JP2020111804A - 浸炭浸窒鋼部品 - Google Patents

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Komei Makino
孔明 牧野
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敏 作田
健 宇佐美
Takeshi Usami
健 宇佐美
浩行 水野
Hiroyuki Mizuno
浩行 水野
康弘 福田
Yasuhiro Fukuda
康弘 福田
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Abstract

【課題】残留応力向上効果を高め、さらに高強度化した浸炭浸窒鋼部品を提供すること。【解決手段】C:0.15〜0.25%、Si:0.20〜2.00%、Mn:0.30〜2.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:0.10〜1.50%、Mo:0〜0.60%(0%を含む)、Al:0.010〜0.100%、N:0.0050〜0.0300%を含有する。浸炭浸窒層を表面に有し、Cs:0.5〜1.4%、Ns:0.1〜0.9%、Cs+Ns:0.6〜1.6%、(3×[Si]+2×[Mn])×Ns≧0.4、表面の圧縮残留応力:1000MPa以上、最大圧縮残留応力:1400MPa以上、表面の粒界酸化層:なし、表面から所定範囲内の浸炭浸窒層における円相当直径で0.02〜2.00μmの析出物個数:100,000個/mm2以上、表面から所定範囲内における最大析出物:円相当径5.0μm以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、浸炭浸窒鋼部品に関する。
自動車の減速機の小型化・軽量化要求に対応するためには、減速機内の歯車・シャフトなどを小型化する必要がある。歯車・シャフトなどの鋼部品の小型化には、これらの鋼部品のさらなる高強度化が必要である。
例えば、歯車の高強度化には、通常、表面炭素濃度を増加させるガス浸炭処理が適用されることが多い。さらに、表面における炭素濃度だけでなく窒素濃度も増加させる浸炭浸窒処理が行われることもある。また、高強度化のために、圧縮の残留応力を増加させるショットピーニングを実施することもある(特許文献1)。
特開2013−112827号公報
しかしながら、より大きな圧縮の残留応力を付与して、強度向上効果を大きくするために、より強力なショットピーニングを施した際に、その負荷により、粒界酸化層や粗大な析出物を起点に、微小な割れが発生することがあり、この場合には、却って強度低下が生じてしまう。そのため、従来においては、割れを発生させない程度の強さにショットピーニングのショット粒の硬さ・粒径・ショット圧力等を制限する必要があり、結局、充分な圧縮の残留応力が与えられず、期待した強度改善効果が得られない場合があった。
本願は、上記背景に鑑み、割れを発生させることなく従来よりも強力なショットピーニングを施すことができ、その結果、より大きな圧縮の残留応力を付与し、さらに高強度化した浸炭浸窒鋼部品を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、質量比で、C:0.15〜0.25%、Si:0.20〜2.00%、Mn:0.30〜2.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:0.10〜1.50%、Mo:0〜0.60%(0%を含む)、Al:0.010〜0.100%、N:0.0050〜0.0300%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
浸炭浸窒層を表面に有し、
以下の(a)〜(i)を具備する、浸炭浸窒鋼部品である。
(a)Cs(表面C濃度):0.5〜1.4%、
(b)Ns(表面N濃度):0.1〜0.9%、
(c)Cs+Ns:0.6〜1.6%
(d)(3×[Si]+2×[Mn])×Ns≧0.4
(但し、式中における[Si]及び[Mn]は、Si及びMnの含有率(質量%)を示す)
(e)表面の圧縮残留応力:1000MPa以上
(f)最大圧縮残留応力:1400MPa以上
(g)表面の粒界酸化層:なし
(h)表面から0.1mmの範囲内の浸炭浸窒層における円相当直径が0.02〜2.00μmの析出物個数:100,000個/mm2以上
(i)表面から0.1mmの範囲内の浸炭浸窒層における最大析出物:円相当径5.0μm以下
上記態様の浸炭浸窒鋼部品は、上記特定の化学成分を有すると共に炭素及び窒素の濃度を内部よりも高めた浸炭浸窒層を表面に有することを前提として、上記の(a)〜(i)をすべて具備することにより、従来よりも優れた強度特性を得ることができる。
より具体的には、強力なショットピーニングを行った際に生じる割れが、粒界酸化層の存在や、表面の浸炭浸窒層中に存在する炭窒化物を主とする粗大な析出物の存在と関係が深いことをつきとめ、成分の最適化と浸炭浸窒条件の最適化により、粒界酸化層の生成と粗大な析出物の生成を抑制し、従来より強力なショットピーニング処理を行っても、割れ発生を防止でき、強度改善効果を大きく高めることに成功したものである。具体的な限定理由については、後述する。
まず、上記浸炭浸窒鋼部品における化学成分について、その限定理由を説明する。
C:0.15〜0.25%、
C(炭素)は、焼入れ処理後の硬さを向上させ、必要な強度確保のための内部硬さを得るために必要な元素である。特に内部硬さの低下は、曲げ疲労強度の低下につながるため、この効果を得るために、C含有率は0.15%を下限とする。一方、C含有率が高すぎると、表面硬化処理前に行う所定の部品形状への切削加工が難しくなるため、C含有率は0.25%以下とする。
Si:0.20〜2.00%、
Si(ケイ素)は、製鋼時の脱酸材として不可欠な元素であるとともに、焼戻し時に炭化物の生成を抑え、焼戻し軟化抵抗性を向上させる元素である。この効果を得るために、Si含有率は0.20%を下限とする。一方、Si含有率が高すぎると、焼なまし後の硬さが上昇する等の理由により、表面硬化処理前に行う所定形状への切削加工が難しくなるため、Si含有率は2.00%以下とする。
Mn:0.30〜2.00%、
Mn(マンガン)は、製鋼時の脱酸剤として利用する元素であるとともに、焼入れ性向上に有効な元素である。この効果を得るために、Mn含有率は0.30%を下限とする。一方、Mn含有率が高すぎると、焼なまし後の硬さが上昇する等、表面硬化処理前における硬さが上昇する等の理由により切削加工が難しくなるため、Mn含有率は2.00%以下とする。
P:0.030%以下、
P(リン)は、結晶粒界に偏析して、疲労強度低下の原因となるため、含有率を0.030%以下に抑制する。
S:0.030%以下、
S(硫黄)は、被削性向上に有効な元素であるが、その含有率が高くなると、硫化物系介在物が増加し、それが疲労破壊の起点となって、強度低下を招くおそれがあるため、含有率を0.030%以下に抑制する。
Cr:0.10〜1.50%、
Cr(クロム)は、焼入れ性を高めるとともに、微細な炭窒化物を生成させやすくする元素である。この効果を得るために、Cr含有率は0.10%を下限とする。一方、Cr含有率が高すぎる場合には、浸炭浸窒層において粗大なCrNが粒界上に生成しやすくなり、表面硬化処理後のショットピーニング時に起点となって割れが生じ、強度を低下させるおそれがあるため、Cr含有率は1.50%以下とする。
Mo:0〜0.60%(0%を含む)、
Mo(モリブデン)は、任意添加元素ではあるが、焼入れ性を向上させるとともに、焼戻し軟化抵抗性を向上させる元素であるため、必要に応じ添加することができる。しかし、Moは、合金鉄の価格変動により、高価となることがあり、その含有は、できるだけ抑えることが好ましく、また、多量に含有させても、効果が飽和し、コスト高になるため、Mo含有率は0.60%を上限とする。
Al:0.010〜0.100%、
Al(アルミニウム)は、脱酸剤として添加されると同時に、AlNとして鋼中に存在することで結晶粒粗大化を抑制する元素である。この効果を得るために、Al含有率は0.010%を下限とする。一方、Al含有率が高すぎると、鋼中に粗大なアルミナが生成し、これが起点となって、疲労強度を低下させるおそれがあるため、Al含有率は0.100%を上限とする。
N:0.0050〜0.0300%、
N(窒素)は、Alの限定理由で記載した通り、AlNとして鋼中に存在することで結晶粒粗大化を抑制する元素である。また、後述のNbやTiとも結合し、炭窒化物となって同様の効果が得られる。従って、この効果を得るために、N含有率は0.0050%を下限とする。一方、Nを多量に含有させようとすると製造が難しくなり、コストが高くなりすぎるため、N含有率は0.0300%を上限とする。
上記浸炭浸窒鋼部品は、任意元素として、Nb:0.30%以下、Ti:0.30%以下、及びB:0.0100%以下のうち、少なくとも一種をさらに含有してもよい。
Nb:0.30%以下、Ti:0.30%以下
Nb(ニオブ)、Ti(チタン)は、炭窒化物であるNb(C,N)又はTi(C、N)として鋼中に存在することで結晶粒粗大化を抑制する元素であるため、添加することができる。しかし、多量に添加しすぎると、効果が飽和するとともに、浸炭浸窒処理前の切削加工性の低下を招くため、上限をNb、Tiともに0.30%とする。
B:0.0100%以下、
B(ホウ素)は、焼入れ性を向上させる元素であるため、大型部品などで焼入れ性向上が必要な場合など添加すると有効である。添加する場合においても、熱間加工性の低下を防止するため、B添加率は0.0100%を上限とする。
次に、上述した(a)〜(i)についての限定理由を説明する。
(a)Cs(表面C濃度):0.5〜1.4%、
Csは、浸炭浸窒処理後における表面において測定したC(炭素)濃度を示すものである。Csが低すぎると十分な表面硬さが得られないため、Csの下限値は0.5%とする。一方、Csが高すぎると粗大な炭窒化物が生成しやすくなるおそれがあるため、Csの上限値は1.4%とする。
(b)Ns(表面N濃度):0.1〜0.9%、
Nsは、Csと同様に表面において測定したN(窒素)濃度を示すものである。Nsが低すぎると硬度向上に必要な炭窒化物が十分に得られないため、Nsの下限値は0.1%とする。一方、Nsが高すぎると残留オーステナイトが多くなり、表面硬さ低下の原因となるため、Nsの上限値は0.9%とする。
(c)Cs+Ns:0.6〜1.6%
Cs+Nsの値が低すぎると十分な硬さが得られないため、その下限値は、0.6%とする。一方、Cs+Nsの値が高すぎると残留オーステナイトが多くなり、表面硬さ低下の原因となるため、その上限値は1.6%とする。
(d)(3×[Si]+2×[Mn])×Ns≧0.4
(但し、式中における[Si]及び[Mn]は、Si及びMnの含有率(質量%)を示す)
この関係式は、多くの実験に基づいて、浸炭浸窒層のうち、表面近くのSiMn系窒化物の生成状態を適正化しうる条件として見出したものである。上記関係式が満たされない場合には、表面付近の浸炭浸窒層において、SiMn系窒化物を十分に生成させることができず、面疲労強度が低下するおそれがある。
(e)表面の圧縮残留応力:1000MPa以上
表面における圧縮残留応力は、面疲労強度に影響を及ぼすが、十分に高い強度を確保するために、1000MPa以上に限定する。表面の圧縮残留応力の測定方法については後述する。
(f)最大圧縮残留応力:1400MPa以上
最大圧縮残留応力は、回転曲げ疲労強度に影響を及ぼすが、十分に高い強度を確保するために、1400MPa以上に限定する。最大圧縮残留応力の測定方法については後述する。
(g)表面の粒界酸化層
浸炭浸窒処理後の表面における粒界酸化層は、面疲労強度及び曲げ疲労強度に影響を及ぼす。これらの強度の低下を避けるため、本発明の浸炭浸窒鋼部品においては、表面の粒界酸化層を有しない状態とする。
粒界酸化層を生成させずに浸炭浸窒処理を行うには、雰囲気ガスに酸素を含む浸炭性ガス使わない浸炭処理(減圧浸炭処理等)及び浸窒処理(減圧して処理する場合と大気圧で処理する場合を含む)を行うことで可能となる。
(h)表面から0.1mmの範囲内の浸炭浸窒層における円相当直径で0.02〜2.00μmの析出物個数:100,000個/mm2以上
浸炭浸窒処理後における浸炭浸窒層内の炭窒化物を主とする析出物個数は、面疲労強度に影響を及ぼす。そこで、本発明では、疲労強度改善のため、浸炭浸窒処理後に浸炭浸窒層内に存在する円相当直径で0.02〜2.00μmの析出物の個数を100,000個/mm2以上(表面から深さ0.1mmの範囲内)とする。この方策実施により、面疲労強度、曲げ疲労強度を大きく改善することができる。さらに、この方策実施により結果的に粗大な析出物生成も抑制され、割れ発生も防止することができる。浸炭浸窒層全体ではなく、表面から深さ0.1mmの範囲内に限定したのは、最表面の析出物の状態が、前記した強度改善と、特に関係が深いことを、数多くの実験により把握したためである。析出物としては、SiMn系窒化物その他の炭窒化物が主となり、本発明の鋼部品においては、この窒化物及び炭窒化物の存在が、強度向上に主として寄与するが、ここで個数カウントの対象とする析出物は、前記したSiMn系窒化物に限らず、全ての種類の析出物を含む概念であり、前記した粒径の範囲内で、観察しうるすべての析出物を含むものである。
ここで、対象とする析出物の粒径の範囲の下限を0.02μmとしたのは、それより小さい析出物は、画像処理で正確な個数カウントが難しくなる可能性があるため、測定上の理由から下限として設定したものであり、上限を2.00μmとしたのは、これ以上大きな析出物は、部品の強度向上への寄与が小さいと考えられるからである。
(i)表面から0.1mmの範囲内の浸炭浸窒層における最大析出物:円相当径5.0μm以下
前記した通り、強力なショットピーニング後の割れ発生を防止するポイントは、浸炭浸窒層内で粗大な析出物を存在させないことである。そのため、本発明では、浸炭浸窒層内における最大析出物を、円相当径5.0μm以下に限定する。
次に、上記浸炭浸窒鋼部品は、上記の条件に加えて、以下の(j)〜(m)をさらに具備することが好ましい。
(j)表面硬さ:800HV以上
表面硬さを800HV以上確保することによって、面疲労強度及び曲げ疲労強度を確実に向上させることが可能となる。
(k)表面の残留オーステナイト量:面積率30%以下
浸炭浸窒層である表面の残留オーステナイト量を面積率で30%以下に制限することによって、面疲労強度及び曲げ疲労強度を確実に向上させることができる。
(l)面疲労強度:3200MPa以上
(m)曲げ疲労強度:800MPa以上
面疲労強度を3200MPa以上確保し、かつ、曲げ疲労強度を800MPa以上確保することによって、十分な高強度化を図ることができ、確実に軽量化要求に応えることが可能となる。
なお、ここで言う面疲労強度、曲げ疲労強度とは、本発明に基づき製造された浸炭浸窒鋼部品と同じ素材に対し、前記鋼部品と同等の表面硬化処理、ショットピーニング処理を行った後、後述の実施例で示す条件で行ったローラーピッチング試験、回転曲げ疲労試験により求めた強度の値のことを意味する。
次に、上記の浸炭浸窒鋼部品を製造する方法としては、減圧浸炭処理、浸窒処理、焼入れ処理、焼戻し処理、及びショットピーニング処理を含み、上記焼入れ処理は、900〜970℃に保持した後急冷する条件で行う、浸炭浸窒鋼部品の製造方法を採用することが好ましい。この方法により、上述した優れた浸炭浸窒鋼部品を確実に得ることができる。
上記減圧浸炭処理は、具体的には、ガスによる減圧浸炭処理であり、処理温度に維持した処理炉内にアセチレン等の浸炭性ガスをパルス状に導入しながら行い、かつ、雰囲気圧力は、大気圧よりも低い圧力に減圧した状態で行うものであり、減圧しないガス浸炭処理とは異なる。減圧条件は、50〜3000Paの範囲とすることが好ましい。浸炭用ガスとしては、たとえば、炭化水素ガス、特に、アセチレン等を用いることができる。また、減圧浸炭処理の処理温度は、例えば900〜1100℃の範囲で設定することが好ましい。そして、酸素を含まない雰囲気下で浸炭処理(減圧浸炭)することにより、粒界酸化層を生成することなく処理が可能となる。
浸炭処理に続いて浸窒処理が行われる。浸窒処理は、処理温度に維持した処理炉内に窒素源としてのアンモニアを導入して行う処理である。浸窒処理の処理温度は、例えば900〜970℃の範囲で設定することが好ましい。前記した粒界酸化層については、浸窒処理中も浸炭処理中と同様に、その生成を防止する必要があるため、浸窒処理についても、酸素を含まない雰囲気ガス、具体的には、窒素源としてアンモニアを導入して行われる。
浸炭浸窒処理の後、行われる焼入れ処理は、鋼部品を900〜970℃に保持した後急冷する条件で行う。焼入れ処理の保持温度が低い場合には粗大炭窒化物が生成するおそれがあり、それを避けるために900℃以上に限定する。一方、焼入れ処理の保持温度が高すぎる場合には、急冷時に生じる歪みが大きくなりすぎるおそれがあり、それを避けるために970℃以下に限定する。また、急冷は、例えば油への投入等により行うことができる。
通常、浸窒処理は、温度が高いとアンモニアガスが分解し、正常な浸窒処理が難しくなるため、浸炭に比べ低い温度(850℃程度)で処理されており、焼入れは浸窒温度から行われることになるため、当然の如く低い温度となる。しかし、本発明では、900℃以上という通常より高い温度で焼入れすることとしている。この場合、前記の通り、アンモニアガスの分解による影響を考慮する必要が生じる。
そこで、弊社にて開発し、本発明とは別に出願済みである発明(特開2018−154885号)に記載の通り雰囲気ガスの圧力を最適化(条件によっては、大気圧とする場合を含む)することにより、より高い温度での浸窒処理を可能とすることができる。そして、本発明では、高い温度で浸窒処理を行った後、高い温度のまま焼入れ処理を行う。さらに、本発明者等は、数多くの実験を行った結果、上記の通り、焼入れ温度を高めた場合には、焼入れ処理後において、浸炭浸窒層内の粗大炭窒化物の生成を防止することができ、その後強力なショットピーニングを行なっても、割れ発生を防止できることを見出したものである。
本発明の浸炭浸窒鋼部品は、上記浸炭浸窒処理し、焼入れ処理を行った後、焼戻し処理される。上記焼戻し処理の処理温度は、例えば120〜200℃の範囲で設定することが好ましい。また、保持時間は、例えば30〜120分の範囲で設定することが好ましい。
ショットピーニング処理自体は従来技術であり、既存の技術通りに行えば問題ないが、その効果を確実に得るためには、カバレージを少なくとも100%以上、好ましくは200〜300%程度で行うと良い。
上記浸炭浸窒鋼部品の実施例について説明する。
本例では、表1に示すごとく、化学成分が異なる21種類の鋼材(実施例:試料No.1〜11、比較例:試料No.12〜21)を用いて各種試験片を作製し、評価した。Moについては、含有率が0.05%以下のものは、積極的に添加したものではなく不純物として含有された鋼中のMo含有率の分析をした結果を示すものである。
Figure 2020111804
<ローラーピッチング試験片の作製>
上記各鋼材からなる直径32mmの丸棒鋼を準備し、当該丸棒鋼から直径が26mm、幅(軸方向長さ)28mmの円筒部を有するローラー状小試験片(小ローラー)を切削加工により作製した。さらに同材質の直径140mmの丸棒鋼を準備し、当該丸棒鋼から直径130mm、幅(軸方向長さ)18mmの円筒部を有するローラー状大試験片(大ローラー)を作製した。その後、これら小ローラー及び大ローラーに対して、浸炭処理、浸窒処理、焼入れ処理、焼戻し処理、及びショットピーニング処理を施して、ローラーピッチング試験片とした。
浸炭浸窒処理については、表2に示すように、試料No.19及び21はガス浸炭浸窒処理を採用し、その他は全て減圧(真空)浸炭浸窒処理とした。具体的には、減圧浸炭浸窒処理は、処理温度は焼入れ温度と同じ温度、浸炭期、拡散期の時間は各々60分、浸炭ガスはアセチレンガス、処理圧力は1000Paの条件で行った。引続き、浸窒処理は連続して同じ処理温度に試料を保持し、炉内圧力は大気圧としてアンモニアガスを導入して60分間行った。なお、炉内雰囲気ガスの圧力は、大気圧としているが、前記した特開2018−154885の条件を満足する条件で行い、高い温度での浸窒処理が可能な状態で行った。
一方、試料No.19、21に対して行ったガス浸炭浸窒処理は、従来JISG4053のCr鋼、Cr−Mo鋼に対し、普通に行われているのと同様に雰囲気ガスとしてRXガスを用い、浸炭期、拡散期とも処理温度950℃(浸炭期65分、拡散期65分)という条件で行った。引続き、浸窒処理は処理温度850℃、大気圧、NH3分圧2500Pa、浸窒期の時間はで60分の条件で行った。なお、試料No.19、21に対して粒界酸化層の生成を防止できないガス浸炭処理を行ったのは、本発明との性能の差異を比較するためである。
浸窒処理後には、その処理温度と同じ焼入れ温度から、130℃の油中に投入して急冷することで焼入れ処理を行った。
その後、全ての試料において、焼もどしを150℃×60分の条件で行い、さらにショットピーニングを行った。ショットピーニングは、高寿命が得られるようにするため、強いショット処理条件として、φ0.8mmのショットを用いた処理を行った後、φ0.05mmのショットを用いた処理を行う2段のショットピーニング処理を採用した。このショット条件は、表面の浸炭浸窒層に粗大な炭窒化物が存在していた場合には、割れが発生する懸念を生じる強いショット条件である。また、比較のため、弱いショット処理条件としては、φ0.3mmのショットを用いた処理を行った後、φ0.05mmのショットを用いた処理を行う2段のショットピーニング処理を採用した。ショットピーニング処理を行った後に、後述の回転曲げ疲労試験片も含めて、疲労試験前に割れが生じていないかの確認を行った。
<回転曲げ疲労試験片の作製>
上記各鋼材からなる直径32mmの丸棒鋼を準備し、当該丸棒鋼から平行部直径φ10mmの試験片を採取し、平行部にこれと直角方向の深さ1mmの切欠き(切欠き係数:1.78)を全周にわたって設けた回転曲げ疲労試験片を作製した。その後の浸炭処理、浸窒処理、焼入れ処理、焼戻し処理、及びショットピーニング処理は、上述したローラーピッチング試験片の場合と同様とした。
<面疲労強度の測定:ローラーピッチング試験>
ローラーピッチング試験は、株式会社ニッコークリエート製ローラーピッチング試験機に、上記のように作製した小ローラー及び大ローラーを両者の前記円筒部の間に所定の負荷応力をかけてセットして行った。面疲労強度は、小ローラーの回転が107回に達した時点において、破損せずに耐えうる負荷応力の最大値とした。試験条件は、回転数(小ローラー):2000rpm、周速差:40%、潤滑剤:オートマチックトランスミッション用オイル、潤滑剤温度:120℃とした。
<曲げ疲労強度の測定>
曲げ疲労強度の測定は、回転曲げ疲労試験により行った。回転曲げ疲労試験は、株式会社島津製作所製の小野式回転曲げ疲労試験装置(型番:H6型)に、上記のように作成した回転曲げ試験片をセットして、回転数3600rpmで繰り返し曲げ応力を付与して行った。曲げ疲労限度は、繰り返し回数107回における疲労強度を、JISZ2274の基準に従って求めた。
<各評価項目の測定条件等>
(1)Cs及びNs
ローラーピッチング試験片の小ローラー(未使用のもの、以下同様。)を中心軸を含む軸方向に垂直な面で切断し、切削面を鏡面研磨した後にEPMAにて分析し、C及びNの含有率を測定し、これらをCs及びNsとした。分析範囲は表面から0.05mmの領域とした。
(2)表面硬さ
測定装置:ビッカース硬さ試験機
測定位置:ローラーピッチング試験片の小ローラーの表面
(この表面を#800の研磨紙で研磨した後に測定)
荷重:20kgf
(3)表面の残留γ量
測定機器:微小部X線残留応力装置(PSPC:株式会社リガク製)
管球:Cr管球
X線:Kα1
加速電圧:20kV
照射電流:40mA
コリメータ径:4mm
測定位置:ローラーピッチング試験片の小ローラーの表面
(4)表面の圧縮残留応力
測定機器:微小部X線残留応力装置(PSPC:株式会社リガク製)
測定位置:ローラーピッチング試験片の小ローラーの表面
測定方向:周方向
(5)最大圧縮残留応力
測定機器:微小部X線残留応力装置(PSPC:株式会社リガク製)
測定位置等:ローラーピッチング試験片の小ローラーを表面から所定の深さ(圧縮残留応力の最大値が測定できる深さ以上の深さ)まで電解研磨し、逐次残留応力の測定を行い、最大値を採用した。
測定方向:周方向
(6)粒界酸化層
測定機器:光学顕微鏡
測定位置等:(1)のEPMA分析で用いた試験片を用い、鏡面研磨し、ナイタールで腐食後に表面を観察し、測定した。
観察倍率:×400
(7)析出物
測定装置:SEM
倍率:×10000(約45μm2の範囲)
測定位置等:(1)のEPMA分析で用いた試験片を用い、鏡面研磨を行った後に、電解腐食して表面〜0.1mmの位置を観察した。
析出物測定方法:円相当径が0.02〜2.00μmの析出物をSEMで観察し、その画像を画像処理することにより、析出物の個数をカウントした。
指標:100,000個以上/mm2
(8)最大析出物
測定装置:SEM
倍率:×10000(約45μm2の範囲)
測定位置等:(1)のEPMA分析で用いた試験片を用い、鏡面研磨を行った後に、電解腐食して表面〜0.1mmの位置で10視野を観察した。
測定方法:10視野の中で最もサイズの大きいものを最大析出物とし、その円相当径を測定した。
指標:5.0μm以下
これらの評価結果を表2に示す。
Figure 2020111804
表2からわかるように、試料No.1〜11の実施例においては、浸炭浸窒層中に微細な析出物が多数析出した状態となっており、かつ最大析出物の大きさが2.7μm以下と5.0μm以上の粗大析出物の生成を完全に防止できていた。そして、従来割れを防止できなかった強いショットピーニング処理後においても、割れ発生がなく、全ての評価項目において優れた結果が得られ、特に、面疲労強度(107回強度)が全て3200MPa以上、回転曲げ疲労強度(107回強度)が800MPa以上の高疲労強度を実現することができ、歯車あるいは車両用シャフトへの適用によって、車両の軽量化に十分に貢献しうることがわかった。
上記試験終了後、試料No.1〜11の試験片について、浸炭浸窒層内をTEMで観察し、EDXも合わせて行い、析出物の分析を行った。その結果析出物の70%程度がSiMn系窒化物であり、その大きさは、大半が数10nm〜2μmの範囲に入っていた。このことから、本発明の鋼部品は、上記大きさのSiMn系窒化物を微細に析出させていることが疲労強度の向上に寄与しているものと考えられる。
これに対して、試料No.12は、焼入れ温度が低すぎ、粗大析出物生成を防止できず、ショットピーニングにおいて割れが発生し、割れが存在している状態で強度試験を行うことは適切でないと判断し、疲労強度の試験は行わなかった。
試料No.13は、焼入れ温度が高すぎ、焼入れ歪が大きくなり、疲労試験の際に歪の影響で、応力負荷時の実質的な負荷応力が高くなり、強度が低下する結果となった。
試料No.14は、浸炭浸窒によるC、Nの表面への浸入濃度(Cs+Ns)が高すぎて浸炭浸窒層表面の残留γ率が高くなり、表面硬さが低下して強度が低下する結果となった。
試料No.15は、浸炭によるCの浸入濃度(Cs)が高すぎて粗大析出物が生成し、ショットピーニング後に割れが発生したため、試料No.12と同様に疲労強度の試験は行わなかった。
試料No.16は、浸窒量(Ns)が多すぎて表面の残留γが増加しすぎ、試料No.14と同様に表面硬さが低下し、疲労強度が低下する結果となった。
試料No.17は、(3[Si]+2[Mn])×Nsの値が低く、十分な量のSiMn系窒化物を生成させることができず、強度が低下する結果となった。
試料No.18〜21は、過去の開発鋼に対し、従来通りの低い焼入れ温度で焼入れ処理を行ったもので、粗大析出物の生成が抑制できていない。その結果、従来の比較的弱い(通常の)ショットピーニングを施した試料No.18及び19は、割れは生じなかったが、圧縮の残留応力が小さく、強度改善効果が不十分となった。また、粗大析出物が存在するため、試料No.1〜17と同様の強い条件でショットピーニングした試料No.20及び21は、割れが発生したため、前記した試料No.12、15と同様に、疲労強度の試験は行わなかった。

Claims (4)

  1. 質量比で、C:0.15〜0.25%、Si:0.20〜2.00%、Mn:0.30〜2.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:0.10〜1.50%、Mo:0〜0.60%(0%を含む)、Al:0.010〜0.100%、N:0.0050〜0.0300%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
    浸炭浸窒層を表面に有し、
    以下の(a)〜(i)を具備する、浸炭浸窒鋼部品。
    (a)Cs(表面C濃度):0.5〜1.4%、
    (b)Ns(表面N濃度):0.1〜0.9%、
    (c)Cs+Ns:0.6〜1.6%
    (d)(3×[Si]+2×[Mn])×Ns≧0.4
    (但し、式中における[Si]及び[Mn]は、Si及びMnの含有率(質量%)を示す)
    (e)表面の圧縮残留応力:1000MPa以上
    (f)最大圧縮残留応力:1400MPa以上
    (g)表面の粒界酸化層:なし
    (h)表面から0.1mmの範囲内の浸炭浸窒層における円相当直径で0.02〜2.00μmの析出物個数:100,000個/mm2以上
    (i)表面から0.1mmの範囲内の浸炭浸窒層における最大析出物:円相当径5.0μm以下 (h)金属組織における析出物個数:100,000個/mm2以上
  2. Nb:0.30%以下、Ti:0.30%以下、及びB:0.0100%以下のうち、少なくとも一種をさらに含有する、請求項1に記載の浸炭浸窒鋼部品。
  3. 以下の(j)〜(m)をさらに具備する、請求項1又は2に記載の浸炭浸窒鋼部品。
    (j)表面硬さ:800HV以上
    (k)表面の残留オーステナイト量:面積率30%以下
    (l)面疲労強度:3200MPa以上
    (m)曲げ疲労強度:800MPa以上
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の浸炭浸窒鋼部品を製造する方法であって、
    減圧浸炭処理、浸窒処理、焼入れ処理、焼戻し処理、及びショットピーニング処理を含み、上記焼入れ処理は、900〜970℃に保持した後急冷する条件で行う、浸炭浸窒鋼部品の製造方法。
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