以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
[複合機1] 図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の一例としての複合機1の外観を示す斜視図である。本実施形態においては、矢印13で示される方向が複合機1の幅方向(左右方向)であり、矢印14で示される方向が複合機1の高さ方向(上下方向)であり、矢印12で示される方向が複合機1の奥行き方向(前後方向)である。
複合機1は、下部に配設されたプリンタ部2と、プリンタ部2の上部に配設されたスキャナ部3(本発明の可動部の一例である画像読取部に相当)などを一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)である。スキャナ部3は、その上部に、複合機1の天板としての原稿カバー7を備えている。複合機1は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能及びファクシミリ機能などを有する。なお、本発明を実現するうえで、スキャナ機能やファクシミリ機能などは任意の機能であり、例えば、本発明に係る画像記録装置が、プリンタ機能のみを有するプリンタとして実施されてもよい。
複合機1の上面の前方側であって、スキャナ部3の正面側の上面には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル9(本発明の操作部の一例)が設けられている。操作パネル9は、各種操作ボタンや液晶表示部11から構成されており、複合機1は、操作パネル9からの入力に基づいて複合機1の動作を統括する制御部130(本発明の制御部の一例、図7参照)により動作される。
スキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。スキャナ部3の上部には、原稿カバー7が開閉自在に設けられている。原稿カバー7の下側には、プラテンガラス6(図13参照)を上面に備え、プラテンガラス6の下部にイメージセンサ(不図示)を備えたスキャナ筐体8(図12及び図13参照)が設けられている。プラテンガラス6に原稿が載置され、原稿カバー7がプラテンガラス6を覆った状態で、原稿の画像がイメージセンサによって読み取られる。
[プリンタ部2] 以下、図1から図4が参照されながら、プリンタ部2の構成が詳細に説明される。図1に示されるように、プリンタ部2は、正面に開口4が形成されたケーシング5(本発明の筐体の一例)を有する。ケーシング5内にプリンタ部2の各構成要素が配設されている。
開口4を通じて、給紙トレイ20及び排紙トレイ21(図2参照)が複合機1に装着される。なお、図1では、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が省略されている。給紙トレイ20には、A4サイズやB5サイズ等の所望のサイズの記録用紙が収容される。図2に示されるように、給紙トレイ20が複合機1に装着されることにより、給紙トレイ20に収容された記録用紙が、当該記録用紙の長手方向が複合機1の奥行き方向12となるようにセットされる。また、排紙トレイ21は、給紙トレイ20に支持されて、給紙トレイ20の上方に配置される。給紙トレイ20と排紙トレイ21とは、上下二段となって複合機1に装着される。
また、複合機1は、記録用紙の他に、CD−ROMやDVD−ROMなどの記録メディア(本発明の被記録媒体の一例)の盤面上に画像を記録する機能を有する。この機能については後述する。
複合機1に装着された給紙トレイ20の奥側には、分離傾斜板22が配設されている。分離傾斜板22は、給紙トレイ20から繰り出された記録用紙を分離して上方へ案内するものである。
分離傾斜板22の上方には、搬送路23が形成されている。搬送路23は、分離傾斜板22の上側から上方且つ複合機1の前側へ曲がって、複合機1の背面側(後側)から正面側(前側)へ延出され、さらに、駆動ローラ47(本発明の第1ローラの一例)とピンチローラ48(本発明の第2ローラの一例)で構成される搬送ローラ対54(本発明の第2搬送部の一例)による挟持位置、画像記録部24(本発明の記録部の一例)の下側、及び駆動ローラ49と拍車ローラ50で構成される排出ローラ対55(本発明の第1搬送部の一例)による挟持位置を通過して排紙トレイ21へ通じている。給紙トレイ20から繰り出された記録用紙は、搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録部24に至る。当該記録用紙は、画像記録部24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。搬送路23は、画像記録部24などが配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面29と内側ガイド面28によって形成されている。
以下、記録用紙などの被記録媒体が、搬送ローラ対54による挟持位置から画像記録部24の下側及び排出ローラ対55による挟持位置を通過して排紙トレイ21へ搬送される向きを搬送方向(第1搬送部の駆動によって被記録媒体が移動する方向)の第2向き16(本発明の第2向きに相当)として説明を行う。一方、第2向きと逆向きを搬送方向の第1向き15(本発明の第1向きに相当)として説明を行う。つまり、画像記録部24は排出ローラ対55より第1向き15の下流側に設けられており、搬送ローラ対54は画像記録部24よりも第1向き15の下流側に設けられている。尚、本実施形態では搬送方向は、矢印12で示される方向(前後方向)と平行な方向である。
給紙トレイ20の上側には、給紙ローラ25が設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に接離可能に上下動する給紙アーム26の端部で軸支されている。給紙ローラ25は、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27によって、給紙モータ76(図7参照)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙トレイ20上に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して搬送路23へ供給するものである。詳細には、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接して、その状態で、給紙ローラ25が回転することにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力で最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ送り出される。当該記録用紙は、その前端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、搬送路23へ送り込まれる。
[画像記録部24] 画像記録部24は、記録ヘッド30を搭載して主走査方向(図2の紙面に垂直な方向)へ往復移動するキャリッジ31を備えている。記録ヘッド30は、キャリッジ31の下側に露出されており、インクタンク32(図3参照)からインクチューブ33(図3参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給される。
図5に示されるように、記録ヘッド30の下面には、複数のノズル301(本発明のノズルの一例)が形成されている。各色インクに対応するノズル301は、搬送方向に沿って一列に整列されており、各色インクに対応するノズル301の各列が、キャリッジ31の往復動方向(左右方向13)に並べられている。各色のノズル301の数や搬送方向のピッチは、記録画像の解像度などに応じて適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じてノズル301の列数が増減され得る。以下、各色のノズル301が形成されている第1向き15の最下流側の位置を第3位置P3(本発明の第3位置に相当)とし、第1向き15の最上流側の位置を第4位置P4(本発明の第4位置に相当)として説明する。また、第3位置から第4位置までの距離を第2距離L2(本発明の第2距離に相当)として説明する。
記録ヘッド30は、その下面に設けられたノズル301から、各インクを微小なインク滴として吐出する。キャリッジ31が主走査方向へ往復動することにより、記録ヘッド30が記録用紙に対して走査され、プラテン34上を搬送される記録用紙に画像が記録される。
以上より、画像記録部24は、排出ローラ対55より第1向き15の下流側に設けられ、第1向き15の最下流側の第3位置P3から最上流側の第4位置P4までの第2距離L2に亘って複数のノズル301が形成され、ノズル301からインク滴を吐出して記録用紙などの被記録媒体に画像を記録する。
図3及び図4に示されるように、画像記録部24が配置される搬送路23の上側には、一対のガイドレール35,36が配設されている。ガイドレール35,36は、記録用紙の搬送向きに隔てて、搬送路23の幅方向(左右方向13)に延設されている。キャリッジ31は、ガイドレール35,36を跨ぐようにして、ガイドレール35,36上を左右方向13に摺動可能に設けられている。
記録用紙が搬送される向き(第2向き16)の上流側に配設されたガイドレール35は、左右方向13の長さがキャリッジ31の走査幅より長い平板状のものである。ガイドレール35の上面が、キャリッジ31の第2向き16の上流側の端部を摺動自在に担持している。
第2向き16の下流側に配設されたガイドレール36は、左右方向13の長さがガイドレール35と略同じ長さの平板状のものである。ガイドレール36の上面が、キャリッジ31の第2向き16の下流側の端部を摺動自在に担持している。ガイドレール36の第2向き16の上流側の端部37は、上方へ向かって略直角に曲折されている。キャリッジ31には、ガイドレール36の端部37を挟み込むようにして端部37と係合する不図示の係合部材が設けられている。これにより、キャリッジ31は、ガイドレール35,36上に摺動自在に担持され、ガイドレール36の端部37を基準として、左右方向13に往復移動することが可能となる。
ガイドレール36の上面には、ベルト駆動機構38が配設されている。ベルト駆動機構38は、搬送路23の幅方向13の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ39と従動プーリ40との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト41が張架されてなるものである。駆動プーリ39の軸にはキャリッジ(CR)駆動モータ311(図7参照)が連結されており、CR駆動モータ311から駆動力が入力される。駆動プーリ39の回転により、タイミングベルト41が周運動する。なお、タイミングベルト41は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ31に固着するものを用いてもよい。
キャリッジ31は、タイミングベルト41に固着されている。タイミングベルト41の周運動により、キャリッジ31は、端部37を基準としてガイドレール35,36上を往復移動する。キャリッジ31には、記録ヘッド30が搭載されている。したがって、記録ヘッド30は、キャリッジ31とともに搬送路23の幅方向13を主走査方向として往復移動可能である。ガイドレール36には、端部37に沿ってリニアエンコーダのエンコーダストリップ42が配設されている。リニアエンコーダは、フォトインタラプタ(不図示)によりエンコーダストリップ42を検出する。リニアエンコーダの検出信号に基づいて、キャリッジ31の往復移動が制御される。
図2から図4に示されるように、搬送路23の下側には、記録ヘッド30と対向してプラテン34が配設されている。プラテン34は、キャリッジ31の往復移動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に亘って配設されている。プラテン34の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン34の上を通過する。
図3に示されるように、記録ヘッド30による画像記録範囲外、すなわちプラテン34の両側の記録用紙が通過しない範囲には、パージ機構43及び廃インクトレイ44が配設されている。パージ機構43は、記録ヘッド30のノズル等からインクとともに気泡や異物を吸引除去するものである。パージ機構43は、記録ヘッド30のノズル面を覆うキャップ45を備える。記録ヘッド30の気泡等の吸引除去を行う際には、記録ヘッド30がキャップ45上に位置するようにキャリッジ31が移動される。その状態でキャップ45が上方へ移動して記録ヘッド30の下面のノズル301を密閉するように密着する。そして、キャップ45と連結されたポンプ(不図示)により記録ヘッド30のノズル301からインクが吸引される。
廃インクトレイ44は、キャリッジ31の画像記録範囲外であってパージ機構43の反対側に配設されている。廃インクトレイ44は、記録ヘッド30のインクの空吐出を受けるものである。この空吐出は、フラッシングと呼ばれる。
図3に示されるように、インクタンク32は、プリンタ部2のケーシング5内部の正面右側に設けられたインクタンク収容部46に収容されている。このインクタンク32は、詳細には、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクを貯蔵する4個のインクタンク32C,32M,32Y,32Kを備えてなる。インクタンク32からキャリッジ31へは、各色について設けられたインクチューブ33を通じてインクが供給される。
図2及び図4に示されるように、画像記録部24よりも第2向き16の上流側には、搬送ローラ対54が設けられている。搬送ローラ対54は、駆動ローラ47と該駆動ローラ47の下方に駆動ローラ47に接するように設けられたピンチローラ48とが一体にユニット化されたものである。駆動ローラ47が正転駆動されることで、給紙トレイ20から給紙された記録用紙が駆動ローラ47及びピンチローラ48により狭持されて、第2向き16の下流側のプラテン34上へ搬送される。
画像記録部24の第2向き16の下流側には、駆動ローラ49と該駆動ローラ49の上方に設けられた拍車ローラ50とを有する一対の排出ローラ対55が設けられている。記録済みの記録用紙は、駆動ローラ49及び拍車ローラ50によって狭持され、駆動ローラ49が正転駆動されることにより排紙トレイ21へ排出する向き(第2向き16)へ搬送される。また、駆動ローラ49が逆転駆動されることにより、後述するメディアトレイ71(本発明の第1トレイの一例)が第1向き15へ搬送される。なお、拍車ローラ50は、記録済みの記録用紙と圧接するため、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸に形成されている。
図4及び図5に示されるように、駆動ローラ47は、駆動ローラ47の軸方向の一端に連結された搬送モータ59(本発明の駆動源の一例)から駆動力が伝達されて、回転駆動される。駆動ローラ49は、駆動ローラ47より中間ギア57及びベルト58を介して駆動伝達されて、回転駆動される。また、駆動ローラ47及び駆動ローラ49は制御基板52(図3参照)に実装されたASIC135(図7参照)に組み込まれた駆動回路により制御されることで、その回転方向が正転又は逆転のいずれかに切り換えられる。かかる回転方向の切換は、搬送モータ59に対するスイッチング制御により、或いは、各ローラの回動軸に搬送モータ59の回転力を伝達するギアなどを切り換えることにより行われる。
以上より、搬送ローラ対54は、搬送モータ59より駆動伝達されて回転する駆動ローラ47と、駆動ローラ47に接するように配置された拍車ローラ50とを具備しており、排出ローラ対55は、搬送モータ59より駆動伝達されて回転する駆動ローラ49と、駆動ローラ49に接するように配置された拍車ローラ50とを具備している。
また、駆動ローラ47及び駆動ローラ49は、搬送モータ59が駆動制御されることによって、所定の改行幅で間欠駆動される。駆動ローラ47及び駆動ローラ49の回転は同期されている。図4及び図5に示されるように、ロータリーエンコーダ(不図示)が、駆動ローラ47に設けられたエンコーダディスク51をフォトインタラプタ60で検出し、該ロータリーエンコーダの検出信号に基づいて、駆動ローラ47及び駆動ローラ49の駆動が制御される。
図2に示されるように、記録用紙は、駆動ローラ47及び駆動ローラ49によって、所定の改行幅でプラテン34上を間欠して第2向き16に搬送される。その改行毎に記録ヘッド30が走査されて、記録用紙の先端側から画像記録が行われる。記録ヘッド30により記録用紙の所定領域に画像記録が行われた後に、駆動ローラ49が連続的に回転駆動される。これにより、駆動ローラ49及び拍車ローラ50により狭持された記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
[メディアトレイ71] 上述したように、複合機1は、CD−ROMやDVD−ROMなどの記録メディアの盤面上に画像を記録する機能を有する。本実施形態においては、記録メディアの盤面上に画像が記録される場合、記録メディアはメディアトレイ71に載置されて、メディアトレイ71が複合機1の開口4から第1向き15に挿入される。なお、記録メディアがメディアトレイ71に載置されずに、記録メディア自体が複合機1の開口4から挿入されるように、複合機1が構成されていてもよい。
図5及び図6に示されるように、メディアトレイ71は、樹脂などの剛性の高い物質で構成されており、上下方向14の厚さが数ミリ(例えば2mm〜3mm)である。また、メディアトレイ71は、搬送方向(奥行き方向12)及び幅方向13の長さが厚さ(高さ方向14)よりも長く、搬送方向(奥行き方向12)の長さが幅方向13の長さよりも長い。つまり、メディアトレイ71は、薄型の直方体である。メディアトレイ71の上面には、円形状の凹みであって記録メディアが載置されるメディア載置部78が設けられている。
以下の説明においては、メディアトレイ71の第1向き15の先端を第1位置P1(本発明の第1位置に相当)とする。尚、メディアトレイ71に記録メディアが第1向き15にはみ出して載置されている場合は、記録メディアの第1向き15の先端を第1位置P1とする。また、メディアトレイ71に載置された記録メディアにおいて画像が記録される画像記録範囲の第1向き15の後端を第2位置P2(本発明の第2位置に相当)とする。また、第1位置P1と第2位置P2との距離を第1距離L1(本発明の第1距離に相当)とする。記録メディアの第1向き15の後端に余白を残して画像を記録する場合は、余白を除いた画像記録範囲の第1向き15の後端が第2位置P2となる。
図2に示されるように、メディア載置部78に記録メディアが載置されたメディアトレイ71が、図2の矢印の向き77(第1向き15)に、つまり複合機1の正面側の開口4から搬送路23の直線部231に向けて挿入されると、図示しないセンサによりメディアトレイ71の挿入が検出されて、駆動ローラ49が逆転駆動される。これにより、メディアトレイ71が、第1向き15に所定位置まで搬送される。
所定位置は、メディアトレイ71の第1向き15の先端が以下で説明する部材(本発明の部材に相当)に接触しない位置(例えば、当該先端が当該部材と接触する位置から第2向き16に予め設定された距離の位置)であり、且つメディアトレイ71に載置された記録メディアの画像記録範囲の第1向き15の後端が記録ヘッド30に形成されたノズル301のいずれかと対向する位置である。
部材は、複合機1に配置された種々の構成要素のうち、第3位置P3から第1向き15に、第1距離L1より小さく、且つ、第2距離L2との合計が第1距離よりも大きい第3距離L3(本発明の第3距離に相当)だけ離れた位置に設けられている。ここで、第3距離L3は、メディアトレイ71の搬送方向に沿った距離として定義される。つまり、第1距離L1、第2距離L2及び第3距離L3の関係は、L3<L1<L2+L3である。本実施形態においては、当該部材は搬送ローラ対54である。つまり、図5及び図6に示されるように、第3位置P3から駆動ローラ47及びピンチローラ48による挟持位置までが第3距離L3である。
メディアトレイ71が所定位置まで搬送されると、駆動ローラ49の駆動が一旦停止された後、正転駆動に切り換えられる。これにより、メディアトレイ71が第2向き16に搬送され、メディアトレイ71に載置された記録メディアが第2向き16に搬送されながらプラテン34上を通る。プラテン34上に搬送された記録メディアに対して、後述するように、記録メディアにおける画像を記録する位置に応じて、記録ヘッド30の所定のノズルからインク滴が吐出される。これにより、記録メディアの盤面上に画像が記録されて、メディアトレイ71は最終的に排紙トレイ21から排出される。
[メディアセンサ110] 図2に示されるように、複合機1の開口4から挿入され、搬送路23を第1向き15に搬送される記録メディアを検知するためのメディアセンサ110(本発明の検知部の一例)が複合機1に設けられている。メディアセンサ110は、キャリッジ34の下面側における第1向き15の最下流側付近に設けられている。メディアセンサ110は、発光ダイオードなどからなる発光部(不図示)と、光学式センサなどからなる受光部(不図示)とを具備する。メディアセンサ110の発光部は下方へ向けて光を照射し、メディアトレイ71、記録メディア、またはプラテン34で反射した反射光が受光部で受光される。
以下に、メディアセンサ110による記録メディア(円形のCDやDVD)の位置の検出について説明する。
メディアセンサ110は、キャリッジ31とともにスライドされる。プラテン34上に記録メディアが支持されている状態でキャリッジ31がスライドされると、当該スライドの過程において、メディアセンサ110は、プラテン34の上面、メディアトレイ71の上面、または記録メディアの上面からの反射光を受光する。
プラテン34及びメディアトレイ71の上面を黒色などの反射率の低い色にしておくことによって、記録メディアからの反射光による受光部の検出値と、プラテン34またはメディアトレイ71からの反射光による受光部の検出値とが異なる値となる。受光部における検出値は、制御部130に送られる。これにより、制御部130は、記録メディアの両端の位置についてのデータを得る。
次に、メディアトレイ71が第1向き15に少し搬送された後に、上記と同様の処理が実行され、制御部130は記録メディアの両端の位置についてのデータを得る。これにより、制御部130は、記録メディアの4箇所の端部のデータを得たことになる。円の中心及び直径は、円周の少なくとも3点が明らかとなれば算出可能である。よって、制御部130は、当該4箇所の端部のデータに基づいて、円形の記録メディアの現在の中心位置を求めることができる。
メディアセンサ110は、記録メディアを検知する場合、第1位置P1から第2向き16に第3距離L3以内の領域を検知する。例えば、メディアセンサ110は、第1向き15に搬送されてきた記録メディアの先端又は先端の近傍、或いは、以下で説明するようにメディアトレイ71の位置を求める場合にはメディアトレイ71の先端又は先端の近傍を検知する。
なお、プラテン34とメディアトレイ71を異なる色とすることによって、プラテン34からの反射光による受光部の検出値と、メディアトレイ71からの反射光による受光部の検出値とが異なる値となる。これにより、制御部130は、メディアトレイ71の位置についてのデータを得ることが可能である。
[制御部130] 以下、図7が参照されて、制御部130の概略構成が説明される。制御部130が後述するフローチャートにしたがって記録制御を行うことによって、本発明が実現される。
制御部130は、複合機1の全体動作を制御するものである。制御部130は、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、ASIC135を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。これらは内部バス137によって接続されている。
ROM132には、CPU131が複合機10の各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
ASIC135には、メディアセンサ110、給紙モータ76、CR駆動モータ311及び搬送モータ59などが接続されている。ASIC135には、モータを制御する駆動回路がモータ毎に組み込まれている。CPU131から所定のモータに応じた駆動回路に各モータを回転させるための駆動信号が入力されると、駆動信号に応じた駆動電流が駆動回路から対応するモータへ出力され、これにより、対応するモータが所定の回転速度で正転又は逆転する。
メディアセンサ110は、受光部で受けた光の強度に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)を出力する。出力された信号は、制御部130に入力されて、制御部130において、その電気的レベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値以上であるかどうかが判断される。例えば、入力された信号が所定の閾値以上である場合にHIGHレベル信号(記録メディアからの反射光による信号)と判定され、所定の閾値未満の場合にLOWレベル信号(プラテン34またはメディアトレイ71からの反射光による信号)と判定される。
[記録処理] 上述の如く構成されたプリンタ部2においては、記録メディアに対する画像記録範囲のうち第1向き15の最下流側の画像記録位置と第2位置P2との距離の第4距離L4(本発明の第4距離に相当)が、第1距離L1から第3距離L3を減じた第5距離L5(本発明の第5距離に相当)未満であるときには、第3位置P3から第2向き16に、第5距離L5から第4距離L4を減じた距離の第6距離L6(本発明の第6距離に相当)以上離れたノズル301を使用して記録メディアに画像を記録するように記録部24を制御する記録処理(本発明のインクジェット記録方法の一例)が、制御部130によって行われる。以下、図8のフローチャートに基づいて、記録処理の処理手順について説明する。
複合機1に画像記録指示が入力されると、当該画像記録指示が記録メディアに対するものか記録用紙に対するものであるかが、判断される(S10、本発明の第1ステップの一例)。例えば、記録メディアが載置されたメディアトレイ71が開口4から第1向き15に挿入された後に、操作パネル9が操作されることによって、画像記録指示が入力されると、当該画像記録指示は記録メディアへの画像記録であると判断される。或いは、操作パネル9において、記録用紙ではなく記録メディアへの画像記録であると指定されても、当該画像記録指示は記録メディアへの画像記録であると判断される。尚、挿入された記録メディアまたはメディアトレイ71がメディアセンサ110によって検出された場合に、当該画像記録指示は記録メディアへの画像記録であると判断されてもよい。
ステップS10において、画像記録指示が記録メディアに対するものではなく、記録用紙に対するものであると判断されると(S10:No)、任意のノズルを使用して画像記録を行う第1画像記録処理が実行される(S20)。ステップS20においては、給紙ローラ25が回転され、給紙トレイ20上の記録用紙が搬送路23へ向けて給紙され、搬送ローラ対54を介して記録部24の下側へ搬送される。つまり、記録用紙は第2向き16に搬送される。そして、記録部24において当該記録用紙に画像が記録される。この際、当該記録用紙の画像記録位置に関わらず、複数設けられているノズル301のうちの何れのノズル301によっても当該記録用紙に画像記録され得る。つまり、制御部130は、搬送ローラ対54によって第2向き16に搬送されるシート状の被記録媒体の一例である記録用紙に対しては使用するノズルにとくに制限を設けず、画質や印刷速度のバランスが最も良いような使用ノズルと搬送量の組み合わせを用いて印刷を行うように記録部24を制御する。記録用紙に対する画像記録の一例について、以下に図9(A)に基づいて詳述する。
なお、図9(A)及び後述する図9(B)の説明においては、キャリッジ31がノズル301からインク滴を吐出しながら画像記録する1回の走査の単位を、パス(P)と称する。例えば、図9において、1回目のパスを1Pと記し、2回目のパスを2Pと記す。
また、図9(A)、(B)の各々の右側には記録用紙及び記録メディアが記されている。画像記録の際、記録用紙及び記録メディアは第2向き16に、つまり図9の紙面の上側から下側へ搬送される。記録用紙及び記録メディアの右側には1〜40の行番号が付されている。説明の便宜上、記録用紙の搬送方向の長さは40行に相当する長さであるとする。記録用紙の各行にはパス番号が付されている。これは、当該行が当該行に付された番号のパスに画像記録されることを示している。
また、説明の便宜上、図9においては、一色のみが記録用紙及び記録メディアに記録されるものとし、記録部24に設けられたノズル301は、9個であるとする。各ノズルはN1〜N9と表記される。第2向き16の最下流側のノズルN1の位置が第4位置P4であり、第2向き16の最上流側のノズルN9の位置が第3位置P3である。図9(A)、(B)の各々の左側には各パスにおける記録用紙に対するノズル301の相対位置が記されている。例えば、図9(A)においては、1パス目に、ノズルN7が記録用紙の1行目の上側に位置し、ノズルN8が記録用紙の5行目の上側に位置し、ノズルN9が記録用紙の9行目の上側に位置する。各ノズルのピッチは4行分に相当する長さであるとする。つまり、記録用紙及び記録メディアには、記録部24によって画像が記録されることによって、ピッチ単位の1/4の分解能の画像が生成される。
画像記録の開始時、ノズル301の記録用紙に対する位置は、図9(A)における1パス目(1P)の位置である。この状態で、CR駆動モータ311が駆動され、印刷データに基づいてノズル301からインク滴が選択的に吐出される。1パス目においては、インク滴は、ノズルN7〜N9から記録用紙の1行目、5行目、9行目に吐出される。
1パス目の画像記録を終えると、CR駆動モータ311が停止され、搬送モータ59が駆動されて駆動ローラ47が所定量回転される。これにより、記録用紙が、第2向き16に9行に相当する搬送量だけ搬送されて、その後停止される。駆動ローラ47の回転量が当該搬送量に到達したか否かは、ロータリーエンコーダのパルス信号に基づいて判断される。
記録用紙が停止すると、再びCR駆動モータ311が駆動され、印刷データに基づいてノズル301からインク滴が選択的に吐出される。2パス目においては、インク滴は、ノズルN5〜N9から記録用紙の2行目、6行目、10行目、14行目、18行目に吐出される。3パス目以降も同様である。このように、ノズル301からのインク滴の吐出と駆動ローラ47による記録用紙の第2向き16への搬送とが交互に行われることにより、記録用紙の第2向き16の先端から後端へ向かって順次画像が記録される。
ステップS10において、画像記録指示が記録メディアに対するものであると判断されると(S10:Yes)、ステップS10で記録メディアが挿入されている場合は、そのままステップS30へ進み、一部のノズルのみを使用して画像記録を行う第2画像記録処理が実行される(本発明の第2ステップの一例)。ステップS10で記録メディアが挿入されていない場合は、記録メディアが載置されたメディアトレイ71が開口4から挿入されて、記録メディアが排紙ローラ対55を介して記録部24の下側に搬送された後、ステップS30へ進む。
ステップS30においては、記録部24において記録メディアに画像が記録される。この際、記録メディア上の画像記録位置によっては、9個設けられているノズル301のうちの一部のノズル301によってのみ画像記録される。つまり、制御部130は、搬送ローラ対54によって第2向き16に搬送されるメディアトレイ71に載置された記録メディアに対して、画像記録位置によっては一部のノズルを使用するように記録部24を制御する。記録メディアに対する画像記録の一例について、以下に図9(B)に基づいて詳述する。
なお、図9(B)の説明においては、第1距離L1、第2距離L2、第3距離L3が記録メディアの行数で表されるものとし、第1距離L1が85、第2距離L2が40、第3距離L3が55であるとする。
メディアトレイ71は、開口4から挿入されて、記録部24の下側に向けて第1向き15に搬送される過程において、メディアセンサ110によって検知される。メディアトレイ71に載置された記録メディアに対する現在の画像記録位置は、例えば、メディアセンサ110によってメディアトレイ71の先端(第1位置P1)が検知されてからメディアトレイ71が停止されるまでの時間、及び排出ローラ対55によるメディアトレイ71の搬送速度に基づいて算出される。つまり、メディアセンサ110による検知結果に基づいて、メディアトレイ71に載置された記録メディアに対する最初の画像記録位置が算出される。
具体的には、ノズル301の記録メディアに対する位置は、図9(B)における1パス目(1P)の位置であることが認識される。また、当該1パス目(1P)において、記録メディアに対する画像記録範囲が、記録メディアの1行目から33行目までであることが認識される。そして、最初の画像記録位置が、記録メディアの1、5、9、13、17、21、25、29、33行目であることが算出される。算出されたこれらの画像記録位置の各々が、記録メディアに対する画像記録範囲のうち第1向き15の最下流側の画像記録位置に相当する。
次に、CR駆動モータ311が駆動され、印刷データに基づいてノズル301からインク滴が選択的に吐出される。この際、第3位置P3から第2向き16に、第6距離L6以上離れたノズル301のみを使用して記録メディアに画像が記録される。第6距離L6は、第5距離L5(30)から第4距離L4を減じた距離である。つまり、第6距離L6は、最初の画像記録位置が1行目である場合には30で、最初の画像記録位置が4行目である場合には26である。その他の画像記録位置についての第6距離は図10に示される。
以上より、本例での1パス目においては、図10に示されるように、最初の画像記録位置が1行目である場合、使用可能なノズル301は、第3位置(40行目)から第2向き16に第6距離(30)以上離れたノズル301であるN1、N2、N3のいずれかである。本例においては、画像記録位置が1行目である場合、ノズルN1が使用される。その他の画像記録位置への画像記録に使用可能なノズル301、及び実際に使用されるノズル301は、図10に示されるとおりである。
以上説明した使用可能なノズル301によって、各画像記録位置に対して、インク滴が選択的に吐出される。具体的には、図9(B)に示されるように、1パス目においては、インク滴は、ノズルN1から記録メディアの1行目、ノズルN2から記録メディアの5行目、ノズルN3から記録メディアの9行目、ノズルN4から記録メディアの13行目、ノズルN5から記録メディアの17行目、ノズルN6から記録メディアの21行目、ノズルN7から記録メディアの25行目、ノズルN8から記録メディアの29行目、ノズルN9から記録メディアの33行目に吐出される。
1パス目の画像記録が完了すると、CR駆動モータ311が停止され、搬送モータ59が駆動されて駆動ローラ47が所定量回転される。これにより、記録メディアが、第2向き16に1行に相当する搬送量だけ搬送されて、その後停止される。駆動ローラ47の回転量が当該搬送量に到達したか否かは、ロータリーエンコーダのパルス信号に基づいて判断される。
記録メディアが停止すると、再びCR駆動モータ311が駆動され、印刷データに基づいてノズル301からインク滴が選択的に吐出される。図9(B)に示されるように、2パス目においては、インク滴は、ノズルN1から記録メディアの2行目、ノズルN2から記録メディアの6行目、ノズルN3から記録メディアの10行目、ノズルN4から記録メディアの14行目、ノズルN5から記録メディアの18行目、ノズルN6から記録メディアの22行目、ノズルN7から記録メディアの26行目、ノズルN8から記録メディアの30行目、ノズルN9から記録メディアの34行目に吐出される。3パス目及び4パス目においても同様の処理が実行される。しかし、4パス目から5パス目への移行時では、記録メディアが、第2向き16に33行に相当する搬送量だけ搬送される。つまり、図9(B)においては、記録メディアの搬送は、3回の1行に相当する搬送と1回の33行に相当する搬送とが交互に繰り返される。このように、ノズル301からのインク滴の吐出と駆動ローラ47による記録メディアの第2向き16への搬送とが交互に行われることにより、記録メディアの先端から後端へ向かって順次画像が記録される。
[実施形態の効果] 第3距離L3が第1距離L1より大きければ(L3>L1)、任意のノズル301によって記録メディアに画像を記録しても、メディアトレイ71は搬送ローラ対54と接触しない。第1距離L1が第3距離L3及び第2距離L2の合計より大きければ(L1>L2+L3)、何れのノズル301によって記録メディアに画像を記録しても、メディアトレイ71が搬送ローラ対54と接触することは防止できない。本発明では、第1距離L1は、第3距離L3より大きく、且つ第2距離L2及び第3距離L3の合計より小さいため(L3<L1<L2+L3)、特定のノズル301によって記録メディアに画像を記録することによって、メディアトレイ71と搬送ローラ対54との接触が防止可能である。
記録メディアの第1向き15の後端付近を、第1向き15の最下流側付近のノズル301で画像記録すると、第3位置P3からメディアトレイ71の第1向き15の先端までの距離が大きくなり、メディアトレイ71は搬送ローラ対54と衝突してしまう。
例えば、上述した図8のフローチャートにおいて、ステップS50〜S70での画像記録が図9(B)ではなく図9(A)に基づいて行われると、メディアトレイ71は搬送ローラ対54と衝突してしまう。以下に詳述する。図9(A)では、1パス目(1P)において、第2位置P2(1行目の位置)と第3位置P3(ノズルN9の位置)の距離は9行分である。ここで、図8のフローチャートでは、第1距離が85である。したがって、メディアトレイ71が第3位置から第1向き15に突出する長さは、第1距離(85)から上述の9行分を減じた値、つまり76である。ここで、図8のフローチャートでは、第3距離が55である。上述のメディアトレイ71が突出する長さ(76)が第3距離(55)より大きいため、メディアトレイ71は搬送ローラ対54と衝突してしまう。
しかし、本実施形態では、記録メディアの第1向き15の後端付近(第2位置P2から第1向き15に第5距離L5以内の位置)を、第1向き15の最下流側付近でないノズル301(第3位置P3から第2向き16に第6距離L6以上離れたノズル)で印字するため、メディアトレイ71の第1向き15の先端が、第3位置P3から第3距離L3以上、第1向き15の下流側へ離間することがない。
例えば、上述した図8のフローチャートにおいて説明したとおりに、ステップS50〜S70での画像記録が図9(B)に基づいて行われると、メディアトレイ71は搬送ローラ対54と衝突しない。以下に詳述する。図9(B)では、1パス目(1P)において、第2位置P2(1行目の位置)と第3位置P3(ノズルN9の位置)の距離は33行分である。ここで、図8のフローチャートでは、第1距離が85である。したがって、メディアトレイ71が第3位置から第1向き15に突出する長さは、第1距離(85)から上述の33行分を減じた値、つまり52である。ここで、図8のフローチャートでは、第3距離が55である。上述のメディアトレイ71が突出する長さ(52)が第3距離(55)より小さいため、メディアトレイ71は搬送ローラ対54と衝突しないのである。
また、本実施形態では、記録メディアの第1向き15の後端付近は特定のノズル301によって画像記録され、当該後端付近以外は任意のノズル301によって画像記録される。したがって、記録メディアの全領域に対して画像記録が可能である。
また、本実施形態では、厚みのある記録メディアとは異なり記録用紙は、搬送ローラ対54や排出ローラ対55と接触しても挟持されるため、搬送ローラ対54や排出ローラ対55によって第2向き16に搬送される。したがって、記録用紙に対する画像記録においては、任意のノズル301が使用されても問題ない。任意のノズル301が使用されることで、高画質での画像記録が可能である。
また、記録メディアの第1向き15の後端付近が、メディアセンサ110によって検知されると、第3位置P3からメディアトレイ71の第1向き15の先端までの距離が大きくなる。その結果、メディアトレイ71は搬送ローラ対54と衝突してしまう。しかし、本実施形態では、記録メディアの第1向き15の先端付近(第1位置P1から第2向き16に第3距離L3以内)のみが、メディアセンサ110によって検知される。したがって、記録メディアがメディアセンサ110によって検知されるときにおいて、メディアトレイ71と搬送ローラ対54との衝突が防止可能である。
[実施例の変形例1] 上述の実施形態においては、部材が搬送ローラ対54である場合について説明したが、部材が複合機1の筐体であってもよい。例えば、図11(A)に示されるように、部材が複合機1のケーシング5のうち、記録メディア又はメディアトレイ71を搬送方向の第1向き15に延長した領域と交差する部分であってもよい。例えば、当該部分は、複合機1の背面を構成する壁面53である。この場合、第3距離L3は、第3位置P3から壁面53までの距離である。
上述したとおり、本発明では、メディアトレイ71の第1向き15の先端が、第3位置P3から第3距離L3以上、第1向き15の下流側へ離間することがない。したがって、上述の構成においては、図11(A)に示されるように、メディアトレイ71が、複合機1の壁面53と衝突することが防止可能である。また、メディアトレイ71が、複合機1の壁面53から第1向き15の下流側へはみ出して、複合機1の外部へ突出することが防止可能である。
[実施例の変形例2] 複合機1の背面から第1向き15の下流側へ突き出た突出部(本発明の突出部に相当)が複合機1に設けられている場合、第3距離L3は、第3位置P3から複合機1のケーシング5において最も複合機1から第1向き15の下流側へ突き出た突出部の先端までの距離であってもよい。例えば、図11(B)に示されるように、外側ガイド面29が複合機1のケーシング5の背面の壁面53の一部を構成しており、外側ガイド面29が壁面53より後方に位置する場合、外側ガイド面29が当該突出部となる。この場合、部材が外側ガイド面29であってもよく、第3距離L3は、第3位置P3から外側ガイド面29のうちの後方へ最も突出した部分までの距離である。
なお、図11(B)においては、メディアトレイ71の第1向き15の先端が、外側ガイド面29のうちの後方へ最も突出した部分の近傍に達することが可能である。この場合、メディアトレイ71の第1向き15の先端の近傍部分は、複合機1の背面の壁面53よりも後方に達してしまう。そのため、図11(B)においては、メディアトレイ71を貫通させるための開口562が穿たれている。
[実施例の変形例3] 変形例2で説明した突出部は、記録用紙を保持可能な手差しトレイ56(本発明の第2トレイの一例)であってもよい。例えば、図11(C)に示されるように、手差しトレイ56は、壁面53から後方へ斜め上方へ傾倒している。手差しトレイ56の先端(前方側の端部)から記録用紙をUターン搬送させるために搬送路23が湾曲している部分との合流点232までの間に第2の搬送路233が形成されている。記録用紙は、複合機1のユーザによって、手差しトレイ56に担持されつつ、複合機1の背面の壁面53に穿たれた開口561から前方に存在する合流点232に向けて挿入される。記録用紙は、第2の搬送路233を介して、搬送ローラ対54などにより記録部24の下側へ搬送される。以上のような構成の場合、第3距離L3は、第3位置P3から手差しトレイ56のうちの後方へ最も突出した部分までの距離である。
なお、図11(C)においては、メディアトレイ71の第1向き15の先端が、手差しトレイ56のうちの後方へ最も突出した部分の近傍に達することが可能である。この場合、メディアトレイ71の第1向き15の先端の近傍部分は、複合機1の背面の壁面53よりも後方に達してしまう。そのため、図11(C)においては、壁面53に上記開口561とは異なる開口であって、メディアトレイ71を貫通させるための開口562が穿たれている。
複合機1は、その背面において最も突出している部分が当該複合機1を設置した室の壁などに接触しないように設置される。なお、最も突出している部分は、例えば変形例2で述べた外側ガイド面29や変形例3で述べた手差しトレイ56である。外側ガイド面29と手差しトレイ56の双方が複合機1に設けられている場合は、最も突出している部分は、図11(B)、(C)の場合、手差しトレイ56である。また、上述したとおり、本実施形態では、メディアトレイ71の第1向き15の先端が、第3位置P3から第3距離L3以上、第1向き15の下流側へ離間することがない。そのため、メディアトレイ71が、複合機1の背面において最も突出している部分よりも更に突出することがない。したがって、メディアトレイ71が、複合機1を設置した室の壁などに衝突することが防止可能である。
[実施例の変形例4] 部材は、複合機1に搭載され、複合機1から第1向き15の下流側、つまり後方側への突出が小さい第1姿勢(本発明の第1姿勢の相当)と突出が大きい第2姿勢(本発明の第2姿勢の相当)とに姿勢変化可能な複数の可動部(本発明の可動部に相当)のうち、第2姿勢のときに複合機1から第1向き15の下流側へ最も突出する可動部であってもよい。この場合、第3距離L3は、第3位置P3から、第2姿勢のときの可動部における複合機1から第1向き15の下流側へ最も突出した部分までの距離である。
例えば、可動部は、スキャナ部3のスキャナ筐体8(本発明のカバー部材の一例)であってもよい。図12(A)に示されるように、スキャナ筐体8は、ケーシング5の上面に対して開閉可能なように複合機1の後方側で蝶番81などの支持機構によって回動可能に支持されている。これにより、スキャナ筐体8は、ケーシング5の上面を覆う閉姿勢(本発明の第1姿勢の一例、図1に示される姿勢)とケーシング5の上面から上方へ開いた開姿勢(本発明の第2姿勢の一例、図12(A)に示される姿勢)との間で回動可能となる。変形例4においては、ケーシング5の上面は開放されている。そのため、スキャナ筐体8が図12(A)に示されるように上方へ開けられてケーシング5の上面が露出されると、ユーザは、ケーシング5の上面から搬送ローラ対54などの内部へアクセスすることが可能となる。そして、ユーザは、プリンタ部2内の構成要素のメンテナンスやジャム処理などを行うことが可能となる。なお、変形例4においても、変形例3と同様、壁面53にメディアトレイ71を貫通させるための開口562が穿たれている。以上のような構成の場合、第3距離L3は、第3位置P3からスキャナ筐体8のうちの後方へ最も突出した部分までの距離である。
[実施例の変形例5] 変形例4で説明した可動部の別の例として、可動部は、変形例3の手差しトレイ56が回動可能に配置されたもの(本発明の第3トレイの一例)であってもよい。例えば、図12(B)に示されるように、複合機1の背面の壁面53に対して開閉可能なように複合機1の後方側且つ手差しトレイ56の下端部で蝶番563などの支持機構によって回動可能に支持されている。これにより、手差しトレイ56は、実線で示される第2姿勢(本発明の第2姿勢の一例)と、破線で示される第1姿勢(本発明の第1姿勢の一例)とに姿勢変化される。手差しトレイ56は、第1姿勢をとっているとき、壁面53に沿って起立する。また、手差しトレイ56は、第2姿勢をとっているとき、壁面53から更に後方側へ斜め上方に傾倒している。手差しトレイ56には、第2姿勢において、各種サイズの記録用紙を載置可能である。変形例5においても、変形例3と同様に、第2の搬送路233及び開口561(図12(B)では不図示)が形成されており、手差しトレイ56が第2姿勢をとっているときに、複合機1のユーザによって、記録用紙が挿入される。また、変形例3と同様に、メディアトレイ71を貫通させるための開口562が穿たれている。以上のような構成の場合、第3距離L3は、第3位置P3から第2姿勢をとっている手差しトレイ56のうちの後方へ最も突出した部分までの距離である。
[実施例の変形例6] 変形例4で説明した可動部の別の例として、可動部は、スキャナ部3であってもよい。図13に示されるように、原稿カバー7は、スキャナ筐体8の上面に設けられたプラテンガラス6に対して開閉するように複合機1の後背部で蝶番82などの支持機構によって回動可能に支持されている。これにより、原稿カバー7は、プラテンガラス6及びプラテンガラス6に載置された原稿を覆う閉姿勢(本発明の第1姿勢の一例、図1に示される姿勢)と、スキャナ筐体8から上方へ開いた開姿勢(本発明の第2姿勢、図13に示される姿勢)との間で姿勢変化可能となる。以上より、スキャナ部3は、複合機1に回動可能に支持され、閉姿勢のときにプラテンガラスに載置された原
稿を覆い、当該原稿に記録された画像を読み取る。変形例6においても、変形例3と同様、壁面53にメディアトレイ71を貫通させるための開口が穿たれていてもよい。以上のような構成の場合、第3距離L3は、第3位置P3から第2姿勢をとっているスキャナ部3のうちの後方へ最も突出した部分までの距離である。尚、原稿カバー7は、複数枚の原稿を連続して読み取るためのADF部と一体でもよい。
複合機1には、姿勢変化可能な可動部が搭載されていることがある。その場合、複合機1は、当該可能部が如何なる姿勢をとったとしても複合機1を設置した室の壁などに接触しないように設置される。なお、可動部は、例えば、変形例4で記したスキャナ筐体8、変形例5で記した回動可能な第3トレイ56、及び変形例6で記したスキャナ部3である。複合機1には、これらの可動部が複数搭載されることもある。また、上述したとおり、本発明では、メディアトレイ71の第1向き15の先端が、第3位置P3から第3距離L3以上、第1向き15の下流側へ離間することがない。そのため、変形例4から変形例6で説明した構成においては、メディアトレイ71が、複合機1の背面から第1向き15の下流側へ最も突出する可動部の先端よりも更に突出することがない。したがって、メディアトレイ71が、複合機1を設置した室の壁などに衝突することが防止可能である。