JP2018115701A - 車両用駆動装置 - Google Patents

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雅章 江口
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雅章 江口
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Abstract

【課題】 独立した二つの電動モータ2L、2Rからの駆動トルクを、左右の駆動輪にトルク差を増幅して伝達する歯車装置30を備える車両用駆動装置において、歯車装置30の構成部材である第1結合部材31の軸端部から軸心に設けた油路81内に流入した潤滑油を低速運転時や始動開始時においても径方向の給油孔82、83に辿り着かせ易くする。【解決手段】 歯車装置30の第1結合部材31に軸端面から軸方向に延びる油路81と径方向の給油孔82、83を設け、油路81の内面に、潤滑油の保持溝84を設け、低速運転時や始動開始時に、油路81の内面の保持溝84に溜まった潤滑油を給油孔82、83に供給されるようにした。【選択図】 図2

Description

この発明は、独立した二つの駆動源からの駆動トルクを、左右の駆動輪にトルク差を増幅して伝達することができる車両用駆動装置に関するものである。
特許文献1及び特許文献2には、二つの駆動源と左右の駆動輪との間に、3要素2自由度の遊星歯車装置を同軸上に二つ組み合わせた歯車装置を備え、二つの駆動源から与えられるトルクの差を増大して左右の駆動輪に与えることができる車両用駆動装置が開示されている。
本願の出願人は、特許文献1と特許文献2におけるトルク差を増大する歯車装置よりも小型、軽量化を図った車両用駆動装置を、既に特許出願を行っている(特願2016−023529号)。
この本願の出願人が特許出願している車両用駆動装置(先願例1)は、図12及び図13に示す構成である。
先願例1の車両用駆動装置200における歯車装置300を構成する遊星歯車装置210L、210Rは、それぞれ内歯車RL、RRと、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた遊星キャリヤCL、CRと、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた太陽歯車SL、SRと、公転歯車としての複数の遊星歯車PL、PRとを有する。
歯車装置300は、一方の遊星キャリヤCLと他方の太陽歯車SRとを結合する第1結合部材211と、一方の太陽歯車SLと他方の遊星キャリヤCRとを結合する第2結合部材212を有し、第1結合部材211と第2結合部材212が同軸上に配置されると共に、第1結合部材211および第2結合部材212のうち、第2結合部材212が中空軸、第1結合部材211が中空軸の第2結合部材212に挿通される軸を有し、2つの遊星歯車装置210L、210Rの間を通る軸が二重構造となる構成であって、遊星歯車装置210L、210Rの内歯車RL、RRと減速機の入力歯車213とを、内歯車RL、RRに設けた外歯車217に係合して連結する構造である。
この先願例1の車両用駆動装置200は、左右輪を駆動する駆動モータ101L、101Rのトルク差を増大して車輪に出力することができる。
即ち、駆動モータ101L、101Rの駆動力は、3軸2段減速機の減速ギヤ列で伝達され、2軸目に位置する2個の遊星歯車装置210L、210Rを同軸で結合した歯車装置300により、入力トルクの差が増大され左右輪に出力される。
そして、車輪の回転速度に差がない場合には、歯車装置300の2個の遊星歯車装置210L、210Rの内部(太陽歯車SL、SR、遊星歯車PL、PR)は相対回転せず、遊星歯車装置210L、210Rが一体となり回転する。車輪の回転速度に差がある場合には、歯車装置300の2個の遊星歯車装置210L、210Rの内部が回転し、太陽歯車SL、SR、内歯車RL、RRは相対回転し、遊星歯車PL、PRが自転・公転する。
特開2015−21594号公報 特許第4907390号公報
ところで、歯車装置300は、減速機ハウジング102に対して、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた遊星キャリヤCL、CRの両端部で、転がり軸受104、105によって支持されている。
即ち、遊星キャリヤCL、CRの両端部は、減速機ハウジング102の側面壁102aと中央壁102bに設けた軸受穴103a、103bに転がり軸受104、105を介して支持されている。
そして、先願例1の車両用駆動装置200に使用される遊星歯車装置210L、210Rにおいては、歯車歯面や転がり軸受104、105の潤滑のために、遊星歯車装置210L、210Rの歯車の一部や遊星キャリヤCL、CRの両端を支持する転がり軸受104、105の軌道面の一部が減速機ハウジング102の下部に溜められた潤滑油に浸かるよう油面高さが設定され、油浴潤滑や歯車の回転による跳ね掛け潤滑が行われている。
歯車の回転で掻き上げられ飛散した潤滑油は、減速機ハウジング9の内壁に付着し、減速機ハウジング102の内壁に設けられたリブ(図示省略)に沿って流れ落ち、遊星歯車装置210L、210Rの遊星キャリヤCL、CRのアウトボード側のキャリヤフランジの中空軸部216を支持する転がり軸受105を通って、中空軸部216内に潤滑油が流入する。
中空軸部216内に挿通された第1結合部材211には、一方の軸端部から軸方向に貫通又は非貫通状態の油路214と、その奥に潤滑油を排出する給油孔215が設けられている。
中空軸部216内に流入した潤滑油は、第1結合部材211の軸端部の油路214から給油孔215に到達し、軸受や歯車といった潤滑油を要する機械要素へと供給される。
このような軸端部の油路214から給油孔215への給油においては、圧送などの強制的な送油手段はなく、軸端部の油路214の入り口に辿り着いた潤滑油が油路214内に自然と流れ込む仕組みとなっている。
ところが、前記のように、歯車により減速機ハウジング102の下部に溜まった潤滑油を掻き上げる場合、潤滑油の軸端部への供給量は歯車の回転速度に依存する。歯車の回転が低速のとき、掻き上げられる油量は減少し、場合によっては軸端部の油路214への油供給が滞ることとなる。軸端部の油路214への油供給が滞ると、油路214に入った潤滑油の一部が逆流したり、排出されるまで時間が掛かるなどして、給油孔215から排出される潤滑油が減少するおそれがある。
このため、車両用駆動装置200の停止からしばらく経って再始動する際、軸受や歯車はセミドライ状態で動作するが、歯車が低速回転のままであり油孔215からの給油が滞る状態が続くと接触面の油膜が消失し、その面に損傷が蓄積されて破損する可能性が高まってしまう。
そこで、この発明は、低速運転時や始動開始時に、油孔からの給油が滞り難くすることを課題とするものである。
前記の課題を解決するために、この発明は、車両に搭載され車輪を駆動する独立して制御可能な二つの電動モータと、二つの電動モータと二つの出力部との間に設けられ、二つの電動モータからのトルクを二つの出力部に分配する歯車装置と、二つの電動モータのトルクを二つの出力部に伝達する減速機とを備える車両用駆動装置において、減速機は、電動モータに連結し、入力歯車を有する入力歯車軸と、出力部に連結し、出力歯車を有する出力歯車軸と、歯車の噛合いにより入力歯車軸から出力歯車軸の間のトルク伝達を行う中間歯車軸が少なくとも1つ以上備え、歯車装置は、同軸に設けられた左右の1対の中間歯車軸と同軸上に二つ組み合わせた3要素2自由度の遊星歯車装置からなり、この遊星歯車装置は、内歯車と、内歯車と同軸上に設けられた遊星キャリヤと、内歯車と同軸上に設けられた太陽歯車と、公転歯車としての複数の遊星歯車とを備え、二つの遊星歯車装置の一方の遊星キャリヤと他方の太陽歯車とを結合する第1結合部材と、一方の太陽歯車と他方の遊星キャリヤとを結合する第2結合部材とを有し、第2結合部材は中空軸であり、第1結合部材は第2結合部材に内包され、第1結合部材と第2結合部材で二重軸となり、歯車装置の二つの遊星歯車装置の遊星キャリヤは、それぞれが両端を転がり軸受を介して減速機ハウジングに支持され、減速機の潤滑機構として、減速機ハウジング下部に溜まった潤滑油を歯車の回転により飛散させて潤滑する跳ね掛け潤滑があり、第1結合部材に軸端面から軸方向に延びる油路と径方向の給油孔を設け、前記軸方向の油路の内面に、潤滑油の保持溝を設けたことを特徴とする。
前記油路内面の保持溝を、軸端部から径方向の給油孔に向かって延びる螺旋溝とし、この螺旋溝が軸端部から見て車両が前進する方向の回転方向と同じ方向のねじれ方向を持つようにすることが好ましい。
前記螺旋溝を多条に形成し、この多条の螺旋溝が共通の径方向の給油孔に連通するようにしてもよい。
前記潤滑油の保持溝は、軸の両端部から互いに逆のねじれ方向を持つ螺旋溝にしてもよい。
以上のように、この発明によれば、第1結合部材の軸端面から軸方向に延びる油路の内面に、潤滑油の保持溝を設けることにより、低速運転時や始動開始時においても、遊星歯車装置を構成する軸受や歯車といった潤滑油を要する機械要素に給油孔からの給油が少量であっても滞りなく行える。
即ち、トルク差増幅機構が回転しているとき、第1結合部材もまた回転している。回転速度が小さいとき、保持溝に流れ込んだ潤滑油は自重で保持溝の最下部へと溜まろうとする。そして、回転に伴って保持溝内から流れ出て、油路に設けた径方向の給油孔から排出され、その先にある軸受や歯車へと供給される。
また、停車時から再始動するときも、停車時に油路内の保持溝に潤滑油が溜まっているので、この保持溝に溜まった潤滑油が少量であっても径方向の給油孔から排出され、軸受や歯車のドライ状態での動作を回避することができる。
特に、油路内の保持溝を螺旋状に形成した場合、軸が回転することにより、螺旋状の保持溝によって軸端部から奥の径方向の給油孔へと掻き押される力が加わる。これにより、低速回転であっても油路の潤滑油は逆流することなく給油孔から排出される。
それぞれの螺旋状の保持溝のねじれ方向を、軸端部から見た車両の前進方向のねじれ方向を一致させると、即ち、互いに逆ねじれの関係とすることにより、両軸端から延びる螺旋状の保持溝によってより効率的に潤滑油を給油孔から排出させることができる。
以上のように、第1結合部材の軸心に設けた油路内の潤滑油が少量であっても、油路奥の径方向の給油孔から排出させることができるので、軸心給油を実現するためのオイルポンプが不要で、遊星歯車装置を構成する軸受や歯車といった潤滑油を要する機械要素に軸心の油路からの給油を滞りなく行える。
この発明の車両用駆動装置の第1の実施形態を示す横断平面図である。 図1の第1の実施形態の歯車装置部分の拡大図である。 この発明の車両用駆動装置の第2の実施形態を示す横断平面図である。 図3の第2の実施形態の歯車装置部分の拡大図である。 この発明の車両用駆動装置の第3の実施形態を示す横断平面図である。 図5の第3の実施形態の歯車装置部分の拡大図である。 この発明の車両用駆動装置の第4の実施形態を示す横断平面図である。 図7の第4の実施形態の歯車装置部分の拡大図である。 図1の第1の実施形態の減速機ハウジング内の潤滑油の油面高さを示す断面図である。 図1の第1の実施形態に係る車両用駆動装置の歯車構成をスケルトン図で示した電気自動車の説明図である。 図1の実施形態に係る車両用駆動装置に組み込まれた歯車装置によるトルク差増幅率を説明するための速度線図である。 先願例1に係る車両用駆動装置を示す横断平面図である。 図12の車両用駆動装置の歯車装置部分の拡大図である。
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図10に示す電気自動車AMは、後輪駆動方式であり、シャーシ60と、後輪としての駆動輪61L、61Rと、前輪62L、62Rと、この発明に係る2モータ式の車両用駆動装置1、バッテリ63、インバータ64等を備える。図10では、車両用駆動装置1の歯車構成をスケルトン図で示している。
図1に示す車両用駆動装置1は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源としての電動モータ2L、2Rと、左右の駆動輪61L、61Rと二つの電動モータ2L、2Rとの間に設けられる左右2基の減速機3L、3Rとを備える。
2モータ式の車両用駆動装置1の駆動トルクは、等速ジョイント65a、65bと中間シャフト65cからなるドライブシャフトを介して左右の駆動輪61L、61Rに伝達される。
なお、2モータ式の車両用駆動装置1の搭載形態としては、図10に示す後輪駆動方式の他、前輪駆動方式、四輪駆動方式でもよい。
2モータ式の車両用駆動装置1における左右の電動モータ2L、2Rは、同一の最大出力を有する同一規格の電動モータが用いられ、図1に示すように、モータハウジング4L、4R内に収容されている。
モータハウジング4L、4Rは、円筒形のモータハウジング本体4aL、4aRと、このモータハウジング本体4aL、4aRの外側面を閉塞する外側壁4bL、4bRと、モータハウジング本体4aL、4aRの内側面に減速機3L、3Rと隔てる内側壁4cL、4cRとからなる。モータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRには、モータ軸5aを引き出す開口部が設けられている。
電動モータ2L、2Rは、図1に示すように、モータハウジング本体4aL、4aRの内周面にステータ6を設け、このステータ6の内周に間隔をおいてロータ5を設けたラジアルギャップタイプのものを使用している。なお、電動モータ2L、2Rは、アキシャルギャップタイプのものを使用してもよい。
ロータ5は、モータ軸5aを中心部に有し、そのモータ軸5aはモータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRの開口部からそれぞれ減速機3L、3R側に引き出されている。モータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRの開口部とモータ軸5aとの間にはシール部材7が設けられている。
モータ軸5aは、モータハウジング4L、4Rの内側壁4cL、4cRと外側壁4bL、4bRとに転がり軸受8a、8bによって回転自在に支持されている(図1)。
左右並列に設けられた2基の減速機3L、3Rを収容する減速機ハウジング9は、アウトボード側(車体外側)の端面が、電動モータ2L、2Rのモータハウジング4L、4Rの内側壁4cL、4cRに複数のボルト(図示省略)によって固定されている(図1)。
減速機ハウジング9には、図1に示すように、中央に仕切り壁11が設けられている。減速機ハウジング9は、この仕切り壁11によって左右に2分割され、2基の減速機3L、3Rを収容する左右の収容室が並列に設けられている。
減速機3L、3Rは、図1に示すように、概ね左右対称形に設けられ、モータ軸5aから駆動力が伝達され入力歯車12aを有する入力歯車軸12L、12Rと、この入力歯車12aに噛み合う入力側大径歯車13aと出力歯車14aに噛み合う出力側小径歯車13bを有する中間歯車軸13L、13Rと、出力歯車14aを有し、等速ジョイント65a、65b(図10)、中間シャフト65c(図10)を介して駆動輪61L、61R(図10)にトルクを伝達する出力歯車軸14L、14Rとを備える平行軸歯車減速機である。左右2基の減速機3L、3Rの各入力歯車軸12L、12R、中間歯車軸13L、13R、出力歯車軸14L、14Rは、それぞれ同軸上に配置されている。
減速機3L、3Rの入力歯車軸12L、12Rの両端は、減速機ハウジング9の仕切り壁11の左右両面に形成した軸受嵌合穴16aとモータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRに形成した軸受嵌合穴16bに転がり軸受17a、17bを介して回転自在に支持されている。図1では、転がり軸受17a、17bは同一のものとしているが、異なるサイズのものを組み合わせてもよい。
入力歯車軸12L、12Rは中空構造であり、この中空の入力歯車軸12L、12Rに、モータ軸5aの端部が挿入されている。入力歯車軸12L、12Rとモータ軸5aとは、スプライン(セレーションも含む、以下同じ)結合されている。
中間歯車軸13L、13Rは、少なくとも一組以上配置されており、図1に示す実施形態では、一対の中間歯車軸13L、13Rを有する。
中間歯車軸13L、13Rは、外周面に入力歯車12aに噛み合う入力側大径歯車13aと出力歯車14aに噛み合う出力側小径歯車13bを有する段付きの歯車軸を構成している。この中間歯車軸13L、13Rの両端は、減速機ハウジング9の仕切り壁11の両面に形成した軸受嵌合穴19aと減速機ハウジング9の側面壁9aに形成した軸受嵌合穴19bとに転がり軸受20a、20bを介して支持されている。図1では、転がり軸受20a、20bは同一サイズのものとしているが、異なるサイズのものを組み合わせてもよい。
同軸上に配置された中間歯車軸13L、13Rには、この中間歯車軸13L、13Rと同軸上に、二つの電動モータ2L、2Rから与えられるトルクの差を左右の駆動輪61L、61Rに増幅して分配する歯車装置30が組み込まれている。
歯車装置30は、同軸に配された左右1対の中間歯車軸13L、13Rと同軸上に二つ組み合わせた3要素2自由度の遊星歯車装置39L、39Rからなる。
車両用駆動装置1における歯車装置30を構成する遊星歯車装置39L、39Rは、それぞれ内歯車RL、RRと、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた遊星キャリヤCL、CRと、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた太陽歯車SL、SRと、公転歯車としての複数の遊星歯車PL、PRとを有する。ここで、太陽歯車SL、SRと遊星歯車PL、PRは外周にギヤ歯を有する外歯歯車であり、内歯車RL、RRは内周にギヤ歯を有する内歯歯車である。遊星歯車PL、PRは太陽歯車SL、SRと内歯車RL、RRとに噛み合っている。
歯車装置30は、一方の遊星キャリヤCLと他方の太陽歯車SRとを結合する第1結合部材31と、一方の太陽歯車SLと他方の遊星キャリヤCRとを結合する第2結合部材32を有し、第1結合部材31と第2結合部材32が同軸上に配置されると共に、第1結合部材31および第2結合部材32のうち、第2結合部材32が中空軸、第1結合部材31が中空軸に挿通される軸を有し、2つの遊星歯車装置39L、39Rの間を通る軸が二重構造となる構成であって、遊星歯車装置39L、39Rの内歯車RL、RRと減速機3L、3Rの入力歯車12aとを、内歯車RL、RRに連結した入力側大径歯車13aに係合して連結する構造である。
この車両用駆動装置1は、左右輪を駆動する電動モータ2L、2Rのトルク差を増大して車輪に出力することができる。
即ち、電動モータ2L、2Rの駆動力は、3軸2段減速機の減速ギヤ列で伝達され、2軸目に位置する2個の遊星歯車装置39L、39Rを同軸で結合した歯車装置30により、入力トルクの差が増大され左右輪に出力される。
そして、車輪の回転速度に差がない場合には、歯車装置30の2個の遊星歯車装置39L、39Rの内部(太陽歯車SL、SR、遊星歯車PL、PR)は相対回転せず、遊星歯車装置39L、39Rが一体となり回転する。車輪の回転速度に差が有る場合には、歯車装置30の2個の遊星歯車装置39L、39Rの内部が回転し、太陽歯車SL、SR、内歯車RL、RRは相対回転し、遊星歯車PL、PRが自転・公転する。
図1及び図2に示す実施形態の2モータ式の車両用駆動装置1の歯車構成は、図10に示すスケルトン図の通りである。
図10に示すように、左右の電動モータ2L及び電動モータ2Rは、車両に搭載されたバッテリ63からインバータ64を介して与えられた電力により動作する。そして、電動モータ2L、2Rは、電子制御装置(図示省略)により個別に制御され、異なるトルクを発生させて出力することができる。
電動モータ2L、2Rのモータ軸5a(図1)のトルクは、減速機3L、3Rの入力歯車軸12L、12Rの入力歯車12aと中間歯車軸13L、13Rの入力側大径歯車13aとの歯数比で増大されて歯車装置30の内歯車RL、RRに伝達される。
そして、歯車装置30を介して中間歯車軸13L、13Rの出力側小径歯車13bが出力歯車軸14L、14Rの大径の出力歯車14aに噛み合って出力側小径歯車13bと出力歯車14aとの歯数比で電動モータ2L、2Rのモータ軸5a(図1)のトルクがさらに増大されて、駆動輪61L、61Rに出力される。
歯車装置30は、3要素2自由度の同一の遊星歯車装置39L、39Rが同軸上の中間歯車軸13L、13Rに二つ組み合わされて構成され、遊星歯車装置39L、39Rとして、シングルピニオン遊星歯車装置を採用している。
遊星歯車装置39L、39Rでは、遊星キャリヤCL、CRを固定した場合に太陽歯車SL、SRと内歯車RL、RRとが逆方向に回転するため、図11に示す速度線図に表すと内歯車RL、RR及び太陽歯車SL、SRが遊星キャリヤCL、CRに対して反対側に配置される。
この歯車装置30は、前記のように、太陽歯車SL、遊星キャリヤCL、遊星歯車PL及び内歯車RLを有する第1の遊星歯車装置39Lと、同じく太陽歯車SR、遊星キャリヤCR、遊星歯車PR及び内歯車RRを有する第2の遊星歯車装置39Rとが同軸上に組み合わされて構成されている。
そして、第1の遊星歯車装置39Lの遊星キャリヤCLと第2の遊星歯車装置39Rの太陽歯車SRとが結合されて第1結合部材31を形成し、第1の遊星歯車装置の太陽歯車SLと第2の遊星歯車装置の遊星キャリヤCRとが結合されて第2結合部材32を形成している。
第1の遊星歯車装置39Lの内歯車RLに電動モータ2Lで発生したトルクTM1は、入力歯車軸12Lの入力歯車12aと入力側大径歯車13aとが噛み合って中間歯車軸13Lに伝達され、中間歯車軸13Lに伝達されたトルクが、第1の遊星歯車装置を介して中間歯車軸13Lの出力側小径歯車13bに伝達され、中間歯車軸13Lの出力側小径歯車13bと出力歯車軸14Lの出力歯車14aとが噛み合って出力歯車軸14Lから駆動輪61Lに駆動トルクTLが出力される。
第2の遊星歯車装置39Rの内歯車RRに電動モータ2Rで発生したトルクTM2は、入力歯車軸12Rの入力歯車12aと入力側大径歯車13aとが噛み合って中間歯車軸13Rに伝達され、中間歯車軸13Rに伝達されたトルクが、第2の遊星歯車装置39Rを介して中間歯車軸13Rの出力側小径歯車13bに伝達され、中間歯車軸13Rの出力側小径歯車13bと出力歯車軸14Rの出力歯車14aとが噛み合って出力歯車軸14Rから駆動輪61Rに駆動トルクTRが出力される。
電動モータ2L、2Rからの出力は、二つの遊星歯車装置39L、39Rのそれぞれの内歯車RL、RRに与えられ、第1結合部材31、第2結合部材32からの出力が駆動輪61L、61Rに与えられる。
第2結合部材32は、中空軸で構成されており、その内部に第1結合部材31が挿通され、第1結合部材31と第2結合部材32を構成する軸は二重構造になっている。
第1結合部材31は、その一端(図中右端)が太陽歯車SRの回転軸であり、他端(図中左端)が太陽歯車SLを貫通して設けられ、遊星キャリヤCLに接続されている。また、中空軸である第2結合部材32は、一端(図中左端)が太陽歯車SLの回転軸となっており、他端(図中右端)は遊星キャリヤCRと接続されている。この第1結合部材31と第2結合部材32によって、二つの遊星歯車装置39L、39Rが結合されている。
歯車装置30は、二つの同一のシングルピニオン形式の遊星歯車装置39L、39Rを組み合わせて構成されるため、図11に示すように二本の速度線図によって表すことができる。ここでは、分かりやすいように、二本の速度線図を上下にずらし、上側に左側の遊星歯車装置39Lの速度線図を示し、下側に右側の遊星歯車装置39Rの速度線図を示す。本来は、図1の実施形態では、各電動モータ2L、2Rから出力されたトルクTM1及びTM2は、各入力歯車軸12L、12Rの入力歯車12aと噛み合う入力側大径歯車13aを介して各内歯車RL、RRに入力されるため減速比が掛かり、また、歯車装置30から取り出された駆動トルクTL、TRは、出力歯車14aと噛み合う出力側小径歯車13bを介し左右の駆動輪61L、61Rへ伝達されるため減速比が掛かるが、以降、理解を容易にするため、図11に示す速度線図及び各計算式の説明においては、減速比を省略し、各内歯車RL、RRに入力されるトルクをTM1及びTM2のまま、歯車装置30から取り出された駆動トルクはTL、TRのままとする。
歯車装置30を構成する二つの遊星歯車装置39L、39Rは、同一の歯数の歯車要素を使用しているため、図11に示す速度線図においては内歯車RLと遊星キャリヤCLとの距離及び内歯車RRと遊星キャリヤCRとの距離は等しく、これをaとする。また、太陽歯車SLと遊星キャリヤCLとの距離及び太陽歯車SRと遊星キャリヤCRとの距離も等しく、これをbとする。遊星キャリヤCL、CRから内歯車RL、RRまでの長さと遊星キャリヤCL、CRから太陽歯車SL、SRまでの長さの比は、内歯車RL、RRの歯数Zrの逆数(1/Zr)と太陽歯車SL、SRの歯数Zsの逆数(1/Zs)との比と等しい。よって、a=(1/Zr)、b=(1/Zs)と表すことができる。
Rの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記(1)式が算出される。なお、図11において、矢印方向がモーメントMの正方向である。
a・TR+(a+b)・TL−(b+2a)・TM1=0 …(1)
Lの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記(2)式が算出される。
−a・TL−(a+b)・TR+(b+2a)・TM2=0 …(2)
(1)式と(2)式の和より、下記(3)式が得られる。
−b・(TR−TL)+(2a+b)・(TM2−TM1)=0
(TR−TL)=((2a+b)/b)・(TM2−TM1) …(3)
(3)式の(2a+b)/bがトルク差増幅率αとなる。a=1/Zr、b=1/Zsを代入すると、α=(Zr+2Zs)/Zrとなり、下記のトルク差増幅率αが得られる。
α=(Zr+2Zs)/Zr
この発明では、電動モータ2L、2Rからの入力は、内歯車RL、RRとなり、駆動輪61L、61Rへの出力は太陽歯車SRと遊星キャリヤCL、太陽歯車SLと遊星キャリヤCRとなる。
そして、二つの電動モータ2L、2Rで異なるトルクTM1、TM2を発生させて入力トルク差ΔTIN(=(TM2−TM1))を与えると、歯車装置30において入力トルク差ΔTINが増幅され、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差α・ΔTINを得ることができる。すなわち、入力トルク差ΔTINが小さくても、歯車装置30において上記したトルク差増幅率α(=(Zr+2Zs)/Zr)で入力トルク差ΔTINを増幅することができ、左側の駆動輪61Lと右側の駆動輪61Rとに伝達される駆動トルクTL、TRに、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差ΔTOUT(=α・(TM2−TM1)=TR−TL)を与えることができる。
図1及び図2に示す実施形態では、内歯車RL、RRに連結する入力側大径歯車13aは、内歯車RL、RRと一体に形成しているが、別体に形成してもよい。
出力歯車軸14L、14Rは、図1に示すように、中実構造であり、この中実の出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の軸端部に、等速ジョイント65aの外輪部材の中空軸部が挿入され、等速ジョイント65aの外輪部材の中空軸部の端部内周面と出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の軸部外周面とがスプライン結合(セレーション結合を含む)されている。
次に、出力歯車軸14L、14Rに結合された等速ジョイント65aは、中間シャフト65c、等速ジョイント65aを介して駆動輪61L、61Rに接続される(図10参照)。
出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の端部とモータハウジング4L、4Rの内側壁4cL、4cRに形成した開口部との間には、シール部材55を設け、減速機3L、3Rに封入された潤滑油の漏洩を防止するとともに、外部から減速機3L、3Rの内部への埃や泥水の侵入を防止している。
出力歯車軸14L、14Rは、大径の出力歯車14aを有し、減速機ハウジング9の仕切り壁11の両面に形成した軸受嵌合穴53aとモータハウジング4L、4Rの内側壁4cL、4cRに形成した軸受嵌合穴53bに転がり軸受54a、54bによって支持されている。図1及び図2では、転がり軸受54a、54bは同一のものとしているが、異なるサイズのものを組み合わせて使用してもよい。
遊星歯車装置39L、39Rの遊星歯車PL、PRは、図2に示すように、針状ころ軸受37を介して歯車支持軸33に回転自在に支持されている。歯車支持軸33の両端は、遊星キャリヤCL、CRの一対のキャリヤフランジ34a、34bに挿通固定されている。
歯車支持軸33は、遊星歯車PL、PRを回転自在に支持する針状ころ軸受37の内輪軌道面になるため、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)のずぶ焼入れ・焼戻し、または浸炭鋼(SCM420)の浸炭焼入れ・焼戻し等の、鋼を熱処理し表面硬さを58HRC以上とし、外周表面を内輪軌道面に適した粗さに研削して仕上げている。
次に、遊星キャリヤCL、CRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aは、アウトボード側(車両の外側)に延びる中空軸部35を備えており、中空軸部35のアウトボード側の端部が、減速機ハウジング9の側面壁9aに形成した軸受嵌合穴19bに転がり軸受20bを介して支持されている。
遊星キャリヤCL、CRのインボード側(車両の内側)のキャリヤフランジ34bは、インボード側に延びる中空軸部36を有する。この中空軸部36は、減速機ハウジング9の仕切り壁11に形成した軸受嵌合穴19aに転がり軸受20aを介して支持されている。
また、遊星キャリヤCL、CRのうち、右側の遊星キャリヤCRのインボード側のキャリヤフランジ34bの中空軸部36の内径面に、中空の第2結合部材32の右側端部がスプライン部74によって連結されている。右側の遊星キャリヤCRと第2結合部材32は別体とし、スプライン部74によって連結しているが、右側の遊星キャリヤCRと第2結合部材32を一体としてもよい。
この中空の第2結合部材32は、図の左側端部の外周面に、図の左側の遊星歯車装置39Lの遊星歯車PLと噛み合う外歯車が形成され、この外歯車が図の左側の遊星歯車装置39Lの太陽歯車SLを構成している。
図1及び図2に示す実施形態では、前記出力側小径歯車13bが、アウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35の外周面に一体に形成されているが、それぞれ別部材としてスプライン結合(セレーション結合を含む)としてもよい。
内歯車RL、RRは、遊星キャリヤCL、CRに対して左右2個の転がり軸受39a、39bによって支持されている。
車両用駆動装置1の歯車装置30を構成する2つの遊星歯車装置39L、39Rを連結している第1結合部材31および第2結合部材32は、減速機ハウジング9の仕切り壁11を貫通して組み込まれている。
この第1結合部材31と第2結合部材32は、同軸上に配置されると共に、一方の結合部材(図1及び図2の実施形態では第2結合部材32)が中空軸、他方の結合部材(図1及び図2の実施形態では第1結合部材31)が中空軸に挿通される軸からなる二重構造になっている。
第1結合部材31は、左側端部が、遊星キャリヤCLのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35にスプライン部73により連結されている。
中空軸で構成される第2結合部材32に挿通される第1結合部材31は、右側端部に大径部79を有し、この大径部79の外周面に、右側の遊星歯車装置39Rの遊星歯車PRと噛み合う外歯車が形成され、この外歯車が右側の遊星歯車装置39Rの太陽歯車SRを構成している。
上記のように、2つの遊星歯車装置39L、39Rの第1結合部材31を、遊星キャリヤCLに対しスプライン部73によって連結することにより、2つの遊星歯車装置39L、39Rを左右に分割することが可能となり、2つの遊星歯車装置39L、39Rを減速機ハウジング9に他の減速歯車軸と一緒に左右から組込むことができる。
2つの遊星歯車装置39L、39Rを連結する二重構造の軸の内径側の第1結合部材31は、遊星歯車装置39L側の端部が、遊星キャリヤCLのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35にスプライン部73によって結合され、遊星歯車装置39R側の端部が、遊星キャリヤCRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35に転がり軸受49によって支持されている。
中空軸で構成される第2結合部材32の左側の端面は、給油空間85を空けて遊星キャリヤCLのアウトボード側のキャリヤフランジ34aに対面し、第2結合部材32の左側の端面と遊星キャリヤCLのアウトボード側のキャリヤフランジ34aとの間にスラスト軸受78aを配置している。また、第2結合部材32の右側の端面は、給油空間86を空けて第1結合部材31の右側端部の大径部79に対面し、第2結合部材32の右側の端面と第1結合部材31の大径部79との間にスラスト軸受78bを配置している。
第2結合部材32の内径面と第1結合部材31の外周面との間には、一対の針状ころ軸受75a、75bを配置し、一対の針状ころ軸受75a、75bの間にはカラー76を配置している。
一対のキャリヤフランジ34a、34bと遊星歯車PL、PRの間には、遊星歯車PL、PRの回転を円滑化するために、歯車支持軸33が内部を通る形のスラスト板38を装着している。
ところで、図1に示すように、入力歯車軸12L、12R、中間歯車軸13L、13R、出力歯車軸14L、14Rは、減速機ハウジング9に収容されいる。図9は、右側の入力歯車軸12R、中間歯車軸13R、出力歯車軸14Rを示しているが、左側の入力歯車軸12L、中間歯車軸13L、出力歯車軸14Lも配置は同じである。即ち、図9に示すように、歯車装置30を組み込んだ中間歯車軸13L、13Rが最も低位置になるように配置され、減速機ハウジング9の下部に油溜まり87が設けられている。減速機ハウジング9の下部の油溜まり87の油面高さHは、車両の停止時に中間歯車軸13L、13Rを減速機ハウジング9に対して支持する転がり軸受20a、20bの軌道面が潤滑油に浸かるように設定され、油浴潤滑や歯車の回転による跳ね掛け潤滑が行われるようになっている。
2個の遊星歯車装置39L、39Rを同軸で結合した歯車装置30においては、図9に示すように、車両の停止時に転がり軸受20a、20bが潤滑油に浸かるように、減速機ハウジング9の下部の油溜まり87の油面高さHを設定していても、歯車装置30の内歯車RL、RRも中間歯車軸13L、13Rの大歯車として回転するため、回転する内歯車RL、RRが減速機ハウジング9の下部に溜められた潤滑油を掻き分け、特に、車両の高速走行時は中間歯車軸13L、13Rを支持する転がり軸受20a、20bの軌道面が潤滑油に浸からない状態になる。
減速機ハウジング9の下部の油溜まり87から歯車の回転で掻き上げられ飛散した潤滑油は、減速機ハウジング9の内壁に付着し、内壁に設けられたリブ(図示省略)に沿って流れ落ち、遊星歯車装置39L、39Rの遊星キャリヤCL、CRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35を支持する転がり軸受20bを通って、中空軸部35内に潤滑油が流入する。
中空軸部35内に流入した潤滑油は、遊星歯車装置39L、39Rを構成する軸受や歯車といった潤滑油を要する機械要素に次のようにして供給される。
まず、第1結合部材31に、軸心給油の油路となる、軸方向に貫通する油路81と、その奥に潤滑油を排出する径方向の給油孔82、83を設けている。
径方向の給油孔82、83は、第2結合部材32の両端に設けた給油空間85、86に連通する位置に設けている。
第1結合部材31の軸心に設けた油路81は、軸端部から径方向の給油孔82、83までにかけての内径が中心部の油路81の内径よりも大径に形成されている。
そして、第1結合部材31の軸心に設けた油路81の内壁面には、周方向に潤滑油の保持溝84を設けている。この潤滑油の保持溝84の深さは、油路81の内径よりも十分に浅く、例えば、1/10程度の深さに形成されている。
第1結合部材31の軸心に設けた油路81の内壁面に設ける潤滑油の保持溝84は、図1及び図2に示す第1の実施形態、図3及び図4に示す第2の実施形態、図5及び図6に示す第3の実施形態においては、螺旋溝によって形成し、図7及び図8に示す第4の実施形態では軸方向に不連続な複数の周方向溝によって形成している。
潤滑油の保持溝84を螺旋溝によって形成する場合、螺旋のねじれ方向は、潤滑油を供給する軸端面から見て、その車両が前進するために駆動力が伝えられることでその軸が回転する方向(例えば右回り)に対して同じ方向(例えば右ねじり)とする。螺旋溝の保持溝84の先には、この溝に連通する給油孔82、83が設けられている。
図1及び図2に示す第1の実施形態の場合、螺旋溝によって形成される潤滑油の保持溝84は、第1結合部材31の両端の軸端面から径方向の給油孔82、83までの位置に設けている。
また、図3及び図4に示す第2の実施形態の場合、二種類の螺旋溝によって形成される潤滑油の保持溝84は、一方が第1結合部材31の右側の軸端面から右側の径方向の給油孔83までの位置に設け、他方が第1結合部材31の左側の径方向の給油孔82までの位置に設けている。右側の径方向の給油孔83から左側の径方向の給油孔82までの螺旋溝は、一条であり、右側の軸端面から右側の径方向給油孔83までの螺旋溝は、二条に形成されている。
また、図5及び図6に示す第3の実施形態の場合、第1結合部材31の両端部を、遊星キャリヤCL、CRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35のアウトボード側の端面まで延長させ、螺旋溝によって形成される潤滑油の保持溝84を第1結合部材31の両端の軸端面から径方向の給油孔82、83までの位置に設けている。
第1結合部材31の軸心に設けた油路81の内壁面に、潤滑油の保持溝84を設けることにより、低速運転時や始動開始時においても、遊星歯車装置39L、39Rを構成する軸受や歯車といった潤滑油を要する機械要素に油路81からの給油が滞りなく行える。
トルク差増幅機構が回転しているとき、第1結合部材31もまた回転している。回転速度が小さいとき、保持溝84に流れ込んだ潤滑油は自重で保持溝84の最下部へと溜まろうとする。そして、回転に伴って保持溝84内から流れ出て、給油孔82、83から排出され、その先にある軸受や歯車へと供給される。
また、停車時から再始動するときも、停車時に油路81内の保持溝84に潤滑油が溜まっているので、この保持溝84に溜まった潤滑油が少量であっても給油孔82、83から排出されるので、軸受や歯車のドライ状態での動作を回避することができる。
特に、油路81内の保持溝84を螺旋状に形成した場合、軸が回転することにより、螺旋状の保持溝84によって軸端部から奥の給油孔82、83へと掻き押される力が加わる。これにより、低速回転であっても油路81の潤滑油は逆流することなく給油孔82、83から排出される。
図1及び図2に示す実施形態において、第1結合部材31の両軸端面に潤滑油が供給される場合、螺旋状の保持溝84は、それぞれの軸端面から給油孔82、83まで形成している。この場合、それぞれの螺旋状の保持溝84は、それぞれの軸端部から見た車両の前進方向と保持溝84のねじれ方向が一致しており、即ち、互いに逆ねじれの関係となる。
図3及び図4に実施形態においては、一方の軸端面(図3及び図4においては右側)から多条の螺旋状の保持溝84が軸方向位置に2箇所に分かれた油孔82、83へ延びている。螺旋状の保持溝84のうち半数は、軸端面から見て近い油孔83で止まり、残りの半数が遠い方の給油孔82まで延びている。こうすることで、例えば、図3の右側の方が潤滑油をより多く掻き上げ可能であれば、右側からより多くの潤滑油を給油孔82へ送り届けることができる。また、図3及び図4に実施形態においては、左側に設けたスプライン部73の中空軸部35の内径に螺旋状の保持溝84を形成していない分だけ加工しやすくなり、精度のよい加工が見込まれる。
図5及び図6に実施形態においては、中空軸部35の両端まで第1結合部材31が延びており、第1結合部材31を支持する転がり軸受49と歯車装置30全体を支持する転がり軸受20bとが軸方向に近い位置にあるので、転がり軸受49にかかるモーメントが最小になっている。この場合、第1結合部材31の軸端面と減速機ハウジング9の内壁とのスキマが少なく、油路への供給油量の減少するおそれがあるが、第1結合部材31の内壁の油路81に螺旋状の保持溝84があることで効率的に送油可能となっている。
なお、第1結合部材31の周方向内面に周方向の溝88を設け、周方向の溝88に複数かつ等配に形成した共通の給油孔82、83を形成し、軸端から延びる螺旋状の保持溝84が周方向の溝88に繋がるようにすると、より効率的に潤滑油が排出される。
また、軸端から延びる螺旋状の保持溝84が多条で形成され、複数の保持溝が同一の給油孔82、83に繋がるようにしても、より効率的に潤滑油が排出される。
複数かつ等配に形成した共通の給油孔82、83を形成した周方向の溝88に、軸端から延びる螺旋状の保持溝84が繋がるようにしてもよい。
また、第1結合部材31が高速で回転すると、螺旋状の保持溝84に流れ込んだ潤滑油は自重で最下部に留まることなく、遠心力で螺旋状の保持溝84を軸方向へと広がる。しかし同時に、軸端面へと供給される潤滑油は、歯車が減速機ハウジング9の下部の油溜まり87から掻き上げる油量の増大に伴って増えているので、螺旋状の保持溝84がない油路81と同様に流れ、油孔82、83から排出される。
以上の実施形態において、保持溝84は油路81に1本以上あればよい。また、螺旋状の溝あるいは周方向溝のいずれか一方であったが、これらを組み合わせてもよい。また、螺旋状の溝と周方向溝は交わるように形成してもよい。
また、以上の実施形態では、二つの駆動源として電動モータ2L、2Rを用い、同一の最大出力を有する同一出力特性の電動モータである場合を例示したが、二つの駆動源はこれに限られない。
また、以上の実施形態では、トルク差増幅機構を構成する歯車装置30は平行軸歯車減速機の中間歯車軸13L、13Rに位置するが、中間歯車軸13L、13R(大歯車を構成する大径の入力側大径歯車13aと小歯車を構成する出力側小径歯車13bが同軸にある軸)は複数あってもよく、そのうちの1軸にトルク差増幅機構である歯車装置30を組み込むことができる。
なお、車両用駆動装置1が搭載される車両は、電気自動車やハイブリッド電気自動車に限られず、例えば、第1の電動モータ2L及び第2の電動モータ2Rを駆動源とした燃料電池自動車であってもよい。
この発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲において、さらに種々の形態で実施し得る。
1 :車両用駆動装置
2L、2L :電動モータ
3L、3R :減速機
4L、4R :モータハウジング
4aL、4aR :モータハウジング本体
4bL、4bR :外側壁
4cL、4cR :内側壁
5 :ロータ
5a :モータ軸
6 :ステータ
7 :シール部材
8a、8b :転がり軸受
9 :減速機ハウジング
9a :側面壁
11 :仕切り壁
12L、12R :入力歯車軸
12a :入力歯車
13L、13R :中間歯車軸
13a :入力側大径歯車
13b :出力側小径歯車
14L、14R :出力歯車軸
14a :出力歯車
16a、16b :軸受嵌合穴
17a、17b :転がり軸受
19a、19b :軸受嵌合穴
20a、20b :転がり軸受
30 :歯車装置
31 :第1結合部材
32 :第2結合部材
33 :歯車支持軸
34a、34b :キャリヤフランジ
35、36 :中空軸部
37 :針状ころ軸受
38 :スラスト板
39L、39L :遊星歯車装置
39a、39b、49 :転がり軸受
53a、53b :軸受嵌合穴
54a、54b :転がり軸受
55 :シール部材
60 :シャーシ
61L、61R :駆動輪
62L、62R :前輪
63 :バッテリ
64 :インバータ
65a、65b :等速ジョイント
65c :中間シャフト
73、74 :スプライン部
75a、75b :針状ころ軸受
76 :カラー
78a、78b :スラスト軸受
79 :大径部
81 :油路
82、83 :給油孔
84 :保持溝
85、86 :給油空間
87 :油溜まり
AM :電気自動車
L、CR :遊星キャリヤ
L、PR :遊星歯車
L、RR :内歯車
L、SR :太陽歯車

Claims (4)

  1. 車両に搭載され車輪を駆動する独立して制御可能な二つの電動モータと、二つの電動モータと二つの出力部との間に設けられ、二つの電動モータからのトルクを二つの出力部に分配する歯車装置と、二つの電動モータのトルクを二つの出力部に伝達する減速機とを備える車両用駆動装置において、減速機は、電動モータに連結し、入力歯車を有する入力歯車軸と、出力部に連結し、出力歯車を有する出力歯車軸と、歯車の噛合いにより入力歯車軸から出力歯車軸の間のトルク伝達を行う中間歯車軸が少なくとも1つ以上備え、歯車装置は、同軸に設けられた左右の1対の中間歯車軸と同軸上に二つ組み合わせた3要素2自由度の遊星歯車装置からなり、この遊星歯車装置は、内歯車と、内歯車と同軸上に設けられた遊星キャリヤと、内歯車と同軸上に設けられた太陽歯車と、公転歯車としての複数の遊星歯車とを備え、二つの遊星歯車装置の一方の遊星キャリヤと他方の太陽歯車とを結合する第1結合部材と、一方の太陽歯車と他方の遊星キャリヤとを結合する第2結合部材とを有し、第2結合部材は中空軸であり、第1結合部材は第2結合部材に内包され、第1結合部材と第2結合部材で二重軸となり、歯車装置の二つの遊星歯車装置の遊星キャリヤは、それぞれが両端を転がり軸受を介して減速機ハウジングに支持され、減速機の潤滑機構として、減速機ハウジング下部に溜まった潤滑油を歯車の回転により飛散させて潤滑する跳ね掛け潤滑があり、第1結合部材に軸端面から軸方向に延びる油路と径方向の給油孔を設け、前記軸心方向の油路の内面に、潤滑油の保持溝を設けたことを特徴とする車両用駆動装置。
  2. 前記潤滑油の保持溝が、軸端部から径方向の給油孔に向かって伸びる螺旋溝からなり、この螺旋溝が軸端部から見て車両が前進する方向の回転方向と同じ方向のねじれ方向を持つことを特徴とする請求項1記載の車両用駆動装置。
  3. 前記螺旋溝が多条に形成され、この多条の螺旋溝が共通の径方向の給油孔に連通することを特徴とする請求項2記載の車両用駆動装置。
  4. 前記潤滑油の保持溝が、軸の両端部から互いに逆のねじれ方向を持つ螺旋溝からなる請求項1記載の車両用駆動装置。
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