JP2018054053A - 車両用駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 遊星歯車装置39L、39Rを同軸上に二つ組み合わせたトルク差を増大する歯車装置30を支持する転がり軸受20aについて、その潤滑を改善し、長寿命化する
【解決手段】 第1結合部材31に軸心給油の油路となる軸方向穴81と位相違いの複数の径方向穴82、83を設け、中空軸からなる第2結合部材32に位相違いの複数の径方向穴84を設け、第1結合部材31に設けられた軸方向穴81の端面に対面する減速機ハウジング9の壁面に、減速機ハウジング9の壁面を流れる潤滑油を集油し、第1結合部材31の軸方向穴81内に潤滑油を供給する導油部材86を設け、導油部材86から第1結合部材31の軸方向穴31内に供給された潤滑油を、第1結合部材31に設けた径方向穴82、83から外側の第2結合部材32の内周面に給油するようにした。
【選択図】 図3
【解決手段】 第1結合部材31に軸心給油の油路となる軸方向穴81と位相違いの複数の径方向穴82、83を設け、中空軸からなる第2結合部材32に位相違いの複数の径方向穴84を設け、第1結合部材31に設けられた軸方向穴81の端面に対面する減速機ハウジング9の壁面に、減速機ハウジング9の壁面を流れる潤滑油を集油し、第1結合部材31の軸方向穴81内に潤滑油を供給する導油部材86を設け、導油部材86から第1結合部材31の軸方向穴31内に供給された潤滑油を、第1結合部材31に設けた径方向穴82、83から外側の第2結合部材32の内周面に給油するようにした。
【選択図】 図3
Description
この発明は、独立した二つの駆動源からの駆動トルクを、二つの出力部(左右の駆動輪、前後の駆動車軸など)にトルク差を増幅して伝達することができる車両用駆動装置に関するものである。
特許文献1及び特許文献2には、二つの駆動源と左右の駆動輪との間に、3要素2自由度の遊星歯車装置を同軸上に二つ組み合わせた歯車装置を備え、二つの駆動源から与えられるトルクの差を増大して左右の駆動輪に与えることができる車両用駆動装置が開示されている。
本願の出願人は、特許文献1と特許文献2におけるトルク差を増大する歯車装置よりも小型、軽量化を図った車両用駆動装置を、既に特許出願を行っている(特願2016−023529号)。
この本願の出願人が特許出願している車両用駆動装置(先願例1)は、図12及び図13に示す構成である。
先願例1の車両用駆動装置200における歯車装置300を構成する遊星歯車装置210L、210Rは、それぞれ内歯車RL、RRと、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた遊星キャリヤCL、CRと、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた太陽歯車SL、SRと、公転歯車としての複数の遊星歯車PL、PRとを有する。
歯車装置300は、一方の遊星キャリヤCLと他方の太陽歯車SRとを結合する第1結合部材211と、一方の太陽歯車SLと他方の遊星キャリヤCRとを結合する第2結合部材212を有し、第1結合部材211と第2結合部材212が同軸上に配置されると共に、第1結合部材211および第2結合部材212のうち、第2結合部材212が中空軸、第1結合部材211が中空軸の第2結合部材212に挿通される軸を有し、2つの遊星歯車装置210L、210Rの間を通る軸が二重構造となる構成であって、遊星歯車装置210L、210Rの内歯車RL、RRと減速機の入力歯車213とを、内歯車RL、RRに設けた外歯車217に係合して連結する構造である。
この先願例1の車両用駆動装置200は、左右輪を駆動する駆動モータ101L、101Rのトルク差を増大して車輪に出力することができる。
即ち、駆動モータ101L、101Rの駆動力は、3軸2段減速機の減速ギヤ列で伝達され、2軸目に位置する2個の遊星歯車装置210L、210Rを同軸で結合した歯車装置300により、入力トルクの差が増大され左右輪に出力される。
そして、車輪の回転速度に差が無い場合には、歯車装置300の2個の遊星歯車装置210L、210Rの内部(太陽歯車SL、SR、遊星歯車PL、PR)は相対回転せず、遊星歯車装置210L、210Rが一体となり回転する。車輪の回転速度に差が有る場合には、歯車装置300の2個の遊星歯車装置210L、210Rの内部が回転し、太陽歯車SL、SR、内歯車RL、RRは相対回転し、遊星歯車PL、PRが自転・公転する。
ところで、歯車装置300は、減速機ハウジング102に対して、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた遊星キャリヤCL、CRの両端部で、転がり軸受104、105によって支持されている。
即ち、遊星キャリヤCL、CRの両端部は、減速機ハウジング102の側面壁102aと中央壁102bに設けた軸受穴103a、103bに転がり軸受104、105を介して支持されている。
そして、先願例1の車両用駆動装置200に使用される遊星歯車装置210L、210Rにおいては、歯車歯面や転がり軸受104、105の潤滑のために、遊星歯車装置210L、210Rの歯車の一部や遊星キャリヤCL、CRの両端を支持する転がり軸受104、105の軌道面の一部が減速機ハウジング102の下部に溜められた潤滑油に浸かるよう油面高さが設定され、油浴潤滑や歯車の回転による跳ね掛け潤滑が行われている。
ところが、先願例1の車両用駆動装置200のように、2個の遊星歯車装置210L、210Rを同軸で結合した歯車装置300においては、車両の停止時に遊星キャリヤCL、CRの両端を支持する転がり軸受104、105の一部が潤滑油に浸かるように油面高さを設定していても、歯車装置300の内歯車RL、RRも中間歯車軸の大歯車として回転するため、回転する内歯車RL、RRが減速機ハウジング102の下部に溜められた潤滑油を掻き分けてしまい、特に、車両の高速走行時は遊星キャリヤCL、CRの両端を支持する転がり軸受104、105が潤滑油に浸からない状態になる。
さらに、図12及び図13に示す例では、歯車装置300の軸方向寸法を小さくするために、遊星キャリヤCL、CRのインボード側の側面に凹部106を設け、この凹部106内に、遊星キャリヤCL、CRの両端を支持する転がり軸受104、105のうち、インボード側の転がり軸受104の一部が嵌るようにしている。このように、インボード側の転がり軸受104の一部を、遊星キャリヤCL、CRのインボード側の側面の凹部106に嵌め入れると、油浴潤滑や歯車の回転による跳ね掛け潤滑では、インボード側の転がり軸受104に潤滑油が供給され難くなる。
また、内歯車RL、RRと遊星キャリヤCL、CRが共に回転する遊星歯車装置210L、210Rの油浴潤滑や跳ね掛け潤滑では、遊星歯車PL、PRを支持する針状ころ軸受220の収容空間に潤滑油が供給され難く、潤滑不良により針状ころ軸受220が早期に破損する恐れもある。
そこで、この発明は、遊星歯車装置を同軸上に二つ組み合わせたトルク差を増大する歯車装置を支持する転がり軸受について、その潤滑を改善し、長寿命化することを課題とするものである。
前記の課題を解決するために、この発明は、車両に搭載され車輪を駆動する独立して制御可能な二つの電動モータと、二つの電動モータと二つの出力部との間に設けられ、二つの電動モータからのトルクを二つの出力部に分配する歯車装置と、二つの電動モータのトルクを二つの出力部に伝達する減速機とを備える車両用駆動装置において、減速機は、電動モータに連結し、入力歯車を有する入力歯車軸と、出力部に連結し、出力歯車を有する出力歯車軸と、歯車の噛合いにより入力歯車軸から出力歯車軸の間のトルク伝達を行う中間歯車軸が少なくとも1つ以上備え、歯車装置は、同軸に設けられた左右の1対の中間歯車軸と同軸上に二つ組み合わせた3要素2自由度の遊星歯車装置からなり、この遊星歯車装置は、内歯車と、内歯車と同軸上に設けられた遊星キャリヤと、内歯車と同軸上に設けられた太陽歯車と、公転歯車としての複数の遊星歯車とを備え、二つの遊星歯車装置の一方の遊星キャリヤと他方の太陽歯車とを結合する第1結合部材と、一方の太陽歯車と他方の遊星キャリヤとを結合する第2結合部材とを有し、第2結合部材は中空軸であり、第1結合部材は第2結合部材に内包され、第1結合部材と第2結合部材で二重軸となり、歯車装置の二つの遊星歯車機構の遊星キャリヤは、それぞれが両端を転がり軸受を介して減速機ハウジングに支持され、減速機の潤滑機構が、減速機ハウジング下部に溜まった潤滑油を歯車の回転により飛散させて潤滑する跳ね掛け潤滑であり、第1結合部材に軸心給油の油路となる軸方向穴と位相違いの複数の径方向穴を設け、中空軸からなる第2結合部材に位相違いの複数の径方向穴を設け、第1結合部材に設けられた軸方向穴の端面に対面する減速機ハウジングの壁面に、減速機ハウジングの壁面を流れる潤滑油を集油し、第1結合部材の軸方向穴内に潤滑油を供給する導油部材を設け、導油部材から第1結合部材の軸方向穴内に供給された潤滑油を、第1結合部材に設けた径方向穴から外側の第2結合部材の内周面に給油し、第2結合部材の内周面に給油された潤滑油を、二つの遊星歯車装置の遊星キャリヤの両端を支持する転がり軸受のうちのインボード側の転がり軸受に対し第2結合部材に設けた径方向穴から給油するようにしたものである。
第2結合部材に設ける径方向穴の軸方向位置は、歯車装置を構成する二つの遊星歯車装置のインボード側の遊星キャリヤを減速機ハウジングに対して支持する二つの転がり軸受の転動体間の中心位置に設けることが望ましい。
また、第2結合部材に設ける径方向穴の軸方向位置は、歯車装置を構成する二つの遊星歯車装置のインボード側の遊星キャリヤを減速機ハウジングに対して支持する二つの転がり軸受のインボード側の端面間に位置するようにしてもよい。
また、第2結合部材に設けた径方向穴の開口部の少なくとも一部が、歯車装置を構成する二つの遊星歯車装置のインボード側の遊星キャリヤの端面間に位置することが望ましい。
さらに、第2結合部材の内周面に、前記径方向穴を含むように周方向溝を設けることにより、第1結合部材の径方向穴から飛散した潤滑油を周方向溝に集めて、第2結合部材の径方向穴へ効率よく流すことが可能となる。
以上のように、この発明によれば、減速機ハウジングの壁面を流れる潤滑油が、減速機ハウジングの壁面に設けた導油部材によって第1結合部材の軸心に設けた軸方向穴に供給され、第1結合部材の軸方向穴に供給された潤滑油が径方向穴から第2結合部材の内周面に飛散し、第2結合部材の内周面に飛散した潤滑油が、さらに第2結合部材の径方向穴から飛散し、二つの遊星歯車装置のインボード側の遊星キャリヤを支持する転がり軸受に供給されるので、遊星キャリヤを支持する転がり軸受が潤滑不良によって早期に破損したり、異音が生じたりするということを防止することができる。
また、減速機ハウジングの壁面を流れる潤滑油を、減速機ハウジングの壁面に設けた導油部材から第1結合部材の軸心に設けた軸方向穴に供給するので、軸心給油を実現するためのオイルポンプが不要で、油路の構成が簡易となり、減速機ハウジングの加工も容易となる。
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図10に示す電気自動車AMは、後輪駆動方式であり、シャーシ60と、後輪としての駆動輪61L、61Rと、前輪62L、62Rと、この発明に係る2モータ式の車両用駆動装置1、バッテリ63、インバータ64等を備える。図10では、車両用駆動装置1の歯車構成をスケルトン図で示している。
図1に示す車両用駆動装置1は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源としての電動モータ2L、2Rと、左右の駆動輪61L、61Rと二つの電動モータ2L、2Rとの間に設けられる左右2基の減速機3L、3Rとを備える。
2モータ式の車両用駆動装置1の駆動トルクは、等速ジョイント65a、65bと中間シャフト65cからなるドライブシャフトを介して左右の駆動輪61L、61Rに伝達される。
なお、2モータ式の車両用駆動装置1の搭載形態としては、図10に示す後輪駆動方式の他、前輪駆動方式、四輪駆動方式でもよい。
2モータ式の車両用駆動装置1における左右の電動モータ2L、2Rは、同一の最大出力を有する同一規格の電動モータが用いられ、図1に示すように、モータハウジング4L、4R内に収容されている。
モータハウジング4L、4Rは、円筒形のモータハウジング本体4aL、4aRと、このモータハウジング本体4aL、4aRの外側面を閉塞する外側壁4bL、4bRと、モータハウジング本体4aL、4aRの内側面に減速機3L、3Rと隔てる内側壁4cL、4cRとからなる。モータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRには、モータ軸5aを引き出す開口部が設けられている。
電動モータ2L、2Rは、図1に示すように、モータハウジング本体4aL、4aRの内周面にステータ6を設け、このステータ6の内周に間隔をおいてロータ5を設けたラジアルギャップタイプのものを使用している。なお、電動モータ2L、2Rは、アキシャルギャップタイプのものを使用してもよい。
ロータ5は、モータ軸5aを中心部に有し、そのモータ軸5aはモータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRの開口部からそれぞれ減速機3L、3R側に引き出されている。モータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRの開口部とモータ軸5aとの間にはシール部材7が設けられている。
モータ軸5aは、モータハウジング4L、4Rの内側壁4cL、4cRと外側壁4bL、4bRとに転がり軸受8a、8bによって回転自在に支持されている(図1)。
左右並列に設けられた2基の減速機3L、3Rを収容する減速機ハウジング9は、アウトボード側(車体外側)の端面が、電動モータ2L、2Rのモータハウジング4L、4Rの内側壁4cL、4cRに複数のボルト(図示省略)によって固定されている(図1)。
減速機ハウジング9には、図1に示すように、中央に仕切り壁11が設けられている。減速機ハウジング9は、この仕切り壁11によって左右に2分割され、2基の減速機3L、3Rを収容する左右の収容室が並列に設けられている。
減速機3L、3Rは、図1に示すように、概ね左右対称形に設けられ、モータ軸5aから駆動力が伝達され入力歯車12aを有する入力歯車軸12L、12Rと、この入力歯車12aに噛み合う入力側大径歯車13aと出力歯車14aに噛み合う出力側小径歯車13bを有する中間歯車軸13L、13Rと、出力歯車14aを有し、等速ジョイント65a、65b(図10)、中間シャフト65c(図10)を介して駆動輪61L、61R(図10)にトルクを伝達する出力歯車軸14L、14Rとを備える平行軸歯車減速機である。左右2基の減速機3L、3Rの各入力歯車軸12L、12R、中間歯車軸13L、13R、出力歯車軸14L、14Rは、それぞれ同軸上に配置されている。
減速機3L、3Rの入力歯車軸12L、12Rの両端は、減速機ハウジング9の仕切り壁11の左右両面に形成した軸受嵌合穴16aとモータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRに形成した軸受嵌合穴16bに転がり軸受17a、17bを介して回転自在に支持されている。図1では、転がり軸受17a、17bは同一のものとしているが、異なるサイズのものを組み合わせてもよい。
入力歯車軸12L、12Rは中空構造であり、この中空の入力歯車軸12L、12Rに、モータ軸5aの端部が挿入されている。入力歯車軸12L、12Rとモータ軸5aとは、スプライン(セレーションも含む、以下同じ)結合されている。
中間歯車軸13L、13Rは、少なくとも一組以上配置されており、図1に示す実施形態では、一対の中間歯車軸13L、13Rを有する。
中間歯車軸13L、13Rは、外周面に入力歯車12aに噛み合う入力側大径歯車13aと出力歯車14aに噛み合う出力側小径歯車13bを有する段付きの歯車軸を構成している。この中間歯車軸13L、13Rの両端は、減速機ハウジング9の仕切り壁11の両面に形成した軸受嵌合穴19aとモータハウジング本体4aL、4aRの内側壁4cL、4cRの軸受嵌合穴19bとに転がり軸受20a、20bを介して支持されている。図1では、転がり軸受20a、20bは同一サイズのものとしているが、異なるサイズのものを組み合わせてもよい。
同軸上に配置された中間歯車軸13L、13Rには、この中間歯車軸13L、13Rと同軸上に、二つの電動モータ2L、2Rから与えられるトルクの差を左右の駆動輪61L、61Rに増幅して分配する歯車装置30が組み込まれている。
歯車装置30は、同軸に配された左右1対の中間歯車軸13L、13Rと同軸上に二つ組み合わせた3要素2自由度の遊星歯車装置39L、39Rからなる。
車両用駆動装置1における歯車装置30を構成する遊星歯車装置39L、39Rは、それぞれ内歯車RL、RRと、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた遊星キャリヤCL、CRと、内歯車RL、RRと同軸上に設けられた太陽歯車SL、SRと、公転歯車としての複数の遊星歯車PL、PRとを有する。
歯車装置30は、一方の遊星キャリヤCLと他方の太陽歯車SRとを結合する第1結合部材31と、一方の太陽歯車SLと他方の遊星キャリヤCRとを結合する第2結合部材32を有し、第1結合部材31と第2結合部材32が同軸上に配置されると共に、第1結合部材31および第2結合部材32のうち、第2結合部材32が中空軸、第1結合部材31が中空軸に挿通される軸を有し、2つの遊星歯車装置39L、39Rの間を通る軸が二重構造となる構成であって、遊星歯車装置39L、39Rの内歯車RL、RRと減速機3L、3Rの入力歯車12aとを、内歯車RL、RRに連結した入力側大径歯車13aに係合して連結する構造である。
この車両用駆動装置1は、左右輪を駆動する電動モータ2L、2Rのトルク差を増大して車輪に出力することができる。
即ち、電動モータ2L、2Rの駆動力は、3軸2段減速機の減速ギヤ列で伝達され、2軸目に位置する2個の遊星歯車装置39L、39Rを同軸で結合した歯車装置30により、入力トルクの差が増大され左右輪に出力される。
そして、車輪の回転速度に差が無い場合には、歯車装置30の2個の遊星歯車装置39L、39Rの内部(太陽歯車SL、SR、遊星歯車PL、PR)は相対回転せず、遊星歯車装置39L、39Rが一体となり回転する。車輪の回転速度に差が有る場合には、歯車装置30の2個の遊星歯車装置39L、39Rの内部が回転し、太陽歯車SL、SR、内歯車RL、RRは相対回転し、遊星歯車PL、PRが自転・公転する。
図1及び図2に示す実施形態の2モータ式の車両用駆動装置1の歯車構成は、図10に示すスケルトン図の通りである。
図10に示すように、左右の電動モータ2L及び電動モータ2Rは、車両に搭載されたバッテリ63からインバータ64を介して与えられた電力により動作する。そして、電動モータ2L、2Rは、電子制御装置(図示省略)により個別に制御され、異なるトルクを発生させて出力することができる。
電動モータ2L、2Rのモータ軸5aのトルクは、減速機3L、3Rの入力歯車軸12L、12Rの入力歯車12aと中間歯車軸13L、13Rの入力側大径歯車13aとの歯数比で増大されて歯車装置30の内歯車RL、RRに伝達される。
そして、歯車装置30を介して中間歯車軸13L、13Rの出力側小径歯車13bが出力歯車軸14L、14Rの大径の出力歯車14aに噛み合って出力側小径歯車13bと出力歯車14aとの歯数比で電動モータ2L、2Rのモータ軸5aのトルクがさらに増大されて、駆動輪61L、61Rに出力される。
歯車装置30は、3要素2自由度の同一の遊星歯車装置39L、39Rが同軸上の中間歯車軸13L、13Rに二つ組み合わされて構成され、遊星歯車装置39L、39Rとして、シングルピニオン遊星歯車装置を採用している。
遊星歯車装置39L、39Rは、同軸上に設けられた太陽歯車SL、SR及び内歯車RL、RRと、これら太陽歯車SL、SRと内歯車RL、RRとの間に位置する複数の遊星歯車PL、PRと、遊星歯車PL、PRを回転可能に支持し太陽歯車SL、SR及び内歯車RL、RRと同軸上に設けられた遊星キャリヤCL、CRとから構成される。ここで、太陽歯車SL、SRと遊星歯車PL、PRは外周にギヤ歯を有する外歯歯車であり、内歯車RL、RRは内周にギヤ歯を有する内歯歯車である。遊星歯車PL、PRは太陽歯車SL、SRと内歯車RL、RRとに噛み合っている。
遊星歯車装置39L、39Rでは、遊星キャリヤCL、CRを固定した場合に太陽歯車SL、SRと内歯車RL、RRとが逆方向に回転するため、図11に示す速度線図に表すと内歯車RL、RR及び太陽歯車SL、SRが遊星キャリヤCL、CRに対して反対側に配置される。
この歯車装置30は、前記のように、太陽歯車SL、遊星キャリヤCL、遊星歯車PL及び内歯車RLを有する第1の遊星歯車装置39Lと、同じく太陽歯車SR、遊星キャリヤCR、遊星歯車PR及び内歯車RRを有する第2の遊星歯車装置39Rとが同軸上に組み合わされて構成されている。
そして、第1の遊星歯車装置39Lの遊星キャリヤCLと第2の遊星歯車装置39Rの太陽歯車SRとが結合されて第1結合部材31を形成し、第1の遊星歯車装置の太陽歯車SLと第2の遊星歯車装置の遊星キャリヤCRとが結合されて第2結合部材32を形成している。
第1の遊星歯車装置39Lの内歯車RLに電動モータ2Lで発生したトルクTM1は、入力歯車軸12Lの入力歯車12aと入力側大径歯車13aとが噛み合って中間歯車軸13Lに伝達され、中間歯車軸13Lに伝達されたトルクが、第1の遊星歯車機構を介して中間歯車軸13Lの出力側小径歯車13bに伝達され、中間歯車軸13Lの出力側小径歯車13bと出力歯車軸14Lの出力歯車14aとが噛み合って出力歯車軸14Lから駆動輪61Lに駆動トルクTLが出力される。
第2の遊星歯車装置39Rの内歯車RRに電動モータ2Rで発生したトルクTM2は、入力歯車軸12Rの入力歯車12aと入力側大径歯車13aとが噛み合って中間歯車軸13Rに伝達され、中間歯車軸13Rに伝達されたトルクが、第2の遊星歯車装置39Rを介して中間歯車軸13Rの出力側小径歯車13bに伝達され、中間歯車軸13Rの出力側小径歯車13bと出力歯車軸14Rの出力歯車14aとが噛み合って出力歯車軸14Rから駆動輪61Rに駆動トルクTRが出力される。
電動モータ2L、2Rからの出力は、二つの遊星歯車装置39L、39Rのそれぞれの内歯車RL、RRに与えられ、第1結合部材31、第2結合部材32からの出力が駆動輪61L、61Rに与えられる。
第2結合部材32は、中空軸で構成されており、その内部に第1結合部材31が挿通され、第1結合部材31と第2結合部材32を構成する軸は二重構造になっている。
第1結合部材31は、その一端(図中右端)が太陽歯車SRの回転軸であり、他端(図中左端)が太陽歯車SLを貫通して設けられ、遊星キャリヤCLに接続されている。また、中空軸である第2結合部材32は、一端(図中左端)が太陽歯車SLの回転軸となっており、他端(図中右端)は遊星キャリヤCRと接続されている。この第1結合部材31と第2結合部材32によって、二つの遊星歯車装置39L、39Rが結合されている。
歯車装置30は、二つの同一のシングルピニオン形式の遊星歯車装置39L、39Rを組み合わせて構成されるため、図11に示すように二本の速度線図によって表すことができる。ここでは、分かりやすいように、二本の速度線図を上下にずらし、上側に左側の遊星歯車装置39Lの速度線図を示し、下側に右側の遊星歯車装置39Rの速度線図を示す。本来は、図1の実施形態では、各電動モータ2L、2Rから出力されたトルクTM1及びTM2は、各入力歯車軸12L、12Rの入力歯車12aと噛み合う入力側大径歯車13aを介して各内歯車RL、RRに入力されるため減速比が掛かり、また、歯車装置30から取り出された駆動トルクTL、TRは、出力歯車14aと噛み合う出力側小径歯車13bを介し左右の駆動輪61L、61Rへ伝達されるため減速比が掛かるが、以降、理解を容易にするため、図11に示す速度線図及び各計算式の説明においては、減速比を省略し、各内歯車RL、RRに入力されるトルクをTM1及びTM2のまま、歯車装置30から取り出された駆動トルクはTL、TRのままとする。
歯車装置30を構成する二つの遊星歯車装置39L、39Rは、同一の歯数の歯車要素を使用しているため、図11に示す速度線図においては内歯車RLと遊星キャリヤCLとの距離及び内歯車RRと遊星キャリヤCRとの距離は等しく、これをaとする。また、太陽歯車SLと遊星キャリヤCLとの距離及び太陽歯車SRと遊星キャリヤCRとの距離も等しく、これをbとする。遊星キャリヤCL、CRから内歯車RL、RRまでの長さと遊星キャリヤCL、CRから太陽歯車SL、SRまでの長さの比は、内歯車RL、RRの歯数Zrの逆数(1/Zr)と太陽歯車SL、SRの歯数Zsの逆数(1/Zs)との比と等しい。よって、a=(1/Zr)、b=(1/Zs)と表すことができる。
RRの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記(1)式が算出される。なお、図11において、矢印方向がモーメントMの正方向である。
a・TR+(a+b)・TL−(b+2a)・TM1=0 …(1)
a・TR+(a+b)・TL−(b+2a)・TM1=0 …(1)
RLの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記(2)式が算出される。
−a・TL−(a+b)・TR+(b+2a)・TM2=0 …(2)
−a・TL−(a+b)・TR+(b+2a)・TM2=0 …(2)
(1)式と(2)式の和より、下記(3)式が得られる。
−b・(TR−TL)+(2a+b)・(TM2−TM1)=0
(TR−TL)=((2a+b)/b)・(TM2−TM1) …(3)
−b・(TR−TL)+(2a+b)・(TM2−TM1)=0
(TR−TL)=((2a+b)/b)・(TM2−TM1) …(3)
(3)式の(2a+b)/bがトルク差増幅率αとなる。a=1/Zr、b=1/Zsを代入すると、α=(Zr+2Zs)/Zrとなり、下記のトルク差増幅率αが得られる。
α=(Zr+2Zs)/Zr
この発明では、電動モータ2L、2Rからの入力は、内歯車RL、RRとなり、駆動輪61L、61Rへの出力は太陽歯車SRと遊星キャリヤCL、太陽歯車SLと遊星キャリヤCRとなる。
そして、二つの電動モータ2L、2Rで異なるトルクTM1、TM2を発生させて入力トルク差ΔTIN(=(TM2−TM1))を与えると、歯車装置30において入力トルク差ΔTINが増幅され、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差α・ΔTINを得ることができる。すなわち、入力トルク差ΔTINが小さくても、歯車装置30において上記したトルク差増幅率α(=(Zr+2Zs)/Zr)で入力トルク差ΔTINを増幅することができ、左駆動輪61Lと右駆動輪61Rとに伝達される駆動トルクTL、TRに、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差ΔTOUT(=α・(TM2−TM1)=TR−TL)を与えることができる。
図1及び図2に示す実施形態では、内歯車RL、RRに連結する入力側大径歯車13aは、内歯車RL、RRと一体に形成しているが、別体に形成してもよい。
出力歯車軸14L、14Rは、図1に示すように、中空構造であり、この中空の出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の端部内周面に、等速ジョイント65aの外輪部材の軸部が挿入され、等速ジョイント65aの外輪部材の軸部と中空の出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の端部内周面とがスプライン結合(セレーション結合を含む)されている。
次に、出力歯車軸14L、14Rに結合された等速ジョイント65aは、中間シャフト65c、等速ジョイント65aを介して駆動輪61L、61Rに接続される(図10参照)。
出力歯車軸14L、14Rのアウトボード側の端部とモータハウジング4L、4Rの内側壁4cL、4cRに形成した開口部との間には、シール部材55を設け、減速機3L、3Rに封入された潤滑油の漏洩を防止するとともに、外部から減速機3L、3Rの内部への埃や泥水の侵入を防止している。
出力歯車軸14L、14Rは、大径の出力歯車14aを有し、減速機ハウジング9の仕切り壁11の両面に形成した軸受嵌合穴53aとモータハウジング4L、4Rの内側壁4cL、4cRに形成した軸受嵌合穴53bに転がり軸受54a、54bによって支持されている。図1及び図2では、転がり軸受54a、54bは同一のものとしているが、異なるサイズのものを組み合わせて使用してもよい。
遊星歯車装置39L、39Rの遊星歯車PL、PRは、図2に示すように、針状ころ軸受37を介して歯車支持軸33に回転自在に支持されている。歯車支持軸33の両端は、遊星キャリヤCL、CRの一対のキャリヤフランジ34a、34bに挿通固定されている。
歯車支持軸33の外周面は、遊星歯車PL、PRを回転自在に支持する針状ころ軸受37の内輪軌道面になるため、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)のずぶ焼入れ・焼戻し、または浸炭鋼(SCM420)の浸炭焼入れ・焼戻し等の、鋼を熱処理し表面硬さを58HRC以上とし、表面を内輪軌道面に適した粗さに研削して仕上げている。
次に、遊星キャリヤCL、CRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aは、アウトボード側(車両の外側)に延びる中空軸部35を備えており、中空軸部35のアウトボード側の端部が、モータハウジング4L、4Rの内側壁4cL、4cRに形成した軸受嵌合穴19bに転がり軸受20bを介して支持されている。
遊星キャリヤCL、CRのインボード側(車両の内側)のキャリヤフランジ34bは、インボード側に延びる中空軸部36を有する。この中空軸部36は、減速機ハウジング9の仕切り壁11に形成した軸受嵌合穴19aに転がり軸受20aを介して支持されている。
また、遊星キャリヤCL、CRのうち、右側の遊星キャリヤCRのインボード側のキャリヤフランジ34bの中空軸部36の内径面に、中空の第2結合部材32の右側端部がスプライン部74によって連結されている。右側の遊星キャリヤCRと第2結合部材32は別体であり、インロウ部78により芯出しされ、スプライン部74に嵌合している。右側の遊星キャリヤCRと第2結合部材32は、一体としてもよい。第2結合部材32の左側端部は、遊星キャリヤCLのインボード側の端面との間に、潤滑油の流入隙間72を介して対面している。
この中空の第2結合部材32は、左側端部に大径部77を有し、この大径部77の外周面に、左側の遊星歯車装置39Lの遊星歯車PLと噛み合う外歯車が形成され、この外歯車が左側の遊星歯車装置39Lの太陽歯車SLを構成している。
図1及び図2に示す実施形態では、前記出力側小径歯車13bが、アウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35の外周面に一体に形成されているが、それぞれ別部材としてスプライン結合(セレーション結合を含む)としてもよい。
内歯車RL、RRは、遊星キャリヤCL、CRに対して左右2個の転がり軸受39a、39bによって支持されている。
車両用駆動装置1の歯車装置30を構成する2つの遊星歯車装置39L、39Rを連結している第1結合部材31および第2結合部材32は、減速機ハウジング9の仕切り壁11を貫通して組み込まれている。
この第1結合部材31と第2結合部材32は、同軸上に配置されると共に、一方の結合部材(図1及び図2の実施形態では第2結合部材32)が中空軸、他方の結合部材(図1及び図2の実施形態では第1結合部材31)が中空軸に挿通される軸からなる二重構造になっている。
第1結合部材31は、左側端部が、遊星キャリヤCLのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35にスプライン部73により連結されている。
中空軸で構成される第2結合部材32に挿通される第1結合部材31は、右側端部に大径部79を有し、この大径部79の外周面に、右側の遊星歯車装置39Rの遊星歯車PRと噛み合う外歯車が形成され、この外歯車が右側の遊星歯車装置39Rの太陽歯車SRを構成している。
上記のように、2つの遊星歯車装置39L、39Rの第1結合部材31を、遊星キャリヤCLに対しスプライン部73によって連結することにより、2つの遊星歯車装置39L、39Rを左右に分割することが可能となり、2つの遊星歯車装置39L、39Rを減速機ハウジング9に他の減速歯車軸と一緒に左右から組込むことができる。
2つの遊星歯車装置39L、39Rを連結する二重構造の軸の内径側の第1結合部材31は、遊星歯車装置39L側の端部が、遊星キャリヤCLのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35にスプライン部73によって結合され、遊星歯車装置39R側の端部が、遊星キャリヤCRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35に転がり軸受49によって支持されている。この転がり軸受49は、開放型の深溝玉軸受によって構成することができる。
一対のキャリヤフランジ34a、34bと遊星歯車PL、PRの間には、遊星歯車PL、PRの回転を円滑化するために、歯車支持軸33が内部を通る形のスラスト板38を装着している。
転がり軸受49として開放型の深溝玉軸受を使用することにより、図4に太線矢印で示すように、右側の遊星キャリヤCRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35内に流入した潤滑油が、転がり軸受49を通って、キャリヤフランジ34aと遊星歯車PRの間に挿入したスラスト板38の外周に供給される。
ところで、図1に示すように、入力歯車軸12L、12R、中間歯車軸13L、13R、出力歯車軸14L、14Rは、減速機ハウジング9に収容されいる。図5は、右側の入力歯車軸12R、中間歯車軸13R、出力歯車軸14Rを示しているが、左側の入力歯車軸12L、中間歯車軸13L、出力歯車軸14Lも配置は同じである。即ち、図5に示すように、歯車装置30を組み込んだ中間歯車軸13L、13Rが最も低位置になるように配置され、減速機ハウジング9の下部に油溜まり87が設けられている。減速機ハウジング9の下部の油溜まり87の油面高さHは、車両の停止時に中間歯車軸13L、13Rを減速機ハウジング9に対して支持する転がり軸受20a、20bの軌道面が潤滑油に浸かるように設定され、油浴潤滑や歯車の回転による跳ね掛け潤滑が行われるようになっている。
2個の遊星歯車装置39L、39Rを同軸で結合した歯車装置30においては、図5に示すように、車両の停止時に転がり軸受20a、20bが潤滑油に浸かるように、減速機ハウジング9の下部の油溜まり87の油面高さHを設定していても、歯車装置30の内歯車RL、RRも中間歯車軸13L、13Rの大歯車として回転するため、回転する内歯車RL、RRが減速機ハウジング9の下部に溜められた潤滑油を掻き分けてしまい、特に、車両の高速走行時は中間歯車軸13L、13Rを支持する転がり軸受20a、20bの軌道面が潤滑油に浸からない状態になる。
減速機ハウジング9の下部の油溜まり87から歯車の回転で掻き上げられ飛散した潤滑油は、減速機ハウジング9の内壁に付着し、内壁に設けられたリブ(図示省略)に沿って流れ落ち、図3及び図4に太線矢印で示すように、遊星歯車装置39L、39Rの遊星キャリヤCL、CRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35を支持する転がり軸受20bを通って、中空軸部35内に潤滑油が流入する。
一方、右側の遊星歯車装置39Rの遊星キャリヤCRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35の内部に流入した潤滑油は、図4の太線矢印で示すように、キャリヤフランジ34aの中空軸部35に対して第1結合部材31の右側端部を支持する転がり軸受49の内部を通って、キャリヤフランジ34aと遊星歯車PRの間に挿入したスラスト板38の外周に供給される。
ところで、図1及び図2に示す実施形態では、歯車装置30の軸方向寸法を小さくするために、遊星キャリヤCL、CRのインボード側の側面に凹部80を設け、この凹部80内に、遊星キャリヤCL、CRの両端を支持する転がり軸受20a、20bのうち、インボード側の転がり軸受20aの一部が嵌り、インボード側の転がり軸受20aと、内歯車RL、RRを遊星キャリヤCL、CRに対して支持する転がり軸受39a、39bのインボード側の転がり軸受39bとが軸方向で一部が重なるように配置されている。
このように、インボード側の転がり軸受20aの一部を、遊星キャリヤCL、CRのインボード側の側面の凹部80に嵌め入れると、油浴潤滑や歯車の回転による跳ね掛け潤滑では、インボード側の転がり軸受20aに潤滑油が供給され難くなる。
このため、この発明では、歯車装置30を支持する転がり軸受20a、20bのうち、油浴潤滑や歯車の回転による跳ね掛け潤滑によって潤滑油が供給され難いインボード側の転がり軸受20aに対し、潤滑油が供給されるように、潤滑油の供給経路を次のようにして確保している。
まず、第1結合部材31に、軸心給油の油路となる、軸方向穴81と位相違いの複数の径方向穴82、83を設けている。
そして、中空軸で構成された第2結合部材32にも位相違いの複数の径方向穴84を設けている。
第1結合部材31に設ける軸方向穴81は、一端が遊星キャリヤCL、CRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aからアウトボード側(車両の外側)に延びる中空軸部35に開口するように設けられている。図1及び図2の実施形態では、軸方向穴81の一端が、遊星キャリヤCLのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35に開口している。
第1結合部材31に設けられた軸方向穴81は、その他端が、遊星キャリヤCLのインボード側のキャリヤフランジ34bのインボード側に延びる中空軸部36を越えるように設けられている。
第1結合部材31に設けられる径方向穴82、83のうち、アウトボード側の径方向穴82は、第2結合部材32の左側端部と遊星キャリヤCLのキャリヤフランジ34aのインボード側の端面との間に設けた流入隙間72に開口するように設けられている。
第1結合部材31に設けられる他方の径方向穴83は、左右の遊星キャリヤCL、CRの中間位置に開口するように設けらている。
第1結合部材31に設けられる径方向穴82、83は、180°、120°、90°等の等配位置に開けられいる。図1及び図2に示す実施形態では、第1結合部材31に設けられる径方向穴83は、図7に示すように、180°の対向位置に開けられている。
第1結合部材31に設けられる径方向穴83は、径方向穴83から供給された潤滑油が第2結合部材32の内周面へ飛散し、第2結合部材32の径方向穴84を経由して遊星キャリヤCL、CRのインボード側の転がり軸受20aへ飛散しやすいように、第1結合部材31の径方向穴83の軸方向位置は、第2結合部材32の径方向穴84の近傍に設けられる。
第2結合部材32に設けられる径方向穴84は、左右の遊星キャリヤCL、CRのインボード側の中空軸部36の間に位置するように設けられている。
第2結合部材32に設けられる径方向穴84は、180°、120°、90°等の等配位置に開けられている。図1及び図2に示す実施形態では、第2結合部材32に設けられる径方向穴84は、図7に示すように、180°の対向位置に開けられている。
この第2結合部材32に設けられる径方向穴84の軸方向位置は、インボード側の転がり軸受20aの内部に潤滑油が流入し易いよう、転がり軸受20aの近傍の位置とする。
例えば、インボード側の転がり軸受20aの2個の転動体の中心間の位置、即ち図6のAの範囲内に径方向穴84を配置するのが良い。
さらに、インボード側の転がり軸受20aの内部に潤滑油がより流入し易いよう、第2結合部材32の径方向穴84の軸方向位置を、インボード側の転がり軸受20aのインボード側の端面間、即ち、図6のBの範囲内に配置するのが良い。
また、インボード側の転がり軸受20aの内部にさらに飛散しやすいよう、第2結合部材32の径方向穴84の開口部の少なくとも一部が、遊星キャリヤCL、CRのインボード側端部間、即ち、図6のCの範囲に位置することが望ましい。
第2結合部材32の内周面に、径方向穴84を含むように周方向溝85を設けてもよい。第1結合部材31の径方向穴83から飛散した潤滑油を周方向溝85に集めることができるので、第2結合部材32の径方向穴84へ効率よく流すことが可能となる。
次に、減速機ハウジング9の内壁、リブ(図示省略)に沿って流れる潤滑油を、より多く受け止めて、遊星キャリヤCL、CRのアウトボード側のキャリヤフランジ34aの中空軸部35内に供給できるように、中間歯車軸13L、13Rのアウトボード側の端部を支持する、モータハウジング4L、4Rの内側壁4cL、4cRの軸受嵌合穴19bに切欠き部19cを設け、図3及び図4に太線矢印で示すように、減速機ハウジング9の内壁、リブに沿って流れる潤滑油を、切欠き部19cから中間歯車軸13L、13Rのアウトボード側の中空軸部35の側面に流れ込み易くしている。
さらに、中間歯車軸13L、13Rのアウトボード側の中空軸部35の開口が対向する内側壁4cL、4cRに、内側壁4cL、4cRに沿って流れ込んだ潤滑油を受け、中空軸部35の内部に潤滑油を導く導油部材86を取付けている。
導油部材86は、図8及び図9に示すように、内側壁4cL、4cRにねじ固定され、上面に漏斗形状の受け部86aを有する受け板86bと、受け部86aの底部に連通し、受け部86aに流れ込んで集油された潤滑油を、中間歯車軸13L、13Rの中空軸部35の軸方向の内部に導く導油管86cとからなる。
左側の導油部材86の導油管86cは、右側の端部が第1結合部材31に設けられた軸方向穴81内に挿入され、導油部材86によって集油した潤滑油を導油管86cによって第1結合部材31の軸方向穴81内に供給している。
左側の遊星歯車装置39Lでは、図3に太線矢印で示すように、減速機ハウジング9の内壁、リブに沿って流れる潤滑油は、軸受嵌合穴19bに設けた切欠き部19cからモータハウジング4Lの内側壁4cLに取付けた導油部材86の受け部86aに流入する。導油部材86の受け部86aに流入して集油された潤滑油は、導油管86cを通って、第1結合部材31の軸方向穴81の内部に導かれる。第1結合部材31の軸方向穴81の内部に供給された潤滑油は、その後、第1結合部材31の左側の径方向穴82から第2結合部材32の左側端部と遊星キャリヤCLのキャリヤフランジ34aのインボード側の端面との間に設けた流入隙間72から遊星歯車PLに供給され、遊星歯車PLの内部と外部の歯車の歯面を潤滑する。さらに、第1結合部材31の軸方向穴81の内部に供給された潤滑油は、インボード側の径方向穴83から第2結合部材32の内周面に飛散し、第2結合部材32の内周面に飛散した潤滑油が、さらに第2結合部材32の径方向穴84から飛散し、二つの遊星歯車装置39L、39Rのインボード側の遊星キャリヤ34bを支持する転がり軸受20aに供給される。これにより、遊星キャリヤ34bを支持する転がり軸受20aが潤滑不良によって早期に破損したり、異音が生じたりするということを防止することができる。
他方の右側の遊星歯車装置39Rでは、図4に太線矢印で示すように、減速機ハウジング9の内壁、リブに沿って流れる潤滑油は、軸受嵌合穴19bに設けた切欠き部19cから内側壁4cRに取付けた導油部材86の受け部86aに流入する。導油部材86の受け部86aに流入した潤滑油は、導油管86cを通って、キャリヤフランジ34aの中空軸部35の内部に導かれ、その後、第1結合部材31の右側端部を支持する転がり軸受49内を通り、キャリヤフランジ34aと遊星歯車PRの間に挿入したスラスト板38の外周に供給され、遊星歯車PRの内部と外部の歯車の歯面を潤滑する。
以上の実施形態では、二つの駆動源として電動モータ2L、2Rを用い、同一の最大出力を有する同一出力特性の電動モータである場合を例示したが、二つの駆動源はこれに限られない。
また、以上の実施形態では、トルク差増幅機構を構成する歯車装置30は平行軸歯車減速機の中間歯車軸13L、13Rに位置するが、中間歯車軸13L、13R(大歯車を構成する大径の入力側大径歯車13aと小歯車を構成する出力側小径歯車13bが同軸にある軸)は複数あってもよく、そのうちの1軸にトルク差増幅機構である歯車装置30を組み込むことができる。
なお、車両用駆動装置1が搭載される車両は、電気自動車やハイブリッド電気自動車に限られず、例えば、第1の電動モータ2L及び第2の電動モータ2Rを駆動源とした燃料電池自動車であってもよい。
この発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲において、さらに種々の形態で実施し得る。
1 :車両用駆動装置
2L、2R :電動モータ
3L、3R :減速機
4L、4R :モータハウジング
4aL、4aR :モータハウジング本体
4bL、4bR :外側壁
4cL、4cR :内側壁
5 :ロータ
5a :モータ軸
6 :ステータ
7 :シール部材
8a、8b :転がり軸受
9 :減速機ハウジング
11 :仕切り壁
12L、12R :入力歯車軸
12a :入力歯車
13L、13R :中間歯車軸
13a :入力側大径歯車
13b :出力側小径歯車
14L、14R :出力歯車軸
14a :出力歯車
16a、16b :軸受嵌合穴
17a、17b :転がり軸受
19a、19b :軸受嵌合穴
19c :切欠き部
20a、20b :転がり軸受
30 :歯車装置
31 :第1結合部材
32 :第2結合部材
33 :歯車支持軸
34a、34b :キャリヤフランジ
35、36 :中空軸部
37 :軸受
38 :スラスト板
39L、39R :遊星歯車装置
39a、39b、49 :転がり軸受
53a、53b :軸受嵌合穴
54a、54b :転がり軸受
55 :シール部材
60 :シャーシ
61L、61R :駆動輪
62L、62R :前輪
63 :バッテリ
64 :インバータ
65a、65b :等速ジョイント
65c :中間シャフト
72 :流入隙間
73、74 :スプライン部
77 :大径部
78 :インロウ部
79 :大径部
80 :凹部
81 :軸方向穴
82、83、84 :径方向穴
85 :周方向溝
86 :導油部材
86a :受け部
86b :受け板
86c :導油管
87 :油溜まり
AM :電気自動車
CL、CR :遊星キャリヤ
PL、PR :遊星歯車
RL、RR :内歯車
SL、SR :太陽歯車
2L、2R :電動モータ
3L、3R :減速機
4L、4R :モータハウジング
4aL、4aR :モータハウジング本体
4bL、4bR :外側壁
4cL、4cR :内側壁
5 :ロータ
5a :モータ軸
6 :ステータ
7 :シール部材
8a、8b :転がり軸受
9 :減速機ハウジング
11 :仕切り壁
12L、12R :入力歯車軸
12a :入力歯車
13L、13R :中間歯車軸
13a :入力側大径歯車
13b :出力側小径歯車
14L、14R :出力歯車軸
14a :出力歯車
16a、16b :軸受嵌合穴
17a、17b :転がり軸受
19a、19b :軸受嵌合穴
19c :切欠き部
20a、20b :転がり軸受
30 :歯車装置
31 :第1結合部材
32 :第2結合部材
33 :歯車支持軸
34a、34b :キャリヤフランジ
35、36 :中空軸部
37 :軸受
38 :スラスト板
39L、39R :遊星歯車装置
39a、39b、49 :転がり軸受
53a、53b :軸受嵌合穴
54a、54b :転がり軸受
55 :シール部材
60 :シャーシ
61L、61R :駆動輪
62L、62R :前輪
63 :バッテリ
64 :インバータ
65a、65b :等速ジョイント
65c :中間シャフト
72 :流入隙間
73、74 :スプライン部
77 :大径部
78 :インロウ部
79 :大径部
80 :凹部
81 :軸方向穴
82、83、84 :径方向穴
85 :周方向溝
86 :導油部材
86a :受け部
86b :受け板
86c :導油管
87 :油溜まり
AM :電気自動車
CL、CR :遊星キャリヤ
PL、PR :遊星歯車
RL、RR :内歯車
SL、SR :太陽歯車
Claims (5)
- 車両に搭載され車輪を駆動する独立して制御可能な二つの電動モータと、二つの電動モータと二つの出力部との間に設けられ、二つの電動モータからのトルクを二つの出力部に分配する歯車装置と、二つの電動モータのトルクを二つの出力部に伝達する減速機とを備える車両用駆動装置において、減速機は、電動モータに連結し、入力歯車を有する入力歯車軸と、出力部に連結し、出力歯車を有する出力歯車軸と、歯車の噛合いにより入力歯車軸から出力歯車軸の間のトルク伝達を行う中間歯車軸が少なくとも1つ以上備え、歯車装置は、同軸に設けられた左右の1対の中間歯車軸と同軸上に二つ組み合わせた3要素2自由度の遊星歯車装置からなり、この遊星歯車装置は、内歯車と、内歯車と同軸上に設けられた遊星キャリヤと、内歯車と同軸上に設けられた太陽歯車と、公転歯車としての複数の遊星歯車とを備え、二つの遊星歯車装置の一方の遊星キャリヤと他方の太陽歯車とを結合する第1結合部材と、一方の太陽歯車と他方の遊星キャリヤとを結合する第2結合部材とを有し、第2結合部材は中空軸であり、第1結合部材は第2結合部材に内包され、第1結合部材と第2結合部材で二重軸となり、歯車装置の二つの遊星歯車機構の遊星キャリヤは、それぞれが両端を転がり軸受を介して減速機ハウジングに支持され、減速機の潤滑機構が、減速機ハウジング下部に溜まった潤滑油を歯車の回転により飛散させて潤滑する跳ね掛け潤滑であり、第1結合部材に軸心給油の油路となる軸方向穴と位相違いの複数の径方向穴を設け、中空軸からなる第2結合部材に位相違いの複数の径方向穴を設け、第1結合部材に設けられた軸方向穴の端面に対面する減速機ハウジングの壁面に、減速機ハウジングの壁面を流れる潤滑油を集油し、第1結合部材の軸方向穴内に潤滑油を供給する導油部材を設け、導油部材から第1結合部材の軸方向穴内に供給された潤滑油を、第1結合部材に設けた径方向穴から外側の第2結合部材の内周面に給油し、第2結合部材の内周面に給油された潤滑油を、二つの遊星歯車装置の遊星キャリヤの両端を支持する転がり軸受のうちのインボード側の転がり軸受に対し第2結合部材に設けた径方向穴から給油するようにしたことを特徴とする車両用駆動装置。
- 第2結合部材に設けた径方向穴の軸方向位置が、歯車装置を構成する二つの遊星歯車機構のインボード側の遊星キャリヤを減速機ハウジングに対して支持する二つの転がり軸受の転動体間の中心位置にあることを特徴とする請求項1記載の車両用駆動装置。
- 第2結合部材に設けた径方向穴の軸方向位置が、歯車装置を構成する二つの遊星歯車機構のインボード側の遊星キャリヤを減速機ハウジングに対して支持する二つの転がり軸受のインボード側の端面間に位置することを特徴とする請求項1記載の車両用駆動装置。
- 第2結合部材に設けた径方向穴の開口部の少なくとも一部が、歯車装置を構成する二つの遊星歯車機構のインボード側の遊星キャリヤの端面間に位置することを特徴とする請求項1記載の車両用駆動装置。
- 第二結合部材の内周面に、前記径方向穴を含むように周方向溝を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用駆動装置。
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JP2016192398A JP2018054053A (ja) | 2016-09-30 | 2016-09-30 | 車両用駆動装置 |
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JP2016192398A JP2018054053A (ja) | 2016-09-30 | 2016-09-30 | 車両用駆動装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2016
- 2016-09-30 JP JP2016192398A patent/JP2018054053A/ja active Pending
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