JP2018057300A - ビールテイスト飲料の香味劣化抑制剤、及び香味劣化抑制方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明によれば、ビールテイスト飲料を輸送又は保管中の熱や光などによって生じる経時的な香味劣化が抑制され、安定性に優れたビールテイスト飲料を提供することができる。
こうしたビールテイスト飲料は、製造後消費されるまでの輸送や保管に伴って味や香りが徐々に変化し、作り立ての新鮮なビールテイスト飲料が有する本来の香味が損なわれ、劣化臭が発生することが知られている。
保存時の劣化臭としては、暗所にて数週間から数か月の保管中に徐々に発生するカードボード臭、酸化臭、老化臭(以下、これらを纏めて「老化臭等」という)といわれる劣化臭や、主に輸送中に紫外線に数時間から数日間照射されることによって生じる日光臭といわれる劣化臭がある。
しかしながら上記の提案は、特定の風味設計のビールテイスト飲料には有効であるが、幅広い風味設計には対応できない、老化臭等と日光臭のどちらか一方に対してしか有効でないなどの問題点があり、そのため汎用的な劣化臭抑制手段が要望されている。
(1)キナ酸及び感覚刺激物質を有効成分として含有することを特徴とするビールテイスト飲料の香味劣化抑制剤。
(2)感覚刺激物質が、ジンゲロール、ショウガオール、カプサイシン、サンショール、ピペリン及びスピラントールからなる群より選択される1種又は2種以上である上記の香味劣化抑制剤。
(3)キナ酸が、(i)コーヒー豆抽出物を加水分解処理し、加水分解処理物を精製して得られる精製物に含まれるキナ酸、又は、(ii)茶葉を水で抽出処理して抽出液を得、次いでその抽出液を吸着剤で精製処理して得られる精製物に含まれるキナ酸であることを特徴とする上記の香味劣化抑制剤。
(4)感覚刺激物質が、ショウガ抽出物に含まれるジンゲロールとショウガオール、トウガラシ抽出物に含まれるカプサイシン、サンショウ抽出物に含まれるサンショール、コショウ抽出物に含まれるピペリン、並びにオランダセンニチ抽出物に含まれるスピラントールからなる群より選択される1種又は2種以上である上記の香味劣化抑制剤。
(5)キナ酸を0.001〜10質量%、感覚刺激物質を0.0001〜1質量%含むことを特徴とする上記の香味劣化抑制剤。
(7)ビールテイスト飲料に、キナ酸を0.01〜100ppm、感覚刺激物質を0.001〜10ppmの濃度で添加することを特徴とする上記の香味劣化抑制方法。
(8)感覚刺激物質が、ジンゲロール、ショウガオール、カプサイシン、サンショール、ピペリン、スピラントールからなる群より選択される1種又は2種以上である上記の香味劣化抑制方法。
(9)キナ酸が、(i)コーヒー豆抽出物を加水分解処理し、加水分解処理物を精製して得られる精製物に含まれるキナ酸、又は、(ii)茶葉を水で抽出処理して抽出液を得、次いでその抽出液を吸着剤で精製処理して得られる精製物に含まれるキナ酸であることを特徴とする上記の香味劣化抑制方法。
(10)感覚刺激物質が、ショウガ抽出物に含まれるジンゲロールとショウガオール、トウガラシ抽出物に含まれるカプサイシン、サンショウ抽出物に含まれるサンショール、コショウ抽出物に含まれるピペリン、並びにオランダセンニチ抽出物に含まれるスピラントールからなる群より選択される1種又は2種以上である上記の香味劣化抑制方法。
(12)上記の香味劣化抑制剤を、キナ酸が0.01〜100ppm、感覚刺激物質が0.001〜10ppmとなるように添加する工程を含むことを特徴とするビールテイスト飲料の製造方法。
また、当該香味劣化抑制剤を添加する段階は、ビールテイスト飲料の製造工程のいずれの段階であっても良いので、すでに操業中の製造設備や工程の変更を伴わず、簡便な抑制手段である。
本発明のビールテイスト飲料の香味劣化抑制剤は、極少量の添加量でビールテイスト飲料の経時的な劣化臭を抑制することが出来るので、抑制剤成分のキナ酸や感覚刺激物質自体の匂いや味がビールテイスト飲料の風味に悪影響を及ぼすことがない。
以上からして、本発明の香味劣化抑制剤は、既存のビール風味のアルコール飲料や清涼飲料であってもその製品設計(原材料や成分等)を大きく変えることなく使用できる点で汎用性があり、アルコール飲料業界や清涼飲料業界を始めとする食品業界にとって大いに有用である。
本発明の香味劣化抑制剤は、キナ酸と感覚刺激物質の双方を有効成分として含有することを特徴とする。
(1)キナ酸
本発明に使用するキナ酸(quinic acid)は、下記の式で表される1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸である。
しかしながら、価格等の実用性の観点、食の安全性やイメージの点から植物由来のキナ酸が好ましい。キナ酸はクランベリー果汁などに多く存在する他、クロロゲン酸などのキナ酸誘導体として植物中に広く分布するので、植物から慣用の抽出操作で得ることができるからである。
本発明において、キナ酸は、果汁、茶、コーヒーなどの可食性植物原料から得られるキナ酸を含有する植物抽出物を使用するのが好ましく、特にキナ酸含有量が多く、入手も容易でコストパフォーマンスに優れる茶葉やコーヒー豆を原料とするのが好ましい。
キナ酸含有植物抽出物は、植物抽出物中のキナ酸の含有量が1質量%以上、特に5質量%以上であることが好ましい。
本発明に使用する感覚刺激物質とは、人間の舌や口腔粘膜に作用し温度感覚、疼痛感覚を刺激して、いわゆる辛味(hot flavor)を引き起こす物質をいう。
具体的にはジンゲロール、ショウガオール、カプサイシン、サンショール、ピペリン、スピラントールなどを挙げることができ、これらを1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。キナ酸と同様に、これらの感覚刺激物質は、化学合成品又は植物由来の成分のいずれであってもよいが、価格等の実用性の観点、食の安全性やイメージの点から植物由来の成分が好ましい。
得られた抽出物は、必要に応じて濾過又は遠心分離によって固形物を除いた後、そのまま用いるか又は溶媒を濃縮してもしくはスプレードライなどにより乾燥して用いてもよい。
(a)ジンゲロール
ジンゲロール(gingerol)は、ショウガ(生姜)の辛味成分である。下記式において側鎖の炭素数が10個(n=4)のものが主成分で6−ジンゲオールとよばれ、炭素数が8〜14の類縁化合物がある。側鎖のケトアルコールの部分構造で、ヒドロキシル基が脱水してショウガオールに、レトロアルドール反応が起こればジンゲロンになる。
ショウガ抽出物中のジンゲロール及び/又はショウガオールの含有量が1質量%以上(両方とも含まれる場合は合計量で1質量%以上)、特に10質量%以上であることが好ましい。
また、ショウガ抽出物は、ジンゲロール及び/又はショウガオールを含むものであれば、形態は問わず、例えばジンジャーオイル、ジンジャーオレオレジン、ジンジャーエクストラクトなどを使用することができる。
カプサイシン(capsaicin)は、トウガラシ(唐辛子)の主要辛味成分である。構造式の芳香環を有するアミンをバニリルアミンといい、それに有機酸がアミド結合しているものを一般にカプサイシン類という。唐辛子の辛味成分として20種近いバニリルアミドが見出されている。
トウガラシ抽出物中のカプサイシンの含有量が1質量%以上、特に3質量%以上であることが好ましい。
また、トウガラシ抽出物は、カプサイシンを含むものであれば、形態は問わず、例えばトウガラシオイル、トウガラシオレオレジン、トウガラシエクストラクトなどを使用することができる。
サンショール(sanshool)は、サンショウ(山椒)の実の辛味成分である。化学構造から胡椒、唐辛子の辛味成分と同じアミド系辛味成分に分類される。二重結合について、シス型の異性体も知られている。
et Zucc.)、イヌザンショウ(Zanthoxylum Schinifolium Sieb. et Zucc.)、フユザンショウ(Zanthoxylum avicennae DC., Zanthoxylum simulans Hance,Zanthoxylum planispinum Sieb. et Zucc.)等を原料とし、これをそのまま或いは粉砕(生もしくは乾燥)して抽出した抽出物や、この抽出物の精製物又は原料を圧搾抽出することにより得られる搾汁などを使用することができる。
品種としてはミカン科サンショウ属に属するJapanese pepper(学名Zanthoxylum piperitum)が好ましい。
サンショウ抽出物中のサンショールの含有量が1質量%以上、特に5質量%以上であることが好ましい。
また、サンショウ抽出物は、サンショールを含むものであれば、形態を問わず、例えばサンショウ抽出物として、サンショウオイル、サンショウオレオレジン、サンショウエクストラクトなどを使用することができる。
ピペリン(piperine)は、コショウ(胡椒)の辛味の主要成分である。ピペリジンとアミド結合しているため、アミド系辛味成分に分類される。側鎖の二重結合は紫外線照射により一部cis型に異性化してピペリンより辛味の劣るシャビシンとなる。
コショウ抽出物中のピペリンの含有量が1質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましい。
また、コショウ抽出物は、ピペリンを含有するものであれば、形態を問わず、例えばペッパーオイル、ペッパーオレオレジン、ペッパーエクストラクトなどを使用することができる。
スピラントール(spilanthol)は、キク科オランダセンニチ(Spilanthes acmella)、キバナオランダセンニチ(Spilanthes acmella var. oleracea)等に含まれる辛味成分であり、下記の化学式で表されるN−イソブチル−2,6,8−デカトリエンアミドである。
CH3CH=CH−CH=CH(CH2)2CH=CHCONHCH2CH(CH3)2
オランダセンニチ抽出物中のスピラントールの含有量が1質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましい。
また、オランダセンニチ抽出物は、スピラントールを含むものであれば、形態を問わず、例えばオランダセンニチ抽出物として、オランダセンニチオイル、オランダセンニチオレオレジン、オランダセンニチエクストラクトなどを使用することができる。
キナ酸及び感覚刺激物質の混合物に、例えば、水、エタノール、グリセリン、トリエチルシトレート、プロピレングリコール等の液体希釈溶剤で適時希釈して得られる液剤の態様で使用しても良い。または、デキストリン等を添加し噴霧乾燥によりパウダー状にした粉末剤の態様で使用することも可能であり、用途に応じて種々の剤形を採用することが出来る。
本発明のビールテイスト飲料の香味劣化抑制剤は、本発明の効果を阻害しない限度において、必要に応じて種々の任意成分を配合することもできる。
そのような任意成分の例としては、例えば、香料、甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色料、漂白料、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤などを例示することができる。
本発明における、ビールテイスト飲料とは、ビール風味又はビールのような風味を有する飲料をいい、例えば、酒税法で規定されるビール、発泡酒、リキュール類、スピリッツ類の他、清涼飲料として分類されるアルコールフリーのいわゆるノンアルコールビールが挙げられる。
アルコールを含むビールテイスト飲料の製造方法として、発酵製法と非発酵製法の二通りの製造方法がある。前者は、一般的な麦芽又は穀物類の糖化液を主原料として、酵母を用いてアルコール発酵させて製造する方法である。また、後者は酵母による発酵工程を経ないで、飲用水に、麦汁、麦芽エキス、糖類、香料、場合によってはアルコールなどを添加して製造する方法である。
本発明のビールテイスト飲料は、発酵製法、非発酵製法のいずれの製法で製造されたビールテイスト飲料にも適用することができる。
キナ酸含有植物抽出物の場合は、抽出物に含まれるキナ酸が上記の量となるように抽出物を添加することが好ましい。
一方、ビールテイスト飲料に対する感覚刺激物質の添加量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.001〜10ppmであり、特に好ましくは0.01〜10ppmである。
感覚刺激物質含有植物抽出物の場合は、植物抽出物に含まれる感覚刺激物質が上記の量となるように抽出物を添加することが好ましい。
添加量が少ないと、香味劣化抑制効果が十分ではなく、添加量が多いと、キナ酸及び感覚刺激物質が本来有している香味により、ビールテイスト飲料の香味が損なわれてしまう。
なお、キナ酸が含まれるコーヒー豆又は茶葉の抽出物、ジンゲロールとショウガオールが含まれるショウガ抽出物、カプサイシンが含まれるトウガラシ抽出物、サンショールが含まれるサンショウ抽出物、ピペリンが含まれるコショウ抽出物、スピラントールが含まれるオランダセンニチ抽出物の各抽出物は、いずれも有機物複合体である植物体を抽出して得られる物である。このような植物体抽出物には、タンパク質、脂質、糖質等に加えて、その他多くの成分が含まれている。つまり、各抽出物は、いずれも公知の主要成分の他に多種多様な微量成分を含み、極めて複雑な組成物を構成する。
従って、本発明における各抽出物を構造や特性により直接特定するためには、構成成分の同定及び定量が必須となるが、全ての構成成分を同定及び定量することは、技術常識から見て不可能であるか、又はおよそ実際的ではない。
そこで、本発明においては各抽出物に含まれる香味劣化抑制成分以外の成分を網羅的に記載していない。
〔1〕キナ酸含有植物抽出物
以下の通り、キナ酸含有植物抽出物を緑茶葉、紅茶葉、コーヒー豆から製造した。
[製造例1](キナ酸含有植物抽出物1:緑茶抽出物)
緑茶葉100gに蒸留水2,000gを加え、60℃で一時間攪拌した。40℃まで冷却後、遠心濾過器を用いて茶葉及び不溶物を分離後、分離液をセライト濾過し1,780gの抽出液を得た。
その抽出液を減圧下、液温50℃で液量が300gになるまで濃縮した。この濃縮液300gに95%エタノール360gを加えた後、10℃まで冷却し生じた不溶物をセライト濾過し、濾液593gを得た。
更にその濾液に活性炭12gを加え、30分間攪拌後セライト濾過し、濾液を凍結乾燥することにより、キナ酸含有植物抽出物2.2gを得た。
HPLCを用いて分析した結果、キナ酸含有植物抽出物に含まれるキナ酸は、7.6質量%であった。
紅茶葉100gに蒸留水2,000gを加え、1時間加熱還流した。冷却後、遠心濾過器で固液分離し、濾液1,920gを得た。
その濾液に活性炭5gを加え、合成吸着剤(三菱化学社製「ダイヤイオンHP−20」(商品名))500mlを添加し、1時間攪拌した。
その後、濾過により合成吸着剤を除去し、濾液1,890gを得た。
濾液1,890gを陽イオン交換樹脂(三菱化学社製「ダイヤイオンSK1B」(商品名))1,000mlを充填したカラムに供し、空間速度SV=1で送液した。通過液は限外濾過膜(日東電工社製「NTU−2120」)により濾過した。
得られた濾液1,810gを凍結乾燥することにより、キナ酸含有植物抽出物5.9gを得た。
HPLCを用いて分析した結果、キナ酸含有植物抽出物に含まれるキナ酸は、17.0質量%であった。
コーヒー生豆500gを微粉砕した後、70%エタノール水溶液5,000mlを加え、2時間加熱還流した。
冷却後、遠心濾過器で固液分離し、濾過液をエタノール含量5%以下まで減圧濃縮し、クロロゲン酸エステラーゼ(キッコーマン社製)1,000単位を加え40℃で3時間攪拌した。処理液を、遠心分離により不溶物を取り除き、合成吸着剤(三菱化学社製「ダイヤイオンHP−20」(商品名))1,000mlを充填したカラムに通導し、溶出してきた液を凍結乾燥することにより、キナ酸含有植物抽出物26.6gを得た。
HPLCを用いて分析した結果、キナ酸含有植物抽出物に含まれるキナ酸は、32質量%であった。
なお、クロロゲン酸エステラーゼの1単位は30℃の水中において3−カフェオイルキナ酸を1分間に1マイクロモル加水分解する酵素量である。
感覚刺激物質として、以下の市販品を用いた。
(a)ジンジャー抽出物(小川香料(株)社製)
抽出物中に、ジンゲロール19質量%、ショウガオール6質量%を含有
(b)トウガラシ抽出物(小川香料(株)社製)
抽出物中に、カプサイシン5質量%を含有
(c)サンショウ抽出物(小川香料(株)社製)
抽出物中に、サンショール15質量%を含有
(d)ペッパー抽出物(小川香料(株)社製)
抽出物中に、ピペリン35質量%を含有
(e)オランダセンニチ抽出物(小川香料(株)社製)
抽出物中に、スピラントール15質量%を含有
(1)評価用サンプル飲料
市販のビールテイスト飲料(原材料:麦芽・ホップ、アルコール含有量:5%)に、表1に記載のとおり、製造例1〜3で得られたキナ酸含有植物抽出物、および市販品である感覚刺激物質を含む植物抽出物を添加したものを180mlガラス瓶(無色透明)に充填して試験例1のビールテイストアルコール飲料をサンプル飲料として作製した。
また、キナ酸と感覚刺激物質のいずれも全く含まない対照用のサンプル飲料(以下、「無添加サンプル飲料」という)を作製して、同様の劣化処理を行った。
サンプル飲料に、15,000ルクス、10℃で3日間光照射することで、光劣化の評価試験を行った。
(3)評価方法
無添加サンプル飲料を対照として、各サンプル飲料について、訓練されたパネラー4名により、劣化臭の強さおよび劣化臭を抑制する効果について官能評価を行った。
「非常に高い効果がみられた」を5点、「高い効果がみられた」を4点、「効果がみら
れた」を3点、「やや効果がみられた」を2点、「対象と同程度で、効果がみられなかった」を1点として、評価点の平均点を算出した。
平均点に応じて下記の基準に従い、評価結果を表1に記載した。
平均点が1.0〜2.0未満のとき、評価は×
平均点が2.0〜3.0未満のとき、評価は△
平均点が3.0〜4.0未満のとき、評価は○
平均点が4.0〜5.0以下のとき、評価は◎
15,000ルクス、10℃で3日間光照射することで、無添加サンプル飲料は、腐敗臭、スカンク臭といった劣化臭が感じられた。
キナ酸含有植物抽出物のみ、又は感覚刺激物質含有植物抽出物のみを添加したサンプル飲料(比較例1〜7)は、無添加サンプル飲料と比較すると、劣化臭は弱く感じられたが、満足する効果は得られなかった。
一方、キナ酸含有植物抽出物および感覚刺激物質含有植物抽出物の双方を添加したサンプル飲料(実施例1〜9)は、いずれも顕著に劣化臭を抑制していた。
また、いずれのサンプル飲料も、キナ酸含有植物抽出物、及び感覚刺激物質含有植物抽出物由来の異味・異臭は感じられなかった。
特に、実施例1と実施例8のサンプル飲料については、前者は比較例1、比較例3と対比して、後者は比較例7と対比してわかるように、キナ酸と感覚刺激物質の合計量が、キナ酸のみ、又は感覚刺激物質のみの単品と同量又はそれ以下で効果がアップしていることから、キナ酸と感覚刺激物質の組み合わせによる相乗効果を確認することができた。
(1)評価用サンプル飲料
市販のビールテイスト飲料(原材料:麦芽・ホップ、アルコール含有量:5%)に、表2に記載のとおり、製造例1〜3で得られたキナ酸含有植物抽出物および感覚刺激物質を
含有する植物抽出物を添加したものを180mlガラス瓶に充填して試験例2のビールテイストアルコール飲料をサンプル飲料として作製した。
また、キナ酸と感覚刺激物質のいずれも全く含まない対照用のサンプル飲料(以下、「無添加サンプル飲料」という)を作製して、同様の劣化処理を行った。
サンプル飲料を40℃で7日間、暗所で保管することで、熱劣化の評価試験を行った。(3)評価方法
試験例1に記載の評価方法に従い、官能評価を実施した。評価結果を表2に示す。
40℃で7日間、暗所で保管することで、無添加サンプル飲料は、加熱臭、紹興酒様といった劣化臭が感じられた。
キナ酸のみ、又は感覚刺激物のみを添加した比較例8〜14のサンプル飲料は、無添加サンプル飲料と比較すると、劣化臭は弱く感じられたが、満足する効果は得られなかった。
一方、キナ酸及び感覚刺激物質の両方を添加した実施例10〜18のサンプル飲料は、いずれも顕著に劣化臭を抑制していた。
また、いずれのサンプル飲料も、キナ酸含有植物抽出物、及び感覚刺激物質を含有する植物抽出物に由来する異味・異臭は感じられなかった。
(1)評価用サンプル飲料
市販のノンアルコールビールテイスト飲料〔原材料:麦芽、ホップ、酸味料、香料、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンC)、甘味料(アセスルファムK) 〕に、表3に記載のとおり、製造例1〜3で得られたキナ酸含有植物抽出物および感覚刺激物質を含有する植物抽出物を添加したものを180mlガラス瓶(無色透明)に充填して試験例3のビールテ
イストノンアルコール飲料をサンプル飲料として作製した。
また、キナ酸と感覚刺激物質のいずれも全く含まない対照用のサンプル飲料(以下、「無添加サンプル飲料」という)を作製して、同様の劣化処理を行った。
サンプル飲料に、15,000ルクス、10℃で3日間光照射することで、光劣化の評価試験を行った。
(3)評価方法
試験例1に記載の評価方法に従い、官能評価を実施した。評価結果を表3に示す。
15,000ルクス、10℃で3日間光照射することで、ビールテイストノンアルコール飲料においても、試験例1のビールテイストのアルコール飲料と同様に、無添加サンプル飲料は、腐敗臭、スカンク臭といった劣化臭が感じられた。
キナ酸のみ、又は感覚刺激物質のみを添加した、比較例15〜21のサンプル飲料は、無添加サンプル飲料と比較すると、劣化臭は弱く感じられたが、満足する効果は得られなかった。
一方、キナ酸及び感覚刺激物質の両方を添加した、実施例19〜27のサンプル飲料は、いずれも顕著に劣化臭を抑制していた。
特に、すなわち、実施例19、26と実施例27のサンプル飲料については、前者は比較例16と対比して、また後者は比較例21と対比してわかるように、キナ酸と感覚刺激物質の合計量が、キナ酸のみ若しくは感覚刺激物質のみの単品と同量又はそれ以下で効果がアップしていることから、キナ酸と感覚刺激物質の組み合わせによる相乗効果を確認することができた。
また、いずれのサンプル飲料も、キナ酸含有植物抽出物、及び感覚刺激物質に由来する異味・異臭は感じられなかった。
(1)評価用サンプル飲料
市販のノンアルコールビールテイスト飲料(原材料:麦芽、ホップ、酸味料、香料、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンC)、甘味料(アセスルファムK))に、表4に記載のとおり、製造例1〜3で得られたキナ酸含有植物抽出物および感覚刺激物質を含有する植物抽出物を添加したものを180mlガラス瓶に充填して試験例4のビールテイストノンアルコール飲料をサンプル飲料をとして作製した。
また、キナ酸と感覚刺激物質のいずれも全く含まない対照用のサンプル飲料(以下、「無添加サンプル飲料」という)を作製して、同様の劣化処理を行った。
サンプル飲料を40℃で7日間、暗所で保管することで、熱劣化の評価試験を行った。(3)評価方法
試験例1に記載の評価方法に従い、官能評価を実施した。評価結果を表4に示す。
40℃で7日間、暗所で保管することで、ビールテイストノンアルコール飲料においても、試験例2のビールテイストのアルコール飲料と同様に、無添加サンプル飲料は、加熱臭、紹興酒様といった劣化臭が感じられた。
キナ酸のみ、又は感覚刺激物質のみを添加した比較例22〜28のサンプル飲料は、無添加サンプル飲料と比較すると、劣化臭は弱く感じられたが、満足する効果は得られなかった。
一方、キナ酸及び感覚刺激物質の両方を添加した実施例28〜36のサンプル飲料は、いずれも顕著に劣化臭を抑制していた。
すなわち、実施例28、実施例30、実施例35、実施例36のサンプル飲料については、比較例22〜28のサンプル飲料と比較してわかるように、キナ酸と感覚刺激物質の合計量が、キナ酸のみ若しくは感覚刺激物質のみの単品と同量又はそれ以下で効果がアップしていることから、キナ酸と感覚刺激物質の組み合わせによる相乗効果を確認すること
ができた。
また、いずれのサンプル飲料も、キナ酸含有植物抽出物、及び感覚刺激物質含有植物抽出物に由来する異味・異臭は感じられなかった。
(1)評価用サンプル飲料
市販のノンアルコールビールテイスト飲料(原材料:麦芽、ホップ、酸味料、香料、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンC)、甘味料(アセスルファムK))に、飲料中のエタノール含有量が5容量%になるように、99%エタノールを添加し、さらに、後記の表6の「ビール香料1」を0.1%、製造例1〜3で得られたキナ酸含有植物抽出物、および感覚刺激物質を含有する植物抽出物を添加したものを、180mlガラス瓶(無色透明)に充填して試験例5の香料添加ビールテイストアルコール飲料をサンプル飲料として作製した。
また、ビール香料1を含むが、キナ酸と感覚刺激物質のいずれも全く含まない対照用のサンプル飲料(以下、「無添加サンプル飲料」という)を作製して、同様の劣化処理を行った。
サンプル飲料を40℃、7,000ルクスで7日間保管することで、熱及び光劣化の評価試験を行った。
(3)評価方法
試験例1に記載の評価方法に従い、官能評価を実施した。評価結果を表5に示す。
40℃、7,000ルクスで7日間保管することで、無添加サンプル飲料は、腐敗臭、加熱臭といった劣化臭が感じられ、「ビール香料1」を添加しただけでは、劣化臭は抑制することはできなかった。
キナ酸のみ、又は感覚刺激物質のみを添加した比較例29〜35のサンプル飲料は、無
添加サンプルと比較すると、劣化臭は弱く感じられたが、満足する効果は得られなかった。
一方、キナ酸、及び感覚刺激物質の両方を添加した実施例37〜45のサンプル飲料は、いずれも顕著に劣化臭を抑制していた。
また、いずれのサンプルも、キナ酸含有植物抽出物、及び感覚刺激物質を含有する植物抽出物由来の異味・異臭は感じられなかった。
(1)評価用サンプル飲料
前記試験例5の実施例43(紅茶抽出物中のキナ酸が1ppmおよびオランダセンニチ抽出物中のスピラントールが0.1ppm)の香料添加ビールテイストアルコール飲料に添加した「ビール香料1」を、表6の「ビール香料2」又は「ビール香料3」に代えて添加した以外は、同様にして香料添加ビールテイストアルコール飲料をサンプル飲料として作製した(それぞれ「実施例46」、「実施例47」)。
また、ビール香料2又はビール香料3を含むが、キナ酸と感覚刺激物質のいずれも全く含まない対照用のサンプル飲料(以下、「無添加サンプル飲料」という)を作製して、同様の劣化処理を行った。
(2)試験方法
試験例5と同様の条件で熱及び光劣化の評価試験を行った。
(3)評価方法
試験例1に記載の評価方法に従い、官能評価を実施した。
「ビール香料2」、「ビール香料3」は、「ビール香料1」に各種抽出物(すなわち、米抽出物、茶抽出物、くん液、フェネグリーク抽出物、バニラ抽出物、トウミツ抽出物)を追加したものであるが、そうした「ビール香料2」、「ビール香料3」を使用した場合においても、試験例5の無添加サンプル飲料と同様に、ビール香料の添加だけでは劣化臭を抑制できなかった。
これに対して、「ビール香料2」、「ビール香料3」に加えて、紅茶抽出物中のキナ酸が1ppmとオランダセンニチ抽出物中のスピラントールが0.1ppmになるように添加した実施例46、実施例47のサンプル飲料は、熱及び光による劣化臭を抑制することができた。
Claims (12)
- キナ酸及び感覚刺激物質を有効成分として含有することを特徴とするビールテイスト飲料の香味劣化抑制剤。
- 感覚刺激物質が、ジンゲロール、ショウガオール、カプサイシン、サンショール、ピペリン及びスピラントールからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1に記載の香味劣化抑制剤。
- キナ酸が、(1)コーヒー豆抽出物を加水分解処理し、加水分解処理物を精製して得られる精製物に含まれるキナ酸、又は、(2)茶葉を水で抽出処理して抽出液を得、次いでその抽出液を吸着剤で精製処理して得られる精製物に含まれるキナ酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の香味劣化抑制剤。
- 感覚刺激物質が、ショウガ抽出物に含まれるジンゲロールとショウガオール、トウガラシ抽出物に含まれるカプサイシン、サンショウ抽出物に含まれるサンショール、コショウ抽出物に含まれるピペリン、並びにオランダセンニチ抽出物に含まれるスピラントールからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の香味劣化抑制剤。
- キナ酸を0.001〜10質量%、感覚刺激物質を0.0001〜1質量%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の香味劣化抑制剤。
- ビールテイスト飲料に、キナ酸及び感覚刺激物質を添加することを特徴とするビールテイスト飲料の香味劣化抑制方法。
- ビールテイスト飲料に、キナ酸を0.01〜100ppm、感覚刺激物質を0.001〜10ppmの濃度で添加することを特徴とする請求項6に記載の香味劣化抑制方法。
- 感覚刺激物質が、ジンゲロール、ショウガオール、カプサイシン、サンショール、ピペリン、スピラントールからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項6又は7に記載の香味劣化抑制方法。
- キナ酸が、(1)コーヒー豆抽出物を加水分解処理し、加水分解処理物を精製して得られる精製物に含まれるキナ酸、又は、(2)茶葉を水で抽出処理して抽出液を得、次いでその抽出液を吸着剤で精製処理して得られる精製物に含まれるキナ酸であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の香味劣化抑制方法。
- 感覚刺激物質が、ショウガ抽出物に含まれるジンゲロールとショウガオール、トウガラシ抽出物に含まれるカプサイシン、サンショウ抽出物に含まれるサンショール、コショウ抽出物に含まれるピペリン、並びにオランダセンニチ抽出物に含まれるスピラントールからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項6〜9のいずれか1項に記載の香味劣化抑制方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の香味劣化抑制剤が添加されてなるビールテイスト飲料であって、キナ酸が0.01〜100ppm、感覚刺激物質が0.001〜10ppmであることを特徴とするビールテイスト飲料。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の香味劣化抑制剤を、キナ酸が0.01〜100ppm、感覚刺激物質が0.001〜10ppmとなるように添加する工程を含むことを特
徴とするビールテイスト飲料の製造方法。
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