本発明は、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能なマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、透過型マスクブランク、反射型マスクブランク、透過型マスク、反射型マスク及び半導体装置の製造方法に関する。
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚ものフォトマスクと呼ばれている転写用マスクが使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものであり、この転写用マスクの製造においてもフォトリソグラフィ法が用いられている。
フォトリソグラフィ法による転写用マスクの製造には、ガラス基板等の透光性基板上に転写パターン(マスクパターン)を形成するための薄膜(例えば遮光膜など)を有するマスクブランクが用いられる。このマスクブランクを用いた転写用マスクの製造は、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン描画を施す描画工程と、描画後、前記レジスト膜を現像して所望のレジストパターンを形成する現像工程と、このレジストパターンをマスクとして前記薄膜をエッチングするエッチング工程と、残存するレジストパターンを剥離除去する工程とを有して行われている。上記現像工程では、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し所望のパターン描画を施した後に現像液を供給して、現像液に可溶なレジスト膜の部位を溶解し、レジストパターンを形成する。また、上記エッチング工程では、このレジストパターンをマスクとして、ドライエッチング又はウェットエッチングによって、レジストパターンの形成されていない薄膜が露出した部位を除去し、これにより所望のマスクパターンを透光性基板上に形成する。こうして、転写用マスクが出来上がる。
また、転写用マスクの種類としては、従来の透光性基板上にクロム系材料からなる遮光膜パターンを有するバイナリー型マスクのほかに、位相シフト型マスクが知られている。この位相シフト型マスクは、透光性基板上に位相シフト膜を有する構造のもので、この位相シフト膜は、所定の位相差を有するものであり、例えばモリブデンシリサイド化合物を含む材料等が用いられる。また、モリブデン等の金属のシリサイド化合物を含む材料を遮光膜として用いるバイナリー型マスクも用いられるようになってきている。これら、バイナリー型マスク、位相シフト型マスクを総称して、本願では透過型マスクと称し、透過型マスクに使用される原版であるバイナリー型マスクブランク、位相シフト型マスクブランクを総称して透過型マスクブランクと称す。
また、近年、半導体産業において、半導体デバイスの高集積化に伴い、従来の紫外光を用いたフォトリソグラフィ法の転写限界を上回る微細パターンが必要とされてきている。このような微細パターン形成を可能とするため、極紫外(Extreme Ultra Violet:以下、「EUV」と呼ぶ。)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィーが有望視されている。ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2〜100nm程度の光のことである。このEUVリソグラフィーにおいて用いられる転写用マスクとして反射型マスクが提案されている。このような反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、該多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。
以上のように、リソグラフィー工程での微細化に対する要求が高まることにより、そのリソグラフィー工程での課題が顕著になりつつある。その1つが、リソグラフィー工程で用いられるマスクブランク用基板等の欠陥情報に関する問題である。
マスクブランク用基板は、近年のパターンの微細化に伴う欠陥品質の向上や、転写用マスクに求められる光学的特性の観点から、より平滑性の高い基板が要求されている。従来のマスクブランク用基板の表面加工方法としては、例えば、特許文献1〜3に記載されたようなものがある。
特許文献1には、平均一次粒子径が50nm以下のコロイダルシリカ、酸および水を含み、pHが0.5〜4の範囲になるように調整してなる研磨スラリーを用いて、SiO2を主成分とするガラス基板の表面を、原子間力顕微鏡で測定した表面粗さRmsが0.15nm以下になるように研磨する、ガラス基板の研磨方法が記載されている。
特許文献2には、合成石英ガラス基板表面の高感度欠陥検査装置で検出される欠陥の生成を抑制するために、抑制コロイド溶液及び酸性アミノ酸を含んだ合成石英ガラス基板用の研磨剤が記載されている。
特許文献3には、石英ガラス基板を水素ラジカルエッチング装置内に載置し、石英ガラス基板に水素ラジカルを作用させて、表面平坦度をサブナノメータレベルで制御できるようにした、石英ガラス基板の表面平坦度を制御する方法が記載されている。
特開2006−35413号公報
特開2009−297814号公報
特開2008−94649号公報
ArFエキシマレーザー、EUV(Extreme Ultra-Violet)を使用したリソグラフィーにおける急速なパターンの微細化に伴い、バイナリー型マスクや位相シフト型マスクのような透過型マスク(オプティカルマスクとも言う。)や、反射型マスクであるEUVマスクの欠陥サイズ(Defect Size)も年々微細になり、このような微細欠陥を発見するために、欠陥検査で使用する検査光源波長は露光光の光源波長に近づきつつある。
例えば、オプティカルマスクや、その原版であるマスクブランク及びサブストレートの欠陥検査装置としては、検査光源波長が193nmとする高感度欠陥検査装置が普及しつつあり、EUVマスクや、その原版であるEUVマスクブランク及びサブストレートの欠陥検査装置としては、検査光源波長が266nm、193nm、13.5nmとする高感度欠陥検査装置が普及、又は提案されている。
ここで、従来の転写用マスクに用いられる基板の主表面は、その製造過程においてRms(二乗平均平方根粗さ)及びRmax(最大高さ)に代表される表面粗さにより管理していた。しかし、上述した高感度欠陥検査装置の検出感度が高いため、欠陥品質の向上の観点からいくらRms及びRmaxに準拠する平滑性を高めても、基板主表面欠陥検査を行うと多数の疑似欠陥が検出され、欠陥検査が最後まで実施できないという問題が生じた。
ここでいう疑似欠陥とは、パターン転写に影響しない基板表面上の許容される凹凸であって、高感度欠陥検査装置で検査した場合に、欠陥と誤判定されてしまうものをいう。欠陥検査において、このような疑似欠陥が多数検出されると、パターン転写に影響のある致命欠陥が多数の疑似欠陥に埋もれてしまい、致命欠陥を発見することができなくなる。例えば、現在普及しつつある検査光源波長が266nmや193nmとする欠陥検査装置では、100,000個を超える疑似欠陥が検出されてしまい、致命欠陥の有無を検査することができない。欠陥検査における致命欠陥の看過は、その後の半導体装置の量産過程において不良を引き起こし、無用な労力と経済的な損失をまねくことになる。
このような疑似欠陥の問題について、本発明者らが鋭意検討した結果、従来から管理されていた粗さ成分に加え、表面粗さのベアリングカーブを管理すること、及びベアリング深さの頻度(%)を管理することで、高感度欠陥検査装置を使用した欠陥検査において、疑似欠陥の検出を大幅に抑制できることを見出した。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥検出を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能なマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、透過型マスクブランク、反射型マスクブランク、透過型マスク、反射型マスク及び半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板は、リソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板であって、
前記基板の転写パターンが形成される側の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、前記基板の主表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)の関係式を満たし、かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmとした構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る多層反射膜付き基板は、上述した本発明のマスクブランク用基板の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を有する構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る多層反射膜付き基板は、リソグラフィーに使用される多層反射膜付き基板であって、
前記多層反射膜付き基板は、マスクブランク用基板の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を有し、
前記多層反射膜表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、
前記多層反射膜の表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)の関係式を満たし、かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmとした構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る透過型マスクブランクは、上述した本発明のマスクブランク用基板の前記主表面上に、転写パターンとなる遮光性膜を有する構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る反射型マスクブランクは、上述した本発明の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜もしくは前記保護膜上に、転写パターンとなる吸収体膜を有する構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る透過型マスクは、上述した本発明の透過型マスクブランクにおける前記遮光性膜をパターニングして、前記主表面上に遮光性膜パターンを有する構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る反射型マスクは、上述した本発明の反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングして、前記多層反射膜上に吸収体パターンを有する構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上述した本発明の透過型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する方法となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上述した本発明の反射型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する方法となっている。
上述した本発明のマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、透過型マスクブランク、反射型マスク、透過型マスクによれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥の検出を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能となる。特に、EUVリソグラフィーに使用するマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクにおいては、疑似欠陥を抑制しつつ、基板主表面上に形成した多層反射膜は高い反射率が得られる。
また、上述した半導体装置の製造方法によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、異物や傷などの致命欠陥を排除した反射型マスクや透過型マスクを使用できるので、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に転写する回路パターン等の転写パターンに欠陥がなく、微細でかつ高精度の回路パターンを有する半導体装置を製造することができる。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板10を示す斜視図である。図1(b)は、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板10を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態に係る多層反射膜付き基板の構成の一例を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態に係る反射型マスクブランクの構成の一例を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態に係る反射型マスクの一例を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態に係る透過型マスクブランクの構成の一例を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態に係る透過型マスクの一例を示す断面模式図である。
本発明の実施例1〜4、比較例1及び2のマスクブランク用基板の表面粗さのベアリングカーブ測定結果を示すグラフである。
図8(a)は実施例1のベアリングカーブ測定結果、図8(b)は実施例1のベアリング深さとその頻度(%)との関係をプロットした度数分布を示すグラフである。
図9(a)は比較例1のベアリングカーブ測定結果、図9(b)は比較例1のベアリング深さとその頻度(%)との関係をプロットした度数分布を示すグラフである。
図10(a)は実施例5のベアリングカーブ測定結果、図10(b)は実施例5のベアリングカーブ深さとその頻度(%)との関係をプロットした度数分布を示すグラフである。
・全般的説明
上記目的を達成するために、本発明は、以下の構成となっている。
(構成1)
本発明の構成1は、リソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板であって、
前記基板の転写パターンが形成される側の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、前記基板の主表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)の関係式を満たし、かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmとした、マスクブランク用基板である。
上記構成1によれば、前記主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となるため、欠陥検査において疑似欠陥の検出要因である凹凸(表面粗さ)のバラツキを低減することができるので、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成2)
本発明の構成2は、前記主表面は、前記原子間力顕微鏡で測定して得られたベアリング深さと、得られたベアリング深さの頻度(%)との関係をプロットした度数分布図において、前記プロットした点より求めた近似曲線、或いは前記プロットした点における最高頻度より求められる半値幅の中心に対応するベアリング深さの絶対値が、前記基板の主表面の表面粗さにおける最大高さ(Rmax)の1/2に対応するベアリング深さの絶対値よりも小さい、構成1に記載のマスクブランク用基板である。
上記構成2によれば、基板主表面を構成する凹凸において、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。従って、前記主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜を形成する場合に特に効果が発揮される。
(構成3)
本発明の構成3は、前記主表面は、触媒基準エッチングにより表面加工された表面である、構成1又は2に記載のマスクブランク用基板である。
上記構成3によれば、触媒基準エッチングにより、基準面である触媒表面に接触する凸部から選択的に表面加工されるため、主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となり、しかも、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。従って、前記主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜を形成する場合に特に効果が発揮される。また、上述のように主表面を触媒基準エッチングによる表面処理することにより、上記構成1又は2で規定している範囲の表面粗さ、ベアリングカーブ特性の表面を比較的容易に形成することができる。
(構成4)
本発明の構成4は、前記基板が、EUVリソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板である、構成1〜3のいずれか1つに記載のマスクブランク用基板である。
上記構成4によれば、EUVリソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板とすることにより、前記主表面上に形成される多層反射膜表面の表面形態も高平滑となるので、EUV光に対する反射率特性も良好となる。
(構成5)
本発明の構成5は、前記基板多成分系のガラス材料からなる基板の前記主表面上に、金属、合金又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜を有する、構成4に記載のマスクブランク用基板である。
一般に、EUVリソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板においては、低熱膨張の特性が要求されるため、後述するような多成分系のガラス材料を使用することが好ましい。多成分系のガラス材料は、合成石英ガラスと比較して高い平滑性を得られにくいという性質がある。このため、多成分系のガラス材料からなる基板の前記主表面上に、金属、合金又はこれらの何れかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜が形成された基板とする。そして、このような薄膜の表面を表面加工することにより上記構成1又は2に規定した表面形態を有する基板を容易に得られる。
(構成6)
本発明の構成6は、構成1〜5のいずれかに記載したマスクブランク用基板の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を有する、多層反射膜付き基板である。
上記構成6によれば、前記主表面上に形成される多層反射膜表面の表面形態も高平滑となるので、EUV光に対する反射率特性も良好となる。また、高感度欠陥検査装置を使用しての多層反射膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出も十分に抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成7)
本発明の構成7は、リソグラフィーに使用される多層反射膜付き基板であって、
前記多層反射膜付き基板は、マスクブランク用基板の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を有し、
前記多層反射膜表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、
前記多層反射膜の表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)の関係式を満たし、かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmとした、多層反射膜付き基板である。
上記構成7によれば、前記多層反射膜表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となるため、欠陥検査において疑似欠陥の検出要因である凹凸(表面粗さ)のバラツキを低減することができるので、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成8)
本発明の構成8は、前記多層反射膜付き基板は、前記多層反射膜上に保護膜を有する、構成6又は7に記載の多層反射膜付き基板である。
上記構成8によれば、前記多層反射膜付き基板は、前記多層反射膜上に保護膜を有する構成とすることにより、転写用マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性が更に良好となる。また、高感度欠陥検査装置を使用しての保護膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出も十分に抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成9)
本発明の構成9は、構成1〜3のいずれか1つに記載したマスクブランク用基板の前記主表面上に、転写パターンとなる遮光性膜を有する、透過型マスクブランクである。
上記構成9によれば、透過型マスクブランクにおいて、遮光性膜表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に揃った表面形態となるため、欠陥検査において疑似欠陥の検出要因である凹凸(表面粗さ)のバラツキを低減することができるので、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成10)
本発明の構成10は、構成7又は8に記載の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜もしくは前記保護膜上に、転写パターンとなる吸収体膜を有する、反射型マスクブランクである。
上記構成10によれば、反射型マスクブランクにおいて、吸収体膜表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に揃った表面形態となるため、欠陥検査において疑似欠陥の検出要因である凹凸(表面粗さ)のバラツキを低減することができるので、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成11)
本発明の構成11は、構成9に記載した透過型マスクブランクにおける前記遮光性膜をパターニングして、前記主表面上に遮光性膜パターンを有する、透過型マスクである。
(構成12)
本発明の構成12は、構成10に記載した反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングして、前記多層反射膜上に吸収体パターンを有する、反射型マスクである。
上記構成11、12によれば、透過型マスクや反射型マスクにおいて、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成13)
本発明の構成13は、構成11に記載の透過型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法である。
(構成14)
本発明の構成14は、構成12に記載の反射型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法である。
上記構成13、14によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、異物や傷などの致命欠陥を排除した透過型マスクや反射型マスクを使用できるので、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に転写する回路パターンに欠陥がなく、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
・図示された実施形態の説明
[マスクブランク用基板]
まず、本発明におけるマスクブランク用基板について以下に説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板10を示す斜視図である。図1(b)は、本実施形態のマスクブランク用基板10を示す断面模式図である。
マスクブランク用基板10(または、単に基板10と称す。)は、矩形状の板状体であり、2つの対向主表面2と、端面1とを有する。2つの対向主表面2は、この板状体の上面及び下面であり、互いに対向するように形成されている。また、2つの対向主表面2の少なくとも一方は、転写パターンが形成されるべき主表面である。
端面1は、この板状体の側面であり、対向主表面2の外縁に隣接する。端面1は、平面状の端面部分1d、及び曲面状の端面部分1fを有する。平面状の端面部分1dは、一方の対向主表面2の辺と、他方の対向主表面2の辺とを接続する面であり、側面部1a、及び面取斜面部1bを含む。側面部1aは、平面状の端面部分1dにおける、対向主表面2とほぼ垂直な部分(T面)である。面取斜面部1bは、側面部1aと対向主表面2との間における面取りされた部分(C面)であり、側面部1aと対向主表面2との間に形成される。
曲面状の端面部分1fは、基板10を平面視したときに、基板10の角部10a近傍に隣接する部分(R部)であり、側面部1c及び面取斜面部1eを含む。ここで、基板10を平面視するとは、例えば、対向主表面2と垂直な方向から、基板10を見ることである。また、基板10の角部10aとは、例えば、対向主表面2の外縁における、2辺の交点近傍である。2辺の交点とは、2辺のそれぞれの延長線の交点であってよい。本例において、曲面状の端面部分1fは、基板10の角部10aを丸めることにより、曲面状に形成されている。
本実施形態において、上記目的を達成するために、少なくとも転写パターンが形成される側の主表面、即ち、後述するように透過型マスクブランク50においては、遮光性膜51が形成される側の主表面、反射型マスクブランク30においては、多層反射膜21、保護膜22、吸収体膜24が形成される側の主表面が、ある一定の表面粗さと、一定の関係式を満たすベアリングカーブ特性を有していることを特徴とする。
以下、本実施形態のマスクブランク用基板10の主表面の表面形態を示すパラメーターである表面粗さ(Rmax、Rms)と、ベアリングカーブとの関係について説明する。
まず、代表的な表面粗さの指標であるRms(Root means square)は、二乗平均平方根粗さであり、平均線から測定曲線までの偏差の二乗を平均した値の平方根である。Rmsは下式(1)で表される。
式(1)において、lは基準長さであり、Zは平均線から測定曲線までの高さである。
同じく、代表的な表面粗さの指標であるRmaxは、表面粗さの最大高さであり、粗さ曲線の山の高さの最大値と谷の深さの最大値との絶対値の差である。
Rms及びRmaxは、従来からマスクブランク用基板の表面粗さの管理に用いられており、表面粗さを数値で把握できる点で優れている。しかし、これらRms及びRmaxは、いずれも高さの情報であり、微細な表面形状の変化に関する情報を含まない。
これに対して、ベアリングカーブは、基板10の主表面上の測定領域内における凹凸を任意の等高面(水平面)で切断し、この切断面積が測定領域の面積に占める割合をプロットしたものである。ベアリングカーブにより、基板10の表面粗さのばらつきを視覚化及び数値化することができる。
ベアリングカーブは、通常、縦軸をベアリングエリア(%)、横軸をベアリング深さ(nm)としてプロットされる。ベアリングエリア0(%)が、測定する基板表面の最高点を示し、ベアリングエリア100(%)が、測定する基板表面の最低点を示す。したがって、ベアリングエリア0(%)の深さと、ベアリングエリア100(%)の深さの差は、上述の最大高さ(Rmax)となる。尚、本発明では「ベアリング深さ」と呼んでいるが、これは「ベアリング高さ」と同義である。「ベアリング高さ」の場合は、上記と逆に、ベアリングエリア0(%)が、測定する基板表面の最低点を示し、ベアリングエリア100(%)が、測定する基板表面の最高点を示す。以下、本実施形態のマスクブランク基板10におけるベアリングカーブの管理について説明する。
本実施形態のマスクブランク用基板10は、上記目的を達成するために、転写パターンが形成される側の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、基板10の主表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)の関係式を満たし、かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmとした構成としてある。
すなわち、上述の(BA70−BA30)/(BD70−BD30)(単位:%/nm)は、ベアリングエリア30%〜70%におけるベアリングカーブの傾きを表すものであり、その傾きを350(%/nm)以上とすることで、より浅いベアリング深さ(nm)でベアリングエリアが100%に到達することになる。つまり、基板10の主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となるため、欠陥検査において疑似欠陥の検出要因である凹凸(表面粗さ)のバラツキを低減することができるので、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
基板10の主表面は、疑似欠陥の検出を抑制する観点からは、前記主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が非常に揃った表面形態であることが良く、好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧400(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧450(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧500(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧750(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧800(%/nm)、更に好ましくは(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧900(%/nm)とすることが望ましい。また、同様の観点から、基板10の主表面の表面粗さも高い平滑性を有することが良く、好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.1nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.0nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦0.75nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦0.5nm、とすることが望ましい。
また、基板10の主表面の表面粗さは、上述の最大高さ(Rmax)に加え、二乗平均平方根粗さ(Rms)で管理することにより、例えば、基板10の主表面上に形成される多層反射膜、保護膜、吸収体膜、遮光性膜の反射率等の光学特性向上の観点から好ましい。基板10の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)≦0.12nmが好ましく、更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)≦0.10nm、更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)≦0.08nm、更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)≦0.05nmとすることが望ましい。
また、基板10の主表面は、原子間力顕微鏡で測定して得られたベアリング深さと、得られたベアリング深さの頻度(%)との関係をプロットした度数分布図において、前記プロットした点より求めた近似曲線、或いは前記プロットした点における最高頻度より求められる半値幅の中心に対応するベアリング深さの絶対値が、前記基板の主表面の表面粗さにおける最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さの絶対値よりも小さい表面形態とすることが好ましい。この表面形態は、基板10の主表面を構成する凹凸において、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。従って、基板10の主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、前記主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜を形成する場合に特に効果が発揮される。
また、基板10の主表面は、触媒基準エッチングにより表面加工された表面とすることが好ましい。触媒基準エッチング(Catalyst Referred Etching:以下、CAREともいう)とは、基板10の主表面と触媒との間に、常態では溶解性を示さない処理流体を介在させた状態で、両者を接近又は接触させることにより、触媒に吸着している処理液中の分子から生成された活性種によって、主表面に存在する微小な凸部を選択的に除去して平滑化させる表面加工方法である。
基板10の主表面が、触媒基準エッチングにより、基準面である触媒表面に接触する凸部から選択的に表面加工されるため、主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となり、しかも、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。従って、前記主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜を形成する場合に特に効果が発揮される。また、上述のように主表面を触媒基準エッチングによる表面処理することにより、上記構成1又は2で規定している範囲の表面粗さ、ベアリングカーブ特性の表面を比較的容易に形成することができる。
尚、基板10の材料がガラス材料の場合、触媒としては、白金、金、遷移金属及びこれらのうち少なくとも一つを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料を使用することができる。また、処理液としては、純水、オゾン水や水素水等の機能水、低濃度のアルカリ性水溶液、低濃度の酸性水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の所液を使用することができる。
上記のように、基板10の主表面の表面粗さ、ベアリングカーブ特性を上記範囲にすることにより、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置や、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、レーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M7360」(検査光源波長:266nm)や、KLA−Tencor社製のレチクル、オプティカル・マスク/ブランク及びEUV・マスク/ブランク欠陥検査装置「Teron 600シリーズ」(検査光源波長:193nm)による欠陥検査、EUV光を検査光源に用いた欠陥検査装置(検査光源波長:13.5nm)において、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
尚、上記検査光源波長は、266nm、193nm及び13.5nmに限定されない。検査光源波長として、532nm、488nm、364nm、257nmを使用しても構わない。
上記の検査光源波長を有する高感度欠陥検査装置を用いて欠陥検査するマスクブランク用基板としては、透過型マスクブランク用基板、反射型マスクブランク用基板が挙げられる。
また、本実施形態のマスクブランク用基板10は、転写パターンが形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されていることが好ましい。EUVの反射型マスクブランク用基板の場合、基板10の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域、または142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.05μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットする時の静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。ArFエキシマレーザー露光用の透過型マスクブランクに使用するマスクブランク用基板10の場合、基板の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域、または142mm×142mmの領域においては、平坦度が0.3μm以下であることが好ましく、特に好ましくは、0.2μm以下である。
ArFエキシマレーザー露光用の透過型マスクブランク用基板の材料としては、露光波長に対して透光性を有するものであれば何でもよい。一般的には、合成石英ガラスが使用される。その他の材料としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスであっても構わない。
また、EUV露光用の反射型マスクブランク用基板の材料としては、低熱膨張の特性を有するものであれば何でもよい。例えば、低熱膨張の特性を有するSiO2−TiO2系ガラス(2元系(SiO2−TiO2)及び3元系(SiO2−TiO2−SnO2等))、例えばSiO2−Al2O3−Li2O系の結晶化ガラスなどの所謂、多成分系ガラスを使用することができる。また、上記ガラス以外にシリコンや金属などの基板を用いることもできる。前記金属基板の例としては、インバー合金(Fe−Ni系合金)などが挙げられる。
上述のように、EUV露光用のマスクブランク用基板の場合、基板に低熱膨張の特性が要求されるため、多成分系ガラス材料を使用するが、合成石英ガラスと比較して高い平滑性を得にくいという問題がある。この問題を解決すべく、多成分系ガラス材料からなる基板上に、金属、合金からなる又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜を形成する。そして、このような薄膜表面を鏡面研磨、表面処理することにより、上記範囲の表面粗さ、ベアリングカーブ特性の表面を比較的容易に形成することができる。
上記薄膜の材料としては、例えば、Ta(タンタル)、Taを含有する合金、又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有したTa化合物が好ましい。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON、TaSiCONなどを適用することができる。これらTa化合物のうち、窒素(N)を含有するTaN、TaON、TaCON、TaBN、TaBON、TaBCON、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSiN、TaSiON、TaSiCONがより好ましい。尚、上記薄膜は、薄膜表面の高平滑性の観点から、好ましくはアモルファス構造とすることが望ましい。薄膜の結晶構造は、X線回折装置(XRD)により測定することができる。
尚、本発明では、上記に規定した表面粗さ、ベアリングカーブ特性を得るための加工方法は、特に限定されるものではない。本発明は、マスクブランク用基板の表面粗さにおけるベアリングカーブ及びベアリング深さの頻度を管理する点に特徴があり、このような表面粗さは、例えば、後述する実施例1〜3に例示したような加工方法によって実現することができる。
[多層反射膜付き基板]
次に、本発明の一実施形態に係る多層反射膜付き基板20について以下に説明する。
図2は、本実施形態の多層反射膜付き基板20を示す模式図である。
本実施形態の多層反射膜付き基板20は、上記説明したマスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面上に多層反射膜21を有する構成としている。この多層反射膜21は、EUVリソグラフィー用反射型マスクにおいてEUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜の構成を取っている。
多層反射膜21はEUV光を反射する限りその材質は特に限定されないが、その単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。このような多層反射膜21は、一般的には、高屈折率の材料からなる薄膜(高屈折率層)と、低屈折率の材料からなる薄膜(低屈折率層)とが、交互に40〜60周期程度積層された多層反射膜とすることができる。
例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜21としては、Mo膜とSi膜とを交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜とすることが好ましい。その他、EUV光の領域で使用される多層反射膜として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などとすることが可能である。
多層反射膜21の形成方法は当該技術分野において公知であるが、例えば、マグネトロンスパッタリング法や、イオンビームスパッタリング法などにより、各層を成膜することにより形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えば、イオンビームスパッタリング法により、まずSiターゲットを用いて厚さ数nm程度のSi膜を基板10上に成膜し、その後、Moターゲットを用いて厚さ数nm程度のMo膜を成膜し、これを一周期として、40〜60周期積層して、多層反射膜21を形成する。
上記で形成された多層反射膜21の上に、EUVリソグラフィー用反射型マスクの製造工程におけるドライエッチングやウェット洗浄からの多層反射膜21の保護のため、保護膜22(図3を参照)を形成することもできる。このように、マスクブランク用基板10上に、多層反射膜21と、保護膜22とを有する形態も本発明における多層反射膜付き基板とすることができる。
尚、上記保護膜22の材料としては、例えば、Ru、Ru−(Nb,Zr,Y,B,Ti,La,Mo),Si−(Ru,Rh,Cr,B),Si,Zr,Nb,La,B等の材料を使用することができるが、これらのうち、ルテニウム(Ru)を含む材料を適用すると、多層反射膜の反射率特性がより良好となる。具体的には、Ru、Ru−(Nb,Zr,Y,B,Ti,La,Mo)であることが好ましい。このような保護膜は、特に、吸収体膜をTa系材料とし、Cl系ガスのドライエッチングで当該吸収体膜をパターニングする場合に有効である。
尚、上記の多層反射膜付基板20において、前記多層反射膜21又は前記保護膜22の表面は、1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、前記表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)の関係式を満足し、かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmとすることが好ましい。このような構成とすることにより、上述に挙げた検査光源波長を使用した高感度欠陥検査装置で多層反射膜付き基板20の欠陥検査を行う場合、擬似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。また、多層反射膜21又は保護膜22の表面の平滑性が向上し、表面粗さ(Rmax)が小さくなるので、高反射率が得られるという効果もある。
多層反射膜21又は保護膜22の表面は、好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧250(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧300(%/nm)、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧400(%/nm)、更に好ましくは、BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧450(%/nm)、更に好ましくは、BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧500(%/nm)とすることが望ましい。また、同様の観点から、前記多層反射膜、保護膜の表面粗さは、好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.3nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.2nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.1nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.0nmとすることが望ましい。
上記範囲の基板10の主表面の表面形態を保って、多層反射膜21又は保護膜22の表面が、上記範囲の表面粗さ及びベアリングカーブ特性を得るには、多層反射膜21を、基板10の主表面の法線に対して斜めに高屈折率層と低屈折率層とが堆積するように、スパッタリング法により成膜することにより得られる。より具体的には、基板10の主表面の表面形態を保って、多層反射膜21又は保護膜22の表面が、上記範囲の表面粗さ及びベアリングカーブ特性を得て、且つ、多層反射膜12、保護膜13の反射率特性を良好にするためには、基板10の主表面の法線に対して、多層反射膜21を構成する低屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度が、高屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度より大きくなるように、イオンビームスパッタリング法に形成する。さらに詳細には、Mo等の低屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度は、40度以上90度未満とし、Si等の高屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度は、0度以上60度以下にして成膜すると良い。また、多層反射膜21又は保護膜22の表面が、基板10の主表面の表面形態を改善させて、上記範囲の表面粗さ及びベアリングカーブ特性を得るためには、基板10の主表面の法線に対して、多層反射膜21を構成する低屈折率層と高屈折率層のスパッタ粒子の入射角度が、0度以上30度以下にして成膜すると良い。さらには、多層反射膜21上に形成する保護膜22も多層反射膜21の成膜後、連続して、基板10の主表面の法線に対して斜めに保護膜22が堆積するようにイオンビームスパッタリング法により形成することが好ましい。
また、多層反射膜付き基板20において、基板10の多層反射膜21と接する面と反対側の面には、静電チャックの目的のために裏面導電膜23(図3を参照)を形成することもできる。このように、マスクブランク用基板10上の転写パターンが形成される側に多層反射膜21と、保護膜22とを有し、多層反射膜21と接する面と反対側の面に裏面導電膜23を有する形態も本発明における多層反射膜付き基板20とすることができる。尚、裏面導電膜23に求められる電気的特性(シート抵抗)は、通常100Ω/□以下である。裏面導電膜23の形成方法は公知であり、例えば、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法により、Cr、Ta等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。
また、本実施形態の多層反射膜付き基板20としては、基板10と多層反射膜21との間に下地層を形成しても良い。下地層は、基板10の主表面の平滑性向上の目的、欠陥低減の目的、多層反射膜21の反射率増強効果の目的、並びに多層反射膜21の応力低減の目的で形成することができる。
[反射型マスクブランク]
次に、本発明の一実施形態に係る反射型マスクブランク30について以下に説明する。
図3は、本実施形態の反射型マスクブランク30を示す模式図である。
本実施形態の反射型マスクブランク30は、上記説明した多層反射膜付き基板20の保護膜22上に、転写パターンとなる吸収体膜24を形成した構成としてある。
上記吸収体膜24の材料は、特に限定されるものではない。例えば、EUV光を吸収する機能を有するもので、Ta(タンタル)単体、又はTaを主成分とする材料を用いることが好ましい。Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。Taを主成分とする材料としては、例えば、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくともいずれかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料などを用いることができる。また例えば、TaにB、Si、Ge等を加えることにより、アモルファス構造が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。さらに、TaにN、Oを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができる。
尚、上記吸収体膜24の表面は、1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、前記表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)の関係式を満足し、かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmとすることが好ましい。
更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧400(%/nm)、更に好ましくは、BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧450(%/nm)、更に好ましくは、BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧500(%/nm)とすることが望ましい。また、吸収体膜24の表面粗さは、好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.1nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.0nmとすることが望ましい。
上記範囲の基板10や、多層反射膜付き基板20の表面形態を保って、吸収体膜24の表面が、上記範囲の表面粗さ、及びベアリングカーブ特性を得るには、吸収体膜24をアモルファス構造にすることが好ましい。結晶構造については、X線回折装置(XRD)により確認することができる。
尚、本発明の反射型マスクブランクは、図3に示す構成に限定されるものではない。例えば、上記吸収体膜24の上に、吸収体膜24をパターニングするためのマスクとなるレジスト膜を形成することもでき、レジスト膜付き反射型マスクブランクも、本発明の反射型マスクブランクとすることができる。尚、吸収体膜24の上に形成するレジスト膜は、ポジ型でもネガ型でも構わない。また、電子線描画用でもレーザー描画用でも構わない。さらに、吸収体膜24と前記レジスト膜との間に、いわゆるハードマスク(エッチングマスク)膜を形成することもでき、この態様も本発明における反射型マスクブランクとすることができる。
[反射型マスク]
次に、本発明の一実施形態に係る反射型マスク40について以下に説明する。
図4は、本実施形態の反射型マスク40を示す模式図である。
本実施形態の反射型マスク40は、上記の反射型マスクブランク30における吸収体膜24をパターニングして、上記保護膜22上に吸収体パターン27を形成した構成である。本実施形態の反射型マスク40は、EUV光等の露光光で露光すると、マスク表面で吸収体膜24のある部分では露光光が吸収され、それ以外の吸収体膜24を除去した部分では露出した保護膜22及び多層反射膜21で露光光が反射されることにより、リソグラフィー用の反射型マスク40として使用することができる。
[透過型マスクブランク]
次に、本発明の一実施形態に係る透過型マスクブランク50について以下に説明する。
図5は、本実施形態の透過型マスクブランク50を示す模式図である。
本実施形態の透過型マスクブランク50は、上記説明したマスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面上に、転写パターンとなる遮光性膜51を形成した構成としてある。
透過型マスクブランク50としては、バイナリー型マスクブランク、位相シフト型マスクブランクが挙げられる。上記遮光性膜51には、露光光を遮断する機能を有する遮光膜の他、露光光を減衰させ、かつ位相シフトさせる所謂ハーフトーン膜などが含まれる。
バイナリー型マスクブランクは、マスクブランク用基板10上に、露光光を遮断する遮光膜を成膜したものである。この遮光膜をパターニングして所望の転写パターンを形成する。遮光膜としては、例えば、Cr膜、Crに酸素、窒素、炭素、弗素を選択的に含むCr合金膜、これらの積層膜、MoSi膜、MoSiに酸素、窒素、炭素を選択的に含むMoSi合金膜、これらの積層膜などが挙げられる。尚、遮光膜の表面には、反射防止機能を有する反射防止層が含まれても良い。
また、位相シフト型マスクブランクは、マスクブランク用基板10上に、露光光の位相差を変化させる位相シフト膜を成膜したものである。この位相シフト膜をパターニングして所望の転写パターンを形成する。位相シフト膜としては、位相シフト機能のみを有するSiO2膜のほかに、位相シフト機能及び遮光機能を有する金属シリサイド酸化物膜、金属シリサイド窒化物膜、金属シリサイド酸化窒化物膜、金属シリサイド酸化炭化物膜、金属シリサイド酸化窒化炭化物膜(金属:Mo、Ti、W、Taなどの遷移金属)、CrO膜、CrF膜、SiON膜などのハーフトーン膜が挙げられる。この位相シフト型マスクブランクにおいて、位相シフト膜上に、上記の遮光膜を形成した態様も含まれる。
尚、本発明の透過型マスクブランクは、図5に示す構成に限定されるものではない。例えば、上記遮光性膜51の上に、遮光性膜51をパターニングするためのマスクとなるレジスト膜を形成することもでき、レジスト膜付き透過型マスクブランクも、本発明の透過型マスクブランクとすることができる。尚、上述と同様に、遮光性膜51の上に形成するレジスト膜は、ポジ型でもネガ型でも構わない。また、電子線描画用でもレーザー描画用でも構わない。さらに、遮光性膜51と前記レジスト膜との間に、いわゆるハードマスク(エッチングマスク)膜を形成することもでき、この態様も本発明における透過型マスクブランクとすることができる。
尚、上記遮光性膜51の表面は、1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、前記表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)の関係式を満足し、かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmとすることが好ましい。
更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧400(%/nm)、更に好ましくは、BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧450(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧500(%/nm)とすることが望ましい。また、遮光性膜51の表面粗さは、好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.1nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.0nmとすることが望ましい。
尚、上記範囲の基板10の表面形態を保って、遮光性膜51の表面が、上記範囲の表面粗さ、及びベアリングカーブ特性を得るには、遮光性膜51をアモルファス構造にすることが好ましい。結晶構造については、X線回折装置(XRD)により確認することができる。
[透過型マスク]
次に、本発明の一実施形態に係る透過型マスク60について以下に説明する。
図6は、本実施形態の透過型マスク60を示す模式図である。
本実施形態の透過型マスク60は、上記の透過型マスクブランク50における遮光性膜51をパターニングして、上記マスクブランク用基板10上に遮光性膜パターン61を形成した構成である。本発明の透過型マスク60は、バイナリー型マスクにおいては、ArFエキシマレーザー光等の露光光で露光すると、マスク表面で遮光性膜51のある部分では露光光が遮断され、それ以外の遮光性膜51を除去した部分では露出したマスクブランク用基板10を露光光が透過することにより、リソグラフィー用の透過型マスク60として使用することできる。また、位相シフト型マスクの一つであるハーフトーン型位相シフトマスクにおいては、ArFエキシマレーザー光等の露光光で露光すると、マスク表面で遮光性膜51が除去した部分では、露出したマスクブランク用基板10を露光光が透過し、遮光性膜51のある部分では、露光光が減衰した状態でかつ、所定の位相シフト量を有して透過されることにより、リソグラフィー用の透過型マスク60として使用することができる。また、位相シフト型マスクとしては、上述のハーフトーン型位相シフトマスクに限らず、レベンソン型位相シフトマスク等の各種位相シフト効果を利用した位相シフトマスクでも良い。
[半導体装置の製造方法]
以上説明した反射型マスク40や透過型マスク60と、露光装置を使用したリソグラフィープロセスにより、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に、前記反射型マスク40の吸収体パターン27や、前記透過型マスク60の遮光性膜パターン61に基づく回路パターン等の転写パターンを転写し、その他種々の工程を経ることで、半導体基板上に種々のパターン等が形成された半導体装置を製造することができる。
尚、上述のマスクブランク用基板10、多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30、透過型マスクブランク50に、基準マークを形成し、この基準マークと、上述の高感度欠陥検査装置で検出された致命欠陥の位置を座標管理することができる。得られた致命欠陥の位置情報(欠陥データ)に基づいて、反射型マスク40や透過型マスク60を作製するときに、上述の欠陥データと被転写パターン(回路パターン)データとを元に、致命欠陥が存在している箇所に吸収体パターン27や、遮光性膜パターン61が形成されるように描画データを補正して、欠陥を低減させることができる。
・実施例
以下、本発明のEUV露光用のマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクの実施形態を含む実施例1〜3及び実施例5〜7、これらに対する比較例1及び2、本発明のArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板、透過型マスクブランク、透過型マスクの実施形態を含む実施例4について、図7〜10を参照しつつ説明する。
[実施例1]
まず、本発明に係るEUV露光用のマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、EUV露光用反射型マスクブランク、反射型マスクに関する実施例1について説明する。
<マスクブランク用基板の作製>
マスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備し、両面研磨装置を用いて、当該ガラス基板の表裏面を、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨した後、低濃度のケイフッ酸で表面処理した。これにより得られたガラス基板表面の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.15nmであった。
当該ガラス基板の表裏面における148mm×148mmの領域の表面形状(表面形態、平坦度)、TTV(板厚ばらつき)を、波長変調レーザーを用いた波長シフト干渉計で測定した。その結果、ガラス基板の表裏面の平坦度は290nm(凸形状)であった。ガラス基板表面の表面形状(平坦度)の測定結果は、測定点ごとにある基準面に対する高さの情報としてコンピュータに保存するとともに、ガラス基板に必要な表面平坦度の基準値50nm(凸形状)、裏面平坦度の基準値50nmと比較し、その差分(必要除去量)をコンピュータで計算した。
次いで、ガラス基板面内を加工スポット形状領域ごとに、必要除去量に応じた局所表面加工の加工条件を設定した。事前にダミー基板を用いて、実際の加工と同じようにダミー基板を、一定時間基板を移動させずにスポットで加工し、その形状を上記表裏面の表面形状を測定する装置と同じ測定機にて測定し、単位時間当たりにおけるスポットの加工体積を算出する。そして、スポットの情報とガラス基板の表面形状の情報より得られた必要除去量に従い、ガラス基板をラスタ走査する際の走査スピードを決定した。
設定した加工条件に従い、磁気流体による基板仕上げ装置を用いて、磁気粘弾性流体研磨(Magneto Rheological Finishing : MRF)加工法により、ガラス基板の表裏面平坦度が上記の基準値以下となるように局所的表面加工処理をして表面形状を調整した。尚、このとき使用した磁性粘弾性流体は、鉄成分を含んでおり、研磨スラリーは、アルカリ水溶液+研磨剤(約2wt%)、研磨剤:酸化セリウムとした。その後、ガラス基板を濃度約10%の塩酸水溶液(温度約25℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬した後、純水によるリンス、イソプロピルアルコール(IPA)乾燥を行った。
得られたガラス基板表面の表面形状(表面形態、平坦度)を測定したところ、表裏面の平坦度は約40〜50nmであった。また、ガラス基板表面の表面粗さを、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域において、原子間力顕微鏡を用いて測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.37nmとなっており、MRFによる局所表面加工前の表面粗さより荒れた状態になっていた。
そのため、ガラス基板の表裏面について、ガラス基板表面の表面形状が維持又は改善する研磨条件で両面研磨装置を用いて両面研磨を行った。この仕上げ研磨は、以下の研磨条件で行った。
加工液:アルカリ水溶液(NaOH)+研磨剤(濃度:約2wt%)
研磨剤:コロイダルシリカ、平均粒径:約70nm
研磨定盤回転数:約1〜50rpm
加工圧力:約0.1〜10kPa
研磨時間:約1〜10分
その後、ガラス基板をアルカリ水溶液(NaOH)で洗浄し、EUV露光用のマスクブランク用基板10を得た。
得られたマスクブランク用基板10の表裏面の平坦度、表面粗さを測定したところ、表裏面平坦度は約40nmと両面研磨装置による加工前の状態を維持又は改善しており良好であった。また、得られたマスクブランク用基板10について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.13nm、最大高さ(Rmax)は1.2nmであった。
尚、本発明におけるマスクブランク用基板10の局所加工方法は、上述した磁気粘弾性流体研磨加工法に限定されるものではない。ガスクラスターイオンビーム(Gas Cluster Ion Beams : GCIB)や局所プラズマを使用した加工方法であってもよい。
次に、上述したマスクブランク用基板10の主表面上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaBN膜を成膜した。TaBターゲットをマスクブランク用基板の主表面に対向させ、Ar+N2ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法によりTaBN膜の元素組成を測定したところ、Ta:80原子%、B:10原子%、N:10原子%であった。また、TaBN膜の膜厚は150nmであった。尚、上記TaBN膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
次に、片面研磨装置を用いて、TaBN膜の表面を超精密研磨した。この超精密研磨は、以下の研磨条件で行った。
加工液:アルカリ水溶液(NaOH)+研磨剤(コロイダルシリカの平均砥粒50nm、濃度:5wt%)
加工圧力:50g/cm2
研磨時間:約1〜10分。
その後、TaBN膜の表面をフッ酸水溶液(HF:濃度0.2wt%)で、428秒間洗浄し、EUV露光用のマスクブランク用基板を得た。
本実施例1により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10のTaBN膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.085nm、最大粗さ(Rmax)は1.1nmであった。また、本実施例1のTaBN膜表面のベアリングカーブ測定結果を、図7及び図8(a)のグラフ中の濃い実線「実施例1」で示す。各グラフの縦軸はベアリングエリア(%)、横軸はベアリング深さ(nm)である。
これら図面において、本実施例1のTaBN膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.322nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.410nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.410−0.322)=455(%/nm)であった。したがって、本実施例1のTaBN膜表面の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmを充足している。
ここで、本実施例1のTaBN膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られたベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図を、図8(b)のグラフに示す。グラフの縦軸は頻度(%)、横軸はベアリング深さ(nm)である。
同図(b)の度数分布図において、本実施例1のTaBN膜表面における測定領域内の凹凸のうち、最も高い頻度(最高頻度)fmaxの値は、頻度(Hist.)が1.118%でそれに対応するベアリング深さ(Depth)は0.361nmであった。これに基づいて、1/2fmax(0.5fmax)に対応する2つのベアリング深さ(BD1、BD2)を特定し、半値幅FWHM(full width at half maximum)の中心に対応するベアリング深さ(BDM)を求めた。この半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さ(BDM)を図中の一点鎖線で示す。また、本実施例1の最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さ(1/2Rmax=0.5Rmax)を図中の点線で示す。これら一点鎖線と点線とを比較すると、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さ(BDM)が、1/2Rmaxに対応するベアリング深さよりも図中左側に位置している。より具体的には、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.34nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.56nmであった。したがって、本実施例1のTaBN膜表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも小さいという条件を充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例1のTaBN膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計18,789個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計18,789個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。尚、球相当直径SEVDは、欠陥の面積を(S)、欠陥の高さを(h)としたときに、SEVD=2(3S/4πh)1/3の式により算出することができる。(以下の実施例、比較例も同様。)欠陥の面積(S)、欠陥の高さ(h)は原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、最高の検査感度条件で、本実施例1のTaBN膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10のTaBN膜の表面に、イオンビームスパッタリング法により、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜21と、保護膜22を形成して多層反射膜付き基板20を作製した。
多層反射膜21は、膜厚4.2nmのSi膜と、膜厚2.8nmのMo膜とを1ペアとし、40ペア成膜した(膜厚の合計280nm)。さらに、当該多層反射膜21の表面に、膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21は、基板主表面の法線に対して、Si膜のスパッタ粒子の入射角度が5度、Mo膜のスパッタ粒子の入射角度が65度となるようにイオンビームスパッタリング法により成膜した。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.141nm、最大粗さ(Rmax)は1.49nmであった。
本実施例1の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.575nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.745nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.745−0.575)=235(%/nm)であった。したがって、本実施例1の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度にて、本実施例1の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計19,132個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。また、EUV光に対する反射率を測定したところ、65%と良好な結果が得られた。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例1の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
尚、本実施例1の多層反射膜付き基板20の保護膜22及び多層反射膜21に対して、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の外側4箇所に、上記欠陥の位置を座標管理するための基準マークを集束イオンビームにより形成した。
<EUV露光用反射型マスクブランクの作製>
上述した多層反射膜付き基板20の多層反射膜21を形成していない裏面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、裏面導電膜23を形成した。当該裏面導電膜23は、Crターゲットを多層反射膜付き基板20の裏面に対向させ、Ar+N2ガス(Ar:N2=90%:10%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法により裏面導電膜23の元素組成を測定したところ、Cr:90原子%、N:10原子%であった。また、裏面導電膜23の膜厚は20nmであった。
さらに、上述した多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaBN膜からなる吸収体膜24を成膜し、反射型マスクブランク30を作製した。当該吸収体膜24は、TaBターゲット(Ta:B=80:20)に多層反射膜付き基板20の吸収体膜24を対向させ、Xe+N2ガス(Xe:N2=90%:10%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法により吸収体膜24の元素組成を測定したところ、Ta:80原子%、B:10原子%、N:10原子%であった。また、吸収体膜24の膜厚は65nmであった。尚、吸収体膜24の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
上述した吸収体膜24の表面に、スピンコート法によりレジストを塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚150nmのレジスト膜25を成膜した。次いで、所望のパターンの描画及び現像工程を経て、レジストパターン形成した。当該レジストパターンをマスクにして、Cl2+Heガスのドライエッチングにより、吸収体膜24であるTaBN膜のパターニングを行い、保護膜22上に吸収体パターン27を形成した。その後、レジスト膜25を除去し、上記と同様の薬液洗浄を行い、反射型マスク40を作製した。尚、上述の描画工程においては、上記基準マークを元に作成された欠陥データに基づいて、欠陥データと被転写パターン(回路パターン)データとを元に、致命欠陥が存在している箇所に吸収体パターン27が配置されるように描画データを補正して、反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
[実施例2]
<マスクブランク用基板の作製>
実施例1と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備し、実施例1と同様に、ガラス基板の表裏面について、両面研磨装置による研磨から磁気粘弾性流体研磨加工法による局所表面加工処理までの工程を行った。
その後、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、ガラス基板の表裏面に非接触研磨を実施した。本実施例2では、非接触研磨としてEEM(Elastic Emission Machining)を行った。このEEMは、以下の加工条件で行った。
加工液(1段階目):アルカリ水溶液(NaOH)+微細粒子(濃度:5wt%)
加工液(2段階目):純水
微細粉末粒子:コロイダルシリカ、平均粒径:約100nm
回転体:ポリウレタンロール
回転体回転数:10〜300rpm
ワークホルダ回転数:10〜100rpm
研磨時間:5〜30分
本実施例2により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.10nm、最大高さ(Rmax)は0.92nmであった。また、得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を、図7のグラフ中の短い濃い点線「実施例2」で示す。
同図において、本実施例2のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.388nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.499nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.499−0.388)=364(%/nm)であった。したがって、本実施例2のマスクブランク用基板10の主表面は、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmを充足している。
また、図示しないが、実施例1と同様にベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図において、本実施例2のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さと、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さを求めたところ、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.44nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.46nmであった。したがって、本実施例2のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも小さいという条件を充足していた。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例2のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計29,129個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計29,129個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、最高の検査感度条件で、本実施例2のEUV露光用のマスクブランク用基板の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.143nm、最大粗さ(Rmax)は1.50nmであった。
本実施例2の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.612nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.785nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.785−0.612)=231(%/nm)であった。したがって、本実施例2の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例2の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計30,011個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例2の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
[実施例3]
<マスクブランク用基板の作製>
本実施例3では、実施例1及び2と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備し、実施例2とほぼ同様の工程を経て、EUV露光用のマスクブランク用基板10を作製した。但し、本実施例3では、実施例2の局所表面加工処理の仕上げ研磨において、加工液に純水を用いた2段階目のEEM加工を省略した。これ以外は実施例2と同様にしてマスクブランク用基板10を作製した。
本実施例3により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.11nm、最大高さ(Rmax)は0.98nmであった。また、得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を、図7のグラフ中の長い濃い点線「実施例3」で示す。
同図において、本実施例3のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.480nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.589nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.589−0.480)=367(%/nm)であった。したがって、本実施例3のマスクブランク用基板10の主表面は、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmを充足している。
また、図示しないが、実施例1と同様にベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図において、本実施例3のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さと、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さを求めたところ、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.53nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.49nmであった。したがって、本実施例3のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも小さいという条件は充足していなかった。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例3のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計36,469個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計36,469個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、最高の検査感度条件で、本実施例3のEUV露光用のマスクブランク用基板の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.146nm、最大粗さ(Rmax)は1.50nmであった。
本実施例3の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.648nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.821nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.821−0.648)=231(%/nm)であった。したがって、本実施例3の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例3の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計38,856個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例3の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
上述の実施例1、2、3のマスクブランク用基板主表面の欠陥検出個数に対する多層反射膜付き基板の保護膜表面の欠陥検出個数の増加を調べたところ、実施例1は343個増加、実施例2は882個増加、実施例3は2387個増加している結果となった。これは、実施例1、2のマスクブランク用基板主表面を構成する凹凸において、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となっているので、基板主表面上に多層反射膜や保護膜を積層した場合に、基板主表面に存在する欠陥サイズが小さくなる傾向となるので、欠陥数の増加は抑えられたものと考える。一方、実施例3のマスクブランク用基板主表面は、その主表面を構成する凹凸において、基準面に対して凹部よりも凸部を構成する割合が多い表面形態となっているので、基板主表面上に多層反射膜や保護膜を積層した場合に、基板主表面に存在する欠陥サイズが大きくなる傾向となるので、欠陥数の増加が多くなったと考える。
上述の結果から、EUV露光用の反射型マスクブランクに使用する基板としては、実施例1、2が最適な基板と言える。
尚、実施例2、3における局所表面加工処理の仕上げ研磨としての非接触研磨は、上述したEEMに限定されるものではない。例えば、フロートポリッシュ又は触媒基準エッチング法(Catalyst Referred Etching)を適用することができる。マスクブランク用基板主表面を構成する凹凸において、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態を得るには、ガラス基板の主表面の最終仕上げ研磨は、水ないし純水を使用した非接触研磨が好ましい。
[比較例1]
<マスクブランク用基板の作製>
比較例1では、実施例2と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備した。
そして、比較例1では、実施例2と異なり、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、pH:0.5〜4の酸性に調整したコロイダルシリカ(平均粒径50nm、濃度5wt%)を含む研磨スラリーを使用した片面研磨装置による超精密研磨を行った後、濃度0.1wt%の水酸化ナトリウム(NaOH)を用いた洗浄を、洗浄時間200秒間行った。
比較例1により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.11nm、最大高さ(Rmax)は1.18nmであった。また、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を、図7及び図9(a)のグラフ中の薄い実線「比較例1」で示す。
これら図面において、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.520nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.652nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.652−0.520)=303(%/nm)であった。したがって、比較例1のTaBN膜表面の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)を充足していない。
ここで、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られたベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図を、図9(b)のグラフに示す。グラフの縦軸は頻度(%)、横軸はベアリング深さ(nm)である。
同図(b)の度数分布図において、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面における測定領域内の凹凸のうち、最も高い頻度(最高頻度)fmaxの値は、頻度(Hist.)0.809%でそれに対応するベアリング深さ(Depth)は0.58nmであった。これに基づいて、1/2fmax(0.5fmax)に対応する2つのベアリング深さ(BD3、BD4)を特定し、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さ(BDm)を求めた。この半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さ(BDm)を図中の一点鎖線で示す。また、比較例1の最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応する
ベアリング深さ(1/2Rmax=0.5Rmax)を図中の点線で示す。これら一点鎖線と点線とを比較すると、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さ(BDm)が、1/2Rmaxに対応するベアリング深さよりも図中右側に位置している。より具体的には、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.56nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.59nmであった。したがって、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも大きい。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.165nm、最大高さ(Rmax)は1.61nmであった。
比較例1の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.703nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.878nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.878−0.703)=229(%/nm)であった。したがって、比較例1の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足していない。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例1の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
また、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例1の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果も同様であり、欠陥検出個数の合計は、100,000個を超え、致命欠陥の有無を検査することができなかった。上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は数十個確認されたが、欠陥修正装置により欠陥修正を行い、反射型マスクを得た。
[比較例2]
比較例2では、実施例2と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備した。
そして、比較例2では、実施例2と異なり、局所表面加工の仕上げ研磨として、pH:10のアルカリ性に調整したコロイダルシリカ(平均粒径50nmm、濃度5wt%)を含む研磨スラリーを使用した片面研磨装置による超精密研磨を行った後、濃度0.2wt%のフッ酸(HF)を用いた洗浄、洗浄時間428秒間行った。
比較例2により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.15nm、最大高さ(Rmax)は1.18nmであった。また、比較例2のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を、図7のグラフ中の薄い短い点線「比較例2」で示す。
同図において、比較例2のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.755nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.900nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.901−0.756)=276(%/nm)であった。したがって、比較例1のTaBN膜表面の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)を充足していない。
また、図示しないが、比較例1と同様にベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図において、本比較例2のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さと、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さを求めたところ、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.74nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.59nmであった。したがって、本比較例2のマスクブランク用基板10の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも大きい。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例2のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.173nm、最大高さ(Rmax)は1.56nmであった。
比較例2の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.725nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.903nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.903−0.725)=225(%/nm)であった。したがって、比較例1の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足していない。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例2の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
また、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例2の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果も同様であり、欠陥検出個数の合計は、100,000個を超え、致命欠陥の有無を検査することができなかった。上述の比較例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は数十個確認されたが、欠陥修正装置により欠陥修正を行い、反射型マスクを得た。
[実施例4]
次に、本発明に係るArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板、透過型マスクブランク、透過型マスクに関する実施例4について説明する。
<マスクブランク用基板>
実施例4では、実施例1〜3と同寸法の合成石英ガラス基板を使用した。これ以外は、上述した実施例2の<マスクブランク用基板の作製>と同様の工程を経て、ArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10を作製した。
本実施例4により得られたArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.11nm、最大高さ(Rmax)は0.98nmであった。また、得られたArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を、図7のグラフ中の細い点線「実施例4」で示す。
同図において、本実施例4のArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.389nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.500nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.500−0.389)=360(%/nm)であった。したがって、本実施例4のマスクブランク用基板10の主表面は、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmを充足している。
また、図示しないが、実施例1と同様にベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図において、本実施例のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さと、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さを求めたところ、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.44nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.49nmであった。したがって、本実施例4のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも小さいという条件を充足していた。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例4のArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計31,056個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計31,056個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
<透過型マスクブランクの作製>
上述したArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10を、DCマグネトロンスパッタ装置に導入し、その主表面にTaO層を成膜した。DCマグネトロンスパッタ装置内に、Xe+N2の混合ガスを導入し、Taターゲットを用いたスパッタリング法を行った。これにより、当該マスクブランク用基板10の主表面に、膜厚44.9nmのTaN層を成膜した。
次いで、DCマグネトロンスパッタ装置内のガスを、Ar+O2の混合ガスに入れ替えて、再びTaターゲットを用いたスパッタリング法を行った。これにより、TaN層の表面に、膜厚13nmのTaO層を成膜し、マスクブランク用基板10上に2層からなる遮光性膜51を形成した透過型マスクブランク(バイナリー型マスクブランク)を得た。
尚、遮光性膜51の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、本実施例4のマスクブランク用基板10上の遮光性膜51における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計32,021個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計32,021個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
<透過型マスクの作製>
上述した遮光性膜51の表面に、スピンコート法によりレジストを塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚150nmのレジスト膜25を成膜した。次いで、所望のパターンの描画及び現像工程を経て、レジストパターン形成した。当該レジストパターンをマスクにして、フッ素系(CHF3)ガスを用いたドライエッチングを行い、TaO層をパターニングした後、続いて、塩素系(Cl2)ガスのドライエッチングにより、TaN層のパターニングを行い、マスクブランク用基板10上に遮光性膜パターン61を形成した。その後、レジスト膜25を除去し、上記と同様の薬液洗浄を行い、透過型マスク60を作製した。得られた透過型マスク60について、高感度欠陥検査装置((KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
[実施例5]
実施例1と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備し、実施例1と同様に、ガラス基板の表裏面について、両面研磨装置による研磨から磁気粘弾性流体研磨加工法による局所表面加工処理までの工程を行った。
その後、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、表面粗さ改善を目的として、コロイダルシリカ砥粒を用いた両面タッチ研磨を行った後、触媒基準エッチング法(CARE:Catalyst Referred Etching)による表面加工を行った。このCAREは、以下の加工条件で行った。
加工液:純水
触媒:白金
基板回転数:10.3回転/分
触媒定盤回転数:10回転/分
加工時間:50分
加工圧:250hPa
その後、ガラス基板の端面をスクラブ洗浄した後、当該基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分浸漬させ、その後、純水によるリンス、乾燥を行った。尚、王水による洗浄は、ガラス基板の表裏面に触媒である白金の残留物がなくなるまで、複数回行った。
本実施例5により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.040nm、最大高さ(Rmax)は、0.40nmであった。
また、本実施例5のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を図10(a)に示す。
この図面において、本実施例5のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.135nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.177nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.177−0.135)=952(%/nm)であった。したがって、本実施例5のマスクブランク用基板10の主表面は、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
また、図10(b)の度数分布図において、本実施例5のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さと、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さを求めたところ、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.157nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.20nmであった。したがって、本実施例5のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも小さいという条件を充足していた。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例5のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計370個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計370個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.135nm、最大粗さ(Rmax)は1.27nmであった。
本実施例5の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.575nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.733nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.733−0.575)=253(%/nm)であった。したがって、本実施例5の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例5の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計13,512個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例5の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
[実施例6]
<多層反射膜付き基板の作製>
上述の実施例5において、多層反射膜21の成膜条件を、基板主表面の法線に対して、Si膜のスパッタ粒子の入射角度が30度、Mo膜のスパッタ粒子の入射角度が30度となるようにイオンビームスパッタリング法により成膜した以外は、実施例5と同様に、多層反射膜付き基板を作製した。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.116nm、最大粗さ(Rmax)は1.15nmであった。
本実施例6の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.622nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.753nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.753−0.622)=305(%/nm)であった。したがって、本実施例4の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例6の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計4,768個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例6の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
[実施例7]
上述の比較例1におけるEUV露光用のマスクブランク用基板に対して、上述の実施例6の成膜条件(基板主表面の法線に対して、Si膜のスパッタ粒子の入射角度が30度、Mo膜のスパッタ粒子の入射角度が30度により多層反射膜21、および保護膜22を形成して多層反射膜付き基板を作製した。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.122nm、最大粗さ(Rmax)は1.32nmであった。
本実施例7の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.820nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.967nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.967−0.820)=272(%/nm)であった。したがって、本実施例7の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例7の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計10,218個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。また、EUV光に対する反射率を測定したところ、65%と良好な結果が得られた。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例7の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
さらに、上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
<半導体装置の製造方法>
次に、上述の実施例1〜7、比較例1〜2の反射型マスク、透過型マスクを使用し、露光装置を使用して、半導体基板である被転写体上のレジスト膜にパターン転写を行い、その後、配線層をパターニングして、半導体装置を作製した。その結果、実施例1〜7の反射型マスク及び透過型マスクを使用した場合には、パターン欠陥はなく、半導体装置を作製することができたが、比較例1〜2の反射型マスクを使用した場合には、パターン欠陥が発生し、半導体装置の不良が発生した。これは、マスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、及び反射型マスクにおける欠陥検査において、致命欠陥が疑似欠陥に埋もれて検出できなかったことにより、適正な描画補正、マスク修正が行われなかったことにより、反射型マスクに致命欠陥が存在したことによるものであった。
尚、上述の多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30の作製において、マスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面上に、多層反射膜21及び保護膜22を成膜した後、上記主表面とは反対側の裏面に裏面導電膜23を形成したがこれに限らない。マスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面とは反対側の主表面に裏面導電膜23を形成した後、転写パターンが形成される側の主表面上に、多層反射膜21や、さらに保護膜22を成膜して多層反射膜付き基板20、さらに保護膜22上に吸収体膜24を成膜して反射型マスクブランク30を作製しても構わない。
また、上述の実施例では、度数分布図において、プロットした点における最高頻度fmaxの値から、半値幅の中心に対応するベアリング深さBDM、BDmを求めたが、これに限らない。度数分布図によりプロットした点より求めた近似曲線から、最高頻度fmaxを求め、半値幅の中心に対応するベアリング深さを求めても構わない。
10 マスクブランク用基板
20 多層反射膜付き基板
21 多層反射膜
22 保護膜
23 裏面導電膜
24 吸収体膜
27 吸収体パターン
30 反射型マスクブランク
40 反射型マスク
50 透過型マスクブランク
51 遮光性膜
60 透過型マスク
本発明は、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能なマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、透過型マスクブランク、反射型マスクブランク、透過型マスク、反射型マスク及び半導体装置の製造方法に関する。
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚ものフォトマスクと呼ばれている転写用マスクが使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものであり、この転写用マスクの製造においてもフォトリソグラフィ法が用いられている。
フォトリソグラフィ法による転写用マスクの製造には、ガラス基板等の透光性基板上に転写パターン(マスクパターン)を形成するための薄膜(例えば遮光膜など)を有するマスクブランクが用いられる。このマスクブランクを用いた転写用マスクの製造は、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン描画を施す描画工程と、描画後、前記レジスト膜を現像して所望のレジストパターンを形成する現像工程と、このレジストパターンをマスクとして前記薄膜をエッチングするエッチング工程と、残存するレジストパターンを剥離除去する工程とを有して行われている。上記現像工程では、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し所望のパターン描画を施した後に現像液を供給して、現像液に可溶なレジスト膜の部位を溶解し、レジストパターンを形成する。また、上記エッチング工程では、このレジストパターンをマスクとして、ドライエッチング又はウェットエッチングによって、レジストパターンの形成されていない薄膜が露出した部位を除去し、これにより所望のマスクパターンを透光性基板上に形成する。こうして、転写用マスクが出来上がる。
また、転写用マスクの種類としては、従来の透光性基板上にクロム系材料からなる遮光膜パターンを有するバイナリー型マスクのほかに、位相シフト型マスクが知られている。この位相シフト型マスクは、透光性基板上に位相シフト膜を有する構造のもので、この位相シフト膜は、所定の位相差を有するものであり、例えばモリブデンシリサイド化合物を含む材料等が用いられる。また、モリブデン等の金属のシリサイド化合物を含む材料を遮光膜として用いるバイナリー型マスクも用いられるようになってきている。これら、バイナリー型マスク、位相シフト型マスクを総称して、本願では透過型マスクと称し、透過型マスクに使用される原版であるバイナリー型マスクブランク、位相シフト型マスクブランクを総称して透過型マスクブランクと称す。
また、近年、半導体産業において、半導体デバイスの高集積化に伴い、従来の紫外光を用いたフォトリソグラフィ法の転写限界を上回る微細パターンが必要とされてきている。このような微細パターン形成を可能とするため、極紫外(Extreme Ultra Violet:以下、「EUV」と呼ぶ。)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィーが有望視されている。ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2〜100nm程度の光のことである。このEUVリソグラフィーにおいて用いられる転写用マスクとして反射型マスクが提案されている。このような反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、該多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。
以上のように、リソグラフィー工程での微細化に対する要求が高まることにより、そのリソグラフィー工程での課題が顕著になりつつある。その1つが、リソグラフィー工程で用いられるマスクブランク用基板等の欠陥情報に関する問題である。
マスクブランク用基板は、近年のパターンの微細化に伴う欠陥品質の向上や、転写用マスクに求められる光学的特性の観点から、より平滑性の高い基板が要求されている。従来のマスクブランク用基板の表面加工方法としては、例えば、特許文献1〜3に記載されたようなものがある。
特許文献1には、平均一次粒子径が50nm以下のコロイダルシリカ、酸および水を含み、pHが0.5〜4の範囲になるように調整してなる研磨スラリーを用いて、SiO2を主成分とするガラス基板の表面を、原子間力顕微鏡で測定した表面粗さRmsが0.15nm以下になるように研磨する、ガラス基板の研磨方法が記載されている。
特許文献2には、合成石英ガラス基板表面の高感度欠陥検査装置で検出される欠陥の生成を抑制するために、抑制コロイド溶液及び酸性アミノ酸を含んだ合成石英ガラス基板用の研磨剤が記載されている。
特許文献3には、石英ガラス基板を水素ラジカルエッチング装置内に載置し、石英ガラス基板に水素ラジカルを作用させて、表面平坦度をサブナノメータレベルで制御できるようにした、石英ガラス基板の表面平坦度を制御する方法が記載されている。
特開2006−35413号公報
特開2009−297814号公報
特開2008−94649号公報
ArFエキシマレーザー、EUV(Extreme Ultra-Violet)を使用したリソグラフィーにおける急速なパターンの微細化に伴い、バイナリー型マスクや位相シフト型マスクのような透過型マスク(オプティカルマスクとも言う。)や、反射型マスクであるEUVマスクの欠陥サイズ(Defect Size)も年々微細になり、このような微細欠陥を発見するために、欠陥検査で使用する検査光源波長は露光光の光源波長に近づきつつある。
例えば、オプティカルマスクや、その原版であるマスクブランク及びサブストレートの欠陥検査装置としては、検査光源波長が193nmとする高感度欠陥検査装置が普及しつつあり、EUVマスクや、その原版であるEUVマスクブランク及びサブストレートの欠陥検査装置としては、検査光源波長が266nm、193nm、13.5nmとする高感度欠陥検査装置が普及、又は提案されている。
ここで、従来の転写用マスクに用いられる基板の主表面は、その製造過程においてRms(二乗平均平方根粗さ)及びRmax(最大高さ)に代表される表面粗さにより管理していた。しかし、上述した高感度欠陥検査装置の検出感度が高いため、欠陥品質の向上の観点からいくらRms及びRmaxに準拠する平滑性を高めても、基板主表面欠陥検査を行うと多数の疑似欠陥が検出され、欠陥検査が最後まで実施できないという問題が生じた。
ここでいう疑似欠陥とは、パターン転写に影響しない基板表面上の許容される凹凸であって、高感度欠陥検査装置で検査した場合に、欠陥と誤判定されてしまうものをいう。欠陥検査において、このような疑似欠陥が多数検出されると、パターン転写に影響のある致命欠陥が多数の疑似欠陥に埋もれてしまい、致命欠陥を発見することができなくなる。例えば、現在普及しつつある検査光源波長が266nmや193nmとする欠陥検査装置では、100,000個を超える疑似欠陥が検出されてしまい、致命欠陥の有無を検査することができない。欠陥検査における致命欠陥の看過は、その後の半導体装置の量産過程において不良を引き起こし、無用な労力と経済的な損失をまねくことになる。
このような疑似欠陥の問題について、本発明者らが鋭意検討した結果、従来から管理されていた粗さ成分に加え、表面粗さのベアリングカーブを管理すること、及びベアリング深さの頻度(%)を管理することで、高感度欠陥検査装置を使用した欠陥検査において、疑似欠陥の検出を大幅に抑制できることを見出した。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥検出を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能なマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、透過型マスクブランク、反射型マスクブランク、透過型マスク、反射型マスク及び半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板は、リソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板であって、
前記基板の転写パターンが形成される側の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、前記基板の主表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)の関係式を満たし、かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmとした構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る多層反射膜付き基板は、上述した本発明のマスクブランク用基板の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を有する構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る多層反射膜付き基板は、リソグラフィーに使用される多層反射膜付き基板であって、
前記多層反射膜付き基板は、マスクブランク用基板の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を有し、
前記多層反射膜表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、
前記多層反射膜の表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)の関係式を満たし、かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmとした構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る透過型マスクブランクは、上述した本発明のマスクブランク用基板の前記主表面上に、転写パターンとなる遮光性膜を有する構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る反射型マスクブランクは、上述した本発明の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜もしくは前記保護膜上に、転写パターンとなる吸収体膜を有する構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る透過型マスクは、上述した本発明の透過型マスクブランクにおける前記遮光性膜をパターニングして、前記主表面上に遮光性膜パターンを有する構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る反射型マスクは、上述した本発明の反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングして、前記多層反射膜上に吸収体パターンを有する構成となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上述した本発明の透過型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する方法となっている。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上述した本発明の反射型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する方法となっている。
上述した本発明のマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、透過型マスクブランク、反射型マスク、透過型マスクによれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥の検出を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能となる。特に、EUVリソグラフィーに使用するマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクにおいては、疑似欠陥を抑制しつつ、基板主表面上に形成した多層反射膜は高い反射率が得られる。
また、上述した半導体装置の製造方法によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、異物や傷などの致命欠陥を排除した反射型マスクや透過型マスクを使用できるので、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に転写する回路パターン等の転写パターンに欠陥がなく、微細でかつ高精度の回路パターンを有する半導体装置を製造することができる。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板10を示す斜視図である。図1(b)は、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板10を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態に係る多層反射膜付き基板の構成の一例を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態に係る反射型マスクブランクの構成の一例を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態に係る反射型マスクの一例を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態に係る透過型マスクブランクの構成の一例を示す断面模式図である。
本発明の一実施形態に係る透過型マスクの一例を示す断面模式図である。
本発明の実施例1、2及び4、参考例3、比較例1及び2のマスクブランク用基板の表面粗さのベアリングカーブ測定結果を示すグラフである。
図8(a)は実施例1のベアリングカーブ測定結果、図8(b)は実施例1のベアリング深さとその頻度(%)との関係をプロットした度数分布を示すグラフである。
図9(a)は比較例1のベアリングカーブ測定結果、図9(b)は比較例1のベアリング深さとその頻度(%)との関係をプロットした度数分布を示すグラフである。
図10(a)は実施例5のベアリングカーブ測定結果、図10(b)は実施例5のベアリングカーブ深さとその頻度(%)との関係をプロットした度数分布を示すグラフである。
・全般的説明
上記目的を達成するために、本発明は、以下の構成となっている。
(構成1)
本発明の構成1は、リソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板であって、
前記基板の転写パターンが形成される側の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、前記基板の主表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)の関係式を満たし、かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmとした、マスクブランク用基板である。
上記構成1によれば、前記主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となるため、欠陥検査において疑似欠陥の検出要因である凹凸(表面粗さ)のバラツキを低減することができるので、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成2)
本発明の構成2は、前記主表面は、前記原子間力顕微鏡で測定して得られたベアリング深さと、得られたベアリング深さの頻度(%)との関係をプロットした度数分布図において、前記プロットした点より求めた近似曲線、或いは前記プロットした点における最高頻度より求められる半値幅の中心に対応するベアリング深さの絶対値が、前記基板の主表面の表面粗さにおける最大高さ(Rmax)の1/2に対応するベアリング深さの絶対値よりも小さい、構成1に記載のマスクブランク用基板である。
上記構成2によれば、基板主表面を構成する凹凸において、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。従って、前記主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜を形成する場合に特に効果が発揮される。
(構成3)
本発明の構成3は、前記主表面は、触媒基準エッチングにより表面加工された表面である、構成1又は2に記載のマスクブランク用基板である。
上記構成3によれば、触媒基準エッチングにより、基準面である触媒表面に接触する凸部から選択的に表面加工されるため、主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となり、しかも、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。従って、前記主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜を形成する場合に特に効果が発揮される。また、上述のように主表面を触媒基準エッチングによる表面処理することにより、上記構成1又は2で規定している範囲の表面粗さ、ベアリングカーブ特性の表面を比較的容易に形成することができる。
(構成4)
本発明の構成4は、前記基板が、EUVリソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板である、構成1〜3のいずれか1つに記載のマスクブランク用基板である。
上記構成4によれば、EUVリソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板とすることにより、前記主表面上に形成される多層反射膜表面の表面形態も高平滑となるので、EUV光に対する反射率特性も良好となる。
(構成5)
本発明の構成5は、前記基板多成分系のガラス材料からなる基板の前記主表面上に、金属、合金又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜を有する、構成4に記載のマスクブランク用基板である。
一般に、EUVリソグラフィーに使用されるマスクブランク用基板においては、低熱膨張の特性が要求されるため、後述するような多成分系のガラス材料を使用することが好ましい。多成分系のガラス材料は、合成石英ガラスと比較して高い平滑性を得られにくいという性質がある。このため、多成分系のガラス材料からなる基板の前記主表面上に、金属、合金又はこれらの何れかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜が形成された基板とする。そして、このような薄膜の表面を表面加工することにより上記構成1又は2に規定した表面形態を有する基板を容易に得られる。
(構成6)
本発明の構成6は、構成1〜5のいずれかに記載したマスクブランク用基板の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を有する、多層反射膜付き基板である。
上記構成6によれば、前記主表面上に形成される多層反射膜表面の表面形態も高平滑となるので、EUV光に対する反射率特性も良好となる。また、高感度欠陥検査装置を使用しての多層反射膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出も十分に抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成7)
本発明の構成7は、リソグラフィーに使用される多層反射膜付き基板であって、
前記多層反射膜付き基板は、マスクブランク用基板の主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を有し、
前記多層反射膜表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、
前記多層反射膜の表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)の関係式を満たし、かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmとした、多層反射膜付き基板である。
上記構成7によれば、前記多層反射膜表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となるため、欠陥検査において疑似欠陥の検出要因である凹凸(表面粗さ)のバラツキを低減することができるので、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成8)
本発明の構成8は、前記多層反射膜付き基板は、前記多層反射膜上に保護膜を有する、構成6又は7に記載の多層反射膜付き基板である。
上記構成8によれば、前記多層反射膜付き基板は、前記多層反射膜上に保護膜を有する構成とすることにより、転写用マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性が更に良好となる。また、高感度欠陥検査装置を使用しての保護膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出も十分に抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成9)
本発明の構成9は、構成1〜3のいずれか1つに記載したマスクブランク用基板の前記主表面上に、転写パターンとなる遮光性膜を有する、透過型マスクブランクである。
上記構成9によれば、透過型マスクブランクにおいて、遮光性膜表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に揃った表面形態となるため、欠陥検査において疑似欠陥の検出要因である凹凸(表面粗さ)のバラツキを低減することができるので、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成10)
本発明の構成10は、構成7又は8に記載の多層反射膜付き基板の前記多層反射膜もしくは前記保護膜上に、転写パターンとなる吸収体膜を有する、反射型マスクブランクである。
上記構成10によれば、反射型マスクブランクにおいて、吸収体膜表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に揃った表面形態となるため、欠陥検査において疑似欠陥の検出要因である凹凸(表面粗さ)のバラツキを低減することができるので、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成11)
本発明の構成11は、構成9に記載した透過型マスクブランクにおける前記遮光性膜をパターニングして、前記主表面上に遮光性膜パターンを有する、透過型マスクである。
(構成12)
本発明の構成12は、構成10に記載した反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングして、前記多層反射膜上に吸収体パターンを有する、反射型マスクである。
上記構成11、12によれば、透過型マスクや反射型マスクにおいて、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
(構成13)
本発明の構成13は、構成11に記載の透過型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法である。
(構成14)
本発明の構成14は、構成12に記載の反射型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法である。
上記構成13、14によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、異物や傷などの致命欠陥を排除した透過型マスクや反射型マスクを使用できるので、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に転写する回路パターンに欠陥がなく、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
・図示された実施形態の説明
[マスクブランク用基板]
まず、本発明におけるマスクブランク用基板について以下に説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板10を示す斜視図である。図1(b)は、本実施形態のマスクブランク用基板10を示す断面模式図である。
マスクブランク用基板10(または、単に基板10と称す。)は、矩形状の板状体であり、2つの対向主表面2と、端面1とを有する。2つの対向主表面2は、この板状体の上面及び下面であり、互いに対向するように形成されている。また、2つの対向主表面2の少なくとも一方は、転写パターンが形成されるべき主表面である。
端面1は、この板状体の側面であり、対向主表面2の外縁に隣接する。端面1は、平面状の端面部分1d、及び曲面状の端面部分1fを有する。平面状の端面部分1dは、一方の対向主表面2の辺と、他方の対向主表面2の辺とを接続する面であり、側面部1a、及び面取斜面部1bを含む。側面部1aは、平面状の端面部分1dにおける、対向主表面2とほぼ垂直な部分(T面)である。面取斜面部1bは、側面部1aと対向主表面2との間における面取りされた部分(C面)であり、側面部1aと対向主表面2との間に形成される。
曲面状の端面部分1fは、基板10を平面視したときに、基板10の角部10a近傍に隣接する部分(R部)であり、側面部1c及び面取斜面部1eを含む。ここで、基板10を平面視するとは、例えば、対向主表面2と垂直な方向から、基板10を見ることである。また、基板10の角部10aとは、例えば、対向主表面2の外縁における、2辺の交点近傍である。2辺の交点とは、2辺のそれぞれの延長線の交点であってよい。本例において、曲面状の端面部分1fは、基板10の角部10aを丸めることにより、曲面状に形成されている。
本実施形態において、上記目的を達成するために、少なくとも転写パターンが形成される側の主表面、即ち、後述するように透過型マスクブランク50においては、遮光性膜51が形成される側の主表面、反射型マスクブランク30においては、多層反射膜21、保護膜22、吸収体膜24が形成される側の主表面が、ある一定の表面粗さと、一定の関係式を満たすベアリングカーブ特性を有していることを特徴とする。
以下、本実施形態のマスクブランク用基板10の主表面の表面形態を示すパラメーターである表面粗さ(Rmax、Rms)と、ベアリングカーブとの関係について説明する。
まず、代表的な表面粗さの指標であるRms(Root means square)は、二乗平均平方根粗さであり、平均線から測定曲線までの偏差の二乗を平均した値の平方根である。Rmsは下式(1)で表される。
式(1)において、lは基準長さであり、Zは平均線から測定曲線までの高さである。
同じく、代表的な表面粗さの指標であるRmaxは、表面粗さの最大高さであり、粗さ曲線の山の高さの最大値と谷の深さの最大値との絶対値の差である。
Rms及びRmaxは、従来からマスクブランク用基板の表面粗さの管理に用いられており、表面粗さを数値で把握できる点で優れている。しかし、これらRms及びRmaxは、いずれも高さの情報であり、微細な表面形状の変化に関する情報を含まない。
これに対して、ベアリングカーブは、基板10の主表面上の測定領域内における凹凸を任意の等高面(水平面)で切断し、この切断面積が測定領域の面積に占める割合をプロットしたものである。ベアリングカーブにより、基板10の表面粗さのばらつきを視覚化及び数値化することができる。
ベアリングカーブは、通常、縦軸をベアリングエリア(%)、横軸をベアリング深さ(nm)としてプロットされる。ベアリングエリア0(%)が、測定する基板表面の最高点を示し、ベアリングエリア100(%)が、測定する基板表面の最低点を示す。したがって、ベアリングエリア0(%)の深さと、ベアリングエリア100(%)の深さの差は、上述の最大高さ(Rmax)となる。尚、本発明では「ベアリング深さ」と呼んでいるが、これは「ベアリング高さ」と同義である。「ベアリング高さ」の場合は、上記と逆に、ベアリングエリア0(%)が、測定する基板表面の最低点を示し、ベアリングエリア100(%)が、測定する基板表面の最高点を示す。以下、本実施形態のマスクブランク基板10におけるベアリングカーブの管理について説明する。
本実施形態のマスクブランク用基板10は、上記目的を達成するために、転写パターンが形成される側の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、基板10の主表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)の関係式を満たし、かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmとした構成としてある。
すなわち、上述の(BA70−BA30)/(BD70−BD30)(単位:%/nm)は、ベアリングエリア30%〜70%におけるベアリングカーブの傾きを表すものであり、その傾きを350(%/nm)以上とすることで、より浅いベアリング深さ(nm)でベアリングエリアが100%に到達することになる。つまり、基板10の主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となるため、欠陥検査において疑似欠陥の検出要因である凹凸(表面粗さ)のバラツキを低減することができるので、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、さらに致命欠陥の顕在化を図ることができる。
基板10の主表面は、疑似欠陥の検出を抑制する観点からは、前記主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が非常に揃った表面形態であることが良く、好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧400(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧450(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧500(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧750(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧800(%/nm)、更に好ましくは(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧900(%/nm)とすることが望ましい。また、同様の観点から、基板10の主表面の表面粗さも高い平滑性を有することが良く、好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.1nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.0nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦0.75nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦0.5nm、とすることが望ましい。
また、基板10の主表面の表面粗さは、上述の最大高さ(Rmax)に加え、二乗平均平方根粗さ(Rms)で管理することにより、例えば、基板10の主表面上に形成される多層反射膜、保護膜、吸収体膜、遮光性膜の反射率等の光学特性向上の観点から好ましい。基板10の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)≦0.12nmが好ましく、更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)≦0.10nm、更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)≦0.08nm、更に好ましくは、二乗平均平方根粗さ(Rms)≦0.05nmとすることが望ましい。
また、基板10の主表面は、原子間力顕微鏡で測定して得られたベアリング深さと、得られたベアリング深さの頻度(%)との関係をプロットした度数分布図において、前記プロットした点より求めた近似曲線、或いは前記プロットした点における最高頻度より求められる半値幅の中心に対応するベアリング深さの絶対値が、前記基板の主表面の表面粗さにおける最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さの絶対値よりも小さい表面形態とすることが好ましい。この表面形態は、基板10の主表面を構成する凹凸において、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。従って、基板10の主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、前記主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜を形成する場合に特に効果が発揮される。
また、基板10の主表面は、触媒基準エッチングにより表面加工された表面とすることが好ましい。触媒基準エッチング(Catalyst Referred Etching:以下、CAREともいう)とは、基板10の主表面と触媒との間に、常態では溶解性を示さない処理流体を介在させた状態で、両者を接近又は接触させることにより、触媒に吸着している処理液中の分子から生成された活性種によって、主表面に存在する微小な凸部を選択的に除去して平滑化させる表面加工方法である。
基板10の主表面が、触媒基準エッチングにより、基準面である触媒表面に接触する凸部から選択的に表面加工されるため、主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となり、しかも、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。従って、前記主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜を形成する場合に特に効果が発揮される。また、上述のように主表面を触媒基準エッチングによる表面処理することにより、上記構成1又は2で規定している範囲の表面粗さ、ベアリングカーブ特性の表面を比較的容易に形成することができる。
尚、基板10の材料がガラス材料の場合、触媒としては、白金、金、遷移金属及びこれらのうち少なくとも一つを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料を使用することができる。また、処理液としては、純水、オゾン水や水素水等の機能水、低濃度のアルカリ性水溶液、低濃度の酸性水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の所液を使用することができる。
上記のように、基板10の主表面の表面粗さ、ベアリングカーブ特性を上記範囲にすることにより、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置や、0.2nm〜100nmの波長領域の検査光(EUV光)を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、レーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M7360」(検査光源波長:266nm)や、KLA−Tencor社製のレチクル、オプティカル・マスク/ブランク及びEUV・マスク/ブランク欠陥検査装置「Teron 600シリーズ」(検査光源波長:193nm)による欠陥検査、EUV光を検査光源に用いた欠陥検査装置(検査光源波長:13.5nm)において、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
尚、上記検査光源波長は、266nm、193nm及び13.5nmに限定されない。検査光源波長として、532nm、488nm、364nm、257nmを使用しても構わない。
上記の検査光源波長を有する高感度欠陥検査装置を用いて欠陥検査するマスクブランク用基板としては、透過型マスクブランク用基板、反射型マスクブランク用基板が挙げられる。
また、本実施形態のマスクブランク用基板10は、転写パターンが形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されていることが好ましい。EUVの反射型マスクブランク用基板の場合、基板10の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域、または142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.05μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットする時の静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。ArFエキシマレーザー露光用の透過型マスクブランクに使用するマスクブランク用基板10の場合、基板の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域、または142mm×142mmの領域においては、平坦度が0.3μm以下であることが好ましく、特に好ましくは、0.2μm以下である。
ArFエキシマレーザー露光用の透過型マスクブランク用基板の材料としては、露光波長に対して透光性を有するものであれば何でもよい。一般的には、合成石英ガラスが使用される。その他の材料としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスであっても構わない。
また、EUV露光用の反射型マスクブランク用基板の材料としては、低熱膨張の特性を有するものであれば何でもよい。例えば、低熱膨張の特性を有するSiO2−TiO2系ガラス(2元系(SiO2−TiO2)及び3元系(SiO2−TiO2−SnO2等))、例えばSiO2−Al2O3−Li2O系の結晶化ガラスなどの所謂、多成分系ガラスを使用することができる。また、上記ガラス以外にシリコンや金属などの基板を用いることもできる。前記金属基板の例としては、インバー合金(Fe−Ni系合金)などが挙げられる。
上述のように、EUV露光用のマスクブランク用基板の場合、基板に低熱膨張の特性が要求されるため、多成分系ガラス材料を使用するが、合成石英ガラスと比較して高い平滑性を得にくいという問題がある。この問題を解決すべく、多成分系ガラス材料からなる基板上に、金属、合金からなる又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜を形成する。そして、このような薄膜表面を鏡面研磨、表面処理することにより、上記範囲の表面粗さ、ベアリングカーブ特性の表面を比較的容易に形成することができる。
上記薄膜の材料としては、例えば、Ta(タンタル)、Taを含有する合金、又はこれらのいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有したTa化合物が好ましい。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON、TaSiCONなどを適用することができる。これらTa化合物のうち、窒素(N)を含有するTaN、TaON、TaCON、TaBN、TaBON、TaBCON、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSiN、TaSiON、TaSiCONがより好ましい。尚、上記薄膜は、薄膜表面の高平滑性の観点から、好ましくはアモルファス構造とすることが望ましい。薄膜の結晶構造は、X線回折装置(XRD)により測定することができる。
尚、本発明では、上記に規定した表面粗さ、ベアリングカーブ特性を得るための加工方法は、特に限定されるものではない。本発明は、マスクブランク用基板の表面粗さにおけるベアリングカーブ及びベアリング深さの頻度を管理する点に特徴があり、このような表面粗さは、例えば、後述する実施例1、2及び参考例1に例示したような加工方法によって実現することができる。
[多層反射膜付き基板]
次に、本発明の一実施形態に係る多層反射膜付き基板20について以下に説明する。
図2は、本実施形態の多層反射膜付き基板20を示す模式図である。
本実施形態の多層反射膜付き基板20は、上記説明したマスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面上に多層反射膜21を有する構成としている。この多層反射膜21は、EUVリソグラフィー用反射型マスクにおいてEUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜の構成を取っている。
多層反射膜21はEUV光を反射する限りその材質は特に限定されないが、その単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。このような多層反射膜21は、一般的には、高屈折率の材料からなる薄膜(高屈折率層)と、低屈折率の材料からなる薄膜(低屈折率層)とが、交互に40〜60周期程度積層された多層反射膜とすることができる。
例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜21としては、Mo膜とSi膜とを交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜とすることが好ましい。その他、EUV光の領域で使用される多層反射膜として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などとすることが可能である。
多層反射膜21の形成方法は当該技術分野において公知であるが、例えば、マグネトロンスパッタリング法や、イオンビームスパッタリング法などにより、各層を成膜することにより形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えば、イオンビームスパッタリング法により、まずSiターゲットを用いて厚さ数nm程度のSi膜を基板10上に成膜し、その後、Moターゲットを用いて厚さ数nm程度のMo膜を成膜し、これを一周期として、40〜60周期積層して、多層反射膜21を形成する。
上記で形成された多層反射膜21の上に、EUVリソグラフィー用反射型マスクの製造工程におけるドライエッチングやウェット洗浄からの多層反射膜21の保護のため、保護膜22(図3を参照)を形成することもできる。このように、マスクブランク用基板10上に、多層反射膜21と、保護膜22とを有する形態も本発明における多層反射膜付き基板とすることができる。
尚、上記保護膜22の材料としては、例えば、Ru、Ru−(Nb,Zr,Y,B,Ti,La,Mo),Si−(Ru,Rh,Cr,B),Si,Zr,Nb,La,B等の材料を使用することができるが、これらのうち、ルテニウム(Ru)を含む材料を適用すると、多層反射膜の反射率特性がより良好となる。具体的には、Ru、Ru−(Nb,Zr,Y,B,Ti,La,Mo)であることが好ましい。このような保護膜は、特に、吸収体膜をTa系材料とし、Cl系ガスのドライエッチングで当該吸収体膜をパターニングする場合に有効である。
尚、上記の多層反射膜付基板20において、前記多層反射膜21又は前記保護膜22の表面は、1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、前記表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)の関係式を満足し、かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmとすることが好ましい。このような構成とすることにより、上述に挙げた検査光源波長を使用した高感度欠陥検査装置で多層反射膜付き基板20の欠陥検査を行う場合、擬似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。また、多層反射膜21又は保護膜22の表面の平滑性が向上し、表面粗さ(Rmax)が小さくなるので、高反射率が得られるという効果もある。
多層反射膜21又は保護膜22の表面は、好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧250(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧300(%/nm)、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧400(%/nm)、更に好ましくは、BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧450(%/nm)、更に好ましくは、BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧500(%/nm)とすることが望ましい。また、同様の観点から、前記多層反射膜、保護膜の表面粗さは、好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.3nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.2nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.1nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.0nmとすることが望ましい。
上記範囲の基板10の主表面の表面形態を保って、多層反射膜21又は保護膜22の表面が、上記範囲の表面粗さ及びベアリングカーブ特性を得るには、多層反射膜21を、基板10の主表面の法線に対して斜めに高屈折率層と低屈折率層とが堆積するように、スパッタリング法により成膜することにより得られる。より具体的には、基板10の主表面の表面形態を保って、多層反射膜21又は保護膜22の表面が、上記範囲の表面粗さ及びベアリングカーブ特性を得て、且つ、多層反射膜12、保護膜13の反射率特性を良好にするためには、基板10の主表面の法線に対して、多層反射膜21を構成する低屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度が、高屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度より大きくなるように、イオンビームスパッタリング法に形成する。さらに詳細には、Mo等の低屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度は、40度以上90度未満とし、Si等の高屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度は、0度以上60度以下にして成膜すると良い。また、多層反射膜21又は保護膜22の表面が、基板10の主表面の表面形態を改善させて、上記範囲の表面粗さ及びベアリングカーブ特性を得るためには、基板10の主表面の法線に対して、多層反射膜21を構成する低屈折率層と高屈折率層のスパッタ粒子の入射角度が、0度以上30度以下にして成膜すると良い。さらには、多層反射膜21上に形成する保護膜22も多層反射膜21の成膜後、連続して、基板10の主表面の法線に対して斜めに保護膜22が堆積するようにイオンビームスパッタリング法により形成することが好ましい。
また、多層反射膜付き基板20において、基板10の多層反射膜21と接する面と反対側の面には、静電チャックの目的のために裏面導電膜23(図3を参照)を形成することもできる。このように、マスクブランク用基板10上の転写パターンが形成される側に多層反射膜21と、保護膜22とを有し、多層反射膜21と接する面と反対側の面に裏面導電膜23を有する形態も本発明における多層反射膜付き基板20とすることができる。尚、裏面導電膜23に求められる電気的特性(シート抵抗)は、通常100Ω/□以下である。裏面導電膜23の形成方法は公知であり、例えば、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法により、Cr、Ta等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。
また、本実施形態の多層反射膜付き基板20としては、基板10と多層反射膜21との間に下地層を形成しても良い。下地層は、基板10の主表面の平滑性向上の目的、欠陥低減の目的、多層反射膜21の反射率増強効果の目的、並びに多層反射膜21の応力低減の目的で形成することができる。
[反射型マスクブランク]
次に、本発明の一実施形態に係る反射型マスクブランク30について以下に説明する。
図3は、本実施形態の反射型マスクブランク30を示す模式図である。
本実施形態の反射型マスクブランク30は、上記説明した多層反射膜付き基板20の保護膜22上に、転写パターンとなる吸収体膜24を形成した構成としてある。
上記吸収体膜24の材料は、特に限定されるものではない。例えば、EUV光を吸収する機能を有するもので、Ta(タンタル)単体、又はTaを主成分とする材料を用いることが好ましい。Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。Taを主成分とする材料としては、例えば、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくともいずれかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料などを用いることができる。また例えば、TaにB、Si、Ge等を加えることにより、アモルファス構造が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。さらに、TaにN、Oを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができる。
尚、上記吸収体膜24の表面は、1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、前記表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)の関係式を満足し、かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmとすることが好ましい。
更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧400(%/nm)、更に好ましくは、BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧450(%/nm)、更に好ましくは、BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧500(%/nm)とすることが望ましい。また、吸収体膜24の表面粗さは、好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.1nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.0nmとすることが望ましい。
上記範囲の基板10や、多層反射膜付き基板20の表面形態を保って、吸収体膜24の表面が、上記範囲の表面粗さ、及びベアリングカーブ特性を得るには、吸収体膜24をアモルファス構造にすることが好ましい。結晶構造については、X線回折装置(XRD)により確認することができる。
尚、本発明の反射型マスクブランクは、図3に示す構成に限定されるものではない。例えば、上記吸収体膜24の上に、吸収体膜24をパターニングするためのマスクとなるレジスト膜を形成することもでき、レジスト膜付き反射型マスクブランクも、本発明の反射型マスクブランクとすることができる。尚、吸収体膜24の上に形成するレジスト膜は、ポジ型でもネガ型でも構わない。また、電子線描画用でもレーザー描画用でも構わない。さらに、吸収体膜24と前記レジスト膜との間に、いわゆるハードマスク(エッチングマスク)膜を形成することもでき、この態様も本発明における反射型マスクブランクとすることができる。
[反射型マスク]
次に、本発明の一実施形態に係る反射型マスク40について以下に説明する。
図4は、本実施形態の反射型マスク40を示す模式図である。
本実施形態の反射型マスク40は、上記の反射型マスクブランク30における吸収体膜24をパターニングして、上記保護膜22上に吸収体パターン27を形成した構成である。本実施形態の反射型マスク40は、EUV光等の露光光で露光すると、マスク表面で吸収体膜24のある部分では露光光が吸収され、それ以外の吸収体膜24を除去した部分では露出した保護膜22及び多層反射膜21で露光光が反射されることにより、リソグラフィー用の反射型マスク40として使用することができる。
[透過型マスクブランク]
次に、本発明の一実施形態に係る透過型マスクブランク50について以下に説明する。
図5は、本実施形態の透過型マスクブランク50を示す模式図である。
本実施形態の透過型マスクブランク50は、上記説明したマスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面上に、転写パターンとなる遮光性膜51を形成した構成としてある。
透過型マスクブランク50としては、バイナリー型マスクブランク、位相シフト型マスクブランクが挙げられる。上記遮光性膜51には、露光光を遮断する機能を有する遮光膜の他、露光光を減衰させ、かつ位相シフトさせる所謂ハーフトーン膜などが含まれる。
バイナリー型マスクブランクは、マスクブランク用基板10上に、露光光を遮断する遮光膜を成膜したものである。この遮光膜をパターニングして所望の転写パターンを形成する。遮光膜としては、例えば、Cr膜、Crに酸素、窒素、炭素、弗素を選択的に含むCr合金膜、これらの積層膜、MoSi膜、MoSiに酸素、窒素、炭素を選択的に含むMoSi合金膜、これらの積層膜などが挙げられる。尚、遮光膜の表面には、反射防止機能を有する反射防止層が含まれても良い。
また、位相シフト型マスクブランクは、マスクブランク用基板10上に、露光光の位相差を変化させる位相シフト膜を成膜したものである。この位相シフト膜をパターニングして所望の転写パターンを形成する。位相シフト膜としては、位相シフト機能のみを有するSiO2膜のほかに、位相シフト機能及び遮光機能を有する金属シリサイド酸化物膜、金属シリサイド窒化物膜、金属シリサイド酸化窒化物膜、金属シリサイド酸化炭化物膜、金属シリサイド酸化窒化炭化物膜(金属:Mo、Ti、W、Taなどの遷移金属)、CrO膜、CrF膜、SiON膜などのハーフトーン膜が挙げられる。この位相シフト型マスクブランクにおいて、位相シフト膜上に、上記の遮光膜を形成した態様も含まれる。
尚、本発明の透過型マスクブランクは、図5に示す構成に限定されるものではない。例えば、上記遮光性膜51の上に、遮光性膜51をパターニングするためのマスクとなるレジスト膜を形成することもでき、レジスト膜付き透過型マスクブランクも、本発明の透過型マスクブランクとすることができる。尚、上述と同様に、遮光性膜51の上に形成するレジスト膜は、ポジ型でもネガ型でも構わない。また、電子線描画用でもレーザー描画用でも構わない。さらに、遮光性膜51と前記レジスト膜との間に、いわゆるハードマスク(エッチングマスク)膜を形成することもでき、この態様も本発明における透過型マスクブランクとすることができる。
尚、上記遮光性膜51の表面は、1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られるベアリングエリア(%)とベアリング深さ(nm)との関係において、ベアリングエリア30%をBA30、ベアリングエリア70%をBA70、ベアリングエリア30%及び70%に対応するベアリング深さをそれぞれBD30及びBD70と定義したときに、前記表面が、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)の関係式を満足し、かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmとすることが好ましい。
更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧400(%/nm)、更に好ましくは、BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧450(%/nm)、更に好ましくは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧500(%/nm)とすることが望ましい。また、遮光性膜51の表面粗さは、好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.1nm、更に好ましくは、最大高さ(Rmax)≦1.0nmとすることが望ましい。
尚、上記範囲の基板10の表面形態を保って、遮光性膜51の表面が、上記範囲の表面粗さ、及びベアリングカーブ特性を得るには、遮光性膜51をアモルファス構造にすることが好ましい。結晶構造については、X線回折装置(XRD)により確認することができる。
[透過型マスク]
次に、本発明の一実施形態に係る透過型マスク60について以下に説明する。
図6は、本実施形態の透過型マスク60を示す模式図である。
本実施形態の透過型マスク60は、上記の透過型マスクブランク50における遮光性膜51をパターニングして、上記マスクブランク用基板10上に遮光性膜パターン61を形成した構成である。本発明の透過型マスク60は、バイナリー型マスクにおいては、ArFエキシマレーザー光等の露光光で露光すると、マスク表面で遮光性膜51のある部分では露光光が遮断され、それ以外の遮光性膜51を除去した部分では露出したマスクブランク用基板10を露光光が透過することにより、リソグラフィー用の透過型マスク60として使用することできる。また、位相シフト型マスクの一つであるハーフトーン型位相シフトマスクにおいては、ArFエキシマレーザー光等の露光光で露光すると、マスク表面で遮光性膜51が除去した部分では、露出したマスクブランク用基板10を露光光が透過し、遮光性膜51のある部分では、露光光が減衰した状態でかつ、所定の位相シフト量を有して透過されることにより、リソグラフィー用の透過型マスク60として使用することができる。また、位相シフト型マスクとしては、上述のハーフトーン型位相シフトマスクに限らず、レベンソン型位相シフトマスク等の各種位相シフト効果を利用した位相シフトマスクでも良い。
[半導体装置の製造方法]
以上説明した反射型マスク40や透過型マスク60と、露光装置を使用したリソグラフィープロセスにより、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に、前記反射型マスク40の吸収体パターン27や、前記透過型マスク60の遮光性膜パターン61に基づく回路パターン等の転写パターンを転写し、その他種々の工程を経ることで、半導体基板上に種々のパターン等が形成された半導体装置を製造することができる。
尚、上述のマスクブランク用基板10、多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30、透過型マスクブランク50に、基準マークを形成し、この基準マークと、上述の高感度欠陥検査装置で検出された致命欠陥の位置を座標管理することができる。得られた致命欠陥の位置情報(欠陥データ)に基づいて、反射型マスク40や透過型マスク60を作製するときに、上述の欠陥データと被転写パターン(回路パターン)データとを元に、致命欠陥が存在している箇所に吸収体パターン27や、遮光性膜パターン61が形成されるように描画データを補正して、欠陥を低減させることができる。
・実施例
以下、本発明のEUV露光用のマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクの実施形態を含む実施例1及び2、参考例1並びに実施例5〜7、これらに対する比較例1及び2、本発明のArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板、透過型マスクブランク、透過型マスクの実施形態を含む実施例4について、図7〜10を参照しつつ説明する。
[実施例1]
まず、本発明に係るEUV露光用のマスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、EUV露光用反射型マスクブランク、反射型マスクに関する実施例1について説明する。
<マスクブランク用基板の作製>
マスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備し、両面研磨装置を用いて、当該ガラス基板の表裏面を、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨した後、低濃度のケイフッ酸で表面処理した。これにより得られたガラス基板表面の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.15nmであった。
当該ガラス基板の表裏面における148mm×148mmの領域の表面形状(表面形態、平坦度)、TTV(板厚ばらつき)を、波長変調レーザーを用いた波長シフト干渉計で測定した。その結果、ガラス基板の表裏面の平坦度は290nm(凸形状)であった。ガラス基板表面の表面形状(平坦度)の測定結果は、測定点ごとにある基準面に対する高さの情報としてコンピュータに保存するとともに、ガラス基板に必要な表面平坦度の基準値50nm(凸形状)、裏面平坦度の基準値50nmと比較し、その差分(必要除去量)をコンピュータで計算した。
次いで、ガラス基板面内を加工スポット形状領域ごとに、必要除去量に応じた局所表面加工の加工条件を設定した。事前にダミー基板を用いて、実際の加工と同じようにダミー基板を、一定時間基板を移動させずにスポットで加工し、その形状を上記表裏面の表面形状を測定する装置と同じ測定機にて測定し、単位時間当たりにおけるスポットの加工体積を算出する。そして、スポットの情報とガラス基板の表面形状の情報より得られた必要除去量に従い、ガラス基板をラスタ走査する際の走査スピードを決定した。
設定した加工条件に従い、磁気流体による基板仕上げ装置を用いて、磁気粘弾性流体研磨(Magneto Rheological Finishing : MRF)加工法により、ガラス基板の表裏面平坦度が上記の基準値以下となるように局所的表面加工処理をして表面形状を調整した。尚、このとき使用した磁性粘弾性流体は、鉄成分を含んでおり、研磨スラリーは、アルカリ水溶液+研磨剤(約2wt%)、研磨剤:酸化セリウムとした。その後、ガラス基板を濃度約10%の塩酸水溶液(温度約25℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬した後、純水によるリンス、イソプロピルアルコール(IPA)乾燥を行った。
得られたガラス基板表面の表面形状(表面形態、平坦度)を測定したところ、表裏面の平坦度は約40〜50nmであった。また、ガラス基板表面の表面粗さを、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域において、原子間力顕微鏡を用いて測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.37nmとなっており、MRFによる局所表面加工前の表面粗さより荒れた状態になっていた。
そのため、ガラス基板の表裏面について、ガラス基板表面の表面形状が維持又は改善する研磨条件で両面研磨装置を用いて両面研磨を行った。この仕上げ研磨は、以下の研磨条件で行った。
加工液:アルカリ水溶液(NaOH)+研磨剤(濃度:約2wt%)
研磨剤:コロイダルシリカ、平均粒径:約70nm
研磨定盤回転数:約1〜50rpm
加工圧力:約0.1〜10kPa
研磨時間:約1〜10分
その後、ガラス基板をアルカリ水溶液(NaOH)で洗浄し、EUV露光用のマスクブランク用基板10を得た。
得られたマスクブランク用基板10の表裏面の平坦度、表面粗さを測定したところ、表裏面平坦度は約40nmと両面研磨装置による加工前の状態を維持又は改善しており良好であった。また、得られたマスクブランク用基板10について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.13nm、最大高さ(Rmax)は1.2nmであった。
尚、本発明におけるマスクブランク用基板10の局所加工方法は、上述した磁気粘弾性流体研磨加工法に限定されるものではない。ガスクラスターイオンビーム(Gas Cluster Ion Beams : GCIB)や局所プラズマを使用した加工方法であってもよい。
次に、上述したマスクブランク用基板10の主表面上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaBN膜を成膜した。TaBターゲットをマスクブランク用基板の主表面に対向させ、Ar+N2ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法によりTaBN膜の元素組成を測定したところ、Ta:80原子%、B:10原子%、N:10原子%であった。また、TaBN膜の膜厚は150nmであった。尚、上記TaBN膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
次に、片面研磨装置を用いて、TaBN膜の表面を超精密研磨した。この超精密研磨は、以下の研磨条件で行った。
加工液:アルカリ水溶液(NaOH)+研磨剤(コロイダルシリカの平均砥粒50nm、濃度:5wt%)
加工圧力:50g/cm2
研磨時間:約1〜10分。
その後、TaBN膜の表面をフッ酸水溶液(HF:濃度0.2wt%)で、428秒間洗浄し、EUV露光用のマスクブランク用基板を得た。
本実施例1により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10のTaBN膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.085nm、最大粗さ(Rmax)は1.1nmであった。また、本実施例1のTaBN膜表面のベアリングカーブ測定結果を、図7及び図8(a)のグラフ中の濃い実線「実施例1」で示す。各グラフの縦軸はベアリングエリア(%)、横軸はベアリング深さ(nm)である。
これら図面において、本実施例1のTaBN膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.322nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.410nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.410−0.322)=455(%/nm)であった。したがって、本実施例1のTaBN膜表面の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmを充足している。
ここで、本実施例1のTaBN膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られたベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図を、図8(b)のグラフに示す。グラフの縦軸は頻度(%)、横軸はベアリング深さ(nm)である。
同図(b)の度数分布図において、本実施例1のTaBN膜表面における測定領域内の凹凸のうち、最も高い頻度(最高頻度)fmaxの値は、頻度(Hist.)が1.118%でそれに対応するベアリング深さ(Depth)は0.361nmであった。これに基づいて、1/2fmax(0.5fmax)に対応する2つのベアリング深さ(BD1、BD2)を特定し、半値幅FWHM(full width at half maximum)の中心に対応するベアリング深さ(BDM)を求めた。この半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さ(BDM)を図中の一点鎖線で示す。また、本実施例1の最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さ(1/2Rmax=0.5Rmax)を図中の点線で示す。これら一点鎖線と点線とを比較すると、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さ(BDM)が、1/2Rmaxに対応するベアリング深さよりも図中左側に位置している。より具体的には、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.34nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.56nmであった。したがって、本実施例1のTaBN膜表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも小さいという条件を充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例1のTaBN膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計18,789個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計18,789個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。尚、球相当直径SEVDは、欠陥の面積を(S)、欠陥の高さを(h)としたときに、SEVD=2(3S/4πh)1/3の式により算出することができる。(以下の実施例、参考例、比較例も同様。)欠陥の面積(S)、欠陥の高さ(h)は原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、最高の検査感度条件で、本実施例1のTaBN膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10のTaBN膜の表面に、イオンビームスパッタリング法により、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜21と、保護膜22を形成して多層反射膜付き基板20を作製した。
多層反射膜21は、膜厚4.2nmのSi膜と、膜厚2.8nmのMo膜とを1ペアとし、40ペア成膜した(膜厚の合計280nm)。さらに、当該多層反射膜21の表面に、膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21は、基板主表面の法線に対して、Si膜のスパッタ粒子の入射角度が5度、Mo膜のスパッタ粒子の入射角度が65度となるようにイオンビームスパッタリング法により成膜した。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.141nm、最大粗さ(Rmax)は1.49nmであった。
本実施例1の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.575nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.745nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.745−0.575)=235(%/nm)であった。したがって、本実施例1の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度にて、本実施例1の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計19,132個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。また、EUV光に対する反射率を測定したところ、65%と良好な結果が得られた。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例1の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
尚、本実施例1の多層反射膜付き基板20の保護膜22及び多層反射膜21に対して、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の外側4箇所に、上記欠陥の位置を座標管理するための基準マークを集束イオンビームにより形成した。
<EUV露光用反射型マスクブランクの作製>
上述した多層反射膜付き基板20の多層反射膜21を形成していない裏面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、裏面導電膜23を形成した。当該裏面導電膜23は、Crターゲットを多層反射膜付き基板20の裏面に対向させ、Ar+N2ガス(Ar:N2=90%:10%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法により裏面導電膜23の元素組成を測定したところ、Cr:90原子%、N:10原子%であった。また、裏面導電膜23の膜厚は20nmであった。
さらに、上述した多層反射膜付き基板20の保護膜22の表面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaBN膜からなる吸収体膜24を成膜し、反射型マスクブランク30を作製した。当該吸収体膜24は、TaBターゲット(Ta:B=80:20)に多層反射膜付き基板20の吸収体膜24を対向させ、Xe+N2ガス(Xe:N2=90%:10%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法により吸収体膜24の元素組成を測定したところ、Ta:80原子%、B:10原子%、N:10原子%であった。また、吸収体膜24の膜厚は65nmであった。尚、吸収体膜24の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
上述した吸収体膜24の表面に、スピンコート法によりレジストを塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚150nmのレジスト膜25を成膜した。次いで、所望のパターンの描画及び現像工程を経て、レジストパターン形成した。当該レジストパターンをマスクにして、Cl2+Heガスのドライエッチングにより、吸収体膜24であるTaBN膜のパターニングを行い、保護膜22上に吸収体パターン27を形成した。その後、レジスト膜25を除去し、上記と同様の薬液洗浄を行い、反射型マスク40を作製した。尚、上述の描画工程においては、上記基準マークを元に作成された欠陥データに基づいて、欠陥データと被転写パターン(回路パターン)データとを元に、致命欠陥が存在している箇所に吸収体パターン27が配置されるように描画データを補正して、反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
[実施例2]
<マスクブランク用基板の作製>
実施例1と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備し、実施例1と同様に、ガラス基板の表裏面について、両面研磨装置による研磨から磁気粘弾性流体研磨加工法による局所表面加工処理までの工程を行った。
その後、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、ガラス基板の表裏面に非接触研磨を実施した。本実施例2では、非接触研磨としてEEM(Elastic Emission Machining)を行った。このEEMは、以下の加工条件で行った。
加工液(1段階目):アルカリ水溶液(NaOH)+微細粒子(濃度:5wt%)
加工液(2段階目):純水
微細粉末粒子:コロイダルシリカ、平均粒径:約100nm
回転体:ポリウレタンロール
回転体回転数:10〜300rpm
ワークホルダ回転数:10〜100rpm
研磨時間:5〜30分
本実施例2により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.10nm、最大高さ(Rmax)は0.92nmであった。また、得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を、図7のグラフ中の短い濃い点線「実施例2」で示す。
同図において、本実施例2のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.388nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.499nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.499−0.388)=364(%/nm)であった。したがって、本実施例2のマスクブランク用基板10の主表面は、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmを充足している。
また、図示しないが、実施例1と同様にベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図において、本実施例2のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さと、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さを求めたところ、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.44nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.46nmであった。したがって、本実施例2のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも小さいという条件を充足していた。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例2のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計29,129個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計29,129個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、最高の検査感度条件で、本実施例2のEUV露光用のマスクブランク用基板の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.143nm、最大粗さ(Rmax)は1.50nmであった。
本実施例2の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.612nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.785nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.785−0.612)=231(%/nm)であった。したがって、本実施例2の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例2の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計30,011個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例2の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
[参考例1]
<マスクブランク用基板の作製>
本参考例1では、実施例1及び2と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備し、実施例2とほぼ同様の工程を経て、EUV露光用のマスクブランク用基板10を作製した。但し、本参考例1では、実施例2の局所表面加工処理の仕上げ研磨において、加工液に純水を用いた2段階目のEEM加工を省略した。これ以外は実施例2と同様にしてマスクブランク用基板10を作製した。
本参考例1により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.11nm、最大高さ(Rmax)は0.98nmであった。また、得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を、図7のグラフ中の長い濃い点線「参考例1」で示す。
同図において、本参考例1のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.480nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.589nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.589−0.480)=367(%/nm)であった。したがって、本参考例1のマスクブランク用基板10の主表面は、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmを充足している。
また、図示しないが、実施例1と同様にベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図において、本参考例1のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さと、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さを求めたところ、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.53nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.49nmであった。したがって、本参考例1のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも小さいという条件は充足していなかった。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本参考例1のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計36,469個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計36,469個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、最高の検査感度条件で、本参考例1のEUV露光用のマスクブランク用基板の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.146nm、最大粗さ(Rmax)は1.50nmであった。
本参考例1の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.648nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.821nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.821−0.648)=231(%/nm)であった。したがって、本参考例1の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本参考例1の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計38,856個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本参考例1の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
上述の実施例1、2、参考例1のマスクブランク用基板主表面の欠陥検出個数に対する多層反射膜付き基板の保護膜表面の欠陥検出個数の増加を調べたところ、実施例1は343個増加、実施例2は882個増加、参考例1は2387個増加している結果となった。これは、実施例1、2のマスクブランク用基板主表面を構成する凹凸において、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となっているので、基板主表面上に多層反射膜や保護膜を積層した場合に、基板主表面に存在する欠陥サイズが小さくなる傾向となるので、欠陥数の増加は抑えられたものと考える。一方、参考例1のマスクブランク用基板主表面は、その主表面を構成する凹凸において、基準面に対して凹部よりも凸部を構成する割合が多い表面形態となっているので、基板主表面上に多層反射膜や保護膜を積層した場合に、基板主表面に存在する欠陥サイズが大きくなる傾向となるので、欠陥数の増加が多くなったと考える。
上述の結果から、EUV露光用の反射型マスクブランクに使用する基板としては、実施例1、2が最適な基板と言える。
尚、実施例2、参考例1における局所表面加工処理の仕上げ研磨としての非接触研磨は、上述したEEMに限定されるものではない。例えば、フロートポリッシュ又は触媒基準エッチング法(Catalyst Referred Etching)を適用することができる。マスクブランク用基板主表面を構成する凹凸において、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態を得るには、ガラス基板の主表面の最終仕上げ研磨は、水ないし純水を使用した非接触研磨が好ましい。
[比較例1]
<マスクブランク用基板の作製>
比較例1では、実施例2と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備した。
そして、比較例1では、実施例2と異なり、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、pH:0.5〜4の酸性に調整したコロイダルシリカ(平均粒径50nm、濃度5wt%)を含む研磨スラリーを使用した片面研磨装置による超精密研磨を行った後、濃度0.1wt%の水酸化ナトリウム(NaOH)を用いた洗浄を、洗浄時間200秒間行った。
比較例1により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.11nm、最大高さ(Rmax)は1.18nmであった。また、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を、図7及び図9(a)のグラフ中の薄い実線「比較例1」で示す。
これら図面において、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.520nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.652nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.652−0.520)=303(%/nm)であった。したがって、比較例1のTaBN膜表面の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)を充足していない。
ここで、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られたベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図を、図9(b)のグラフに示す。グラフの縦軸は頻度(%)、横軸はベアリング深さ(nm)である。
同図(b)の度数分布図において、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面における測定領域内の凹凸のうち、最も高い頻度(最高頻度)fmaxの値は、頻度(Hist.)0.809%でそれに対応するベアリング深さ(Depth)は0.58nmであった。これに基づいて、1/2fmax(0.5fmax)に対応する2つのベアリング深さ(BD3、BD4)を特定し、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さ(BDm)を求めた。この半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さ(BDm)を図中の一点鎖線で示す。また、比較例1の最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応する
ベアリング深さ(1/2Rmax=0.5Rmax)を図中の点線で示す。これら一点鎖線と点線とを比較すると、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さ(BDm)が、1/2Rmaxに対応するベアリング深さよりも図中右側に位置している。より具体的には、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.56nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.59nmであった。したがって、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも大きい。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例1のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.165nm、最大高さ(Rmax)は1.61nmであった。
比較例1の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.703nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.878nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.878−0.703)=229(%/nm)であった。したがって、比較例1の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足していない。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例1の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
また、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例1の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果も同様であり、欠陥検出個数の合計は、100,000個を超え、致命欠陥の有無を検査することができなかった。上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は数十個確認されたが、欠陥修正装置により欠陥修正を行い、反射型マスクを得た。
[比較例2]
比較例2では、実施例2と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備した。
そして、比較例2では、実施例2と異なり、局所表面加工の仕上げ研磨として、pH:10のアルカリ性に調整したコロイダルシリカ(平均粒径50nmm、濃度5wt%)を含む研磨スラリーを使用した片面研磨装置による超精密研磨を行った後、濃度0.2wt%のフッ酸(HF)を用いた洗浄、洗浄時間428秒間行った。
比較例2により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.15nm、最大高さ(Rmax)は1.18nmであった。また、比較例2のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を、図7のグラフ中の薄い短い点線「比較例2」で示す。
同図において、比較例2のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.755nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.900nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.901−0.756)=276(%/nm)であった。したがって、比較例1のTaBN膜表面の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)を充足していない。
また、図示しないが、比較例1と同様にベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図において、本比較例2のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さと、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さを求めたところ、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.74nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.59nmであった。したがって、本比較例2のマスクブランク用基板10の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも大きい。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例2のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.173nm、最大高さ(Rmax)は1.56nmであった。
比較例2の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.725nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.903nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.903−0.725)=225(%/nm)であった。したがって、比較例1の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足していない。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例2の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計100,000個を超え、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
また、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、比較例2の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果も同様であり、欠陥検出個数の合計は、100,000個を超え、致命欠陥の有無を検査することができなかった。上述の比較例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は数十個確認されたが、欠陥修正装置により欠陥修正を行い、反射型マスクを得た。
[実施例4]
次に、本発明に係るArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板、透過型マスクブランク、透過型マスクに関する実施例4について説明する。
<マスクブランク用基板>
実施例4では、実施例1及び2、参考例1と同寸法の合成石英ガラス基板を使用した。これ以外は、上述した実施例2の<マスクブランク用基板の作製>と同様の工程を経て、ArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10を作製した。
本実施例4により得られたArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.11nm、最大高さ(Rmax)は0.98nmであった。また、得られたArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を、図7のグラフ中の細い点線「実施例4」で示す。
同図において、本実施例4のArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.389nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.500nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.500−0.389)=360(%/nm)であった。したがって、本実施例4のマスクブランク用基板10の主表面は、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧350(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.2nmを充足している。
また、図示しないが、実施例1と同様にベアリング深さと、その頻度との関係をプロットした度数分布図において、本実施例のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さと、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さを求めたところ、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.44nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.49nmであった。したがって、本実施例4のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも小さいという条件を充足していた。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例4のArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計31,056個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計31,056個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
<透過型マスクブランクの作製>
上述したArFエキシマレーザー露光用のマスクブランク用基板10を、DCマグネトロンスパッタ装置に導入し、その主表面にTaO層を成膜した。DCマグネトロンスパッタ装置内に、Xe+N2の混合ガスを導入し、Taターゲットを用いたスパッタリング法を行った。これにより、当該マスクブランク用基板10の主表面に、膜厚44.9nmのTaN層を成膜した。
次いで、DCマグネトロンスパッタ装置内のガスを、Ar+O2の混合ガスに入れ替えて、再びTaターゲットを用いたスパッタリング法を行った。これにより、TaN層の表面に、膜厚13nmのTaO層を成膜し、マスクブランク用基板10上に2層からなる遮光性膜51を形成した透過型マスクブランク(バイナリー型マスクブランク)を得た。
尚、遮光性膜51の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、本実施例4のマスクブランク用基板10上の遮光性膜51における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計32,021個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計32,021個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
<透過型マスクの作製>
上述した遮光性膜51の表面に、スピンコート法によりレジストを塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚150nmのレジスト膜25を成膜した。次いで、所望のパターンの描画及び現像工程を経て、レジストパターン形成した。当該レジストパターンをマスクにして、フッ素系(CHF3)ガスを用いたドライエッチングを行い、TaO層をパターニングした後、続いて、塩素系(Cl2)ガスのドライエッチングにより、TaN層のパターニングを行い、マスクブランク用基板10上に遮光性膜パターン61を形成した。その後、レジスト膜25を除去し、上記と同様の薬液洗浄を行い、透過型マスク60を作製した。得られた透過型マスク60について、高感度欠陥検査装置((KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
[実施例5]
実施例1と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10として、大きさが152.4mm×152.4mm、厚さが6.35mmのSiO2−TiO2系のガラス基板を準備し、実施例1と同様に、ガラス基板の表裏面について、両面研磨装置による研磨から磁気粘弾性流体研磨加工法による局所表面加工処理までの工程を行った。
その後、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、表面粗さ改善を目的として、コロイダルシリカ砥粒を用いた両面タッチ研磨を行った後、触媒基準エッチング法(CARE:Catalyst Referred Etching)による表面加工を行った。このCAREは、以下の加工条件で行った。
加工液:純水
触媒:白金
基板回転数:10.3回転/分
触媒定盤回転数:10回転/分
加工時間:50分
加工圧:250hPa
その後、ガラス基板の端面をスクラブ洗浄した後、当該基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分浸漬させ、その後、純水によるリンス、乾燥を行った。尚、王水による洗浄は、ガラス基板の表裏面に触媒である白金の残留物がなくなるまで、複数回行った。
本実施例5により得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.040nm、最大高さ(Rmax)は、0.40nmであった。
また、本実施例5のマスクブランク用基板10の主表面のベアリングカーブ測定結果を図10(a)に示す。
この図面において、本実施例5のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.135nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.177nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.177−0.135)=952(%/nm)であった。したがって、本実施例5のマスクブランク用基板10の主表面は、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
また、図10(b)の度数分布図において、本実施例5のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さと、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さを求めたところ、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さは0.157nm、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さは0.20nmであった。したがって、本実施例5のマスクブランク用基板の主表面は、半値幅FWHMの中心に対応するベアリング深さの絶対値が、最大高さ(Rmax)の1/2(半分)に対応するベアリング深さよりも小さいという条件を充足していた。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例5のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計370個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計370個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
<多層反射膜付き基板の作製>
上述したEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面に、実施例1と同様のSi膜とMo膜とを交互に積層した膜厚280nmの多層反射膜21を形成し、その表面に膜厚2.5nmのRuからなる保護膜22を成膜した。尚、多層反射膜21のイオンビームスパッタリング条件は、実施例1と同様とした。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.135nm、最大粗さ(Rmax)は1.27nmであった。
本実施例5の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.575nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.733nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.733−0.575)=253(%/nm)であった。したがって、本実施例5の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例5の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計13,512個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例5の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
[実施例6]
<多層反射膜付き基板の作製>
上述の実施例5において、多層反射膜21の成膜条件を、基板主表面の法線に対して、Si膜のスパッタ粒子の入射角度が30度、Mo膜のスパッタ粒子の入射角度が30度となるようにイオンビームスパッタリング法により成膜した以外は、実施例5と同様に、多層反射膜付き基板を作製した。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.116nm、最大粗さ(Rmax)は1.15nmであった。
本実施例6の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.622nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.753nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.753−0.622)=305(%/nm)であった。したがって、本実施例4の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例6の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計4,768個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例6の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
[実施例7]
上述の比較例1におけるEUV露光用のマスクブランク用基板に対して、上述の実施例6の成膜条件(基板主表面の法線に対して、Si膜のスパッタ粒子の入射角度が30度、Mo膜のスパッタ粒子の入射角度が30度により多層反射膜21、および保護膜22を形成して多層反射膜付き基板を作製した。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、その表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.122nm、最大粗さ(Rmax)は1.32nmであった。
本実施例7の保護膜表面における1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した結果、ベアリングエリア30%(BA30)に対応するベアリング深さBD30は、0.820nmであった。また、ベアリングエリア70%(BA70)に対応するベアリング深さBD70は、0.967nmであった。この値を(BA70−BA30)/(BD70−BD30)に代入すると、(70−30)/(0.967−0.820)=272(%/nm)であった。したがって、本実施例7の多層反射膜付き基板の表面粗さは、(BA70−BA30)/(BD70−BD30)≧230(%/nm)かつ最大高さ(Rmax)≦1.5nmを充足している。
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件で、本実施例7の多層反射膜付き基板20の保護膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計10,218個であり、従来の欠陥検出個数100,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。また、EUV光に対する反射率を測定したところ、65%と良好な結果が得られた。
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)、及び検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置を使用して、本実施例7の多層反射膜表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも100,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。尚、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)では最高の検査感度条件で、検査光源波長13.5nmの高感度欠陥検査装置では、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で20nm以下の欠陥を検出できる検査感度条件にて欠陥検査を行った。
さらに、上述の実施例1と同様にして反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を作製した。得られた反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron600シリーズ」)を使用して欠陥検査を行ったところ、欠陥は確認されなかった。
<半導体装置の製造方法>
次に、上述の実施例1、2、4〜7、参考例1、比較例1〜2の反射型マスク、透過型マスクを使用し、露光装置を使用して、半導体基板である被転写体上のレジスト膜にパターン転写を行い、その後、配線層をパターニングして、半導体装置を作製した。その結果、実施例1、2、4〜7、参考例1の反射型マスク及び透過型マスクを使用した場合には、パターン欠陥はなく、半導体装置を作製することができたが、比較例1〜2の反射型マスクを使用した場合には、パターン欠陥が発生し、半導体装置の不良が発生した。これは、マスクブランク用基板、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、及び反射型マスクにおける欠陥検査において、致命欠陥が疑似欠陥に埋もれて検出できなかったことにより、適正な描画補正、マスク修正が行われなかったことにより、反射型マスクに致命欠陥が存在したことによるものであった。
尚、上述の多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30の作製において、マスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面上に、多層反射膜21及び保護膜22を成膜した後、上記主表面とは反対側の裏面に裏面導電膜23を形成したがこれに限らない。マスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面とは反対側の主表面に裏面導電膜23を形成した後、転写パターンが形成される側の主表面上に、多層反射膜21や、さらに保護膜22を成膜して多層反射膜付き基板20、さらに保護膜22上に吸収体膜24を成膜して反射型マスクブランク30を作製しても構わない。
また、上述の実施例及び参考例では、度数分布図において、プロットした点における最高頻度fmaxの値から、半値幅の中心に対応するベアリング深さBDM、BDmを求めたが、これに限らない。度数分布図によりプロットした点より求めた近似曲線から、最高頻度fmaxを求め、半値幅の中心に対応するベアリング深さを求めても構わない。
10 マスクブランク用基板
20 多層反射膜付き基板
21 多層反射膜
22 保護膜
23 裏面導電膜
24 吸収体膜
27 吸収体パターン
30 反射型マスクブランク
40 反射型マスク
50 透過型マスクブランク
51 遮光性膜
60 透過型マスク