技術は、表面硬さと表面の窒化層の靭性改善を重視しており、高面圧下において、優れた耐摩耗、耐焼付き性が発揮される。
しかしながら、電気自動車モータ用歯車のような高すべり環境下において、繰り返し衝突する場合においては、Cr窒化物のように表面の起伏が大きい窒化層同士は、作動中に容易に割れが発生し、窒化物層が脱落することによって、却って焼付きが発生しやすくなることがあり、歯車部品としてのばらつきが大きくなる。即ち、特許文献2の技術においても、高すべり環境下において、耐焼付き性を安定的に満足させることができない。
特許文献3では、鋼材表面に窒素拡散処理を施すため、窒化物生成元素を含有させた窒化用合金鋼のミクロ組織をブロック状の非パーライト(例えばフェライト)を10%以上に調整することで、耐摩耗性と疲労強度を両立できる技術が提案されている。この技術では、作動中の表面硬さと部品としての靭性が高められており、優れた耐摩耗性、疲労特性が発揮される。しかしながら、このような技術においても、電気自動車モータ用歯車のような高すべり環境下においては、やはり、金属接触による凝着摩耗を抑制することができない。
一方、特許文献4には、窒化処理することによって、歯車部品などのように、高度面圧が負荷された状態で長時間使用される部品に適用できるような窒化処理用鋼が提案されている。この技術では、溶解して所定の精錬を行った後に、熱間圧延、鍛造、焼入れ・焼戻し等の各種熱処理において十分に溶体化処理を行い、窒化時に有効に作用するSi,Cr,Mo,V,Ti,Al等の元素をマトリクス中に十分に固溶させ、その後の冷却でこれらの元素を炭化物や窒化物として析出させないようにするものである。しかしながらこの技術では、基本的に炭化物や窒化物を析出させないものであるため、高すべり環境で良好な耐焼付き性を発揮することができない。
これまで提案されている技術では、高すべり環境下における凝着摩耗を抑制することを重要視した技術はなく、一部、表層強度を高めて耐摩耗、耐焼付き性を重視した技術は存在するものの、金属接触による繰り返し衝撃への対策を講じた技術は確立されていないのが実状である。
特開2006−22351号公報 特開2003−148488号公報 特開平7−90490号公報 特開2006−348321号公報
本発明はこうした従来技術における課題を解決する為になされたものであって、その目的は、高回転・高すべり、低い動粘度の潤滑油が使用される動力伝達部において、より優れた耐焼付き性を発揮する電気自動車モータ用歯車を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明の電気自動車モータ用歯車とは、C:0.45超〜0.80%(「質量%」の意味、化学成分組成について以下同じ)、Si:0.05〜1%、Mn:0.1〜1%、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.05%以下(0%を含まない)、Cr:0.9〜2%、Al:0.01〜0.1%、およびN:0.02%以下(0%を含まない)を夫々含有する他、V:0.05〜0.6%、Mo:0.05〜2%、Ti:0.05〜1%およびNb:0.05〜1%よりなる群から選ばれる1種以上を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、焼戻しマルテンサイトおよび/または焼戻しベイナイトに、平均円相当直径で0.05〜1.0μmの炭化物が面積率1%以上、5%以下で析出している鋼材組織を有し、残部が、フェライト、パーライト、ベイニティックフェライト、焼入れままマルテンサイト、焼入れままベイナイトよりなる群から選ばれる組織を面積率で5%以下含み、且つ表面から20μm深さにおける窒素濃度が2.0〜6.0%である点に要旨を有するものである。尚、本発明において、「平均円相当直径」とは、炭化物の大きさ(サイズ)に着目し、同一面積に換算したときの直径の平均値を意味する。
本発明の電気自動車モータ用歯車においては、必要によって更に(a)B:0.01%以下(0%を含まない)、(b)Cu:5%以下(0%を含まない)および/またはNi:5%以下(0%を含まない)、等を含有させることも有効であり、含有される成分に応じて電気自動車モータ用歯車の特性が更に改善される。また本発明の電気自動車モータ用歯車には、表面に潤滑皮膜が形成されたものも包含する。
本発明では、化学成分組成を適切に調整すると共に、所定の大きさの炭化物の面積率を所定量確保しつつ焼戻しマルテンサイトおよび/または焼戻しベイナイト組織とし、且つ表面から20μm深さにおける窒素濃度を2.0〜6.0%となるようにしたので、高回転・高すべり、低い動粘度の潤滑油が使用される動力伝達部において、より優れた耐焼付き性を発揮することができ、このような歯車は電気自動車モータ用として極めて有用である。
ローラーピッチング試験に用いた試験片の概略説明図である。
本発明の耐焼付き性に優れた電気自動車モータ用歯車は、(i)歯車表面から20μm深さにおける窒素濃度が2.0〜6.0%であること、(ii)平均円相当直径で0.05〜1.0μmの炭化物の面積率が1%以上、5%以下であること、等を特徴としている。
主としてガソリン車を対象として発生するピッチング損傷は、油膜切れによる歯車間の金属同士の接触によって摩擦熱が発生し、歯車が熱軟化することによると考えられてきた。そして、耐ピッチング性に優れる歯車部品を実現するには、部品そのものの表面、内部強度、或は焼戻し軟化抵抗の向上が有効であり、高強度化によって耐ピッチング性が改善されてきた。しかしながら、電気自動車モータ用歯車では、従来のガソリン車と比較して、歯面間のすべり速度が数倍以上になり、損傷メカニズムが焼付きへと変化するため、部品そのものの表面、内部強度、或は焼戻し軟化抵抗を向上させることの延長線上では改善指針を見出すことができない。
本発明者らは、すべり速度が極めて高い領域での焼付き発生メカニズムを詳細に検討した。その結果、高温・高圧・高すべり下で摩耗が生じることによる原子間結合、即ち凝着摩耗が支配的であることが判明した。そして、更に検討を進めた結果、凝着摩耗が発生しやすい環境下においても原子間結合しにくくなるようにするためには、歯車表層部のN含有量(窒素濃度)を高めることが有効であり、また各種添加元素との窒素化合物よりも、鉄窒化物を多数形成させると共に、鉄窒化物の組成を適切に制御することが有効であることを見出した。加えて、所定サイズの炭化物を鋼中に分散させることも有効であり、これらの相乗効果によって、著しく耐焼付き性を向上させることができることを見出し、発明を完成した。
本発明における耐焼付き性改善の推定メカニズムは、次のように考えられる。即ち、上記(i)のように表層部の窒素濃度を制御することは、Nを熱的により安定な鉄窒化物組成に制御することができ、金属接触部分でも原子間結合を抑制することができる。また上記(ii)のように、所定サイズの炭化物量(面積率)を制御することは、油膜切れを起こし、金属同士が接触して温度上昇し易くなっている部分について、炭化物を分解させることによって、潤滑作用を付与することができ、金属接触を抑制することができる。こうした効果は、(i)または(ii)のいずれか単独では耐焼付き性の著しい向上を発現させることができず、(i)および(ii)の相乗効果によって初めて、耐焼付き性に優れた電気自動車モータ用歯車を実現することができる。これらの要件を規定したことによる具体的な作用効果は下記の通りである。
[(i)の要件]
電気自動車モータ用歯車としての耐焼付き性を改善するためには、表面から20μm深さ位置での窒素濃度を2.0〜6.0%となるように制御する必要がある。この部分における窒素濃度が、2.0%未満になると、金属接触による原子間結合が発生しやすくなり、凝着摩耗が生じることになる。一方、窒素濃度が6.0%を超えると、表層近傍の窒化物の原子構造が変化してしまうため、却って凝着摩耗が生じやすくなる。この窒素濃度の好ましい下限は2.2%以上(より好ましくは2.5%以上)であり、好ましい上限は5.8%以下(より好ましくは5.5%以下)である。
[(ii)の要件]
鋼中に析出する炭化物は、高すべり環境下において耐焼付き性を向上させることができる。また、特に表層部に存在する炭化物では、表層部に窒素を著しく濃化させることを援用する作用も有する。そのためには、炭化物の面積率は1%以上とする必要がある。炭化物の面積率が1%未満の場合、炭化物の分解による潤滑作用が不十分になり易く、所定の耐焼付き性を得られない。一方、炭化物の面積率が5%を超えると、表層部近傍に窒素が濃化しすぎて鉄窒化物の構造が変化してしまうため、耐焼付き性が劣化する。
本発明で対象とする炭化物は、平均円相当直径で0.05〜1.0μmのものである。鋼中に析出する炭化物は、上記のような作用を発揮するが、こうした作用を有効に発揮させるためには、そのサイズも重要である。このサイズは、細かければ細かいほど効果的であるが、平均円相当直径で0.05μmよりも小さくなると、高すべり時の潤滑作用に重要な温度上昇と炭化物の分解のバランスがくずれ、十分な耐焼付き性が発揮できなくなる。一方、炭化物のサイズが1.0μmを超えると、炭化物とマトリクスの界面が疲労破壊の起点となり易くなり、耐焼付き性や疲労強度が劣化する。
上記炭化物は、実質的に焼戻しマルテンサイトまたは焼戻しベイナイト、或はそれらの複合組織(焼戻しマルテンサイトおよび焼戻しベイナイトからなる組織)中に析出している。窒化処理後には、鋼中にこれら以外の組織、例えばフェライトやパーライト、ベイニティックフェライト、焼入れままマルテンサイト、焼入れままベイナイト等の組織が形成される場合がある。これらの組織は、歯車の特性バラつき、耐焼付き性に悪影響を及ぼすため、極力生成しないことが望まれる。但し、これらの組織が面積率で5%以下の割合で存在する場合に限って、本発明の作用に悪影響を与えないため、許容される。
本発明の電気自動車モータ用歯車においては、最終製品(歯車部品)としての特性を発揮させるために、その化学成分組成をも適切に調整する必要がある。その化学成分組成における各成分(元素)による範囲限定理由は次の通りである。
[C:0.45超〜0.80%]
Cは耐焼付き性を向上させる炭化物を所定量以上形成させるのに必要な元素である。また焼入れ硬さを増大させ、室温、高温における強度を維持するためにも有効である。そのような効果を有効に発揮させるためには、少なくとも、0.45%よりも多く含有させる必要がある。しかしながら、C含有量が過剰になると、鋼材が硬くなりすぎ、種々の加工が困難になるだけでなく、部品としての靭性も損なわれるので0.80%以下とする必要がある。C含有量の好ましい下限は0.47%以上(より好ましくは0.50%以上)であり、好ましい上限は0.70%以下(より好ましくは0.65%以下)である。
[Si:0.05〜1%]
Siは、焼戻し軟化抵抗を高めて硬さの低下を抑制する効果を発揮する。こうした効果を発揮させるためには、0.05%以上含有させる必要がある。しかしながら、Si含有量が過剰になると、冷間鍛造時の金型寿命を低下させるとともに、被削性も劣化させるため、1%以下とする必要がある。Si含有量の好ましい下限は0.10%以上(より好ましくは0.15%以上)であり、好ましい上限は0.8%以下(より好ましくは0.5%以下)である。
[Mn:0.1〜1%]
Mnは、マトリクスの固溶強化および焼入れ性を向上させる効果がある。この効果を発揮させるためには、0.1%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mn含有量が過剰になると、低級酸化物であるMnO濃度が上昇し、疲労特性を悪化させる他、加工性や被削性が著しく低下するので、1%以下とする必要がある。Mn含有量の好ましい下限は0.15%以上(より好ましくは0.20%以上)であり、好ましい上限は0.95%以下(より好ましくは0.90%以下)である。
[P:0.05%以下(0%を含まない)]
Pは、結晶粒界に偏析して疲労寿命を短くするのでできるだけ低減する必要がある。特に、その含有量が0.05%を超えると、疲労寿命の低下が著しくなる。こうしたことから、P含有量は0.05%以下とした。P含有量は好ましくは0.045%以下であり、より好ましくは0.040%以下である。
[S:0.05%以下(0%を含まない)]
Sは、硫化物を形成する元素であり、その含有量が0.05%を超えると、粗大な硫化物が生成するため疲労寿命を短くする。従って、Sの含有量は0.05%以下とする。S含有量は好ましくは0.045%以下であり、より好ましくは0.040%以下である。
[Cr:0.9〜2%]
Crは、焼入れ性の向上と安定な炭化物の形成を通じて、強度の向上および耐焼付き性を向上させるのに有効に作用する。こうした効果を発揮させるためには、Crは0.9%以上含有させる必要がある。しかしながら、Crの含有量が過剰になると、炭化物が粗大化し、疲労特性および被削性を低下させるため、その含有量は2%以下とする必要がある。Cr含有量の好ましい下限は1.0%以上(より好ましくは1.1%以上)であり、好ましい上限は1.9%以下(より好ましくは1.8%以下)である。
[Al:0.01〜0.1%]
Alは、脱酸剤として作用し、酸化物系介在物量を低減して鋼材の内部品質を高める作用を発揮するため適量添加することが好ましい。こうした観点から、Al含有量は0.01%以上とした。しかしながら、Al含有量が過剰になると、粗大で硬い介在物(Al23)が生成し、疲労特性を低下させるので0.1%以下とする必要がある。Al含有量の好ましい下限は0.015%以上(より好ましくは0.020%以上)であり、好ましい上限は0.08%以下(より好ましくは0.06%以下)である。
[N:0.02%以下(0%を含まない)]
Nは、Alと結合してAlNを形成し、結晶粒径を微細化する効果も有するが、その一方でN含有量が多すぎると、圧延時に割れが発生しやすくなるので0.02%以下に制限する必要がある。N含有量は、好ましくは0.018%以下であり、より好ましくは0.016%以下である。
[V:0.05〜0.6%、Mo:0.05〜2%、Ti:0.05〜1%およびNb:0.05〜1%よりなる群から選ばれる1種以上]
V、Mo、TiおよびNbは、歯車の表面硬さを向上させることによって、耐焼付き性を向上させるのに有効な元素である。これらにおける詳細な作用効果は次の通りである。
Vは、窒化処理中に、鋼中のCと結合してV炭化物を析出することにより、表面硬さを向上させ、耐焼付き性を向上させる。またV炭化物は、内部硬さを向上させることによって、疲労強度を向上させる。こうした効果を有効に発揮させるためには、Vは0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.07%以上(更に好ましくは0.10%以上)である。しかしながら、V含有量が過剰になって0.6%を超えると、析出強化による内部強度が高くなりすぎるために、却って疲労強度を劣化させる。好ましくは、0.55%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
Moは、窒化処理中に、鋼中のCと結合してMo炭化物を析出することにより、表面硬さを向上させ、耐焼付き性を向上させる。またMo炭化物は、内部硬さを向上させることによって、疲労強度を向上させる。こうした効果を有効に発揮させるためには、Moは0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.07%以上(更に好ましくは0.10%以上)である。しかしながら、Mo含有量が過剰になって2%を超えると、析出強化による内部強度が高くなりすぎるために、却って疲労強度を劣化させると共に、表層部においても靭性が損なわれ、耐焼付き性を劣化させる。好ましくは、1.8%以下であり、より好ましくは1.6%以下である。
Tiは、窒化処理中に、鋼中のCと結合してTi炭化物を析出することにより、表面硬さを向上させ、耐焼付き性を向上させる。またTi炭化物は、内部硬さを向上させることによって、疲労強度を向上させる。こうした効果を有効に発揮させるためには、Tiは0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.07%以上(更に好ましくは0.10%以上)である。しかしながら、Ti含有量が過剰になって1%を超えると、析出強化による内部強度が高くなりすぎるために、却って疲労強度を劣化させると共に、表層部においても靭性が損なわれ、耐焼付き性を劣化させる。好ましくは、0.8%以下であり、より好ましくは0.6%以下である。
Nbは、窒化処理中に、鋼中のCと結合してNb炭化物を析出することにより、表面硬さを向上させ、耐焼付き性を向上させる。またNb炭化物は、内部硬さを向上させることによって、疲労強度を向上させる。こうした効果を有効に発揮させるためには、0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.07%以上(更に好ましくは0.10%以上)である。しかしながら、Nb含有量が過剰になって1%を超えると、析出強化による内部強度が高くなりすぎるために、却って疲労強度を劣化させると共に、表層部においても靭性が損なわれ、耐焼付き性を劣化させる。好ましくは、0.8%以下であり、より好ましくは0.6%以下である。
本発明の電気自動車モータ用歯車における基本成分は上記の通りであり、残部は鉄および不可避的不純物(例えば、Sb,Mg等)である。本発明の電気自動車モータ用歯車には、必要によって、(a)B:0.01%以下(0%を含まない)、(b)Cu:5%以下(0%を含まない)および/またはNi:5%以下(0%を含まない)、等を含有させてもよく、含有させる元素の種類に応じて、電気自動車モータ用歯車の特性が更に改善される。これらの元素の好ましい範囲設定理由は下記の通りである。
[B:0.01%以下(0%を含まない)]
Bは、焼入性を著しく向上させる効果を有するだけでなく、衝撃強度の向上にも有効である。しかしながら、B含有量が過剰になると、B化合物が過剰に析出して粒界強度を低下させるため、疲労強度が劣化する。こうした観点から、0.01%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.007%以下であり、更に好ましくは0.004%以下である。
[Cu:5%以下(0%を含まない)および/またはNi:5%以下(0%を含まない)]
Cuは、鋼中に固溶し、表層および内部硬さを向上させ、耐焼付き性を向上させるのに有効に作用する。また窒化処理時に微細に析出して、鋼材を硬化させる作用を発揮する。しかしながら、Cu含有量が過剰になると、鋼材を脆化させるのでCu含有量は5%以下とすることが好ましい。より好ましくは4%以下であり、更に好ましくは3%以下である。
Niは、鋼材を固溶強化させる作用を有する。また、Cuと複合添加することで、Cuの析出硬化作用をより発揮させることができる。しかしながら、Ni含有量が過剰になると、その効果が飽和するのでNi含有量は5%以下とすることが好ましい。より好ましくは4%以下であり、更に好ましくは3%以下である。
電気自動車モータ用歯車は、上記のような化学成分組成の鋼材を用い、必要に応じて焼きなまし等の熱処理を適宜施し、所定の歯車形状に加工し、焼入れ、焼戻しをした後、窒化処理を施すことで製造される。この製造工程において、歯車形状に加工するまでは一般的に用いられている方法を採用すればよく、歯車加工も熱間鍛造、冷間鍛造、温間鍛造等、各種鍛造・圧造、転造、或は切削、研削、これらの方法の組み合わせによって製造される。
焼入れは、組織均一化、窒化における炭化物析出のための固溶Cの増加を目的に実施される。焼入れは一般的な方法でよく、オーステナイト単相域まで加熱し(但し、加熱温度が高すぎるとオーステナイト粒が粗大化しすぎるため、上限を1100℃とする)、マルテンサイト変態開始温度Ms以下まで急冷する。
加熱後は1〜180分程度までの保持によって、組織全体が均一になる。このときの加熱時間が長過ぎると、脱炭の影響などが顕著になるため、上限は180分とする。急冷速度は、フェライト変態、不完全焼きが出ない程度の冷却速度よりも速ければよく、特に上限は定めない。下限は上記の観点から、1℃/秒以上とする。焼戻しは置き割れ防止の観点で行われる。焼入れ後、直ちに窒化処理する場合には、焼戻しを省略することも可能である。焼戻し処理は、例えば100〜300℃の温度範囲で1〜180分程度で行えば、置き割れを防止することができる。
本発明の電気自動車モータ用歯車を製造する上で重要な工程は、窒化処理工程である。上記の化学成分組成の鋼材に対し、所定の窒化処理を施すことで、所定の組織形態を得ることができ、耐焼付き性を改善することができる。この窒化処理は、公知のいずれの方法を適用してもよい。例えば、ガス窒化、ガス軟窒化、塩浴窒化、塩浴浸炭窒化、イオン窒化、プラズマ窒化、タフライド処理、ガス浸炭窒化、等が挙げられる。尚、本発明においては、窒化処理の一例として、プラズマ軟窒化処理を適用した。機械加工等の仕上げ加工が必要な場合には、窒化処理前に行ってもよいし、窒化層に影響を与えない範囲においては、窒化処理後に行ってもよい。この窒化処理工程における具体的な条件について説明する。
(1)窒化処理温度:580〜720℃
本発明では、窒化処理温度(加熱温度)を通常の窒化処理温度(約570℃)よりも高い温度範囲で実施する。窒化処理温度を高くすることで、所定の大きさの炭化物を所定量析出させると共に、Nの鋼材への拡散を促進させ、原子間結合の発生しにくい鉄窒化物組成へと制御することによって、優れた耐焼付き性を得ることが可能となる。処理温度の下限を580℃としたのは、窒化処理温度が低過ぎる場合には、N拡散および所定の炭化物を得るための処理時間(窒化処理時の保持時間)が長時間化する弊害が生じ、生産性が著しく低下するためである。また、上限を720℃としたのは、窒化処理温度が高過ぎる場合には、炭化物の成長、Nの拡散促進のためには有効であるが、母相マトリクスの焼戻しが進行し過ぎて内部硬さが低下し、歯車部品としての特性を得られなくなるからである。従って、窒化温度を580〜720℃の範囲とすることにより、歯車部品としての諸特性を満足すると共に、電気自動車モータ等の高すべり環境下においても優れた耐焼付き性を発揮することができる。窒化温度のより好ましい下限は590℃以上(更に好ましくは600℃以上)であり、より好ましい上限は700℃以下(更に好ましくは650℃以下)である。
(2)窒化処理時間:1〜20時間
窒化処理時間(窒化処理時の保持時間)は、炭化物を成長させると共に、Nを鋼中に拡散させ、鉄窒化物を形成させるために必要とされるものである。通常は温度と時間が連動して炭化物の量、炭化物サイズ、Nの拡散量、鉄窒化物量が決まるものであるが、本発明では、安定に所定の組織を得るための範囲を温度、時間で夫々設定した。窒化処理時間を1〜20時間とすることで、所望の組織を得ることができ、電気自動車モータ等の高すべり環境下においても優れた耐焼付き性を発揮することができる。この窒化処理時間が1時間未満の短時間では、十分な炭化物と鉄窒化物を得ることができず、1時間未満で所望の組織を達成するため、温度を上げ過ぎると、母相マトリクスが軟質化してしまう弊害がある。一方、窒化処理時間が20時間を超える場合にも母相マトリクスが軟質化してしまい、これを防ぐために低温で処理しようとすると、炭化物が十分に析出しない弊害がある。
(3)窒化処理雰囲気:窒素ガス濃度23〜86%
窒化処理雰囲気における窒素ガス濃度(N2分率)は、Nを鋼中に拡散させ、原子間結合の発生しにくい鉄窒化物組成へと制御することによって、優れた耐焼付き性を得ることができる。雰囲気中のN2分率が23%未満では、Nを鋼中に十分拡散させることができず、所望の歯車特性が得られない。一方、N2分率が86%を超え、Nの拡散量が増え過ぎると、原子間結合しやすい鉄窒化物へと組成が再び変化するため、耐焼付き性を改善することができない。このN2分率のより好ましい下限は31%以上(更に好ましくは41%以上)であり、より好ましい上限は81%以下(更に好ましくは76%以下)である。
(4)窒化処理後の抽出温度および冷却速度:500℃未満、1℃/秒以下
上記のような条件で窒化処理した後は、500℃未満まで徐冷してから抽出することが好ましい。こうした冷却を行うことによって、所定のサイズの炭化物の面積率を確保できることになる。抽出温度が500℃以上となったり、冷却速度が1℃/秒よりも速くなると、所定サイズの炭化物の面積率が確保できなくなる。この抽出温度は、より好ましくは450℃以下であり、更に好ましくは400℃以下である。また冷却速度は、より好ましくは0.5℃/秒以下であり、例えば炉冷することによって実現できる。
本発明の自動車モータ用歯車においては、耐焼付き性を更に向上させるために、歯車表面に潤滑皮膜処理することも有効である。この潤滑皮膜処理は、金属接触を抑制し、温度上昇を抑制すると共に凝着摩耗の発生を抑制することができる。潤滑皮膜処理は、例えば、銅、亜鉛、鉛等の軟質金属、酸化鉛等の金属酸化物、二硫化モリブデン、二硫化タングステン等の硫化物、フッ化物、窒化物、グラファイト、リン酸マンガン等が代表的なものとして挙げられ、その処理の種類、処理方法は一般的なものが採用される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1、2に示す各種化学成分組成(本発明で規定する範囲内のものを成分判定「○」、範囲外のものを成分判定「×」と表示)の鋼塊を、溶解炉にて作製後、直径:32mmに熱間鍛造した。このようにして作製した丸棒を用い、所定の形状に切削加工した。これらの加工材を下記表3、4に示すとおり850〜1050℃の温度まで加熱、0.5〜5時間保持した後、50℃/秒の冷却速度で、50〜200℃まで冷却する焼入れ処理と、一部の加工材については、150℃×1時間の焼戻し処理を実施した。その後、下記表3、4に示す条件でプラズマ軟窒化処理(以下、単に「窒化処理」と呼ぶ)を実施した。窒化処理後、仕上げ加工を行い、図1に示す試験片形状(ローラーピッチング試験片形状)に加工し、試験片とした。
Figure 0006043078
Figure 0006043078
Figure 0006043078
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得られた各試験片(試験No.1〜30、33〜37)について、組織中の炭化物サイズおよびその面積率、表面から20μm深さの窒素濃度(表層部窒素濃度)、並びに硬さ分布を、下記の方法で測定すると共に、部品特性(耐焼付き性)を下記の方法によって評価した。
[炭化物のサイズおよび面積率の測定方法]
組織中(主組織は焼戻しマルテンサイトおよび/または焼戻しベイナイト)の炭化物のサイズと面積率は、窒化処理後の試験片を横断面で切断、樹脂に埋め込み、鏡面研磨、エッチングしたサンプルを用い、その表面から深さ20μmの位置を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。任意の9μm×12μmの視野を、倍率8000倍で観察し、画像解析ソフトで炭化物の部分を識別し、そのサイズ(円相当直径)と面積率を求めた。測定は3視野行い、それら3視野の算術平均を炭化物のサイズおよび面積率とした。
[表面から20μm深さの窒素濃度の測定方法]
表層部(表面から20μm深さ位置)における窒素濃度は、前記試験片を横断面で切断、樹脂に埋め込み、鏡面研磨後、表層部から内部に向かって窒素濃度を、電子線マイクロプローブ分析計(Electron Probe Microanalyzer:EPMA)を用いた分析によって測定した。
[部品特性の評価方法]
部品特性の評価方法として、ローラーピッチング試験を実施した。ローラーピッチング試験は、前記試験片(小ローラー:図1)と、高炭素クロム軸受鋼SUJ2で作製された大ローラー(相手材)とを用いて、ローラーピッチング試験機によって行った。試験条件は、回転速度:1000rpm、相対すべり率:700%、油温:90℃で行い、焼付きの発生によって生じた振動で試験装置が停止するまでの回転数を求めた。このとき20000×103回を上限とし、焼付き発生寿命とした。10000×103回までに焼付きが発生しなかったものを、耐焼付き性に優れると評価した。
[硬さ分布の測定]
部品特性の評価方法として、硬さ試験を実施した。代表値として、試験片表面から深さ20μm位置(表層部)、試験片のD/2位置(Dは直径:内部)の硬さを用いた。前記試験片を横断面で切断、樹脂に埋め込み、研磨後、ビッカース硬さHvを測定した。このとき、マイクロビッカース硬さ試験機を用い、試験荷重:100g、n=5回で行い、その平均値を鋼材の表層部および内部硬さとした。硬さ基準については、表層部の硬さが700〜1000Hv、内部硬さが400〜550Hvのときに合格とした。
これらの結果(炭化物サイズ、炭化物面積率、表層部窒素濃度、各部の硬さ、焼付き発生寿命)を、潤滑皮膜(潤滑皮膜はリン酸マンガンを使用)の有無と共に、下記表5、6に示す。尚、表6の焼付き発生寿命の項において「>20000」と表示したのは、20000×103回においても焼付きが発生しなかったことを意味する。
Figure 0006043078
Figure 0006043078
これらの結果から、次のように考察できる。まず試験No.1、3、4、7、8、11、12、14、17〜21、23〜25、27〜30、33、35〜37は、鋼材の化学成分組成および製造条件が共に適正な範囲で制御されているため、炭化物サイズ、炭化物面積率および表層部窒素濃度のいずれも本発明で規定する範囲内に制御することができる。その結果、凝着抑制効果に優れ、優れた部品強度および耐焼付き性を発揮することができる。また、潤滑皮膜を形成しても、優れた耐焼付き性を得ることができることが分かる(特性判定「○」)。
これに対し、試験No.2、5、6、9、10、13、15、16、22、26、34は、鋼材の化学成分組成や製造条件が適正な範囲で制御されていないため、いずれも部品強度および耐焼付き性が劣化している(特性判定「×」)。
試験No.2は、窒化処理時の加熱温度が低く、また窒化処理後の抽出温度が低くなると共に、抽出までの冷却速度が速いので、炭化物サイズが小さくなり、またNも十分に含浸させることができないため(表層部の窒素濃度が低下する)、表層部および内部での硬さが共に低くなっており、凝着も十分に抑制できないため、耐焼付き性が劣化している。試験No.5は、窒化処理時の加熱温度が高くなっており、炭化物サイズが大きくなると共に、炭化物の面積率も過剰になっており、また表層部の窒素含有量も過剰になるため、内部では析出強化能の低下、表層部では凝着抑制作用の劣化が生じるため、耐焼付き性が劣化している。
試験No.6は、窒化処理時の保持時間が短くなっており、炭化物を十分に成長させることができず、またNを十分に含浸させることができず、微細炭化物の析出強化によって、内部硬さは適切になるものの、表層部の硬さが低く、表層部での凝着も十分に抑制できないため、耐焼付き性が劣化している。試験No.9は、窒化処理時の保持時間が長くなっており、炭化物の過剰析出による炭化物面積率の過剰増大、また表層部の窒素濃度も過剰になり、内部は析出強化によって硬さは適切になるものの、表層部の硬さが過剰に高くなり、しかも窒化層の凝着抑制作用の劣化が生じるため、耐焼付き性が劣化している。
試験No.10は、窒化処理の際の窒素ガス量(N2分率)が少な過ぎるため、炭化物の要件は満足するものの、表層部の窒素濃度が確保できず、耐焼付き性が劣化している。試験No.13は、窒化処理の際の窒素ガス量(N2分率)が多過ぎるため、炭化物の要件は満足するものの、表層部の窒素濃度が過剰になり、表層部の硬さが過剰に高くなり、また窒化層の凝着抑制作用の劣化が生じるため、耐焼付き性が劣化している。
試験No.15は、C含有量が過剰な鋼種(鋼種D)を用いたものであり(表1の成分判定「×」)、製造条件が適切であっても、炭化物サイズが大きくなると共に、炭化物の面積率も過剰になっており、耐焼付き性が劣化している。また、内部硬さが高くなっており、部品特性を満足しない。試験No.16は、V含有量が過剰な鋼種(鋼種E)を用いたものであり(表1の成分判定「×」)、製造条件が適切であっても、炭化物の面積率が過剰になり、内部硬さが過剰に高くなって、衝撃に対する耐性が劣化する。また、表層部の窒素濃度が過剰になっており、窒化層の凝着抑制作用も得られないため、耐焼付き性が劣化している。
試験No.22は、C含有量が少ない鋼種(鋼種K)を用いたものであり(表1の成分判定「×」)、製造条件が適切であっても、炭化物面積率および表層部の窒素濃度が不足しており、内部硬さおよび表層部の硬さのいずれも低く、しかも窒化層の凝着抑制作用の劣化が生じるため、耐焼付き性が劣化している。
試験No.26は、V含有量が少ない鋼種(鋼種O)を用いたものであり(表2の成分判定「×」)、製造条件が適切であっても、炭化物面積率および表層部の窒素濃度が不足しており、内部硬さおよび表層部の硬さのいずれも低く、しかも窒化層の凝着抑制作用の劣化が生じるため、耐焼付き性が劣化している。
試験No.34は、Cr含有量が少ない鋼種(鋼種W)を用いたものであり(表2の成分判定「×」)、製造条件が適切であっても、炭化物面積率および表層部の窒素濃度が不足しており、内部硬さおよび表層部の硬さのいずれも低く、しかも窒化層の凝着抑制作用の劣化が生じるため、耐焼付き性が劣化している。

Claims (4)

  1. C:0.45超〜0.80%(「質量%」の意味、化学成分組成について以下同じ)、
    Si:0.05〜1%、
    Mn:0.1〜1%、
    P:0.05%以下(0%を含まない)、
    S:0.05%以下(0%を含まない)、
    Cr:0.9〜2%、
    Al:0.01〜0.1%、および
    N:0.02%以下(0%を含まない)を夫々含有する他、
    V:0.05〜0.6%、
    Mo:0.05〜2%、
    Ti:0.05〜1%および
    Nb:0.05〜1%よりなる群から選ばれる1種以上を含有し、
    残部が鉄および不可避不純物からなり、
    焼戻しマルテンサイトおよび/または焼戻しベイナイトに、平均円相当直径で0.05〜1.0μmの炭化物が面積率1%以上、5%以下で析出している鋼材組織を有し、
    残部が、フェライト、パーライト、ベイニティックフェライト、焼入れままマルテンサイト、焼入れままベイナイトよりなる群から選ばれる組織を面積率で5%以下含み、且つ
    表面から20μm深さにおける窒素濃度が2.0〜6.0%であることを特徴とし、ローラーピッチング試験を、回転速度:1000rpm、相対すべり率:700%、油温:90℃で行い、焼付きの発生によって生じた振動で試験装置が停止するまでの回転数が10000×10 3 回以上である耐焼付き性に優れた電気自動車モータ用歯車。
  2. 更に、B:0.01%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載の電気自動車モータ用歯車。
  3. 更に、Cu:5%以下(0%を含まない)および/またはNi:5%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載の電気自動車モータ用歯車。
  4. 表面に潤滑皮膜が形成されたものである請求項1〜3のいずれかに記載の電気自動車モータ用歯車。
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