JP2018037630A - 内部電極用ペーストとその製造方法、及び積層セラミックコンデンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】積層セラミックコンデンサの製造時における内部電極層間の剥離、及び位置ズレを防止し、より密着性の高い内部電極用ペーストを提供すること。【解決手段】内部電極用ペーストは、導電性粉末、セラミック粉末、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、有機溶剤及びアニオン系界面活性剤を含有する内部電極用ペーストであって、ポリビニルブチラール樹脂は、ペースト全量に対して、1質量%以上2.5質量%以下含有され、アニオン系界面活性剤は、少なくとも1つ以上のカルボキシル基(COOH基)を有し、導電性粉末100質量部に対して、0.1質量部以上6.5質量部以下含有され、アニオン系界面活性剤の有するカルボキシル基(COOH基)に対し、0.5mol倍を超え3mol倍未満の範囲でグリコールを含有する。【選択図】図1
Description
本発明は、内部電極用ペーストとその製造方法、及び積層セラミックコンデンサに関する。
電子部品の一つとして従来から用いられている積層セラミックコンデンサは、一般に、誘電体層と、内部電極層とが交互に積層された構造を有する。近年、電気機器および電子機器が小型化かつ高性能化するのに伴い、積層セラミックコンデンサに対しても、小型化、大容量化の要求が高まっている。このような要求に答える積層セラミックコンデンサとして、誘電体層と内部電極層の薄層化による多層化が重要となる。
積層セラミックコンデンサは、例えば、以下の製造方法により生産される。まず、チタン酸バリウム(BaTiO3)等の誘電体粉末と、有機バインダーとを含有する誘電体グリーンシート(以下、「グリーンシート」ともいう。)に、導電性金属粒子と、有機バインダーとを含有する内部電極用ペーストを、所望の内部電極のパターンに応じて塗布し、乾燥させる。次いで、乾燥させた内部電極パターン/グリーンシート(以下、「内部電極層/誘電体層」ともいう。)を、内部電極層と誘電体層とが交互になるように積層し圧着させた後、熱圧着し、得られた熱圧着体を目的の大きさに切断する。切断された圧着体は、有機バインダーを除去するため、所定の温度および雰囲気で加熱される。その後、焼成して内部電極層、及び誘電体層を一体焼結させ、積層セラミックコンデンサ素体を得る。得られた積層セラミックコンデンサ素体は、その両端の端面をバレル研磨し内部電極を露出させた後、外部電極用ペーストを、研磨した端面に塗布、焼成して取り付け、取り付けた外部電極の表面にめっきを施して製品となる。
ところで、従来の積層セラミックコンデンサの内部電極用ペーストは、例えば、有機バインダーとして、エチルセルロース樹脂を用い、有機溶剤として主にターピネオールを用いている。しかし、このような内部電極用ペーストを用いて、上述の製造方法により圧着体を作製する場合、内部電極層と誘電体層との密着性が悪く、層間剥離が生じることがあった。
例えば、特許文献1では、少なくとも導電性金属粒子、共材、樹脂、有機溶剤、及び有機添加剤を含有する内部電極用ペーストが開示されている。この内部電極用ペーストは、共材がグリーンシートの主要構成材料からなり、樹脂が少なくともポリビニルブチラール樹脂を含み、有機添加剤が、酸価を示す官能基とアミン価を示す官能基とを有する化合物、及び/または酸価を示す官能基を有する化合物とアミン価を示す官能基を有する化合物との混合物を用いることで、内部電極層と誘電体層との圧着性が向上することが記載されている。
しかしながら、発明者の検討によると、ポリビニルブチラール樹脂を含む内部電極用ペーストでは、有機添加剤としてカルボキシル基(COOH基)を有するアニオン系界面活性剤を用いた場合、内部電極層と誘電体層との密着性が低下することがあることが明らかとなった。この理由は限定されないが、アニオン系界面活性剤のCOOH基により、内部電極層と、誘電体層内のポリビニルブチラール樹脂との水素結合が阻害されるためであると考えられる。
本発明は、このような状況に鑑み、積層セラミックコンデンサの製造時における内部電極層間の剥離、及び位置ズレを防止し、より密着性の高い内部電極用ペーストを提供することを目的とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、内部電極層と誘電体層の密着力向上のために、内部電極用ペースト中のアニオン系界面活性剤に含まれるCOOH基のmol量に対し、グリコールを特定量で添加することにより、上記問題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
本発明の第1の態様では、導電性粉末、セラミック粉末、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、有機溶剤及びアニオン系界面活性剤を含有する内部電極用ペーストであって、ポリビニルブチラール樹脂は、ペースト全量に対して、1質量%以上2.5質量%以下含有され、アニオン系界面活性剤は、少なくとも1つ以上のカルボキシル基(COOH基)を有し、導電性粉末100質量部に対して、0.1質量部以上6.5質量部以下含有され、アニオン系界面活性剤の有するカルボキシル基(COOH基)に対し、0.5mol倍を超え3mol倍未満の範囲でグリコールを含有する、内部電極用ペーストが提供される。
また、グリコールの沸点が、300℃以下であることが好ましい。また、グリコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールから選択される少なくとも一種であることが好ましい。また、導電性粉末は、平均粒径が0.05μm以上0.5μm以下が好ましい。また、アニオン系界面活性剤は、炭素数が16以上22以下が好ましい。また、有機溶剤は、第1の有機溶剤と、第1の有機溶剤より低い沸点を有する第2の有機溶剤と、を含むのが好ましい。また、第1の有機溶剤は、沸点が150℃以上300℃以下であり、第2の有機溶剤は、沸点が120℃以上250℃以下であるのが好ましい。また、導電性粉末、セラミック粉末、有機バインダー、及び有機溶剤の合計量100質量%に対し、0.5質量%以上の範囲で前記グリコールを含有することが好ましい。
本発明の第2の態様では、有機バインダーと有機溶剤と混合して有機ビヒクルを調製することと、有機ビヒクルに、導電性粉末と、セラミック粉末と、アニオン系界面活性剤と、グリコールとを添加し分散させることと、を備え、アニオン系界面活性剤は、少なくとも1つ以上のカルボキシル基(COOH基)を有し、導電性粉末100質量部に対して、0.1質量部以上6.5質量部以下の範囲で添加され、グリコールは、アニオン系界面活性剤の有するカルボキシル基(COOH基)に対し、0.5mol倍を超え3mol倍未満の範囲で添加される、内部電極用ペーストの製造方法が提供される。
本発明の第3の態様では、誘電体層と、内部電極層とが交互に積層した積層体を備える積層セラミックコンデンサであって、内部電極が上記内部電極用ペーストを用いて形成されてなる、積層セラミックコンデンサが提供される。
本発明によれば、導電性粉末の分散性に優れ、誘電体層との密着性に優れる内部電極用ペーストとその製造方法を提供することができる。
以下、本実施形態の積層セラミックコンデンサ内部電極用ペーストの一構成例などについて説明する。本発明は、下記の実施形態に制限されるものではない。また、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[内部電極用ペースト]
積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト(以下、単に「内部電極用ペースト」とも記載する)は、導電性粉末と、セラミック粉末と、ポリビニルブチラール樹脂と、エチルセルロース樹脂と、有機溶剤と、グリコールとを少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト(以下、単に「内部電極用ペースト」とも記載する)は、導電性粉末と、セラミック粉末と、ポリビニルブチラール樹脂と、エチルセルロース樹脂と、有機溶剤と、グリコールとを少なくとも含有する。以下、各成分について説明する。
(導電性粉末)
本実施形態の内部電極用ペーストは、導電性粉末を含む。導電性粉末を添加することにより、該内部電極用ペーストを用いて形成する内部電極に導電性を付与することができる。導電性粉末は、特に限定されず、例えば、Ni、Cu、Pd、Ag、およびこれらの合金から選ばれる1種以上の粉末を用いることができる。例えば、Niを主成分として含む粉末(以下、単に「ニッケル粉末」とも記載する)を用いた場合、導電性、耐食性及びコストに優れる。ニッケル粉末は、Niからなる粉末及びNiを主成分とする合金粉末が含まれる。Ni合金粉末としては、例えば、マンガン、クロム、コバルト、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、銀、金、白金およびパラジウムからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素とニッケルとの合金粉末が使用できる。また、Niを主成分とする合金粉末におけるNiの含有量は、例えば、50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であることが好ましい。また、ニッケル粉末は、例えば、脱バインダー処理時の有機バインダーの部分的な熱分解による急激なガス発生を抑制するために、数百ppm程度のS(硫黄)を含むニッケル粉末を用いてもよい。
本実施形態の内部電極用ペーストは、導電性粉末を含む。導電性粉末を添加することにより、該内部電極用ペーストを用いて形成する内部電極に導電性を付与することができる。導電性粉末は、特に限定されず、例えば、Ni、Cu、Pd、Ag、およびこれらの合金から選ばれる1種以上の粉末を用いることができる。例えば、Niを主成分として含む粉末(以下、単に「ニッケル粉末」とも記載する)を用いた場合、導電性、耐食性及びコストに優れる。ニッケル粉末は、Niからなる粉末及びNiを主成分とする合金粉末が含まれる。Ni合金粉末としては、例えば、マンガン、クロム、コバルト、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、銀、金、白金およびパラジウムからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素とニッケルとの合金粉末が使用できる。また、Niを主成分とする合金粉末におけるNiの含有量は、例えば、50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であることが好ましい。また、ニッケル粉末は、例えば、脱バインダー処理時の有機バインダーの部分的な熱分解による急激なガス発生を抑制するために、数百ppm程度のS(硫黄)を含むニッケル粉末を用いてもよい。
導電性粉末の粒径は、特に制限されるものではなく、内部電極用ペースト中での分散性や、グリーンシート等に塗布する際の操作性、焼成して内部電極としたときの導電性等を考慮して任意に選択することができる。高積層、高容量化の積層セラミックコンデンサに用いる場合、例えば、導電性粉末の平均粒径は0.05μm以上0.5μm以下とすることが好ましい。なお、この導電性粉末の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真より求められる値であり、粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。また、本明細書において他の部分でも導電性粉末の平均粒径は同じ意味を有している。
導電性粉末の平均粒径が0.5μm以下である場合、特に積層セラミックコンデンサの薄層化を図ることができる。また、本実施形態の内部電極用ペーストは、例えば、導電性粉末の平均粒径が0.4μm以下である場合や、0.3μm以下である場合においても、分散性及び密着性に優れる。一方、導電性粉末の平均粒径が0.05μm以上である場合、導電性粉末の表面活性が必要以上に高くなることを抑制し、内部電極用ペーストの粘度が高くなることを抑制できる。この場合、内部電極用ペーストとして長期保存した場合に変質等が生じることを抑制することができる。
内部電極用ペースト中の導電性粉末の含有率は特に限定されるものではなく、内部電極用ペーストに要求される粘度や、内部電極としたときに要求される導電性等に応じて任意に選択することができる。内部電極用ペーストは、例えば、導電性粉末を、内部電極用ペースト全量に対して30質量%以上70質量%以下含有することが好ましく、40質量%以上60質量%以下含有することがより好ましい。
内部電極用ペースト中の導電性粉末の含有量が30質量%以上である場合、内部電極用ペースト焼成時の電極膜形成能力を十分に確保することができ、所望のコンデンサ容量をより確実に得ることができる。一方、内部電極用ペースト中の導電性粉末の含有量が70質量%以下である場合、内部電極の電極膜を薄層化し易くすることができる。
(有機バインダー)
内部電極用ペーストは、有機バインダーとして、エチルセルロース樹脂と、ポリビニルブチラール樹脂とを含む。有機バインダーは、例えば、エチルセルロース樹脂と、ポリビニルブチラール樹脂とからなる混合系とすることができる。エチルセルロース樹脂は、溶剤への溶解性・印刷性・燃焼分解性などが良く、内部電極用ペーストのバインダーとして好適に用いることができる。また、ポリビニルブチラール樹脂はグリーンシートに一般的に使用されている樹脂である。なお、有機バインダーは、本発明の効果を阻害しない範囲で他の樹脂を少量含んでもよい。
内部電極用ペーストは、有機バインダーとして、エチルセルロース樹脂と、ポリビニルブチラール樹脂とを含む。有機バインダーは、例えば、エチルセルロース樹脂と、ポリビニルブチラール樹脂とからなる混合系とすることができる。エチルセルロース樹脂は、溶剤への溶解性・印刷性・燃焼分解性などが良く、内部電極用ペーストのバインダーとして好適に用いることができる。また、ポリビニルブチラール樹脂はグリーンシートに一般的に使用されている樹脂である。なお、有機バインダーは、本発明の効果を阻害しない範囲で他の樹脂を少量含んでもよい。
ポリビニルブチラール樹脂は、例えば、内部電極用ペースト全量に対して、1質量%以上2.5質量%以下含有されることができる。ポリビニルブチラール樹脂の含有量が上記範囲である場合、グリーンシートと、内部電極用ペーストの乾燥膜との密着強度を上げることができる。密着強度の上がる理由は、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサの製造工程において、内部電極層と誘電体層とを加熱圧着をさせた際に、内部電極層に含まれるポリビニルブチラール樹脂のヒドロシキ基(OH基)による水素結合が、誘電体層との密着性に付与するためと考えられている。
内部電極用ペースト中の有機バインダーの含有量は、特に限定されるものではなく、任意に選択することができる。有機バインダー全体の含有量は、例えば、導電性粉末の含有量を100質量部に対して、有機バインダーの含有量が1質量部以上7質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以上6質量部以下であることがより好ましい。上記有機バインダーの含有量が1質量部以上である場合、内部電極用ペースト中の有機溶剤がグリーンシート側に浸透することを抑制し、シートアタックをより確実に抑制することができる。上記有機バインダーの含有量が7質量部以下である場合、内部電極用ペーストの脱バインダー特性を特に高めることができる。なお、有機バインダーがポリビニルブチラール樹脂及びエチルセルロース樹脂からなる場合、有機バインダー全体の含有量は、この両樹脂の含有量の合計となる。
有機バインダー中のエチルセルロース樹脂、及びポリビニルブチラール樹脂の含有量は特に限定されるものではなく、任意の比率とすることができる。例えば、(ポリビニルブチラール樹脂の含有量)/(エチルセルロース樹脂の含有量)の質量比は、0.2以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。質量比が上記範囲である場合、グリーンシートと、内部電極用ペーストの乾燥膜との密着性が特に優れる。一方、(ポリビニルブチラール樹脂の含有量)/(エチルセルロース樹脂の含有量)の質量比は、例えば、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。この質量比が上記範囲である場合、溶剤への溶解性・印刷性・燃焼分解性により優れる。
(有機溶剤)
内部電極用ペーストは有機溶剤を含む。有機溶剤は、例えば、有機バインダーを溶解したり、ペースト粘度を調製したりする。有機溶剤は、特に限定されず、従来公知の溶剤を適宜選択して用いることができる。また、有機溶剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。なお、有機溶剤の沸点は、例えば、100℃を超えることが好ましい。溶剤の沸点が100℃以下の場合、ペースト製造時に蒸発する恐れがある。
内部電極用ペーストは有機溶剤を含む。有機溶剤は、例えば、有機バインダーを溶解したり、ペースト粘度を調製したりする。有機溶剤は、特に限定されず、従来公知の溶剤を適宜選択して用いることができる。また、有機溶剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。なお、有機溶剤の沸点は、例えば、100℃を超えることが好ましい。溶剤の沸点が100℃以下の場合、ペースト製造時に蒸発する恐れがある。
有機溶剤としては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどのテルペン系溶剤、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレートなどが挙げられる。
また、有機溶剤は、上述した有機溶剤を第1の有機溶剤とすると、第1の有機溶剤よりも沸点の低い第2の有機溶剤との2種類以上の有機溶剤を組み合わせて使用することが好ましい。積層セラミックコンデンサの作製工程において、内部電極用ペーストは、印刷装置を用いて連続的に複数枚のグリーンシートに内部電極パターンとして印刷される。この際、内部電極用ペーストの乾燥速度が速い場合、内部電極パターンを印刷している間に、内部電極用ペースト内の有機溶剤が失われ、内部電極用ペーストの粘度が増加し、内部電極パターンの印刷が困難になることがある。沸点の異なる2種類以上の有機溶剤を組み合わせることにより、乾燥速度を好適な範囲に容易に調製することができ、かつ上記のような印刷中に内部電極用ペーストの粘度が増加することを抑制できる。また、第2の有機溶剤は、第1の有機溶剤よりも粘度が低いことが好ましい。
第1の有機溶剤の沸点は、例えば、150℃以上300℃以下が好ましく、180℃以上250℃以下がより好ましい。沸点が150℃より低い場合、乾燥性が高く、印刷工程にて乾燥が進行し、粘度が高くなりやすい傾向がある。一方、沸点が300℃以上の場合、乾燥性が悪く、乾燥工程で溶剤が残留しやすい傾向がある。有機溶剤が第1の有機溶剤を含む場合、乾燥速度が適度に遅くなり、内部電極用ペーストの印刷性がより向上する。
第1の有機溶剤としては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどのテルペン系溶剤、イソボルニルアセテートなどが挙げられる。
第1の有機溶剤としては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどのテルペン系溶剤、イソボルニルアセテートなどが挙げられる。
第2の有機溶剤の沸点は、例えば、120℃以上250℃以下が望ましく、150℃以上220℃以下がより好ましい。沸点が120℃より低い場合、乾燥性が高いため、印刷工程にて乾燥が進行し、粘度が高くなりやすい傾向がある。一方、沸点が250℃以上の場合、乾燥性が悪いため、乾燥工程で溶剤が残留しやすい傾向がある。有機溶剤が第2の有機溶剤を含む場合、ペースト粘度の調製を容易に行うことができる。第1の有機溶剤として、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどのテルペン系溶剤及びイソボニルアセテートのうちの1種を選択した場合、第2の有機溶剤としては、例えば、第1の有機溶剤より沸点の低い有機溶剤を適宜、選択できる。
第2の有機溶剤としては、例えば、飽和脂肪族系炭化水素溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが好ましい例として挙げられる。飽和脂肪族系炭化水素溶剤としては、飽和炭化水素を主成分として含有する溶剤を好ましく用いることができ、特にトリデカン、ノナン、シクロヘキサンを含有する溶剤をより好ましく用いることができる。また、トリデカン、ノナン、シクロヘキサンを主成分として含有する溶剤を特に好ましく用いることができる。ここでいう主成分とは、体積比で90vol%以上含まれていることを意味している。
また、第2の有機溶剤は、市販の石油系混合溶剤を用いてもよく、例えば、市販のミネラルスピリットや0号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー株式会社)などを用いてもよい。なお、第2の有機溶剤は、第1の有機溶剤よりも沸点が低い溶剤であれば、1種を用いてもよく、2種以上が含まれる混合溶剤を用いてもよい。
有機溶剤中の第1の有機溶剤と第2の有機溶剤との含有率(割合)は特に限定されるものではなく、任意に選択することができる。有機溶剤中の第1の有機溶剤の割合は、有機溶剤全体に対して、例えば、20質量%以上80質量%未満とすることができる。なお、残部は第2の有機溶剤である。
有機溶剤中の第1の有機溶剤の割合が20質量%以上である場合、内部電極用ペーストの乾燥性が過度に高くなることを抑制することができる。このため、内部電極パターンの印刷中に、内部電極用ペーストの粘度が大幅に増加することを防ぐことができ、内部電極パターンを安定して印刷できる。一方、有機溶剤中の第1の有機溶剤の割合が80質量%未満である場合、内部電極用ペーストに一定以上の乾燥性を付与することができる。このため、内部電極用ペーストの乾燥膜内の有機溶剤の残留を抑制できる。
有機溶剤の含有量(調製時の添加量)は、特に限定されるものではなく、内部電極用ペーストの粘度等に応じて任意に選択することができる。有機溶剤の含有量は、例えば、導電性粉末100質量部に対して、60質量部以上100質量部以下であることが好ましく、40質量部以上90量部以下であることがより好ましい。
(セラミック粉末)
本実施形態の内部電極用ペーストは、セラミック粉末を含有してもよい。セラミック粉末は、例えば、焼結抑制剤として添加される。セラミック粉末としては、例えば、ペロブスカイト型酸化物であるBaTiO3等や、これに種々の添加物を添加したもの等から選択することができる。また、セラミック粉末としては、積層セラミックコンデンサのグリーンシートの主成分として使用されるセラミック粉末と同組成又は類似の組成のものが好ましく用いられる。
本実施形態の内部電極用ペーストは、セラミック粉末を含有してもよい。セラミック粉末は、例えば、焼結抑制剤として添加される。セラミック粉末としては、例えば、ペロブスカイト型酸化物であるBaTiO3等や、これに種々の添加物を添加したもの等から選択することができる。また、セラミック粉末としては、積層セラミックコンデンサのグリーンシートの主成分として使用されるセラミック粉末と同組成又は類似の組成のものが好ましく用いられる。
セラミック粉末の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、固相法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など種々の製造方法により製造されたセラミック粉末を使用できる。特に水熱合成法により製造されたセラミック粉末は、微細でシャープな粒度分布を有するため、好ましく用いられる。
セラミック粉末の粒径は特に限定されるものではないが、例えば、平均粒径は、0.01μm以上0.2μm以下であることが好ましい。なお、本明細書において、セラミック粉末の平均粒径は、特に断らない限り、比表面積をBET法に基づいて算出した粒径で表す。セラミック粉末として、例えば、チタン酸バリウム粉末を用いた場合の粒径[単位:m]の算出式を下記式(1)に示す。
粒径=6/SBTρBT・・・式(1)
(上記式(1)中、SBTは、チタン酸バリウム粉末の比表面積[m2/g]を表し、ρBTは、チタン酸バリウムの真密度(6.1[g/cm3])を表す。)
粒径=6/SBTρBT・・・式(1)
(上記式(1)中、SBTは、チタン酸バリウム粉末の比表面積[m2/g]を表し、ρBTは、チタン酸バリウムの真密度(6.1[g/cm3])を表す。)
セラミック粉末の平均粒径が0.01μm以上である場合、内部電極用ペーストの焼結開始温度を誘電体層の焼結開始温度まで遅延させる効果(焼結遅延効果)を十分に発揮することができ、デラミネーションやクラック等の構造欠陥の発生をより抑制できる。また、セラミック粉末の平均粒径が上記範囲である場合、膜状に成形した内部電極用ペーストを乾燥した際の膜密度である乾燥膜密度の低下をより抑制し、積層セラミックコンデンサの薄層化を図ることができ、積層セラミックコンデンサの信頼性を高めることができる。また、セラミック粉末の平均粒径が0.2μm以下の場合、導電性粉末の間にセラミック粉末が充填されやすくなるため、乾燥膜密度を十分に高めることが可能になり、焼結遅延効果も十分に発揮することができる。
内部電極用ペーストがセラミック粉末を含有する場合、セラミック粉末の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、導電性粉末100質量部に対して、3質量部以上25質量部以下となるように添加することが好ましい。
セラミック粉末の含有量が3質量部以上である場合、導電性粉末の焼結を十分に制御することができるため、内部電極層と誘電体層との焼結収縮挙動のミスマッチをより抑制できる。また、セラミック粉末の含有量が25質量部を超える場合、内部電極層のセラミック粉末の粒子が誘電体層中のセラミック粒子と焼結し、誘電体層の厚みが膨張して組成のずれが生じ、誘電率の低下等、電気特性に悪影響を及ぼす恐れがある。このため、誘電体層等の電気特性等による悪影響等を確実に生じないように、セラミック粉末の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
(分散剤)
内部電極用ペーストは、分散剤としてアニオン系界面活性剤を含む。分散剤は、金属粉末の凝集を防止し、分散性を付与するため用いられる。アニオン系界面活性剤は、導電性粉末表面への吸着力が大きく、その表面改質作用により導電性粉末などの無機物粒子の分散性向上に寄与する。また、アニオン系界面活性剤は、塗膜の平滑性や、内部電極用ペーストの膜を乾燥した際の密度(乾燥膜密度)を向上させる働きも有する。アニオン系界面活性剤としては、カルボキシル基(COOH基)を有するカルボン酸系界面活性剤が好ましい。なお、カルボン酸系界面活性剤は、カルボキシル基以外に、ヒドロキシル基やカルボニル基、アシル基、アミノ基等の官能基やエーテル結合、アミド結合等の構造を備えてもよい。また、アニオン系界面活性剤は、ジェミニ型界面活性剤を用いてもよい。
内部電極用ペーストは、分散剤としてアニオン系界面活性剤を含む。分散剤は、金属粉末の凝集を防止し、分散性を付与するため用いられる。アニオン系界面活性剤は、導電性粉末表面への吸着力が大きく、その表面改質作用により導電性粉末などの無機物粒子の分散性向上に寄与する。また、アニオン系界面活性剤は、塗膜の平滑性や、内部電極用ペーストの膜を乾燥した際の密度(乾燥膜密度)を向上させる働きも有する。アニオン系界面活性剤としては、カルボキシル基(COOH基)を有するカルボン酸系界面活性剤が好ましい。なお、カルボン酸系界面活性剤は、カルボキシル基以外に、ヒドロキシル基やカルボニル基、アシル基、アミノ基等の官能基やエーテル結合、アミド結合等の構造を備えてもよい。また、アニオン系界面活性剤は、ジェミニ型界面活性剤を用いてもよい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸などの高級脂肪酸や、グリシンとステアリン酸又はラウリン酸などの高級脂肪酸とのアミド化合物などが挙げられる。これらの中でも、アニオン系界面活性剤としては、炭素数が16以上22以下のアニオン系界面活性剤が好ましい。なお、アニオン系界面活性剤は、一種で用いても、二種以上を併用してもよい。
アニオン系界面活性剤の含有量は、例えば、導電性粉末100質量部に対して、0.01質量部以上8質量部以下であり、0.2質量部以上7質量部以下であることが好ましい。含有量が0.2質量部未満である場合、ニッケル粉の分散性が十分でなく乾燥膜密度が低下することがある。また、含有量が7質量部以下である場合、十分な分散性を得ることができるため、それ以上添加する必要はない。
また、内部電極用ペーストは、アニオン系界面活性剤以外の分散剤を用いてもよい。このような分散剤としては特に限定されるものではなく、導電性粉末等を有機溶剤中に微細化した状態で安定に分散できる分散剤であれば好適に用いることができ、例えば、カチオン系界面活性剤等を用いることができる。また、ニッケルを含む導電性粉末の表面は、酸化等により表面が汚染されおり、化学的性質が一様ではないため、分散剤は、アニオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤の両方を用いることができる。また、アニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤は、2種類以上を併用して用いてもよい。
分散剤の添加量は特に限定されるものではなく、内部電極用ペーストに要求される保存安定性や、導電性粉末等の無機物粒子の分散性の程度、分散剤の種類等に応じて任意に選択することができる。例えば、内部電極用ペーストに含まれる無機物粒子(導電性粉末及びセラミック粉末の合計)の含有量を100質量部とした場合、分散剤の添加量は0.01質量部以上10質量部以下とすることが好ましく、0.20質量部以上7質量部以下とすることがより好ましい。添加量を0.01質量部以上とする場合、導電性粉末やセラミック粉末などの無機粒子を十分に分散することができるため好ましい。10質量部をこえる場合、内部電極用ペーストの乾燥性が低下し、内部電極用ペーストの乾燥膜の密度(乾燥膜密度)が低下することがある。
(グリコール)
内部電極用ペーストは、アニオン系界面活性剤の有するカルボキシル基(−COOH基)のmol量に対し、特定量のグリコールを含有する。内部電極用ペーストがグリコールを含有することにより、積層セラミックコンデンサを作製した場合の内部電極層と誘電体層との密着性が向上する。この密着性が向上する理由は限定されないが、内部電極層に含まれるポリビニルブチラール樹脂と誘電体層に含まれるポリビニルブチラール樹脂との水素結合が、アニオン系界面活性剤のカルボキシル基(COOH基)により阻害されることが抑制されるためと推察される。また、グリコールは、室温での揮発性が低いため、グリコールを含む内部電極ペーストは、長期間保存した後でも、上記効果を発揮することができる。また、内部電極用ペーストは、グリコールを含有することにより、内部電極用ペーストのゲル化を抑制することができる。
内部電極用ペーストは、アニオン系界面活性剤の有するカルボキシル基(−COOH基)のmol量に対し、特定量のグリコールを含有する。内部電極用ペーストがグリコールを含有することにより、積層セラミックコンデンサを作製した場合の内部電極層と誘電体層との密着性が向上する。この密着性が向上する理由は限定されないが、内部電極層に含まれるポリビニルブチラール樹脂と誘電体層に含まれるポリビニルブチラール樹脂との水素結合が、アニオン系界面活性剤のカルボキシル基(COOH基)により阻害されることが抑制されるためと推察される。また、グリコールは、室温での揮発性が低いため、グリコールを含む内部電極ペーストは、長期間保存した後でも、上記効果を発揮することができる。また、内部電極用ペーストは、グリコールを含有することにより、内部電極用ペーストのゲル化を抑制することができる。
グリコールの沸点は、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは250℃以下である。グリコールの沸点が300℃を超える場合、積層セラミックコンデンサを作製する際の乾燥工程においてグリコールが残留し、得られた乾燥膜が必要以上に柔軟性を持つことがあり、積層工程において、積層体の位置ズレ等を起こしてしまう可能性がある。また脱バインダー処理の際に、残留したグリコールがガス化し、積層体の内部圧力を上げ、クラック等の発生原因となる場合がある。グリコールの沸点の下限は、特に限定されないが、例えば、150℃以上である。
また、グリコールの沸点は、有機溶剤の沸点以下であることが好ましい。グリコールの沸点が、有機溶剤の沸点よりも高い場合、積層セラミックコンデンサを作製する際の乾燥工程においてグリコールが残留し、得られた乾燥膜が必要以上に柔軟性を持つことがあり、積層工程において、積層体の位置ズレ等を起こしてしまう可能性がある。また脱バインダー処理の際に、残留したグリコールがガス化し、積層体の内部圧力を上げ、クラック等の発生原因となる場合がある。
グリコールは、公知の2価のアルコールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールから選択される少なくとも一種を用いることができる。これらの中でも、例えば、沸点が低いという観点から、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールから選択される少なくとも一種を用いることができ、より好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール及びジエチレングリコールから選択される少なくとも一種を用いることができる。また、取扱い性に優れるという観点から、エチレングリコール及びプロピレングリコールの少なくとも一種を用いることが好ましい。なお、グリコールは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
内部電極用ペーストにおいて、グリコールは、アニオン系界面活性剤の有するカルボキシル基(COOH基)のmol量に対し、0.5mol倍を超え3mol倍未満の範囲で含有され、好ましくは0.8mol倍以上2.5mol倍以下、より好ましくは1mol倍以上2mol倍以下の範囲で含有される。グリコールの含有量が上記範囲である場合、積層セラミックコンデンサを作製する際の内部電極層と誘電体層との密着性がより向上する。一方、グリコールの含有量が、0.5mol倍以下である場合、内部電極層と誘電体層との密着性向上の効果が十分に得られない。また、グリコールの含有量が3mol倍以上である場合、内部電極用ペーストの粘度が低下し、内部電極用ペーストの乾燥膜の密度(乾燥膜密度)が低下する。
また、内部電極用ペーストは、導電性粉末、セラミック粉末、有機バインダー、及び有機溶剤の合計量100質量%に対し、0.5質量%以上の範囲でグリコールを含有することが好ましい。グリコールの含有量が上記範囲である場合、内部電極用ペーストのゲル化をより抑制することができる。ゲル化が抑制される理由は限定されないが、例えば、内部電極用ペーストに含まれるエチルセルロース樹脂の末端に存在するOH基と導電性粉末(例えば、ニッケル粉末)との間で水素結合が形成され、ペースト粘度の上昇を引き起こすことがある。グリコールは、この水素結合の形成を阻害することにより、内部電極用ペーストのゲル化を抑制すると推察される。なお、ゲル化抑制の観点から、グリコールの含有量は、例えば5質量%以下の範囲とすることができる。
なお、有機酸を添加することによっても、エチルセルロース樹脂と導電性粉末との水素結合の形成を阻害することができるが、有機酸は導電性粉末を酸化させてしまうという問題がある。一方、グリコールを用いた場合は、導電性粉末の酸化が生じず、ペースト粘度を長期間安定させ、ゲル化を抑制することができる。また、グリコールは、室温での揮発性が低いため、グリコールを含む内部電極ペーストは、長期間保存した後でも、上記効果を発揮することができる。
また、内部電極用ペーストは、導電性粉末、セラミック粉末、有機バインダー、及び有機溶剤の合計量100質量%に対し、0.5質量%以上、2.4質量%以下の範囲でグリコールを含有することがより好ましい。グリコールの含有量が上記範囲である場合、密着性の向上とゲル化抑制とを高いレベルで両立させることができる。
(その他の成分)
本実施形態の導電性ペーストは、上記した成分以外の、従来公知の添加成分を含んでもよい。
本実施形態の導電性ペーストは、上記した成分以外の、従来公知の添加成分を含んでもよい。
[内部電極用ペーストの製造方法]
図1は、実施形態に係る内部電極用ペーストの製造方法の一例を示す図である。図2は、有機ビヒクルの調製方法の一例を示す図である。なお、以下の説明は、内部電極用ペーストの製造方法の一例であって、この方法に限定するものではない。例えば、図1に示す製造方法は、一部のステップが削除されてもよいし、他のステップが追加されてもよい。図1を説明する際に、適宜図2を参照する。なお、上記内部電極用ペーストで既に説明した事項と重複する部分については、説明を一部省略する。
図1は、実施形態に係る内部電極用ペーストの製造方法の一例を示す図である。図2は、有機ビヒクルの調製方法の一例を示す図である。なお、以下の説明は、内部電極用ペーストの製造方法の一例であって、この方法に限定するものではない。例えば、図1に示す製造方法は、一部のステップが削除されてもよいし、他のステップが追加されてもよい。図1を説明する際に、適宜図2を参照する。なお、上記内部電極用ペーストで既に説明した事項と重複する部分については、説明を一部省略する。
実施形態に係る内部電極用ペーストの製造方法は、例えば、図1に示すように、有機バインダーと有機溶剤とを混合して有機ビヒクルを調製すること(ステップS1)と、有機ビヒクルに、導電性粉末とアニオン系界面活性剤とグリコールとを添加し分散させること(ステップS2)と、を含む。
まず、有機バインダーを有機溶剤に溶解して有機ビヒクルを調製する(ステップS1)。有機バインダーは、エチルセルロース樹脂と、ポリビニルブチラール樹脂とを含む。有機溶剤は、上述のように、沸点の異なる第1の有機溶剤と第2の有機溶剤とを含んでもよい。第1の有機溶剤は、例えば第2の有機溶剤より高い沸点を有する。
有機ビヒクルを調製する手順は特に限定されるものではない。例えば、図2(A)に示すように、ポリビニルブチラール樹脂を含む第1の有機ビヒクルと、エチルセルロース樹脂を含む第2の有機ビヒクルとをそれぞれ別に調製することもできる。すなわち、有機ビヒクルの調製は、ポリビニルブチラール樹脂と有機溶剤とを混合して第1の有機ビヒクルを調製する工程と、エチルセルロース樹脂と有機溶剤とを混合して第2の有機ビヒクルを調製する工程と、を有することができる。
第1の有機ビヒクルの調製工程では、例えば、第1の有機溶剤にポリビニルブチラールを溶解することでポリビニルブチラール有機ビヒクルを調製することができる。また、第2の有機ビヒクルの調製工程では、例えば、第1の有機溶剤にエチルセルロースを溶解することでエチルセルロース有機ビヒクルを調製することができる。
また、例えば、図2(B)に示すように、第1の有機溶剤および/または第2の有機溶剤に、ポリビニルブチラールと、エチルセルロースを同時に添加して、両方の樹脂を含む第3の有機ビヒクルを調製することができる。
なお、各有機バインダーについてそれぞれ有機ビヒクルを調製した場合、それぞれの有機ビヒクルは、後述する分散工程において、個別に、導電性粉末等と混合してもよい。また、予め各有機バインダーについて調製したそれぞれの有機ビヒクルを混合して、両方の樹脂を含む有機ビヒクルを調製し、その後で、分散工程において、導電性粉末等と混合してもよい。
なお、有機ビヒクルに用いる有機溶剤は、例えば、一方の有機ビヒクルについては第1の有機溶剤を、他方の有機ビヒクルについては第2の有機溶剤を用いてもよい。また、各有機ビヒクルを第1の有機溶剤と、第2の有機溶剤との混合液を用いて調製したり、第1の有機溶剤ではなく、第2の有機溶剤を用いて有機ビヒクルを調製し、第1の有機溶剤は分散工程で添加してもよい。
有機ビヒクルを調製する際の具体的な条件は特に限定されないが、例えば、有機溶剤を50℃以上60℃以下に加温した恒温槽の中で、有機バインダーを有機溶剤に徐々に加え、引き続き有機バインダーが溶解するまで攪拌しながら加熱することで調製することができる。
次いで、図1に示すように、有機ビヒクルに、導電性粉末とアニオン系界面活性剤とグリコールとを添加し分散させる(ステップS2)。分散工程では、有機ビヒクル調製工程(ステップS1)で調製した有機ビヒクルと、導電性粉末とを、ミキサーに投入して撹拌、混合することができる。有機ビヒクルと導電性粉末との混合の際に、アニオン系界面活性剤と、グリコールとを、合わせて、混合することができる。
有機ビヒクルに、導電性粉末、アニオン系界面活性剤及びグリコールを添加する順番は、特に限定されず、例えば、すべての材料を同時に添加することができる。また、有機ビヒクルに導電性粉末を添加した後に、アニオン系界面活性剤又はグリコールをそれぞれ添加してもよいし、有機ビヒクルに導電性粉末を添加する前に、アニオン系界面活性剤又はグリコールをそれぞれ添加してもよい。また、グリコールは、有機ビヒクルに導電性粉末、アニオン系界面活性剤、任意にセラミック粉末を添加して、ペースト状とした後、例えば、撹拌しながら添加してもよい。
内部電極用ペーストがセラミック粉末や、他の添加成分を含む場合、分散工程において、有機ビヒクル、及び導電性粉末をミキサーに投入した際に、セラミック粉末や、各種添加剤等もあわせて投入することもできる。分散工程における、これらの成分の混合の順番は、特に限定されず、導電性粉末と同時に添加し、混合分散させてもよく、導電性粉末の添加前又は添加後に、添加し、混合分散させてもよい。
また、有機溶剤である第1の有機溶剤および第2の有機溶剤のうち一部のみを用いて有機ビヒクルを調製した場合、分散工程では、有機ビヒクル調製工程で添加しなかった有機溶剤を併せてミキサーに投入して撹拌、混合することができる。例えば、第1の有機溶剤のみを用いて有機ビヒクルを調製した場合、第2の有機溶剤は、分散工程(ステップS02)で添加することができる。第2の有機溶剤を分散工程で添加する場合、内部電極用ペーストの粘度をより容易に調製できる。
また、ミキサーによる撹拌・混合後に、スリーロールミルによって、さらに分散させることが好ましい。スリーロールミルを用いた場合、導電性粉末等の混合材料を有機ビヒクル中により均一に分散混合させることができる。
なお、セラミック粉末は、上述したように分散工程で添加することが好ましいが、分散工程以外の工程で添加してもよい。例えば、セラミック粉末は、有機ビヒクルの調製の際に有機溶剤又は有機バインダーとともに添加されてもよい。また、アニオン系界面活性剤は、上述したように、分散工程で添加することが好ましいが、分散工程以外の工程で添加してもよい。例えば、アニオン系界面活性剤は、有機ビヒクルの調製の際に有機溶剤又は有機バインダーとともに添加されてもよい。
後に説明する積層セラミックコンデンサは、本実施形態の内部電極用ペーストを用いて製造される。積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートの厚さが、例えば3μm以下である場合でも、シートアタックやグリーンシートの剥離不良が抑制される。
[積層セラミックコンデンサ]
以下、本実施形態の積層セラミックコンデンサ及びその製造方法の一例について、図3を参照しながら説明する。図面においては、適宜、模式的に表現することや、縮尺を変更して表現することがある。
以下、本実施形態の積層セラミックコンデンサ及びその製造方法の一例について、図3を参照しながら説明する。図面においては、適宜、模式的に表現することや、縮尺を変更して表現することがある。
図3は、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1の一例を示す断面図である。積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層12及び内部電極層11を交互に積層した積層体10と、外部電極20と、を備える。積層セラミックコンデンサ1の製造工程は、まず、セラミックグリーンシートからなる複数の誘電体層12と、上記した内部電極用ペーストから形成される複数の内部電極層11とを、圧着により交互に積層させて積層体10を得た後、積層体10を焼成して一体化することにより、積層セラミックコンデンサ本体となる積層セラミック焼成体を作製する。その後、当該セラミックコンデンサ本体の両端部に一対の外部電極20を形成することにより積層セラミックコンデンサ1が製造される。
まず、未焼成のセラミックシートであるセラミックグリーンシートを用意する。このセラミックグリーンシートとしては、例えば、チタン酸バリウム等の所定のセラミックの原料粉末に、ポリビニルブチラール等の有機バインダーとターピネオール等の溶剤とを加えて得た誘電体層用ペーストを、PETフィルム等の支持フィルム上にシート状に塗布し、乾燥させて溶剤を除去したもの等が挙げられる。なお、セラミックグリーンシートから形成される誘電体層12の厚みは、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサの小型化の要請の観点から、0.05μm以上3μm以下が好ましい。
次いで、このセラミックグリーンシートの片面に、スクリーン印刷法等の公知の方法によって、上述の内部電極用ペーストを印刷して塗布し、乾燥して、内部電極用ペーストから形成される内部電極層11を形成したものを複数枚、用意する。なお、内部電極用ペーストから形成される内部電極層11の厚みは、当該内部電極層11の薄層化の要請の観点から、1μm以下とすることが好ましい。
次いで、支持フィルムから、セラミックグリーンシートを剥離するとともに、セラミックグリーンシートから形成される誘電体層12とその片面に形成された内部電極用ペーストから形成される内部電極層11とが交互に配置されるように、加熱・加圧処理により積層して、積層体10を得る。なお、積層体10の両面に、内部電極用ペーストを塗布していない保護用のセラミックグリーンシートを配置する構成としても良い。
次いで、積層体10を所定サイズに切断してグリーンチップを形成した後、当該グリーンチップに対して脱バインダー処理を施し、還元雰囲気下において焼成することにより、積層セラミック焼成体を製造する。なお、脱バインダー処理における雰囲気は、大気またはN2ガス雰囲気にすることが好ましい。脱バインダー処理を行う際の温度は、例えば200℃以上400℃以下である。また、脱バインダー処理を行う際の、上記温度の保持時間を0.5時間以上24時間以下とすることが好ましい。また、焼成は、内部電極層11に用いる金属の酸化を抑制するために還元雰囲気で行われ、また、積層体10の焼成を行う際の温度は、例えば、1000℃以上1350℃以下であり、焼成を行う際の、温度の保持時間は、例えば、0.5時間以上8時間以下である。
グリーンチップの焼成を行うことにより、グリーンチップ中の有機バインダーが除去されるとともに、セラミックの原料粉末が焼成されて、セラッミック製の誘電体層12が形成される。また内部電極層11中の有機ビヒクルが除去されるとともに、導電性粉末が焼結もしくは溶融、一体化されて、内部電極が形成され、誘電体層12と内部電極層11とが複数枚、交互に積層された積層セラミック焼成体が形成される。なお、酸素を誘電体層の内部に取り込んで電気的特性を高めるとともに、内部電極の再酸化を抑制するとの観点から、焼成後のグリーンチップに対して、アニール処理を施してもよい。
そして、作製した積層セラミック焼成体に対して、一対の外部電極20を設けることにより、積層セラミックコンデンサ1が製造される。例えば、外部電極20は、外部電極層21及びメッキ層22を備える。外部電極層21は、内部電極層11と電気的に接続する。なお、外部電極20は、外部電極層21及びメッキ層22以外の層を備えてもよい。また、外部電極20は、メッキ層22を備えなくてもよい。外部電極20(外部電極層21、メッキ層22)の材料としては、例えば、銅やニッケル、またはこれらの合金が好適に使用できる。
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(有機ビヒクルの調製)
有機ビヒクル調製は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)を含有する第1の有機ビヒクルを調製する工程(i)と、エチルセルロース(EC)を含有する第2の有機ビヒクルを調製する工程(ii)とをそれぞれ実施した。
(i)第1の有機ビヒクル調製工程
まず、第1の有機溶剤であるターピネオール(α、β、γ混合体)65質量部について、添加量の半分(32.5質量部)を60℃まで加熱した。そして、加熱したターピネオールをインペラー(羽根車)で攪拌しながら、ポリビニルブチラール2.4質量部を徐々に加えてポリビニルブチラール樹脂を含有する第1の有機ビヒクルを調製した。
(ii)第2の有機ビヒクル調製工程
また、第2の有機ビヒクル調製工程でも同様に、有機溶剤であるターピネオール(α、β、γ混合体)65質量部について、添加量の半分(32.5質量部)を60℃まで加熱した。そして、加熱したターピネオールをインペラー(羽根車)で攪拌しながら、エチルセルロース樹脂3.4質量部を徐々に加えてエチルセルロースを含有する第2の有機ビヒクルを調製した。
(有機ビヒクルの調製)
有機ビヒクル調製は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)を含有する第1の有機ビヒクルを調製する工程(i)と、エチルセルロース(EC)を含有する第2の有機ビヒクルを調製する工程(ii)とをそれぞれ実施した。
(i)第1の有機ビヒクル調製工程
まず、第1の有機溶剤であるターピネオール(α、β、γ混合体)65質量部について、添加量の半分(32.5質量部)を60℃まで加熱した。そして、加熱したターピネオールをインペラー(羽根車)で攪拌しながら、ポリビニルブチラール2.4質量部を徐々に加えてポリビニルブチラール樹脂を含有する第1の有機ビヒクルを調製した。
(ii)第2の有機ビヒクル調製工程
また、第2の有機ビヒクル調製工程でも同様に、有機溶剤であるターピネオール(α、β、γ混合体)65質量部について、添加量の半分(32.5質量部)を60℃まで加熱した。そして、加熱したターピネオールをインペラー(羽根車)で攪拌しながら、エチルセルロース樹脂3.4質量部を徐々に加えてエチルセルロースを含有する第2の有機ビヒクルを調製した。
(分散工程)
導電性粉末であるニッケル粉末(平均粒径:0.4μm)を、内部電極用ペースト中の含有率が48.3質量%(100質量部)となる量で準備した。ニッケル粉末100質量部に対し、有機ビヒクル調製工程で調製した2種類の有機ビヒクル(第1の有機ビヒクル及び第2の有機ビヒクル)を70.8質量部、セラミック粉末であるBaTiO3(平均粒径:0.1μm)を15.0質量部、アニオン系界面活性剤としてオレイン酸を1.0質量部、第2の有機溶剤である飽和脂肪族系炭化水素溶剤(0号ソルベント(商品名):JX日鉱日石エネルギー株式会社製)を20.0質量部、グリコールとしてエチレングリコール(関東化学社製、沸点:198℃)をオレイン酸に含まれるCOOH基のmol量と同量添加した後、これらをミキサーで撹拌・混合してスラリーを得た。得られたスラリーは、さらにスリーロールミルを用いて完全分散させ、内部電極用ペーストを作製した。なお、用いた成分の配合割合を表1に示す。
導電性粉末であるニッケル粉末(平均粒径:0.4μm)を、内部電極用ペースト中の含有率が48.3質量%(100質量部)となる量で準備した。ニッケル粉末100質量部に対し、有機ビヒクル調製工程で調製した2種類の有機ビヒクル(第1の有機ビヒクル及び第2の有機ビヒクル)を70.8質量部、セラミック粉末であるBaTiO3(平均粒径:0.1μm)を15.0質量部、アニオン系界面活性剤としてオレイン酸を1.0質量部、第2の有機溶剤である飽和脂肪族系炭化水素溶剤(0号ソルベント(商品名):JX日鉱日石エネルギー株式会社製)を20.0質量部、グリコールとしてエチレングリコール(関東化学社製、沸点:198℃)をオレイン酸に含まれるCOOH基のmol量と同量添加した後、これらをミキサーで撹拌・混合してスラリーを得た。得られたスラリーは、さらにスリーロールミルを用いて完全分散させ、内部電極用ペーストを作製した。なお、用いた成分の配合割合を表1に示す。
なお、上記0号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)は、飽和炭化水素を99vol%以上含み、トリデカン、ノナン、シクロヘキサンを主成分として含む。
[粘度]
作製した直後のペーストを、ブルックフィールド社製粘度計にて、10rpmの粘度を測定し、20〜60Pa・sとなるものを○(良好)、それ以外のものを×(不良)と評価した。
[乾燥膜密度]
250μmで塗布し、120度にて60分乾燥後、4cmφにて切り抜き、重さおよび厚みを測定し乾燥膜密度を算出した。乾燥膜密度が5g/cm3以上のものを○(良好)とし、それ以下のものを×(不良)と評価した。
[密着性評価]
作製したペーストを、厚み4μmのグリーンシート(BaTiO3、ポリビニルブチラール樹脂含有)上に印刷し、80℃にて3分又は10分間乾燥させた。その後、内部電極用ペーストを印刷したシートを50℃に加熱し、10MPaの圧力を加えながら50層からなる積層体(内部電極層の厚み:1μm)を作製した。積層した積層体を切断、回収し、各層の密着性を光学顕微鏡にて観察した。乾燥時間が3分の場合、50層の中で層間の剥がれが見られなかったものを◎と(非常に良好)評価し、乾燥時間が10分の場合、50層の中で層間の剥がれが見られなかったものを○と(良好)と評価し、乾燥時間が3分及び10分のいずれも場合でも、50層の中で層間の剥がれが見られたものを×(不良)と判断した。
作製した直後のペーストを、ブルックフィールド社製粘度計にて、10rpmの粘度を測定し、20〜60Pa・sとなるものを○(良好)、それ以外のものを×(不良)と評価した。
[乾燥膜密度]
250μmで塗布し、120度にて60分乾燥後、4cmφにて切り抜き、重さおよび厚みを測定し乾燥膜密度を算出した。乾燥膜密度が5g/cm3以上のものを○(良好)とし、それ以下のものを×(不良)と評価した。
[密着性評価]
作製したペーストを、厚み4μmのグリーンシート(BaTiO3、ポリビニルブチラール樹脂含有)上に印刷し、80℃にて3分又は10分間乾燥させた。その後、内部電極用ペーストを印刷したシートを50℃に加熱し、10MPaの圧力を加えながら50層からなる積層体(内部電極層の厚み:1μm)を作製した。積層した積層体を切断、回収し、各層の密着性を光学顕微鏡にて観察した。乾燥時間が3分の場合、50層の中で層間の剥がれが見られなかったものを◎と(非常に良好)評価し、乾燥時間が10分の場合、50層の中で層間の剥がれが見られなかったものを○と(良好)と評価し、乾燥時間が3分及び10分のいずれも場合でも、50層の中で層間の剥がれが見られたものを×(不良)と判断した。
[ゲル化抑制の評価]
ゲル化抑制の評価は、作製したペーストを一定期間静置した後の粘度変化率を算出して行った。ペーストがゲル化した場合、ペースト粘度は大きく上昇する。ペーストの粘度は、ペーストの製造直後と、室温(25℃)で90日間静置後とで、ブルックフィールド社製B型粘度計を用いて10rpm(ずり速度=4sec−1)の条件で測定し、下記式(2)を用いて算出した。粘度変化率が±30%であるものを×、±15%であるものを△、±10%であるものを○と評価した。
粘度変化率(%)=[(90日間静置後の粘度−製造直後の粘度)/製造直後の粘度]×100)・・・式(2)
なお、表1に上記評価結果を示す。
ゲル化抑制の評価は、作製したペーストを一定期間静置した後の粘度変化率を算出して行った。ペーストがゲル化した場合、ペースト粘度は大きく上昇する。ペーストの粘度は、ペーストの製造直後と、室温(25℃)で90日間静置後とで、ブルックフィールド社製B型粘度計を用いて10rpm(ずり速度=4sec−1)の条件で測定し、下記式(2)を用いて算出した。粘度変化率が±30%であるものを×、±15%であるものを△、±10%であるものを○と評価した。
粘度変化率(%)=[(90日間静置後の粘度−製造直後の粘度)/製造直後の粘度]×100)・・・式(2)
なお、表1に上記評価結果を示す。
[実施例2]
グリコールの添加量を、オレイン酸に含まれるCOOH基のmol量に対し、2mol倍にした以外は、実施例1と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例3]
オレイン酸の添加量を実施例1の5倍にした以外は、実施例1と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例4]
グリコールの添加量を、オレイン酸に含まれるCOOH基のmol量に対し、2mol倍にした以外は、実施例3と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例5]
オレイン酸の添加量を、6質量部にした以外は、実施例1と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例6]
グリコールの添加量を、オレイン酸に含まれるCOOH基のmol量に対し、2mol倍にした以外は、実施例5と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例7]
アニオン系界面活性剤としてステアリン酸(炭素数:18)を用いた以外は、実施例3と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例8]
有機ビヒクル中の有機バインダーの比[(ポリビニルブチラールの含有量)/(エチルセルロースの含有量)]を[4.8質量部/1質量部]に変更した以外は、実施例3と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例9]
分散工程において、飽和脂肪族系炭化水素溶剤(第2の有機溶剤)20質量部の代わりに、ターピネオール(第1の有機溶剤)24質量部を用い、グリコールとしてプロピレングリコール(関東化学社製、沸点:188℃)を用いた以外は、実施例3と同様に内部電極用ペーストを作製した。
グリコールの添加量を、オレイン酸に含まれるCOOH基のmol量に対し、2mol倍にした以外は、実施例1と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例3]
オレイン酸の添加量を実施例1の5倍にした以外は、実施例1と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例4]
グリコールの添加量を、オレイン酸に含まれるCOOH基のmol量に対し、2mol倍にした以外は、実施例3と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例5]
オレイン酸の添加量を、6質量部にした以外は、実施例1と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例6]
グリコールの添加量を、オレイン酸に含まれるCOOH基のmol量に対し、2mol倍にした以外は、実施例5と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例7]
アニオン系界面活性剤としてステアリン酸(炭素数:18)を用いた以外は、実施例3と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例8]
有機ビヒクル中の有機バインダーの比[(ポリビニルブチラールの含有量)/(エチルセルロースの含有量)]を[4.8質量部/1質量部]に変更した以外は、実施例3と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例9]
分散工程において、飽和脂肪族系炭化水素溶剤(第2の有機溶剤)20質量部の代わりに、ターピネオール(第1の有機溶剤)24質量部を用い、グリコールとしてプロピレングリコール(関東化学社製、沸点:188℃)を用いた以外は、実施例3と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例10]
グリコールとしてジエチレングリコール(関東化学社製、沸点:245℃)を用いた以外は、実施例9と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例11]
グリコールとしてトリエチレングリコール(関東化学社製、沸点:288℃)を用いた以外は、実施例9と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例12]
グリコールとしてテトラエチレングリコール(関東化学社製、沸点:327℃)を用いた以外は、実施例9と同様に内部電極用ペーストを作製した。
グリコールとしてジエチレングリコール(関東化学社製、沸点:245℃)を用いた以外は、実施例9と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例11]
グリコールとしてトリエチレングリコール(関東化学社製、沸点:288℃)を用いた以外は、実施例9と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[実施例12]
グリコールとしてテトラエチレングリコール(関東化学社製、沸点:327℃)を用いた以外は、実施例9と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[比較例1、2、3]
グリコールの添加量を表1に示したように変更した(比較例1:グリコールの添加なし、比較例2:COOH基に対し0.5mol倍、比較例3:COOH基に対し3mol倍)以外は、実施例1と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[比較例4]
グリコールを添加しない以外は、実施例5と同様に内部電極用ペーストを作製した。
グリコールの添加量を表1に示したように変更した(比較例1:グリコールの添加なし、比較例2:COOH基に対し0.5mol倍、比較例3:COOH基に対し3mol倍)以外は、実施例1と同様に内部電極用ペーストを作製した。
[比較例4]
グリコールを添加しない以外は、実施例5と同様に内部電極用ペーストを作製した。
上記、実施例及び比較例で用いた内部電極用ペーストの組成及び評価結果を表1に示した。
[評価結果]
実施例で作製した内部電極用ペーストは、粘度、乾燥膜密度及び密着性ともに良好であった。また、グリコールを0.5質量%以上添加した内部電極用ペーストは、長期間保存後もゲル化が抑制されていた。
一方、グリコールを添加しない、又は添加量が少ない比較例1、2では、粘度、乾燥膜密度は良好であったが、密着性が改善されなかった。比較例3では、グリコールの添加量が多すぎたため、ペースト粘度が大幅に低下し、実際に使用するのは困難であった。グリコールを添加せず、アニオン系界面活性剤の添加量を多くした比較例4では、粘度、乾燥膜密度及び密着性ともに不良であった。比較例4のペーストは、オレイン酸のカルボキシル基により、内部電極層と、誘電体層内のポリビニルブチラール樹脂との水素結合が阻害されたため密着性が不良であったと考えられる。
実施例で作製した内部電極用ペーストは、粘度、乾燥膜密度及び密着性ともに良好であった。また、グリコールを0.5質量%以上添加した内部電極用ペーストは、長期間保存後もゲル化が抑制されていた。
一方、グリコールを添加しない、又は添加量が少ない比較例1、2では、粘度、乾燥膜密度は良好であったが、密着性が改善されなかった。比較例3では、グリコールの添加量が多すぎたため、ペースト粘度が大幅に低下し、実際に使用するのは困難であった。グリコールを添加せず、アニオン系界面活性剤の添加量を多くした比較例4では、粘度、乾燥膜密度及び密着性ともに不良であった。比較例4のペーストは、オレイン酸のカルボキシル基により、内部電極層と、誘電体層内のポリビニルブチラール樹脂との水素結合が阻害されたため密着性が不良であったと考えられる。
本発明の内部電極用ペーストは、密着性に非常に優れており、内部電極層間の剥離、及び位置ズレの発生が非常に抑制されており、特に携帯電話やデジタル機器などの電子機器のチップ部品である積層セラミックコンデンサの内部電極用の原料として好適に用いることができる。
1 積層セラミックコンデンサ
10 積層体
11 内部電極層
12 誘電体層
20 外部電極
21 外部電極層
22 メッキ層
10 積層体
11 内部電極層
12 誘電体層
20 外部電極
21 外部電極層
22 メッキ層
Claims (10)
- 導電性粉末、セラミック粉末、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、有機溶剤及びアニオン系界面活性剤を含有する内部電極用ペーストであって、
前記ポリビニルブチラール樹脂は、前記ペースト全量に対して、1質量%以上2.5質量%以下含有され、
前記アニオン系界面活性剤は、少なくとも1つ以上のカルボキシル基(COOH基)を有し、前記導電性粉末100質量部に対して、0.1質量部以上6.5質量部以下含有され、
前記アニオン系界面活性剤の有するカルボキシル基(COOH基)に対し、0.5mol倍を超え3mol倍未満の範囲でグリコールを含有する、内部電極用ペースト。 - 前記グリコールの沸点が、300℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の内部電極用ペースト。
- 前記グリコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールから選択される少なくとも一種である、請求項1又は請求項2に記載の内部電極用ペースト。
- 前記導電性粉末が、平均粒径が0.05μm以上0.5μm以下である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内部電極用ペースト。
- 前記アニオン系界面活性剤が、炭素数が16以上22以下である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の内部電極用ペースト。
- 前記有機溶剤が、第1の有機溶剤と、前記第1の有機溶剤より低い沸点を有する第2の有機溶剤と、を含む請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の内部電極用ペースト。
- 前記第1の有機溶剤が、沸点が150℃以上300℃以下であり、前記第2の有機溶剤は、沸点が120℃以上250℃以下である、請求項6に記載の内部電極用ペースト。
- 導電性粉末、セラミック粉末、有機バインダー、及び有機溶剤の合計量100質量%に対し、0.5質量%以上の範囲で前記グリコールを含有する請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の内部電極用ペースト。
- 有機バインダーと有機溶剤と混合して有機ビヒクルを調製することと、
前記有機ビヒクルに、導電性粉末と、セラミック粉末と、アニオン系界面活性剤と、グリコールとを添加し分散させることと、を備え、
前記アニオン系界面活性剤は、少なくとも1つ以上のカルボキシル基(COOH基)を有し、前記導電性粉末100質量部に対して、0.1質量部以上6.5質量部以下の範囲で添加され、
前記グリコールは、前記アニオン系界面活性剤の有するカルボキシル基(COOH基)に対し、0.5mol倍を超え3mol倍未満の範囲で添加される、内部電極用ペーストの製造方法。 - 誘電体層と、内部電極層とが交互に積層した積層体を備える積層セラミックコンデンサであって、前記内部電極が請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の内部電極用ペーストを用いて形成されてなる、積層セラミックコンデンサ。
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- 2017-02-01 JP JP2017016983A patent/JP2018037630A/ja active Pending
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